説明

電子部品実装体の製造装置

【課題】電子部品が吸着されるまでの間、または、吸着された後に当該電子部品に発生する位置ずれを補正することで、不良実装体の発生を抑えることのできる電子部品実装体の製造装置を提供する。
【解決手段】電子回路が形成されたベース部材F上に電子部品Chを供給するために用いられる電子部品実装体の製造装置において、ベース部材Fを搬送するベース部材搬送部1と、電子部品Chを前記ベース部材F上に供給する電子部品供給部2とを備え、前記電子部品供給部2は、電子部品Chを搬送する搬送路211と、前記搬送された電子部品Chを吸着して前記ベース部材F上まで移送する移送手段22と、電子部品Chが前記移送手段22の吸引力により前記搬送路211を離れて前記ベース部材F上に供給されるまでの間に、前記電子部品Chの位置ずれを補正する補正手段23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路が形成されたベース部材上に電子部品を供給するために用いられる電子部品実装体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、電波を利用し非接触で通信するICタグが、例えば交通機関の乗車カードやキャッシュカードなどの様々な用途に用いられている。このICタグは、専用の通信装置を使用し、非接触でデータの読み取り及び書き込みができるもので、一般的にはカード状やシール状の形態とされている。
【0003】
このICタグは、図9に示すような電子部品実装体であるICチップ実装体を備えている。このICチップ実装体は、電子回路としての通信用アンテナF1が形成されたアンテナフィルム上に電子部品であるICチップChが実装されたものである。ICタグは、図9に示すように、このICチップ実装体がいわゆるインレットIとして内蔵されたものが一般的である。
【0004】
この電子部品実装体の製造装置としては、例えば特許文献1や2に記載されたものがある。特許文献1に記載された製造装置は、図10に示すように、フィーダ101、ロータリーヘッド部102、同期ローラ103が備えられたものであり、ICチップ104を順次搬送してアンテナフィルム105の表面に供給するようになっている。この際、アンテナフィルム105に形成されている通信用アンテナの電子回路にICチップ104のバンプが電気的に接続される。特許文献2に記載された製造装置も前記ロータリーヘッド部102に相当する構成がないものの、基本的な構成は同一である(図示省略)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−309541号公報
【特許文献2】特開2006−252170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された製造装置では、フィーダ101からロータリーヘッド部102へ、次いで、ロータリーヘッド部102から同期ローラ103へICチップ104が移送されていくものとされている。この移送は、ロータリーヘッド部102のノズルユニット102aと同期ローラ103の吸着孔103aの各々が、空気圧(負圧)による吸引力でICチップ104を吸着することによりなされる。
【0007】
ところで、ICチップ104がフィーダ101からアンテナフィルム105へと移送されていく途中に、ICチップ104に位置ずれが起こる場合がある。この位置ずれとしては、例えば、回転方向のずれ、つまり、ICチップ104の中心を通り、当該ICチップ104の表面に直交する軸を仮想した場合における、前記軸周りに回転するような方向のずれ、また、平面方向のずれ、つまり、ノズルユニット102aまたは吸着孔103aの中心とICチップ104の中心とが一致しないようなずれ、また、前記の各ずれが複合したずれが挙げられる。
【0008】
このように、ICチップ104に位置ずれが起こると、実装精度が落ちてしまうという問題がある。つまり、ICチップ104のバンプがアンテナフィルム105における通信用アンテナの電子回路に対してずれてしまい、両者が電気的に接続されず、不良実装体が発生する。
【0009】
ここで、特許文献1には、ノズルユニット102aがその中心軸を回転軸として回転可能とされ、フィーダ101上のICチップ104をCCDカメラ106によって撮像し、得られた画像を基にノズルユニット102aを所定の方向に回転させるように構成されている(特許文献1の明細書0027段落)。特許文献2にも、CCDカメラを用いて同期ローラ上のICチップを撮像し、位置補正量を演算することが記載されている(特許文献2の明細書0021段落)。
【0010】
これら特許文献1及び2に記載された位置補正は、あくまでもフィーダ上のICチップの位置を基準としてなされる。そのため、フィーダ上で発生したICチップの位置ずれ対策としては有効である。
【0011】
しかしながら、実際には、フィーダからICチップが吸着されるまでの間、または、吸着した後にも、例えば、フィーダの振動の影響を受けたり、ICチップがフィーダに接触したりすることにより、ICチップに位置ずれが発生している。このようにフィーダを離れてからICチップに発生した位置ずれは、特許文献1及び2に記載されたやり方では補正できなかった。
【0012】
そこで本発明は、前記の問題に鑑み、電子部品が吸着されるまでの間、または、吸着された後に当該電子部品に発生する位置ずれを補正することで、不良実装体の発生を抑えることのできる電子部品実装体の製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、電子回路が形成されたベース部材F上に電子部品Chを供給するために用いられる電子部品実装体の製造装置において、ベース部材Fを搬送するベース部材搬送部1と、電子部品Chを前記ベース部材F上に供給する電子部品供給部2とを備え、前記電子部品供給部2は、電子部品Chを搬送する搬送路211と、前記搬送された電子部品Chを吸着して前記ベース部材F上まで移送する移送手段22と、電子部品Chが前記搬送路211を離れてから前記移送手段22に吸着されて前記吸着された状態で前記ベース部材F上へと移送されるまでの間に、前記電子部品Chの位置ずれを補正する補正手段23とを備えたことを特徴としている。
【0014】
前記構成によると、電子部品供給部2が補正手段23を備えたことから、電子部品Chが吸着されるまでの間、または、吸着された後に当該電子部品Chに発生する位置ずれを補正手段23によって確実に補正できる。
【0015】
そして、本発明の電子部品実装体の製造装置は、前記補正手段23が、電子部品Chの外周部の一部が当接可能なガイド部を備え、前記ガイド部が前記移送手段22以外の部分に設けられたものであることが好ましい。
【0016】
前記好ましい構成によると、ガイド部が移送手段22以外の部分に設けられたことから、製造装置全体の構成を簡素化できる。
【0017】
そして、本発明の電子部品実装体の製造装置は、前記補正手段23が、電子部品Chの外周部の一部が当接可能なガイド部を備え、前記ガイド部が前記移送手段22に設けられたものであることが好ましい。
【0018】
前記好ましい構成によると、ガイド部が移送手段22に設けられたことから、移送手段22が電子部品Chをベース部材F上に移送するまで、補正された電子部品Chの位置を確実に保持できる。
【0019】
そして、本発明の電子部品実装体の製造装置は、前記補正手段23が、前記移送手段22に吸着される前に、前記ガイド部が当接して電子部品Chの位置ずれを補正することが好ましい。
【0020】
前記好ましい構成によると、移送手段22に吸着される前に電子部品Chの位置ずれが補正されるため、移送手段22が電子部品Chを正しい位置に補正した上で吸着できる。
【0021】
そして、本発明の電子部品実装体の製造装置は、前記補正手段23が、前記移送手段22に吸着された後に、前記ガイド部が当接して電子部品Chの位置ずれを補正することが好ましい。
【0022】
前記好ましい構成によると、移送手段22に吸着された後に電子部品Chの位置ずれが補正されるため、移送手段22の吸着によって電子部品Chが安定した状態となってから位置ずれを補正できる。
【0023】
なお、以下に説明する各実施形態はいずれもICチップ実装体の製造装置についてのものであるが、本発明の技術的範囲はこれに限定されず、電子回路が形成されたベース部材上に電子部品を供給するために用いられる電子部品実装体の製造装置全般に及ぶ。前記「電子回路」は電子部品に電気的に接続されることで機能を発揮するものであり、以下の各実施形態では通信用アンテナF1の電子回路が相当する。前記「ベース部材」は前記電子回路が形成されたものであり、以下の各実施形態ではアンテナフィルムFが相当する。そして、「電子部品」は以下の各実施形態ではICチップChが相当するが、その他、種々の集積回路やLEDなどの電子部品が例示できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、電子部品が吸着されるまでの間、または、吸着された後に当該電子部品に発生する位置ずれを補正することで、不良実装体の発生を抑えることのできる電子部品実装体の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るICチップ実装体の製造装置を示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るICチップ実装体の製造装置の要部を示す概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るICチップ実装体の製造装置の、パーツフィーダと同期ローラの位置関係を示す概略図である。
【図4】(A)は本発明の第1実施形態に係る補正手段を示す概略図であり、(B)は同補正手段における面取り部の作用を示す概略図である。
【図5】(A)は本発明の第2実施形態に係る補正手段、(B)は同第3実施形態に係る補正手段を示す、それぞれ縦断面視の概略図である。
【図6】(A)は本発明の第4実施形態に係る補正手段を示す側面視の概略図であり、(B)は同補正手段を示す底面視の概略図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係るICチップ実装体の製造装置の要部を示す概略図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る補正手段を示す斜視の概略図である。
【図9】ICタグの構造の一例を示す概略図である。
【図10】従来のICチップ実装体の製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明につき実施形態をいくつか取り上げて、図面とともに説明を行う。
【0027】
−第1実施形態−
本実施形態のICチップ実装体の製造装置の概略は図1に示すものであって、フィルム搬送部(ベース部材搬送部)1、ICチップ供給部(電子部品供給部)2、アンテナフィルム供給部3、保護紙供給部4、接着剤キュア部5、保護紙巻取部6、製品テスト部7、製品巻取部8を備える。前記のフィルム搬送部1はクロックローラ11を備える。前記のICチップ供給部2は、図2及び図3に示すように搬送路211、同期ローラ(移送手段)22、補正手段23の各々を備える。なお、フィルム搬送部1とICチップ供給部2を除いた製造装置の構成要素についての、本明細書における記載は説明上必要な範囲にとどめている。
【0028】
フィルム搬送部1は、図1に示すように、通信用アンテナF1が形成された長尺のアンテナフィルムFを搬送するものである。前記の搬送はアンテナフィルムFの長手方向へ定速でなされる。クロックローラ11は、図2に示すように、後述の同期ローラ22と外周面が対向するように設けられており、図1に示すように、このクロックローラ11の外周面にアンテナフィルムFが巻き付けられ、クロックローラ11が方向R11(図2参照)に回転することでアンテナフィルムFが搬送される。
【0029】
搬送路211は、本実施形態では、図3に示すように、パーツフィーダ21のトラフの一部として構成されており、搬送方向Mに、複数のICチップChが搬送面211aに沿って順次搬送される。なお、図3では図示を簡略化するために搬送面211aを水平面として示しているが、実際の搬送面211aは傾斜面である(図2参照)。この搬送は、例えば電磁振動によりなされるが、振動以外の種々の原理で搬送がなされるものであって良い。そして、図3及び図4(A)(B)に示すように、搬送方向の下流端にはストッパー部211bが設けられており、搬送されたICチップChがストッパー部211bに当接することにより、搬送路211から脱落しないようにされている。本実施形態で搬送されるICチップChは、図2〜図8に示すように、扁平な平面視四角形状のものであり、裏面には電気接点であるバンプが突出している。ただし、ICチップChの形状は本実施形態のものに限定されるものではない。
【0030】
本実施形態では、前記搬送面211aが、図2に示すように、水平方向に対して角度を持って設けられている。そして、搬送中のICチップChは、電気接点であるバンプが搬送面211aの方を向く(図4参照)。搬送路211におけるICチップChの表裏は、CCDカメラ(図示しない)によって監視されており、バンプが搬送面211aと反対側を向いているICチップChは、同期ローラ22が吸着する前に搬送路211から排除される。
【0031】
同期ローラ22は円筒状のローラであり、図2及び図3に示すように、その外周には円筒状の吸着ノズル221が径外方向に突出している。なお、図3では、吸着ノズル221の形状の理解のために、図示最下方の吸着ノズル221にのみICチップChが吸着された状態を示しているが、実際には、ICチップChをアンテナフィルムFに向けて放出した直後の吸着ノズル221以外の吸着ノズル221には、図2に示したようにICチップChが吸着されている。また、本実施形態では、パーツフィーダ21により搬送された電子部品であるICチップChを吸着してベース部材であるアンテナフィルムF上まで移送する移送手段が同期ローラ22のみからなるが、例えば、特許文献1に記載された、ロータリーヘッド部102と同期ローラ103のように、複数の手段が組み合わされてなるものであっても良い。
【0032】
この同期ローラ22は方向R22(図2参照)に回転するものであり、前記のクロックローラ11の回転軸に対して同期ローラ22の回転軸が平行に配置されている。この同期ローラ22は特許文献2に記載されたものと同じで、内部が固定されており、外部が回転する構造である。内部には、図2に示すように、大気圧と負圧とを切り替え可能な第1隔室222a、常時負圧の第2隔室222b、常時正圧の第3隔室222cが設けられており、各隔室に対して外部が回転することで、吸着ノズル221の空気通路221aが第1隔室222aに一致した際には負圧によりICチップChの吸着がなされ、第2隔室222bに一致している際には負圧により前記の吸着が継続し、第3隔室222cに一致した際には正圧によりICチップChが吸着ノズル221から離れる。これにより、同期ローラ22が搬送路211上のICチップChを個々に吸着していき、同期ローラ22の外周に保持しつつ回転し、クロックローラ11の外周面と同期ローラ22の外周面が対向した際に、ICチップChをアンテナフィルムFへと放出する。
【0033】
この同期ローラ22は間欠的に回転するものである。停止時において、同期ローラ22がICチップChを吸着ノズル221に吸着する。そして回転時には、同期ローラ22がクロックローラ11と同期回転し、クロックローラ11と等速で搬送されているアンテナフィルムFにICチップChを供給する。この供給の際には、アンテナフィルムF上に接着剤供給手段12から供給された接着剤Gが塗布されており、前記のようにアンテナフィルムF上に置かれたICチップChが固定され、通信用アンテナF1の電子回路にICチップChのバンプが電気的に接続される。なお、通信用アンテナF1の位置を認識するため、クロックローラ11の径外位置であり、アンテナフィルムFを撮影可能な位置にCCDカメラCa1が設けられている。前記認識された通信用アンテナF1の位置に合わせるように、接着剤供給手段12における接着剤Gの塗布タイミング及び同期ローラ22のクロックローラ11に対する同期回転が制御される。
【0034】
また、この同期ローラ22は、クロックローラ11に対して幅方向に移動可能に設けられており、アンテナフィルムF上にICチップChを置く位置を調整できる。この調整は、同期ローラ22の径外位置に設けられたCCDカメラCa2が同期ローラ22に吸着されたICチップChを撮像し、これを基に同期ローラ22に設けられた位置調整用モータ(図示しない)を駆動することによりなされる。
【0035】
本実施形態の補正手段23は、同期ローラ22の吸着ノズル221にICチップChが吸着されるまでに、ICチップChの位置ずれを補正するためのものであり、ICチップChの外周部の一部が当接可能なガイド部としての一方側ガイド23a及び他方側ガイド23bを備える。この補正手段23は、吸着ノズル221の吸着動作がなされる位置における、搬送路211の搬送面211aと吸着ノズル221の先端部との間に設けられている。この補正手段23は、搬送路211の一部として、搬送面211aを覆うように設けられるフィーダカバー(図示しない)とは別のものであって、パーツフィーダ21の搬送路211等、ICチップ供給部2における他の部分から振動が伝わらないように設けられている。
【0036】
つまり、この補正手段23は、パーツフィーダ21等で発生した振動が絶縁されるように設けられている。表現を変えると、パーツフィーダ21等の振動の影響が及ぶ部材から構成された振動系とは別に形成された静止系を構成する一部材として補正手段23が設けられている。なお、前記「絶縁」につき、パーツフィーダ21等で発生した振動を100%絶縁し、補正手段23が完全に振動しない状態となることまでは要求されていない。よって、本実施形態で言えば、同期ローラ22がICチップChを吸着した時点でICチップChに位置ずれが発生していない程度であれば、補正手段23に対してパーツフィーダ21等の振動がわずかに伝達されることは許容される。
【0037】
このように振動が絶縁されるような補正手段23の設け方としては、次の2種類が例示できる。一つは、パーツフィーダ21と補正手段23との間が空間で隔てられたものであり、もう一つは、パーツフィーダ21と補正手段23とが防振手段を介して接続されたものである。防振手段としては、ばねやダンパを用いたものや、ゴムなどの防振材料からなるものが例示できる。
【0038】
なお、前記フィーダカバーはパーツフィーダ21の搬送路211に直接接続されており、振動が直接伝わる位置に設けられているため、ICチップChが振動で振るい落とされることがあり、また、フィーダカバーをICチップChの外周部の一部が当接するように設けたとしても、振動の影響で十分な位置ずれ補正を行うことができないことがある。このように、作用の点から言ってもフィーダカバーと補正手段23とは別のものである。
【0039】
本実施形態の一方側ガイド23a及び他方側ガイド23bは、図4(A)(B)に示すように、ICチップChが吸着ノズル221に吸着される際に、このICチップChが通る軌跡を、両側から挟むようにして設けられたものであって、搬送路211の搬送面211aに平行に設けられた各々板状のものである。前記の各ガイド23a,23bは、搬送路211の搬送面211aに対して直交するように設けられた平面状の壁面23a1,23b1を有している。なお、吸着ノズル221は、同期ローラ22の回転に伴い、図示奥側から手前側に向かうように移動する。よって、一方側ガイド23a及び他方側ガイド23bは、前記のように移動する吸着ノズル221及びこれに吸着されたICチップChが干渉しないように設けられる。
【0040】
前記各壁面23a1,23b1間の距離は、設計上のICチップChの位置を基準として、わずかに大きいものとしておくことが望ましい。なお、ICチップChの平面視形状が長方形状あるいは正方形状である場合は、設計上の位置にあるICチップChにおける対向する辺の辺間距離を基準として、各ガイドの壁面23a1,23b1間の距離を決定する。
【0041】
また、図4(A)(B)に示すように、各ガイド23a,23bの搬送面211a側の位置には斜面を有する面取り部23a2,23b2が設けられている。前記斜面は平面でも湾曲面でも良い。また、この面取り部23a2,23b2は、各ガイド23a,23bのいずれか一方にのみ設けられていても良い。この面取り部23a2,23b2により、搬送面211aに近づくほど各壁面23a1,23b1間の距離が拡大されており、図4(B)に示すように、ICチップChの位置ずれが比較的大きい場合であっても、ICチップChが最初に面取り部23a2,23b2の少なくとも一方に当接してICチップChの位置が補正されるため、面取り部23a2,23b2を設けなかった場合に比べて、ICチップChが各ガイド23a,23b間を通り抜けることなく脱落してしまう可能性を小さくでき、ICチップChの位置をより確実に補正できる。
【0042】
このような補正手段23が設けられたことにより、吸着ノズル221にICチップChが吸着されるまでの間で、図4(A)に矢印で示したようにICチップChが前記各ガイド23a,23b間を通る際に、ICチップChの外周部の一部が各ガイド23a,23bのうち少なくとも一方の壁面23a1,23b1に当接しつつ移動することにより、ICチップChの位置が補正され、その結果、設計上の位置関係にてICチップChを吸着ノズル221に吸着させることができる。
【0043】
なお、この補正手段23を、搬送面211aを覆うような形態とすることで、パーツフィーダ21における、従来のフィーダカバーを廃止しても良い。
【0044】
なお、吸着ノズル221の先端面を、ICチップChとの摩擦が大きくなるように加工しておくことが望ましい。同期ローラ22の回転・停止に伴う加速度変化の影響により、吸着後のICチップChと吸着ノズル221とが位置ずれしてしまう可能性が小さくなり、前記補正手段23によるICチップChの位置補正が有効に持続されるからである。前記加工は、摩擦材のコーティングや吸着ノズル221の先端面への荒し加工が例示できるがその他種々の手段を採用できる。
【0045】
また、本実施形態の補正手段23を変形し、吸着ノズル221の図4上での手前側及び奥側にも前記各ガイド23a,23bと同様の壁面を有するガイドが設けられ、吸着ノズル221に吸着される際のICチップChが、四方の壁面に囲まれた空間を通過するもの、あるいは一方を開放しておき、三方の壁面に囲まれた空間を通過するものとしても良い。ただしこの場合は、吸着ノズル221及びこれに吸着されたICチップChが、同期ローラ22の回転により補正手段23に干渉しないような位置関係に補正手段23を設けておく必要がある。
【0046】
−第2実施形態−
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態に関しては、補正手段23以外の構成についての説明を省略している(第3〜第5実施形態に関しても同じ)。
【0047】
本実施形態においては、補正手段23を吸着ノズル221の先端部に設けている。具体的に、本実施形態の補正手段23は、図5(A)に示すように、吸着ノズル221の少なくとも先端部における外径寸法(吸着ノズルの横断面形状が円形である場合)をICチップChよりも大きく形成しておき、この先端部に、ICチップChの全周、かつ、厚み方向の一部あるいは全部が嵌められる凹部23cを形成したものである。つまり、本実施形態の補正手段23は、ICチップChの外周部の一部が当接可能なガイド部としての凹部23cを備える。本実施形態の凹部23cは、平面視形状が長方形状あるいは正方形状であるICチップChに対応した有底の四角形状の穴とされており、内側面23c1が、吸着ノズル221の延長方向に平行に形成され、底面23c2が吸着ノズル221の延長方向に直交するように形成されている。この底面23c2に、吸着ノズル221の空気通路221aが開口している。
【0048】
前記第1実施形態と同じように、本実施形態における凹部23cの寸法は、ICチップChの寸法よりもわずかに大きいものとしておくことが望ましい。具体的には、設計上の位置にあるICチップChにおける対向する辺の辺間距離を基準として、凹部23cの対向する内側面23c1間の距離を決定する。また、前記第1実施形態と同じく、凹部23cの先端側には斜面を有する面取り部23c3が設けられている。前記斜面は平面でも湾曲面でも良い。また、この面取り部23c3は、凹部23cの一部、例えば隣り合う二辺にのみ設けても良い。この面取り部23c3により、吸着ノズル221の先端に向かうにつれ凹部23cの対向する内側面23c1間の距離が拡大されており、ICチップChの位置ずれが比較的大きい場合であっても、ICチップChが最初に面取り部23c3の一部に当接してICチップChの位置が補正されるため、面取り部23c3を設けなかった場合に比べて、ICチップChが凹部23cに嵌まらずに脱落してしまう可能性を小さくでき、ICチップChの位置をより確実に補正できる。
【0049】
−第3実施形態−
本実施形態は、前記第2実施形態と同じく、凹部23cを吸着ノズル221の先端部に設けたものである。しかし本実施形態では、第2実施形態と異なり、ICチップChの全周が凹部23cに嵌まるものとはされていない。本実施形態の凹部23cは、図5(B)に示すように、平面視形状が長方形状あるいは正方形状であるICチップChに対応して、内側面23c1が、吸着ノズル221の延長方向に平行に形成され、底面23c2が吸着ノズル221の延長方向に直交するように形成されている。この底面23c2に、吸着ノズル221の空気通路221aが開口している。また、内側面23c1には副空気通路221bが開口している。この副空気通路221bの作用については後述する。
【0050】
本実施形態の吸着ノズル221には、前記各実施形態の吸着ノズル221と同様に設けられている空気通路221aに加え、側方にも副空気通路221bが設けられている。この副空気通路221bからも吸着を行うことにより、凹部23cに対してICチップChの側面を当接させ、ICチップChの位置が補正される。なお、この副空気通路221bは、場合によっては吸着ではなく、空気の噴出により吸着ノズル221に対するICチップChの位置を調整できるように構成されていても良い。ただし、このように空気の噴出によりICチップChの位置を調整する場合にあっては、副空気通路221bの開口した内側面23c1に対向して別の内側面23c1を設けておき、別の内側面23c1にICチップChの側面を当接させることにより、ICチップChの位置が補正される。
【0051】
図5(B)に示すように、ICチップChの平面視形状が長方形状あるいは正方形状である場合、ICチップChの1辺以上が凹部23cに当接するものとされていれば前記のように位置ずれの補正が可能である。また、ICチップChの隣り合う2辺以上が凹部23cに当接するものとされていれば、2辺の位置及びICチップChの角度を同時に補正できることから、より望ましい。また、本実施形態でも、凹部23cが四角形状の穴とされ、四つの内側面23c1にICチップChの全周が囲まれるようにして、凹部23cにICチップChが嵌められるようにすることも可能である。
【0052】
−第4実施形態−
本実施形態は、図6(A)(B)に示すように、吸着ノズル221の周囲にICチップChの外周部の一部が当接可能なガイド部としてのノズル外側ガイド23dを設けたものである。このノズル外側ガイド23dは横断面形状が円形であるピン状であって、同期ローラ22の外周面から突出し、吸着ノズル221の延びる方向に対して平行に複数が形成されており、先端が吸着ノズル221の先端よりも突出している。このノズル外側ガイド23dは、ICチップChの外周部に当接することで、吸着ノズル221に対するICチップChの位置決めをなすものである。本実施形態では、図6(B)に示すように、4本のノズル外側ガイド23dが各々等距離に設けられており、ICチップChの外周部である四辺の各中央にてノズル外側ガイド23dが当接可能とされている。
【0053】
前記各実施形態と同じく、本実施形態におけるノズル外側ガイド23dの側面内側部分23d1間の距離は、設計上のICチップChの位置を基準として、わずかに大きいものとしておくことが望ましい。なお、ICチップChの平面視形状が長方形状あるいは正方形状である場合は、設計上の位置にあるICチップChにおける対向する辺の辺間距離を基準として、ICチップChの中央が配置されるべき位置(本実施形態では吸着ノズル221の中心)を挟んで対向する関係にある側面内側部分23d1間の距離を決定する。
【0054】
なお、ノズル外側ガイド23dの本数や位置関係は、当接によりICチップChの位置が補正できるものである限り種々に変更できる。本数に関しては、2本以上であれば位置ずれの補正が可能である。また、このノズル外側ガイド23dの形態はピン状だけに限定されるものではなく、例えば吸着ノズル221を取り巻くように枠状に形成したものであっても良い。また、ピン状であっても、横断面形状を四角形、三角形、楕円形としたり、板状とするなど、種々の形態で実施できる。
【0055】
また、前記各実施形態における面取り部23a2,23b2,23c3と同様に、本実施形態におけるノズル外側ガイド23dの先端部は、径寸法を小さくしたり、傾斜を形成しておくことにより、先端に向かうにつれ、吸着ノズル221の中心を挟んで対向する関係にあるノズル外側ガイド23d間の距離が拡大されている。本実施形態のノズル外側ガイド23dでは、図6(A)に示すように、先端に半球状部分23d2が形成されている。このような先端部の加工は、複数のノズル外側ガイド23dのうち一部、例えば隣り合う二本にのみ加工がなされていても良い。また、ノズル外側ガイド23dの先端部分を外方に折り曲げることにより、対向するノズル外側ガイド23d間の距離が拡大されたものとしても良い。
【0056】
これにより、ICチップChの位置ずれが比較的大きい場合であっても、ICチップChが最初に半球状部分23d2の一部に当接してICチップChの位置が補正されるため、半球状部分23d2を設けなかった場合に比べて、ICチップChが吸着ノズル221に吸着されずに脱落してしまう可能性を小さくでき、ICチップChの位置をより確実に補正できる。
【0057】
ここまで説明した、実施形態1〜4に係る補正手段23については、前記の形態に限定されるものではなく、パーツフィーダ21の搬送路211等から振動が伝わらないように設けられたものであって、ICチップChの外周部の一部が当接することにより、ICチップChが吸着ノズル221に吸着される際にこのICチップChの移動を規制して位置ずれを補正することのできるものであれば、その他種々に形態を変更して実施することができる。
【0058】
−第5実施形態−
本実施形態は図7及び図8に示すようなものである。本実施形態における補正手段23は、ICチップChの外周部の一部が当接可能なガイド部としての一方側ガイド23e及び他方側ガイド23fを備える。この一方側ガイド23e及び他方側ガイド23fは、同期ローラ22とは独立して設けられたものであって、同期ローラ22の径外位置に、同期ローラ22の外周面の接線方向に沿うように設けられた各々板状のものである。そして、この一方側ガイド23e及び他方側ガイド23fは、吸着ノズル221にICチップChが吸着された後の状態である同期ローラ22が回転する途中で、ICチップChが図示矢印方向に通る軌跡を、両側から挟むようにして設けられている。一方側ガイド23e及び他方側ガイド23fは同期ローラ22には固定されておらず、かつ、パーツフィーダ21の搬送路211等から振動が伝わらないように設けられている。
【0059】
本実施形態における各ガイド23e,23fは平面状の壁面23e1,23f1を有している。この壁面23e1,23f1は、ICチップChが同期ローラ22の周方向に沿って移動する軌跡に対して平行に設けられたものである。
【0060】
前記第1実施形態では、吸着ノズル221に吸着されようとするICチップChが、対向する壁面23a1,23b1間を板厚方向に貫通するように移動して位置ずれが補正されるのに対し、本実施形態では、既に吸着ノズル221に吸着されたICチップChが、対向する壁面23e1,23f1間を板の平面方向に略沿うように移動して位置ずれが補正される(厳密には、同期ローラ22の回転軸から吸着ノズル221の先端までの距離を回転半径とした軌跡をICチップChが移動する)。つまり、第1実施形態と本実施形態とは、補正手段23に対するICチップChの移動方向が異なっている。
【0061】
各ガイドの壁面23e1,23f1間の距離は、第1実施形態と同様、設計上のICチップChの位置を基準として、わずかに大きいものとしておくことが望ましい。なお、ICチップChの平面視形状が長方形状あるいは正方形状である場合は、設計上の位置にあるICチップChにおける、前記ICチップChの軌跡を両側から挟む関係にある、対向する辺の辺間距離を基準として、各壁面23e1,23f1間の距離を決定する。
【0062】
また、図8に示すように、各ガイド23e,23fの、同期ローラ22の回転方向を基準とした後方には、斜面を有する面取り部23e2,23f2が設けられている。前記斜面は平面でも湾曲面でも良い。また、この面取り部23e2,23f2は、各ガイド23e,23fのいずれか一方にのみ設けても良い。この面取り部23e2,23f2により、前記後方に向かうにつれ、前記各ガイド23e,23f間の距離が拡大されており、ICチップChの位置ずれが比較的大きい場合であっても、ICチップChが最初に面取り部23e2,23f2の少なくとも一方に当接してICチップChの位置が補正されるため、ICチップChの位置をより確実に補正できる。
【0063】
このような補正手段23が形成されたことにより、吸着ノズル221にICチップChが吸着した状態で同期ローラ22が回転する際、吸着ノズル221の先端に位置するICチップChが前記各ガイド23e,23fの間を通り抜ける際に、ICチップChが各ガイド23e,23fのうち少なくとも一方の壁面23e1,23f1に当接しつつ移動することにより、ICチップChの位置が補正され、その結果、設計上の位置関係にてICチップChをアンテナフィルムFに供給することができる。
【0064】
なお、前記のように、同期ローラ22はクロックローラ11に対して幅方向に移動可能に設けられていることから、この移動に対応するため、本実施形態の補正手段23も、前記幅方向に対して移動可能に構成されることが望ましい。
【0065】
ここで、前記各実施形態は、補正手段23のガイド部が同期ローラ22以外の部分に設けられたもの(第1実施形態、第5実施形態)と、同期ローラ22に設けられたもの(第2〜第4実施形態)に大別できる。前者に係る実施形態では、吸着ノズル221毎にガイド部を設ける必要がないことから、製造装置全体の構成を簡素化できるという利点がある。一方、後者に係る実施形態では、吸着ノズル221毎にガイド部が設けられており、同期ローラ22がICチップChをアンテナフィルムF上に移送するまで、補正された電子部品Chの位置を確実に保持できるという利点がある。
【0066】
また、前記各実施形態は、吸着ノズル221の吸着前に位置ずれ補正を行うもの(第1〜第4実施形態)と、吸着後に位置ずれ補正を行うもの(第5実施形態)に大別できる。前者に係る実施形態では、同期ローラ22がICチップChを正しい位置に補正した上で吸着できるできるという利点がある。一方、後者に係る実施形態では、吸着ノズル221の吸着によりICチップChが安定した状態となってから位置ずれを補正できるという利点がある。
【0067】
以上、実施形態をいくつか取り上げて説明してきたが、本発明に係る電子部品実装体の製造装置の具体的構成については、前記の実施形態に限られるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 ベース部材搬送部、フィルム搬送部
2 電子部品供給部、ICチップ供給部
211 搬送路
22 移送手段、同期ローラ
23 補正手段
Ch 電子部品、ICチップ
F ベース部材、アンテナフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路が形成されたベース部材上に電子部品を供給するために用いられる電子部品実装体の製造装置において、
ベース部材を搬送するベース部材搬送部と、電子部品を前記ベース部材上に供給する電子部品供給部とを備え、
前記電子部品供給部は、電子部品を搬送する搬送路と、前記搬送された電子部品を吸着して前記ベース部材上まで移送する移送手段と、電子部品が前記搬送路を離れてから前記移送手段に吸着されて前記吸着された状態で前記ベース部材上へと移送されるまでの間に、前記電子部品の位置ずれを補正する補正手段とを備えたことを特徴とする電子部品実装体の製造装置。
【請求項2】
前記補正手段は、電子部品の外周部の一部が当接可能なガイド部を備え、
前記ガイド部が前記移送手段以外の部分に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装体の製造装置。
【請求項3】
前記補正手段は、電子部品の外周部の一部が当接可能なガイド部を備え、
前記ガイド部が前記移送手段に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装体の製造装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記移送手段に吸着される前に、前記ガイド部が当接して電子部品の位置ずれを補正することを特徴とする請求項2または3に記載の電子部品実装体の製造装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記移送手段に吸着された後に、前記ガイド部が当接して電子部品の位置ずれを補正することを特徴とする請求項2または3に記載の電子部品実装体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−74570(P2012−74570A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218828(P2010−218828)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】