説明

電気的に制御される磁気回路を備えた装置の駆動回路

【課題】
部品の着脱作業を要することなく、簡単に、発振器等磁気回路を備えた装置単体での、周波数特性の検査を可能とした電気的に制御される磁気回路を備えた装置の駆動回路を提供する。
【解決手段】
信号レベル調整部14と積分回路部15とを具備する電気的に制御される磁気回路を備えた装置の駆動回路であって、前記積分回路部がOPアンプ23と、該OPアンプに対して並列に接続されたコンデンサ27と、並列に接続された負帰還用の抵抗28と、該抵抗を前記OPアンプに対して継断するスイッチング手段33,32とを有し、該スイッチング手段が前記抵抗を断状態とすることで、前記積分回路部が積分回路として動作し、前記スイッチング手段が前記抵抗を継状態とすることで、前記積分回路部が増幅回路として動作する様構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気的に制御される磁気回路を備えた装置の駆動回路、特に磁気回路を備えた装置の電気的特性を容易に検査可能とした電気的に制御される磁気回路を備えた装置の駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気的に制御される磁気回路を備えた装置、例えば発振器、フィルタ等では動作特性を確認する為の試験を行う必要がある。
【0003】
図2は、共振子としてYIG(イットリウム、鉄、ガーネット:Yttrium、Iron、Garnet)共振子2を用いた前記発振器1を示している。
【0004】
該発振器1は、前記YIG共振子2を含む発振部8を具備し、前記YIG共振子2に磁界を与えることで発振させ、又磁界の大きさを変化させて発振周波数を制御するものであり、磁界を発生させるコイルとして粗調整コイル3、微調整コイル4を具備している。
【0005】
前記粗調整コイル3は低速ではあるが、大電流を制御可能であり、前記微調整コイル4は、高速での制御が可能ではあるが、小電流の制御となる。前記粗調整コイル3、前記微調整コイル4は、それぞれ粗調整駆動回路5、微調整駆動回路6によって電流が供給され、通電により磁束7が発生され、磁界が形成され、前記粗調整コイル3と前記微調整コイル4との協働により、前記YIG共振子2の発振が制御される。
【0006】
前記発振器1を無線装置等の電子機器に組込む場合は、所望の前記発振周波数で安定した出力を得る為、前記発振部8の出力を分配器9で分配し、分配した一方を発振出力端子11へ出力する。もう一方の出力は、PLL(phase−locked loop)回路12へ入力され、位相比較等の信号処理がなされ、更に前記粗調整駆動回路5、前記微調整駆動回路6及び前記粗調整コイル3、前記微調整コイル4を経て前記磁束7が調整され、前記発振部8にフィードバックされることで、発振器1として安定な出力が得られる。
【0007】
次に、図3に於いて、従来の前記粗調整駆動回路5について説明する。
【0008】
該粗調整駆動回路5は、主に信号レベル調整部14、積分回路部15によって構成されている。
【0009】
前記信号レベル調整部14は、OPアンプ16、抵抗17,18,19,20、電圧源22によって構成され、前記抵抗17,18,19,20は、それぞれR1,R2,R3,R4の抵抗値を有している。
【0010】
前記積分回路部15は、OPアンプ23、抵抗24,25、前記OPアンプ23に対して並列に接続されたコンデンサ27によって構成され、前記抵抗24,25は、それぞれR5,R6の抵抗値を有している。又、前記積分回路部15には、前記OPアンプ23に対して負帰還用の抵抗28が着脱できる様になっており、該抵抗28の抵抗値はR7となっている。
【0011】
前記粗調整駆動回路5が前記粗調整コイル3の駆動回路として用いられる場合は、前記抵抗28は取外される。
【0012】
入力端子29へは正電圧が与えられる。前記信号レベル調整部14では、前記電圧源22の大きさと、前記抵抗18、前記抵抗19により入力電圧のレベルシフト量が決定される。又、前記抵抗17、前記抵抗19により所要の増幅率が決定されることで、信号電圧範囲の中点が0V付近に設定される。
【0013】
前記信号レベル調整部14でレベルが調整された信号は、前記積分回路部15、即ち前記抵抗24に対して出力される。
【0014】
前記積分回路部15は、前記抵抗24と前記コンデンサ27によって定まる時定数を有する積分回路として作動し、前記信号レベル調整部14から出力された信号に基づき前記粗調整コイル3に駆動用の電流を供給し、又電流の供給を制御する。
【0015】
尚、前記積分回路部15が積分回路として動作している状態では、前記入力端子29に与えられる入力信号電圧に対して前記積分回路部15から出力される信号電圧は一義的に決定されない。
【0016】
次に、前記抵抗28が前記コンデンサ27に並列となる様に、前記粗調整駆動回路5に接続する。
【0017】
前記抵抗28に対して並列接続された前記コンデンサ27が、高インピーダンスとなる低周波域では、前記積分回路部15は、前記抵抗24、前記抵抗28によって決定される増幅率を備えた増幅器として作動する。従って、前記入力端子29に与えられる入力信号電圧に対して前記積分回路部15から出力される信号電圧は一義的に決定される。
【0018】
この為、前記入力端子29に印加する、信号電圧を変化させることで、前記発振器1単体の周波数特性を検査することができる。
【0019】
上記した、従来の発振器1では前記発振器1単体の、周波数特性を検査することは可能であるが、前記抵抗28の機械的な着脱が必要であり、検査前後での前記抵抗28の着脱、更に該抵抗28の着脱に伴う、ケース或はカバーの取付け、取外しが必要となり、作業が煩雑なものとなっていた。
【0020】
尚、YIG共振子の駆動回路としては、特許文献1に示されるものがある。
【0021】
【特許文献1】特開2006−254004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は斯かる実情に鑑み、部品の着脱作業を要することなく、簡単に、発振器等磁気回路を備えた装置単体での、周波数特性の検査を可能とした電気的に制御される磁気回路を備えた装置の駆動回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、信号レベル調整部と積分回路部とを具備する電気的に制御される磁気回路を備えた装置の駆動回路であって、前記積分回路部がOPアンプと、該OPアンプに対して並列に接続されたコンデンサと、並列に接続された負帰還用の抵抗と、該抵抗を前記OPアンプに対して継断するスイッチング手段とを有し、該スイッチング手段が前記抵抗を断状態とすることで、前記積分回路部が積分回路として動作し、前記スイッチング手段が前記抵抗を継状態とすることで、前記積分回路部が増幅回路として動作する様構成した電気的に制御される磁気回路を備えた装置の駆動回路に係るものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、信号レベル調整部と積分回路部とを具備する電気的に制御される磁気回路を備えた装置の駆動回路であって、前記積分回路部がOPアンプと、該OPアンプに対して並列に接続されたコンデンサと、並列に接続された負帰還用の抵抗と、該抵抗を前記OPアンプに対して継断するスイッチング手段とを有し、該スイッチング手段が前記抵抗を断状態とすることで、前記積分回路部が積分回路として動作し、前記スイッチング手段が前記抵抗を継状態とすることで、前記積分回路部が増幅回路として動作する様構成したので、磁気回路を備えた装置の周波数特性の検査を簡単に実施できると共に抵抗の機械的な接続、取外し作業を必要とせず、作業性が向上するという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明がYIG共振子を用いた発振器に実施された場合の、粗調整コイル3用の粗調整駆動回路31を示しており、図1中、図3中で示したものと同等のものには同符号を付しその説明を省略する。
【0027】
前記粗調整駆動回路31では、前記コンデンサ27に対して並列に前記抵抗28、スイッチ32が設けられ、該スイッチ32と前記抵抗28とは直列に接続されている。又、前記スイッチ32をON/OFFする為のスイッチング回路33が設けられている。該スイッチング回路33、前記スイッチ32はスイッチング手段を構成する。
【0028】
前記粗調整駆動回路31の概略の作動は、前記スイッチング回路33によって前記スイッチ32がOFFされている状態では、前記積分回路部15が積分回路として動作し、該積分回路部15は前記入力端子29に印加する信号電圧によって前記粗調整コイル3に供給する電流の供給状態を制御する。
【0029】
又、前記スイッチング回路33によって前記スイッチ32がONされている状態では、前記積分回路部15は、前記抵抗24、前記抵抗28によって決定される時定数を有する増幅器として作動し、前記入力端子29に印加する信号電圧を変化させることで、前記発振器1単体の周波数特性を検査することが可能となる。
【0030】
以下、具体的に説明する。
【0031】
前記スイッチング回路33は、OPアンプ35、抵抗36、抵抗37、抵抗38、ツェナーダイオード39、ツェナーダイオード40を有している。
【0032】
前記入力端子29は前記OPアンプ35、前記抵抗36を介して前記スイッチ32に接続され、又、前記抵抗36は前記抵抗37、前記ツェナーダイオード39、前記ツェナーダイオード40、前記抵抗38を介して接地されている。
【0033】
前記抵抗37の接地側と前記抵抗18とが接続され、接続部分の電位はVxとなっている。又、前記入力端子29の電位はVi、前記OPアンプ16の出力信号の電位はVoとなっている。
【0034】
前記OPアンプ35により、前記入力端子29に入力される入力信号の電位と接地電位とが比較され、入力信号の正又は負に対応し前記OPアンプ35からの出力は正又は負の一定電圧となる。又、前記スイッチ32は、前記OPアンプ35からの出力電圧の正負によってON/OFF状態が決定され、本実施の形態では、負の電圧が印加されると、前記スイッチ32はOFF状態となり、正の電圧が印加されると、前記スイッチ32はON状態となる様になっている。
【0035】
又、前記電位Vxは、前記OPアンプ35の出力状態により決定され、該OPアンプ35の出力電圧が正であれば、前記電位Vxは正の電位、前記OPアンプ35の出力電圧が負であれば、前記電位Vxは負の電位をとる。
【0036】
前記抵抗17、前記抵抗19によって、前記信号レベル調整部14の増幅率が決定される。又、前記信号レベル調整部14は、前記電位Vxの大きさと、前記抵抗18、前記抵抗19により、入力電圧のレベルシフトを決定する。以下に、レベルシフト量の計算式を示す。
【0037】
Vo=−(R3 /R1 )Vi−(R3 /R2 )Vx … (式1)
【0038】
前記入力端子29へ与えられる入力電気信号が正電圧(Vi>0)の場合、前記電位Vxは負電圧(Vx<0)となり、式1に従う電圧Voを出力する。又、前記スイッチ32はOFF状態となり、前記積分回路部15は抵抗24と前記コンデンサ27の定数で決定される時定数を備えた積分回路として作動する。
【0039】
又、前記入力端子29へ与えられる信号が負電圧(Vi<0)の場合、前記電位Vxは正電圧(Vx>0)となり、式1に従う前記電圧Voを出力する。
【0040】
この時、正の電圧Vx、負の電圧Vxの絶対値が同一であれば、ViとVxの符号が反転しただけであり、Voの絶対値は前記入力端子29へ入力される信号が正電圧(Vi>0)の場合と同じになる。又、前記スイッチ32はON状態となり、前記積分回路部15は前記抵抗28に対して並列接続した前記コンデンサ27が高インピーダンスとなる低周波領域では、前記抵抗24、前記抵抗28の定数で決定される増幅率を備えた増幅率として動作する。従って、前記入力端子29に与えられる入力信号電圧と前記粗調整コイル3へ印加する信号電圧の関係を一義的に決定することができ、前記発振器1単体の周波数特性は前記入力端子29へ与えられる入力信号電圧を変化させることで、検査することができる。
【0041】
尚、前記スイッチ32としては、一般的なアナログスイッチの他、電子リレー、機械式リレー等を使用することが可能である。
【0042】
又、前記スイッチ32を動作させるスイッチング回路は、前記信号レベル調整部14とは独立して設け、スイッチ動作信号を別途スイッチング回路に入力する様にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態を示す回路図である。
【図2】本発明に係る駆動回路が実施される発振器の一例を示す概略構成図である。
【図3】従来の磁気回路を備えた装置の駆動回路の回路図である。
【符号の説明】
【0044】
1 発振器
2 YIG共振子
3 粗調整コイル
4 微調整コイル
5 粗調整駆動回路
7 磁束
8 発振部
14 信号レベル調整部
15 積分回路部
16 OPアンプ
23 OPアンプ
24 抵抗
27 コンデンサ
28 抵抗
32 スイッチ
33 スイッチング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号レベル調整部と積分回路部とを具備する電気的に制御される磁気回路を備えた装置の駆動回路であって、前記積分回路部がOPアンプと、該OPアンプに対して並列に接続されたコンデンサと、並列に接続された負帰還用の抵抗と、該抵抗を前記OPアンプに対して継断するスイッチング手段とを有し、該スイッチング手段が前記抵抗を断状態とすることで、前記積分回路部が積分回路として動作し、前記スイッチング手段が前記抵抗を継状態とすることで、前記積分回路部が増幅回路として動作する様構成したことを特徴とする電気的に制御される磁気回路を備えた装置の駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−124252(P2009−124252A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293448(P2007−293448)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】