説明

電子部品およびその製造方法

【課題】スプラッシュの発生をより軽減することができ、より安価で信頼性の高い電子部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】フランジを有する金属製のキャップ2と、フランジと金属製のリード端子12を有するベース1と、当該ベースに搭載される電子素子を有し、前記ベースに前記キャップをかぶせ、前記ベースのフランジに前記キャップのフランジを当接した状態で抵抗溶接して気密封止された電子部品であって、前記キャップの表面および前記ベースの表面のうち、前記キャップのベースが当接するフランジ部分と、前記ベースのキャップが当接するフランジ部分を含み、内部表面に露出する金属部分には電解ニッケルメッキ15のみが形成されており、外部表面に露出したリード端子には少なくとも無電解ニッケルメッキ16が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子などの電子部品において、抵抗溶接して金属ベースと金属キャップを気密封止する電子部品のパッケージ構造およびその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイスなどに用いられる電子部品パッケージとして、水晶振動子、水晶フィルタ、水晶発振器等があげられるが、例えば水晶振動子は共振特性に優れることから、周波数、時間の基準源として広く用いられている。これらの圧電振動デバイスは、水晶振動板(圧電振動板)の表面に金属薄膜電極を形成し、この金属薄膜電極を外気から保護するため、パッケージ体により気密封止されている。
【0003】
従来の抵抗溶接により気密封止してなる電子部品のパッケージは、図6(従来の実施例を示す断面図)、図7(図6の溶接部分を拡大した断面図)に示すように、金属ベース1は、フランジ13が形成されており、前記フランジの上部に三角形状の突起14が形成されている。細長い円柱形状の金属リード端子11,12が図示しない絶縁ガラスを介して貫通して植設されている。金属キャップ2は、素子収容部とフランジ21が形成されている。また、図示しないが、金属ベース1、あるいは金属キャップ2にはニッケルなどの金属メッキが施されている。そして、前記金属ベース1に水晶振動板等の素子が搭載されると、前記金属キャップ2をかぶせ、前記金属ベースのフランジ上部の突起14と前記金属キャップのフランジ21を圧着した状態で通電し、前記突起、ならびに前記金属メッキを溶かして抵抗溶接する。なお、上記突起14は抵抗溶接時の溶接電流を局所的に集中させ溶接効率を高めている。ところが、このような構成では、抵抗溶接する際に、前記金属キャップのフランジ21が、前記突起14に当った時、当該突起がつぶれたり、前記金属メッキが剥がれたりすることにより、金属微粒の飛び散り、いわゆるスプラッシュが発生することがある。このとき、前記金属微粒がベースの内部にも入り込み、水晶振動子などの電子部品では、素子の電極表面に前記金属微粒が付着し、電極の短絡、容量バラツキ等の特性に悪影響を及ぼすことが多かった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するための従来の手法としては、例えば、特許文献1に開示されているように、金属ベースや金属キャップのフランジに形成された無電解ニッケルメッキの厚みを2〜4μm程度に厚み規定するものが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−223177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成ではスプラッシュの悪影響は軽減できるものの、より確実にスプラッシュの発生をなくすことができない。つまり、電解ニッケルメッキに比べて融点が低く硬質で脆い無電解ニッケルメッキ層が存在しているので、抵抗溶接時に前記キャップのフランジに形成された突起に加重が加わり押し潰され、前記無電解ニッケルメッキ層にクラックや欠けが発生してリーク不良が発生することで、スプラッシュの誘発することが避けられない構成となっている。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、スプラッシュの発生をより軽減することができ、より安価で信頼性の高い電子部品およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の電子部品のパッケージでは、特許請求項1に示すように開口端部にフランジが形成された金属製のキャップと、外周端部にフランジが形成された金属製のシェルに絶縁材が充填され、当該絶縁材に金属製のリード端子が貫通固定されたベースと、当該ベースに搭載される電子素子を有し、前記ベースと前記キャップの表面には電解ニッケルメッキが施されるとともに前記ベースに前記キャップをかぶせ、前記ベースのフランジに前記キャップのフランジを当接した状態で抵抗溶接して気密封止された電子部品であって、前記キャップの表面および前記ベースの表面のうち、前記キャップのベースが当接するフランジ部分と、前記ベースのキャップが当接するフランジ部分を含み、内部表面に露出する金属部分には電解ニッケルメッキのみが形成されており、外部表面に露出したリード端子には少なくとも無電解ニッケルメッキが形成されてなることを特徴とする。
【0009】
上記構成により、前記キャップの表面および前記ベースの表面のうち、前記キャップのベースが当接するフランジ部分と、前記ベースのキャップが当接するフランジ部分を含み、前記気密封止後の電子部品として内部表面に露出する金属部分には無電解ニッケルメッキが形成されておらず、気密封止後の電子部品として外部表面に露出したリード端子には少なくとも無電解ニッケルメッキが形成されているので、無電解ニッケルメッキに比べて融点が高く比較的軟質でクラックや欠けの発生が少ない電解ニッケルメッキのみが封止部と内容表面に形成されており、抵抗溶接により気密封止する際にフランジ部分でのより安定した溶融を実現することができ、スプラッシュの発生が飛躍的に抑制することができる。また、気密封止後の電子部品の外部表面全体に無電解ニッケルメッキが形成されていることで、電子部品の耐食防止が行えるため電子部品の外観を劣化させることがない。電解ニッケルメッキに比べて比較的硬質で均一な表面膜である無電解ニッケルメッキが外部表面に露出したリード端子が形成されているので、回路基板と接合するはんだのぬれ性が高まりはんだの接合性を低下させることがない。
【0010】
また、上記構成に加えて、前記キャップの表面および前記ベースの表面のうち、前記気密封止後の電子部品として外部表面に露出する金属部分の全体に対して無電解ニッケルメッキを形成してもよい。この構成により、上述の作用効果に加え、気密封止後の電子部品の外部表面全体に無電解ニッケルメッキが形成されていることで、電子部品の耐食防止性がさらに高まる。加えて、キャップに対してはんだ接合する用途が求められる電子部品にもはんだ接合性が向上させることができる。また、面実装化のために前記リード端子の折り曲げ加工やプレス加工を行った後に無電解ニッケルメッキを形成することも可能となる。このため、前記リード端子の加工時に局部的に損傷を受けた部分の上部に無電解ニッケルメッキが形成され、この部分でのはんだ接合性が向上する。
【0011】
また、上述の構成に加えて、前記リード端子の無電解ニッケルメッキの上面にはんだ膜を形成してもよい。この構成により、上述の作用効果に加え、無電解ニッケルメッキの上面にはんだ膜が形成されているので、無電解ニッケルメッキの上部ではんだ膜がより安定して強固な状態で形成されるとともに、回路基板とはんだ接合する際に無電解ニッケルメッキのはんだ濡れ性の向上とはんだ膜によるはんだなじみが加味されてはんだ接合性のさらなる向上が期待できる。
【0012】
また、上述の構成に加えて、前記リード端子のインナーリード部分でサポート部材を用いることなく、シリコーン系の軟質の導電性樹脂接着剤を用いて前記電子素子を電気機械的に接合してもよい。また、インナーリード部分にネールヘッドを構成するとより好ましい。この構成により、上述の作用効果に加え、サポート部材を用いない安価で耐衝撃性の高い保持構造が得られるだけでなく、前記インナーリード部分の表面には電解ニッケルメッキのみが形成され、無電解ニッケルメッキに比べて膜質がより粗な状態で形成されるので、ニッケルの酸化層の悪影響が受けにくくなる。結果としてシリコーン系の軟質の導電性樹脂接着剤を用いても接合界面の導通抵抗を悪化させにくくでき、電子素子の導通性能が低下させない。加えて、インナーリード部分にネールヘッドを構成することで、電子素子の搭載が安定して耐衝撃性能もより向上する。
【0013】
また、上述の構成に加えて、前記ベースのフランジに突起を設け、当該突起の形状を金属ベースの外部側に比べて内部側への斜面の角度が緩やかな三角形状としたり、突起の頂部にRを形成してもよい。この構成により、上述の作用効果に加え、よりスプラッシュの発生が抑制される。
【0014】
また、特許請求項2に示すように、上述の構成において、開口端部にフランジが形成された金属製のキャップと、外周端部にフランジが形成された金属製のシェルに絶縁材が充填され、当該絶縁材に金属製のリード端子が貫通固定されたベースと、当該ベースに搭載される電子素子を有し、前記ベースに前記キャップをかぶせ、前記ベースのフランジに前記キャップのフランジを当接した状態で抵抗溶接して気密封止された電子部品の製造方法において、外部表面に電解ニッケルメッキが形成された金属製のベースに電子素子を搭載し、当該ベースにキャップをかぶせて抵抗溶接することで気密封止する工程と、前記気密封止された電子部品の外部表面の金属部分全面に無電解ニッケルメッキを形成する工程とからなることを特徴とする。
【0015】
上記製造方法により、外部表面に電解ニッケルメッキが形成された金属製のベースに電子素子を搭載し、当該ベースにキャップをかぶせて抵抗溶接することで気密封止する工程と、前記気密封止された電子部品の外部表面の金属部分全面に無電解ニッケルメッキを形成する工程とからなるので、極めて容易な手法により、前記キャップの表面および前記ベースの表面のうち、前記キャップのベースが当接するフランジ部分と、前記ベースのキャップが当接するフランジ部分を含み、前記気密封止後の電子部品として内部表面に露出する金属部分には電解ニッケルメッキのみが形成され、前記気密封止後の電子部品として外部表面に露出する金属部分の全体に対して無電解ニッケルメッキを形成することができる。つまり、上述のような、スプラッシュの発生が飛躍的に抑制することができ、電子部品の耐食防止が行えるため電子部品の外観を劣化させることがない。加えて回路基板とのはんだの接合性を低下させることがない。
【0016】
また、近年の電子部品では、環境面に配慮して回路基板との接続に鉛フリーはんだを使用する要求が高まっているため、より高温(220℃以上)のリフロー環境に対応して安定的な電気的特性を満足する電子部品が必要不可欠となっている。これらの特性を満足するため、電子部品に対してリフロー環境と同程度かそれ以上の温度で加熱することで(以下、リフロー工程と称する)、特性を安定化することが実施されている。特に、水晶振動子などの電子部品では、リフロー工程を実施することで発振周波数のバラツキや発振周波数のシフトの問題が解決できる。加えて、回路基板との接合にはんだを使用する電子部品では、はんだの接合性をさらに高めるために前記無電解ニッケルメッキの上面にはんだ膜を形成する構成があった。しかしながら、このようなリフロー工程を実施すると、前記金属ベースのリード端子に形成されているはんだ膜の一部が溶け出してリード端子の劣化することが問題となっている。従来リード端子の劣化に対応するため、リフロー工程後に前記リード端子に対してはんだ膜を再度形成する必要があった。この手法は工程が増えコスト増大を招く原因となっていた。
【0017】
そこで、耐リフロー性能を高めるために、金属製のキャップと、金属製のシェルに絶縁材が充填され、当該絶縁材に金属製のリード端子が貫通固定されたベースと、当該ベースに搭載される電子素子を有し、前記ベースに前記キャップをかぶせ、前記ベースのフランジに前記キャップのフランジを当接した状態で抵抗溶接して気密封止された電子部品の製造方法において、外部表面に電解ニッケルメッキが形成された金属製のベースに電子素子を搭載し、当該ベースにキャップをかぶせて抵抗溶接することで気密封止する工程と、前記気密封止された電子部品に対して所定のリフロー温度以上に加熱するリフロー工程と、
前記リフロー処理された電子部品の外部表面の金属部分全面に無電解ニッケルメッキを形成する工程と、前記外部表面に露出したリード端子にはんだ膜が形成される工程とからなる電子部品の製造方法がより望ましい。
【0018】
上記製造方法では、上述の製造方法に加えて、気密封止後に所定(例えば220℃)のリフロー温度以上に加熱するリフロー工程を具備しているので、より高温のリフロー環境に対応した安定的な電気的特性を満足する電子部品が提供できる。リフロー工程後にはんだ膜の形成が行えるので、はんだ膜の一部が溶け出してリード端子の劣化することがなく、一度のはんだ膜の形成で非常に容易かつ安価なはんだ膜形成が実現できる。加えて、無電解ニッケルメッキ形成後に直ちにはんだ膜を形成することもできるので、無電解ニッケルメッキの上部でははんだ膜がより安定して強固な状態で形成されるとともに、回路基板とはんだ接合する際に無電解ニッケルメッキのはんだ濡れ性の向上とはんだ膜によるはんだなじみが加味されてはんだ接合性のさらなる向上が期待できる。また、面実装化のために前記リード端子の折り曲げ加工やプレス加工を行った後に無電解ニッケルメッキを形成することも可能となる。このため、前記リード端子の加工時に局部的に損傷を受けた部分の上部に無電解ニッケルメッキとはんだ膜が形成され、この部分でのはんだ接合性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の構成により、スプラッシュの発生をより軽減することができ、より安価で信頼性の高い電子部品およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明による実施の形態を、電子部品のパッケージとして水晶振動子を例にとり、図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示す内部断面図であり、図2は、図1の金属ベースのフランジと金属キャップのフランジ部分を拡大した断面図である。
【0021】
金属ベース1は、金属製のシェル10と、当該シェル内に充填された絶縁ガラス13と、当該絶縁ガラス13に貫通固定された金属製のリード端子11,12とから構成されている。シェル10は、鉄やコバール等からなるとともに全体として低背の長円柱形状であり、シェル10の下部周縁部分に、一体的に周状のフランジ13が設けられている。前記フランジ13の上部には、突起(プロジェクション)14が一体的に形成されている。リード端子11,12は例えばコバールを基体とし細長い円柱形状に加工され、かつ前記シェル10に所定の間隔をもって貫通配置されている。絶縁ガラス13は例えばホウケイ酸ガラス等からなり、前記シェル10とリード端子11,12とを各々電気的に独立した状態でシェル内に充填されている。
【0022】
つまり、金属ベース1は次のように製造方法で構成されている。前記シェル10、リード端子11,12を脱脂、酸洗浄等により金属表面の洗浄を行い、その後シェル10およびリード端子11,12の表面には、腐食防止用の金属膜として、例えば厚さ1〜4μm程度の電解ニッケルメッキ15が形成されている。この電解ニッケルメッキは例えばワット浴やスルファミン酸浴等によるニッケルメッキ浴を用いた電解メッキ法により形成される。このように外部表面に電解ニッケルメッキ15が形成されたシェル10とリード端子11,12を準備するとともに、前記シェル10をカーボン治具などに配置した状態でシェル内部に絶縁ガラス13が充填配置され、当該絶縁ガラス13に対して前記リード端子が貫通された状態で一体焼成する。
【0023】
なお、シェル10あるいはリード端子11,12の金属材料は上記材料に限定されるものではなく、例えばシェルに42アロイ等の鉄ニッケル系合金を用いてもよい。また、金属ベース10に形成される電解ニッケルメッキ15は、8.89μm以下で形成することが好ましく、電解ニッケルメッキ15が剥がれをなくし、より一層スプラッシュの発生を抑制することができる構成となる。1.27μm以上で形成しないと、金属ベースの錆防止効果や水晶振動子にエージング特性の改善効果が弱まる。
【0024】
金属キャップ2は、洋白や鉄・コバール等からなるとともに下面が開口した長円柱形状であり、当該開口部分には前記ベースのフランジ13に対応するフランジ21を有している。金属キャップ2の表面(外部表面と内部表面)には腐食防止用の金属膜として、ニッケル等の金属膜22がフラッシュメッキなどの手法により形成することが望ましい。
【0025】
電子部品素子としての水晶振動板3はATカットからなり、例えば円盤形状に加工されている。その表裏面には図示しない励振電極と引出電極が真空蒸着法、あるいはスパッタリング等の手段にて設けられている。引出電極は、電気的接続を確実に行うため水晶振動板の反対主面に回り込ませてもよい。
【0026】
上記金属ベース1のリード端子11,12のインナーリードには、サポート等の保持部材111,121が配置され、当該保持部材に水晶振動板3を搭載し、図示しない導電樹脂系接着剤やろう材等の導電性接合材により電気的機械的に接合する。このように水晶振動板3が搭載された金属ベース1に対して、前記金属キャップ2をかぶせ、前記金属ベースのフランジ上部の突起14と前記金属キャップのフランジ21を圧着した状態で通電し、前記突起14、ならびに前記ニッケルメッキ15,22を溶かして抵抗溶接することにより、気密封止される。
【0027】
上記気密封止された水晶振動子は、少なくとも外部表面に露出したリード端子11,12を含み外部表面の金属部分全面に無電解ニッケルメッキ16を形成している。すなわち、前記金属ベース1、リード端子11,12、および金属キャップ2の外部表面に露出した金属部分に対して脱脂、酸洗浄等により金属表面の洗浄や浸炭部分の除去を行い、その後各外部表面には、例えば厚さ1〜4μm程度の無電解ニッケルメッキ16が形成されている。この無電解ニッケルメッキ16は例えば次亜りん酸塩を還元剤とするニッケルメッキ浴を用いた無電解メッキ法により形成される。
【0028】
以上により、前記金属ベース1の表面および前記金属キャップ2の表面のうち、前記金属ベースのフランジ13と突起(プロジェクション)14と、前記金属キャップ2のフランジ21を含み、前記気密封止後の水晶振動子として内部表面に露出する金属部分には無電解ニッケルメッキ16が形成されておらず電解ニッケルメッキ15のみが形成され、前記気密封止後の水晶振動子として外部表面に露出したリード端子11,12には少なくとも無電解ニッケルメッキ16が形成された本発明の水晶振動子(電子部品)の完成となる。
【0029】
上述のように製造および構成とすることで、電解ニッケルメッキ15は、無電解ニッケルメッキ16に比べ融点が高く、前記絶縁ガラス13の焼成前に形成することで前記焼成前後の腐食防止機能を得ることができる。無電解ニッケルメッキ16に比べて比較的軟質でクラックや欠けの発生が少ない電解ニッケルメッキ15のみが封止部と内容表面に形成されており、抵抗溶接により気密封止する際に前記金属ベースのフランジ13と突起(プロジェクション)14と、前記金属キャップ2のフランジ21でのより安定した溶融を実現することができ、スプラッシュの発生が飛躍的に抑制することができる。結果として、スプラッシュによる金属微粒が金属ベース1の内部に入り込むことがなくなり、水晶振動板3などの電子部品素子の電極表面に前記金属微粒が付着し、電極の短絡、容量バラツキ等の特性に悪影響を及ぼすことが一切なくなる。
【0030】
加えて、気密封止後の水晶振動子として外部表面に露出したリード端子11,12には少なくとも無電解ニッケルメッキ16は、電解ニッケルメッキ15に比べて膜質がより均密な状態で形成されるので回路基板と接合するはんだ等のぬれ性を高めるだけでなく、上面に還元剤に起因するりんなどが共析して、非晶質構造となりより耐食性の優れた硬質の腐食防止膜が得られる。特に本形態では、前記金属キャップ2の表面および前記金属ベース1の表面のうち、前記気密封止後の水晶振動子として外部表面に露出する金属部分の全体に対して無電解ニッケルメッキ16を形成しているので、水晶振動子の全体の耐食防止性がさらに高まる。加えて、金属キャップ2に対してはんだ接合する際にもそのはんだ接合性が向上させることができる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は本発明の第2の実施形態を示す内部断面図であり、図4は、図3の金属ベースのフランジと金属キャップのフランジ部分を拡大した断面図である。上記第1の実施形態と同様の部分については同番号を付すとともに説明の一部を割愛している。
【0032】
前記金属ベース1は、前記シェル10の表面のみに例えば厚さ1〜4μm程度の電解ニッケルメッキ15が形成されている。このように外部表面に電解ニッケルメッキ15が形成されたシェル10とメッキ処理が施されていないリード端子11,12を準備するとともに、前記シェル10をカーボン治具などに配置した状態でシェル内部に絶縁ガラス13が充填配置され、当該絶縁ガラス13に対して前記リード端子が貫通された状態で一体焼成する。なお、前記リード端子11,12は、上記第1の実施形態と同様に電解ニッケルメッキ15を形成したものを用いてもよい。
【0033】
電子部品素子としての水晶振動板3はATカットからなり、例えば矩形状に加工されている。その表裏面には図示しない励振電極と引出電極が真空蒸着法、あるいはスパッタリング等の手段にて設けられている。引出電極は、電気的接続を確実に行うため水晶振動板の反対主面に回り込ませてもよい。
【0034】
上記金属ベース1のリード端子11,12のインナーリードには、リード端子のネールヘッドからなる保持部材111,121が配置され、当該保持部材に水晶振動板3を搭載し、シリコーン系の軟質の導電樹脂系接着剤Sにより電気的機械的に接合する。なお、保持部材としてサポート部材を割愛して、前記メッキ処理されていないリード端子11,12のインナーリードにネールヘッドを構成した場合、その表面にはリード端子の母材のみで形成されており、ニッケルの酸化層の悪影響がなくなる。また、前記電解ニッケル15が施されたリード端子11,12のインナーリードにネールヘッドを構成した場合、その表面には電解ニッケルメッキ15のみが形成され、無電解ニッケルメッキに比べて膜質がより粗な状態で形成されるので、ニッケルの酸化層の悪影響が受けにくくなる。結果としてシリコーン系の軟質の導電性樹脂接着剤Sを用いても接合界面の導通抵抗の悪化を抑制し、圧電振動デバイスの導通性能を低下させることがない。しかもネールヘッド等の保持部材を用いて安価に耐衝撃性能を向上させることができる。
【0035】
このように水晶振動板3が搭載された金属ベース1に対して、上記第1の実施形態と同様に製造構成された金属キャップ2をかぶせ、前記金属ベースのフランジ上部の突起14と前記金属キャップのフランジ21を圧着した状態で通電し、前記突起14、ならびに前記ニッケルメッキ15,22を溶かして抵抗溶接することにより、気密封止される。
【0036】
上記気密封止された水晶振動子は、最終的に回路基板上ではんだ接合されるリフロー温度(例えば、190℃〜250℃)と同程度かそれ以上の温度(190℃〜280℃)に加熱するリフロー工程が実施される。このため、より高温のリフロー環境に対応した安定的な電気的特性を満足することができる。特に、水晶振動子などの電子部品では、リフロー工程を実施することで発振周波数のバラツキや発振周波数のシフトの問題が解決できる。
【0037】
上記リフロー工程が実施された水晶振動子は、少なくとも外部表面に露出したリード端子11,12を含み外部表面の金属部分全面に無電解ニッケルメッキ16を形成している。すなわち、前記金属ベース1、リード端子11,12、および金属キャップ2の外部表面に露出した金属部分に対して脱脂、酸洗浄等により金属表面の洗浄や浸炭部分の除去を行い、その後各外部表面には、例えば厚さ0.5〜4μm程度の無電解ニッケルメッキ16が形成されている。この無電解ニッケルメッキ16は例えば次亜りん酸塩を還元剤とするニッケルメッキ浴を用いた無電解メッキ法により形成される。
【0038】
上記無電解ニッケルメッキされた水晶振動子は、外部表面に露出したリード端子11,12に対してはんだ溶融炉に浸漬しはんだ膜17が形成される。
【0039】
以上により、前記金属ベース1の表面および前記金属キャップ2の表面のうち、前記金属ベースのフランジ13と突起(プロジェクション)14と、前記金属キャップ2のフランジ21を含み、前記気密封止後の水晶振動子として内部表面に露出する金属部分には無電解ニッケルメッキ16が形成されておらず電解ニッケルメッキ15のみが形成され、前記気密封止後の水晶振動子として外部表面に露出したリード端子11,12には少なくとも無電解ニッケルメッキ16が形成され、かつその無電解ニッケルメッキ16の上面にはんだ膜17が形成された本発明の水晶振動子(電子部品)の完成となる。
【0040】
本発明の実施形態では、リフロー工程を行うことでより高温のリフロー環境に対応させることができるだけでなく、リフロー工程後にはんだ膜17の形成が行えるので、はんだ膜17の一部が溶け出してリード端子11,12の劣化することがなく、一度のはんだ膜の形成で非常に容易かつ安価なはんだ膜形成が実現できる。加えて、無電解ニッケルメッキ16形成後に直ちにはんだ膜17を形成することもできるので、無電解ニッケルメッキ16の上部でははんだ膜17がより安定して強固な状態で形成されるとともに、回路基板とはんだ接合する際に無電解ニッケルメッキ16のはんだ濡れ性の向上とはんだ膜17によるはんだなじみが加味されてはんだ接合性のさらなる向上が期待できる。
【0041】
また、上記各実施形態に加えて、前記金属ベースのフランジの突起(プロジェクション)14について、図5(a)に示すように、金属ベースの外部側に比べて内部側への斜面の角度が緩やかな三角形状として内部側に向かうスプラシュを抑制した構成や、図5(b)に示すように、突起の頂部にRを形成することで溶接時の加圧により突起のはみ出しを抑えてスプラシュを抑制した構成のものを組み合わせるとより好ましい。これらの突起には電解ニッケルメッキのみが形成されているので、これらの形状との相乗効果により飛躍的にスプラッシュの発生を抑制することができる。
【0042】
なお、本発明の実施例では、水晶振動子を例にして説明したが、電子部品としてこれらに限られるものではない。抵抗溶接により気密封止するあらゆる電子部品のパッケージに適用でき、例えば、圧電フィルタ、圧電発振器、セラミック振動子、セラミックフィルタ、SAW共振子、SAWフィルタ、コンデンサ、抵抗器、焦電センサー、半導体素子といった電子部品にも適用できることは言うまでもない。
【0043】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できので、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求範囲によって示すものであって、明細書本文に拘束されるものではない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す内部断面図。
【図2】図1の金属ベースのフランジと金属キャップのフランジ部分を拡大した断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す内部断面図。
【図4】図3の金属ベースのフランジと金属キャップのフランジ部分を拡大した断面図。
【図5】本発明の変形例を示すベースのフランジと金属キャップのフランジ部分を拡大した断面図。
【図6】従来の実施形態を示す内部断面図。
【図7】図5の金属ベースのフランジと金属キャップのフランジ部分を拡大した断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 金属ベース
2 金属キャップ
3 水晶振動板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口端部にフランジが形成された金属製のキャップと、
外周端部にフランジが形成された金属製のシェルに絶縁材が充填され、当該絶縁材に金属製のリード端子が貫通固定されたベースと、
当該ベースに搭載される電子素子を有し、
前記ベースと前記キャップの表面には電解ニッケルメッキが施されるとともに前記ベースに前記キャップをかぶせ、前記ベースのフランジに前記キャップのフランジを当接した状態で抵抗溶接して気密封止された電子部品であって、
前記キャップの表面および前記ベースの表面のうち、前記キャップのベースが当接するフランジ部分と、前記ベースのキャップが当接するフランジ部分を含み、内部表面に露出する金属部分には電解ニッケルメッキのみが形成されており、外部表面に露出したリード端子には少なくとも無電解ニッケルメッキが形成されてなることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
開口端部にフランジが形成された金属製のキャップと、
外周端部にフランジが形成された金属製のシェルに絶縁材が充填され、当該絶縁材に金属製のリード端子が貫通固定されたベースと、
当該ベースに搭載される電子素子を有し、
前記ベースに前記キャップをかぶせ、前記ベースのフランジに前記キャップのフランジを当接した状態で抵抗溶接して気密封止された電子部品の製造方法において、
外部表面に電解ニッケルメッキが形成された金属製のベースに電子素子を搭載し、当該ベースにキャップをかぶせて抵抗溶接することで気密封止する工程と、
前記気密封止された電子部品の外部表面の金属部分全面に無電解ニッケルメッキを形成する工程とからなることを特徴とする電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−21270(P2009−21270A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180492(P2007−180492)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】