電子部品の製造方法および該方法で製造された電子部品
【課題】 重ね印刷工数の低減、精密な重ねパターン位置精度(アラインメント精度)および、実質的に無段差の積層を可能とすることにより、生産性の向上、寸法精度の向上、欠損・欠陥解消を可能とする新規な電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 凸版オフセット法を用いて転写板の離型性面上に、複合インキパターン層を形成した後、該複合インキパターン層を被印刷体上に同時に反転転写する工程を有する電子部品の製造方法。導電性インキ、絶縁性インキ及び半導体を含有するインキを組み合わせることで、各種有機トランジスタ素子を形成する。
【解決手段】 凸版オフセット法を用いて転写板の離型性面上に、複合インキパターン層を形成した後、該複合インキパターン層を被印刷体上に同時に反転転写する工程を有する電子部品の製造方法。導電性インキ、絶縁性インキ及び半導体を含有するインキを組み合わせることで、各種有機トランジスタ素子を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凸版オフセット法によって電子部品を製造する方法および該方法により製造された電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷によって電子部品を製造する方法として以下の種々の方法が検討されている。例えば、特許文献1には、円圧型オフセット印刷機を用いてレジストパターンを形成する薄膜トランジスタ回路の形成方法において、転移速度と反転転写速度とを調整して寸法誤差を抑える方法が記載されている。特許文献2には、印刷法によりコア絶縁層上に導体層を形成し、ついで印刷法により導体層上に穴のある絶縁層を形成し、さらに印刷法により前記穴を電磁気特性材料で充填して配線板を製造する方法が記載されている。
【0003】
特許文献3には、フォトリソグラフィー法を用いずに、簡単な設備によりファインパターンを有する印刷配線板を製造するため、機能性材料を離型性面に塗布して塗布面を形成し、前記塗布面に所定形状の凸版を押圧して凸版の凸部分に前記機能性材料を反転転写して除去し、塗布面に残った前記機能性材料を基板に反転転写し、反転転写した機能性材料の塗膜を加熱乾燥する工程からなる印刷配線板の製造方法が記載されている。特許文献4には、印刷法により良好なファインパターンを有する絶縁層を形成するため、25℃における粘度が50mPa・s以下である絶縁性インクを離型性面上に塗布し、ついで逆パターンをなす凸部を有する凸版を前記塗膜に押圧して前記離型性面上から前記逆パターンをなす前記塗膜を除去し、さらに前記離型性面に残存した塗膜を基板に反転転写して固化することにより所定パターンを有する絶縁層を形成する方法が記載されている。
【0004】
特許文献5には、特定の物性を有する有機溶剤を含有する印刷インキ組成物をシリコーン樹脂膜の表面上に塗布し、その塗膜の一部を凸版の凸部表面上に反転転写したのち、前記シリコーン樹脂膜上に残存した塗膜を基板の表面上に反転転写後、乾燥させることで樹脂膜を形成する方法が記載されている。特許文献6には、ブランケット上にインキを塗布してインキ塗布面を形成し、該インキ塗布面に凸版を押圧して該凸版に接触する部分のインキをブランケット上から除去したのち(凸版オフセット法)、前記ブランケット上に残ったインキを被印刷体に反転転写する印刷方法によって電子部品を製造する方法であって、導電性インキ、絶縁性インキ、半導体インキからなる群から選択されるインキによるパターンを1層又は複数層形成することを特徴とする電子部品の製造方法が開示されている。しかしながら、同法による電子部品の製造方法においては、各機能を有するパターン化された層をブランケット上に一層ずつ形成しこれを被印刷体上へ積層してゆく必要があり、(1)重ね印刷工数が多く製造に手間がかかること、(2)正確な位置に各層のパターンを積層してゆくことが困難なこと、また、(3)下層パターンの段差によりその上に積層するパターンの欠損、欠陥の発生等の重大な課題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−240523号公報
【特許文献2】特開2003−110242号公報
【特許文献3】特開2005−057118号公報
【特許文献4】特開2005−353770号公報
【特許文献5】特開2006−045294号公報
【特許文献6】特開2007−273712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、重ね印刷工数の低減、精密な重ねパターン位置精度(アラインメント精度)および、実質的に無段差の積層を可能とすることにより、生産性の向上、寸法精度の向上、欠損・欠陥解消を可能とする新規な電子部品の製造法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、反転印刷法を適用し、複数のインキ層を同時に反転転写することにより上記課題を解決するものである。すなわち、本発明は第一に、凸版オフセット法を用いて転写板の離型性面上に、複合インキパターン層を形成した後、該複合インキパターン層を被印刷体上に同時に反転転写する工程を有する電子部品の製造方法を提供するものである。
【0008】
第二に、転写板の離型性面上に2種類以上の機能性材料インキを積層し、該積層インキの非画線部分を、凸版オフセット法を用いて同時に除去し複層パターンを形成した後、該複合インキパターン層を被印刷体上に同時に反転転写する工程を有する前述の電子部品の製造方法を提供する。
【0009】
第三に、(1)転写板の離型性面上に、凸版オフセット法により1種以上の機能性材料インキでパターン化された第一の機能性材料インキパターン層を形成する工程(工程1)、(2)第一のパターン化された層に、第二の機能性材料インキ膜層を重ね塗りする工程(工程2)、(3)第一の機能性材料インキパターン層と第二の機能性材料インキ膜層とを同時に被印刷体上に反転転写する工程(積層反転転写工程)を有する前述の電子部品の製造方法を提供する。
【0010】
第四に、前記した第二の機能性材料インキ膜層が2層以上に重ね塗りされたものである前述の電子部品の製造方法を提供する。
【0011】
第五に、前記した工程2の後に、第二の機能性材料インキ膜層の一部、又は、第二の機能性材料インキ膜層及び第一の機能性材料インキパターン層の一部を、凸版オフセット法により再パターン化(除去)する工程(除去工程)を有する前述の電子部品の製造方法を提供する。
【0012】
第六に、前記した除去工程の後に、第三の機能性材料インキ膜層を形成する工程(工程3)を有する前述の電子部品の製造方法を提供する。
【0013】
第七に、電子部品を構成する機能性積層体の少なくとも一層が、前記した何れかの方法によって製造された電子部品を提供する。
【0014】
第八に、前述の電子部品を形成する層の材料の少なくとも一つが有機半導体である有機トランジスタ素子を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、機能性材料インキパターン層の積層印刷工数の低減、機能性材料インキパターン層間の高精度なアラインメントの実現、および、実質的に段差を形成せずに積層構造を形成することができることから各機能性層材料パターン層の欠損、欠陥を解消することができる。本発明により生産性が高く高性能な電子部品の提供を可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。なお図は、本発明の電子部品の製造方法で用いる印刷方法の説明図である。図は、本発明の印刷工程を模式的に示す図面であって、寸法の比例関係などは特に実態を反映させたものではない。
【0017】
本発明の電子部品の製造法は、従来の、転写板となるブランケット上に凸版オフセット法で一種類のインキで一種類のパターンを形成し被印刷体上に反転転写することにより該印刷パターンを形成する反転印刷法と異なる。本発明の電子部品の製造方法は、転写板の離型性面上に2種類以上の機能性材料インキで複合パターン層を予め形成したのちこれを被印刷体上に反転転写することで電子部品を形成することを特徴とする。
【0018】
ここで言う複合インキパターン層とは、少なくとも2種類のインキからなるインキパターン積層体である。一層以上のパターン化されたインキの層と一層以上のインキのベタ膜の層からなっていてもよい。少なくとも2種類の機能性材料インキを該層に含む複合インキパターンを言う。インキベタ膜はインキパターンを完全に被っていても良いし、該インキパターン層の厚さ以下で、該パターン間を埋める形でも良い。
【0019】
これにより、従来の反転印刷法と比べ、大幅な工程数の低減、機能性パターン層間の高精度なアラインメントの実現できる。また転写板上に予め機能性材料インキパターン層と機能性材料インキ膜層を形成した後に被印刷体へ反転転写することにより、パターンによる段差の無い平滑な印刷面を得ることができる。実質的に段差を形成せずに積層構造を形成することができることから各機能性層パターン層の欠損、欠陥を解消することができる。
【0020】
本発明は、機能性材料インキのパターンを転写板上に形成する方法として凸版オフセット法を用いることを特徴とする。本発明の凸版オフセット法とは、転写板の離型性表面上にインキを塗布してインキ塗布面を形成し、このインキ塗布面に抜き版となる凸版を押圧して該凸版に接触するインキを転写板から除去する方法を言う。
【0021】
転写板の離型性表面へのインキの塗布方法に制限は無く、例えば、インクジェット法、スクーリーン印刷法、スピンコート法、バーコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法等が用いられる。
【0022】
本発明に用いる機能性材料インキとは、適用する印刷方式に適した印刷特性を有し、加熱、光、電子線、乾燥等により電子部品に必要となる機能性材料を形成するものを言う。本発明に適用するインキは、機能性材料を形成する材料を適当な溶剤に溶解または分散したものが好ましい。溶剤の種類に制限はなく該機能性材料の溶解または分散に適した溶剤を適宜選択できる。例えば、水、炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系、などの各種有機溶剤が使用できる。
【0023】
該インキには前記機能性材料の他、必要に応じて樹脂等のバインダー成分、酸化防止剤、皮膜形成促進のための各種触媒、各種界面エネルギー調整剤、レベリング剤、離型促進剤等を添加できる。
【0024】
本発明に用いる機能性材料インキは、例えば、導電性インキ、絶縁性インキ、半導体インキ、保護膜層用インキ等から、電子部品の機能性層を形成するために必要となるインキを適宜選択すればよい。また、本発明により、被印刷体上に印刷形成された機能性複合インキパターン層から、電子部品の構成する機能性材料層への変換方法に特に制限はなく、それぞれに最適な方法を選択できる。例えば、常温によるインキ溶剤成分の除去乾燥、および加熱処理、紫外線等の光、電子線等のエネルギーを加えことにより機能性材料インキより機能性材料を形成することができる。
【0025】
本発明に適用する離型性表面を有する転写板の形状、形態に制限はなく、フィルム状、平板状、ロール状等、印刷方式に最適な形状、形態を選択できる。また、転写板の離型性面には、インキを均一に塗布でき、且つ抜き版となる凸版により容易にインキが離型できる性質を有する、表面エネルギーの小さい材質または離型剤等で表面処理された材質が適用できる。例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂の有機化合物、セラミック層、金属酸化物層をメッキ、蒸着した無機表面が適用できる。中でも、フッ素樹脂、シリコーン樹脂は離型性に優れ且つ柔軟性に優れており離型性表面として好適に適用できる。また、離型性表面は均一な平面でもよく、必要に応じて凸版、凹版のパターン化がなされていても良い。
【0026】
図1は本発明の転写板の離型性面上に2種類以上の機能性材料インキを積層し、該積層インキの非画線部分を、凸版オフセット法を用いて同時に除去し複層パターンを形成した後、該複層パターンを被印刷体上に同時に反転転写する方法を概略的に示した模式図である。
【0027】
図1のモデル図により本発明を説明する。図1(a)は2種類の機能性材料インキを用いた例である。まず機能性材料インキA(4)を転写板(1)の離型性面にベタで均一に塗布する。次いで機能性材料インキB(5)をインキA(4)の上に均一にベタで塗布する。このときインキA(4)とB(5)は相互に混合しないことが好ましい。これは両機能性材料インキの溶剤組成および下地となるインキA(4)の予備乾燥等のプロセス検討で実現できる。次いで抜き版となる凸版(2)を押圧しインキA(4)及びインキB(5)のパターンニングを同時に行う。次いで被印刷体(3)に転写板より該2重パターンを反転転写する。これによりインキA(4)とインキB(5)が正確に重なり合ったパターンを形成することができる。図1(b)は機能性材料インキを3層に重ね、同時にパターニングする例である。3層(インキC,D,E)とも異なった機能性材料インキでも良いし、1層目と3層目を同じインキとしてもよい。
【0028】
機能性材料インキの積層の例として、導電インキの積層パターンの形成について説明する。まず、PEDOT/PSS又はポリアニリン等の導電性高分子からなる導電性インキを転写板上に均一塗布し、ついで溶剤にナノ銀粒子を均一分散した導電性インキを均一ベタで重ね、材料の異なる2種類のインキ層を形成する。ついで凸版オフセット法により該インキ層の非画線部を同時に取り除き、転写板の剥離面上残存インキパターンを被印刷体上に反転転写する。これによりナノ銀パターン上に導電性高分子が正確に積層したパターンが得られる。また三層のインキパターンを同時に形成する例として、例えば、一層目のインキ層を絶縁インキで形成し、二層目を導電インキで形成し、三層目を絶縁インキで形成することにより、絶縁膜に挟まれた導電性パターンを形成することができる。
【0029】
本発明はまた、転写板の離型性面に予め機能性材料インキパターンと機能性材料インキ層を形成した後に被印刷体上へ反転転写する方法を提供する。
【0030】
図2のモデル図により本発明を説明する。図2(a)に示すように反転転写版1上に均一に塗布した第一の層となるインキ面に、抜き版となる凸版2を押圧し、該凸版に接触する部分のインキを転写板上より除去することにより、必要となる第一の機能性インキパターン層9を転写板1上に形成する(凸版オフセット法)(工程1)。この際、第一のインキパターン層は1層でもよく、多層でもよい。ついで、転写板1上に形成されたパターン上に、第二のインキ層として、異なる材料よりなる第二の機能性材料インキ膜層10を塗布形成し(工程2)、ついで被印刷体3上に第一の層および第二の層を同時に反転転写する工程(工程3:反転転写)を経て電子部品を製造する。インキ膜層10はパターン化された第一の層を完全に覆っても良いし、該パターン間に埋め込まれた状態でも良い。
【0031】
本方法を用いることにより、転写板上に形成されたインキパターン層9がインキ膜層10で形成される層に埋め込まれた表面形状を容易に得ることができ、実質的に段差の無い印刷面が得られる。これは従来の予めパターンを基材上に形成した上に新たなインキ層を反転転写印刷する方法と比べ、第二のインキ膜層を形成するインキを十分高いレベリング性を保持した状態でインキパターン9上に塗布できることにより反転転写により基材面と接触する表面の平面性が得られること、およびパターンの段差形状により生じるインキ層の残留応力が軽減されるためであると推定される。もちろんこれは本発明をなんら制限するものではない。
【0032】
第一のパターン化された層は、第二の層を形成するインキに完全に覆われた状態でも良く、また必要に応じて、第二の層を貫通した状態でも良い(図2(b))。かかる形態は、工程1で形成するパターンの厚さや工程2で形成する第二の層の厚さを調整することにより容易に実現できる。
【0033】
さらに、パターン化された第一のインキ層の上の第二のインキ膜層は一層でも良く、また必要に応じて、異なるインキによる多層構造を有していても良い(図2(c))。
【0034】
本発明を、例えば、MIS型有機トランジスタの製造に適用することにより、ゲート電極、ソース/ドレイン電極及び各配線パターンが絶縁膜に埋め込まれた段差の無い面を容易に製造することができる。また、有機半導体の保護膜の形成に応用することにより、保護膜を貫通する導電性のビアを一体として有する保護膜の形成を可能とする。
【0035】
本発明はまた、図2(d)にモデル図で示すように、第一の層上に第二の層を形成する工程(工程2)が、前記した第一のインキパターン層の上に第二のインキ膜層を形成する工程(工程2−1)、凸版オフセット法によって第二のインキ膜層を第二の抜き版2aでパターン化する工程(工程2−2)を有することを特徴とする電子部品の製造方法を提供する。第二の抜き版2aによる、第二のインキ膜層形成後のパターン化は、第二のインキ膜層部分だけでも良いし、すでにパターン化された第一のインキパターン層の一部を同時に除去して再パターン化してもよい。
【0036】
本発明によれば、同一の転写板上に異なる機能を発揮する複合パターンを形成した後、被印刷体上に反転転写することにより、複雑な構造の電子部品を容易に形成することができる。本発明によれば、従来の印刷法では極めて困難であった第一の層に形成されたパターンの間や、パターンに沿って新たなパターンを極めて高い位置精度で形成できる。
【0037】
本発明はまず、凸版オフセット法により転写板上に第一のインキパターン層を形成し、ついで該パターン上に第二のインキ膜層10となるインキを塗布する。この際、第二のインキ膜層はパターン化された第一の層を完全に被覆するよう厚くても良く、該パターンの間を埋めるよう該パターンの厚さと同じ、または、より薄くなるよう塗布しても良い。この際、例えば第一のインキが第二のインキに対し撥液性を示すよう調整することにより、該パターン上に第二のインキ層を形成しないようにすることもできる。本発明はついで、第一の抜き版2と形状の異なる第二の抜き版2aを用い、凸版オフセット法により、すでに転写板上に形成された第一のインキパターン層と第二のインキ膜層から、同時に新たなパターンを形成する。第二の抜き版2aによるパターン形成は、第一のインキパターン層をそのままにして、第二のインキ膜層の一部を取り除いても良いし、第二のインキ膜層のパターン形成と第一のインキパターン層のパターン形状の一部変更を同時に行っても良い。第二のインキ膜層を材料の異なる2層以上の層とすることにより3種類以上の材料からなる複合パターンを形成することもできる。
【0038】
本発明を、例えば、MIS型有機トランジスタ素子の製造方法として適用すれば、有機半導体層をソース電極とドレイン電極の間のみ形成した、ソース電極とドレイン電極の側壁のみが有機半導体と接触するいわゆるサイドコンタクト型の有機トランジスタ素子構造を容易形成することができる。
【0039】
本発明はまた、図2(e)にモデル図で示すように第一の機能性材料インキパターン層を形成する工程(工程1)が、転写板上に第一の機能性材料インキパターン層を凸版オフセット法によって形成する工程(工程1−1)、第一の機能性材料インキパターン層9の上に第二の機能性材料インキ膜層10を形成する工程(工程1−2)、凸版オフセット法によって第二のインキ膜層をパターン化する工程(工程1−3)を有する請求項1に記載の電子部品の製造方法を提供する。同一の転写板上に2種類以上の異なる材料により形成されたパターンの形成方法は前記の方法と同様の方法で実現できる。ついで、転写板上の2種以上の異なる材料から形成された該複合パターン上にさらに第三の機能性材料インク膜層12を塗布形成した後に被印刷体(基板)上に反転転写し電子部品を形成する方法を提供する。インクの塗布は該パターンを完全に覆っても良いし、パターンの厚さと同等または薄くてもよい。
【0040】
本発明に用いる機能性材料インキは、例えば、導電性インキ、絶縁性インキ、半導体インキ、保護膜形成用インキ等から、製造する電子部品の要求特性に応じて適宜選択できる。本発明により被印刷体上に印刷形成された機能性材料インキパターン層、インキ膜層から、電子部品の構成する機能性材料層への変換は、例えば、常温乾燥、加熱処理、および紫外線、電子線の照射等の処理等、インキ特性や電子部品にとってそれぞれに最適な方法で実施できる。
【0041】
本発明はまた、電子部品を形成する機能性層の材料の少なくとも一つが有機半導体である有機トランジスタ素子を提供する。本発明において有機半導体層を形成する方法に特に制限は無く、使用する有機半導体や、下地となる機能性材料層や、基材に適した方法を適宜選択できる。例えば、真空蒸着法、化学気相成長法、イオンプレーティング法等のドライプロセスや、スピンコート法、ディップコート、ディスペンサーコート、スリットコート、キャスト法、凸版反転転写印刷、スクーリーン印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、マイクロコンタクト法、凸版オフセット印刷等のウェットプロセスが適用できる。このうち凸版オフセット印刷法は、膜厚制御が容易なこと、印刷位置精度に優れること、微細パターンが容易に形成できることから最も好ましい層形成法である。
【0042】
また本発明において有機半導体層を形成する有機半導体材料に制限は無く、例えば、低低分子有機半導体して、フタロシアニン誘導体、ポリフィリン誘導体、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体、フラーレン誘導体、ペンタセン、ペンタセントリイソプロピルシリル(TIPS)ペンタセン、フッ素化ペンタセン、フッ素化テトラセン、ペリレン、テトラセン、ピレン、フェナントレン、コロネン等の多環芳香族化合物およびその誘導体、オリゴチオフェンおよびその誘導体、チアゾール誘導体、フラーレン誘導体、その他チオフェン、フェニレン、ビニレン等を組み合わせた各種低分子半導体および加熱等により有機半導体となる有機半導体前駆体が適用できる。また、高分子化合物として、ポリチオフェン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、PQT−12等のポリチオフェン系高分子、B10TTT、PB12TTT、PB14TTT等のチオフェン−チエノチオフェン共重合体、F8T2等のフルオレン系高分子、その他、パラフェニレンビニレン等のフェニレンビニレン系高分子、ポリトリアリールアミン等のアリールアミン系高分子、TIPSペンタセン、各種ペンタセン前駆体等の可溶性アセン系化合物の一種以上およびこれら共重合体が好適に使用できる。
【0043】
これら有機半導体のうち、インキ化が容易で、機能性層およびパターニング形成がウェットプロセスで可能となり、凸版オフセット法によるパターンニングが可能となる溶剤可溶性のものが好適に使用できる。これら溶剤可溶性有機半導体として、ポリ(3−へキシルチオフェン)、PQT−12等のポリチオフェン系高分子、PB10TTT、PB12TTT、PB14TTT等のチオフェン−チエノチオフェン共重合体、F8T2等のフルオレン系高分子、フェニレンビニレン系高分子、トリアリールアミン系高分子、TIPSペンタセンが好適に使用できる。
【0044】
これら有機半導体インキに適用可能な溶剤は、常温もしくは多少の加熱で該有機半導体を溶解でき、適度の揮発性を有し、溶剤揮発後に有機半導体薄膜を形成できればよく、例えば、トルエン、キシレン、クロロホルム、アニソール、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メシチレン、ジクロルベンゼンやトリクロロベンゼン等のクロルベンゼン系溶剤、およびこれら溶媒を含有する混合溶媒が好適に使用できる。
【0045】
また、これら溶液にインキ特性の向上を目的として、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤等の表面エネルギー調性剤を添加することもできる。特に結晶性半導体溶液へのフッ素系界面活性剤は、インキ特性の向上効果のみならず、インキの乾燥により形成した半導体膜の特性、例えば電界効果移動度等の向上が期待できることから好適に使用できる。
【0046】
本発明に適用できる導電体を形成する導電インキとしては、例えば、適当な溶剤中に、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、アルミ、カルシウム、マグネシウム、鉄、白金、パラジウム、スズ、クロム、鉛、等の金属粒子及銀/パラジウム等のこれら金属の合金、酸化銀、有機銀、有機金等の比較的低温で熱分化して導電性金属を与える熱分解性金属化合物、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジュウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物粒子を導電性成分として含んでいても良いし、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)、ポリアニリン等の導電性高分子を含んでいても良い。特にナノ銀粒子を溶剤に分散し、低分子シリコーン等の離型剤、フッ素界面活性剤等の界面エネルギー調性剤を混合したインキは凸版オフセット法に適しており、優れたパターンニング性および低温焼成で高い導電性を示すことから好適に使用できる。
【0047】
本発明に適用できる絶縁体を形成する絶縁インキは、絶縁性を示す材料を含んでいれば良く、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリルニトリル系樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂などが適用できる。また、これら単独または2種類以上を併用してもよく、必要に応じて、アルミナ微粒子、シリカ微粒子、タンタルオキサイド微粒子等の高比誘電率粒子や中空シリカ微粒子等の低比誘電率粒子などの体質成分を添加しても良い。絶縁インキに適用できる溶剤に制限は無く、例えば、水、炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系、グリコールエーテル系などの各種有機溶剤が使用できる。また必要に応じて、シリコーン系およびフッ素系の界面エネルギー調性剤を添加することができる。
【0048】
本発明に適用できる、保護膜を形成する保護膜インキは、加熱、光、電子線、乾燥等により光、酸素、水、イオン等のバリヤー性に優れた膜を形成する材料を含んでいればよい。例えば、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ナイロン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂等の有機膜を形成する樹脂や、加水分解および必要に応じて加熱処理により無機皮膜を形成する、シラン化合物、シラザン化合物、マグネシウムアルコキシド化合物、アルミアルコキシド化合物、タンタルアルコキシド化合物が使用できる。インキ溶剤に制限は無く、適用する材料を溶解または安定分散できるものであれば特に制限無い。例えば、水、炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系などの各種有機溶剤が使用できる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0050】
(実施例1)BGSC有機トランジスタ素子の形成
図3に示すように、転写板1上にソース/ドレイン電極パターン9s/9dを作成した(図3の3−1)。尚、電極パターン形成にはフッ素系界面活性剤を添加した導電性インキを用いた。ついで該パターンを形成した転写板1上にP3HTを主成分とする半導体インキを、溶剤蒸発後の膜厚が最大でも該電極の厚さ以下となるようキャピラリーコーターを用い均一に塗布しP3HTのインキ膜層13を形成した(図3の3−2)。この際、電極パターン上に有機半導体インキの塗布は認められなかった。
【0051】
ついで、ソース/ドレイン間の形状が該パターンを形成した凸版パターンと逆となった以外該電極パターン形成用の凸版と同じパターンを用い、転写板1上に形成したソース/ドレインパターンと該凸版の該パターンの相当位置を合わせ、凸版オフセット法も用いて、ソース/ドレイン電極パターンはそのままにソース/ドレイン間に残存する有機半導体インキパターン以外のすべての有機半導体インキを転写板1上より除去した(図3の3−3)。ついで転写板1上に形成したソース/ドレイン電極、有機半導体層をすべてカバーするよう、ゲート絶縁膜インキをキャピラリーコーターで均一に塗布し、絶縁インキ膜層10iを形成した(図3の3−4)。
【0052】
ついで、絶縁膜に埋め込まれたゲート電極パターン上に、ゲート電極が絶縁膜を介してソース/ドレイン間隙に配置し、有機半導体層面下に配置するよう位置合わせを行い反転転写して積層構造を形成した(図3の3−5)。ついで該積層体をグローボックス中で、ホットプレート上で150℃、40分の熱処理を行い、ボトムゲートサイドコンタクト(BGSC)構造を有するMIS型の有機半導体トランジスタ素子構造形成した。
【0053】
(実施例2)BGBC型有機トランジスタ素子の製造方法
BGBC型のMIS型有機トランジスタ素子の製造法を図4に示す。
(1)ゲート電極の作成:
シリコーン樹脂からなる平滑な離型面を有する転写板1全面にナノ銀を分散させた凸版オフセット印刷用導電インキをキャピラリーコーターにより均一に塗布した。ついでガラス製凸版(図省略)をインキ面に押し付け余分のインキを取り除きゲート電極パターン9gを転写板1上に形成した。ついでエポキシ樹脂とポリビニルフェノール系樹脂を主成分とする絶縁インキを転写板1上のゲートパターン9g上にキャピラリーコーターを用いて均一に塗布し、絶縁インキ膜層10iを形成した。約1分間放置後、半乾燥状態となった絶縁膜用インキとゲート電極パターンを、ポリカーボネートを主体とするプラスチックフィルム(被印刷体3)上に反転転写し、絶縁膜インキにゲート電極が埋め込まれた表面を形成した(4a−3)。
(2)ソース/ドレイン電極の形成
ついで埋め込みゲートパターンの形成と同様に、ナノ銀を分散させた導電インキを用い、ソース電極9sとドレイン電極9dを転写板1A上に形成し、絶縁膜インキを該電極上に塗布した。ついで、ゲート電極が絶縁膜を介してソース/ドレイン間隙に配置するようアラインメントを行い、ゲート電極が埋め込まれ絶縁膜(図4a−3)上に反転転写した(図4a−4)。導電性パターンおよび絶縁膜で形成された積層体をホットプレート上で150℃約、約40分加熱処理を行い、ナノ銀インクの焼結による導電パターン形成および絶縁膜インキの樹脂成分を架橋させ絶縁膜を形成した。
(3)半導体層の形成
ついで、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)をキシレンに溶解させ、フッ素系界面活性剤を添加した半導体インキを用い、シリコーン樹脂からなる離型性面を有する転写板を用いて凸版オフセット法によりパターンニングし(工程図省略)、先に焼成して形成したソース/ドレイン電極上に該パターン13を反転転写した。これにより、ボトムコンタクト型のMIS型有機トランジスタ素子を形成した(図4a−5)
【0054】
(実施例3)BGBC+保護膜(ビア付)+画素電極
図5aに示すようにシリコーン樹脂からなる平滑な離型性面を有する転写板1上に、凸版オフセット法により、フッ素系界面活性剤からなる撥液成分を添加したナノ銀インキを用いビアとなる導電パターン14を形成した。エポキシ系樹脂を主成分とする保護膜形成用インキの塗布膜厚を、少なくとも該導電パターン厚さ以下となるよう調節し、先に形成したナノ銀インキのパターン上に均一に塗布し、保護膜インキ膜層を形成した15。この際パターン上にはインキの付着は認められなかった。保護膜形成用インキ膜層と導電パターン層を同時に、実施例1で形成した有機トランジスタのドレイン電極上9dに導電パターン14が接触するよう反転転写し、ついで140℃で約30分焼成した。
【0055】
ついで、PEDOT/PSSを主成分とする導電インキを用い、凸版オフセット法によりシリコーン樹脂からなる平滑な離型性面を有する転写板1上に形成した画素電極となるパターンを、先に形成したビアと一部重なるよう保護膜上に反転転写し、次いでオーブン中で100℃、30分の熱処理を行った。これにより保護膜およびビアでドレイン電極9gと導通した画素電極15を有する有機TFT素子構造を作成した(5c)。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、重ね印刷工数の低減、精密な重ねパターンの形成および、各層の段差の問題を解消し、生産性の向上、寸法制度の向上、欠陥解消を可能とする等の特徴により、配線基板、RFID、TFT、CMOS、メモリ、有機EL素子、各種コンデンサ、インダクタ、抵抗、太陽電池等の電子部品の製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)凸版オフセット法による2層同時パターンニング、反転転写(b)凸版オフセット法による3層同時パターンニング、反転転写
【図2】(a)一層被せ(b)パターンの貫通(c)多層被せ(d)除去工程(e)除去後の多層被せ
【図3】(3−1)パターン抜き(電極形成)(3−2)半導体ベタ塗布(3−3)パターン抜き(3−4)ゲート絶縁膜ベタ塗布(3−5)反転転写
【図4】(4a−1)ゲート電極形成(4a−2)絶縁膜ベタ塗布(4a−3)被印刷体への反転転写(4b−1)ソース/ドレイン電極形成(4b−2)絶縁膜ベタ塗布(4a−4)「4a−3」上へ「4b−2」を反転転写(4a−5)半導体層の反転転写
【図5】(5a)導電パターン(ビア)形成(5b)保護膜ベタ塗布(5c)「4a−5」上に「5b」を反転転写
【符号の説明】
【0058】
1.転写板
1A.転写板
2.凸版抜き版
2a.第2の凸版抜き版
3.被印刷体(基材)
4.インキ膜層A
5.インキ膜層B
6.インキ膜層C
7.インキ膜層D
8.インキ膜層E
9.凸版オフセット法によってパターン化された第一のインキ層
9G.ゲート電極
9S.ソース電極
9D.ドレイン電極
10.第二の機能性材料インキ膜層
10I.絶縁膜インキ層
11.2層目の第二のインキ膜層
12.第三の機能性材料インク膜層
13.有機半導体インキ膜
14.ビアとなる導電パターン
15.保護膜インキ膜層
16.画素電極
【技術分野】
【0001】
本発明は凸版オフセット法によって電子部品を製造する方法および該方法により製造された電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷によって電子部品を製造する方法として以下の種々の方法が検討されている。例えば、特許文献1には、円圧型オフセット印刷機を用いてレジストパターンを形成する薄膜トランジスタ回路の形成方法において、転移速度と反転転写速度とを調整して寸法誤差を抑える方法が記載されている。特許文献2には、印刷法によりコア絶縁層上に導体層を形成し、ついで印刷法により導体層上に穴のある絶縁層を形成し、さらに印刷法により前記穴を電磁気特性材料で充填して配線板を製造する方法が記載されている。
【0003】
特許文献3には、フォトリソグラフィー法を用いずに、簡単な設備によりファインパターンを有する印刷配線板を製造するため、機能性材料を離型性面に塗布して塗布面を形成し、前記塗布面に所定形状の凸版を押圧して凸版の凸部分に前記機能性材料を反転転写して除去し、塗布面に残った前記機能性材料を基板に反転転写し、反転転写した機能性材料の塗膜を加熱乾燥する工程からなる印刷配線板の製造方法が記載されている。特許文献4には、印刷法により良好なファインパターンを有する絶縁層を形成するため、25℃における粘度が50mPa・s以下である絶縁性インクを離型性面上に塗布し、ついで逆パターンをなす凸部を有する凸版を前記塗膜に押圧して前記離型性面上から前記逆パターンをなす前記塗膜を除去し、さらに前記離型性面に残存した塗膜を基板に反転転写して固化することにより所定パターンを有する絶縁層を形成する方法が記載されている。
【0004】
特許文献5には、特定の物性を有する有機溶剤を含有する印刷インキ組成物をシリコーン樹脂膜の表面上に塗布し、その塗膜の一部を凸版の凸部表面上に反転転写したのち、前記シリコーン樹脂膜上に残存した塗膜を基板の表面上に反転転写後、乾燥させることで樹脂膜を形成する方法が記載されている。特許文献6には、ブランケット上にインキを塗布してインキ塗布面を形成し、該インキ塗布面に凸版を押圧して該凸版に接触する部分のインキをブランケット上から除去したのち(凸版オフセット法)、前記ブランケット上に残ったインキを被印刷体に反転転写する印刷方法によって電子部品を製造する方法であって、導電性インキ、絶縁性インキ、半導体インキからなる群から選択されるインキによるパターンを1層又は複数層形成することを特徴とする電子部品の製造方法が開示されている。しかしながら、同法による電子部品の製造方法においては、各機能を有するパターン化された層をブランケット上に一層ずつ形成しこれを被印刷体上へ積層してゆく必要があり、(1)重ね印刷工数が多く製造に手間がかかること、(2)正確な位置に各層のパターンを積層してゆくことが困難なこと、また、(3)下層パターンの段差によりその上に積層するパターンの欠損、欠陥の発生等の重大な課題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−240523号公報
【特許文献2】特開2003−110242号公報
【特許文献3】特開2005−057118号公報
【特許文献4】特開2005−353770号公報
【特許文献5】特開2006−045294号公報
【特許文献6】特開2007−273712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、重ね印刷工数の低減、精密な重ねパターン位置精度(アラインメント精度)および、実質的に無段差の積層を可能とすることにより、生産性の向上、寸法精度の向上、欠損・欠陥解消を可能とする新規な電子部品の製造法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、反転印刷法を適用し、複数のインキ層を同時に反転転写することにより上記課題を解決するものである。すなわち、本発明は第一に、凸版オフセット法を用いて転写板の離型性面上に、複合インキパターン層を形成した後、該複合インキパターン層を被印刷体上に同時に反転転写する工程を有する電子部品の製造方法を提供するものである。
【0008】
第二に、転写板の離型性面上に2種類以上の機能性材料インキを積層し、該積層インキの非画線部分を、凸版オフセット法を用いて同時に除去し複層パターンを形成した後、該複合インキパターン層を被印刷体上に同時に反転転写する工程を有する前述の電子部品の製造方法を提供する。
【0009】
第三に、(1)転写板の離型性面上に、凸版オフセット法により1種以上の機能性材料インキでパターン化された第一の機能性材料インキパターン層を形成する工程(工程1)、(2)第一のパターン化された層に、第二の機能性材料インキ膜層を重ね塗りする工程(工程2)、(3)第一の機能性材料インキパターン層と第二の機能性材料インキ膜層とを同時に被印刷体上に反転転写する工程(積層反転転写工程)を有する前述の電子部品の製造方法を提供する。
【0010】
第四に、前記した第二の機能性材料インキ膜層が2層以上に重ね塗りされたものである前述の電子部品の製造方法を提供する。
【0011】
第五に、前記した工程2の後に、第二の機能性材料インキ膜層の一部、又は、第二の機能性材料インキ膜層及び第一の機能性材料インキパターン層の一部を、凸版オフセット法により再パターン化(除去)する工程(除去工程)を有する前述の電子部品の製造方法を提供する。
【0012】
第六に、前記した除去工程の後に、第三の機能性材料インキ膜層を形成する工程(工程3)を有する前述の電子部品の製造方法を提供する。
【0013】
第七に、電子部品を構成する機能性積層体の少なくとも一層が、前記した何れかの方法によって製造された電子部品を提供する。
【0014】
第八に、前述の電子部品を形成する層の材料の少なくとも一つが有機半導体である有機トランジスタ素子を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、機能性材料インキパターン層の積層印刷工数の低減、機能性材料インキパターン層間の高精度なアラインメントの実現、および、実質的に段差を形成せずに積層構造を形成することができることから各機能性層材料パターン層の欠損、欠陥を解消することができる。本発明により生産性が高く高性能な電子部品の提供を可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。なお図は、本発明の電子部品の製造方法で用いる印刷方法の説明図である。図は、本発明の印刷工程を模式的に示す図面であって、寸法の比例関係などは特に実態を反映させたものではない。
【0017】
本発明の電子部品の製造法は、従来の、転写板となるブランケット上に凸版オフセット法で一種類のインキで一種類のパターンを形成し被印刷体上に反転転写することにより該印刷パターンを形成する反転印刷法と異なる。本発明の電子部品の製造方法は、転写板の離型性面上に2種類以上の機能性材料インキで複合パターン層を予め形成したのちこれを被印刷体上に反転転写することで電子部品を形成することを特徴とする。
【0018】
ここで言う複合インキパターン層とは、少なくとも2種類のインキからなるインキパターン積層体である。一層以上のパターン化されたインキの層と一層以上のインキのベタ膜の層からなっていてもよい。少なくとも2種類の機能性材料インキを該層に含む複合インキパターンを言う。インキベタ膜はインキパターンを完全に被っていても良いし、該インキパターン層の厚さ以下で、該パターン間を埋める形でも良い。
【0019】
これにより、従来の反転印刷法と比べ、大幅な工程数の低減、機能性パターン層間の高精度なアラインメントの実現できる。また転写板上に予め機能性材料インキパターン層と機能性材料インキ膜層を形成した後に被印刷体へ反転転写することにより、パターンによる段差の無い平滑な印刷面を得ることができる。実質的に段差を形成せずに積層構造を形成することができることから各機能性層パターン層の欠損、欠陥を解消することができる。
【0020】
本発明は、機能性材料インキのパターンを転写板上に形成する方法として凸版オフセット法を用いることを特徴とする。本発明の凸版オフセット法とは、転写板の離型性表面上にインキを塗布してインキ塗布面を形成し、このインキ塗布面に抜き版となる凸版を押圧して該凸版に接触するインキを転写板から除去する方法を言う。
【0021】
転写板の離型性表面へのインキの塗布方法に制限は無く、例えば、インクジェット法、スクーリーン印刷法、スピンコート法、バーコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法等が用いられる。
【0022】
本発明に用いる機能性材料インキとは、適用する印刷方式に適した印刷特性を有し、加熱、光、電子線、乾燥等により電子部品に必要となる機能性材料を形成するものを言う。本発明に適用するインキは、機能性材料を形成する材料を適当な溶剤に溶解または分散したものが好ましい。溶剤の種類に制限はなく該機能性材料の溶解または分散に適した溶剤を適宜選択できる。例えば、水、炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系、などの各種有機溶剤が使用できる。
【0023】
該インキには前記機能性材料の他、必要に応じて樹脂等のバインダー成分、酸化防止剤、皮膜形成促進のための各種触媒、各種界面エネルギー調整剤、レベリング剤、離型促進剤等を添加できる。
【0024】
本発明に用いる機能性材料インキは、例えば、導電性インキ、絶縁性インキ、半導体インキ、保護膜層用インキ等から、電子部品の機能性層を形成するために必要となるインキを適宜選択すればよい。また、本発明により、被印刷体上に印刷形成された機能性複合インキパターン層から、電子部品の構成する機能性材料層への変換方法に特に制限はなく、それぞれに最適な方法を選択できる。例えば、常温によるインキ溶剤成分の除去乾燥、および加熱処理、紫外線等の光、電子線等のエネルギーを加えことにより機能性材料インキより機能性材料を形成することができる。
【0025】
本発明に適用する離型性表面を有する転写板の形状、形態に制限はなく、フィルム状、平板状、ロール状等、印刷方式に最適な形状、形態を選択できる。また、転写板の離型性面には、インキを均一に塗布でき、且つ抜き版となる凸版により容易にインキが離型できる性質を有する、表面エネルギーの小さい材質または離型剤等で表面処理された材質が適用できる。例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂の有機化合物、セラミック層、金属酸化物層をメッキ、蒸着した無機表面が適用できる。中でも、フッ素樹脂、シリコーン樹脂は離型性に優れ且つ柔軟性に優れており離型性表面として好適に適用できる。また、離型性表面は均一な平面でもよく、必要に応じて凸版、凹版のパターン化がなされていても良い。
【0026】
図1は本発明の転写板の離型性面上に2種類以上の機能性材料インキを積層し、該積層インキの非画線部分を、凸版オフセット法を用いて同時に除去し複層パターンを形成した後、該複層パターンを被印刷体上に同時に反転転写する方法を概略的に示した模式図である。
【0027】
図1のモデル図により本発明を説明する。図1(a)は2種類の機能性材料インキを用いた例である。まず機能性材料インキA(4)を転写板(1)の離型性面にベタで均一に塗布する。次いで機能性材料インキB(5)をインキA(4)の上に均一にベタで塗布する。このときインキA(4)とB(5)は相互に混合しないことが好ましい。これは両機能性材料インキの溶剤組成および下地となるインキA(4)の予備乾燥等のプロセス検討で実現できる。次いで抜き版となる凸版(2)を押圧しインキA(4)及びインキB(5)のパターンニングを同時に行う。次いで被印刷体(3)に転写板より該2重パターンを反転転写する。これによりインキA(4)とインキB(5)が正確に重なり合ったパターンを形成することができる。図1(b)は機能性材料インキを3層に重ね、同時にパターニングする例である。3層(インキC,D,E)とも異なった機能性材料インキでも良いし、1層目と3層目を同じインキとしてもよい。
【0028】
機能性材料インキの積層の例として、導電インキの積層パターンの形成について説明する。まず、PEDOT/PSS又はポリアニリン等の導電性高分子からなる導電性インキを転写板上に均一塗布し、ついで溶剤にナノ銀粒子を均一分散した導電性インキを均一ベタで重ね、材料の異なる2種類のインキ層を形成する。ついで凸版オフセット法により該インキ層の非画線部を同時に取り除き、転写板の剥離面上残存インキパターンを被印刷体上に反転転写する。これによりナノ銀パターン上に導電性高分子が正確に積層したパターンが得られる。また三層のインキパターンを同時に形成する例として、例えば、一層目のインキ層を絶縁インキで形成し、二層目を導電インキで形成し、三層目を絶縁インキで形成することにより、絶縁膜に挟まれた導電性パターンを形成することができる。
【0029】
本発明はまた、転写板の離型性面に予め機能性材料インキパターンと機能性材料インキ層を形成した後に被印刷体上へ反転転写する方法を提供する。
【0030】
図2のモデル図により本発明を説明する。図2(a)に示すように反転転写版1上に均一に塗布した第一の層となるインキ面に、抜き版となる凸版2を押圧し、該凸版に接触する部分のインキを転写板上より除去することにより、必要となる第一の機能性インキパターン層9を転写板1上に形成する(凸版オフセット法)(工程1)。この際、第一のインキパターン層は1層でもよく、多層でもよい。ついで、転写板1上に形成されたパターン上に、第二のインキ層として、異なる材料よりなる第二の機能性材料インキ膜層10を塗布形成し(工程2)、ついで被印刷体3上に第一の層および第二の層を同時に反転転写する工程(工程3:反転転写)を経て電子部品を製造する。インキ膜層10はパターン化された第一の層を完全に覆っても良いし、該パターン間に埋め込まれた状態でも良い。
【0031】
本方法を用いることにより、転写板上に形成されたインキパターン層9がインキ膜層10で形成される層に埋め込まれた表面形状を容易に得ることができ、実質的に段差の無い印刷面が得られる。これは従来の予めパターンを基材上に形成した上に新たなインキ層を反転転写印刷する方法と比べ、第二のインキ膜層を形成するインキを十分高いレベリング性を保持した状態でインキパターン9上に塗布できることにより反転転写により基材面と接触する表面の平面性が得られること、およびパターンの段差形状により生じるインキ層の残留応力が軽減されるためであると推定される。もちろんこれは本発明をなんら制限するものではない。
【0032】
第一のパターン化された層は、第二の層を形成するインキに完全に覆われた状態でも良く、また必要に応じて、第二の層を貫通した状態でも良い(図2(b))。かかる形態は、工程1で形成するパターンの厚さや工程2で形成する第二の層の厚さを調整することにより容易に実現できる。
【0033】
さらに、パターン化された第一のインキ層の上の第二のインキ膜層は一層でも良く、また必要に応じて、異なるインキによる多層構造を有していても良い(図2(c))。
【0034】
本発明を、例えば、MIS型有機トランジスタの製造に適用することにより、ゲート電極、ソース/ドレイン電極及び各配線パターンが絶縁膜に埋め込まれた段差の無い面を容易に製造することができる。また、有機半導体の保護膜の形成に応用することにより、保護膜を貫通する導電性のビアを一体として有する保護膜の形成を可能とする。
【0035】
本発明はまた、図2(d)にモデル図で示すように、第一の層上に第二の層を形成する工程(工程2)が、前記した第一のインキパターン層の上に第二のインキ膜層を形成する工程(工程2−1)、凸版オフセット法によって第二のインキ膜層を第二の抜き版2aでパターン化する工程(工程2−2)を有することを特徴とする電子部品の製造方法を提供する。第二の抜き版2aによる、第二のインキ膜層形成後のパターン化は、第二のインキ膜層部分だけでも良いし、すでにパターン化された第一のインキパターン層の一部を同時に除去して再パターン化してもよい。
【0036】
本発明によれば、同一の転写板上に異なる機能を発揮する複合パターンを形成した後、被印刷体上に反転転写することにより、複雑な構造の電子部品を容易に形成することができる。本発明によれば、従来の印刷法では極めて困難であった第一の層に形成されたパターンの間や、パターンに沿って新たなパターンを極めて高い位置精度で形成できる。
【0037】
本発明はまず、凸版オフセット法により転写板上に第一のインキパターン層を形成し、ついで該パターン上に第二のインキ膜層10となるインキを塗布する。この際、第二のインキ膜層はパターン化された第一の層を完全に被覆するよう厚くても良く、該パターンの間を埋めるよう該パターンの厚さと同じ、または、より薄くなるよう塗布しても良い。この際、例えば第一のインキが第二のインキに対し撥液性を示すよう調整することにより、該パターン上に第二のインキ層を形成しないようにすることもできる。本発明はついで、第一の抜き版2と形状の異なる第二の抜き版2aを用い、凸版オフセット法により、すでに転写板上に形成された第一のインキパターン層と第二のインキ膜層から、同時に新たなパターンを形成する。第二の抜き版2aによるパターン形成は、第一のインキパターン層をそのままにして、第二のインキ膜層の一部を取り除いても良いし、第二のインキ膜層のパターン形成と第一のインキパターン層のパターン形状の一部変更を同時に行っても良い。第二のインキ膜層を材料の異なる2層以上の層とすることにより3種類以上の材料からなる複合パターンを形成することもできる。
【0038】
本発明を、例えば、MIS型有機トランジスタ素子の製造方法として適用すれば、有機半導体層をソース電極とドレイン電極の間のみ形成した、ソース電極とドレイン電極の側壁のみが有機半導体と接触するいわゆるサイドコンタクト型の有機トランジスタ素子構造を容易形成することができる。
【0039】
本発明はまた、図2(e)にモデル図で示すように第一の機能性材料インキパターン層を形成する工程(工程1)が、転写板上に第一の機能性材料インキパターン層を凸版オフセット法によって形成する工程(工程1−1)、第一の機能性材料インキパターン層9の上に第二の機能性材料インキ膜層10を形成する工程(工程1−2)、凸版オフセット法によって第二のインキ膜層をパターン化する工程(工程1−3)を有する請求項1に記載の電子部品の製造方法を提供する。同一の転写板上に2種類以上の異なる材料により形成されたパターンの形成方法は前記の方法と同様の方法で実現できる。ついで、転写板上の2種以上の異なる材料から形成された該複合パターン上にさらに第三の機能性材料インク膜層12を塗布形成した後に被印刷体(基板)上に反転転写し電子部品を形成する方法を提供する。インクの塗布は該パターンを完全に覆っても良いし、パターンの厚さと同等または薄くてもよい。
【0040】
本発明に用いる機能性材料インキは、例えば、導電性インキ、絶縁性インキ、半導体インキ、保護膜形成用インキ等から、製造する電子部品の要求特性に応じて適宜選択できる。本発明により被印刷体上に印刷形成された機能性材料インキパターン層、インキ膜層から、電子部品の構成する機能性材料層への変換は、例えば、常温乾燥、加熱処理、および紫外線、電子線の照射等の処理等、インキ特性や電子部品にとってそれぞれに最適な方法で実施できる。
【0041】
本発明はまた、電子部品を形成する機能性層の材料の少なくとも一つが有機半導体である有機トランジスタ素子を提供する。本発明において有機半導体層を形成する方法に特に制限は無く、使用する有機半導体や、下地となる機能性材料層や、基材に適した方法を適宜選択できる。例えば、真空蒸着法、化学気相成長法、イオンプレーティング法等のドライプロセスや、スピンコート法、ディップコート、ディスペンサーコート、スリットコート、キャスト法、凸版反転転写印刷、スクーリーン印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、マイクロコンタクト法、凸版オフセット印刷等のウェットプロセスが適用できる。このうち凸版オフセット印刷法は、膜厚制御が容易なこと、印刷位置精度に優れること、微細パターンが容易に形成できることから最も好ましい層形成法である。
【0042】
また本発明において有機半導体層を形成する有機半導体材料に制限は無く、例えば、低低分子有機半導体して、フタロシアニン誘導体、ポリフィリン誘導体、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体、フラーレン誘導体、ペンタセン、ペンタセントリイソプロピルシリル(TIPS)ペンタセン、フッ素化ペンタセン、フッ素化テトラセン、ペリレン、テトラセン、ピレン、フェナントレン、コロネン等の多環芳香族化合物およびその誘導体、オリゴチオフェンおよびその誘導体、チアゾール誘導体、フラーレン誘導体、その他チオフェン、フェニレン、ビニレン等を組み合わせた各種低分子半導体および加熱等により有機半導体となる有機半導体前駆体が適用できる。また、高分子化合物として、ポリチオフェン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、PQT−12等のポリチオフェン系高分子、B10TTT、PB12TTT、PB14TTT等のチオフェン−チエノチオフェン共重合体、F8T2等のフルオレン系高分子、その他、パラフェニレンビニレン等のフェニレンビニレン系高分子、ポリトリアリールアミン等のアリールアミン系高分子、TIPSペンタセン、各種ペンタセン前駆体等の可溶性アセン系化合物の一種以上およびこれら共重合体が好適に使用できる。
【0043】
これら有機半導体のうち、インキ化が容易で、機能性層およびパターニング形成がウェットプロセスで可能となり、凸版オフセット法によるパターンニングが可能となる溶剤可溶性のものが好適に使用できる。これら溶剤可溶性有機半導体として、ポリ(3−へキシルチオフェン)、PQT−12等のポリチオフェン系高分子、PB10TTT、PB12TTT、PB14TTT等のチオフェン−チエノチオフェン共重合体、F8T2等のフルオレン系高分子、フェニレンビニレン系高分子、トリアリールアミン系高分子、TIPSペンタセンが好適に使用できる。
【0044】
これら有機半導体インキに適用可能な溶剤は、常温もしくは多少の加熱で該有機半導体を溶解でき、適度の揮発性を有し、溶剤揮発後に有機半導体薄膜を形成できればよく、例えば、トルエン、キシレン、クロロホルム、アニソール、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メシチレン、ジクロルベンゼンやトリクロロベンゼン等のクロルベンゼン系溶剤、およびこれら溶媒を含有する混合溶媒が好適に使用できる。
【0045】
また、これら溶液にインキ特性の向上を目的として、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤等の表面エネルギー調性剤を添加することもできる。特に結晶性半導体溶液へのフッ素系界面活性剤は、インキ特性の向上効果のみならず、インキの乾燥により形成した半導体膜の特性、例えば電界効果移動度等の向上が期待できることから好適に使用できる。
【0046】
本発明に適用できる導電体を形成する導電インキとしては、例えば、適当な溶剤中に、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、アルミ、カルシウム、マグネシウム、鉄、白金、パラジウム、スズ、クロム、鉛、等の金属粒子及銀/パラジウム等のこれら金属の合金、酸化銀、有機銀、有機金等の比較的低温で熱分化して導電性金属を与える熱分解性金属化合物、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジュウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物粒子を導電性成分として含んでいても良いし、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)、ポリアニリン等の導電性高分子を含んでいても良い。特にナノ銀粒子を溶剤に分散し、低分子シリコーン等の離型剤、フッ素界面活性剤等の界面エネルギー調性剤を混合したインキは凸版オフセット法に適しており、優れたパターンニング性および低温焼成で高い導電性を示すことから好適に使用できる。
【0047】
本発明に適用できる絶縁体を形成する絶縁インキは、絶縁性を示す材料を含んでいれば良く、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリルニトリル系樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂などが適用できる。また、これら単独または2種類以上を併用してもよく、必要に応じて、アルミナ微粒子、シリカ微粒子、タンタルオキサイド微粒子等の高比誘電率粒子や中空シリカ微粒子等の低比誘電率粒子などの体質成分を添加しても良い。絶縁インキに適用できる溶剤に制限は無く、例えば、水、炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系、グリコールエーテル系などの各種有機溶剤が使用できる。また必要に応じて、シリコーン系およびフッ素系の界面エネルギー調性剤を添加することができる。
【0048】
本発明に適用できる、保護膜を形成する保護膜インキは、加熱、光、電子線、乾燥等により光、酸素、水、イオン等のバリヤー性に優れた膜を形成する材料を含んでいればよい。例えば、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ナイロン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂等の有機膜を形成する樹脂や、加水分解および必要に応じて加熱処理により無機皮膜を形成する、シラン化合物、シラザン化合物、マグネシウムアルコキシド化合物、アルミアルコキシド化合物、タンタルアルコキシド化合物が使用できる。インキ溶剤に制限は無く、適用する材料を溶解または安定分散できるものであれば特に制限無い。例えば、水、炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系などの各種有機溶剤が使用できる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0050】
(実施例1)BGSC有機トランジスタ素子の形成
図3に示すように、転写板1上にソース/ドレイン電極パターン9s/9dを作成した(図3の3−1)。尚、電極パターン形成にはフッ素系界面活性剤を添加した導電性インキを用いた。ついで該パターンを形成した転写板1上にP3HTを主成分とする半導体インキを、溶剤蒸発後の膜厚が最大でも該電極の厚さ以下となるようキャピラリーコーターを用い均一に塗布しP3HTのインキ膜層13を形成した(図3の3−2)。この際、電極パターン上に有機半導体インキの塗布は認められなかった。
【0051】
ついで、ソース/ドレイン間の形状が該パターンを形成した凸版パターンと逆となった以外該電極パターン形成用の凸版と同じパターンを用い、転写板1上に形成したソース/ドレインパターンと該凸版の該パターンの相当位置を合わせ、凸版オフセット法も用いて、ソース/ドレイン電極パターンはそのままにソース/ドレイン間に残存する有機半導体インキパターン以外のすべての有機半導体インキを転写板1上より除去した(図3の3−3)。ついで転写板1上に形成したソース/ドレイン電極、有機半導体層をすべてカバーするよう、ゲート絶縁膜インキをキャピラリーコーターで均一に塗布し、絶縁インキ膜層10iを形成した(図3の3−4)。
【0052】
ついで、絶縁膜に埋め込まれたゲート電極パターン上に、ゲート電極が絶縁膜を介してソース/ドレイン間隙に配置し、有機半導体層面下に配置するよう位置合わせを行い反転転写して積層構造を形成した(図3の3−5)。ついで該積層体をグローボックス中で、ホットプレート上で150℃、40分の熱処理を行い、ボトムゲートサイドコンタクト(BGSC)構造を有するMIS型の有機半導体トランジスタ素子構造形成した。
【0053】
(実施例2)BGBC型有機トランジスタ素子の製造方法
BGBC型のMIS型有機トランジスタ素子の製造法を図4に示す。
(1)ゲート電極の作成:
シリコーン樹脂からなる平滑な離型面を有する転写板1全面にナノ銀を分散させた凸版オフセット印刷用導電インキをキャピラリーコーターにより均一に塗布した。ついでガラス製凸版(図省略)をインキ面に押し付け余分のインキを取り除きゲート電極パターン9gを転写板1上に形成した。ついでエポキシ樹脂とポリビニルフェノール系樹脂を主成分とする絶縁インキを転写板1上のゲートパターン9g上にキャピラリーコーターを用いて均一に塗布し、絶縁インキ膜層10iを形成した。約1分間放置後、半乾燥状態となった絶縁膜用インキとゲート電極パターンを、ポリカーボネートを主体とするプラスチックフィルム(被印刷体3)上に反転転写し、絶縁膜インキにゲート電極が埋め込まれた表面を形成した(4a−3)。
(2)ソース/ドレイン電極の形成
ついで埋め込みゲートパターンの形成と同様に、ナノ銀を分散させた導電インキを用い、ソース電極9sとドレイン電極9dを転写板1A上に形成し、絶縁膜インキを該電極上に塗布した。ついで、ゲート電極が絶縁膜を介してソース/ドレイン間隙に配置するようアラインメントを行い、ゲート電極が埋め込まれ絶縁膜(図4a−3)上に反転転写した(図4a−4)。導電性パターンおよび絶縁膜で形成された積層体をホットプレート上で150℃約、約40分加熱処理を行い、ナノ銀インクの焼結による導電パターン形成および絶縁膜インキの樹脂成分を架橋させ絶縁膜を形成した。
(3)半導体層の形成
ついで、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)をキシレンに溶解させ、フッ素系界面活性剤を添加した半導体インキを用い、シリコーン樹脂からなる離型性面を有する転写板を用いて凸版オフセット法によりパターンニングし(工程図省略)、先に焼成して形成したソース/ドレイン電極上に該パターン13を反転転写した。これにより、ボトムコンタクト型のMIS型有機トランジスタ素子を形成した(図4a−5)
【0054】
(実施例3)BGBC+保護膜(ビア付)+画素電極
図5aに示すようにシリコーン樹脂からなる平滑な離型性面を有する転写板1上に、凸版オフセット法により、フッ素系界面活性剤からなる撥液成分を添加したナノ銀インキを用いビアとなる導電パターン14を形成した。エポキシ系樹脂を主成分とする保護膜形成用インキの塗布膜厚を、少なくとも該導電パターン厚さ以下となるよう調節し、先に形成したナノ銀インキのパターン上に均一に塗布し、保護膜インキ膜層を形成した15。この際パターン上にはインキの付着は認められなかった。保護膜形成用インキ膜層と導電パターン層を同時に、実施例1で形成した有機トランジスタのドレイン電極上9dに導電パターン14が接触するよう反転転写し、ついで140℃で約30分焼成した。
【0055】
ついで、PEDOT/PSSを主成分とする導電インキを用い、凸版オフセット法によりシリコーン樹脂からなる平滑な離型性面を有する転写板1上に形成した画素電極となるパターンを、先に形成したビアと一部重なるよう保護膜上に反転転写し、次いでオーブン中で100℃、30分の熱処理を行った。これにより保護膜およびビアでドレイン電極9gと導通した画素電極15を有する有機TFT素子構造を作成した(5c)。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、重ね印刷工数の低減、精密な重ねパターンの形成および、各層の段差の問題を解消し、生産性の向上、寸法制度の向上、欠陥解消を可能とする等の特徴により、配線基板、RFID、TFT、CMOS、メモリ、有機EL素子、各種コンデンサ、インダクタ、抵抗、太陽電池等の電子部品の製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)凸版オフセット法による2層同時パターンニング、反転転写(b)凸版オフセット法による3層同時パターンニング、反転転写
【図2】(a)一層被せ(b)パターンの貫通(c)多層被せ(d)除去工程(e)除去後の多層被せ
【図3】(3−1)パターン抜き(電極形成)(3−2)半導体ベタ塗布(3−3)パターン抜き(3−4)ゲート絶縁膜ベタ塗布(3−5)反転転写
【図4】(4a−1)ゲート電極形成(4a−2)絶縁膜ベタ塗布(4a−3)被印刷体への反転転写(4b−1)ソース/ドレイン電極形成(4b−2)絶縁膜ベタ塗布(4a−4)「4a−3」上へ「4b−2」を反転転写(4a−5)半導体層の反転転写
【図5】(5a)導電パターン(ビア)形成(5b)保護膜ベタ塗布(5c)「4a−5」上に「5b」を反転転写
【符号の説明】
【0058】
1.転写板
1A.転写板
2.凸版抜き版
2a.第2の凸版抜き版
3.被印刷体(基材)
4.インキ膜層A
5.インキ膜層B
6.インキ膜層C
7.インキ膜層D
8.インキ膜層E
9.凸版オフセット法によってパターン化された第一のインキ層
9G.ゲート電極
9S.ソース電極
9D.ドレイン電極
10.第二の機能性材料インキ膜層
10I.絶縁膜インキ層
11.2層目の第二のインキ膜層
12.第三の機能性材料インク膜層
13.有機半導体インキ膜
14.ビアとなる導電パターン
15.保護膜インキ膜層
16.画素電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸版オフセット法を用いて転写板の離型性面上に、複合インキパターン層を形成した後、該複合インキパターン層を同時に被印刷体上に反転転写する工程を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
転写板の離型性面上に2種類以上の機能性材料インキを積層し、該積層インキの非画線部分を、凸版オフセット法を用いて同時に除去し、複層パターンを形成した後、該複層パターンを被印刷体上に反転転写する請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
(1)転写板の離型性面上に、凸版オフセット法により1種以上の機能性材料インキでパターン化された第一の機能性材料インキパターン層を形成する工程(工程1)、
(2)第一のパターン化された層に、第二の機能性材料インキ膜層を重ね塗りする工程(工程2)、
(3)第一の機能性材料インキパターン層と第二の機能性材料インキ膜層とを同時に被印刷体上に反転転写する工程(積層反転転写工程)を有することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記した第二の機能性材料インキ膜層が2層以上に重ね塗りされた請求項3に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記した工程2の後に、第二の機能性材料インキ膜層の一部、又は、第二の機能性材料インキ膜層及び第一のインキパターン層の一部を、凸版オフセット法により除去する工程(除去工程)を有する請求項3又は4に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記した除去工程の後に、第三の機能性材料インキ膜層を形成する工程(工程3)を有する、請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
電子部品を構成する機能性積層体の少なくとも一層が請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって製造された電子部品。
【請求項8】
請求項7に記載の電子部品を形成する層の材料の少なくとも一つが有機半導体である有機トランジスタ素子。
【請求項1】
凸版オフセット法を用いて転写板の離型性面上に、複合インキパターン層を形成した後、該複合インキパターン層を同時に被印刷体上に反転転写する工程を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
転写板の離型性面上に2種類以上の機能性材料インキを積層し、該積層インキの非画線部分を、凸版オフセット法を用いて同時に除去し、複層パターンを形成した後、該複層パターンを被印刷体上に反転転写する請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
(1)転写板の離型性面上に、凸版オフセット法により1種以上の機能性材料インキでパターン化された第一の機能性材料インキパターン層を形成する工程(工程1)、
(2)第一のパターン化された層に、第二の機能性材料インキ膜層を重ね塗りする工程(工程2)、
(3)第一の機能性材料インキパターン層と第二の機能性材料インキ膜層とを同時に被印刷体上に反転転写する工程(積層反転転写工程)を有することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記した第二の機能性材料インキ膜層が2層以上に重ね塗りされた請求項3に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記した工程2の後に、第二の機能性材料インキ膜層の一部、又は、第二の機能性材料インキ膜層及び第一のインキパターン層の一部を、凸版オフセット法により除去する工程(除去工程)を有する請求項3又は4に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記した除去工程の後に、第三の機能性材料インキ膜層を形成する工程(工程3)を有する、請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
電子部品を構成する機能性積層体の少なくとも一層が請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって製造された電子部品。
【請求項8】
請求項7に記載の電子部品を形成する層の材料の少なくとも一つが有機半導体である有機トランジスタ素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2009−224665(P2009−224665A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69264(P2008−69264)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超フレキシブルディスプレイ部材技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超フレキシブルディスプレイ部材技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
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