説明

CVD装置

【課題】基板表面に生成する膜を全面でより均一にできるCVD装置を提供する。
【解決手段】熱化学気相成長法により基板Kの表面にカーボンナノチューブを生成する加熱室13を有するカーボンナノチューブ形成用の熱CVD装置であって、加熱室13内を所定方向に移動される所定幅の基板Kを側面視が円弧形状となるように保持し得るガイド板23を具備するとともに、このガイド板23により保持される基板Kの円弧中心位置に原料ガスGの放出口5を基板Kの幅方向に沿って配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVD装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸着装置の1つである化学気相成長装置(以下CVD装置という)は、不活性ガスを充填または真空(減圧状態)にした反応容器内に基板を配置し、当該反応容器に原料ガスを送り込んで、当該基板の表面に触媒を介して膜を成長させるものである。CVD装置には、熱を利用する熱CVD装置、プラズマを利用するプラズマCVD装置、光エネルギーを利用する光CVD装置などがある。
【0003】
従来、蒸着装置としては、真空槽(反応容器)に配置された基板に、ルツボで加熱し蒸発された有機材料を導いて膜付けするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−134250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記蒸着装置では、基板が平面状に配置されているのに対し、ルツボはその開口部が基板表面の中心に対向するように配置されている。このため、基板表面の中心付近と外周付近で、ルツボの開口部との距離に差が生じ、接触する有機材料の濃度にも差が生じていた。特に、上記蒸着装置を化学気相成長法(CVD法)に用いた場合、CVD開始時に基板表面において接触する原料ガス濃度に差があれば膜の成長にも差が生じており、より均一に膜を生成できるCVD装置が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、基板表面に生成する膜を全面でより均一にできるCVD装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係るCVD装置は、熱化学気相成長法により基板の表面に蒸着材料を蒸着させる加熱室を有するCVD装置であって、
上記加熱室内で所定幅の基板を側面視が円弧形状となるように保持し得る基板保持手段を具備するとともに、この基板保持手段により保持される基板の円弧中心位置に蒸着材料の放出口を当該基板の幅方向に沿って配置したものである。
【0008】
また、請求項2に係るCVD装置は、熱化学気相成長法により基板の表面に蒸着材料を蒸着させる加熱室を有するCVD装置であって、
上記加熱室内を所定方向に移動される所定幅の基板を側面視が円弧形状となるように保持し得る基板保持手段を具備するとともに、この基板保持手段により保持される基板の円弧中心位置に蒸着材料の放出口を当該基板の幅方向に沿って配置したものである。
【0009】
さらに、請求項3に係るCVD装置は、請求項1または2に記載のCVD装置において、案内用回転体の外周に沿って加熱部材を配置したものである。
【発明の効果】
【0010】
上記CVD装置によると、基板の蒸着膜が生成される面を円弧形状にするとともに、この円弧中心位置に蒸着材料の放出口を配置しているので、円弧形状の面のいずれの部分であっても放出口からの距離は等しく、基板表面での蒸着材料の濃度が均一であり、基板表面に生成する蒸着膜を全面でより均一にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係るCVD装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】同CVD装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図3】加熱装置を省略した図2のA−A断面図である。
【図4】加熱室内において加熱装置のみを示した図2のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るCVD装置について、具体的に示した実施例に基づき説明する。
本実施例1においては、CVD装置として、カーボンナノチューブ形成用の熱CVD装置を用いたものについて説明する。
【0013】
本実施例においては、カーボンナノチューブを形成する基板として、ステンレス製の薄鋼板、すなわちステンレス鋼板(薄板材の一例であり、例えば箔材の場合は20〜300μm程度の厚さのものが用いられ、ステンレス箔ということもできる。また、板材である場合には、300μm〜数mm程度の厚さのものが用いられる。)を用いるようにしたもので、しかも、このステンレス鋼板としては、所定幅で長いもの、つまり帯状のものが用いられる。したがって、このステンレス鋼板はロールに巻き付けられており、カーボンナノチューブの形成に際しては、このロールから引き出されて連続的にカーボンナノチューブが形成されるとともに、このカーボンナノチューブが形成されたステンレス鋼板は、やはり、ロールに巻き取るようにされている。すなわち、一方の巻出しロールからステンレス鋼板を引き出し、この引き出されたステンレス鋼板の表面にカーボンナノチューブを形成(生成)した後、このカーボンナノチューブが形成されたステンレス鋼板を他方の巻取りロールに巻き取るようにされている。
【0014】
以下、上述した帯状のステンレス鋼板(以下、主として、基板と称す)の表面に、カーボンナノチューブを形成するための熱CVD装置について説明する。
この熱CVD装置には、図1に示すように、炉本体2内にカーボンナノチューブを形成するための細長い処理用空間部が設けられて成る加熱炉1が具備されており、この炉本体2内に設けられた処理用空間部は、所定間隔おきに配置された区画壁3により、複数の、例えば5つの部屋に区画されて(仕切られて)いる。
【0015】
すなわち、この炉本体2内には、ステンレス鋼板つまり基板Kが巻き取られた巻出しロール16が配置される基板供給室11と、この巻出しロール16から引き出された基板Kを導きその表面に前処理を施すための前処理室12と、この前処理室12で前処理が施された基板Kを導きその表面にカーボンナノチューブを形成するための加熱室(反応室ともいえる)13と、この加熱室13でカーボンナノチューブが形成された基板Kを導き後処理を施すための後処理室14と、この後処理室14で後処理が施された基板Kを巻き取るための巻取りロール17が配置された基板回収室(製品回収室ということもできる)15とが具備されている。また、上記各ロール16,17の回転軸心は水平方向にされており、したがって加熱室13内に引き込まれる(案内される)基板Kは水平面内を移動するとともに、基板Kの表面にカーボンナノチューブを形成するようにされている。また、基板供給室11および基板回収室15の外部には、図示しないが、上記各ロール16,17で基板Kの引き出しおよび巻き取りを行うために当該各ロール16,17を駆動させるサーボモータがそれぞれ設けられており、各サーボモータと各ロール16,17は、各室11,15の側壁部を貫通する気密構造の回転軸で接続される。なお、以下では、上記ロール16,17の間の方向、すなわち基板Kが移動する方向を前後方向といい、この前後方向に水平面上で直交する方向を左右方向という。
【0016】
上記前処理室12では、基板Kの表面、特にカーボンナノチューブを形成する表面(カーボンナノチューブの生成面であり、後述するが、ここでは下面である)の洗浄、不動態膜の塗布、カーボンナノチューブ生成用の触媒微粒子、具体的には、鉄の微粒子(金属微粒子)の塗布が行われる。洗浄については、アルカリ洗浄、UVオゾン洗浄が用いられる。また、不動態膜の塗布方法としては、ロールコータ、LPDが用いられる。触媒微粒子の塗布方法としては、スパッタ、真空蒸着、ロールコータなどが用いられる。
【0017】
また、後処理室14では、基板Kの冷却と、基板Kの表面、すなわち下面に形成されたカーボンナノチューブの検査とが行われる。
そして、基板回収室15では、基板Kの上面(裏面)に保護フィルムが貼り付けられ、この保護フィルムが貼り付けられたステンレス鋼板である基板Kが巻取りロール17に巻き取られる。なお、基板Kの上面に保護フィルムを貼り付けるようにしているのは、基板Kを巻き取った際に、その外側に巻き取られる基板Kに形成されたカーボンナノチューブを保護するためである。
【0018】
上述したように、炉本体2内には、区画壁3により5つの部屋が形成されており、当然ながら、各区画壁3には、基板Kを通過させ得る連通用開口部(スリットともいう)3aがそれぞれ形成されている。
【0019】
ところで、上記加熱室13においては、熱CVD法により、カーボンナノチューブが形成(生成)されるが、内部は所定の真空度(負圧状態)に維持されるとともに、カーボンナノチューブの生成用ガスつまり原料ガスGが供給されており、またこの原料ガスGが隣接する部屋に漏れないように考慮されている。例えば、加熱室13においては、ヘリウムガスなどの不活性ガスNと一緒に原料ガスGが下方から供給されるとともに上方から排出されて(引き抜かれて)いる。なお、この加熱室13以外の部屋、すなわち基板供給室11、前処理室12、後処理室14および製品回収室15についても、ヘリウムガスなどの不活性ガスNが下方から供給されるとともに上方から排出されて(引き抜かれて)、大気が入り込まないようにされている。
【0020】
ここで、加熱室13について詳しく説明する。
すなわち、図2および図3に示すように、この加熱室13の底壁部2aの左右方向における中心位置には、カーボンを含む原料ガス(例えば、アセチレンガスが用いられる)Gを供給するガス導入ノズル9が、下方から底壁部2aを貫通するように挿入されており、このガス導入ノズル9の上端における開口、すなわち放出口5は、左右方向が長手方向となる矩形状である。また、加熱室13の上方部には、ガスを排出するガス排出口(例えば、排出管である)6が前後方向において所定間隔おきで複数個形成されている。なお、この加熱室13を形成する内壁面には所定厚さの断熱材4が貼り付けられている。また、上壁部2bと断熱材4との間には、各ガス排出口6からのガスを導き一つのガス抜出口7から排出するためのガス集合室8が形成されている。なお、このガス抜出口7は炉本体2の上壁部2bに設けられている。したがって、上壁部2bを、または上壁部2bおよび上部断熱材4を、加熱室13の上部ということができるとともに、底壁部2aを、または底壁部2aおよび下部断熱材4を、加熱室13の下部ということができる。また、上記基板Kの上方位置には、加熱室13内を加熱するための複数本の円柱形状(または棒状)の発熱体(加熱部材である)22を有する加熱装置21が、図2に示すように設けられている(図3では加熱装置21の図示を省略する)。なお、加熱装置21の詳細は後述する。
【0021】
さらに、図示しないが、加熱室13には、当該加熱室13内の空気を排気して所定の減圧下にするための排気装置(真空装置でもある)が接続されている。
また、加熱室13には、左右方向と平行の回転軸24を回転面23aの中心に有するとともに基板Kの左右方向における両側縁部をそれぞれ下面から外周面23bで保持する2基の円盤形状のガイド板(基板保持部材の一例である)23と、これら両ガイド板23の前後位置において左右方向と平行に配置された円柱形状の押さえローラ25とが具備されている。なお、ガイド板23の回転軸24および押さえローラ25は、両側壁部の内側にそれぞれ設けられたブラケット(図3にのみ図示する)26で、回転自在に支持される。また、基板Kを両ガイド板23の外周面23bに沿わせて円弧形状にするために、基板Kを、ガイド板23の前後において、下面(内周)側からはガイド板23、上面(外周)側からは押さえローラ25で保持する。具体的には、図1および図2に示すように、区画壁3の連通用開口部3aの上端と押さえローラ25の下端との高さが等しくなるように、つまり、連通用開口部3aから押さえローラ25までの部分で基板Kが水平になるように、押さえローラ25が配置される。
【0022】
一方、上記ガス導入ノズル9の放出口5は、上記基板Kの円弧中心に位置する。すなわち、上記ガイド板23および押さえローラ25で湾曲させた基板Kの円弧形状の中心が、放出口5の位置と一致するように、当該ガイド板23および押さえローラ25が配置される。また、図3に示すように、これら両ガイド板23は、当該ガス導入ノズル9の左右位置、すなわち両ガイド板23の間にガス導入ノズル9が位置するようにして配置されるので、ガス導入ノズル9の放出口5からの原料ガスGは、妨げられることなく基板Kの円弧形状の部分にまで到達する。
【0023】
ところで、有機ガスの影響を無くすために、加熱室13における基板K以外の構成材料、例えば断熱材4などは、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化アルミニウム(Al)などの無機材料で構成されている。
【0024】
ここで、前処理室12での工程について説明する。
この前処理室12内では、基板Kが洗浄された後、シリカ、アルミナなどの不動態膜が塗布され、さらにこの不動態膜の上面に、金属例えば鉄(Fe)の触媒微粒子が塗布される。勿論、図示しないが、この前処理室12内には、基板Kの洗浄手段、不動態膜の塗布手段、および金属例えば鉄(Fe)の触媒微粒子の塗布手段が設けられている。
【0025】
ところで、基板Kとして、厚さが20〜300μm以下に圧延加工されてコイル状に巻き取られた薄いステンレス鋼板(ステンレス箔でもある)が用いられており、このような基板Kには、コイルの巻き方向に引張りの残留応力が存在するため、触媒の微粒化および熱CVD時に、残留応力の開放により、基板Kに反りが発生する。このような反りの発生を防止するために、コイル巻き方向で張力を付加する機構、具体的には、巻出しロールと巻取りロールとの間で張力を発生させて(例えば、両ロールの回転速度を異ならせることにより張力を発生させる。具体的には、一方のモータで引っ張り、他方のモータにブレーキ機能を発揮させればよい。)基板Kを引っ張るようにしてもよい。また、巻取りロール側に錘を設けて引っ張るようにしてもよい。
【0026】
次に、加熱装置21について図2および図4(図4では加熱室13内における加熱装置21以外の構成を省略する)に基づき説明する。
この加熱装置21は、円弧形状の基板Kの上面(外周)側に配置されるものであり、円柱形状(または棒状)の発熱体22が、左右方向と平行(並行)に且つ前後方向にて所定間隔おきで複数配置されている。また、これら発熱体22を含む曲面は、側面視が基板Kと同心円の円弧形状となるようにされている。なお、発熱体22としては非金属の抵抗発熱体が用いられ、具体的には、炭化ケイ素、ケイ化モリブデン、ランタンクロマイト、ジルコニア、黒鉛などが用いられる。特に、炭化ケイ素およびケイ化モリブデンは、窒素ガス、水素ガス雰囲気下で用いられ、ランタンクロマイトは大気下でのみ用いられ、黒鉛は不活性ガス雰囲気(還元雰囲気)下で用いられる。
【0027】
また、上記発熱体22は円柱形状のものが用いられるとともに所定間隔おきで且つ基板Kと同心円の円弧形状に、すなわち、いずれの発熱体22も基板Kまでの距離が等しくなるように、基板Kの外周に沿って複数本並置されたものであるため、これら発熱体22による基板Kへの加熱の均一化すなわち均熱化を図るとともに均熱面積の最大化が望まれる。すなわち、発熱体22の配置および当該発熱体22の中心から基板Kまでの距離については適切に配置されること(つまり、設計)が要求される。
【0028】
ところで、上記加熱炉1にて熱CVD法が行われる際には、加熱室13内が所定圧力に減圧される。
この減圧値としては、数Pa〜1000Paの範囲に維持される。例えば、数十Pa〜数百Paに維持される。なお、減圧範囲の下限である数Paは、カーボンナノチューブの形成レート(成膜レートである)を保つための限界値であり、上限である1000Paは煤、タールの抑制という面での限界値である。また、形成用容器1内の構成部材としては、煤、タールなどの生成が促進しないように、非金属の材料が用いられている。
【0029】
ところで、加熱室13以外の他の処理室、すなわち基板供給室11、前処理室12、後処理室14および製品回収室15については詳しくは説明しなかったが、これら各室11,12,14,15についても減圧状態にされるとともに、加熱室13に空気などのカーボンナノチューブの形成に悪影響を及ぼすガスが流入するのを防止するために、図1に示すように、それぞれの底壁部2aにはヘリウムガスなどの不活性ガスを供給するためのガス供給口5′が設けられるとともに、上壁部2bには、ガス排出口6′が設けられている。
【0030】
なお、図1は熱CVD装置の概略構成を示し、その内部が分かるように、手前側の側壁部および断熱材4については省略している。
次に、上記熱CVD装置により、カーボンナノチューブの形成方法について説明する。
【0031】
まず、巻出しロール16から基板Kを引き出し、前処理室12、加熱室13および後処理室14における各区画壁3の連通用開口部3aを挿通させ、その先端を巻取りロール17に巻き取らせる。このとき、基板Kには張力が付与されて、連通用開口部3aからガイド板23までにおいて真っ直ぐな水平面となるようにされている。
【0032】
そして、前処理室12内では基板Kの洗浄が行われた後、不動態膜が下面全体に亘って塗布され、この不動態膜の表面に鉄の微粒子が塗布(付着)される。なお、この触媒微粒子の塗布範囲については、少なくとも、カーボンナノチューブの形成面(生成面)であればよい。
【0033】
この前処理が済むと、基板Kは所定長さ分だけ、つまりカーボンナノチューブが形成される長さ分だけ、巻取りロール17により巻き取られる。したがって、前処理室12で前処理が行われた部分が、順次、加熱室13内に移動される。ここで、カーボンナノチューブを形成する部分がガイド板23および押さえローラ25により円弧形状に湾曲されて、基板Kが保持される。なお、これらガイド板23および押さえローラ25は回転自在であるため、基板Kの移動はスムーズに行われる。
【0034】
この加熱室13では、排気装置(図示せず)により、所定の減圧下に、例えば数Pa〜1000Paの範囲に、具体的には、上述したように数十Pa〜数百Paに維持される。
そして、加熱装置21、すなわち発熱体22により、基板Kの温度を所定温度例えば700〜800℃に加熱するとともに、加熱室13の外壁温度が80℃またはそれ以下(好ましくは、50℃以下)となるようにする。
【0035】
上記温度になると、放出口5より原料ガスとしてアセチレンガス(C)を供給して所定の反応を行わせることにより、基板K下面に、カーボンナノチューブを生成(成長)させる。
【0036】
そして、所定時間が経過して所定高さのカーボンナノチューブが得られると、同じく、所定長さだけ移動されて、このカーボンナノチューブが形成された基板Kが後処理室14内に移動される。
【0037】
この後処理室14内では、基板Kの冷却と検査とが行われる。
この後処理が済むと、基板Kは製品回収室15内に移動されて、その上面に保護フィルムが貼り付けられるとともに、巻取りロール17に巻き取られる。すなわち、カーボンナノチューブが形成された基板Kが製品として回収されることになる。なお、カーボンナノチューブが形成された基板Kが全て巻取りロール17に巻き取られると、外部に取り出されることになる。
【0038】
上記熱CVD装置の構成によると、基板Kを加熱室13内に導くとともに原料ガスGを導入してその表面にカーボンナノチューブを形成する際に、巻出しロール16に巻き取られた基板Kを巻取りロール17に巻き取るようにするとともに、その途中の基板Kの表面にカーボンナノチューブを形成するようにしたので、所定長さ毎ではあるが連続的に、基板Kにカーボンナノチューブを形成することができ、したがって完全なバッチ式にカーボンナノチューブを形成する場合に比べて、効率良くカーボンナノチューブを形成することができる。
【0039】
また、カーボンナノチューブが形成される面を円弧形状に湾曲させるとともに、その円弧中心にガス導入ノズル9の放出口5が位置しているので、当該円弧形状の面のいずれの部分であっても上記放出口5からの距離(原料ガスG移動距離)は等しく、基板K表面での原料ガスG濃度は均一となる。さらに、発熱体22を含む曲面は、側面視が基板Kと同心円の円弧形状となるようにされているので、基板Kへの加熱の均一化が行われることから、原料ガスGの反応も均一に行われる。したがって、形成するカーボンナノチューブの膜を均一にすることができる。
【0040】
さらに、円弧形状に保持された基板Kの内周側に放出口5が位置することから、基板Kは原料ガスGが放出される空間を覆うような形状であるため、基板Kに原料ガスGを効率的に供給でき、より効率良くカーボンナノチューブを形成することができる。
【0041】
加えて、発熱体22を基板Kのカーボンナノチューブの形成面とは反対の上面(外周)側に配置したので、原料ガスGによる反応がスムーズに行われる。この理由は、発熱体22が直接基板Kを温めるとともに原料ガスGが発熱体22と反対の面から供給されるため、原料ガスGは基板Kに真っ先に供給されてその極近傍でガス分解が生じるからである。なお、原料ガスGが発熱体22を通過した場合には、その近傍でガス分解されて温度が高温から低温に変化する箇所で煤が生成し易くなると同時に、基板Kに供給される炭素が少なくなってしまう。
【0042】
また、加熱室13内を減圧したので、原料ガスGの拡散性が向上する(優れる)ため、基板Kの内周面全体に均一に原料ガスGを供給することができ、言い換えれば、ガスの流れの影響を受けにくくなるため、製品品質の向上に繋がるとともに、複雑な形状に対しても、基板Kに触媒粒子が付着している限り、カーボンナノチューブの形成が可能となる。
【符号の説明】
【0043】
K 基板
1 加熱炉
2 炉本体
2a 底壁部
2b 上壁部
3 区画壁
4 断熱材
5 放出口
6 ガス排出口
7 ガス抜出口
9 ガス導入ノズル
11 基板供給室
12 前処理室
13 加熱室
14 後処理室
15 基板回収室
16 巻出しロール
17 巻取りロール
21 加熱装置
22 発熱体
23 ガイド板
23a 回転面
23b 外周面
24 回転軸
25 押さえローラ
26 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱化学気相成長法により基板の表面に蒸着材料を蒸着させる加熱室を有するCVD装置であって、
上記加熱室内で所定幅の基板を側面視が円弧形状となるように保持し得る基板保持手段を具備するとともに、この基板保持手段により保持される基板の円弧中心位置に蒸着材料の放出口を当該基板の幅方向に沿って配置したことを特徴とするCVD装置。
【請求項2】
熱化学気相成長法により基板の表面に蒸着材料を蒸着させる加熱室を有するCVD装置であって、
上記加熱室内を所定方向に移動される所定幅の基板を側面視が円弧形状となるように保持し得る基板保持手段を具備するとともに、この基板保持手段により保持される基板の円弧中心位置に蒸着材料の放出口を当該基板の幅方向に沿って配置したことを特徴とするCVD装置。
【請求項3】
案内用回転体の外周に沿って加熱部材を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載のCVD装置。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−184709(P2011−184709A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48487(P2010−48487)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】