説明

電子部品用搬送装置

【課題】電子部品の搬送効率を高く保ちながら、電子部品が破損することがない電子部品用搬送装置を提供する。
【解決手段】電子部品を有する第1の受け渡し部と、電子部品を移載させる第2の受け渡し部と、電子部品吸着用の吸着コレット11と、吸引装置と、吸着コレット11を水平移動させる移動装置(ターンテーブル3、駆動装置13)とを備える。吸着コレット11は上下方向に移動できないように移動装置に保持される。吸引装置は、吸着コレット11が第1の受け渡し部の上方にあるときに吸引を開始し、吸着コレット11が第2の受け渡し部の上方にあるときに吸引を停止する。第1の受け渡し部と第2の受け渡し部との間には、電子部品と吸着コレット11とが水平移動可能な移動空間S1〜S5が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を吸着コレットに吸着させて搬送する電子部品用搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の搬送装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示された電子部品用搬送装置は、電子部品を吸着する吸着コレットを昇降させるための昇降装置と、吸着コレットを水平方向に移動させるための移動装置とを備えている。
【0003】
前記昇降装置は、吸着コレットが前記移動装置による駆動によって水平方向に移動するときは吸着コレットを上昇した位置に保持する。また、この昇降装置は、吸着コレットが電子部品を吸着するときや、電子部品を被載置部に載せるとき(移載時)に吸着コレットを下降させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4057643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている電子部品用搬送装置では、電子部品を吸着するときや載置するときに電子部品が破損してしまうおそれがあった。これは、吸着時に吸着コレットが電子部品の上面に衝撃荷重をもって衝突したり、載置時に電子部品のリードが被載置面に無理に押し付けられることがあるからである。
【0006】
このような不具合は、吸着コレットの昇降速度を低下させることによって、ある程度は解消することができる。しかし、このようにすると、電子部品の吸着、載置に要する時間が長くなってしまい、搬送効率が低下してしまう。
【0007】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、電子部品の搬送効率を高く保ちながら、電子部品が破損することがない電子部品用搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る電子部品用搬送装置は、搬送される電子部品を有する第1の受け渡し部と、電子部品を移載させる第2の受け渡し部と、電子部品の上端面と対向する吸着面が下端に形成された吸着コレットと、前記吸着面に形成された開口から空気を吸引する吸引装置と、前記第1の受け渡し部の上方から前記第2の受け渡し部の上方へ前記吸着コレットを水平方向に移動させる移動装置とを備え、前記吸着コレットは、前記第1の受け渡し部上の電子部品の上端面と前記吸着面との間に微小な隙間が形成される高さで上下方向に移動することがないように前記移動装置に保持され、吸引装置は、前記吸着コレットが前記第1の受け渡し部の上方に位置付けられている状態において、第1の受け渡し部上の電子部品が吸着コレットに吸着される吸入量で空気の吸引を開始し、かつ前記コレットが前記第2の受け渡し部の上方に位置付けられている状態で空気の吸引を停止するものであり、前記第1の受け渡し部と第2の受け渡し部との間には、前記電子部品と前記吸着コレットとが水平移動可能な移動空間が形成されているものである。
【0009】
本発明は、前記発明において、前記移動装置は、間欠的に回転するターンテーブルを備え、前記吸着コレットは、前記ターンテーブルの外周部に周方向に等間隔おいて並設され、前記第1の受け渡し部と第2の受け渡し部とは、前記ターンテーブルの周囲に配設された複数の処理装置によって構成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、吸着コレットが第1の受け渡し部の上方に位置している状態で吸引装置による空気の吸引が開始されることに伴って、電子部品が吸い上げられて吸着コレットに吸着される。また、本発明においては、吸着コレットが第2の受け渡し部の上方に位置している状態で吸引装置による空気の吸引が停止されることに伴って、電子部品が吸着コレットから開放されて落下し、第2の受け渡し部に載置される。
【0011】
このため、本発明に係る搬送装置は、電子部品の吸着、開放を行うに当たって吸着コレットを昇降させる必要がないから、従来の搬送装置と較べて吸着コレットが電子部品に衝撃荷重をもって衝突することがなくなるとともに、電子部品が被載置面に過大な押圧力で押し付けられることもなくなる。しかも、本発明によれば、吸着コレットの昇降時間が0になるために、従来の搬送装置と較べて搬送時間を短縮することができる。
【0012】
したがって、本発明によれば、電子部品の搬送効率を高く保ちながら、電子部品が破損することがない電子部品用搬送装置を提供することができる。
また、本発明に係る電子部品用搬送装置は、吸着コレットを昇降させるための昇降装置が不要であるから、特許文献1に開示されているような従来の搬送装置に較べて部品数を低減することができ、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電子部品用搬送装置の構成を示す斜視図である。
【図2】吸引装置が接続された吸着コレットの断面図である。
【図3】パーツフィーダから電子部品を受け取るときの動作を説明するための側面図である。同図(A)は吸着コレットを部品受け渡し部の上方に移動させた状態を示し、同図(B)は電子部品を吸着コレットの下方に移動させた状態を示し、同図(C)は電子部品を吸着コレットに吸着させた状態を示し、同図(D)は吸着コレットを移動させた状態を示す。
【図4】矯正装置の動作を説明するための側面図である。同図(A)は吸着コレットと電子部品とを矯正装置の上方に移動させている状態を示し、同図(B)は矯正装置によって電子部品を挟持するときの状態を示し、同図(C)は矯正装置によって電子部品の角度を調整するときの状態を示す。
【図5】通電検査装置の動作を説明するための側面図である。同図(A)は吸着コレットと電子部品とを通電検査装置の上方に移動させている状態を示し、同図(B)は通電検査装置の電極を電子部品のリードに接触させるときの状態を示し、同図(C)は通電検査装置によって検査を行うときの状態を示す。
【図6】電子部品を他の搬送装置に移載させる動作を説明するための側面図である。同図(A)は吸着コレットと電子部品とを他の搬送装置の部品受け渡し部の上方に移動させている状態を示し、同図(B)は吸着コレットを部品受け渡し部の上方に移動させた状態を示し、同図(C)は電子部品移載後の状態を示す。
【図7】画像検査装置の動作を説明するための側面図である。同図(A)は吸着コレットと電子部品とを画像検査装置の撮像部に移動させている状態を示し、同図(B)は画像検査装置によって検査を行っている状態を示す。
【図8】テーピング装置に電子部品を載置するときの動作を説明するための側面図である。同図(A)は電子部品をテープの上方に位置付けた状態を示し、同図(B)は電子部品を載置した後の状態を示す。
【図9】電子部品用搬送装置の一例を示す斜視図である。
【図10】パーツフィーダの部品受け渡し部、矯正装置および通電検査装置を示す斜視図である。
【図11】マーキング装置を示す斜視図である。
【図12】画像検査装置を示す斜視図である。
【図13】テーピング装置の部品移載部を示す斜視図である。
【図14】制御装置の構成を示すブロック図である。
【図15】移動装置と吸引装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る電子部品用搬送装置の一実施の形態を図1〜図15によって詳細に説明する。
図1に示す電子部品用搬送装置1は、基台2の上に設けられたターンテーブル3と、このターンテーブル3の周囲に配設された後述する各処理装置4〜9の部品受け渡し部と、この搬送装置1に装備されている各アクチュエータや前記各処理装置の動作を制御するための制御装置10とによって構成されている。図1は、この実施の形態による搬送装置1の構成を示すものであり、同図に図示されている各装置の形状、位置等は実際のものとは異なる。
【0015】
前記ターンテーブル3は、外周部に複数の吸着コレット11を備えており、この吸着コレット11に吸着された電子部品12(例えば図2参照)を各処理装置間で水平方向に搬送するものである。この実施の形態による搬送装置1によって搬送される電子部品12は、図2に示すように、パッケージ部分12aの両側部にそれぞれ複数のリード12bが突設されたいわゆるDIP (Dual Inline Package) 型の半導体装置である。なお、本発明に係る搬送装置1によって搬送される電子部品としては、たとえば上記DIL型半導体装置とは異なる形状の半導体装置、例えばQFP (Quad Flat Package)型半導体装置や、チップ抵抗、チップ型コンデンサなどのチップ部品、シリコンウエハから分断されたシリコンチップなど、吸着コレット11が吸着可能な全ての電子部品である。
【0016】
前記ターンテーブル3は、円板状に形成されており、その軸線が上下方向を指向する状態で基台2の上に駆動装置13を介して装着されている。
前記駆動装置13は、モータ(図示せず)を動力源として構成されており、ターンテーブル3を上下方向の軸線回りに所定の角度ずつ間欠的に回転させる。この所定角度とは、例えばN個の吸着コレット11がターンテーブル3の周方向に等間隔おいて配置されている場合は1/N回転に相当する角度である。
【0017】
この実施の形態においては、ターンテーブル3と駆動装置13とによって本発明でいう移動装置が構成されている。駆動装置13がターンテーブル3を駆動するときのターンテーブル3の回転角度、回転速度、回転時期等は、後述する制御装置10によって制御される。
ターンテーブル3の外周縁部には、複数の吸着コレット11が取付けられている。図1は、構成を理解し易いように、吸着コレット11の個数を減らした状態で描いてある。実際の搬送装置には、図9〜図13に示すように、多数の吸着コレット11がターンテーブル3に設けられている。これらの吸着コレット11は、ターンテーブル3の周方向に等間隔おいて設けられている。
【0018】
各吸着コレット11は、図2に示すように、ターンテーブル3を上下方向に貫通し、ターンテーブル3から下方に突出する状態でターンテーブル3に固定されている。すなわち、吸着コレット11は、上下方向に移動することができないようにターンテーブル3に保持されている。
吸着コレット11の軸心部には、この吸着コレット11を上下方向に貫通するように空気孔14が穿設されている。吸着コレット11の下端には、平坦な吸着面15が形成され、吸着コレット11の上端部には、後述する空気圧装置16を接続するためのホース接続用パイプ17が一体に形成されている。前記空気孔14の下端は、前記吸着面15に開口し、この空気孔14の上端は、前記パイプ17の内部空間に接続されている。
【0019】
吸着コレット11の高さ、すなわち吸着面15の上下方向の位置は、部品受け渡し部21に載置されている電子部品12の上面と吸着面15との間に所定の隙間dが形成される位置に設定されている。部品受け渡し部21は、後述する処理装置に設けられている。
部品受け渡し部21の電子部品12が載置される部分には、図2に示すように、空気孔21aが穿設されている。この空気孔21aは、電子部品12を部品受け渡し部21に吸着保持させたり開放させるための空気通路を形成するもので、後述する空気圧装置16に接続されている。
【0020】
前記ホース接続用パイプ17には、空気ホース22を介して空気圧装置16が接続されている。この空気圧装置16は、全ての吸着コレット11の空気孔14内および部品受け渡し部21の空気孔21aに負圧を発生させる機能と、所定の位置に移動した吸着コレット11に空気を供給する機能と、部品受け渡し部21の空気孔21aに所定のタイミングで空気を供給する機能とを有している。吸着コレット11に空気が供給されると、真空が破壊され、この吸着コレット11に吸着されていた電子部品12が開放されて落下する。この実施の形態においては、この空気圧装置16によって本発明でいう吸引装置が構成されている。
【0021】
また、空気圧装置16によって部品受け渡し部21の空気孔21aから空気が吸引されると、部品受け渡し部21上に電子部品12が吸着保持され、前記空気孔21aに空気が供給されると、真空が破壊されて電子部品12が開放される。部品受け渡し部21に吸着保持されている電子部品12を吸着コレット11に吸着させるときは、部品受け渡し部21において真空が破壊されて電子部品12が開放された後に吸着コレット11において負圧を発生させる構成が採られている。
【0022】
以下においては、前記空気孔14,21内が負圧になる状態を単に「吸着状態」といい、所定の位置に移動した吸着コレット11や部品受け渡し部21の空気孔21aに空気が供給されて真空が破壊される状態を単に「開放状態」という。上述した所定の位置に移動した吸着コレット11とは、電子部品12が移載される処理装置の部品受け渡し部21の上方(部品を開放する位置)に移動した吸着コレット11のことをいう。
【0023】
この実施の形態による空気圧装置16は、図2に示すように、前記空気ホース22を有する吸着コレット毎の第1の空気通路23によって全ての吸着コレット11に接続された真空発生装置24と、前記第1の空気通路23の中間部と空気圧力源25とを接続する第2の空気通路26と、この第2の空気通路26に設けられた第1の電磁弁27と、前記真空発生装置24を部品受け渡し部21の空気孔21aに接続するための第3の空気通路28と、この第3の空気通路28の中間部と前記空気圧力源25とを接続する第4の空気通路29と、この第4の空気通路29に設けられた第2の電磁弁30などを備えている。前記第1の空気通路23は、空気が吸着コレット11から吸引される状態を保ちながら、ターンテーブル3の回転に伴って吸着コレット11が移動できる構造が採られている。この実施の形態による第1、第2の電磁弁27,30は、非励磁状態で閉じ、励磁されることによって開くものが用いられている。
【0024】
第2の空気通路26と第1の電磁弁27とは、電子部品12を受け取る処理装置と同じ数だけ装備されており、ターンテーブル3とは異なる支持系によって基台2に移動することがないように支持されている。第2の空気通路26は、電子部品12を開放する位置に移動した吸着コレット11に接続されている第1の空気通路23のみと連通するように形成されている。また、第3、第4の空気通路28,29と第2の電磁弁30とは、電子部品12が載置される全ての処理装置と同数装備されている。
【0025】
前記真空発生装置24と前記第1、第2の電磁弁27,30の動作は、制御装置10によって制御される。なお、空気圧装置16の構成は、この実施の形態に示す構成に限定されることはなく、適宜変更することができる。
前記真空発生装置24は、予め定めた吸入空気量が得られるように空気を吸引する構成が採られている。この吸入空気量は、吸着コレット11の空気孔14内が所定の真空圧で負圧になり、この負圧が電子部品12に作用することに伴って電子部品12が浮上して吸着コレット11に吸着される量に設定されている。
【0026】
前記ターンテーブル3の周囲に配設された各種の処理装置としては、図1、図9〜図13に示すように、パーツフィーダ4、矯正装置5、通電検査装置6、マーキング装置7、画像検査装置8、テーピング装置9である。これらの装置は、図9に示すように、基台2の上に載せられた状態で基台2に固定されている。これらの処理装置4〜9の動作と上述したターンテーブル用駆動装置13や空気圧装置16の動作は、制御装置10によって制御される。
【0027】
前記制御装置10は、図14に示すように、移動装置(ターンテーブル用駆動装置13)の動作を制御するための移動装置制御部31と、空気圧装置16の動作を制御するための吸引装置制御部32と、パーツフィーダ4の動作を制御するためのパーツフィーダ制御部33と、矯正装置5の動作を制御するための矯正装置制御部34と、通電検査装置6の動作を制御するための通電検査装置制御部35と、マーキング装置7の動作を制御するためのマーキング装置制御部36と、画像検査装置8の動作を制御するための画像検査装置制御部37と、テーピング装置9の動作を制御するためのテーピング装置制御部38とを備えている。
【0028】
前記パーツフィーダ4は、電子部品12を供給するためのもので、この実施の形態においてはボウルフィーダによって構成されている。このパーツフィーダ4の電子部品供給部41は、図3に示すように、電子部品12を一方向(図3においては右方向)に一列に並べて送るためのガイドレール42およびシュータ本体43と、送り方向の下流端に位置する電子部品12を一つずつ部品供給位置44に移動させるためのスライダ45とを備えている。
【0029】
前記ガイドレール42は、電子部品12をシュータ本体43の上に正しく載置されている状態(大きく傾斜するようなことがない状態)で送ることができるように、電子部品12の上面に所定の隙間d1{図3(B)参照}をおいて対向するように形成されている。
前記スライダ45は、パーツフィーダ4において前記部品受け渡し部21を構成するものであって、本発明でいう第1の受け渡し部を構成するものである。
【0030】
このスライダ45は、シュータ本体43に隣接する部品受け取り位置46{図3(A)参照}と、吸着コレット11の下方に位置する部品供給位置44{図3(B)参照}との間で水平に往復動する構成が採られている。このスライダ45の上下方向の位置は、電子部品12が載せられて部品供給位置44に移動した状態において、図3(B)に示すように、スライダ45上の電子部品12と、その上方に位置する吸着コレット11との間に隙間dが形成されるように位置付けられている。前記ガイドレール42と電子部品12との間の隙間d1は、スライダ45上の電子部品12と吸着コレット11との間の前記隙間dより広くなるように形成されている。また、このスライダ45には、図示してはいないが、図2に示した部品受け渡し部21と同様に空気孔が形成されており、この空気孔を介して前記空気圧装置16が接続されている。
【0031】
パーツフィーダ4は、図3(A)に示すように、スライダ45が部品受け取り位置46に位置している状態で電子部品12を送り、スライダ45上に電子部品12を移載させる。この電子部品12は、スライダ45に吸着され保持される。スライダ45は、このように電子部品12を吸着保持した後に部品供給位置44に移動する{図3(B)参照}。このとき、制御装置10は、空気圧装置16の第1の電磁弁27を励磁状態として吸着コレット11を「開放状態」とし、ターンテーブル3を回転させて吸着コレット11を部品供給位置44の上方に移動させる。
【0032】
スライダ45上の電子部品12の上端の高さは、前記ガイドレール42から送出されたときの高さと一致するために、吸着コレット11の吸着面15より必ず低くなる。このため、ターンテーブル3の回転により吸着コレット11が部品供給位置44の上方に移動するときにスライダ45上の電子部品12に側方から当たるようなことはない。
そして、制御装置10は、スライダ45が部品供給位置44に位置している状態において、スライダ45を「開放状態」に切り換えるとともに吸着コレット11を「吸着状態」に切り換える。
【0033】
すなわち、吸着コレット11は、電子部品12の上方に位置付けられかつスライダ45が「開放状態」とされた状態において、この電子部品12が吸着面15に吸着される吸入量で空気の吸引を開始する。このように吸着コレット11が「吸着状態」になることに伴ってスライダ45上の電子部品12が吸着コレット11に吸着される{図3(C)参照}。その後、制御装置10は、所定の時期にターンテーブル3を所定の角度だけ回転させ、スライダ45の上方に位置している吸着コレット11を次の矯正装置5に向けて(図3の紙面と略直交する方向に)移動させる{図3(D)参照}。
【0034】
前記矯正装置5は、吸着コレット11に対する電子部品12の吸着位置、電子部品12の上下方向の軸線回りの角度などを修正するためのものである。
この実施の形態による矯正装置5は、図4に示すように、電子部品12を側方から挟持する構造の開閉式クランプ51を備えている。前記クランプ51は、図4には描いていないが、電子部品12を四方から挟むことにより電子部品12の水平方向の位置と、上下方向の軸線回りの角度とを修正する構成が採られている。
【0035】
このクランプ51の上下方向の位置は、図4(A)に示すように、吸着コレット11に吸着された電子部品12が開放状態のクランプ51の上を通ることができるように位置付けられている。
矯正装置5は、図4(A)に示すように、クランプ51を開いた状態でパーツフィーダ4側から送られてくる電子部品12を待つ。開放状態にあるクランプ51と、上述したパーツフィーダ4の部品供給位置にあるスライダ45との間には、電子部品12と吸着コレット11とが水平移動可能な移動空間S1{図3(D)および図4(A)参照}が形成されている。このため、電子部品12と吸着コレット11とは、他の部材に遮られることなくパーツフィーダ4から矯正装置5に移動する。
【0036】
前記クランプ51は、電子部品12が上方に位置付けられた後に電子部品12を挟持する{図4(B),(C)参照}。一方、吸着コレット11は、クランプ51が電子部品12を挟持する動作に伴って「開放状態」になる。このため、クランプ51は、吸着コレット11から開放された状態にある電子部品12を挟持することになり、電子部品12の位置と角度とを修正することができる。
【0037】
吸着コレット11は、矯正装置5による修正動作が終了した後、「吸着状態」になる。この状態でクランプ51が開くことにより、電子部品12が吸着コレット11に吸着される。すなわち、この実施の形態によるクランプ51は、本発明でいう第1の受け渡し部と第2の受け渡し部とを兼ねるものである。
制御装置10は、このように吸着コレット11に電子部品12が吸着された後、所定の時期にターンテーブル3を所定の角度だけ回転させ、クランプ51の上方に位置している吸着コレット11を次の通電検査装置6に向けて移動させる。
【0038】
通電検査装置6は、電子部品12に実際に通電して電子部品12の電気的特性を測定したり検査するためのものである。この通電検査装置6は、図5に示すように、電子部品12のリード12bに接触する電極52を備えている。この電極52は、図5(A)に示すように、吸着コレット11に吸着された電子部品12が上方を通過可能な待機位置と、図5(C)に示すように、電子部品12のリード12bに下方から接触する検査位置との間で昇降する構成が採られている。
【0039】
通電検査装置6は、図5(A)に示すように、電極52を待機位置に移動させた状態で矯正装置5側から送られてくる電子部品12を待つ。待機位置にある電極52と、上述した矯正装置5のクランプ51との間には、電子部品12と吸着コレット11とが水平移動可能な移動空間S2{図4(C)および図5(A)参照}が形成されている。このため、電子部品12と吸着コレット11とは、他の部材に遮られることなく矯正装置5から通電検査装置6に移動する。
【0040】
通電検査装置6は、電子部品12が電極52の上方に位置付けられている状態で電極52を検査位置に上昇させ、電子部品12に通電して測定や検査を行う。また、通電検査装置6は、測定や検査の終了後に電極52を待機位置に下降させる。
制御装置10は、電子部品12が通電検査装置6の上にあるときは常に吸着コレット11を「吸着状態」に保つ。すなわち、通電検査装置6に対して電子部品12の受け渡しが行われることはない。また、制御装置10は、通電検査装置6による測定、検査動作が終了した後、所定の時期にターンテーブル3を所定の角度だけ回転させ、電極52の上方に位置している吸着コレット11を次のマーキング装置7に向けて移動させる。
【0041】
マーキング装置7は、電子部品12のパッケージ部分12aに所定の図柄、文字等を記入するためのものである。このマーキング装置7は、図6および図11に示すように、電子部品12の受け渡しを行うための支持部材53と、電子部品12に図柄、文字等を記入するためのマーキング装置本体54とを備えている。
前記支持部材53は、図6に示すように、上方に向けて開放する凹陥部55が形成されており、図11に示すように、マーキング装置用ターンテーブル56の外周部に取付けられている。また、この支持部材53には、図示してはいないが、図2に示した部品受け渡し部21と同様に空気孔が形成されており、この空気孔を介して前記空気圧装置16が接続されている。
【0042】
この支持部材53の上端部の高さは、図6(A)に示すように、吸着コレット11が電子部品12を吸着した状態で支持部材53の上方を通過することができる高さであって、図6(C)に示すように、凹陥部55内に収容された電子部品12と吸着コレット11との間に隙間dが形成されるような高さに設定されている。
前記凹陥部55は、図6(C)に示すように、電子部品12の下端部が遊嵌状態で嵌合する形状、大きさに形成されている。
【0043】
電子部品12は、図6(A)〜(C)に示すように、吸着コレット11に吸着された状態で支持部材53の上方に移動し、吸着コレット11が支持部材53の上方に位置付けられている状態で「開放状態に」切換えられることに伴って凹陥部55内に落下して収容される。そして、この電子部品12は、支持部材53が「吸着状態」に切り換えられることによって、支持部材53に吸着保持される。
前記支持部材53と、上述した通電検査装置6の電極52との間には、電子部品12と吸着コレット11とが水平移動可能な移動空間S3{図5(C)および図6(A)参照}が形成されている。このため、電子部品12と吸着コレット11とは、他の部材に遮られることなく通電検査装置6から支持部材53の上方に移動する。
【0044】
前記支持部材53は、図11に示すように、マーキング装置用ターンテーブル56の周方向に等間隔おいて並べられている。このターンテーブル3は、駆動装置57による駆動によって前記複数の支持部材53が順次吸着コレット11の下方に移動するように間欠的に回転する。
【0045】
マーキング装置本体54は、吸着コレット11を有するターンテーブル3とはマーキング装置用ターンテーブル56を挟んで離間する位置に配設されている。
マーキング装置本体54によってマーキングが施された電子部品12は、ターンテーブル56が回転することにより吸着コレット11の下方に移動する。吸着コレット11は、電子部品12が下方に移動するまで「開放状態」を維持し、電子部品12が下方に位置付けられかつ支持部材53が「開放状態」に切り換えられた状態で「吸着状態」に切換えられる。
【0046】
吸着コレット11が「吸着状態」に切り換えられることにより、支持部材53上の電子部品12が吸着コレット11に吸着される。すなわち、この実施の形態によるマーキング装置7の支持部材53は、本発明でいう第1の受け渡し部と第2の受け渡し部とを兼ねるものである。
制御装置10は、このように支持部材53上の電子部品12が吸着コレット11に吸着された後、所定の時期にターンテーブル3を所定の角度だけ回転させ、支持部材53の上方に位置している吸着コレット11を次の画像検査装置8に向けて移動させる。
【0047】
画像検査装置8は、吸着コレット11に吸着されている電子部品12の有無と、電子部品12の吸着コレット11に対する位置とを確認するためのものである。この画像検査装置8は、図7に示すように、吸着コレット11に吸着された電子部品12をターンテーブル3の径方向の外側から略水平に撮影する構成が採られている。
【0048】
画像検査装置8と、上述したマーキング装置7の支持部材53との間には、電子部品12と吸着コレット11とが水平移動可能な移動空間S4{図6(C)および図7(A)参照}が形成されている。このため、電子部品12と吸着コレット11とは、他の部材に遮られることなくマーキング装置7から画像検査装置8の側方に移動する。
【0049】
制御装置10は、電子部品12が上述したマーキング装置7から画像検査装置8を経て後述するテーピング装置9に移動するまで吸着コレット11を「吸着状態」に保つ。すなわち、画像検査装置8に対して電子部品12の受け渡しが行われることはない。
また、制御装置10は、画像検査装置8による検査動作が終了した後、所定の時期にターンテーブル3を所定の角度だけ回転させ、画像検査装置8の側方に位置している吸着コレット11を次のテーピング装置9に向けて移動させる。
【0050】
前記テーピング装置9は、電子部品12をキャリアテープ61(図8参照)に収納するためのものである。このテーピング装置9は、キャリアテープ61のエンボス部62を吸着コレット11の下方に位置付け、エンボス部62に電子部品12が移載された後にキャリアテープ61を1ピッチだけ送り、隣接するエンボス部62を吸着コレット11の下方に移動させる。
【0051】
テーピング装置9においてキャリアテープ61に電子部品12を移載させる部品移載部63(図13参照)の高さは、キャリアテープ61の上方に側方から電子部品12を移動できるように形成されている。この部品移載部63は、本発明でいう第2の受け渡し部を構成するものである。
テーピング装置9の前記部品移載部63と上述した画像検査装置8との間には、電子部品12と吸着コレット11とが水平移動可能な移動空間S5{図7(C)および図8(A)参照}が形成されている。このため、電子部品12と吸着コレット11とは、他の部材に遮られることなく画像検査装置8から部品移載部63(キャリアテープ61)の上方に移動する。
【0052】
制御装置10は、吸着コレット11がキャリアテープ61の上方に位置している状態で吸着コレット11を「開放状態」とし、電子部品12を吸着コレット11からエンボス部62内に落下させる。
この制御装置10がターンテーブル3と空気圧装置16の動作を制御するに当たっては、図15のフローチャートに示すように行う。すなわち、制御装置10は、先ず、ステップS1に示すように、個々の吸着コレット11について、第1の受け渡し部の上方に位置しているか否かを判定する。この第1の受け渡し部は、この実施の形態においてはパーツフィーダ4のスライダ45と、矯正装置5のクランプ51と、マーキング装置7の支持部材53である。
【0053】
次に、制御装置10は、第1の受け渡し部の上方に位置している吸着コレット11については、ステップS2において、空気圧装置16をON状態、すなわち「吸着状態」にする。一方、制御装置10は、第1の受け渡し部の上方に位置していないと判定された吸着コレット11について、ステップS3において、第2の受け渡し部の上方に位置しているか否かを判定する。
【0054】
この第2の受け渡し部は、この実施の形態においては矯正装置5のクランプ51と、マーキング装置7の支持部材53と、テーピング装置9の部品移載部63である。第2の受け渡し部の上方に位置している吸着コレット11については、ステップS4において、空気圧装置16をOFF状態、すなわち「開放状態」にする。制御装置10は、吸着コレット11に電子部品12を吸着させたり、吸着コレット11から電子部品12を開放させた後、ステップS5において、全ての処理装置において処理が完了しているか否かを判定し、処理完了後にターンテーブル3を所定角度だけ回転させる(ステップS6)。
【0055】
上述したように構成された搬送装置1においては、吸着コレット11が第1の受け渡し部の上方に位置している状態で空気圧装置16による空気の吸引が開始されることに伴って、電子部品12が吸い上げられて吸着コレット11に吸着される。また、この搬送装置1においては、吸着コレット11が第2の受け渡し部の上方に位置している状態で空気圧装置16による空気の吸引が停止されることに伴って、電子部品12が吸着コレット11から開放されて落下し、第2の受け渡し部に載置される。
【0056】
このため、この搬送装置1は、電子部品12の吸着、開放を行うに当たって吸着コレット11を昇降させる必要がないから、従来の搬送装置と較べて吸着コレット11が電子部品12に衝突することがなくなるとともに、電子部品12が被載置面に過大な押圧力で押し付けられることもなくなる。しかも、この実施の形態によれば、吸着コレット11の昇降時間が0になるために、従来の搬送装置と較べて搬送時間を短縮することができる。
【0057】
したがって、この実施の形態によれば、電子部品12の搬送効率を高く保ちながら、電子部品12が破損することがない電子部品用搬送装置1を提供することができる。
また、この実施の形態による搬送装置1は、吸着コレット11を昇降させるための昇降装置が不要であるから、特許文献1に開示されているような従来の搬送装置と較べて部品数を低減することができ、製造コストを低減することができる。
【0058】
また、この実施の形態による搬送装置1は、間欠的に回転するターンテーブル3を備えるとともに、このターンテーブル3の外周部に周方向に等間隔おいて並設された吸着コレット11を備えており、電子部品12を受け取る第1の受け渡し部と、電子部品12を移載させる第2の受け渡し部とが前記ターンテーブル3の周囲に配設された複数の処理装置によって構成されている。
このため、この実施の形態によれば、電子部品12の搬送効率が高くなるとともに電子部品12が破損することがないロータリ式の電子部品用搬送装置1を提供することができる。
【実施例1】
【0059】
上述した実施の形態で示した搬送装置1が搬送する電子部品12は、その重量が3g以下のものであって、パッケージ部分12aの底面から下方に突出するリード12bの突出長さが0.1mm以下のものである。また、吸着コレット11に電子部品12を吸着させるときの真空圧は、−40〜−60kpa(絶対真空を−101.3kpaとする)とした。
電子部品供給部41のスライダ45と吸着コレット11との間の隙間dは、0.2mmとした。
マーキング装置7の支持部材53に保持された電子部品12と吸着コレット11との間の隙間dは0.4mmとした。
なお、これらの数値は、一例であって、対象とする電子部品12の種類に対応させて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…電子部品用搬送装置、2…基台、3…ターンテーブル、4…パーツフィーダ、5…矯正装置、6…通電検査装置、7…マーキング装置、8…画像検査装置、9…テーピング装置、11…吸着コレット、16…吸引装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される電子部品を有する第1の受け渡し部と、
電子部品を移載させる第2の受け渡し部と、
電子部品の上端面と対向する吸着面が下端に形成された吸着コレットと、
前記吸着面に形成された開口から空気を吸引する吸引装置と、
前記第1の受け渡し部の上方から前記第2の受け渡し部の上方へ前記吸着コレットを水平方向に移動させる移動装置とを備え、
前記吸着コレットは、前記第1の受け渡し部上の電子部品の上端面と前記吸着面との間に微小な隙間が形成される高さで上下方向に移動することがないように前記移動装置に保持され、
吸引装置は、前記吸着コレットが前記第1の受け渡し部の上方に位置付けられている状態において、第1の受け渡し部上の電子部品が吸着コレットに吸着される吸入量で空気の吸引を開始し、かつ前記コレットが前記第2の受け渡し部の上方に位置付けられている状態で空気の吸引を停止するものであり、
前記第1の受け渡し部と第2の受け渡し部との間には、前記電子部品と前記吸着コレットとが水平移動可能な移動空間が形成されている電子部品用搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子部品用搬送装置において、前記移動装置は、間欠的に回転するターンテーブルを備え、
前記吸着コレットは、前記ターンテーブルの外周部に周方向に等間隔おいて並設され、
前記第1の受け渡し部と第2の受け渡し部とは、前記ターンテーブルの周囲に配設された複数の処理装置によって構成されている電子部品用搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−14582(P2011−14582A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154823(P2009−154823)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(390019633)株式会社テセック (14)
【Fターム(参考)】