説明

高品質ホモエピタキシ用微傾斜窒化ガリウム基板

【課題】III−V族窒化物系超小型電子および光電子デバイスの作製におけるホモエピタキシャル蒸着に有用に用いられる微傾斜窒化ガリウム基板を提供する。
【解決手段】<0001>方向から、


方向または


方向に主に向かって約0.2〜約10度の範囲のオフカット角度でオフカットされた(0001)表面を含むGaN基板。表面が50×50μmAFM走査により測定された1nm未満のRMS粗さと、3E6cm−2未満の転位密度とを有する。この基板はオフカットスライスおよびラッピングまたは微傾斜へテロエピタキシャル基板上の成長により形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の背景
本発明の分野
本発明は、高品質電子および光電子デバイスの作製においてホモエピタキシャル膜の蒸着に用いて有用な微傾斜III−V族窒化物基板、例えば微傾斜窒化ガリウム基板に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
窒化ガリウム(GaN)および関連するIII−IV族窒化物合金はバンドギャップの広い半導体材料であり、光電子機器(例えば青色およびUV発光ダイオードならびにレーザダイオードの作製)ならびに高周波数、高温および高出力電子機器に用途がある。このような高性能デバイスでは、高品質エピタキシャル膜を基板上に成長させなければならない。
【0003】
窒化ガリウム系電子デバイスは、通例、サファイアおよび炭化シリコンなどの異種の(ヘテロエピエピタキシャル)基板上に成長させる。その結果、窒化ガリウムデバイス層と異種の基板との間の格子定数および熱膨張係数差により、概して高密度欠陥が窒化ガリウムデバイス層に作製されてデバイス性能に悪影響を与える。
【0004】
窒化ガリウムデバイス層の成長は、通例、有機金属気相成長(MOVPE)によって行われ、まずバッファ層を異種の基板上に成長させた後、数ミクロンの厚さの窒化ガリウムおよび関連するデバイス層を成長させる。窒化ガリウム層の結晶欠陥を低減するために、サファイアまたは炭化シリコン上でエピタキシャル横方向過成長(ELOG)による成長などの技術を用いてきた。
【0005】
ヘテロエピタキシャル基板の使用に関連する形態および構造欠陥の点で、自然窒化ガリウム基板は多くの窒化ガリウム系超小型電子デバイスにとって理想的である。窒化ガリウム基板を様々な方法により作製することができる。
【0006】
ポロースキー(Porowski)らの米国特許第5,637,531号明細書は、高窒素圧での金属ガリウムからのバルク窒化ガリウムの成長を記載しているが、開示の方法はわずか約10mm小板(platelet)の最大結晶サイズを達成したに過ぎなかった(S.ポロースキー(Porowski)およびI.グジェゴリ(Grzegory)、J.Cryst.Growth,Vol.78,174(1997年)、M.ボコスキー(Bockowski)、J.Cryst.Growth,Vol.246,194(2002年))。窒化ガリウム結晶小板はc面構造であり、小板の一方の面がガリウムで終端するとともに他方の面が窒素で終端している極性面を有している。それぞれの表面の各々は独自の特性を有するとともに、ほとんどの窒化ガリウム系デバイスを好適にはガリウム終端化表面、すなわち(0001)表面上に成長させる。結晶小板のサイズは小さいが、このような小板の試料上にホモエピタキシャル成長を行った。たとえば、MOVPEホモエピタキシを5mm未満の横方向寸法を有する窒化ガリウム結晶小板上で行った(F.A.ポンセ(Ponce)、D.P.ブール(Bour)、W.ゲーツ(Gautz)およびP.J.ライト(Wright)、Appl.Phys.Lett.68(1),57(1996年))。AlGaN/GaNへテロ構造による高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造を、分子線エピタキシによって8×8mm窒化ガリウム試料上に成長させた(E.フレイシントン(Frayssington)ら、Appl.Phys.Lett.77,2551(2000年))。InGaN/GaN複数の量子井戸(MQW)構造および二重へテロ構造LEDを、MOVPEによって約6×8mm窒化ガリウム試料上に成長させた(M.カンプ(Kamp)ら、MRS Internet J.Nitride Semicond.Res.4S1,G.10.2(1991年))。窒素終端化窒化ガリウム
【数1】

結晶小板上および
【数2】

面から離れるように若干傾斜した表面上のMOVPEホモエピタキシャル成長が報告されている(A.R.A.ツァウナー(Zauner)ら、J.Crystal Growth,210,435(2000年))。
【0007】
光電子および電子デバイスの製造は大面積基板を必要とするため、他の技術によって作製された大面積窒化ガリウム基板上に様々なデバイスを成長させた。デバイスには窒化ガリウム系レーザダイオードがある(S.ナカムラ(Nakamura)ら、Jpn.J.Appl.Phys.37,L309(1998年))。ナカムラ(Nakamura)らによって複雑な成長シーケンスを用いてこのようなレーザダイオードが形成された。まず2ミクロンの厚さのMOVPE窒化ガリウム層をサファイア基板上に成長させた後、2ミクロンの厚さの二酸化シリコン層をストライプのパターンに蒸着させた。そして20ミクロンの厚さの窒化ガリウム層を、ELOG技術を用いてMOVPEによって成長させて、二酸化シリコンパターンを被覆するとともに平坦な窒化ガリウム面を達成した。この後ハイドライド気相成長(HVPE)により約100ミクロンの厚さの窒化ガリウム層を形成した。次に研磨によりサファイア基板を除去して、約80ミクロンの厚さの窒化ガリウム物品を得た。最後に、MOVPEによってInGaN MQWLD構造を成長させた。
【0008】
オガワ(Ogawa)らの米国特許第6,455,877号明細書は、サファイア上にMOVPEによって形成されたELOG窒化ガリウム上に窒化ガリウムのHVPE蒸着によって形成された窒化ガリウム基板上の発光デバイスの成長を開示しており、ここでサファイアは十分な窒化ガリウム厚さの形成後に研磨除去された。オガワ(Ogawa)らは窒化ガリウム材料のc面から離れるように傾斜した0.10〜0.25度の好適な基板配向を記載している。後願の米国特許出願第2001/0030329号明細書、ウエタ(Ueta)らは、窒化ガリウム材料のc面から離れるように0.05〜2度傾斜した基板配向の選択を述べている。これらの様々なデバイス構造において、自然成長(as−grown)HVPE窒化ガリウム表面上の直接MOVPEによりデバイス層を成長させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の概要
本発明は、超小型電子および光電子デバイス構造の高品質ホモエピタキシャル作製に適正を有する微傾斜III−V族窒化物基板、たとえば、窒化ガリウム基板に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一の態様において本発明は、<0001>方向から、
【数3】

方向からなる群から選択される方向に主に向かって約0.2〜約10度の範囲のオフカット角度でオフカットされたGaN(0001)表面を含み、表面が50×50μmAFM走査により測定された1nm未満のRMS粗さと、3E6cm−2未満の転位密度とを有するGaN基板に関する。
【0011】
本発明のさらなる態様は、<0001>方向から、
【数4】

方向からなる群から選択される方向に主に向かって約0.2〜約10度の範囲のオフカット角度でオフカットされたGaN(0001)表面を含み、表面が50×50μmAFM走査により測定された1nm未満のRMS粗さと、3E6cm−2未満の転位密度とを有するGaN基板を形成する方法に関する。このようなウェハを合成するための方法は、バルクGaN単一結晶体を成長させるステップと、バルクGaN単一結晶体を処理してそこから少なくとも1つのウェハを形成するステップとを含み、処理ステップが(i)
【数5】

方向からなる群から選択される方向に主に向かうオフカット角度でc面から離れるように傾斜したスライス面で行われるスライスステップと、(ii)
【数6】

方向からなる群から選択される方向に主に向かうオフカット角度でc面から離れるように傾斜したラッピング面で行われる角度付きラッピングステップと、(iii)<0001>方向から、
【数7】

方向からなる群から選択される方向に主に向かって約0.2〜約10度の範囲のオフカット角度でオフカットされた(0001)表面を含む微傾斜へテロエピタキシャル基板上でバルクGaN単一結晶体を成長させるステップ後にバルクGaN単一結晶体を分離するステップとからなる群から選択されるステップを含む。
【0012】
他の態様において本発明は、
(a)<0001>方向から、
【数8】

方向からなる群から選択される方向に主に向かって約0.2〜約10度の範囲のオフカット角度でオフカットされたGaN(0001)表面を含み、表面が50×50μmAFM走査により測定された1nm未満のRMS粗さと、3E6cm−2未満の転位密度とを有するGaN基板を形成するステップと、
(b)GaN基板上にホモエピタキシャルIII−V族窒化物材料、例えばGaNを蒸着するステップと、を含み、
バルクGaN単一結晶体を成長させるステップと、バルクGaN単一結晶体を処理してそこから少なくとも1つのウェハを形成するステップとを含み、処理ステップが(i)
【数9】

方向からなる群から選択される方向に主に向かうオフカット角度でc面から離れるように傾斜したスライス面で行われるスライスステップと、(ii)
【数10】

方向からなる群から選択される方向に主に向かうオフカット角度でc面から離れるように傾斜したラッピング面で行われる角度付きラッピングステップと、(iii)<0001>方向から、
【数11】

方向からなる群から選択される方向に主に向かって約0.2〜約10度の範囲のオフカット角度でオフカットされた(0001)表面を含む微傾斜へテロエピタキシャル基板上でバルクGaN単一結晶体を成長させるステップ後にバルクGaN単一結晶体を分離するステップとからなる群から選択されるステップを含む、超小型電子または光電子デバイスを作製する方法に関する。
【0013】
本発明の他の態様、特徴及び実施形態は、以後の開示と添付の特許請求の範囲とからより十分に明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明およびその好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書の以後の説明は主に本発明の適用に対する例示的III−V族窒化種としてのGaNに向けられているが、本発明が二元化合物および合金を始めとするIII−V族窒化物系化合物に広く適用可能であることは認識されよう。本明細書で用いるように用語「III−V族窒化物」とは、窒素とAl、InおよびGaのうちの少なくとも1つとを含む半導体材料を指す。このようなIII−V族窒化物材料を記号を用いて(Al,In,Ga)Nと示し得る。用語(Al,In,Ga)Nは、Al、InおよびGaのうちの1つ以上を含む窒化物の置換をすべて含むため、代替材料としてAlN、InN、AlInN、AlGaNおよびAlInGaNを包含し、このような金属のうちの2つまたは3つすべてを含む化合物のAl、InおよびGaの化学量論係数は、このような全化学量論係数の合計が1であるという条件で、0〜1の適正な値を有し得る。この点において水素または炭素などの不純物、ドーパント、もしくはボロンなどの歪み変化材料も(Al,In,Ga)N材料に含有することができるが全化学量論係数の合計が1±0.1%偏差内である。このような化合物の例には、AlGa1−xNこの場合0≦x≦1と、AlInGa1−xーyNこの場合0≦x≦1および0≦y≦1とがある。このように以後の説明は例示的材料としてGaNを対象とするが、他のIII−V族窒化物材料を本発明の高品質基板で同様に用い得る。本発明の方法および微傾斜基板の以降の開示の背景として、以下の説明は様々な大面積基板のc面上の有機金属気相成長(MOVPE)により窒化ガリウムのホモエピタキシャル成長の欠陥を示すように行われた一連の実験を対象とする。
【0015】
一連の実験において公称c面自立GaNウェハ上およびサファイア上にヘテロエピタキシャルMOVPE GaN膜で作製されたテンプレート上に同一成長ランでMOVPE窒化ガリウム膜を成長させた。GaN/サファイアテンプレートの表面は、窒化ガリウムだったため、サファイア上の窒化ガリウムのヘテロエピタキシャル成長用に最適化されたMOVPE成長条件を低温バッファ層なしで用いた。
【0016】
これらの実験においてGaNウェハ上のホモエピタキシャルGaN膜が、GaN/サファイアテンプレート上の擬似ホモエピタキシャル膜より優れているであろうことが予想された。驚くことにGaNウェハ上のホモエピタキシャル膜は、GaN/サファイアテンプレート上のホモエピタキシャルGaN膜より粗かった。
【0017】
図1は、GaN/サファイアテンプレート上に成長させたホモエピタキシャル膜の表面の微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡画像である。図2は、GaNウェハ上のホモエピタキシャルGaN膜のDIC顕微鏡画像である。両方の膜を成長温度1220℃および成長速度4μm/時で一回の成長ランで成長させた。成長工程中の温度をサセプタの下に位置する熱電対で測定した結果、実際のウェハ表面温度は熱電対の測定値より低い100〜150℃だった。GaN/サファイアテンプレート上のホモエピタキシャル膜は平滑であり特徴が無かったが、GaNウェハ上のホモエピタキシャル膜は非常に粗く且つ三次元成長特徴を呈していた。
【0018】
GaN基板上のホモエピタキシャルGaN膜の表面形態は、GaN基板上にホモエピタキシャルGaN膜を形成するための成長条件を最適化することにより大幅に改善しやすいと判断された。成長速度、成長温度、アンモニア流量、および成長圧力を変えて実験を行った。成長速度を4μm/時から2μm/時に低下することにより表面形態が著しく改善することが分かった。2μm/時の成長速度で、成長温度を1220℃から1170℃以下に低下することによりGaN基板上のホモエピタキシャル膜の表面形態はさらに改善した。NH流量を増加することまたは成長圧力を増加することにより表面形態を改善できることも分かった。最適成長条件は反応装置の形状と相関成長パラメータとに依存している。反応装置内の成長条件を系統的に変化させることにより、平滑表面形態を有する公称c面GaNウェハ上のホモエピタキシャルGaN膜を達成した。図3は、公称c面GaNウェハ上の2μmの厚さのホモエピタキシャルGaN膜のDIC顕微鏡画像を示す。この表面は非常に平滑でありほとんど特徴がなかった。
【0019】
しかし最適条件下でさえ公称c面GaNウェハ上のホモエピタキシャル膜の表面形態が均一でないことが分かった。少なくとも2つのタイプの表面形態、すなわち図3に示した特徴の平滑表面とヒロック表面形態とがあった。
【0020】
図4は、公称c面GaNウェハ上のホモエピタキシャルGaN膜のヒロック表面形態を示す。ヒロック表面形態は概してウェハの中心付近に位置し、平滑表面形態は概してウェハの外縁付近にあった。
【0021】
表面形態の非均一性を表面の結晶配向に関係していると判断した。ウェハ研磨前に窒化ガリウムウェハブランク内に残留応力があるため、c面GaNウェハブランクは格子湾曲を有し、すなわち結晶材料のc面が平滑でなく反っていた。機械的ラッピング、研磨および化学機械研磨によるエピタキシ対応GaNウェハの形成中ウェハ表面を機械的に平坦にすることができるが格子湾曲は依然として存在する場合があるため、概してウェハ中心付近の特定の表面領域のみが表面に平行のc面を有する。表面領域の大部分は、ウェハの外縁に向かって表面から離れるように若干傾斜したc面を有する。c面から離れる表面の若干の傾斜は、概して公称c面GaNウェハの場合1度未満である。
【0022】
公称c面GaNウェハ上に観察されたホモエピタキシャル膜の六方晶ヒロック形態は、厳密にc面に平行な表面領域に関連していた。厳密なc面基板上の六方晶ヒロック構造の形成は、厳密なc面基板上の低密度の結晶ステップに起因しており、それが平滑な二次元成長を困難にしていた。六方晶ヒロックの形成により結晶ステップが生成されたため局部表面平面は、厳密なc面ではなくなった。結晶ステップが成長中の膜に核形成中心を生成したため、気相から入り込む原子がステップに沿って沈着することができた。
【0023】
結晶c面に対して表面角度分布を有するGaNウェハの場合、表面ステップ幅およびステップ方向分布があった。厳密なc面基板上では六方晶ヒロックは対称であった。微傾斜角度に、すなわち格子c面と局部面との間の角度として規定されるオフカット角度に厳密なc面から離れるように若干移動する(本明細書では微傾斜とオフカットとを同義的に用いている)と、図4に見られるように六方晶ヒロック構造の一方側が反対側を犠牲にして増大した。微傾斜角度が十分に大きい場合ヒロック形態は消失した。
【0024】
GaN基板上のホモエピタキシャルGaN膜の表面微細構造を原子間力顕微鏡(AFM)で検査した。DIC光学顕微鏡で観察された非均一表面形態もAFM画像で観察された微細構造に存在していた。
【0025】
ヒロック表面形態を有する表面領域では表面微細構造が、図5の50×50μmAFM画像に見られるようにファッセットがあるように見えた。図6は、微細構造のさらなる細部を示す2×2μmAFM走査である。原子ステップ構造は視認可能である。ホモエピタキシャル膜上にヒロック形態を有する領域における原子ステップ間の幅は、概して約100nm〜約300nmであった。このような原子ステップ幅および推定する1つの二分子層ステップ高さに基づいて、局部面は、格子c面から約0.2度離間している、すなわち厳密なc面GaN基板上の2μmの厚さのホモエピタキシャル膜が格子c面に対して約0.2度の表面オフカットを生じると判断した。
【0026】
中心のヒロック領域から離れると、図3に示すようにホモエピタキシャル膜は非常に平滑であった。AFM画像は平滑微細構造も示した。図7は、GaNウェハ上の2μmの厚さのホモエピタキシャルGaN膜の2×2μmAFM画像である。図3に示す特徴の表面形態を有する領域でAFM画像を得た。図3〜7は、GaNウェハ上の1つのホモエピタキシャル膜から得られた画像であるが膜の領域が異なる。平方自乗平均(RMS)技術により測定した表面粗さは2×2μmAFM画像にわたり0.14nmで、ホモエピタキシャル膜表面が非常に平滑であることを実証した。
【0027】
大面積GaNウェハ上のホモエピタキシャル膜の非均一表面形態は、非均一なデバイス性能と歩留まり損失とを生じ、その結果当該技術においてGaN基板上の均一に平滑で且つ高品質のホモエピタキシャルGaN膜の信頼性が高く且つ商業的再現生産を可能にするGaN技術の改善を切実に必要としていた。
【0028】
GaN基板上のホモエピタキシャル膜の非均一表面形態に関連する問題およびGaN膜の生産中の粗いヒロック表面特徴の発生は、格子c面から離れるように意図的に傾斜させた表面を有する本発明のGaNウェハ物品、すなわち微傾斜c面表面またはオフカット表面を有し、上にホモエピタキシャル成長を行ってGaNの高品質の平滑なホモエピタキシャル膜を製作し得るウェハにより回避される。
【0029】
参考までにGaN結晶のc面は(0001)表面と表わされ、c面の方向はc軸[0001]方向である。(0001)表面を参照するとガリウム終端化c面を指すが、
【数12】

表面は窒素終端化c面を指す。表面または面の方向は表面の法線方向として規定される。微傾斜ウェハの表面方向が、<0001>および
【数13】

方向により規定される平面である場合、この表面は
【数14】

方向に向かってオフカットされた(0001)表面と称される。GaN結晶の対称性のため
【数15】

方向は
【数16】

を含む方向の一群の一般的表現である。
【数17】

方向は
【数18】

を含む方向の一群の一般的表現である。本明細書で用いるように特定の方向例えば
【数19】

方向または
【数20】

方向に関して、用語「に主に向かう」は、このような方向±15度を意味する。このような参照は、本明細書においては極(オフカット)角を指すこととは異なり、方位許容角度を指すことに留意されたい。特定の方向に向かって方位変動が±5度であることが好ましく、このような変動が±2度であることが最も好ましい。
【0030】
本発明は、[0001]方向から、
【数21】

方向からなる群から選択される方向に主に向かって約0.2〜約10度の範囲のオフカット角度でオフカットされたGaN(0001)表面を含み、表面が50×50μmAFM走査により測定された1nm未満のRMS粗さと、3E6cm−2未満の転位密度とを有するGaN基板を検討するものである。
【0031】
具体的な実施形態におけるGaN(0001)表面は、
【数22】

方向または
【数23】

方向に向かって本発明の所与の用途においてそれぞれ適当であるように、約0.2〜約10度の範囲のオフカット角度で、約0.2〜約4度の範囲のオフカット角度で、約3〜約8度の範囲のオフカット角度で、約5〜約8度の範囲のオフカット角度で、約2.5〜約10度の範囲のオフカット角度で、約2.5〜約8度の範囲のオフカット角度で、約2.5〜約4度の範囲のオフカット角度でオフカットし得る。
【0032】
具体的な実施形態においてオフカット表面は、50×50μmAFM走査により測定された0.9nm未満のRMS粗さを有し得るが、50×50μmAFM走査により測定されたRMS粗さが0.5nm未満であることがより好ましい。好適な態様においてGaN基板の転移密度は、1E6cm−2未満であり、5E5cm−2であることが、より好ましい。
【0033】
本発明のGaN基板は、超小型電子デバイスまたは光電子デバイスおよびデバイス構造の製造に用いて有用であり、たとえばGaN基板上のホモエピタキシャルに蒸着されたGaN上にさらにAlGaNを蒸着してAlGaN/GaN HEMT構造を形成することを含む多段階製造工程中のコンポーネント段階として、基板上のホモエピタキシャルGaNの蒸着を含む。GaN基板上に製造されるデバイスは、代替的には青色以下の短波長レーザダイオードを含み得る。
【0034】
GaN基板上のホモエピタキシャルGaNまたは他のIII−V族窒化物材料の蒸着は、適当な蒸着技術、例えばMOVPEを用いて行い得るとともに、この蒸着工程を適当な工程条件で行い得る。たとえば、ホモエピタキシャルIII−V族窒化物材料の蒸着は、特定の用途に応じて約700〜約1220℃の範囲、または代替的には、約1120〜約1170℃の範囲、または代替的には、約1100〜1225℃の範囲の温度で行うことができるとともに、GaN基板上のホモエピタキシャルGaNまたは他のIII−V族窒化物材料の成長速度は約0.1μm/時〜約50μm/時の範囲、または代替的には、約1μm/時〜約50μm/時の範囲、または代替的には、約1μm/時〜約4μm/時の範囲、または代替的には、約1μm/時〜約2μm/時の範囲であり得る。
【0035】
本発明によるオフカットウェハは、いくつかの方法で作製することができる。長いGaNブールが入手可能である場合、ブールを配向且つスライスしてc面に対してオフカット角度を有するウェハを作製することができる。比較的厚いc面GaNウェハブランクが入手可能である場合、GaNウェハブランクをまず角度ラッピングすればよく、これはウェハをラッピング・プレートに対して所定の角度で固定具に配置し、ウェハをラッピングしてウェハのくさび構造を作製することを含む。そして、くさび状ウェハを背面にラッピングすることによりくさび構造を除去して表面が格子c面から離れるように傾斜したウェハを生じる。また、微傾斜GaNを、微傾斜GaN材料の蒸着後に除去されるサファイアなどの微傾斜テンプレート上で成長させても自立微傾斜GaN基板物品を生じることができる。
【0036】
本発明の例示的一実施形態において、GaNブールをハイドライド気相成長(HVPE)法により約1センチメートルの厚さまで成長させた。そのGaNブールを、ゴニオメータを用いて配向し、ワイヤーソーによるスライス中、スライス面をc面から離れるように
【数24】

方向に8度傾斜させるようにした。続いてそのブールを
【数25】

方向に向かって8度のオフカットを有する多数のウェハブランクにスライスした。
【0037】
本発明の他の実施形態において、GaNブールをHVPE法により約1センチメートルの厚さまで成長させた。そのGaNブールを、ゴニオメータを用いて配向し、ワイヤーソーによるスライス中、スライス面をc面から離れるように
【数26】

方向に8度傾斜させるようにした。続いてそのブールを
【数27】

に向かって8度のオフカットを有する多数のウェハブランクにスライスした。
【0038】
本発明のさらに他の実施形態において、GaNブールをHVPE法により約1センチメートルの厚さまで成長させた。そのGaNブールを、ゴニオメータを用いて配向し、ワイヤーソーによるスライス中、スライス面をc面から離れるように
【数28】

方向に4度傾斜させるようにした。続いてそのブールを
【数29】

に向かって4度のオフカットを有する多数のウェハブランクにスライスした。
【0039】
本発明のさらに他の実施形態において、GaNブールをHVPE法により約1センチメートルの厚さまで成長させた。そのGaNブールを、ゴニオメータを用いて配向し、ワイヤーソーによるスライス中、スライス面をc面から離れるように
【数30】

方向に4度傾斜させるようにした。続いてそのブールを
【数31】

に向かって4度のオフカットを有する多数のウェハブランクにスライスした。
【0040】
本発明のさらなる実施形態において、GaNブールをHVPE法により約1センチメートルの厚さまで成長させた。そのGaNブールを、ゴニオメータを用いて配向し、ワイヤーソーによるスライス中、スライス面をc面から離れるように
【数32】

方向に2度傾斜させるようにした。続いてそのブールを
【数33】

に向かって2度のオフカットを有する多数のウェハブランクにスライスした。
【0041】
本発明の他の実施形態において、GaNブールをHVPE法により約1センチメートルの厚さまで成長させた。そのGaNブールを、ゴニオメータを用いて配向し、ワイヤーソーによるスライス中、スライス面をc面から離れるように
【数34】

方向に2度傾斜させるようにした。続いてそのブールを
【数35】

に向かって2度のオフカットを有する多数のウェハブランクにスライスした。
【0042】
そして上記のように作製したスライスした微傾斜ウェハブランクを9ミクロン粒径ダイヤモンドスラリーで両面ラッピングしてワイヤーソーによる損傷を除去した。c面GaNウェハは、一方が窒素で終端して窒素終端化
【数36】

表面と称され、他方がガリウムで終端してガリウム終端化(0001)表面と称される2つの表面を有している。オフカットGaN(0001)ウェハも2つの表面を有している。一面は(0001)表面に対して微傾斜しているもののなおガリウム終端化表面と呼ばれるが、微傾斜(0001)表面はその表面に窒素原子のごく一部を露出する原子ステップを有している。
【0043】
上記に参照した実施形態で説明した微傾斜ウェハの両面をラッピングした後、ウェハのガリウム側をより小径のグリットダイヤモンドスラリーで鏡面仕上げが得られるまでさらに研磨した。窒素側も研磨して鏡面仕上げすることができる。ダイヤモンド研磨された表面はなお研磨作業による表面および表面下損傷を含んでいた。
【0044】
化学機械研磨(CMP)法を最終的な研磨工程として用いてガリウム終端化表面、すなわち、後続のホモエピタキシャル成長用表面から残留表面損傷を除去した。一般にCMP法を任意の適切な方法で且つ適正なCMP配合物を用いて行い得る。CMP法は、引掻および表面損傷を除去するのに効果的であった。
【0045】
図8は、
【数37】

方向に向かって8度のオフカットを有するCMP仕上げ微傾斜GaN(0001)ウェハのDIC光学画像である。図9は、
【数38】

方向に向かって8度のオフカットを有するCMP仕上げ微傾斜GaN(0001)ウェハの50×50μmAFM画像である。CMP後の8度オフカットウェハは、図8および9に示すようにステップ構造を示した。
【0046】
微傾斜GaNウェハを角度付きラッピングにより作製することもできる。図10は、公称c面ウェハブランクから微傾斜GaN基板を形成する角度付きラッピングプロセス・フローの概略図である。図10Aではc面ウェハブランクが固定具のポケット内に配置され、ポケットの底部には所定の傾斜を有している。ポケット内のウェハはラッピング・プレート上でラッピングされて、ラッピング後にウェハ表面の上部が固定具の上部と平行になる、すなわち、図10Bに示すようにウェハ形状がくさび状になるとともにウェハ上面がGaNのc面に対して微傾斜角度になる。くさび構造の形成後くさび状ウェハをある固定具内に配置してラッピングすることにより、ウェハの2つの面が互いに平行になるとともに同じ大きさのオフカットを有するようになる。
【0047】
例示的実施形態において、約1.3mmの厚さを有するGaNウェハブランクをHVPE成長によりc面サファイア上に形成してその後サファイアを除去した。続いてウェハブランクを角度付きラッピングして
【数39】

方向に向かって1度オフカットを作製した。
【0048】
他の実施形態において、約1.3mmの厚さを有するGaNウェハブランクをHVPE成長によりc面サファイア上に形成し、サファイアを除去した。続いてウェハブランクを角度付きラッピングして
【数40】

方向に向かって1度オフカットを作製した。
【0049】
さらなる実施形態において、約1.3mmの厚さを有するGaNウェハブランクをHVPE成長によりc面サファイア上に形成し、サファイアを除去した。続いてウェハブランクを角度付きラッピングして
【数41】

方向に向かって2度オフカットを作製した。
【0050】
さらに他の実施形態において、約1.3mmの厚さを有するGaNウェハブランクをHVPE成長によりc面サファイア上に形成し、サファイアを除去した。続いてウェハブランクを角度付きラッピングして
【数42】

方向に向かって2度オフカットを作製した。
【0051】
さらなる実施形態において、約1.3mmの厚さを有するGaNウェハブランクをHVPE成長によりc面サファイア上に形成した。続いてウェハブランクを角度付きラッピングして
【数43】

との間の中間の方向に向かって1度オフカットを作製した。
【0052】
上記のように作製した角度付きラッピングした微傾斜GaNウェハをガリウム終端化表面でより小径のダイヤモンドグリットでさらに研磨して鏡面仕上げした。窒素側も随意に研磨して鏡面仕上げすることができることは理解されよう。続いてウェハのガリウム側を化学機械研磨して表面引掻および表面損傷を除去した。
【0053】
図11は、
【数44】

に向かって2度のオフカットを有する代表的なCMP仕上げ角度付きラッピングされたGaN(0001)表面のAFM画像である。表面は非常に平滑であった(画像内のピットは貫通転移に関連している)。
【0054】
本発明により微傾斜サファイア基板上に微傾斜GaNを成長させることができる。一例示的実施形態において、
【数45】

方向に向かって1度オフカットを有するc面サファイア基板を用いて、その基板上にHVPE GaN膜を成長させた。X線回折計測によりGaN膜も
【数46】

方向に向かって1度オフカットを有することが確認された。他の実施形態において
【数47】

方向に向かって2度オフカットを有するc面サファイア基板上にHVPE GaNを成長させた。X線回折計測によりGaN膜も
【数48】

方向に向かって2度オフカットであることが確認された。
【0055】
さらに他の例示的実施形態において、
【数49】

方向に向かって4度オフカットを有する微傾斜c面サファイア基板上にHVPE技術によりGaN膜を成長させた。X線回折計測によりGaN膜も
【数50】

方向に向かって4度オフカットを有する微傾斜であることが確認された。
【0056】
オフカットGaN成長を可能にする任意の適当な材料で形成された微傾斜基板上に比較的厚いGaN膜を成長させることにより、本発明による微傾斜GaN基板を作製することができる。このような目的の微傾斜基板を、たとえば、サファイア、ガリウム、砒化物、シリコン、または他の適切な材料で形成してもよい。さらなる具体例として、オフカットGaN成長をGaNのHVPE蒸着を含む微傾斜サファイア基板上で行い得る。
【0057】
比較的厚いGaN膜を微傾斜異種基板上に成長させた後、その異種基板を任意の適当な手段または方法により除去することができる。たとえば、基板除去は基板の削除、基板の一部または全部の除去、または基板全部および基板に隣接するGaNの一部の除去を含み得る。このような目的のために有用に用い得る具体的な技術には、機械的研削、化学エッチング、界面分解、界面破壊、もしくは特定の基板に適切な任意の他の手段または方法がある。上記の異種基板を除去した後、得られたGaNウェハブランクを上述したようにラッピング、研磨、および化学機械研磨してエピタキシ対応微傾斜GaN基板を生じることができる。
【0058】
本発明による低欠陥密度微傾斜GaN基板は、低欠陥密度GaNインゴットをスライスする、または低欠陥密度GaNウェハブランクを角度付きラッピングする、または低欠陥GaN材料を微傾斜異種基板上に成長させた場合には微傾斜GaNウェハブランクをラッピングおよび研磨することにより作製することができる。シュエピン・シュー(Xueping Xu)およびロバート P.ボード(Robert P.Vaudo)の名で本明細書と同日出願された同時継続米国特許出願「大面積均一低転移密度GaN基板およびその作製方法(LARGE AREA,UNIFORMLY LOW DISLOCATION DENSITY GaN SUBSTRATE AND PROCESS FOR MAKING THE SAME)」に開示されているような2段階成長方法は、このような低転移密度を有するGaN材料を作製するために有利に用い得る。同時継続米国特許出願の開示全体を本明細書に引用して援用する。低転移密度GaNの転移密度は、3E6cm−2より低いことが好ましく、1E6cm−2未満であることがより好ましく、5E5cm−2未満であることが最も好ましい。
【0059】
本発明による微傾斜GaN基板のガリウム側を化学機械研磨処理で仕上げて、原子力顕微鏡で測定された50×50μmの面積内の表面RMSが1nm未満の高品質の表面平滑性を得ることができる。原子力顕微鏡で測定された2×2μmの面積内の表面RMSは0.9nm未満であることが好ましく、0.5nm未満であることがより好ましい。微傾斜基板の窒素側はマット仕上げすることができ、または随意に研磨して鏡面仕上げすることができる。
【0060】
本発明の特徴と利点とは、以下の微傾斜GaN基板上のMOVPE GaNホモエピタキシャル膜およびデバイス層成長の非限定例によってより十分に示される。
【0061】
実施例1
【数51】

方向に向かって1度オフカットを有する微傾斜GaN基板をホモエピタキシャル成長用基板として用いた。
【0062】
図12は次の成長条件:成長速度=2μm/時および成長温度=1120℃でこのような微傾斜GaN基板(
【数52】

に向かって1度)上に成長させた2μmホモエピタキシャル膜の中心付近および縁部付近のウェハ表面のDIC顕微鏡画像である。非均一ホモエピタキシャル膜が成長した公称c面基板とは異なり、このホモエピタキシャル膜は均一に平滑であった。
【0063】
DIC光学顕微鏡によれば、微傾斜GaNウェハ上のホモエピタキシャルGaN膜は、図12に示すようにウェハ表面全体にわたり平滑であり特徴がなかった。微傾斜基板の縁部付近のGaN膜の光学表面形態は微傾斜基板の中心付近のGaN膜の形態と同一であった。
【0064】
AFMをさらに用いて微傾斜GaN基板上のGaN膜の表面微細構造を特徴付けた。図13は微傾斜基板(
【数53】

に向かって1度)上に成長させた2μmホモエピタキシャル膜の50×50μmAFM走査である。表面は、10×10μmの面積内に0.38nmというRMS粗さを有して非常に平滑であった。貫通転移は成長ピットとして蒸着されるとともに、膜の転移密度は約2E6cm−2であった。
【0065】
図14は、微傾斜GaN(0001)基板(
【数54】

に向かって1度オフカット)上に成長させた2μmの厚さのホモエピタキシャル膜の2×2μmAFM走査である。ホモエピタキシャル膜のRMS粗さは、2×2μmの面積内に0.12nmであり、膜の非常に平滑な性質を示した。
【0066】
実施例2
次の成長条件:成長速度=2μm/時および成長温度=1170℃で微傾斜GaN(0001)基板(
【数55】

方向に向かって2度オフカット)上にAlGaN/GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造を成長させた。HEMT構造は、微傾斜基板上の2μmの厚さの非ドープMOVPEホモエピタキシャルGaN膜と、ホモエピタキシャルGaN膜の上の25nmAlGaN(Al:30原子%)層と、により構成されていた。光学顕微鏡で検査するとHEMTウェハは、均一且つ平滑な表面形態を有していた。c面GaN(0001)基板上のホモエピタキシャル表面上に概して観察されたヒロック形態は、微傾斜GaNウェハ上にはなかった。
【0067】
図15は2度オフカット(
【数56】

に向かって)GaN(0001)基板上に成長させたHEMT構造の2×2μmAFM走査であり、ステップ構造を有する平滑表面形態を示している。
【0068】
図16は、水銀プローブを用いたHEMT構造の容量−電圧(CV)測定値であり、二次元電子ガス(2DEG)が形成されたことを裏付けている。
【0069】
実施例3
以下の成長条件:成長速度=2μm/時および成長温度=1170℃で8度オフカット(
【数57】

方向に向かって)GaN(0001)基板上にAlGaN/GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造を成長させた。HEMT構造は、微傾斜基板上の厚さ2μmの非ドープMOVPEホモエピタキシャルGaN膜と、ホモエピタキシャルGaN膜の上の25nmAlGaN(Al:30原子%)層とにより構成されていた。HEMT構造の表面形態は、平滑で且つ基板形態を複製していた。
【0070】
図17は、8度(
【数58】

に向かって)微傾斜GaN(0001)基板上に成長させたHEMT構造の表面のDIC顕微鏡画像であり、HEMT表面は基板表面を複製していた。ウェハ表面全体は均一であり、ヒロック形態がなかった。
【0071】
図18は、8度オフカット(
【数59】

に向かって)GaN(0001)基板上に成長させたHEMTデバイス層の容量−電圧測定値である。急峻なピンチオフがAlGaN/GaN界面領域内の良好な2DEGを示した。
[実施例4]
【0072】
約1度のオフカット角度を有する微傾斜GaN(0001)上にMOVPEホモエピタキシャル膜を成長させたが、オフカット方向は
【数60】

との間であった。光学顕微鏡検査では、表面形態が均一で且つかなり平滑であり、ホモエピタキシャル膜上にはヒロック形態はなかった。
【0073】
図19は、
【数61】

との間のオフカット方向を有する微傾斜GaN(0001)基板上に成長させた2μmの厚さのホモエピタキシャルGaN膜の50×50μmAFM走査である。成長条件は、成長速度が2μm/時および成長温度が1170℃であった。ピットは転移に関連していた。
【0074】
AFM画像は、表面が厳密に平坦ではなく、
【数62】

方向に向かってオフカットを有する微傾斜GaN(0001)ウェハ上に成長させたホモエピタキシャル膜上に観察されない小型の凸凹を有していたことを示している。
【0075】
以上の例示的実施例は、本発明の微傾斜基板は均一に平滑なホモエピタキシャルGaN膜をその上に作製可能であり、上に形成されるホモエピタキシャル膜上にヒロック表面形態を発生しないということを明確に示している。出発ウェハブランクが格子湾曲の原因となる残留応力を有する場合には、オフカット角度の分布がウェハ作製工程中に仕上げ微傾斜ウェハ上に導入されることになる。オフカットが格子湾曲より大きければ、ウェハ領域全体はオフカットを有するためヒロック表面形態の発生を防止することになる。しかしウェハ作製処理前にウェハブランク内の残留応力を除去して、ウェハ全体にわたりより一貫したオフカット角度と方向とを達成することが好ましい。たとえば、ウェハの化学エッチング、熱アニール等により応力除去を達成することができる。
【0076】
本発明の微傾斜GaN基板上の最適MOVPE成長条件は、オフカット角度と方向とに応じて若干変動する場合がある。また、オフカットは、ホモエピタキシャル膜のドーピングおよび不純物混入に影響することになる。最適なデバイス性能を達成するためには、たとえば、本明細書の開示に基づいて当該技術範囲内で容易に行い得るように、最適な一連の成長条件を判断するための成長パラメータの選択的変更を含む実験的判断により特定の基板に対して成長条件を最適化しなければならない。
【0077】
さらにまた異なる個々の超小型電子/光電子デバイス(たとえば、レーザダイオード、発光ダイオード、トランジスタ、ダイオード、検出器等)は、本明細書の開示に基づいて当該技術範囲内で容易に判断し得るように、特定の動作レジメで最高の性能を得るために異なる微傾斜基板を必要とする場合がある。また、微傾斜GaN基板上の最適なMOVPE成長条件は、用いる特定の成長反応装置の形状にも依存することになる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
産業上の利用可能性
本発明の微傾斜III−V族窒化物基板は、発光ダイオード、レーザダイオード、光電センサ、光電スイッチ、高電子移動度トランジスタなどのIII−V族窒化物系超小型電子および光電子デバイスの製造におけるホモエピタキシャル蒸着に用いて有用である。一例としてIII−V族窒化物基板は、青色およびUV発光ダイオードならびにレーザダイオードの作製に有用なGaN基板であり得る。本発明の基板は高周波数、高温および高出力電子用途に特に有用性がある。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図面の簡単な説明
【図1】MOVPE GaN/サファイアテンプレート上に成長させたMOVPEホモエピタキシャル膜の表面の微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡画像である。成長条件は、成長温度が1220℃および成長速度が4μm/時であった。
【図2】GaNウェハ上のMOVPEホモエピタキシャルGaN膜のDIC顕微鏡画像である。成長条件は、成長温度が1220℃および成長速度が4μm/時であった。
【図3】ウェハの周辺から取ったGaNウェハ上の2μmの厚さのホモエピタキシャルGaN膜のDIC顕微鏡画像である。成長条件は、成長温度が1170℃および成長速度が2μm/時であった。
【図4】GaNウェハ上の2μmの厚さのホモエピタキシャルGaN膜のDIC顕微鏡画像である。画像は、図3に示すように同じウェハから取ったものであるがウェハ上の中心付近位置から取ったものである。成長条件は、成長温度が1170℃および成長速度が2μm/時であった。
【図5】図4に示した形態を有する領域付近から取った、GaNウェハ上のホモエピタキシャルGaN膜の50×50μmAFM画像である。
【図6】図4に示した形態を有する領域付近で取った、ヒロック領域内のGaNウェハ上のホモエピタキシャルGaN膜の2×2μmAFM画像である。
【図7】図3に示した形態を有する領域付近で取った、平滑領域内のGaNウェハ上のホモエピタキシャルGaN膜の2×2μmAFM画像である。
【図8】
【数63】

方向に向かって公称8度のオフカットを有するCMP仕上げ微傾斜GaN(0001)ウェハのDIC光学画像である。
【図9】
【数64】

方向に向かって8度のオフカットを有するCMP仕上げ微傾斜GaN(0001)ウェハの10×10μmAFM画像である。
【図10A−10B】ウェハの角度付きラッピングを概略的に示し、図10Aは、角度付きラッピング固定具内に配置されたウェハを示し、図10Bは、ウェハ上のくさびをラッピングした後のウェハを示す。
【図11】
【数65】

方向に向かって2度のオフカットを有するCMP仕上げ角度付きラッピングされたGaN(0001)表面の10×10μmAFM画像である。
【図12】成長速度が2μm/時および成長温度が1120℃の成長条件で微傾斜GaN基板(
【数66】

に向かって1度)上の2μmの厚さのホモエピタキシャル膜成長の中心付近および縁部付近のウェハ表面のDIC顕微鏡画像である。
【図13】膜の光学画像を図12に示した、微傾斜基板(
【数67】

に向かって1度オフカット)上の2μmの厚さのホモエピタキシャル膜成長の50×50μmAFM走査である。
【図14】膜の光学画像を図12に示した、微傾斜GaN(0001)基板
【数68】

に向かって1度オフカット)上の2μmの厚さのホモエピタキシャル膜成長の2×2μmAFM走査である。
【図15】微傾斜GaN(0001)基板(
【数69】

に向かって2度オフカット)上に成長させたHEMT構造の表面の2×2μmAFM走査である。
【図16】水銀プローブで測定した、2度オフカット(
【数70】

に向かって)GaN(0001)基板上に成長させたHEMT構造の容量−電圧(CV)測定値である。
【図17】8度(
【数71】

に向かって)微傾斜GaN(0001)基板上に成長させたHEMT構造の表面のDIC顕微鏡画像であり、HEMT表面の形態は図8に示した基板表面を複製していた。
【図18】8度オフカット(
【数72】

に向かって)GaN(0001)基板上に成長させたHEMTデバイス層の容量−電圧(CV)測定値である。
【図19】主に
【数73】

群以外のオフカット方向を有する微傾斜GaN(0001)基板上に成長させた2μmの厚さのホモエピタキシャルGaN膜の50×50μmAFM走査である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
<0001>方向から、
【数1】

方向からなる群から選択される方向に主に向かって約0.2〜約10度の範囲のオフカット角度でオフカットされたGaN(0001)表面を含み、前記表面が50×50μmAFM走査により測定された1nm未満のRMS粗さと、3E6cm−2未満の転位密度とを有するGaN基板。
【請求項2】
前記GaN(0001)表面が、主に前記
【数2】

方向に向かってオフカットされている、請求項1に記載のGaN基板。
【請求項3】
前記GaN(0001)表面が、主に前記
【数3】

方向に向かってオフカットされている、請求項1に記載のGaN基板。
【請求項4】
前記GaN(0001)表面が、約0.2〜約4度の範囲のオフカット角度でオフカットされている、請求項1に記載のGaN基板。
【請求項5】
前記GaN(0001)表面が、前記
【数4】

方向に向かってオフカットされている、請求項4に記載のGaN基板。
【請求項6】
前記GaN(0001)表面が、前記
【数5】

方向に向かってオフカットされている、請求項4に記載のGaN基板。
【請求項7】
前記GaN(0001)表面が、約3〜約8度の範囲のオフカット角度でオフカットされている、請求項1に記載のGaN基板。
【請求項8】
前記GaN(0001)表面が、前記
【数6】

方向に向かってオフカットされている、請求項7に記載のGaN基板。
【請求項9】
前記GaN(0001)表面が、前記
【数7】

方向に向かってオフカットされている、請求項7に記載のGaN基板。
【請求項10】
前記GaN(0001)表面が、約2.5〜約8度の範囲のオフカット角度でオフカットされている、請求項1に記載のGaN基板。
【請求項11】
前記GaN(0001)表面が、前記
【数8】

方向に向かってオフカットされている、請求項10に記載のGaN基板。
【請求項12】
前記GaN(0001)表面が、前記
【数9】

方向に向かってオフカットされている、請求項10に記載のGaN基板。
【請求項13】
前記表面が、50×50μmAFM走査により測定された0.9nm未満のRMS粗さを有する、請求項1に記載のGaN基板。
【請求項14】
前記表面が、50×50μmAFM走査により測定された0.5nm未満のRMS粗さを有する、請求項1に記載のGaN基板。
【請求項15】
前記表面が、1E6cm−2未満の転移密度を有する、請求項1に記載のGaN基板。
【請求項16】
前記表面が、5E5cm−2未満の転移密度を有する、請求項1に記載のGaN基板。
【請求項17】
前記GaN(0001)表面が、約2.5〜約10度の範囲のオフカット角度でオフカットされている、請求項1に記載のGaN基板。
【請求項18】
前記GaN(0001)表面が、約5〜約8度の範囲のオフカット角度でオフカットされている、請求項1に記載のGaN基板。
【請求項19】
請求項1に記載のGaN基板と、前記表面上に蒸着したホモエピタキシャルGaN層を含む超小型電子または光電子デバイス構造とを備える、超小型電子または光電子デバイス物品。
【請求項20】
前記超小型電子または光電子デバイス構造が、レーザダイオードと、発光デバイスと、トランジスタと、ダイオードと検出器とからなる群から選択されるデバイスを備える、請求項19に記載の超小型電子または光電子デバイス物品。
【請求項21】
前記デバイス構造が青色以下の波長のレーザダイオード、またはHEMTデバイスを備える、請求項19に記載のデバイス物品。
【請求項22】
<0001>方向から、
【数10】

方向からなる群から選択される方向に主に向かって約0.2〜約10度の範囲のオフカット角度でオフカットされたGaN(0001)表面を含み、前記表面が50×50μmAFM走査により測定された1nm未満のRMS粗さと、3E6cm−2未満の転位密度とを有するGaN基板を形成する方法であって、バルクGaN単一結晶体を成長させるステップと、前記バルクGaN単一結晶体を処理してそこから少なくとも1つのウェハを形成するステップとを含み、前記処理ステップが(i)前記
【数11】

方向からなる群から選択される前記方向に前記オフカット角度でc面から離れるように傾斜したスライス面で行われるスライスステップと、(ii)前記
【数12】

方向からなる群から選択される前記方向に前記オフカット角度でc面から離れるように傾斜したラッピング面で行われる角度付きラッピングステップと、(iii)前記<0001>方向から、前記
【数13】

方向からなる群から選択される方向に主に向かって約0.2〜約10度の前記範囲のオフカット角度でオフカットされた(0001)表面を含む微傾斜へテロエピタキシャル基板上で前記バルクGaN単一結晶体を成長させるステップ後に前記バルクGaN単一結晶体を分離するステップとからなる群から選択されるステップを含む方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのウェハが、ラッピング、研磨および化学機械研磨からなる群から選択される少なくとも1つの仕上げステップにより仕上げられる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記処理ステップがステップ(i)を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記処理ステップがステップ(ii)を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記処理ステップがステップ(iii)を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記微傾斜へテロエピタキシャル基板が、サファイアおよびGaAsからなる群から選択される材料を備える、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
(c)<0001>方向から、
【数14】

方向からなる群から選択される方向に主に向かって約0.2〜約10度の範囲のオフカット角度でオフカットされたGaN(0001)表面を含み、前記表面が50×50μmAFM走査により測定された1nm未満のRMS粗さと、3E6cm−2未満の転位密度とを有するGaN基板を形成するステップと、
(d)前記GaN基板上にホモエピタキシャルIII−V族窒化物材料を蒸着するステップと、を含み、
バルクGaN単一結晶体を成長させるステップと、前記バルクGaN単一結晶体を処理してそこから少なくとも1つのウェハを形成するステップと、を含み、前記処理ステップが(i)前記
【数15】

方向からなる群から選択される前記方向に前記オフカット角度でc面から離れるように傾斜したスライス面で行われるスライスステップと、(ii)前記
【数16】

方向からなる群から選択される前記方向に前記オフカット角度でc面から離れるように傾斜したラッピング面で行われる角度付きラッピングステップと、(iii)前記<0001>方向から、前記
【数17】

方向からなる群から選択される方向に主に向かって約0.2〜約10度の前記範囲のオフカット角度でオフカットされた(0001)表面を含む微傾斜へテロエピタキシャル基板上で前記バルクGaN単一結晶体を成長させるステップ後に前記バルクGaN単一結晶体を分離するステップとからなる群から選択されるステップを含む、超小型電子または光電子デバイスを作製する方法。
【請求項29】
前記ホモエピタキシャルIII−V族窒化物材料を蒸着するステップがMOVPEを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記蒸着ステップが、約1100〜約1225℃の範囲の温度で行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記蒸着ステップが、約1100〜約1225℃の範囲の温度で行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記蒸着ステップが、約1120〜約1170℃の範囲の温度で行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記蒸着ステップが、約700〜約1220℃の範囲の温度で行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記蒸着ステップが、約0.1μm/時〜約50μm/時の範囲の成長速度で行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記蒸着ステップが、約1μm/時〜約4μm/時の範囲の成長速度で行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記蒸着ステップが、約2μm/時〜約4μm/時の範囲の成長速度で行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記ホモエピタキシャルIII−V族窒化物材料が、GaNを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
AlGaN材料を前記GaN上に蒸着してAlGaN/GaN HEMTを形成するステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
<0001>方向から、
【数18】

方向からなる群から選択される方向に主に向かって約0.2〜約10度の範囲のオフカット角度でオフカットされた(Al,In,Ga)N(0001)表面を含み、前記表面が50×50μmAFM走査により測定された1nm未満のRMS粗さと、3E6cm−2未満の転位密度とを有するIII−V族窒化物基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A−B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−6319(P2011−6319A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−177527(P2010−177527)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2006−539971(P2006−539971)の分割
【原出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(592054856)クリー・インコーポレーテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】