説明

電気機器

【課題】安全性や動作効率等の性能が低下したときにユーザに対して強制力をもってメンテナンスを促すことが出来る電気機器を提供する。
【解決手段】本発明に係る電気機器において、アクチュエータの動作を制御する制御回路は、電気機器を構成する1或いは複数の部品の劣化と対応して変化する駆動状況値を検知する検知手段と、該検知手段によって検知された駆動状況値に応じてアクチュエータの出力を制限する出力制限手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車や家電製品の如く各種アクチュエータを駆動源として動作する電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド電気自動車において、バッテリが満充電状態になったときからの積算走行距離が所定値に達すると、発電機が作動しないようにすることによって、発電機の使用(ガソリンなどの燃料の使用)を抑制し、地球環境のクリーン化を図らんとする技術が提案されている(特許文献1)。
【0003】
又、燃料電池システムにおいて、商用電力と系統連携し、出力変動回数から寿命を計算して、寿命が近づいてくると、寿命延長のために出力を低下させる技術が提案されている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特許第3018958号公報
【特許文献2】特開2007−042436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子部品は電気機器の構成として重要な要素であるが、構造上若しくはコスト上、経年変化や劣化を全部品に対して逐次判断することは極めて困難である。また安全面から、電気機器の動作中に電子部品の破損・劣化によってモータ等のアクチュエータが停止したり、暴走したりする事態は回避しなければならない。
そのためには、電子部品が劣化して安全性や動作効率等の性能が低下する前に、ユーザに対して、電気機器が使用耐久時間を越えたことを報知し、メンテナンスを促す必要がある。
【0006】
しかしながら、従来の電気機器において、電子部品が劣化して安全性や動作効率等の性能が低下する前に、ユーザに対してメンテナンスを促すものは知られていない。仮に、積算使用時間が所定値に達したときにユーザに対して警告を発したとしても、ユーザがこれを無視することも考えられる。従って、適切な時期にメンテナンスが実施されず、その結果、安全性や動作効率等の性能の低下を来たす問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、動作時間の増大に伴って安全性や動作効率等の性能が低下したときにユーザに対して強制力をもってメンテナンスを促すことが出来る電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気機器は、アクチュエータによって駆動される駆動部と、前記アクチュエータの動作を制御する制御回路とを具え、前記制御回路は、電気機器を構成する1或いは複数の部品の劣化と対応して変化する駆動状況値を検知する検知手段と、該検知手段によって検知された駆動状況値に応じてアクチュエータの出力を制限する出力制限手段とを有することを特徴とする。
具体的には、前記制御回路の出力制限手段は、前記駆動状況値が所定の耐久値に達した後のアクチュエータ出力の制限値を、最大制限値から最小制限値まで低下させるものである。
【0009】
又、具体的には、前記駆動状況値は、駆動時間、環境温度或いは部品温度の積算値、アクチュエータに流れる電流変動又は電圧変動の積算値、トルク変動の積算値、駆動速度変動の積算値、若しくはこれらの値に応じて変化する値である。
特に電気機器が電動車輌の場合、前記駆動状況値は、走行距離、走行時間、速度変化の積算値、モータトルク変動の積算値、或いはこれらの値に応じて変化する値である。
【0010】
又、前記アクチュエータ出力は、アクチュエータに流れる電流又は電圧、トルク、アクチュエータの動作速度、若しくは遷移し得る動作モードを規定するものである。
特に電気機器が電動車輌の場合、前記アクチュエータ出力は、モータトルク、モータ回転数、モータ電流、バッテリからモータへ供給される電流、バッテリからモータへ供給される電圧、若しくはバッテリからモータへ供給される電力である。
【0011】
上記本発明の電気機器によれば、駆動状況値(例えば走行距離の積算値)が所定の耐久値に達したとき、アクチュエータ出力(例えばモータトルク)の制限値が、通常動作時の最大制限値から耐久性悪化時の最小制限値まで低下するので、ユーザ指令に応じたアクチュエータ出力が得られなくなり、この結果、ユーザは、通常の性能を得るために、部品の修理や交換などのメンテナンスを実施せざるを得なくなる。
【0012】
ここで、駆動状況値の変化に応じて、アクチュエータ出力の制限値を最大制限値から最小制限値まで徐々に低下させる構成によれば、駆動状況値(例えば走行距離の積算値)が所定の耐久値に達したとき、アクチュエータ出力(例えばモータ出力)が急激に低下することはないので、安全である。
【0013】
具体的構成において、前記アクチュエータ出力は、電気機器を構成している特定の部品の温度が所定の制限値を超えないように制限する。ここで、該部品温度の制限値は、前記駆動状況値が耐久値に達した後に最高制限値から最低制限値まで低下するものである。
該具体的構成によれば、アクチュエータ出力の制限によって、電気機器を構成している特定の部品の温度が抑制されて、所定の制限値を超えることがない。これによって該部品の寿命が延びることになる。
【0014】
他の具体的な構成において、メンテナンスの実施に応じて前記アクチュエータ出力の制限値を通常動作時の最大制限値にリセットするリセット手段を具えている。
これによって、メンテナンスの実施後はアクチュエータ出力の制限値が通常動作時の最大制限値に復帰するので、通常の走行性能で走行を続行することが可能となる。
【0015】
更に具体的には、前記駆動状況値の耐久値は、電気機器を構成している複数の部品のそれぞれについて設定されており、その中の特定の部品のメンテナンスを実施する度に該部品の耐久値を更新する。
該具体的構成によれば、部品毎にメンテナンスがユーザに促され、これによって適切な時期にメンテナンスを実施することが出来る。
【0016】
更に他の具体的な構成によれば、前記制御回路は、前記駆動状況値が所定の耐久値に達した後、アクチュエータが停止する度に、若しくは電気機器に電源が投入される度に、そのときのアクチュエータ出力の制限値を、実際のアクチュエータ出力の制限に反映させる。
該具体的構成によれば、前記駆動状況値が所定の耐久値に達した後の動作途中でアクチュエータ出力の制限値が変化し、アクチュエータ出力が低下することはないので、安全である。
【0017】
尚、前記制御回路によるアクチュエータ出力の制限は、ユーザ指令に応じたアクチュエータ出力の応答におけるアクチュエータ出力の最大値、アクチュエータ出力の変化率、或いはアクチュエータ出力の応答性を対象として実施することが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電気機器によれば、使用に伴って安全性や動作効率等の性能が低下したときにユーザに対して強制力をもってメンテナンスを促すことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
[第1の基本的構成]
図1は、エアコンディショナー等の家電製品を代表とする電気機器に本発明を実施した場合の制御回路(81)の基本的構成を表わしており、該制御回路(81)によってモータ等のアクチュエータの出力が制御される。
該制御回路(81)は、電気機器を構成する部品の寿命に反映する部品寿命値(例えば部品温度の積算値やオン/オフ回数等)を計測する部品寿命計測部(11)と、特定の部品の劣化に起因する耐久性の低下が生じることとなる部品限界状態(例えばオン/オフ回数についての耐久値)を保持している部品限界状態保持部(31)と、前記部品寿命値と部品限界状態に応じてアクチュエータ出力の制限値を生成する出力制限値生成部(41)と、出力制限値に応じてアクチュエータ出力を制御するアクチュエータ出力制御部(61)とから構成されている。
【0020】
[第2の基本的構成]
図2は、ハイブリッド自動車等の電動車輌を代表とする各種の電気機器に本発明を実施した場合の制御回路(82)の基本的構成を表わしており、該制御回路(82)によってモータ等のアクチュエータの出力が制御される。
該制御回路(82)は、アクチュエータが動作した時間の累積値を計測する出力累積時間計測部(12)と、特定の部品の劣化に起因する耐久性の低下が生じることとなる制限耐久時間を保持している制限耐久時間保持部(32)と、前記時間累積値と制限耐久時間に応じてアクチュエータ出力の制限値を生成する出力制限値生成部(42)と、出力制限値に応じてアクチュエータ出力を制御するアクチュエータ出力制御部(62)とから構成されている。
【0021】
[各種実施例]
図3は、本発明を電動車輌に実施した場合の構成を表わしている。該電動車輌は、バッテリ(9)を電源としてモータ(7)の回転によって走行するものであって、モータ(7)は制御回路(8)によって制御されている。
【0022】
制御回路(8)は、車輌の積算走行距離を計測する走行距離計測部(1)と、スロットル開度を検知するスロットルセンサ入力部(2)と、特定の部品の劣化に起因する耐久性の低下が生じることとなる走行距離(耐久走行距離)を保持している耐久走行距離保持部(3)と、走行距離と耐久走行距離に応じて出力トルクの制限値を生成する出力トルク制限値生成部(4)と、スロットル開度と出力トルク制限値に応じて出力トルクを生成する出力トルク生成部(5)と、生成された出力トルクに応じてモータ出力を制御するモータ出力制御部(6)とから構成されている。
【0023】
図4は、走行距離に応じた出力トルク制限値の変化を表わしており、走行距離が耐久走行距離D1に達するまでは一定の通常時トルク制限値τmaxを維持し、その後、走行距離が限界走行距離D2まで増大する過程で、通常時トルク制限値τmaxから集束トルク制限値τ0まで漸減し、走行距離が限界走行距離D2を越えてからは集束トルク制限値τ0を維持するものである。
実走行距離dが耐久走行距離D1以上、限界走行距離D2以下であるときの出力トルク制限値τは、図中の式1によって算出することが出来る。
【0024】
図5は、制御回路(8)が実行するモータ出力制御の手続きを表わしている。先ずステップS1にて、前回のメンテナンス実施からの走行距離を計測し、ステップS2では、走行距離が耐久走行距離よりも大きいか否かを判断する。ここでノーと判断されたときはステップS6に移行し、出力トルク制限値を通常時トルク制限値τmaxに設定する。
【0025】
ステップS2にてイエスと判断されたときは、ステップS3にて、走行距離が限界走行距離よりも大きいか否かを判断する。ここでノーと判断されたときはステップS5に移行し、出力トルク制限値を前記式1によって算出される値に更新する。又、ステップS3にてイエスと判断されたときはステップS4に移行し、出力トルク制限値を集束トルク制限値τ0に設定する。
【0026】
その後、ステップS7では、スロットルセンサ入力値から仮目標トルクを算出し、ステップS8にて、仮目標トルクが出力トルク制限値よりも大きいか否かを判断する。ここでイエスと判断されたときは、ステップS9にて出力トルク制限値を目標トルクに設定し、ノーと判断されたときは、ステップS10にて仮目標トルクを目標トルクに設定する。その後、ステップS11では前記目標トルクに基づいてモータ出力制御を実施し、ステップS1へ戻る。
【0027】
上記制御手続によれば、図4に示す如く、走行距離が耐久走行距離D1に達するまでは通常時トルク制限値τmaxが設定されるので、スロットル開度に応じた通常の出力トルクが得られ、通常の走行性能が発揮される。
その後、走行距離が耐久走行距離D1を越えると、限界走行距離D2に至るまで、走行距離に応じて漸減するトルク制限値が設定されて、出力トルクが徐々に制限されることになる。そして、走行距離が限界走行距離D2を越えた後は、一定の集束トルク制限値τ0が設定される。この結果、スロットル開度に応じた出力トルクは得られず、走行性能が低下するので、ユーザは、この事態を認識することが出来る。
そして、ユーザは、通常の走行性能を得るために、部品の修理や交換などのメンテナンスを実施せざるを得なくなる。
【0028】
尚、上述の如く走行距離が耐久走行距離D1を越えたとしてもトルク制限値が通常時トルク制限値τmaxから集束トルク制限値τ0まで漸減するので、モータの出力トルクが急激に低下することはなく、安全である。
【0029】
図6及び図7は、電動車輌を構成している特定の部品の温度が所定の制限値を超えないようにモータ出力を制限するための構成例を示している。ここで、部品温度の制限値は、図6に示す如く、走行距離が耐久走行距離D1に達するまでは一定の通常時最高温度T2を維持し、その後、走行距離が限界走行距離D2に至る過程で、通常時最高温度T2から集束最高温度T1まで漸減し、走行距離が限界走行距離D2を越えてからは集束最高温度T1を維持するものである。
実走行距離dが耐久走行距離D1以上、限界走行距離D2以下であるときの部品温度制限値Tnは、図中の式2によって算出することが出来る。
【0030】
図7は、制御回路(8)が実行するモータ出力制御の手続きを表わしている。先ずステップS21にて、前回のメンテナンス実施からの走行距離を計測し、ステップS22では、走行距離が耐久走行距離よりも大きいか否かを判断する。ここでノーと判断されたときはステップS27に移行する。
【0031】
ステップS22にてイエスと判断されたときは、ステップS23にて、温度制限値を前記式2によって算出する。次にステップS24では、部品の実温度tが温度制限値Tnを越えているか否かを判断し、ここでイエスと判断されたときは、ステップS25に移行して、出力トルク制限値を所定値αだけ減少させる。又、ステップS24にてノーと判断されたときはステップS26に移行し、出力トルク制限値を所定値αだけ増大させる。
【0032】
その後、ステップS27では、スロットルセンサ入力値から仮目標トルクを算出し、ステップS28にて、仮目標トルクが出力トルク制限値よりも大きいか否かを判断する。ここでイエスと判断されたときは、ステップS29にて出力トルク制限値を目標トルクに設定し、ノーと判断されたときは、ステップS30にて仮目標トルクを目標トルクに設定する。その後、ステップS31では前記目標トルクに基づいてモータ出力制御を実施し、ステップS21へ戻る。
【0033】
上記制御手続によれば、図6に示す如く、走行距離が耐久走行距離D1に達するまでは部品温度の制限値として通常時最高温度T2が設定されるので、スロットル開度に応じた通常の出力トルクが得られ、通常の走行性能が発揮される。
その後、走行距離が耐久走行距離D1を越えると、限界走行距離D2に至るまで、走行距離に応じて漸減する部品温度制限値Tnが設定されて、出力トルクが徐々に制限されることになる。そして、走行距離が限界走行距離D2を越えた後は、一定の収束最高温度T1が設定される。この結果、スロットル開度に応じた出力トルクは得られず、走行性能が低下するので、ユーザはこの事態を認識することが出来る。
そして、ユーザは、通常の走行性能を得るために、部品の修理や交換などのメンテナンスを実施せざるを得なくなる。
【0034】
尚、部品温度を制限する場合、部品の温度と寿命の関係、例えば電解コンデンサにおいてはアレニウスの法則に基づいて、部品温度制限値を決定することが出来る。又、モータにおいては、ベアリングに使用されている潤滑油の劣化が温度によって左右されるため、この観点から温度制限値を決定することが出来る。
半導体からなる部品においては、温度上昇に伴ってマイグレーションが進行して断線の虞があるため、この観点から温度制限値を決定することが出来る。更に、スイッチにおいては、温度低下によって動作不良が生じ、高温環境では絶縁物の劣化によって寿命が著しく短くなるため、この観点から温度制限値を決定することが出来る。
【0035】
図8は、運転履歴を駆動状況値とする1つの実施例を表わしている。回路基板の寿命に影響を与える要素の一つが基板温度である。そこで、機器の駆動中に単位時間(例えば1分)毎の基板平均温度を測定し、影響の度合いによってランク分けした温度帯毎に、使用時間を積算する。
そして、下記数式3に示す様に、各温度帯(ランクr)の積算時間に重み付け係数wを掛けたものの積算値(寿命累積値L)を算出し、この寿命累積値Lを駆動状況値として、該寿命累積値Lが所定の耐久値に達した後のアクチュエータ出力に制限を加える。
【0036】
数式3
L=Σ(w) i=1、2、3、4、5
尚、駆動状況値としては、基板の平均温度に替えて、モータの平均回転速度、総回転速度、トルク、電流、電圧、電力等を採用してもよい。
【0037】
又、運転履歴を駆動状況値とする他の例として、単位時間(分)毎の回路負荷の累積値が所定の限界値を越えたときに、アクチュエータ出力に制限を加える方法を採用することが出来る。回路基板の寿命に影響を与える要素として、基板温度の他に、モータの回転数や出力トルクが挙げられる。
そこで、図9に示す様に、これらの要素がとり得る値に対し、負荷の大きさに応じたランク付けを行なう。そして、ランク毎に各要素の値を設定し、各要素の値を掛け合わせたものを単位時間の回路負荷の大きさLiとし、この回路負荷の大きさLiの積算値L(数式4)を駆動状況値として、該積算値Lが所定の耐久値に達した後のアクチュエータ出力に制限を加える。
図9に示す例では、「基板の平均温度」のランク5の値は13,「モータの平均回転速度」のランク5の値は7に設定している。
【0038】
数式4
L=ΣL i=1、2、3、・・・使用時間(n分)
尚、回路負荷の大きさLiは、各要素の値を掛け合わせたものに限らず、各要素の値を足し合わせたものを採用することも可能である。
又、駆動状況値として、上記の要素に対して更に電流、電圧、電力などを加えることも可能である。
【0039】
図10及び図11は、電気機器を構成する1つの部品である電解コンデンサの劣化状態(寿命値)を計測する方法についての実施例を表わしている。電解コンデンサの劣化状態を計測する方法としては、電圧変動(リップル)を計測する方法と、電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を計測する方法と、電解コンデンサの電気容量を計測する方法とが知られているが、本実施例では、電解コンデンサの電気容量を計測する。
【0040】
図10においては、電源(91)の電力が平滑用電解コンデンサ(73)を経てリップルが除去された上でモータ制御用インバータ(72)に供給され、該モータ制御用インバータ(72)によってモータ(71)が駆動されている。モータ制御回路(83)には、不揮発メモリ(77)が接続されている。
モータ制御回路(83)は、モータ制御用インバータ(72)の制御を行なうと共に、ユーザが操作するキースイッチ(75)のオン/オフの検知、モータ用電源スイッチ(74)及び制御回路用電源スイッチ(76)の制御を行なう。更に、モータ制御回路(83)は、平滑コンデンサ(73)の両端電圧を測定することが可能となっている。
【0041】
図11は、電解コンデンサの劣化状態を計測する手続きを表わしている。電解コンデンサの電気容量は、電力の供給によって電解コンデンサが充電された後に電力の供給が遮断された時の、電解コンデンサの両端電圧を計測することによって確認することが出来る。
そこで、先ずステップS81にてキースイッチがオフとなって主電源のオフ要求が発生すると、これに応じて、ステップS82では、モータ制御用インバータを停止させ、ステップS83では、モータ用電源スイッチをオフとする。これによって電解コンデンサは、電荷が溜まった状態で電力供給のない状態となる。
この状態で、ステップS84では、平滑用電解コンデンサの両端電圧Vcを測定し、ステップS85では、両端電圧Vcの過去数回との平均値を算出し、その算出結果を寿命値として不揮発メモリに保存する。
最後にステップS86にて、制御回路用電源スイッチをオフとし、システムの電源を落とす。
【0042】
以上、電解コンデンサを用いて実施例を説明したが、劣化状態を確認できる部品であれば、その他の部品の劣化状態を計測して、その計測結果に基づいて出力制限を行なうことも可能である。例えばEEPROMの劣化状態を計測する場合は、EEPROMへの書き込み回数が所定の耐久値(例えば100万回)を越えたとき、出力制限を行なう。又、ポテンショメータ(可変抵抗器)の場合は、摺動部分の摺動回数が所定の耐久値を越えたとき、出力制限を行なう。更に、リレーやスイッチの場合は、累積オン/オフ回数を用いて出力制限をかけることが出来る。
又、劣化状態を計測すべき部品は、機器の必須構成要素に限らず、劣化状態をモニターすることが出来るモニター用の部品であってもよい。
【0043】
図12は、モータ制御システム(101)、バッテリ制御システム(102)、安全機能制御システム(103)、ボディ制御システム(104)、マルチメディア制御システム(105)等の複数のシステムが車内LANによって互いに接続されている電動車輌の構成を表わしており、これらの複数のシステムがそれぞれ独立しており、各システムは、車内LANによって他のシステムと通信し、連携を行なっている。
【0044】
ここで、モータ制御システム(101)以外のシステムが、出力制限によるメンテナンス時期の通知をユーザに対して有効に行なうことが出来ない場合、例えばバッテリ制御システム(102)が寿命に近づいていた場合、バッテリ制御システム(102)は、寿命に関する通知データをモータ制御システム(101)へ送信することによって、モータ制御システム(101)がバッテリ制御システム(102)の替わりに出力制限を行ない、ユーザに対してメンテナンスを促す。
【0045】
図13は、他システムからの寿命に関する通知データがバッテリの寿命を表わすSOH(State
Of Health)の場合の制御回路(83)の構成を表わしている。該制御回路(83)においては、出力制限値生成部(43)は、バッテリSOH計測部(13)によって計測されるSOHと、SOH限界状態保持部(33)に保持されているSOH限界値(耐久値)とを比較して、SOHの計測値がSOH限界値を越えたとき、出力制限値を生成して、アクチュエータ出力制御部(63)へ供給する。これによってアクチュエータの出力に制限がかけられる。
SOHの値がSOH制限値とSOH限界値との間にある場合は、SOHの上昇と共に出力を最大値から徐々に低下させ、SOHの値がSOH限界値に到達した以降は、出力を最小値に設定する。
【0046】
また図14は、N個のシステムから構成されている電気機器において、2つ以上のシステムに同時に出力制限がかかった場合の制御手続きを表わしている。先ずステップS91では、システム番号を0にリセットすると共に、出力トルク制限仮値を0にリセットする。
【0047】
次にステップS93では、システム番号nの出力制限値を計算し、ステップS94では、システム番号nの出力制限値が出力制限仮値よりも大きいか否かを判断する。ここでイエスと判断されたときは、ステップS95にてシステム番号nの出力制限値を出力制限仮値に設定した後、ステップS96に移行する。ステップS94にてノーと判断されたときはステップS96へ移行する。
【0048】
ステップS96では、システム番号nがNよりも小さいか否かを判断し、ここでイエスと判断されたときは、ステップS97にてシステム番号nをインクリメントした後、ステップS93に戻って、システム番号nの出力制限値の計算を繰り返す。その後、ステップS96にてノーと判断されたときは、ステップS98に移行して、出力制限値を出力制限代表値として採用し、手続きを終了する。
この結果、最大の出力制限値がシステム全体としての出力制限代表値として選択されることになる。
【0049】
図15及び図16はそれぞれ、予め設定されているモータ出力の制限値を実際のモータ出力の制限に反映させるタイミングを、モータ停止時若しくはイグニッションをオンとする電源投入時(電源再投入時)とする例を表わしている。
【0050】
図15の例は、モータ停止時と電源再投入時に、モータ出力の制限値を実際のモータ出力の制限に反映させるものであって、モータ停止時若しくは電源再投入時のモータトルク制限値を、その後の走行におけるトルクの制限に用いるものである。
【0051】
図17は、この場合に制御回路(8)が実行するモータ出力制御の手続きを表わしている。先ずステップS41にてモータが停止したか否かを判断し、イエスと判断されたとき、ステップS42にて走行距離を計測し、ステップS43では、走行距離が耐久走行距離よりも大きいか否かを判断する。ここでノーと判断されたときはステップS47に移行し、出力トルク制限値を通常時トルク制限値τmaxに設定する。
ステップS41にてノーと判断されたときは、ステップS48へ移行する。
【0052】
ステップS43にてイエスと判断されたときは、ステップS44にて、走行距離が限界走行距離よりも大きいか否かを判断する。ここでノーと判断されたときはステップS46に移行し、出力トルク制限値を前記式1によって算出される値に更新する。又、ステップS44にてイエスと判断されたときはステップS45に移行し、出力トルク制限値を集束トルク制限値τ0に設定する。
【0053】
その後、ステップS48では、スロットルセンサ入力値から仮目標トルクを算出し、ステップS49にて、仮目標トルクが出力トルク制限値よりも大きいか否かを判断する。ここでイエスと判断されたときは、ステップS50にて出力トルク制限値を目標トルクに設定し、ノーと判断されたときは、ステップS51にて仮目標トルクを目標トルクに設定する。その後、ステップS52では前記目標トルクに基づいてモータ出力制御を実施し、ステップS41へ戻る。
【0054】
又、図16の例は、電源再投入時にのみ、モータ出力の制限値を実際のモータ出力の制限に反映させるものであって、モータ停止時にはモータトルクの制限値の変化を無視するのに対し、電源再投入時のモータトルク制限値を、その後の走行におけるトルクの制限に用いるものである。
【0055】
図18は、電源再投入直後に1回だけ出力トルクの制限を行なう場合の制御手続きを表わしている。先ずステップS61にて電源が投入されると、ステップS62にて走行距離を計測し、ステップS63では、走行距離が耐久走行距離よりも大きいか否かを判断する。ここでノーと判断されたときはステップS67に移行し、出力トルク制限値を通常時トルク制限値τmaxに設定する。
【0056】
ステップS63にてイエスと判断されたときは、ステップS64にて、走行距離が限界走行距離よりも大きいか否かを判断する。ここでノーと判断されたときはステップS66に移行し、出力トルク制限値を前記式1によって算出される値に更新する。又、ステップS64にてイエスと判断されたときはステップS65に移行し、出力トルク制限値を集束トルク制限値τ0に設定する。
【0057】
その後、ステップS68では、スロットルセンサ入力値から仮目標トルクを算出し、ステップS69にて、仮目標トルクが出力トルク制限値よりも大きいか否かを判断する。ここでイエスと判断されたときは、ステップS70にて出力トルク制限値を目標トルクに設定し、ノーと判断されたときは、ステップS71にて仮目標トルクを目標トルクに設定する。その後、ステップS72では前記目標トルクに基づいてモータ出力制御を実施し、ステップS68へ戻る。
【0058】
上述の如く、モータ出力の制限値を実際のモータ出力の制限に反映させるタイミングをモータ停止時、若しくは電源投入時(電源再投入時)、或いは両時点とする構成によれば、走行途中でモータ出力の制限値が変化し、モータ出力が低下することはないので、安全である。
【0059】
図19は、走行距離が耐久走行距離を越えたために、耐久性の低下した部品の修理や交換などのメンテナンスを実施したとき、モータ出力の制限値を通常走行時のモータ最大値にリセットする構成例を示している。
該構成例によれば、メンテナンスを実施することによって、次に走行距離が耐久走行距離に達するまでは、再び通常の走行性能が発揮される。
【0060】
又、図20は、走行距離が耐久走行距離に達した時点で、モータトルクの制限値を最小値まで急落させる例を破線で示している。この場合においても、ユーザは、モータトルクの制限による走行性能の低下を認識することで、メンテナンスを実施することが出来る。
【0061】
ところで、本発明に係る電動車輌は、複数の機械的若しくは電気的な部品から構成されており、図21に示す様に、例えばA、B、Cの3つの部品が特に耐久性劣化による安全性の低下を引き起こす場合、これらの部品のそれぞれについて耐久走行距離が設定される。そして、何れかの部品の耐久走行距離に達する度に、メンテナンスの実施によって耐久走行距離を更新する。図示する例では、先ず部品Bについての耐久走行距離が到来し、その部品Bについてのメンテナンスによって部品Bについての耐久走行距離が更新されるが、その更新された耐久走行距離が到来する以前に、部品Aについての耐久走行距離が到来し、その部品Aについてのメンテナンスによって部品Aについての耐久走行距離が更新される。そして、その後、再度部品Bの耐久走行距離が更新された後、部品Cについての耐久走行距離が到来し、その部品Cについてのメンテナンスによって部品Cについての耐久走行距離が更新される。
この様に、各部品のメンテナンスを実施する度に該部品の耐久値を更新することによって、部品毎にメンテナンスがユーザに促され、これによって適切な時期に部品毎のメンテナンスを実施することが出来る。
【0062】
尚、走行に伴って変化する耐久性に関する走行状況値としては、上述の走行距離に限らず、走行時間、速度変化の積算値、モータトルク変動の積算値、環境温度(周囲の温度)や部品温度の積算値、或いはこれらの値に応じて変化する種々の値を採用することが出来る。
走行状況値として走行距離を採用した場合、耐久走行距離の決定方法としては、電動車輌を構成する複数の部品の内、最も寿命の短いものから決定する方法や、1枚の基板上に搭載された複数の部品についてはその中の最も寿命の短いものを代表として基板毎に耐久走行距離を決定する方法等を採用することが出来る。又、走行状況値として走行時間を採用した場合、法律等で義務づけられている定期点検や車検の時期に対応させて耐久走行時間を決定することが出来る。更に、耐久走行距離と耐久走行時間を組み合わせて用いることも可能である。
【0063】
走行距離が耐久走行距離に達したときの出力トルクの制限方法としては、図22に示す如く、スロットル開度に応じたモータトルクの応答において、通常の応答トルクに対し、モータトルク制限値の最大値を下げる方法の他、モータトルク制限値が最大値に達するまでのトルク変化率を下げる方法や、応答トルクの応答を遅いものとする方法、更にはこれらの方法を組み合わせる方法等を採用することが出来る。
【0064】
上記本発明の電動車輌によれば、走行距離等の耐久性に関する走行状況値が所定の耐久値に達すると、その後のモータ出力が制限されて、走行性能が低下するため、ユーザに対して強制力をもってメンテナンスを促すことが出来る。このとき、モータ出力は、走行に必要な最低限の出力値に維持されるので、走行に支障はない。
【0065】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、耐久走行距離を電動車輌の使用状況に応じて可変とする構成も採用可能である。
又、モータ出力の制限方法としては、上述の如くモータトルクを制限する方法に限らず、モータ回転数、モータ電流、バッテリからモータへ供給される電流、バッテリからモータへ供給される電圧、若しくはバッテリからモータへ供給される電力を制限する方法を採用することが出来る。
更に、本発明におけるモータ出力の制限と、操作パネルへの警告表示や警告ブザーの鳴動等による報知とを併用することも有効である。
【0066】
モータ出力を制限すべき走行距離や使用年数等の耐久値を設定する部品としては、タイヤやエンジンオイル等のユーザ交換部品であってもよい。又、耐久値の設定は、ユーザ自身が部品に応じた耐久値に設定可能な構成を採用することも可能である。具体的には、例えば新たに表示器と、文字及び数字を入力する入力キーと、入力された文字及び数字に基づいて情報処理を行なう情報処理部とからなる耐久走行距離設定手段を具える構成を採用することで実現できる。
耐久値設定手段において耐久値を設定する場合、部品名と耐久値を入力キーによって入力することにより、入力された文字や数値が情報処理部で処理され、耐久走行距離保持部に部品名と耐久値を関連付けて設定する。また、設定の際には入力内容を表示部に表示させる。
更に、走行距離等の走行状況値が各部品についての耐久値に達した時点の動作として、部品毎のアラーム音やアラーム表示を設定する構成も有効である。
【0067】
更に又、本発明は、電動車輌に限らず、各種の電気機器、例えば髭剃り機、扇風機、掃除機、洗濯機、エアコンディショナー、ディーゼル燃料噴射ノズルの開弁用アクチュエータ(ピエゾインクジェッター)などに応用することが出来る。
例えば髭剃り機の場合、アクチュエータはリニアモータ又はピエゾ素子であり、駆動状況値は使用回数、累積使用時間、負荷状況(髭の濃い薄い)、累積往復回数、若しくはこれらの組合せなどであり、出力制限対象は、移動速度一定の場合の往復切り換えタイミングである。
扇風機の場合、アクチュエータはモータであり、駆動状況値は使用回数、累積使用時間、運転モード、若しくはこれらの組合せなどであり、出力制限対象は、出力トルク、出力電圧、出力電流、選択し得るモードなどである。掃除機の場合、アクチュエータはモータであり、駆動状況値は使用回数、累積使用時間、電流、出力、運転モード、若しくはこれらの組合せなどであり、出力制限対象は、出力トルク、出力電圧、出力電流、選択し得るモードなどである。
【0068】
洗濯機の場合、アクチュエータはモータであり、駆動状況値は使用回数、累積使用時間、電流、出力、運転モード、若しくはこれらの組合せなどであり、出力制限対象は、選択し得るモードなどである。エアコンディショナーの場合、アクチュエータはモータであり、駆動状況値は使用回数、累積使用時間、電流、運転モード、若しくはこれらの組合せなどであり、出力制限対象は、選択し得るモードなどである。また、ピエゾインクジェッターの場合、アクチュエータはピエゾ素子であり、駆動状況値は使用回数、累積使用時間、若しくはこれらの組合せなどであり、出力制限対象は、出力トルク、出力電流などである。
【0069】
ユーザが選択できる運転モードを制限することによって出力制限を行なう例として、扇風機を挙げる。ここで、駆動状況値は累積駆動時間としている。
図23に示す如く、ユーザは操作IF(21)より扇風機の運転モードとして「強」、「中」、「弱」、「微風」の4段階を選択可能であり、扇風機は、操作IF(21)から送られてきた運転モードと、累積駆動時間計測部(14)から得られる累積駆動時間と、制限耐久時間保持部(34)から得られる制限耐久時間を用いて、運転モード選択部(44)により、実際の扇風機の運転モードを選択する。ここで、制限耐久時間保持部(34)から得られる制限耐久時間は、複数存在する。この様にして選択された運転モードに応じ、出力トルク生成部(45)にて出力トルクが生成されて、モータ出力制御部(64)へ供給される。
図25に、各運転モードと制限耐久時間、及び各運転モードがシステムに与える負荷の大きさの関係を示す。
【0070】
図24は、運転モード選択のフローチャートを示す。ユーザが運転モードを操作した場合(ステップS101)、ユーザが選択したモードを仮運転モードとして取得する(ステップS102)。次に仮運転モードの制限耐久時間と累積駆動時間の比較を行い(ステップS103)、この仮運転モードの制限耐久時間が累積駆動時間よりも大きい時、仮運転モードを実際の運転モードとして、対応する出力トルクにてモータを制御する(ステップS105、S106)。もし、仮運転モードの制限耐久時間が累積駆動時間よりも小さい時には、仮運転モードの段階を1段下げる(ステップS104)。そして、再度仮運転モードの制限耐久時間と累積駆動時間の比較を行う。このようにして、仮運転モードの制限耐久時間が累積駆動時間よりも大きくなるまで仮運転モードの段階を下げた後、仮運転モードを実際の運転モードとして、対応する出力トルクにてモータを制御するのである。
【0071】
具体的には、扇風機の累積駆動時間が、2万時間よりも短い場合には、ユーザは「強」、「中」、「弱」、「微風」の4段階の運転モード全てを選択可能(扇風機として、駆動可能)である。しかし、累積駆動時間が2万時間を越えると、ユーザは扇風機を「強」で駆動させることができなくなる。ここで、「強」で駆動させることができなくなるとは、ユーザが「強」を選択したとしても運転モード選択部(44)にて強制的に他のモードに遷移させられてしまうことを示す。さらに、3万時間を越えると、ユーザは扇風機を「強」又は、「中」で駆動させることができなくなり、「弱」、「微風」の2段階からしか運転モードを選択できなくなる。そして、4万時間を越えると、ユーザは扇風機を「強」、「中」、「弱」で駆動させることができなくなり、「微風」でしか扇風機を駆動できなくなる。
【0072】
上述の例では、ユーザが扇風機を駆動できる運転モードに制限を加えることとしたが、扇風機側でさらに細かく出力制限を加えることも可能である。図27に示す例においては、運転モードとして、「強」、「準強」、「中」、「準中」、「弱」、「準弱」、「微風」、「準微風」が用意されている。図26は、運転モード選択のフローチャートを示す。図24と図26の違いは、仮運転モードを一段下げる処理において下げ得る運転モードの段階が増えたことである(ステップS104′)。
【0073】
図27には、運転モードの段階を増やした場合の各運転モードと制限耐久時間の関係を示す。各運転モードは、「強」から「準微風」まで記載順に負荷が小さくなっていくものとする。運転モードのうち、「強」、「中」、「弱」、「微風」の4段階はユーザが選択可能なモードである。これに対して、「準強」、「準中」、「準弱」、「準微風」の4段階はユーザによる選択は不可能であり、扇風機側にて累積駆動時間を考慮して選択する運転モードである。
【0074】
例えば、扇風機の累積駆動時間が2万時間よりも短い場合には、ユーザは「強」、「中」、「弱」、「微風」の4段階の運転モード全てを選択可能であり、「強」を選択した際にも運転モードは「強」のままである。これに対して、累積駆動時間が2万時間以上2.5万時間未満の場合には、ユーザは運転モードとして「強」を選択したとしても、扇風機側にて制限耐久時間による条件から、「準強」の運転モードに自動的に遷移させてしまう。そして、累積駆動時間が2.5万時間以上3万時間未満の場合には、「中」以下に遷移させる。これにより、細かな出力制限が可能となる。
【0075】
上述の図25及び図27に示す運転モードにおいては、各運転モードの出力トルクはそれぞれ一定として、図28(a)に示す如くシステムに与える負荷を段階的に下げていく方法(第1方法)を採用しているが、図28(b)に示す如くシステムに与える負荷を連続的に下げていく方法(第2方法)を採用してもよい。
【0076】
図29は、運転モードと最大出力トルクによる出力制限のフローチャートを示す。ユーザが選択した運転モードの制限耐久時間が累積駆動時間よりも大きい時(ステップS103′)、ユーザは選択した運転モードにて扇風機を駆動させることが可能である(ステップS105′、S106′)。もし、ユーザが選択した運転モードの制限耐久時間が累積駆動時間よりも小さい時は、その累積駆動時間に対応した最大出力トルクにてモータを制御する(ステップS107)。
【0077】
つまり、ユーザが選択した運転モードが実駆動範囲内の運転モードであれば、ユーザは各運転モードにて扇風機を駆動させることが可能であるが、実駆動範囲外の運転モードを選択した場合には、第1方法ではその累積駆動時間における出力トルクが最も大きい運転モードにて扇風機を駆動することとなるが、第2方法ではその累積駆動時間における出力トルクの最大値にて扇風機を駆動することになる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る電気機器の第1の基本的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電気機器の第2の基本的構成を示すブロック図である
【図3】本発明を電動車輌に実施した場合の構成を示すブロック図である。
【図4】走行距離に応じた出力トルクの制限状態を示す図である。
【図5】走行距離に応じた出力トルクの制限を行なう場合の制御手続きを示すフローチャートである。
【図6】走行距離に応じた部品温度の制限状態を示す図である。
【図7】走行距離に応じた部品温度の制限を行なう場合の制御手続きを示すフローチャートである。
【図8】運転履歴を駆動状況値とする1つの実施例を説明する図表である。
【図9】運転履歴を駆動状況値とする他の1つの実施例を説明する図表である
【図10】電解コンデンサの劣化状態を計測するための回路構成を示す図である。
【図11】電解コンデンサの劣化状態を計測するための手続きを示すフローチャートである。
【図12】複数のシステムから構成される電気機器を表わすブロック図である。
【図13】バッテリのSOHによって出力制限を行なう実施例における制御回路の構成を表わすブロック図である。
【図14】複数のシステムから構成される電気機器における出力制限代表値の選択手続きを示すフローチャートである。
【図15】モータ停止時と電源再投入時にトルク制限を反映させる例を示す図である。
【図16】電源投入時にのみトルク制限を反映させる例を示す図である。
【図17】モータ停止時と電源再投入時にトルク制限を反映させる場合の制御手続きを示すフローチャートである。
【図18】電源投入時にのみトルク制限を反映させる場合の制御手続きを示すフローチャートである。
【図19】メンテナンスの実施によって耐久走行距離をリセットする例を示す図である。
【図20】モータトルクの制限値を変化させる2つの例を示す図である。
【図21】複数の部品を対象とした耐久走行距離の更新方法を説明する図である。
【図22】スロットル開度に応じたモータトルクの応答例を示す図である。
【図23】ユーザが選択できる運転モードを制限することによって出力制限を行なう例を示すブロック図である。
【図24】運転モード選択の手続きの一例を示すフローチャートである。
【図25】各運転モードと制限耐久時間の関係を示す図表である。
【図26】運転モード選択の手続きの他の例を示すフローチャートである。
【図27】各運転モードと制限耐久時間の他の関係を示す図表である。
【図28】システムに与える負荷を下げていく2つの方法を表わすグラフである。
【図29】運転モードと最大出力トルクによる出力制限の手続きを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
(1) 走行距離計測部
(2) スロットルセンサ入力部
(3) 耐久走行距離保持部
(4) 出力トルク制限値生成部
(5) 出力トルク生成部
(6) モータ出力制御部
(7) モータ
(8) 制御回路
(9) バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータによって駆動される駆動部と、前記アクチュエータの動作を制御する制御回路とを具えた電気機器において、前記制御回路は、電気機器を構成する1或いは複数の部品の劣化と対応して変化する駆動状況値を検知する検知手段と、該検知手段によって検知された駆動状況値に応じてアクチュエータの出力を制限する出力制限手段とを有することを特徴とする電気機器。
【請求項2】
前記制御回路の出力制限手段は、前記駆動状況値が所定の耐久値に達した後のアクチュエータ出力の制限値を、最大制限値から最小制限値まで低下させる請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記制御回路の出力制限手段は、前記駆動状況値が所定の耐久値に達した後、駆動状況値の変化に応じてアクチュエータ出力の制限値を前記最大制限値から最小制限値まで徐々に低下させる請求項2に記載の電気機器。
【請求項4】
前記制御回路の出力制限手段は、遷移し得る動作モードを限定することによってアクチュエータ出力を制限する請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電気機器。
【請求項5】
前記アクチュエータ出力の制限は、電気機器を構成している特定の部品の温度が所定の制限値を超えないように行ない、該部品温度の制限値は、前記駆動状況値が耐久値に達した後に最高制限値から最低制限値まで低下するものである請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電気機器。
【請求項6】
メンテナンスの実施に応じて前記アクチュエータ出力の制限値を最大制限値にリセットするリセット手段を具えている請求項1乃至請求項5の何れかに記載の電気機器。
【請求項7】
前記駆動状況値の耐久値は、電気機器を構成している複数の部品のそれぞれについて設定されており、その中の特定の部品のメンテナンスを実施する度に該部品についての耐久値を更新する請求項6に記載の電気機器。
【請求項8】
前記制御回路の出力制限手段は、前記駆動状況値が所定の耐久値に達した後、アクチュエータが停止する度に、若しくは電気機器に電源が投入される度に、そのときのアクチュエータ出力の制限値を、実際のアクチュエータ出力の制限に反映させる請求項1乃至請求項7の何れかに記載の電気機器。
【請求項9】
複数のシステムが互いに連携して構成され、前記駆動状況値は、前記複数のシステムに含まれる1つのシステムの寿命に関するデータであって、該システムからアクチュエータを含む他の1つのシステムに対して、前記データが通知され、これによって該他のシステムのアクチュエータ出力が制限される請求項1乃至請求項8の何れかに記載の電気機器。
【請求項10】
バッテリを電源とするモータの回転によって走行する電動車輌からなる電気機器であって、前記モータの動作を制御する制御回路は、走行に伴って変化する耐久性に関する走行状況値が所定の耐久値に達した後のモータ出力の制限値を、最大制限値から最小制限値まで低下させることを特徴とする電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2008−271779(P2008−271779A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73234(P2008−73234)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】