説明

2サイクルエンジンおよび燃料噴射制御方法

【課題】燃料ガスの噴射量が少ない場合であっても、エンジンの安定した燃焼特性を得る。
【解決手段】2サイクルエンジン100は、シリンダ110と、シリンダ内を摺動するピストン112と、シリンダのストローク方向一端部に設けられ、シリンダ内で生じた排気ガスを排気するために開閉される排気ポート116と、シリンダのストローク方向他端部側の内周面に設けられ、ピストンの摺動動作に応じてシリンダ内に活性ガスを吸入する掃気ポート122と、シリンダの内周面に設けられた複数の燃料噴射ポート126と、燃料噴射ポートにおいて燃料ガスを噴射する複数の燃料噴射弁128と、複数の燃料噴射弁における燃焼ガスの噴射タイミングを制御する燃料噴射制御部152とを備え、燃料噴射制御部は、複数の燃料噴射弁に、エンジン負荷に応じてそれぞれ独立した噴射タイミングで燃料ガスを噴射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ内部に燃料を直接噴射するユニフロー型の2サイクルエンジンおよび燃料噴射制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の機関としても用いられる2サイクルエンジン(2ストロークエンジン)は、吸気、圧縮、燃焼、排気といった4つの連続する行程を、シリンダ内部におけるピストン1往復の行程で完了するレシプロエンジンである。例えば、高圧噴射によって燃料油と燃料ガスとを並行して供給するディーゼル型のガスエンジンでは、上死点近傍で燃料ガスおよび燃料を噴射することで、圧縮行程における所望の時点で燃焼ガスを確実に着火させると共に、燃料ガスをシリンダ内で確実に燃焼させて排気系統で燃焼が生じるのを回避している(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような高圧噴射によるガスエンジンでは、圧縮行程でシリンダ内の空気を圧縮し、その高圧の空気に燃料ガスを直接噴射することで燃焼を誘発している。かかる高圧噴射では、掃気ポートおよび排気ポートが閉塞された状態で、燃焼室内に燃料ガスが噴射されるので、燃料ガスの吹き抜けを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3432098号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような高圧噴射によるガスエンジンでは、排気ガスの排気を完了した後に排気ポートを閉塞し、圧縮行程後半で燃料ガスを噴射することで、燃料ガスの着火タイミングを制御することが可能となる。しかし、圧縮行程後半では、燃焼室内圧力が高圧になっているので、燃料ガスを燃焼室内に供給するため、より高い圧力で燃料ガスを噴射しなければならず、そのための高出力の昇圧装置が必要である。
【0006】
そこで、本願発明者は、圧縮行程の初期段階であるシリンダ内の圧力が比較的低い間に、掃気ポートから吸入された酸化作用のある活性ガスに対して、高い圧力をかけずに燃料ガスを直接噴射する低圧噴射の2サイクルエンジンを検討している。かかる低圧噴射の2サイクルエンジンでは、シリンダ内に排気ガスが未だ存在する状態で、掃気ポートから吸入された活性ガスにのみ燃料ガスを噴射する構造とするため、シリンダ内の比較的下方の内周面に燃料噴射弁(燃料噴射ポート)が設けられている。また、シリンダ内に燃料ガスを満遍なく噴射すべく、燃料噴射弁は、シリンダ内略周方向に間隔を空けて複数設けられる。
【0007】
低圧噴射の2サイクルエンジンでは、このような複数の燃料噴射弁から燃料ガスを一度に噴射することによって活性ガスの雰囲気中に燃料ガスを一様に散布し、さらに、活性ガスのスワール流に乗せてシリンダ内で流動させる。しかし、船舶等に用いられる大型の2サイクルエンジンでは、シリンダも大きく、掃気ポートから吸入された活性ガスに対して燃料ガスの比率が低くなる。このとき、エンジン負荷の低下に伴って燃料ガスの噴射量が少なくなるように制御されると、一様に散布された燃料ガスの濃度が可燃限界を下回り、所望する燃焼特性を得られないおそれがある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、燃料ガスの噴射量が少ない場合であっても、エンジンの安定した燃焼特性を得ることが可能な、2サイクルエンジンおよび燃料噴射制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の2サイクルエンジンは、シリンダと、シリンダ内を摺動するピストンと、シリンダのストローク方向一端部に設けられ、シリンダ内で生じた排気ガスを排気するために開閉される排気ポートと、シリンダのストローク方向他端部側の内周面に設けられ、ピストンの摺動動作に応じてシリンダ内に活性ガスを吸入する掃気ポートと、シリンダの内周面に設けられた複数の燃料噴射ポートと、燃料噴射ポートにおいて燃料ガスを噴射する複数の燃料噴射弁と、複数の燃料噴射弁における燃焼ガスの噴射タイミングを制御する燃料噴射制御部とを備え、燃料噴射制御部は、複数の燃料噴射弁に、エンジン負荷に応じてそれぞれ独立した噴射タイミングで燃料ガスを噴射させることを特徴とする。
【0010】
複数の燃料噴射ポートは、活性ガスがシリンダ内を流動する方向に配列され、燃料噴射制御部は、複数の燃料噴射ポート間の距離と活性ガスの流速に基づいて定まる時間間隔を空けて、複数の燃料噴射弁に燃料ガスを順次噴射させてもよい。
【0011】
燃料噴射制御部は、複数の燃料噴射弁のうち、燃料噴射弁とシリンダ内周の中心との結線がシリンダ内周の中心角を等分する位置にある複数の燃料噴射弁が同タイミングで燃料ガスを噴射するように制御してもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、シリンダと、シリンダ内を摺動するピストンと、シリンダのストローク方向一端部に設けられ、シリンダ内で生じた排気ガスを排気するために開閉される排気ポートと、シリンダのストローク方向他端部側の内周面に設けられ、ピストンの摺動動作に応じてシリンダ内に活性ガスを吸入する掃気ポートと、シリンダの内周面に設けられた複数の燃料噴射ポートと、燃料噴射ポートにおいて燃料ガスを噴射する複数の燃料噴射弁とを備えた2サイクルエンジンにおいて燃料ガスの噴射を制御する、本発明の燃料噴射制御方法は、複数の燃料噴射ポート間の距離と活性ガスの流速に基づいて定まる時間間隔を空けて、複数の燃料噴射弁に燃料ガスを順次噴射させることを特徴とする。
【0013】
エンジン負荷を検出し、エンジン負荷が予め定められた閾値以上であれば、複数の燃料噴射弁に、エンジン負荷に応じた噴射量の燃料ガスを同タイミングで噴射させ、エンジン負荷が閾値未満であれば、複数の燃料噴射ポート間の距離と活性ガスの流速に基づいて定まる時間間隔を空けて、複数の燃料噴射弁に、エンジン負荷に応じた噴射量の燃料ガスを順次噴射させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の2サイクルエンジンによれば、燃料ガスの噴射量が少ない場合であっても、エンジンの安定した燃焼特性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】2サイクルエンジンの全体構成を示した説明図である。
【図2】2サイクルエンジンの各制御部の動作を説明するための説明図である。
【図3】燃料噴射弁の配置例を示した説明図である。
【図4】燃料噴射制御部の噴射タイミングの制御例を示した説明図である。
【図5】燃料噴射ポートの配置例を示した説明図である。
【図6】燃料噴射弁の燃料ガスの噴射タイミングを例示したタイミングチャートである。
【図7】燃料噴射弁の燃料ガスの噴射タイミングを例示したタイミングチャートである。
【図8】燃料噴射弁の燃料ガスの噴射タイミングを例示したタイミングチャートである。
【図9】燃料噴射弁の燃料ガスの噴射タイミングを例示したタイミングチャートである。
【図10】エンジン負荷と燃料噴射弁の噴射期間との対応関係を示した説明図である。
【図11】燃料噴射弁の燃料ガスの噴射タイミングを例示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
(2サイクルエンジン100)
図1は、2サイクルエンジン100の全体構成を示した説明図である。本実施形態の2サイクルエンジン100は、ユニフロー型で形成され、例えば、船舶等に用いられる。具体的に、2サイクルエンジン100は、シリンダ110(シリンダヘッド110a、シリンダブロック110b)と、ピストン112と、パイロット噴射弁114と、排気ポート116と、排気弁駆動装置118と、排気弁120と、掃気ポート122と、掃気室124と、燃料噴射ポート126と、燃料噴射弁128と、ロータリエンコーダ130とを含んで構成され、ガバナー(調速機)150、燃料噴射制御部152、排気制御部154等の制御部によって制御される。
【0018】
2サイクルエンジン100では、吸気、圧縮、燃焼、排気といった4つの連続する行程を通じて、不図示のクロスヘッドに連結されたピストン112がシリンダ110内を摺動自在に往復移動する。このようなクロスヘッド型のピストン112では、シリンダ110内でのストロークを比較的長く形成することができ、ピストン112に作用する側圧をクロスヘッドに受けさせることが可能なので、2サイクルエンジン100の高出力化を図ることができる。さらに、シリンダ110とクロスヘッドが収まる不図示のクランク室とが隔離されるので、低質燃料油を用いる場合においても汚損劣化を防止することができる。
【0019】
パイロット噴射弁114は、シリンダ110のストローク方向一端部である、ピストン112の上死点より上方のシリンダヘッド110aに設けられ、エンジンサイクルにおける所望の時点で適量の燃料油を噴射する。かかる燃料油は、シリンダヘッド110aと、シリンダブロック110bにおけるシリンダライナと、ピストン112とに包囲された燃焼室140の熱で自然着火し、僅かな時間で燃焼して、燃焼室140の温度を極めて高くするので燃焼ガスを含む予混合気を所望のタイミングで確実に燃焼することができる。
【0020】
排気ポート116は、シリンダ110のストローク方向一端部である、ピストン112の上死点より上方のシリンダヘッド110aの頂部に設けられた開口部であり、シリンダ110内で生じた燃焼後の排気ガスを排気するために開閉される。排気弁駆動装置118は、所定のタイミングで排気弁120を上下に摺動させ、排気ポート116を開閉する。このようにして排気ポート116を介して排気された排気ガスは、例えば、不図示の過給機のタービン側に供給された後、外部に排気される。
【0021】
掃気ポート122は、シリンダブロック110bのストローク方向の、排気ポート116の設けられた一端部に対する他端部側の内周面に設けられた開口部であり、ピストン112の摺動動作に応じてシリンダ110内に活性ガスを吸入する。かかる活性ガスは、酸素、オゾン等の酸化剤、または、その混合気(例えば空気)を含む。掃気室124には、不図示の過給機のコンプレッサによって加圧された活性ガス(例えば空気)が封入されており、掃気室124とシリンダ110内の差圧をもって掃気ポート122から活性ガスが吸入される。掃気室124の圧力は、ほぼ一定とすることができるが、掃気室124の圧力が変化する場合には、掃気ポート122に圧力計を設け、その計測値に応じて燃料ガスの噴射量等、他のパラメータを制御してもよい。
【0022】
燃料噴射ポート126は、シリンダ110内周面の中腹部(排気ポート116と掃気ポート122との間)において、略周方向(厳密な周方向のみならず、ストローク方向への変位を許容する)に所定の間隔を空けて設けられた複数の開口部である。燃料噴射弁128は、燃料噴射ポート126内に配置され、燃料噴射制御部152からの指令を受けて、例えば、LNG(液化天然ガス)をガス化した燃料ガスを噴射する。こうしてシリンダ110内に燃料ガスが供給される。また、燃料ガスは、LNGに限らず、例えば、LPG(液化石油ガス)、軽油、重油等をガス化したものを適用することもできる。ロータリエンコーダ130は、不図示のクランク機構に設けられ、クランクの角度信号(以下、クランク角度信号と言う。)を検出する。
【0023】
ガバナー150は、上位の制御装置から入力されたエンジン出力指令値と、ロータリエンコーダ130からのクランク角度信号によるエンジン回転数に基づいて、燃料噴射量を導出し、燃料噴射制御部152に出力する。燃料噴射制御部152は、ガバナー150から入力された燃料噴射量を示す情報と、ロータリエンコーダ130からのクランク角度信号に基づいて、燃料噴射弁128における燃料ガスの噴射量および噴射タイミングを制御する。
【0024】
排気制御部154は、燃料噴射制御部152からの排気弁開閉タイミング信号と、ロータリエンコーダ130からのクランク角度信号に基づいて、排気弁駆動装置118に排気弁操作信号を出力する。以下、上述した2サイクルエンジン100のエンジンサイクルにおける各制御部の動作について説明する。
【0025】
(エンジンサイクルにおける各制御部の動作)
図2は、2サイクルエンジン100の各制御部の動作を説明するための説明図である。特に図2(a)〜(f)は2サイクルエンジン100の縦断面図を、図2(g)は図2(a)〜(f)の状態の時間関係を示すためのタイミングチャートを示している。図2では、2サイクルエンジン100における4つの行程を排気、吸気、圧縮、燃焼の順で説明する。ここでは、2サイクルエンジン100に設けられた複数の燃料噴射弁128の上記4つの行程における燃料ガス174の全体的な噴射タイミングについて言及し、本実施形態で特徴的な複数の燃料噴射弁128の個々の燃料ガス174の噴射タイミングについては、後ほど詳述する。
【0026】
燃焼行程後の排気行程では、図2(a)の如く、排気ポート116および掃気ポート122が閉塞状態にあり、シリンダ110内は排気ガス170で満たされている。燃焼圧によってピストン112が下降し下死点に近づくと、排気制御部154は排気弁駆動装置118を通じて排気弁120を開放し、また、ピストン112の摺動動作に応じて掃気ポート122が開口する。すると、図2(b)に示すように、掃気ポート122から活性ガス172が吸入され、活性ガスは、燃料ガスの混合を促進するためのスワール186を形成しながら上昇し、シリンダ110内の排気ガス170を排気ポート116から押し出す。
【0027】
活性ガス172の吸入に伴う排気ガス170と活性ガス172との境界が、図2(b)の如く、燃料噴射ポート126に達すると、燃料噴射制御部152は、複数の燃料噴射弁128に燃料ガス174の噴射を開始させる。この時、排気ポート116および掃気ポート122は開放されており、シリンダ110内の圧力はまだ低い状態であるため、燃料噴射弁128に高い圧力をかけなくとも(低圧でも)、燃料噴射弁128は、適切に燃料ガスを噴射することができる。このため、高出力の昇圧装置を設ける必要がない。
【0028】
ただし、燃料ガスの噴射タイミングが早すぎると、シリンダ110の燃焼室に残存する高温の排気ガス170に燃料ガス174が接触し、排気ガス170の熱が燃料ガス174に伝わり過早着火が生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、図2(b)に示すように、燃料噴射制御部152は、掃気ポート122からの活性ガス172が燃料噴射ポート126に達した後、さらに所定時間が経過するのを待って燃料ガス174を噴射する。すると、図2(c)のように、燃料ガス174と活性ガス172とを混合した予混合気176と、排気ガス170との間に、燃料ガス174が混合されていない活性ガス172を主成分とする狭入層178が生成される。
【0029】
このように排気ガス170と予混合気176との間に狭入層178が生成されると、高温の排気ガス170と予混合気176とを接触させることなく、排気ガス170を排気ポート116から排出することができる。ここでは、狭入層178がある程度の厚みを有しているので、排気ガス170と狭入層178との境界面に揺らぎが生じた場合であっても、予混合気176が高温になることを回避することが可能となる。
【0030】
そして、排気ガス170の排出が完了すると排気弁駆動装置118は、図2(d)の如く、排気弁120を閉じ、圧縮行程に転じたピストン112によって掃気ポート122も塞がれる。ここでは、狭入層178の一部が排気ポート116から排出された時点で排気弁120を閉じることで、狭入層178に混入してきた排気ガス170をシリンダ110内に残すことなく排出でき、また、予混合気176を排気ポート116から排出することなく、シリンダ110内に適切に予混合気176を残すことができる。こうして、過早着火を予防し、エンジン駆動の安定化を図ることができる。
【0031】
ここで、シリンダ110内における活性ガス172の上昇速度は、掃気ポート122の形状やシリンダ110内周と成す角度、掃気室124の圧力等に基づいて決まり、また、上昇速度の変化は、排気ポート116の開放度(リフト量)と掃気ポート122の開放度(開口面積)の少なくともいずれか一方に基づいて推定できる。これらはクランク角度信号から一意に求めることができるので、燃料噴射制御部152は、クランク角度信号から燃料ガスの噴射タイミングを設定する。
【0032】
燃料噴射制御部152は、燃料噴射弁128を通じて燃料ガス174を噴射し続け、図2(e)で示したように、ピストン112が燃料噴射ポート126に達する前に、燃料ガスの噴射を停止する。このように、燃料噴射制御部152による燃料ガスの噴射が一通り完了した後、さらなる圧縮行程を経て予混合気176は高圧に圧縮され、さらに、パイロット噴射弁114からの燃料油の噴射に基づいて予混合気176が着火されて、図2(f)のような燃焼行程が行われる。そして、燃焼行程によりピストン112が押し下げられると図2(a)の状態に戻り、以後、排気、吸気、圧縮、燃焼の4行程を繰り返す。
【0033】
このように、本実施形態の2サイクルエンジン100では、シリンダ110内周面の中腹部に燃料噴射弁128が設けられるため、シリンダ110内に排気ガスが未だ存在する状態で、掃気ポート122から吸入された活性ガス172にのみ燃料ガス174を供給することが可能となり、ひいては低圧噴射によるエンジンの運転が可能となる。ただし、船舶等に用いられる大型の2サイクルエンジン100では、シリンダ110も大きいので、シリンダ110内に燃料ガス174を満遍なく噴射すべく、燃料噴射弁128は、シリンダ110内略周方向に間隔を空けて複数設けられている。
【0034】
図3は、燃料噴射弁128の配置例を示した説明図である。図3の例では、シリンダ110(シリンダブロック110b)内略周方向に所定の間隔(ここでは等間隔)を空けて8つの燃料噴射弁128が設けられているとする。エンジン負荷が高い間、シリンダ110内に燃料ガス174を満遍なく噴射すべく、燃料噴射制御部152は、8つの燃料噴射弁128(図3中、128a〜128hで示す。)に燃料ガス174を一度に噴射させ、活性ガス172の雰囲気中に燃料ガス174を一様に散布する。シリンダ110内では、活性ガス172によるスワール流が形成されているので、燃料ガス174は活性ガス172と混合された後、シリンダ110内をスワール流に乗って流動する。
【0035】
しかし、このような船舶等に用いられる大型の2サイクルエンジン100では、掃気ポートから吸入された活性ガスに対して燃料ガスの比率が低くなる。かかる状況下において、エンジン負荷が低下した場合、そのエンジン負荷の低下に伴い、燃料噴射制御部152が燃料ガス174の噴射量を各燃料噴射弁128に対して一律に少なくなるように制御すると、濃度分布が一様となった燃料ガス174の濃度が可燃限界を下回り、所望する燃焼特性を得られないおそれがある。
【0036】
そこで、燃料噴射制御部152は、エンジン負荷が低下して、予混合気176における燃料ガス174の濃度が可燃限界を下回りそうになると、上記の8つの燃料噴射弁128の燃料ガス174の噴射タイミングを制御し、予混合気176中に、燃料ガス174の濃度が可燃限界以上に維持された高濃度領域を生成することを目的とする。この場合、予混合気176中の燃料ガス174の濃度は均一にはならず、局所的に濃度の高い(可燃限界以上となる)領域(高濃度領域)と濃度の低い領域(低濃度領域)が形成され、濃度分布が偏ることとなる。
【0037】
一度、高濃度領域が形成されると、その後のスワール等の影響を受けても、濃度分布の偏りは、ある程度維持されるため、燃焼行程の際には、予混合気176の高濃度領域が確実に着火されて、安定した燃焼特性を得ることができる。
【0038】
しかし、噴射された燃料ガス174がシリンダ110内で拡散することや、スワール流が形成されていることを踏まえると、上記の高濃度領域の形成は容易ではない。本実施形態の燃料噴射制御部152は、以下のように、燃料ガス174の高濃度領域を形成する。
【0039】
図4は、燃料噴射制御部152の噴射タイミングの制御例を示した説明図である。図4(a)および図4(b)は、説明の便宜上、シリンダ110(シリンダブロック110b)の一部を示しており、複数の燃料噴射弁128のうち、シリンダ110内周面の図面奥行き側に設けられた2つの燃料噴射弁128a、128bのみについて説明している。また、図4(c)は、燃料噴射制御部152による燃料噴射弁128a、128bの噴射タイミングを示している。
【0040】
図4を用いて説明する構成では、燃料噴射弁128a、128bの開口部である2つの燃料噴射ポート126は、活性ガス172がシリンダ110内を流動するスワール186の方向に配列されている。
【0041】
ここで、2つの燃料噴射ポート126の相対位置は、厳密な周方向に配列されておらず、スワール流が旋回しながら上昇する分、シリンダ110ストローク方向にも変位している。ただし、スワール186の周方向の流速を比較的速くすれば、スワール186のストローク方向の上昇を無視できるので、燃料噴射ポート126を厳密に周方向に配列したとしても本実施形態の目的を達成することができる。スワール186の流動方向や流速は、上述したように掃気ポート122の形状やシリンダ110内周と成す角度、掃気室124の圧力等によって決まる。
【0042】
燃料噴射制御部152は、2つの燃料噴射ポート126間の距離と活性ガス172(スワール186)の流速に基づいて定まる時間間隔(ここでは第1時間)を空けて、2つの燃料噴射弁128に燃料ガス174を順次噴射させる。
【0043】
例えば、船舶等に用いられる大型の2サイクルエンジン100では、掃気ポート122から吸入された活性ガス172が、図4(a)に示すように、スワール186を形成している。燃料噴射制御部152は、燃料噴射弁128aに、活性ガス172と燃料ガス174とを混合すべく、図4(c)における(a)の期間で、燃料ガス174を噴射させる。そうすると、噴射された燃料ガス174は、図4(a)に示したスワール186に従って矢印の方向に流動する。
【0044】
そして、図4(c)に示すように、燃料噴射制御部152は、燃料噴射弁128aが燃料ガス174を噴射してから、予め求めておいた第1時間後に燃料噴射弁128bに燃料ガス174を噴射させる。そうすると、図4(b)の如く、燃料噴射弁128bから噴射された燃料ガス174は、燃料噴射弁128aから噴射された燃料ガス174に混合され、燃料ガス174の濃度が高くなる領域同士が重なることとなる。ここで、燃料噴射弁128aや燃料噴射弁128bの燃料ガス174の噴射期間は燃料ガス174の必要量に応じて任意に決めることができる。
【0045】
このように、燃料噴射制御部152が、複数の燃料噴射弁128に、スワール186の流動に合わせ、同一の領域に重ねて燃料ガス174を噴射させる構成により、燃焼室140内の予混合気176において、燃料ガス174の濃度分布を偏らせることができ、少なくとも可燃限界以上の濃度を有する高濃度領域を形成することが可能となる。以下、燃料噴射ポート126の配置と、燃料噴射制御部152による燃料噴射弁128の制御を具体的に述べる。
【0046】
図5は、燃料噴射ポート126の配置例を示した説明図である。ここでは、シリンダ110内略周方向に8つの燃料噴射ポート126が設けられ、その燃料噴射ポート126内にはそれぞれ燃料噴射弁128が設けられている。かかる8つの燃料噴射ポート126は、図3で示したように、燃料噴射ポート126とシリンダ110断面内周の中心との結線がシリンダ110断面内周の中心角を8つに等分するように配置され、即ち、隣接する燃料噴射ポート126間が中心角45°分離隔して配置され、また、スワール186の流動方向に配列されている。ここでは、説明の便宜上、スワール186の上流から下流への方向に従って燃料噴射弁128a、128b、128c、128d、128e、128f、128g、128hとしている。
【0047】
そして、燃料噴射制御部152は、8つの燃料噴射ポート126間の距離と活性ガス172の流速に基づいて定まる時間間隔を空けて、8つの燃料噴射弁128に燃料ガス174を順次噴射させる。
【0048】
図6〜図9は、図5のように配置された燃料噴射弁128の燃料ガス174の噴射タイミングを例示したタイミングチャートである。図6では、スワール186がシリンダ110内を周方向に1周旋回する1旋回周期に燃料噴射弁128が1回ずつ燃料ガス174を噴射する例を示している。ここでは、燃料噴射弁128それぞれの燃料ガス174の噴射期間は、1旋回周期を8等分した時間、即ち1/8旋回周期に相当する時間と短いが、図4を用いて説明したように、燃料噴射弁128aから噴射された燃料ガス174は、スワール186に乗って流動し、下流に位置する各燃料噴射弁128の近傍に位置した際、さらに各燃料噴射弁128から噴射された燃料ガス174が次々と加わるので、その濃度が高くなり、局所的に高濃度領域が生成されることとなる。
【0049】
また、ここでは、8つの燃料噴射弁128がそれぞれ1/8旋回周期分、燃料ガス174を継続して噴射する例を挙げているが、噴射時間を短くしたり、間欠的に噴射したり、噴射の開始や終了タイミングをずらして噴射してもよい。
【0050】
このような高濃度領域の量(数)は、各燃料噴射弁128から1旋回周期中に燃料ガス174を噴射する期間によって調整することができる。例えば、図6では、各燃料噴射弁128が1旋回周期のうち、1/8旋回周期ずつ燃料ガス174を噴射しているが、これを、図7(a)に示すように、2/8旋回周期とすることで、単位時間当たりに、図6で生成される高濃度領域の2倍の大きさの高濃度領域が生成され、また、図7(b)に示すように、4/8旋回周期とすることで、単位時間当たりに、図6で生成される高濃度領域の4倍の大きさの高濃度領域が生成される。
【0051】
ただし、各燃料噴射弁128において、図7に示したように、2/8旋回周期や4/8旋回周期分連続して燃料ガス174を噴射すると、例えば、高濃度領域がシリンダ110周方向の一部に偏ることとなり、周方向のシリンダ110断面において濃度分布が均一ではなくなる。特に、ここでは、8つの燃料噴射弁128が旋回周期単位で周期的に燃料ガス174を噴射しているため、複数の旋回周期で生成される複数の高濃度領域は、ストローク方向に均等な間隔(1旋回周期におけるスワール186の上昇分)を空けて生じるものの、周方向のシリンダ110断面において同じ位置に偏ることとなる。
【0052】
そこで、燃料噴射制御部152は、8つの燃料噴射弁128のうち、燃料噴射弁128とシリンダ110内周の中心との結線がシリンダ110内周の中心角を等分する位置にある複数の燃料噴射弁128、例えば、周方向に対向する2つの燃料噴射弁128や周方向のシリンダ110断面内周の中心角を4つに等分する(90°分離隔した)4つの燃料噴射弁128が同タイミングで燃料ガス174を噴射するように制御する。
【0053】
例えば、燃料噴射制御部152は、図8(a)に示すように、各燃料噴射弁128が1旋回周期のうち合計して2/8旋回周期の期間、燃料ガス174を噴射するように制御すると共に、周方向に対向する2つの燃料噴射弁128(例えば、燃料噴射弁128aと燃料噴射弁128e)が同タイミングで燃料ガス174を噴射するように制御する。このような構成により、単位時間当たりに、図6で生成される高濃度領域の2倍の大きさの高濃度領域が生成されると共に、周方向のシリンダ110断面においても濃度分布のバランスをとることができ、濃度の重心がシリンダ110の中心軸となるので、エンジンの安定した燃焼特性を得ることができる。
【0054】
また、燃料噴射制御部152は、図8(b)に示すように、各燃料噴射弁128が1旋回周期のうち合計して4/8旋回周期の期間、燃料ガス174を噴射するように制御すると共に、周方向に対向する周方向のシリンダ110断面内周の中心角を4つに等分する燃料噴射弁128(例えば、燃料噴射弁128aと燃料噴射弁128cと燃料噴射弁128eと燃料噴射弁128g)が同タイミングで燃料ガス174を噴射するように制御する。このような構成により、単位時間当たりに、図6で生成される高濃度領域の4倍の大きさの高濃度領域が生成されると共に、図8(a)の場合と同様、周方向のシリンダ110断面においても濃度分布のバランスをとることができ、エンジンの安定した燃焼特性を得ることができる。
【0055】
また、各燃料噴射弁128の噴射期間が1旋回周期のうち合計して6/8旋回周期である等、シリンダ110内周の中心角を等分することができない場合であっても、図9(a)に示すように、6/8旋回周期を連続させることなく、3/8旋回周期分の噴射を等間隔で繰り返すことで、図8に示した場合同様に、周方向のシリンダ110断面においても濃度分布のバランスをとることができる。ただし、各燃料噴射弁128の噴射期間が1旋回周期のうち合計して7/8旋回周期である等、シリンダ110内周の中心角を等分することができない場合には、図9(b)のように、アンバランスになってしまうが、高濃度領域がシリンダ110周方向の一方向に偏るものではないため、即ち、周方向のシリンダ110断面において、高濃度領域の占有率が対向する半周面で最大4:3の差しか生じないため、エンジンの燃焼特性にさほどの影響を与えない。
【0056】
続いて、上述した燃料噴射弁128の噴射タイミングとエンジン負荷との関係を説明する。図10は、エンジン負荷と燃料噴射弁128の噴射期間との対応関係を示した説明図である。ここでは、まず、エンジン負荷が検出され、エンジン負荷が、予め定められた閾値、例えば20%以上である場合、燃料噴射制御部152は、燃料噴射弁128における1サイクルの燃料ガス174の噴射総量をエンジン負荷に応じてリニアに変化させ、各燃料噴射弁128に、噴射総量を燃料噴射弁128の総数(ここでは8)で按分した燃料ガス174を同タイミングで噴射させる。ここで、燃料ガス174の噴射総量は単位時間の噴射量と噴射期間の積で表されるが、単位時間の噴射量は、燃料噴射弁128の噴射圧とシリンダ110内の圧力の差圧で決まるので、ここでは、図10に示すように噴射総量を噴射期間で調整する。また、図10では、説明の便宜のため、エンジン負荷と噴射期間との関係を一次曲線で示しているが、実際は、他の様々なパラメータを含む複数次の曲線で示される。
【0057】
エンジン負荷が高い場合には、燃料噴射制御部152は、図5に示す8つの燃料噴射弁128を同タイミングかつ連続的に噴射し、その噴射期間は、図10に示すように、エンジン負荷に応じて変更される。したがって、エンジン負荷が低下すると、それに伴って噴射期間も短くなる。しかし、エンジン負荷が閾値(ここでは20%)を下回った場合においてまで、燃料ガス174の噴射期間を8つの燃料噴射弁128で一律に短くすると、上述したように、濃度分布が一様となった燃料ガス174の濃度が可燃限界を下回り、所望する燃焼特性を得られないおそれがある。そこで、エンジン負荷が20%を下回ると、燃料噴射制御部152は、図6〜図9を用いて説明したように、所定の時間間隔を空けて燃料ガス174を順次噴射することとし、任意の時点で噴射する燃料噴射弁128の数をエンジン負荷に応じて段階的に調整する。
【0058】
例えば、エンジン負荷が17.5%〜20%の間、燃料噴射制御部152は、図9(b)に示したように、1旋回周期のうち各燃料噴射弁128の噴射期間の合計が7/8旋回周期となるように制御するので、任意の時点で噴射する燃料噴射弁128の数は7つとなる。そして、エンジン負荷が2.5%下がる毎に、燃料噴射制御部152は、1旋回周期のうち各燃料噴射弁128の噴射期間の合計を1/8旋回周期ずつ段階的に下げることで、任意の時点で噴射する燃料噴射弁128の数を段階的に下げる。
【0059】
例えば、燃料噴射制御部152は、エンジン負荷が15.0%〜17.5%の間、図9(a)に示したように、1旋回周期のうち各燃料噴射弁128の噴射期間の合計が6/8旋回周期となるように制御し、エンジン負荷が10%〜12.5%の間、図8(b)に示したように、1旋回周期のうち各燃料噴射弁128の噴射期間の合計が4/8旋回周期となるように制御し、エンジン負荷が5.0%〜7.5%の間、図8(a)に示したように、1旋回周期のうち各燃料噴射弁128の噴射期間の合計が2/8旋回周期となるように制御し、エンジン負荷が2.5%〜5.0%の間、図6に示したように、1旋回周期のうち各燃料噴射弁128の噴射期間の合計が1/8旋回周期となるように制御する。
【0060】
このように、燃料噴射制御部152が、複数の燃料噴射弁128に、スワール186の流動による同一の領域に燃料ガス174を重ねて噴射させることで、全燃料噴射弁128から噴射する燃料ガス174の総量は少なくなるものの、少なくとも可燃限界以上の濃度を有する高濃度領域を形成することが可能となるので、エンジンの安定した燃焼特性を得ることができる。
【0061】
ここでは、説明の便宜のため、燃料噴射制御部152の制御が切り換わるエンジン負荷を20%としたが、かかる%に限られず、2サイクルエンジン100の構成や燃料噴射弁128の数や配置に応じて任意の%とすることができるのは言うまでもない。
【0062】
以上、説明した2サイクルエンジン100では、局所的な燃料ガス174の高濃度領域を生成することができるので、エンジン負荷が低い等、燃料ガス174の噴射量が少ない場合であっても、エンジンの安定した燃焼特性を得ることが可能となる。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0064】
例えば、上述した実施形態において、図7(a)に示したように、燃料噴射制御部152は、複数の燃料噴射弁128に、それぞれ異なるタイミングで制御しているが、かかる場合に限らず、例えば、図11に示すように、複数の燃料噴射弁128のうち、隣接する燃料噴射弁128の組み合わせ(例えば、燃料噴射弁128aと燃料噴射弁128b)を噴射タイミングの制御対象とし、その組み合わせと他の組み合わせとの噴射タイミングが異なるとしてもよい。図11では8つの燃料噴射弁128を2つの燃料噴射弁128単位で分ける例を示しているが、かかる組み合わせの数は2に制限されないことは言うまでもない。また、かかる組み合わせは隣接する燃料噴射弁128同士に限られず、離隔する燃料噴射弁128同士を組み合わせることもできる。
【0065】
また、上述した実施形態では、複数の燃料噴射弁128a、128b、128c、128d、128e、128f、128g、128hに、スワール186の上流から下流への方向に従って順次燃料ガス174を噴射させる構成を説明したが、燃料ガス174はスワール186の流動に同期して噴射されれば足り、燃料噴射弁128を1または複数置きに噴射させる構成をとることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、シリンダ内部に燃料を直接噴射するユニフロー型の2サイクルエンジンおよび燃料噴射制御方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
100 …2サイクルエンジン
110 …シリンダ
112 …ピストン
116 …排気ポート
118 …排気弁駆動装置
120 …排気弁
122 …掃気ポート
124 …掃気室
126 …燃料噴射ポート
128 …燃料噴射弁
152 …燃料噴射制御部
172 …活性ガス
174 …燃料ガス
186 …スワール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内を摺動するピストンと、
前記シリンダのストローク方向一端部に設けられ、該シリンダ内で生じた排気ガスを排気するために開閉される排気ポートと、
前記シリンダのストローク方向他端部側の内周面に設けられ、前記ピストンの摺動動作に応じて該シリンダ内に活性ガスを吸入する掃気ポートと、
前記シリンダの内周面に設けられた複数の燃料噴射ポートと、
前記燃料噴射ポートにおいて燃料ガスを噴射する複数の燃料噴射弁と、
前記複数の燃料噴射弁における燃焼ガスの噴射タイミングを制御する燃料噴射制御部と、
を備え、
前記燃料噴射制御部は、前記複数の燃料噴射弁に、エンジン負荷に応じてそれぞれ独立した噴射タイミングで燃料ガスを噴射させることを特徴とする2サイクルエンジン。
【請求項2】
前記複数の燃料噴射ポートは、前記活性ガスが前記シリンダ内を流動する方向に配列され、
前記燃料噴射制御部は、前記複数の燃料噴射ポート間の距離と前記活性ガスの流速に基づいて定まる時間間隔を空けて、前記複数の燃料噴射弁に前記燃料ガスを順次噴射させることを特徴とする請求項1に記載の2サイクルエンジン。
【請求項3】
前記燃料噴射制御部は、前記複数の燃料噴射弁のうち、該燃料噴射弁と前記シリンダ内周の中心との結線が該シリンダ内周の中心角を等分する位置にある複数の燃料噴射弁が同タイミングで燃料ガスを噴射するように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の2サイクルエンジン。
【請求項4】
シリンダと、該シリンダ内を摺動するピストンと、該シリンダのストローク方向一端部に設けられ、該シリンダ内で生じた排気ガスを排気するために開閉される排気ポートと、該シリンダのストローク方向他端部側の内周面に設けられ、該ピストンの摺動動作に応じて該シリンダ内に活性ガスを吸入する掃気ポートと、該シリンダの内周面に設けられた複数の燃料噴射ポートと、該燃料噴射ポートにおいて燃料ガスを噴射する複数の燃料噴射弁とを備えた2サイクルエンジンにおいて該燃料ガスの噴射を制御する燃料噴射制御方法であって、
前記複数の燃料噴射ポート間の距離と前記活性ガスの流速に基づいて定まる時間間隔を空けて、前記複数の燃料噴射弁に前記燃料ガスを順次噴射させることを特徴とする燃料噴射制御方法。
【請求項5】
エンジン負荷を検出し、
前記エンジン負荷が予め定められた閾値以上であれば、前記複数の燃料噴射弁に、エンジン負荷に応じた噴射量の燃料ガスを同タイミングで噴射させ、
前記エンジン負荷が前記閾値未満であれば、前記複数の燃料噴射ポート間の距離と前記活性ガスの流速に基づいて定まる時間間隔を空けて、前記複数の燃料噴射弁に、前記エンジン負荷に応じた噴射量の燃料ガスを順次噴射させることを特徴とする請求項4に記載の燃料噴射制御方法。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−24136(P2013−24136A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159759(P2011−159759)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】