説明

電極製造装置、電極製造方法、プログラム及びコンピュータ記憶媒体

【課題】電極を製造するに際し、帯状の基材の表面に活物質層を適切に形成する。
【解決手段】電極製造装置は、帯状の金属箔Mを巻き出す巻出ロールと、金属箔Mの両面に活物質合剤Sを塗工する塗工部と、金属箔M上の活物質合剤Sを乾燥させて活物質層を形成する乾燥部12と、金属箔Mを巻き取る巻取ロールとを有している。乾燥部12は、金属箔Mの長手方向に並べて配置され、赤外線を照射する複数のロッドヒータ30と、ロッドヒータ30を挟んで金属箔Mの表面と対向して配置され、ロッドヒータ30からの赤外線を金属箔M側に反射させる複数の反射板31と、隣り合う反射板31、31間に形成され、反射板31と金属箔Mとの間の乾燥領域Dに空気を供給する給気口32と、別の隣り合う反射板31、31間に形成され、乾燥領域D内の空気を排気する排気口33と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造装置、当該電極製造装置を用いた電極製造方法、プログラム及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能な特性を活かして、リチウムイオンキャパシタ(LIC:Lithium Ion Capacitor)、電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric Double Layer Capacitor)及びリチウムイオン電池(LIB:Lithium Ion Battery)などの電気化学素子の需要が急速に拡大している。
【0003】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が比較的大きいことから、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどの分野で利用されている。また、電気二重層キャパシタは急速充放電が可能なので、パーソナルコンピュータ等のメモリーバックアップ小型電源として利用されている。さらに電気二重層キャパシタは電気自動車用の大型電源としての応用が期待されている。また、リチウムイオン電池の利点と電気二重層キャパシタの利点とを組み合わせたリチウムイオンキャパシタは、エネルギー密度、出力密度ともに高いことから注目を集めている。
【0004】
このような電気化学素子の電極は、例えば基材としての集電体である金属箔の表面に活物質や溶媒を含む活物質合剤を塗工した後、当該活物質合剤を乾燥し活物質層を形成して製造される。かかる電極の製造には、例えば巻出ロールと巻取ロールとの間に塗工装置と乾燥機を配置した電極製造装置が用いられる。塗工装置は、活物質合剤を塗工するための塗工口が形成された塗工ヘッドを有している。また乾燥機は、所定間隔で配置された複数のヒータを有している。そして、巻出ロールと巻取ロールの間で帯状の金属箔を略鉛直上方に搬送しながら、塗工装置と乾燥機によって、金属箔の表面に活物質合剤の塗工と乾燥がそれぞれ行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−186782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、金属箔上の活物質合剤を乾燥させる際、当該活物質合剤から蒸発した溶媒は鉛直上方に流れる。しかしながら、特許文献1に記載された方法を用いた場合、金属箔が略鉛直上方に搬送されているため、金属箔の上部、すなわち下流側において蒸発した溶媒が再付着するおそれがある。かかる場合、金属箔の表面に活物質層を適切に形成することができない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電極を製造するに際し、帯状の基材の表面に活物質層を適切に形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、帯状の基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造装置であって、基材を巻き出す巻出部と、前記巻出部で巻き出された基材を巻き取る巻取部と、前記巻出部と前記巻取部との間に設けられ、基材の両面に活物質合剤を塗工する塗工部と、前記塗工部と前記巻取部との間に設けられ、前記塗工部で塗工された前記活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥部と、を有し、前記乾燥部は、基材の長手方向に並べて配置され、赤外線を照射する複数のロッドヒータと、前記ロッドヒータを挟んで基材の表面と対向して配置され、前記ロッドヒータからの赤外線を基材側に反射させる複数の反射板と、隣り合う前記反射板間に形成され、前記反射板と基材との間の乾燥領域に空気を供給する給気口と、別の隣り合う前記反射板間に形成され、前記乾燥領域内の空気を排気する排気口と、を備え、前記複数のロッドヒータ、前記複数の反射板、前記給気口及び前記排気口は、それぞれ基材の両側に設けられていることを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、乾燥部に前記給気口と前記排気口が形成されているので、給気口から反射板と基材との間の乾燥領域に供給された空気を排気口から排気することができる。すなわち、乾燥領域内に給気口から排気口への一方向の気流を発生させることができる。この気流によって、基材上の活物質合剤を乾燥させる際に蒸発した溶媒が排気口から排出されるので、当該蒸発した溶媒が基材の表面に再付着することがない。したがって、基材上の活物質合剤を適切に乾燥させることができ、当該基材の表面に活物質層を適切に形成することができる。
【0010】
前記給気口と前記排気口は、基材の長手方向に交互に配置されていてもよい。
【0011】
前記反射板は、対向する基材と反対側に凸に湾曲していてもよい。
【0012】
前記ロッドヒータは、外周部に発熱体が設けられた内筒と、前記内筒を取り囲むように設けられた外筒とを有し、前記外筒と前記内筒との間には空気が流通する流通路が形成され、前記外筒には、前記流通路内の空気を基材の表面に向けて噴出する噴出口が形成されていてもよい。
【0013】
前記噴出口は、前記排気口側に向けられていてもよい。
【0014】
前記流通路内には、前記外筒と前記内筒を接続して、当該内筒を支持する支持部材が複数設けられ、前記複数の支持部材は、前記内筒の周方向に複数配置され、且つ前記内筒の軸方向に複数配置されていてもよい。
【0015】
前記支持部材は伝熱性を有していてもよい。
【0016】
前記外筒の材質はセラミックであり、前記発熱体はニクロム線を有するヒータであってもよい。
【0017】
前記巻出部と前記巻取部は、基材の長手方向が水平方向であって、且つ基材の短手方向が鉛直方向となる向きで基材を搬送するように配置されていてもよい。
【0018】
前記電極は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン電池に用いられる電極であってもよい。
【0019】
別な観点による本発明は、巻出部と巻取部との間で帯状の基材を搬送しながら、当該基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造方法であって、塗工部において、基材の両面に活物質合剤を塗工する塗工工程と、その後、乾燥部において、前記塗工工程で塗工された前記活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥工程と、を有し、前記乾燥部は、基材の長手方向に並べて配置され、赤外線を照射する複数のロッドヒータと、前記ロッドヒータを挟んで基材の表面と対向して配置され、前記ロッドヒータからの赤外線を基材側に反射させる複数の反射板と、隣り合う前記反射板間に形成され、前記反射板と基材との間の乾燥領域に空気を供給する給気口と、別の隣り合う前記反射板間に形成され、前記乾燥領域内の空気を排気する排気口と、を備え、前記複数のロッドヒータ、前記複数の反射板、前記給気口及び前記排気口は、それぞれ基材の両側に設けられ、前記乾燥工程において、前記複数のロッドヒータ及び前記複数の反射板からの赤外線による輻射加熱と、前記乾燥領域内で前記給気口から前記排気口に流通する空気による対流加熱とによって、前記活物質合剤を乾燥させることを特徴としている。
【0020】
前記給気口と前記排気口は、基材の長手方向に交互に配置されていてもよい。
【0021】
前記反射板は、対向する基材と反対側に凸に湾曲していてもよい。
【0022】
前記ロッドヒータは、外周部に発熱体が設けられた内筒と、前記内筒を取り囲むように設けられた外筒とを有し、前記乾燥工程において、前記外筒と前記内筒との間に形成された流通路に空気を供給し、供給された空気を前記発熱体によって加熱し、加熱された空気を前記外筒に形成された噴出口から基材の表面に向けて噴出してもよい。
【0023】
前記噴出口は、前記排気口側に向けられていてもよい。
【0024】
前記流通路内には、前記外筒と前記内筒を接続して、当該内筒を支持する支持部材が複数設けられ、前記乾燥工程において、前記複数の支持部材により前記流通路内の空気の流れが攪拌されてもよい。
【0025】
前記支持部材は伝熱性を有し、前記乾燥工程において、前記支持部材及び前記発熱体により前記外筒が加熱されてもよい。
【0026】
前記外筒の材質はセラミックであり、前記発熱体はニクロム線を有するヒータであってもよい。
【0027】
前記塗工工程と前記乾燥工程は、基材の長手方向が水平方向であって、且つ基材の短手方向が鉛直方向となる向きで搬送中の基材に対して行われてもよい。
【0028】
前記電極は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン電池に用いられる電極であってもよい。
【0029】
また別な観点による本発明によれば、前記電極製造方法を電極製造装置によって実行させるために、当該電極製造装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0030】
さらに別な観点による本発明によれば、前記プログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、電極を製造するに際し、帯状の基材の表面に活物質層を適切に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態にかかる電極製造装置の構成の概略を示す略側面図である。
【図2】本実施の形態にかかる電極製造装置の構成の概略を示す平面図である。
【図3】電極製造装置で製造される電極の側面図である。
【図4】電極製造装置で製造される電極の平面図である。
【図5】塗工ヘッドの構成の概略を示す斜視図である。
【図6】乾燥部の構成の概略を示す平面図である。
【図7】他の実施の形態にかかるロッドヒータの構成の概略を示す説明図である。
【図8】他の実施の形態にかかるロッドヒータの構成の概略を示す横断面図である。
【図9】他の実施の形態にかかる乾燥部の構成の概略を示す平面図である。
【図10】他の実施の形態にかかるロッドヒータ内部の構成の概略を示す説明図である。
【図11】他の実施の形態にかかるロッドヒータの構成の概略を示す横断面図である。
【図12】他の実施の形態にかかる乾燥部の構成の概略を示す平面図である。
【図13】他の実施の形態にかかるロッドヒータの構成の概略を示す横断面図である。
【図14】他の実施の形態にかかる乾燥部の構成の概略を示す平面図である。
【図15】他の実施の形態にかかる塗工部の構成の概略を示す平面図である。
【図16】他の実施の形態にかかる電極製造装置の構成の概略を示す略平面図である。
【図17】他の実施の形態にかかる電極製造装置の構成の概略を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる電極製造装置1の構成の概略を示す略側面図である。図2は、電極製造装置1の構成の概略を示す平面図である。なお、本実施の形態の電極製造装置1では、リチウムイオンキャパシタの電極を製造する。
【0034】
電極製造装置1では、図3及び図4に示すように帯状の基材としての金属箔Mの両面に活物質層Fが形成された電極Eが製造される。金属箔Mの両面の活物質層Fは、対向して形成される。また、活物質層Fは、金属箔Mの短手方向(図3中のZ方向)の中央部に形成され、且つ金属箔Mの長手方向(図3及び図4中のY方向)に複数形成される。
【0035】
金属箔Mは、例えば多孔質の集電体である。電極Eとして正極を製造する際には、例えば金属箔Mとしてアルミニウム箔が用いられる。一方、負極を製造する際には、例えば金属箔Mとして銅箔が用いられる。
【0036】
また、活物質層Fを形成するため、後述するように金属箔Mの表面にスラリー状の活物質合剤が塗工される。正極を製造する際の正極活物質合剤は、例えば活物質としての活性炭と、結着剤としてのアクリル系バインダと、分散剤としてのカルボキシメチルセルロースと、導電助材としてのアセチレンブラック等の導電性炭素粉末とを混合し、これに溶媒として水を添加、混練して生成される。一方、負極を製造する際の負極極活物質合剤は、例えばリチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質としての非晶質炭素と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンと、導電助材としてのアセチレンブラック等の導電性炭素材とを混合し、これに溶媒として水を添加、混練して生成される。
【0037】
正極と負極とでは、上述したように材料は異なるが、金属箔M及び活物質層Fの幅や厚み等は大差がない。このため、電極製造装置1は、リチウムイオンキャパシタの正極も負極も製造することができる。以下、これら正極と負極を電極Eと称して説明する。
【0038】
電極製造装置1は、図1及び図2に示すように、金属箔Mを巻き出す巻出部としての巻出ロール10と、金属箔Mの両面に活物質合剤を塗工する塗工部11と、金属箔M上の活物質合剤を乾燥させて活物質層Fを形成する乾燥部12と、金属箔Mを巻き取る巻取部としての巻取ロール13とを有している。巻出ロール10、塗工部11、乾燥部12、巻取ロール13は、金属箔Mの搬送方向(図1及び図2中のY方向)に上流側からこの順で配置されている。なお、巻出ロール10と巻取ロール13との間には駆動機構(図示せず)が設けられており、この駆動機構によって巻出ロール10から巻き出された金属箔Mが搬送され巻取ロール13に巻き取られるようになっている。
【0039】
巻出ロール10は、その軸方向が鉛直方向(図1中のZ方向)となる向きに配置されている。巻出ロール10には未処理の金属箔Mが巻回されており、巻出ロール10は鉛直軸を中心に回転可能に構成されている。そして、金属箔Mは、その長手方向に引っ張られるのにつられて、巻出ロール10から巻き出されるようになっている。
【0040】
巻取ロール13も、その軸方向が鉛直方向となる向きに配置されている。巻取リール13は、鉛直軸を中心に回転可能に構成されている。そして、活物質層Fが形成された金属箔Mは、巻取ロール13に巻き取られるようになっている。
【0041】
これら巻出ロール10と巻取ロール13は同じ高さに配置されている。そして、巻出ロール10と巻取ロール13は、金属箔Mの長手方向が水平方向(図1及び図2中のY方向)であって、且つ金属箔Mの短手方向が鉛直方向(図1中のZ方向)となる向きで金属箔Mを搬送するように配置されている。
【0042】
塗工部11は、金属箔Mの表面に活物質合剤を塗工する塗工ヘッド20を有している。塗工ヘッド20は、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に対向して配置されている。
【0043】
塗工ヘッド20は、図5に示すように鉛直方向(図5中のZ方向)に延伸する略直方体形状を有している。塗工ヘッド20は、例えば金属箔Mの短手方向よりも長く形成されている。塗工ヘッド20の金属箔Mに対向する面には、活物質合剤を吐出するスリット状の塗工口21が形成されている。塗工口21は、鉛直方向(図5中のZ方向)に延伸して形成されている。また、塗工口21は、金属箔Mの短手方向の中央部に活物質合剤を供給できる位置に形成されている。また塗工ヘッド20には、活物質合剤供給源22に連通する供給管23が接続されている。活物質合剤供給源22の内部には活物質合剤が貯留されており、活物質合剤供給源22から塗工ヘッド20に活物質合剤を供給できるようになっている。
【0044】
乾燥部12は、図1、図2及び図6に示すように金属箔Mの長手方向(図1、図2及び図6中のY方向)に並べて配置され、赤外線を照射する複数のロッドヒータ30と、ロッドヒータ30を挟んで金属箔Mの表面と対向して配置され、ロッドヒータ30からの赤外線を金属箔M側に反射させる複数の反射板31と、を有している。これらロッドヒータ30及び反射板31は、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に配置されている。
【0045】
ロッドヒータ30は、鉛直方向(図1のZ方向)に金属箔Mの短手方向の長さより長く延伸している。すなわち、ロッドヒータ30は、金属箔Mの短手方向全体に赤外線を照射することができる。また、ロッドヒータ30は、セラミック製の外筒の内部に発熱体としてニクロム線を有するニクロム線ヒータが設けられた構成を有している。
【0046】
反射板31は、対向する金属箔Mと反対側に凸に湾曲している。また反射板31は、ロッドヒータ30を覆うように鉛直方向に延伸している。そして、ロッドヒータ30から金属箔Mと反対側に放射された赤外線は、反射板31で反射して金属箔Mに放射される。
【0047】
隣り合う反射板31、31間には、図6に示すように反射板31と金属箔Mとの間に形成された乾燥領域Dに空気を供給する給気口32が形成されている。また、別の隣り合う反射板31、31間には、乾燥領域D内の空気を排気する排気口33が形成されている。これら給気口32と排気口33は、金属箔Mの長手方向に交互に配置されている。そして、給気口32から乾燥領域D内に供給された空気は、金属箔Mの表面に沿って流れた後、給気口32に隣接する排気口33から排気される。すなわち、乾燥領域D内に給気口32から排気口33への一方向の気流が発生する。なお、反射板31が金属箔Mの両側に配置されているのに伴い、給気口32及び排気口33も金属箔Mの両側に形成されている。
【0048】
各給気口32には、当該給気口32に空気を供給するための供給管40がそれぞれ設けられている。供給管40は、空気供給源41に連通している。空気供給源41の内部には、空気、例えばドライエアなどが貯留されている。なお、排気口33には、例えば真空ポンプ(図示せず)が設けられ、当該真空ポンプによって乾燥領域D内の空気が排気される。
【0049】
以上の電極製造装置1には、図1に示すように制御部50が設けられている。制御部50は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、電極製造装置1における電極Eを製造するための処理を制御するプログラムが格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部50にインストールされたものであってもよい。
【0050】
本実施の形態にかかる電極製造装置1は以上のように構成されている。次に、その電極製造装置1で行われる電極Eを製造するための処理について説明する。
【0051】
金属箔Mは巻出ロール10から巻き出され、塗工部11に搬送される。塗工部11では、搬送中の金属箔Mの表面に対して、塗工ヘッド20からスラリー状の活物質合剤Sが塗工される。この際、金属箔Mの両側に配置された塗工ヘッド20、20から活物質合剤Sを供給することで、金属箔Mの両面に活物質合剤Sが均一な膜厚で同時に塗工される。また、塗工ヘッド20から供給される活物質合剤Sは金属箔Mの短手方向の中央部に塗工される。さらに、塗工ヘッド20から活物質合剤Sを断続的に供給することで、金属箔Mの長手方向に複数の領域に活物質合剤Sが塗工される。
【0052】
その後、活物質合剤Sが塗工された金属箔Mは、乾燥部12に搬送される。乾燥部12では、金属箔Mの両側に配置された複数のロッドヒータ30及び複数の反射板31からの赤外線による輻射加熱によって、金属箔Mの両面の活物質合剤Sが乾燥される。このとき、ロッドヒータ30の温度は例えば200℃に設定されている。また、金属箔Mの両側に形成された乾燥領域D、D内で給気口32から排気口33に流通する空気による対流加熱によって、金属箔Mの両面の活物質合剤Sが乾燥される。さらに、乾燥領域D内で発生する給気口32から排気口33への気流によって、活物質合剤Sから蒸発した溶媒、すなわち水が排気口33に円滑に流れ、当該蒸発した水が金属箔Mに再付着することなく除去される。こうして金属箔Mの両面の活物質合剤Sが乾燥され、当該金属箔Mの両面に所定の膜厚の活物質層Fが形成される。
【0053】
その後、活物質層Fが形成された金属箔Mは、巻取ロール13に搬送され、当該巻取ロール13に巻き取られる。こうして電極製造装置1における一連の処理が終了し、電極Eが製造される。
【0054】
以上の実施の形態によれば、乾燥部12において、複数のロッドヒータ30及び複数の反射板31からの赤外線による輻射加熱と、乾燥領域D内で給気口32から排気口33に流通する空気による対流加熱とによって、金属箔M上の活物質合剤Sが乾燥される。このように赤外線による輻射加熱と空気による対流加熱という2種類の乾燥方法を用いているので、当該活物質合剤Sを適切に乾燥させることができる。さらに、赤外線による輻射加熱を用いた場合、ロッドヒータ30及び反射板31と金属箔Mとの間の距離に依存することなく赤外線の輻射熱が伝熱される。したがって、金属箔Mの反りや傾きに影響されることなく、活物質合剤Sを適切に加熱することができる。
【0055】
また、乾燥部12では、乾燥領域D内に給気口32から排気口33への一方向の気流を発生させることができる。この気流によって、金属箔M上の活物質合剤Sを乾燥させる際に蒸発した水が排気口33から排出されるので、当該蒸発した水が金属箔Mの表面に再付着することがない。このため、金属箔M上の活物質合剤Sをより適切に乾燥させることができる。したがって、金属箔M上に活物質層Fを適切に形成することができる。
【0056】
また、反射板31がロッドヒータ30を挟んで金属箔Mの表面と対向して配置されているので、ロッドヒータ30から金属箔Mと反対側に放射された赤外線は、反射板31で反射して金属箔Mに放射される。したがって、赤外線の全てを利用することができ、金属箔M上の活物質合剤Sを効率よく乾燥させることができる。
【0057】
さらに、反射板31が金属箔Mと反対側に凸に湾曲しているので、排気口33から排気されなかった極微量の空気を給気口32側に円滑に流通させることができる。そして、この空気は再び給気口32から供給される空気と合流して、排気口33に流れる。したがって、乾燥領域D内における給気口32から排気口33への気流が乱されることなく、一方向の気流を維持することができる。また、排気口33から排気されなかった極微量の空気は、乾燥領域D内において赤外線の輻射加熱によって加熱されるので、金属箔M上の活物質合剤Sを効率よく乾燥させることができる。
【0058】
また、塗工部11において、金属箔Mの長手方向が水平方向となる向きに金属箔Mが搬送されるので、金属箔Mの表面に塗工された活物質合剤Sが当該金属箔Mの搬送方向の上流側又は下流側に流れることがない。さらに、金属箔Mの短手方向が鉛直方向となる向きに金属箔Mが搬送されるので、金属箔Mの両面に均一に活物質合剤Sを塗工することができる。このように塗工部11において活物質合剤Sを適切に塗工できるので、金属箔M上に活物質層Fをより適切に形成することができる。
【0059】
また、巻出ロール10と巻取ロール13との間において、長手方向が水平方向となる向きに金属箔Mが搬送されるので、金属箔Mの高さを一定に低くすることができ、電極製造装置1のメンテナンスが容易になる。したがって、金属箔Mの表面に活物質層Fを効率よく形成することができる。
【0060】
なお、乾燥部12の構成は以上の実施の形態に限定されず、金属箔M上の活物質合剤Sを乾燥できる構成であれば種々の構成を取り得る。
【0061】
例えば図7及び図8に示すように、ロッドヒータ30の内部に空気を流通させてもよい。ロッドヒータ30は、内筒100と、内筒100を取り囲むように設けられた外筒101とを有している。内筒100の外周部には、発熱体としてニクロム線を有するニクロム線ヒータ102が螺旋状に設けられている。このニクロム線ヒータ102は、鉛直方向に金属箔Mの短手方向の長さより長く設けられている。なお、上述したように外筒101の材質はセラミックである。また、内筒100は耐熱性を有し、その材質は例えばセラミック又はアルミナである。
【0062】
外筒101と内筒100との間には、空気が流通する流通路110が形成されている。流通路110内を流通する空気は給気部111から供給される。給気部111は、ロッドヒータ30の軸方向両端部に配置されている。また給気部111には、空気供給源112に連通する供給管113が接続されている。空気供給源112に内部には、常温である23℃の空気、例えばドライエアが貯留されている。
【0063】
外筒101には、流通路110の空気を金属箔Mの表面に向けて噴出する複数の噴出口114が形成されている。噴出口114は、外筒101の長手方向(図7中のZ方向)に並べて複数形成されている。これら噴出口114は、図9に示すように排気口33側に向けられている。また、これら噴出口114は、流通路110内の空気を金属箔Mの表面に向けて斜めに噴出する位置に形成されている。
【0064】
かかる場合、乾燥部12では、給気部111から流通路110に供給された空気は、当該流通路110内を流通する。この際、流通路110内の空気は、ニクロム線ヒータ102によって加熱される。ロッドヒータ30の温度は上述したように例えば200℃に設定されているため、流通路110内の空気は、23℃よりも高い温度であって200℃以下に加熱される。そして、加熱された空気は、噴出口114から乾燥領域Dに噴出される。こうしてロッドヒータ30から乾燥領域D内の金属箔Mの表面に向けて噴出された空気は、金属箔Mの表面近傍を流れ、給気口32から排気口33に流れる気流に合流して、排気口33から排気される。
【0065】
そして、乾燥部12では、複数のロッドヒータ30及び複数の反射板31からの赤外線による輻射加熱と、乾燥領域D内で給気口32から排気口33に流通する空気による対流加熱に加えて、上述したロッドヒータ30から噴出される空気による対流加熱によって、金属箔M上の活物質合剤Sが乾燥される。
【0066】
本実施の形態によれば、ロッドヒータ30から乾燥領域Dに噴出される空気はニクロム線ヒータ102によって加熱されているので、活物質合剤Sの乾燥時間を短縮することができる。このため、乾燥部12の長さも短くすることができ、電極製造装置1のフットプリントを小さくできる。しかも、この流通路110内における空気の加熱は、活物質合剤Sを乾燥させるために設けられたニクロム線ヒータ102を利用でき、別途加熱機構を設ける必要がない。以上のように本実施の形態によれば、金属箔M上の活物質合剤Sをより効率よく乾燥することができる。
【0067】
また、外筒101において噴出口114は排気口33側に向けて形成されているので、当該噴出口114から噴出された空気は、給気口32から排気口33に流れる気流に対して逆流しない。そうすると、噴出口114から噴出された空気は、給気口32から排気口33への気流を乱すことなく一方向の気流を維持しつつ、当該気流に合流できる。したがって、金属箔M上の活物質合剤Sを適切に乾燥させることができる。
【0068】
以上の実施の形態において、図10及び図11に示すようにロッドヒータ30の流通路110の内部において、外筒101と内筒100を接続して、当該内筒100を支持する支持部材120が設けられていてもよい。支持部材120は、内筒100の周方向に等間隔に複数配置されている。また、支持部材120は、内筒100の軸方向、すなわち長手方向(図10中のZ方向)に等間隔に複数配置されている。このように支持部材120が配置されていることによって、流通路110内の空気の流れが攪拌される。
【0069】
また、支持部材120は伝熱性を有しており、その材質は例えばSiCである。このため、ニクロム線ヒータ102から発生する熱が支持部材120を介して外筒101に伝達されるようになっている。
【0070】
かかる場合、支持部材120によって流通路110内の空気の流れが攪拌されるので、当該空気を効率よく加熱することができる。また、支持部材120によってニクロム線ヒータ102からの熱が外筒101に伝達されて、当該外筒101が加熱されるので、流通路内230内の空気を効率よく加熱できると共に、乾燥領域D内の空気も加熱することができる。以上のように本実施の形態によれば、金属箔M上の活物質合剤Sをより効率よく乾燥することができる。
【0071】
他の実施の形態として、乾燥部12は、図12に示すように長手方向(図12中のY方向)に並べて配置され、赤外線を照射する複数のロッドヒータ30を有している。ロッドヒータ30は、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に配置されている。
【0072】
ロッドヒータ30は、図7及び図8に示した構成とほぼ同様であり、内筒100と、外筒101と、ニクロム線ヒータ102とを有している。外筒101と内筒100との間には流通路110が形成されており、空気供給源112から供給管113、給気部111を介して流通路110内に空気が供給されるようになっている。なお、これら内筒100、外筒101、ニクロム線ヒータ102、流通路110、給気部111、空気供給源112、供給管113の構成は、上記実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0073】
そして、本実施の形態のロッドヒータ30の外筒101には、図7及び図8に示した噴出口114に加えて、図13に示すように他の噴出口130が形成されている。他の噴出口130は、内筒100を中心に、すなわち図13のX軸を中心に噴出口114と線対称の位置に配置されている。そして、これら噴出口114と他の噴出口130は、流通路110内の空気を金属箔Mの表面に向けて斜めに噴出する位置にそれぞれ形成されている。なお、図12の例においては、噴出口114からの空気は金属箔Mの搬送方向に下流側に噴出され、他の噴出口130からの空気は上流側に噴出されるようになっている。
【0074】
かかる場合、図12に示すように噴出口114から噴出された空気は、金属箔Mの表面に沿って流れた後、金属箔Mの表面で反射して当該金属箔Mから離れる方向に斜めに流れる。同様に、他の噴出口130から噴出された空気も、金属箔Mの表面に沿って流れた後、金属箔Mの表面で反射して当該金属箔Mから離れる方向に斜めに流れる。そして、噴出口114からの空気と他の噴出口130からの空気が合流して、この合流した空気が金属箔Mから離れる方向に流れて排気される。すなわち、噴出口114からの空気と他の噴出口130からの空気からの空気は、それぞれ一方向に流れて排気される。
【0075】
そして、乾燥部12では、複数のロッドヒータ30からの赤外線による輻射加熱と、複数のロッドヒータ30の噴出口114及び他の噴出口130から噴出される空気による対流加熱によって、金属箔M上の活物質合剤Sが乾燥される。
【0076】
本実施の形態によれば、乾燥部12において、赤外線による輻射加熱と空気による対流加熱という2種類の乾燥方法を用いているので、当該活物質合剤Sを適切に乾燥させることができる。また、赤外線による輻射加熱を用いた場合、ロッドヒータ30と金属箔Mとの間の距離に依存することなく赤外線の輻射熱が伝熱される。したがって、金属箔Mの反りや傾きに影響されることなく、活物質合剤Sを適切に加熱することができる。
【0077】
また、ロッドヒータ30から噴出される空気はニクロム線ヒータ102によって加熱されているので、活物質合剤Sの乾燥時間を短縮することができる。このため、乾燥部12の長さも短くすることができ、電極製造装置1のフットプリントを小さくできる。しかも、この流通路110内における空気の加熱は、活物質合剤Sを乾燥させるために設けられたニクロム線ヒータ102を利用でき、別途加熱機構を設ける必要がない。以上のように本実施の形態によれば、金属箔M上の活物質合剤Sを効率よく乾燥することができる。
【0078】
さらに、乾燥部12では、噴出口114の空気と他の噴出口130からの空気はそれぞれ一方向に流れて排気される。この一方向の気流によって、金属箔M上の活物質合剤Sを乾燥させる際に蒸発した水が金属箔Mの表面から離れる方向に排出されるので、当該蒸発した水が金属箔Mの表面に再付着することがない。このため、金属箔M上の活物質合剤Sをより適切に乾燥させることができる。
【0079】
以上の実施の形態において、乾燥部12は、図14に示すようにロッドヒータ30を挟んで金属箔Mの表面と対向して配置され、ロッドヒータ30からの赤外線を金属箔M側に反射させる複数の反射板140を有していてもよい。反射板140は、ロッドヒータ30と同様に、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に配置されている。また反射板140は、対向する金属箔Mと反対側に凸に湾曲している。さらに反射板201は、ロッドヒータ30を覆うように鉛直方向に延伸している。そして、ロッドヒータ30から金属箔Mと反対側に放射された赤外線は、反射板31で反射して金属箔Mに放射される。
【0080】
隣り合う反射板140、140間には、反射板140と金属箔Mとの間に形成された乾燥領域D内の空気を排気する排気口141が形成されている。排気口141は、金属箔Mの両側に形成されている。そして、噴出口114から噴出された空気と他の噴出口130から噴出された空気は、それぞれ金属箔Mの表面に沿って流れて合流した後、排気口140から排気される。すなわち、噴出口114からの空気と他の噴出口130からの空気からの空気は、それぞれ一方向に流れて排気される。なお、排気口140には、例えば真空ポンプ(図示せず)が設けられ、当該真空ポンプによって乾燥領域D内の空気を積極的に排気してもよい。
【0081】
かかる場合、複数のロッドヒータ30からの赤外線による輻射加熱と、複数のロッドヒータ30の噴出口114及び他の噴出口130から噴出される空気による対流加熱に加えて、複数の反射板140からの赤外線による輻射加熱によって、金属箔M上の活物質合剤Sを効率よく乾燥させることができる。しかも、ロッドヒータ30から金属箔Mと反対側に放射された赤外線は、反射板140で反射して金属箔Mに放射されるので、赤外線の全てを利用することができる。したがって、金属箔M上の活物質合剤Sを効率よく乾燥させることができる。
【0082】
さらに、反射板31が金属箔Mと反対側に凸に湾曲しているので、排気口141から排気されなかった極微量の空気を乾燥領域D内で円滑に循環させることができる。また、排気口33から排気されなかった極微量の空気は、乾燥領域D内において赤外線の輻射加熱によって加熱される。したがって、金属箔M上の活物質合剤Sをさらに効率よく乾燥させることができる。
【0083】
以上の実施の形態の電極製造装置1では、巻出部として巻出ロール10が設けられていたが、巻出部の構成は本実施の形態に限定されず、金属箔Mを巻き出す構成であれば種々の構成を取り得る。同様に、巻取部として巻取ロール13が設けられていたが、巻取部の構成は本実施の形態に限定されず、金属箔Mを巻き取る構成であれば種々の構成を取り得る。
【0084】
また、以上の実施の形態の塗工部11には塗工ヘッド20が設けられていたが、塗工部11の構成は本実施の形態に限定されず、金属箔Mの表面に活物質合剤Sを塗工できる構成であれば種々の構成を取り得る。
【0085】
例えば以上の実施の形態では、塗工ヘッド20、20は金属箔Mの両側に対向して設けられていたが、いずれか一方の塗工ヘッド20が他方の塗工ヘッド20より下流側に配置されていてもよい。また、塗工ヘッド20の数は本実施の形態に限定されず、金属箔Mの両側にそれぞれ複数の塗工ヘッド20が配置されていてもよい。
【0086】
また例えば塗工部11において、インクジェット方式で金属箔Mの表面に活物質合剤Sを塗工してもよい。
【0087】
また例えば図15に示すように、塗工部11は、金属箔Mの表面に当接して当該金属箔Mにスラリー状の活物質合剤Sを塗工するローラ200と、ローラ200の表面に活物質合剤Sを供給するノズル201と、を有していてもよい。これらローラ200及びノズル201は、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に対向して配置されている。
【0088】
ローラ200は、その軸方向が鉛直方向に延伸し、当該鉛直軸を中心に回転可能に構成されている。またローラ200は、金属箔Mに形成される活物質層Fの鉛直方向の長さと同じ長さで延伸し、金属箔Mの短手方向の中央部に活物質合剤Sを供給できる位置に配置されている。
【0089】
ノズル201も、ローラ200と同様に鉛直方向に延伸している。また、ノズル201のローラ200側の面には、鉛直方向に延伸し、ローラ200に活物質合剤Sを吐出する吐出口(図示せず)が設けられている。吐出口は、ローラ200の表面全体に活物質合剤Sを供給できる長さと位置に形成されている。なお、ノズル201には、図5に示した塗工ヘッド20と同様に、活物質合剤供給源(図示せず)に連通する供給管(図示せず)が接続されている。
【0090】
かかる場合、塗工部11では、ノズル201からローラ200の表面に活物質合剤Sを供給しながら、当該活物質合剤Sが付着したローラ200を金属箔Mの表面に当接させる。そうすると、ローラ200の表面に付着した活物質合剤Sが金属箔Mの表面に転写され、当該金属箔Mの表面に活物質合剤Sが塗工される。
【0091】
本実施の形態によれば、ローラ200から金属箔Mの表面に活物質合剤Sが塗工される際、当該ローラ200自体の表面と金属箔Mの表面との距離を調整することで、活物質合剤Sの膜厚を調整することができる。したがって、金属箔Mの表面に活物質合剤Sをより均一な膜厚で塗工することができる。
【0092】
以上の実施の形態の電極製造装置1では、金属箔Mは、その長手方向が水平方向であって、且つその短手方向が鉛直方向となる向きで搬送されていたが、図16及び図17に示すように金属箔Mは、その長手方向が水平方向(図16及び図17中のY方向)であって、且つその短手方向が水平方向(図16中のX方向)となる向きで搬送されていてもよい。かかる場合、巻出ロール10と巻取ロール13は同じ高さに配置されている。また、巻出ロール10と巻取ロール13は、その軸方向が水平方向(図16中のX方向)となる向きにそれぞれ配置されている。本実施の形態の電極製造装置1を用いた場合でも、上述した実施の形態の効果を享受することができる。
【0093】
以上の実施の形態では、活物質層Fは金属箔Mの長手方向に複数形成されているが、一の活物質層Fを備えた電極Eを形成する際にも、本発明の電極製造装置1は有用である。
【0094】
また以上の実施の形 態では、電極製造装置1において金属箔Mの両面に活物質層Fを形成したが、電極Eを形成するためにはその他の処理、例えば金属箔Mのプレスや切断等も行われる。電極製造装置1は、巻出ロール10と巻取ロール13との間において、これらその他の処理も連続して行うようにしてもよい。
【0095】
また以上の実施の形態では、リチウムイオンキャパシタの電極Eを製造する場合について説明したが、電気二重層キャパシタに用いられる電極やリチウムイオン電池に用いられる電極を製造する場合にも、本発明の電極製造装置1を用いることができる。かかる場合、製造される電極の種類に応じて、金属箔Mの材質や活物質合剤Sの材料等を変更すればよい。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0097】
1 電極製造装置
10 巻出ロール
11 塗工部
12 乾燥部
13 巻取ロール
30 ロッドヒータ
31 反射板
32 給気口
33 排気口
50 制御部
100 内筒
101 外筒
102 ニクロム線ヒータ
110 流通路
114 噴出口
120 支持部材
D 乾燥領域
E 電極
F 活物質層
M 金属箔
S 活物質合剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造装置であって、
基材を巻き出す巻出部と、
前記巻出部で巻き出された基材を巻き取る巻取部と、
前記巻出部と前記巻取部との間に設けられ、基材の両面に活物質合剤を塗工する塗工部と、
前記塗工部と前記巻取部との間に設けられ、前記塗工部で塗工された前記活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥部と、を有し、
前記乾燥部は、
基材の長手方向に並べて配置され、赤外線を照射する複数のロッドヒータと、
前記ロッドヒータを挟んで基材の表面と対向して配置され、前記ロッドヒータからの赤外線を基材側に反射させる複数の反射板と、
隣り合う前記反射板間に形成され、前記反射板と基材との間の乾燥領域に空気を供給する給気口と、
別の隣り合う前記反射板間に形成され、前記乾燥領域内の空気を排気する排気口と、を備え、
前記複数のロッドヒータ、前記複数の反射板、前記給気口及び前記排気口は、それぞれ基材の両側に設けられていることを特徴とする、電極製造装置。
【請求項2】
前記給気口と前記排気口は、基材の長手方向に交互に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項3】
前記反射板は、対向する基材と反対側に凸に湾曲していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電極製造装置。
【請求項4】
前記ロッドヒータは、外周部に発熱体が設けられた内筒と、前記内筒を取り囲むように設けられた外筒とを有し、
前記外筒と前記内筒との間には空気が流通する流通路が形成され、
前記外筒には、前記流通路内の空気を基材の表面に向けて噴出する噴出口が形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電極製造装置。
【請求項5】
前記噴出口は、前記排気口側に向けられていることを特徴とする、請求項4に記載の電極製造装置。
【請求項6】
前記流通路内には、前記外筒と前記内筒を接続して、当該内筒を支持する支持部材が複数設けられ、
前記複数の支持部材は、前記内筒の周方向に複数配置され、且つ前記内筒の軸方向に複数配置されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の電極製造装置。
【請求項7】
前記支持部材は伝熱性を有することを特徴とする、請求項6に記載の電極製造装置。
【請求項8】
前記外筒の材質はセラミックであり、
前記発熱体はニクロム線を有するヒータであることを特徴とする、請求項4〜7のいずれかに記載の電極製造装置。
【請求項9】
前記巻出部と前記巻取部は、基材の長手方向が水平方向であって、且つ基材の短手方向が鉛直方向となる向きで基材を搬送するように配置されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の電極製造装置。
【請求項10】
前記電極は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン電池に用いられる電極であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の電極製造装置。
【請求項11】
巻出部と巻取部との間で帯状の基材を搬送しながら、当該基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造方法であって、
塗工部において、基材の両面に活物質合剤を塗工する塗工工程と、
その後、乾燥部において、前記塗工工程で塗工された前記活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥工程と、を有し、
前記乾燥部は、
基材の長手方向に並べて配置され、赤外線を照射する複数のロッドヒータと、
前記ロッドヒータを挟んで基材の表面と対向して配置され、前記ロッドヒータからの赤外線を基材側に反射させる複数の反射板と、
隣り合う前記反射板間に形成され、前記反射板と基材との間の乾燥領域に空気を供給する給気口と、
別の隣り合う前記反射板間に形成され、前記乾燥領域内の空気を排気する排気口と、を備え、
前記複数のロッドヒータ、前記複数の反射板、前記給気口及び前記排気口は、それぞれ基材の両側に設けられ、
前記乾燥工程において、前記複数のロッドヒータ及び前記複数の反射板からの赤外線による輻射加熱と、前記乾燥領域内で前記給気口から前記排気口に流通する空気による対流加熱とによって、前記活物質合剤を乾燥させることを特徴とする、電極製造方法。
【請求項12】
前記給気口と前記排気口は、基材の長手方向に交互に配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の電極製造方法。
【請求項13】
前記反射板は、対向する基材と反対側に凸に湾曲していることを特徴とする、請求項11又は12に記載の電極製造方法。
【請求項14】
前記ロッドヒータは、外周部に発熱体が設けられた内筒と、前記内筒を取り囲むように設けられた外筒とを有し、
前記乾燥工程において、前記外筒と前記内筒との間に形成された流通路に空気を供給し、供給された空気を前記発熱体によって加熱し、加熱された空気を前記外筒に形成された噴出口から基材の表面に向けて噴出することを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の電極製造方法。
【請求項15】
前記噴出口は、前記排気口側に向けられていることを特徴とする、請求項14に記載の電極製造方法。
【請求項16】
前記流通路内には、前記外筒と前記内筒を接続して、当該内筒を支持する支持部材が複数設けられ、
前記乾燥工程において、前記複数の支持部材により前記流通路内の空気の流れが攪拌されることを特徴とする、請求項14又は15に記載の電極製造方法。
【請求項17】
前記支持部材は伝熱性を有し、
前記乾燥工程において、前記支持部材及び前記発熱体により前記外筒が加熱されることを特徴とする、請求項16に記載の電極製造方法。
【請求項18】
前記外筒の材質はセラミックであり、
前記発熱体はニクロム線を有するヒータであることを特徴とする、請求項14〜17のいずれかに記載の電極製造方法。
【請求項19】
前記塗工工程と前記乾燥工程は、基材の長手方向が水平方向であって、且つ基材の短手方向が鉛直方向となる向きで搬送中の基材に対して行われることを特徴とする、請求項11〜18のいずれかに記載の電極製造方法。
【請求項20】
前記電極は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン電池に用いられる電極であることを特徴とする、請求項11〜19のいずれかに記載の電極製造方法。
【請求項21】
請求項11〜20のいずれかに記載の電極製造方法を電極製造装置によって実行させるために、当該電極製造装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項22】
請求項21に記載のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−146851(P2012−146851A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4741(P2011−4741)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】