説明

BGAパッケージを実装した基板の構造

【課題】防湿コーティング材の膨張・収縮の問題に鑑み、電極半田バンプの耐久性の向上を図る新規な技術を提案する。
【解決手段】半導体素子をインターポーザ2に実装したBGAパッケージ1を基板10に対して半田接合し、半導体素子と基板10とを電気的に接続する構成とする、BGAパッケージ1を実装した基板10の構造であって、前記インターポーザ2に複数配置されたランド6・6と、前記基板10に複数配置されたランド16・16間は、電極半田バンプ7・7(電極7a・7a)によって電気的に接続され、前記電極半田バンプ7・7が配置されるエリアの外周には、隔壁形成用半田バンプ9・9により一連の隔壁20が形成され、前記隔壁20によって前記インターポーザ2と基板10との間の隙間が塞がれる構成とし、前記隔壁20の外周に防湿コーティング材51が塗布される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BGA(Ball Grid Array)パッケージに配置される電極半田バンプの耐久性の向上を図る技術に間するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高集積化、高性能化に伴う端子数の増大に対応すべく、端子の高密度実装を実現可能とするBGA(Ball Grid Array)パッケージが実用化されてきており、このBGAパッケージを実装した基板の構成について開示する文献も多く存在する(例えば、特許文献1参照。)。
また、BGAパッケージを実装した基板において、一般に使用される防湿コーティング材は、その線膨張係数が半田及びBGAパッケージ本体のものと大きく異なるため、冷熱衝撃が加わると、膨張・収縮の際に、前記防湿コーティング材が電極半田バンプに大きな応力を加えることになり、電極半田バンプの耐久性が劣化するという問題があった。
この問題に対し、特許文献1では、低弾性樹脂と、高弾性樹脂の二種類の防湿コーティング材を用いることとし、高弾性樹脂によってBGAパッケージの外周を押さえ込んで、電極半田バンプにかかる応力を緩和させ、耐久性の向上を図る技術を提案している。
【特許文献1】特開2003−92312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に開示される技術では、BGAパッケージの実装後に、第一の樹脂(低弾性樹脂)の流し込みの工程、第二の樹脂(高弾性樹脂)の流し込みの工程が必要となり、工程数が増加するとともに、これらの樹脂を手配する必要が発生し、加工費・素材費がかかり、これに伴う製品コストの増加を来たすことになる。
そこで、本発明は、上述の電極半田バンプの耐久性の向上を図る新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上のごとくであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1に記載のごとく、BGAパッケージのインターポーザと基板とを接続する半田バンプの配置されるエリアの外周に、インターポーザと基板との間に形成される隙間を塞ぐ一連の隔壁が半田によって形成される、BGAパッケージを実装した基板の構造とするものである。
【0006】
また、請求項2に記載のごとく、半導体素子をインターポーザに実装したBGAパッケージを基板に対して半田接合し、半導体素子と基板とを電気的に接続する構成とする、BGAパッケージを実装した基板の構造であって、前記インターポーザに複数配置されたランドと、前記基板に複数配置されたランド間は、電極半田バンプによって電気的に接続され、前記電極半田バンプが配置されるエリアの外周には、隔壁形成用半田バンプにより一連の隔壁が形成され、前記隔壁によって前記インターポーザと前記基板との間の隙間が塞がれる構成とし、前記隔壁の外周に防湿コーティング材が塗布される構成とする。
【0007】
また、請求項3に記載のごとく、前記基板には、該基板の表面と裏面とを連通させるスルーホールが設けられる構成とする。
【発明の効果】
【0008】
以上の請求項1、2に記載の発明では、防湿コーティング材の膨張・収縮の影響による半田バンプの劣化を防止することができる。
また、前記隔壁によってBGAパッケージや基板の熱膨張・収縮による応力を受けることで、電極半田バンプへ加えられる応力を緩和することができる。
また、上記の構成は、新たな素材を必要とすることなく、従来のBGAパッケージの実装工程のままで実施できるため、低コストで半田バンプの耐久性の向上を図ることができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、インターポーザと基板の間の空間に、基板外部の空気がスルーホールを介して流入されるため(又は空間外へ流出される)、空間内の圧力が極度に高圧/低圧となることがなく、前記電極とランド間の接合の破損が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1(a)(b)に示すごとく、BGAパッケージ1は、板状のインターポーザ2に半導体素子3・3(半導体装置)を実装し、該半導体素子3・3をモールド樹脂4にて覆う構成としている。
また、インターポーザ2の裏側面には、複数のランド6・6・・・が格子状に配置されている。各ランド6・6・・・には、それぞれ半田ボールを吸着させてなる電極半田バンプ7・7・・・が構成されている。
【0011】
また、インターポーザ2の裏側面には、前記電極半田バンプ7・7・・・が構成されたエリアの外周を取り囲む隔壁形成用ランド8が構成されている。この隔壁形成用ランド8は、連続して形成されて閉じた形状とされている。
また、隔壁形成用ランド8の材質は、半田濡れ性が良好なCu(クロム)等の金属とするのが好適である。
また、隔壁形成用ランド8の表面には、酸化を防止しつつ、半田濡れ性を確保するため、Sn(スズ)鍍金や、半田レベラー等の表面処理が施される。
また、隔壁形成用ランド8の幅は、後述するごとく、隔壁の形成後に、隔壁内外を物理的に遮断すればよいので、実装精度の面から、電極半田バンプ7・7・・・の外径以上であればよい。
また、隔壁形成用ランド8の表面には、複数の半田ボールを吸着させてなる隔壁形成用半田バンプ9・9・・・が構成される。
また、図1(b)に示すごとく、隔壁形成用ランド8と電極半田バンプ7・7・・・との距離D1は、半田付けの際に、電極半田バンプ7・7・・・と隔壁形成用半田バンプ9の間での半田ブリッジを防止するため、電極半田バンプ7・7・・・のピッチD2以上空けられる。
【0012】
また、図1(b)に示すごとく、前記隔壁形成用半田バンプ9・9・・・の外径は、前記隔壁形成用ランド8と略同一とされる。
また、隔壁形成用半田バンプ9・9・・・の配置ピッチについて、半田溶融時の広がり率Sは、一般的に次の式(1)で示される。
式(1);広がり率S=((D−H)/D)×100〔%〕
D;溶融前の半田の高さ(直径)
H;溶融後の半田の高さ
また、隣接する隔壁形成用半田バンプ9・9・・・同士を確実につなげて隔壁を形成するため、該隔壁形成用半田バンプ9・9・・・の配置ピッチPを、次の式(2)で算出される値とする。
式(2);配置ピッチP=(d/S)×100×α
d;隔壁形成用半田バンプの直径
α;溶融後の半田の重複率(安全率)
そして、以上により算出された配置ピッチPにより、溶融後において形成される隔壁20(図4(b)、図5参照)には隙間が形成されず、隔壁20によって、隔壁の内部空間(空間25)と外部空間とが分断されるようになっている。
【0013】
図2(a)(b)に示すごとく、前記BGAパッケージ1が実装される基板10の表面側には、複数のランド16・16・・・が格子状に配置されており、この配置は、BGAパッケージ1の電極半田バンプ7・7・・・の配置と同一としている。
また、基板10の裏側面には、前記ランド16・16・・・が構成されたエリアの外周を取り囲む隔壁形成用ランド18が構成されている。この隔壁形成用ランド18は、連続して形成されて閉じた形状とされている。また、隔壁形成用ランド18の形状は、BGAパッケージ1側に形成される隔壁形成用ランド8と略同一とされており、BGAパッケージ1が基板10に実装される際には、両隔壁形成用ランド8・18が互いに対向し、両隔壁形成用ランド8・18の間に前記隔壁形成用半田バンプ9・9・・・が配置される。
また、前記ランド16・16・・・の表面には、半田ペースト17・17・・・がプリントされている。また、前記隔壁形成用ランド18の表面には、半田ペースト19・19が印刷されている。
尚、隔壁形成用ランド18の材質、表面処理については、BGAパッケージ1側の隔壁形成用ランド8と同一とされる。
【0014】
また、図2(a)(b)に示すごとく、基板10には、基板10のベース12の表面12a(前記ランド16・16・・・が配置される側)と、裏面12bとを連通させるスルーホール30(孔状の通気路)が設けられている。
このスルーホール30の存在により、ベース12の表面12aと裏面12bの間での通気が可能となり、リフロー炉での加熱の際における、基板10(ベース12)とBGAパッケージ1(インターポーザ2)の間に挟まれる空間の圧力変化に対応することができるようになっている。
【0015】
そして、図3、図4(a)(b)に示すごとく、BGAパッケージ1を基板10上にセットした状態でリフロー炉にて加熱すると、前記電極半田バンプ7・7・・・、半田ペースト17・17・・・が溶融されて電極7a・7a・・が形成され、ランド6・16が電極7a・7a・・によって電気的に接続される。
また、これと同時に、前記隔壁形成用半田バンプ9・19が溶融され、前記隔壁形成用ランド8・18に沿った一連の隔壁20が形成される。該隔壁20によって、インターポーザ2と基板10との間に閉じられた空間25が形成される。
また、この空間25は、前記スルーホール30を介して基板10の外部へと通じているため、溶融の際に空間25内の圧力が変化した場合でも、基板10外部の空気がスルーホール30を介して流入/流出されるため、空間25内の圧力が極度に高圧/低圧となることがなく、前記電極7a・7a・・とランド6・16間の接合の破損が防止される。
【0016】
以上のように、BGAパッケージ1のインターポーザ2と基板10とを接続する半田バンプ7・7・・・の配置されるエリアの外周に、インターポーザ2と基板10との間に形成される隙間を塞ぐ一連の隔壁20が半田によって形成される。
そして、BGAパッケージ1を基板10に実装した後、図5に示すごとく、防湿コーティング材51・52が塗布される。
この際、インターポーザ2と基板10に挟まれる空間25は、四方側面が隔壁20にて囲まれて閉じられているため、ベース12の表面12a側に塗布される防湿コーティング材51の空間25内への浸入を隔壁20によって阻止できる。
また、前記空間25内は、スルーホール30での通気を除いては、密閉された空気層で構成されるため、ベース12の裏面12b側に塗布される防湿コーティング材52のスルーホール30を介した空間25内への浸入を、前記空気層の存在によって阻止できる。
【0017】
以上が本発明に係るBGAパッケージ1を実装した基板10の構造である。
即ち、図5に示すごとく、半導体素子3・3をインターポーザ2に実装したBGAパッケージ1を基板10に対して半田接合し、半導体素子3・3と基板10とを電気的に接続する構成とする、BGAパッケージ1を実装した基板10の構造であって、前記インターポーザ2に複数配置されたランド6・6・・・と、前記基板10に複数配置されたランド16・16・・・間は、電極半田バンプ7・7(電極7a・7a)によって電気的に接続され、前記電極半田バンプ7・7・・・が配置されるエリアの外周には、隔壁形成用半田バンプ9・9・・・により一連の隔壁20が形成され、前記隔壁20によって前記インターポーザ2と基板10との間の隙間が塞がれる構成とし、前記隔壁20の外周に防湿コーティング材51が塗布される構成としている。
【0018】
そして、以上の構成で、防湿コーティング材51・52の空間25内への浸入が阻止され、防湿コーティング材51・52の膨張・収縮の影響による半田バンプ7・7(電極7a・7a)の劣化を防止することができる。
また、前記隔壁20によってBGAパッケージ1や基板10の熱膨張・収縮による応力を受けることで、電極半田バンプ7・7・・・(電極7a・7a)へ加えられる応力を緩和することができる。
また、上記の構成は、新たな素材を必要とすることなく、従来のBGAパッケージ1の実装工程のままで実施できるため、低コストで半田バンプ7・7・・・(電極7a・7a)の耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本発明に係るBGAパッケージについて示す図。(b)は同じく底面図。
【図2】(a)は本発明に係る基板について示す図。(b)は同じく底面図。
【図3】BGAパッケージを基板に実装した状態について示す平面図。
【図4】(a)は図3のA−A線断面図。(b)図3のB−B線側面図。
【図5】防湿コーティング材が塗布された状態について示すBGAパッケージを実装した基板の断面図。
【0020】
1 BGAパッケージ
2 インターポーザ
3 半導体素子
6 ランド
7 電極半田バンプ
7a 電極
9 隔壁形成用半田バンプ
10 基板
16 ランド
20 隔壁
30 スルーホール
51 防湿コーティング材
52 防湿コーティング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BGAパッケージのインターポーザと基板とを接続する半田バンプの配置されるエリアの外周に、インターポーザと基板との間に形成される隙間を塞ぐ一連の隔壁が半田によって形成される、BGAパッケージを実装した基板の構造。
【請求項2】
半導体素子をインターポーザに実装したBGAパッケージを基板に対して半田接合し、半導体素子と基板とを電気的に接続する構成とする、BGAパッケージを実装した基板の構造であって、
前記インターポーザに複数配置されたランドと、前記基板に複数配置されたランド間は、電極半田バンプによって電気的に接続され、
前記電極半田バンプが配置されるエリアの外周には、隔壁形成用半田バンプにより一連の隔壁が形成され、
前記隔壁によって前記インターポーザと前記基板との間の隙間が塞がれる構成とし、
前記隔壁の外周に防湿コーティング材が塗布される構成とする、
BGAパッケージを実装した基板の構造。
【請求項3】
前記基板には、該基板の表面と裏面とを連通させるスルーホールが設けられる、ことを特徴とする請求項2に記載のBGAパッケージを実装した基板の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−165324(P2006−165324A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355637(P2004−355637)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】