説明

電極基板の製造方法、電極基板、及び薄膜トランジスタ

【課題】製造工程の複雑化と製造コストの高価格化を招くことなく、多層電極間の接続を容易に行うことが可能な電極基板の製造方法、電極基板、及び薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】下地層の上に、下層電極、層間絶縁膜、上層電極がこの順番で積層され、下層電極と上層電極とが層間絶縁膜に形成された開口部を介して電気的に接続された電極基板の製造方法であって、下地層の上に、電極材料を含有する溶液を塗布した後、乾燥させて下層電極を形成する工程と、下層電極が形成された下地層の上に、開口部を有する層間絶縁膜を形成する工程と、開口部に溶液の溶媒を滴下し、開口部に位置する下層電極を溶解した後、乾燥させることにより、電極材料を開口部の内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成する工程と、電極材料が開口部の内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成された層間絶縁膜の上に上層電極を形成する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極基板の製造方法、電極基板、及び薄膜トランジスタに関し、特にコンタクトホールを有する電極基板の製造方法、電極基板、及び薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アクティブマトリクス型の大画面表示素子の高画素、高密度化が進展するに伴い、このような表示素子の代表的な駆動素子である薄膜トランジスタ(以下、TFTとも記す)の高密度化に対する要求が一層高まってきている。
【0003】
この為、TFTを構成する複数の電極の多層化が一層進められている。例えば、高密度化する一方で、表示素子に電圧を印加する画素電極の有効面積を拡大する為に、TFTを含む基板全面に、層間絶縁膜を形成し、該層間絶縁膜に形成された開口部(コンタクトホール)を介してTFTのドレイン電極と層間絶縁膜上に形成された画素電極とを接続する保護膜上画素電極構造(ピクセル・オン・パッシ構造)が知られている。
【0004】
ところで、従来、このような層間絶縁膜は、無機酸化物や無機窒化物といった無機材料を用いて形成されているが、無機材料を用いた層間絶縁膜の形成においては、真空プロセスや高温プロセスを必要とし、製造コストに大きく影響を及ぼしている。
【0005】
そこで、このような問題に対応する為、近年、樹脂等の有機材料を用いた層間絶縁膜が種々検討されている。有機材料は無機材料に比べ、材料の選択肢が広く、また、層間絶縁膜の形成においては、前述の真空プロセス、高温プロセスに代わり、印刷、塗布といった生産性に優れたプロセスが用いられる為、製造コストを抑えることができる。
【0006】
しかしながら、樹脂等の有機材料は絶縁耐圧が無機材料に比べて低い為、層間絶縁膜の膜厚を無機材料の場合よりも厚くする必要がある。この為、コンタクトホールの深さが深くなり層間絶縁膜を挟む下層電極と上層電極とを接続することは容易ではなかった。
【0007】
そこで、特許文献1では、層間絶縁膜のコンタクトホールに位置する下層電極を、該下層電極の下地部材に突起部を設けて突出させることで上層電極と接続する方法が提案されている。
【0008】
また、特許文献2では、層間絶縁膜のコンタクトホールにめっき法を用いて金属層を形成することで下層電極と上層電極とを接続する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−186168号公報
【特許文献2】特開平11−233783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、通常、電極の膜厚はせいぜい数百nm程度であるが、層間絶縁膜の膜厚は数μmであり、比較にならないほど大きなものとなっている。この為、特許文献1に記載の方法において、膜厚が数百nm程度の下層電極を、数μmのオーダーで突出させるのは容易ではない。
【0011】
また、特許文献2に記載のように、めっき法を用いる場合は、製造工程の複雑化と製造コストの高価格化を招くといった問題がある。さらに、めっきによる汚れ等により品質に大きく影響を及ぼすといった問題がある。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、製造工程の複雑化と製造コストの高価格化を招くことなく、多層電極間の接続を容易に行うことが可能な電極基板の製造方法、電極基板、及び薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、下記の1から8の何れか1項に記載の発明によって達成される。
【0014】
1.下地層の上に、下層電極、層間絶縁膜、上層電極がこの順番で積層され、前記下層電極と前記上層電極とが前記層間絶縁膜に形成された開口部を介して電気的に接続された電極基板の製造方法であって、
前記下地層の上に、電極材料を含有する溶液を塗布した後、乾燥させて前記下層電極を形成する工程と、
前記下層電極が形成された前記下地層の上に、前記開口部を有する前記層間絶縁膜を形成する工程と、
前記開口部に前記溶液の溶媒を滴下し、前記開口部に位置する前記下層電極を溶解した後、乾燥させることにより、前記電極材料を前記開口部の内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成する工程と、
前記電極材料が前記開口部の内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成された前記層間絶縁膜の上に前記上層電極を形成する工程と、を有することを特徴とする電極基板の製造方法。
【0015】
2.下地層の上に、下層電極、層間絶縁膜、上層電極がこの順番で積層され、前記下層電極と前記上層電極とが前記層間絶縁膜に形成された開口部を介して電気的に接続された電極基板の製造方法であって、
前記下地層の上に、前記下層電極を形成する工程と、
前記下層電極が形成された前記下地層の上に、前記開口部を有する前記層間絶縁膜を形成する工程と、
前記開口部に導電性材料を含有する溶液を滴下し、乾燥させることにより、前記導電性材料を前記開口部の内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成する工程と、
前記導電性材料が前記開口部の内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成された前記層間絶縁膜の上に前記上層電極を形成する工程と、を有することを特徴とする電極基板の製造方法。
【0016】
3.前記導電性材料は、金属ナノ粒子を含むことを特徴とする前記2に記載の電極基板の製造方法。
【0017】
4.前記導電性材料は、π電子共鳴系を有した炭素化合物を含むことを特徴とする前記2に記載の電極基板の製造方法。
【0018】
5.前記層間絶縁膜の材料は、樹脂材料であることを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の電極基板の製造方法。
【0019】
6.前記層間絶縁膜は、塗布法または印刷法を用いて形成することを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の電極基板の製造方法。
【0020】
7.前記1から6の何れか1項に記載の電極基板の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする電極基板。
【0021】
8.前記1から6の何れか1項に記載の電極基板の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする薄膜トランジスタ。
【発明の効果】
【0022】
第1の本発明によれば、溶媒により溶解された下層電極の電極材料を乾燥させることにより生じるコーヒーステイン現象を利用し、該電極材料を層間絶縁膜の開口部の内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成するようにした。すなわち、層間絶縁膜の開口部の内壁に沿って電極材料による導電膜を形成するようにしたので、下層電極と層間絶縁膜の上に形成される上層電極との電気的接続を容易に行うことができる。
【0023】
第2の本発明によれば、導電性材料を含有する溶液を乾燥させることにより生じるコーヒーステイン現象を利用し、該導電性材料を層間絶縁膜の開口部の内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成するようにした。すなわち、層間絶縁膜の開口部の内壁に沿って導電性材料による導電膜を形成するようにしたので、下層電極と層間絶縁膜の上に形成される上層電極との電気的接続を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態1における電極基板の製造工程を示す断面模式図である。
【図2】本発明の実施形態2における電極基板の製造工程を示す断面模式図である。
【図3】本発明の実施形態におけるTFTの概略構成を示す断面模式図である。
【図4】コーヒーステイン現象を説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態における電極基板の製造方法、電極基板、及び薄膜トランジスタを説明する。尚、本発明は該実施の形態に限られない。
(実施形態1)
本発明の実施形態1における電極基板の製造方法を図1を用いて説明する。図1(a)〜図1(f)は、実施形態1における電極基板1の製造工程を示す断面模式図である。
【0026】
最初に、本発明における下地層に該当する基板Pを準備する(図1(a))。基板Pの材料としては、ソーダガラス、無アルカリガラス等のガラスやフレキシブルなプラスティックフィルム等の樹脂製シートを用いることができる。プラスティックフィルムとしては、具体的には、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。また、表面を絶縁保護したステンレスや真鍮などの金属板を用いることもできる。
【0027】
次に、下層電極DLを形成する(図1(b))。下層電極DLの材料(本発明における電極材料に該当)としては、Agナノ粒子、Auナノ粒子、AgPbナノ粒子等の金属ナノ粒子を溶媒に分散した金属ナノ粒子インク、ITOナノ粒子等の金属酸化物を溶媒に分散した金属酸化物ナノ粒子インク、PEDOT/PSS等の有機材料を溶媒に分散した有機材料分散インク等を用いることができる。下層電極DLの形成方法としては、スピンコート法等の塗布法によって成膜された下層電極膜を、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法や、種々の印刷法やインクジェット法、ディスペンサ法等の液滴塗布法を用いて所望部分のみに薄膜を形成することができる。
【0028】
次に、層間絶縁膜IFを形成する(図1(c))。層間絶縁膜IFの材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、アクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、シアノエチルプルラン等の有機化合物等も用いることができる。層間絶縁膜IFの形成方法としては、スピンコート等の塗布法によって形成された絶縁膜を、フォトリソグラフィ法等のパターニング方法を用いてパターニングする方法や、種々の印刷法やインクジェット法、ディスペンサ法等の液滴塗布法を用いて所望部分のみに薄膜を形成することができる。尚、この時、下層電極DLと後述の上層電極DHと接続する為のコンタクトホールとしての開口部IFaを形成する。
【0029】
次に、下層電極DLを形成する際に用いたインク(溶液)の溶媒SVを層間絶縁膜IFに形成された開口部IFaに滴下し(図1(d))、開口部IFaに位置する下層電極IFを溶解する。溶媒SVとしては、例えばイソプロピルアルコール等を用いることができる。溶媒SVの滴下方法としては、インクジェット法やディスペンサ法の液滴塗布法を用いることができる。
【0030】
続いて、溶媒SVによって溶解された電極材料を乾燥させる。この乾燥プロセスで生じるコーヒーステイン現象により、電極材料が開口部IFaの内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成される。すなわち、層間絶縁膜IFの開口部IFaの内壁に沿って電極材料による導電膜DLaが形成される(図1(e))。
【0031】
ここで、コーヒーステイン現象を図4を用いて説明する。図4(a)、図4(b)は、コーヒーステイン現象を説明する断面模式図である。尚、コーヒーステイン形状を作り出すコーヒーステイン現象はサドル現象とも呼ばれ、周知の現象である。
【0032】
コーヒーステイン現象は、基板Pの上に滴下された液体材料LM(図4(a))が乾燥されることにより、マランゴニ効果でドーナツ状のコーヒーステイン形状CP(図4(b))に形成され、その周縁部LMaが隆起するものである。この周縁部LMaの盛り上がりは非常に大きく、溶媒のコンディションや温度分布等にもよるが中央部の膜厚が数十nmでも、周縁部LMaは1〜2μm程度まで分厚くなる。
【0033】
コーヒーステイン形状CPを形成する方法としては、基板Pの温度を高くして滴下された液体材料LMを乾燥させる。液体材料LMの溶媒に蒸発熱の高いものや乾燥速度の速いものを選択または部分的に混和させる。液体材料LMにピニングの効果の高い溶質または分散質を混合させる(周縁部でピニングした溶質がマランゴニ対流により再溶解しデピニングしないように溶解速度の遅い溶媒と組み合わせる。)等、マランゴニ効果を引き出す為の方法が挙げられる。
【0034】
次に、上層電極DHを形成する(図1(f))。上層電極DHの材料としては、スパッタリング法や蒸着法を用いて薄膜を形成する場合は、Au、Ag、Pb、Al、Cr、Pt、Cu、Mo、ITOやこれらにドーパントを加えた材料等を用いることができる。液滴塗布法を用いて薄膜を形成する場合は、Agナノ粒子、Auナノ粒子、AgPbナノ粒子等の金属ナノ粒子を溶媒に分散した金属ナノ粒子インク、ITOナノ粒子等の金属酸化物を溶媒に分散した金属酸化物ナノ粒子インク、PEDOT/PSS等の有機材料を溶媒に分散した有機材料分散インク等を用いることができる。上層電極DHの形成方法としては、スパッタリング法や蒸着法等で薄膜を形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法や、種々の印刷法やインクジェット法、ディスペンサ法等の液滴塗布法を用いて所望の部分のみに薄膜を形成することができる。尚、この時、上層電極DHの開口部IFaの周縁部DHaは、開口部IFaの内壁に沿って程上部まで形成された電極材料による導電膜DLaを覆うように接触し、上層電極DHと下層電極DLとが接続され、電極基板1が完成される。
【0035】
このように、本発明の実施形態1における電極基板1の製造方法においては、溶媒SVにより溶解された下層電極DLの電極材料を乾燥させることにより生じるコーヒーステイン現象を利用し、該電極材料が層間絶縁膜IFの開口部IFaの内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成されるようにした。すなわち、層間絶縁膜IFの開口部IFaの内壁に沿って電極材料による導電膜が形成されるようにしたので、下層電極DLと層間絶縁膜IFaの上に形成される上層電極DHとの電気的接続を容易に行うことができる。
【0036】
また、層間絶縁膜IFは、樹脂材料を種々の印刷法やインクジェット法、ディスペンサ法等の液滴塗布法を用いて形成することができるので、生産性を高めることができる。
(実施形態2)
本発明の実施形態2における電極基板の製造方法を図2を用いて説明する。図2(a)〜図2(f)は、実施形態2における電極基板1の製造工程を示す断面模式図である。
【0037】
最初に、本発明における下地層に該当する基板Pを準備する(図2(a))。基板Pの材料は、実施形態1の場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0038】
次に、下層電極DLを形成する(図2(b))。下層電極DLの材料としては、スパッタリング法や蒸着法を用いて薄膜を形成する場合は、Au、Ag、Pb、Al、Cr、Pt、Cu、Mo、ITOやこれらにドーパントを加えた材料等を用いることができる。液滴塗布法を用いて薄膜を形成する場合は、Agナノ粒子、Auナノ粒子、AgPbナノ粒子等の金属ナノ粒子を溶媒に分散した金属ナノ粒子インク、ITOナノ粒子等の金属酸化物を溶媒に分散した金属酸化物ナノ粒子インク、PEDOT/PSS等の有機材料を溶媒に分散した有機材料分散インク等を用いることができる。下層電極DLの形成方法としては、スパッタリング法や蒸着法等で薄膜を形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法や、種々の印刷法やインクジェット法、ディスペンサ法等の液滴塗布法を用いて所望の部分のみに薄膜を形成することができる。
【0039】
次に、層間絶縁膜IFを形成する(図2(c))。層間絶縁膜IFの材料や形成方法は、実施形態1の場合と同様であるので、その説明は省略する。また、この時、実施形態1の場合と同様に、下層電極DLと後述の上層電極DHと接続する為のコンタクトホールとしての開口部IFaを形成する。
【0040】
次に、導電性材料を含有する溶液SLを層間絶縁膜IFに形成された開口部IFaに滴下する(図2(d))。
【0041】
導電性を有し、溶媒に分散する性質を有する物質としては、金属微粒子等がある。ここでは、導電性材料としての機能を発現しなければならないことから、その分散性もさることながら、パターニング後も高い導電性を示す必要性がある。一般に、単位体積辺りの表面積が広いほど、粒子間の密着力が強くなり、密着後の導電性は高まる。このことから、金属のサイズは限りなく小さいほうがよい。しかしながら、微粒子化には技術的な困難が伴う為、際限なく小さな粒子にすることは限界がある。充分な導電性(バルクの1/2程度)が得られる金属のサイズはナノメートルオーダーであるので、本実施形態における金属微粒子は、ナノ粒子である必要がある。
【0042】
そこで、導電性材料を含有する溶液SLとしては、Agナノ粒子、Auナノ粒子、AgPbナノ粒子等の金属ナノ粒子を溶媒に分散した金属ナノ粒子インク、ITOナノ粒子等の金属酸化物を溶媒に分散した金属酸化物ナノ粒子インク、PEDOT/PSS等の有機材料を溶媒に分散した有機材料分散インク等を用いることができる。溶液SLの滴下方法としては、インクジェット法やディスペンサ法の液滴塗布法を用いることができる。
【0043】
また、インクジェット法を用いた場合、溶液SLの溶媒として、沸点、表面張力等の観点から、ベンゼン誘導体が好適である。一方、導電性を有する微粒子としては、カーボンブラック、CNT、フラーレン、PEDOT/PSS等の炭素化合物が存在する。これらの化合物は、π電子の運動の自由度において導電性を確保している。また、これらの物質は、同様にπ電子共鳴系を有するベンゼン誘導体にも溶解し易い。このことから、インクジェット法に好適であり、且つ導電性にも優れたπ電子共鳴系を有する前述の炭素化合物は、本実施形態における導電性材料として好適である。
【0044】
続いて、溶液SLを乾燥させる。この乾燥プロセスで生じるコーヒーステイン現象により、導電性材料が開口部IFaの内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成される。すなわち、層間絶縁膜IFの開口部IFaの内壁に沿って導電性材料による導電膜SLaが形成される(図2(e))。
【0045】
次に、上層電極DHを形成する(図2(f))。上層電極DHの材料や形成方法は、下層電極DLの場合と同様であるので、その説明は省略する。尚、この時、上層電極DHの開口部IFaの周縁部DHaは、開口部IFaの内壁に沿って程上部まで形成された導電性材料による導電膜SLaを覆うように接触し、上層電極DHと下層電極DLとが接続され、電極基板1が完成される。
【0046】
このような製造方法においても、実施形態1の場合と同様の効果を得ることができる。
(実施形態3)
本発明の一実施形態におけるTFTの構成を図3を用いて説明する。図3は、一実施形態におけるTFT1Aの概略構成を示す断面模式図である。
【0047】
図3に示すTFT1Aは、アクティブマトリクス型の表示素子を駆動するTFTアレイにおける1画素分のTFTを示す。
【0048】
TFT1Aは、図3に示すように、基板P、ゲート電極G、ゲート絶縁膜GI、ソース電極S・ドレイン電極D、半導体膜SF、パッシベーション膜PF、及び画素電極E等から構成される。
【0049】
TFT1Aにおいて、ソース電極S・ドレイン電極D、パッシベーション膜PF、画素電極Eは、それぞれ前述の電極基板1における下層電極DL、層間絶縁膜IF、上層電極DHに該当し、実施形態1または実施形態2による電極基板1の製造方法を用いて形成されている。
【0050】
また、基板P、ゲート電極G、ゲート絶縁膜GIの材料や形成方法は、実施形態1または実施形態2における基板P、下層電極DL(または上層電極DH)、層間絶縁膜IFの場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0051】
半導体膜SFの材料としては、多環芳香族化合物や共役系高分子等を用いることができるが、特に限定されない。高分子材料、オリゴマー、低分子材料でもよく、成膜後に分子が分子間相互作用により規則正しく配列し結晶となるものが特に好ましい。ペンタセン、ポルフィリン、フタロシアニン、オリゴチオフェン、オリゴフェニレン、ポリチオフェン、ポリフェニレン、及びこれら誘導体等を用いることができる。具体的には、ペンタセン、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン、テトラベンゾポルフィリン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)等を用いることができる。また、これらの前駆体を成膜した後に熱処理すること等で有機半導体材料等に変換することもできる。
【0052】
半導体膜SFの成膜方法は、特に限定されるものではなく、スクリーン印刷、インクジェット法、マイクロコンタクトプリント、ディスペンサ法、凸版、転写等の印刷法を用いると、塗布と同時にパターニングもできる為、製造コストを低減することができ好適である。とりわけ、インクジェット法、ディスペンサ法等の液滴塗布法を用いるのが特に好適である。
【0053】
液滴塗布法を用いる場合には、半導体膜SFの材料は、前述の材料のなかでも、溶媒に溶解または分散させるものが好適で、有機低分子材料に溶解性を高める為に可溶性の側鎖を設けたものや、半導体の前駆体の溶液についても適用可能である。また、溶媒は、特に限定されるものではなく、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、ハロゲン化炭化水素類、フェノール類等から半導体材料に適した溶媒を選択することができる。
【0054】
このようにして製造されたTFT1Aにおいては、画素電極Eの開口部PFaの周縁部Eaは、開口部PFaの内壁に沿って程上部まで形成された電極材料による導電膜Daを覆うように接触し、画素電極Eとドレイン電極Dとが接続されている。
【0055】
このように、複数の電極の多層化が一層進められたTFTにおいて、本発明における電極基板1の製造方法を用いることにより、多層電極間の電気的接続を容易に行うことができ、より高密度化することができる。
【0056】
尚、本実施形態におけるTFT1Aは、アクティブマトリクス型表示素子の駆動用TFTとしたが、これに限定されることなく、例えば、撮像素子の駆動用TFTであってもよい。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
本発明の実施形態1における電極基板1の製造方法を用いた実施例を説明する。
【0058】
最初に、基板Pとしてソーダライムガラス基板を用い(図1(a))、その上に、ディスペンサ法を用いてAgナノ粒子インク(アルバックマテリアル社製:L−Ag1T)を膜厚0.1μmで塗布した後、50℃で10分間加熱し乾燥させることで下層電極DLを形成した(図1(b))。
【0059】
次に、下層電極DLが形成された基板Pの上に、スピンコート法を用いてポリイミド系樹脂を膜厚2μmで成膜した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることで開口部IFaを有する層間絶縁膜IFを形成した(図1(c))。尚、開口部IFaの形状は、一辺が20μmの正方形とした。
【0060】
次に、インクジェット法を用いて、下層電極DLを形成する際に用いたAgナノ粒子インクの溶媒SVであるイソプロピルアルコールを、層間絶縁膜IFに形成された開口部IFaに滴下し(図1(d))、開口部IFaに位置する下層電極IFを溶解した。
【0061】
続いて、イソプロピルアルコールにより溶解されたAgナノ粒子によるマランゴニ対流を積極的に発生させてコーヒーステイン形状を形成させる為、基板Pをホットプレートに載置し、150℃で30分間加熱し、イソプロピルアルコールによって溶解されたAgナノ粒子を乾燥させた(図1(e))。
【0062】
次に、開口部IFaが形成された層間絶縁膜IFの上に、スパッタリング法を用いてITOを膜厚0.1μmで成膜した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし上層電極DHを形成し(図1(f))、電極基板1を完成させた。
【0063】
このようにして完成させた電極基板1の開口部IFaを光学顕微鏡及びAFM(キーエンス社製)にて観察したところ、溶解されたAgナノ粒子の乾燥プロセスで生じるコーヒーステイン現象により、Agナノ粒子が開口部IFaの内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成されていることが確認できた。すなわち、層間絶縁膜IFの開口部IFaの内壁に沿ってAgナノ粒子による導電膜DLaが形成されていることが確認できた。また、上層電極DHの開口部IFaの周縁部DHaは、開口部IFaの内壁に沿って程上部まで形成されたAgナノ粒子による導電膜DLaを覆うように接触し、上層電極DHと下層電極DLとが良好に接続されていることが確認できた。
(実施例2)
本発明の実施形態2における電極基板1の製造方法を用いた実施例を説明する。
【0064】
最初に、Cr膜が表面にスパッタされたSTN液晶用のソーダライムガラス基板(図2(a):基板P)を、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし下層電極DLを形成した(図3(b))。
【0065】
次に、下層電極DLが形成された基板Pの上に、スピンコート法を用いてポリイミド系樹脂を膜厚2μmで成膜した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることで開口部IFaを有する層間絶縁膜IFを形成した(図2(c))。尚、開口部IFaの形状は、一辺が20μmの正方形とした。
【0066】
次に、インクジェット法を用いて溶液SLであるAgナノ粒子インク(アルバックマテリアル社製:L−Ag1T)を、層間絶縁膜IFに形成された開口部IFaに200pl滴下した(図2(d))。
【0067】
続いて、Agナノ粒子インクによるマランゴニ対流を積極的に発生させてコーヒーステイン形状を形成させる為、基板Pをホットプレートに載置し、50℃で5分間加熱し、Agナノ粒子インクを乾燥させた(図2(e))。乾燥後、Agナノ粒子の導電性を確保する為、150℃で30分間焼成を行った。
【0068】
次に、開口部IFaが形成された層間絶縁膜IFの上に、スパッタリング法を用いてITOを膜厚0.1μmで成膜した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし上層電極DHを形成し(図2(f))、電極基板1を完成させた。
【0069】
このようにして完成させた電極基板1の開口部IFaを光学顕微鏡及びAFM(キーエンス社製)にて観察したところ、Agナノ粒子インクの乾燥プロセスで生じるコーヒーステイン現象により、Agナノ粒子が開口部IFaの内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成されていることが確認できた。すなわち、層間絶縁膜IFの開口部IFaの内壁に沿ってAgナノ粒子による導電膜SLaが形成されていることが確認できた。また、上層電極DHの開口部IFaの周縁部DHaは、開口部IFaの内壁に沿って程上部まで形成されたAgナノ粒子による導電膜SLaを覆うように接触し、上層電極DHと下層電極DLとが良好に接続されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0070】
1A TFT(薄膜トランジスタ)
1 電極基板
D ドレイン電極
DH 上層電極
DL 下層電極
E 画素電極
G ゲート電極
GI ゲート絶縁膜
IF 層間絶縁膜
LM 液体材料
P 基板
PF パッシベーション膜
S ソース電極
SF 半導体膜
SL 溶液
SV 溶媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地層の上に、下層電極、層間絶縁膜、上層電極がこの順番で積層され、前記下層電極と前記上層電極とが前記層間絶縁膜に形成された開口部を介して電気的に接続された電極基板の製造方法であって、
前記下地層の上に、電極材料を含有する溶液を塗布した後、乾燥させて前記下層電極を形成する工程と、
前記下層電極が形成された前記下地層の上に、前記開口部を有する前記層間絶縁膜を形成する工程と、
前記開口部に前記溶液の溶媒を滴下し、前記開口部に位置する前記下層電極を溶解した後、乾燥させることにより、前記電極材料を前記開口部の内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成する工程と、
前記電極材料が前記開口部の内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成された前記層間絶縁膜の上に前記上層電極を形成する工程と、を有することを特徴とする電極基板の製造方法。
【請求項2】
下地層の上に、下層電極、層間絶縁膜、上層電極がこの順番で積層され、前記下層電極と前記上層電極とが前記層間絶縁膜に形成された開口部を介して電気的に接続された電極基板の製造方法であって、
前記下地層の上に、前記下層電極を形成する工程と、
前記下層電極が形成された前記下地層の上に、前記開口部を有する前記層間絶縁膜を形成する工程と、
前記開口部に導電性材料を含有する溶液を滴下し、乾燥させることにより、前記導電性材料を前記開口部の内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成する工程と、
前記導電性材料が前記開口部の内壁に沿ってコーヒーステイン形状に形成された前記層間絶縁膜の上に前記上層電極を形成する工程と、を有することを特徴とする電極基板の製造方法。
【請求項3】
前記導電性材料は、金属ナノ粒子を含むことを特徴とする請求項2に記載の電極基板の製造方法。
【請求項4】
前記導電性材料は、π電子共鳴系を有した炭素化合物を含むことを特徴とする請求項2に記載の電極基板の製造方法。
【請求項5】
前記層間絶縁膜の材料は、樹脂材料であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の電極基板の製造方法。
【請求項6】
前記層間絶縁膜は、塗布法または印刷法を用いて形成することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電極基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の電極基板の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする電極基板。
【請求項8】
請求項1から6の何れか1項に記載の電極基板の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−96813(P2011−96813A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248610(P2009−248610)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】