説明

電磁誘導加熱調理装置及びこれを用いた電磁誘導加熱調理方法

【課題】 調理人の技量によらず、丼物の具等の被加熱食材を加熱し過ぎることなく短時間で確実に調理することができる電磁誘導加熱調理装置を提供する。
【解決手段】 本調理装置1は、調理容器(鍋10)を載置する載置プレート7と、載置プレートの下方に設けられる加熱コイル9と、加熱コイルによる調理容器の加熱を指示するための加熱指示手段(電源スイッチ35)と、加熱コイルによる加熱時間を計測する加熱時間計測手段50aと、調理容器の蓋体11を、閉鎖位置Aと開放位置Bとの間で移動させる蓋体移動機構17と、加熱指示手段による加熱指示に基づいて、蓋体を閉鎖位置に移動させるように蓋体移動機構を制御すると共に、加熱時間計測手段による計測時間が予め決められた設定時間になったときに、蓋体を開放位置に移動させるように蓋体移動機構を制御する制御手段50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱調理装置及びこれを用いた電磁誘導加熱調理方法に関し、さらに詳しくは、調理人の技量によらず、丼物の具等の被加熱食材を加熱し過ぎることなく短時間で確実に調理することができる電磁誘導加熱調理装置及び電磁誘導加熱調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カツ丼、親子丼等の丼物を専門的に調理して販売する形態の店舗が多く普及している。
ここで、一般的なカツ丼の調理方法としては、丼物用鍋にタレ及び刻み玉ねぎを適量入れてガスコンロの火にかけ、次に、鍋の中の玉ねぎに火が入ったらトンカツを入れて軽く煮たら、次いで、軽く溶いた卵を上から全体にかけて鍋にフタをし、その後、卵がやや固まってきたら上から青味をのせて再びフタをし、次に、丼に装ったご飯の上に盛り付けて作る方法が知られている。
【0003】
しかし、上記従来の調理方法では、ガスコンロを使用しているので、加熱の立ち上がりが遅く、被加熱食材が丼物の具のように比較的少量である場合には加熱時間が長くなり、全体の調理時間も長くなっていた。特に、上記カツ丼の具の調理では、調理時間が約1分30秒〜2分かかっていることが現状であるが、上述の丼物専門の店舗では、この調理時間を短くしたいといった要望があった。
また、上記従来の調理方法では、調理人の手作業により調理しているので、食事のラッシュ時等には調理人の不注意により、被加熱食材を加熱し過ぎて焦げ付かせてしまう恐れがあった。特に、上記カツ丼の具の調理では、その調理途中で丼物用鍋に対して蓋を開閉する必要があり、ある程度の経験を積んだ調理人でなければ、カツ丼の具を加熱し過ぎて焦げ付かせてしまう可能性が高い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、調理人の技量によらず、丼物の具等の被加熱食材を加熱し過ぎることなく短時間で確実に調理することができる電磁誘導加熱調理装置及び電磁誘導加熱調理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の通りである。
1.調理容器を載置する載置プレートと、
前記載置プレートの下方に設けられる加熱コイルと、
前記加熱コイルによる前記調理容器の加熱を指示するための加熱指示手段と、
前記加熱コイルによる加熱時間を計測する加熱時間計測手段と、
前記調理容器の蓋体を、前記載置プレート上に載置された該調理容器の開口を閉鎖する閉鎖位置(A)と該調理容器の開口を開放する開放位置(B)との間で移動させる蓋体移動機構と、
前記加熱指示手段による加熱指示に基づいて、前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御すると共に、前記加熱時間計測手段による計測時間が予め決められた設定時間になったときに、前記蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする電磁誘導加熱調理装置。
2.前記調理容器の開口の閉鎖を指示するための閉鎖指示手段を更に備え、
前記制御手段は、前記加熱指示手段による加熱指示に基づいて、前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御し、且つ、前記加熱時間計測手段による計測時間が予め決められた第1設定時間となったときに、前記蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御し、且つ、前記閉鎖指示手段による閉鎖指示に基づいて、前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御し、更に、前記加熱時間計測手段の計測時間が予め決められた第2設定時間となったときに、前記蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御する上記1.記載の電磁誘導加熱調理装置。
3.前記蓋体移動機構によって前記蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させるときに、前記調理容器の開放状態を報知する開放状態報知手段を更に備える上記1.又は2.に記載の電磁誘導加熱調理装置。
4.前記蓋体移動機構は、その一端側が調理器本体に揺動自在に支持され且つその他端側に前記蓋体に係止する係止部を設けてなる揺動アームと、前記制御手段により駆動制御される駆動源と、該駆動源の動力を前記揺動アームに伝達する動力伝達手段と、を有する上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の電磁誘導加熱調理装置。
5.前記係止部は、前記蓋体に設けられた被係止部に揺動自在且つ着脱自在に係止可能である上記4.記載の電磁誘導加熱調理装置。
6.前記揺動アームは、調理器本体に形成された切欠部を介して揺動自在とされており、該調理器本体には、該切欠部を密閉し且つ該揺動アームの揺動を許容するスリットを有する弾性部材が設けられている上記4.又は5.記載の電磁誘導加熱調理装置。
7.調理器本体には、前記調理容器を前記載置プレート上に位置決め載置するためのガイド部材が設けられている上記1.乃至6.のいずれか一項に記載の電磁誘導加熱調理装置。
8.前記ガイド部材は、前記調理器本体に着脱自在に設けられている上記7.記載の電磁誘導加熱調理装置。
9.前記調理容器に収容される食材を保温するための保温室を更に備え、該保温室内には赤外線ヒータが設けられている上記1.乃至8.のいずれか一項に記載の電磁誘導加熱調理装置。
10.前記調理容器は、丼物用鍋である上記1.乃至9.のいずれか一項に記載の電磁誘導加熱調理装置。
11.上記1.乃至10.のいずれか一項に記載の電磁誘導加熱調理装置を用いる電磁誘導加熱調理方法であって、
食材を収容した前記調理容器の加熱を開始させると共に、前記蓋体移動機構によって前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させ、次に、その加熱時間が予め決められた設定時間となったときに、前記蓋体移動機構によって該蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させることを特徴とする電磁誘導加熱調理方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電磁誘導加熱調理装置によると、制御手段によって、加熱指示手段による加熱指示に基づいて蓋体が開放位置から閉鎖位置に移動されると共に、加熱時間計測手段の計測時間が予め決められた設定時間となったときに蓋体が閉鎖位置から開放位置に移動される。これにより、加熱開始の際に調理容器の開口を自動的に閉鎖でき、その加熱時間が設定時間となったときに調理容器の開口を自動的に開放できる。そのため、調理人の技量によらず、被加熱食材を加熱し過ぎて焦げ付かせることなく簡単に且つ確実に調理できる。また、自動的に開放される蓋体によって、調理人に調理容器の開放状態を知らせることができる。また、電磁誘導加熱を採用しているので、加熱の立ち上がり早く、特に被加熱食材が丼物の具のように比較的少量である場合には加熱時間を短くでき、全体の調理時間も短くできる。
また、前記調理容器の開口の閉鎖を指示するための閉鎖指示手段を更に備える場合は、閉鎖指示手段による閉鎖指示に基づいて蓋体が開放位置から閉鎖位置に移動される。これにより、加熱途中で調理容器の開口を開閉させる必要のある調理に対応できる。例えば、第1食材の加熱後に、第1食材に第2食材を加えて再加熱するカツ丼の具等の調理に好適に対応できる。
また、調理容器の開放状態を報知する開放状態報知手段を更に備える場合は、調理人に調理容器の開放状態をより確実に知らせることができる。
また、前記蓋体移動機構が、揺動アームと、駆動源と、動力伝達手段と、を有する場合は、揺動アームの揺動によって、蓋体を閉鎖位置及び開放位置の間でより確実且つ円滑に移動させることができる。
また、前記係止部が、前記蓋体に設けられた被係止部に揺動自在且つ着脱自在に係止可能である場合は、載置プレート上の調理容器の姿勢が多少悪くても、蓋体の揺動によって調理容器の開口をより確実且つ円滑に塞ぐことができる。また、揺動アームから蓋体を取り外して清掃作業を容易に行うことができる。
また、前記揺動アームが、調理器本体に形成された切欠部を介して揺動自在とされており、該調理器本体に、該揺動アームの揺動を許容するスリットを有する弾性部材が設けられている場合は、弾性部材によって切欠部が密閉されるので、清掃作業時に洗浄液等の水分が切欠部を介して調理器本体の内部に侵入してしまうことを抑制できる。
また、調理器本体に、ガイド部材が設けられている場合は、調理容器を載置プレート上の所定位置に位置決め載置でき、その調理容器の開口を蓋体でより確実に塞ぐことができる。
また、前記ガイド部材が、前記調理器本体に着脱自在に設けられている場合は、調理器本体からガイド部材を取り外して清掃作業を容易に行うことができる。
また、前記調理容器に収容される食材を保温するための保温室を更に備え、該保温室内には赤外線ヒータが設けられている場合は、揚物等の食材を長期にわたって食感を損なうことなく保温できる。
また、前記調理容器が丼物用鍋である場合は、丼物の具を好適に調理できる。
【0007】
本発明の電磁誘導加熱調理方法によると、食材を収容した調理容器の加熱開始の際に、蓋体が開放位置から閉鎖位置に移動され、次に、その加熱時間が予め決められた設定時間となったときに、蓋体が閉鎖位置から開放位置に移動される。これにより、調理人の技量によらず、被加熱食材を加熱し過ぎて焦げ付かせることなく簡単に且つ確実に調理できる。また、自動的に開放される蓋体によって、調理人に調理容器の開放状態を知らせることができる。また、電磁誘導加熱を採用しているので、加熱の立ち上がり早く、特に被加熱食材が丼物の具のように比較的少量である場合には加熱時間を短くでき、全体の調理時間も短くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
1.電磁誘導加熱調理装置
本実施形態に係る電磁誘導加熱調理装置は、以下に述べる載置プレート、加熱コイル、加熱指示手段、蓋体移動機構及び制御手段を備えて構成される。この電磁誘導加熱調理装置は、例えば、後述する閉鎖指示手段、開放状態報知手段及び保温室のうちの1種又は2種以上の組み合わせを備えることができる。
【0009】
上記「載置プレート」は、調理容器を載置し得る限り、その平面形状、大きさ等は特に問わない。この載置プレートは、通常、アルミニウム等の非磁性体からなる。
なお、上記「調理容器」は、その開口が蓋体で開閉される限り、その形状、大きさ、調理用途等は特に問わない。この調理容器は、例えば、ステンレス等の磁性体からなることができる。また、この調理容器としては、例えば、鍋(特に、丼物用鍋)、フライパン、調理プレート等を挙げることができる。
【0010】
上記「加熱コイル」は、上記載置プレートの下方に配設される限り、その形状、大きさ等は特に問わない。この加熱コイルには電源から高周波電流が供給されて、その電磁誘導作用によって載置プレート上の調理容器が加熱される。
【0011】
上記「加熱指示手段」は、加熱コイルによる調理容器の加熱を指示するためのものである限り、その指示形態、タイミング等は特に問わない。この加熱指示手段は、例えば、調理器本体に設けられる電源スイッチからなることができる。この電源スイッチのON操作によって、後述の制御手段に加熱指示信号が入力される。
【0012】
上記「加熱時間計測手段」は、加熱コイルによる加熱時間を計測し得る限り、その計測形態、タイミング等は特に問わない。この加熱時間計測手段は、例えば、後述する制御装置の内部タイマ機能により構成されることができる。
【0013】
上記「蓋体移動機構」は、調理容器の蓋体を、載置プレート上に載置された調理容器の開口を閉鎖する閉鎖位置(A)と調理容器の開口を開放する開放位置(B)との間で移動させることができる限り、その構成、移動形態、タイミング等は特に問わない。
【0014】
上記蓋体移動機構は、例えば、その一端側が調理器本体に揺動自在に支持され且つその他端側に前記蓋体に係止する係止部を設けてなる揺動アームと、制御手段により駆動制御される駆動源と、駆動源の動力を前記揺動アームに伝達する動力伝達手段と、を有することができる。
上記揺動アームは、例えば、調理器本体に形成された切欠部を介して揺動自在とされており、この調理器本体には、切欠部を密閉し且つ揺動アームの揺動を許容するスリットを有するゴム等の弾性部材が設けられていることができる。この場合、調理器本体に、上記切欠部と対応する切欠部が形成されたフッ素樹脂製の支持部材を設け、この支持部材上に上記弾性部材が設けられていることが好ましい。これにより、揺動アームをより円滑に揺動させることができる。
上記揺動アームの係止部は、例えば、蓋体に設けられた被係止部に揺動自在且つ着脱自在に係止可能であることができる。この係止部の揺動方向が揺動アームの揺動方向と一致していることが好ましい。
上記駆動源としては、例えば、駆動モータ、シリンダ等を挙げることができる。
上記動力伝達手段としては、例えば、ギヤ機構、リンク機構、ベルト機構等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0015】
上記「制御手段」は、上記加熱指示手段による加熱指示に基づいて、蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させるように上記蓋体移動機構を制御すると共に、上記加熱時間計測手段の計測時間(加熱時間)が予め決められた設定時間となったときに、蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させるように上記蓋体移動機構を制御し得る限り、その構成、制御形態、タイミング等は特に問わない。
上記制御手段は、例えば、上記加熱指示手段による加熱指示に基づいて加熱コイルによる調理容器の加熱を開始させ、且つ、上記加熱時間計測手段の計測時間(加熱時間)が予め決められた設定時間となったときに加熱コイルによる調理容器の加熱を停止させることができる。
【0016】
上記制御手段には、例えば、加熱コイルによる加熱時間として予め決められた1又は2以上の所定の設定時間が記憶されていることができる。この設定時間としては、例えば、第1食材を加熱するための第1設定時間と、第1食材及び第2食材を仕上げ加熱するための第2設定時間とが設定されていることができる。
【0017】
上記「閉鎖指示手段」は、調理容器の開口の閉鎖を指示するためのものである限り、その指示形態、タイミング等は特に問わない。この閉鎖指示手段は、例えば、調理器本体に設けられる蓋閉スイッチからなることができる。この蓋閉スイッチのON操作によって、上記制御手段に閉鎖指示信号が入力される。
上記閉鎖指示手段を更に備える場合、上記制御手段は、例えば、前記加熱指示手段による加熱指示に基づいて、前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御し、且つ、前記加熱時間計測手段の計測時間(加熱時間)が予め決められた第1設定時間となったときに、前記蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御し、且つ、前記閉鎖指示手段による閉鎖指示に基づいて、前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御し、更に、前記加熱時間計測手段の計測時間(加熱時間)が予め決められた第2設定時間となったときに、前記蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御することができる。
上記制御手段は、例えば、前記加熱指示手段による加熱指示に基づいて加熱コイルによる調理容器の加熱を開始させ、且つ、前記加熱時間計測手段の計測時間(加熱時間)が予め決められた第2設定時間となったときに加熱コイルによる調理容器の加熱を停止させることができる。
【0018】
上記「開放状態報知手段」は、上記蓋体移動機構によって蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させるときに調理容器の開放状態を報知し得る限り、その構成、報知形態、タイミング等は特に問わない。その報知形態としては、例えば、音、光、表示等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0019】
上記調理器本体の構成、形状、大きさ等は特に問わない。この調理器本体の内部には、例えば、上記加熱コイル及び上記蓋体移動機構が外部から隔離された状態で配設されていることができる。
上記調理器本体には、例えば、調理容器を載置プレート上に位置決め載置するためのガイド部材が設けられていることができる。このガイド部材は、例えば、調理器本体に着脱自在に設けられていることができる。また、このガイド部材は、例えば、上記調理容器の外周面を支持するリング状のガイド部と、このリング部に設けられ調理器本体に着脱自在に取着される取着部と、を有することができる。
【0020】
上記「保温室」は、調理容器に収容される食材を保温するためのものである限り、その構成、形状、大きさ等は特に問わない。この保温室内には、1又は2以上の赤外線ヒータが設けられている。
【0021】
2.電磁誘導加熱調理方法
本実施形態に係る電磁誘導加熱調理方法は、上述の電磁誘導加熱調理装置を用いる電磁誘導加熱調理方法であって、食材を収容した前記調理容器の加熱を開始させると共に、前記蓋体移動機構によって前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させ、次に、その加熱時間が予め決められた設定時間となったときに、前記蓋体移動機構によって該蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させることを特徴とする。
【0022】
尚、他の実施形態に係る電磁誘導加熱調理方法として、例えば、上述の電磁誘導加熱調理装置を用いる電磁誘導加熱調理方法であって、第1食材を収容した前記調理容器の加熱を開始させると共に、前記蓋体移動機構によって前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させ、次に、その加熱時間が予め決められた第1設定時間となったときに、前記蓋体移動機構によって該蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させ、次いで、前記調理容器に前記第1食材に加えて第2食材を収容した状態で、前記蓋体移動機構によって前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させ、その後、その調理容器の加熱時間が予め決められた第2設定時間となったときに、前記蓋体移動機構によって該蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させることを特徴とするものを挙げることができる。これにより、調理人の技量によらず、被加熱食材を加熱し過ぎて焦げ付かせることなく簡単に且つ確実に調理できる。また、自動的に開放される蓋体によって、調理人に調理容器の開放状態を知らせることができる。また、電磁誘導加熱を採用しているので、加熱の立ち上がり早く、特に被加熱食材が丼物の具のように比較的少量である場合には加熱時間を短くでき、全体の調理時間も短くできる。さらに、加熱途中で調理容器の開口を開閉させる必要のある調理に対応できる。例えば、第1食材の加熱後に、第1食材に第2食材を加えて再加熱するカツ丼の具等の調理に好適に対応できる。
【実施例】
【0023】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0024】
(1)電磁誘導加熱調理装置の構成
本実施例に係る電磁誘導加熱調理装置1(以下、単に「調理装置」とも記載する。)は、図1に示すように、箱状の調理器本体2を備えている。この調理器本体2の後方側には載置台3が設けられており、この載置台3上には、食材を保温するための上下2つの保温室4a,4bが設けられている。これら各保温室4a,4bの内部には、赤外線ヒータ5が吊下げ支持されている。
【0025】
上記調理器本体2の上面側には、平面矩形状の載置プレート7が配設されている。この調理器本体2の内部には載置プレート7の下方に、電源8から高周波電流が供給され得る加熱コイル9が配設されている。また、上記調理器本体2の上面側には、丼物用の鍋10(本発明に係る「調理容器」として例示する。)を載置プレート7上の所定位置に位置決め載置するためのガイド部材12が設けられている。このガイド部材12は、図4に示すように、鍋10の外周面を支持するリング状のガイド部12aと、このガイド部12aの外周側に連なる略Z状に折り曲げられた取着部12bと、を有している。これら各取着部12bには、図5に示すように、調理器本体2に固定されたネジ13の頭部13a(六角部)が上下方向に挿通し得る挿通孔14が形成されている。従って、ガイド部材12は、調理器本体2に対して着脱自在に支持されている。
【0026】
また、上記調理器本体2の内部には、図2及び3に示すように、蓋体移動機構17が収納されている。この蓋体移動機構17は、その一端側が支持軸18を介して調理器本体2に揺動自在に支持される略L字状の左右一対の揺動アーム19a,19bを有している。これら各揺動アーム19a,19bの一端側には、ギヤ機構20を介して駆動モータ21の駆動軸に連結されている。そして、上記駆動モータ21の駆動によって揺動アーム19a,19bが揺動され、揺動アーム19a,19bの他端側に支持される蓋体11が、載置プレート7上に載置された鍋10の開口を閉鎖する閉鎖位置A(図2中実線で示す。)と、鍋10の開口を開放する開放位置B(図2中仮想線で示す。)との間で移動されるようになっている。
なお、上記支持軸18には、棒状の一対の接触部材22a,22bが設けられている。そして、揺動アーム19a,19bの揺動によって、これら一対の接触部材22a,22bが調理器本体2に設けられた一対のリミットスイッチ23a,23bに接触して、揺動アーム19a,19bの夫々の揺動端位置を検知し得るようになっている。この各リミットスイッチ23a,23bの検知信号は後述する制御装置に入力される。
【0027】
上記各揺動アーム19a,19bの他端側は、図3に示すように、板状の連結部材25によって連結されている。この連結部材25の中央部には、鍋10の蓋体11に設けられた箱状の被係止部26に係止可能な係止部27が設けられている。この係止部27は、図6に示すように、左右横方に突起するガイドピン27aを有している。また、被係止部26の左右側壁には、略L字状のガイド溝26aが形成されている。そして、このガイド溝26aに上記ガイドピン27aが挿通されることによって、揺動アーム19a,19bに対して蓋体11が揺動自在且つ着脱自在に支持されることとなる。
【0028】
また、上記調理器本体2の上面側には、各揺動アーム19a,19bの揺動を許容する切欠部29を密閉するための密閉具30が設けられている(図3参照)。この密閉具30は、図7及び8に示すように、上記切欠部29と対応する切欠部31が形成されたシート状でフッ素樹脂製の支持部材32を有している。この支持部材32の上面には、この切欠部29を密閉するシート状でゴム製の弾性部材33が設けられている。この弾性部材33には、揺動アーム19a,19bの揺動を許容する線状のスリット33aが形成されている。
【0029】
上記調理器本体2の前面側には、電源スイッチ35(本発明に係る「加熱指示手段」として例示する。)及び蓋閉スイッチ36(本発明に係る「閉鎖指示手段」として例示する。)が設けられている。この電源スイッチ35及び蓋閉スイッチ36は、図9に示すように、調理装置1の全体の運転制御を司る制御装置50に電気的に接続さている。そして、この制御装置50には、電源スイッチ35のON操作によって加熱指示信号が入力されると共に、蓋閉スイッチ36のON操作によって閉鎖指示信号が入力される。また、この制御装置50には、第1及び第2設定器37,38が電気的に接続されている。そして、この制御装置50には、第1及び第2設定器37,38により予め決められる第1設定時間及び第2設定時間が記憶される。また、この制御装置50には、上記駆動モータ21及び電源8が電気的に接続されている。また、この制御装置50には、鍋10の開放状態を報知するためのブザー39(本発明に係る「開放状態報知手段」として例示する。)が電気的に接続されている。さらに、この制御装置50は、上記加熱コイル9による鍋10の加熱時間を計測する加熱時間計測手段50aを有している。
【0030】
(2)電磁誘導加熱調理装置の作用
次に、上記構成の電磁誘導加熱調理装置1の作用について説明する。尚、本実施例では、カツ丼の具(カツ丼卵とじ)を調理する作用について説明する。
【0031】
先ず、揺動アーム19a,19bに支持された蓋体10が開放位置Bに位置している状態において、鍋10の中にタレ、刻み玉ねぎ及びトンカツ(第1食材)を適量入れ、その鍋10を、ガイド部材12を介して載置プレート7上に載置して、調理人により電源スイッチ35がON操作される(図10のステップS1)。すると、駆動モータ21により揺動アーム19a,19bが揺動されて蓋体11が閉鎖位置Aまで移動される(ステップS2)。次に、加熱コイル9に電源8からの高周波電流が供給されて、この加熱コイル9により鍋10の加熱が開始される(ステップS3)。そして、その加熱時間が計測され(ステップS4)、その計測時間が第1設定時間(例えば、45秒)となったか否かが判定される(ステップS5)。
【0032】
次いで、計測時間が第1設定時間となったときに(ステップS5でYES判定)、駆動モータ21により揺動アーム19a,19bが揺動されて蓋体11が開放位置Bまで移動されると共に、ブザー39によって鍋10の開放状態が報知される(ステップS6)。この状態より、鍋10の中に軽く溶いた卵(第2食材)を上から全体にかけて、調理人により蓋閉スイッチ36がON操作される(ステップS7)。すると、駆動モータ21により揺動アーム19a,19bが揺動されて蓋体11が閉鎖位置Aまで移動される(ステップS8)。次に、その蓋閉時からの仕上げ加熱時間が計測され(ステップS9)、その計測時間が第2設定時間(例えば、20秒)となったか否かが判定される(ステップS10)。
【0033】
次いで、計測時間が第2設定時間となったときに(ステップS10でYES判定)、駆動モータ21により揺動アーム19a,19bが揺動されて蓋体11が開放位置Bまで移動されると共に、ブザー39によって鍋10の開放状態が報知される(ステップS11)。その後、加熱コイルに対する電源から高周波電流の供給を止めて、鍋の加熱を停止させる(ステップS12)。そして、調理人は、鍋10内で調理されたカツ丼の具を、丼に装ったご飯の上に盛り付けて卵とじカツ丼が完成されることとなる。
【0034】
(3)実施例の効果
本実施理の電磁誘導加熱調理装置1によると、電源スイッチ35のON操作に基づいて、第1食材を収容した鍋10の加熱を開始させると共に、蓋体11を閉鎖位置Aに移動させ、次に、その加熱時間が予め決められた第1設定時間となったときに、蓋体11を開放位置Bに移動させ、次いで、蓋閉スイッチ36のON操作に基づいて、蓋体11を閉鎖位置Aに移動させ、第1食材に加えて第2食材を収容した鍋10が加熱され、その後、その加熱時間が予め決められた第2設定時間となったときに、蓋体11を開放位置Bに移動させるようにしたので、調理人の技量によらず、加熱途中で鍋10の開口を開閉させる必要のあるカツ丼の具(第1及び第2食材)を加熱し過ぎて焦げ付かせることなく簡単に且つ確実に調理できる。また、自動的に開放される蓋体11によって、調理人が鍋10の開放状態を認識することができる。また、電磁誘導加熱を採用しているので、加熱の立ち上がり早く、特にカツ丼物の具を短時間(約1分)で調理することができる。
【0035】
また、本実施例では、ブザー39によって鍋10の開放状態を報知するようにしたので、調理人に鍋10の開放状態をより確実に知らせることができる。
また、本実施例では、蓋体移動機構17を、揺動アーム19a,19bと、駆動モータ21と、ギヤ機構20とから構成したので、この蓋体移動機構17を簡易且つ安価な構成にできると共に、蓋体11を閉鎖位置A及び開放位置Bの間でより確実且つ円滑に移動させることができる。
また、本実施例では、揺動アーム19a,19bの係止部27によって、蓋体11を揺動自在且つ着脱自在に係止するようにしたので、ガイド部材12を介して載置プレート7上に載置される鍋10の姿勢が多少悪くても、蓋体11の微揺動によって、鍋10をより確実且つ円滑に塞ぐことができる。また、揺動アーム19a,19bから蓋体11を取り外して清掃作業を容易に行うことができる。
また、本実施例では、揺動アーム19a,19bが調理器本体2に形成された切欠部29を介して揺動自在とされており、この切欠部29を密閉具30で密閉するようにしたので、清掃作業時に誤って洗浄液等の水分が切欠部29を介して調理器本体2の内部に侵入してしまうことを抑制できる。
また、本実施例では、調理器本体2に、着脱自在にガイド部材12を設けているので、鍋10を載置プレート7上の所定位置に位置決め載置でき、その鍋10の開口を蓋体11でより確実に塞ぐことができる。また、調理器本体2からガイド部材12を持ち上げて取り外すことができ清掃作業を容易に行うことができる。
また、本実施例では、調理器本体2に、鍋10に収容されるトンカツ(第1食材)を保温するための保温室4a,4bを設け、この保温室4a,4b内に赤外線ヒータ5を設けるようにしたので、トンカツを長期にわたって食感を損なうことなく保温できる。
【0036】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、カツ丼の具(カツ丼卵とじ)を調理するのに適した調理装置1を例示したが、これに限定されず、例えば、親子丼の具や卵焼きを調理するのに適した調理装置としてもよい。
また、上記実施例では、加熱の途中で蓋体を1回開閉させる調理装置1を例示したが、これに限定されず、例えば、加熱の途中で蓋体を開閉させない調理装置としたり、加熱の途中で蓋体を2回以上開閉させる調理装置としたりしてもよい。
また、上記実施例では、蓋を閉めた直後に加熱を開始する形態(ステップS2,S3)を例示したが、これに限定されず、例えば、加熱を開始した直後に蓋を閉めるようにしてもよい。
さらに、上記実施例では、蓋を開けた直後に加熱を停止する形態(ステップS11,S12)を例示したが、これに限定されず、例えば、加熱を停止した直後に蓋を開けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
被加熱食材を加熱する技術として広く利用される。特に、丼物(カツ丼、親子丼等)の具を加熱する技術として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施例に係る電磁誘導加熱調理器の全体図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図2のIII矢視図である。
【図4】ガイド部材の平面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】揺動アームの先端側の正面図である。
【図7】密閉具の平面図である。
【図8】図3のIX−IX線断面図である。
【図9】制御装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図10】制御装置の作用を説明するためのフローチャート図である。
【符号の説明】
【0039】
1;電磁誘導加熱調理装置、2;調理器本体、4a,4b;保温室、5;赤外線ヒータ、7;載置プレート、9;加熱コイル、10;鍋、11;蓋体、12;ガイド部材、17;蓋体移動機構、19a,19b;揺動アーム、20;ギヤ機構、21;駆動モータ、26;被係止部、27;係止部、29;切欠部、33;弾性部材、33a;スリット、35;電源スイッチ、36;蓋閉スイッチ、39;ブザー、50;制御装置、50a;加熱時間計測手段、A;閉鎖位置、B;開放位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器を載置する載置プレートと、
前記載置プレートの下方に設けられる加熱コイルと、
前記加熱コイルによる前記調理容器の加熱を指示するための加熱指示手段と、
前記加熱コイルによる加熱時間を計測する加熱時間計測手段と、
前記調理容器の蓋体を、前記載置プレート上に載置された該調理容器の開口を閉鎖する閉鎖位置(A)と該調理容器の開口を開放する開放位置(B)との間で移動させる蓋体移動機構と、
前記加熱指示手段による加熱指示に基づいて、前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御すると共に、前記加熱時間計測手段による計測時間が予め決められた設定時間になったときに、前記蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする電磁誘導加熱調理装置。
【請求項2】
前記調理容器の開口の閉鎖を指示するための閉鎖指示手段を更に備え、
前記制御手段は、前記加熱指示手段による加熱指示に基づいて、前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御し、且つ、前記加熱時間計測手段による計測時間が予め決められた第1設定時間となったときに、前記蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御し、且つ、前記閉鎖指示手段による閉鎖指示に基づいて、前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御し、更に、前記加熱時間計測手段の計測時間が予め決められた第2設定時間となったときに、前記蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させるように前記蓋体移動機構を制御する請求項1記載の電磁誘導加熱調理装置。
【請求項3】
前記蓋体移動機構によって前記蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させるときに、前記調理容器の開放状態を報知する開放状態報知手段を更に備える請求項1又は2に記載の電磁誘導加熱調理装置。
【請求項4】
前記蓋体移動機構は、その一端側が調理器本体に揺動自在に支持され且つその他端側に前記蓋体に係止する係止部を設けてなる揺動アームと、前記制御手段により駆動制御される駆動源と、該駆動源の動力を前記揺動アームに伝達する動力伝達手段と、を有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電磁誘導加熱調理装置。
【請求項5】
前記係止部は、前記蓋体に設けられた被係止部に揺動自在且つ着脱自在に係止可能である請求項4記載の電磁誘導加熱調理装置。
【請求項6】
前記揺動アームは、調理器本体に形成された切欠部を介して揺動自在とされており、該調理器本体には、該切欠部を密閉し且つ該揺動アームの揺動を許容するスリットを有する弾性部材が設けられている請求項4又は5記載の電磁誘導加熱調理装置。
【請求項7】
調理器本体には、前記調理容器を前記載置プレート上に位置決め載置するためのガイド部材が設けられている請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電磁誘導加熱調理装置。
【請求項8】
前記ガイド部材は、前記調理器本体に着脱自在に設けられている請求項7記載の電磁誘導加熱調理装置。
【請求項9】
前記調理容器に収容される食材を保温するための保温室を更に備え、該保温室内には赤外線ヒータが設けられている請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電磁誘導加熱調理装置。
【請求項10】
前記調理容器は、丼物用鍋である請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電磁誘導加熱調理装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電磁誘導加熱調理装置を用いる電磁誘導加熱調理方法であって、
食材を収容した前記調理容器の加熱を開始させると共に、前記蓋体移動機構によって前記蓋体を開放位置から閉鎖位置に移動させ、次に、その加熱時間が予め決められた設定時間となったときに、前記蓋体移動機構によって該蓋体を閉鎖位置から開放位置に移動させることを特徴とする電磁誘導加熱調理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−141471(P2007−141471A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329323(P2005−329323)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(591135358)愛技産業株式会社 (4)
【出願人】(398002606)株式会社三ツ和 (1)
【Fターム(参考)】