高周波共振器及び高周波発振器
【課題】0次共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる高周波共振器を得ることを目的とする。
【解決手段】入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている複数の直列共振回路3−nと、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路4−mとから構成して、複数の直列共振回路3−n内に抵抗6a,6bを装荷する。これにより、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる。
【解決手段】入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている複数の直列共振回路3−nと、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路4−mとから構成して、複数の直列共振回路3−n内に抵抗6a,6bを装荷する。これにより、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主としてマイクロ波帯及びミリ波帯で用いられる高周波共振器及び高周波発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波共振器として、以下の非特許文献1に開示されているものがある。
非特許文献1に開示されている高周波共振器は、インターディジタル型のマイクロストリップ線路からなるn個のキャパシタと、一端がi(i=1,2,・・・,N)番目のキャパシタとi+1番目のキャパシタとの間に接続されて、他端が接地されているマイクロストリップ線路からなるショートスタブとから構成されており、これらのキャパシタとショートスタブが、マイクロストリップ線路からなる伝送線路のギャップ中に接続されている。
【0003】
従来の高周波共振器においては、インターディジタル型のキャパシタによる直列キャパシタンス及び当該キャパシタに付随する直列インダクタンスと、ショートスタブによる並列インダクタンス及び当該ショートスタブに付随する並列キャパシタンスとによって、伝搬定数が0となる周波数が存在し、0次共振器が形成されている。
0次共振器の0次の共振周波数は、等価的に伝導電流が流れないため、導体損によるQ値の劣化が生じない。
ただし、高次の共振周波数を抑制するために、高周波共振器内に抵抗を装荷すると、0次の共振周波数も同時に減衰してQ値が劣化する。
【0004】
【非特許文献1】Anthony Lai, Christophe Caloz,and Tatsuo Itoh,”Composite Right/Left−Handed Transmission Line Metamaterials,” Microwave Magazine,pp.34−50,September,2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の高周波共振器は以上のように構成されているので、高次の共振周波数を減衰させるために、高周波共振器内に抵抗を装荷すると、0次の共振周波数も同時に減衰してQ値が劣化するなどの課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる高周波共振器を得ることを目的とする。
また、この発明は、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる高周波共振器を用いて、低位相雑音化を図ることができる高周波発振器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る高周波共振器は、入力端子と出力端子の間に縦続接続されている複数の直列共振回路と、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路とから構成して、複数の直列共振回路内に抵抗を装荷するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、入力端子と出力端子の間に縦続接続されている複数の直列共振回路と、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路とから構成して、複数の直列共振回路内に抵抗を装荷するように構成したので、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による高周波共振器を示す構成図であり、図において、直列共振回路3−1,3−2,・・・,3−Nは入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている。
並列共振回路4−1,4−2,・・・,4−Mは一端が入力端子1と直列共振回路3−1の接続点、あるいは、直列共振回路3−n(n=1,2,・・・,N−1)と直列共振回路3−(n+1)の接続点、あるいは、直列共振回路3−Nと出力端子2の接続点に接続されて、他端が接地されているショートスタブである。
【0010】
なお、直列共振回路3−1,3−2,・・・,3−Nはインターディジタルキャパシタ5から構成されており、インターディジタルキャパシタ5の両端に抵抗6a,6bが装荷されている。
【0011】
次に動作について説明する。
この実施の形態1の高周波共振器では、図2に示すように、直列共振回路3−n(n=1,2,・・・,N)を構成するインターディジタルキャパシタ5及び線路に付随する直列インダクタンスLrと、並列共振回路4−m(m=1,2,・・・,M)を構成するショートスタブに付随する並列キャパシタンスCrによって伝搬定数が正の右手系伝送線路を構成している。
一方、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5に付随する直列キャパシタンスClと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列インダクタンスLlによって伝搬定数が負の左手系伝送線路を構成している。
この実施の形態1の高周波共振器は、正の右手系伝送線路と負の左手系伝送線路を縦続接続することにより、伝搬定数が0の0次共振器を形成している。
【0012】
ここで、0次共振器の0次の共振周波数は伝搬定数が0であるため、直列共振回路3−n内に装荷されている抵抗6a,6bの影響をほとんど受けずに伝搬するが、並列共振回路4−m内に抵抗が装荷されている場合、その抵抗の影響でQ値が劣化して0次の共振周波数において損失が発生する。
また、直列共振回路3−nと並列共振回路4−mの分岐点に抵抗が装荷されている場合も、その抵抗の一部は、並列共振回路4−mの抵抗成分になるため、その抵抗の影響でQ値が劣化して0次の共振周波数において損失が発生する。
【0013】
そこで、この実施の形態1では、0次の共振周波数における損失の発生を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができるようにするため、直列共振回路3−nの中だけに抵抗6a,6bを装荷して、その直列共振回路3−nを並列共振回路4−m(抵抗が装荷されていない並列共振回路)と接続するようにしている。
図3はこの発明の実施の形態1による高周波共振器における周波数と通過振幅の関係を示す特性図である。
図3から明らかなように、この実施の形態1の高周波共振器では、0次の共振周波数の減衰を招くことなく、高次の共振周波数を減衰している。
【0014】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている複数の直列共振回路3−nと、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路4−mとから構成して、複数の直列共振回路3−n内に抵抗6a,6bを装荷するように構成したので、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる効果を奏する。
【0015】
この実施の形態1では、直列共振回路3−nと並列共振回路4−mが接続されているものについて示したが、図4に示すように、並列共振回路4−mのLC比を変えて直列共振回路3−nと接続するようにしてもよい。
また、図5に示すように、集中定数素子を用いて並列共振回路4−mを構成してもよい。
また、図6に示すように、直列共振回路3−nの全ての接続点に対して、並列共振回路4−mを接続する必要はない。
即ち、N+1=Mである必要はなく、N+1>Mであってもよい。
【0016】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
0次共振回路7−1,7−2,・・・,7−Nは入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている。
シュートスタブ8aは一端が0次共振回路7−n(n=1,2,・・・,N)の直列共振回路を構成するインターディジタルキャパシタ5の一端に接続されて、他端が接地されている第1の並列共振回路である。
シュートスタブ8bは一端が0次共振回路7−nの直列共振回路を構成するインターディジタルキャパシタ5の他端に接続されて、他端が接地されている第2の並列共振回路である。
なお、0次共振回路7−n(n=1,2,・・・,N−1)と0次共振回路7−(n+1)の接続点に抵抗9が装荷されている。
【0017】
次に動作について説明する。
この実施の形態2の高周波共振器では、0次共振回路7−n(n=1,2,・・・,N)の直列共振回路を構成するインターディジタルキャパシタ5及び線路に付随する直列インダクタンスLrと、0次共振回路7−nの並列共振回路を構成するショートスタブ8a,8bに付随する並列キャパシタンスCrによって伝搬定数が正の右手系伝送線路を構成している。
一方、0次共振回路7−nの直列共振回路を構成するインターディジタルキャパシタ5に付随する直列キャパシタンスClと、0次共振回路7−nの並列共振回路を構成するショートスタブ8a,8bに付随する並列インダクタンスLlによって伝搬定数が負の左手系伝送線路を構成している。
この実施の形態2の高周波共振器は、正の右手系伝送線路と負の左手系伝送線路を縦続接続することにより、伝搬定数が0の0次共振器を形成している。
【0018】
ここで、0次共振器の0次の共振周波数は伝搬定数が0であるため、伝搬方向に含まれている抵抗の影響をほとんど受けずに伝搬するが、並列共振回路であるショートスタブ8a,8b内に抵抗が装荷されている場合、その抵抗の影響でQ値が劣化して0次の共振周波数において損失が発生する。
また、0次共振回路7−nの直列共振回路と並列共振回路の分岐点に抵抗が装荷されている場合も、その抵抗の一部は、並列共振回路の抵抗成分になるため、その抵抗の影響でQ値が劣化して0次の共振周波数において損失が発生する。
【0019】
そこで、この実施の形態2では、0次の共振周波数における損失の発生を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができるようにするため、縦続接続している複数の0次共振回路7−nの間にだけ抵抗9を装荷するようにしている。
これにより、この実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様に、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる効果を奏する。
【0020】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
抵抗6c,6dは並列共振回路4−mから離隔された状態で、インターディジタルキャパシタ5の両端に装荷されている。
【0021】
上記実施の形態1では、入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている複数の直列共振回路3−nと、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路4−mとから構成して、複数の直列共振回路3−n内に抵抗6a,6bを装荷することにより、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させるものについて示したが、上述したように、直列共振回路3−nと並列共振回路4−mの分岐点における抵抗の一部は、並列共振回路4−mの抵抗成分となる。
そのため、抵抗を並列共振回路4−mから離隔する方が並列共振回路4−mの抵抗成分となり難くなる。
【0022】
そこで、この実施の形態3では、図8に示すように、インターディジタルキャパシタ5の両端に抵抗6c,6dを装荷するに際して、抵抗6c,6dを並列共振回路4−mから離隔するように装荷している。
これにより、この実施の形態3によれば、上記実施の形態1よりも更に0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる効果を奏する。
【0023】
この実施の形態3では、抵抗6c,6dを並列共振回路4−mから離隔するように装荷するものについて示したが、図9に示すように、抵抗6eをインターディジタルキャパシタ5に装荷するようにしてもよい。
また、図10に示すように、0次共振回路7−nの並列共振回路を構成するショートスタブ8a,8bの接続点から隔離して抵抗10を装荷するようにしてもよい。
【0024】
実施の形態4.
図11はこの発明の実施の形態4による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
上記実施の形態1では、入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている複数の直列共振回路3−nと、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路4−mとから構成して、複数の直列共振回路3−n内に抵抗6a,6bを装荷することにより、0次共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させるものについて示したが、この実施の形態4では、直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpを等しくすることにより0次共振器を構成し、0次の共振周波数が直列共振回路3−n内の抵抗6a,6bの影響を受けず、高次の共振周波数を減衰することができるものについて説明する。
【0025】
次に動作について説明する。
この実施の形態4の高周波共振器では、図12に示すように、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5及び線路に付随する直列インダクタンスLrと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列キャパシタンスCrによって伝搬定数が正の右手系伝送線路を構成している。
一方、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5に付随する直列キャパシタンスClと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列インダクタンスLlによって伝搬定数が負の左手系伝送線路を構成している。
そして、直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpを等しくすることにより、正の右手系伝送線路の伝搬定数が+β、負の左手系伝送線路の伝搬定数が−βとなり、正の右手系伝送線路と負の左手系伝送線路を縦続接続すると、伝搬定数が0の0次共振器が形成される。
【0026】
この実施の形態4でも、0次の共振周波数における損失の発生を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができるようにするため、上記実施の形態1と同様に、直列共振回路3−nの中だけに抵抗6a,6bを装荷して、その直列共振回路3−nを並列共振回路4−m(抵抗が装荷されていない並列共振回路)と接続するようにしている。
【0027】
なお、この実施の形態4では、図11における直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpを等しくするものについて示したが、上記実施の形態2で示されている図7の直列共振回路(インターディジタルキャパシタ5)の共振周波数fsと並列共振回路(ショートスタブ8a,8b)の共振周波数fpを等しくするようにしてもよい。
【0028】
実施の形態5.
図13はこの発明の実施の形態5による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図8と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
上記実施の形態4では、直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpを等しくするものについて示したが、少なくとも2以上の並列共振回路4−mにおける高次の共振周波数が異なるようにしてもよい。
【0029】
次に動作について説明する。
この実施の形態5の高周波共振器では、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5及び線路に付随する直列インダクタンスLrと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列キャパシタンスCrによって伝搬定数が正の右手系伝送線路を構成している。
一方、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5に付随する直列キャパシタンスClと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列インダクタンスLlによって伝搬定数が負の左手系伝送線路を構成している。
そして、直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpを等しくすることにより、正の右手系伝送線路の伝搬定数が+β、負の左手系伝送線路の伝搬定数が−βとなり、正の右手系伝送線路と負の左手系伝送線路を縦続接続すると、伝搬定数が0の0次共振器が形成される。
【0030】
ここで、0次共振器の0次の共振周波数は伝搬定数が0であるため、伝搬方向に含まれる抵抗6c,6dの影響をほとんど受けずに伝搬する。
また、並列共振回路4−mの高次の共振周波数においても、伝搬方向に含まれる抵抗6c,6dの影響が小さい。
このため、0次の共振周波数が等しく、高次の共振周波数が異なる複数の並列共振回路4−mを接続することで、i番目の並列共振回路4−iの高次の共振周波数は、i番目以外の並列共振回路で共振周波数にならず、直列共振回路3−n内に装荷された抵抗6c,6dの影響で減衰する。
したがって、0次の共振周波数には影響を与えずに、高次の共振周波数を減衰させることができる。
【0031】
この実施の形態5では、図13における並列共振回路4−mにおける高次の共振周波数が異なるものについて示したが、上記実施の形態2で示されている図7の並列共振回路(ショートスタブ8a,8b)の共振周波数fpが異なるようにしてもよい。
【0032】
実施の形態6.
図14はこの発明の実施の形態6による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図8と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
上記実施の形態5では、少なくとも2以上の並列共振回路4−mにおける高次の共振周波数が異なるようにするものについて示したが、少なくとも2以上の並列共振回路4−mを相互に結合するようにしてもよい。
【0033】
伝搬定数が0の0次共振器を形成し、図14に示すように、並列共振回路4−m同士を結合させると、並列共振回路4−mを構成するショートスタブの縁に流れる電流密度が緩和される。
このため、等価的に幅の広い共振回路となり、並列共振回路4−mのQ値が大きくなる。0次共振器のQ値は、並列共振回路4−mのQ値に比例するため、0次共振器の高Q化を図ることができる。
【0034】
以上で明らかなように、この実施の形態6によれば、少なくとも2以上の並列共振回路4−mを相互に結合するように構成したので、0次共振器の高Q化を図ることができる効果を奏する。
【0035】
この実施の形態6では、2以上の並列共振回路4−mの間隔を狭めて結合させるものについて示したが、図15に示すように、0次共振回路7−nのシュートスタブ8a,8bの一部を結合させるようにしてもよい。
また、図16に示すように、並列共振回路4同士を接続するようにしてもよい。
【0036】
実施の形態7.
図17はこの発明の実施の形態7による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図8と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
可変容量素子11は並列共振回路4−1,4−2,4−3,・・・,4−Mと並列に接続されており、この実施の形態7では、可変容量素子11の容量値を変えることで0次の共振周波数を可変できるようにしている。
【0037】
次に動作について説明する。
この実施の形態7の高周波共振器では、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5及び線路に付随する直列インダクタンスLrと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列キャパシタンスCrによって伝搬定数が正の右手系伝送線路を構成している。
一方、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5に付随する直列キャパシタンスClと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列インダクタンスLlによって伝搬定数が負の左手系伝送線路を構成している。
そして、直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpを等しくすることにより、正の右手系伝送線路の伝搬定数が+β、負の左手系伝送線路の伝搬定数が−βとなり、正の右手系伝送線路と負の左手系伝送線路を縦続接続すると、伝搬定数が0の0次共振器が形成される。
【0038】
この実施の形態7の高周波共振器では、並列共振回路4−mと並列に接続されている可変容量素子11の容量値を変化させると、並列共振回路4−mの共振周波数fpが変化する。
また、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5に付随する直列キャパシタンスClを大きくすると、直列共振回路3−nが低Q化されて、並列共振回路4−mの共振周波数fpが変化する帯域において、直列共振回路3−nの通過位相が略0になる。
このため、並列共振回路4−mの共振周波数の可変帯域にわたって、直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpがほぼ等しいと言える。このことから、0次共振器の0次の共振周波数を可変できることが分かる。
また、並列共振回路と可変容量素子を直列に接続しても良い。
【0039】
実施の形態8.
図18はこの発明の実施の形態8による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
上記実施の形態1では、入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている複数の直列共振回路3−nと、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路4−mとから構成して、複数の直列共振回路3−n内に抵抗6a,6bを装荷することにより、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させるものについて示したが、出力端子を開放して、入力端子1が1端子対を構成するようにしてもよい。
【0040】
この実施の形態8では、出力端子を開放することにより、負荷抵抗がなくなる。
これにより、m番目の並列共振回路4−mの並列コンダクタンスが等価的に小さくなるため、0次の共振周波数における損失が小さくなる。
【0041】
実施の形態9.
図19はこの発明の実施の形態9による高周波発振器を示す構成図であり、図において、0次共振器22は上記実施の形態1〜8における何れかの高周波共振器であり、能動素子であるトランジスタ21のベース端子に接続されている。
リアクタンス回路23は一端がトランジスタ21のコレクタ端子に接続され、他端が接地されている。
リアクタンス回路24は一端がトランジスタ21のエミッタ端子に接続され、他端が負荷25を介して接地されている。
【0042】
次に動作について説明する。
この実施の形態9の高周波発振器では、発振器の回路内の雑音がトランジスタ21により増幅される。
また、トランジスタ21の各端子に接続されている0次共振器22及びリアクタンス回路23,24により、トランジスタ21により増幅された電力の一部がトランジスタ21に戻される。
そして、トランジスタ21により電力が更に増幅されることで発振動作が行われ、負荷25から発振出力が行われる。
【0043】
発振周波数は、次式を満足する周波数である。
Re(Za)+Re(Zr)≦0 (1)
Im(Za)+Im(Zr)=0 (2)
Za及びZrのQ値が高いほど、式(2)の左辺の周波数に対する傾きが大きくなり、式(2)の左辺の周波数に対する傾きが大きいほど、高周波発振器の位相雑音が改善される。
なお、Zaはトランジスタ21と0次共振器22の接続点からトランジスタ21側を見た入力インピーダンスであり、Zrはトランジスタ21と0次共振器22の接続点から0次共振器22側を見た入力インピーダンスである。
【0044】
高周波発振器の位相雑音PNとQ値の関係は、Leesonのモデルより、概略次式で表される。
PN=10Log{(2FkT/Ps)(f0/2QLΔf)2} (3)
ただし、Fは実験による係数、kはボルツマン係数、Tは絶対温度、Psは発振電力、f0は発振周波数、Δfは離調周波数、QLは0次共振器22の負荷Qである。
【0045】
このことから、高Qである0次共振器22を用いることにより、低位相雑音の高周波発振器が得られることが分かる。
また、共振周波数が可変の0次共振器を用いて、発振周波数が可変の高周波発振器を得ることができる。
ここでは、直列帰還形の高周波発振器について示したが、図20に示すように、並列帰還形の高周波発振器についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の実施の形態1による高周波共振器を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による高周波共振器の伝送路構成を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1による高周波共振器における周波数と通過振幅の関係を示す特性図である。
【図4】この発明の実施の形態1による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態1による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2による高周波共振器を示す構成図である。
【図8】この発明の実施の形態3による高周波共振器を示す構成図である。
【図9】この発明の実施の形態3による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図10】この発明の実施の形態3による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図11】この発明の実施の形態4による高周波共振器を示す構成図である。
【図12】この発明の実施の形態4による高周波共振器の伝送路構成を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態5による高周波共振器を示す構成図である。
【図14】この発明の実施の形態6による高周波共振器を示す構成図である。
【図15】この発明の実施の形態6による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図16】この発明の実施の形態6による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図17】この発明の実施の形態7による高周波共振器を示す構成図である。
【図18】この発明の実施の形態8による高周波共振器を示す構成図である。
【図19】この発明の実施の形態9による高周波発振器を示す構成図である。
【図20】この発明の実施の形態9による他の高周波発振器を示す構成図である。
【符号の説明】
【0047】
1 入力端子、2 出力端子、3−1,3−2,・・・,3−N 直列共振回路、4−1,4−2,・・・,4−M 並列共振回路、5 インターディジタルキャパシタ、6a,6b,6c,6d,6e 抵抗、7−1,7−2,・・・,7−N 0次共振回路、8a シュートスタブ(第1の並列共振回路)、8b シュートスタブ(第2の並列共振回路、9,10 抵抗、11 可変容量素子、21 トランジスタ(能動素子)、22 0次共振器(高周波共振器)、23,24 リアクタンス回路、25 負荷。
【技術分野】
【0001】
この発明は、主としてマイクロ波帯及びミリ波帯で用いられる高周波共振器及び高周波発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波共振器として、以下の非特許文献1に開示されているものがある。
非特許文献1に開示されている高周波共振器は、インターディジタル型のマイクロストリップ線路からなるn個のキャパシタと、一端がi(i=1,2,・・・,N)番目のキャパシタとi+1番目のキャパシタとの間に接続されて、他端が接地されているマイクロストリップ線路からなるショートスタブとから構成されており、これらのキャパシタとショートスタブが、マイクロストリップ線路からなる伝送線路のギャップ中に接続されている。
【0003】
従来の高周波共振器においては、インターディジタル型のキャパシタによる直列キャパシタンス及び当該キャパシタに付随する直列インダクタンスと、ショートスタブによる並列インダクタンス及び当該ショートスタブに付随する並列キャパシタンスとによって、伝搬定数が0となる周波数が存在し、0次共振器が形成されている。
0次共振器の0次の共振周波数は、等価的に伝導電流が流れないため、導体損によるQ値の劣化が生じない。
ただし、高次の共振周波数を抑制するために、高周波共振器内に抵抗を装荷すると、0次の共振周波数も同時に減衰してQ値が劣化する。
【0004】
【非特許文献1】Anthony Lai, Christophe Caloz,and Tatsuo Itoh,”Composite Right/Left−Handed Transmission Line Metamaterials,” Microwave Magazine,pp.34−50,September,2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の高周波共振器は以上のように構成されているので、高次の共振周波数を減衰させるために、高周波共振器内に抵抗を装荷すると、0次の共振周波数も同時に減衰してQ値が劣化するなどの課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる高周波共振器を得ることを目的とする。
また、この発明は、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる高周波共振器を用いて、低位相雑音化を図ることができる高周波発振器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る高周波共振器は、入力端子と出力端子の間に縦続接続されている複数の直列共振回路と、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路とから構成して、複数の直列共振回路内に抵抗を装荷するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、入力端子と出力端子の間に縦続接続されている複数の直列共振回路と、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路とから構成して、複数の直列共振回路内に抵抗を装荷するように構成したので、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による高周波共振器を示す構成図であり、図において、直列共振回路3−1,3−2,・・・,3−Nは入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている。
並列共振回路4−1,4−2,・・・,4−Mは一端が入力端子1と直列共振回路3−1の接続点、あるいは、直列共振回路3−n(n=1,2,・・・,N−1)と直列共振回路3−(n+1)の接続点、あるいは、直列共振回路3−Nと出力端子2の接続点に接続されて、他端が接地されているショートスタブである。
【0010】
なお、直列共振回路3−1,3−2,・・・,3−Nはインターディジタルキャパシタ5から構成されており、インターディジタルキャパシタ5の両端に抵抗6a,6bが装荷されている。
【0011】
次に動作について説明する。
この実施の形態1の高周波共振器では、図2に示すように、直列共振回路3−n(n=1,2,・・・,N)を構成するインターディジタルキャパシタ5及び線路に付随する直列インダクタンスLrと、並列共振回路4−m(m=1,2,・・・,M)を構成するショートスタブに付随する並列キャパシタンスCrによって伝搬定数が正の右手系伝送線路を構成している。
一方、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5に付随する直列キャパシタンスClと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列インダクタンスLlによって伝搬定数が負の左手系伝送線路を構成している。
この実施の形態1の高周波共振器は、正の右手系伝送線路と負の左手系伝送線路を縦続接続することにより、伝搬定数が0の0次共振器を形成している。
【0012】
ここで、0次共振器の0次の共振周波数は伝搬定数が0であるため、直列共振回路3−n内に装荷されている抵抗6a,6bの影響をほとんど受けずに伝搬するが、並列共振回路4−m内に抵抗が装荷されている場合、その抵抗の影響でQ値が劣化して0次の共振周波数において損失が発生する。
また、直列共振回路3−nと並列共振回路4−mの分岐点に抵抗が装荷されている場合も、その抵抗の一部は、並列共振回路4−mの抵抗成分になるため、その抵抗の影響でQ値が劣化して0次の共振周波数において損失が発生する。
【0013】
そこで、この実施の形態1では、0次の共振周波数における損失の発生を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができるようにするため、直列共振回路3−nの中だけに抵抗6a,6bを装荷して、その直列共振回路3−nを並列共振回路4−m(抵抗が装荷されていない並列共振回路)と接続するようにしている。
図3はこの発明の実施の形態1による高周波共振器における周波数と通過振幅の関係を示す特性図である。
図3から明らかなように、この実施の形態1の高周波共振器では、0次の共振周波数の減衰を招くことなく、高次の共振周波数を減衰している。
【0014】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている複数の直列共振回路3−nと、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路4−mとから構成して、複数の直列共振回路3−n内に抵抗6a,6bを装荷するように構成したので、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる効果を奏する。
【0015】
この実施の形態1では、直列共振回路3−nと並列共振回路4−mが接続されているものについて示したが、図4に示すように、並列共振回路4−mのLC比を変えて直列共振回路3−nと接続するようにしてもよい。
また、図5に示すように、集中定数素子を用いて並列共振回路4−mを構成してもよい。
また、図6に示すように、直列共振回路3−nの全ての接続点に対して、並列共振回路4−mを接続する必要はない。
即ち、N+1=Mである必要はなく、N+1>Mであってもよい。
【0016】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
0次共振回路7−1,7−2,・・・,7−Nは入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている。
シュートスタブ8aは一端が0次共振回路7−n(n=1,2,・・・,N)の直列共振回路を構成するインターディジタルキャパシタ5の一端に接続されて、他端が接地されている第1の並列共振回路である。
シュートスタブ8bは一端が0次共振回路7−nの直列共振回路を構成するインターディジタルキャパシタ5の他端に接続されて、他端が接地されている第2の並列共振回路である。
なお、0次共振回路7−n(n=1,2,・・・,N−1)と0次共振回路7−(n+1)の接続点に抵抗9が装荷されている。
【0017】
次に動作について説明する。
この実施の形態2の高周波共振器では、0次共振回路7−n(n=1,2,・・・,N)の直列共振回路を構成するインターディジタルキャパシタ5及び線路に付随する直列インダクタンスLrと、0次共振回路7−nの並列共振回路を構成するショートスタブ8a,8bに付随する並列キャパシタンスCrによって伝搬定数が正の右手系伝送線路を構成している。
一方、0次共振回路7−nの直列共振回路を構成するインターディジタルキャパシタ5に付随する直列キャパシタンスClと、0次共振回路7−nの並列共振回路を構成するショートスタブ8a,8bに付随する並列インダクタンスLlによって伝搬定数が負の左手系伝送線路を構成している。
この実施の形態2の高周波共振器は、正の右手系伝送線路と負の左手系伝送線路を縦続接続することにより、伝搬定数が0の0次共振器を形成している。
【0018】
ここで、0次共振器の0次の共振周波数は伝搬定数が0であるため、伝搬方向に含まれている抵抗の影響をほとんど受けずに伝搬するが、並列共振回路であるショートスタブ8a,8b内に抵抗が装荷されている場合、その抵抗の影響でQ値が劣化して0次の共振周波数において損失が発生する。
また、0次共振回路7−nの直列共振回路と並列共振回路の分岐点に抵抗が装荷されている場合も、その抵抗の一部は、並列共振回路の抵抗成分になるため、その抵抗の影響でQ値が劣化して0次の共振周波数において損失が発生する。
【0019】
そこで、この実施の形態2では、0次の共振周波数における損失の発生を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができるようにするため、縦続接続している複数の0次共振回路7−nの間にだけ抵抗9を装荷するようにしている。
これにより、この実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様に、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる効果を奏する。
【0020】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
抵抗6c,6dは並列共振回路4−mから離隔された状態で、インターディジタルキャパシタ5の両端に装荷されている。
【0021】
上記実施の形態1では、入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている複数の直列共振回路3−nと、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路4−mとから構成して、複数の直列共振回路3−n内に抵抗6a,6bを装荷することにより、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させるものについて示したが、上述したように、直列共振回路3−nと並列共振回路4−mの分岐点における抵抗の一部は、並列共振回路4−mの抵抗成分となる。
そのため、抵抗を並列共振回路4−mから離隔する方が並列共振回路4−mの抵抗成分となり難くなる。
【0022】
そこで、この実施の形態3では、図8に示すように、インターディジタルキャパシタ5の両端に抵抗6c,6dを装荷するに際して、抵抗6c,6dを並列共振回路4−mから離隔するように装荷している。
これにより、この実施の形態3によれば、上記実施の形態1よりも更に0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができる効果を奏する。
【0023】
この実施の形態3では、抵抗6c,6dを並列共振回路4−mから離隔するように装荷するものについて示したが、図9に示すように、抵抗6eをインターディジタルキャパシタ5に装荷するようにしてもよい。
また、図10に示すように、0次共振回路7−nの並列共振回路を構成するショートスタブ8a,8bの接続点から隔離して抵抗10を装荷するようにしてもよい。
【0024】
実施の形態4.
図11はこの発明の実施の形態4による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
上記実施の形態1では、入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている複数の直列共振回路3−nと、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路4−mとから構成して、複数の直列共振回路3−n内に抵抗6a,6bを装荷することにより、0次共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させるものについて示したが、この実施の形態4では、直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpを等しくすることにより0次共振器を構成し、0次の共振周波数が直列共振回路3−n内の抵抗6a,6bの影響を受けず、高次の共振周波数を減衰することができるものについて説明する。
【0025】
次に動作について説明する。
この実施の形態4の高周波共振器では、図12に示すように、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5及び線路に付随する直列インダクタンスLrと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列キャパシタンスCrによって伝搬定数が正の右手系伝送線路を構成している。
一方、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5に付随する直列キャパシタンスClと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列インダクタンスLlによって伝搬定数が負の左手系伝送線路を構成している。
そして、直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpを等しくすることにより、正の右手系伝送線路の伝搬定数が+β、負の左手系伝送線路の伝搬定数が−βとなり、正の右手系伝送線路と負の左手系伝送線路を縦続接続すると、伝搬定数が0の0次共振器が形成される。
【0026】
この実施の形態4でも、0次の共振周波数における損失の発生を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させることができるようにするため、上記実施の形態1と同様に、直列共振回路3−nの中だけに抵抗6a,6bを装荷して、その直列共振回路3−nを並列共振回路4−m(抵抗が装荷されていない並列共振回路)と接続するようにしている。
【0027】
なお、この実施の形態4では、図11における直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpを等しくするものについて示したが、上記実施の形態2で示されている図7の直列共振回路(インターディジタルキャパシタ5)の共振周波数fsと並列共振回路(ショートスタブ8a,8b)の共振周波数fpを等しくするようにしてもよい。
【0028】
実施の形態5.
図13はこの発明の実施の形態5による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図8と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
上記実施の形態4では、直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpを等しくするものについて示したが、少なくとも2以上の並列共振回路4−mにおける高次の共振周波数が異なるようにしてもよい。
【0029】
次に動作について説明する。
この実施の形態5の高周波共振器では、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5及び線路に付随する直列インダクタンスLrと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列キャパシタンスCrによって伝搬定数が正の右手系伝送線路を構成している。
一方、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5に付随する直列キャパシタンスClと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列インダクタンスLlによって伝搬定数が負の左手系伝送線路を構成している。
そして、直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpを等しくすることにより、正の右手系伝送線路の伝搬定数が+β、負の左手系伝送線路の伝搬定数が−βとなり、正の右手系伝送線路と負の左手系伝送線路を縦続接続すると、伝搬定数が0の0次共振器が形成される。
【0030】
ここで、0次共振器の0次の共振周波数は伝搬定数が0であるため、伝搬方向に含まれる抵抗6c,6dの影響をほとんど受けずに伝搬する。
また、並列共振回路4−mの高次の共振周波数においても、伝搬方向に含まれる抵抗6c,6dの影響が小さい。
このため、0次の共振周波数が等しく、高次の共振周波数が異なる複数の並列共振回路4−mを接続することで、i番目の並列共振回路4−iの高次の共振周波数は、i番目以外の並列共振回路で共振周波数にならず、直列共振回路3−n内に装荷された抵抗6c,6dの影響で減衰する。
したがって、0次の共振周波数には影響を与えずに、高次の共振周波数を減衰させることができる。
【0031】
この実施の形態5では、図13における並列共振回路4−mにおける高次の共振周波数が異なるものについて示したが、上記実施の形態2で示されている図7の並列共振回路(ショートスタブ8a,8b)の共振周波数fpが異なるようにしてもよい。
【0032】
実施の形態6.
図14はこの発明の実施の形態6による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図8と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
上記実施の形態5では、少なくとも2以上の並列共振回路4−mにおける高次の共振周波数が異なるようにするものについて示したが、少なくとも2以上の並列共振回路4−mを相互に結合するようにしてもよい。
【0033】
伝搬定数が0の0次共振器を形成し、図14に示すように、並列共振回路4−m同士を結合させると、並列共振回路4−mを構成するショートスタブの縁に流れる電流密度が緩和される。
このため、等価的に幅の広い共振回路となり、並列共振回路4−mのQ値が大きくなる。0次共振器のQ値は、並列共振回路4−mのQ値に比例するため、0次共振器の高Q化を図ることができる。
【0034】
以上で明らかなように、この実施の形態6によれば、少なくとも2以上の並列共振回路4−mを相互に結合するように構成したので、0次共振器の高Q化を図ることができる効果を奏する。
【0035】
この実施の形態6では、2以上の並列共振回路4−mの間隔を狭めて結合させるものについて示したが、図15に示すように、0次共振回路7−nのシュートスタブ8a,8bの一部を結合させるようにしてもよい。
また、図16に示すように、並列共振回路4同士を接続するようにしてもよい。
【0036】
実施の形態7.
図17はこの発明の実施の形態7による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図8と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
可変容量素子11は並列共振回路4−1,4−2,4−3,・・・,4−Mと並列に接続されており、この実施の形態7では、可変容量素子11の容量値を変えることで0次の共振周波数を可変できるようにしている。
【0037】
次に動作について説明する。
この実施の形態7の高周波共振器では、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5及び線路に付随する直列インダクタンスLrと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列キャパシタンスCrによって伝搬定数が正の右手系伝送線路を構成している。
一方、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5に付随する直列キャパシタンスClと、並列共振回路4−mを構成するショートスタブに付随する並列インダクタンスLlによって伝搬定数が負の左手系伝送線路を構成している。
そして、直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpを等しくすることにより、正の右手系伝送線路の伝搬定数が+β、負の左手系伝送線路の伝搬定数が−βとなり、正の右手系伝送線路と負の左手系伝送線路を縦続接続すると、伝搬定数が0の0次共振器が形成される。
【0038】
この実施の形態7の高周波共振器では、並列共振回路4−mと並列に接続されている可変容量素子11の容量値を変化させると、並列共振回路4−mの共振周波数fpが変化する。
また、直列共振回路3−nを構成するインターディジタルキャパシタ5に付随する直列キャパシタンスClを大きくすると、直列共振回路3−nが低Q化されて、並列共振回路4−mの共振周波数fpが変化する帯域において、直列共振回路3−nの通過位相が略0になる。
このため、並列共振回路4−mの共振周波数の可変帯域にわたって、直列共振回路3−nの共振周波数fsと並列共振回路4−mの共振周波数fpがほぼ等しいと言える。このことから、0次共振器の0次の共振周波数を可変できることが分かる。
また、並列共振回路と可変容量素子を直列に接続しても良い。
【0039】
実施の形態8.
図18はこの発明の実施の形態8による高周波共振器を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
上記実施の形態1では、入力端子1と出力端子2の間に縦続接続されている複数の直列共振回路3−nと、一端が複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路4−mとから構成して、複数の直列共振回路3−n内に抵抗6a,6bを装荷することにより、0次の共振周波数におけるQ値の劣化を招くことなく、高次の共振周波数を減衰させるものについて示したが、出力端子を開放して、入力端子1が1端子対を構成するようにしてもよい。
【0040】
この実施の形態8では、出力端子を開放することにより、負荷抵抗がなくなる。
これにより、m番目の並列共振回路4−mの並列コンダクタンスが等価的に小さくなるため、0次の共振周波数における損失が小さくなる。
【0041】
実施の形態9.
図19はこの発明の実施の形態9による高周波発振器を示す構成図であり、図において、0次共振器22は上記実施の形態1〜8における何れかの高周波共振器であり、能動素子であるトランジスタ21のベース端子に接続されている。
リアクタンス回路23は一端がトランジスタ21のコレクタ端子に接続され、他端が接地されている。
リアクタンス回路24は一端がトランジスタ21のエミッタ端子に接続され、他端が負荷25を介して接地されている。
【0042】
次に動作について説明する。
この実施の形態9の高周波発振器では、発振器の回路内の雑音がトランジスタ21により増幅される。
また、トランジスタ21の各端子に接続されている0次共振器22及びリアクタンス回路23,24により、トランジスタ21により増幅された電力の一部がトランジスタ21に戻される。
そして、トランジスタ21により電力が更に増幅されることで発振動作が行われ、負荷25から発振出力が行われる。
【0043】
発振周波数は、次式を満足する周波数である。
Re(Za)+Re(Zr)≦0 (1)
Im(Za)+Im(Zr)=0 (2)
Za及びZrのQ値が高いほど、式(2)の左辺の周波数に対する傾きが大きくなり、式(2)の左辺の周波数に対する傾きが大きいほど、高周波発振器の位相雑音が改善される。
なお、Zaはトランジスタ21と0次共振器22の接続点からトランジスタ21側を見た入力インピーダンスであり、Zrはトランジスタ21と0次共振器22の接続点から0次共振器22側を見た入力インピーダンスである。
【0044】
高周波発振器の位相雑音PNとQ値の関係は、Leesonのモデルより、概略次式で表される。
PN=10Log{(2FkT/Ps)(f0/2QLΔf)2} (3)
ただし、Fは実験による係数、kはボルツマン係数、Tは絶対温度、Psは発振電力、f0は発振周波数、Δfは離調周波数、QLは0次共振器22の負荷Qである。
【0045】
このことから、高Qである0次共振器22を用いることにより、低位相雑音の高周波発振器が得られることが分かる。
また、共振周波数が可変の0次共振器を用いて、発振周波数が可変の高周波発振器を得ることができる。
ここでは、直列帰還形の高周波発振器について示したが、図20に示すように、並列帰還形の高周波発振器についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の実施の形態1による高周波共振器を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による高周波共振器の伝送路構成を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1による高周波共振器における周波数と通過振幅の関係を示す特性図である。
【図4】この発明の実施の形態1による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態1による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2による高周波共振器を示す構成図である。
【図8】この発明の実施の形態3による高周波共振器を示す構成図である。
【図9】この発明の実施の形態3による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図10】この発明の実施の形態3による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図11】この発明の実施の形態4による高周波共振器を示す構成図である。
【図12】この発明の実施の形態4による高周波共振器の伝送路構成を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態5による高周波共振器を示す構成図である。
【図14】この発明の実施の形態6による高周波共振器を示す構成図である。
【図15】この発明の実施の形態6による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図16】この発明の実施の形態6による他の高周波共振器を示す構成図である。
【図17】この発明の実施の形態7による高周波共振器を示す構成図である。
【図18】この発明の実施の形態8による高周波共振器を示す構成図である。
【図19】この発明の実施の形態9による高周波発振器を示す構成図である。
【図20】この発明の実施の形態9による他の高周波発振器を示す構成図である。
【符号の説明】
【0047】
1 入力端子、2 出力端子、3−1,3−2,・・・,3−N 直列共振回路、4−1,4−2,・・・,4−M 並列共振回路、5 インターディジタルキャパシタ、6a,6b,6c,6d,6e 抵抗、7−1,7−2,・・・,7−N 0次共振回路、8a シュートスタブ(第1の並列共振回路)、8b シュートスタブ(第2の並列共振回路、9,10 抵抗、11 可変容量素子、21 トランジスタ(能動素子)、22 0次共振器(高周波共振器)、23,24 リアクタンス回路、25 負荷。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子の間に縦続接続されている複数の直列共振回路と、一端が上記複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路とを備えた高周波共振器において、上記複数の直列共振回路内に抵抗が装荷されていることを特徴とする高周波共振器。
【請求項2】
直列共振回路と、一端が上記直列共振回路の一端に接続されて、他端が接地されている第1の並列共振回路と、一端が上記直列共振回路の他端に接続されて、他端が接地されている第2の並列共振回路とから構成されている0次共振回路が入力端子と出力端子の間に複数個縦続接続されている高周波共振器において、上記複数の0次共振回路の間に抵抗が接続されていることを特徴とする高周波共振器。
【請求項3】
抵抗が並列共振回路から離隔されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周波共振器。
【請求項4】
直列共振回路の共振周波数と並列共振回路の共振周波数が一致していることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の高周波共振器。
【請求項5】
少なくとも2以上の並列共振回路における高次の共振周波数が異なることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の高周波共振器。
【請求項6】
少なくとも2以上の並列共振回路が相互に結合されていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の高周波共振器。
【請求項7】
並列共振回路と可変容量素子が接続されていることを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の高周波共振器。
【請求項8】
出力端子を開放して、入力端子が1端子対を構成していることを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載の高周波共振器。
【請求項9】
高周波共振器及びリアクタンス回路が能動素子に接続されている高周波発振器において、上記高周波共振器が請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の高周波共振器であることを特徴とする高周波発振器。
【請求項1】
入力端子と出力端子の間に縦続接続されている複数の直列共振回路と、一端が上記複数の直列共振回路間の接続点に接続されて、他端が接地されている複数の並列共振回路とを備えた高周波共振器において、上記複数の直列共振回路内に抵抗が装荷されていることを特徴とする高周波共振器。
【請求項2】
直列共振回路と、一端が上記直列共振回路の一端に接続されて、他端が接地されている第1の並列共振回路と、一端が上記直列共振回路の他端に接続されて、他端が接地されている第2の並列共振回路とから構成されている0次共振回路が入力端子と出力端子の間に複数個縦続接続されている高周波共振器において、上記複数の0次共振回路の間に抵抗が接続されていることを特徴とする高周波共振器。
【請求項3】
抵抗が並列共振回路から離隔されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周波共振器。
【請求項4】
直列共振回路の共振周波数と並列共振回路の共振周波数が一致していることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の高周波共振器。
【請求項5】
少なくとも2以上の並列共振回路における高次の共振周波数が異なることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の高周波共振器。
【請求項6】
少なくとも2以上の並列共振回路が相互に結合されていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の高周波共振器。
【請求項7】
並列共振回路と可変容量素子が接続されていることを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の高周波共振器。
【請求項8】
出力端子を開放して、入力端子が1端子対を構成していることを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載の高周波共振器。
【請求項9】
高周波共振器及びリアクタンス回路が能動素子に接続されている高周波発振器において、上記高周波共振器が請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の高周波共振器であることを特徴とする高周波発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−235431(P2007−235431A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53448(P2006−53448)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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