説明

電圧制御発振回路

【課題】電圧制御発振回路の回路規模の増大を抑制する。
【解決手段】電圧制御発振回路は、発振信号を増幅する発振アンプ部32と、発振信号の発振周波数を制御するLC共振部33と、負性抵抗成分を有する負性抵抗部34と、を備える。LC共振部33は、ループ状に接続されたgmセル25,26と、ループ上のノードに一端が接続された容量28〜31と、を有し、gmセル25,26と容量28,29とに基づくインダクタンス値と、容量30,31の容量値と、に基づいて発振周波数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御発振回路に関し、特にLC共振型の電圧制御発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路に用いられる電圧制御発振回路(VCO;voltage controlled oscillator)には、エミッタカップルドマルチバイブレータ、リングオシレータ及びLC発振型等、様々な種類が存在する。
【0003】
エミッタカップルドマルチバイブレータ及びリングオシレータは、集積化が容易であるとともに、発振周波数の変化率を大きくすることができるという利点があるが、LC発振型と比較してジッタ(位相雑音)が大きいという欠点がある。一方、LC発振型は、エミッタカップルドマルチバイブレータ及びリングオシレータと比較してジッタ(位相雑音)が小さいという利点があるが、発振周波数の変化率が小さいという欠点がある。
【0004】
LC発振型の電圧制御発振回路における上記課題に対する解決策が、特許文献1に開示されている。図9は、特許文献1に開示されたLC発振型の電圧制御発振回路である。図9に示す回路は、インダクタ11,12と、キャパシタ13,14,16,17と、MOSトランジスタ15と、バイポーラトランジスタ18,19と、電流源20と、を備える。なお、インダクタ11,12と、キャパシタ13,14,16,17と、MOSトランジスタ15と、により共振回路21を構成する。また、バイポーラトランジスタ18,19と、電流源20と、により負性抵抗回路22を構成する。
【0005】
図9に示す回路は、所望の発振周波数を有する発振信号をノードA,ANから出力する。ここで、図9に示す回路は、MOSトランジスタ15のゲートに印加される電圧VGを制御することにより、発振周波数を制御する。
【0006】
なお、特許文献2には、LC共振回路の一つとしてジャイレータ回路が開示されている。また、特許文献3には、LC発振型とは種類の異なるリングオシレータ型の電圧制御発振回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−158539号公報
【特許文献2】特開平8−330903号公報
【特許文献3】特開2007−267410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の場合、図9を見ても明らかなように、インダクタ11,12には、スパイラルインダクタンスが用いられている。このスパイラルインダクタンスは、螺旋状に配置された分布定数線路によって構成される。そのため、特許文献1に示す回路は、回路規模が増大するという問題があった。
【0009】
ここで、特許文献1に示す回路の場合、共振回路21のインダクタンス成分及び容量成分に基づいて発振周波数が制御される。つまり、特許文献1に示す回路の場合、発振周波数をさらに低くするためには、インダクタ11,12を大きくする必要があった。したがって、特許文献1に示す回路は、回路規模がさらに増大するという問題があった。
【0010】
また、スパイラルインダクタンスのインダクタンス値は、多くの要素によって決定される。そのため、特許文献1に示す回路は、精度の高い発振周波数の発振信号を生成することが困難であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる電圧制御発振回路は、発振信号を増幅する発振アンプ部と、前記発振信号の発振周波数を制御するLC共振部と、負性抵抗成分を有する負性抵抗部と、を備え、前記LC共振部は、ループ状に接続された第1及び第2のトランスコンダクタンスアンプと、前記ループ上のノードに一端が接続された第1及び第2の容量と、を有し、前記第1及び前記第2のトランスコンダクタンスアンプと前記第1の容量とに基づくインダクタンス値と、前記第2の容量の容量値と、に基づいて前記発振周波数を制御する。
【0012】
上述のような回路構成により、回路規模の増大を抑制すること等が可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、回路規模の増大を抑制すること等が可能な電圧制御発振回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる電圧制御発振回路を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかるgmセル24〜26の回路図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかるgmセル23,27の回路図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる電流生成部の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかるジャイレータ変換部の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態1にかかる負性抵抗部34の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態1にかかるジャイレータ変換部の等価回路を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2にかかる電圧制御発振回路を示す図である。
【図9】特許文献1に記載の電圧制御発振回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0016】
実施の形態1
図1に、本発明の実施の形態1にかかる電圧制御発振回路を示す。図1に示す回路は、発振アンプ部32と、LC共振部33と、負性抵抗部34と、を備える。発振アンプ部32は、gmセル23を有する。LC共振部33は、gmセル(第3のトランスコンダクタンスアンプ)24と、gmセル(第1のトランスコンダクタンスアンプ)25と、gmセル(第2のトランスコンダクタンスアンプ)26と、容量(第1の容量)28,29と、容量(第2の容量)30,31と、を有する。そして、負性抵抗部34は、gmセル27を有する。
【0017】
なお、各gmセル23〜27は、一対の差動入力端子IN+,IN−と、一対の差動出力端子OUT+,OUT−と、を有する全差動のトランスコンダクタンスアンプである。各gmセル23〜27は、差動入力端子IN+,IN−に供給された差動入力電圧に応じた電流を差動出力端子OUT+,OUT−から出力する。また、図示していないが、各gmセル23〜27は、電源電圧端子VDDと、接地電圧端子VSSと、バイアス電圧端子Biasと、設定電圧端子VCMと、制御電圧端子VGと、を有する。なお、便宜上、記号「VDD」、「VSS」、「Bias」、「VCM」及び「VG」は、それぞれ端子名を示すと同時に、電圧を示すものとする。
【0018】
まず、図1に示す回路の回路構成について説明する。gmセル23の反転出力端子OUT−は、gmセル24の非反転入力端子IN+に接続される。gmセル23の非反転出力端子OUT+は、gmセル24の反転入力端子IN−に接続される。
【0019】
gmセル24の反転出力端子OUT−は、当該gmセル24の非反転入力端子IN+と、gmセル25の反転出力端子OUT−と、gmセル26の反転入力端子IN−と、容量31の一端と、gmセル27の非反転入力端子IN+と、gmセル23の反転入力端子IN−と、に接続される。gmセル24の非反転出力端子OUT+は、当該gmセル24の反転入力端子IN−と、gmセル25の非反転出力端子OUT+と、gmセル26の非反転入力端子IN+と、容量30の一端と、gmセル27の反転入力端子IN−と、gmセル23の非反転入力端子IN+と、に接続される。
【0020】
gmセル26の非反転出力端子OUT+は、容量29の一端と、gmセル25の反転入力端子IN−と、に接続される。gmセル26の反転出力端子OUT−は、容量28の一端と、gmセル25の非反転入力端子IN+と、に接続される。なお、容量28〜31の他端は、接地電圧端子VSSに接続される。gmセル27の反転出力端子OUT−は、一方の外部出力端子に接続されるとともに、gmセル23の非反転入力端子IN+に接続される。gmセル27の非反転出力端子OUT+は、他方の外部出力端子に接続されるとともに、gmセル23の反転入力端子IN−に接続される。
【0021】
次に、gmセル23〜27についてより詳細に説明する。図2はgmセル24〜26の回路図である。また、図3はgmセル23,27の回路図である。図2に示す回路は、差動アンプ部39と、コモンモードフィードバック部(CMFB部)40と、を有する。なお、差動アンプ部39は、差動入力電圧に応じた電流を差動出力端子OUT+,OUT−から出力する回路である。また、CMFB部40は、差動出力端子OUT+,OUT−の平均電圧が設定電圧VCMとなるように制御する回路である。
【0022】
差動アンプ部39は、トランジスタQ1〜Q7を有する。CMFB部40は、トランジスタQ8〜Q15と、抵抗R10と、容量C10と、を有する。なお、図2の例では、トランジスタQ1〜Q4と、トランジスタQ7〜Q13と、はPチャネルMOSトランジスタである。トランジスタQ5,Q6,Q14,Q15は、NチャネルMOSトランジスタである。
【0023】
まず、図2に示す回路の回路構成について説明する。トランジスタQ1において、ソース端子が電源電圧端子VDDに接続され、ドレイン端子がトランジスタQ3のソース端子に接続され、ゲート端子がバイアス電圧端子Biasに接続される。トランジスタQ2において、ソース端子が電源電圧端子VDDに接続され、ドレイン端子がトランジスタQ4のソース端子に接続され、ゲート端子がトランジスタQ1のゲート端子とともにバイアス電圧端子Biasに接続される。
【0024】
トランジスタQ3において、ドレイン端子がトランジスタQ5のドレイン端子に接続され、ゲート端子が非反転入力端子IN+に接続される。トランジスタQ4において、ドレイン端子がトランジスタQ6のドレイン端子に接続され、ゲート端子が反転入力端子IN−に接続される。トランジスタQ5において、ソース端子が接地電圧端子VSSに接続され、ゲート端子がノードPに接続される。トランジスタQ6において、ソース端子が接地電圧端子VSSに接続され、ゲート端子がトランジスタQ5のゲート端子とともにノードPに接続される。
【0025】
トランジスタQ7のソース端子は、トランジスタQ2のドレイン端子とトランジスタQ4のソース端子とを接続する信号線上のノードに接続される。トランジスタQ7のドレイン端子は、トランジスタQ1のドレイン端子とトランジスタQ3のソース端子とを接続する信号線上のノードに接続される。トランジスタQ7のゲート端子は、制御電圧端子VGに接続される。反転出力端子OUT−は、トランジスタQ3のドレイン端子とトランジスタQ5のドレイン端子とを接続する信号線上のノードに接続される。非反転出力端子OUT+は、トランジスタQ4のドレイン端子とトランジスタQ6のドレイン端子とを接続する信号線上のノードに接続される。
【0026】
トランジスタQ8において、ソース端子が電源電圧端子VDDに接続され、ドレイン端子がトランジスタQ11,Q13の各ソース端子に接続され、ゲート端子がバイアス電圧端子Biasに接続される。トランジスタQ9において、ソース端子が電源電圧端子VDDに接続され、ドレイン端子がトランジスタQ10,Q12の各ソース端子に接続され、ゲート端子がトランジスタQ8とともにバイアス電圧端子Biasに接続される。
【0027】
トランジスタQ10,Q11において、各ドレイン端子がノードPに共通接続され、各ゲート端子が設定電圧端子VCMに共通接続される。トランジスタQ12において、ドレイン端子がノードQに接続され、ゲート端子が反転出力端子OUT−に接続される。トランジスタQ13において、ドレイン端子がノードQに共通接続され、ゲート端子が非反転出力端子OUT+に接続される。
【0028】
トランジスタQ14において、ソース端子が接地電圧端子VSSに接続され、ドレイン端子がノードPに接続され、ゲート端子がトランジスタQ15のゲート端子及びノードQに接続される。トランジスタQ15において、ソース端子が接地電圧端子VSSに接続され、ドレイン端子がノードQに接続される。ノードPには、さらに抵抗R10の一端が接続される。抵抗R10の他端は容量C10の一端に接続される。容量C10の他端は接地電圧端子VSSに接続される。
【0029】
図2に示す回路の動作について説明する。トランジスタQ1,Q2は、カレントミラー回路を構成する。トランジスタQ1,Q2の各ドレイン電流は、バイアス電圧Biasによって制御される。つまり、トランジスタQ1,Q2は、差動アンプ部39におけるDC電流源として動作し、トランジスタQ3〜Q7に対してDC電流を供給する。
【0030】
トランジスタQ3のドレイン電流は、外部から供給される差動入力電圧の一方によって制御される。また、トランジスタQ4のドレイン電流は、外部から供給される差動入力電圧の他方によって制御される。つまり、トランジスタQ3,Q4は、外部から供給された差動入力電圧(AC電圧)に基づいて、差動出力端子OUT+,OUT−へ流出又は流入する電流を増幅する。トランジスタQ5,Q6のドレイン電流は、CMFB部40からのフィードバック電圧41によって制御される。つまり、トランジスタQ5,Q6は、差動アンプ部39における負荷部分として動作し、また、差動出力端子OUT+,OUT−のDC電圧を制御する。
【0031】
トランジスタQ8,Q9は、トランジスタQ1,Q2と同様にカレントミラー回路を構成する。トランジスタQ8,Q9の各ドレイン電流は、バイアス電圧Biasによって制御される。つまり、トランジスタQ8,Q9は、CMFB部40におけるDC電流源として動作し、トランジスタQ10〜Q15に対してDC電流を供給する。
【0032】
トランジスタQ10,Q11の各ドレイン電流は、設定電圧VCMによって制御される。つまり、トランジスタQ10,Q11は、設定電圧VCMを電流に変換する。トランジスタQ12のドレイン電流は、反転出力端子OUT−の電圧によって制御される。また、トランジスタQ13のドレイン電流は、非反転出力端子OUT+の電圧によって制御される。つまり、トランジスタQ13,Q12は、それぞれ差動出力端子OUT+,OUT−の電圧を電流に変換する。
【0033】
なお、トランジスタQ14,Q15は、カレントミラー回路を構成する。トランジスタQ14,Q15の各ドレイン電流は、ノードQの電圧によって制御される。つまり、トランジスタQ10,Q11の各ドレイン電流は、トランジスタQ14によって制御される。同様に、トランジスタQ12,Q13の各ドレイン電流は、トランジスタQ15によって制御される。
【0034】
そして、設定電圧VCMに基づいて変換された電流と、差動出力端子OUT+,OUT−の電圧に基づいて変換された電流と、の差分に応じたフィードバック電圧41が、トランジスタQ5,Q6の各ゲート端子に印加される。ここで、トランジスタQ5,Q6の各ドレイン電流は、設定電圧VCMと、差動出力端子OUT+,OUT−の平均電圧と、が等しくなるように制御される。なお、抵抗R10及び容量C10は、フィードバックループの発振防止のために設けられている。このような回路構成により、gmセルは出力信号の平均電圧を一定に保つことができる。そのため、gmセルの多段接続が可能となる。
【0035】
なお、差動アンプ部39は、制御電圧VGによってトランジスタQ7のオン抵抗を制御することにより、負帰還量を調整する。つまり、差動アンプ部39は、制御電圧VGによってトランスコンダクタンスgmを調整することが可能である。
【0036】
次に、図3に示す回路(gmセル23,27)について説明する。図3に示す回路は、図2(gmセル24〜26)に示す回路と比較して、差動アンプ部39と回路構成の異なる差動アンプ部39bを有する。また、図3に示す回路は、図2に示す回路と比較して、CMFB部40を有さない。なお、gmセル23,27は、gmセル25からのフィードバック電圧41をフィードバック電圧端子FBに入力することにより、コモンモードフィードバック制御を行う。その他の回路構成及び動作については、図2に示す回路と同様であるため、説明を省略する。なお、差動アンプ部39bは、トランジスタQ7を有さない回路構成であってもよい。その場合、トランジスタQ1のドレイン端子とトランジスタQ3のソース端子とを接続する信号線上のノードと、トランジスタQ2のドレイン端子とトランジスタQ4のソース端子とを接続する信号線上のノードと、が直接接続される。
【0037】
次に、図1に示す電圧制御発振回路の動作について説明する。発振アンプ部32において、gmセル23は発振信号を増幅する発振アンプとして動作する。LC共振部33において、gmセル25,26及び容量28,29はジャイレータ変換部を構成する。また、gmセル24は、ジャイレータ変換部に向けて電流を生成する電流生成部を構成する。ここで、gmセル24〜26は、容量28,29をジャイレータ変換して等価インダクタンスを生成する。この等価インダクタンスは、容量30,31とともに、並列共振回路を構成する。それにより、LC共振部33は、発振アンプ部32から出力された発振信号の発振周波数を制御する。また、負性抵抗部34において、gmセル27は負性抵抗を構成する。なお、gmセル23〜27のトランスコンダクタンスgmは、gm=(出力差動電流/入力差動電圧)と表すことができる。
【0038】
電流生成部として動作するgmセル24について、図4を用いて説明する。図4の例では、gmセル24の非反転入力端子IN+には、電圧V2が印加されている。gmセル24の反転入力端子IN−には、電圧V1が印加される。このとき、gmセル24の非反転入力端子IN+から反転出力端子OUT−に向けて電流Ioが流れる。また、gmセル24の非反転出力端子OUT+から反転入力端子IN−に向けて電流Ioが流れる。この電流Ioは、以下のように表すことができる。
Io=gm×(V2−V1)・・・(1)
【0039】
したがって、gmセル24の入力側から見たインピーダンスZ24は、以下のように表すことができる。
Z24=(V2−V1)/Io=1/gm・・・(2)
【0040】
つまり、gmセル24は、抵抗が接地されている場合と等価である。このように、gmセル24は、ジャイレータ変換部に向けた電流を生成するとともに、LC共振部33のインピーダンスを決定する。
【0041】
次にジャイレータ変換部について、図5を用いて説明する。図5は、ジャイレータ変換部をシングルエンド構成に置き換えた場合の例である。図5に示す回路は、gmセル25a,26a及び容量28aを有する。なお、gmセル25aはジャイレータ変換部におけるgmセル25に対応し、gmセル26aはgmセル26に対応し、容量28aは容量28,29に対応する。また、容量28aの容量値はC1である。
【0042】
gmセル25aとgmセル26aとがループ状に接続される。なお、gmセル26aの出力端子とgmセル25aの入力端子とを接続する信号線上のノードをノードNと称す。gmセル25aの出力端子とgmセル26aの入力端子とを接続する信号線上のノードをノードMと称す。ノードNと接地電圧端子VSSとの間に容量28aが設けられる。ノードMには、電圧Viが印加されるとともに、電流Iiが流れる。ノードNには、電圧Voが印加されるとともに、電流Ioが流れる。トランスコンダクタンスgmは、gm=(出力電流/入力電圧)で表されるため、図5において以下の式が成り立つ。
Io=gm×Vi・・・(3)
Ii=gm×Vo・・・(4)
Vo=Io/(jωC1)・・・(5)
【0043】
式(4)のVoに式(5)のVoを代入することにより、以下の式が成り立つ。
Ii=gm×Io/(jωC1)・・・(6)
【0044】
式(6)のIoに式(3)のIoを代入することにより、以下の式が成り立つ。
Ii=gm×Vi/(jωC1)・・・(7)
【0045】
式(7)をさらに変形すると、以下の式が成り立つ。
Vi/Ii=jωC1/gm・・・(8)
【0046】
L=C1/gmとおくと、以下の式が成り立つ。
Vi/Ii=jωL・・・(9)
【0047】
式(8)及び式(9)を見てもわかるように、容量値C1がインダクタンス値Lに変換される。これは、全差動構成のジャイレータ変換部の場合でも同様である。つまり、容量28,29の各容量値C1は、gmセル24〜26によってインダクタンス値L(図7の35,36)に変換される。それにより、ジャイレータ変換部は、図7の右側に示す回路と等価になる。つまり、LC共振部33は、gmセル24〜26及び容量28,29によるインダクタンス値と、容量30,31の容量値と、によりLC型共振回路を構成し、電圧制御発振回路における発振信号の発振周波数を決定する。
【0048】
次に、負性抵抗部34として動作するgmセル27について、図6を用いて説明する。図6の例では、gmセル27の非反転入力端子IN+には、電圧V2が印加される。gmセル27の反転入力端子IN−には、電圧V1が印加される。このとき、gmセル27の非反転出力端子OUT+から非反転入力端子IN+に向けて電流Ioが流れる。また、gmセル27の反転入力端子IN−から反転出力端子OUT−に向けて電流Ioが流れる。ここで、図6の電流Ioと図5の電流Ioとでは電流方向が異なる。したがって、gmセル27の入力側から見たインピーダンスZ27は、以下のように表すことができる。
Z27=−(V2−V1)/Io=−1/gm・・・(10)
【0049】
つまり、gmセル27は、負の抵抗が接地されている場合と等価である。このように、gmセル27は負性抵抗を構成する。
【0050】
このように、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、gmセル24〜26及び容量28〜31からなるLC共振部33によって発振信号の発振周波数を制御する。つまり、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、スパイラルインダクタンスを備える必要がないため、回路規模の増大を抑制することができる。
【0051】
なお、上述のように、gmセル24〜26のトランスコンダクタンスgmは、外部からの制御電圧VGによって制御可能である。また、容量28〜32にバリキャップを用いた場合、外部からの制御電圧によって容量28〜32の容量値を制御可能である。つまり、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、LC共振部33のインダクタンス値及び容量値を外部から制御することが可能である。言い換えると、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、発振信号の発振周波数を外部から制御することが可能である。
【0052】
なお、容量28,29をジャイレータ変換したインダクタ35,36は、上述のようにL=C1/gmで表すことができる。また、容量28,29の容量値はC1、容量30,31の容量値はC2、インダクタ35,36のインダクタンス値はLである。したがって、発振周波数f0は、以下の式で表すことができる。
f0=1/(2π√(L・C1))=gm/(2π√(C1・C2))・・・(11)
【0053】
このように、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、LC型共振回路としてgmセル及び容量を用いるため容易に設計可能であるとともに、インダクタンス値を決定する要素が限定される。したがって、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、精度の高い発振周波数の発振信号を容易に生成することができる。
【0054】
また、式(11)に示すように、トランスコンダクタンスgmと発振周波数f0とは、線形関係にある。つまり、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、トランスコンダクタンスgmの変化に応じて、発振信号の発振周波数を直線的に変化させることができる。また、トランスコンダクタンスgmは電圧によって制御される。したがって、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、電圧の変化に応じて、発振信号の発振周波数を滑らかに変化させることができる。それにより、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、発振信号の発振周波数をより細かく調整可能である。
【0055】
また、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、全差動構成のgmセルをLC共振部33に用いている。したがって、次の点で有利である。
1.コモンモードノイズに対して強い。
2.信号振幅を大きくすることができる。
3.1.2.の効果によりジッタ(位相雑音)を低減できる。
4.発振信号の偶数時次高調波を低減できる。
【0056】
さらに、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、全差動構成のgmセルを発振アンプ部32及び負性抵抗部34にも用いているため、回路の相対性を高めることができる。
【0057】
実施の形態2
図8に、本発明の実施の形態2にかかる電圧制御発振回路を示す。図8に示す回路は、図1に示す回路と比較して、LC共振部33と回路構成の異なるLC共振部33cを備える。LC共振部33cは、LC共振部33と比較して、容量30,31の代わりに可変容量30c,31cを有する。その他の回路構成は、図1の場合と同様であるため説明を省略する。
【0058】
このような回路構成により、図8に示す回路は、gmセル24〜26及び容量28,29に基づくインダクタンス値と、可変容量30c,31cの容量値と、のいずれも制御可能となる。したがって、図8に示す回路は、さらに広範囲の発振周波数を有する発振信号を生成することが可能である。
【0059】
例えば、電圧変動に応じたインダクタンス値の変動幅を狭くし、電圧変動に応じた容量値の変動幅を広くした場合について説明する。この場合、図8に示す回路は、発振周波数を、可変容量30c,31cによって粗調整し、gmセル24〜26及び容量28,29によって微調整することが可能となる。また、その逆も同様である。
【0060】
以上のように、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、gmセル24〜26及び容量28〜31からなるLC共振部33によって発振信号の発振周波数を制御する。つまり、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、スパイラルインダクタンスを備える必要がないため、回路規模の増大を抑制することができる。また、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、LC型共振回路としてgmセル及び容量を用いているため、インダクタンス値を決定する要素が限定される。したがって、本実施の形態にかかる電圧制御発振回路は、精度の高い発振周波数の発振信号を生成することができる。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
32 発振アンプ部
33,33c LC共振部
34 負性抵抗部
23〜27 gmセル
25a,26a gmセル
28〜31 容量
28a 容量
30c,31c 可変容量
35,36 インダクタ
39,39b 差動アンプ部
40 CMFB部
Q1〜Q15 トランジスタ
C10 容量
R10 抵抗
FB フィードバック電圧端子
VDD 電源電圧端子
VSS 接地電圧端子
Bias バイアス電圧端子
VG 制御電圧端子
VCM 設定電圧端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振信号を増幅する発振アンプ部と、
前記発振信号の発振周波数を制御するLC共振部と、
負性抵抗成分を有する負性抵抗部と、を備え、
前記LC共振部は、
ループ状に接続された第1及び第2のトランスコンダクタンスアンプと、
前記ループ上のノードに一端が接続された第1及び第2の容量と、を有し、
前記第1及び前記第2のトランスコンダクタンスアンプと前記第1の容量とに基づくインダクタンス値と、前記第2の容量の容量値と、に基づいて前記発振周波数を制御する電圧制御発振回路。
【請求項2】
前記第1及び前記第2のトランスコンダクタンスアンプは、
全差動構成であることを特徴とする請求項1に記載の電圧制御発振回路。
【請求項3】
前記第1及び前記第2のトランスコンダクタンスアンプでは、
外部電圧に応じてトランスコンダクタンスが制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電圧制御発振回路。
【請求項4】
前記LC共振部は、
増幅された前記発振信号に応じた電流を、前記ループ上のノードに対して出力する第3のトラスコンダクタンスアンプをさらに備えた請求項1に記載の電圧制御発振回路。
【請求項5】
前記第1〜3のトランスコンダクタンスアンプは、
全差動構成であることを特徴とする請求項4に記載の電圧制御発振回路。
【請求項6】
前記第1〜3のトランスコンダクタンスアンプでは、
外部電圧に応じてトランスコンダクタンスが制御されることを特徴とする請求項4又は5に記載の電圧制御発振回路。
【請求項7】
前記第1の容量は、バリキャップであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電圧制御発振回路。
【請求項8】
前記第2の容量は、バリキャップであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電圧制御発振回路。
【請求項9】
前記第2の容量は、外部電圧に応じて容量値が変化する可変容量であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電圧制御発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−130168(P2011−130168A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286467(P2009−286467)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】