説明

露出制御方法及び装置並びに撮像装置

【課題】手ブレを防止しつつ、低輝度時にフラッシュ発光する場合でも良好なフラッシュ発光量の制御を可能にする。
【解決手段】被写体が暗くなると、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度よりも速いシャッタ速度に維持し、撮影感度を上げる感度調整を行う。そして、フラッシュ非発光時には撮影感度の調節可能な範囲の最大値まで感度を上げることができるようにし、一方、フラッシュ発光時には調節可能な範囲の最大値よりも小さい値であって、適正なフラッシュ発光量の調節が可能な感度の最大値まで感度を上げることができるようにする。このようにフラッシュ発光時には撮影感度の調節可能な範囲の上限値が低くなるように制限し、これにより被写体が近距離の場合でも露出オーバーにならないようにフラッシュ発光量を制御することができるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は露出制御方法及び装置並びに撮像装置に係り、特に絞り値及びシャッタ速度を調節して露出を制御するとともに、撮影感度の調節及びフラッシュ発光量を調節して露出を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、暗いシーンでもフラッシュ発光せずに撮影できるように、撮影感度をアップさせるようにしたデジタルカメラが提案されている(特許文献1)。
【0003】
このデジタルカメラは、絞り値が最小(開放絞り)となり、かつシャッタ速度が手ブレ限界値(例えば、1/60秒)以下になる場合には、撮影感度を1段階アップして、シャッタ速度が手ブレ限界値以上を維持できるようにし、撮影感度が上限値に達し、かつシャッタ速度が手ブレ限界値以下になる場合には、シャッタ速度を手ブレ限界値に維持し、フラッシュを発光するようにしている。
【0004】
また、フラッシュの発光量を被写体からの反射光を調光センサや撮像素子(CCD)によって検知して自動調光するデジタルカメラが普及している。
【特許文献1】特開2005−20341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般のフラッシュ発光装置から発光されるフラッシュの発光特性は、図10に示すように発光開始直後に発光量がピークとなり、時間経過にしたがってピークから緩やかに発光量が減少する。
【0006】
図10上で、T1は、フラッシュ調光手段等の回路的な遅延により調光することが不可能な発光時間範囲であり、T2は、フラッシュ発光量を制御することができる発光時間範囲を示している。また、T3は、超高感度(例えば、ISO1600)で撮影を行ったとき、近距離の被写体に対して適正な発光量を与える発光時間である。
【0007】
従って、被写体が暗いときに、特許文献1に記載の露出制御方法のように撮影感度を上限値までアップし、その後、シャッタ速度が手ブレ限界値を維持できない場合にフラッシュを発光させるように制御すると、フラッシュ発光時には撮影感度が上限値となっているため、適正なフラッシュ発光量(例えば、図10上の発光時間T3でのフラッシュ発光量)で撮影することができず、特に被写体が近距離の場合には露出オーバーになるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、手ブレを防止しつつ、低輝度時にフラッシュ発光する場合でも良好なフラッシュ発光量の制御が可能な露出制御方法及び装置並びに撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1に係る露出制御方法は、絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を調節して露出を制御するとともに、フラッシュ発光時にフラッシュ発光量を調節して露出を制御する露出制御方法において、前記撮影感度を調節するときの感度の上限値を、フラッシュ非発光時には前記撮影感度の調節可能な範囲の最大値とし、フラッシュ発光時には前記最大値よりも小さい値であって、適正なフラッシュ発光量の調節が可能な感度の最大値とすることを特徴としている。
【0010】
即ち、被写体が暗くなると、撮影感度を上げる感度調整が行われるが、フラッシュ非発光時には撮影感度の調節可能な範囲の最大値まで感度を上げることができるようにし、一方、フラッシュ発光時には調節可能な範囲の最大値よりも小さい値であって、適正なフラッシュ発光量の調節が可能な感度の最大値まで感度を上げることができるようにする。このようにフラッシュ発光時には撮影感度の調節可能な範囲の上限値が低くなるように制限し、これにより被写体が近距離の場合でも露出オーバーにならないようにフラッシュ発光量を制御することができるようにしている。
【0011】
請求項2に示すように請求項1に記載の露出制御方法において、前記撮影感度の調節可能な範囲の最大値はISO1600であり、前記適正なフラッシュ発光量の調節が可能な感度の最大値はISO800であることを特徴としている。
【0012】
請求項3に示すように請求項1に記載の露出制御方法において、前記フラッシュ発光時にフラッシュ発光量が最大に達したか否かを判別し、フラッシュ発光量が最大に達した場合には、前記フラッシュ発光時に取得した画像信号を所定の増幅量で増幅することを特徴としている。
【0013】
フラッシュ発光量が最大に達するときは、フラッシュ光が被写体に到達できずに露出アンダーになる場合がある。そこで、この場合には、フラッシュ発光時に取得した画像信号を所定の増幅量で増幅して露出アンダーを防ぐようにしている。
【0014】
請求項4に示すように請求項3に記載の露出制御方法において、前記所定の増幅量は、予め設定した目標積算値と前記フラッシュ発光時に取得した画像信号を積算した積算値とから算出することを特徴としている。
【0015】
請求項5に示すように請求項3又は4に記載の露出制御方法において、前記所定の増幅量による画像信号の増幅は、ホワイトバランス補正を行うホワイトバランス補正手段によってホワイトバランス補正とともに行うことを特徴としている。即ち、既存のホワイトバランス補正手段を利用して露出アンダーを補正することができる。
【0016】
請求項6に示すように請求項3又は4に記載の露出制御方法において、前記所定の増幅量による画像信号の増幅は、所定の階調変換を行う階調変換手段により階調変換とともに行うことを特徴としている。即ち、ガンマ補正手段等の既存の階調変換手段を利用して露出アンダーを補正することができる。
【0017】
請求項7に係る露出制御装置は、フラッシュ発光手段と、前記フラッシュ発光手段から発光されるフラッシュ発光量を調節する調光手段と、被写体の明るさを測光する測光手段と、前記測光手段によって測光された被写体の明るさに基づいて露出値を算出する算出手段と、前記算出された露出値に基づいて絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を調節して露出を制御するとともに、フラッシュ発光時に前記調光手段を介してフラッシュ発光量を調節して露出を制御する露出制御手段と、を備え、前記露出制御手段は、前記撮影感度を調節するときの感度の上限値を、前記フラッシュ発光手段からフラッシュを発光するときには前記撮影感度の調節可能な範囲の最大値とし、前記フラッシュ発光手段からフラッシュを発光しないときには前記最大値よりも小さい値であって、前記調光手段によって適正なフラッシュ発光量の調節が可能な感度の最大値とすることを特徴としている。
【0018】
請求項8に示すように請求項7に記載の露出制御装置において、前記露出制御手段は、前記算出した露出値に基づいて絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を決定する際に、手ブレ限界シャッタ速度よりも所定段速いシャッタ速度を下限シャッタ速度として規定し、前記シャッタ速度が前記下限シャッタ速度以上になるように絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を設定し、絞り値が最小値に達し、かつ撮影感度が前記最大値に達すると、前記シャッタ速度を前記下限シャッタ速度よりも遅く設定可能にすることを特徴としている。
【0019】
通常、シャッタ速度は、手ブレ限界シャッタ速度よりも所定段速いシャッタ速度を下限シャッタ速度として規定されているため、撮影感度はアップされるが、比較的暗い被写体であっても速いシャッタ速度を維持することができ、これにより、手ブレ、被写体ブレによる撮影ミスを防止することができる。
【0020】
請求項9に示すように請求項8に記載の露出制御装置において、前記露出制御手段は、低度輝度フラッシュ発光モード時に前記シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度に達すると、前記フラッシュ発光手段からフラッシュを発光させることを特徴としている。
【0021】
請求項10に係る撮像装置は、請求項7乃至9のいずれかに記載の露出制御装置と、前記露出制御装置によって露出制御された状態の画像信号を取得する撮像手段と、前記撮像手段によって取得した画像信号に対して信号処理を行う信号処理手段と、前記フラッシュ発光手段からフラッシュを発光したときにフラッシュ発光量が最大に達したか否かを判別する判別手段と、前記フラッシュ発光量が最大に達したと判断された場合に、前記信号処理手段において、前記フラッシュ発光時に取得した画像信号を所定の増幅量で増幅させる制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0022】
請求項11に示すように請求項9に記載の撮像装置において、前記フラッシュ発光時に取得した画像信号を積算して積算値を算出する積算値算出手段を有し、前記制御手段は、予め設定した目標積算値と前記積算値算出手段によって算出された積算値とから前記所定の増幅量を決定することを特徴としている。
【0023】
請求項12に示すように請求項10又は11に記載の撮像装置において、前記信号処理手段はホワイトバランス補正手段を含み、前記制御手段は、前記ホワイトバランス補正手段におけるホワイトバランス補正値に前記所定の増幅量を付加することを特徴としている。
【0024】
請求項13に示すように請求項10又は11に記載の撮像装置において、記信号処理手段は階調変換手段を含み、前記制御手段は、前記階調変換手段における入出力特性に前記所定の増幅量を付加することを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、フラッシュ発光時とフラッシュ非発光時とでは撮影感度の調節可能な範囲を変更し、フラッシュ発光時には撮影感度の調節可能な範囲の上限値が低くなるように制限するようにしたため、フラッシュ発光時に被写体が近距離の場合でも露出オーバーにならないように適正なフラッシュ発光量の調光が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下添付図面に従って本発明に係る露出制御方法及び装置並びに撮像装置の好ましい実施の形態について詳説する。
[撮像装置の全体構成]
図1は、本発明が適用された撮像装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施の形態の撮像装置10はデジタルカメラであり、撮影光学系12、CCD等の固体撮像素子(CCD)14、タイミングジェネレータ(TG)16、アナログアンプ18、A/D変換器20、画像入力コントローラ22、画像信号処理回路24、ビデオエンコーダ28、画像表示装置30、圧縮・伸張処理回路32、メディアコントローラ34、記録メディア36、AE検出回路38、AF検出回路40、中央処理装置(CPU)42、メモリ(SDRAM,ROM、フラッシュROM等)44、シャッタレリーズスイッチ50a、モード切替えスイッチ50bを含む操作部から構成されている。
【0027】
撮像装置10の全体の動作は、CPU42によって統括制御されており、CPU42は操作部からの入力に基づき所定のプログラムに従って撮像装置10の各部を制御する。
【0028】
メモリ44のROMには、このCPU42が実行するプログラムの他、プログラム線図等の各種制御に必要なデータが格納されている。CPU42は、このROMに格納されたプログラムをSDRAMに展開し、SDRAMを作業メモリとして使用しながら各種処理を実行する。また、フラッシュROMには、ユーザ設定情報等の撮像装置10の動作に関する各種設定情報等が格納されている。
【0029】
撮影光学系12は、ズームレンズ12z、フォーカスレンズ12f、絞り(例えば、虹彩絞り)12iを含み、CPU42からの指令によりそれぞれモータドライバ62、64、66を介して駆動制御される。即ち、ズームレンズ12zは、モータドライバ62によって駆動されて撮影光軸上を前後移動し、これにより、焦点距離を変化させる。また、フォーカスレンズ12fは、モータドライバ64によって駆動されて撮影光軸上を前後移動し、これにより結像位置を変化させる。また、絞り12iは、モータドライバ66によって駆動されて開口量が段階的に変化し、これにより絞り値を変化させる。
【0030】
CCD14は、所定のカラーフィルタ配列(例えば、ベイヤ配列)のカラーCCDで構成されている。撮影光学系12を介してCCD14の受光面に入射した光は、その受光面に配列された各フォトダイオードによって入射光量に応じた量の信号電荷に変換される。そして、各フォトダイオードに蓄積された信号電荷は、タイミングジェネレータ(TG)16及びCCDドライバ17を介して加えられる駆動パルスに従って読み出され、電圧信号(画像信号)としてCCD14から順次出力される。
【0031】
尚、このCCD14は、シャッタゲートとシャッタドレインを備えており、シャッタゲートにシャッタゲートパルスを印加することで各フォトダイオードに蓄積された信号電荷をシャッタドレインに掃き出すことができるようにされている。CPU42は、TG16及びCCDドライバ17を介してシャッタゲートへのシャッタゲートパルスの印加を制御することにより、各フォトダイオードに蓄積される信号電荷の電荷蓄積時間(シャッタ速度)を制御する(いわゆる電子シャッタ機能)。
【0032】
アナログアンプ18は、CPU42によって適宜の撮影感度設定用ゲインが設定され、CCD14から順次出力される画像信号を、前記設定されたゲインで増幅する。即ち、このアナログアンプ18は、撮影感度を調節する手段として機能する。A/D変換器20は、アナログアンプ18から出力されたアナログの画像信号をデジタルの画像信号に変換す
る。
【0033】
画像入力コントローラ22は、所定容量のバッファメモリを内蔵しており、A/D変換器20から出力された画像信号を1コマ分蓄積して、メモリ44に格納する。
【0034】
画像信号処理回路24は、図2に示すようにオフセット補正回路24a、出力データ輝度積算回路24b、ホワイトバランス補正回路24c、ガンマ変換回路24d、同時化処理回路24e、及び輝度・色差信号(YC)処理回路24f等を含み、CPU42からの指令に従ってメモリ44に一時格納された画像信号を処理し、輝度信号と色差信号とからなるYC信号を生成する。
【0035】
即ち、画像信号処理回路24に点順次で入力するR,G,Bの画像信号(RAW画像データ)は、オフセット補正回路24aでオフセット処理されたのち、出力データ輝度積算回路24b及びホワイトバランス補正回路24cに加えられる。出力データ輝度積算回路24bは、入力する1コマ分の画像信号をR,G,Bごとに積算し、これらの積算値を3:6:1の比率で加算することによって輝度値を算出する。尚、この算出した輝度値は、フラッシュ発光時に露出アンダーとなるシーンを補正するために使用されるが、その詳細については後述する。
【0036】
ホワイトバランス補正回路24cは、デジタルアンプで構成され、R,G,Bの画像信号ごとにそれぞれ色別のホワイトバランス補正用ゲイン(WBゲイン)をかけることによりホワイトバランス補正を行う。ホワイトバランス補正回路24cから出力されるR,G,Bの画像信号は、ガンマ変換回路24dに加えられる。
【0037】
ガンマ変換回路24dは、所要の入出力特性をもったルックアップテーブル(LUT)によって構成されており、ガンマ変換(階調変換)や画像信号のビット数の変換(例えば、10ビットから8ビットへの変換)等を行う。
【0038】
ガンマ変換回路24dから出力されるR,G,Bの点順次の画像信号は、同時化処理回路24eに加えられる。同時化処理回路24eは、単板CCDのカラーフィルタ配列に伴うR,G,B信号の空間的なズレを補間してR,G,B信号を同時式に変換する処理を行い、同時化したR,G,B信号をYC処理回路24fに出力する。
【0039】
YC処理回路24fは、R,G,B信号を輝度信号Y,色差信号Cr,Cbに変換し、輝度信号Yと、色差信号Cr,Cb(YC信号)を出力する。
【0040】
画像表示装置30にスルー画像を表示させる場合は、CCD14で画像を連続的に撮像し、得られた画像信号を連続的に処理してYC信号を生成する。生成されたYC信号は、メモリ44を介してビデオエンコーダ28に加えられ、表示用の信号形式に変換されて画像表示装置30に出力される。これにより、画像表示装置30にスルー画像が表示される。
【0041】
画像を記録する場合は、シャッタレリーズスイッチ50aからの撮影指令に応じてCCD14で画像を撮像し、得られた画像信号を処理してYC信号を生成する。生成されたYC信号は、圧縮・伸張処理回路32に加えられ、所定の圧縮画像データ(例えば、JPEG)とされたのち、メディアコントローラ34を介して記録メディア36に格納される。
【0042】
モード切替えスイッチ50bが撮影モードから再生モードに切り替えられると、記録メディア36に格納された圧縮画像データは、記録メディア36から読み出され、圧縮・伸張処理回路32で非圧縮のYC信号とされたのち、ビデオエンコーダ28を介して画像表示装置30に出力される。これにより、記録メディア36に記録された画像が画像表示装置30に再生表示される。
【0043】
AE検出回路38は、CPU42からの指令に従い、入力された画像信号からAE制御に必要な物理量を算出する。例えば、AE制御に必要な物理量として、1画面を複数のエリア(例えば、8×8)に分割し、分割したエリアごとにR、G、Bの画像信号の積算値を算出する。CPU42は、測光時の絞り値、シャッタ速度及び撮影感度と、前記AE検出回路38から得た積算値に基づいて被写体の明るさを検出してEV値を求め、求めたEV値に基づいて撮影時の露出を設定する。この露出設定方法については、のちに詳述する。
【0044】
AF検出回路40は、CPU42からの指令に従い、入力された画像信号からAF制御に必要な物理量を算出する。本実施の形態の撮像装置10では、画像のコントラストによりAF制御を行うものとし、AF検出回路40は、入力された画像信号から画像の鮮鋭度を示す焦点評価値を算出する。CPU42は、このAF検出回路40で算出される焦点評価値が極大となるように、モータドライバ64を介してフォーカスモータ60fを駆動し、フォーカスレンズ12fの移動を制御する。
【0045】
本実施の形態の撮像装置10は以上のように構成される。
[露出制御]
<第1の実施の形態>
次に、本実施の形態の撮像装置10における露出制御方法の第1の実施の形態について説明する。
【0046】
図3は第1の実施の形態の露出制御方法を含む撮像装置の撮影時の動作を示すフローチャートである。
【0047】
図3において、撮影モード時にシャッタレリーズスイッチ50aが押されると、まず、CPU42は、AE回路38にてCCD14を介して取り込んだ画像信号の積算値を算出させ、この積算値と、測光時の絞り値、シャッタ速度及び撮影感度とに基づいて被写体の明るさ検出し、この検出した被写体の明るさに基づいて標準となる露出値(EV値)を算出する(ステップS10、S12)。
【0048】
続いて、前記算出したEV値と、後述する手ブレ限界シャッタ速度と、フラッシュ発光モード(低輝度フラッシュ自動発光モード、フラッシュ発光禁止モード、フラッシュ強制発光モード等)とに基づいて、フラッシュが発光されるか否かを判別する(ステップS14)。
【0049】
尚、フラッシュ発光モードは、各種の設定を行う画像表示装置30のメニュー画面上、又は専用の設定スイッチで所望の発光モードを選択できるようになっている。設定されたフラッシュ発光モードがフラッシュ発光禁止モードの場合には、EV値等にかかわらずフラッシュは発光せず、逆にフラッシュ強制発光モードの場合には常にフラッシュは発光する。また、低輝度フラッシュ自動発光モードの場合には、EV値が小さくなり、その結果、シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度を維持できなくなる場合にフラッシュを発光させる。
【0050】
ここで、手ブレ限界シャッタ速度とは、一般に焦点距離(35mmフィルム換算値)に依存し、1/焦点距離[秒]で規定される。例えば、焦点距離が35mmフィルム換算で60mmの場合、1/60秒が手ブレ限界シャッタ速度となる。従って、手ブレ限界シャッタ速度は、撮影光学系12のズームレンズ12zの移動に伴う焦点距離の変化に応じて変化する。
【0051】
ステップS14において、フラッシュが発光されると判別されると、撮像装置10(アナログアンプ18)で調節できる撮影感度の範囲のうちの適正なフラッシュ発光量の調節が可能な感度の最大値を撮影感度の上限値とする(ステップS16)。この実施の形態では、調節可能な感度は、ISO200〜ISO1600の範囲であり、上記フラッシュ発光時の上限値は、ISO800としている。
【0052】
一方、フラッシュが発光されないと判別されると、撮像装置10で調節可能な感度の最大値を撮影感度の上限値とする(ステップS18)。この実施の形態では、フラッシュ非発光時の上限値は、ISO1600である。
【0053】
図4はフラッシュ発光時のプログラム線図を示し、図5はフラッシュ非発光時のプログラム線図を示している。尚、焦点距離が45mm(35mmフィルム換算)(即ち、手ブレ限界シャッタ速度が1/45秒)の場合に関して示している。
【0054】
図4のプログラム線図に示すように、手ブレ、被写体ブレによる撮影ミスを防止するため、通常、シャッタ速度が規定のシャッタ速度(下限シャッタ速度)以上に設定され、EV値が12.5よりも小さくなると、絞り値は最小値に達するため、撮影感度を1段ずつアップさせる。尚、下限シャッタ速度とは、手ブレ限界シャッタ速度よりも所定段速い値に設定されたシャッタ速度であって、例えば手ブレ限界シャッタ速度よりも3段分速いシャッタ速度が設定される。
【0055】
EV値が10.5よりも小さくなると、撮影感度がフラッシュ発光時の下限値ISO800に達するため、シャッタ速度は下限シャッタ速度よりも遅く設定されるようになる。
そして、シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度に達すると、ここを低輝度フラッシュ発光ポイントP1とする。
【0056】
一方、フラッシュ非発光時には、図5のプログラム線図に示すように、EV値が9.5よりも小さくなると、撮影感度が上限値のISO1600に設定され、シャッタ速度のみがEV値に応じて調節される。
【0057】
図3に戻って、図4又は図5のプログラム線図に従って絞り値、シャッタ速度、及び撮影感度が設定されると、その設定された露出条件に応じて露出制御が行われる(ステップS20)。即ち、絞り12iの絞り開度、CCD14での電荷蓄積時間(シャッタ速度)、及びアナログアンプ18の撮影感度設定用ゲインが設定される。そして、前記設定された露出条件に従って撮影が行われる(ステップS22)。
【0058】
また、フラッシュ発光時には、CPU42からの指令によってフラッシュ発光装置52からフラッシュを目標発光量だけ発光させる。このフラッシュ発光量の制御方法は、所定の光量を予備発光し、被写体から戻ってくる光量を検出してその被写体の撮影に適したフラッシュ発光量を決定し、本発光時のフラッシュ発光時間を制御する方法や、フラッシュ発光時に調光センサにて被写体から戻ってくる光量を検出し、目標光量に達した時点でフラッシュ発光を停止する方法などがある。
【0059】
上記のようにして記録用に撮影されたR,G,Bの画像信号(RAW画像データ)は、図2に示した画像信号処理回路24によって各種の信号処理が行われた後(ステップS24)、圧縮・伸張処理回路32で圧縮されてメディアコントローラ34を介して記録メディア36に記録される(ステップS26)。
<第2の実施の形態>
次に、本実施の形態の撮像装置10における露出制御方法の第2の実施の形態について説明する。
【0060】
図6は第2の実施の形態の露出制御方法を含む撮像装置の撮影時の動作を示すフローチャートである。尚、図3に示した第1の実施の形態と共通する部分には共通のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0061】
図6に示す第2の実施の形態は、図3に示した第1の実施の形態と比較して、ステップS22とステップS24との間に、波線で示したステップS30、S32、S34、及びS36が追加されている点で相違する。
【0062】
これらのステップS30〜S36では、例えば、夜景の遠いシーンなどをフラッシュを発光して撮影する場合に、被写体にフラッシュが到達せずに露出アンダーとなる問題を改善する処理を行う。
【0063】
ステップS30では、図2に示した出力データ輝度積算回路24bにて撮影されたR,G,Bの画像信号(RAW画像データ)を積算し、輝度積算値を得る。
【0064】
ステップS32では、フラッシュがフル発光されたか否かを判別する。このフル発光の判別は、フラッシュ発光時間Tが、次式を満足するか否かよって行う。
[数1]
T≧T1+T2
ただし、T1:図10に示した発光量が制御不可能な範囲
T2:図10に示した発光量の制御可能な範囲
尚、上述したようにフラッシュがフル発光するときは、フラッシュが被写体に到達しないようなシーンを撮影した場合であり、この場合には露出アンダーになる。
【0065】
そして、ステップS32において、フラッシュがフル発光していないと判別された場合(被写体距離が調光可能な範囲にある場合)には、ステップS24に移行する。一方、フラッシュがフル発光したと判別された場合には、ステップS34に移行する。
【0066】
ステップS34では、次式に示すようにフラッシュ発光時の目標輝度積算値Ytargetと、ステップS30で算出した輝度積算値(A/D変換後の出力データの輝度積算値)Yadとから増幅量Gain を算出する。
[数2]
Gain=Ytarget/Yad
ただし、以下の条件を示す[数3]式を満たなさない場合は、増幅量Gain は、上限値及び下限値がそれぞれクリップされる。
[数3]
GAINmin ≦Gain ≦GAINmax
ただし、GAINmin:増幅量の下限値
GAINmax:増幅量の上限値
例えば、GAINmin=1.0、GAINmax=2.0とした場合には、[数2]式で求められた増幅量Gain は、図7に示すようにクリップ処理される。
【0067】
続いて、図2に示したホワイトバランス補正回路24cにR,G,Bごとに設定されるWBゲインに前記算出した増幅量Gain を乗算し、その乗算結果をWBゲインとして設定する(ステップS36)。
【0068】
これにより、フラッシュ発光時に撮影感度の上限値が制限され、フラッシュが到達しない被写体が暗くなる場合(露出アンダーになる場合)でも、明るくなるように補正することができる。
<第3の実施の形態>
次に、本実施の形態の撮像装置10における露出制御方法の第3の実施の形態について説明する。
【0069】
図8は第3の実施の形態の露出制御方法を含む撮像装置の撮影時の動作を示すフローチャートである。尚、図6に示した第2の実施の形態を示すフローチャートと共通する部分には共通のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0070】
図8に示す第3の実施の形態は、図6に示した第2の実施の形態と比較して、ステップS36の代わりにステップS40が設けられている点で相違する。
【0071】
即ち、第2の実施の形態では、デジタルアンプで構成されるホワイトバランス補正回路24cにてR,G,Bの画像信号に増幅量Gain を乗算するようにしたが、第3の実施の形態では、図2に示した画像信号処理回路24内のガンマ変換回路24dにて増幅量Gain を乗算する点で相違する。
【0072】
ガンマ変換回路24dは、前述したようにLUTによって構成されており、増幅量Gain=1のときは、例えば、図9(A)に示すような所要の入出力特性を有している。
【0073】
このガンマ変換回路24dは、図9(A)に示すようなガンマカーブのガンマ変換テーブル(基準のガンマ変換テーブル)を有しており、また、この変換テーブルでは、10ビットの画像データから8ビットの画像データへの変換も行っている。
【0074】
そして、増幅量Gain がGain >1の場合、その増幅量Gain を、図9(A)に示した基準のガンマ変換テーブルの変換値に増幅量Gain を乗算し、増幅量Gain が反映されたガンマ変換テーブルを作成する。このようにして作成されたガンマ変換テーブルは、ガンマ変換回路24dに設定される。
【0075】
図9(B)は増幅量Gain =2のときに作成されるガンマ変換テーブルの入出力特性を示している。同図に示すように、増幅量Gain を乗算した変換値が、255(8ビットの最大値)を超える場合には、255にクリップされる。
【0076】
従って、ステップS24での信号処理(ガンマ変換)時に増幅量Gain 分だけ増幅された画像信号が生成される。
【0077】
尚、上記実施の形態の撮像装置10では、CCD14から得た画像信号に基づいてEV値を求めているが、EV値を求める方法については、これに限定されるものではなく、他の測光センサ等を用いてEV値を求めるようにしてもよい。
【0078】
また、本発明は、図4及び図5に示したプログラム線図による露出制御に限定されず、更に調節可能な撮影感度の範囲等もこの実施の形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は画像信号処理回路の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図3は第1の実施の形態の露出制御方法を含む撮像装置の撮影時の動作を示すフローチャートである。
【図4】図4はフラッシュ発光時のプログラム線図の一例を示す図である。
【図5】図5はフラッシュ非発光時のプログラム線図の一例を示す図である。
【図6】図6は第2の実施の形態の露出制御方法を含む撮像装置の撮影時の動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は算出した増幅量Gain の上限値及び下限値のクリップ処理を説明するために用いた図表である。
【図8】図8は第3の実施の形態の露出制御方法を含む撮像装置の撮影時の動作を示すフローチャートである。
【図9】図9は増幅量Gain によってガンマ変換テーブルを変更する一例を説明するために用いた図である。
【図10】図10はフラッシュ発光装置から発光されるフラッシュのフラッシュ発光時間と発光量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0080】
10…撮像装置、12…撮影光学系、14…CCD、16…タイミングジェネレータ(TG)、18…アナログアンプ、20…A/D変換器、22…画像入力コントローラ、24…画像信号処理回路、24b…出力データ輝度積算回路、24c…ホワイトバランス補正回路、24d…ガンマ変換回路、28…ビデオエンコーダ、30…画像表示装置、32…圧縮・伸張処理回路、34…メディアコントローラ、36…記録メディア、38…AE検出回路、40…AF検出回路、42…中央処理装置(CPU)、44…メモリ、50a…シャッタレリーズスイッチ、52…フラッシュ発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を調節して露出を制御するとともに、フラッシュ発光時にフラッシュ発光量を調節して露出を制御する露出制御方法において、
前記撮影感度を調節するときの感度の上限値を、フラッシュ非発光時には前記撮影感度の調節可能な範囲の最大値とし、
フラッシュ発光時には前記最大値よりも小さい値であって、適正なフラッシュ発光量の調節が可能な感度の最大値とすることを特徴とする露出制御方法。
【請求項2】
前記撮影感度の調節可能な範囲の最大値はISO1600であり、前記適正なフラッシュ発光量の調節が可能な感度の最大値はISO800であることを特徴とする請求項1に記載の露出制御方法。
【請求項3】
前記フラッシュ発光時にフラッシュ発光量が最大に達したか否かを判別し、
フラッシュ発光量が最大に達した場合には、前記フラッシュ発光時に取得した画像信号を所定の増幅量で増幅することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の露出制御方法。
【請求項4】
前記所定の増幅量は、予め設定した目標積算値と前記フラッシュ発光時に取得した画像信号を積算した積算値とから算出することを特徴とする請求項3に記載の露出制御方法。
【請求項5】
前記所定の増幅量による画像信号の増幅は、ホワイトバランス補正を行うホワイトバランス補正手段によってホワイトバランス補正とともに行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の露出制御方法。
【請求項6】
前記所定の増幅量による画像信号の増幅は、所定の階調変換を行う階調変換手段により階調変換とともに行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の露出制御方法。
【請求項7】
フラッシュ発光手段と、
前記フラッシュ発光手段から発光されるフラッシュ発光量を調節する調光手段と、
被写体の明るさを測光する測光手段と、
前記測光手段によって測光された被写体の明るさに基づいて露出値を算出する算出手段と、
前記算出された露出値に基づいて絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を調節して露出を制御するとともに、フラッシュ発光時に前記調光手段を介してフラッシュ発光量を調節して露出を制御する露出制御手段と、を備え、
前記露出制御手段は、前記撮影感度を調節するときの感度の上限値を、前記フラッシュ発光手段からフラッシュを発光するときには前記撮影感度の調節可能な範囲の最大値とし、前記フラッシュ発光手段からフラッシュを発光しないときには前記最大値よりも小さい値であって、前記調光手段によって適正なフラッシュ発光量の調節が可能な感度の最大値とすることを特徴とする露出制御装置。
【請求項8】
前記露出制御手段は、前記算出した露出値に基づいて絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を決定する際に、手ブレ限界シャッタ速度よりも所定段速いシャッタ速度を下限シャッタ速度として規定し、前記シャッタ速度が前記下限シャッタ速度以上になるように絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を設定し、絞り値が最小値に達し、かつ撮影感度が前記最大値に達すると、前記シャッタ速度を前記下限シャッタ速度よりも遅く設定可能にすることを特徴とする請求項7に記載の露出制御装置。
【請求項9】
前記露出制御手段は、低度輝度フラッシュ発光モード時に前記シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度に達すると、前記フラッシュ発光手段からフラッシュを発光させることを特徴とする請求項8に記載の露出制御装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載の露出制御装置と、
前記露出制御装置によって露出制御された状態の画像信号を取得する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得した画像信号に対して信号処理を行う信号処理手段と、
前記フラッシュ発光手段からフラッシュを発光したときにフラッシュ発光量が最大に達したか否かを判別する判別手段と、
前記フラッシュ発光量が最大に達したと判断された場合に、前記信号処理手段において、前記フラッシュ発光時に取得した画像信号を所定の増幅量で増幅させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
前記フラッシュ発光時に取得した画像信号を積算して積算値を算出する積算値算出手段を有し、前記制御手段は、予め設定した目標積算値と前記積算値算出手段によって算出された積算値とから前記所定の増幅量を決定することを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記信号処理手段はホワイトバランス補正手段を含み、前記制御手段は、前記ホワイトバランス補正手段におけるホワイトバランス補正値に前記所定の増幅量を付加することを特徴とする請求項10又は11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記信号処理手段は階調変換手段を含み、前記制御手段は、前記階調変換手段における入出力特性に前記所定の増幅量を付加することを特徴とする請求項10又は11に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−25558(P2007−25558A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211389(P2005−211389)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】