説明

ACF貼付状態検査装置

【課題】 貼付対象の表面(リード部)に貼り付けたACFの貼付位置が、貼付許容領域の外側にはみ出ていることを検出できるようにする。
【解決手段】 基板に形成されたリード部12に貼り付けられたACF22の貼付状態を検査するACF貼付状態検査装置であって、検査対象基板10のリード部12とACF22を撮像する撮像部と、該撮像部が撮像したリード部12とACF22の画像から、リード部12に貼り付けられたACF22の貼付状態を判定する判定部と、を備える。
上記判定部は、リード部12の上に貼り付けられたACF22の周囲の所定位置に貼付許容領域32T,32B,32R,32Lを設定し、ACF22が貼付許容領域32T,32B,32R,32Lの外側にはみ出しているか否かを検出し、はみ出していないときは貼付状態が適切であり、はみ出しているときは貼付状態が不良であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルに取り付けられる基板としての被貼付物に貼付された、透明又は半透明のシート材であるACF(異方性導電フィルム)の貼付状態を検出するACF貼付状態検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置やプラズマ表示装置などのFPD(Flat Panel Display)は、画像表示を行う表示パネルに、複数の処理ステーションによって、その周囲に様々な電子部品が接続又は実装される。実装される電子部品の具体例としては、駆動ICを表示パネルに接合するCOG(Chip On Glass)の搭載やCOF(Chip on Film)、FPC(Flexible Printed Circuit)などのいわゆるTAB(Tape Automated Bonding)及び、PCB(回路基板:Printed Circuit Board)が挙げられる。また、表示パネルとPCB基板との接続には、TCP(Tape Carrier Package)などが用いられている。
【0003】
具体的な例については実施の形態の説明で詳細を述べるが、表示パネルの周縁部には、非常に狭いピッチで電極が配置されたリード部を備え、そのリード部に、ICチップを搭載したシート材からなる基板であるCOFの一方の端部が接続される。さらに、そのCOFの他方の端部には、プリント基板であるPCBが接続される。COFやPCBの接続部分についても、狭いピッチで電極が配置されたリード部を備える。そして、表示パネルとCOFとの接続、及び、COFとPCBとの接続には、ACF(異方性導電フィルム、Anisotropic Conductive Film)が使用される。
【0004】
このACFは、粘着性のある電気絶縁物質からなる熱硬化性樹脂(バインダ樹脂)に導電性を持つ微細な金属粒子を分散させてフィルム状に成形したものである。
表示パネルとCOF、及び、COFとPCBとを接続する際には、まず、ACFをCOFの一方及び他方のリード部に貼付する。そして、ACFを貼付したCOFの一方のリード部を、表示パネルの周縁部のリード部に重ねるように配置し、熱圧着処理を行い、表示パネルの周縁部にCOFを接着させる。さらに、ACFを貼付したCOFの他方のリード部を、PCBのリード部に重ねるように配置し、熱圧着処理を行い、COFとPCBを接着させる。このとき、熱圧着処理の前に、かつACFをCOFのリード部に貼り付け処理した以降で、COFの表面に配置されたACFの位置が適切な位置であるか検査される。
【0005】
この熱圧着処理により、ACF内に分散された導電粒子が、表示パネル又はPCBのリード部の各電極と該リード部に対応するCOFのリード部の各電極とを導通させ、表示パネル側の各電極とPCB側の各電極とが電気的に個別に接続される。そして、ACFのバインダ樹脂が硬化して、表示パネルとCOF、及びPCBとCOFが、ACFを介してそれぞれ一体に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−69199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、ACFは、少なくとも接続しなければならないリード部に付着する必要があり、かつ充分な接合強度を得る必要があるため、リード幅より長い範囲に貼り付けられるが、長くなるとACFの余剰部分による生産コストの上昇を招く。また、COFのリード部に貼り付ける場合は、COFの幅に一致する長さで貼ることが望ましく、長すぎるとCOFの端部からはみ出て該COFに巻き付き、周囲に付着する等の不都合が生じる。そのため、COFの表面に配置されたACFの位置が適切な位置であるか検査する必要がある。しかし、従来の検査では、特許文献1に記載されたようなACFが少なくとも接続部分(リード部)に貼り付けられているか、即ち、ACFの貼着の有無を検査するだけであった。
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、貼付対象の表面(リード部)に貼り付けたACFの貼付位置が、貼付許容領域の外側にはみ出ていることを検出できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面のACF貼付状態検査装置は、基板に形成されたリード部に貼り付けられたACFの貼付状態を検査するACF貼付状態検査装置に適用される。
装置構成としては、検査対象基板のリード部とACFを撮像する撮像部と、該撮像部が撮像したリード部とACFの画像から、リード部に貼り付けられたACFの貼付状態を判定する判定部と、を備える。
そして、上記判定部が、リード部の上に貼り付けられたACFの周囲の所定位置に貼付許容領域を設定し、ACFが貼付許容領域の外側にはみ出しているか否かを検出し、はみ出していないときはACFの貼付状態が適切であり、はみ出しているときはACFの貼付状態が不良であると判定するように構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貼付対象の表面(リード部)に貼り付けたACFの貼付位置が、貼付許容領域の外側にはみ出ていることを検出することができる。それゆえ、ACFの余剰部分ひいては無駄の検出、及びACFが周囲に付着することによる不具合の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態例におけるACF貼付状態検査装置の概要を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示すACF貼付状態検査装置の側面図である。
【図3】COFの構成例を示す斜視図である。
【図4】表示パネルにCOF及びPCBが取り付けられた状態の例を示す正面図である。
【図5】表示パネルとCOF及びPCBとの接続状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態例における検査処理工程を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態例におけるCOFのリード部に貼り付けられたACFの貼付状態の検査処理の説明図である。
【図8】検査処理工程におけるACF貼付状態の判定処理を示すフローチャートである。
【図9】画像中の仮想枠線における画素の輝度値のヒストグラムの例を示す特性図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態例におけるTFTアレイ基板のリード部に貼り付けられたACFの貼付状態の検査処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態の例(以下、「本例」ともいう。)について、添付図面を参照しながら説明する。説明は下記の順序で行う。なお、各図において共通の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
1.第1の実施の形態(COF表面に貼り付けられたACFの貼付状態の検査例)
2.第2の実施の形態(表示パネル側に貼り付けられたACFの貼付状態の検査例)
【0013】
<1.第1の実施の形態>
[COFの構成]
まず、図3を参照して、本実施の形態のACF貼付状態検査装置で検査するシート材であるCOFの構成例について説明する。
【0014】
図3に示すように、樹脂製の透明又は半透明なシート材で構成されるCOF10は、一方の端部の表面にPCB側リード部11が配置してあり、他方の端部の表面にパネル側リード部12が配置してある。COF10の表面又は裏面には、ICチップ(図3では図示せず)が配置される。COF10の一辺のサイズは、例えば約45mm程度である。
【0015】
それぞれのリード部11,12は、COF10の端面と直交する方向に、かつ非常に狭いピッチで平行に電極を複数配置した構成としてある。PCB側リード部11は、プリント回路基板であるPCBのリード部の電極配置間隔に対応して、一例として50μm〜100μm程度の間隔で配置してある。一方、パネル側リード部12は、表示パネルを構成するガラス基板上のリード部の電極配置間隔に対応して、一例として20μm〜30μm程度の間隔で配置してある。
【0016】
そして、異方性導電フィルムであるACF21をPCB側リード部11の各電極の各々に、またACF22をパネル側リード部12の各電極の各々に乗せるように配置して貼り付ける。ACF21,22は、粘着性のある電気絶縁物質からなる熱硬化性樹脂(バインダ樹脂)に導電性を持つ微細な金属粒子を分散させてフィルム状に成形したものであり、通常、透明又は半透明のフィルム状に形成されている。本実施の形態の例のACF貼付状態検査装置は、この異方性導電フィルムであるACF21,22が後述する貼付許容領域の外側に配置されていないかどうかを検査するものである。
【0017】
ここで、図4及び図5を参照して、表示パネルにCOF10が取り付けられる状態の例について説明する。
図4は、表示パネルの一例である液晶表示パネルを示す正面図で、図5は、液晶表示パネルとPCBとの接続状態を示す斜視図である。
【0018】
図4に示すように、液晶表示パネル100は、カラーフィルタ基板101とTFT(Thin Film Transistor)アレイ基板102と、この2つの基板101,102の間に封入される液晶とから構成されている。TFTアレイ基板102の少なくとも一辺には、ICチップ13を搭載したフレキシブル基板からなる複数のCOF10を介して、PCB110が取り付けられている。
【0019】
図5に示すように、TFTアレイ基板102の端部には、複数の電極が狭いピッチで配置されたリード部103が形成されている。そして、このリード部103には、COF10のリード部12が接続されている。更に、複数のCOF10には、PCB110が接続されている。また、PCB110における複数のCOF10と接続される箇所には、所定の間隔を開けて複数のリード部111が設けられており、一つのリード部111には、複数の電極が狭いピッチで配置されている。なお、図4及び図5に示すように、COF10の表面(図3で裏面となる面)のほぼ中央には、ICチップ13が取り付けてある。
【0020】
液晶表示パネル100とCOF10との接続は、異方性導電フィルムであるACF22の粘着性と導通性を利用して、対向した電極同士が電気的に導通した状態で接着される。同様に、PCB110とCOF10との接続は、ACF21によって、対向した電極同士が電気的に導通した状態で接着固定される。
【0021】
さらに、ACF21,22に相当する箇所に熱圧着処理を行うことで、ACF21,22を構成するバインダ樹脂が硬化して、液晶表示パネル100とCOF10並びにPCB110とCOF10との接続部分が固定接着される。その熱圧着処理時に、ACF21,22内に分散された導電粒子が、圧力を加えた上下方向で対向した電極配置部分の間で接触するようになり、電極間の導通が確保される。一方、圧着のために圧力を加えた上下方向とは異なる方向の横方向では、絶縁性が保たれるものである。
【0022】
[ACF貼付状態検査装置の構成例]
次に、図1及び図2を参照して、上記のCOF10に貼り付けられるACF21,22の貼付状態を検査するACF貼付状態検査装置の構成例について説明する。図1はACF貼付状態検査装置の概要を示した概略斜視図であり、図2はその側面図である。
【0023】
本例のACF貼付状態検査装置は、図1に示すように、ベース2の表面に載せたCOF10の表面に、面照明部1からの照明光を、ベース2の表面と直交する軸に対して、所定の角度をもって照射させる構成としてある。ここではこの角度(入射角)を、図1に示すように約60°としてある。面照明部1は、例えば光源からの光を拡散板などを用いて照射面全体でほぼ均一な強度の光として照射させるものである。有機EL光源などの、光源そのものがある程度の面積を持って発光するものであれば、拡散板などは必要ない。また、照明として面照明を採用して、COF10の表面にほぼ均一な強度の光が照射されるようにしたが、面照明以外の光源を使用してもよい。
【0024】
ベース2の表面2a(図2)は、この例では鏡面もしくはそれに準ずるものとしてある。このベース2の表面の鏡面は、例えばベース2を構成する金属素材の表面にクロムメッキを施すことで実現してある。このようにベース2の表面を鏡面仕上げとしてあることで、測定時のコントラスト向上に貢献する。
【0025】
COF10の表面で反射した照明光の反射光は、レンズ4が取り付けられたカメラ5で撮像する。COF10の表面の中央部からレンズ4までの距離は、例えば200mm程度の距離とする。COF10の表面で反射した反射光がレンズ4に届くまでの光路の途中には、偏光フィルタ3が配置してある。この偏光フィルタ3が配置してあることで、カメラ5で撮像される像光は、反射光の内の特定の偏光成分のみの光からなる像光となる。この例では、偏光フィルタ3は、P偏光成分の光のみを透過するP偏光フィルタとしてある。なお、P偏光とは、入射面に対する光の入射光と入射面の法線方向が作る面内で振動している直線偏光であり、このP偏光と垂直な方向に振動する光をS偏光と呼んでいる。偏光フィルタ3については、光源及びカメラ5の位置や性能、画像変換部6による画像処理等によって偏光フィルタ3がなくても良好な画像データを得て検査できるのであれば、必ずしも用いなくてもよい。
【0026】
撮像部であるカメラ5に関して、レンズ4の光軸のCOF10表面の中心部と直交する方向(法線方向)との角度を、反射光の角度とほぼ等しくなるように、所定の角度をもって配置してある。照明光の入射の角度が約60°であるので、カメラ5の配置角度も、図1に示すように同じ角度の約60°となることが望ましい。
【0027】
そして本実施の形態の例においては、図1及び図2に示すように、ベース2にCOF10を配置する際には、一例としてPCB側リード部11を面照明部1に近い側とし、パネル側リード部12をカメラ5に近い側とする。したがって、COF10の表面中央部と直交する軸に対して約60°の角度をもって配置されたカメラ5で撮像する際には、パネル側リード部12が近距離(手前側)で撮像され、PCB側リード部11が遠距離(奥側)で撮像される。カメラ5に装着されたレンズ4は、例えばCOF10の表面の中央部にフォーカス位置を合わせてある。
【0028】
本実施の形態に係るACF貼付状態検査装置は、画像変換部6、位置演算部7、判定部8、表示部9、入力部8Aを備える。カメラ5で撮像して得られた画像データは画像変換部6へ出力される。画像変換部6は、画像変換部6から入力された画像データに対し射影変換や二値化等の処理を行う。位置演算部7は、画像変換部6から入力された画像データに基づいてCOF10の位置決め、即ちCOF10を検査位置へ移動させる。
【0029】
判定部8は、所定位置に移動されたCOF10を含む画像データの画像を解析し、ACF21,22の有無や貼付状態(貼付許容領域の外側にはみ出ているか)などを判定する。なお、以降のACF貼付状態検査についての説明は、ACF21,22がリード部に貼り付けられていることを前提としている。画像解析時には、検査対象のCOF10やACF21,22等の各部に対応する、画像データ中の画素の輝度情報などから、ACF21,22の配置状態を判定する。表示部9は、カメラ5から出力される画像データや、判定部8から出力されるACF21,22の配置状態の判定結果などを表示する。入力部8Aは、タッチパネルやキーボート等であり、ユーザの操作に応じた操作信号を生成し、判定部8に入力する。
【0030】
上記の画像変換部6、位置演算部7及び判定部8の機能は、まとめてACFの貼付状態検査を行う専用の処理装置として構成してもよいが、例えば汎用のコンピュータ装置(演算処理装置)に、対応した各機能を実行するプログラムを実装させて、同様の機能を実現させてもよい。
【0031】
[ACF貼付状態検査の流れ]
次に、本例のACF貼付状態検査装置の画像変換部6で取り込んだ画像から検査を行う流れを、図6のフローチャートを参照して説明する。以降のACF貼付状態検査についての説明は、ACF21,22がリード部に貼り付けられていることを前提として、その貼付状態を検査する処理を説明するものである。ACF21,22の有無の検出、すなわちACF21,22がリード部に貼り付けられているか否かの検出は、特許文献1等に記載されているので説明を省略する。
【0032】
まず、カメラ5で撮像して得られた画像データを、画像変換部6で取り込む(ステップS1)。このとき、画像データは、図1に示したようにCOF10を表面2aの法線方向に対して約60°の角度で斜めから撮像した画像であり、矩形のCOF10が台形に変形した画像として撮像される。このため、画像変換部6は、射影変換にて座標を変換し、矩形のCOF10として扱えるように画像処理する(ステップS2)。
【0033】
続いて、位置演算部7は、COF10の表面に設けられたアライメントマーク(図示略)やCOF10の4辺の端辺などを画像認識処理により抽出し、撮像画像中のCOF10の外形(端面)の位置を計算する(ステップS3)。
【0034】
このCOF10の外形の位置をアライメントマークを基準にして判別する際には、リード部の向きについても確認する。例えば本例では、パネル側リード部12が手前側でPCB側リード部11が奥側になる図1及び図2に示した向きでCOF10が配置されていることについても確認する。
【0035】
そして、判定部8は、パネル側リード部12の上のACF22の貼付位置が予め設定された貼付許容領域の外側にはみ出していないかを判定する(ステップS4)。この判定で、パネル側リード部12の上のACF22の貼付位置が貼付許容領域内である場合には、PCB側リード部11の上のACF21の貼付位置が予め設定された貼付許容領域の外側にはみ出していないかを判定する(ステップS5)。貼付許容領域は画像上の仮想枠線で規定されるものであるが、この貼付許容領域と仮想枠線については後述する。
【0036】
PCB側リード部11の上のACF21についても貼付位置が貼付許容領域内である場合には、判定部8に接続された表示部9に、ACFの貼付状態が適正であることの結果を表示させ、1回のACFの検査を終了する(ステップS6)。
【0037】
ステップS4又はステップS5の判定処理のいずれかで、ACFの貼付位置が貼付許容領域の外側にはみ出ていた場合には、判定部8に接続された表示部9に、ACFの貼付状態が不良であることの結果を表示させる(ステップS7)。判定部8は、ACF有無の検出とは別に、ACF貼付状態の判定結果を外部へ出力する。
【0038】
なお、検査結果がCOF10の搬送装置と連動している場合には、ACFの貼付状態が適正と判定された場合には、該当するCOF10を表示パネルに圧着させる工程を行う処理部に搬送させる。一方、ACFの貼付状態が不良と判定された場合には、該当するCOF10を表示パネルに圧着させる工程を行う処理部には送らずに、別の場所に搬送させる、あるいは以後の処理工程をスルーさせる(実行せずに通過させる)ようにすることが考えられる。
【0039】
[ACF貼付状態の判定処理]
次に、図7〜図9を参照して、図1に示した検査処理工程におけるACF貼付状態の判定処理(ステップS4,S5)の詳細について説明する。
図7は、COFのリード部に貼り付けられたACFの貼付状態の検査処理の説明図である。図8は、検査処理工程におけるACF貼付状態の判定処理を示すフローチャートである。図9は、画像中の仮想枠線における輝度値のヒストグラムの例を示す特性図である。
【0040】
本実施の形態では、COFのリード部に貼り付けたACFが貼付許容領域の外側にはみ出していないかを判定するものであり、貼付許容領域は、画像上に描画した仮想枠線により規定される。図7に示す画像例では、パネル側リード部12の上に貼り付けられたACF22の周囲であって矩形の4辺に対応する位置に、仮想枠線32T,32B,32R,32Lが描画されている。これらの仮想枠線32T,32B,32R,32Lで囲まれた領域が貼付許容領域である。仮想枠線32T,32B,32R,32Lを描画する位置(検出位置)は、COF10の角部に設定された3点の基準点33A,33B,33C(エッジ)を基準として設定する。あるいは、COF10の表面に形成されたマーク34R,34Lを検出し、基準点33A,33B,33Cに代えてマーク34R,34Lを基準とすることもできる。
【0041】
この例では、貼付許容領域の仮想枠線を描画するとしたが、ACFの貼付許容領域の外側へのはみ出しを検出することに使用するだけであれば、描画しない設定としてもよい。また、貼付許容領域の形状を矩形としたが形状は矩形に限らず、また仮想枠線は貼付許容領域の形状に合わせて任意に設定できる。
【0042】
判定部8は、ACF22の長さ方向の端部及び幅方向の端部の両方、あるいはいずれかの方向の端部が、仮想枠線32T,32B,32R,32Lで形成された貼付許容領域の外側へはみ出しているか否かを検出する。ACF22の貼付許容領域の外側へのはみ出しを検出しなかった場合、貼付状態が適正であると判定し、その判定結果を外部へ出力する。
【0043】
一方、ACF22の貼付許容領域の外側へのはみ出しを検出した場合、貼付状態が不良であると判定し、その判定結果(エラー情報)を表示部9へ出力する。はみ出し検出は、仮想枠線における画素の輝度値を使用して行うが、具体例については後述する。図7の例では、パネル側リード部12の上に貼り付けられたACF22の長さ方向の端部及び幅方向の端部の両方とも、貼付許容領域内であるから貼付状態は適正である。
【0044】
PCB側リード部11の上に貼り付けられたACF21の検査についても、上述のパネル側リード部12の上に貼り付けられたACF22の場合と同様である。すなわち、判定部8は、ACF21の長さ方向の端部及び幅方向の端部の両方、あるいはいずれかの方向の端部が、仮想枠線31T,31B,31R,31Lで形成された貼付許容領域の外側へはみ出しているか否かを検出する。そして、ACF21の貼付許容領域の外側へのはみ出しの検出結果に基づいて、貼付状態の適正又は不良を判定し、その判定結果を表示部9へ出力する。図7の例では、PCB側リード部11の上に貼り付けられたACF21の幅方向の端部21aが、COF10の表面からはみ出しているが、仮想枠線31Lをはみ出しておらず貼付許容領域内であるから貼付状態は適正である。これが仮想枠線31Lを超えて貼付許容領域の外側へはみ出していると、貼付状態は不良となる。
【0045】
また、本実施の形態では、入力部8Aを操作して、判定部8のメモリ(図示略)に記憶した貼付許容領域についての設定を変更することにより、貼付許容領域の大きさや位置、形状を変更できる構成としている。貼付許容領域の大きさを変更するには、例えば貼付許容領域の4つの仮想枠線を同時に動かし、貼付許容領域の中心点と4つの仮想枠線との距離を均等に変化させる。あるいは、長手方向の2つの仮想枠線の距離と短手方向の2つの仮想枠線の距離を個別に調整して貼付許容領域の大きさを変更するようにしてもよい。また、貼付許容領域の位置を変更するには、例えば4つの仮想枠線の位置を同一方向かつ同一距離だけ移動させる。貼付許容領域の形状を変化させるには、例えば4つの仮想枠線の位置を移動させる。あるいは、長手方向の2つの仮想枠線の距離や位置、短手方向の2つの仮想枠線の距離や位置をそれぞれ調整して貼付許容領域の形状を変更するようにしてもよい。このように、貼付許容領域の大きさや位置、形状をユーザが任意に設定できることにより、個別の表示パネル組み立て装置や完成品の条件等に合わせて適応的に、ACFの貼付状態の検査を実施できる。
【0046】
さらに、本実施の形態では、入力部8Aを操作して、4つの仮想枠線の各々の有効/無効を選択することができる構成としている。このように、必要な仮想枠線のみを有効にしてACFの貼付状態の検査を行うことにより、検査の処理時間が短縮され、生産性が向上する。
【0047】
ところで、COF10のリード部に貼り付けたACFの端部のはみ出し量は、本出願人によれば、一例として0.1mm以下のときに良好な貼付結果が得られることがわかっている。ACFの端部が0.1mmはみ出していることにより、ACFを介してCOFのリード部と表示パネル(又はPCB)のリード部を熱圧着したとき、粘着性のある熱硬化性樹脂(バインダ樹脂)が溶けて出る。このとき、溶け出した熱硬化性樹脂(バインダ樹脂)がCOFの端部よりはみ出すことで、COF端部を包みより良好な熱圧着が実現される。
【0048】
また、ACFがはみ出し過ぎるとはみ出し部分が折り返して、下流の処理部のヘッドに付着したり、ACFのはみ出し部分が二重になって貼り付けたACFがずれたりする恐れがある。したがって、例えば、COF10の基準点33A(端部)と仮想枠線31Lとの距離dを0.1mmに設定し、ACF21の幅方向の端部21aが仮想枠線31Lを超えてはみ出すか否かを検出することが望ましい。
【0049】
なお、貼付許容領域の4つの仮想枠線の位置は、COFの基準点を基準に合わせるとしたが、COFの端面を抽出(エッジ抽出)して該端面を基準としてもよいことは勿論である。
【0050】
図8のフローチャートを参照して、検査処理工程におけるACF貼付状態の判定処理(ステップS4,S5)の流れを説明する。
まず、判定部8は、COFの基準点又はマークを抽出する(ステップS11)。続いて、基準点又はマークを基準に、貼付許容領域の仮想枠線の位置を合わせる(ステップS12)。そして、判定部8は、各仮想枠線上の画素の輝度値のヒストグラムを生成する(ステップS13)。
【0051】
図9に、画像中の仮想枠線における画素の輝度値のヒストグラムの例を示す特性図を示す。この例は、ベース2の上に位置する仮想枠線(仮想枠線31L等)におけるヒストグラムの例である。
【0052】
本実施の形態例のベース2(図1,7参照)は、鏡面仕上げしてあるので反射率が高く、画像中のベース2に対応する画素の輝度値が高く、かつ仮想枠線がベース2上に位置しているので頻度が多い。これに対して、ACF21,22の反射率は、ベース2やリード部11,12、COF10表面よりも低い。それゆえ、画像中の仮想枠線上にACFが存在する場合、即ち貼付状態が不良の場合には、図9に示すようにACF21,22に対応する画素の輝度値は、輝度値の低い方にその頻度が検出される。貼付状態が適切である場合、仮想枠線上にACF21,22が存在しないので、ACF21,22に対応する画素の輝度値の頻度は検出されない。本実施の形態では、このACF21,22に対応する画素の輝度値の頻度が検出されるか否かで、ACF21,22の貼付状態を判定する。
【0053】
ここで、画像中のACFに対応する画素の輝度値の頻度を検出するのに設けられる閾値(図9の破線)は、ベースの輝度値より低く、ACFの輝度値より高い値とする。仮想枠線上にはベース又はACFしか存在しないためであり、これにより仮想枠線上のACFの有無を確実に検出できる。
【0054】
図8の説明に戻る。判定部8は、ヒストグラムに基づいて閾値より低い輝度値を持つ画素が存在するか否かを判定する(ステップS14)。閾値より小さい方向の輝度値が検出されなかった場合、ACFに対応する画素の輝度値が検出されなかったと判定する。すなわち、貼付許容領域の外側にACFが存在しないから、ACFの貼付状態は適切である(ステップS15)。一方、閾値より小さい方向の輝度値が検出された場合、ACFに対応する画素の輝度値が検出されたと判定する。すなわち、貼付許容領域の外側にACFが存在するから、ACFの貼付状態は不良である(ステップS16)。
【0055】
ステップS15又はステップS16の処理が終了後、図6のステップS6又はステップ7の処理に移行する。
【0056】
上述した第1の実施の形態によれば、貼付対象の表面(リード部)に貼り付けたACFの貼付位置が、貼付許容領域の外側にはみ出ていることを検出することができる。それゆえ、ACFの余剰部分ひいては無駄の検出、及びACFが周囲に付着することによる不具合の発生を防止できる。したがって、第1の実施の形態に係るACF貼付状態検査装置を表示パネル組み立て装置に適用することにより、コスト削減と生産性の向上が図られる。
【0057】
<2.第2の実施の形態>
第2の実施の形態は、TFTアレイ基板102(図5参照)のリード部103にACF22を貼り付けた後に、ACF22を介して、TFTアレイ基板102のリード部103とCOF10のリード部12とを接着する場合の例である。すなわち、TFTアレイ基板102のリード部103に貼り付けたACF22が貼付許容領域の外側にはみ出していないかを判定するものである。
【0058】
図10は、本発明の第2の実施の形態例におけるTFTアレイ基板102のリード部103に貼り付けられたACF22の貼付状態の検査処理の説明図である。
図10に示す画像例では、TFTアレイ基板102のリード部103の上に貼り付けられたACF22の周囲に、仮想枠線105T,105B,105R,105Lが描画されている。これらの仮想枠線105T,105B,105R,105Lで囲まれた領域が貼付許容領域である。仮想枠線105T,105B,105R,105Lを描画する位置(検出位置)は、TFTアレイ基板102の表面に形成されたマーク104R,104Lを基準とする。
【0059】
判定部8は、ACF22の長さ方向の端部及び幅方向の端部の両方、あるいはいずれかの方向の端部が、仮想枠線105T,105B,105R,105Lで形成された貼付許容領域の外側へはみ出しているか否かを検出する。その検出結果に基づいて、ACFの貼付状態を検査する。この例では、TFTアレイ基板(表示パネル)のリード部に貼り付けたACFの貼付状態を検査する場合を例として説明したが、PCBのリード部に貼り付けたACFの貼付状態を検査する場合も同様である。
【0060】
なお、仮想枠線105T,105B,105R,105Lの位置は、ACF22の長さ方向の端部及び幅方向の端部から周囲方向へ0.5mm程度の距離に設定することが望ましい。その理由は、COFのリード部に貼り付けたACFの貼付状態を検査する場合のように、COF端部からの距離を考慮する必要がなく、ACF22の余剰部分を減らせればよいため、ACF22より所定面積だけ大きければよい。
【0061】
上述した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と異なる表示パネル組み立て方式にも対応することができる。すなわち、第1の実施の形態では、COFのリード部にACFを貼り付けておいて、表示パネル及びPCBのリード部との熱圧着を行う表示パネル組み立て方式だったが、第2の実施の形態では、表示パネル又はPCBのリード部にACFを貼り付けておいてから、COFのリード部との熱圧着を行う表示パネル組み立て方式にも対応可能である。上記の他、第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏することは勿論である。
【0062】
以上、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
【0063】
例えば、上述した実施の形態におけるACF貼付状態検査装置の光源として面照明部1を用いたが、同軸照明等を用いてカメラ5及びレンズ4の光軸と光源からの照射光の光軸とが同一又は平行となるように構成してもよい。その場合、検査工程における射影変換処理を省略することができ、画像変換部6の負荷が軽減されるとともに検査速度が向上する。
【符号の説明】
【0064】
2…ベース、 5…カメラ、 6…画像変換部、 7…位置演算部、 8…判定部、 8A…入力部、 10…COF、 31T,31B,31R,31L,32T,32B,32R,32L…仮想枠線、 33A,33B,33C…基準点、 34R,34L…マーク、 11,12,111…リード部、 21,22…ACF、 100…表示パネル、 104R,104L…マーク、 105T,105B,105R,105L…仮想枠線、 110…PCB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成されたリード部に貼り付けられたACFの貼付状態を検査するACF貼付状態検査装置であって、
検査対象基板のリード部とACFを撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した前記リード部と前記ACFの画像から、前記リード部に貼り付けられた前記ACFの貼付状態を判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、
前記リード部の上に貼り付けられたACFの周囲の所定位置に仮想枠線で規定される貼付許容領域を設定し、前記ACFが前記貼付許容領域の外側にはみ出しているか否かを検出し、はみ出していないときは前記ACFの貼付状態が適切であり、はみ出しているときは前記ACFの貼付状態が不良であると判定する
ACF貼付状態検査装置。
【請求項2】
前記貼付許容領域は矩形であり、前記仮想枠線は矩形の四辺に対応する位置に設定される
請求項1に記載のACF貼付状態検査装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記矩形のACFの長さ方向の端部及び幅方向の端部の両方、あるいはいずれかの方向の端部が、前記貼付許容領域の外側にはみ出しているか否かを検出する
請求項2に記載のACF貼付状態検査装置。
【請求項4】
前記判定部は、入力部からの操作信号に基づいて、前記貼付許容領域の仮想枠線の各々の有効/無効を選択する
請求項3に記載のACF貼付状態検査装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記ACFの貼付状態の判定結果を、前記ACFの有無の判定結果とは別に、表示部へ出力する
請求項1乃至4のいずれかに記載のACF貼付状態検査装置。
【請求項6】
前記貼付許容領域の仮想枠線の位置を、前記リード部が形成された基板上のマークを基準に設定する
請求項1乃至5のいずれかに記載のACF貼付状態検査装置。
【請求項7】
前記貼付許容領域の仮想枠線の位置を、前記リード部が形成された基板の端部を基準に設定する
請求項1乃至5のいずれかに記載のACF貼付状態検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−119360(P2012−119360A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264990(P2010−264990)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】