説明

電圧生成回路及びそれを備えた電源回路

【課題】基準電圧の異常を正確に検出可能な電圧生成回路及びそれを備えた電源回路を提供する。
【解決手段】電源回路1は、電圧生成回路2と、レギュレータ3と、電圧検出器4と、起動制御回路5と、2つの論理積回路6、7とを備えている。電圧生成回路2は、基準電圧Vrefをレギュレータ3及び電圧検出器4に出力するためのものであると共に、基準電圧Vrefの正常又は異常に基づいて判定信号Sを論理積回路6、7に出力するためのものである。電圧生成回路2は、基準電圧発生回路8と、基準電圧判定回路9とを備えている。基準電圧判定回路9は、基準電圧発生回路8により出力される基準電圧Vrefが所定の電圧値以上ならば流れる検出電流Iに基づいて、基準電圧Vrefの異常を検出又はあらかじめ検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電圧を生成するための電圧生成回路及びそれを備えた電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一定の電圧を出力するためのレギュレータ等に基準電圧を入力するための基準電圧発生回路(電圧生成回路)及びそれを備えた電源回路が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基準電圧発生回路と、電圧比較回路と、電圧検出回路と、スイッチ回路とを備えた電源回路が開示されている。この電源回路では、基準電圧発生回路から電圧比較回路には基準電圧が入力されると共に、電圧検出回路から電圧比較回路には出力電圧に基づく供給電圧が入力される。そして、電圧比較回路では、基準電圧と供給電圧とが比較され、その結果に基づいてスイッチ回路が制御される。これによりスイッチ回路から出力される出力電圧が一定の電圧値に保たれる。
【0004】
更に、上述した基準電圧発生回路にバンドギャップリファレンス回路(以下、BGR回路という)を適用した電源回路が知られている。例えば、図3に示すような、BGR回路からなる基準電圧発生回路58では、バッテリー電圧Vbatが入力されている定電流源65から流れる定電流I11のうち一部が、カレントミラー回路CM11の抵抗R11、R12を介してトランジスタQ11、Q12に電流I12、I13として流れると共に、残りの電流I14がトランジスタQ13に流れる。
【0005】
この基準電圧発生回路58では、定電流I11が一定の電流値以上ならば電流I12、I13を一定にすることができるので、定電流源65からの定電流I11が一定の電流値以上ならば、基準電圧発生回路58から出力される基準電圧Vrefを一定に保つことができる。尚、安定化回路SCは、電流I12、I13を安定化させるものである。
【特許文献1】特開平7−281769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように基準電圧発生回路58にBGR回路を適用した電源回路では、基準電圧発生回路58に電力を供給するバッテリー等に異常が発生して、バッテリー電圧Vbatが低下し、定電流源65からの定電流I11が所定の電流値よりも小さくなった場合、電流I12、I13が小さくなる。
【0007】
この結果、基準電圧発生回路58から所定の電圧値とは異なる基準電圧Vrefが出力されることになる。このような状況でも、電圧比較回路は、所定の電圧値と異なる基準電圧と供給電圧とを比較してスイッチ回路を制御するので、出力電圧が低下して、電源回路に接続された電子機器等が誤作動するといった問題がある。
【0008】
ここで、この基準電圧Vrefを判定するためのコンパレータ回路を設けることも考えられるが、コンパレータ回路にも当該基準電圧(以下、第1基準電圧)と比較するための基準電圧(以下、第2基準電圧)が必要となる。しかしながら、第2基準電圧を別途生成しても、バッテリーの異常などにより第2基準電圧も同じように変動するので、第2基準電圧を用いて第1基準電圧を比較しても、コンパレータ回路によって第1基準電圧の異常を正確に検出することはできない。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、基準電圧の異常を正確に検出可能な電圧生成回路及びそれを備えた電源回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、所定の電流値以上の電流が流れることによって所定の基準電圧を生成している場合には検出電流を出力する基準電圧発生回路と、前記基準電圧発生回路の検出電流に基づいて前記基準電圧の異常を検出又は異常をあらかじめ検出して判定信号を出力する基準電圧判定回路とを備えたことを特徴とする電圧生成回路である。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、所定の電流値以上の電流が流れることによって所定の基準電圧を生成している場合には検出電流を出力する基準電圧発生回路と、前記基準電圧発生回路の検出電流に基づいて前記基準電圧の異常を検出又は異常をあらかじめ検出して判定信号を出力する基準電圧判定回路とを備えたことを特徴とする電圧生成回路とを有する電圧生成回路と、前記電圧生成回路から基準電圧が入力されるレギュレータと、前記レギュレータを制御するための起動信号を出力する起動制御回路と、前記基準電圧判定回路からの判定信号と前記起動制御回路からの起動信号とに基づいて、前記レギュレータにオン/オフ信号を入力するオン/オフ入力回路とを備えたことを特徴とする電源回路である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基準電圧判定回路が、基準電圧発生回路から出力される検出電流に基づいて基準電圧を判定するので、コンパレータなどを用いて基準電圧を判定する場合に比べて、確実に基準電圧の異常を検出、又は、あらかじめ検出することができる。また、従来、使われていなかった過電流により基準電圧の異常を検出するので電力消費の増大を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明による電源回路の全体構成図を示す。図2は、本発明による電圧生成回路の回路図である。
【0014】
図1に示すように、電源回路1は、電圧生成回路2と、レギュレータ3と、電圧検出器4と、起動制御回路5と、2つの論理積回路6、7とを備えている。
【0015】
電圧生成回路2は、基準電圧発生回路8と、基準電圧判定回路9とを備えている。
【0016】
基準電圧発生回路8は、基準電圧Vrefをレギュレータ3及び電圧検出器4に出力するためのものである。図2に示すように、基準電圧発生回路8は、カレントミラー回路CM1と、検出電流用のトランジスタQと、安定化回路SCとを含むBGR回路からなる。カレントミラー回路CM1は、一対のトランジスタQ、Qと、抵抗R〜Rとを備えている。また、カレントミラー回路CM1及びトランジスタQには、定電流源15から定電流Iが供給されると共に、安定化回路SCには定電流源16から定電流Iが供給される。
【0017】
基準電圧判定回路9は、一対のトランジスタQ、Qを備えたカレントミラー回路CM2と、インバータINとを備え、定電流源17から定電流IがトランジスタQ及びインバータINに供給されている。基準電圧判定回路9は、基準電圧Vrefに異常がないと判定した場合には、「H」レベルの判定信号Sを論理積回路6、7に出力する。
【0018】
また、基準電圧判定回路9は、基準電圧Vrefが異常になると判定した場合、又は、基準電圧Vrefに異常が発生すると判定した場合には、「L」レベルの判定信号Sを論理積回路6、7に出力する。尚、定電流源15〜17には、バッテリー(図示略)からバッテリー電圧Vbatが入力されている。
【0019】
レギュレータ3は、電圧生成回路2の基準電圧発生回路8から入力される基準電圧Vrefと、出力電圧Voutに基づいてフィードバックされる帰還電圧(図示略)とを比較して一定の電圧値を有する出力電圧Voutを出力側に接続された電子機器等に出力するためのものである。また、レギュレータ3には、論理積回路6からオン/オフ信号Sが入力されて、そのオン/オフ信号Sに基づいてオン状態又はオフ状態に制御される。
【0020】
電圧検出器4は、電圧生成回路2の基準電圧発生回路8から入力される基準電圧Vrefと、レギュレータ3から入力される出力電圧Voutに基づく比較電圧Vcとを比較して、その比較した結果に基づいて出力電圧Voutの異常を知らせるための検出電圧Vdを出力するものである。
【0021】
具体的には、比較電圧Vcが基準電圧Vrefよりも高い場合には出力電圧Voutが所定の電圧値よりも高いとして「H」レベルの検出電圧Vdを出力する。また、比較電圧Vcが基準電圧Vrefよりも低い場合には出力電圧Voutが所定の電圧値よりも高いとして「L」レベルの検出電圧Vdを出力する。また、電圧検出器4には、論理積回路7からオン/オフ信号Sが入力されて、そのオン/オフ信号Sに基づいてオン状態又はオフ状態に制御される。
【0022】
起動制御回路5は、レギュレータ3及び電圧検出器4の起動を制御するためのものである。起動制御回路5は、レギュレータ3及び電圧検出器4をオン状態にする際には、論理積回路6に「H」レベルの起動信号Sを送ると共に、論理積回路7にも「H」レベルの起動信号Sを送る。また、レギュレータ3及び電圧検出器4をオフ状態にする際には、起動制御回路5は、論理積回路6に「L」レベルの起動信号Sを送ると共に、論理積回路7にも「L」レベルの起動信号Sを送る。
【0023】
論理積回路6(請求項2記載のオン/オフ入力回路に相当)は、基準電圧判定回路9からの判定信号S及び起動制御回路5からの起動信号Sに基づいて、レギュレータ3にオン/オフ信号Sを入力するためのものである。
【0024】
具体的には、論理積回路6に「H」レベルの判定信号Sと「H」レベルの起動信号Sが入力されると、「H」レベルのオン信号Sが論理積回路6からレギュレータ3に入力される。また、論理積回路6に入力された判定信号S及び起動信号Sの少なくともいずれか一方が「L」レベルの場合には、「L」レベルのオフ信号Sが論理積回路6からレギュレータ3に入力される。
【0025】
論理積回路7は、基準電圧判定回路9からの判定信号S及び起動制御回路5からの起動信号Sに基づいて、電圧検出器4にオン/オフ信号Sを入力するためのものである。具体的には、論理積回路7に「H」レベルの判定信号Sと「H」レベルの起動信号Sが入力されると、「H」レベルのオン信号Sが論理積回路7から電圧検出器4に入力される。また、論理積回路7に入力された判定信号S及び起動信号Sの少なくともいずれか一方が「L」レベルの場合には、「L」レベルのオフ信号Sが論理積回路7から電圧検出器4に入力される。
【0026】
次に、電圧生成回路2の動作を中心に電源回路1の動作説明を行う。尚、起動制御回路5から論理積回路6、7には、共に「H」レベル(即ち、オン信号)が入力されているものとする。
【0027】
この電源回路1において、定電流源15からカレントミラー回路CM1に定電流Iが供給されると、電流I、Iが抵抗R、Rを介してトランジスタQ、Qに流れる。尚、安定化回路SCによって電流I、Iの電流値は安定化されている。
【0028】
そして、定電流源15から所定の電流値以上の電流Iが基準電圧発生回路8に流れている場合、即ち「I>I+Iの最大値」の場合、電流I、Iはその最大値を維持しつつ流れる。これにより、所定の電圧値を有する基準電圧Vrefが一定に保ちつつ出力される。尚、電流I、Iの電流値の最大値は、抵抗R〜Rの抵抗値及びトランジスタQ、Qの特性及びボルツマン定数、温度等によって決定される固定値である。
【0029】
また、「I>I+Iの最大値」の場合、定電流Iの一部が検出電流I(=I−I−I)としてトランジスタQのコレクタへと流れる。更に、検出電流Iは、トランジスタQを介してトランジスタQ、Qへと流れる。
【0030】
そして、検出電流Iの一部は、電流IとしてトランジスタQ、Qのベースへと流れて、トランジスタQ、Qをオン状態にする。これによって、検出電流Iの一部は、電流IとしてトランジスタQのコレクタに流れるとともに、定電流源17から供給される定電流Iの一部又は全部がトランジスタQを流れる。尚、定電流Iの電流値は「I<Iの最大値」となるように設定されている。
【0031】
ここで、バッテリーが、正常な電圧値のバッテリー電圧Vbatを出力して、定電流Iの電流値が充分に大きい状態では、これに伴って、充分に大きい検出電流Iが流れるので、トランジスタQのコレクタに流れる電流Iも「I<I」を満たす電流値を有する。
【0032】
従って、トランジスタQとカレントミラー回路CM2を構成するトランジスタQのコレクタに定電流Iよりも大きい電流Iと同じ電流値の電流を流そうとするので、インバータINに「L」レベルの信号が入力される。この結果、バッテリー電圧Vbatが正常に出力され、基準電圧Vrefが正常に出力されている(以下、正常状態という)と判定されて、インバータINから「H」レベルの判定信号Sが出力される。
【0033】
一方、バッテリーから出力されるバッテリー電圧Vbatの電圧値の低下などにより、定電流Iの電流値が低下すると、検出電流Iの電流値が小さくなるか、又は、検出電流Iが流れなくなる。この状態では、トランジスタQに流れる電流Iの電流値が、「I>I」となる。
【0034】
これにより、トランジスタQとカレントミラー回路CM2を構成するトランジスタQのコレクタに定電流Iよりも小さい電流Iと同じ電流値の電流を流そうとするので、インバータINに「H」レベルの信号が入力される。この結果、バッテリー電圧Vbatの低下等により、基準電圧Vrefの電圧値が異常又はまもなく低下して異常になる(以下、異常状態)と判定されて、インバータINから「L」レベルの判定信号が出力される。
【0035】
尚、電流Iの電流値は、適宜変更可能であり、上述の内容からわかるように、電流Iの電流値を大きくすれば、基準電圧Vrefの異常をあらかじめより早く検出することができ、電流Iの電流値を「0」に近づければ、異常が検出されてから基準電圧Vrefの異常が発生するまでの時間が短くなることになる。
【0036】
この結果、正常状態では、論理積回路6、7には、起動制御回路5及び基準電圧判定回路9から共に「H」レベルの起動信号S、S及び判定信号Sが入力されるので、論理積回路6、7は、レギュレータ3及び電圧検出器4に「H」レベルのオン信号S、Sを入力する。この結果、レギュレータ3及び電圧検出器4がオン状態になる。
【0037】
一方、異常状態では、論理積回路6、7には、起動制御回路5から「H」レベルの起動信号S、Sが入力されていても、基準電圧判定回路9から「L」レベルの判定信号Sが入力されるので、論理積回路6、7は、レギュレータ3及び電圧検出器4に「L」レベルのオフ信号S、Sを入力する。この結果、レギュレータ3及び電圧検出器4がオフ状態になる。
【0038】
上述したように、本実施形態による電源回路1の電圧生成回路2は、基準電圧発生回路8により出力される基準電圧Vrefの異常又は異常が発生することを検出電流Iに基づく電流Iにより検出する基準電圧判定回路9を備えているので、基準電圧Vrefの異常又は異常が発生することを確実に検出することができる。
【0039】
この結果、基準電圧Vrefの異常に伴うレギュレータ3から出力される出力電圧Voutの異常を防ぎ、レギュレータ3に接続されている電子機器の誤動作を防ぐことができる。また、従来、使用されていない検出電流Iを用いて基準電圧Vrefの異常を検出するので、電力の増大を抑制することができる。
【0040】
以上、上記実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲内で変更して実施することができる。即ち、本明細書の記載は、一例であり、本発明を何ら限定的な意味に解釈させるものではない。以下、上記実施形態を一部変更した変更形態について説明する。
【0041】
上述の実施形態では、電流Iが電流Iよりも小さい場合に、基準電圧Vrefに異常が発生すると判定して「L」レベルの判定信号Sを出力するように構成したが、電流Iが「0」になり、基準電圧Vrefが既に異常になった際にのみ、異常を知らせるための「L」レベルの判定信号Sを出力するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による電源回路の全体構成図を示す。
【図2】本発明による電圧生成回路の回路図である。
【図3】従来の基準電圧発生回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0043】
1 電源回路
2 電圧生成回路
3 レギュレータ
4 電圧検出器
5 起動制御回路
6、7 論理積回路
8 基準電圧発生回路
9 基準電圧判定回路
15〜17 定電流源
CM1、CM2 カレントミラー回路
、I、I 定電流
、I、I、I 電流
検出電流
IN インバータ
〜Q トランジスタ
〜R 抵抗
判定信号
、S オン/オフ信号
、S 起動信号
SC 安定化回路
Vbat バッテリー電圧
Vc 比較電圧
Vd 検出電圧
Vout 出力電圧
Vref 基準電圧




【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電流値以上の電流が流れることによって所定の基準電圧を生成している場合には検出電流を出力する基準電圧発生回路と、
前記基準電圧発生回路の検出電流に基づいて前記基準電圧の異常を検出又は異常をあらかじめ検出して判定信号を出力する基準電圧判定回路とを備えたことを特徴とする電圧生成回路。
【請求項2】
所定の電流値以上の電流が流れることによって所定の基準電圧を生成している場合には検出電流を出力する基準電圧発生回路と、前記基準電圧発生回路の検出電流に基づいて前記基準電圧の異常を検出又は異常をあらかじめ検出して判定信号を出力する基準電圧判定回路とを備えたことを特徴とする電圧生成回路とを有する電圧生成回路と、
前記電圧生成回路から基準電圧が入力されるレギュレータと、
前記レギュレータを制御するための起動信号を出力する起動制御回路と、
前記基準電圧判定回路からの判定信号と前記起動制御回路からの起動信号とに基づいて、前記レギュレータにオン/オフ信号を入力するオン/オフ入力回路とを備えたことを特徴とする電源回路。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−334761(P2007−334761A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167824(P2006−167824)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】