説明

電極接続用接着剤

【課題】ボイドの発生を効果的に抑制することができるとともに、例えば、フレキシブルプリント配線板と配線基板を、接着剤を介して接続する際に、フレキシブルプリント配線板と配線基板の接続信頼性を向上することができる電極接続用接着剤を提供することを目的とする。
【解決手段】絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とし、導電性粒子と、潜在性硬化剤を含有する電極接続用接着剤2を介して、フレキシブルプリント配線板3の金属電極5と、配線基板1の配線電極4が接続されている。そして、電極接続用接着剤2は、平均粒径が2μm以下の絶縁性の樹脂微粒子を更に含有しており、電極接続用接着剤2の全体に対する樹脂微粒子の配合量が、0.5重量%以上20重量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極、回路等を設けた配線板や電子部品等を接着し、かつ電気的に接続するための電極接続用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、高機能化の流れの中で、構成部品(例えば、液晶製品における電子部品)内の接続端子の微小化が進んでいる。このため、エレクトロニクス実装分野においては、そのような端子間の接続を容易に行える種々の電極接続用接着剤として、フィルム状の接着剤が広く使用されている。例えば、金メッキされた銅電極からなる金属電極が形成されたフレキシブルプリント配線板(FPC)と、ITO電極からなる配線電極が形成されたガラス基板等の配線基板の接合や、ICチップ等の電子部品と配線基板の接合に使用されている。
【0003】
この電極接続用接着剤は、絶縁性の樹脂組成物中に導電性粒子を分散させた接着剤であり、接続対象の間に挟まれ、加熱、加圧されて、接続対象を接着する。即ち、加熱、加圧により接着剤中の樹脂が流動し、例えば、フレキシブルプリント配線板の表面に形成された銅電極と、配線基板の表面に形成されたITO電極の隙間を封止すると同時に、導電性粒子の一部が対峙する銅電極とITO電極の間に噛み込まれて電気的接続が達成される。そして、電極接続用接着剤においては、当該電極接続用接着剤の厚み方向に相対峙する、接続された電極間の抵抗(接続抵抗、または導通抵抗)を低くするという導通性能と、電極接続用接着剤の面方向に隣り合う電極間の抵抗(絶縁抵抗)を高くするという絶縁性能が必要とされている。
【0004】
また、この電極接続用接着剤を作製する際には、一般に、まず、主成分であるエポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を、所定の溶媒中に溶解した溶液に、導電性粒子を添加して、接着剤用の複合材料を作製する。次いで、当該複合材料を攪拌して、導電性粒子を均一に分散させた後、離形処理したフィルム上に、当該複合材料を塗布し、乾燥、固化させることにより、作製される。
【0005】
ここで、電極接続用接着剤により、電極、回路等を設けたフレキシブルプリント配線板や配線基板等を接着する場合に作業効率を高めるとの観点から、接着剤の作製の際に、予め、硬化剤を添加することが一般的に行われる。また、この硬化剤は、室温では、殆ど硬化反応を起こさないが、一定温度以上(例えば、120℃)に加熱することにより、速やかに硬化反応を行うものであるため、接着剤を作製する際には、当該硬化剤の硬化反応が起こらないように、溶媒の沸点(例えば、150℃)よりも低い温度で、上述の乾燥処理が行われる。その結果、作製された接着剤中に溶媒が残留する場合があり、当該残留した溶媒が、電極、回路等を設けたフレキシブルプリント配線板や配線基板等を接着する際の加熱により蒸発し、接着剤にボイドが発生する場合がある。
【0006】
また、硬化速度を速めるとの観点から、絶縁性の熱硬化性樹脂として、分子量が2000以下の低分子量エポキシ樹脂を使用することが一般的に行われる。この低分子量エポキシ樹脂は、上述の硬化剤と速やかに反応し、接着性能を高める役割を有するものであるが、当該低分子量エポキシ樹脂の沸点が低い(例えば、250℃)場合、電極、回路等を設けたフレキシブルプリント配線板や配線基板等を接着する際に、低分子量エポキシ樹脂の一部が硬化剤と反応せず、蒸発する場合があり、その結果、接着剤にボイドが発生する場合がある。
【0007】
そして、上述のボイドが発生すると、電極接続用接着剤の熱硬化性樹脂の耐熱性、および耐湿性が低下して、当該熱硬化性樹脂の物性に悪影響を及ぼし、結果として、上述の絶縁抵抗が低下するという問題があった。また、フレキシブルプリント配線板や配線基板を、フィルム状接着剤を介して接着する際に、フィルム状接着剤の熱硬化性樹脂と、金属製の電極との接着力が低下し、フレキシブルプリント配線板と配線基板との接続信頼性が低下するという問題があった。
【0008】
そこで、当該ボイドの発生を抑制すべく、シリコーンオイルを配合したエポキシ樹脂組成物が提案されている。より具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化剤、無機充填剤、および親水性、および疎水性を有する両親媒性のシリコーンオイルからなるエポキシ樹脂組成物が開示されている。このようなシリコーンオイルを使用することにより、当該シリコーンオイルは、界面活性効果を有するため、樹脂や無機充填剤を均一に分散でき、成形時のボイドの発生を低減できると記載されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平9−316305号公報
【特許文献2】特開平10−60228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来のシリコーンオイルを配合したエポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂とシリコーンオイルの相溶性が不十分であるため、例えば、当該エポキシ樹脂組成物を使用した接着剤を介して、加熱処理を行うことにより、フレキシブルプリント配線板を配線基板上に実装する際に、一旦、粘度が下がるため、エポキシ樹脂とシリコーンオイルが相分離する場合がある。従って、当該相分離により、シリコーンオイルが接着界面に局在化すると、接着剤の接着力が大幅に低下してしまい、フレキシブルプリント配線板と配線基板との接続信頼性が低下するという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、ボイドの発生を効果的に抑制することができるとともに、例えば、フレキシブルプリント配線板と配線基板を、接着剤を介して接続する際に、フレキシブルプリント配線板と配線基板の接続信頼性を向上することができる電極接続用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とし、導電性粒子と、潜在性硬化剤を含有する電極接続用接着剤において、平均粒径が2μm以下の絶縁性の樹脂微粒子を更に含有するとともに、電極接続用接着剤の全体に対する樹脂微粒子の配合量が、0.5重量%以上20重量%以下であることを特徴とする。
【0012】
同構成によれば、熱硬化性樹脂を主成分とし、導電性粒子と、潜在性硬化剤を含有する電極接続用接着剤を介して、加熱加圧処理を行うことにより、例えば、フレキシブルプリント配線板の金属電極(例えば、金メッキが施された銅電極)を配線基板の配線電極(例えば、ITO電極)に接続する際に、熱硬化性樹脂におけるボイドの発生を効果的に抑制することができる。その結果、電極接続用接着剤の熱硬化性樹脂と、配線電極、および金属電極の接着力を向上させることができるため、配線基板とフレキシブルプリント配線板の接続信頼性を向上させることが可能になる。また、電極接続用接着剤の熱硬化性樹脂の耐熱性、および耐湿性の低下を防止することができるため、絶縁抵抗の低下を防止することが可能になる。また、樹脂微粒子によるボイド発生の抑制効果を十分に発揮させた状態で、導電性粒子による、配線電極と金属電極の導電接続の導電接続を行うことができる。また、フィルム形状を有する電極接続用接着剤を作製する際に、フィルム形成が困難になるという不都合を回避することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電極接続用接着剤であって、樹脂微粒子の平均粒径が、500nm以下であることを特徴とする。同構成によれば、同一の配合重量において、熱硬化性樹脂中に分散された樹脂微粒子の数を向上させることができるため、ボイド発生の抑制効果をより一層向上させることが可能になる。また、配線電極−金属電極間の接続不良を生じることなく、配線基板とフレキシブルプリント配線板の接続信頼性を、より一層向上させることが可能になる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電極接続用接着剤であって、潜在性硬化剤が、イミダゾール系硬化剤であることを特徴とする。同構成によれば、潜在性硬化剤の、低温での貯蔵安定性、および速硬化性を向上させることが可能になる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電極接続用接着剤であって、導電性粒子が、微細な金属粒子が多数、直鎖状に繋がった形状、または針形状を有する金属粉末であることを特徴とする。
【0016】
同構成によれば、電極接続用接着剤の面方向においては、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、電極接続用接着剤の厚み方向Xにおいては、多数の配線電極−金属電極を一度に、かつ各々を独立して導電接続して、低抵抗を得ることが可能になる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電極接続用接着剤であって、フィルム形状を有することを特徴とする。同構成によれば、電極接続用接着剤の取り扱いが容易になるとともに、例えば、電極接続用接着剤を介して、加熱加圧処理を行うことにより、配線電極と金属電極を接続する際の作業性が向上する。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電極接続用接着剤であって、導電性粒子の長径方向を、フィルム形状を有する接着剤の厚み方向に配向させたことを特徴とする。同構成によれば、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、多数の配線電極−金属電極間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になるという効果が、より一層向上する。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の電極接続用接着剤であって、金属粉末が、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることを特徴とする。
【0020】
同構成によれば、金属自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性粒子を配向させることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ボイドの発生を効果的に抑制することができ、例えば、フレキシブルプリント配線板や配線基板等を、電極接続用接着剤を介して接続する際の、フレキシブルプリント配線板と配線基板との接続信頼性を向上させることが可能になる。また、電極接続用接着剤の熱硬化性樹脂の耐熱性、および耐湿性の低下を防止することができるため、絶縁抵抗の低下を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る電極接続用接着剤により、フレキシブルプリント配線板を実装した配線基板を示す断面図である。本実施形態の電極接続用接着剤を用いたフレキシブルプリント配線板等の配線板の実装方法としては、例えば、熱硬化性樹脂を主成分とする電極接続用接着剤を介して、加熱加圧処理を行うことにより、当該熱硬化性樹脂を硬化させ、フレキシブルプリント配線板の金属電極を配線基板の配線電極に接続する。
【0023】
より具体的には、図1に示すように、ガラス基板等の配線基板1上に、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とし、潜在性硬化剤と、導電性粒子を含有する導電性の電極接続用接着剤2を載置し、当該電極接続用接着剤2を所定の温度に加熱した状態で、配線基板1の方向へ所定の圧力で加圧し、電極接続用接着剤2を配線基板1上に仮接着する。なお、電極接続用接着剤2は、ペースト状で使用することができるが、フィルム形状を有する電極接続用接着剤2も好適に使用できる。次いで、フレキシブルプリント配線板3を下向きにした状態で、配線基板1の表面に形成された配線電極4と、フレキシブルプリント配線板3の表面に形成された金属電極5との位置合わせをしながら、フレキシブルプリント配線板3を電極接続用接着剤2上に載置することにより、配線基板1とフレキシブルプリント配線板3との間に電極接続用接着剤2を介在させる。次いで、電極接続用接着剤2を所定の温度に加熱した状態で、フレキシブルプリント配線板3を介して、当該電極接続用接着剤2を配線基板1の方向へ所定の圧力で加圧することにより、電極接続用接着剤2を加熱溶融させる。なお、上述のごとく、電極接続用接着剤2は、熱硬化性樹脂を主成分としているため、当該電極接続用接着剤2は、上述の温度にて加熱をすると、一旦、軟化するが、当該加熱を継続することにより、硬化することになる。そして、予め設定した電極接続用接着剤2の硬化時間が経過すると、電極接続用接着剤2の硬化温度の維持状態、および加圧状態を開放し、冷却を開始することにより、導電性の電極接続用接着剤2を介して、配線電極4と金属電極5を接続し、フレキシブルプリント配線板3を配線基板1上に実装する。
【0024】
また、本発明の配線電極4としては、例えば、配線基板1上に形成された金属製のITO電極が使用される。また、金属電極5としては、例えば、フレキシブルプリント配線板3の表面に、銅箔等の金属箔を積層し、当該金属箔を、常法により、露光、エッチング、メッキ処理することにより形成された金属製の金メッキが施された銅電極が使用される。
【0025】
ここで、本実施形態においては、電極接続用接着剤2が、平均粒径が2μm以下の絶縁性の樹脂微粒子を含有する点に特徴がある。このような樹脂粒子を含有することにより、電極接続用接着剤2を介して、加熱加圧処理を行うことにより、熱硬化性樹脂を硬化させ、フレキシブルプリント配線板3の金属電極5を配線基板1の配線電極4に接続する際に、熱硬化性樹脂におけるボイドの発生を効果的に抑制することができる。これは、樹脂微粒子が、一旦、発生したボイドの界面張力に打ち勝って、当該ボイドの内部に容易に侵入することができるため、ボイドが発生しても、当該ボイドが安定して存在することができないためであると考えられる。従って、樹脂微粒子を含有する電極接続用接着剤2を使用することにより、配線基板1とフレキシブルプリント配線板3を、電極接続用接着剤2を介して接続する際に、電極接続用接着剤2の熱硬化性樹脂と、配線電極4、および金属電極5を強固に結びつけることができる。
【0026】
なお、樹脂微粒子の平均粒径を2μm以下としたのは、加熱加圧処理後の配線電極4と金属電極5の距離D(図1参照)が2μm程度であり、また、平均粒径が2μmよりも大きいと、導電性粒子による、配線電極4と金属電極5の導電接続が不十分になる場合があるためである。また、絶縁性の樹脂微粒子を使用するのは、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止するためである。さらに、樹脂微粒子を使用するのは、電極接続用接着剤2を構成する他の成分(即ち、主成分である熱硬化性樹脂や硬化剤)と比重が近いため、電極接続用接着剤2を作製する際に、当該樹脂微粒子の分散性を向上することができるためである。
【0027】
また、本実施形態においては、電極接続用接着剤2の全体に対する樹脂微粒子の配合量を、0.5重量%以上20重量%以下とする点に特徴がある。これは、樹脂微粒子の配合量が、0.5重量%より小さい場合は、上述の、ボイド発生の抑制効果が十分に発揮されず、20重量%より大きい場合は、導電性粒子による、配線電極4と金属電極5の導電接続が十分に発揮されず、また、フィルム形状を有する電極接続用接着剤2を作製する際に、フィルム形成が困難になる場合があるためである。
【0028】
また、樹脂微粒子の平均粒径が、500nm以下であることが好ましい。これは、樹脂微粒子の平均粒径が小さくなるにつれて、同一の配合重量において、熱硬化性樹脂中に分散された樹脂微粒子の数を向上させることができるようになるため、上述のボイド発生の抑制効果をより一層向上することができるためである。また、上述の、平均粒径が2μmよりも大きな樹脂微粒子に起因する、配線電極4−金属電極5間の接続不良を生じることなく、より一層安定した接続を行うことが可能になるからである。
【0029】
また、本発明の樹脂微粒子としては、絶縁性を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリスチレン、メラミン、ベンゾグアナミン、およびそれらの共重合体等を使用することができる。
【0030】
本発明に使用される電極接続用接着剤2としては、従来、配線基板1とフレキシブルプリント配線板3の接続に使用されてきた、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とし、当該樹脂中に導電性粒子が分散されたものが使用できる。例えば、エポキシ樹脂に、ニッケル、銅、銀、金あるいは黒鉛等の導電性粒子の粉末が分散されたものが挙げられる。ここで、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。このうち、特に、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用することにより、電極接続用接着剤2のフィルム形成性、耐熱性、および接着力を向上させることが可能になる。また、電極接続用接着剤2は、上述の熱硬化性樹脂のうち、少なくとも1種を主成分としていれば良い。
【0031】
なお、使用するエポキシ樹脂は、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールA型、F型、S型、AD型、またはビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合型のエポキシ樹脂や、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、高分子量エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0032】
また、エポキシ樹脂の分子量は、電極接続用接着剤2に要求される性能を考慮して、適宜選択することができる。高分子量のエポキシ樹脂を使用すると、フィルム形成性が高く、また、接続温度における樹脂の溶解粘度を高くでき、後述の導電性粒子の配向を乱すことなく接続できる効果がある。一方、低分子量のエポキシ樹脂を使用すると、架橋密度が高まって耐熱性が向上するという効果が得られる。また、加熱時に、上述の硬化剤と速やかに反応し、接着性能を高めるという効果が得られる。従って、分子量が15000以上の高分子量エポキシ樹脂と分子量が2000以下の低分子量エポキシ樹脂とを組み合わせて使用することにより、性能のバランスが取れるため、好ましい。なお、高分子量エポキシ樹脂と低分子量エポキシ樹脂の配合量は、適宜、選択することができる。また、ここでいう「平均分子量」とは、THF展開のゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)から求められたポリスチレン換算の重量平均分子量のことをいう。
【0033】
また、本発明に使用される電極接続用接着剤2として、潜在性硬化剤を含有する接着剤が使用できる。この潜在性硬化剤は、低温での貯蔵安定性に優れ、室温では殆ど硬化反応を起こさないが、熱や光等により、速やかに硬化反応を行う硬化剤である。この潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン系、第3級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアミド系、酸無水物系、フェノール系、および、これらの変性物が例示され、これらは単独または2種以上の混合物として使用できる。
【0034】
また、これらの潜在性硬化剤中でも、低温での貯蔵安定性、および速硬化性に優れているとの観点から、イミダゾール系潜在性硬化剤が好ましく使用される。イミダゾール系潜在性硬化剤としては、公知のイミダゾール系潜在性硬化剤を使用することができる。より具体的には、イミダゾール化合物のエポキシ樹脂との付加物が例示される。イミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ドデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾールが例示される。
【0035】
また、特に、これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜およびケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは、長期保存性と速硬化性という矛盾した特性の両立を図ることができるため、好ましい。従って、マイクロカプセル型イミダゾール系潜在性硬化剤が、特に好ましい。
【0036】
また、電極接続用接着剤2として、図2に示すように、導電性粒子6を含む異方導電性接着剤も使用することができる。より具体的には、当該異方導電性接着剤として、例えば、上述のエポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とし、当該樹脂中に、微細な金属粒子(例えば、球状の金属微粒子や金属でメッキされた球状の樹脂粒子からなる金属微粒子)が多数、直鎖状に繋がった形状、または針形状を有する、所謂アスペクト比が大きい形状を有する金属粉末により形成された導電性粒子6が分散されたものを使用することができる。なお、ここで言うアスペクト比とは、図3に示す、導電性粒子6の短径(導電性粒子6の断面の長さ)Rと長径(導電性粒子6の長さ)Lの比のことを言う。
【0037】
このような導電性粒子6を使用することにより、異方導電性接着剤として、電極接続用接着剤2の面方向(厚み方向Xに直交する方向であって、図2の矢印Yの方向)においては、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、厚み方向Xにおいては、多数の配線電極4−金属電極5間を、一度にかつ各々を独立して接続し、低抵抗を得ることが可能になる。
【0038】
また、この異方導電性接着剤において、導電性粒子6の長径Lの方向を、フィルム状の異方導電性接着剤を形成する時点で、異方導電性接着剤の厚み方向Xにかけた磁場の中を通過させることにより、当該厚み方向Xに配向させて用いるのが好ましい。このような配向にすることにより、上述の、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、多数の配線電極4−金属電極5間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になるという効果が、より一層向上する。
【0039】
また、本発明に使用される金属粉末は、その一部に強磁性体が含まれるものが良く、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることが好ましい。これは、強磁性を有する金属を使用することにより、金属自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性粒子6を配向させることが可能になるからである。例えば、ニッケル、鉄、コバルトおよびこれらを含む2種類以上の合金等を挙げることができる。
【0040】
また、導電性粒子6のアスペクト比が5以上であることが好ましい。このような導電性粒子6を使用することにより、電極接続用接着剤2として、異方導電性接着剤を使用する場合に、導電性粒子6間の接触確率が高くなる。従って、導電性粒子6の配合量を増やすことなく、配線電極4と金属電極5を電気的に接続することが可能になる。
【0041】
なお、導電性粒子6のアスペクト比は、CCD顕微鏡観察等の方法により直接測定するが、断面が円でない導電性粒子6の場合は、断面の最大長さを短径としてアスペクト比を求める。また、導電性粒子6は、必ずしもまっすぐな形状を有している必要はなく、多少の曲がりや枝分かれがあっても、問題なく使用できる。この場合、導電性粒子6の最大長さを長径としてアスペクト比を求める。
【0042】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とし、導電性粒子と、潜在性硬化剤を含有する電極接続用接着剤2において、平均粒径が2μm以下の絶縁性の樹脂微粒子を更に含有する構成としている。従って、樹脂微粒子を含有する電極接続用接着剤2を介して、加熱加圧処理を行うことにより、金属電極5を配線電極4に接続する際に、熱硬化性樹脂におけるボイドの発生を効果的に抑制することができる。その結果、電極接続用接着剤2の熱硬化性樹脂と、配線電極4、および金属電極5の接着力を向上させることができるため、配線基板1とフレキシブルプリント配線板3を、電極接続用接着剤2を介して接続する際の、配線基板1とフレキシブルプリント配線板3との接続信頼性を向上させることが可能になる。また、電極接続用接着剤2の熱硬化性樹脂の耐熱性、および耐湿性の低下を防止することができるため、絶縁抵抗の低下を防止することが可能になる。また、本実施形態においては、電極接続用接着剤2の全体に対する樹脂微粒子の配合量を、0.5重量%以上20重量%以下としている。従って、樹脂微粒子によるボイド発生の抑制効果を十分に発揮させた状態で、導電性粒子による、配線電極4と金属電極5の導電接続を行うことができる。また、フィルム形状を有する電極接続用接着剤2を作製する際に、フィルム形成が困難になるという不都合を回避することができる。
【0043】
(2)本実施形態においては、樹脂微粒子の平均粒径を500nm以下としている。従って、同一の配合重量において、熱硬化性樹脂中に分散された樹脂微粒子の数を向上させることができるため、ボイド発生の抑制効果をより一層向上することが可能になる。また、配線電極4−金属電極5間の接続不良を生じることなく、配線基板1とフレキシブルプリント配線板3との接続信頼性を、より一層向上させることが可能になる。
【0044】
(3)本実施形態においては、潜在性硬化剤として、イミダゾール系硬化剤を使用する構成としている。従って、潜在性硬化剤の、低温での貯蔵安定性、および速硬化性を向上させることが可能になる。
【0045】
(4)本実施形態においては、導電性粒子として、微細な金属粒子が多数、直鎖状に繋がった形状、または針形状を有する金属粉末を使用する構成としている。従って、電極接続用接着剤2の面方向Yにおいては、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、電極接続用接着剤2の厚み方向Xにおいては、多数の配線電極4−金属電極5間を一度に、かつ各々を独立して接続し、低抵抗を得ることが可能になる。
【0046】
(5)本実施形態においては、フィルム形状を有する電極接続用接着剤2を使用する構成としている。従って、電極接続用接着剤2の取り扱いが容易になるとともに、電極接続用接着剤2により、配線電極4と金属電極5を接続する際の作業性が向上する。
【0047】
(6)本実施形態においては、導電性粒子6の長径Lの方向を、フィルム形状を有する電極接続用接着剤2の厚み方向Xに配向させる構成としている。従って、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、多数の配線電極4−金属電極5間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になるという効果が、より一層向上する。
【0048】
(7)本実施形態においては、導電性粒子6を構成する金属粉末が、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかである構成としている。従って、金属自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性粒子6を配向させることが可能になる。
【0049】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
・上記実施形態においては、電極接続用接着剤2を介して、フレキシブルプリント配線板3の金属電極5を配線基板1の配線電極4に接続する構成としたが、本発明の電極接続用接着剤2を、例えば、ICチップ等の電子部品の突起電極(または、バンプ)と配線基板1の配線電極4との接続に使用する構成としても良い。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0051】
(実施例1)
(接着剤の作製)
導電性粒子として、長径Lの分布が1μmから10μm、短径Rの分布が0.1μmから0.4μmである直鎖状ニッケル微粒子を用いた。また、絶縁性の熱硬化性樹脂としては、2種類のビスフェノールA型の固形エポキシ樹脂〔(1)ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1256、および(2)エピコート1007〕、(3)ビスフェノールF型の液状エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート806〕を使用し、樹脂微粒子としては、(4)平均粒径が0.5μmの球状アクリル粒子を使用し、潜在性硬化剤としては、(5)マイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3932〕を使用し、これら(1)〜(5)を重量比で(1)25/(2)10/(3)20/(4)10/(5)35の割合で配合した。
【0052】
これらの熱硬化性樹脂、樹脂微粒子、および硬化剤を、ブチルカルビトールアセテートと酢酸ブチルの混合溶媒(混合比率は50/50)に溶解後、三本ロールによる混練を行い、固形分が60重量%である溶液を作製した。この溶液に、固形分の総量(Ni粉末+樹脂)に占める割合で表される金属充填率が、0.5体積%となるように上記Ni粉末を添加した後、遠心攪拌ミキサーを用いて攪拌することによりNi粉末を均一に分散し、接着剤用の複合材料を作製した。次いで、この複合材料を離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、磁束密度100mTの磁場中、60℃で30分間、乾燥、固化させることにより、膜中の直鎖状粒子が磁場方向に配向した、厚さ20μmのフィルム形状の異方導電性をもつ電極接続用接着剤を作製した。
【0053】
(接続抵抗評価)
幅30μm、長さ2mm、高さ18μmの、金メッキが施された銅電極が70μm間隔で160個配列されたフレキシブルプリント配線板と、幅130μm、長さ2mm、高さ0.15μmのITO電極が、70μm間隔で80個形成されたガラス基板とを用意した。そして、フレキシブルプリント配線板とガラス基板とを、連続する160箇所の接続抵抗が測定可能なデイジーチェーンを形成するように対向させて配置するとともに、このフレキシブルプリント配線板とガラス基板の間に作製した接着剤を挟み、190℃に加熱しながら、5MPaの圧力で15秒間加圧して接着させ、フレキシブルプリント配線板とガラス基板の接合体を得た。次いで、この接合体において、ITO電極、接着剤、および銅電極を介して接続された連続する160箇所の抵抗値を四端子法により求め、求めた値を160で除することにより、接続された1箇所あたりの接続抵抗(以下、「初期接続抵抗」という。)を求めた。そして、この評価を10回繰り返し、初期接続抵抗の平均値を求めた。その結果を表1に示す。また、耐熱・耐湿試験として、上記の接合体を、温度を85℃、湿度を85%に設定した恒温恒湿槽中に100時間放置した後、接合体を恒温恒湿槽から取り出し、再び、上記と同様にして、接続抵抗の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0054】
(ボイド評価)
次いで、上述の接合体において、光学顕微鏡を用いて、ガラス基板側から、電極間の状態を観察、撮像し、得られた画像から、ボイドの面積を計算して、電極間におけるスペース部の面積に対するボイドの占有率を計算した。その結果を表1に示す。
【0055】
(接着力評価)
次いで、上述の接合体において、引張り試験機(島津製作所(株)製、商品名オートグラフAGS−500G)を使用して、ガラス基板の表面に対して90°の方向から、フレキシブルプリント配線板を剥離し、フレキシブルプリント配線板と接着剤の界面のピール強度を測定することにより、接着力(以下、「初期接着力」という。)を測定した。その結果を表1に示す。また、耐熱・耐湿試験として、上記の接合体を、温度を85℃、湿度を85%に設定した恒温恒湿槽中に100時間放置した後、接合体を恒温恒湿槽から取り出し、再び、上記と同様にして、接着力を測定した。その結果を表1に示す。
【0056】
(実施例2)
樹脂微粒子として、平均粒径が0.5μmの球状アクリル粒子の代わりに、平均粒径が0.1μmの球状アクリル粒子を使用したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、厚さが20μmであるフィルム状の異方導電性をもつ電極接続用接着剤を作製し、フレキシブルプリント配線板とガラス基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続抵抗評価、ボイド評価および接着力評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0057】
(実施例3)
樹脂微粒子として、平均粒径が0.5μmの球状アクリル粒子の代わりに、平均粒径が0.06μmの球状アクリル粒子を使用したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、厚さが20μmであるフィルム状の異方導電性をもつ電極接続用接着剤を作製し、フレキシブルプリント配線板とガラス基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続抵抗評価、ボイド評価および接着力評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0058】
(実施例4)
2種類のビスフェノールA型の固形エポキシ樹脂〔(1)ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1256、および(2)エピコート1007〕、(3)ビスフェノールF型の液状エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート806〕、(4)平均粒径が0.5μmの球状アクリル粒子、および(5)マイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3932〕の配合量を、重量比で(1)28/(2)11/(3)22/(4)1/(5)38の割合に変更したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、厚さが20μmであるフィルム状の異方導電性をもつ電極接続用接着剤を作製し、フレキシブルプリント配線板とガラス基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続抵抗評価、ボイド評価および接着力評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1)
樹脂微粒子を使用しなかったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、厚さが20μmであるフィルム状の異方導電性をもつ電極接続用接着剤を作製し、フレキシブルプリント配線板とガラス基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続抵抗評価、ボイド評価および接着力評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0060】
(比較例2)
樹脂微粒子として、平均粒径が0.5μmの球状アクリル粒子の代わりに、平均粒径が3μmの球状アクリル粒子を使用したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、厚さが20μmであるフィルム状の異方導電性をもつ電極接続用接着剤を作製し、フレキシブルプリント配線板とガラス基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続抵抗評価、ボイド評価および接着力評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0061】
(比較例3)
2種類のビスフェノールA型の固形エポキシ樹脂〔(1)ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1256、および(2)エピコート1007〕、(3)ビスフェノールF型の液状エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート806〕、(4)平均粒径が0.5μmの球状アクリル粒子、および(5)マイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3932〕の配合量を、重量比で(1)19/(2)8/(3)16/(4)30/(5)27の割合に変更して、上述の実施例1と同様にして、厚さが20μmであるフィルム状の異方導電性をもつ電極接続用接着剤の作製を試みたが、作製することができなかった。これは、電極接続用接着剤の全体に対する樹脂微粒子の配合量が、30重量%と多いため、フィルム形状を有する電極接続用接着剤を作製する際に、フィルム形成が困難になったためであると考えられる。従って、比較例3においては、上述の、フレキシブルプリント配線板とガラス基板の接合体を得ることができず、接続抵抗評価、ボイド評価および接着力評価を行うことができなかった。
【0062】
(比較例4)
樹脂微粒子の代わりに、市販のシリコーンオイル〔信越化学工業(株)製、商品名KF−96〕を使用したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、厚さが20μmであるフィルム状の異方導電性をもつ電極接続用接着剤を作製し、フレキシブルプリント配線板とガラス基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続抵抗評価、ボイド評価および接着力評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1に示すように、実施例1〜4のいずれの場合においても、比較例1、2、4に比し、初期接続抵抗、および100時間放置後の接続抵抗が小さいことが判る。また、実施例1〜4のいずれの場合においても、比較例1、2、4に比し、初期接着力、および100時間放置後の接着力が良いことが判る。これは、表1に示すように、実施例1〜4においては、比較例1、2、4に比し、ボイド占有率が低い(即ち、ボイドの発生が効果的に抑制された)ため、接着剤の樹脂成分であるエポキシ樹脂と、銅電極、およびITO電極の接着力が向上したためであると考えられる。特に、実施例3においては、使用した球状アクリル樹脂の平均粒径が0.06μmであり、球状アクリル樹脂の配合量が同一(実施例1〜3のいずれの場合も10重量%)である実施例1、2において使用した球状アクリル樹脂の平均粒子径よりも小さいため、同一の配合重量において、熱硬化性樹脂中に分散された球状アクリル樹脂の数が向上したため、ボイド発生の抑制効果がより一層向上したためであると考えられる。
【0065】
なお、比較例1においては、接着剤に樹脂微粒子が含有されていないため、ボイド占有率が高くなり、結果として、接続抵抗が大きくなり、接着力が低下したものと考えられる。また、比較例2においては、使用した球状アクリル樹脂の平均粒径が3μmと大きいため、導電性粒子による、銅電極とITO電極の導電接続が不十分になり、接続抵抗が大きく(即ち、200Ωより大きく)なったものと考えられる。また、比較例4においては、加熱処理により、エポキシ樹脂とシリコーンオイルが相分離したため、100時間放置後の接続抵抗が大きく(即ち、200Ωより大きく)なり、また、100時間放置後の接着力が大幅に低下したものと考えられる。
【0066】
実施例3において、上述の光学顕微鏡にて撮像した、電極周辺の画像の模式図を図4に示す。また、同様に、比較例1において、光学顕微鏡にて撮像した、電極周辺の画像の模式図を図5に示す。図5に示すように、比較例1においては、ガラス基板50のITO電極51とフレキシブルプリント配線板52の銅電極53の間の接着剤54にボイド55が発生しており、ボイド占有率が高いことが確認できた。一方、図4に示すように、実施例3においては、ガラス基板1のITO電極4とフレキシブルプリント配線板3の銅電極5の間の接着剤2にボイドが発生していないことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の活用例としては、電極、回路等を設けた配線板や電子部品等を接着し、かつ電気的に接続するための電極接続用接着剤が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態に係る電極接続用接着剤により、フレキシブルプリント配線板を実装した配線基板を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電極接続用接着剤として、導電性粒子を含有する異方導電性接着剤を使用し、異方導電性接着剤を介して、フレキシブルプリント配線板を配線基板に実装した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電極接続用接着剤において使用される導電性粒子を説明するための図である。
【図4】実施例3において、光学顕微鏡にて撮像した、電極周辺の画像の模式図である。
【図5】比較例1において、光学顕微鏡にて撮像した、電極周辺の画像の模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1…配線基板、2…電極接続用接着剤、3…フレキシブルプリント配線板、4…配線電極(ITO電極)、5…金属電極(銅電極)、6…導電性粒子、L…導電性粒子の長径、R…導電性粒子の短径、X…フィルム形状を有する電極接続用接着剤の厚み方向、Y…フィルム形状を有する電極接続用接着剤の面方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とし、導電性粒子と、潜在性硬化剤を含有する電極接続用接着剤において、
平均粒径が2μm以下の絶縁性の樹脂微粒子を更に含有するとともに、前記電極接続用接着剤の全体に対する前記樹脂微粒子の配合量が、0.5重量%以上20重量%以下であることを特徴とする電極接続用接着剤。
【請求項2】
前記樹脂微粒子の平均粒径が、500nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電極接続用接着剤。
【請求項3】
前記潜在性硬化剤が、イミダゾール系硬化剤であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電極接続用接着剤。
【請求項4】
前記導電性粒子が、微細な金属粒子が多数、直鎖状に繋がった形状、または針形状を有する金属粉末であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電極接続用接着剤。
【請求項5】
フィルム形状を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電極接続用接着剤。
【請求項6】
前記導電性粒子の長径方向を、前記フィルム形状を有する接着剤の厚み方向に配向させたことを特徴とする請求項5に記載の電極接続用接着剤。
【請求項7】
前記金属粉末が、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の電極接続用接着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−84545(P2008−84545A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259650(P2006−259650)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】