電鋳品及びその製造方法
【課題】製造工程を短縮化することができる電鋳品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】マスター金型11の表面に、電気めっきを施してマスター金型11と逆パターン形状の電鋳層2を形成し、その電鋳層2をマスター金型11から離型して電鋳品を製造する製造方法において、マスター金型11に少なくとも導電性材料を有する補強枠3を接触させて、その状態でマスター金型11と補強枠3とに電気めっきを施して補強枠3と一体化された電鋳層2を形成し、一体化された電鋳層2と補強枠3とをマスター金型11から離型して電鋳品1を製造する。
【解決手段】マスター金型11の表面に、電気めっきを施してマスター金型11と逆パターン形状の電鋳層2を形成し、その電鋳層2をマスター金型11から離型して電鋳品を製造する製造方法において、マスター金型11に少なくとも導電性材料を有する補強枠3を接触させて、その状態でマスター金型11と補強枠3とに電気めっきを施して補強枠3と一体化された電鋳層2を形成し、一体化された電鋳層2と補強枠3とをマスター金型11から離型して電鋳品1を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電鋳金型、電鋳加工部品等の電鋳品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発されている電鋳品として代表的なものに、例えば電鋳金型がある。電鋳金型は、金属めっき(例えば、ニッケルめっきなど)で形成された金型であり、例えば、導電性薄膜付きのマスター金型(石英等の無機材料にチタンなどの導電性薄膜を形成したもの)に電気めっきを施し、この電気めっき品(電鋳)をマスター金型から離型することにより得られる。その電鋳金型は、光学部品(例えば、光拡散板、導光板、光学レンズ)やマイクロ化学チップ(微小領域化学反応、合成、解析、分析、電気泳動分離解析など用のチップ)、バイオチップ(DNA解析用チップ、たんぱく質分離解析用チップ)などを製造するためのインプリント金型(スタンパ)に用いられる。
【0003】
マスター金型は、例えば、人工石英やサファイア、無アルカリガラスなどの無機材料で構成され、電子ビーム描画の後のドライケミカルエッチングなどにより微細なパターン(例えば溝や突起形状)が形成されている。このようにして作製されるマスター金型は、製造プロセスが複雑であることと、製作に時間がかかるために高価であり、万一破損した場合、損失額が非常に大きくなる。このため、逆パターンを有するマスター金型を用いて電鋳によりパターンを反転した金型を製造し、その電鋳金型によりワーク(最終製品となる基板、や部材)に対してインプリントを行うのが一般的である。
【0004】
マスター金型は非導電性の材料で構成されるので、マスター金型に電気めっきを施すためには、電気めっきを行う側の表面全面に、例えばチタン薄膜等の導電性薄膜が、例えば約0.01〜0.1μmの厚さに形成される。
【0005】
図9に従来提案されているニッケル電鋳金型の製造方法を示す。
【0006】
図9(a)に示すように、マスター金型81を電鋳装置90に配置する。電鋳装置90は、電気めっき液91が充填されためっき槽92内に、直流電源93に接続された2つの電極(陽極端子94、陰極端子95)が配置されたものである。陽極端子94には、陽極板としてニッケル電極板94aが接続され、陰極端子95には、陰極板となるべきマスター金型81が接続されている。陽極端子94−陰極端子95間に直流電圧を印加すると、マスター金型81のパターンが形成された面にニッケルめっき層(電鋳層)が形成される。
【0007】
ニッケルめっきは、例えば厚さ0.1〜1mm程度の金属膜であり、それ自体は薄いので強度がなく、電鋳金型としての耐久性が低い。このために、ニッケルめっき層の電鋳金型としての耐久性を確保するためには、バックアップ部材(補強材)が必要とされている。
【0008】
この補強材の取り付け方法としては、例えば、図9(b)に示すように、ニッケルめっき層82が形成されたマスター金型81を補強材埋込用容器83に挿入し、その容器83内(金型面上)に例えば液状の未硬化エポキシ樹脂などを流し込んで充填し、その後で未硬化エポキシ樹脂を硬化させて樹脂補強材84を形成する手法である。
【0009】
図9(c)に示すように、樹脂補強材84が形成されたニッケルめっき層82およびマスター金型81を容器83から取り出し、樹脂補強材84とマスター金型81を分離させる。このとき、ニッケルめっき層82は、マスター金型81との密着性が低い場合は、マスター金型81から容易に剥離する。また、ニッケルめっき層82と樹脂補強材84とは非常に密着性が高いので、樹脂補強材84とニッケルめっき層82は密着した形で補強材埋込用容器83から取り出すことができる。このようにして、パターン82aが形成されたニッケルめっき層82と樹脂補強材84とが一体化した電鋳金型80が得られる。
【0010】
図9(d)は、得られた電鋳金型の断面図(図面上側)と平面図(図面下側)である。この電鋳金型80は、樹脂等の被転写材に常温または加熱条件下で押圧し、電鋳金型の凹凸のパターンを転写して転写パターンを形成する、いわゆるインプリント金型(スタンパ)として使用されている。
【0011】
具体的には、図10(a)に示すように、被転写材85を加熱ステージ86上に載置し、その被転写材85を加熱しながら、スタンパ80を被転写材85に押し付ける(加圧する)。これにより、図10(b)に示すように、被転写材85には凹凸パターン86aが形成され、インプリント完成品86が得られる。
【0012】
このような電気めっき法を用いた電鋳金型の製造方法においては、マスター金型を超音波振動させながら電気めっき法を行うことで、均質で緻密な導電性薄膜を形成する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
【特許文献1】特開2002−194583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の電鋳金型の製造方法では、マスター金型に電気めっき(電鋳層)を施した後にこのめっき層付きのマスター金型を補強材埋込用容器83にセットする工程と、補強材埋込用容器83に補強材を充填して樹脂補強部をめっき層上に形成する工程と、補強材とマスター金型とを容器から取り出す工程と、めっき層を樹脂補強部と共にマスター金型から離す工程等の多数の工程を要する。したがって、製造上の手間とコストも掛かってしまう。
【0015】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、上記の作業工程を不要とし、製造工程の短縮化、低コスト化を図ることができ、また耐久性が高く、平坦性の高い電鋳品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は次のような製造方法を提案する。すなわち、マスター金型の表面に、電気めっきを施してマスター金型と逆パターン形状の電鋳層を形成し、その電鋳層をマスター金型から離型して電鋳品を得る電鋳品の製造方法において、
前記マスター金型に少なくとも表面が導電性を有する補強枠を接触させて、その状態で前記マスター金型と補強枠とに電気めっきを施して前記補強枠と一体化された電鋳層を形成し、一体化された前記電鋳層と補強枠とを前記マスター金型から離型して電鋳品を得ることを特徴とする。
【0017】
また、次のような電鋳品を提案する。すなわち、マスター金型を用いて電気めっきによりマスター金型と逆パターン形状に形成される電鋳層により構成される電鋳品において、
その電鋳層を補強するための補強枠を有し、この補強枠は、少なくとも表面が導電性を有し前記電気めっきが施されており、前記電鋳層と前記補強枠とが前記電気めっきにより一体化された構造を有している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電鋳品の製造工程の短縮と低コスト化、および耐久性と平坦性に優れ電鋳品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、電気めっき法を用いて製造される電鋳品及びその製造方法に係るものであるが、以下、本発明の好適な第1の実施形態として、電鋳金型及びその製造方法について添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1(a)〜図1(f)は、本実施形態の電鋳金型を製造する方法の各工程を示す断面図である。
【0021】
まず、製造方法に先立って、本実施形態の電鋳金型について説明する。
【0022】
図1(d)に示すように、電鋳金型1は、電気めっき法で形成された金属膜(電鋳層2)で構成される金型であって、その一方の面に微細な凹凸を有するパターン2aが形成され、他方の面の縁に電気めっきされた補強枠3(以下、「めっき補強枠13」と称する)が設けられている。めっき補強枠13は、電鋳層2の周縁に沿って配置され、元々の補強枠3(図1(a)参照)の表面に前記電鋳層2と一体の電気めっき層を施して構成する。
【0023】
また、図1(e)に示すように、めっき補強枠13の内側(めっき補強枠13で囲まれた領域)には、さらに金属製の補強材(以下、「補強充填材」と称する)4が充填されている。補強充填材4は、バルク金属であり、例えば銀ろう材5などを用いて電鋳層2とめっき補強枠13とに接合(ろう付け)されている。また、電鋳層2のパターン2aの耐久性を向上させるために、パターン2aの表面は、TiN(チタンナイトライド)薄膜或いはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜などの耐久性薄膜でコーティングされている。
【0024】
電鋳金型1の製造方法を図1(a)〜図1(e)及び図2に基づき説明する。
【0025】
図1(a)及び図1(b)に示すように、マスター金型11は、例えば人工石英板(金型基板)11aで構成され、その基板表面の一面に微細なパターン11bを形成して予め用意されている。パターン11bは、例えばEB描画(電子ビーム描画)後のドライエッチング法、フォトリソグラフィ法等の通常の微細パターン形成技術により作製される。マスター金型11のパターン11bが形成された面には、導電性薄膜12として例えばTi(チタン)薄膜を、蒸着法やスパッタリングなどの気相成膜法で形成する。Ti薄膜を形成した後、マスター金型11のパターン形成面の導電性薄膜12上に、補強枠3を配置する。補強枠3は、金属製のもの、或いは表面に導電性を有する薄膜が形成された樹脂製またはセラミック製のものでも構わない。補強枠3に用いる金属としては、銅、銅合金、銅より耐食性の高い鉄系材料である各種不錆鋼(ニッケルめっきと密着性に優れたステンレス系材料)などが挙げられる(またはニッケル等が挙げられる)。補強枠3とマスター金型11とは、例えば後述の取り付け治具を用いて、マスター金型11の導電性薄膜12上に固定する。
【0026】
次に図1(c)に示すように、マスター金型11の片側の面の導電性薄膜12上と補強枠3の表面とに、電気めっき法を用いてニッケルめっき層(電鋳層2)を形成する。ニッケルめっき層2は補強枠3の内側(側面)にも形成されるので、補強枠3は、ニッケルめっきが施された分さらに厚くなり、めっき補強枠13となる。
【0027】
図2は、電気めっき法を行うための装置を示す概略図である。
【0028】
図2に示すように、装置20は、直流電源21に接続された陽極端子22と陰極端子23とがめっき槽24内に配置されている。マスター金型11は陰極端子23に接続されている。また、陽極端子22には陽極板22a(例えば、ニッケル極板)が接続されている。めっき槽24内には、電気めっき液25として電気ニッケルめっき液が満たされている。ニッケルめっき液はワット浴でもスルファミン酸ニッケルめっき浴でも構わない。陰極端子23の先端には、取り付け治具26に固定されたマスター金型11が導通接続される。取り付け治具26は、マスター金型11を載置するバックプレート26aと、マスター金型11をバックプレート26a上に固定する保持部26bと、保持部26bをバックプレート26aに締結固定するネジ26cとを備える。取り付け治具の部品はいずれも電気絶縁材料で構成されている。装置20には、電気めっき液25を還流させるための還流手段27が設けられる。還流手段27は、めっき槽24内の電気めっき液25を還流させるポンプ27aと管27bと、その管27bの先端に接続され電気めっき液25を噴射する噴射ノズル27cとを備える。噴射ノズル27cは、陽極板22aと取り付け治具26との間に、かつ、マスター金型11側に向かって電気めっき液25を噴射するよう配置されている。
【0029】
直流電源21により陽極端子22−陰極端子23間に直流電圧が印加されると、陰極端子23の先端に接続されたマスター金型11のパターン11b側表面(導電性薄膜12上及び補強枠3の表面)にニッケルめっきが施されて電鋳層2が形成される。
【0030】
図1(c)に戻り、電気めっき法により電鋳層2を形成した後、電鋳層2及び補強枠3が一体形成されたマスター金型11をチタンの選択溶解液に浸漬(図示省略)し、導電性薄膜12(チタン薄膜)を溶解する。導電性薄膜12を溶解することにより、一体化された電鋳層2と補強枠3がマスター金型11から剥離され、図1(d)に示すような電鋳金型1が得られる。チタン薄膜は、人工石英からなるマスター金型とは密着性を有するために、引き剥がし法ではニッケルめっき層とマスター金型を分離できないので、溶解法を用いる。チタン薄膜は非常に薄いので、ニッケルめっき層とマスター金型の間にチタンの選択溶解液が浸透し、短時間でマスター金型とニッケルめっき層は分離する。
【0031】
このようにして電鋳金型は補強枠に補強されて使用可能となるが、本実施形態では、更に、図1(e)に示すように、電鋳金型成形後にめっき補強枠13の内側(補強枠で囲まれた領域)に、金属からなる補強充填材4を充填して更なる補強を行う。補強充填材4は例えば銅合金などのバルク金属であり、銀ろう材などを用いてめっき補強枠13の内側と電鋳層2とにバルク金属を接合する。補強充填材4をめっき補強枠13の内側に充填する工程は、一体化された電鋳層2とめっき補強枠13とをマスター金型11から剥離する工程の前に行っても、その後に行ってもよいが、マスター金型11は前述のように非常に高価なので、補強充填材の取り付けは、マスター金型11を剥がした後で行うのが良い。
【0032】
本実施形態では、補強充填材4として金属製のものを用いたが、図1(f)に示すように、補強充填材4bとして、金属の代わりに樹脂を充填してもよい。補強充填材4bを構成する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂などの液状の未硬化樹脂(主剤と硬化剤からなる)を用いる。この液状の未硬化樹脂をめっき補強枠13の内側に充填し、その後で樹脂を自然硬化させる。
【0033】
本実施形態の電鋳金型1は、例えば、インプリント(マイクロインプリント、ナノインプリント)用のスタンパに用いられる。次に電鋳金型1を用いたインプリントについて説明する。
【0034】
図3(a)に示すように、スタンパ(電鋳金型1)のめっき補強枠13が形成された側をヒータ32に密着させて、スタンパをヒータ32に固定する。ヒータ32によりスタンパを加熱しながら、インプリント対象とする樹脂材(被転写部材33)に押付ける。
【0035】
図3(b)に示すように、加熱されたスタンパに押付けられた被転写部材33には、スタンパのパターン2aと逆の(反転した)凹凸パターン33aがインプリントされる。
【0036】
また、図4に示すように、大面積の樹脂材からなる被転写部材33bにインプリントを行う場合には、一箇所インプリント(加熱押圧)した後に、スタンパをヒータ32と共に移動させ、再びインプリントする方法(ステップアンドリピート法)を用いることができる。
【0037】
本実施形態の電鋳金型の製造方法によれば、マスター金型11に電気めっきを施す(電鋳層2を形成する)前に、マスター金型11に補強枠3を配置する工程を行うだけで補強部材を有する電鋳金型1を製造することができ、製造工程の短縮化を図ることができる。すなわち、本実施形態の製造方法は、従来の製造方法のように、マスター金型に電鋳層を形成した後に電鋳層付きのマスター金型を補強充填材埋込用容器にセットする工程と、補強材とマスター金型とを容器から取り出す工程と、めっき層を樹脂補強部と共にマスター金型から離す工程等の多数の工程を省略することができる。
【0038】
本製造方法は、製造工程を短縮化すると共に、従来の電鋳金型の製造方法で用いられていた補強充填材埋込用容器を必要としないのが大きな特徴である。従来の電鋳金型製造方法では、前述のように(図9(b)〜図9(d)参照)、マスター金型81は非常に高価であるが、補強充填材埋込用容器83に電鋳層82が形成されたマスター金型81をセットし、補強充填材埋込用容器83から、補強充填材84を埋め込んだ電鋳層付きマスター金型を取り出す必要がある。このとき、マスター金型81を破損してしまう場合が多く、マスター金型81の補強充填材埋込用容器83へのセットと取り出しには細心の注意が必要である。通常、補強充填材埋込用容器83には、軽量の安価なプラスチック容器などを用い、電鋳層82が形成されたマスター金型81と補強充填材84とを補強充填材埋込用容器83から取り出す際、補強充填材埋込用容器83を破壊して取り出すことが多い。これは、補強充填材84と補強充填材埋込用容器83とが接着してしまうために、簡単には取り出すことができないためである。このときマスター金型81に応力が加わって、マスター金型81破損してしまう場合が多くある。
【0039】
本製造方法では、電鋳層形成後にすでに補強枠3が電鋳層2と一体化しているので、マスター金型11から電鋳層2を剥離しても電鋳層2が反ったり変形したり、場合によっては破損してしまうおそれがない。また、本製造方法では、電気めっきを行う前に補強枠3を取り付け、電気めっきにより電鋳層2を形成するだけで補強部材(めっき補強枠13)を形成することができる。また、電鋳層形成後、更なる補強を行うべく補強充填材4を充填するに際し、一体化した補強枠3と電鋳層2をマスター金型11から剥離させているので、マスター金型11を破損させることなく、金属の補強充填材4を電鋳層2に溶接(ろう付け)で取り付けることができる。
【0040】
従来の製造方法では、補強部材(補強充填材)の取り付け前にマスター金型81から電鋳層82を剥離すると、電鋳層82の変形、反り、または破損が起こる。このために、電鋳層82をマスター金型81から剥離する前に、マスター金型81を補強充填材埋込用容器83にセットし、電鋳層82に補強充填材84を設ける工程を行わなければならない。また、従来の製造方法では、電鋳層82に金属の補強部材を取り付ける場合、マスター金型81の破損の問題から、溶接方式などを用いることができない欠点がある。例えば、銀ろうなどを用いて金属の補強部材を取り付ける(ろう付けする)場合は、高価な石英製のマスター金型81に熱が伝わって、熱応力による破壊が起こる。従って、従来の製造方法では、補強部材の取り付けには樹脂製の接着材しか用いることができず、接着界面の耐熱性の高い金属補強部材を取り付けることができないなどの制約を受ける。
【0041】
このように、本実施形態の電鋳金型の製造方法によれば、マスター金型11の破損のおそれがなく、補強充填材埋込用容器が不要である。また、容器からの取り出しの作業も省略できる、耐熱性の高い補強部材(補強枠3,補強充填材4)を取り付けることができるなど多くの効果を有する。
【0042】
また、本実施形態の電鋳金型1は、補強枠3を金属或いは強度の高い樹脂やセラミックで形成しているので、金型の外周が非常に堅牢で、壊れにくく耐久性が高い。
【0043】
さらに、電鋳金型の耐久性が必要な場合、電鋳金型1のパターン形成面には、気相成膜法により耐磨耗性や耐熱性の高いTiN(チタンナイトライド)薄膜または、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜などの耐久性薄膜をコーティングすることができる。
【0044】
従来の製造方法では、気相成膜処理は補強充填材84の取り付け後となるが、補強充填材84の耐熱性が低いので気相成膜処理を行うことが難しい。通常、気相成膜処理は200℃以上で行われるので、有機樹脂材料からなる補強充填材84は、気相成膜処理中に熱分解し変質するおそれがある。
【0045】
これに対して本製造方法では、補強充填材84を取り付ける前に気相成膜処理を行うことができる。すなわち、補強充填材を取り付けることなく、電気めっき接合により一体化されためっき補強枠13と電鋳層2をマスター金型11から剥離することが可能であり、その状態で気相成膜することができる。電鋳金型1は、めっき補強枠13、電鋳層2ともに金属で構成されているので耐熱性が高く、気相成膜条件で変形したり変質したりすることがない。したがって、本製造方法では、気相成膜の応用によって、電鋳層2に形成されたパターン2aの耐久性、すなわち耐熱性や耐摩耗性を著しく向上させることができる。
【0046】
本実施形態では、マスター金型11を非導電性材料である石英を用いて構成したが、マスター金型11は、導電性材料で形成されたものでもよい。マスター金型11を導電性材料で構成する場合、上述の導電性薄膜12を形成する工程は不要である。ただし、本製造方法は電鋳層2をマスター金型11から離型する工程を有するので、マスター金型11は、電鋳層2との密着性が低い導電性材料で構成されるのがよい。密着性の低い導電性材料としては、例えば、高クロム含有ステンレス系材料が好ましく、他にチタン、チタン合金、クロム、タングステン、アルミニウム等の表面に不働態化膜を形成しやすい材料が挙げられる。
【0047】
電鋳金型1を構成する電鋳層2は、めっき補強枠13と一体に形成されているので、平坦性が高い。このために電鋳層2の平坦性が高い電鋳金型1を用いたスタンパは、高精度なインプリントを行うことができる。
【0048】
本実施形態のスタンパは、樹脂を用いずに構成されているので、めっき補強枠13及び金属からなる補強充填材4を介してヒータ32で直接加熱することができる。またスタンパを用いたインプリントでは、従来のようにワーク(被転写部材33)の支持台側にヒータを設ける必要性がなく、スタンパを直接加熱することができるのでヒータ32の熱容量を小さくすることができる。
【0049】
スタンパは、ヒータ32で直接加熱することができるので、大面積の樹脂材料(ワーク、被転写部材33b)にステップアンドリピートでインプリントすることができる。また、スタンパは、金属製の補強充填材4を有するので、インプリントの位置精度を高くすることができる。
【0050】
次に第2の実施形態について図5に基づき説明する。
【0051】
図5(d)に示すように、本実施形態の電鋳金型51の基本的な構成部分は、上述した図1の電鋳金型1とほぼ同様である。ただし、前実施形態では、補強枠3を電鋳層2の周縁のみに形成しているのに対し、本実施形態では、補強枠53は、上記周縁に形成される補強枠53aと、その補強枠53aの内側に間隔を置いて配置される補強板53bとで構成される。
【0052】
本実施形態の電鋳金型の製造方法を説明する。
【0053】
図5(a)及び図5(b)に示すように、マスター金型11のパターン11bが形成された側の表面に導電性薄膜12を形成した後、マスター金型11の周縁上と、その縁に囲まれた領域内とに補強枠53を形成する。
【0054】
内側の補強板53bの下部(導電性薄膜12との接着箇所近傍)53cは、幅がテーパー状に狭く形成されている。補強板53bの下部53cをテーパー状に狭く形成することで、パターン11bの、補強板53bに近接した箇所にも十分にめっきを施すことができ、ムラのない電鋳層2を形成することができる。
【0055】
図5(c)に示すように、電気めっきにより、マスター金型11の補強枠53が形成された側の面にニッケルめっき層(電鋳層52)を形成する。ここで、補強枠53aは、めっき後はめっき補強枠153aと称され、補強板53bは、めっき後はめっき補強板153bと称される。めっき補強枠153aとめっき補強板153bとを総称したものをめっき補強枠153と称する。
【0056】
その後、導電性薄膜12を溶解し、電鋳層52とめっき補強枠153(153a,153b)とをマスター金型11から剥離し、図5(d)に示す電鋳金型51が得られる。本電鋳金型51の製造方法においては、補強充填材がなくても平坦性が高い特徴があるが、さらに平坦性を上げるために、前実施形態のように、めっき補強枠153で囲まれた領域に補強充填材を充填してもよい。
【0057】
本実施形態の電鋳金型51は、周縁のめっき補強枠153aに加え、その内側にめっき補強板153bが配置されているので、補強充填材4を用いることなく、電鋳層52の耐久性を向上させることができる。本実施形態では、補強板53bを多く設けることで、補強充填材4を充填する工程を省略することができ、前実施形態の製造方法より短時間で電鋳金型を製造することができる。
【0058】
本実施形態では、補強板53bは、図5(b)に示すように、間隔を置いて並べて配置したが、補強板53bの配置はこれに限定されず、例えば、格子状や網目状に配置してもよい。
【0059】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0060】
図6の(a)〜(d)は、本実施例の製造工程を示す平面図、図6の(e)〜(h)は、同図(a)〜(d)に対応する縦断面図である。
【0061】
図6(a)及び図6(e)に示すように、マスター金型11は、例えば厚さ1.0mm、20mm角の正方形の石英製のものを用いる。マスター金型11に、EB(電子ビーム描画)法により、例えば幅0.5〜5.0μm、深さ0.5〜5.0μm、長さ15mmの範囲の溝パターン11bを多数形成する。なお、図6(e)の断面図では溝パターンは、そのサイズが小さいので省略している。
【0062】
図6(b)の平面図及び図6(f)の断面図に示すように、マスター金型11の表面全面に導電性薄膜としてTi薄膜を約0.1μmの厚さに形成する。図では導電性薄膜は省略している。次にTi薄膜形成後、マスター金型11の縁にSUS304系ステンレスからなる補強枠3を形成する。
【0063】
図6(c)及び図6(g)に示すように、スルファミン酸ニッケルめっき液を用いて電気ニッケルめっきを行い、ニッケル製の電鋳層2を形成する。電気めっき条件は例えば、電流密度は30A/dm2、浴温は60℃とし、電気ニッケルめっき層(電鋳層2)は、0.2〜1mmの厚さに形成する。
【0064】
図6(d)及び図6(h)に示すように、電鋳層2が形成されたマスター金型11をTi選択溶解液に1時間浸漬してTi薄膜を溶解し、めっき補強枠13と電鋳層2をマスター金型11から剥離し、本実施例の電鋳金型61を得る。
【実施例2】
【0065】
図7(a)及び図7(e)に示すように、実施例2では、マスター金型を符号11cで示す。本実施例のマスター金型11cは、例えば厚さ1mm、20mm角の正方形であり、ニッケルめっきとは密着性の悪いステンレス系材料(例えばSUS316)で形成されたものを用いる。このマスター金型11cには、ケミカルエッチング法により、例えば幅5〜10μm、深さ1〜5μm、長さ15mmの溝パターン11bが多数形成されている。そしてパターン11bが形成されたマスター金型11c上にニッケル製の補強枠3を形成する。
【0066】
図7(c)及び図7(g)に示すように、スルファミン酸ニッケルめっき液を用いて電気ニッケルを行い、ニッケル製の電鋳層2を形成する。電気めっき条件は、電流密度は例えば30A/dm2、浴温は60℃とする。電気ニッケルめっき層(電鋳層2)は、0.2〜1mmの厚さに形成する。
【0067】
電鋳層2が形成されたマスター金型11cに熱歪を与えて、めっき補強枠13と電鋳層2をマスター金型から剥離し、本実施例の電鋳金型を得る。本実施例では、実施例1で述べたTi選択溶解液によるTi薄膜の剥離処理が省略される。
【0068】
マスター金型11cと電鋳層2に熱を付与させることにより、マスター金型11cの構成材料であるステンレスと、電鋳層2の構成材料であるニッケルとの線膨張係数の違いにより、両者間に歪(熱歪)が生じる。マスター金型11cはニッケル対して密着性の低いステンレスを用いて構成されているので、熱歪により、電鋳層2をマスター金型11cから容易に剥離し電鋳金型61を得ることができる。
【実施例3】
【0069】
図8(a)及び図8(e)に示すように、本実施例のマスター金型は、符号11dで示す。マスター金型11dは厚さ1mm、20mm角の正方形の石英基板11a上に感光性樹脂14でパターン11bが形成されたものを用いる。このマスター金型11dは、石英基板11a上に感光性樹脂14を塗布したあと、マスクを用いて露光して感光性樹脂14からなるパターン11bを形成するものである。感光性樹脂14には、光が当たった部分が硬化するネガ型の感光性樹脂を用い、例えば、幅5〜10μm、深さ1〜5μm、長さ15mmの溝パターン11bを多数形成する。その後、パターン11bの上にパラジウム(Pd)めっき触媒層を設ける(図示せず)。Pdめっき触媒層を形成した後、無電解銅めっきを行って導電性薄膜を形成する(図示せず)。無電解銅めっき層は、0.1〜0.2μmの厚さに形成する。また、パラジウムめっきの代わりに実施例1のようにチタン薄膜を約0.1μmを施しても構わない。この場合は、感光性樹脂が熱劣化しない低温スパッタリング法を用いる。
【0070】
図8(b)及び図8(f)に示すように、導電性薄膜が形成されたパターン11bを有するマスター金型11d上に、ニッケル製の補強枠3を形成する。
【0071】
図8(c)及び図8(g)に示すように、スルファミン酸ニッケルめっき液を用いて電気めっきを行い、ニッケル製の電鋳層2を形成する。電気めっき時の電流密度は例えば30A/dm2、浴温は60℃とする。電気ニッケルめっき層(電鋳層2)は、0.2〜1mmの厚さに形成する。
【0072】
図8(d)及び図8(h)に示すように、電鋳層2を形成後、マスター金型11dの感光性樹脂14をアルカリ水溶液で溶解させるか、または石油系溶剤で溶解することによって、めっき補強枠13と電鋳層2をともにマスター金型から離型し電鋳金型61が得られる。感光性樹脂14を溶解してマスター金型11d(石英基板11a)から電鋳金型を離型した後、パターン11bの表面に残った無電解銅めっき層を、硝酸などの酸化性の酸で溶解除去する。パラジウム触媒層は非常に薄いのでニッケルめっき層(電鋳層2)側に残っても構わない。また、導電性薄膜にチタンを用いた場合にもチタンは薄いので、ニッケルめっき側に残っても構わない。
【0073】
なお、上記実施形態及び実施例では、電鋳品として、電鋳金型を例示したが、本発明は、これに限定されるものではなく、補強を必要する電鋳品であれば、金型以外の各種工業用製品、家庭用製品、その他の部品などの成形品にも適用可能である。
【0074】
例えば、ノズル成形体を電鋳品で成形する場合の、基本的な実施形態の要旨について、図11を参照して説明する。本実施形態では、図11に示すように、マスター金型101は、少なくとも表面が導電性を有する金型基板101aと、この金型基板のうち電気めっきにより電鋳する側の片面に形成された型用のフォトレジスト102とで構成される。
【0075】
この金型基板101aの片面に補強枠103を配置し、金型基板101a上と補強枠103とに電気めっきを施す。電気めっきにより金型基板101a上に形成された電鋳層104が形成される。その後、めっきで一体化された電鋳層104及びめっき補強枠105(補強枠103にめっきを施したもの)をフォトレジスト102と共に金型基板から離し、その後、フォトレジストを溶解除去することでノズル成形体(電鋳品)を得る。
【0076】
次に本実施形態の実施例について説明する。
【実施例4】
【0077】
一例として、ノズルを有する成形体として、インクジェットノズルに用いる実施例を図11及び図12により説明する。
【0078】
図11(a)から(c)は、本実施例に係わるインクジェットノズルの製造工程を示すものである。図11(a)は、マスター金型101に電気めっき(電鋳層)を形成する前の状態である。マスター金型101は、例えば人工石英板(基板)101aと、ノズルのオリフィスの型になるめっきレジスト102とからなる。ここで、めっきレジスト102は、電気めっきの施されない領域を確保するためのフォトレジストを意味するものである。図12に示すように、電鋳工程に入る前に、人工石英板で構成される金型基板101aの片面(電鋳する側)の中心にめっきレジスト102がフォトリソグラフィにより予め形成してある。
【0079】
例えば、マスター金型101の基板101aとして、径が5mmΦ、厚さ1.0mmの人工石英板101aを用いる。この人工石英板101aの片面(電鋳する側)に、例えば厚さ約0.05μmの導電性薄膜、例えばチタン(Ti)薄膜が形成してある。
【0080】
めっきレジスト102は、ネガ型フォトレジストを用いてマスク露光、現像により作成される。このレジストは、ポジ型フォトレジストを用いて作成してもよい。めっきレジスト102のパターンは、例えば径0.05〜0.1mmΦ、厚さ0.5〜1.0mmである。
【0081】
めっきレジスト付きのマスター金型101の片面(電鋳する側)に、図11(a)に示すように、円筒状の補強枠103が配置される。補強枠103は、例えば、内径4.5mmΦ、外径5mmΦ、長さ10mmのSUS304を用いる。
【0082】
めっきレジスト付きのマスター金型101の片面側に電気ニッケルめっきが施され、電鋳層(ニッケル層)104とめっき補強枠(めっき後の補強枠)105とが一体化する。電気めっき条件は、既述した実施例同様、例えば、スルファミン酸ニッケルめっき浴を用い、電流密度は例えば30A/dm2、浴温は60℃とする。電鋳層104は、例えば、厚さ0.5〜1.0mmである。
【0083】
上記の電鋳層104の成形後に、既述した実施形態1同様に、チタンの選択溶解液を用いて人工石英板に施した導電性薄膜(例えば、チタン薄膜)を溶解する。それにより、一体化された電鋳層104及びめっき補強枠105がマスター金型101から剥離される。
【0084】
その後に、めっきレジスト102は、有機溶媒を用いて除去され、レジスト除去部分にノズル用オリフィス102aが形成されて、電鋳品としてインクジェットノズルが得られる。ここで、めっきレジストのパターンの形状は任意の形状でよい。例えば、円形、三角形、星形、楕円形のいずれでもよい。補強枠としては、SUS304のほかに、純ニッケル、銅、銅合金などが考えられる。電気めっきとしては、耐食性及び耐薬品性に優れた錫−ニッケル合金を使用してもよい。
【0085】
なお、上記した金型基板、めっきレジスト、補強枠、電鋳層などの仕様は、適宜設定されるものであり、上記数値に限定されるものではない。また、本実施形態及び実施例同様で説明したマスター金型の基板材料、電気めっき材料、補強枠の材料も、今まで本明細書で述べてきた材料のほかに、種々のものが適用可能であり、特に限定するものではない。
【0086】
上記実施例では、電鋳加工部品として、ノズルを例示したがその他の成形品でもよく、種々の成形品の形状に応じてめっきレジストのパターン形状を設計すればよい。
【0087】
また、実施例の電鋳金型は、主にインプリント用を用いて説明したが、インジェクション法等の樹脂モールド用の金型にも応用可能であり、また、その応用に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の電鋳金型の製造方法の各工程を示す図であり、(a)、(c)〜(f)はその断面図、(b)はその平面図である。
【図2】電鋳金型の製造方法に用いる製造装置を示す概略図である。
【図3】(a)及び(b)は、第1の実施形態のインプリントの各工程を示す断面図である。
【図4】第1の実施形態のインプリントにおいて、ステップアンドリピート工程を示す断面図である。
【図5】本発明に係る好適な第2の実施形態の電鋳金型の製造方法の各工程を示す図であり、(a)、(c)及び(d)はその断面図、(b)はその平面図である。
【図6】(a)〜(d)は実施例1の電鋳金型の製造方法を説明するための断面図であり、(e)〜(h)は実施例1の電鋳金型の製造方法を説明するための平面図である。
【図7】(a)〜(d)は実施例2の電鋳金型の製造方法を説明するための断面図であり、(e)〜(h)は実施例2の電鋳金型の製造方法を説明するための平面図である。
【図8】(a)〜(d)は実施例3の電鋳金型の製造方法を説明するための断面図であり、(e)〜(h)は実施例3の電鋳金型の製造方法を説明するための平面図である。
【図9】(a)は、従来の電鋳金型の製造方法に用いる装置を示す概略図であり、(b)〜(d)は、従来の電鋳金型の製造方法の各工程を示す断面図((d)は平面図も含む)である。
【図10】(a)及び(b)は、従来のインプリントの各工程を示す断面図である。
【図11】(a)から(c)は、実施例第4に係わるインクジェットノズルの製造工程を示す断面図。
【図12】実施例4に使用するマスター金型の平面図及び断面図である。
【符号の説明】
【0089】
1…電鋳金型、2…電鋳層、2a…パターン、3…補強枠、4…補強材(補強充填材)、4b…補強充填材、11…マスター金型、11a…金型基板、11b…パターン、12…導電性薄膜、13…めっき補強枠、101…マスター金型、101a…金型基板、102…フォトレジスト、103…補強枠、104…電鋳層(ノズル成形体)、105…めっき補強枠。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電鋳金型、電鋳加工部品等の電鋳品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発されている電鋳品として代表的なものに、例えば電鋳金型がある。電鋳金型は、金属めっき(例えば、ニッケルめっきなど)で形成された金型であり、例えば、導電性薄膜付きのマスター金型(石英等の無機材料にチタンなどの導電性薄膜を形成したもの)に電気めっきを施し、この電気めっき品(電鋳)をマスター金型から離型することにより得られる。その電鋳金型は、光学部品(例えば、光拡散板、導光板、光学レンズ)やマイクロ化学チップ(微小領域化学反応、合成、解析、分析、電気泳動分離解析など用のチップ)、バイオチップ(DNA解析用チップ、たんぱく質分離解析用チップ)などを製造するためのインプリント金型(スタンパ)に用いられる。
【0003】
マスター金型は、例えば、人工石英やサファイア、無アルカリガラスなどの無機材料で構成され、電子ビーム描画の後のドライケミカルエッチングなどにより微細なパターン(例えば溝や突起形状)が形成されている。このようにして作製されるマスター金型は、製造プロセスが複雑であることと、製作に時間がかかるために高価であり、万一破損した場合、損失額が非常に大きくなる。このため、逆パターンを有するマスター金型を用いて電鋳によりパターンを反転した金型を製造し、その電鋳金型によりワーク(最終製品となる基板、や部材)に対してインプリントを行うのが一般的である。
【0004】
マスター金型は非導電性の材料で構成されるので、マスター金型に電気めっきを施すためには、電気めっきを行う側の表面全面に、例えばチタン薄膜等の導電性薄膜が、例えば約0.01〜0.1μmの厚さに形成される。
【0005】
図9に従来提案されているニッケル電鋳金型の製造方法を示す。
【0006】
図9(a)に示すように、マスター金型81を電鋳装置90に配置する。電鋳装置90は、電気めっき液91が充填されためっき槽92内に、直流電源93に接続された2つの電極(陽極端子94、陰極端子95)が配置されたものである。陽極端子94には、陽極板としてニッケル電極板94aが接続され、陰極端子95には、陰極板となるべきマスター金型81が接続されている。陽極端子94−陰極端子95間に直流電圧を印加すると、マスター金型81のパターンが形成された面にニッケルめっき層(電鋳層)が形成される。
【0007】
ニッケルめっきは、例えば厚さ0.1〜1mm程度の金属膜であり、それ自体は薄いので強度がなく、電鋳金型としての耐久性が低い。このために、ニッケルめっき層の電鋳金型としての耐久性を確保するためには、バックアップ部材(補強材)が必要とされている。
【0008】
この補強材の取り付け方法としては、例えば、図9(b)に示すように、ニッケルめっき層82が形成されたマスター金型81を補強材埋込用容器83に挿入し、その容器83内(金型面上)に例えば液状の未硬化エポキシ樹脂などを流し込んで充填し、その後で未硬化エポキシ樹脂を硬化させて樹脂補強材84を形成する手法である。
【0009】
図9(c)に示すように、樹脂補強材84が形成されたニッケルめっき層82およびマスター金型81を容器83から取り出し、樹脂補強材84とマスター金型81を分離させる。このとき、ニッケルめっき層82は、マスター金型81との密着性が低い場合は、マスター金型81から容易に剥離する。また、ニッケルめっき層82と樹脂補強材84とは非常に密着性が高いので、樹脂補強材84とニッケルめっき層82は密着した形で補強材埋込用容器83から取り出すことができる。このようにして、パターン82aが形成されたニッケルめっき層82と樹脂補強材84とが一体化した電鋳金型80が得られる。
【0010】
図9(d)は、得られた電鋳金型の断面図(図面上側)と平面図(図面下側)である。この電鋳金型80は、樹脂等の被転写材に常温または加熱条件下で押圧し、電鋳金型の凹凸のパターンを転写して転写パターンを形成する、いわゆるインプリント金型(スタンパ)として使用されている。
【0011】
具体的には、図10(a)に示すように、被転写材85を加熱ステージ86上に載置し、その被転写材85を加熱しながら、スタンパ80を被転写材85に押し付ける(加圧する)。これにより、図10(b)に示すように、被転写材85には凹凸パターン86aが形成され、インプリント完成品86が得られる。
【0012】
このような電気めっき法を用いた電鋳金型の製造方法においては、マスター金型を超音波振動させながら電気めっき法を行うことで、均質で緻密な導電性薄膜を形成する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
【特許文献1】特開2002−194583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の電鋳金型の製造方法では、マスター金型に電気めっき(電鋳層)を施した後にこのめっき層付きのマスター金型を補強材埋込用容器83にセットする工程と、補強材埋込用容器83に補強材を充填して樹脂補強部をめっき層上に形成する工程と、補強材とマスター金型とを容器から取り出す工程と、めっき層を樹脂補強部と共にマスター金型から離す工程等の多数の工程を要する。したがって、製造上の手間とコストも掛かってしまう。
【0015】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、上記の作業工程を不要とし、製造工程の短縮化、低コスト化を図ることができ、また耐久性が高く、平坦性の高い電鋳品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は次のような製造方法を提案する。すなわち、マスター金型の表面に、電気めっきを施してマスター金型と逆パターン形状の電鋳層を形成し、その電鋳層をマスター金型から離型して電鋳品を得る電鋳品の製造方法において、
前記マスター金型に少なくとも表面が導電性を有する補強枠を接触させて、その状態で前記マスター金型と補強枠とに電気めっきを施して前記補強枠と一体化された電鋳層を形成し、一体化された前記電鋳層と補強枠とを前記マスター金型から離型して電鋳品を得ることを特徴とする。
【0017】
また、次のような電鋳品を提案する。すなわち、マスター金型を用いて電気めっきによりマスター金型と逆パターン形状に形成される電鋳層により構成される電鋳品において、
その電鋳層を補強するための補強枠を有し、この補強枠は、少なくとも表面が導電性を有し前記電気めっきが施されており、前記電鋳層と前記補強枠とが前記電気めっきにより一体化された構造を有している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電鋳品の製造工程の短縮と低コスト化、および耐久性と平坦性に優れ電鋳品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、電気めっき法を用いて製造される電鋳品及びその製造方法に係るものであるが、以下、本発明の好適な第1の実施形態として、電鋳金型及びその製造方法について添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1(a)〜図1(f)は、本実施形態の電鋳金型を製造する方法の各工程を示す断面図である。
【0021】
まず、製造方法に先立って、本実施形態の電鋳金型について説明する。
【0022】
図1(d)に示すように、電鋳金型1は、電気めっき法で形成された金属膜(電鋳層2)で構成される金型であって、その一方の面に微細な凹凸を有するパターン2aが形成され、他方の面の縁に電気めっきされた補強枠3(以下、「めっき補強枠13」と称する)が設けられている。めっき補強枠13は、電鋳層2の周縁に沿って配置され、元々の補強枠3(図1(a)参照)の表面に前記電鋳層2と一体の電気めっき層を施して構成する。
【0023】
また、図1(e)に示すように、めっき補強枠13の内側(めっき補強枠13で囲まれた領域)には、さらに金属製の補強材(以下、「補強充填材」と称する)4が充填されている。補強充填材4は、バルク金属であり、例えば銀ろう材5などを用いて電鋳層2とめっき補強枠13とに接合(ろう付け)されている。また、電鋳層2のパターン2aの耐久性を向上させるために、パターン2aの表面は、TiN(チタンナイトライド)薄膜或いはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜などの耐久性薄膜でコーティングされている。
【0024】
電鋳金型1の製造方法を図1(a)〜図1(e)及び図2に基づき説明する。
【0025】
図1(a)及び図1(b)に示すように、マスター金型11は、例えば人工石英板(金型基板)11aで構成され、その基板表面の一面に微細なパターン11bを形成して予め用意されている。パターン11bは、例えばEB描画(電子ビーム描画)後のドライエッチング法、フォトリソグラフィ法等の通常の微細パターン形成技術により作製される。マスター金型11のパターン11bが形成された面には、導電性薄膜12として例えばTi(チタン)薄膜を、蒸着法やスパッタリングなどの気相成膜法で形成する。Ti薄膜を形成した後、マスター金型11のパターン形成面の導電性薄膜12上に、補強枠3を配置する。補強枠3は、金属製のもの、或いは表面に導電性を有する薄膜が形成された樹脂製またはセラミック製のものでも構わない。補強枠3に用いる金属としては、銅、銅合金、銅より耐食性の高い鉄系材料である各種不錆鋼(ニッケルめっきと密着性に優れたステンレス系材料)などが挙げられる(またはニッケル等が挙げられる)。補強枠3とマスター金型11とは、例えば後述の取り付け治具を用いて、マスター金型11の導電性薄膜12上に固定する。
【0026】
次に図1(c)に示すように、マスター金型11の片側の面の導電性薄膜12上と補強枠3の表面とに、電気めっき法を用いてニッケルめっき層(電鋳層2)を形成する。ニッケルめっき層2は補強枠3の内側(側面)にも形成されるので、補強枠3は、ニッケルめっきが施された分さらに厚くなり、めっき補強枠13となる。
【0027】
図2は、電気めっき法を行うための装置を示す概略図である。
【0028】
図2に示すように、装置20は、直流電源21に接続された陽極端子22と陰極端子23とがめっき槽24内に配置されている。マスター金型11は陰極端子23に接続されている。また、陽極端子22には陽極板22a(例えば、ニッケル極板)が接続されている。めっき槽24内には、電気めっき液25として電気ニッケルめっき液が満たされている。ニッケルめっき液はワット浴でもスルファミン酸ニッケルめっき浴でも構わない。陰極端子23の先端には、取り付け治具26に固定されたマスター金型11が導通接続される。取り付け治具26は、マスター金型11を載置するバックプレート26aと、マスター金型11をバックプレート26a上に固定する保持部26bと、保持部26bをバックプレート26aに締結固定するネジ26cとを備える。取り付け治具の部品はいずれも電気絶縁材料で構成されている。装置20には、電気めっき液25を還流させるための還流手段27が設けられる。還流手段27は、めっき槽24内の電気めっき液25を還流させるポンプ27aと管27bと、その管27bの先端に接続され電気めっき液25を噴射する噴射ノズル27cとを備える。噴射ノズル27cは、陽極板22aと取り付け治具26との間に、かつ、マスター金型11側に向かって電気めっき液25を噴射するよう配置されている。
【0029】
直流電源21により陽極端子22−陰極端子23間に直流電圧が印加されると、陰極端子23の先端に接続されたマスター金型11のパターン11b側表面(導電性薄膜12上及び補強枠3の表面)にニッケルめっきが施されて電鋳層2が形成される。
【0030】
図1(c)に戻り、電気めっき法により電鋳層2を形成した後、電鋳層2及び補強枠3が一体形成されたマスター金型11をチタンの選択溶解液に浸漬(図示省略)し、導電性薄膜12(チタン薄膜)を溶解する。導電性薄膜12を溶解することにより、一体化された電鋳層2と補強枠3がマスター金型11から剥離され、図1(d)に示すような電鋳金型1が得られる。チタン薄膜は、人工石英からなるマスター金型とは密着性を有するために、引き剥がし法ではニッケルめっき層とマスター金型を分離できないので、溶解法を用いる。チタン薄膜は非常に薄いので、ニッケルめっき層とマスター金型の間にチタンの選択溶解液が浸透し、短時間でマスター金型とニッケルめっき層は分離する。
【0031】
このようにして電鋳金型は補強枠に補強されて使用可能となるが、本実施形態では、更に、図1(e)に示すように、電鋳金型成形後にめっき補強枠13の内側(補強枠で囲まれた領域)に、金属からなる補強充填材4を充填して更なる補強を行う。補強充填材4は例えば銅合金などのバルク金属であり、銀ろう材などを用いてめっき補強枠13の内側と電鋳層2とにバルク金属を接合する。補強充填材4をめっき補強枠13の内側に充填する工程は、一体化された電鋳層2とめっき補強枠13とをマスター金型11から剥離する工程の前に行っても、その後に行ってもよいが、マスター金型11は前述のように非常に高価なので、補強充填材の取り付けは、マスター金型11を剥がした後で行うのが良い。
【0032】
本実施形態では、補強充填材4として金属製のものを用いたが、図1(f)に示すように、補強充填材4bとして、金属の代わりに樹脂を充填してもよい。補強充填材4bを構成する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂などの液状の未硬化樹脂(主剤と硬化剤からなる)を用いる。この液状の未硬化樹脂をめっき補強枠13の内側に充填し、その後で樹脂を自然硬化させる。
【0033】
本実施形態の電鋳金型1は、例えば、インプリント(マイクロインプリント、ナノインプリント)用のスタンパに用いられる。次に電鋳金型1を用いたインプリントについて説明する。
【0034】
図3(a)に示すように、スタンパ(電鋳金型1)のめっき補強枠13が形成された側をヒータ32に密着させて、スタンパをヒータ32に固定する。ヒータ32によりスタンパを加熱しながら、インプリント対象とする樹脂材(被転写部材33)に押付ける。
【0035】
図3(b)に示すように、加熱されたスタンパに押付けられた被転写部材33には、スタンパのパターン2aと逆の(反転した)凹凸パターン33aがインプリントされる。
【0036】
また、図4に示すように、大面積の樹脂材からなる被転写部材33bにインプリントを行う場合には、一箇所インプリント(加熱押圧)した後に、スタンパをヒータ32と共に移動させ、再びインプリントする方法(ステップアンドリピート法)を用いることができる。
【0037】
本実施形態の電鋳金型の製造方法によれば、マスター金型11に電気めっきを施す(電鋳層2を形成する)前に、マスター金型11に補強枠3を配置する工程を行うだけで補強部材を有する電鋳金型1を製造することができ、製造工程の短縮化を図ることができる。すなわち、本実施形態の製造方法は、従来の製造方法のように、マスター金型に電鋳層を形成した後に電鋳層付きのマスター金型を補強充填材埋込用容器にセットする工程と、補強材とマスター金型とを容器から取り出す工程と、めっき層を樹脂補強部と共にマスター金型から離す工程等の多数の工程を省略することができる。
【0038】
本製造方法は、製造工程を短縮化すると共に、従来の電鋳金型の製造方法で用いられていた補強充填材埋込用容器を必要としないのが大きな特徴である。従来の電鋳金型製造方法では、前述のように(図9(b)〜図9(d)参照)、マスター金型81は非常に高価であるが、補強充填材埋込用容器83に電鋳層82が形成されたマスター金型81をセットし、補強充填材埋込用容器83から、補強充填材84を埋め込んだ電鋳層付きマスター金型を取り出す必要がある。このとき、マスター金型81を破損してしまう場合が多く、マスター金型81の補強充填材埋込用容器83へのセットと取り出しには細心の注意が必要である。通常、補強充填材埋込用容器83には、軽量の安価なプラスチック容器などを用い、電鋳層82が形成されたマスター金型81と補強充填材84とを補強充填材埋込用容器83から取り出す際、補強充填材埋込用容器83を破壊して取り出すことが多い。これは、補強充填材84と補強充填材埋込用容器83とが接着してしまうために、簡単には取り出すことができないためである。このときマスター金型81に応力が加わって、マスター金型81破損してしまう場合が多くある。
【0039】
本製造方法では、電鋳層形成後にすでに補強枠3が電鋳層2と一体化しているので、マスター金型11から電鋳層2を剥離しても電鋳層2が反ったり変形したり、場合によっては破損してしまうおそれがない。また、本製造方法では、電気めっきを行う前に補強枠3を取り付け、電気めっきにより電鋳層2を形成するだけで補強部材(めっき補強枠13)を形成することができる。また、電鋳層形成後、更なる補強を行うべく補強充填材4を充填するに際し、一体化した補強枠3と電鋳層2をマスター金型11から剥離させているので、マスター金型11を破損させることなく、金属の補強充填材4を電鋳層2に溶接(ろう付け)で取り付けることができる。
【0040】
従来の製造方法では、補強部材(補強充填材)の取り付け前にマスター金型81から電鋳層82を剥離すると、電鋳層82の変形、反り、または破損が起こる。このために、電鋳層82をマスター金型81から剥離する前に、マスター金型81を補強充填材埋込用容器83にセットし、電鋳層82に補強充填材84を設ける工程を行わなければならない。また、従来の製造方法では、電鋳層82に金属の補強部材を取り付ける場合、マスター金型81の破損の問題から、溶接方式などを用いることができない欠点がある。例えば、銀ろうなどを用いて金属の補強部材を取り付ける(ろう付けする)場合は、高価な石英製のマスター金型81に熱が伝わって、熱応力による破壊が起こる。従って、従来の製造方法では、補強部材の取り付けには樹脂製の接着材しか用いることができず、接着界面の耐熱性の高い金属補強部材を取り付けることができないなどの制約を受ける。
【0041】
このように、本実施形態の電鋳金型の製造方法によれば、マスター金型11の破損のおそれがなく、補強充填材埋込用容器が不要である。また、容器からの取り出しの作業も省略できる、耐熱性の高い補強部材(補強枠3,補強充填材4)を取り付けることができるなど多くの効果を有する。
【0042】
また、本実施形態の電鋳金型1は、補強枠3を金属或いは強度の高い樹脂やセラミックで形成しているので、金型の外周が非常に堅牢で、壊れにくく耐久性が高い。
【0043】
さらに、電鋳金型の耐久性が必要な場合、電鋳金型1のパターン形成面には、気相成膜法により耐磨耗性や耐熱性の高いTiN(チタンナイトライド)薄膜または、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜などの耐久性薄膜をコーティングすることができる。
【0044】
従来の製造方法では、気相成膜処理は補強充填材84の取り付け後となるが、補強充填材84の耐熱性が低いので気相成膜処理を行うことが難しい。通常、気相成膜処理は200℃以上で行われるので、有機樹脂材料からなる補強充填材84は、気相成膜処理中に熱分解し変質するおそれがある。
【0045】
これに対して本製造方法では、補強充填材84を取り付ける前に気相成膜処理を行うことができる。すなわち、補強充填材を取り付けることなく、電気めっき接合により一体化されためっき補強枠13と電鋳層2をマスター金型11から剥離することが可能であり、その状態で気相成膜することができる。電鋳金型1は、めっき補強枠13、電鋳層2ともに金属で構成されているので耐熱性が高く、気相成膜条件で変形したり変質したりすることがない。したがって、本製造方法では、気相成膜の応用によって、電鋳層2に形成されたパターン2aの耐久性、すなわち耐熱性や耐摩耗性を著しく向上させることができる。
【0046】
本実施形態では、マスター金型11を非導電性材料である石英を用いて構成したが、マスター金型11は、導電性材料で形成されたものでもよい。マスター金型11を導電性材料で構成する場合、上述の導電性薄膜12を形成する工程は不要である。ただし、本製造方法は電鋳層2をマスター金型11から離型する工程を有するので、マスター金型11は、電鋳層2との密着性が低い導電性材料で構成されるのがよい。密着性の低い導電性材料としては、例えば、高クロム含有ステンレス系材料が好ましく、他にチタン、チタン合金、クロム、タングステン、アルミニウム等の表面に不働態化膜を形成しやすい材料が挙げられる。
【0047】
電鋳金型1を構成する電鋳層2は、めっき補強枠13と一体に形成されているので、平坦性が高い。このために電鋳層2の平坦性が高い電鋳金型1を用いたスタンパは、高精度なインプリントを行うことができる。
【0048】
本実施形態のスタンパは、樹脂を用いずに構成されているので、めっき補強枠13及び金属からなる補強充填材4を介してヒータ32で直接加熱することができる。またスタンパを用いたインプリントでは、従来のようにワーク(被転写部材33)の支持台側にヒータを設ける必要性がなく、スタンパを直接加熱することができるのでヒータ32の熱容量を小さくすることができる。
【0049】
スタンパは、ヒータ32で直接加熱することができるので、大面積の樹脂材料(ワーク、被転写部材33b)にステップアンドリピートでインプリントすることができる。また、スタンパは、金属製の補強充填材4を有するので、インプリントの位置精度を高くすることができる。
【0050】
次に第2の実施形態について図5に基づき説明する。
【0051】
図5(d)に示すように、本実施形態の電鋳金型51の基本的な構成部分は、上述した図1の電鋳金型1とほぼ同様である。ただし、前実施形態では、補強枠3を電鋳層2の周縁のみに形成しているのに対し、本実施形態では、補強枠53は、上記周縁に形成される補強枠53aと、その補強枠53aの内側に間隔を置いて配置される補強板53bとで構成される。
【0052】
本実施形態の電鋳金型の製造方法を説明する。
【0053】
図5(a)及び図5(b)に示すように、マスター金型11のパターン11bが形成された側の表面に導電性薄膜12を形成した後、マスター金型11の周縁上と、その縁に囲まれた領域内とに補強枠53を形成する。
【0054】
内側の補強板53bの下部(導電性薄膜12との接着箇所近傍)53cは、幅がテーパー状に狭く形成されている。補強板53bの下部53cをテーパー状に狭く形成することで、パターン11bの、補強板53bに近接した箇所にも十分にめっきを施すことができ、ムラのない電鋳層2を形成することができる。
【0055】
図5(c)に示すように、電気めっきにより、マスター金型11の補強枠53が形成された側の面にニッケルめっき層(電鋳層52)を形成する。ここで、補強枠53aは、めっき後はめっき補強枠153aと称され、補強板53bは、めっき後はめっき補強板153bと称される。めっき補強枠153aとめっき補強板153bとを総称したものをめっき補強枠153と称する。
【0056】
その後、導電性薄膜12を溶解し、電鋳層52とめっき補強枠153(153a,153b)とをマスター金型11から剥離し、図5(d)に示す電鋳金型51が得られる。本電鋳金型51の製造方法においては、補強充填材がなくても平坦性が高い特徴があるが、さらに平坦性を上げるために、前実施形態のように、めっき補強枠153で囲まれた領域に補強充填材を充填してもよい。
【0057】
本実施形態の電鋳金型51は、周縁のめっき補強枠153aに加え、その内側にめっき補強板153bが配置されているので、補強充填材4を用いることなく、電鋳層52の耐久性を向上させることができる。本実施形態では、補強板53bを多く設けることで、補強充填材4を充填する工程を省略することができ、前実施形態の製造方法より短時間で電鋳金型を製造することができる。
【0058】
本実施形態では、補強板53bは、図5(b)に示すように、間隔を置いて並べて配置したが、補強板53bの配置はこれに限定されず、例えば、格子状や網目状に配置してもよい。
【0059】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0060】
図6の(a)〜(d)は、本実施例の製造工程を示す平面図、図6の(e)〜(h)は、同図(a)〜(d)に対応する縦断面図である。
【0061】
図6(a)及び図6(e)に示すように、マスター金型11は、例えば厚さ1.0mm、20mm角の正方形の石英製のものを用いる。マスター金型11に、EB(電子ビーム描画)法により、例えば幅0.5〜5.0μm、深さ0.5〜5.0μm、長さ15mmの範囲の溝パターン11bを多数形成する。なお、図6(e)の断面図では溝パターンは、そのサイズが小さいので省略している。
【0062】
図6(b)の平面図及び図6(f)の断面図に示すように、マスター金型11の表面全面に導電性薄膜としてTi薄膜を約0.1μmの厚さに形成する。図では導電性薄膜は省略している。次にTi薄膜形成後、マスター金型11の縁にSUS304系ステンレスからなる補強枠3を形成する。
【0063】
図6(c)及び図6(g)に示すように、スルファミン酸ニッケルめっき液を用いて電気ニッケルめっきを行い、ニッケル製の電鋳層2を形成する。電気めっき条件は例えば、電流密度は30A/dm2、浴温は60℃とし、電気ニッケルめっき層(電鋳層2)は、0.2〜1mmの厚さに形成する。
【0064】
図6(d)及び図6(h)に示すように、電鋳層2が形成されたマスター金型11をTi選択溶解液に1時間浸漬してTi薄膜を溶解し、めっき補強枠13と電鋳層2をマスター金型11から剥離し、本実施例の電鋳金型61を得る。
【実施例2】
【0065】
図7(a)及び図7(e)に示すように、実施例2では、マスター金型を符号11cで示す。本実施例のマスター金型11cは、例えば厚さ1mm、20mm角の正方形であり、ニッケルめっきとは密着性の悪いステンレス系材料(例えばSUS316)で形成されたものを用いる。このマスター金型11cには、ケミカルエッチング法により、例えば幅5〜10μm、深さ1〜5μm、長さ15mmの溝パターン11bが多数形成されている。そしてパターン11bが形成されたマスター金型11c上にニッケル製の補強枠3を形成する。
【0066】
図7(c)及び図7(g)に示すように、スルファミン酸ニッケルめっき液を用いて電気ニッケルを行い、ニッケル製の電鋳層2を形成する。電気めっき条件は、電流密度は例えば30A/dm2、浴温は60℃とする。電気ニッケルめっき層(電鋳層2)は、0.2〜1mmの厚さに形成する。
【0067】
電鋳層2が形成されたマスター金型11cに熱歪を与えて、めっき補強枠13と電鋳層2をマスター金型から剥離し、本実施例の電鋳金型を得る。本実施例では、実施例1で述べたTi選択溶解液によるTi薄膜の剥離処理が省略される。
【0068】
マスター金型11cと電鋳層2に熱を付与させることにより、マスター金型11cの構成材料であるステンレスと、電鋳層2の構成材料であるニッケルとの線膨張係数の違いにより、両者間に歪(熱歪)が生じる。マスター金型11cはニッケル対して密着性の低いステンレスを用いて構成されているので、熱歪により、電鋳層2をマスター金型11cから容易に剥離し電鋳金型61を得ることができる。
【実施例3】
【0069】
図8(a)及び図8(e)に示すように、本実施例のマスター金型は、符号11dで示す。マスター金型11dは厚さ1mm、20mm角の正方形の石英基板11a上に感光性樹脂14でパターン11bが形成されたものを用いる。このマスター金型11dは、石英基板11a上に感光性樹脂14を塗布したあと、マスクを用いて露光して感光性樹脂14からなるパターン11bを形成するものである。感光性樹脂14には、光が当たった部分が硬化するネガ型の感光性樹脂を用い、例えば、幅5〜10μm、深さ1〜5μm、長さ15mmの溝パターン11bを多数形成する。その後、パターン11bの上にパラジウム(Pd)めっき触媒層を設ける(図示せず)。Pdめっき触媒層を形成した後、無電解銅めっきを行って導電性薄膜を形成する(図示せず)。無電解銅めっき層は、0.1〜0.2μmの厚さに形成する。また、パラジウムめっきの代わりに実施例1のようにチタン薄膜を約0.1μmを施しても構わない。この場合は、感光性樹脂が熱劣化しない低温スパッタリング法を用いる。
【0070】
図8(b)及び図8(f)に示すように、導電性薄膜が形成されたパターン11bを有するマスター金型11d上に、ニッケル製の補強枠3を形成する。
【0071】
図8(c)及び図8(g)に示すように、スルファミン酸ニッケルめっき液を用いて電気めっきを行い、ニッケル製の電鋳層2を形成する。電気めっき時の電流密度は例えば30A/dm2、浴温は60℃とする。電気ニッケルめっき層(電鋳層2)は、0.2〜1mmの厚さに形成する。
【0072】
図8(d)及び図8(h)に示すように、電鋳層2を形成後、マスター金型11dの感光性樹脂14をアルカリ水溶液で溶解させるか、または石油系溶剤で溶解することによって、めっき補強枠13と電鋳層2をともにマスター金型から離型し電鋳金型61が得られる。感光性樹脂14を溶解してマスター金型11d(石英基板11a)から電鋳金型を離型した後、パターン11bの表面に残った無電解銅めっき層を、硝酸などの酸化性の酸で溶解除去する。パラジウム触媒層は非常に薄いのでニッケルめっき層(電鋳層2)側に残っても構わない。また、導電性薄膜にチタンを用いた場合にもチタンは薄いので、ニッケルめっき側に残っても構わない。
【0073】
なお、上記実施形態及び実施例では、電鋳品として、電鋳金型を例示したが、本発明は、これに限定されるものではなく、補強を必要する電鋳品であれば、金型以外の各種工業用製品、家庭用製品、その他の部品などの成形品にも適用可能である。
【0074】
例えば、ノズル成形体を電鋳品で成形する場合の、基本的な実施形態の要旨について、図11を参照して説明する。本実施形態では、図11に示すように、マスター金型101は、少なくとも表面が導電性を有する金型基板101aと、この金型基板のうち電気めっきにより電鋳する側の片面に形成された型用のフォトレジスト102とで構成される。
【0075】
この金型基板101aの片面に補強枠103を配置し、金型基板101a上と補強枠103とに電気めっきを施す。電気めっきにより金型基板101a上に形成された電鋳層104が形成される。その後、めっきで一体化された電鋳層104及びめっき補強枠105(補強枠103にめっきを施したもの)をフォトレジスト102と共に金型基板から離し、その後、フォトレジストを溶解除去することでノズル成形体(電鋳品)を得る。
【0076】
次に本実施形態の実施例について説明する。
【実施例4】
【0077】
一例として、ノズルを有する成形体として、インクジェットノズルに用いる実施例を図11及び図12により説明する。
【0078】
図11(a)から(c)は、本実施例に係わるインクジェットノズルの製造工程を示すものである。図11(a)は、マスター金型101に電気めっき(電鋳層)を形成する前の状態である。マスター金型101は、例えば人工石英板(基板)101aと、ノズルのオリフィスの型になるめっきレジスト102とからなる。ここで、めっきレジスト102は、電気めっきの施されない領域を確保するためのフォトレジストを意味するものである。図12に示すように、電鋳工程に入る前に、人工石英板で構成される金型基板101aの片面(電鋳する側)の中心にめっきレジスト102がフォトリソグラフィにより予め形成してある。
【0079】
例えば、マスター金型101の基板101aとして、径が5mmΦ、厚さ1.0mmの人工石英板101aを用いる。この人工石英板101aの片面(電鋳する側)に、例えば厚さ約0.05μmの導電性薄膜、例えばチタン(Ti)薄膜が形成してある。
【0080】
めっきレジスト102は、ネガ型フォトレジストを用いてマスク露光、現像により作成される。このレジストは、ポジ型フォトレジストを用いて作成してもよい。めっきレジスト102のパターンは、例えば径0.05〜0.1mmΦ、厚さ0.5〜1.0mmである。
【0081】
めっきレジスト付きのマスター金型101の片面(電鋳する側)に、図11(a)に示すように、円筒状の補強枠103が配置される。補強枠103は、例えば、内径4.5mmΦ、外径5mmΦ、長さ10mmのSUS304を用いる。
【0082】
めっきレジスト付きのマスター金型101の片面側に電気ニッケルめっきが施され、電鋳層(ニッケル層)104とめっき補強枠(めっき後の補強枠)105とが一体化する。電気めっき条件は、既述した実施例同様、例えば、スルファミン酸ニッケルめっき浴を用い、電流密度は例えば30A/dm2、浴温は60℃とする。電鋳層104は、例えば、厚さ0.5〜1.0mmである。
【0083】
上記の電鋳層104の成形後に、既述した実施形態1同様に、チタンの選択溶解液を用いて人工石英板に施した導電性薄膜(例えば、チタン薄膜)を溶解する。それにより、一体化された電鋳層104及びめっき補強枠105がマスター金型101から剥離される。
【0084】
その後に、めっきレジスト102は、有機溶媒を用いて除去され、レジスト除去部分にノズル用オリフィス102aが形成されて、電鋳品としてインクジェットノズルが得られる。ここで、めっきレジストのパターンの形状は任意の形状でよい。例えば、円形、三角形、星形、楕円形のいずれでもよい。補強枠としては、SUS304のほかに、純ニッケル、銅、銅合金などが考えられる。電気めっきとしては、耐食性及び耐薬品性に優れた錫−ニッケル合金を使用してもよい。
【0085】
なお、上記した金型基板、めっきレジスト、補強枠、電鋳層などの仕様は、適宜設定されるものであり、上記数値に限定されるものではない。また、本実施形態及び実施例同様で説明したマスター金型の基板材料、電気めっき材料、補強枠の材料も、今まで本明細書で述べてきた材料のほかに、種々のものが適用可能であり、特に限定するものではない。
【0086】
上記実施例では、電鋳加工部品として、ノズルを例示したがその他の成形品でもよく、種々の成形品の形状に応じてめっきレジストのパターン形状を設計すればよい。
【0087】
また、実施例の電鋳金型は、主にインプリント用を用いて説明したが、インジェクション法等の樹脂モールド用の金型にも応用可能であり、また、その応用に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の電鋳金型の製造方法の各工程を示す図であり、(a)、(c)〜(f)はその断面図、(b)はその平面図である。
【図2】電鋳金型の製造方法に用いる製造装置を示す概略図である。
【図3】(a)及び(b)は、第1の実施形態のインプリントの各工程を示す断面図である。
【図4】第1の実施形態のインプリントにおいて、ステップアンドリピート工程を示す断面図である。
【図5】本発明に係る好適な第2の実施形態の電鋳金型の製造方法の各工程を示す図であり、(a)、(c)及び(d)はその断面図、(b)はその平面図である。
【図6】(a)〜(d)は実施例1の電鋳金型の製造方法を説明するための断面図であり、(e)〜(h)は実施例1の電鋳金型の製造方法を説明するための平面図である。
【図7】(a)〜(d)は実施例2の電鋳金型の製造方法を説明するための断面図であり、(e)〜(h)は実施例2の電鋳金型の製造方法を説明するための平面図である。
【図8】(a)〜(d)は実施例3の電鋳金型の製造方法を説明するための断面図であり、(e)〜(h)は実施例3の電鋳金型の製造方法を説明するための平面図である。
【図9】(a)は、従来の電鋳金型の製造方法に用いる装置を示す概略図であり、(b)〜(d)は、従来の電鋳金型の製造方法の各工程を示す断面図((d)は平面図も含む)である。
【図10】(a)及び(b)は、従来のインプリントの各工程を示す断面図である。
【図11】(a)から(c)は、実施例第4に係わるインクジェットノズルの製造工程を示す断面図。
【図12】実施例4に使用するマスター金型の平面図及び断面図である。
【符号の説明】
【0089】
1…電鋳金型、2…電鋳層、2a…パターン、3…補強枠、4…補強材(補強充填材)、4b…補強充填材、11…マスター金型、11a…金型基板、11b…パターン、12…導電性薄膜、13…めっき補強枠、101…マスター金型、101a…金型基板、102…フォトレジスト、103…補強枠、104…電鋳層(ノズル成形体)、105…めっき補強枠。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスター金型の表面に、電気めっきを施してマスター金型と逆パターン形状の電鋳層を形成し、その電鋳層をマスター金型から離型して電鋳品を得る電鋳品の製造方法において、
前記マスター金型に少なくとも表面が導電性を有する補強枠を接触させて、その状態で前記マスター金型と補強枠とに電気めっきを施して前記補強枠と一体化された電鋳層を形成し、一体化された前記電鋳層と補強枠とを前記マスター金型から離型して電鋳品を得ることを特徴とする電鋳品の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の電鋳品の製造方法において、前記マスター金型として非導電性の部材に導電性の薄膜を形成したものを用いるか或いは前記電鋳層との密着性が低い導電性材料を用いる電鋳品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の電鋳品の製造方法において、前記補強枠に囲まれた領域に補強材を充填或いは接合する電鋳品の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の電鋳品の製造方法において、前記補強枠として、金属または表面に導電性薄膜を形成した非導電性の部材を用いる電鋳品の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の電鋳品の製造方法において、前記電鋳層に前記マスター金型と逆パターンのインプリント用のパターンを電気めっきにより形成して電鋳品として電鋳金型を得る電鋳品の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記マスター金型は、少なくとも表面が導電性を有する金型基板と、この金型基板のうち電気めっきにより電鋳する側の片面に形成された型用のフォトレジストとで構成され、前記電気めっきにより前記電鋳層を成形後に、めっきで一体化された前記電鋳層および前記補強枠とを前記フォトレジストと共に前記金型基板から離し、その後、前記フォトレジストを溶解除去することで電鋳品を得る電鋳品の製造方法。
【請求項7】
マスター金型を用いて電気めっきによりマスター金型と逆パターン形状に形成される電鋳層により構成される電鋳品において、
その電鋳層を補強するための補強枠を有し、この補強枠は、少なくとも表面が導電性を有し前記電気めっきが施されており、前記電鋳層と前記補強枠とが前記電気めっきにより一体化された構造を有していることを特徴とする電鋳品。
【請求項8】
請求項7記載の電鋳品において、電気めっきされた前記補強枠の内側にさらに補強材が充填或いは接合されている電鋳品。
【請求項9】
請求項7または8記載の電鋳品において、前記補強枠は、金属または表面に導電性薄膜を形成した非導電性の部材である電鋳品。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれか1項記載の電鋳品において、表面が耐久性薄膜で覆われている電鋳品。
【請求項11】
請求項10記載の電鋳品において、前記耐久性薄膜は、TiN薄膜或いはダイヤモンドライクカーボン薄膜である電鋳品。
【請求項12】
請求項7ないし11のいずれか1項記載の電鋳品において、前記電鋳層にインプリントのためのパターンが形成されたインプリント用の電鋳金型よりなる電鋳品。
【請求項13】
請求項12記載の電鋳品において、前記補強枠が形成された側に電鋳金型加熱用のヒータが設けられている電鋳品。
【請求項14】
請求項7ないし11のいずれか1項記載の電鋳品において、前記電鋳層がノズルを有する成形体である電鋳品。
【請求項1】
マスター金型の表面に、電気めっきを施してマスター金型と逆パターン形状の電鋳層を形成し、その電鋳層をマスター金型から離型して電鋳品を得る電鋳品の製造方法において、
前記マスター金型に少なくとも表面が導電性を有する補強枠を接触させて、その状態で前記マスター金型と補強枠とに電気めっきを施して前記補強枠と一体化された電鋳層を形成し、一体化された前記電鋳層と補強枠とを前記マスター金型から離型して電鋳品を得ることを特徴とする電鋳品の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の電鋳品の製造方法において、前記マスター金型として非導電性の部材に導電性の薄膜を形成したものを用いるか或いは前記電鋳層との密着性が低い導電性材料を用いる電鋳品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の電鋳品の製造方法において、前記補強枠に囲まれた領域に補強材を充填或いは接合する電鋳品の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の電鋳品の製造方法において、前記補強枠として、金属または表面に導電性薄膜を形成した非導電性の部材を用いる電鋳品の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の電鋳品の製造方法において、前記電鋳層に前記マスター金型と逆パターンのインプリント用のパターンを電気めっきにより形成して電鋳品として電鋳金型を得る電鋳品の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記マスター金型は、少なくとも表面が導電性を有する金型基板と、この金型基板のうち電気めっきにより電鋳する側の片面に形成された型用のフォトレジストとで構成され、前記電気めっきにより前記電鋳層を成形後に、めっきで一体化された前記電鋳層および前記補強枠とを前記フォトレジストと共に前記金型基板から離し、その後、前記フォトレジストを溶解除去することで電鋳品を得る電鋳品の製造方法。
【請求項7】
マスター金型を用いて電気めっきによりマスター金型と逆パターン形状に形成される電鋳層により構成される電鋳品において、
その電鋳層を補強するための補強枠を有し、この補強枠は、少なくとも表面が導電性を有し前記電気めっきが施されており、前記電鋳層と前記補強枠とが前記電気めっきにより一体化された構造を有していることを特徴とする電鋳品。
【請求項8】
請求項7記載の電鋳品において、電気めっきされた前記補強枠の内側にさらに補強材が充填或いは接合されている電鋳品。
【請求項9】
請求項7または8記載の電鋳品において、前記補強枠は、金属または表面に導電性薄膜を形成した非導電性の部材である電鋳品。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれか1項記載の電鋳品において、表面が耐久性薄膜で覆われている電鋳品。
【請求項11】
請求項10記載の電鋳品において、前記耐久性薄膜は、TiN薄膜或いはダイヤモンドライクカーボン薄膜である電鋳品。
【請求項12】
請求項7ないし11のいずれか1項記載の電鋳品において、前記電鋳層にインプリントのためのパターンが形成されたインプリント用の電鋳金型よりなる電鋳品。
【請求項13】
請求項12記載の電鋳品において、前記補強枠が形成された側に電鋳金型加熱用のヒータが設けられている電鋳品。
【請求項14】
請求項7ないし11のいずれか1項記載の電鋳品において、前記電鋳層がノズルを有する成形体である電鋳品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−167497(P2009−167497A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9422(P2008−9422)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(306020601)株式会社MEPJ (3)
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(306020601)株式会社MEPJ (3)
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】
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