説明

電子部品実装基板の製造方法

【課題】電極間接続部分が実用上充分に封止され、優れた接続信頼性を有する電子部品実装基板の製造方法を提供する。
【解決手段】突起状電極を有する電子部品を、前記突起状電極を介してプリント基板の電極に接続する工程(I)と、前記電子部品と前記プリント基板との電極間接続部分を、シクロオレフィンモノマー(A)、重合触媒(B)、架橋剤(C)、及び充填剤(D)を含む重合性組成物により被覆する工程(II)と、前記重合性組成物を重合硬化させる工程(III)とを含んでなる電子部品実装基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化社会の急激な進展に伴い、コンピューターや通信機器などの情報処理機器の処理能力の向上、即ち高速化が迫られており、さらには、情報通信網の発達に伴いその通信波長領域の拡大が必要となり、特にGHz(ギガヘルツ)の高周波領域の通信波長で作動する通信機器の開発が急がれている。こうした要求のなかで情報処理速度の高速化、通信波長領域の高周波化を達成するために、半導体チップなどの電子部品と、プリント基板との接続配線距離を極力短縮して伝送速度の高速化、高周波領域での伝送損失の低下を図る開発がなされている。かかる状況下、半導体チップ等の電極と、プリント基板の電極との接続には、金線や半田等を介して直接接続する方法(ベアチップ実装法)が最も一般的に用いられている。上記方法で接続された電極及び電極間の配線は、接続信頼性の向上を目的として封止されるが、封止材料としては、通常、従来公知のエポキシ樹脂からなる液状封止材料やフィルムが使用されている。
【0003】
例えば、ベアチップ実装法の1つであるフリップチップボンディング技術では、半導体チップとプリント基板とを、半導体チップ電極部に形成された半田バンプ等によりプリント基板上に形成された電極と直接接続を行う。この場合、得られる半導体回路をヒートサイクル試験に供すると、プリント基板と半導体チップとの線膨張係数の差に起因して半田バンプ等に過剰な機械的応力が加わり半田バンプにクラックが発生し、半導体回路の接続信頼性が損なわれることがある。この問題を防ぐため、いわゆるアンダーフィル法により、プリント基板と半導体チップとの間隙にアンダーフィル(封止材料)を充填して封止が行われる。
【0004】
特許文献1には、アンダーフィルとして、プリント基板と半導体チップとの狭い間隙に充分に充填するための低粘度のエポキシ樹脂が開示されている。また、特許文献2には、アンダーフィルとして、低線膨張性のエポキシ樹脂を用いることが開示されている。また、特許文献3には、アンダーフィルとして、シアネートエステル樹脂を用いることでエポキシ樹脂を用いた場合に比べて低誘電率、低誘電正接化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−343990号公報
【特許文献2】特表2008−537968号公報
【特許文献3】特開2003−160729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電子部品が実装されたプリント基板において電極間接続部分の優れた接続信頼性を得る観点から、封止材料は、電極間接続部分を適切に被覆でき、容易に硬化可能な材料であることが求められる。特に、前記アンダーフィルは、プリント配線板と、半導体チップなどの電子部品との間隙に隅々まで充填される必要があり、浸透性に優れた材料であることが求められる。
【0007】
しかし、本発明者らが検討したところ、特許文献1〜3のアンダーフィルは、樹脂を含む溶液を用いており、プリント基板と電子部品との間隙への浸透性は充分には高くなく、電極間接続部分の封止が不充分となり、電子部品が実装されたプリント基板において良好な接続信頼性を得ることができない場合があることが明らかになった。
【0008】
従って、本発明の目的は、電極間接続部分が実用上充分に封止され、優れた接続信頼性を有する電子部品実装基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成すべく鋭意検討の結果、シクロオレフィンモノマー(A)、重合触媒(B)、架橋剤(C)、及び充填剤(D)を含む重合性組成物を封止材料として用いることが前記課題の達成に有効であることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)突起状電極を有する電子部品を、前記突起状電極を介してプリント基板の電極に接続する工程(I)と、前記電子部品と前記プリント基板との電極間接続部分を、シクロオレフィンモノマー(A)、重合触媒(B)、架橋剤(C)、及び充填剤(D)を含む重合性組成物により被覆する工程(II)と、前記重合性組成物を重合硬化させる工程(III)とを含んでなる電子部品実装基板の製造方法、
(2)前記重合触媒(B)は、メタセシス重合触媒であることを特徴とする前記(1)記載の電子部品実装基板の製造方法、
(3)前記充填材(D)は、低線膨張性フィラーであることを特徴とする前記(1)または(2)記載の電子部品実装基板の製造方法、
(4)前記充填材(D)の粒径は、0.05〜10μmの範囲であることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れかに記載の電子部品実装基板の製造方法、
(5)シクロオレフィンモノマー(A)は、極性基を含有することを特徴とする前記(1)〜(4)の何れかに記載の電子部品実装基板の製造方法、
(6)前記重合性組成物は、連鎖移動剤をさらに含むことを特徴とする前記(1)〜(5)の何れかに記載の電子部品実装基板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電極間接続部分が実用上充分に封止され、優れた接続信頼性を有する電子部品実装基板を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書において、「プリント基板」とは、プリント配線板又はプリント回路板をいう。「プリント配線板」とは、絶縁層と導体回路と電極を有し、電子部品を導体回路に接続して電子回路機能を形成するための土台となる板をいう。「プリント回路板」とは、プリント配線板の導体回路に電子部品を接続して電子回路機能を形成したものをいう。
【0013】
1.重合性組成物
本発明の電子部品実装基板の製造方法において用いられる重合性組成物は、(A)シクロオレフィンモノマー、(B)重合触媒、(C)架橋剤、及び(D)充填剤を含む。かかる重合性組成物は、本発明において封止材料として用いられる。
【0014】
〔シクロオレフィンモノマー(A)〕
本発明の電子部品実装基板の製造方法において用いられる重合性組成物に含まれるシクロオレフィンモノマー(A)は、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物である。本明細書において「重合性の炭素−炭素二重結合」とは、連鎖重合(開環重合)可能な炭素−炭素二重結合をいう。開環重合には、イオン重合、ラジカル重合、及びメタセシス重合など種々の形態のものが存在するが、本明細書においては、通常、メタセス開環重合をいう。
【0015】
シクロオレフィンモノマー(A)の環構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらの組み合わせ多環などが挙げられる。各環構造を構成する炭素原子数に特に限定はないが、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。また、環の数も特に限定はないが、好ましくは3〜6、より好ましくは3又は4である。
【0016】
シクロオレフィンモノマー(A)は、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、及びアリール基などの、炭素数1〜30の炭化水素基や、カルボキシル基又は酸無水物基などの極性基を置換基として有していてもよいが、得られるアンダーフィルを低誘電正接とする観点からは、極性基を持たない、すなわち、炭素原子と水素原子のみで構成されるものが好ましい。極性基を持たないシクロオレフィンモノマーとしては、単環のシクロオレフィンモノマーと多環のシクロオレフィンモノマーのいずれをも用いることができる。
【0017】
得られる電子部品実装基板において、誘電特性、機械的強度及び耐熱性の特性を高度にバランスさせる観点から、多環のシクロオレフィンモノマーを用いるのが好ましい。多環のシクロオレフィンモノマーとしては、特にノルボルネン系モノマーが好ましい。「ノルボルネン系モノマー」とは、ノルボルネン環構造を分子内に有するシクロオレフィンモノマーをいう。例えば、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、及びテトラシクロドデセン類などが挙げられる。
【0018】
シクロオレフィンモノマー(A)としては、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないものと、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するものとを、いずれも使用することができる。本明細書において「架橋性の炭素−炭素不飽和結合」とは、開環重合には関与せず、架橋反応に関与可能な炭素−炭素不飽和結合をいう。架橋反応とは橋架け構造を形成する反応であり、縮合反応、付加反応、ラジカル反応、及びメタセシス反応など種々の形態のものが存在するが、本明細書においては、通常、ラジカル架橋反応又はメタセシス架橋反応、特にラジカル架橋反応をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合としては、芳香族炭素−炭素不飽和結合を除く炭素−炭素不飽和結合、すなわち、脂肪族炭素−炭素二重結合又は三重結合が挙げられ、本明細書においては、通常、脂肪族炭素−炭素二重結合をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマー中、不飽和結合の位置は特に限定されるものではなく、炭素原子で形成される環構造内の他、該環構造以外の任意の位置、例えば、側鎖の末端や内部に存在していてもよい。
【0019】
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、シクロへプテンなどの単環シクロオレフィンモノマー;ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(テトラシクロドデセン)、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロノルボルネン、5,5−ジクロロノルボルネン、5−フルオロノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチルノルボルネン、5−クロロメチルノルボルネン、5−メトキシノルボルネン、5,6−ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノノルボルネン、5−シアノノルボルネンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができ、好ましくは架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないノルボルネン系モノマーである。
【0020】
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、3−ビニルシクロヘキセン、4−ビニルシクロヘキセン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロへキサジエン、1,4−シクロへキサジエン、5−エチル−1,3−シクロへキサジエン、1,3−シクロへプタジエン、1,3−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィンモノマー;5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−アリルノルボルネン、5,6−ジエチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができ、好ましくは架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するノルボルネン系モノマーである。
【0021】
極性基を有するシクロオレフィンモノマー(以下、極性基含有シクロオレフィンモノマーという。)としては特に制限はないが、例えば、5−ヒドロキシメチルノルボルネン、5−ヒドロキシ−i−プロピルノルボルネン、5−メトキシカルボニルノルボルネン、8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、及び5,6−ジカルボキシノルボルネンなどの、ヒドロキシ基、カルボキシル基、又はエステル基を有するシクロオレフィンモノマーを挙げることができる。以上のシクロオレフィンモノマーは、シクロオレフィンモノマー(A)として、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明に使用されるシクロオレフィンモノマー(A)としては、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーを含むものを用いるのが、得られる電子部品実装基板の接続信頼性を向上させる観点から、好適である。
【0022】
本発明に用いる重合性組成物に配合するシクロオレフィンモノマー(A)中、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーと架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとの配合割合は所望により適宜選択されるが、重量比(架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマー/架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマー)で、通常、5/95〜100/0、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは15/85〜70/30の範囲である。当該配合割合がかかる範囲にあれば、得られる電子部品実装基板において機械的強度、耐熱性、及びヒートサイクル試験時の耐クラック性等の特性を高度にバランスさせることができ、好適である。
【0023】
極性基含有シクロオレフィンモノマーを用いる場合、シクロオレフィンモノマー(A)中の、その含有量としては、所望により適宜選択すればよいが、本発明に用いる重合性組成物を重合して得られるシクロオレフィンポリマーの全繰り返し単位中、極性基含有シクロオレフィンモノマー単位の割合が、通常0.1〜100モル%、好ましくは2〜80モル%、より好ましくは5〜50モル%の範囲となる量である。シクロオレフィンモノマー(A)中の、極性基含有シクロオレフィンモノマーの含有量がこの範囲にあるとき、得られる電子部品実装基板において、電子部品とプリント基板との密着性、耐熱性、機械的強度、及び誘電特性が高度にバランスされ好適である。なお、シクロオレフィンポリマーの全繰り返し単位中の、極性基含有シクロオレフィンモノマー単位の割合は、NMRにより測定可能である。
【0024】
〔重合触媒(B)〕
本発明に用いられる重合性組成物に含まれる重合触媒(B)としては、前記シクロオレフィンモノマー(A)を重合できるものであれば特に限定はないが、本発明の電子部品実装基板の製造方法における工程(III)を効率的に行う観点から、通常、メタセシス重合触媒を用いるのが好ましい。
【0025】
メタセシス重合触媒としては、前記シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合可能である、通常、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン、及び化合物などが結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、5族、6族及び8族(長周期型周期表による。以下、同じ。)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、5族の原子としては、例えば、タンタルが挙げられ、6族の原子としては、例えば、モリブデンやタングステンが挙げられ、8族の原子としては、例えば、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。遷移金属原子としては、中でも、8族のルテニウムやオスミウムが好ましい。すなわち、本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、ルテニウム又はオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムを中心原子とする錯体がより好ましい。ルテニウムを中心原子とする錯体としては、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、本発明に用いる重合性組成物を塊状重合した場合、未反応モノマーの残存が少なく、生産性良く良質な重合体が形成される。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。
【0026】
ルテニウムカルベン錯体の具体例としては、以下の式(1)又は式(2)で表される錯体が挙げられる。
【化1】

【0027】
式(1)及び(2)において、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。X及びXはそれぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示す。L及びLはそれぞれ独立して、ヘテロ原子含有カルベン化合物又はヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物を表す。また、RとRは互いに結合して、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族環又は芳香族環を形成してもよい。さらに、R、R、X、X、L及びLは、任意の組合せで互いに結合して多座キレート化配位子を形成してもよい。
【0028】
ヘテロ原子とは、周期律表15族及び16族の原子を意味し、具体的には、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、砒素原子(As)、及びセレン原子(Se)などを挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、及びSなどが好ましく、Nが特に好ましい。
【0029】
前記ルテニウムカルベン錯体としては、得られる電子部品実装基板の耐熱性と機械的強度とが高度にバランスされることから、ヘテロ原子含有カルベン化合物としてヘテロ環構造を有するカルベン化合物を配位子として少なくとも1つ有するものが好ましい。ヘテロ環構造としては、イミダゾリン環構造又はイミダゾリジン環構造が好ましい。
【0030】
ヘテロ環構造を有するカルベン化合物としては、以下の式(3)又は式(4)で示される化合物が挙げられる。
【化2】

【0031】
式(3)及び(4)において、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20個の炭化水素基を表す。また、R〜Rは任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
【0032】
前記式(3)又は式(4)で表される化合物としては、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、及び1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
【0033】
また、前記式(3)又は式(4)で示される化合物のほかに、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、及び3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデンなどのヘテロ原子含有カルベン化合物も用い得る。
【0034】
前記式(1)及び(2)において、アニオン(陰イオン)性配位子X、Xは、中心原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子である。例えば、弗素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、及び沃素原子(I)などのハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、及びカルボキシル基などを挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0035】
また、中性電子供与性化合物は、中心原子から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよい。その具体例としては、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類、及びチオシアネート類などが挙げられる。これらの中でも、ホスフィン類、エーテル類及びピリジン類が好ましく、トリアルキルホスフィンがより好ましい。
【0036】
前記式(1)で表されるルテニウムカルベン錯体としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(3−フェニル−1H−インデン−1−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)[(フェニルチオ)メチレン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、及び(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、ヘテロ原子含有カルベン化合物及び中性の電子供与性化合物が各々1つ結合したルテニウムカルベン錯体;ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドや(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、2つの中性電子供与性化合物が結合したルテニウムカルベン錯体;ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロリドやベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリドなどの、2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウムカルベン錯体;などが挙げられる。
【0037】
前記式(2)で表されるルテニウムカルベン錯体としては、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t−ブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、及びビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリドなどが挙げられる。これらのルテニウムカルベン錯体の中でも、前記式(1)で表され、かつ配位子として前記式(4)で表される化合物を1つ有するものが最も好ましい。これらのルテニウムカルベン錯体は、Org. Lett., 1999年, 第1巻, 953頁や、Tetrahedron. Lett., 1999年, 第40巻, 2247頁などに記載された方法によって製造することができる。
【0038】
前記メタセシス重合触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。メタセシス重合触媒の使用量は、モル比(メタセシス重合触媒中の金属原子:シクロオレフィンモノマー)で、通常、1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
【0039】
メタセシス重合触媒は所望により、少量の不活性溶媒に溶解又は懸濁して重合性組成物の調製に使用することができる。かかる溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、及びミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、チルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、及びシクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、及びキシレンなどの芳香族炭化水素;インデンやテトラヒドロナフタレンなどの脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、及びアセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテルやテトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では、鎖状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、及び脂環と芳香環とを有する炭化水素の使用が好ましい。
【0040】
〔架橋剤(C)〕
本発明に用いられる重合性組成物に含まれる架橋剤(C)は、前記重合性組成物を重合反応に供して得られる重合体において架橋反応を誘起する目的で使用される。本発明において架橋剤としては、通常、ラジカル発生剤が好適に用いられる。ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、ジアゾ化合物、及び非極性ラジカル発生剤などが挙げられ、好ましくは有機過酸化物、及び非極性ラジカル発生剤である。
【0041】
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド類;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン、3,6−ジエチル−3,6−ジメチル−1,2,4,5−テトロキサンなどの環状パーオキサイド類;が挙げられる。中でも、重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシド類、ペルオキシケタール類、及び環状パーオキサイド類が好ましい。ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノンなどが挙げられる。非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
【0042】
前記ラジカル発生剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることがでる。本発明に用いる重合性組成物を重合に供して得られる重合体(シクロオレフィンポリマー)を、誘電正接の上昇や気泡の発生を抑制して適度に架橋させ、該重合体の耐熱性を向上させる観点から、重合性組成物へのラジカル発生剤の配合量としては、シクロオレフィンモノマー(A)100重量部に対して、通常、0.1〜100重量部、好ましくは1〜10重量部の範囲である。
【0043】
〔充填剤(D)〕
本発明においては、得られる電子部品実装基板の接続信頼性を高める観点から、重合性組成物に充填剤(D)を配合する。当該重合性組成物は、従来、封止材料として用いられている、エポキシ樹脂等を溶媒に溶かしてなる重合体ワニスと比べて低粘度であるため、容易に充填剤を高配合することができる。充填剤(D)の粒径(平均粒子径)は、特に限定されるものではないが、粒子を三次元的にみたときの長手方向と短手方向の長さの平均値で、通常、0.05〜10μm、好ましくは0.3〜3μmの範囲である。充填剤(D)としては、特に限定されるものではないが、通常、無機充填剤が好適に用いられる。無機充填剤としては、中でも、低線膨張性フィラーを用いるのが好ましい。低線膨張性フィラーの線膨張係数としては、通常、15ppm/℃以下である。線膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)により測定することができる。
【0044】
低線膨張性フィラーは、本発明の電子部品実装基板の製造方法における工程(III)で得られる重合性組成物の重合硬化物(架橋シクロオレフィンポリマー)の機械的強度を向上させる一方、線膨張係数を低減し得、好適である。低線膨張性フィラーとしては、例えば、シリカ、シリカバルーン、アルミナ、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化すず、酸化ベリリウム、バリウムフェライト、及びストロンチウムフェライト等の無機酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸水素ナトリウム等の無機炭酸塩;硫酸カルシウム等の無機硫酸塩;タルク、クレー、マイカ、カオリン、フライアッシュ、モンモリロナイト、ケイ酸カルシウム、ガラス、及びガラスバルーン等の無機ケイ酸塩;などが挙げられ、好ましくはシリカである。これらの低線膨張性フィラーは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
重合性組成物中に良好に分散し、重合性組成物の良好な浸透性が得られ、また、重合性組成物の重合硬化物においてボイドを発生させない観点から、本発明に用いる重合性組成物に対する充填材(D)の配合量としては、シクロオレフィンモノマー(A)100重量部に対して、通常、1〜1000重量部、好ましくは10〜500重量部、より好ましくは50〜300重量部の範囲である。
【0046】
(重合性組成物)
本発明に用いる重合性組成物には、上記するシクロオレフィンモノマー(A)、重合触媒(B)、架橋剤(C)、及び充填剤(D)を必須成分として、所望により、架橋助剤、非ハロゲン難燃剤、重合調整剤、重合反応遅延剤、連鎖移動剤、老化防止剤及びその他の配合剤を添加することができる。
【0047】
本発明に用いられる重合性組成物に架橋助剤を配合すれば、得られる電子部品実装基板の機械的強度を向上させることができる。架橋助剤としては、特に限定されるものではないが、通常、開環重合に関与せず、架橋剤(C)、特にラジカル発生剤により誘起される架橋反応に関与可能な架橋性の炭素−炭素不飽和結合を2以上有する多官能性化合物が好適に用いられる。かかる架橋性の炭素−炭素不飽和結合は、架橋助剤を構成する化合物中、例えば、末端ビニリデン基として、特に、イソプロペニル基やメタクリル基として存在するのが好ましく、メタクリル基として存在するのがより好ましい。
【0048】
架橋助剤の具体例としては、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンなどの、イソプロペニル基を2以上有する多官能性化合物;エチレンジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を2以上有する多官能性化合物などを挙げることができる。中でも、架橋助剤としては、メタクリル基を2以上有する多官能性化合物が好ましい。メタクリル基を2以上有する多官能性架橋助剤の中では、特に、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を3つ有する多官能性化合物がより好適である。
【0049】
前記架橋助剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明に用いる重合性組成物への架橋助剤の配合量としては、シクロオレフィンモノマー(A)100重量部に対して、通常、1〜100重量部の範囲である。
【0050】
本発明により得られる電子部品実装基板が民生用途の場合、重合性組成物に、ハロゲン原子を含まない難燃剤である非ハロゲン難燃剤を配合するのが好ましい。非ハロゲン難燃剤としては、工業的に用いられるものであれば格別な限定なく用いることができる。例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物難燃剤;酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物難燃剤;ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウムなどのホスフィン酸塩;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェートなどの、ホスフィン酸塩以外の含燐難燃剤;メラミン誘導体類、グアニジン類、イソシアヌル類等の含窒素難燃剤;ポリ燐酸アンモニウム、燐酸メラミン、ポリ燐酸メラミン、ポリ燐酸メラム、燐酸グアニジン、フォスファゼン類等の燐及び窒素の双方を含有する難燃剤;などを挙げることができる。
【0051】
これらの非ハロゲン難燃剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。非ハロゲン難燃剤の配合量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択されるが、シクロオレフィンモノマー(A)100重量部に対して、通常、20〜400重量部、好ましくは30〜300重量部、より好ましくは50〜250重量部の範囲である。
【0052】
重合調整剤は、重合活性を制御したり、重合反応率を向上させたりする目的で配合されるものであり、例えば、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。これらの重合調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明に用いる重合性組成物への重合調整剤の配合量は、例えば、モル比(メタセシス重合触媒中の金属原子:重合調整剤)で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
【0053】
重合反応遅延剤は、本発明に用いる重合性組成物の粘度増加を抑制しうるものである。従って、重合反応遅延剤を配合してなる重合性組成物は、特に、アンダーフィルとして、プリント基板と電子部品との間隙に注入する場合、均一かつ容易に浸透させることができ、好ましい。重合反応遅延剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、スチリルジフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;アニリン、ピリジンなどのルイス塩基;等を用いることができる。その配合量は、所望により適宜調整すればよい。
【0054】
本発明に用いる重合性組成物に連鎖移動剤を配合すると、得られる電子部品実装基板においてヒートサイクル試験時の耐クラック性を高めることができ、好適である。かかる連鎖移動剤の具体例としては、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、アリルアミン、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、4−ビニルアニリンなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たない連鎖移動剤;ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、メタクリル酸ウンデセニル、アクリル酸スチリル、エチレングリコールジアクリレートなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ有する連鎖移動剤;アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシランなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を2以上有する連鎖移動剤などが挙げられる。かかる連鎖移動剤の中でも、ビニル基とメタクリル基とを1つずつ有する連鎖移動剤が好ましく、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、メタクリル酸ウンデセニルなどが特に好ましい。
【0055】
これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明に用いる重合性組成物への連鎖移動剤の配合量としては、シクロオレフィンモノマー(A)100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0056】
また、老化防止剤として、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤を前記重合性組成物に配合することは、架橋反応を阻害しないで、該組成物の重合硬化物の耐熱性を高度に向上させることができ、好適である。中でも、フェノール系老化防止剤とアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤がより好ましい。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤の配合量は、所望により適宜選択されるが、シクロオレフィンモノマー(A)100重量部に対して、通常、0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜2重量部の範囲である。
【0057】
本発明に用いる重合性組成物には、さらに、その他の配合剤を配合することができる。その他の配合剤としては、着色剤、光安定剤、及び発泡剤などを用いることができる。例えば、着色剤としては、染料や顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。これらのその他の配合剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
【0058】
本発明に用いる重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよい。例えば、重合触媒を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)を調製し、別にシクロオレフィンモノマーや架橋剤などの必須成分、及び所望によりその他の配合剤等を配合した液(モノマー液)を調製し、該モノマー液に該触媒液を添加し、攪拌することによって調製することができる。
【0059】
2.電子部品実装基板の製造方法
本発明の電子部品実装基板の製造方法は、
突起状電極を有する電子部品を、前記突起状電極を介してプリント基板の電極に接続する工程(I)と、
前記電子部品と前記プリント基板との電極間接続部分を、シクロオレフィンモノマー(A)、重合触媒(B)、架橋剤(C)、及び充填剤(D)を含む重合性組成物により被覆する工程(II)と、
前記重合性組成物を重合硬化させる工程(III)と、
を含んでなり、前記重合性組成物からなる封止材料により、電子部品とプリント基板との電極間接続部分を被覆し、次いで重合硬化して、前記電極間接続部分の封止を行うことを1つの大きな特徴とする。
【0060】
本発明に用いる重合性組成物はモノマー液であるため、従来の重合体ワニスからなるものと比べ低粘度である。そのため、特にアンダーフィルとして用いると、電子部品とプリント基板との間隙に容易に浸透し、当該間隙に充分に充填することができる。また、重合性組成物の重合硬化物は架橋シクロオレフィンポリマーからなり、従来の封止材料の硬化物に比べて耐熱性が高く、また、低線膨張性であり、ヒートサイクル試験時の耐クラック性に優れる。さらに、前記重合硬化物は吸水率が低く、半田リフローや高温高湿環境下での吸水による、誘電率上昇、密着力低下、及びクラックや気泡の発生が生じにくい。また、低誘電率及び低誘電正接であり、高周波での動作環境において電気的損失が少ない。本発明により得られる電子部品実装基板は、電子部品とプリント基板との電極間接続部分が、上記の通りの重合性組成物の重合硬化物により実用上充分に封止されてなるものであり、その結果、優れた接続信頼性を有する。
【0061】
本発明で使用される重合性組成物は、主に、半導体ベアチップ実装パッケージなどにおいて、チップの電極とプリント基板の電極とが直接接続された部分を封止するのに好適に用いられる。該重合性組成物は、近年のLSIベアチップ実装の封止方法である、液状エポキシ樹脂を用いる場合に常用されているポッティング(中型)法による封止方法やその他の特殊な封止方法などにそのまま用いることができる。
【0062】
〔工程(I)〕
工程(I)では、突起状電極を有する電子部品を、前記突起状電極を介してプリント基板の電極に接続する。電子部品としては、特に限定されるものではなく、電子機器の分野においてプリント基板に実装して用いられるいずれの電子部品も用いることができる。電子部品の典型例としては、半導体チップ、及び、例えば、2個以上の複数の半導体部品を実装してなるマルチ・チップ・モジュール(MCM)などの半導体パッケージが挙げられる。当該電子部品は、プリント基板の電極に直接接続するための突起状電極(バンプ)を有する。突起状電極としては、例えば、半田ボールが挙げられる。
【0063】
プリント基板は、少なくとも、絶縁層と導体回路と電極とを有し、電子部品の電極からの電気信号を他の電子部品等に伝送可能なものであれば特に限定はない。プリント基板としては、例えば、従来のガラスエポキシプリント配線基板、ガラスポリイミドプリント配線基板、ビスマレイミドトリアジン樹脂プリント基板、ポリフェニレンエーテル(ポリフェニレンオキサイド)プリント配線基板、フッ素樹脂プリント配線基板、その他環状オレフィン系樹脂プリント配線基板などの低誘電率プリント配線基板などのプリント配線基板;ポリエチレンテレフタレートフレキシブルプリント配線基板、ポリイミドフレキシブルプリント配線基板などのフレキシブルプリント配線基板(FPC);シリコンウェハー基板;セラミック基板;感光性樹脂等を使用した高密度実装基板;樹脂付き金属箔やドライフィルム、接着性絶縁フィルムなどのフィルム積層型の高密度実装基板;ポリフェニレンスルフィドや液晶ポリマーなどの熱可塑性エンジアリングプラスチックフィルムなどのフィルム配線基板などや、近年のパッケージ形態であるチップスケールパッケージ(CSP)に使用されるキャリアフィルム(ポリイミドキャリアフィルムなど)や単層基板など、並びにこれらの基板に電子部品が実装されたプリント回路板が挙げられる。
【0064】
突起状電極を有する電子部品の、前記突起状電極を介するプリント基板の電極への接続は、通常、電子部品をそのまま基板上に実装するベアチップ実装方法により行うのが好ましい。ベアチップ実装方法としては、リード線を設けたフィルムを用いて基板側の電極と電子部品側の電極とを接続するTAB(Tape Automated Bonding)実装、基板側の電極と電子部品側の電極とをワイヤによって接続するワイヤボンディング実装、及び電子部品の電極を基板側の電極と直接接続するフリップチップ実装が挙げられるが、通常、フリップチップ実装によるのが好ましい。フリップチップ実装では、電子部品は、突起状電極形成面を逆さまにして、フェースダウンの状態でプリント基板の電極上に搭載され直接接続されることになる。
【0065】
〔工程(II)〕
工程(II)においては、前記電子部品と前記プリント基板との電極間接続部分を、前記重合性組成物により被覆する。フリップチップ実装により電子部品をプリント基板に接続した場合、前記電子部品と前記プリント基板との間にできた間隙に前記重合性組成物を注入することにより、電極間接続部分を該組成物により被覆することができる。例えば、前記重合性組成物をプリント基板と電子部品との間隙にディスペンサー等を用いて流し込み、毛細管現象を利用して該組成物を間隙に充填する。なお、この場合、ディスペンサー等を用いて、プリント基板上に電子部品の大きさに合わせて重合性組成物を塗布し、又は、重合性組成物をドライフィルムの形態として、電子部品の大きさに合わせてプリント基板上に設置し、次いで電子部品のプリント基板への接続を行っても、前記と同様に電極間接続部分を該組成物により被覆することができる。
【0066】
TAB実装を行った場合、リード線を設けたフィルムが、電子部品の部分だけくり貫かれた状態で該電子部品の上方に設置された形態をとっているので、電子部品の表面が底面を形成してフィルムが枠を形成する状態になっている。よって、重合性組成物を枠内に流し込めば、電極間接続部分を該組成物により被覆することができる。
【0067】
また、ワイヤボンディング実装を行った場合は、重合性組成物を、少なくともワイヤ接続部分を覆うように塗布することで電極間接続部分を該組成物により被覆することができる。その際、塗布した重合性組成物が流れないように、電子部品の周辺に枠(ダム)を設置したり、電子部品の実装部分のみを凹部分にしてもよい。また、電子部品が実装されたプリント基板を金型に設置して、射出成形法によってインサート成形してもよい。
【0068】
〔工程(III)〕
工程(III)では、前記重合性組成物を重合硬化させ、重合性組成物の重合硬化物により、電子部品とプリント基板との電極間接続部分を封止する。重合硬化とは、重合性組成物の重合と架橋剤による架橋反応とを同時並行的に進行させることをいう。生産効率に優れることから、重合は、メタセシス重合触媒を用いて塊状重合により行うのが、また、架橋反応は、ラジカル発生剤を用いてラジカル架橋反応により行うのが好ましい。この場合、重合性組成物を重合硬化させるための加熱温度は、通常、ラジカル発生剤により架橋反応が誘起される温度以上である。加熱温度としては、通常、1分間半減期温度以上、好ましくは1分間半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分間半減期温度より10℃以上高い温度である。典型的には、100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲である。加熱時間は、0.1〜180分間、好ましくは0.5〜120分間、より好ましくは1〜60分間の範囲である。なお、1分間半減期温度とは、ラジカル発生剤の半量が1分間で分解する温度である。重合性組成物の加熱は、例えば、工程(II)で得られる、電子部品を接続し、該電子部品との電極間接続部分が該組成物で被覆された状態にあるプリント基板ごと加熱炉を通すことにより行うことができる。以上の工程(I)〜(III)を行うことにより、本発明に係る電子部品実装基板が得られる。
【0069】
本発明においては、プリント基板に対して電子部品を取り付ける反対側の面に半田ボールが設けられている場合、上述のようにしてプリント基板と電子部品との電極間接続部分を封止した後(1次封止)、1次封止を行って得たプリント回路板をマザーボード(通常のプリント配線板)上にさらに搭載し接続してもよい。この場合、前記プリント回路板とマザーボードとの間隙に対してアンダーフィル法により本発明に用いる重合性組成物をディスペンサー等を使用して流し込み重合硬化させることにより、2次封止を得ることができる。
【0070】
また、本発明によれば、例えば、半導体ベアチップ実装パッケージを製造することができる。用いられる電子部品としては、半導体部品の中でもCPU(中央演算装置)やメモリ(DRAM)などに使用されるような、微細配線が高度に集積された大規模集積回路(LSI)が挙げられる。半導体ベアチップ実装パッケージは、少なくとも半導体チップの電極とプリント基板の電極との間の接続部分を本発明の重合性組成物を用いて封止することにより得られる。当該パッケージに、さらにマザーボードのプリント基板に接続する目的で半田ボールなどの突起状電極を取付けた物は、ボールグリッドアレイ(BGA)といい、半導体チップが複数実装されたパッケージはマルチチップパッケージ(マルチチップモジュール)として、コンピューターや通信機器に使用可能である。
【0071】
さらに、本発明の重合性組成物は、半導体ベアチップ実装パッケージの近年の形態としての、チップスケールパッケージ(CSP)などの封止にも使用可能である。CSPの具体的な形態としては、μ−BGA、FBGA、FLGA、SON、SOL、モールドCSPなどが挙げられる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。以下において「部」は特に断りのない限り重量基準である。
【0073】
参考例1
ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド51部と、トリフェニルホスフィン79部とを、トルエン952部に溶解させて触媒液を調製した。また、シクロオレフィンモノマーとして、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(テトラシクロドデセン)95部と5−ビニルノルボルネン5部、連鎖移動剤としてメタクリル酸アリル 0.5部、架橋剤として1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度149℃)2部、充填剤としてシリカ200部を混合してモノマー液を調製した。ここに上記触媒液を0.12部加えて、室温にて撹拌し、重合性組成物Aを調製した。
【0074】
得られた重合性組成物Aにつき、以下の方法に従って各物性を測定した。結果を表1に示す。
(浸透性)
ポリイミド膜コートした10mm×10mmのシリコンチップ上に30mm×30mmのFR−4基板を約50μmのスペーサを介して置き、その間隙に重合性組成物Aを注入して、重合性組成物Aが隙間を埋めるまでの時間を測定し、以下の評価基準に従って評価した。なお、測定は、ホットプレート上、80℃に加熱しながら行った。
〔評価基準〕
○:10秒未満
△:10秒以上
×:浸透せず
(ガラス転移温度)
重合性組成物Aを205℃で20分間、3MPaにて加熱プレスを行い、硬化させたサンプルについて、TMAでガラス転移温度(Tg)を測定した。昇温速度は10℃/分とした。
(吸水率)
前記(ガラス転移温度)で得られたサンプルについて、JIS C6481に準じて吸水率を測定し、以下の評価基準に従って評価した。
〔評価基準〕
○:0.1%未満
×:0.1%以上
(誘電率、誘電正接)
前記(ガラス転移温度)で得られたサンプルについて、インピーダンスアナライザーで誘電率及び誘電正接を測定した。
【0075】
参考比較例1
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(テトラシクロドデセン)95部と5−ビニルノルボルネン5部の混合物に対し連鎖移動剤としてメタクリル酸アリル 0.5部を加え、トルエン中、60℃にて、参考例1で製造した触媒液0.12部を加え重合を行った。この溶液にメタノール900部を加え、沈殿凝集物として重合体を得た。この重合体100部に対し架橋剤として1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度149℃)2部、充填剤としてシリカ200部、溶媒としてトルエン300部を加えて樹脂組成物Bを得た。得られた樹脂組成物Bについて実施例1と同様にして各物性を測定した。結果を表1に示す。なお、(ガラス転移温度)、(吸水率)、及び(誘電率、誘電正接)で用いたサンプルは、樹脂組成物Bから溶媒を揮発させフィルム形態とした後、205℃で2時間加熱プレスすることにより調製した。
【0076】
参考比較例2
ビスフェノールF型エポキシ樹脂100部に、ジエチルトルエンジアミン5部、充填剤としてシリカ200部を添加して樹脂組成物Cを調製した。得られた樹脂組成物Cについて実施例1と同様にして各物性を測定した。結果を表1に示す。なお、(ガラス転移温度)、(吸水率)、及び(誘電率、誘電正接)で用いたサンプルは、樹脂組成物Cから溶媒を揮発させフィルム形態とした後、170℃で3時間加熱プレスすることにより調製した。
【表1】

【0077】
表1より、参考例1の重合性組成物は、参考比較例1や2の樹脂組成物に比べ、間隙への浸透性に優れており、また、それらの硬化物について比較した場合も、測定したいずれの諸物性についても優れることが分かる。
【0078】
実施例1
プリント基板(ガラスエポキシ基板、0.8mm厚)に、フリップチップボンダーを用いて半導体(10mm各共晶半田バンプ、エリアアレイ625バンプ)を10個接続し、純水で洗浄した後、150℃で1時間乾燥した。次に、前記重合性組成物Aを80℃でディスペンサーを用いて、プリント基板と半導体との間隙に注入した。その後、半導体を接続した基板を230℃の半田リフロー炉に3回通し、重合性組成物Aを重合硬化させて封止を行い半導体デバイス(電子部品実装基板)を得た。得られた半導体デバイスについて以下の評価を行うことにより、該デバイスが優れた接続信頼性を有することを確認できた。
【0079】
(耐湿性)
半導体デバイスについて、85℃、相対湿度(RH)85%の条件で300時間吸湿処理した後、280℃の半田リフロー炉に5回通し、内部における剥離の有無を超音波探傷装置にて確認したところ、剥離は見られず、良好な信頼性を示した。
【0080】
(耐クラック性)
上記耐湿試験後の半導体デバイスを、−55℃で30分間、及び125℃で30分間維持し、それを1サイクルとして、500サイクル行ったところ、クラックの発生は見られず、ヒートサイクル試験時の耐クラック性に優れることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起状電極を有する電子部品を、前記突起状電極を介してプリント基板の電極に接続する工程(I)と、
前記電子部品と前記プリント基板との電極間接続部分を、シクロオレフィンモノマー(A)、重合触媒(B)、架橋剤(C)、及び充填剤(D)を含む重合性組成物により被覆する工程(II)と、
前記重合性組成物を重合硬化させる工程(III)と、
を含んでなる電子部品実装基板の製造方法。
【請求項2】
前記重合触媒(B)は、メタセシス重合触媒であることを特徴とする請求項1記載の電子部品実装基板の製造方法。
【請求項3】
前記充填材(D)は、低線膨張性フィラーであることを特徴とする請求項1または2記載の電子部品実装基板の製造方法。
【請求項4】
前記充填材(D)の粒径は、0.05〜10μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の電子部品実装基板の製造方法。
【請求項5】
シクロオレフィンモノマー(A)は、極性基を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の電子部品実装基板の製造方法。
【請求項6】
前記重合性組成物は、連鎖移動剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の電子部品実装基板の製造方法。

【公開番号】特開2011−181536(P2011−181536A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41327(P2010−41327)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】