説明

電解メッキ装置および電解メッキ方法

【課題】メッキ液中に添加剤を均一に分散または溶解させることが可能な電解メッキ装置およびこれを用いた電解メッキ方法を提供する。
【解決手段】メッキ液を満たした状態で、基板Wの被処理面に電解メッキ処理を行う電解メッキ槽11と、電解メッキ槽11にメッキ液Mを供給するメッキ液供給管22と、メッキ液供給管22に接続されるとともに、メッキ液供給管22にメッキ液Mの主成分となる電解質溶液を供給する電解質溶液供給部23と、メッキ液供給管22の電解メッキ槽11と電解質溶液供給部23との間の位置に接続されるとともに、メッキ液供給管22に添加剤を供給する添加剤供給部24とを備え、メッキ液供給管22には、添加剤供給部24と接続される位置またはこの位置よりも電解メッキ槽11側に、電解質溶液Eと添加剤A、B、Cとを混合してメッキ液Mを調製する混合機構31が設けられている電解メッキ装置およびこれを用いた電解メッキ方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の被処理面に電解メッキ方法によりメッキ膜を形成するための電解メッキ装置およびこの電解メッキ装置を用いた電解メッキ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS半導体デバイスの多層配線構造において、近年のデバイスの高速化・低消費電力化の要求に伴い、信号伝播遅延の問題が顕著になってきている。このため、従来用いられてきたアルミニウム合金配線と比較して、低抵抗である銅(Cu)配線を用いた半導体装置が実用化されている。
【0003】
Cu配線の形成では、一般的に電解メッキ方法による埋め込み配線技術が行われている。具体的には、基板上の絶縁膜に設けられた配線溝パターンを、Cuを主成分とする配線材料膜(Cuメッキ膜)で埋めこんだ後、化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing(CMP)法により絶縁膜の表面が露出するまで、Cuメッキ膜を除去する。これにより、Cu配線を形成する
【0004】
この電解メッキ方法に用いるメッキ液は、硫酸と銅を含む主成分となる電解質溶液と種々の添加剤とで構成されている。そして、従来の電解メッキ装置では、上記電解質溶液と種々の添加剤とをメッキ液タンクの中で混合し、このメッキ液を電解メッキ槽に供給するように構成されていた。
【0005】
一方、上記埋め込み配線技術において、配線溝パターンをCuメッキ膜で埋めこむ場合には、配線溝パターンへのCuメッキ膜の埋め込み工程と、CMP法より研磨するための削りしろを形成するCuメッキ膜の積み増し工程とがある。この際、埋めこみ工程で形成されるCuメッキ膜には、ボイド等の欠陥のない埋め込み特性が要求され、積み増し工程で形成されるCuメッキ膜には、その後に行うCMP工程で研磨残りが発生するのを防ぐために、平坦性が要求される。このようなCuメッキ膜の特性は、メッキ液の組成比、特に種々の添加剤の組成比を調整することで、変更することができる。
【0006】
しかし、上述したようなメッキ液タンク内で電解質溶液と種々の添加剤とを混合する電解メッキ装置では、工程によって各添加剤の添加量を変更することは難しく、異なる組成のメッキ液を貯留した複数のメッキ液タンクを用いる必要がある。また、メッキ液中に添加剤を混合した状態で保存すると、添加剤が劣化し、所望のプロセス性能が得られなくなってしまう可能性がある。
【0007】
そこで、メッキ液の主成分となる電解質溶液を電解メッキ槽に供給する流路の途中で、添加剤供給部からの添加剤を電解質溶液に添加することで、工程毎にメッキ液の組成を切り換える電解メッキ装置の例が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2002−194599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、電解質溶液に添加する添加剤は、主として高分子材料からなるため、メッキ液の主成分となる電解質溶液と混ざり難い傾向にある。このため、上述したように電解メッキ槽への流路の途中で添加剤を添加する電解メッキ装置では、流路内で電解質溶液と添加剤とが十分に混合されていない状態で、電解メッキ槽内にメッキ液が供給される。
【0010】
これにより、上述したような基板上の絶縁膜に設けられた配線溝パターンを、メッキ膜で埋め込む工程において、埋め込み特性が向上するように添加剤の組成比が調製されたメッキ液を用いたとしても、メッキ液中に添加剤が十分に溶解または分散されていないことから、基板の被処理面内で配線溝パターンへの埋め込み特性が悪くなる領域が生じる。これにより、この領域の配線溝パターン内に形成される配線にボイドが生じ、エレクトロマイグレーション耐性が悪くなるといった問題がある。
【0011】
また、上記配線溝パターンに埋め込まれたメッキ膜上に、メッキ膜を積み増す工程において、平坦性が向上するように添加剤の組成比が調製されたメッキ液を用いたとしても、メッキ液中に添加剤が十分に溶解または分散されていないことから、メッキ膜の平坦性が得られない領域が生じるため、被処理面全域に渡って平坦性が悪くなる。これにより、その後に行うメッキ膜のCMP工程において研磨残りが発生し、配線のショートを引き起こすという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の電解メッキ装置は、電解メッキ処理により基板の被処理面にメッキ膜を形成する電解メッキ装置であって、メッキ液を満たした状態で、基板の被処理面に電解メッキ処理を行う電解メッキ槽と、電解メッキ槽にメッキ液を供給するメッキ液供給管と、メッキ液供給管に接続されるとともに、メッキ液供給管にメッキ液の主成分となる電解質溶液を供給する電解質溶液供給部と、メッキ液供給管の電解メッキ槽と電解質溶液供給部との間の位置に接続されるとともにメッキ液供給管に添加剤を供給する添加剤供給部とを備え、メッキ液供給管には、添加剤供給部と接続される位置またはこの位置よりも電解メッキ槽側に、電解質溶液と添加剤とを混合してメッキ液を調製する混合機構が設けられていることを特徴としている。
【0013】
このような電解メッキ装置によれば、電解メッキ槽にメッキ液を供給するメッキ液供給管に混合機構が設けられていることから、メッキ液供給管に供給される電解質溶液と添加剤とが十分に混合された状態のメッキ液が調製される。このため、メッキ液中の添加剤が均一に溶解または分散された状態で電解メッキ槽内にメッキ液が供給される。これにより、メッキ液中の添加剤を基板の被処理面全域で作用させることが可能となる。
【0014】
このため、例えば埋め込み特性が向上するように添加剤の組成比が調製されたメッキ液を用いて、配線溝パターンをメッキ膜で埋め込む工程に、この電解メッキ装置を用いる場合には、添加剤がメッキ液中に均一に分散されることで、基板の被処理面全域で埋め込み特性が向上する。また、例えば、平坦性が向上するように添加剤の組成比が調製されたメッキ液を用いて、上記配線溝パターンに埋め込まれたメッキ膜上にメッキ膜を積み増す工程にこの電解メッキ装置を用いる場合には、基板の被処理面全域で平坦性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の電解メッキ方法は、基板の被処理面にメッキ膜を形成する電解メッキ方法であって、次のような工程を順次行うことを特徴としている。まず、第1工程では、電解メッキ槽にメッキ液を供給するメッキ液供給管に、メッキ液の主成分となる電解質溶液と添加剤とをそれぞれ供給する工程を行う。次に、第2工程では、メッキ液供給管に設けられた混合機構で、電解質溶液と添加剤とを混合してメッキ液を調製する工程を行う。続いて、第3工程では、メッキ液を電解メッキ槽に供給する工程を行う。その後の第4工程では、電解メッキ槽に供給されたメッキ液に、基板の被処理面を浸漬させて電解メッキ処理を行うことを特徴としている。
【0016】
このような電解メッキ方法によれば、メッキ液供給管に設けられた混合機構で電解質溶液と添加剤とを混合することで調製されたメッキ液を、電解メッキ槽に供給し、このメッキ液に、基板の被処理面を浸漬させて電解メッキ処理を行う。これにより、メッキ液中に添加剤が均一に溶解または分散されることから、メッキ液中の添加剤を基板の被処理面全域で作用させることが可能となる。
【0017】
このため、例えば埋め込み特性が向上するように添加剤の組成比が調製されたメッキ液を用いて、配線溝パターンをメッキ膜で埋め込む場合には、添加剤がメッキ液中に均一に分散されることで、基板の被処理面全域で埋め込み特性が向上する。また、例えば平坦性が向上するように添加剤の組成比が調製されたメッキ液を用いて、上記配線溝パターンに埋め込まれたメッキ膜上に、メッキ膜を積み増す場合には、基板の被処理面全域でメッキ膜の平坦性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の電解メッキ装置およびこれを用いた電解メッキ方法によれば、基板の被処理面全域でメッキ液中の添加剤を作用させることができることから、配線溝パターンをメッキ膜で埋め込んで配線を形成する場合に、被処理面全域でメッキ膜の埋め込み特性や平坦性を向上させることができる。これにより、埋め込み特性が向上することで、被処理面全域にボイドの抑制された配線を形成することができるため、エレクトロマイグレーション耐性が向上する。また、平坦性が向上することで、このメッキ膜を研磨して平坦化する際の研磨残り等によるショートを防止することができる。したがって、この配線構造を用いたデバイスの歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、電解メッキ処理によりCuメッキ膜を形成するのに用いる電解メッキ装置および電解メッキ方法を例にとって説明する。
【0020】
<電解メッキ装置>
図1は、本発明の一実施形態における電解メッキ装置1の断面構成図である。この電解メッキ装置1は、例えば半導体ウェハからなる基板Wの被処理面に電解メッキ処理を行う電解メッキ槽11と、この電解メッキ槽11にメッキ液Mを供給するためのメッキ液供給部21とを備えている。
【0021】
電解メッキ槽11は、上面側が開口された外槽11aの中に、この外槽11aよりも一回り小さく構成されるとともに、上面側が開口された内槽11bを同軸に収容した二重槽構造となっている。内槽11bは、電解メッキ処理を行う電解メッキ浴槽としてメッキ液Mを満たした状態で用いられ、外槽11aは、内槽11bからオーバーフローさせたメッキ液Mを回収後、廃棄するように構成されている。
【0022】
また、電解メッキ槽11の内槽11bの中には内槽11bの中央部底面を貫通して所定の高さ位置まで垂直上方に延びる噴出管13が設けられている。この噴出管13は、後述するメッキ液供給管22と接続されており、この噴出管13の上端開口よりメッキ液Mが湧き出るようになっている。また噴出管13の周囲には環状のリン含有Cu板からなるアノード14が設けられている。アノード14の表面はブラックフィルム15で覆われている。
【0023】
そして、噴出管13の上端外周縁と内槽11bの内壁面との間にはメンブレンフィルター16が張設されている。このメンブレンフィルター16により、電解メッキ処理中にアノード14から異物が発生したとしても、メッキ液浴槽(内槽11b)の上面側への異物の移動または拡散が防止されるように構成されている。
【0024】
また、上記アノード14と対向する位置には、アノード14と対向する装着面に基板Wを保持する基板保持部12が設けられている。この基板保持部12には、電解メッキ槽11内に満たされたメッキ液Mに、被処理面をフェイスダウン方式で浸漬させた状態で基板Wが保持される。また、基板保持部12には、基板Wの表面に形成されたカソードとなる導電層(図示省略)に電力を供給する電極(図示省略)が設けられている。
【0025】
一方、メッキ液供給部21は、電解メッキ槽11にメッキ液Mを供給するためのメッキ液供給管22と、このメッキ液供給管22に、メッキ液Mの主成分となる、例えば硫酸(H2SO4)とCuと塩酸(HCl)と水(H2O)とを含む電解質溶液Eを供給する電解質溶液供給部23と、このメッキ液供給管22に添加剤を供給するための添加剤供給部24とを備えている。
【0026】
電解質溶液供給部23は、メッキ液供給管22の例えば上流端に接続されており、電解質溶液Eを貯留するタンク23aと、このタンク23aから電解質溶液Eを汲み出してメッキ液供給管22に圧送するポンプ23bとを備えている。電解メッキ処理中は、ポンプ23bがタンク23a内の電解質溶液Eをメッキ液供給管22に所定の流量で流し続けるように構成されている。
【0027】
添加剤供給部24は、各添加剤、ここでは例えば3種類の添加剤A、B、Cをそれぞれ貯留した複数の貯留タンク24a、24b、24cを備えていることとする。この貯留タンク24a、24b、24cには、市販のメッキ液用の添加剤がそのまま貯留されていてもよく、メッキ液の添加剤となる薬液が原液で、または希釈された状態で貯留されていてもよい。添加剤供給部24は、この添加剤A、B、Cを所定の濃度に希釈した状態で供給可能に構成されることとする。
【0028】
具体的に、添加剤Aの供給機構を例にとり説明すると、添加剤供給部24は、添加剤Aが貯留された貯留タンク24aの他に、添加剤Aが希釈された状態の添加剤A’が貯留される希釈タンク24a’を備えていることとする。この貯留タンク24aと希釈タンク24a’との間には、ポンプ25aが介装され、貯留タンク24aからポンプ25aによって希釈タンク24a’に添加剤Aが供給されることとする。また、希釈タンク24a’には、例えば水等からなる希釈用の溶媒が希釈タンク24a’内に供給されるように構成されている。そして、添加剤Aは、希釈タンク24a’内に所定の濃度に希釈された状態の添加剤A’として貯留され、希釈タンク24a’とメッキ液供給管22との間に介装されるポンプ26aによって、希釈された状態の添加剤A’がメッキ液供給管22に供給されることとする。添加剤B、Cについても同様の供給機構が設けられており、添加剤B、Cも所定濃度に希釈された状態の添加剤B’、C’として供給されることとする。
【0029】
この所定の濃度とは、この添加剤A’、B’、C’と上述した電解質溶液Eとを後述する混合機構内で混合し、メッキ液Mを調製する場合に、添加剤A’、B’、C’と上述した電解質溶液Eとが十分に混合され、メッキ液M中に添加剤A’、B’、C’が均一に溶解または分散されるような濃度であることとする。好ましくは、添加剤A、B、Cを10倍から50倍程度に希釈する、またはメッキ液1Lに対して100mL程度の添加量となるように希釈することとする。ただし、添加剤A、B、Cが原液でも十分に混合可能であり、メッキ液M中に均一に溶解または分散可能である場合には、希釈せずに貯留タンク24a、24b、24cから直接メッキ液供給管22に供給されるように構成されていてもよい。
【0030】
そして、添加剤供給部24の各供給機構には、所定濃度に希釈された状態の添加剤A’、B’、C’をそれぞれ所定の流量に調整可能な流量調整機構(図示省略)が設けられていることとする。
【0031】
なお、ここでは、貯留タンク24aの他に希釈タンク24a’が設けられた例について説明したが、貯留タンク24aが希釈タンク24a’を兼ねていてもよい。この場合には、貯留タンク24a内に希釈用の溶媒が供給されるように構成されることとする。これにより、装置の設置面積を縮小することが可能となる。また、ここでは3種の添加剤A、B、Cを供給する供給機構について説明したが、添加剤の数は特に限定されるものではない。
【0032】
メッキ液供給管22は、その一端が上記電解メッキ槽11に接続されるとともに、他端が上記電解質溶液供給部23に接続される状態で設けられており、この電解質溶液供給部23と電解メッキ槽11との間の位置に、上記添加剤供給部24が接続されることとする。そして、メッキ液供給管22の添加剤供給部24と接続される位置、すなわち、添加剤A’、B’,C’が供給される位置よりも電解メッキ槽11側には、電解質溶液供給部23から供給された電解質溶液Eと、添加剤供給部24から供給された希釈された状態の添加剤A’、B’,C’とを混合するための混合機構31が設けられている。
【0033】
図2(a)に示すように、この混合機構31は、例えばメッキ液供給管22内を閉塞する障壁32が、電解メッキ槽11に向かって所定の間隔を有して複数配置された構成であることとする。この障壁32の数は適宜調整されることとする。この複数の障壁32は、要部拡大図に示すように、例えば全域に複数の孔部33が設けられた障壁32aと、中央部に一つの大きな孔部33が設けられた障壁32bとからなり、障壁32aと障壁32bとが、電解メッキ槽11に向かって交互に配置されるように構成されている。これにより、混合機構31に導入された電解質溶液Eと添加剤A’、B’,C’とは障壁32aに衝突することで混合され、この障壁32aの孔部33を通過する。そして、通過した電解質溶液Eと添加剤A’、B’,C’とは次の障壁32bに再び衝突して混合し、その障壁32bの孔部33を通過するといった過程を繰り返すことにより、混合機構31内で電解質溶液Eと添加剤A’、B’,C’とが十分に混合されたメッキ液Mが調製される。そして、メッキ液M中に添加剤A、B、Cが、均一に溶解または分散された状態で、電解メッキ槽11に供給される。
【0034】
なお、ここでは、全域に複数の孔部33が設けられた障壁32aと、中央部に一つの大きな孔部33とが設けられた障壁32bとが交互に配置されるように構成されることとしたが、各障壁32の孔部33を、電解メッキ槽11の近くに配置されるほど開口面積が小さくかつ開口数が多くなるように配置してもよい。このような混合機構31であっても、電解質溶液Eと添加剤A’、B’,C’とが十分に混合される。
【0035】
また、混合機構31として、図2(b)に示すように、メッキ液供給管22に、攪拌羽根が内蔵されたマニホールド34が設けられていてもよい。ここでは、マニホールド34の電解メッキ槽11側には、図2(a)を用いて説明した、中央部に1つの孔部33を備えた障壁32bが配置されていることとする。ここでは、障壁32bが設けられる構成としたが、全域に複数の孔部33が設けられた障壁32aであってもよく、マニホールド34で、電解質溶液Eと添加剤A’、B’、C’とが十分に混合されれば、マニホールド34のみであってもよい。この場合には、マニホールド34内に希釈された状態の添加剤A’、B’、C’が直接供給されることとする。
【0036】
さらに、本実施形態の電解メッキ装置1のおいては、噴出管13から供給され、電解メッキ槽の内槽11bに満たされたメッキ液Mに、基板保持部12に装着された基板Wを浸漬させた状態で電解メッキ処理が行われる電解メッキ装置の例について説明したが、内槽11bのメンブレンフィルター16よりも基板保持部12側に、基板保持部12の基板装着面と対向する状態で、複数の孔部が全域に渡って設けられた分散板(図示省略)が配置されていてもよい。この場合には、混合機構31で均一に混合されたメッキ液Mが分散板の各孔部を介して、基板保持部12に保持された基板Wに供給されるため、メッキ液Mの均一な状態を確実に維持した状態で、メッキ液Mを基板Wに供給することが可能となる。
【0037】
<電解メッキ方法>
次に、上述したような電解メッキ装置1を用いた電解メッキ方法について説明する。
【0038】
まず、図3(a)に示すように、基板W上に設けられた絶縁膜41には、複数の配線溝パターン42が設けられている。そして、この配線溝パターン42の内壁を覆う状態で、例えばTaからなるバリア層43が設けられており、バリア層43上にはCuシード層(図示省略)が設けられていることとする。
【0039】
この状態の基板Wに、電解メッキ処理工程を2段階で行うこととする。第1工程としては、配線溝パターン42をCuメッキ膜で埋めこむ工程を行い、第2工程としては、この埋め込まれたCuメッキ膜上にその後の工程で行うCMP工程の削りしろを積み増しする工程を行う。そして、それぞれの工程で、メッキ液の組成を変えることとする。
【0040】
ここでメッキ液Mは硫酸(H2SO4)とCuと塩酸(HCl)と水(H2O)とを含む電解質溶液Eと3種類の添加剤A、B、Cとを含有している。ここでは、例えば添加剤Aに埋め込み特性を向上させるメッキ促進剤(Accelerator)、添加剤Bにメッキ抑制剤(Suppressor)、添加剤Cに平坦化剤(Leveler)を用いることとする。
【0041】
そして、配線溝パターン42を埋め込む第1工程に用いる第1のメッキ液M1(前記図1参照)は、埋め込み特性を向上させるため、Acceleratorの組成比が他の添加剤と比較して高くなるように調整される。第1のメッキ液M1の組成比の一例としては、Cu:H2SO4:HCl:Accelerator:Suppressor:Leveler=50(g/L):10(g/L):60ppm:10(mL/L):2(mL/L):2(mL/L)であることとする。
【0042】
上述したような条件で電解メッキ処理を行う場合には、図1を用いて説明した電解メッキ装置1の電解質溶液供給部23のタンク23a内に、上述したように、第1のメッキ液M1の主成分となる硫酸銅と塩酸と水とからなる電解質溶液Eが貯留されている。この電解質溶液Eの濃度は、後述する添加剤A、B、Cの希釈濃度により調整し、第1工程と第2工程とで同濃度の電解質溶液Eを用いることができるように調整することとする。そして、ポンプ23bにより電解質溶液Eをメッキ液供給管22に供給する。なお、ここでは、塩酸が電解質溶液Eに含まれることとしたが、塩酸は後述する添加剤として供給してもよい。
【0043】
また、添加剤供給部24には3種類の添加剤A、B、Cがそれぞれ別の貯留タンク24a、24b、24cに貯留されており、添加剤A、B、Cは希釈用タンク24a’、24b’、24c’に移送されて、それぞれ所定の濃度に希釈される。そして、希釈された添加剤A’、B’、C’の流量を、添加剤A,B、Cが上述した第1のメッキ液M1の組成比となるように、流量調整機構(図示省略)により調整し、メッキ液供給管22に所定の流量でそれぞれ供給する。これにより、メッキ液供給管22内を流動する電解質溶液Eに、所定の濃度に希釈された添加剤A’、B’、C’が添加されることから、添加剤A’、B’、C’と電解質溶液Eとが混ざり易くなる。
【0044】
このメッキ液供給管22に導入された電解質溶液Eと添加剤A’、B’、C’とは、メッキ液供給管22に設けられた混合機構31内で十分に混合されることで、上述した組成比の第1のメッキ液M1が調製される。そして、この第1のメッキ液M1は均一に混合された状態で、電解メッキ槽11の噴出管13に導入されることで、噴出管13から電解メッキ槽11の内槽11bに第1のメッキ液M1が供給され、内槽11b内に第1のメッキ液M1がオーバーフロー状態で満たされる。この状態の電解メッキ槽11の内槽11bに、上述した状態の基板Wを基板保持部12にフェイスダウン状態で保持させて、基板Wの被処理面が第1のメッキ液M1に浸漬されるようにする。
【0045】
その後、図3(b)に示すように、電解メッキ処理を行い、配線溝パターン42をCuメッキ膜44で埋め込む。この工程に用いる第1のメッキ液M1には、添加剤Aとして埋め込み特性を向上させるAcceleratorが多く含まれていることから、配線溝パターン42内に埋め込まれるCuメッキ膜44は基板Wの全面に渡ってボイドが生じることなく形成される。
【0046】
次に、この後に行うCMP工程の削りしろとなるCuメッキ膜をCuメッキ膜44上に積み増す第2工程を行うため、図1に示す内槽11b内の第1のメッキ液M1を第2工程に用いる第2のメッキ液M2に置換する。この際、一度電源を切り、基板Wの被処理面にメッキ膜が形成されない状態とした後、第2のメッキ液M2に置換することとする。ここで、第2のメッキ液M2は、CMP法により研磨する際のCuメッキ膜の平坦性を高めるように、Levelerの組成比が他の添加剤と比較して高くなるように調製される。第2のメッキ液M2の組成比の一例としては、Cu:H2SO4:HCl:Accelerator:Suppressor:Leveler=50(g/L):10(g/L):60ppm:2(mL/L):2(mL/L):10(mL/L)であることとする。
【0047】
この場合には、添加剤供給部24において、それぞれ所定の濃度に希釈された状態の添加剤A’、B’、C’の流量を、流量調整機構(図示省略)により調整し、添加剤A、B、Cが上述した組成比となるようにメッキ液供給管22に所定の流量でそれぞれ供給する。これにより、メッキ液供給管22を流動する電解質溶液Eと、それぞれの流量が変化した状態で供給された添加剤A’、B’、C’とが、メッキ液供給管22に設けられた混合機構31内で十分に混合される。これにより、上述した組成比の第2のメッキ液M2となり、第2のメッキ液M2は、メッキ液中に添加剤A、B、Cを均一に溶解または分散された状態で電解メッキ槽11の内槽11bに供給され、内槽11b内に第2のメッキ液M2がオーバーフロー状態で満たされる。
【0048】
これにより、基板保持部12に保持された基板Wの被処理面が、第2のメッキ液M2に浸漬された状態となり、この状態で電解メッキ処理の第2工程を行う。すなわち、図3(c)に示すように、配線溝パターン42に埋め込まれたCuメッキ膜44上に、CMP工程での削りしろとなるCuメッキ膜45を形成する。この工程で用いる第2のメッキ液M2には、添加剤CとしてLevelerが多く含まれていることから、Cuメッキ膜45は基板Wの被処理面内全域にわたって平坦性よく形成される。
【0049】
この後の工程は、通常と同様に行い、図3(d)に示すように、CMP法により絶縁膜41の表面が露出するまで研磨して、Cuメッキ膜45およびCuメッキ膜44(前記図3(c)参照)を除去し、配線溝パターン42内にCu配線46を形成する。
【0050】
このような電解メッキ装置1およびこれを用いた電解メッキ方法によれば、メッキ液供給管22に設けられた混合機構31で、電解質溶液Eと添加剤A、B、Cとを十分に混合することでメッキ液M(第1メッキ液M1、第2メッキ液M2)を調製する。これにより、メッキ液M中に添加剤A、B、Cが均一に溶解または分散される。そして、このメッキ液Mを、電解メッキ槽11に供給し、電解メッキ槽11に満たされたメッキ液Mに、基板Wの被処理面を浸漬させて電解メッキ処理を行う。
【0051】
これにより、図3(b)を用いて説明したように、基板W上の絶縁膜41に設けられた配線溝パターン42を、第1のメッキ液M1を用いて、Cuメッキ膜44で埋め込む場合には、添加剤A、B、Cが第1のメッキ液M1中に均一に溶解または分散されることで、基板Wの被処理面全域で埋め込み特性が向上する。したがって、基板Wの被処理面全域にボイドの抑制されたCu配線46を形成することができるため、エレクトロマイグレーション耐性が向上する
【0052】
また、図3(c)を用いて説明したように、上記配線溝パターン42に埋め込まれたCuメッキ膜44上に、第2のメッキ液M2を用いて、Cuメッキ膜45を積み増す場合には、基板Wの被処理面全域でCuメッキ膜45の平坦性を向上させることができる。これにより、Cuメッキ膜45、Cuメッキ膜44をCMP法による研磨により除去して、Cu配線46を形成する工程で、研磨残りを生じることなくCu配線46を形成することができる。したがって、研磨残り等によるCu配線46のショートを防止することができる。
【0053】
以上のことから、このCu配線構造を用いたデバイスの歩留まりが向上することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、添加剤供給部24が、例えば水等の溶媒により所定濃度に希釈された状態の添加剤A’、B’、C’を供給する各添加剤の供給機構を備えた例について説明したが、添加剤供給部24が、添加剤の供給機構の他に水等の溶媒をメッキ液供給管22に直接供給する供給機構を備えていてもよい。そして、この供給機構から供給される水により、メッキ液Mの組成比を調製してもよく、この場合には、供給される水の量および、供給される添加剤A’、B’、C’の濃度に応じて、電解質溶液供給部23内の電解質溶液Eの硫酸、Cu、塩酸の濃度を濃くする等、電解質溶液Eの濃度を適宜変更することとする。また、本実施形態ではCu電解メッキ処理を例にとり説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば銀等の他の電解メッキ処理でも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の電解メッキ装置に係る実施形態を説明するための断面構成図である。
【図2】本発明の電解メッキ装置に係る実施形態の混合機構を説明するための断面構成図および要部拡大図である。
【図3】本発明の電解メッキ方法に係る実施形態を説明するための工程断面図である。
【符号の説明】
【0056】
11…電解メッキ槽、22…メッキ液供給管、23…電解質溶液供給部、24…添加剤供給部、31…混合機構、A,B,C…添加剤、E…電解質溶液、M…メッキ液、W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解メッキ処理により基板の被処理面にメッキ膜を形成する電解メッキ装置であって、
メッキ液を満たした状態で、基板の被処理面に電解メッキ処理を行う電解メッキ槽と、
前記電解メッキ槽に前記メッキ液を供給するメッキ液供給管と、
前記メッキ液供給管に接続されるとともに、前記メッキ液供給管に前記メッキ液の主成分となる電解質溶液を供給する電解質溶液供給部と、
前記メッキ液供給管の前記電解メッキ槽と前記電解質溶液供給部との間の位置に接続されるとともに、前記メッキ液供給管に前記添加剤を供給する添加剤供給部とを備え、
前記メッキ液供給管には、前記添加剤供給部と接続される位置またはこの位置よりも前記電解メッキ槽側に、前記電解質溶液と前記添加剤とを混合して前記メッキ液を調製する混合機構が設けられている
ことを特徴とする電解メッキ装置。
【請求項2】
前記添加剤供給部は、所定の濃度に希釈された状態の前記添加剤を前記メッキ液供給管に供給するように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の電解メッキ装置。
【請求項3】
基板の被処理面にメッキ膜を形成する電解メッキ方法であって、
電解メッキ槽にメッキ液を供給するメッキ液供給管に、前記メッキ液の主成分となる電解質溶液と添加剤とをそれぞれ供給する第1工程と、
前記メッキ液供給管に設けられた混合機構で、前記電解質溶液と前記添加剤とを混合して前記メッキ液を調製する第2工程と、
前記メッキ液を前記電解メッキ槽に供給する第3工程と、
前記電解メッキ槽に供給された前記メッキ液に、基板の被処理面を浸漬させて電解メッキ処理を行う第4工程とを有する
ことを特徴とする電解メッキ方法。
【請求項4】
前記第1工程では、前記添加剤を所定の濃度に希釈した状態で、前記メッキ液供給管に供給する
ことを特徴とする請求項3記載の電解メッキ方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−83445(P2006−83445A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271045(P2004−271045)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】