説明

電子内視鏡システム

【課題】 通常画像、蛍光画像の動画と静止画とを同時に表示できる電子内視鏡システムを提供すること。
【解決手段】 フリーズ信号Lowの時、前段信号処理回路57は、通常画像信号と蛍光画像信号とを交互に第1、第2画像メモリ58a,58bに書き込み、書込中でない画像メモリから画像信号を読み出して後段信号処理回路59に送り、第3画像メモリ58cに対しては読み書きを実行せず、第4画像メモリ58dから画像信号を読み出して後段信号処理回路59へ送る。後段信号処理回路59は、第1,第2画像メモリから交互に出力される通常画像信号と蛍光画像信号とをモニタ60に送って動画を表示させ、第4画像メモリから出力される通常画像信号と蛍光画像信号とをモニタに送って静止画を表示させる。フリーズ信号Highの時は、第1画像メモリを静止画用、第3,第4画像メモリを動画表示用に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光により照明された体腔内を撮影した通常画像と、体腔内の生体組織に励起光を照射することにより発生した自家蛍光を撮影した蛍光画像とをモニター等の表示装置に表示させて観察可能にする電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子内視鏡システムは、例えば特許文献1、2に記載されている。特許文献1に開示されるシステムは、蛍光画像を撮影する第1の固体撮像素子と、照明光下でRGBのカラー画像を面順次方式で撮影する第2の固体撮像素子とを備え、それぞれの素子から出力される画像信号を、蛍光画像用ビデオ回路、及び通常画像用ビデオ回路により処理し、画面合成回路により合成してモニタ上に表示させる。表示画面切換スイッチの操作に応じて、蛍光画像と通常画像の一方又は両方がモニタに表示される(段落0028,0029)。
【0003】
また、特許文献2の図16に開示されるシステムには、通常観察用の照明光を発する第1ランプ124と、励起光を発する第2ランプ125とが備えられ、可動ミラー128の位置を変更することにより、いずれかの光が選択的にライトガイド133に供給されるようになっている。CCD137により撮影された画像信号は、第1メモリ141と第2メモリ142とに格納され、表示位置セレクト回路144を介してハイビジョンモニタ115に表示される。2画面表示スイッチがONされると、特許文献2の図4に示すようにハイビジョンディスプレイ115にノーマル像と蛍光像とが同時に表示される (段落0046)。
【特許文献1】特開平9−066023号公報 段落0028,0029,図1
【特許文献2】特開2003−33324号公報 段落0046,図4、図16
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の各文献に記載されたシステムでは、通常画像と蛍光画像とを同時に動画で表示させている状態で一方の画像を静止画に切り換えると、静止画で表示される種類の画像は動画では見られなくなる。すなわち、通常画像の静止画を表示する場合には蛍光画像の動画が表示され、蛍光画像の静止画を表示する場合には通常画像の動画が表示されるのみである。したがって、従来の蛍光内視鏡システムでは、通常画像の静止画を観察する際に、通常画像の動画で現状を確認したり、蛍光画像の静止画を観察する際に蛍光画像の動画を見ることはできないという問題もある。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、通常画像、蛍光画像の動画と静止画とを同時に表示することができる電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様にかかる電子内視鏡システムは、体腔内に挿入される挿入部と、挿入部を通して照明光を挿入部先端に導くライトガイドと、照明された体腔内の画像を撮影する撮像素子とを有する電子内視鏡と、体腔内を観察するための可視光を発する可視光源と、体腔壁の生体組織を励起して自家蛍光を発光させるための励起光を発する励起用光源とを備え、可視光と励起光とを選択的にライトガイドに入射させる光源装置と、体腔内が可視光により照明されている期間に撮像素子から出力される信号により通常画像信号を生成し、体腔壁が励起光により照射されている期間に撮像素子から出力される信号により蛍光画像信号を生成する画像信号生成手段と、画像信号生成手段から出力される通常画像信号、蛍光画像信号に基づいて単一の画面に複数の画像を同時に表示可能な表示手段と、操作者の操作により表示手段への静止画の表示を指示するフリーズスイッチと、通常画像信号に基づく通常画像と、蛍光画像信号に基づく蛍光画像との少なくとも1つを動画で表示し、フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示された場合には、表示されている動画と同一種類の静止画を当該動画と共に表示手段に表示させる表示制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
表示制御手段は、通常画像信号に基づく通常画像と、蛍光画像信号に基づく蛍光画像との動画を表示し、フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示された場合には、通常画像と蛍光画像との静止画を当該動画と共に表示手段に表示させることが望ましい。その場合、画面の上下左右のいずれかに二分した一方に、通常画像と蛍光画像との動画を並列して表示させ、フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示された場合には、通常画像と蛍光画像との静止画を二分した他方に並列して表示させることができる。
【0008】
また、表示制御手段は、動画と静止画とを同一のサイズで表示することが望ましい。さらに、表示制御手段は、フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示される毎に、表示されている静止画を直前の時点の画像に更新することが望ましい。
【0009】
本発明の第2の態様にかかる電子内視鏡システムは、体腔内に挿入される挿入部と、挿入部を通して照明光を挿入部先端に導くライトガイドと、照明された体腔内の画像を撮影する撮像素子とを有する電子内視鏡と、体腔内を観察するための可視光を発する可視光源と、体腔壁の生体組織を励起して自家蛍光を発光させるための励起光を発する励起用光源とを備え、可視光と励起光とを選択的にライトガイドに入射させる光源装置と、体腔内が可視光により照明されている期間に撮像素子から出力される信号により通常画像信号を生成し、体腔壁が励起光により照射されている期間に撮像素子から出力される信号により蛍光画像信号を生成し、通常画像信号と蛍光画像信号とを演算することにより疑似カラー画像信号を生成する画像信号生成手段と、画像信号生成手段から出力される通常画像信号、蛍光画像信号、疑似カラー画像信号に基づいて単一の画面に複数の画像を同時に表示可能な表示手段と、操作者の操作により表示手段への静止画の表示を指示するフリーズスイッチと、通常画像信号に基づく通常画像と、蛍光画像信号に基づく蛍光画像と、疑似カラー画像信号に基づく疑似カラー画像との少なくとも1つを動画で表示し、フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示された場合には、表示されている動画と同一種類の静止画を当該動画と共に表示手段に表示させる表示制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
表示制御手段は、通常画像、蛍光画像、疑似カラー画像の3画像の動画を表示し、フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示された場合には、3画像の静止画を動画と同時に表示させることが望ましい。この場合、フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示されていない場合には、画面を上下左右で四等分したうちの3領域を親画面領域として3画像の動画を表示させ、フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示された場合には、3つの親画面領域に3画像の静止画を表示させると共に、残りの1つの領域をさらに四等分したうちの3領域を子画面領域として、3画像の動画を静止画と同一の配列で表示させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、表示手段の単一画面に通常画像及び蛍光画像の少なくとも一方の動画と静止画とを同時に表示することができるため、表示された同一種類の画像の動画と静止画とを見比べつつ観察することにより、病変部を迅速に特定することができる。このため、内視鏡検査の時間を短縮し、被験者の負担を軽減することができる。また、動画と静止画とを同一サイズで表示する場合には、例えば静止画内で観察される患部が動画内のどのあたりに位置するかを容易に把握でき、検査時間をさらに短縮することができる。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、上記第1の態様による効果に加え、疑似カラー画像の動画と静止画とを同時に表示可能となるため、病変部の観察、診断が容易になる。特に、通常画像、蛍光画像に加えて疑似カラー画像を同時に表示するようにすれば、これらの画像を見比べることにより、診断が格段に容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかる電子内視鏡システムの実施例を2例、図面に基づいて説明する。実施例1の電子内視鏡システムは、可視光により照明された体腔内を撮影した通常画像と、体腔内の生体組織に励起光を照射することにより発生した自家蛍光を撮影した蛍光画像とをモニター等の表示装置に表示させて観察するための上記第1の態様に対応するシステムであり、実施例2のシステムは、これに加えて通常画像信号と蛍光画像信号とを演算して求められる疑似カラー画像をも表示させることができる上記第2の態様に対応するシステムである。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1にかかる電子内視鏡システムの外観図、図2は、その内部構成を示すブロック図である。図1に示されるように、この電子内視鏡システムは、蛍光観察内視鏡10、光源装置20及びモニタ60を備えている。
【0015】
蛍光観察内視鏡10は、通常の電子内視鏡に蛍光観察用の改変を加えたものであり、体腔内に挿入されるために細長く形成され、先端に湾曲可能な湾曲部を備えた挿入部10a、挿入部10aの湾曲部を操作するためのアングルノブ等を有する操作部10b、操作部10bと光源装置20とを接続するためのライトガイド可撓管10c、及び、このライトガイド可撓管10cの基端に設けられたコネクタ10dを備えている。
【0016】
光源装置20は、蛍光観察内視鏡10に対して照明光及び励起光を供給すると共に、後に詳述するように、蛍光撮影内視鏡10により撮影された信号により画像信号を生成する画像信号生成手段としての機能を有している。光源装置20の前面には、励起光に用いるレーザーが不用意に発しないよう安全対策用に設けられたキースイッチ22と、光源装置20の主電源をオン・オフするスイッチを含む各種の操作スイッチが配列したスイッチパネル23とが設けられている。
【0017】
以下、図2にしたがって実施例1の蛍光観察内視鏡10、及び光源装置20の詳細な構成を順に説明する。蛍光観察内視鏡10の挿入部10aの先端面には、配光レンズ11及び対物レンズ12が設けられている。そして、この挿入部10aの先端内部には、対物レンズ12によって形成された被写体の像を撮影するCCDカラーイメージセンサ等のカラー画像を撮影可能な撮像素子13、対物レンズ12から射出されて撮像素子13に戻る光から後述する蛍光励起用のレーザー光に相当する波長成分を除去するための励起光カットフィルター14、撮像素子13から出力された画像信号を増幅するケーブルドライバ15が組み込まれている。
【0018】
励起光カットフィルター14は、励起光を遮断し、励起光より長い波長の光を透過させる特性を有しており、これにより、蛍光撮影時に撮像素子13に励起光が入射するのを防ぎ、自家蛍光のみの撮影が可能となる。なお、励起光には、生体を励起して自家蛍光を発生させる近紫外の波長域の光が選択され、励起光カットフィルター14により励起光成分がカットされても、通常のカラー画像を撮影する際の青成分の撮像には支障がない。
【0019】
ケーブルドライバ15によって駆動された画像信号を伝送するための信号ケーブル18は、挿入部10a,操作部10b及びライトガイド可撓管10c内を引き通されて、蛍光観察内視鏡10に接続された光源装置20の後述の回路に接続されている。
【0020】
この信号ケーブル18と並行して、挿入部10a、操作部10b及びライトガイド可撓管10c内には、複数の光ファイバを束ねて構成されるライトガイド16が引き通されている。このライトガイド16の先端は、挿入部10aの先端部内において配光レンズ11に対向し、その基端は、光源装置20内に挿入された状態で固定されている。
【0021】
光源装置20は、蛍光観察内視鏡10のライトガイド16の基端の端面に体腔内を観察するための白色光と、体腔壁の生体組織を励起して自家蛍光を発光させるための励起光とを選択的に導入すると共に、蛍光観察内視鏡10のケーブルドライバ15から受信した画像信号を処理して映像信号を生成し、モニタ60へ出力する。
【0022】
光源装置20の光学系は、ほぼ平行な可視光(白色光)を発する白色光源(放電管ランプ)30と、白色光源30から発した白色光の光束径を調整する調光用絞り31と、調光用絞り31を透過した白色光を集光させてライトガイド16の基端の端面に入射させる集光レンズ32とを備えると共に、励起光を発する励起用光源(レーザー)33と、この励起用光源33から発した励起光を導く光導波路(シングルファイバー)34と、この光導波路34から発した発散光である励起光を平行光にするコリメートレンズ35と、白色光の光路と励起光の光路とを合成するダイクロイックミラー36とを備えている。
【0023】
調光用絞り31は、絞り用モータ31aにより駆動され、白色光の光量を調整する機能を持つ。白色光源30からライトガイド16までの光路は直線的であり、この光路に対して垂直に交差する励起光の光路を、光路合成素子であるダイクロイックミラー36により合成している。ダイクロイックミラー36は、可視光を透過させ、近紫外の波長域の光を反射させ、これら透過した白色光と反射した励起光としての近紫外光とをライトガイド16の基端の端面へ向かう単一の光路に導く。
【0024】
白色光源30とダイクロイックミラー36との間には、白色光を断続的にオン/オフ(透過/遮断)するためのロータリーシャッター37が配置されている。ロータリーシャッター37には、図3に平面形状を示すように、中心角約180°の扇形の窓37aが形成されている。窓37aのサイズは、白色光の径より大きく設定されており、シャッター用モータ38を駆動してロータリーシャッター37を回転させることにより、白色光が断続的にオン/オフされ白色光が断続的に透過する。
【0025】
光源装置20には、白色光源30に電流を供給するランプ用電源51、励起用光源33を駆動してオン/オフするレーザードライバ52、上記の絞り用モータ31aを駆動する第1モータドライバ53、シャッター用モータ38を駆動する第2モータドライバ54、撮像素子13を駆動するCCDドライバ56が備えられている。また、画像信号の処理系として、ケーブルドライバ15から受信した画像信号を処理する前段信号処理回路57、この前段信号処理回路57で処理され出力されたデジタルの画像信号を一時的に記憶する第1〜第4画像メモリ58a〜58d、これらの画像メモリから読み出されたデジタルの画像信号をモニタに表示するための規格化映像信号に変換して出力する後段信号処理回路59を備えると共に、これら全体を制御するシステムコントローラ70及びタイミングコントローラ71を備えている。
【0026】
システムコントローラ70には、蛍光観察内視鏡10の操作部10bに設けられたフリーズスイッチ73が接続されると共に、スイッチパネル23に配置された各種スイッチが電気的に接続されており、これらの各スイッチの設定に基づき、ランプ用電源51、レーザードライバ52を制御して白色光、励起光を連続的に発光させ、あるいは停止すると共に、モニタ60上の表示を切り換える。なお、フリーズスイッチ73は、操作者に押されるたびにHighとLowの信号を反転してシステムコントローラ70に出力する。
【0027】
第1、第2画像メモリ58a,58bは、通常画像及び蛍光画像表示用の第1メモリセット、第3,第4画像メモリ58c,58dは通常画像及び蛍光画像表示用の第2メモリセットをそれぞれ構成している。これらのメモリセットは、フリーズスイッチ73の操作により、フリーズ信号がLowの時には第1のメモリセットが動画用、第2のメモリセットが静止画用となり、フリーズ信号がHighの時には第1のメモリセットが静止画用、第2のメモリセットが動画用となる。画像メモリ58a〜58dは、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)であり、書き込みと読み出しとを同時に行うことができないため、連続したデータの読み出しを可能にするため、動画用と静止画用について2個づつのペアで2組設けられている。
【0028】
また、これらの画像メモリの後段には、第1、第2画像信号選択スイッチ80,81が接続されている。第1画像信号選択スイッチ80は、第1,第2画像メモリ58a,58bの出力を選択して後段信号処理回路59に送り、第2画像信号選択スイッチ81は、第3,第4画像メモリ58c,58dの出力を選択して後段信号処理回路59に送る。
【0029】
タイミングコントローラ71は、システムコントローラ70からの指令に基づいて、レーザードライバ52を制御して励起光を所定のタイミングで断続的にオン/オフさせると共に、シャッター用モータ38を駆動する第2モータドライバ54を制御して白色光を所定のタイミングで断続的にオン/オフさせる。また、タイミングコントローラ71は、CCDドライバ56を介して撮像素子13の撮像タイミングを制御し、これと同期して各画像メモリ58a〜58dに対するデータの書き込み、読み出しを制御(アドレス・データ制御)すると共に、画像信号選択スイッチ80,81を切り換え、さらに、前段信号処理回路57、後段信号処理回路59に対して画像信号の処理タイミングを指示する。
【0030】
実施例1の構成では、前段信号処理回路57、画像メモリ58a〜58dが通常画像信号と蛍光画像信号とを生成する画像信号生成手段としての機能を有しており、システムコントローラ70、タイミングコントローラ71と後段信号処理回路59がフリーズスイッチの操作により通常画像と蛍光画像との動画と静止画とを切り換えて表示させる表示制御手段としての機能、モニタ60が単一画面に複数の画面を同時に表示可能な表示手段としての機能を有している。
【0031】
図4は、モニタ60の画面上における画像の配置を示す。実施例1では、単一の画面内を上下左右に四等分し、同一サイズの領域A,B,C,Dを確保している。そして、図5に示すように、上半分の領域A,Bを動画の表示に利用し、下半分の領域C,Dを静止画の表示に利用する。また、A,Cを蛍光画像、B,Dを通常画像の表示用に用いており、各画像の動画と静止画との対応関係を容易に確認することができる。なお、領域の利用は図5の例に限られず、蛍光画像を右側、通常画像を左側としてもよいし、左右で動画と静止画とを分けてもよい。
【0032】
次に、上記のように構成された実施例1の電子内視鏡システムの作用を図6のフローチャート及び図7及び図8のタイミングチャートに基づいて説明する。
【0033】
電源がオンされて処理が開始すると、システムコントローラ70は、ランプ用電源51を制御して白色光源30を連続的に発光させる。タイミングコントローラ71は、第2モータドライバ54を制御してシャッター用モータ38を回転させると共に、レーザードライバ52を制御してロータリーシャッター37の窓37aが光路中に位置する期間(白色光がライトガイドに入射する期間)は励起用光源33を消灯させ、ロータリーシャッター37の遮蔽部が光路中に位置する期間(白色光がライトガイドに入射しない期間)は励起用光源33を発光させる。これにより、対象物は白色光と励起光とで交互に照射される。蛍光観察内視鏡10の先端に設けられた撮像素子13は、白色光により照明された体腔内の通常画像と、励起光により励起された体腔壁から発する蛍光画像とを交互に撮影する。撮像素子13から出力された画像信号は、ケーブルドライバ15及び信号ケーブル18を介して前段信号処理回路57に入力される。
【0034】
図7は、白色光、励起光の照射タイミングと、撮像素子から画像信号が出力されるタイミングとを示すチャートである。図7に示されるように、フレーム信号の半分の周期でフィールド信号が切り替わり、フィールド信号がHighの時に白色光が照射されて撮像素子13は通常画像を撮像して通常画像信号WLを出力し、フィールド信号がLowの時に励起光が照射されて撮像素子13は蛍光画像を撮像して蛍光画像信号FLを出力する。
【0035】
そして、システムコントローラ70は、フリーズ信号のレベルを検知することによりフリーズスイッチ73の状態を検知する(S001)。フリーズ信号がLowの場合には、S002, S003、フリーズ信号がHighの場合にはS005,S006の処理が実行される。これらの処理は、S004で電源がオフしたと判断されるまで1フレーム毎に繰り返し実行される。これらの各ステップの処理内容を図8のタイミングチャートと共に説明する。図8のフリーズ信号がLowからHighに立ち上がる時点より手前(図中左側)の3フレームではS002, S003、その後の3フレームではS005,S006の処理が実行される。
【0036】
フリーズ信号がLowの場合(S001, Low)、前段信号処理回路57は、図8に示すように、タイミングコントローラ71からの信号に基づいて通常画像信号と蛍光画像信号とをフレーム単位で交互に第1、第2画像メモリ58a,58bに書き込むと共に、書き込みに用いられていない方の画像メモリから画像信号を読み出して後段信号処理回路59に送る。例えば、図8の最初のフレーム(フレーム信号High)の間に出力される通常画像信号WL1と蛍光画像信号FL1とは、順次第1画像メモリ58aに書き込まれる。このとき、タイミングコントローラ71は、第1画像信号選択スイッチ80を第2画像メモリ58b側に接続し、直前のフレームで第2画像メモリ58bに書き込まれた通常画像信号WL0と蛍光画像信号FL0とを後段信号処理回路59へ出力する。次のフレーム(フレーム信号Low)では、上記の書き込みと読み出しが入れ替わると共に、第1画像信号選択スイッチ80が第1画像メモリ58a側に接続され、第2画像メモリ58bに通常画像信号WL2と蛍光画像信号FL2が書き込まれ、第1画像メモリ58aからは直前のフレームで書き込まれた通常画像信号WL1と蛍光画像信号FL1とが読み出されて後段信号処理回路59へ出力される。このように、第1画像メモリ58aと第2画像メモリ58bとには、フレーム信号及びフィールド信号を基準にして書き込み、読み取りが実行される(S002)。
【0037】
ステップS002では、タイミングコントローラ71は、第2画像信号選択スイッチ81を第4画像メモリ58d側に接続する。そして、前段信号処理回路57は、第3画像メモリ58cに対しては読み書きを実行せず、第4画像メモリ58dに対しては既に書き込まれていた画像信号が存在する場合には、これを読み出して後段信号処理回路59へ出力する。例えば、図8の最初の3フレームでは、第4画像メモリ58dに書き込まれた通常画像信号WL0と蛍光画像信号FL0とが後段信号処理回路59へ出力される。
【0038】
続いて、後段信号処理回路59は、第1,第2画像メモリ58a,58bからフレーム信号に切り換えに応じて交互に出力される通常画像信号と蛍光画像信号とをモニタ60に送り、領域Aに蛍光画像、領域Bに通常画像のそれぞれ動画を表示させると共に、第4画像メモリ58dから出力される通常画像信号と蛍光画像信号とをモニタ60に送り、領域Cに蛍光画像、領域Dに通常画像のそれぞれ静止画を表示させる(S003)。
【0039】
フリーズスイッチ73がオンされてフリーズ信号がHighとなると(S001, High)、タイミングコントローラ71は、第1画像信号選択スイッチ80を第1画像メモリ58a側に接続する。そして、前段信号処理回路57は、第2画像メモリ58bに対しては読み書きを実行せず、第1画像メモリ58aに対してはフリーズ信号がHighになる直前に書き込まれていた画像信号を読み出して後段信号処理回路59へ出力する(S005)。例えば、図8の4フレーム目以降では、第1画像メモリ58aに書き込まれた通常画像信号WL3と蛍光画像信号FL3とを後段信号処理回路59へ出力する。
【0040】
また、前段信号処理回路57は、図8に示すように、タイミングコントローラ71からの信号に基づいて通常画像信号と蛍光画像信号とをフレーム単位で交互に第3、第4画像メモリ58c,58dに書き込むと共に、書き込みに用いられていない方の画像メモリから画像信号を読み出して後段信号処理回路59に送る。例えば、図8の4フレーム(フレーム信号Low)の間に出力される通常画像信号WL4と蛍光画像信号FL4とは、順次第3画像メモリ58cに書き込まれる。このとき、タイミングコントローラ71は、第2画像信号選択スイッチ81を第4画像メモリ58d側に接続し、直前のフレームで第4画像メモリ58bに記憶されていた通常画像信号WL0と蛍光画像信号FL0とを後段信号処理回路59へ出力する。次のフレーム(フレーム信号High)では、上記の書き込みと読み出しが入れ替わると共に、第2画像信号選択スイッチ81が第3画像メモリ58c側に接続され、第4画像メモリ58dに通常画像信号WL5と蛍光画像信号FL5が書き込まれ、第3画像メモリ58cからは直前のフレームで書き込まれた通常画像信号WL4と蛍光画像信号FL4とが読み出されて後段信号処理回路59へ出力される。このように、第3画像メモリ58cと第4画像メモリ58dとには、フレーム信号及びフィールド信号を基準にして書き込み、読み取りが実行される(S005)。
【0041】
続いて、後段信号処理回路59は、第3,第4画像メモリ58c,58dからフレーム信号に切り換えに応じて交互に出力される通常画像信号と蛍光画像信号とをモニタ60に送り、領域Aに蛍光画像、領域Bに通常画像のそれぞれ動画を表示させると共に、第1画像メモリ58aから出力される通常画像信号と蛍光画像信号とをモニタ60に送り、領域Cに蛍光画像、領域Dに通常画像のそれぞれ静止画を表示させる(S006)。
【0042】
上記のステップS002,S003の処理、または、S005,S006の処理は、ステップS004で電源がオンしていると判断される間、フレーム信号の切り替わり毎に一回実行される。そして、フリーズ信号の切り換えに応じて、切り換え直前に動画用に用いられていたメモリセットが切り換え後は静止画用に用いられるため、フリーズ信号の切り換えタイミングに合わせて、静止画像が直前の時点の画像に更新される。
【0043】
電源がオフされると(S004, Yes)、システムコントローラ70は、ランプ用電源51を制御して白色光源30を消灯させる。タイミングコントローラ71は、第2モータドライバ54を制御してシャッター用モータ38を停止させると共に、レーザードライバ52を制御して励起用光源33を消灯させる。そして、モニタ60上の表示は停止され、処理が終了する。
【0044】
上記の実施例1の構成によれば、単一のモニタ60上に通常画像と蛍光画像との動画と静止画とを同時に表示することができ、各画像を比較しての診断が容易となる。このため、内視鏡検査の時間を短縮し、被験者の負担を軽減することができる。さらに、動画と静止画とを同一サイズで表示するため、例えば静止画内で観察される患部が動画内のどのあたりに位置するかを容易に把握でき、検査時間を短縮することができる。
【実施例2】
【0045】
図9は、本発明の実施例2にかかる電子内視鏡システムの内部構成を示すブロック図である。実施例2の電子内視鏡システムの全体の概略構成は実施例1と共通であり、図1に示すとおりである。また、蛍光観察内視鏡10、光源装置20A内の光学系の構成も実施例1と同一である。実施例1との相違点は、第3,第4画像メモリ58c,58dが疑似カラー画像の形成用に設けられている点、疑似カラー演算回路55が設けられている点、そして静止画用に第5画像メモリ58eが設けられている点である。以下、これらの相違点を中心に説明する。
【0046】
光源装置20Aには、画像信号の処理系として、ケーブルドライバ15から受信した画像信号を処理する前段信号処理回路57、この前段信号処理回路57で処理され出力されたデジタルの画像信号を一時的に記憶する第1〜第5画像メモリ58a〜58e、通常画像信号と蛍光画像信号とを演算して疑似カラー画像信号を生成する疑似カラー演算回路55、画像メモリから読み出されたデジタルの画像信号及び疑似カラー演算回路55から出力された疑似カラー画像信号をモニタに表示するための規格化映像信号に変換して出力する後段信号処理回路59を備えると共に、これら全体を制御するシステムコントローラ70及びタイミングコントローラ71を備えている。
【0047】
実施例2の構成では、前段信号処理回路57、画像メモリ58a〜58e、疑似カラー演算回路55が通常画像信号と蛍光画像信号と疑似カラー画像信号を生成する画像信号生成手段としての機能を有しており、システムコントローラ70、タイミングコントローラ71と後段信号処理回路59がフリーズスイッチの操作により通常画像と蛍光画像との動画と静止画とを切り換えて表示させる表示制御手段としての機能、モニタ60が単一画面に複数の画面を同時に表示可能な表示手段としての機能を有している。
【0048】
第1、第2画像メモリ58a,58bは、通常画像及び蛍光画像表示用の第1メモリセット、第3,第4画像メモリ58c,58dは疑似カラー画像信号演算用の第2メモリセット、第5画像メモリ58eは静止画用の画像を記憶するメモリである。これらの画像メモリ58a〜58eは、SDRAMであり、書き込みと読み出しとを同時に行うことができないため、連続したデータの読み出しが必要な第1,第2メモリセットについては、2個づつのペアで設けられている。
【0049】
また、これらの画像メモリの前段あるいは後段には、第1〜第4画像信号選択スイッチ80,81,82,83が接続されている。第1画像信号選択スイッチ80は、第1メモリセットの後段に設けられ、第1,第2画像メモリ58a,58bの出力を選択して後段信号処理回路59に送る。第2画像信号選択スイッチ81は、第3画像メモリ58cの出力と前段信号処理回路57の出力とを選択して疑似カラー演算回路55に送り、第3画像信号選択スイッチ82は、第4画像メモリ58dの出力と前段信号処理回路57の出力とを選択して疑似カラー演算回路55に送る。第4画像信号選択スイッチ83は、第5画像メモリ58eの前段に設けられ、第1メモリセットの出力と疑似カラー演算回路の出力とを選択して第5画像メモリ58eに書き込む機能を有する。
【0050】
図10は、モニタ60の画面上における画像領域の配置を示す。実施例2では、単一の画面内を上下左右で四等分したうちの3領域を親画面領域E,F,Gとして確保し、残りの1つの領域をさらに四等分したうちの3領域を子画面領域H,I,Jを確保している。そして、図11に示すように、親画面領域E,F,Gにそれぞれ蛍光画像、通常画像、疑似カラー画像を動画若しくは静止画で表示させ、子画面領域H,I,Jにそれぞれ蛍光画像、通常画像、疑似カラー画像を静止画若しくは動画で表示させる。親画面領域と子画面領域の表示は、フリーズスイッチの操作により切り換えられ、フリーズ信号がLowの間は親画面領域に動画、子画面領域に静止画、フリーズ信号がHighの間は親画面領域に静止画、子画面領域に動画が表示される。なお、図12は、第5画像メモリ58eに記憶される画像信号の一例である。第5画像メモリ58eには、通常画像信号、蛍光画像信号、疑似カラー画像信号の1フィールド分の信号(データ)が記憶され、これらの信号が静止画を表示する際に利用される。
【0051】
次に、上記のように構成された実施例2の電子内視鏡システムの作用を図13のフローチャート及び図14〜図16のタイミングチャートに基づいて説明する。なお、白色光、励起光の照射タイミングと撮像素子の出力とは図7に示した実施例1の場合と同一である。
【0052】
電源がオンされて処理が開始すると、前段信号処理回路57は、図14に示すように、タイミングコントローラ71からの信号に基づいて通常画像信号と蛍光画像信号とを交互に第1、第2画像メモリ58a,58bに記憶させると共に、書き込みに用いられていない方の画像メモリから画像信号を読み出して後段信号処理回路59に送る。例えば、図14の最初のフレーム(フレーム信号High)の間に出力される通常画像信号WL1と蛍光画像信号FL1とは順次第1画像メモリ58aに書き込まれる。このとき、タイミングコントローラ71は、第1画像信号選択スイッチ80を第2画像メモリ58b側に接続し、直前のフレームで第2画像メモリ58bに書き込まれた通常画像信号WL0と蛍光画像信号FL0とを後段信号処理回路59へ出力する。次のフレーム(フレーム信号Low)では、上記の書き込みと読み出しが入れ替わると共に、第1画像信号選択スイッチ80が第1画像メモリ58a側に接続され、第2画像メモリ58bに通常画像信号WL2と蛍光画像信号FL2が書き込まれ、第1画像メモリ58aからは直前のフレームで書き込まれた通常画像信号WL1と蛍光画像信号FL1とが読み出されて後段信号処理回路59へ出力される。このように、第1画像メモリ58aと第2画像メモリ58bとには、フレーム信号及びフィールド信号を基準にして書き込み、読み取りが実行される(S101)。
【0053】
疑似カラー画像信号は、通常画像信号と蛍光画像信号とを演算することにより求められるが、本システムでは通常画像信号と蛍光画像信号とがフィールド単位で交互に撮像素子13から出力されるため、疑似カラー画像信号を求めるには、通常画像信号と蛍光画像信号とが同時に存在するようにしなければならない。そこで、第3,第4画像メモリ58c,58dを用いて、フィールドの片方にしか存在しない通常画像信号と蛍光画像信号を疑似フレーム化する。すなわち、実際には撮像素子から信号が出力されないフィールドにも画像信号を挿入してフレームを通して画像信号が存在するように処理する。
【0054】
第3,第4画像メモリ58c,58dの動作は、基本的に図14の第1,第2画像メモリの動作と同じである(S101)。ただし、第1,第2画像メモリはフレームごとに書き込みと読み出しを交互に行うが、第3,第4画像メモリ58c,58dは図15に示すように、フィールドごとに行う。
【0055】
通常画像信号を疑似フレーム化する場合、例えば図15の最初のフレームでは、フィールド信号がHighの時は前段信号処理回路57からの通常画像信号WL1を第3画像メモリ58cに書き込むと共に、第2画像信号選択スイッチ81を前段信号処理回路57の出力に接続してリアルタイムの通常画像信号WL1を疑似カラー演算回路55へ出力する。フィールド信号がLowの時には、通常画像信号は出力されないため、第2画像信号選択スイッチ81を第3画像メモリ58c側に切り換えて、前のフィールドで書き込んだ通常画像信号WL1を疑似的に当該フィールドの信号として疑似カラー演算回路55へ出力する。このような処理を繰り返すことにより、フレームを通して連続した、すなわち、疑似フレーム化された通常画像信号が疑似カラー演算回路55へ出力される。
【0056】
一方、蛍光画像信号を疑似フレーム化する場合、例えば図15の最初のフレームでは、フィールド信号がHighの時は蛍光画像信号は出力されないため、第3画像信号選択スイッチ82を第4画像メモリ58d側に接続して、前のフレームでフィールド信号がLowの時に書き込んだ蛍光画像信号FL0を疑似的に当該フィールドの信号として疑似カラー演算回路55へ出力する。フィールド信号がLowの時には、前段信号処理回路57からの蛍光画像信号FL1を第4画像メモリ58dに書き込むと共に、第3画像信号選択スイッチ82を前段信号処理回路57の出力に接続してリアルタイムの蛍光画像信号FL1を疑似カラー演算回路55へ出力する。このような処理を繰り返すことにより、フレームを通して連続した、すなわち、疑似フレーム化された蛍光画像信号が疑似カラー演算回路55へ出力される。
【0057】
このようにして疑似フレーム化された通常画像信号と蛍光画像信号とを疑似カラー演算回路55において演算して疑似カラー画像信号を生成する(S102)。例えば、図15の最初のフレームでは、フィールド信号がHighの期間は前段信号処理回路57から出力される通常画像信号WL1と第4画像メモリ58dから読み出された蛍光画像信号FL0とに基づいて疑似カラー画像信号PC1が生成され、フィールド信号がLowの期間は前段信号処理回路57から出力される蛍光画像信号FL1と第3画像メモリ58cから読み出された通常画像信号WL1とに基づいて疑似カラー画像信号PC2が生成される。
【0058】
次に、システムコントローラ70は、フリーズ信号のレベルを検知することによりフリーズスイッチ73の状態を検知する(S103)。フリーズ信号がLowの場合には、S104, S105の処理が実行される。フリーズ信号がHighの場合には、さらにフリーズ信号が直前にLowからHighに切り替わったか否かを判定し(S107)、直前に切り替わった場合にはS108,S109の処理が実行され、そうでない場合にはS110,S111の処理が実行される。
【0059】
フリーズ信号がLowの場合、第5画像メモリ58eは書き込み禁止となり、事前のフレームで書き込まれていた信号が読み出される(S104)。例えば、図16の最初の3フレームでは、第5画像メモリ58eからは蛍光画像信号FL0、通常画像信号WL0、疑似カラー画像信号PC0が出力される。
【0060】
後段信号処理回路59は、第1,第2画像メモリ58a,58b(第1メモリセット)からフレーム信号に切り換えに応じて交互に出力される通常画像信号及び蛍光画像信号と、疑似カラー演算回路55から出力される疑似カラー画像信号とをモニター60に送り、親画面領域Eに蛍光画像、親画面領域Fに通常画像、親画面領域Gに疑似カラー画像のそれぞれ動画を表示させると共に、第5画像メモリ58eから読み出された蛍光画像信号、通常画像信号、疑似カラー画像信号をモニタ60に送り、それぞれ子画面領域H,I,Jに各画像の静止画を表示させる(S105)。
【0061】
フリーズスイッチ73がオンされてフリーズ信号がHighに切り替わった最初のフレームでは(S103, High、S107, Yes)、タイミングコントローラ71は、第4画像信号切換スイッチ83を切り換えてフリーズ信号立ち上がり後の1フレームで第1メモリセットから出力される蛍光画像信号及び通常画像信号と、疑似カラー演算回路55から出力される疑似カラー信号とを書き込む(S108)。例えば、図16の4フレーム目では、フィールド信号がHighの期間は第4画像信号切換スイッチ83を第1メモリセット側に接続し、第1メモリセットから出力される蛍光画像信号FL3と通常画像信号WL3とを第5画像メモリ58eに書き込み、フィールド信号がLowの期間は第4画像信号切換スイッチ83を疑似カラー演算回路55側に接続し、出力される疑似カラー信号PC8を書き込む。
【0062】
後段信号処理回路59は、第1,第2画像メモリ58a,58b(第1メモリセット)からフレーム信号に切り換えに応じて交互に出力される通常画像信号及び蛍光画像信号と、疑似カラー演算回路55から出力される疑似カラー画像信号とをモニタ60に送り、親画面領域Eに蛍光画像、親画面領域Fに通常画像、親画面領域Gに疑似カラー画像のそれぞれ動画を表示させる。第5画像メモリ58eは書き込み中であるため、子画面領域H,I,Jには何も画像を表示しない(S109)。
【0063】
フリーズ信号がHighに切り替わってから2フレーム目以降(S103, High、S107, No)では、第5画像メモリ58eは書き込み禁止となり、事前のフレームで書き込まれていた信号が読み出される(S110)。例えば、図16の5フレーム目では、第5画像メモリ58eからは蛍光画像信号FL3、通常画像信号WL3、疑似カラー画像信号PC8が出力される。
【0064】
後段信号処理回路59は、第1,第2画像メモリ58a,58b(第1メモリセット)からフレーム信号に切り換えに応じて交互に出力される通常画像信号及び蛍光画像信号と、疑似カラー演算回路55から出力される疑似カラー画像信号とをモニタ60に送り、子画面領域Hに蛍光画像、子画面領域Iに通常画像、子画面領域Jに疑似カラー画像のそれぞれ動画を表示させると共に、第5画像メモリ58eから読み出された蛍光画像信号、通常画像信号、疑似カラー画像信号をモニタ60に送り、それぞれ親画面領域E,F,Gに各画像の静止画を表示させる(S111)。
【0065】
上記のステップS101,S102の処理、及びS104,S105、S108,S109、またはS110,S111の処理は、ステップS106で電源がオンしていると判断される間、フレーム信号の切り替わり毎に一回実行される。そして、フリーズ信号の切り換えに応じて、フリーズ信号がLowの間は親画面領域に動画、子画面領域に静止画が表示され、フリーズ信号がHighの間は親画面領域に静止画、子画面領域に動画が表示される。また、フリーズ信号の切り換え直前に動画用に用いられていた画像信号が第5画像メモリ58eに書き込まれて静止画用に用いられるため、フリーズ信号の切り換えタイミングに合わせて、静止画像が直前の時点の画像に更新される。
【0066】
電源がオフされると、システムコントローラ70は、ランプ用電源51を制御して白色光源30を消灯させる。タイミングコントローラ71は、第2モータドライバ54を制御してシャッター用モータ38を停止させると共に、レーザードライバ52を制御して励起用光源33を消灯させる。そして、モニタ60上の表示は停止され、処理が終了する。
【0067】
上記の実施例2の構成によれば、単一のモニタ60上に通常画像と蛍光画像と疑似カラー画像の動画と静止画とを同時に表示することができ、各画像を比較しての病変部の観察、診断が容易となる。このため、内視鏡検査の時間を短縮し、被験者の負担を軽減することができる。
【0068】
なお、上記の実施例では、メモリとしてSDRAMを使用しているが、メモリの種類はこれに限定されず、他のメモリ、例えばDRAM、DDR SDRAM等を利用することもできる。他のメモリを使用する場合にも、上記と同様のタイミングでデータを読み書きすることにより、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例にかかる電子内視鏡システムの外観図である。
【図2】実施例1にかかる電子内視鏡システムの内部構成を示すブロック図である。
【図3】図2の光学系に設けられているロータリーシャッターの正面図である。
【図4】実施例1の電子内視鏡システムのモニタ上の表示領域例を示す説明図である。
【図5】実施例1の電子内視鏡システムのモニタ上の表示例を示す説明図である。
【図6】実施例1の電子内視鏡システムの作用を示すフローチャートである。
【図7】実施例1の電子内視鏡システムにおける白色光、励起光の照射タイミング及び撮像素子の出力タイミングを示すタイミングチャートである。
【図8】実施例1の電子内視鏡システムにおける撮像素子の出力タイミング及び第1〜第4画像メモリの信号の読み書きタイミングを示すタイミングチャートである。
【図9】実施例2にかかる電子内視鏡システムの内部構成を示すブロック図である。
【図10】実施例2の電子内視鏡システムのモニタ上の表示領域例を示す説明図である。
【図11】実施例2の電子内視鏡システムのモニタ上の表示例を示す説明図である。
【図12】実施例2の電子内視鏡システムの第5画像メモリに格納された画像信号を示す説明図である。
【図13】実施例2の電子内視鏡システムの作用を示すフローチャートである。
【図14】実施例2の電子内視鏡システムにおける撮像素子の出力タイミング及び第1、第2画像メモリの信号の読み書きタイミングを示すタイミングチャートである。
【図15】実施例2の電子内視鏡システムにおける撮像素子の出力タイミング及び第3,第4画像メモリの信号の読み書きタイミングを示すタイミングチャートである。
【図16】実施例2の電子内視鏡システムにおける撮像素子の出力タイミング及び第5画像メモリの信号の読み書きタイミングを示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0070】
10 蛍光観察内視鏡
16 励起光用ライトガイド
20 光源装置
30 白色光源
32 集光レンズ
33 励起用光源
35 コリメートレンズ
36 ダイクロイックミラー
37 ロータリーシャッター
55 疑似カラー演算回路
57 前段信号処理回路
58a〜58e 画像メモリ
59 後段信号処理回路
60 モニタ
70 システムコントローラ
71 タイミングコントローラ
80〜83 画像信号切換スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内に挿入される挿入部と、前記挿入部を通して照明光を挿入部先端に導くライトガイドと、照明された体腔内の画像を撮影する撮像素子とを有する電子内視鏡と、
体腔内を観察するための可視光を発する可視光源と、体腔壁の生体組織を励起して自家蛍光を発光させるための励起光を発する励起用光源とを備え、前記可視光と前記励起光とを選択的に前記ライトガイドに入射させる光源装置と、
前記体腔内が可視光により照明されている期間に前記撮像素子から出力される信号により通常画像信号を生成し、前記体腔壁が励起光により照射されている期間に前記撮像素子から出力される信号により蛍光画像信号を生成する画像信号生成手段と、
前記画像信号生成手段から出力される前記通常画像信号、蛍光画像信号に基づいて単一の画面に複数の画像を同時に表示可能な表示手段と、
操作者の操作により前記表示手段への静止画の表示を指示するフリーズスイッチと、
前記通常画像信号に基づく通常画像と、前記蛍光画像信号に基づく蛍光画像との少なくとも1つを動画で表示し、前記フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示された場合には、表示されている動画と同一種類の静止画を当該動画と共に前記表示手段に表示させる表示制御手段とを備えることを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記通常画像信号に基づく通常画像と、前記蛍光画像信号に基づく蛍光画像との動画を表示し、前記フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示された場合には、前記通常画像と前記蛍光画像との静止画を当該動画と共に前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記表示制御手段は、画面の上下左右のいずれかに二分した一方に、前記通常画像と前記蛍光画像との動画を並列して表示させ、前記フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示された場合には、前記通常画像と前記蛍光画像との静止画を二分した他方に並列して表示させることを特徴とする請求項2に記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記動画と前記静止画とを同一のサイズで表示することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示される毎に、表示されている静止画を直前の時点の画像に更新することを特徴とする請求項1〜4に記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
体腔内に挿入される挿入部と、前記挿入部を通して照明光を挿入部先端に導くライトガイドと、照明された体腔内の画像を撮影する撮像素子とを有する電子内視鏡と、
体腔内を観察するための可視光を発する可視光源と、体腔壁の生体組織を励起して自家蛍光を発光させるための励起光を発する励起用光源とを備え、前記可視光と前記励起光とを選択的に前記ライトガイドに入射させる光源装置と、
前記体腔内が可視光により照明されている期間に前記撮像素子から出力される信号により通常画像信号を生成し、前記体腔壁が励起光により照射されている期間に前記撮像素子から出力される信号により蛍光画像信号を生成し、前記通常画像信号と前記蛍光画像信号とを演算することにより疑似カラー画像信号を生成する画像信号生成手段と、
前記画像信号生成手段から出力される前記通常画像信号、蛍光画像信号、疑似カラー画像信号に基づいて単一の画面に複数の画像を同時に表示可能な表示手段と、
操作者の操作により前記表示手段への静止画の表示を指示するフリーズスイッチと、
前記通常画像信号に基づく通常画像と、前記蛍光画像信号に基づく蛍光画像と、前記疑似カラー画像信号に基づく疑似カラー画像との少なくとも1つを動画で表示し、前記フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示された場合には、表示されている動画と同一種類の静止画を当該動画と共に前記表示手段に表示させる表示制御手段とを備えることを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記通常画像、蛍光画像、疑似カラー画像の3画像の動画を表示し、前記フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示された場合には、前記3画像の静止画を動画と同時に表示させることを特徴とする請求項6に記載の電子内視鏡システム。
【請求項8】
前記表示制御手段は、前記フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示されていない場合には、画面を上下左右で四等分したうちの3領域を親画面領域として前記3画像の動画を表示させ、前記フリーズスイッチの操作により静止画の表示が指示された場合には、3つの前記親画面領域に前記3画像の静止画を表示させると共に、残りの1つの領域をさらに四等分したうちの3領域を子画面領域として、前記3画像の動画を静止画と同一の配列で表示させることを特徴とする請求項6または7に記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−314679(P2006−314679A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142535(P2005−142535)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】