電気光学装置および電子機器
【課題】画素を透過する光の透過率が高く、光源から発する光を有効に利用可能な電気光学装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】本適用例の電気光学装置としての液晶装置は、第1基板としての素子基板が、複数の画素電極を有し、第2基板としての対向基板20が、第1透光性導電層23aと、第1透光性導電層23aの複数の画素電極と対向する第1領域E1に配置された第2透光性導電層23cと、第1透光性導電層23aと第2透光性導電層23cとの間に配置された第1絶縁膜23bと、を有し、対向基板20の第1領域E1を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲でほぼフラットとなるように、第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23cの膜厚がそれぞれ設定されている。素子基板と対向基板20とを接着するシール材40が設けられる対向基板20の第2領域E2には、第1透光性導電層23aが配置されている。
【解決手段】本適用例の電気光学装置としての液晶装置は、第1基板としての素子基板が、複数の画素電極を有し、第2基板としての対向基板20が、第1透光性導電層23aと、第1透光性導電層23aの複数の画素電極と対向する第1領域E1に配置された第2透光性導電層23cと、第1透光性導電層23aと第2透光性導電層23cとの間に配置された第1絶縁膜23bと、を有し、対向基板20の第1領域E1を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲でほぼフラットとなるように、第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23cの膜厚がそれぞれ設定されている。素子基板と対向基板20とを接着するシール材40が設けられる対向基板20の第2領域E2には、第1透光性導電層23aが配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置およびこれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記電気光学装置として、例えば液晶プロジェクターの光変調手段(ライトバルブ)として用いられるアクティブ駆動型の液晶装置が挙げられる。該液晶装置の画素は、画素電極と、画素電極をスイッチング制御するトランジスターと、画素電極に書き込まれた画像信号を保持するための蓄積容量とを含む画素回路を有している。
【0003】
このような液晶装置では、より優れた表示品位を実現するために、例えば画素数を増やすことが試みられている。液晶装置の大きさを変えずに画素数を増やすことは画素の高精細化に繋がり、トランジスターの小型化はもちろんのこと、所定の電気容量を有する蓄積容量をどのように確保するかが課題となっている。
【0004】
上記課題を解決するため、表示領域のうち光が透過可能な開口領域において、トランジスター素子の上層に設けられた透明導電膜と、該透明導電膜上に形成された誘電体層と、該透明導電膜と該誘電体層と共に蓄積容量を構成し、該トランジスター素子に電気的に接続された透明な画素電極とを備えた電気光学装置が開示されている(特許文献1)。
上記電気光学装置によれば、開口領域に蓄積容量を構成しているので、非開口領域に蓄積容量を形成する場合に比べて、画素が高精細になっても、蓄積容量における所望の電気容量を確保できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−176119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、透光性の誘電体層を挟んで透明導電膜と画素電極とを単純に重ねただけでは、必ずしも画素における所望の透過率を得ることができないおそれがあった。とりわけ、液晶層を挟む一対の基板のうち、画素電極に対向する対向電極を備えた基板の透過率に与える影響について、上記特許文献1には記載されていない。言い換えれば、画素の透過率を考慮して、対向電極を有する基板の構成についても検討する必要があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例の電気光学装置は、第1基板と第2基板との間に挟持された電気光学物質を有する電気光学装置であって、前記第1基板は、複数の画素電極を有し、前記第2基板は、第1透光性導電層と、前記第1透光性導電層の前記複数の画素電極と対向する第1領域に配置された第2透光性導電層と、前記第1透光性導電層と前記第2透光性導電層との間に配置された第1絶縁膜と、を有し、前記第2基板の前記第1領域を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲でほぼフラットとなるように、前記第1透光性導電層、前記第1絶縁膜、前記第2透光性導電層の膜厚がそれぞれ設定されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、複数の画素電極に対向する第2基板側の第1領域を透過する光の分光分布が可視光波長範囲でほぼフラットになると、フラットでない場合に比べて実質的に第1領域つまり表示領域を透過する光の透過率が向上する。つまり、明るい表示が可能な電気光学装置を提供できる。
なお、本明細書において「分光分布が可視光波長範囲でほぼフラットとなる」とは、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において、透過光の透過率が90%以上となっていることを含む。また、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において透過率が95%以上となっていることが好ましく、98%以上となっていることがより好ましい。
【0010】
[適用例2]上記適用例の電気光学装置において、前記第1透光性導電層は、前記第1領域の外側に第2領域を有し、前記第2領域を透過する紫外光の透過率が85%以上となるように、前記第1透光性導電層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、第1領域の外側の第2領域に、紫外線硬化型のシール材を配置して第1基板と第2基板とを接合させたときに、第2基板の第2領域は、紫外光の透過率が85%以上となっているので、当該シール材を十分に硬化させることができる。
言い換えれば、第1領域に含まれる表示領域における明るい表示と、第2領域における紫外光の透過率の確保とを両立させることができる。
なお、本明細書において「紫外光」とは、波長が350nm以上400nm未満の光を指す。
【0011】
[適用例3]本適用例の他の電気光学装置は、第1基板と第2基板との間に挟持された電気光学物質を有する電気光学装置であって、前記第1基板は、複数の画素電極を有し、前記第2基板は、第1透光性導電層と、前記第1透光性導電層の前記複数の画素電極と対向する第1領域に配置された第2透光性導電層および第3透光性導電層と、前記第1透光性導電層と前記第2透光性導電層との間に配置された第1絶縁膜と、前記第2透光性導電層と前記第3透光性導電層との間に配置された第2絶縁膜と、を有し、前記第2基板の前記第1領域を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲でほぼフラットとなるように、前記第1透光性導電層、前記第1絶縁膜、前記第2透光性導電層、前記第2絶縁膜、前記第3透光性導電層の膜厚がそれぞれ設定されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、第1領域における薄膜の積層構造を第1透光性導電層、第1絶縁膜、第2透光性導電層とする場合に比べて、可視光波長範囲における分光分布をよりフラットな状態とすることができる。つまり、より明るい表示が可能な電気光学装置を提供できる。
【0013】
[適用例4]上記適用例の他の電気光学装置において、前記第1透光性導電層は、前記第1領域の外側に第2領域を有し、前記第2領域には、前記第1透光性導電層、前記第2透光性導電層、前記第3透光性導電層が順に積層されており、前記第2基板の前記第2領域を透過する紫外光の透過率が85%以上となるように、前記第1透光性導電層、前記第2透光性導電層、前記第3透光性導電層の膜厚がそれぞれ設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、第1領域から第2領域に亘って、第1透光性導電層、第1絶縁膜、第2透光性導電層、第2絶縁膜、第3透光性導電層の積層構造を維持する場合に比べて、第2領域における紫外光の透過率を容易に85%以上とすることができる。
【0014】
[適用例5]本適用例の電子機器は、上記適用例の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
この構成によれば、明るく見栄えのよい表示が可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は第1実施形態の液晶装置の構成を示す概略平面図、(b)は(a)のH−H’線で切った概略断面図。
【図2】第1実施形態の液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】第1実施形態の液晶装置における画素の配置を示す概略平面図。
【図4】(a)は画素における薄膜トランジスターと信号線の配置を示す概略平面図、(b)は画素における蓄積容量の一対の透光性電極と画素電極の配置を示す概略平面図。
【図5】図4のA−A’線で切った画素の構造を示す概略断面図。
【図6】図3のB−B’線で切った画素の構造を示す概略断面図。
【図7】第1実施形態における液晶装置の対向基板の構成を示す概略図。
【図8】第2実施形態の液晶装置における対向基板の構成を示す概略図。
【図9】素子基板の開口領域における透過光の分光分布を示すグラフ。
【図10】(a)および(b)は実施例の対向基板における透光性導電層や絶縁膜の膜厚を示す表、(c)は比較例の対向基板における透光性導電層や絶縁膜の膜厚を示す表。
【図11】実施例1〜3、比較例1の対向基板における透過光の分光分布を示すグラフ。
【図12】実施例4〜6、比較例1の対向基板における透過光の分光分布を示すグラフ。
【図13】実施例4、比較例2、比較例3の対向基板における透過光の分光分布を示すグラフ。
【図14】電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図。
【図15】変形例の液晶装置における素子基板の構造を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0017】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0018】
(第1実施形態)
<液晶装置>
まず、本実施形態の電気光学装置としての液晶装置について、図1および図2を参照して説明する。図1(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は同図(a)のH−H’線で切った概略断面図、図2は液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0019】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の電気光学装置としての液晶装置100は、対向配置された第1基板としての素子基板10および第2基板としての対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された電気光学物質としての液晶層50とを有する。素子基板10および対向基板20は、透明な例えば石英基板やガラス基板などが用いられている。
【0020】
素子基板10は対向基板20よりも一回り大きく、両基板間に配置されたシール材40を介して接合されている。シール材40には注入口が形成されており、例えば真空注入法により注入口から正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50を構成している。一対の基板間への液晶の注入(充填)は、真空注入法に限らない。例えば、一対の基板のうちの一方の基板にシール材40を額縁状に配置し、配置されたシール材40を土手として、減圧下でその内側に所定量の液晶を滴下する。そして、同じく減圧下で一方の基板と他方の基板と貼り合わせるODF(One Drop Fill)方式を採用してもよい。
シール材40は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材40には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0021】
額縁状に配置されたシール材40の内側には、同じく額縁状に遮光膜21が設けられている。遮光膜21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、遮光膜21の内側が表示領域Eとなっている。表示領域Eには、マトリックス状に画素Pが複数配置されている。表示領域Eは、表示に寄与する有効な複数の画素Pを囲むように配置された複数のダミー画素を含んでいるとしてもよい。なお、図1では図示省略したが、表示領域Eにおいても複数の画素Pを平面的に区分する遮光部が設けられている。
【0022】
素子基板10の1辺部に沿ったシール材40との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材40の内側に検査回路103が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材40の内側に走査線駆動回路102が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部のシール材40の内側には、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続用端子104に接続されている。
以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。
【0023】
図1(b)に示すように、素子基板10の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた光透過性を有する画素電極15およびスイッチング素子としての薄膜トランジスター(TFT;Thin Film Transistor、以下、TFTとも称する)30と、信号配線と、複数の画素電極15を覆う配向膜18とが形成されている。
また、TFT30における半導体層に光が入射して光リーク電流が流れ、不適切なスイッチング動作となることを防ぐ遮光構造が採用されている。
【0024】
対向基板20の液晶層50側の表面には、遮光膜21と、これを覆うように成膜された層間絶縁膜22と、少なくとも表示領域Eに亘って層間絶縁膜22を覆うように設けられた対向電極23と、対向電極23を覆う配向膜24とが設けられている。
【0025】
遮光膜21は、図1(a)に示すように平面的にデータ線駆動回路101や走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置において額縁状に設けられている。これにより対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0026】
層間絶縁膜22は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して遮光膜21を覆うように設けられている。また、層間絶縁膜22は、遮光膜21によって基板上に生ずる凹凸を緩和する平坦化層としても機能している。このような層間絶縁膜22の形成方法としては、例えばプラズマCVD法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0027】
対向電極23は、例えばITOなどの透明導電膜(透光性導電層)からなり、層間絶縁膜22を覆うと共に、図1(a)に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
【0028】
画素電極15を覆う配向膜18および対向電極23を覆う配向膜24は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。例えば、ポリイミドなどの有機材料を成膜して、その表面をラビングすることにより、正の誘電異方性を有する液晶分子に対して略水平配向処理が施されたものや、SiOx(酸化シリコン)などの無機材料を気相成長法を用いて成膜して、負の誘電異方性を有する液晶分子に対して略垂直配向処理が施されたものが挙げられる。
【0029】
図2に示すように、液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する信号線としての複数の走査線3aおよび複数のデータ線6aと、走査線3aに対して平行する容量線3bとを有する。
【0030】
走査線3aとデータ線6aとにより区分された領域に、画素電極15と、TFT30と、蓄積容量16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0031】
走査線3aはTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30のソースに電気的に接続されている。画素電極15はTFT30のドレインに電気的に接続されている。
データ線6aはデータ線駆動回路101(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路101から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは走査線駆動回路102(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路102から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。データ線駆動回路101からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路102は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
【0032】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極15に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極15を介して液晶層50に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極15と液晶層50を介して対向配置された対向電極23との間で一定期間保持される。
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極15と対向電極23との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量16が接続されている。蓄積容量16は、TFT30のドレインと容量線3bとの間に設けられている。詳しくは後述するが、本実施形態では、蓄積容量16を構成する一対の透光性電極のうちの一方が容量線3bとして機能している。
【0033】
なお、図1(a)に示した検査回路103には、データ線6aが接続されており、液晶装置100の製造過程において、上記画像信号を検出することで液晶装置100の動作欠陥などを確認できる構成となっているが、図2の等価回路では省略している。また、検査回路103は、上記画像信号をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング回路、データ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して供給するプリチャージ回路を含むものとしてもよい。
【0034】
このような液晶装置100は透過型であって、画素Pが非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードや、非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードの光学設計が採用される。光学設計に応じて、光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が配置されて用いられる。
【0035】
次に、画素Pの平面的な配置と構造について、図3〜図6を参照して説明する。図3は液晶装置における画素の配置を示す概略平面図、図4(a)は画素における薄膜トランジスターと信号線の配置を示す概略平面図、同図(b)は画素における蓄積容量の一対の透光性電極と画素電極の配置を示す概略平面図、図5は図4のA−A’線で切った画素の構造を示す概略断面図、図6は図3のB−B’線で切った画素の構造を示す概略断面図である。
【0036】
図3に示すように、液晶装置100における画素Pは、例えば平面的に略四角形(略正方形)の開口領域を有する。開口領域は、X方向とY方向とに延在し格子状に設けられた遮光性の非開口領域により囲まれている。
【0037】
X方向に延在する非開口領域には、図2に示した走査線3aが設けられている。走査線3aは遮光性の導電部材が用いられており、走査線3aによって非開口領域の少なくとも一部が構成されている。
【0038】
同じく、Y方向に延在する非開口領域には、図2に示したデータ線6aが設けられている。データ線6aも遮光性の導電部材が用いられており、これらによって非開口領域の少なくとも一部が構成されている。
【0039】
非開口領域は、素子基板10側に設けられた上記信号線類によって構成されるだけでなく、対向基板20側において格子状にパターニングされた遮光膜21によっても構成されている。
【0040】
非開口領域の交差部付近には、図2に示したTFT30が設けられている。遮光性を有する非開口領域の交差部付近にTFT30を設けることにより、TFT30の光誤動作を防止すると共に、開口領域における開口率を確保している。詳しい画素Pの構造については後述するが、交差部付近にTFT30を設ける関係上、交差部付近の非開口領域の幅は、他の部分に比べて広くなっている。
【0041】
次に、図4〜図6を参照して画素Pの画素回路における薄膜トランジスターなどの各構成要素について説明する。
図4に示すように、画素Pは、走査線3aとデータ線6aの交差部に設けられたTFT30を有している。TFT30は、データ線側ソース・ドレイン領域30sと、チャネル領域30cと、画素電極側ソース・ドレイン領域30dと、データ線側ソース・ドレイン領域30sとチャネル領域30cとの間に設けられた接合領域30eと、チャネル領域30cと画素電極側ソース・ドレイン領域30dとの間に設けられた接合領域30fとを有するLDD(Lightly Doped Drain)構造の半導体層30aを有している。半導体層30aは上記交差部を通過して、走査線3aと重なるように配置されている。
【0042】
走査線3aはデータ線6aとの交差部において、X,Y方向に拡張された平面視で四角形の拡張部を有している。当該拡張部に平面的に重なると共に接合領域30fおよび画素電極側ソース・ドレイン領域30dと重ならない開口部を有する折れ曲がった形状のゲート電極30gが設けられている。
【0043】
ゲート電極30gは、Y方向に延在した部分が平面的にチャネル領域30cと重なっている。また、チャネル領域30cと重なった部分から折り曲げられてX方向に延在し、互いに対向する部分がそれぞれ走査線3aの拡張部との間に設けられたコンタクトホールCNT3,CNT4によって、走査線3aと電気的に接続している。
【0044】
コンタクトホールCNT3,CNT4は、平面視でX方向が長い矩形状(長方形)であって、半導体層30aのチャネル領域30cと接合領域30fとに沿って接合領域30fを挟むように両側に設けられている。
【0045】
データ線6aは、Y方向に延在すると共に、走査線3aとの交差部において同じく四角形の拡張部を有し、当該拡張部からX方向に突出した突出部6cに設けられたコンタクトホールCNT1によってデータ線側ソース・ドレイン領域30sと電気的に接続している。コンタクトホールCNT1を含む部分がソース電極31となっている。一方、画素電極側ソース・ドレイン領域30dの端部にもコンタクトホールCNT2が設けられており、コンタクトホールCNT2を含む部分がドレイン電極32となっている。
走査線3aの延在方向(X方向)において、コンタクトホールCNT2に隣り合うようにコンタクトホールCNT6,CNT5,CNT7が設けられている。コンタクトホールCNT2とコンタクトホールCNT5とは島状に設けられた第1中継電極6bを介して電気的に接続されている。コンタクトホールCNT6とコンタクトホールCNT7とは同じく島状に設けられた第2中継電極7bを介して電気的に接続されている。
【0046】
図4(b)に示すように、画素電極15は、前述した開口領域(図3参照)と平面的に重なると共に外縁部が非開口領域(図3参照)に掛かるように配置されている。また、画素電極15はコンタクトホールCNT7との電気的な接続を図るための突出部15aを有している。つまり、画素電極15は画素Pごとに設けられた略四角形(略正方形)の島状となっている。
蓄積容量16は、一対の透光性電極としての第1電極16aと第2電極16cとを有している。第1電極16aは前述した開口領域(図3参照)において画素電極15と平面的に重なるように画素Pごとに設けられている。第1電極16aはコンタクトホールCNT6との電気的な接続を図るための突出部16aaを有している。つまり、第1電極16aは、画素電極15と同じく略四角形(略正方形)の島状となっている。
【0047】
これに対して、第2電極16cは、X方向およびY方向にマトリックス状に配置された複数の画素Pに跨るように設けられている。また、第1電極16aが電気的に接続されるコンタクトホールCNT6や画素電極15が電気的に接続されるコンタクトホールCNT7と第2電極16cとが重ならないように開口された開口部16chを有している。つまり、第2電極16cは、表示領域Eに亘るように設けられ、複数の画素Pに共通する容量線3bの機能を有している。第2電極16cの一部が表示領域Eの外側に引き出されて、固定電位が供給される配線に電気的に接続されている。
【0048】
図5に示すように、素子基板10上には、まず走査線3aが形成される。走査線3aは、半導体層30aを遮光する遮光膜を兼ねており、例えばAl、Ti、Cr、W、Ta、Moなどの金属のうちの少なくとも1つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらが積層されたものを用いることができ、遮光性を有している。
【0049】
走査線3aを覆うように例えば酸化シリコンなどからなる下地絶縁膜10aが形成され、下地絶縁膜10a上に島状に半導体層30aが形成される。半導体層30aは例えば多結晶シリコン膜からなり、不純物イオンが注入されて、前述したデータ線側ソース・ドレイン領域30s、接合領域30e、チャネル領域30c、接合領域30f、画素電極側ソース・ドレイン領域30dを有するLDD構造が形成されている。
【0050】
半導体層30aを覆うように例えば酸化シリコンなどからなる第1絶縁膜(ゲート絶縁膜)11aが形成される。さらに第1絶縁膜11aを挟んでチャネル領域30cに対向する位置にゲート電極30gが形成される。ゲート電極30gは例えば多結晶シリコン膜を用いて形成することができ、同時に下地絶縁膜10aと第1絶縁膜11aとを貫通して走査線3a(拡張部)とゲート電極30gとを電気的に接続するコンタクトホールCNT3,CNT4(図示省略)も形成される。
【0051】
ゲート電極30gと第1絶縁膜11aとを覆うようにして例えば酸化シリコンなどからなる第2絶縁膜11bが形成される。半導体層30aのデータ線側ソース・ドレイン領域30sに重なる第1絶縁膜11aと第2絶縁膜11bとを貫通するコンタクトホールCNT1が形成される。同じく、半導体層30aの画素電極側ソース・ドレイン領域30dに重なる第1絶縁膜11aと第2絶縁膜11bとを貫通するコンタクトホールCNT2が形成される。続いて、第2絶縁膜11bを覆うように例えばAlなどの遮光性の金属からなる導電膜を成膜してパターニングすることにより、データ線側ソース・ドレイン領域30sにコンタクトホールCNT1を介して電気的に接続されるデータ線6aが形成される。同時に、画素電極側ソース・ドレイン領域30dにコンタクトホールCNT2を介して電気的に接続される第1中継電極6bが形成される。
【0052】
続いて、データ線6aおよび第1中継電極6bを覆うように第1層間絶縁膜12が形成される。第1層間絶縁膜12は、例えばシリコンの酸化物や窒化物あるいは酸窒化物からなり、TFT30が設けられた領域を覆うことによって生ずる表面の凹凸を平坦化する平坦化処理が施される。平坦化処理の方法としては、例えば化学的機械的研磨処理(Chamical Mechanical Polishing;CMP処理)やスピンコート処理などが挙げられる。
【0053】
第1中継電極6bと重なる位置に第1層間絶縁膜12を貫通するコンタクトホールCNT5が形成される。このコンタクトホールCNT5を被覆すると共に第1層間絶縁膜12を覆うように例えばAlなどの遮光性の金属からなる導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、配線7aと、コンタクトホールCNT5を介して第1中継電極6bに電気的に接続される第2中継電極7bとが形成される。
配線7aは、平面的にTFT30の半導体層30aやデータ線6aと重なるように形成され、固定電位が与えられてシールド層として機能するものである。
【0054】
配線7aと第2中継電極7bとを覆うように第2層間絶縁膜13が形成される。第2層間絶縁膜13も、例えばシリコンの酸化物や窒化物あるいは酸窒化物を用いて形成することができ、CMP処理などの平坦化処理が施される。
【0055】
次に、第2中継電極7bと重なる位置に第2層間絶縁膜13を貫通するコンタクトホールCNT6が形成される。このコンタクトホールCNT6を被覆すると共に第2層間絶縁膜13を覆うように、例えばITOなどの透明導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、突出部16aaを有する第1電極16aが形成される。第1電極16aは突出部16aaおよびコンタクトホールCNT6を介して第2中継電極7bと電気的に接続される。
【0056】
第1電極16aのうち少なくとも第2電極16cと対向する部分に誘電体層16bが成膜される。誘電体層16bとしては、シリコン窒化膜や、酸化ハウニュウム(HfO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)などの単層膜、またはこれらの単層膜のうち少なくとも2種の単層膜を積層した多層膜を用いることができる。厚みは、電気容量を考慮して20nm〜30nmとする。誘電体層16bは、このように極薄い薄膜であり、可視光に対して高い透明性を有している。
【0057】
誘電体層16bを覆うように例えばITOなどの透明導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、容量線3bとして機能する第2電極16cが形成される。第2電極16cはパターニングされた誘電体層16bの側面を含めた表面を覆うように形成される。また、前述したように少なくとも複数の画素Pが含まれる表示領域Eに亘って形成されると共に、第2中継電極7bと平面的に重なる部分に開口部16chが形成される。
これによって、誘電体層16bを挟んで第1電極16aと第2電極16cとが対向配置され、透光性の蓄積容量16が構成される。
【0058】
蓄積容量16を覆って第3層間絶縁膜14が形成される。第3層間絶縁膜14も例えばシリコンの酸化物を用いて形成することができ、CMP処理などの平坦化処理を施してもよい。加えて、この後にフォトリソグラフィ法を用いて形成される画素電極15の形成工程で、第3層間絶縁膜14が変質したり、膜厚が変動することが無いように、化学的に安定なボロンがドープされた酸化シリコン膜で覆うことが好ましい。つまり、第3層間絶縁膜14は、蓄積容量16側の第1酸化シリコン膜と、第1酸化シリコン膜に積層され、ボロンがドープされた第2酸化シリコン膜とから構成されている。
【0059】
次に、第2中継電極7bと重なる位置に第2層間絶縁膜13および第3層間絶縁膜14を貫通するコンタクトホールCNT7が形成される。コンタクトホールCNT7を被覆すると共に、第3層間絶縁膜14を覆う例えばITOなどの透明導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、コンタクトホールCNT7を介して第2中継電極7bに電気的に接続される画素電極15が形成される。
【0060】
このような素子基板10の配線構造によれば、TFT30のドレイン電極32は、第1中継電極6b、コンタクトホールCNT5、第2中継電極7b、コンタクトホールCNT7を介して画素電極15と電気的に接続される。また、第1中継電極6b、コンタクトホールCNT5、第2中継電極7b、コンタクトホールCNT6を介して蓄積容量16の第1電極16aと電気的に接続される。
【0061】
図6に示すように、画素Pの開口領域には、透明な素子基板10上において順に形成された、下地絶縁膜10a、第1絶縁膜11a、第2絶縁膜11b、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜13、透光性の蓄積容量16、第3層間絶縁膜14、画素電極15が設けられている。
【0062】
素子基板10における下地絶縁膜10a、第1絶縁膜11a、第2絶縁膜11b、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜13などの絶縁膜は、前述したようにシリコンの酸化物(酸化シリコン膜)または窒化物あるいは酸窒化物からなるため、素子基板10を構成するところの例えば石英基板とほぼ同じ屈折率(可視光領域で1.4〜1.5)を有している。したがって、屈折率がほぼ同じであるため、これらの層(膜)を透過する可視光は、層(膜)の界面で反射したり、屈折したりすることがほとんどないので、その光強度(透過率)が減衰し難い。
これに対して、蓄積容量16から画素電極15までの構造は、透明導電膜(ITOならば可視光波長領域で屈折率が1.5〜1.9)からなる第1電極16aと第2電極16cとの間に誘電体層16bが挟まれ、同じく透明導電膜からなる第2電極16cと画素電極15との間に第3層間絶縁膜14が挟まれた構造となっている。つまり、透明導電膜の間に透明導電膜に対して屈折率が異なる(低い)誘電体層16bや第3層間絶縁膜14を挟んだ構造となっているので、これらの層(膜)を透過する可視光は、層(膜)の界面で反射したり、屈折したりして、その光強度(透過率)が減衰するおそれがある。なお、誘電体層16bは、前述したように電気容量を確保する観点から膜厚を20nm〜30nmとしている。この膜厚の範囲では、開口領域における光の透過率に対してほとんど影響を及ぼさないので、無視することができる。
【0063】
本実施形態では、素子基板10の開口領域を透過する光(透過光)の分光分布が、少なくとも赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)に対応してそれぞれ透過率のピークを有するように、画素電極15、一対の透光性電極としての第1電極16aおよび第2電極16c、第3層間絶縁膜14のそれぞれの膜厚が設定されている。具体的には、画素電極15、第1電極16a、第2電極16cは、いずれもITO膜を用いて膜厚が140nmとなるように形成されている。また、第3層間絶縁膜14は、第1酸化シリコン膜とボロンがドープされた第2酸化シリコン膜とからなり、膜厚が175nmとなるように形成されている。
【0064】
また、液晶層50を挟んで素子基板10に対向配置される対向基板20は、前述した遮光膜21や層間絶縁膜22に加えて、透光性導電層と絶縁膜とが積層された構造となっており、表示領域Eを透過する光(透過光)の分光分布が、可視光波長範囲(400nm〜700nm)でほぼフラットとなるように、上記透光性導電層および上記絶縁膜の膜厚がそれぞれ設定されている。以降、対向基板20の具体的な構成について、図7を参照して説明する。
【0065】
図7は、第1実施形態における液晶装置の対向基板の構成を示す概略図である。なお、図7では、対向基板20に設けられた遮光膜21や層間絶縁膜22の図示を省略している。図7に示すように、対向基板20は、第1領域E1と、第1領域E1を囲むように設けられた第2領域E2とを有している。第1領域E1は、素子基板10における複数の画素電極15がマトリックス状に配置された領域に対向する部分である。つまり、第1領域E1は、少なくとも表示領域Eを含むものである。第1領域E1を囲む第2領域E2は、シール材40が配置される領域を含んでいる。
【0066】
対向基板20の液晶層50に面する側には、第1領域E1と第2領域E2とに跨って例えばITOなどの透明導電膜からなる第1透光性導電層23aが設けられている。第1透光性導電層23aは層間絶縁膜22(図1(b)参照)を覆って設けられている。第1透光性導電層23aの第1領域E1に例えば酸化シリコン膜からなる透光性の第1絶縁膜23bが設けられている。また、第1絶縁膜23bに対して例えばITOなどの透明導電膜からなる第2透光性導電層23cが積層されている。第2透光性導電層23cは第1領域E1内において例えばコンタクトホールなどの接続部を介して第1透光性導電層23aに電気的に接続されている。したがって、第1絶縁膜23bを挟んで対向配置された第1透光性導電層23aと第2透光性導電層23cとを含む積層体23Fが実質的に対向電極23(図1(b)参照)として機能するものである。
配向膜24は、第1領域E1と第2領域E2とに跨って、第1透光性導電層23aおよび第2透光性導電層23cを覆うように設けられている。なお、図7では詳細な図示を省略したが、配向膜24は積層体23Fの側面部分も覆っている。
【0067】
このように第1領域E1に屈折率が異なる透光性導電層と絶縁膜とが積層された積層体23Fを配置することで、第1透光性導電層23aだけを設けた場合に比べて、薄膜の光干渉作用により、第1領域E1を透過する光の可視光波長範囲における透過率を高めることができる。その一方で、第2領域E2に第1透光性導電層23aを残し、第1絶縁膜23bおよび第2透光性導電層23cが無い状態とすることで、第1領域E1に比べて第2領域E2における紫外光の透過率を高めることができる。
【0068】
上記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)素子基板10は画素Pの開口領域に透光性の蓄積容量16と画素電極15とを有し、開口領域を透過する光の分光分布が、少なくとも赤、緑、青の各波長範囲に対応して透過率のピークを有するように、画素電極15、一対の透光性電極としての第1電極16aおよび第2電極16c、第3層間絶縁膜14のそれぞれの膜厚が設定されている。これに加えて、液晶層50を挟んで素子基板10に対向配置される対向基板20は、第1領域E1において屈折率が異なる透光性導電層と絶縁膜とが順に積層された3層構造の積層体23Fを有している。そして、第1領域E1を透過する光の可視光波長領域における分光分布がほぼフラットとなるように、第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23cの膜厚がそれぞれ設定されている。ゆえに、透過光の透過率が高い複数の画素Pを備え、光源から発せられる光の利用効率を高め、明るい表示が可能な液晶装置100を提供することができる。
(2)対向基板20の第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aが残され、第1絶縁膜23bおよび第2透光性導電層23cが無い状態となっている。これにより第1領域E1に比べて第2領域E2における紫外光の透過率が高い状態となっているので、第2領域E2に例えば紫外線硬化型のシール材40が配置されても、十分に硬化させることができる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の液晶装置について、図8を参照して説明する。第2実施形態の液晶装置は、第1実施形態に対して、対向基板20の構成を異ならせたものである。したがって、第1実施形態の液晶装置100と同じ構成には同じ符号を付して詳細の説明は省略する。図8は第2実施形態の液晶装置における対向基板の構成を示す概略図である。
【0070】
図8に示すように、第2実施形態における対向基板20は、第1実施形態と同様に、第1領域E1と、第1領域E1を囲む第2領域E2とを有している。第1領域E1は、素子基板10における複数の画素電極15がマトリックス状に配置された領域に対向する部分である。つまり、第1領域E1は、少なくとも表示領域Eを含むものである。
【0071】
対向基板20の液晶層50に面する側には、第1領域E1と第2領域E2とに跨って例えばITOなどの透明導電膜からなる第1透光性導電層23aが設けられている。第1透光性導電層23aの第1領域E1に例えば酸化シリコン膜からなる透光性の第1絶縁膜23bが設けられている。また、第1絶縁膜23bに対して例えばITOなどの透明導電膜からなる第2透光性導電層23cと、例えば酸化シリコン膜からなる第2絶縁膜23dと、例えばITOなどの透明導電膜からなる第3透光性導電層23eとが順に積層されている。
第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eが順に積層された積層体23hが配置されている。
第2透光性導電層23cおよび第3透光性導電層23eは第1領域E1内において例えばコンタクトホールなどの接続部を介して第1透光性導電層23aに電気的に接続されている。したがって、順に積層された第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23c、第2絶縁膜23d、第3透光性導電層23eとを含む積層体23Gと上記積層体23hとが実質的に対向電極23(図1(b)参照)として機能するものである。
配向膜24は、第1領域E1と第2領域E2とに跨って、第3透光性導電層23eを覆うように設けられている。また、図8には詳細な図示を省略したが、配向膜24は積層体23Gや積層体23hの側面部分も覆うように設けられている。
そして、対向基板20の第1領域E1を透過する光の可視光波長領域の分光分布がほぼフラットとなるように、第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23c、第2絶縁膜23d、第3透光性導電層23eのそれぞれの膜厚が設定されている。
【0072】
上記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)第1領域E1に屈折率が異なる透光性導電層と絶縁膜とが順に積層された5層構造の積層体23Gを配置することで、第1透光性導電層23aだけを設けた場合に比べて、あるいは第1実施形態に比べて、薄膜の光干渉作用により、第1領域E1を透過する光の透過率をより高めることができる。その一方で、第2領域E2には第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eが順に積層された積層体23hを残し、第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dが無い状態とすることで、第1領域E1に比べて第2領域E2における紫外光の透過率を高めることができる。つまり、第2領域E2に例えば紫外線硬化型のシール材40が配置されても、十分に硬化させることができる。
【0073】
以降、具体的な実施例や比較例を挙げて説明する。図9は素子基板の開口領域における透過光の分光分布を示すグラフ、図10(a)および(b)は実施例の対向基板における透光性導電層や絶縁膜の膜厚を示す表、同図(c)は比較例の対向基板における透光性導電層や絶縁膜の膜厚を示す表、図11は実施例1〜3、比較例1の対向基板における透過光の分光分布を示すグラフ、図12は実施例4〜6、比較例1の対向基板における透過光の分光分布を示すグラフ、図13は実施例4、比較例2、比較例3の対向基板における透過光の分光分布を示すグラフである。
【0074】
図9に示すように、素子基板10の開口領域における透過光の分光分布は、少なくとも赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)のそれぞれにおいて、透過率のピークを有している。言い換えれば、当該透過率のピークを有するように、蓄積容量16のITO膜からなる第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚がそれぞれ140nmに設定され、第2電極16cと画素電極15の間の第3層間絶縁膜14の膜厚が175nmに設定されている。第1電極16aと第2電極16cとの間にも誘電体層16bが設けられている。したがって、開口領域において屈折率が異なる透明導電膜(透光性導電層)と絶縁膜とが順に積層された状態となっており、薄膜の光干渉作用により、可視光波長範囲に亘って高い透過率が得られている。なお、図9における分光分布において、縦軸は、赤の波長範囲(600nm〜700nm)における透過率のピークを「1」として指数化されている。
【0075】
以下、図10(a)〜(c)を参照して、対向基板20における実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例3の透光性導電層、絶縁膜について説明する。なお、実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例3において、対向基板20には酸化シリコン(SiO2)からなる無機の配向膜24が設けられ、その膜厚はいずれも75nmに設定されている。
(実施例1)
実施例1では、第1領域E1に第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23cが順に積層されている。第1透光性導電層23aおよび第2透光性導電層23cはITO膜からなり、膜厚がそれぞれ20nmに設定されている。第1絶縁膜23bは酸化シリコン膜からなり、膜厚が80nmに設定されている。
第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aが配置されている。
【0076】
(実施例2)
実施例2は、実施例1に対して第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23cの膜厚をそれぞれ10%ずつ薄くしたものである。すなわち、第1透光性導電層23aおよび第2透光性導電層23cは膜厚がそれぞれ18nmに設定されている。第1絶縁膜23bは膜厚が72nmに設定されている。
【0077】
(実施例3)
実施例3は、実施例1に対して第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23cの膜厚をそれぞれ10%ずつ厚くしたものである。すなわち、第1透光性導電層23aおよび第2透光性導電層23cは膜厚がそれぞれ22nmに設定されている。第1絶縁膜23bは膜厚が88nmに設定されている。
【0078】
(実施例4)
実施例4では、第1領域E1に第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23c、第2絶縁膜23d、第3透光性導電層23eが順に積層されている。第1透光性導電層23aおよび第3透光性導電層23eはITO膜からなり、膜厚はそれぞれ20nmに設定されている。第2透光性導電層23cはITO膜からなり、膜厚が40nmに設定されている。第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dは酸化シリコン膜からなり、膜厚がそれぞれ50nmに設定されている。
第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aと第2透光性導電層23cと第3透光性導電層23eとが配置されている。つまり、積層体23hの膜厚は80nmとなる。
【0079】
(実施例5)
実施例5は、実施例4に対して、第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23c、第2絶縁膜23d、第3透光性導電層23eのそれぞれの膜厚を10%ずつ薄くしたものである。すなわち、第1透光性導電層23aおよび第3透光性導電層23eは膜厚がそれぞれ18nmに設定されている。第2透光性導電層23cは膜厚が36nmに設定されている。第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dは膜厚がそれぞれ45nmに設定されている。
第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aと第2透光性導電層23cと第3透光性導電層23eとが配置されている。つまり、積層体23hの膜厚は72nmとなる。
【0080】
(実施例6)
実施例6は、実施例4に対して、第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23c、第2絶縁膜23d、第3透光性導電層23eのそれぞれの膜厚を10%ずつ厚くしたものである。すなわち、第1透光性導電層23aおよび第3透光性導電層23eは膜厚がそれぞれ22nmに設定されている。第2透光性導電層23cは膜厚が44nmに設定されている。第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dは膜厚がそれぞれ55nmに設定されている。
第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aと第2透光性導電層23cと第3透光性導電層23eとが配置されている。つまり、積層体23hの膜厚は88nmとなる。
【0081】
(比較例1)
比較例1は、第1領域E1と第2領域E2とに亘ってITO膜からなる第1透光性導電層23aが配置され、膜厚が140nmに設定されている。
【0082】
(比較例2)
比較例2は、第1領域E1に第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23c、第2絶縁膜23d、第3透光性導電層23eが順に積層されている。第1透光性導電層23aおよび第3透光性導電層23eはITO膜からなり、膜厚はそれぞれ40nmに設定されている。第2透光性導電層23cはITO膜からなり、膜厚が80nmに設定されている。第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dは酸化シリコン膜からなり、膜厚がそれぞれ50nmに設定されている。第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aが配置されている。つまり、比較例2は、実施例4に対して、第1領域E1における第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eの膜厚をそれぞれ倍に設定し、第2領域E2に第1透光性導電層23aだけを配置したものである。
【0083】
(比較例3)
比較例3は、比較例2に対して、ITO膜からなる第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eの膜厚をそれぞれ140nmに設定したものである。第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aが配置されている。
【0084】
実施例1〜3は、上記第1実施形態に対応させた実施例であり、実施例4〜6は上記第2実施形態に対応させた実施例である。比較例1は上記第1実施形態の実施例1〜3と対比させる比較例である。比較例2および比較例3は、上記第2実施形態の実施例4〜6と対比させる比較例である。
【0085】
以下、実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例3について、第1領域E1と第2領域E2における透過光の分光分布を光学的なシミュレーションによって求めた。また、図11〜図13に示す分光分布のグラフは、比較例1における赤の波長範囲(600nm〜700nm)における透過率のピークの値を「1」として指数化したものである。なお、透過光の分光分布を求める光学的なシミュレーションは、各実施例および比較例の膜厚構成に相当するサンプル(試作品)の分光特性を実際に測定して得られた結果と比較して、シミュレーション結果の妥当性が確認されている。
【0086】
図11に示すように、実施例1の第1領域E1を透過する光の分光分布は、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において透過率が90%以上の数値を示し、500nm〜700nmの範囲で透過率が99%以上の値で安定しており、ほぼフラットな状態となっている。一方で実施例1の第1領域E1における紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、急激に透過率が低下している。ちなみに350nmでは、透過率が75%を下回っている。これに対して、実施例1の第2領域E2を透過する光の分光分布は、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において第1領域E1よりも透過率が低下するものの、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、透過率が85%を上回っており、第1領域E1よりも高い透過率となっている。
【0087】
実施例1に対して透光性導電層や絶縁膜の膜厚をそれぞれ10%薄くした実施例2は、第1領域E1を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において、透過率が95%以上の数値を示し、実施例1よりもさらにフラットな状態となっている。実施例2の第1領域E1における紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、実施例1と同様に急激に透過率が低下している。これに対して、実施例2の第2領域E2を透過する光の分光分布は、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において第1領域E1よりも透過率が低下するものの、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、透過率が90%を上回っており、第1領域E1よりも高い透過率となっている。
【0088】
実施例1に対して透光性導電層や絶縁膜の膜厚をそれぞれ10%厚くした実施例3は、第1領域E1を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において、透過率が実施例1よりもやや低下するものの85%以上の数値を示し、500nm〜700nmの波長範囲では透過率が98%以上の数値を示しフラットな状態となっている。実施例3の第1領域E1における紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、実施例1と同様に急激に透過率が低下している。これに対して、実施例3の第2領域E2を透過する光の分光分布は、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において第1領域E1よりも透過率が低下するものの、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、透過率が85%を上回っており、第1領域E1よりも高い透過率となっている。
実施例3は実施例1に比べて、第1領域E1における400nm〜450nmの波長範囲の光の透過率が低下しているものの、液晶装置100を後述する投射型表示装置における液晶ライトバルブとして用いる場合には、耐光性を考慮して紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)を含む例えば430nm未満の波長の光をカットして使用されるので、実用上は問題がないと言える。
【0089】
一方、第1領域E1および第2領域E2に膜厚が140nmの第1透光性導電層23aを配置した比較例1では、第1領域E1および第2領域E2を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において、透過率が85%以上の数値を示してはいるものの、赤の波長範囲(600nm〜700nm)で実施例1〜3に比べてやや透過率が低下している。また、青の波長範囲(400nm〜500nm)において実施例1や実施例2に比べて透過率が低下している。つまり、比較例1は実施例1〜3に比べて分光分布が可視光波長範囲(400nm〜700nm)において大きく変動しており、ほぼフラットな状態とは言い難い。
【0090】
上記第1実施形態の対向基板20における積層体23Fが適用された実施例1〜3によれば、第1透光性導電層23aおよび第2透光性導電層23cの膜厚を20nmに設定し、第1絶縁膜23bの膜厚を80nmに設定した上で、各膜厚の設定値に対して±10%の範囲で積層体23Fを形成すれば、第1領域E1の可視光波長範囲(400nm〜700nm)における分光分布をほぼフラットな状態とすることができる。また、第2領域E2の紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)の透過率を85%以上とすることができる。
【0091】
図12に示すように、実施例4および実施例4に対して積層体23Gの各薄膜の膜厚を10%薄くした実施例5は、第1領域E1を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において透過率が98%以上の数値を示し、且つ安定してフラットな状態となっている。一方で上記分光分布における紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、やはり急激に透過率が低下している。これに対して、実施例4および実施例5の第2領域E2を透過する光の分光分布は、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において第1領域E1よりも透過率が低下するものの、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、透過率が90%を上回っており、実施例1〜3よりも高い透過率となっている。
【0092】
また、実施例4に対して積層体23Gの各薄膜の膜厚を10%厚くした実施例6は、第1領域E1を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲(400nm〜700nm)における短波長側で透過率が実施例4や実施例5に比べてやや低下するものの、430nm〜700nmの波長範囲で98%以上の値を示して安定しており、フラットな状態となっている。上記分光分布における紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、やはり急激に透過率が低下している。一方、実施例6の第2領域E2を透過する光の分光分布は、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において第1領域E1よりも透過率が低下するものの、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、透過率が90%を上回り、且つ実施例4や実施例5よりも高い透過率となっている。
したがって、実施例4〜6は、第1領域E1において400nm〜700nmの波長範囲で、比較例1は元より実施例1〜3よりも高い光の透過率が得られる。また、第2領域E2において350nm以上400nm未満の紫外光波長領域で、比較例1は元より実施例1〜3よりも高い光の透過率が得られる。
【0093】
図13に示すように、実施例4に対して、第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eの膜厚をそれぞれ倍にした比較例2では、第1領域E1の分光分布において可視光波長範囲のうち550nm〜700nmでは、透過率が98%以上で安定しているものの、550nm未満の波長範囲では急激に透過率が低下している。比較例2の第2領域E2の分光分布では、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)の透過率が85%を下回る部分がある。
【0094】
また、実施例4に対して、第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eの膜厚をそれぞれ140nmに設定した比較例3では、第1領域E1の分光分布において可視光波長範囲のうち青から緑の波長範囲(400nm〜600nm)では、90%以上の透過率が得られるものの、赤の波長範囲(600nm〜700nm)では、実施例4よりも透過率が低下しており安定していない。比較例3の第2領域E2の分光分布では、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)の透過率が85%を下回っている。
すなわち、比較例2や比較例3は、実施例4よりも第1領域E1および第2領域E2における350nm〜700nmの透過光の透過率は低く、不安定な状態となっている。
【0095】
上記第2実施形態の対向基板20における積層体23Gが適用された実施例4〜6によれば、第1透光性導電層23aおよび第3透光性導電層23eの膜厚を20nmに設定し、第2透光性導電層23cの膜厚を40nmに設定し、第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dの膜厚を50nmに設定した上で、それぞれの膜厚設定に対して±10%の範囲で積層体23Gおよび積層体23hを形成すれば、第1領域E1の可視光波長範囲(400nm〜700nm)における分光分布をフラットな状態とすることができる。また、第2領域E2の紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)の透過率を90%以上とすることができる。
【0096】
(第3実施形態)
<電子機器>
図14は電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図である。図14に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0097】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0098】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0099】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。
ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。
ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0100】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0101】
液晶ライトバルブ1210は、上述した第1実施形態または第2実施形態の液晶装置が適用されたものである。当該液晶装置は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
【0102】
このような投射型表示装置1000によれば、素子基板10および対向基板20の表示領域Eにおいて透過光の透過率が高い当該液晶装置を液晶ライトバルブ1210,1220,1230として用いているので、偏光照明装置1100から発する光を有効に利用して明るい表示品位が実現されている。
【0103】
また、素子基板10および対向基板20の表示領域Eにおいて高い透過率が得られるということは、表示領域Eを透過する光の反射率が低下することを意味している。そうすると、反射した光が再び液晶層50を透過する確率が減るので、当該液晶装置を液晶ライトバルブ1210,1220,1230として用いたときの耐光性寿命(例えば液晶層50や配向膜18,24の光劣化)が改善される。
【0104】
なお、光源としての偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の分光分布における光強度のピーク波長に対して、画素Pを透過する光の透過率のピーク波長がほぼ合致するように、当該液晶装置における第1電極16a、第2電極16c、画素電極15、第3層間絶縁膜14の膜厚とその範囲をそれぞれ設定して用いることが好ましい。これによれば、光の利用効率をさらに高められる。なお、「ほぼ合致」とは、光源から発する色光の光強度のピーク波長に対して±5%以内の波長範囲に画素Pを透過する色光の透過率のピークが現れている状態を言う。
また例えば、青色光(B)の分光分布を430nmよりも波長が短い紫外光をカットして430nm〜500nmとし、当該液晶装置の耐光性寿命をさらに改善する場合には、当該波長範囲(430nm〜500nm)に透過率のピークが来るように、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15、第3層間絶縁膜14の膜厚とその範囲をそれぞれ設定する。
【0105】
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置および当該液晶装置を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0106】
(変形例1)上記第1実施形態および上記第2実施形態の対向基板20が適用される液晶装置における素子基板10の構造は、これに限定されない。図15は変形例の液晶装置における素子基板の構造を示す概略断面図である。詳しくは、図3に示したB−B’線に沿って切ったときの断面図である。例えば、図15に示すように、素子基板10の非開口領域において、データ線6aの上層に誘電体層60bを挟んだ一対の電極60a,60cからなる蓄積容量60を設ける構成としてもよい。この場合、例えばITO膜を用いて画素電極15を形成し、その膜厚を140nmまたは20nmとする。これにより、第1領域E1における可視光波長範囲(400nm〜700nm)の透過光の分光分布は、図11に示した比較例1の分光分布とほぼ同じ状態とすることができる。図9に示した素子基板10の分光分布と比べれば可視光波長範囲(400nm〜700nm)における透過率が低下するものの、本発明における対向基板20の構成を適用することによって、前述した特許文献1の電気光学装置よりも表示領域Eにおける高い光の透過率を実現できる。また、第2領域E2における紫外光の高い透過率を得ることができる。
さらには、上記第1実施形態および上記第2実施形態の対向基板20を適用可能な液晶装置は、透過型であることに限定されず、図15における画素電極15を例えばAlなどの光反射性を有する金属材料を用いて形成した反射型の液晶装置においても適用可能である。反射型の液晶装置における画素の光反射率(画素への入射光に対する画素からの反射光の強度の割り合い)を向上させることができる。
【0107】
(変形例2)上記第1実施形態および上記第2実施形態の対向基板20の構成は、これに限定されない。例えば、第1領域E1における透光性導電層と絶縁膜との積層構造は、第1実施形態の3層構造や第2実施形態の5層構造に限定されず、さらに屈折率が異なる透光性導電層と絶縁膜とを積層させた多層構造としてもよい。
【0108】
(変形例3)上記第1実施形態および上記第2実施形態の液晶装置における配向膜18,24は、酸化シリコンからなる無機配向膜であることに限定されない。ポリイミド樹脂などからなる有機配向膜を用いても本発明を適用することができる。また、シール材40が配置される第2領域E2において、配向膜18,24が配置されない構成としてもよい。特に有機配向膜を用いた場合、シール材40の材料選択によっては第2領域E2に有機配向膜を設けないほうが被接着物に対する接着性や密着性に優れる場合がある。
【0109】
(変形例4)素子基板10における蓄積容量16の一対の透光性電極である第1電極16aおよび第2電極16c、ならびに画素電極15は、透明導電膜としてITO膜を用いることに限定されず、IZO(Indium Zinc Oxide)を用いてもよい。同様に、対向基板20における第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eもITO膜を用いることに限定されず、IZO(Indium Zinc Oxide)を用いてもよい。また、すべての透光性導電層を同一の透明導電膜で形成することに限定されず、少なくとも1つの透光性導電層を異なる透明導電膜を用いて形成してもよい。
【0110】
(変形例5)対向基板20の第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dは、酸化シリコン膜であることに限定されず、酸窒化シリコン膜であるとしてもよい。
【0111】
(変形例6)上記液晶装置におけるTFT30の半導体層30aは、走査線3aと重なるように配置されることに限定されない。例えば、データ線6aと重ねる配置や半導体層30aを途中で折り曲げて、走査線3aとデータ線6aとに重ねるように配置したとしても、素子基板10における蓄積容量16、第3層間絶縁膜14、画素電極15の構成を適用することができる。
【0112】
(変形例7)本発明を適用可能な電気光学装置は、液晶装置に限定されない。例えば、素子基板10の画素電極15上に発光層を含む機能層を設け、素子基板10と反対側に機能層から光を発するトップエミッション方式の有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置にも適用することができる。具体的には、対向基板20の対向電極23を陰極とし、素子基板10の機能層を覆うように対向基板20を配置して、対向基板20を封止基板として用いる構成が挙げられる。
【0113】
(変形例8)上記液晶装置100が適用される電子機器は、上記実施形態の投射型表示装置1000に限定されない。例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。また、適用に際しては、透過型の上記実施形態の液晶装置を照明する光源の光の分光分布における少なくとも赤、緑、青の光強度のピーク波長に対して、画素Pを透過する光の透過率のピークが適合するように、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15、第3層間絶縁膜14の膜厚とその範囲をそれぞれ設定して用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0114】
10…第1基板としての素子基板、15…画素電極、20…第2基板としての対向基板、23…対向電極、23a…第1透光性導電層、23b…第1絶縁膜、23c…第2透光性導電層、23d…第2絶縁膜、23e…第3透光性導電層、24…配向膜、50…電気光学物質としての液晶層、100…液晶装置、1000…電子機器としての投射型表示装置、E…表示領域、E1…第1領域、E2…第2領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置およびこれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記電気光学装置として、例えば液晶プロジェクターの光変調手段(ライトバルブ)として用いられるアクティブ駆動型の液晶装置が挙げられる。該液晶装置の画素は、画素電極と、画素電極をスイッチング制御するトランジスターと、画素電極に書き込まれた画像信号を保持するための蓄積容量とを含む画素回路を有している。
【0003】
このような液晶装置では、より優れた表示品位を実現するために、例えば画素数を増やすことが試みられている。液晶装置の大きさを変えずに画素数を増やすことは画素の高精細化に繋がり、トランジスターの小型化はもちろんのこと、所定の電気容量を有する蓄積容量をどのように確保するかが課題となっている。
【0004】
上記課題を解決するため、表示領域のうち光が透過可能な開口領域において、トランジスター素子の上層に設けられた透明導電膜と、該透明導電膜上に形成された誘電体層と、該透明導電膜と該誘電体層と共に蓄積容量を構成し、該トランジスター素子に電気的に接続された透明な画素電極とを備えた電気光学装置が開示されている(特許文献1)。
上記電気光学装置によれば、開口領域に蓄積容量を構成しているので、非開口領域に蓄積容量を形成する場合に比べて、画素が高精細になっても、蓄積容量における所望の電気容量を確保できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−176119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、透光性の誘電体層を挟んで透明導電膜と画素電極とを単純に重ねただけでは、必ずしも画素における所望の透過率を得ることができないおそれがあった。とりわけ、液晶層を挟む一対の基板のうち、画素電極に対向する対向電極を備えた基板の透過率に与える影響について、上記特許文献1には記載されていない。言い換えれば、画素の透過率を考慮して、対向電極を有する基板の構成についても検討する必要があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例の電気光学装置は、第1基板と第2基板との間に挟持された電気光学物質を有する電気光学装置であって、前記第1基板は、複数の画素電極を有し、前記第2基板は、第1透光性導電層と、前記第1透光性導電層の前記複数の画素電極と対向する第1領域に配置された第2透光性導電層と、前記第1透光性導電層と前記第2透光性導電層との間に配置された第1絶縁膜と、を有し、前記第2基板の前記第1領域を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲でほぼフラットとなるように、前記第1透光性導電層、前記第1絶縁膜、前記第2透光性導電層の膜厚がそれぞれ設定されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、複数の画素電極に対向する第2基板側の第1領域を透過する光の分光分布が可視光波長範囲でほぼフラットになると、フラットでない場合に比べて実質的に第1領域つまり表示領域を透過する光の透過率が向上する。つまり、明るい表示が可能な電気光学装置を提供できる。
なお、本明細書において「分光分布が可視光波長範囲でほぼフラットとなる」とは、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において、透過光の透過率が90%以上となっていることを含む。また、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において透過率が95%以上となっていることが好ましく、98%以上となっていることがより好ましい。
【0010】
[適用例2]上記適用例の電気光学装置において、前記第1透光性導電層は、前記第1領域の外側に第2領域を有し、前記第2領域を透過する紫外光の透過率が85%以上となるように、前記第1透光性導電層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、第1領域の外側の第2領域に、紫外線硬化型のシール材を配置して第1基板と第2基板とを接合させたときに、第2基板の第2領域は、紫外光の透過率が85%以上となっているので、当該シール材を十分に硬化させることができる。
言い換えれば、第1領域に含まれる表示領域における明るい表示と、第2領域における紫外光の透過率の確保とを両立させることができる。
なお、本明細書において「紫外光」とは、波長が350nm以上400nm未満の光を指す。
【0011】
[適用例3]本適用例の他の電気光学装置は、第1基板と第2基板との間に挟持された電気光学物質を有する電気光学装置であって、前記第1基板は、複数の画素電極を有し、前記第2基板は、第1透光性導電層と、前記第1透光性導電層の前記複数の画素電極と対向する第1領域に配置された第2透光性導電層および第3透光性導電層と、前記第1透光性導電層と前記第2透光性導電層との間に配置された第1絶縁膜と、前記第2透光性導電層と前記第3透光性導電層との間に配置された第2絶縁膜と、を有し、前記第2基板の前記第1領域を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲でほぼフラットとなるように、前記第1透光性導電層、前記第1絶縁膜、前記第2透光性導電層、前記第2絶縁膜、前記第3透光性導電層の膜厚がそれぞれ設定されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、第1領域における薄膜の積層構造を第1透光性導電層、第1絶縁膜、第2透光性導電層とする場合に比べて、可視光波長範囲における分光分布をよりフラットな状態とすることができる。つまり、より明るい表示が可能な電気光学装置を提供できる。
【0013】
[適用例4]上記適用例の他の電気光学装置において、前記第1透光性導電層は、前記第1領域の外側に第2領域を有し、前記第2領域には、前記第1透光性導電層、前記第2透光性導電層、前記第3透光性導電層が順に積層されており、前記第2基板の前記第2領域を透過する紫外光の透過率が85%以上となるように、前記第1透光性導電層、前記第2透光性導電層、前記第3透光性導電層の膜厚がそれぞれ設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、第1領域から第2領域に亘って、第1透光性導電層、第1絶縁膜、第2透光性導電層、第2絶縁膜、第3透光性導電層の積層構造を維持する場合に比べて、第2領域における紫外光の透過率を容易に85%以上とすることができる。
【0014】
[適用例5]本適用例の電子機器は、上記適用例の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
この構成によれば、明るく見栄えのよい表示が可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は第1実施形態の液晶装置の構成を示す概略平面図、(b)は(a)のH−H’線で切った概略断面図。
【図2】第1実施形態の液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】第1実施形態の液晶装置における画素の配置を示す概略平面図。
【図4】(a)は画素における薄膜トランジスターと信号線の配置を示す概略平面図、(b)は画素における蓄積容量の一対の透光性電極と画素電極の配置を示す概略平面図。
【図5】図4のA−A’線で切った画素の構造を示す概略断面図。
【図6】図3のB−B’線で切った画素の構造を示す概略断面図。
【図7】第1実施形態における液晶装置の対向基板の構成を示す概略図。
【図8】第2実施形態の液晶装置における対向基板の構成を示す概略図。
【図9】素子基板の開口領域における透過光の分光分布を示すグラフ。
【図10】(a)および(b)は実施例の対向基板における透光性導電層や絶縁膜の膜厚を示す表、(c)は比較例の対向基板における透光性導電層や絶縁膜の膜厚を示す表。
【図11】実施例1〜3、比較例1の対向基板における透過光の分光分布を示すグラフ。
【図12】実施例4〜6、比較例1の対向基板における透過光の分光分布を示すグラフ。
【図13】実施例4、比較例2、比較例3の対向基板における透過光の分光分布を示すグラフ。
【図14】電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図。
【図15】変形例の液晶装置における素子基板の構造を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0017】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0018】
(第1実施形態)
<液晶装置>
まず、本実施形態の電気光学装置としての液晶装置について、図1および図2を参照して説明する。図1(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は同図(a)のH−H’線で切った概略断面図、図2は液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0019】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の電気光学装置としての液晶装置100は、対向配置された第1基板としての素子基板10および第2基板としての対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された電気光学物質としての液晶層50とを有する。素子基板10および対向基板20は、透明な例えば石英基板やガラス基板などが用いられている。
【0020】
素子基板10は対向基板20よりも一回り大きく、両基板間に配置されたシール材40を介して接合されている。シール材40には注入口が形成されており、例えば真空注入法により注入口から正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50を構成している。一対の基板間への液晶の注入(充填)は、真空注入法に限らない。例えば、一対の基板のうちの一方の基板にシール材40を額縁状に配置し、配置されたシール材40を土手として、減圧下でその内側に所定量の液晶を滴下する。そして、同じく減圧下で一方の基板と他方の基板と貼り合わせるODF(One Drop Fill)方式を採用してもよい。
シール材40は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材40には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0021】
額縁状に配置されたシール材40の内側には、同じく額縁状に遮光膜21が設けられている。遮光膜21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、遮光膜21の内側が表示領域Eとなっている。表示領域Eには、マトリックス状に画素Pが複数配置されている。表示領域Eは、表示に寄与する有効な複数の画素Pを囲むように配置された複数のダミー画素を含んでいるとしてもよい。なお、図1では図示省略したが、表示領域Eにおいても複数の画素Pを平面的に区分する遮光部が設けられている。
【0022】
素子基板10の1辺部に沿ったシール材40との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材40の内側に検査回路103が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材40の内側に走査線駆動回路102が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部のシール材40の内側には、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続用端子104に接続されている。
以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。
【0023】
図1(b)に示すように、素子基板10の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた光透過性を有する画素電極15およびスイッチング素子としての薄膜トランジスター(TFT;Thin Film Transistor、以下、TFTとも称する)30と、信号配線と、複数の画素電極15を覆う配向膜18とが形成されている。
また、TFT30における半導体層に光が入射して光リーク電流が流れ、不適切なスイッチング動作となることを防ぐ遮光構造が採用されている。
【0024】
対向基板20の液晶層50側の表面には、遮光膜21と、これを覆うように成膜された層間絶縁膜22と、少なくとも表示領域Eに亘って層間絶縁膜22を覆うように設けられた対向電極23と、対向電極23を覆う配向膜24とが設けられている。
【0025】
遮光膜21は、図1(a)に示すように平面的にデータ線駆動回路101や走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置において額縁状に設けられている。これにより対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0026】
層間絶縁膜22は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して遮光膜21を覆うように設けられている。また、層間絶縁膜22は、遮光膜21によって基板上に生ずる凹凸を緩和する平坦化層としても機能している。このような層間絶縁膜22の形成方法としては、例えばプラズマCVD法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0027】
対向電極23は、例えばITOなどの透明導電膜(透光性導電層)からなり、層間絶縁膜22を覆うと共に、図1(a)に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
【0028】
画素電極15を覆う配向膜18および対向電極23を覆う配向膜24は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。例えば、ポリイミドなどの有機材料を成膜して、その表面をラビングすることにより、正の誘電異方性を有する液晶分子に対して略水平配向処理が施されたものや、SiOx(酸化シリコン)などの無機材料を気相成長法を用いて成膜して、負の誘電異方性を有する液晶分子に対して略垂直配向処理が施されたものが挙げられる。
【0029】
図2に示すように、液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する信号線としての複数の走査線3aおよび複数のデータ線6aと、走査線3aに対して平行する容量線3bとを有する。
【0030】
走査線3aとデータ線6aとにより区分された領域に、画素電極15と、TFT30と、蓄積容量16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0031】
走査線3aはTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30のソースに電気的に接続されている。画素電極15はTFT30のドレインに電気的に接続されている。
データ線6aはデータ線駆動回路101(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路101から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは走査線駆動回路102(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路102から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。データ線駆動回路101からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路102は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
【0032】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極15に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極15を介して液晶層50に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極15と液晶層50を介して対向配置された対向電極23との間で一定期間保持される。
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極15と対向電極23との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量16が接続されている。蓄積容量16は、TFT30のドレインと容量線3bとの間に設けられている。詳しくは後述するが、本実施形態では、蓄積容量16を構成する一対の透光性電極のうちの一方が容量線3bとして機能している。
【0033】
なお、図1(a)に示した検査回路103には、データ線6aが接続されており、液晶装置100の製造過程において、上記画像信号を検出することで液晶装置100の動作欠陥などを確認できる構成となっているが、図2の等価回路では省略している。また、検査回路103は、上記画像信号をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング回路、データ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して供給するプリチャージ回路を含むものとしてもよい。
【0034】
このような液晶装置100は透過型であって、画素Pが非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードや、非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードの光学設計が採用される。光学設計に応じて、光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が配置されて用いられる。
【0035】
次に、画素Pの平面的な配置と構造について、図3〜図6を参照して説明する。図3は液晶装置における画素の配置を示す概略平面図、図4(a)は画素における薄膜トランジスターと信号線の配置を示す概略平面図、同図(b)は画素における蓄積容量の一対の透光性電極と画素電極の配置を示す概略平面図、図5は図4のA−A’線で切った画素の構造を示す概略断面図、図6は図3のB−B’線で切った画素の構造を示す概略断面図である。
【0036】
図3に示すように、液晶装置100における画素Pは、例えば平面的に略四角形(略正方形)の開口領域を有する。開口領域は、X方向とY方向とに延在し格子状に設けられた遮光性の非開口領域により囲まれている。
【0037】
X方向に延在する非開口領域には、図2に示した走査線3aが設けられている。走査線3aは遮光性の導電部材が用いられており、走査線3aによって非開口領域の少なくとも一部が構成されている。
【0038】
同じく、Y方向に延在する非開口領域には、図2に示したデータ線6aが設けられている。データ線6aも遮光性の導電部材が用いられており、これらによって非開口領域の少なくとも一部が構成されている。
【0039】
非開口領域は、素子基板10側に設けられた上記信号線類によって構成されるだけでなく、対向基板20側において格子状にパターニングされた遮光膜21によっても構成されている。
【0040】
非開口領域の交差部付近には、図2に示したTFT30が設けられている。遮光性を有する非開口領域の交差部付近にTFT30を設けることにより、TFT30の光誤動作を防止すると共に、開口領域における開口率を確保している。詳しい画素Pの構造については後述するが、交差部付近にTFT30を設ける関係上、交差部付近の非開口領域の幅は、他の部分に比べて広くなっている。
【0041】
次に、図4〜図6を参照して画素Pの画素回路における薄膜トランジスターなどの各構成要素について説明する。
図4に示すように、画素Pは、走査線3aとデータ線6aの交差部に設けられたTFT30を有している。TFT30は、データ線側ソース・ドレイン領域30sと、チャネル領域30cと、画素電極側ソース・ドレイン領域30dと、データ線側ソース・ドレイン領域30sとチャネル領域30cとの間に設けられた接合領域30eと、チャネル領域30cと画素電極側ソース・ドレイン領域30dとの間に設けられた接合領域30fとを有するLDD(Lightly Doped Drain)構造の半導体層30aを有している。半導体層30aは上記交差部を通過して、走査線3aと重なるように配置されている。
【0042】
走査線3aはデータ線6aとの交差部において、X,Y方向に拡張された平面視で四角形の拡張部を有している。当該拡張部に平面的に重なると共に接合領域30fおよび画素電極側ソース・ドレイン領域30dと重ならない開口部を有する折れ曲がった形状のゲート電極30gが設けられている。
【0043】
ゲート電極30gは、Y方向に延在した部分が平面的にチャネル領域30cと重なっている。また、チャネル領域30cと重なった部分から折り曲げられてX方向に延在し、互いに対向する部分がそれぞれ走査線3aの拡張部との間に設けられたコンタクトホールCNT3,CNT4によって、走査線3aと電気的に接続している。
【0044】
コンタクトホールCNT3,CNT4は、平面視でX方向が長い矩形状(長方形)であって、半導体層30aのチャネル領域30cと接合領域30fとに沿って接合領域30fを挟むように両側に設けられている。
【0045】
データ線6aは、Y方向に延在すると共に、走査線3aとの交差部において同じく四角形の拡張部を有し、当該拡張部からX方向に突出した突出部6cに設けられたコンタクトホールCNT1によってデータ線側ソース・ドレイン領域30sと電気的に接続している。コンタクトホールCNT1を含む部分がソース電極31となっている。一方、画素電極側ソース・ドレイン領域30dの端部にもコンタクトホールCNT2が設けられており、コンタクトホールCNT2を含む部分がドレイン電極32となっている。
走査線3aの延在方向(X方向)において、コンタクトホールCNT2に隣り合うようにコンタクトホールCNT6,CNT5,CNT7が設けられている。コンタクトホールCNT2とコンタクトホールCNT5とは島状に設けられた第1中継電極6bを介して電気的に接続されている。コンタクトホールCNT6とコンタクトホールCNT7とは同じく島状に設けられた第2中継電極7bを介して電気的に接続されている。
【0046】
図4(b)に示すように、画素電極15は、前述した開口領域(図3参照)と平面的に重なると共に外縁部が非開口領域(図3参照)に掛かるように配置されている。また、画素電極15はコンタクトホールCNT7との電気的な接続を図るための突出部15aを有している。つまり、画素電極15は画素Pごとに設けられた略四角形(略正方形)の島状となっている。
蓄積容量16は、一対の透光性電極としての第1電極16aと第2電極16cとを有している。第1電極16aは前述した開口領域(図3参照)において画素電極15と平面的に重なるように画素Pごとに設けられている。第1電極16aはコンタクトホールCNT6との電気的な接続を図るための突出部16aaを有している。つまり、第1電極16aは、画素電極15と同じく略四角形(略正方形)の島状となっている。
【0047】
これに対して、第2電極16cは、X方向およびY方向にマトリックス状に配置された複数の画素Pに跨るように設けられている。また、第1電極16aが電気的に接続されるコンタクトホールCNT6や画素電極15が電気的に接続されるコンタクトホールCNT7と第2電極16cとが重ならないように開口された開口部16chを有している。つまり、第2電極16cは、表示領域Eに亘るように設けられ、複数の画素Pに共通する容量線3bの機能を有している。第2電極16cの一部が表示領域Eの外側に引き出されて、固定電位が供給される配線に電気的に接続されている。
【0048】
図5に示すように、素子基板10上には、まず走査線3aが形成される。走査線3aは、半導体層30aを遮光する遮光膜を兼ねており、例えばAl、Ti、Cr、W、Ta、Moなどの金属のうちの少なくとも1つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらが積層されたものを用いることができ、遮光性を有している。
【0049】
走査線3aを覆うように例えば酸化シリコンなどからなる下地絶縁膜10aが形成され、下地絶縁膜10a上に島状に半導体層30aが形成される。半導体層30aは例えば多結晶シリコン膜からなり、不純物イオンが注入されて、前述したデータ線側ソース・ドレイン領域30s、接合領域30e、チャネル領域30c、接合領域30f、画素電極側ソース・ドレイン領域30dを有するLDD構造が形成されている。
【0050】
半導体層30aを覆うように例えば酸化シリコンなどからなる第1絶縁膜(ゲート絶縁膜)11aが形成される。さらに第1絶縁膜11aを挟んでチャネル領域30cに対向する位置にゲート電極30gが形成される。ゲート電極30gは例えば多結晶シリコン膜を用いて形成することができ、同時に下地絶縁膜10aと第1絶縁膜11aとを貫通して走査線3a(拡張部)とゲート電極30gとを電気的に接続するコンタクトホールCNT3,CNT4(図示省略)も形成される。
【0051】
ゲート電極30gと第1絶縁膜11aとを覆うようにして例えば酸化シリコンなどからなる第2絶縁膜11bが形成される。半導体層30aのデータ線側ソース・ドレイン領域30sに重なる第1絶縁膜11aと第2絶縁膜11bとを貫通するコンタクトホールCNT1が形成される。同じく、半導体層30aの画素電極側ソース・ドレイン領域30dに重なる第1絶縁膜11aと第2絶縁膜11bとを貫通するコンタクトホールCNT2が形成される。続いて、第2絶縁膜11bを覆うように例えばAlなどの遮光性の金属からなる導電膜を成膜してパターニングすることにより、データ線側ソース・ドレイン領域30sにコンタクトホールCNT1を介して電気的に接続されるデータ線6aが形成される。同時に、画素電極側ソース・ドレイン領域30dにコンタクトホールCNT2を介して電気的に接続される第1中継電極6bが形成される。
【0052】
続いて、データ線6aおよび第1中継電極6bを覆うように第1層間絶縁膜12が形成される。第1層間絶縁膜12は、例えばシリコンの酸化物や窒化物あるいは酸窒化物からなり、TFT30が設けられた領域を覆うことによって生ずる表面の凹凸を平坦化する平坦化処理が施される。平坦化処理の方法としては、例えば化学的機械的研磨処理(Chamical Mechanical Polishing;CMP処理)やスピンコート処理などが挙げられる。
【0053】
第1中継電極6bと重なる位置に第1層間絶縁膜12を貫通するコンタクトホールCNT5が形成される。このコンタクトホールCNT5を被覆すると共に第1層間絶縁膜12を覆うように例えばAlなどの遮光性の金属からなる導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、配線7aと、コンタクトホールCNT5を介して第1中継電極6bに電気的に接続される第2中継電極7bとが形成される。
配線7aは、平面的にTFT30の半導体層30aやデータ線6aと重なるように形成され、固定電位が与えられてシールド層として機能するものである。
【0054】
配線7aと第2中継電極7bとを覆うように第2層間絶縁膜13が形成される。第2層間絶縁膜13も、例えばシリコンの酸化物や窒化物あるいは酸窒化物を用いて形成することができ、CMP処理などの平坦化処理が施される。
【0055】
次に、第2中継電極7bと重なる位置に第2層間絶縁膜13を貫通するコンタクトホールCNT6が形成される。このコンタクトホールCNT6を被覆すると共に第2層間絶縁膜13を覆うように、例えばITOなどの透明導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、突出部16aaを有する第1電極16aが形成される。第1電極16aは突出部16aaおよびコンタクトホールCNT6を介して第2中継電極7bと電気的に接続される。
【0056】
第1電極16aのうち少なくとも第2電極16cと対向する部分に誘電体層16bが成膜される。誘電体層16bとしては、シリコン窒化膜や、酸化ハウニュウム(HfO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)などの単層膜、またはこれらの単層膜のうち少なくとも2種の単層膜を積層した多層膜を用いることができる。厚みは、電気容量を考慮して20nm〜30nmとする。誘電体層16bは、このように極薄い薄膜であり、可視光に対して高い透明性を有している。
【0057】
誘電体層16bを覆うように例えばITOなどの透明導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、容量線3bとして機能する第2電極16cが形成される。第2電極16cはパターニングされた誘電体層16bの側面を含めた表面を覆うように形成される。また、前述したように少なくとも複数の画素Pが含まれる表示領域Eに亘って形成されると共に、第2中継電極7bと平面的に重なる部分に開口部16chが形成される。
これによって、誘電体層16bを挟んで第1電極16aと第2電極16cとが対向配置され、透光性の蓄積容量16が構成される。
【0058】
蓄積容量16を覆って第3層間絶縁膜14が形成される。第3層間絶縁膜14も例えばシリコンの酸化物を用いて形成することができ、CMP処理などの平坦化処理を施してもよい。加えて、この後にフォトリソグラフィ法を用いて形成される画素電極15の形成工程で、第3層間絶縁膜14が変質したり、膜厚が変動することが無いように、化学的に安定なボロンがドープされた酸化シリコン膜で覆うことが好ましい。つまり、第3層間絶縁膜14は、蓄積容量16側の第1酸化シリコン膜と、第1酸化シリコン膜に積層され、ボロンがドープされた第2酸化シリコン膜とから構成されている。
【0059】
次に、第2中継電極7bと重なる位置に第2層間絶縁膜13および第3層間絶縁膜14を貫通するコンタクトホールCNT7が形成される。コンタクトホールCNT7を被覆すると共に、第3層間絶縁膜14を覆う例えばITOなどの透明導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、コンタクトホールCNT7を介して第2中継電極7bに電気的に接続される画素電極15が形成される。
【0060】
このような素子基板10の配線構造によれば、TFT30のドレイン電極32は、第1中継電極6b、コンタクトホールCNT5、第2中継電極7b、コンタクトホールCNT7を介して画素電極15と電気的に接続される。また、第1中継電極6b、コンタクトホールCNT5、第2中継電極7b、コンタクトホールCNT6を介して蓄積容量16の第1電極16aと電気的に接続される。
【0061】
図6に示すように、画素Pの開口領域には、透明な素子基板10上において順に形成された、下地絶縁膜10a、第1絶縁膜11a、第2絶縁膜11b、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜13、透光性の蓄積容量16、第3層間絶縁膜14、画素電極15が設けられている。
【0062】
素子基板10における下地絶縁膜10a、第1絶縁膜11a、第2絶縁膜11b、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜13などの絶縁膜は、前述したようにシリコンの酸化物(酸化シリコン膜)または窒化物あるいは酸窒化物からなるため、素子基板10を構成するところの例えば石英基板とほぼ同じ屈折率(可視光領域で1.4〜1.5)を有している。したがって、屈折率がほぼ同じであるため、これらの層(膜)を透過する可視光は、層(膜)の界面で反射したり、屈折したりすることがほとんどないので、その光強度(透過率)が減衰し難い。
これに対して、蓄積容量16から画素電極15までの構造は、透明導電膜(ITOならば可視光波長領域で屈折率が1.5〜1.9)からなる第1電極16aと第2電極16cとの間に誘電体層16bが挟まれ、同じく透明導電膜からなる第2電極16cと画素電極15との間に第3層間絶縁膜14が挟まれた構造となっている。つまり、透明導電膜の間に透明導電膜に対して屈折率が異なる(低い)誘電体層16bや第3層間絶縁膜14を挟んだ構造となっているので、これらの層(膜)を透過する可視光は、層(膜)の界面で反射したり、屈折したりして、その光強度(透過率)が減衰するおそれがある。なお、誘電体層16bは、前述したように電気容量を確保する観点から膜厚を20nm〜30nmとしている。この膜厚の範囲では、開口領域における光の透過率に対してほとんど影響を及ぼさないので、無視することができる。
【0063】
本実施形態では、素子基板10の開口領域を透過する光(透過光)の分光分布が、少なくとも赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)に対応してそれぞれ透過率のピークを有するように、画素電極15、一対の透光性電極としての第1電極16aおよび第2電極16c、第3層間絶縁膜14のそれぞれの膜厚が設定されている。具体的には、画素電極15、第1電極16a、第2電極16cは、いずれもITO膜を用いて膜厚が140nmとなるように形成されている。また、第3層間絶縁膜14は、第1酸化シリコン膜とボロンがドープされた第2酸化シリコン膜とからなり、膜厚が175nmとなるように形成されている。
【0064】
また、液晶層50を挟んで素子基板10に対向配置される対向基板20は、前述した遮光膜21や層間絶縁膜22に加えて、透光性導電層と絶縁膜とが積層された構造となっており、表示領域Eを透過する光(透過光)の分光分布が、可視光波長範囲(400nm〜700nm)でほぼフラットとなるように、上記透光性導電層および上記絶縁膜の膜厚がそれぞれ設定されている。以降、対向基板20の具体的な構成について、図7を参照して説明する。
【0065】
図7は、第1実施形態における液晶装置の対向基板の構成を示す概略図である。なお、図7では、対向基板20に設けられた遮光膜21や層間絶縁膜22の図示を省略している。図7に示すように、対向基板20は、第1領域E1と、第1領域E1を囲むように設けられた第2領域E2とを有している。第1領域E1は、素子基板10における複数の画素電極15がマトリックス状に配置された領域に対向する部分である。つまり、第1領域E1は、少なくとも表示領域Eを含むものである。第1領域E1を囲む第2領域E2は、シール材40が配置される領域を含んでいる。
【0066】
対向基板20の液晶層50に面する側には、第1領域E1と第2領域E2とに跨って例えばITOなどの透明導電膜からなる第1透光性導電層23aが設けられている。第1透光性導電層23aは層間絶縁膜22(図1(b)参照)を覆って設けられている。第1透光性導電層23aの第1領域E1に例えば酸化シリコン膜からなる透光性の第1絶縁膜23bが設けられている。また、第1絶縁膜23bに対して例えばITOなどの透明導電膜からなる第2透光性導電層23cが積層されている。第2透光性導電層23cは第1領域E1内において例えばコンタクトホールなどの接続部を介して第1透光性導電層23aに電気的に接続されている。したがって、第1絶縁膜23bを挟んで対向配置された第1透光性導電層23aと第2透光性導電層23cとを含む積層体23Fが実質的に対向電極23(図1(b)参照)として機能するものである。
配向膜24は、第1領域E1と第2領域E2とに跨って、第1透光性導電層23aおよび第2透光性導電層23cを覆うように設けられている。なお、図7では詳細な図示を省略したが、配向膜24は積層体23Fの側面部分も覆っている。
【0067】
このように第1領域E1に屈折率が異なる透光性導電層と絶縁膜とが積層された積層体23Fを配置することで、第1透光性導電層23aだけを設けた場合に比べて、薄膜の光干渉作用により、第1領域E1を透過する光の可視光波長範囲における透過率を高めることができる。その一方で、第2領域E2に第1透光性導電層23aを残し、第1絶縁膜23bおよび第2透光性導電層23cが無い状態とすることで、第1領域E1に比べて第2領域E2における紫外光の透過率を高めることができる。
【0068】
上記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)素子基板10は画素Pの開口領域に透光性の蓄積容量16と画素電極15とを有し、開口領域を透過する光の分光分布が、少なくとも赤、緑、青の各波長範囲に対応して透過率のピークを有するように、画素電極15、一対の透光性電極としての第1電極16aおよび第2電極16c、第3層間絶縁膜14のそれぞれの膜厚が設定されている。これに加えて、液晶層50を挟んで素子基板10に対向配置される対向基板20は、第1領域E1において屈折率が異なる透光性導電層と絶縁膜とが順に積層された3層構造の積層体23Fを有している。そして、第1領域E1を透過する光の可視光波長領域における分光分布がほぼフラットとなるように、第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23cの膜厚がそれぞれ設定されている。ゆえに、透過光の透過率が高い複数の画素Pを備え、光源から発せられる光の利用効率を高め、明るい表示が可能な液晶装置100を提供することができる。
(2)対向基板20の第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aが残され、第1絶縁膜23bおよび第2透光性導電層23cが無い状態となっている。これにより第1領域E1に比べて第2領域E2における紫外光の透過率が高い状態となっているので、第2領域E2に例えば紫外線硬化型のシール材40が配置されても、十分に硬化させることができる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の液晶装置について、図8を参照して説明する。第2実施形態の液晶装置は、第1実施形態に対して、対向基板20の構成を異ならせたものである。したがって、第1実施形態の液晶装置100と同じ構成には同じ符号を付して詳細の説明は省略する。図8は第2実施形態の液晶装置における対向基板の構成を示す概略図である。
【0070】
図8に示すように、第2実施形態における対向基板20は、第1実施形態と同様に、第1領域E1と、第1領域E1を囲む第2領域E2とを有している。第1領域E1は、素子基板10における複数の画素電極15がマトリックス状に配置された領域に対向する部分である。つまり、第1領域E1は、少なくとも表示領域Eを含むものである。
【0071】
対向基板20の液晶層50に面する側には、第1領域E1と第2領域E2とに跨って例えばITOなどの透明導電膜からなる第1透光性導電層23aが設けられている。第1透光性導電層23aの第1領域E1に例えば酸化シリコン膜からなる透光性の第1絶縁膜23bが設けられている。また、第1絶縁膜23bに対して例えばITOなどの透明導電膜からなる第2透光性導電層23cと、例えば酸化シリコン膜からなる第2絶縁膜23dと、例えばITOなどの透明導電膜からなる第3透光性導電層23eとが順に積層されている。
第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eが順に積層された積層体23hが配置されている。
第2透光性導電層23cおよび第3透光性導電層23eは第1領域E1内において例えばコンタクトホールなどの接続部を介して第1透光性導電層23aに電気的に接続されている。したがって、順に積層された第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23c、第2絶縁膜23d、第3透光性導電層23eとを含む積層体23Gと上記積層体23hとが実質的に対向電極23(図1(b)参照)として機能するものである。
配向膜24は、第1領域E1と第2領域E2とに跨って、第3透光性導電層23eを覆うように設けられている。また、図8には詳細な図示を省略したが、配向膜24は積層体23Gや積層体23hの側面部分も覆うように設けられている。
そして、対向基板20の第1領域E1を透過する光の可視光波長領域の分光分布がほぼフラットとなるように、第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23c、第2絶縁膜23d、第3透光性導電層23eのそれぞれの膜厚が設定されている。
【0072】
上記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)第1領域E1に屈折率が異なる透光性導電層と絶縁膜とが順に積層された5層構造の積層体23Gを配置することで、第1透光性導電層23aだけを設けた場合に比べて、あるいは第1実施形態に比べて、薄膜の光干渉作用により、第1領域E1を透過する光の透過率をより高めることができる。その一方で、第2領域E2には第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eが順に積層された積層体23hを残し、第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dが無い状態とすることで、第1領域E1に比べて第2領域E2における紫外光の透過率を高めることができる。つまり、第2領域E2に例えば紫外線硬化型のシール材40が配置されても、十分に硬化させることができる。
【0073】
以降、具体的な実施例や比較例を挙げて説明する。図9は素子基板の開口領域における透過光の分光分布を示すグラフ、図10(a)および(b)は実施例の対向基板における透光性導電層や絶縁膜の膜厚を示す表、同図(c)は比較例の対向基板における透光性導電層や絶縁膜の膜厚を示す表、図11は実施例1〜3、比較例1の対向基板における透過光の分光分布を示すグラフ、図12は実施例4〜6、比較例1の対向基板における透過光の分光分布を示すグラフ、図13は実施例4、比較例2、比較例3の対向基板における透過光の分光分布を示すグラフである。
【0074】
図9に示すように、素子基板10の開口領域における透過光の分光分布は、少なくとも赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)のそれぞれにおいて、透過率のピークを有している。言い換えれば、当該透過率のピークを有するように、蓄積容量16のITO膜からなる第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚がそれぞれ140nmに設定され、第2電極16cと画素電極15の間の第3層間絶縁膜14の膜厚が175nmに設定されている。第1電極16aと第2電極16cとの間にも誘電体層16bが設けられている。したがって、開口領域において屈折率が異なる透明導電膜(透光性導電層)と絶縁膜とが順に積層された状態となっており、薄膜の光干渉作用により、可視光波長範囲に亘って高い透過率が得られている。なお、図9における分光分布において、縦軸は、赤の波長範囲(600nm〜700nm)における透過率のピークを「1」として指数化されている。
【0075】
以下、図10(a)〜(c)を参照して、対向基板20における実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例3の透光性導電層、絶縁膜について説明する。なお、実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例3において、対向基板20には酸化シリコン(SiO2)からなる無機の配向膜24が設けられ、その膜厚はいずれも75nmに設定されている。
(実施例1)
実施例1では、第1領域E1に第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23cが順に積層されている。第1透光性導電層23aおよび第2透光性導電層23cはITO膜からなり、膜厚がそれぞれ20nmに設定されている。第1絶縁膜23bは酸化シリコン膜からなり、膜厚が80nmに設定されている。
第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aが配置されている。
【0076】
(実施例2)
実施例2は、実施例1に対して第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23cの膜厚をそれぞれ10%ずつ薄くしたものである。すなわち、第1透光性導電層23aおよび第2透光性導電層23cは膜厚がそれぞれ18nmに設定されている。第1絶縁膜23bは膜厚が72nmに設定されている。
【0077】
(実施例3)
実施例3は、実施例1に対して第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23cの膜厚をそれぞれ10%ずつ厚くしたものである。すなわち、第1透光性導電層23aおよび第2透光性導電層23cは膜厚がそれぞれ22nmに設定されている。第1絶縁膜23bは膜厚が88nmに設定されている。
【0078】
(実施例4)
実施例4では、第1領域E1に第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23c、第2絶縁膜23d、第3透光性導電層23eが順に積層されている。第1透光性導電層23aおよび第3透光性導電層23eはITO膜からなり、膜厚はそれぞれ20nmに設定されている。第2透光性導電層23cはITO膜からなり、膜厚が40nmに設定されている。第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dは酸化シリコン膜からなり、膜厚がそれぞれ50nmに設定されている。
第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aと第2透光性導電層23cと第3透光性導電層23eとが配置されている。つまり、積層体23hの膜厚は80nmとなる。
【0079】
(実施例5)
実施例5は、実施例4に対して、第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23c、第2絶縁膜23d、第3透光性導電層23eのそれぞれの膜厚を10%ずつ薄くしたものである。すなわち、第1透光性導電層23aおよび第3透光性導電層23eは膜厚がそれぞれ18nmに設定されている。第2透光性導電層23cは膜厚が36nmに設定されている。第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dは膜厚がそれぞれ45nmに設定されている。
第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aと第2透光性導電層23cと第3透光性導電層23eとが配置されている。つまり、積層体23hの膜厚は72nmとなる。
【0080】
(実施例6)
実施例6は、実施例4に対して、第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23c、第2絶縁膜23d、第3透光性導電層23eのそれぞれの膜厚を10%ずつ厚くしたものである。すなわち、第1透光性導電層23aおよび第3透光性導電層23eは膜厚がそれぞれ22nmに設定されている。第2透光性導電層23cは膜厚が44nmに設定されている。第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dは膜厚がそれぞれ55nmに設定されている。
第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aと第2透光性導電層23cと第3透光性導電層23eとが配置されている。つまり、積層体23hの膜厚は88nmとなる。
【0081】
(比較例1)
比較例1は、第1領域E1と第2領域E2とに亘ってITO膜からなる第1透光性導電層23aが配置され、膜厚が140nmに設定されている。
【0082】
(比較例2)
比較例2は、第1領域E1に第1透光性導電層23a、第1絶縁膜23b、第2透光性導電層23c、第2絶縁膜23d、第3透光性導電層23eが順に積層されている。第1透光性導電層23aおよび第3透光性導電層23eはITO膜からなり、膜厚はそれぞれ40nmに設定されている。第2透光性導電層23cはITO膜からなり、膜厚が80nmに設定されている。第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dは酸化シリコン膜からなり、膜厚がそれぞれ50nmに設定されている。第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aが配置されている。つまり、比較例2は、実施例4に対して、第1領域E1における第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eの膜厚をそれぞれ倍に設定し、第2領域E2に第1透光性導電層23aだけを配置したものである。
【0083】
(比較例3)
比較例3は、比較例2に対して、ITO膜からなる第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eの膜厚をそれぞれ140nmに設定したものである。第1領域E1を囲む第2領域E2には、第1透光性導電層23aが配置されている。
【0084】
実施例1〜3は、上記第1実施形態に対応させた実施例であり、実施例4〜6は上記第2実施形態に対応させた実施例である。比較例1は上記第1実施形態の実施例1〜3と対比させる比較例である。比較例2および比較例3は、上記第2実施形態の実施例4〜6と対比させる比較例である。
【0085】
以下、実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例3について、第1領域E1と第2領域E2における透過光の分光分布を光学的なシミュレーションによって求めた。また、図11〜図13に示す分光分布のグラフは、比較例1における赤の波長範囲(600nm〜700nm)における透過率のピークの値を「1」として指数化したものである。なお、透過光の分光分布を求める光学的なシミュレーションは、各実施例および比較例の膜厚構成に相当するサンプル(試作品)の分光特性を実際に測定して得られた結果と比較して、シミュレーション結果の妥当性が確認されている。
【0086】
図11に示すように、実施例1の第1領域E1を透過する光の分光分布は、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において透過率が90%以上の数値を示し、500nm〜700nmの範囲で透過率が99%以上の値で安定しており、ほぼフラットな状態となっている。一方で実施例1の第1領域E1における紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、急激に透過率が低下している。ちなみに350nmでは、透過率が75%を下回っている。これに対して、実施例1の第2領域E2を透過する光の分光分布は、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において第1領域E1よりも透過率が低下するものの、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、透過率が85%を上回っており、第1領域E1よりも高い透過率となっている。
【0087】
実施例1に対して透光性導電層や絶縁膜の膜厚をそれぞれ10%薄くした実施例2は、第1領域E1を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において、透過率が95%以上の数値を示し、実施例1よりもさらにフラットな状態となっている。実施例2の第1領域E1における紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、実施例1と同様に急激に透過率が低下している。これに対して、実施例2の第2領域E2を透過する光の分光分布は、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において第1領域E1よりも透過率が低下するものの、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、透過率が90%を上回っており、第1領域E1よりも高い透過率となっている。
【0088】
実施例1に対して透光性導電層や絶縁膜の膜厚をそれぞれ10%厚くした実施例3は、第1領域E1を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において、透過率が実施例1よりもやや低下するものの85%以上の数値を示し、500nm〜700nmの波長範囲では透過率が98%以上の数値を示しフラットな状態となっている。実施例3の第1領域E1における紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、実施例1と同様に急激に透過率が低下している。これに対して、実施例3の第2領域E2を透過する光の分光分布は、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において第1領域E1よりも透過率が低下するものの、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、透過率が85%を上回っており、第1領域E1よりも高い透過率となっている。
実施例3は実施例1に比べて、第1領域E1における400nm〜450nmの波長範囲の光の透過率が低下しているものの、液晶装置100を後述する投射型表示装置における液晶ライトバルブとして用いる場合には、耐光性を考慮して紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)を含む例えば430nm未満の波長の光をカットして使用されるので、実用上は問題がないと言える。
【0089】
一方、第1領域E1および第2領域E2に膜厚が140nmの第1透光性導電層23aを配置した比較例1では、第1領域E1および第2領域E2を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において、透過率が85%以上の数値を示してはいるものの、赤の波長範囲(600nm〜700nm)で実施例1〜3に比べてやや透過率が低下している。また、青の波長範囲(400nm〜500nm)において実施例1や実施例2に比べて透過率が低下している。つまり、比較例1は実施例1〜3に比べて分光分布が可視光波長範囲(400nm〜700nm)において大きく変動しており、ほぼフラットな状態とは言い難い。
【0090】
上記第1実施形態の対向基板20における積層体23Fが適用された実施例1〜3によれば、第1透光性導電層23aおよび第2透光性導電層23cの膜厚を20nmに設定し、第1絶縁膜23bの膜厚を80nmに設定した上で、各膜厚の設定値に対して±10%の範囲で積層体23Fを形成すれば、第1領域E1の可視光波長範囲(400nm〜700nm)における分光分布をほぼフラットな状態とすることができる。また、第2領域E2の紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)の透過率を85%以上とすることができる。
【0091】
図12に示すように、実施例4および実施例4に対して積層体23Gの各薄膜の膜厚を10%薄くした実施例5は、第1領域E1を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において透過率が98%以上の数値を示し、且つ安定してフラットな状態となっている。一方で上記分光分布における紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、やはり急激に透過率が低下している。これに対して、実施例4および実施例5の第2領域E2を透過する光の分光分布は、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において第1領域E1よりも透過率が低下するものの、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、透過率が90%を上回っており、実施例1〜3よりも高い透過率となっている。
【0092】
また、実施例4に対して積層体23Gの各薄膜の膜厚を10%厚くした実施例6は、第1領域E1を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲(400nm〜700nm)における短波長側で透過率が実施例4や実施例5に比べてやや低下するものの、430nm〜700nmの波長範囲で98%以上の値を示して安定しており、フラットな状態となっている。上記分光分布における紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、やはり急激に透過率が低下している。一方、実施例6の第2領域E2を透過する光の分光分布は、可視光波長範囲(400nm〜700nm)において第1領域E1よりも透過率が低下するものの、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)では、透過率が90%を上回り、且つ実施例4や実施例5よりも高い透過率となっている。
したがって、実施例4〜6は、第1領域E1において400nm〜700nmの波長範囲で、比較例1は元より実施例1〜3よりも高い光の透過率が得られる。また、第2領域E2において350nm以上400nm未満の紫外光波長領域で、比較例1は元より実施例1〜3よりも高い光の透過率が得られる。
【0093】
図13に示すように、実施例4に対して、第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eの膜厚をそれぞれ倍にした比較例2では、第1領域E1の分光分布において可視光波長範囲のうち550nm〜700nmでは、透過率が98%以上で安定しているものの、550nm未満の波長範囲では急激に透過率が低下している。比較例2の第2領域E2の分光分布では、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)の透過率が85%を下回る部分がある。
【0094】
また、実施例4に対して、第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eの膜厚をそれぞれ140nmに設定した比較例3では、第1領域E1の分光分布において可視光波長範囲のうち青から緑の波長範囲(400nm〜600nm)では、90%以上の透過率が得られるものの、赤の波長範囲(600nm〜700nm)では、実施例4よりも透過率が低下しており安定していない。比較例3の第2領域E2の分光分布では、紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)の透過率が85%を下回っている。
すなわち、比較例2や比較例3は、実施例4よりも第1領域E1および第2領域E2における350nm〜700nmの透過光の透過率は低く、不安定な状態となっている。
【0095】
上記第2実施形態の対向基板20における積層体23Gが適用された実施例4〜6によれば、第1透光性導電層23aおよび第3透光性導電層23eの膜厚を20nmに設定し、第2透光性導電層23cの膜厚を40nmに設定し、第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dの膜厚を50nmに設定した上で、それぞれの膜厚設定に対して±10%の範囲で積層体23Gおよび積層体23hを形成すれば、第1領域E1の可視光波長範囲(400nm〜700nm)における分光分布をフラットな状態とすることができる。また、第2領域E2の紫外光波長範囲(350nm以上400nm未満)の透過率を90%以上とすることができる。
【0096】
(第3実施形態)
<電子機器>
図14は電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図である。図14に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0097】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0098】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0099】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。
ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。
ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0100】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0101】
液晶ライトバルブ1210は、上述した第1実施形態または第2実施形態の液晶装置が適用されたものである。当該液晶装置は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
【0102】
このような投射型表示装置1000によれば、素子基板10および対向基板20の表示領域Eにおいて透過光の透過率が高い当該液晶装置を液晶ライトバルブ1210,1220,1230として用いているので、偏光照明装置1100から発する光を有効に利用して明るい表示品位が実現されている。
【0103】
また、素子基板10および対向基板20の表示領域Eにおいて高い透過率が得られるということは、表示領域Eを透過する光の反射率が低下することを意味している。そうすると、反射した光が再び液晶層50を透過する確率が減るので、当該液晶装置を液晶ライトバルブ1210,1220,1230として用いたときの耐光性寿命(例えば液晶層50や配向膜18,24の光劣化)が改善される。
【0104】
なお、光源としての偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の分光分布における光強度のピーク波長に対して、画素Pを透過する光の透過率のピーク波長がほぼ合致するように、当該液晶装置における第1電極16a、第2電極16c、画素電極15、第3層間絶縁膜14の膜厚とその範囲をそれぞれ設定して用いることが好ましい。これによれば、光の利用効率をさらに高められる。なお、「ほぼ合致」とは、光源から発する色光の光強度のピーク波長に対して±5%以内の波長範囲に画素Pを透過する色光の透過率のピークが現れている状態を言う。
また例えば、青色光(B)の分光分布を430nmよりも波長が短い紫外光をカットして430nm〜500nmとし、当該液晶装置の耐光性寿命をさらに改善する場合には、当該波長範囲(430nm〜500nm)に透過率のピークが来るように、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15、第3層間絶縁膜14の膜厚とその範囲をそれぞれ設定する。
【0105】
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置および当該液晶装置を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0106】
(変形例1)上記第1実施形態および上記第2実施形態の対向基板20が適用される液晶装置における素子基板10の構造は、これに限定されない。図15は変形例の液晶装置における素子基板の構造を示す概略断面図である。詳しくは、図3に示したB−B’線に沿って切ったときの断面図である。例えば、図15に示すように、素子基板10の非開口領域において、データ線6aの上層に誘電体層60bを挟んだ一対の電極60a,60cからなる蓄積容量60を設ける構成としてもよい。この場合、例えばITO膜を用いて画素電極15を形成し、その膜厚を140nmまたは20nmとする。これにより、第1領域E1における可視光波長範囲(400nm〜700nm)の透過光の分光分布は、図11に示した比較例1の分光分布とほぼ同じ状態とすることができる。図9に示した素子基板10の分光分布と比べれば可視光波長範囲(400nm〜700nm)における透過率が低下するものの、本発明における対向基板20の構成を適用することによって、前述した特許文献1の電気光学装置よりも表示領域Eにおける高い光の透過率を実現できる。また、第2領域E2における紫外光の高い透過率を得ることができる。
さらには、上記第1実施形態および上記第2実施形態の対向基板20を適用可能な液晶装置は、透過型であることに限定されず、図15における画素電極15を例えばAlなどの光反射性を有する金属材料を用いて形成した反射型の液晶装置においても適用可能である。反射型の液晶装置における画素の光反射率(画素への入射光に対する画素からの反射光の強度の割り合い)を向上させることができる。
【0107】
(変形例2)上記第1実施形態および上記第2実施形態の対向基板20の構成は、これに限定されない。例えば、第1領域E1における透光性導電層と絶縁膜との積層構造は、第1実施形態の3層構造や第2実施形態の5層構造に限定されず、さらに屈折率が異なる透光性導電層と絶縁膜とを積層させた多層構造としてもよい。
【0108】
(変形例3)上記第1実施形態および上記第2実施形態の液晶装置における配向膜18,24は、酸化シリコンからなる無機配向膜であることに限定されない。ポリイミド樹脂などからなる有機配向膜を用いても本発明を適用することができる。また、シール材40が配置される第2領域E2において、配向膜18,24が配置されない構成としてもよい。特に有機配向膜を用いた場合、シール材40の材料選択によっては第2領域E2に有機配向膜を設けないほうが被接着物に対する接着性や密着性に優れる場合がある。
【0109】
(変形例4)素子基板10における蓄積容量16の一対の透光性電極である第1電極16aおよび第2電極16c、ならびに画素電極15は、透明導電膜としてITO膜を用いることに限定されず、IZO(Indium Zinc Oxide)を用いてもよい。同様に、対向基板20における第1透光性導電層23a、第2透光性導電層23c、第3透光性導電層23eもITO膜を用いることに限定されず、IZO(Indium Zinc Oxide)を用いてもよい。また、すべての透光性導電層を同一の透明導電膜で形成することに限定されず、少なくとも1つの透光性導電層を異なる透明導電膜を用いて形成してもよい。
【0110】
(変形例5)対向基板20の第1絶縁膜23bおよび第2絶縁膜23dは、酸化シリコン膜であることに限定されず、酸窒化シリコン膜であるとしてもよい。
【0111】
(変形例6)上記液晶装置におけるTFT30の半導体層30aは、走査線3aと重なるように配置されることに限定されない。例えば、データ線6aと重ねる配置や半導体層30aを途中で折り曲げて、走査線3aとデータ線6aとに重ねるように配置したとしても、素子基板10における蓄積容量16、第3層間絶縁膜14、画素電極15の構成を適用することができる。
【0112】
(変形例7)本発明を適用可能な電気光学装置は、液晶装置に限定されない。例えば、素子基板10の画素電極15上に発光層を含む機能層を設け、素子基板10と反対側に機能層から光を発するトップエミッション方式の有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置にも適用することができる。具体的には、対向基板20の対向電極23を陰極とし、素子基板10の機能層を覆うように対向基板20を配置して、対向基板20を封止基板として用いる構成が挙げられる。
【0113】
(変形例8)上記液晶装置100が適用される電子機器は、上記実施形態の投射型表示装置1000に限定されない。例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。また、適用に際しては、透過型の上記実施形態の液晶装置を照明する光源の光の分光分布における少なくとも赤、緑、青の光強度のピーク波長に対して、画素Pを透過する光の透過率のピークが適合するように、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15、第3層間絶縁膜14の膜厚とその範囲をそれぞれ設定して用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0114】
10…第1基板としての素子基板、15…画素電極、20…第2基板としての対向基板、23…対向電極、23a…第1透光性導電層、23b…第1絶縁膜、23c…第2透光性導電層、23d…第2絶縁膜、23e…第3透光性導電層、24…配向膜、50…電気光学物質としての液晶層、100…液晶装置、1000…電子機器としての投射型表示装置、E…表示領域、E1…第1領域、E2…第2領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板との間に挟持された電気光学物質を有する電気光学装置であって、
前記第1基板は、複数の画素電極を有し、
前記第2基板は、第1透光性導電層と、
前記第1透光性導電層の前記複数の画素電極と対向する第1領域に配置された第2透光性導電層と、
前記第1透光性導電層と前記第2透光性導電層との間に配置された第1絶縁膜と、を有し、
前記第2基板の前記第1領域を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲でほぼフラットとなるように、前記第1透光性導電層、前記第1絶縁膜、前記第2透光性導電層の膜厚がそれぞれ設定されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1透光性導電層は、前記第1領域の外側に第2領域を有し、
前記第2領域を透過する紫外光の透過率が85%以上となるように、前記第1透光性導電層の膜厚が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
第1基板と第2基板との間に挟持された電気光学物質を有する電気光学装置であって、
前記第1基板は、複数の画素電極を有し、
前記第2基板は、第1透光性導電層と、
前記第1透光性導電層の前記複数の画素電極と対向する第1領域に配置された第2透光性導電層および第3透光性導電層と、
前記第1透光性導電層と前記第2透光性導電層との間に配置された第1絶縁膜と、
前記第2透光性導電層と前記第3透光性導電層との間に配置された第2絶縁膜と、を有し、
前記第2基板の前記第1領域を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲でほぼフラットとなるように、前記第1透光性導電層、前記第1絶縁膜、前記第2透光性導電層、前記第2絶縁膜、前記第3透光性導電層の膜厚がそれぞれ設定されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
前記第1透光性導電層は、前記第1領域の外側に第2領域を有し、
前記第2領域には、前記第1透光性導電層、前記第2透光性導電層、前記第3透光性導電層が順に積層されており、
前記第2基板の前記第2領域を透過する紫外光の透過率が85%以上となるように、前記第1透光性導電層、前記第2透光性導電層、前記第3透光性導電層の膜厚がそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
第1基板と第2基板との間に挟持された電気光学物質を有する電気光学装置であって、
前記第1基板は、複数の画素電極を有し、
前記第2基板は、第1透光性導電層と、
前記第1透光性導電層の前記複数の画素電極と対向する第1領域に配置された第2透光性導電層と、
前記第1透光性導電層と前記第2透光性導電層との間に配置された第1絶縁膜と、を有し、
前記第2基板の前記第1領域を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲でほぼフラットとなるように、前記第1透光性導電層、前記第1絶縁膜、前記第2透光性導電層の膜厚がそれぞれ設定されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1透光性導電層は、前記第1領域の外側に第2領域を有し、
前記第2領域を透過する紫外光の透過率が85%以上となるように、前記第1透光性導電層の膜厚が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
第1基板と第2基板との間に挟持された電気光学物質を有する電気光学装置であって、
前記第1基板は、複数の画素電極を有し、
前記第2基板は、第1透光性導電層と、
前記第1透光性導電層の前記複数の画素電極と対向する第1領域に配置された第2透光性導電層および第3透光性導電層と、
前記第1透光性導電層と前記第2透光性導電層との間に配置された第1絶縁膜と、
前記第2透光性導電層と前記第3透光性導電層との間に配置された第2絶縁膜と、を有し、
前記第2基板の前記第1領域を透過する光の分光分布が、可視光波長範囲でほぼフラットとなるように、前記第1透光性導電層、前記第1絶縁膜、前記第2透光性導電層、前記第2絶縁膜、前記第3透光性導電層の膜厚がそれぞれ設定されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
前記第1透光性導電層は、前記第1領域の外側に第2領域を有し、
前記第2領域には、前記第1透光性導電層、前記第2透光性導電層、前記第3透光性導電層が順に積層されており、
前記第2基板の前記第2領域を透過する紫外光の透過率が85%以上となるように、前記第1透光性導電層、前記第2透光性導電層、前記第3透光性導電層の膜厚がそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−25139(P2013−25139A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160719(P2011−160719)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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