説明

面形成支援システム、面形成支援装置、及び面形成支援プログラム

【課題】本発明は、施工作業に要する時間を短縮させることができる面形成支援システム、面形成支援装置、及び面形成支援プログラムを提供する。
【解決手段】仮想空間において、予め定められた目標面に表示された所定画像を予め設定した複数の撮影位置から予め設定した撮影方向に向けて仮想的に撮影することにより得られる撮影位置毎の画像情報を生成する情報生成装置と、実空間において、目標面に対する複数の撮影位置と同一の位置関係になるよう各々設置され、対応する画像情報により示される画像を、前記目標面を形成する際の基礎となる基礎面に、対応する撮影方向に向けて投影する複数の投影装置と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面形成支援システム、面形成支援装置、及び面形成支援プログラムに関し、特に、予め定められた目標面の形成を支援する面形成支援システム、面形成支援装置、及び面形成支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、像解析によって面形状の計測対象とする対象物の表面の三次元形状情報を得る技術が多く用いられるようになってきた。表面の三次元形状情報を得る際に使用される技術として、所定の撮像視野内に存在する計測対象に光パタンを投影し、計測対象の三次元形状に応じて変形した光パタンの変形量を解析する技術が知られている。この代表的な方法としては、光切断法や空間コード法、縞解析法などが挙げられる。これらは全て三角測量の原理に基づいているが、中でも、縞解析法に関しては空間縞解析や時間縞解析など多くの手法が提案されており、高い計測精度を得る手法として知られている。
【0003】
通常、これらの手法では、光パタンが投影された計測対象面の読み取りにエリアセンサを用いているが、エリアセンサを用いると、計測対象面が1撮像視野内に収まらないことが多く、エリアセンサを縦及び横の双方に移動させながら1撮像視野ずつ複数回に分けて撮像する必要が度々生じ、撮像時間が長くなってしまうという問題が起こっている。
この対応策として、例えば、迅速かつ高精度に三次元形状情報を計測できる三次元形状計測装置が提案されている(特許文献1参照)。この装置は、位置に応じて周期的に輝度が変化する光パタンを、計測対象物が計測される搬送ステージ上の一部の領域へ投影し、光パタン照射領域を撮像する第1のラインセンサと、光パタンの非照射領域を撮像する第2のラインセンサとを有し、第1のラインセンサが撮像した画像および第2のラインセンサが撮像した画像から、背景情報を除去した画像に含まれるある画素における光パタンの位相を、画像における画素とその周辺の画素との輝度値に基づいて算出し、算出した位相に基づいて計測対象の高さ情報を算出するものである。これにより、ラインセンサに対して計測対象を主走査方向に相対的に移動させる回数を減らしつつ、高解像度で計測対象を撮像することが可能になった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−31150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した三次元形状を計測する技術を利用して、建設物における予め定められた面を目標とする高さとなるように施工する際に、当該技術により計測された三次元形状により示される上記予め定められた面の高さと、上記目標とする高さとのズレを施工作業者に提示する技術(以下、「施工支援技術」という。)が考えられる。
【0006】
上記特許文献1に開示されている技術を上記施工支援技術として適用して、実空間にある立体的な施工対象物に施工を施して面を形成する場合、施工途中の面の形状を計測して施工作業者に提示することはできるが、提示された施工途中の面の形状を参照しつつ施工対象物に対して施工する必要があるため、施工作業に時間がかかってしまう、という問題点があった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、施工作業に要する時間を短縮させることができる面形成支援システム、面形成支援装置、及び面形成支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の面形成支援システムは、仮想空間において、予め定められた目標面に表示された所定画像を予め設定した複数の撮影位置から予め設定した撮影方向に向けて仮想的に撮影することにより得られる前記撮影位置毎の画像情報を生成する情報生成装置と、実空間において、前記目標面に対応する形成目標面に対して、前記目標面に対する前記複数の撮影位置と同一の位置関係になるよう各々設置され、対応する前記画像情報により示される画像を、前記形成目標面を形成する際の基礎となる基礎面に、前記撮影方向に対応する投影方向に向けて投影する複数の投影装置と、を備えている。
【0009】
請求項1に記載の面形成支援システムによれば、情報生成装置が、仮想空間において、予め定められた目標面に表示された所定画像を予め設定された複数の撮影位置から予め設定された撮影方向に対して仮想的に撮影することにより得られる位置毎の画像情報を生成し、複数の投影装置が、実空間において、目標面に対応する形成目標面に対して、目標面に対する複数の撮影位置と同一の位置関係になるよう各々設置され、情報生成装置により生成された各々対応する画像情報により得られる画像を、目標面を形成する際の基礎となる基礎面に、各々対応する撮影方向に対応する投影方向に向けて投影する。これにより、施工面とは異なる位置において表示された三次元位置の測定結果を参照しながら施工する場合に比較して、より短時間で施工を完了することができる。
【0010】
なお、請求項1に記載の面形成支援システムにおいて、請求項2に記載の発明のように、前記情報生成装置は、前記実空間における前記複数の投影装置の各々の設置位置及び投影方向の入力を受け付ける受付手段を備え、前記受付手段により受け付けられた複数の前記設置位置及び前記投影方向をそれぞれ複数の前記撮影位置及び前記撮影方向として設定するようにしても良い。これにより、情報生成装置において設定された撮影位置及び撮影方向に投影装置を位置決めする場合に比較して、投影装置の設置作業を容易に行うことができる。
【0011】
また、請求項1または2に記載の面形成支援システムは、請求項3に記載の発明のように、前記複数の投影装置の各々より投影された画像を撮影する撮影装置と、前記撮影装置により撮影された画像における前記複数の投影装置の各々より投影された画像間のずれ量に基づいて、前記形成目標面と前記基礎面との前記投影方向に対するずれ量を示す物理量を計測する計測装置と、前記計測装置により計測された物理量が予め定められた範囲内となるように前記基礎面に対して前記目標面を形成する面形成装置とを更に備えるようにしてもよい。これにより、目標面を自動的に且つ高精度で形成することができる。
【0012】
また、請求項3記載の面形成支援システムにおいて、請求項4に記載の発明のように、前記所定画像は格子模様の画像であり、前記計測装置は、前記撮影装置により撮影された画像における複数の前記投影装置の各々より投影された画像間の対応する格子点のずれ量に基づいて、前記物理量を計測するようにしても良い。これにより、簡単かつ正確にずれ量を示す物理量を計測することができる。
【0013】
一方、上記目的を達成するために、請求項5に記載の面形成支援装置は、仮想空間において、予め定められた目標面に表示された所定画像を予め設定した複数の撮影位置から予め設定した撮影方向に向けて仮想的に撮影することにより得られる前記撮影位置毎の画像情報を生成する情報生成手段と、実空間において、前記目標面に対応する形成目標面に対して、前記目標面に対する前記複数の撮影位置と同一の位置関係になるよう各々設置され、対応する前記画像情報により示される画像を、前記目標面を形成する際の基礎となる基礎面に、前記撮影方向に対応する投影方向に向けて投影する複数の投影手段と、を備えている。
【0014】
従って、請求項5に記載の面形成支援装置によれば、請求項1に記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1に記載の発明のように、施工面とは異なる位置において表示された三次元位置の測定結果を参照しながら施工する場合に比較して、より短時間で施工を完了することができる。
【0015】
また、上記目的を達成するために、請求項6に記載の面形成支援プログラムは、仮想空間において、予め定められた目標面に表示された所定画像を予め設定した複数の撮影位置から予め設定した撮影方向に向けて仮想的に撮影することにより得られる前記撮影位置毎の画像情報を生成する情報生成ステップと、実空間において、前記目標面に対応する形成目標面に対して、前記目標面に対する前記複数の撮影位置と同一の位置関係になるよう各々設置された複数の投影装置に対して、対応する前記画像情報により示される画像を、前記目標面を形成する際の基礎となる基礎面に、前記撮影方向に対応する前記投影方向に向けて投影させる投影ステップとをコンピュータに実行させるためのものである。
【0016】
従って、請求項6に記載の面形成支援プログラムによれば、コンピュータを請求項1に記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1に記載の発明のように、施工面とは異なる位置において表示された三次元位置の測定結果を参照しながら施工する場合に比較して、より短時間で施工を完了することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、施工面とは異なる位置において表示された三次元位置の測定結果を参照しながら施工する場合に比較して、施工作業に要する時間を短縮させることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る面形成支援システムの原理を説明するための概念図である。
【図2】第1実施形態に係る面形成支援システムの全体構成図である。
【図3】第1実施形態に係る面形成支援システムの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る面形成支援システムにおけるPCの記憶部の記憶内容を示す模式図である。
【図5】実施形態に係る面形成支援システムにおけるプロジェクタの投影方向を示す図であり、(A)は上面図であり、(B)は側面図である。
【図6】第1実施形態に係る投影情報生成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態に係る施工支援処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態に係る施工支援処理プログラムにおいて表示される設置支援画面を示す図である。
【図9】(A)乃至(C)は、施工対象物の施工状態を示す側面概略図であり、(D)乃至(F)は、(A)乃至(C)に示す各々の施工状態において2台のプロジェクタにより施工面に表示される格子模様を示す図である。
【図10】第2実施形態に係る面形成支援システムの全体構成図である。
【図11】第2実施形態に係る施工支援処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態に係る施工支援処理プログラムにおいて表示される入力画面を示す図である。
【図13】第2実施形態に係る投影情報生成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】第3実施形態に係る面形成支援システムの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図15】(A)は、ずれ量の導出方法を説明するための正面概略図であり、(B)は、ずれ量の導出方法を説明するための上面概略図である。
【図16】第3実施形態に係る施工処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】本発明の応用例の説明に供する側面概略図である。
【図18】本発明の応用例の説明に供する側面概略図である。
【図19】本発明の応用例の説明に供する図であり、(A)及び(B)は側面図、(C)及び(D)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、建築物を構成する構成物(本実施の形態では、柱)の表面に発泡ウレタンを吹き付ける施工を支援する面形成支援システムに適用した場合の形態例について説明する。また、ここでは、本発明の投影装置が2台である場合の形態例について説明する。
【0020】
図1は、実施形態に係る面形成支援システム1の原理を説明するための概念図である。図1に示すように、本実施形態に係る面形成支援システム1では、仮想空間10において、施工対象とする建物の三次元CAD情報により示される施工対象とする面の施工完了後の面(以下、「目標面11」という。)に仮想的に所定画像(本実施の形態では、格子模様であり、以下、「目標画像」という。)を表示した状態で、当該目標画像を予め設定した複数(本実施形態では2箇所)の撮影位置から予め設定した撮影方向に向けて仮想的に撮影することによって得られる上記撮影位置毎の画像情報を生成する。
【0021】
一方、本実施形態に係る面形成支援システム1では、実空間20において、仮想空間10における目標面11と対応する面(形成目標面であり、以下、「目標面A」という。)に対して、仮想空間10における上記目標面11に対する上記複数の撮影位置と同一の位置関係になるよう、目標面Aに対して各々設置された複数(本実施形態では2台)のプロジェクタ22A、22Bにより、対応する上記画像情報により示される画像を、上記目標面Aを形成する際の基礎となる面(以下、「施工面21A」という。)に、対応する上記撮影方向に向けて投影する。なお、本実施形態に係る面形成支援システム1では、各プロジェクタ22A、22Bによる投影方向の設定を、各プロジェクタ22A、22Bをトランシットの上部測定部に個別に取り付け、当該トランシットにより測定される方向が上記撮影方向と一致するように設定することにより行う。但し、この形態に限らず、他の方位測定装置を用いて設定する形態としてもよいことは言うまでもない。
【0022】
以上により、施工面21Aが目標面Aと一致しない状態では、各プロジェクタ22A、22Bから投影された画像がずれるため、施工作業者は、当該ずれが施工面21Aの全域で生じなくなるまで施工作業を継続して行うことにより、当該施工作業を高精度で完遂することができる。
【0023】
このように、本実施の形態に係る面形成支援システム1では、施工面21Aに投影されている画像の状態を参照しながら当該施工面21Aに対する施工を行っているので、当該施工面とは異なる位置において表示された三次元位置の測定結果を参照しながら施工する場合に比較して、より短時間で施工を完了することができる。
【0024】
投影される目標画像は、整形なグリッド模様(格子模様)、同一位置を中心とした各々半径の異なる複数の円により構成される同心円模様、複数のドットが格子状に配列されたドット模様などであり、複数のプロジェクタ22A、22Bから投影させたときに、各々のプロジェクタ22A、22Bによる投影画像のずれが判断できる画像であれば任意である。または、複数のプロジェクタ22A、22Bから各々異なる色でベタ塗りされた画像を投影させ、各々の投影画像が重なることにより色が変化することを利用して、投影画像のずれを判断するようにしても良い。例えば、3つのプロジェクタから各々光の三原色である赤・緑・青のいずれかのベタ塗り画像をそれぞれ投影面が目標面と同じ高さとなった場合に各色の領域が全て重なるように投影させることにより、投影画像における白く表示されている領域の面積から、施工作業者が投影画像のずれを視覚的に容易に判断することができる。なお、ここでは、上述したように、格子模様を例に挙げて説明する。
【0025】
なお、三次元CAD情報から目標面11を構成するとともに目標面11に格子模様を併せて表示させ、仮想空間10におけるプロジェクタ22A、22Bの位置にそれぞれ仮想的なカメラ(以下、「仮想カメラ12A、12B」という。)を配置させて、仮想カメラ12A、12Bで格子模様を撮影することで実空間20に投影させるための画像を示す画像情報を生成し、それらの画像を実空間20のそれぞれのプロジェクタ22A、22Bから投影させるようにすると良い。
【0026】
〔第1実施形態〕
図2は、第1実施形態に係る面形成支援システム1の構成を示す全体構成図である。図2に示すように、本第1実施形態に係る面形成支援システム1は、上述した仮想空間における処理を担うパーソナル・コンピュータ(以下、「PC」という。)13と、上述した実空間における処理を担うPC24と、を備えている。なお、本実施形態に係る面形成支援システム1では、PC13が予め定められた複数の建物(以下、「管理対象建物」という。)に対する施工を統括的に管理する施工管理センタに設けられており、PC24が管理対象建物の各々の施工現場の近傍に設けられている。
【0027】
PC13は、上述したように、施工対象とする建物の三次元CAD情報により示される三次元画像を描画することにより目標面11を仮想的に構成して目標画像を表示させた状態で、当該目標画像を予め設定した2箇所の撮影位置から予め設定した撮影方向に向けて仮想的に撮影することによって得られる各撮影位置毎の画像情報を生成するものである。本実施形態に係るPC13では、この際の仮想的な撮影に仮想カメラ12Aおよび仮想カメラ12Bの2台の仮想カメラを用いる。
【0028】
なお、本実施形態に係る面形成支援システム1では、上記撮影位置および上記撮影方向を示す座標系として、処理対象とする建物の三次元CAD情報で用いられている3次元座標系と同一の座標系を用いており、その原点(0,0,0)の位置は当該三次元CAD情報の原点の位置と同一とされている。
【0029】
一方、PC24は、上述したように、目標面11に対する上記2箇所の撮影位置と同一の位置関係になるよう各々設置された2台のプロジェクタ22A、22Bにより、対応する画像情報により示される画像を施工対象物21の施工面21Aに、撮影方向と対応する投影方向に向けて投影する制御を行うものである。
【0030】
本実施形態に係るPC24は、PC13により生成された画像情報と、当該画像情報を生成する際に設定した仮想カメラ12Aおよび仮想カメラ12Bの各々の撮影位置および撮影方向の各情報とをPC13から受信する。なお、この際にPC13からPC24に送信される画像情報、撮影位置情報、および撮影方向情報を、以下ではまとめて「投影情報」という。
【0031】
そして、PC24は、受信した投影情報に含まれる撮影位置情報および撮影方向情報を提示する。これに応じて、施工作業者は、提示された撮影位置情報および撮影方向情報により示される撮影位置および撮影方向と一致するようにプロジェクタ22A及びプロジェクタ22Bの設置位置および投影方向を位置決めする。
【0032】
施工作業者による各プロジェクタ22A、22Bの位置決めが終了すると、PC24は、受信した投影情報に含まれる画像情報を対応するプロジェクタ22A、22Bに送信することにより、各プロジェクタ22A、22Bに対して、対応する画像情報により示される画像(目標画像)を施工面21Aに向けて投影させる。
【0033】
図3は、第1実施形態に係る面形成支援システム1の電気系の要部構成を示すブロック図である。図3に示すように、PC13は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)を備えるとともにCPUの制御によりPC13全体を総括的に制御する制御部30、PC24に対する通信を制御する通信部31、キーボードやマウスなどの入力装置を備えるとともにこれらに対するユーザ操作により指示された情報を入力情報として制御部30に伝達する入力部32、液晶ディスプレイなどの表示装置を備えるとともに制御部30の制御に基づいて各種情報を表示装置に表示する表示部33、ROM(Read Only Memory)やその他の不揮発性メモリやハードディスクなどを備えるとともに制御部30による制御に使用されるプログラムや制御に使用される各種情報を記憶する記憶部34を備えている。
【0034】
また、PC24は、CPUやRAMを備えるとともにCPUの制御によりPC24全体を総括的に制御する制御部35、PC13に対する通信を制御する通信部36、キーボードやマウスなどの入力装置を備えるとともにこれらに対するユーザ操作により指示された情報を入力情報として制御部35に伝達する入力部37、液晶ディスプレイなどの表示装置を備えるとともに制御部35の制御に基づいて各種情報を表示装置に表示する表示部38、ROMやその他の不揮発性メモリやハードディスクなどを備えるとともに制御部35による制御に使用されるプログラムや制御に使用される各種情報を記憶する記憶部39を備えている。
【0035】
また、PC24にはプロジェクタ22A、プロジェクタ22Bが有線にて電気的に接続されており、制御部35は、各々のプロジェクタ22A、22Bに対して画像情報を出力する。画像情報を入力したプロジェクタ22A、22Bは、各々入力した画像情報を予め設定された方向に投影する。さらに、PC24はカメラ23が有線にて電気的に接続されており、制御部35は、カメラ23から撮影によって得られた画像情報(以下、「撮影情報」という。)を入力する。なお、PC24とプロジェクタ22A、22B、カメラ23とはそれぞれ有線で接続される代わりに、無線通信によって画像情報や撮影情報を送受信するようにしても良い。
【0036】
なお、PC13とPC24との通信方式は、無線でも有線でも良く、インターネット、無線LAN(Local Area Network)など既存の通信媒体を利用することができる。
【0037】
図4は、第1実施形態の面形成支援システム1におけるPC13の記憶部34の記憶内容を示す模式図である。図4に示すように、記憶部34は、少なくとも、三次元CAD情報34a1が記憶されたデータベース領域34a、制御部30により使用されるプログラムが記憶されたプログラム領域34bを備えている。データベース領域34aには、各々異なる建物を示す三次元CAD情報が対応する建物を特定する情報に関連付けられて予め記憶されている。そして、施工作業者などにより施工対象とする建物が指定されることにより、その建物に関連付けられた三次元CAD情報が選択されて用いられる。
【0038】
図5(A)は、実施形態におけるプロジェクタ22A及びプロジェクタ22Bの投影方向を示す上面図であり、図5(B)は、実施形態におけるプロジェクタ22A及びプロジェクタ22Bの投影方向を示す側面図である。プロジェクタ22A及びプロジェクタ22Bの投影方向は、投影面に垂直な軸に対する水平方向の角度θxと、投影面に垂直な軸に対する鉛直方向の角度θzにより決定される。従って、本実施形態に係る面形成支援システム1では、角度θx及び角度θzの2つの角度により、各プロジェクタ22A、22Bの投影方向を規定している。
【0039】
次に、本実施形態に係る面形成支援システム1の作用を説明する。
【0040】
本実施形態に係る面形成支援システム1では、PC13によって投影情報生成処理プログラムが実行される一方、PC24によって施工支援処理プログラムが実行される。そこで、まず、図6を参照して、投影情報生成処理プログラムを実行する際のPC13の作用を説明する。なお、図6は、施工作業者等からの実行指示が入力部32を介して受け付けられた際に、PC13の制御部30により実行される投影情報生成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは記憶部34のプログラム領域34bに予め記憶されている。
【0041】
始めに、PC13の制御部30は、記憶部34から、施工対象物21を含む建物に対応する三次元CAD情報を読み出す(S101)。なお、施工対象物21を含む建物は、ステップS101にて施工作業者により入力されても、予め施工作業者により選択されて設定されていても良い。
【0042】
制御部30は、施工対象物21において施工対象とする目標面11の選択指示を受け付ける(S103)。この際、制御部30は、例えばステップS101にて読み出した三次元CAD情報から三次元CADモデルを生成して表示部33に表示させるとともに、施工作業者により入力部32を介してこの三次元CADモデルからいずれかの面を選択させることにより目標面11の選択指示を受け付ける。
【0043】
また、制御部30は、仮想空間10における仮想カメラ12A、12Bの撮影位置・撮影方向の入力を受け付ける(S105)。この際、制御部30は、例えばステップS101にて読み出した三次元CAD情報から三次元CADモデルを生成して表示部33に表示させるとともに、施工作業者により入力部32を介して仮想カメラ12A、12Bの各々の撮影位置・撮影方向の入力を促すことで、この入力を受け付ける。
【0044】
なお、上記複数の仮想カメラ12A、12Bによる撮影位置は任意の位置とすることができるが、この位置が実空間20におけるプロジェクタ22A、22Bの設置位置となるため、実際に施工作業を行う際にプロジェクタ22A、22Bを設置する空間を十分に有する位置を適用する必要がある。また、施工面21Aからの距離が遠過ぎるとプロジェクタ22A、22Bにより施工面21Aに表示される画像が薄くなってしまう一方、近過ぎると施工作業の妨げとなるため、これらの点を考慮する必要がある。
【0045】
制御部30は、ステップS101にて読み出した三次元CAD情報から目標面11を仮想的に構成するとともに、この目標面11に格子模様を仮想的に描画する(S107)。
【0046】
制御部30は、ステップS105にて受け付けられた撮影位置及び撮影方向となるように仮想カメラ12A、12Bを位置決めした場合の各仮想カメラ12A、12Bによって仮想的に撮影された画像を示す画像情報を生成した後に、撮影位置及び撮影方向の各情報と画像情報とを各仮想カメラ12A、12B毎に関連付けた投影情報を生成する(S109)。なお、上記画像情報の生成は、従来既知の汎用コンピュータ・グラフィックス用のアプリケーションプログラムにより行うことができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0047】
制御部30は、ステップS109にて生成された投影情報をPC24に対して送信する(S111)。の後に本投影情報生成処理プログラムを終了する。
【0048】
次に、図7を参照して、施工支援処理プログラムを実行する際のPC24の作用を説明する。なお、図7は、施工作業者等からの実行指示が入力部37を介して受け付けられた際に、PC24の制御部35により実行される施工支援処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは記憶部39の所定領域に予め記憶されている。
【0049】
始めに、PC24の制御部35は、ステップS111にてPC13から送信された投影情報を受信したか否かを判断する(S201)。受信していない場合(S201;N)は、制御部35はそのまま待機する。
【0050】
投影情報を受信した場合(S201;Y)は、制御部35は、ステップS201にて受信した投影情報に含まれる撮影位置及び撮影方向を各プロジェクタ22A,22Bの設置位置及び投影方向として表示部38に表示させる(S203)。
【0051】
図8は、ステップ203にて表示させる設置支援画面40を示す図である。図8に示すように、施工支援画面40には、左側のプロジェクタ22Aの設置位置、投影方向、右側のプロジェクタ22Bの設置位置、投影方向が表示されるとともに、施工作業者が設置完了の情報を入力するための設置完了ボタン41が表示されている。施工作業者は、各々のプロジェクタ22A、22Bの設置位置・投影方向を施工支援画面40で確認し、それらの情報に応じて各々のプロジェクタ22A、22Bを設置した後に、それらの設置が完了したことを示すために設置完了ボタン41を指定する。
【0052】
制御部35は、プロジェクタ22A、22Bの設置が完了したか否かを判断する(S205)。この際、ユーザ操作により設置完了ボタン41が指定された場合に、プロジェクタ22A、22Bの設置が完了したものと判断する。
【0053】
プロジェクタ22A、22Bの設置が完了した場合(S205;Y)は、制御部35は、ステップS201にて受信した投影情報に含まれる画像情報に基づいて、プロジェクタ22A、22Bからそれぞれ対応する画像を投影させ(S207)、その後に、本施工支援処理プログラムを終了させる。
【0054】
図9(A)乃至図9(C)は、施工対象物21の施工状態を示す側面概略図であり、図9(D)乃至図9(F)は、複数のプロジェクタ22A、22Bにより施工面21Aに投影される格子模様を示す図である。
【0055】
図9(A)に示すように、目標面Aと施工対象物21の施工面21Aとが一致していない場合には、図9(D)に示すように、プロジェクタ22Aから投影された格子模様42と、プロジェクタ22Bから投影された格子模様43との位置が各々一致せず、ずれた位置に表示される。
【0056】
図9(B)に示すように、施工作業者による施工作業が進み、図9(A)に示すよりも目標面Aと施工対象物21の施工面21Aとが近付いた場合には、図9(E)に示すように、プロジェクタ22Aから投影される格子模様42と、プロジェクタ22Bから投影される格子模様43との位置が、図9(D)に示す格子模様よりも近付いた位置に表示される。
【0057】
このように目標面Aと施工対象物21の施工面21Aとが徐々に近付いていき、図9(C)に示すように、目標面Aと施工面21Aとが一致すると、図9(F)に示すように、プロジェクタ22Aから投影される格子模様42と、プロジェクタ22Bから投影される格子模様43との位置が完全に一致する。施工作業者は、施工面21Aに投影された格子模様42、43によって施工対象面Aが目標面Aに一致したことを視覚的に認識することができる。
【0058】
本実施形態に係る面形成支援システム1によれば、情報生成装置であるPC13が、仮想空間10において、予め定められた目標面11に表示された目標画像を予め設定された複数の撮影位置から予め設定された撮影方向に対して仮想的に撮影することにより得られる位置毎の画像情報を生成し、複数の投影装置であるプロジェクタ22A、22Bが、実空間20において、目標面11に対する複数の撮影位置と同一の位置関係になるよう各々設置され、情報生成装置であるPC13により生成された各々対応する画像情報により得られる画像を、目標面Aを形成する際の基礎となる基礎面(施工面21A)に、各々対応する撮影方向に対応する投影方向に向けて投影する。
【0059】
このように、施工作業者が施工面21Aに投影されている画像(例えば格子模様)の状態を参照しながら当該施工面21Aに対する施工を行うことができるので、当該施工面21Aとは異なる位置において表示された三次元位置の測定結果を参照しながら施工する場合に比較して、より短時間で施工を完了することができる。
【0060】
また、面形成支援システム1によると、目標面Aと施工面21Aとの位置関係をリアルタイムに視覚的に認識できることにより、施工と検査を同時に行うことができ、施工完了を検査完了とすることができるため、工数を削減することができる。さらに面形成支援システム1によると、施工作業者は、既存のAR(現実拡張)技術のようにHMD(ヘッドマウントディスプレイ)といったインターフェイスを介することなく、面形状を裸眼で確認できるため、利便性に優れている。
【0061】
なお、三次元CAD情報内の属性情報を活用することにより、施工目標とする位置だけでなく性能等の解析結果を投影するようにしても良い。例えば、壁の位置によって異なる室内の温度分布を、等高線や色分布で表示するなどといった形態である。
【0062】
また、図9に示すように、本実施形態では目標面Aが平面である場合について示したが、これに限定されず、目標面Aが曲面であっても、同様の手順で施工作業者の面形成を支援することができる。この際には、施工開始段階で施工面21Aが平面であった場合に、目標画像として表示される格子模様の各々のラインが曲線として表示されるが、施工作業により施工面21Aと目標面Aとが近づくに従って上記曲線が直線に近づいていくことになる。
【0063】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態に係る面形成支援システム1の構成は上記第1実施形態に係る面形成支援システム1と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0064】
図10は、第2実施形態に係る面形成支援システム1の全体構成図である。第1実施形態に係る面形成支援システム1は、PC13にて目標面11、仮想カメラ12A、12Bの各々の相対位置が設定された後に、それらの相対位置に基づいて、実空間20において施工面21A、プロジェクタ22A、22Bの各々の相対位置が設定されるものであったが、第2実施形態に係る面形成支援システム1は、実空間20において施工面21A、プロジェクタ22A、22Bの各々の設置位置や投影方向が設定された後に、それらの設置位置や投影方向がPC13に送信され、PC13において、それらの相対位置に基づいて仮想空間10における目標面11、仮想カメラ12A、12Bの各々の相対位置が設定されるものである。
【0065】
次に、本実施形態に係る面形成支援システム1の作用を説明する。
【0066】
本実施形態に係る面形成支援システム1では、PC24によって施工支援処理プログラムが実行される一方、PC13によって投影情報生成処理プログラムが実行される。そこで、まず、図11を参照して、施工支援処理プログラムを実行する際のPC24の作用を説明する。なお、図11は、施工作業者等からの実行指示が入力部32を介して受け付けられた際に、PC24の制御部35により実行される施工支援処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは記憶部39に予め記憶されている。
【0067】
始めにPC24の制御部35は、複数のプロジェクタ22A、22Bの設置位置・投影方向の入力画面を表示部38に表示させる(S301)。図12は、プロジェクタ22A、22Bの設置位置や投影方向を入力するための入力画面44を示す図である。入力画面44は、図12に示すように、左側のプロジェクタ22A、右側のプロジェクタ22Bの各々の設置位置や投影方向の入力欄45と、入力された情報を送信する指示を入力するための送信ボタン46を有している。施工作業者は、施工作業を開始する際、実空間20において施工対象物21に対するプロジェクタ22A、22Bの設置位置及び投影方向を設定し、入力部37を介して各入力欄45に各情報を入力した後に、送信ボタン46を指定する。
【0068】
制御部35は、複数のプロジェクタ22A、22Bの設置位置・投影方向の入力が受け付けられたか否かを判断する(S302)。この際、入力画面44において送信ボタン46が指定された場合に、入力が受け付けられたものと判断する。入力が受け付けられていない場合(S302;N)は、制御部35は入力が受け付けられるまで待機する。
【0069】
入力が受け付けられた場合(S302;Y)は、制御部35は、入力された複数のプロジェクタ22A、22Bの設置位置及び投影方向の情報を、通信部36を介してPC14に送信する(S303)。そして、設置位置及び投影方向の情報を受信したPC13は、これらの情報に基づいて投影情報を生成する投影情報生成処理を行う。
【0070】
図13は、PC24から設置位置及び投影方向の情報を受信した際に、PC13の制御部30により実行される投影情報生成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは記憶部34のプログラム領域34bに予め記憶されている。
【0071】
PC13の制御部30は、ステップS303にてPC24から送信された設置位置及び投影方向の情報を受信したか否かを判断する(S401)。受信していない場合(S401;N)は、制御部30は受信するまで待機する。設置位置及び投影方向の情報を受信した場合(S401;Y)は、制御部30は、記憶部34から、施工対象物21が含まれる建物に対応する三次元CAD情報を読み出す(S403)。
【0072】
制御部30は、施工対象物21において施工対象とする目標面11の選択指示を受け付ける(S404)。この際、制御部30は、例えばステップS403にて読み出した三次元CAD情報から三次元CADモデルを生成して表示部33に表示させるとともに、施工作業者により入力部32を介してこの三次元CADモデルからいずれかの面を選択させることにより目標面11の選択指示を受け付ける。
【0073】
制御部30は、ステップS403にて読み出した三次元CAD情報から目標面11を仮想的に構成するとともに、この目標面11に格子模様を仮想的に描画する(S405)。
【0074】
制御部30は、ステップS401にて受信した設置位置及び投影方向と対応する撮影位置及び撮影方向なるように仮想カメラ12A、12Bを位置決めした場合の各仮想カメラ12A、12Bによって撮影された画像を示す画像情報を生成した後、撮影位置及び撮影方向の各情報と画像情報とを各仮想カメラ12A、12B毎に関連付けた投影情報を生成する(S407)。そして制御部30は、ステップS407にて生成した投影情報をPC24に送信する(S409)。
【0075】
PC24の制御部35は、ステップS409にてPC13から送信された投影情報を受信したか否かを判断する(S305)。受信していない場合(S305;N)は、制御部35は受信するまで待機する。
【0076】
投影情報を受信した場合(S305;Y)は、制御部35は、受信した投影情報に含まれる画像情報に基づいて、複数のプロジェクタ22A、22Bからそれぞれ対応する画像を投影させ(S307)、その後に本施工支援処理プログラムを終了する。
【0077】
このように面形成支援システム1によれば、情報生成装置であるPC13は、実空間20における複数の投影装置であるプロジェクタ22A、22Bの各々の設置位置及び投影方向の入力を受け付ける受付手段(入力画面44、入力部37)を備え、受付手段により受け付けられた投影位置及び投影方向をそれぞれ仮想空間10における目標面11に対する各々の撮影位置及び撮影方向として設定する。これにより、施工作業者が、前もって実空間20において複数の投影装置であるプロジェクタ22A、22Bをそれぞれ設置し、それらの設置された複数の投影装置であるプロジェクタ22A、22Bの各々の設置位置及び投影方向に基づいて、仮想空間10において位置毎の画像情報を生成することができるため、情報生成装置であるPC13において設定された撮影位置及び撮影方向に投影装置であるプロジェクタ22A、22Bを位置決めする場合に比較して、投影装置であるプロジェクタ22A、22Bの設置作業を容易に行うことができる。
【0078】
第1実施形態及び第2実施形態によれば、施工作業者が、現実には形のない目標面と現実に施工している施工対象面との位置の相違を、面の位置や形状に依存せずに、施工作業に際してリアルタイムかつ視覚的に把握できる、という効果が得られる。
【0079】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
【0080】
第1実施形態、第2実施形態に係る面形成支援システム1は、PC13にて生成された投影情報を、実空間20の施工面21Aに投影させることにより、施工作業者の施工作業を支援するものであったが、第3実施形態に係る面形成支援システム1は、施工面21Aと目標面Aとの差を導出するとともに、この目標面Aと施工面21Aが一致するように自動的に施工を行うものである。
【0081】
まず、図14を参照して、本第3実施形態に係る面形成支援システム1の構成を説明する。図14は、本第3実施形態に係る面形成支援システム1の電気的な要部構成を示すブロック図である。なお、同図における図3と同一の構成要素には図3と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0082】
同図に示すように、本第3実施形態に係る面形成支援システム1は、発泡ウレタンを吹き付け可能に構成されるとともに、その吹き付け方向および吹き付け量が可変とされた吹付部25が新たに設けられている点が上記第1、第2実施形態と異なっている。
【0083】
吹付部25はPC24に接続されており、吹付部25による発泡ウレタンの吹き付け方向および吹き付け量はPC24の制御部35によって制御される。
【0084】
また、図15(A)は、目標面Aと施工面21Aとのずれ量の導出方法を説明するための正面概略図であり、図15(B)は、当該ずれ量の導出方法を説明するための上面概略図である。図15(A)に示すように、目標面Aと施工面21Aとが一致していない場合には、プロジェクタ22Aから投影された格子模様とプロジェクタ22Bから施工面21Aに投影された格子模様とにずれが生じる。これらの各々の格子模様のずれ量をLとし、プロジェクタ22Aとプロジェクタ22Bとの距離をL’とし、各々のプロジェクタ22A、22Bから目標面Aまでの距離をRとすると、図15(B)に示すように、目標面Aと施工面21Aとの距離tは、t=R×L÷L’の式によって求めることができ、これをずれ量とすることができる。
【0085】
次に、本実施形態に係る面形成支援システム1の作用を説明する。
【0086】
本実施形態に係る面形成支援システム1では、PC13によって上記第1実施形態と同様の投影情報支援処理プログラム(図6参照)が実行される一方、PC24によって施工処理プログラムが実行される。そこで、図16を参照して、施工処理プログラムを実行する際のPC24の作用を説明する。なお、図16は、施工作業者等からの実行指示が入力部32を介して受け付けられた際に、PC24の制御部35により実行される施工処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは記憶部39に予め記憶されている。
【0087】
始めに、PC24の制御部35は、ステップS111にてPC13から送信された投影情報とを受信したか否かを判断する(S501)。受信していない場合(S501;N)は、制御部35は受信するまで待機する。
【0088】
投影情報を受信した場合(S501;Y)は、制御部35は、表示部38にステップS501にて受信した投影情報に含まれる撮影位置・撮影方向を、プロジェクタ22A、22Bの投影位置・投影方向として表示させる(S503)。この際、制御部35は、ステップS203と同様に、図8に示すような施工支援画面40を表示部38に表示させると良い。施工作業者は、各々のプロジェクタ22A、22Bの設置位置・投影方向を施工支援画面40で確認して、それらの情報に基づいて各々のプロジェクタ22A、22Bを設置した後に、それらの設置が完了したことを示すために設置完了ボタン41を選択する。
【0089】
制御部35は、プロジェクタ22A、22Bの設置が完了したか否かを判断する(S505)。この際、ユーザ操作により設置完了ボタン41が選択されたことに基づいて、プロジェクタ22A、22Bの設置が完了したものと判断する。
【0090】
制御部35は、ステップS501にて受信した投影情報に含まれる画像情報に基づいて、それぞれ対応する画像(ここでは格子模様)をプロジェクタ22A、22Bから施工面21Aに投影させる(S507)。
【0091】
制御部35は、ステップS507にて格子模様が投影された施工面21Aを、カメラ23で撮影する(S509)。そして制御部35は、カメラ23で撮影されている画像から、プロジェクタ22Aから投影された格子模様とプロジェクタ22Bから投影された格子模様との各々の対応点の距離に基づいて上記距離tを算出することによりずれ量を導出する(S511)。
【0092】
制御部35は、ステップS511にて導出されたいずれかのずれ量が所定値以上であるか否かを判断する(S513)。この際の所定値は、目標面Aと施工面21Aとを一致させる際に誤差とみなせる範囲の絶対値であり、制御部35は、ずれ量がこの所定値未満であれば、施工目標とする面Aと施工面21Aとが一致したものと判断する。
【0093】
いずれかのずれ量の絶対値が所定値以上であった場合(S513;Y)は、制御部35は、施工目標とする面Aと施工面21Aとが一致していないものと判断し、ステップS511にて導出されたずれ量に相当する量の発砲ウレタンを施工面21Aの対応する位置に吹き付けるように吹付部25を制御する(S515)。そして再びステップS511の処理を行う。
【0094】
一方、全てのずれ量の絶対値が所定値以上でなかった場合(S513;N)は、制御部35は、目標面Aと施工面21Aとが一致したものと判断し、施工処理が完了したものとして、本施工処理プログラムを終了する。
【0095】
このようにして面形成支援システム1は、撮影装置である仮想カメラ12A、12Bが、複数の投影装置であるプロジェクタ22A、22Bの各々より投影された画像を1画角内で撮影する所定位置に設置され、計測装置であるPC24が、撮影装置であるカメラ23により撮影された画像における複数の投影装置であるプロジェクタ22A、22Bの各々より投影された画像間のずれ量に基づいて、仮想空間10における目標面11の位置と実空間20における投影面(施工面21A)の位置とのずれ量を示す物理量を計測し、面形成装置が、実空間20において、計測装置により計測された物理量がずれ量を最小にするように基礎面(施工面21A)に対して目標面Aを形成する。
【0096】
また、上記各実施形態では、実空間で用いるPC24、プロジェクタ22A,22Bおよびカメラ23を各々個別に単体の装置で構成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの装置を一体構成する形態としてもよい。
【0097】
図17には、この場合の一体構成された装置1Aの一例が示されている。この装置1Aでは、上記各実施形態と同様のプロジェクタ22A,22Bが装置前面の水平方向の2箇所に設けられるとともに、上記各実施形態と同様のカメラ23が装置前面の中央部に設けられている。なお、この場合、装置1Aを施工作業者によって携帯可能なサイズにするとともに、無線にてPC13と通信可能とすることにより、より利便性を向上させることができる。
【0098】
また、上記各実施形態では、本発明を施工面の高さを目標面に一致させる施工を支援するシステムに適用した場合について説明したが、本発明は他の種々のシステムに適用することができる。
【0099】
例えば、一例として図18に示すように、各プロジェクタから投影された画像が一致する目標面の高さ方向の位置が変化するように各プロジェクタからの当該画像の投影方向を順次変更しつつカメラ23により当該画像を撮影し、撮影によって得られた画像が一致した投影方向に基づいて、施工面の高さ方向に対する形状を把握する形態に本発明を適用してもよい。
【0100】
また、例えば、一例として図19(A)に示すように、目標とする勾配角度となるように設けられる勾配面の勾配角度を当該目標とする勾配角度となるように設置するシステムに適用する形態、一例として図19(B)に示すように、表面が目標とする高さとなるように設けられる内装仕上げ部材を当該目標とする高さとなるように設置するシステムに適用する形態等といった、表面の高さ位置が目標とする位置となるように施工する他のシステムに本発明を適用してもよい。
【0101】
また、例えば、一例として図19(C)に示すように、曲面仕上げの精度を計測するシステムに適用する形態、一例として図19(D)に示すように、勾配を自動計算して等高線を投影して水勾配を計測するシステムに適用する形態等といった、表面の高さ位置を計測する他のシステムに本発明を適用してもよい。
【0102】
第3実施形態によれば、施工装置が、現実には形のない目標面Aと現実に施工している施工面21Aとの位置の相違から、目標面Aと施工面21Aとのずれ量をリアルタイムに計測でき、そのずれ量に基づいて施工処理を行うことにより施工目標とする面Aを自動的に且つ高精度で形成することができる、という効果が得られる。
【符号の説明】
【0103】
1…面形成支援システム,1A…面形成支援装置,10…仮想空間,11…目標面,12A、12B…仮想カメラ,13…PC,20…実空間,21…施工対象物,21A…施工面,22A、22B…プロジェクタ,23…カメラ,24…PC,30、35…制御部,31、36…通信部,32、37…入力部,33、38…表示部,34、39…記憶部,40…設置支援画面,41…設置完了ボタン,42…左側のプロジェクタにより投影された格子模様,43…右側のプロジェクタにより投影された格子模様,44…入力画面,45…入力欄,46…送信ボタン,A…目標面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間において、予め定められた目標面に表示された所定画像を予め設定した複数の撮影位置から予め設定した撮影方向に向けて仮想的に撮影することにより得られる前記撮影位置毎の画像情報を生成する情報生成装置と、
実空間において、前記目標面に対応する形成目標面に対して、前記目標面に対する前記複数の撮影位置と同一の位置関係になるよう各々設置され、対応する前記画像情報により示される画像を、前記形成目標面を形成する際の基礎となる基礎面に、前記撮影方向に対応する投影方向に向けて投影する複数の投影装置と、
を備えた面形成支援システム。
【請求項2】
前記情報生成装置は、前記実空間における前記複数の投影装置の各々の設置位置及び投影方向の入力を受け付ける受付手段を備え、前記受付手段により受け付けられた複数の前記設置位置及び前記投影方向をそれぞれ複数の前記撮影位置及び前記撮影方向として設定する
ことを特徴とする請求項1記載の面形成支援システム。
【請求項3】
前記複数の投影装置の各々より投影された画像を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置により撮影された画像における前記複数の投影装置の各々より投影された画像間のずれ量に基づいて、前記形成目標面と前記基礎面との前記投影方向に対するずれ量を示す物理量を計測する計測装置と、
前記計測装置により計測された物理量が予め定められた範囲内となるように前記基礎面に対して前記目標面を形成する面形成装置と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1または2記載の面形成支援システム。
【請求項4】
前記所定画像は格子模様の画像であり、
前記計測装置は、前記撮影装置により撮影された画像における複数の前記投影装置の各々より投影された画像間の対応する格子点のずれ量に基づいて、前記物理量を計測する
ことを特徴とする請求項3記載の面形成支援システム。
【請求項5】
仮想空間において、予め定められた目標面に表示された所定画像を予め設定した複数の撮影位置から予め設定した撮影方向に向けて仮想的に撮影することにより得られる前記撮影位置毎の画像情報を生成する情報生成手段と、
実空間において、前記目標面に対応する形成目標面に対して、前記目標面に対する前記複数の撮影位置と同一の位置関係になるよう各々設置され、対応する前記画像情報により示される画像を、前記目標面を形成する際の基礎となる基礎面に、前記撮影方向に対応する投影方向に向けて投影する複数の投影手段と、
を備えた面形成支援装置。
【請求項6】
仮想空間において、予め定められた目標面に表示された所定画像を予め設定した複数の撮影位置から予め設定した撮影方向に向けて仮想的に撮影することにより得られる前記撮影位置毎の画像情報を生成する情報生成ステップと、
実空間において、前記目標面に対応する形成目標面に対して、前記目標面に対する前記複数の撮影位置と同一の位置関係になるよう各々設置された複数の投影装置に対して、対応する前記画像情報により示される画像を、前記目標面を形成する際の基礎となる基礎面に、前記撮影方向に対応する前記投影方向に向けて投影させる投影ステップと、
をコンピュータに実行させるための面形成支援プログラム。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図1】
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【図2】
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【図10】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−189433(P2012−189433A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52922(P2011−52922)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】