説明

2−アリールプロピオン酸誘導体の代謝産物及びそれを含有する医薬組成物

2−(R)−4−イソブチルアリールプロピオンアミドの代謝産物、及びこのような化合物を含有する医薬組成物は、インターロイキン8(IL−8)とCXCR1及びCXCR2膜受容体との相互作用によって誘発される好中球(PMN白血球)の走化性活性化の阻害に有用である。本化合物は、該活性化に由来する病状の予防及び治療に用いられる。特に、これらの代謝産物は、シクロオキシゲナーゼ阻害活性を欠いており、乾癬、潰瘍性大腸炎、黒色腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、特発性線維症、糸球体腎炎のような好中球依存性の病状の治療、並びに虚血再灌流障害の予防及び治療に特に有用である。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の簡単な説明
本発明は、2−(R)−アリールプロピオン酸誘導体の新規な活性代謝産物、及びこれを含有する医薬組成物に関するものであり、特に好中球依存性の病状の治療において、多形核細胞及び単核細胞の走化性阻害剤として用いられる。
【0002】
技術水準
特定の血液細胞(マクロファージ、顆粒球、好中球、多形核細胞)は、(ケモカインと呼ばれる物質によって刺激された場合)走化性と呼ばれるプロセスを介して刺激物質の濃度勾配に沿って遊走することにより、化学刺激に応答する。主要な公知の刺激物質又はケモカインは、補体C5aの分解産物、細菌表面の溶解によって生成する一部のN−ホルミルペプチドや合成由来ペプチド、例えばホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(f−MLP)に代表され、主にインターロイキン8(IL−8、CXCL8ともいう)などの各種サイトカインに代表される。インターロイキン8は、線維芽細胞やマクロファージといったほとんどの有核細胞によって産生される内在性の走化性因子である。
【0003】
好中球の動員激化を特徴とするある種の病態では、その部位でのより重篤な組織障害は好中球細胞の浸潤を伴う。近年、虚血再灌流後や肺酸素過剰症に伴う障害の判定において好中球活性化の役割が広く実証された。
【0004】
IL−8の生物活性は、インターロイキンとCXCR1及びCXCR2膜受容体との相互作用によって介在され、これらの膜受容体は7回膜貫通型受容体ファミリーに属し、ヒト好中球及び特定のT細胞の表面に発現している(L.Xuら、J.Leukocyte Biol.、57、335、1995)。CXCR1とCXCR2とを識別できる選択的リガンドが知られており、GRO−αはCXCR2選択的走化性因子の1例である。
【0005】
肺疾患(肺障害、急性呼吸窮迫症候群、喘息、慢性肺炎症、及び嚢胞性線維症)において考えられるIL−8の病原的な役割、具体的にはCXCR2受容体経路を介したCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の病理発生における役割が広く記載されている(D.WP Hay及びH.M.Sarau.、Current Opinion in Pharmacology 2001、1:242−247)。
【0006】
免疫イベント及び感染イベントに応答して、補体系の活性化が、直接的な膜反応を介して、並びに補体C3、C4、及びC5成分の酵素的切断によって生成される、通常アナフィラトキシンとして知られる一連のペプチド断片の放出を介して、炎症反応の増幅を介在する。これらのペプチドには、いずれも77アミノ酸からなるC3a、C4aが含まれる;同様に、C5変換酵素が補体C5成分を切断して74アミノ酸からなる糖タンパク質C5aを生ずる。
【0007】
補体のC5aペプチド断片は、「完全な」炎症促進性メディエータとして定義されている。一方、特定のサイトカイン(例えばIL−8、MCP−1、及びRANTES)などの他の炎症性メディエータは、自己誘引細胞に対して高度に選択的であるが、ヒスタミン及びブラジキニンはただの弱い走化性物質である。
【0008】
虚血再灌流、自己免疫性皮膚炎、膜増殖性特発性糸球体腎炎、気道非反応性及び慢性炎症性疾患、ARDS及びCODP、アルツハイマー病、若年性関節リウマチを含めたいくつかの病態において、説得力のある証拠がC5aのin vivoでの関与を支持している(N.P.Gerard、Ann.Rev.Immunol.、12、755、1994)。
【0009】
局所的補体産生及びアミロイド活性化によって生成されるC5a/C5a−desArgによる神経炎の可能性を、C5aによって直接誘発される星状細胞及びミクログリア細胞の走化性及び活性化とともに鑑みて、補体阻害剤は、アルツハイマー病などの神経疾患の治療が提唱されている(McGeer&McGeer P.L.、Drugs、55、738、1998)。
【0010】
したがって、補体成分の局所合成の制御は、ショックの治療及び拒絶(多臓器不全及び超急性移植片拒絶)の予防において治療可能性が高いと考えられている(Issekutz A.C.ら、Int.J.Immunopharmacol、12、1、1990;Inagi R.ら、Immunol.Lett.、27、49、1991)。つい最近では、補体成分の阻害が、生来の腎及び移植腎の障害の予防に関与することが、慢性間質性及び急性糸球体性の腎障害の発症機序における補体の関与を考慮しつつ報告されている(Sheerin N.S.&Sacks S.H.、Curr.Opinion Nephrol.Hypert.、7、395、1998)。
【0011】
好中球の特徴的な蓄積は、急性及び慢性の病態、例えば乾癬病巣の非常に炎症性で治療的に厄介な領域に生ずる。好中球は、刺激されたケラチノサイトによって放出されるケモカインであるIL−8及びGro−αと、選択的補体経路活性化を介して産生されるC5a/C5a−desArg成分との相乗作用によって走化的に誘引され、活性化される(T.Teruiら、Exp.Dermatol.、9、1、2000)。したがって、多くの場合、C5aによって刺激される細胞の活性化、サイトカイン受容体の調節、及び走化性阻害を単一物質において合わせることは非常に望ましい。
【0012】
近年、本発明者らは、新規クラスの「R−2−アリールプロピオン酸のω−アミノアルキルアミド」を多形核細胞及び単核細胞の走化性阻害剤として記載している(WO02/068377号)。新規クラスには、選択的C5a阻害剤からC5a/IL−8 2重阻害剤までの化合物が含まれる。
【0013】
更に、新規クラスのIL−8生物活性の強力且つ選択的阻害剤(R−2−アリールプロピオン酸アミド及びN−アシルスルホンアミド)を、IL−8によって誘発される好中球の走化性及び脱顆粒の有効な阻害剤として記載している(WO01/58852号;WO00/24710号)。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明者らは、多形核細胞及び単核細胞の走化性阻害剤として、新規クラスの2−(R)−アリールプロピオン酸誘導体を見出した。特に、本発明の化合物は、改善された薬物動態特性及び薬理活性プロファイルを有する、IL−8によって誘発される好中球走化性並びにC5aによって誘発される好中球及び単球の走化性の強力な阻害剤である。
【0015】
したがって、本発明は、式(I):
【0016】
【化1】

【0017】
の2−(R)−アリールプロピオン酸誘導体化合物、及びその医薬的に許容可能な塩を提供するものであり、
式中、
Xは、H、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選択され;
R基は、以下から選択される:
− H、OH、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ;
− ピリジン、ピリミジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドールから選択されるヘテロアリール基;
− 1つの更なるカルボキシ(COOH)基で置換されている、直鎖又は分岐鎖C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−フェニルアルキルで構成されるアミノ酸残基;
− 式−CH−CH−Z−(CH−CHO)R’の残基、ここで、R’はH又はC〜C−アルキルであり、nは0〜2の整数であり、Zは酸素又は硫黄である;
− 式−(CH−NRaRbの残基、ここで、nは0〜5の整数であり、Ra及びRbはそれぞれ、同一でも異なっていてもよく、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニルであるか、あるいはRa及びRbは、それらが結合している窒素原子とともに式(II)の3〜7員複素環を形成する:
【0018】
【化2】

【0019】
式中、Wは、単結合、O、S、N−Rcを表し、RcはH、C〜C−アルキル、又はC〜C−アルキルフェニルであり、nは0〜4の整数である;
− 式SORdの残基、ここで、RdはC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニルである。
【0020】
式(I)の化合物はキラル化合物であり、本発明は(2R,2”R,S)混合物及び単一(2R,2”S)、(2R,2’R)エナンチオマーを提供する。
本発明は、医薬として使用するための式(I)の化合物を更に提供する。具体的には、このような医薬は、多形核細胞及び単核細胞の走化性阻害剤である。
【0021】
R及びXが上で定義した通りの式(III)の化合物は、多形核細胞及び単核細胞の走化性阻害剤の中で特に好ましい化合物として、以前にWO01/58852号;WO00/24710号;及びWO02/068377号に報告されている。
【0022】
【化3】

【0023】
式(III)の化合物の「in vivo」投与が、薬物の代謝的運命の解明に貢献した。チトクロームが介在するイソブチル基の酸化により、鎖の1、2、及び3位上で水酸化した3つの異性体を生ずる;C端位置の完全な酸化により式(I)の化合物をもたらす。
【0024】
検出された全ての代謝産物を実験室規模で個々に合成し、走化性アッセイで試験した。
上記代謝産物の中で、式(I)の化合物のみが多形核細胞及び単核細胞の走化性阻害剤として活性であることを見出した。
【0025】
この発見は、2−(4−イソブチルフェニル)プロピオン酸(イブプロフェン)の対応する代謝産物の生物活性の欠如とは対照的であり、実際、抗炎症活性を欠くことが報告されている(「イブプロフェン 重要な書誌的概説」、KD Rainsford編、シェフィールドハラム大学、1999年、42頁)、(米国病院薬剤師会、AHFS医薬品情報2001年、1918頁)。
【0026】
式(I)の化合物は、式(III)の化合物と比較して、顕著に有利な特徴を共有することが示されている。
本発明の化合物は、IL−8及び/又はC5aによって誘発されるPMN走化性を、式(III)の好ましい化合物のIC50に匹敵するIC50で阻害するが、驚くべきことに、GRO−αによって誘発されるPMN走化性の阻害では式(III)の化合物よりも強力な阻害剤であることが見出された。これは、CXCR2によって介在される経路に対する特異的作用を示している。
【0027】
更に、式(I)の化合物は、治療用途に特に有利な薬物動態プロファイルを有する。実際、式(III)の化合物と比較して、本発明の化合物は、静脈内経路で「in vivo」投与すると、クリアランス時間の低下に関連した、より長いT1/2示す。
【0028】
血漿タンパク質への結合低下に関連したこれらの特徴は、これらの薬物により良い全体的薬理学的プロファイルを与える。
好ましいX基はHであり;
好ましいR基は、以下の通りである:
H、OH、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−カルボキシアルキル;
ピリジン、ピリミジン;
式−CH−CH−O−(CH−CHO)R’の残基、ここで、R’はH又はC〜C−アルキルであり、nは0又は1の整数である;
式−(CH−NRaRbの残基、ここで、nは2又は3の整数であり、より好ましくは3であり、NRaRb基はN,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、1−ピペリジル、4−モルホリル、1−ピロリジル、1−ピペラジニル、1−(4−メチル)ピペラジニルである;
式SORdの残基、ここで、RdはC〜C−アルキルである。
【0029】
式(I)の好ましい化合物は、それらの単一(R)及び(S)エナンチオマーである。
本発明の特に好ましい化合物は、以下の通りである:
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオニルメタンスルホンアミド;
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオンアミド;
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(4”’−ピリジル)プロピオンアミド;
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(2”’−カルボキシメチル)プロピオンアミド;
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(2”’−メトキシエチル)プロピオンアミド;
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−[3”−N’−ピペリジノプロピル]プロピオンアミド;
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−[3”’−N’,N’−ジメチルアミノプロピル]プロピオンアミド、
及びこれらの単一R及びSエナンチオマー。
【0030】
本発明の化合物は、IL−8によって誘発されるヒトPMN走化性の強力且つ選択的な阻害剤である。Rが式−(CH−NRaRbの残基である本発明の化合物は、C5aによって誘発されるPMN走化性とIL−8によって誘発されるPMN走化性との2重阻害剤である。
【0031】
本発明の式(I)の化合物は、通常、有機及び無機の医薬的に許容可能な酸又は塩基との付加塩の形態で単離される。そのような酸の例は、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、クエン酸から選択される。
【0032】
そのような塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、(D,L)−リジン、L−リジン、トロメタミンである。
式(I)の化合物は、パラジウムのような好適な触媒の存在下、対応する式(IV)の2−(4’−アリール)プロピオンアミド誘導体(式中、WはBr又はOSOCFである)を、2−メチルアクリル酸で処理し、式(V)及び(VI)の共役生成物を生ずることにより得られる。
【0033】
【化4】

【0034】
(V)及び(VI)の混合物は、その後、Pd/Cのような好適な触媒の存在下で水素化され、本発明の式(I)の化合物を生ずる。
新規選択的合成経路によれば、Rは上で定義した通りの基であるが、OHでもC〜C−アルコキシでもSORd残基でもない式(I)の化合物は、式(I)のアシルメタンスルホンアミド誘導体(式中、RはSORdである)から出発して、この誘導体を2当量の式NHRの好適なアミンで処理し、得られた塩を約100〜140℃の温度で、好ましくは真空下で単純に加熱することにより得られる。
【0035】
式(I)の本発明の化合物を、IL−8画分及びGRO−α画分及びC5a成分によって誘発される多形核白血球(以後、PMNという)及び単球の走化性に対する阻害能についてin vitroで評価し、対応する式(III)の親4−イソブチル化合物と直接比較した。この目的のため、健常成人ボランティアから採取したヘパリン化ヒト血液からPMNを単離するために、単核球をデキストラン沈降法により除去し(W.J.Mingら、J.Immunol.、138、1469、1987に開示の手順による)、赤血球細胞を低張液により除去した。細胞生存率はトリパンブルーを用いた色素排除法にて算出し、循環多形核細胞の比をDiff Quick染色後の細胞遠心に基づいて推定した。
【0036】
IL−8によって誘発される走化性のアッセイでは、ヒト組換えIL−8(Pepro Tech)を走化性実験の刺激物質として用いた:凍結乾燥タンパク質を、0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する一定量のHBSSに溶解して濃度10−5Mの原液を得、これをHBSSで濃度10−9Mに希釈して走化性アッセイに用いた。
【0037】
GRO−αによって誘発される走化性の阻害は、類似のアッセイで評価した。
C5aによって誘発される走化性アッセイでは、hr−C5a成分及びhrC5a−desArg成分(シグマ)を走化性実験の刺激物質として用い、実験的に同一の結果を得た。凍結乾燥C5aを、0.2%BSAを含有する一定量のHBSSに溶解して濃度10−5Mの原液を得、これをHBSSで濃度10−9Mに希釈して走化性アッセイに用いた。
【0038】
走化性実験では、PMNを本発明の式(I)の化合物とともに5%CO含有雰囲気にて37℃で15分間インキュベートした。
濃度1.5×10PMN/mlでHBSSに再懸濁させたヒト循環多形核球(PMN)についてC5aの走化性活性を評価した。
【0039】
走化性アッセイ(W.Falketら、J.Immunol.Methods、33、239、1980による)では、空隙率5μmのPVP不含フィルターと複製に適したマイクロチャンバーとを用いた。
【0040】
本発明の式(I)の化合物を、10−6〜10−10Mの濃度範囲で評価した;この目的のため、マイクロチャンバーの下部孔及び上部孔に同一濃度でそれらを加えた。本発明の式(I)の化合物によるヒト単球走化性の阻害能の評価は、Van Damme J.ら、(Eur.J.Immunol.、19、2367、1989)に開示の方法にしたがって行った。
【0041】
実施例1の化合物(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオニルメタンスルホンアミドは、例えば、IL−8によって誘発されるPMN遊走を、濃度10−8Mで49±9%、濃度10−6Mで66±8%阻害する。
【0042】
本発明の特に好ましい化合物は、以下の通りである:
(2R)(2”S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオニルメタンスルホンアミド;
(2R)(2”R)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオニルメタンスルホンアミド;
(2R)(2”R)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−[3”’−N’−ピペリジノプロピル]プロピオンアミド;
(2R)(2”S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−[3”’−N’−ピペリジノプロピル]プロピオンアミド。
【0043】
本発明の化合物は、記載の式(III)の2−(4−イソブチルフェニル)プロピオンアミドと比較して、GRO−αによって誘発されるPMN走化性を有効に阻害する付加的な特性を示す;この活性は、CXCR2経路が特異的に関与するか又はCXCR1シグナル伝達とともに関与する、IL−8に関連する病状におけるこれらの化合物の治療用途を可能にする。
【0044】
IL−8及びGRO−αによって誘発される生物活性の2重阻害剤は、目的の治療応用に鑑みて非常に好ましい。
式(I)の化合物を、Patrignaniら、J.Pharmacol.Exper.Ther.、271、1705、1994に開示の手順にしたがい、生体外で全血について評価したところ、シクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害剤として全体的に有効ではないことが見出された。
【0045】
多くの場合、式(I)の化合物は、マウスマクロファージにおいてリポ多糖(LPS、1μg/mL)刺激によって誘発されるPGE産生を10−5〜10−7Mの濃度範囲で妨げない。PGE産生の阻害は、記録されるとしてもほとんど統計的有意差の限界であり、更に基底値の15〜20%未満であることが多い。プロスタグランジン合成の阻害がマクロファージ細胞にとって、好中球の活性化及びサイトカインであるインターロイキン8の産生刺激の重要なメディエータであるTNF−αの合成(LPS又は過酸化水素によって誘導)の増幅刺激となることと同程度に、COの阻害における有効性の低下は、本発明の化合物の治療応用にとって利点となる。
【0046】
CXCR1及びCXCR2の活性化阻害剤は、上で詳述したように、特に、IL−8の2つの受容体の活性化が疾患の発症に重要な病態生理学的役割を果たすと思われる慢性炎症性病状(例えば乾癬)の治療において有用な応用を見出す。
【0047】
実際、CXCR1の活性化は、IL−8が介在するPMN走化性に必須であることが知られている(Hammond Mら、J Immunol、155、1428、1995)。一方、CXCR2の活性化は、IL−8が介在する上皮細胞の増殖及び乾癬患者の血管新生に必須であると思われる(Kulke Rら、J Invest Dermatol、110、90、1998)。
【0048】
更に、CXCR2アンタゴニストは、慢性閉塞性肺疾患COPDのような重要な肺疾患の管理に、特に有用な治療応用が見出されている(D.WP Hay及びH.M.Sarau.、Current Opinion in Pharmacology 2001、1:242−247)。上で議論した実験的証拠、並びに好中球の活性化及び浸潤が関与するプロセスにおいてインターロイキン8(IL−8)及びその同族体が果たす役割に鑑みると、本発明の化合物は、乾癬(R.J.Nicholoffら、Am.J.Pathol.、138、129、1991)、潰瘍性大腸炎のような腸の慢性炎症性病状(Y.R.Mahidaら、Clin.Sci.、82、273、1992)、黒色腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ(M.SeIzら、J.Clin.Invest.、87、463、1981)、特発性線維症(E.J.Miller(先に引用)、及びP.C.Carreら、J.Clin.Invest.、88、1882、1991)、糸球体腎炎(T.Wadaら、J.Exp.Med.、180、1135、1994)などの疾患の治療、並びに虚血再灌流障害の予防及び治療に特に有用である。
【0049】
したがって、本発明の更なる目的は、乾癬、潰瘍性大腸炎、黒色腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、特発性線維症、糸球体腎炎の治療、並びに虚血再灌流障害の予防及び治療に使用するための化合物、そして上記のような疾患を治療するための医薬の製造におけるそのような化合物の使用を提供することである。
【0050】
本発明の化合物の腎クリアランスの低下は、乾癬や潰瘍性大腸炎のような慢性の病的障害の治療にとって重要であり、1日あたりの投与回数を、1日1回の最適な処置にまで減少させる有効な療法を可能にする。更に、血漿タンパク質、主にアルブミンへの薬物の結合低下は、有効用量の減少に関連する。
【0051】
表I及び表IIは、1例として、式(I)の代謝産物と式(III)の対応する親化合物のあいだのT1/2及びタンパク質結合(%)の有意差を示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
本発明の化合物とその好適な担体とを含む医薬組成物も本発明の範囲内である。
本発明の化合物は、従来慣用のアジュバント、担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、実際には医薬組成物やその単位投与量の形態とすることができ、そのような形態では、錠剤若しくは充填カプセルなどの固体、又は液剤、懸濁剤、エマルジョン、エリキシル剤、若しくはこれらを充填したカプセルなどの液体(全て経口用途)として用いることができ、あるいは非経口(皮下を含む)用途に滅菌注射液の形態で用いることもできる。そのような医薬組成物及びその単位剤形は、成分を従来の比率で含むことができ、追加の活性化合物又は成分はあってもなくてもよく、そのような単位剤形は、採用すべき意図する日用量範囲に見合った、好適な有効量の活性成分を含有していればよい。
【0055】
医薬として用いる場合、本発明の化合物は、典型的には医薬組成物の形態で投与される。そのような化合物は、製薬分野に周知の方法で調製することができ、少なくとも1つの活性化合物を含む。通常、本発明の化合物は医薬的に有効な量で投与される。実際に投与される化合物の量は、典型的には、処置すべき病態、選択した投与経路、実際に投与する化合物、個々の患者の年齢、体重、及び応答性、患者の症状の重篤度などを含めた関連する状況に基づいて決定されるであろう。
【0056】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸内、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、及び経鼻を含めたさまざまな経路で投与することができる。意図する送達経路に応じて、化合物を注射用又は経口用組成物に製剤化することが好ましい。経口投与用組成物は、バルク液剤若しくは懸濁剤、又はバルク散剤の形態を採ることができる。しかしながら、より一般的には、当該組成物は、正確な投薬を容易にするため単位剤形で提供される。「単位剤形」という用語は、ヒト被験者や他の哺乳動物に対して単位投与量として好適な物理的に個別の単位を意味し、各単位は、所望の治療効果を生ずるように計算された所定量の活性物質を、好適な医薬用賦形剤と併せて含有する。典型的な単位剤形には、液体組成物の場合には予め分量が決められたプレフィルドアンプルやシリンジが、固体組成物の場合には丸剤、錠剤、カプセルなどが含まれる。そのような組成物では、本発明の酸化合物は通常少量成分であり(約0.1〜約50重量%、好ましくは約1〜約40重量%)、残りは所望の剤形の形成に役立つさまざまなビヒクル又は担体、及び加工助剤である。
【0057】
経口投与に好適な液体剤形には、好適な水性又は非水性ビヒクルを、緩衝剤、懸濁化剤及び分配剤、着色剤、着香剤などとともに含めることができる。以下に記載の注射用組成物を含めた液体剤形は、ヒドロペルオキシドやペルオキシドの形成のような光の触媒作用を避けるために常に遮光して保存される。固体剤形には、例えば、以下の成分又は同様の性質の化合物を含めることができる:微晶性セルロース、トラガカントゴム、又はゼラチンなどの結合剤;デンプン又は乳糖などの賦形剤;アルギン酸、Primogel、又はコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;ショ糖又はサッカリンなどの甘味剤;あるいはペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジフレーバーなどの着香剤。
【0058】
注射用組成物は、典型的には、注射用滅菌生理食塩水若しくはリン酸緩衝生理食塩又は当該技術分野に公知の他の注射用担体を基剤とする。上記のように、そのような組成物における式(I)の酸誘導体は典型的には少量成分であり、多くの場合0.05〜10重量%の範囲であり、残りは注射用担体などである。平均日用量は、疾患の重篤度及び患者の状態(年齢、性別、及び体重)などのさまざまな要因に依存するであろう。用量は、通常、1日あたり、式(I)の化合物1mg又は数mg〜1500mgまでさまざまであり、複数回投与に分けてもよい。本発明の化合物は毒性が低いため、より高用量で長期間にわたって投与することもできる。
【0059】
経口投与用又は注射用組成物についての上記成分は単なる例示である。更なる材料、及び加工技術などは、本明細書に援用される『レミントンの薬学便覧』第18版の第8部、1990年、Mack Publishing Company、イーストン、ペンシルバニア州に記載されている。
【0060】
本発明の化合物は、徐放性形態で又は徐放性薬物送達システムから投与することもできる。代表的徐放性物質についての記述も、上記レミントンの便覧の配合材料の項に見出すことができる。
【0061】
本発明を以下の実施例により説明するが、これらは、発明の範囲を限定するものとしてみなすと解釈されるべきではない。
略語: THF:テトラヒドロフラン;DMF:ジメチルホルムアミド;AcOEt:酢酸エチル。
【実施例】
【0062】
実施例1
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオニルメタンスルホンアミド
(R)2−(4−ブロモフェニル)プロピオン酸(1g、4.4ミリモル)を、無水CHCl(10mL)に溶解した。ジメチルアミノピリジン(0.45g、4.8ミリモル)、メタンスルホンアミド(0.46g、4.8ミリモル)、及びジシクロヘキシルカルボジイミド(0.99g、4.8ミリモル)を加え、反応混合物を4時間撹拌した。溶液を1N HCl(10mL)に注ぎ、有機相を分離させた;水相をジクロロメタン(2×10mL)で抽出した。回収した有機相をNaSOで乾燥させた。NaSOをろ過して除去し、溶媒を真空下で除去して油性残渣を得、これをシリカゲルカラムで精製後、純粋な固体(R)2−(4−ブロモ−フェニル)プロピオニルメタンスルホンアミドを収率70%で得た。(R)2−(4−ブロモ−フェニル)プロピオニルメタンスルホンアミドをトリブチルアミン(2.4mL)に溶解し、トリフェニルホスフィンを加えた。5分後、2−メチル−アクリル酸(0.54g、6.64ミリモル)及びPd(OAc)(8mg、0.033ミリモル)を加え、反応混合物をT=130℃で6時間加熱した。冷却後、有機溶液を1N HClに注ぎ、水相をEtOAc(3×15mL)で抽出した。回収した有機相をNaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させて油性残渣を得、これをクロマトグラフィで精製後、式(V)及び(VI)の2種の対応する不飽和酸の異性体混合物を収率30%で得た。
【0063】
2種の異性体混合物を無水MeOHに溶解し、触媒量のPd/C 10%(50mg)を加えた。混合物を室温で一晩水素化した。触媒をセライトケーク上でろ過して除去後、ろ液を蒸発させ、残渣をクロマトグラフィカラムで精製して、(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオニルメタンスルホンアミドを収率90%で白色固体として得た。
【0064】
H−NMR(DMSO):δ11.95(bs,1H,COOH);11.65(bs,1H,SONHCO);7.18(m,4H);3.70(q,1H,J=7Hz);3.18(s,3H);2.85(m,1H);2.58(m,2H);1.32(d,3H,J=7Hz);1.02(d,3H,J=7Hz).
[α]=−12.1(c=l%,MeOH).
ジアステレオマー混合物(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオニルメタンスルホンアミド(10mg)を、Bondapak C18 125Å 15−20μm(7.8×300mm)カラムを用いたセミ分取HPLCクロマトグラフィ(pH=4.5、リン酸緩衝液/CHCNが90:10から60:40までの濃度勾配、実行時間=50分)により精製し、実施例1a(2mg)及び1b(3mg)の化合物を無色オイルとして得た。
【0065】
実施例1a
(2R)(2”R)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオニルメタンスルホンアミド
H−NMR(DMSO):δ11.95(bs,1H,COOH);11.65(bs,1H,SONHCO);7.18(m,4H);3.70(q,1H,J=7Hz);3.18(s,3H);2.85(m,1H);2.58(d,2H,J=7Hz);1.32(d,3H,J=7Hz);1.02(d,3H,J=7Hz).
実施例1b
(2R)(2”S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオニルメタンスルホンアミド
H−NMR(DMSO):δ11.95(bs,1H,COOH);11.65(bs,1H,SONHCO);7.18(m,4H);3.70(q,1H,J=7Hz);3.18(s,3H);2.85(m,1H);2.60(d,2H,J=7Hz);1.32(d,3H,J=7Hz);1.02(d,3H,J=7Hz).
実施例2
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオンアミド
(R)2−(4−ブロモフェニル)プロピオン酸(1g、4.4ミリモル)を、無水CHCl(10mL)に溶解した。ジメチルアミノピリジン(0.45g、4.8ミリモル)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(0.99g、4.8ミリモル)を加え、アンモニアを反応混合物中に4時間通気させた。溶液を1N HCl(10mL)に注ぎ、有機相を分離させた;水相をジクロロメタン(2×10mL)で抽出した。回収した有機相をNaSOで乾燥させた。NaSOをろ過して除去し、溶媒を真空下で除去して油性残渣を得、これをシリカゲルカラムで精製後、純粋な固体(R)2−(4−ブロモ−フェニル)プロピオンアミドを収率70%で得た。
【0066】
実施例1に記載のものと同一の手順にしたがい、(R)2−(4−ブロモ−フェニル)プロピオンアミド(0.70g、3.1ミリモル)を2−メチル−アクリル酸と反応させ、式(V)及び(VI)の2種の対応する不飽和酸の異性体混合物を収率30%で得た。混合物を室温で一晩水素化した。触媒をセライトケーク上でろ過して除去後、ろ液を蒸発させ、残渣をクロマトグラフィカラムで精製して、(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオンアミドを収率90%で白色固体として得た。
【0067】
H−NMR(CDC1):δ11.90(bs,1H,COOH);7.20(d,2H,J=7Hz);7.10(d,2H,J=7Hz);5.25(bs,2H,CONH);3.58(q,1H,J=7Hz);2.70(m,1H);2.42(m,2H);1.18(d,3H,J=7Hz);0.86(d,3H,J=7Hz).
[α]=−26.1(c=1%,MeOH).
実施例3
(2R)(2”R,S)−[4’−(2”−カルボキシプロピル)フェニル]−N−[3”−N’,N’−ジメチルアミノプロピル]プロピオンアミド
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオニルメタンスルホンアミド(0.59g、1.8ミリモル)をCHClに溶解させた;その後、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアミン(0.37g、3.6ミリモル)を加え、溶液を室温で15分間撹拌した。溶媒を蒸発させ、滑らかな固体残渣をT=120℃にて真空下で一晩加熱した。油性残渣を冷却し、水に溶解させ、強塩基性アンバーライト樹脂を混合物に加えた。水溶液を除去後、樹脂を0.1N HClで洗浄することにより所望の産物を回収した。酸性溶液の凍結乾燥により、(2R)−[4’−(2”−カルボキシプロピル)フェニル]−N−[3”−N’,N’−ジメチルアミノプロピル]プロピオンアミドを得た(0.35g、1.0ミリモル、収率55%)。
【0068】
H−NMR(CDC1):δ11.85(bs,1H,COOH);7.10(s,4H);6.00(bs,1H,CONH);3.75(q,1H,J=7Hz);3.30(m,2H);2.75(m,1H);2.50(m,2H);2.20(m,8H);1.85(m,2H);1.38(d,3H,J=7Hz);0.90(d,3H,J=7Hz).
[α]=−24.4(c=0.5%,MeOH).
実施例4
(2R)(2”R,S)−[4’−(2”−カルボキシプロピル)フェニル]−N−[3”−N’−ピペリジノプロピル]プロピオンアミド
実施例3に記載のものと同一の手順にしたがい、3−N−ピペリジノプロピルアミン(0.5g、3.6ミリモル)を用いて、(2R)−[4’−(2”−カルボキシプロピル)フェニル]−N−[3”−N’−ピペリジノプロピル]プロピオンアミドを得た(0.3g、0.83ミリモル、収率46%)。
【0069】
H−NMR(DMSO):δ11.95(bs,1H,COOH);7.25(d,2H,J=7Hz);7.12(d,2H,J=7Hz);5.85(bs,1H,CONH);3.58(q,1H,J=7Hz);3.08(m,3H);2.60(m,6H);2.57(m,2H);1.55(m,6H);1.50(m,2H);1.30(d,3H,J=7Hz);1.02(d,3H,J=7Hz).
[α]=−30.4(c=0.5%,EtOH).
実施例5
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(4”’−ピリジル)プロピオンアミド
実施例3に記載のものと同一の手順にしたがい、4−アミノピリジン(0.34g、3.6ミリモル)を用いて、(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(4”’−ピリジル)プロピオンアミドを得た(0.38g、1.2ミリモル、収率67%)。
【0070】
H−NMR(CDCl):δ11.95(bs,1H,COOH);8.45(m,2H);7.45(m,4H);7.25(m,2H);3.75(q,1H,J=7Hz);3.68(bs,1H,CONH);2.75(m,1H);2.50(d,2H,J=7Hz);1.60(d,3H,J=7Hz);1.00(d,3H,J=7Hz).
[α]=−14.4(c=0.5%,MeOH).
実施例6
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(2”’−メトキシエチル)プロピオンアミド
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオニルメタンスルホンアミド(0.59g、1.8ミリモル)をCHClに溶解させた;その後、2−メトキシエチルアミン(0.27g、3,6ミリモル)を加え、溶液を室温で15分間撹拌した。溶媒を蒸発させ、滑らかな固体残渣をT=120℃にて真空下で一晩加熱した。油性残渣を冷却し、CHCl(20mL)に溶解させ、ブライン(2×10mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させた。NaSOをろ過して除去し、溶媒を真空下で除去して、(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(2”’−メトキシエチル)プロピオンアミドを油性残渣として得た(0.37g、1.26ミリモル、収率70%)。
【0071】
H−NMR(CDCl):δ11.90(bs,1H,COOH);7.18(d,2H,J=7Hz);7.08(d,2H,J=7Hz);5.85(bs,1H,CONH);3.60(q,1H,J=7Hz);3.45(m,4H);3.30(s,3H);2.70(m,1H);2.45(d,2H,J=7Hz);1.52(d,3H,J=7Hz);0.90(d,3H,J=7Hz).
[α]=−32.4(c=0.5%,EtOH).
実施例7
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(2”’−カルボキシメチル)プロピオンアミド
実施例6に記載のものと同一の手順にしたがい、グリシンメチルエステル(0.32g、3.6ミリモル)を用いて、(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(2”’−カルボキシメチル)プロピオンアミドメチルエステルを油性残渣として得た(0.30g、0.97ミリモル、収率54%)。次に、2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(2”’−カルボキシメチル)プロピオンアミドメチルエステルをジオキサン(7mL)に溶解させ、1N NaOH(1mL)を加えた。溶液を室温で一晩撹拌した。
【0072】
ジオキサンを蒸発させ、水溶液を5%NaHPO緩衝液(10mL)で希釈した。水相をCHCl(3×20mL)で抽出し、回収した有機相をNaSOで乾燥させた。NaSOをろ過して除去し、溶媒を真空下で除去して、(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(2”’−カルボキシメチル)プロピオンアミドを油性残渣として得た(0.23g、0.78ミリモル、収率85%)。
【0073】
H−NMR(CDCl):δ11.85(bs,2H,COOH);7.20(d,2H,J=7Hz);7.10(d,2H,J=7Hz);5.95(bs,1H,CONH);4.00(m,2H);3.60(q,1H,J=7Hz);2.75(m,1H);2.50(m,2H);1.50(d,3H,J=7Hz);0.85(d,3H,J=7Hz).
[α]=−24.0(c=0.5%,EtOH).
表IIIに、実施例1〜7の化合物の化学名及び構造式を報告する。
【0074】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の2−(R)−アリールプロピオン酸誘導体化合物、及びその医薬的に許容可能な塩、
式中、
Xは、H、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選択され;
R基は、以下から選択される:
− H、OH、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ;
− ピリジン、ピリミジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドールから選択されるヘテロアリール基;
− 1つの更なるカルボキシ(COOH)基で置換されている、直鎖又は分岐鎖C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−フェニルアルキルで構成されるアミノ酸残基;
− 式−CH−CH−Z−(CH−CHO)R’の残基、ここで、R’はH又はC〜C−アルキルであり、nは0〜2の整数であり、Zは酸素又は硫黄である;
− 式−(CH−NRaRbの残基、ここで、nは0〜5の整数であり、Ra及びRbはそれぞれ、同一でも異なっていてもよく、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニルであるか、あるいはRa及びRbは、それらが結合している窒素原子とともに式(II)の3〜7員複素環を形成する:
【化2】

式中、Wは、単結合、O、S、N−Rcを表し、RcはH、C〜C−アルキル、又はC〜C−アルキルフェニルであり、nは0〜4の整数である;
− 式SORdの残基、ここで、RdはC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニルである。
【請求項2】
X基はHであり;
R基は、
− H、OH、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−カルボキシアルキル;
− ピリジン、ピリミジン;
− 式−CH−CH−O−(CH−CHO)R’の残基、ここで、R’はH又はC〜C−アルキルであり、nは0又は1の整数である;
− 式−(CH−NRaRbの残基、ここで、nは2又は3の整数であり、より好ましくは3であり、NRaRb基はN,Nジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、1−ピペリジル、4−モルホリル、1−ピロリジル、1−ピペラジニル、1−(4−メチル)ピペラジニルである;
− 式SORdの残基、ここで、RdはC〜C−アルキルである、
から選択される、請求項1に記載の化合物、及びそれらの単一(R)及び(S)エナンチオマー。
【請求項3】
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオニルメタンスルホンアミド;
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]プロピオンアミド;
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(4”’−ピリジル)プロピオンアミド;
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−カルボキシメチルプロピオンアミド;
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−(2”’−メトキシエチル)プロピオンアミド;
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−[3”−N’−ピペリジノプロピル]プロピオンアミド;
(2R)(2”R,S)2−[4’−(2”−カルボキシプロプ−1−イル)フェニル]−N−[3”’−N’,N’−ジメチルアミノプロピル]プロピオンアミド、
から選択される、請求項1又は2に記載の化合物、及びそれらの単一(R)及び(S)エナンチオマー。
【請求項4】
好適な触媒の存在下、対応する式(IV)の2−(4’−アリール)プロピオンアミド誘導体(式中、WはBr又はOSOCFであり、Rは請求項1に定義した通りである)を、2−メチルアクリル酸で処理して式(V)及び(VI)の産物の混合物を得、
【化3】

その後、好適な触媒の存在下で水素化することを含む、請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の式(I)のアシルメタンスルホンアミド誘導体(式中、RはSORdである)を、2当量の式NHRの好適なアミンで処理し、得られた塩を約100〜140℃の温度で加熱することを含む、R基は請求項1に定義した通りであるが、OHでもC〜C−アルコキシでもSORd残基でもない、請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項6】
医薬として使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
多形核細胞及び単核細胞の走化性を阻害するための、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
乾癬、潰瘍性大腸炎、黒色腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、特発性線維症、糸球体腎炎の治療、並びに虚血再灌流障害の予防及び治療のための医薬の製造における、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項9】
請求項1に記載の式(I)の化合物及びその好適な担体を含む医薬組成物。

【公表番号】特表2008−528546(P2008−528546A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552631(P2007−552631)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050407
【国際公開番号】WO2006/079624
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(506102293)ドムペ・ファ.ル.マ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (11)
【Fターム(参考)】