説明

電子回路モジュール及び電子回路モジュールの製造方法

【課題】高温にしたノズルで半導体チップ等を吸着し、基板の電極部上に設けた半田を加熱してフリップチップ実装する場合、電極間での温度上昇にばらつきがあると、接続の信頼性が低下してしまう。
【解決手段】半導体チップがフリップチップ実装される配線基板12上には、配線パターン18〜34の一部に電極部18a〜34aが確保されており、各電極部18a〜34a上に半田36が塗布されている。このとき半田36は、配線パターン18〜34への熱の分散(逃げ)を考慮して予めの使用量(塗布量)が個別に調整されている。例えば、面積の大きい配線パターン18では半田36の使用量を少なくし、その他の配線パターン20〜34では半田36の使用量を多くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体チップ等の電子回路部品を絶縁基板上にフリップチップ実装して構成される電子回路モジュール及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電極部が形成された実装基板上に半導体チップを実装する際、熱源であるヒートブロックで半導体チップを吸着しておき、高温環境の中で基板上の電極部に半導体チップを半田付けする方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この半田付け方法は、ヒートブロックからの熱伝導又は輻射熱を利用して実装基板の電極部上に形成されている半田層を溶融しつつ、半導体チップを半田付けしてフリップチップ実装を行うものである。特にこの方法では、先に半田層を溶融させた状態でチップを基板上に押し付けるため、その際の搭載圧力がほとんど不要になると考えられる。
【0003】
また従来、リフロー方式による半田付け時に、半田の温度時間曲線(温度プロファイル)を適正に管理する先行技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この先行技術は、半田を溶融温度以上に上昇させてから、半田付けが確実に行われるまでの時間以上、半田の温度を規定範囲内に制御するものである。この規定範囲から半田の温度が外れると、半田付け強度の低下や部品の熱破損等の半田付け不良が発生するので、半田付け時の温度プロファイルの管理は、製品の信頼性を保証する上で重要である。
【特許文献1】特開平9−92682号公報(第5頁、図12)
【特許文献2】特開平6−224551号公報(第4−5頁、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の半田付け方法は、半導体チップからの熱伝導や輻射熱によって半田を溶融させるものであるが、この場合、半田に供給された熱が電極部とつながった配線パターンにまで分散する(逃げる)ことがある。一方、配線パターンは通常、個々に引き回しの長さやルートが違っており、全ての配線パターンが同一の形態ではないため、熱分散の態様(熱の逃げ方)も一様ではない。このため、配線パターンへの熱の分散が少ない電極部では、比較的短時間のうちに半田が溶融温度まで上昇するが、熱の分散が多い電極部では、それだけ半田の温度上昇に長時間を要することとなり、半田が溶融温度に達するまでの時間は全ての電極部で一様にならない。
【0005】
一方、上記の先行技術(特許文献2)でも述べられているとおり、半田付け時の温度プロファイルの管理は接続信頼性を保証する上でも重要である。例えば、ヒートブロックからの加熱時間をあまり短く設定してしまうと、温度上昇に時間がかかる電極部では半田の溶融が不充分になり、その結果、接続不良を招く。このため、全ての電極部で半田を充分に溶融させるためには、温度上昇に最も時間を要する電極部に合わせて加熱時間を長めに設定しておく必要がある。
【0006】
しかしながら、全体の加熱時間を長く設定すると、今度は熱の分散が少ない電極部で熱の供給量が過剰となり、半田が電極部や端子の成分と溶融して合金化(特に金と錫の合金化)が進む。半田付け部分で合金化が進むと、電気抵抗の増大や接続強度の低下を招くため、結果的に接続の信頼性を低下させるという問題が生じてしまう。
【0007】
そこで本発明は、個々の電極部からの熱の分散が一様でない場合であっても、全体での温度上昇のばらつきをなくして半田付けによる接続の信頼性を維持できる技術の提供を課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1に本発明は、絶縁基板の実装面上に電子回路部品が実装された電子回路モジュールを提供する。絶縁基板の実装面上には複数の配線パターンが形成されており、これら複数の配線パターンは、実装面上に形成されており、互いに形態が異なるものである。複数の配線パターンには、それぞれ一部に電極部が構成されている。これら電極部は、電子回路部品が有する複数の端子が個々に接続されるものである。
【0009】
その上で本発明の電子回路モジュールは、各電極部とこれに接続される電子部品の各端子との間に介在して設けられた半田の使用量を、複数の配線パターン同士の形態差に起因して生じる熱容量の違いに応じて予め個別に調整することにより上記の課題を解決する。
【0010】
すなわち、複数の配線パターンには様々な形態(取り回しの長さやルート)の違いがあるため、個々の熱容量は不均一である。中でも熱容量が大きい配線パターンは、それだけ熱を奪いやすいため半田の温度上昇が遅くなり、逆に熱容量が小さい配線パターンは、あまり多くの熱を奪わないため半田の温度上昇が速くなる。そこで、熱容量が大きい配線パターンについては予め電極上に設ける半田の使用量を比較的少なく調整しておき、逆に熱容量が小さい配線パターンについては予め電極上に設ける半田の使用量を比較的多く調整しておくことで、配線パターンと半田とのトータルでみた熱容量を均一化する。これにより、電子回路部品を高温にして半田を溶融させる際、全ての電極部について半田の温度上昇の平準化を図ることができるので、一部の電極部で半田への熱の供給が過剰となるのを抑え、半田付け部での合金化を防止して接続の信頼性を維持することができる。
【0011】
より具体的には、個々の配線パターンと半田とを合わせた熱容量をそれぞれの電極部の面積で除した値が、複数の配線パターン間でみて略均一化される半田の使用量に調整されている。
【0012】
例えば、電子回路中のグランド(接地極)として用いられる配線パターンでは、複数の箇所に電極部が形成されることもある。一方、電極部は、配線パターンの中でも電子回路部品の端子と接続される部分であり、その面積は配線パターンの形態に関わらず略均一である(多少の差はある)。このため、1つにつながった共通の配線パターン(グランド等)に複数の電極部が形成されている場合であっても、その配線パターンと半田とを合わせたトータルの熱容量を電極部の面積(複数の合計)で除した値が他と略均等であれば、1つの電極部あたりの熱容量は全てについて略均一である。これにより、全ての配線パターンが互いに分離されている形態でなくても、電極部ごとに半田の温度上昇を平準化することができるので、半田付けによる接続の信頼性を維持することができる。
【0013】
第2に本発明は、半田の使用量を別の切り口で予め調整した電子回路モジュールを提供する。すなわち第2の発明は、所定の実装面上に電子回路部品が実装された絶縁基板と、この絶縁基板の実装面上に形成され、互いに面積が異なる複数の配線パターンと、複数の配線パターンのそれぞれ一部に構成され、電子回路部品が有する複数の端子が個々に接続される複数の電極部と、各電極部とこれに接続される電子部品の各端子との間に介在して設けられ、複数の配線パターン同士の面積差に応じて予め使用量が個別に調整された接続用の半田とを備えた電子回路モジュールである。そして第2の発明では、比較的面積の大きい配線パターンの電極部に設けられる使用量に対して、比較的面積の小さい配線パターンの電極部に設けられる半田の使用量が多く調整されている。
【0014】
配線パターンは通常、実装面上に略均等な厚さで形成されているため、面積が大きければ、それだけ半田からの熱を逃がしやすいし、逆に面積が小さければ、あまり半田からの熱を逃がしにくい傾向にある。そこで第2の発明では、配線パターンの面積差に応じて予め電極部上に設ける半田の使用量を調整し、トータルでみた熱の逃げ方の違いを埋め合わせしている。これにより、全ての電極部で半田の温度上昇が平準化されるので、最初の発明と同様に半田付けによる接続の信頼性を維持することができる。
【0015】
第2の発明において、比較的面積の大きい配線パターンは、電子回路中のグランドに用いられるものを含むものである。この場合、グランドとして使用するために配線パターンの敷設面積を大きくしたり、複数の電極部が形成されるために配線パターン全体の面積が大きくなったりしていても、他に面積の小さい配線パターンにでは半田の使用量がより多く調整されているので、結果的に半田付け時の温度上昇が平準化される。
【0016】
本発明において、配線パターンの電極部又は電子回路部品の端子が少なくとも表層に金を含むものであり、これらの接続に使用する半田が錫、又は錫を主成分とする合金である。
【0017】
電子回路部品の端子に金(Au)や金めっきしたものを用いると、接続抵抗を抑えて損失を少なくできるというメリットがある。ただし、一般に金(Au)−半田接続は、高温の使用状況に適していないことが知られている。具体的には、高温状態では金(Au)と錫(Sn)との合金化が過度に進むため、上記のように接続抵抗の増大や接続強度の低下を招きやすいという問題があるからである。
【0018】
これについて本発明では、上記のように全ての電極部で半田の温度上昇を平準化し、一部の電極部で半田への熱の供給が過剰になるのを抑えているため、過度に金と錫との合金化を進行させることがない。このため、電子回路部品の端子に金を使用しても、半田付け時に接続の信頼性を低下させることがなく、そのメリット(損失の低減)を充分に活かすことができる。
【0019】
また本発明の電子回路モジュールは、絶縁基板の実装面上に設けられ、少なくとも電極部の周囲を被覆する樹脂製の半田レジストをさらに備える態様であってもよい。
【0020】
すなわち、本発明では予め半田の使用量を調整して電極上に設けているため、使用量を多く調整した電極部では、半田付けする前の半田(事前に塗布された半田)が電極部からはみ出すことがある。この場合であっても、実際の半田付け時に半田が溶融すると、その表面張力によって電極部上の半田に引き寄せられるので、電極部からはみ出た半田がそのまま半田レジスト上に取り残されることはない。
【0021】
また本発明の電子回路モジュールは、以下の製造方法を用いて製造することができる。すなわち本発明の製造方法は、絶縁基板の実装面上に、互いに形態の異なる複数の配線パターンを形成する工程と、複数の配線パターンの一部をそれぞれ電極部として、これら電極部上にそれぞれ半田を塗布する工程と、絶縁基板に実装される予定の電子回路部品を加熱した状態で実装面上に押し付け、電子回路部品が有する複数の端子をそれぞれ対応する電極部上の半田に接触させながら半田を溶融する工程と、半田を冷却して電極部と電子回路部品の端子との半田付けを完成させる工程とを備えたものである。このうち特に半田を塗布する工程では、次の半田を溶融する工程において各電極部上の半田が溶融する時間が略同一となる量に予め調整された半田を個別に塗布するものである。
【0022】
上記のように本発明の製造方法では、実際に電子回路部品を加熱しながら半田を溶融させる際、事前に配線パターンへの熱の分散を考慮して半田の塗布量を調整しているため、全ての電極部上で半田が溶融する時間を略均一にすることができる。なお、ここでいう「半田が溶融する時間」とは、半田を溶融する工程の中で、実際に半田を溶融温度に上昇させるまでの時間(例えば、半田が溶融し始めるタイミング)を意味する。
【0023】
本発明の製造方法によれば、配線パターンごとに熱の分散の仕方が異なっていても、実際に半田を加熱していくと、全ての電極部で略同時期(完全に同時である必要はない)に半田が溶融温度に到達するため、電極部同士で半田の温度プロファイルが極端に不均一になることがない。したがって、一部の電極部で端子と半田との合金化が過度に進行することがなく、全体的な接続の信頼性を向上することができる。
【0024】
好ましくは、本発明の製造方法において以下の要素が追加される。
すなわち、上記の半田を塗布する工程では、各電極部に対応して予め個々の開口部の面積が調整されたマスク部材を絶縁基板の実装面上に載置した状態で、開口部内に半田材料を充填することで電極部に半田を塗布するものである。
【0025】
この場合、事前に用意されたマスク材料を用いた印刷の手法により、予め調整された量の半田を容易に塗布することができるため、それだけ生産効率を向上することができる。
【0026】
本発明の製造方法において、以下の要素を適用してもよい。
(1)前記半田を塗布する工程では、個々の前記配線パターンと前記半田とを合わせた熱容量をそれぞれの前記電極部の面積で除した値が、複数の前記配線パターン間でみて略均一化される量に調整された半田を塗布するものである。
【0027】
(2)前記配線パターンを形成する工程は、互いに面積が異なる複数の配線パターンを形成するものであってもよい。この場合、前記半田を塗布する工程では、比較的面積の大きい前記配線パターンの前記電極部に対する半田の塗布量に対して、比較的面積の小さい前記配線パターンの前記電極部に対する半田の塗布量を多くするものである。
【0028】
(3)上記(2)において、前記配線パターンを形成する工程では、比較的面積の大きい前記配線パターンとして、電子回路中のグランドに用いられるものを含めて形成する。
【0029】
(4)本発明の製造方法は、前記半田を溶融する工程に先立ち、少なくとも表層に金を含む電極部を有した電子回路部品を用意する工程をさらに備えてもよい。また、前記配線パターンを形成する工程は、前記電極部の表層を金めっきする要素を含んでもよい。この場合、前記半田を塗布する工程では、錫、又は錫を主成分とする合金を半田として使用するものとする。
【0030】
(5)また本発明の製造方法は、前記半田を塗布する工程に先立ち、前記実装面上の少なくとも前記電極部の周囲を樹脂製の半田レジストで被覆する工程をさらに備えてもよい。
【0031】
いずれにしても、上記(1)〜(5)の要素を本発明の製造方法に採用することにより、半田付け部での合金化を抑え、より接続信頼性の高い電子回路モジュールを生産することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上の通り本発明は、電子回路モジュールの製造過程で生じる半田付け部の接続不良や接続信頼性の低下を防止し、製造された電子回路モジュールの品質や信頼性、性能を大きく向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、半導体モジュール10の基本的な構造を概略的に示す分解斜視図である。この半導体モジュール10は、電子回路部品として例えば半導体チップ14を使用し、この半導体チップ14を配線基板(絶縁基板)12の実装面上にフリップチップ実装して構成される電子回路モジュールの一例である。
【0034】
半導体チップ14は、例えばシリコン基板上に半導体集積回路が形成されたベアチップである。半導体チップ14の片面(図1中でみて配線基板12と向き合う面)には、その長手方向でみた両側縁部に例えば金バンプ16(図1には片側縁部にのみ示されている)が形成されている。なお、半導体チップ14はパッケージされているものでもよい。また図1中、配線基板12上には二点鎖線で半導体チップ14のフリップチップ実装領域Aが示されている。
【0035】
一方、配線基板12には、その表側の実装面上に例えば金属薄膜(銅箔)からなる複数系統の配線パターン18,20,22,24,26,28,30,32,34が形成されている。これら複数の配線パターン18〜34は、配線基板12に実装される半導体チップ14とともに電子回路(例えば高周波回路)を構成するものである。
【0036】
複数の配線パターン18〜34の中には、例えば電子回路中のグランド18bとして用いられるものが含まれている。このようなグランド18bとして用いられる配線パターン18は、全体の中でも面積がひときわ大きく形成されている。その他の配線パターン20〜34についても、実装面上での引き回しの長さや経路の違いによって、その形態や面積には互いに差が設けられている。
【0037】
また複数の配線パターン18〜34には、それぞれの一部に電極部(図1中参照符号なし)が確保されている。この電極部は、半導体チップ14の金バンプ16と半田を介して相互に接続される(半田付けされる)部位である。このため図1には、各電極部上に予め付着(塗布)された状態の半田36が整然と示されている。なお、実際に半導体モジュール10が製品として完成された状態では、半田付け時の溶融及び凝固によって半田36の形態は変化するため、図1に示されるように整然とした立体形状(直方体形状)にはならないが、図1では完成品の構造を理解しやすくするため、半田36を整然とした立体的形状のまま示している。本実施形態において、半田36は錫、又は錫を主成分とした合金である。なお図1には示していないが、配線基板12の裏側の面に別の配線パターンが形成されている態様であってもよいし、配線基板12が多層基板であってもよい。
【0038】
図2は、半導体チップ14が実装される前の配線基板12の構成を詳細に示す平面図である。先ず図2中(A)に示されているように、複数の配線パターン18〜34には、それぞれ一部に電極部18a,20a,22a,24a,26a,28a,30a,32a,34aが確保されている。また配線パターン18については、共通のグランド18bにつながる4つの電極部18aが確保されている。その他の配線パターン20〜34については、1つずつ電極部20a〜34aが確保されている。これら電極部18a〜34aは、半導体チップ14の実装領域A内で、上記の金バンプ16にそれぞれ対向する位置にある。また、電極部18a〜34aとして確保されている面積は、極端に差がなく略均一である。
【0039】
一方、各電極部18a〜34a上に付着(塗布)されている半田36は、配線パターン18〜34ごとに予め使用量が調整されており、全てについて均一ではない。具体的には、以下に挙げる基準に則って半田36の使用量が個別に調整されている。
【0040】
(1)熱容量基準
複数の配線パターン18〜34について、それぞれに固有の熱容量と、それぞれの電極部18a〜34a上に設けられる半田36の熱容量とを合わせたトータルの熱容量を、それぞれ電極部18a〜34aの面積で除した値が略均一となる使用量を定める基準である。この基準は、配線パターン18〜34同士の形態(取り回しの長さや経路)の違いによって生じる熱容量の違いを、半田36の使用量で埋め合わせし、全体として均一化しようとするものである。なお、グランド18bを有する配線パターン18については、合計4つの電極部18aに半田36を使用するため、全体の熱容量を4つの電極部18aの総面積で除するものとする。
【0041】
(2)面積基準
この基準は、上記(1)の熱容量基準に比べてずっとシンプルである。すなわち、複数の配線パターン18〜34について、それぞれ実装面上での面積に応じて半田36の使用量を定める基準である。この基準は、半田付け時に配線パターン18〜34同士の面積の違いによって生じる熱分散(熱の逃げ)の違いを、半田36の使用量(塗布量)によって均一化しようとするものである。具体的には、配線パターン18〜34の中で、比較的面積の大きいものについては、半田36の使用量(塗布量)を比較的少なく調整する。これに対し、比較的面積の小さいものについては、半田36の使用量(塗布量)を比較的多く調整するものである。
【0042】
本実施形態において、上記(1)又は(2)の基準を採用して半田36の使用量を調整すると、図2中(A)に示されているように、固有の熱容量が比較的大きいか、又は比較的面積が大きい部類の配線パターン18については、各電極部18a上に塗布される半田36の量が比較的少なくなっている。これに対し、固有の熱容量が比較的小さいか、又は比較的面積の小さい他の配線パターン20〜34については、各電極部20a〜34a上に塗布される半田36の量が比較的多くなっていることがわかる。
【0043】
また好ましくは、図2中(b)に示されているように、配線基板12の実装面のうち、各電極部18a〜34a以外の領域を半田レジスト38で被覆するとよい。この場合、半田36の使用量(塗布量)を比較的多く調整されている電極部20a〜34aについては、周囲にはみ出した半田36が半田レジスト38上で仮に塗布された状態となる。
【0044】
上記のように半田36の使用量を予め調整することで、半導体モジュール10の製造過程において次のような利点がある。以下、半導体モジュール10の製造方法を工程順に示し、本実施形態の利点について説明する。
【0045】
図3及び図4は、半導体モジュール10の製造方法を工程順に説明した図である。これら図3及び図4に示される縦断面は、例えば図2中(B)に示されるIII−III線に沿うものである。以下、工程の順を追って説明する。
【0046】
〔工程1:配線パターンの形成〕
図3中(A):配線基板12の実装面上に、上記のような形態や面積の違いを有する複数の配線パターン18〜34を形成する。個々の配線パターン18〜34には、その形成時に電極部18a〜34aが確保されている。
【0047】
〔工程2:半田レジスト成膜〕
また配線パターン18〜34を形成した後、上記のように電極部18a〜34aの周囲に半田レジスト38の被膜を形成する。
【0048】
〔工程3:半田の塗布〕
図3中(B):配線基板12上にメタルマスク40(マスク部材)を位置決めして敷設する。ここで使用するメタルマスク40には、予め各電極部18a〜34aの位置に合わせて開口部40a,40bが形成されている。これら開口部40a,40bは、各電極部18a〜34a上に半田ペーストを印刷し、半田36を塗布するためのものである。
【0049】
ここで開口部40a,40bは、半田36の使用量(塗布量)を調整するため、個々の開口面積が適切に規定されている。例えば、電極部18aについては、半田36の使用量(塗布量)を比較的少なく調整するため、対応する開口部40aの開口幅(図中W1)が比較的狭く規定されており、その他の電極部28a〜34aについては、半田36の使用量(塗布量)を比較的多く調整するため、対応する開口部40bの開口幅(図中W2)が比較的広く規定されている。なお開口部40a,40bの長さ(図3中(B)でみて奥行き方向)については、図2中(B)に示される電極部18a〜34aの長さに合わせて規定されている。
【0050】
図3中(C):上記のメタルマスク40を正しく位置決めした状態で、例えばスキージングにより半田ペーストを印刷する。
図3中(D):半田ペーストを定着させた状態でメタルマスク40を除去すると、配線基板12の実装面上に半田36が塗布(付着)された状態となる。このとき各電極部18a〜34a上の半田36は、上記のように開口部40a,40bの面積に応じて塗布する量が適切に調整されている。
【0051】
〔工程4:半田の溶融〕
図4中(E):配線基板12に実装する予定の半導体チップ14(ベアチップ)をノズル42で吸着し、ノズル42を高温にして半導体チップ14を加熱する。また、半導体チップ14を配線基板12(フリップチップ実装位置)に対して正しく位置決めし、各金バンプ16を対応する電極部18a〜34a(半田36)に正対させた状態でノズル42を下降させ、半導体チップ14を配線基板12に対して押し付ける。
【0052】
図4中(F):配線基板12に対して半導体チップ14を押し付けながら、高温の金バンプ16を介して半田36を加熱する。このとき、上記のように電極部18a〜34aごとに半田36の使用量(塗布量)が予め調整されているため、全ての電極部18a〜34aについて、半田36の温度上昇は略一様な時間変化を示すことになる(ただし、常に同一とはかぎらない。)。このため工程4では、半田36を加熱し始めてから、全ての電極部18a〜34aについて半田36が溶融するタイミングは略一致することになる。
【0053】
半田36が溶融すると、金バンプ16の表面を広く覆うようにして半田36が付着する。また電極部20a〜34aについては、半田レジスト38上にはみ出ていた部分(半田36の一部)が表面張力で引き寄せられ、各電極部20a〜34a上に集められる。
【0054】
〔工程5:半田の冷却〕
この後、半田36が充分に溶融するまで加熱すると、ノズル42からの加熱を解除して半田36を融点下まで冷却する。
【0055】
図4中(G):半田36が凝固して半田付が完了すると、ノズル42の吸着を解除して半導体チップ14をリリースする。これにより、半導体モジュール10としての完成品を得ることができる。
【0056】
なお、半導体モジュール10としての完成品の状態でみても、配線基板12の実装面上には配線パターン18〜34が形成されており、各電極部18a〜34aと金バンプ16との間には、予め使用量(塗布量)が調整された半田36が依然として介在している。このような半田36は、その溶融の過程で温度変化が平準化されており、部分的に熱の供給量が過剰になることがないため、金バンプ16との間で金(Au)−錫(Sn)の合金化はほとんど進行していない。このため、完成品としても半田付け部での接続信頼性が高く、金バンプ16を用いた良好な電気的特性を発揮することができる。
【0057】
本発明は上述した実施形態に制約されることなく、各種の変形を伴って実施することができる。例えば、本発明は半導体チップ以外にも、例えば高周波フィルタ(表面弾性波フィルタ)や高周波発振回路等の各種デバイスをフリップチップ実装した電子回路モジュールとして実施することができる。
【0058】
また一実施形態で挙げた配線パターン18〜34の形態や実装面上での面積、電極部18a〜34aの配置等はあくまで一例であり、これらは適宜変形可能である。
【0059】
一実施形態では、メタルマスク40の開口部40a,40bを2種類だけとしているが、より厳密に半田36の使用量(塗布量)を調整するのであれば、開口部の大きさをより多様に規定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】半導体モジュールの基本的な構造を概略的に示す分解斜視図である。
【図2】半導体チップが実装される前の配線基板の構成を詳細に示す平面図である。
【図3】半導体モジュールの製造方法を工程順に説明した図(1/2)である。
【図4】半導体モジュールの製造方法を工程順に説明した図(2/2)である。
【符号の説明】
【0061】
10 半導体モジュール
12 配線基板
14 半導体チップ
16 金バンプ
18,20,22,24,26,28,30,32,34 配線パターン
18a,20a,22a,24a,26a,28a,30a,32a,34a 電極部
36 半田
38 半田レジスト
40 メタルマスク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の実装面上に電子回路部品が実装された絶縁基板と、
前記絶縁基板の実装面上に形成され、互いに形態が異なる複数の配線パターンと、
複数の前記配線パターンのそれぞれ一部に構成され、前記電子回路部品が有する複数の端子が個々に接続される複数の電極部と、
前記各電極部とこれに接続される前記電子部品の各端子との間に介在して設けられ、複数の前記配線パターン同士の形態差に起因して生じる熱容量の違いに応じて予め使用量が個別に調整された接続用の半田と
を備えたことを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路モジュールにおいて、
前記半田は、
個々の前記配線パターンと前記半田とを合わせた熱容量をそれぞれの前記電極部の面積で除した値が、複数の前記配線パターン間でみて略均一化される使用量に調整されていることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項3】
所定の実装面上に電子回路部品が実装された絶縁基板と、
前記絶縁基板の実装面上に形成され、互いに面積が異なる複数の配線パターンと、
複数の前記配線パターンのそれぞれ一部に構成され、前記電子回路部品が有する複数の端子が個々に接続される複数の電極部と、
前記各電極部とこれに接続される前記電子部品の各端子との間に介在して設けられ、複数の前記配線パターン同士の面積差に応じて予め使用量が個別に調整された接続用の半田とを備え、
前記半田は、
比較的面積の大きい前記配線パターンの前記電極部に設けられる使用量に対して、比較的面積の小さい前記配線パターンの前記電極部に設けられる使用量が多いことを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の電子回路モジュールにおいて、
比較的面積の大きい前記配線パターンは、電子回路中のグランドに用いられるものを含むことを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電子回路モジュールにおいて、
前記電極部又は前記電子回路部品の端子が少なくとも表層に金を含むものであり、
前記半田が錫、又は錫を主成分とする合金であることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電子回路モジュールにおいて、
前記実装面上に設けられ、少なくとも前記電極部の周囲を被覆する樹脂製の半田レジストをさらに備えたことを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項7】
絶縁基板の実装面上に、互いに形態の異なる複数の配線パターンを形成する工程と、
複数の前記配線パターンの一部をそれぞれ電極部として、これら電極部上にそれぞれ半田を塗布する工程と、
前記絶縁基板に実装される予定の電子回路部品を加熱した状態で前記実装面上に押し付け、前記電子回路部品が有する複数の端子をそれぞれ対応する前記電極部上の半田に接触させながら半田を溶融する工程と、
前記半田を冷却して前記電極部と前記電子回路部品の端子との半田付けを完成させる工程とを備え、
前記半田を塗布する工程では、前記半田を溶融する工程において前記各電極部上の半田が溶融する時間が略同一となる量に予め調整された半田を個別に塗布することを特徴とする電子回路モジュールの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電子回路モジュールの製造方法において、
前記半田を塗布する工程では、
前記各電極部に対応して予め個々の開口部の面積が調整されたマスク部材を前記絶縁基板の実装面上に載置した状態で、前記開口部内に半田材料を充填することで前記電極部に半田を塗布することを特徴とする電子回路モジュールの製造方法。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−117530(P2009−117530A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287483(P2007−287483)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】