説明

高圧タンク製造方法

【課題】高圧タンクにおける省スペース化と疲労耐久性の向上を図る。
【解決手段】ライナをセットし(S10)、繊維束間に半硬化状態の熱硬化性樹脂が含浸されたプリプレグを用いて1〜10層に対するフィラメントワインディング成形を行う(S12)。続いて、液状の熱硬化性樹脂が含浸された繊維束を用いて11〜36層に対するフィラメントワインディング成形を行う(S14)。そして、加熱により熱硬化性樹脂を硬化させて高圧タンクを製造する(S16)。プリプレグでは熱硬化性樹脂の粘性が高く繊維間からの浸み出しが少ないため、内層における繊維密度の低下が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材を巻回して製造される高圧タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ライナの外側に繊維強化複合材を複数層にわたって巻回することにより、高圧タンクを製造する技術が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、繊維強化複合材を巻回して高圧タンクを製造する過程で、巻き締め張力に起因して内側の層から樹脂が絞り出され、これにより内層あるいは外層の繊維強化複合材が蛇行してしまう問題が記載されている。また、この問題を解決するために、繊維強化複合材に含まれる樹脂量や巻回時の張力を制御して、絞り出される樹脂量を所定の値に管理する技術も記載されている。
【0004】
なお、下記特許文献2には、自動車用ドライブシャフトや、フィルム搬送用・印刷用のロール等に使用されるプラスチックパイプについての技術が記載されている。この技術では、マンドレルに対し、熱硬化性樹脂をマトリクスとするプリプレグシートを巻回し、その外層に熱可塑性樹脂テープを巻回した後に、熱硬化性樹脂の硬化条件で熱硬化・熱圧着を行うことにより、パイプ表面にある程度の厚みをもった樹脂を設けている。
【0005】
また、下記特許文献3には、ゴルフシャフトや釣り竿などで使用され、捻り破壊強度、曲げ強度、衝撃強度などが高い管を、繊維強化樹脂層を積層して製造する技術が開示されている。具体的には、マンドレルの周囲に傾斜して巻回された炭素繊維強化プリプレグの外周に、プリプレグテープ部材などを所定の張力で巻き付け、さらにその外周に炭素繊維強化プリプレグを巻き付けた後に、プリプレグを加熱硬化する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−66637号公報
【特許文献2】特開平7−80973号公報
【特許文献3】特開平5−185541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載されたように、繊維強化複合材では、その外側に巻回される繊維強化複合材による巻き締めの効果などにより、繊維束間に満たされる樹脂が浸み出してしまうため、内層(ライナ側の層)ほど、繊維密度(あるいは繊維体積含有率Vf)が高くなる(樹脂が少なくなる)傾向にある。特に、高圧タンクの使用圧を高める場合には、強度を確保するために繊維強化複合材層を増やす必要があり、内層におけるVf上昇が顕著となる。
【0008】
一般に、Vfが高い繊維強化複合材層では、亀裂が生じやすくなるなど疲労耐久性能が低下することが知られている。特に、高圧タンクに高圧の気体や液体を充填した場合には、内層側の繊維強化複合材層ほど大きな応力が作用する傾向にあり、高圧タンクの疲労耐久性を高め、寿命を延ばすためには、内層におけるVfを比較的低くすることが望ましい。
【0009】
しかしながら、単純に高圧タンク全体でVfを低くしたのでは、樹脂が多くなる分だけ外径が大きくなってしまう。また、上記特許文献1の技術では、繊維強化複合材の選択や、巻回時における張力設定などの制約が多く、必ずしも所望の高圧タンクを得ることができない。また、上記特許文献2,3の管の製造技術においても、内層と外層の樹脂特性の差異に着目した記載はなされていない。
【0010】
本発明の目的は、高圧タンクにおける省スペース化と疲労耐久性の向上を図ることにある。
【0011】
本発明の別の目的は、車載用の利便性を向上させた高圧タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の高圧タンク製造方法の一態様においては、中空のライナの外周に、複数の繊維からなる第1繊維束と各繊維間に非硬化状態で設けられた熱硬化性樹脂とを含む第1繊維強化複合材を巻回し、第1繊維強化複合材層を積層形成するステップと、前記第1繊維強化複合材層の外周に、複数の繊維からなる第2繊維束と各繊維間に非硬化状態で設けられた熱硬化性樹脂とを含む第2繊維強化複合材を巻回し、第2繊維強化複合材層を積層形成するステップと、前記第1繊維強化複合材層及び前記第2繊維強化複合材層が積層形成された後に、加熱により前記熱硬化性樹脂を硬化させるステップと、を含み、巻回時においては、前記第1繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂の粘性は、前記第2繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂の粘性に比べて高く設定されている。
【0013】
高圧タンクは、気体(ガス)あるいは液体を高圧で保持可能な容器であり、耐圧タンクや圧力容器などとも呼ばれる。また、ライナは高圧タンクの内筒として用いられる容器であり、典型的には内部に充填されるガスあるいは液体の保持力が高い樹脂あるいは金属などにより作られる。繊維強化複合材は、複数の繊維が束ねられた繊維束と、これらの繊維間に設けられるマトリクスとしての熱硬化性樹脂とを含む素材であり、ライナの外周に巻回されて高圧タンクの強度を高める。繊維束は複数の繊維が単に寄せ集められたものであってもよいし、複数の繊維が織り上げられたものであってもよい。また、繊維束を構成する繊維は連続したもの(巻回される一端から他端まで途切れていない)であってもよいし、不連続なものであってもよい。繊維の例としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などを挙げることができる。また、繊維間に設けられる熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などを挙げることができる。樹脂に対しては、硬化温度等を制御するための付与剤(例えば硬化剤、可撓性付与剤など)を添加することがある。
【0014】
第1繊維強化複合材に含まれる熱硬化性樹脂、及び、第2繊維強化複合材に含まれる熱硬化性樹脂は、巻回時には非硬化状態にある。非硬化状態とは塑性変形が可能な状態を指す。そして、少なくとも巻回時には、第1繊維強化複合材に含まれる熱硬化性樹脂は、第2繊維強化複合材に含まれる熱硬化性樹脂に比べて、粘性が高く設定されている。粘性の高低は、典型的には、粘性係数の大小により評価される。粘性は、例えば、樹脂の組成を変えたり、熱硬化を進行度合いを変えたりして制御することができる。なお、第1繊維強化複合材中で、あるいは、第2繊維複合強化材中で、粘性が一様である必要はないが、第1繊維強化複合材において最も粘性が低い樹脂は、第2繊維強化複合材において最も粘性が高い樹脂よりも高い粘性をもつように設定される。
【0015】
第1繊維強化複合材は、ライナの外周に巻回されて第1繊維強化複合材層を形成する。第1繊維強化複合材層は、ライナの外周を全面的(開口部や把手部などの特異な箇所はこの限りではない)に覆うように形成される。この第1繊維強化複合材層は、典型的には、第1繊維強化複合材を厚さ方向(ライナから遠ざかる方向)に複数回巻くことで形成される。同様にして、第2繊維強化複合材は、第1繊維強化複合材層の外周に巻回されて第2繊維強化複合材層を形成する。第2繊維強化複合材層は、基本的には、第1繊維強化複合材層の外周を全面的に覆うように形成され、また、厚さ方向に複数回巻くことで形成される。
【0016】
第1繊維強化複合材層は、ライナと接するように、あるいは、ライナの外表面に設けられた別の部材と接するように設けられる。言い換えれば、第1繊維強化複合材層は、繊維強化複合材層としては、最も内側に位置するように設けられる。また、第2繊維強化複合材層は、第1繊維強化複合材層よりも外側に設けられる。典型的には、第2繊維強化複合材層は、第1繊維強化複合材層と接するように設けられるが、第1繊維強化複合材層との間に別の部材が挟まれていてもよい。なお、第1繊維強化複合材と第2繊維強化複合材は、不連続な素材(つまり樹脂や繊維が物理的に繋がっていない素材)であってもよいが、連続した素材(樹脂あるいは繊維の少なくとも一方が物理的に繋がっている素材)であって連続的に巻回されるものであってもよい。
【0017】
第1繊維強化複合材層が形成される内層付近では、一般に、外層に比べて巻き締めにより樹脂の浸み出し量が大きくなる傾向にあり、また、高圧タンクに気体あるいは液体を充填した際に大きな応力が作用する傾向にある。そこで、この付近に巻回される前記第1繊維強化複合材の粘性を、少なくとも巻回時においては、前記第2繊維強化複合材の粘性に比べて高く設定している。これにより、巻回された第1繊維強化複合材層から漏れ出す樹脂の量を比較的少なくすることができるため、巻回前の第1繊維強化複合材と第2繊維強化複合材の粘性を同じにした場合に比べて、少なくとも第1繊維強化複合材層の繊維密度が第2繊維強化複合材層の繊維密度より高くなる度合いが抑制される。
【0018】
なお、第1繊維強化複合材における繊維密度と第2繊維強化複合材における樹脂の粘性の調整、あるいは、巻回する際の張力の調整などを行うことで、第1繊維強化複合材層の繊維密度と第2繊維強化複合材層の繊維密度を同程度に設定してもよいし、第1繊維強化複合材層の繊維密度を第2繊維強化複合材層の繊維密度よりも低く設定してもよい。第1繊維強化複合材層の繊維密度と第2繊維強化複合材層の繊維密度をどの程度に設定するかは、高圧タンクの強度、疲労耐久性、大きさなどを考慮した上で、実験的あるいは理論的根拠に基づいて決めることができる。いずれにせよ、本構成によれば、繊維強化複合材層を比較的薄くして省スペース化を図るとともに、繊維強化複合材層の疲労耐久性を高めることが可能となる。この省スペース化は、例えば、移動体(例えば車両、船舶、航空機)のように利用可能な空間が限られた状況下で特に有効となる。
【0019】
本発明の高圧タンク製造方法の一態様においては、巻回時においては、前記第1繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂は、前記第2繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂に比べて硬化が進行した半硬化状態にあり、これにより、前記第1繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂の粘性は、前記第2繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂の粘性に比べて高く設定されている。ここで、熱硬化性樹脂の硬化が進行した半硬化状態とは、樹脂の重合などにより樹脂分子の結合が進行し、流動性が相対的に低下した状態を指すものであり、プリプレグと呼ばれることもある。半硬化状態では、一般に、粘性が高くなるため、高い圧力が作用した場合にも、繊維強化複合材層から浸み出す量が低下することになる。
【0020】
本発明の高圧タンク製造方法の一態様においては、前記第2繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂は、前記第1繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂と同じ組成をもち、巻回時には液状に保たれた樹脂であり、これにより、前記第1繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂の粘性が、前記第2繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂の粘性に比べて高く設定されている。ここで、液状とは、例えば、滴となってしたたり落ちる程度の流動性が確保された状態をいう。同じ組成をもち、硬化の進行度合いが異なる樹脂を使用することで、硬化段階において、第1繊維強化複合材層と第2繊維強化複合材層とを滑らかに結合する効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を例示する。
【0022】
図1は、本実施の形態にかかる高圧タンク10の概略的な断面図である。高圧タンク10では、円筒形状に作られた樹脂製のライナ12の外周に、繊維強化複合材としての炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が巻回されたCFRP層14が形成されており、さらにCFRP層14の外周には保護層としてのガラス層16が形成されている。そして、ライナ12の両端には、金属製の口金18,20が取り付けられている。
【0023】
この高圧タンク10は、水素あるいは天然ガスなどの燃料ガスを高圧で貯蔵する容器である。高圧タンク10は据え置き型として用いられても良いし、移動体に搭載されて用いられても良い。例えば、燃料電池車に搭載されて使用される場合には、典型的には全長が800〜1500mm、直径が200〜500mm程度の高圧タンク10が用意され、満タン時には数十MPa〜100MPa程度の圧力の燃料ガスが充填される。
【0024】
図2は、図1に符号22で示した高圧タンク10の側面の断面構造を示す図である。高圧タンク10では、最も内側にライナ12があり、その外側にCFRP層14が設けられ、さらに、その外側にガラス層16が設けられている。CFRP層14は、複数(例えば数千本〜数万本)の炭素繊維を含む束状のCFRPが巻回され多層化(例えば10層程度から数十層程度)されたものである。このCFRP層14のうち、内層24は、プリプレグと呼ばれる半硬化状態の樹脂が含まれたCFRPを巻回して製造されており、外層26は液状の樹脂が含まれたCFRPを巻回して製造されている。
【0025】
続いて図3,4を用いて、高圧タンク10の製造方法について説明する。図3は、高圧タンク10の製造手順を示したフローチャートであり、ここでは、36層のCFRP層14を形成するものとして説明を行う。また、図4は、CFRP層14を形成する過程を示した模式図である。
【0026】
製造過程においては、まず、口金を取り付けたライナ12が回転軸30にセットされる(S10)。そして、内側の層(例えば1〜10層)に対しては、直径が7μmである炭素繊維が2万本程度束ねられ、この炭素繊維間に半硬化状態の樹脂が設けられたた繊維束32(プリプレグ)を用いて、CFRP層14がフィラメントワインディング成形(以下FW成形と呼ぶことがある)される(S12)。ここで、フィラメントワインディング成形とは、樹脂を含浸させた繊維束を巻回する成形方法を指す。繊維束の幅が比較的広い場合には、テープワインディング成形と呼ばれることもある。繊維束は例えば、幅方向に数mm、厚み方向に0.01mm〜数mm程度に設定される。
【0027】
プリプレグは、例えば、ボビンから送られる繊維束32に対し、液状のエポキシ樹脂が蓄えられた含浸バスに浸すことで樹脂の含浸を行い、その後に緩やかな加熱により樹脂を半硬化状態にまで重合させることで製造することができる。また、高圧タンクの製造とは別にプリプレグを製造することも可能であり、例えば、一般に流通しているプリプレグを利用するようにしてもよい。
【0028】
なお、巻回の方法は特に限定されるものではなく、例えば、フープ巻き(図4に示すように、繊維束32を回転軸30にほぼ垂直にセットし、徐々に巻回箇所をずらしていく巻き方)であっても、ヘリカル巻き(繊維束32を回転軸30に対して斜めにセットし、巻回箇所を大きくずらしていく巻き方)であってもよいし、また、複数の繊維束を編み上げて(ブレイディング)から巻回を行ってもよい。
【0029】
プリプレグがFW成形された外側の層(11〜36層)には、液状の樹脂が含浸された繊維束32がFW成形される(S14)。この方式は、プリプレグを用いる方式と区別して、WET方式と呼ばれることがある。具体的には、繊維束32は、液状の含浸バスに浸されてエポキシ樹脂が含浸された後に、半硬化処理を行われることなく、高圧タンク10の周囲に巻回される。WET方式において使用する繊維束32の成分、本数、大きさや、含浸させる樹脂の成分、温度などは、プリプレグによる方式と同じようにすることも可能であるし、異ならせてもよい。
【0030】
36層までFW成形が終了すると、CFRP層14のエポキシ樹脂を硬化させるため、高圧タンク10は加熱処理される(S16)。その後、高圧タンク10の表面に対して、保護層としてのガラス層を形成する処理が行われる(S18)。
【0031】
図5は、このようにして製造された高圧タンク10のCFRP層14における繊維体積含有率Vfについて模式的に説明する図である。図5においては、横軸はVfを表し、縦軸はCFRP層14の層を表している。そして、図5(a)は、参考として全層に対してWET方式によるFW成形を行った場合を示しており、図5(b)は、1〜10層にプリプレグを用い、11〜36層にWET方式を採用した場合を示している。
【0032】
図5(a)の例では、内側の層ほどVfの値が大きくなる。これは、巻回する前の繊維束においてはVfの値は一定であるが、巻回にともなう張力を多く受ける内側の層では、樹脂が浸み出して樹脂含浸量が低下する(繊維の比率が高まる)ためである。同様に、図5(b)の例でも、1〜10層と11〜36層の中では、内側の層ほどVfが高くなっている。しかし、図5(b)の例では、11〜36層におけるVfは図5(a)の場合と同様に内層ほど急激に値を高める分布を示しているが、1〜10層におけるVfは内層ほどやや値が大きくなるものの外層に比べれば一定とみなせる分布を示している。これは、プリプレグでは、樹脂の流動性が相対的に小さく、樹脂の浸み出し量が少なくなるためである。しかも、この樹脂の浸み出し量は、外層に対するFW成形の張力の大きさによっては、あまり変化しない。つまり、プリプレグを用いた場合には、巻回時の張力の設定などによらず、巻回前のプリプレグにおける繊維体積含有率Vfに近い値をもつCFRP層14を形成することができる。例えば、図5(b)に示した例では、1〜10層のVfが11層のVfと同程度かやや小さくなるようにプリプレグの樹脂量が設定されている。
【0033】
以上の説明においては、1〜10層までをプリプレグでFW成形し、11〜36層までをWETでFW成形する例について説明した。しかし、プリプレグによるFW成形を何層にするかは様々に設定可能であり、一例としては、1〜4層をプリプレグ、5〜36層をWETでFW成形する態様を挙げることができる。また、樹脂の硬化の度合いを複数段階に設定した巻回を行うことも可能である。一例としては、1〜4層には相対的に最も硬化が進行した樹脂を含む繊維束を使用し、5〜10層には硬化の進行が中程度の樹脂を含む繊維束を使用し、11〜36層には硬化が最も進行していない樹脂(例えば、全く硬化させていない樹脂)を含む繊維束を使用する態様を挙げることができる。さらには、WETからプリプレグへと、連続的に変化させることも可能である。例えば、液状の樹脂が含浸された繊維束に対する加熱の度合いを徐々に緩めることで、プリプレグからWETへと連続的に変化するFW成形を行うことができる。具体的な設定は、例えば、内側の層において必要となる疲労耐久性能を満足し、かつ、必要強度を与えるCFRP層14が所定の厚さに収まるとの条件の下で、理論的あるいは実験的に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施の形態にかかる高圧タンクの断面図である。
【図2】図1の高圧タンクの側面の断面構造を示す図である。
【図3】高圧タンクの製造手順を例示したフローチャートである。
【図4】高圧タンクの製造過程を説明する模式図である。
【図5】高圧タンクのCFRP層における繊維体積含有率を例示する模式図である。
【符号の説明】
【0035】
10 高圧タンク、12 ライナ、14 CFRP層、16 ガラス層、18,20 口金、24 内層、26 外層、30 回転軸、32 繊維束。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のライナの外周に、複数の繊維からなる第1繊維束と各繊維間に非硬化状態で設けられた熱硬化性樹脂とを含む第1繊維強化複合材を巻回し、第1繊維強化複合材層を積層形成するステップと、
前記第1繊維強化複合材層の外周に、複数の繊維からなる第2繊維束と各繊維間に非硬化状態で設けられた熱硬化性樹脂とを含む第2繊維強化複合材を巻回し、第2繊維強化複合材層を積層形成するステップと、
前記第1繊維強化複合材層及び前記第2繊維強化複合材層が積層形成された後に、加熱により前記熱硬化性樹脂を硬化させるステップと、
を含み、
巻回時においては、前記第1繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂の粘性は、前記第2繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂の粘性に比べて高く設定されていることを特徴とする高圧タンク製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧タンク製造方法において、
巻回時においては、前記第1繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂は、前記第2繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂に比べて硬化が進行した半硬化状態にあり、これにより、前記第1繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂の粘性は、前記第2繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂の粘性に比べて高く設定されていることを特徴とする高圧タンク製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の高圧タンク製造方法において、
前記第2繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂は、前記第1繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂と同じ組成をもち、巻回時には液状に保たれた樹脂であり、これにより、前記第1繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂の粘性が、前記第2繊維強化複合材に設けられた熱硬化性樹脂の粘性に比べて高く設定されていることを特徴とする高圧タンク製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−286297(P2008−286297A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131340(P2007−131340)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】