説明

DLL回路及びこれを備える半導体装置

【課題】エイリアシングによるエイリアシングによる誤動作の発生が防止されたDLL回路を提供する。
【解決手段】外部クロック信号CLKを遅延させることによって内部クロック信号LCLKを生成するディレイライン110と、ディレイライン110の遅延量を設定するカウンタ回路130と、外部クロック信号CLKの位相に基づいて位相判定信号PD0を生成する位相検出回路140と、外部クロック信号CLKに含まれるジッタ成分が所定の周波数以上であることに応答して、位相判定信号PDに基づいたカウンタ回路130のカウント値の更新を禁止するアンチエイリアス回路200とを備える。これにより、エイリアシングによる誤動作によって内部クロック信号LCLKが誤った方向に連続制御されるという問題がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDLL回路及びこれを備える半導体装置に関し、特に、クロック信号にジッタ成分が含まれる場合に用いることが好適なDLL回路及びこれを備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータなどのメインメモリとして、クロックに同期した動作を行うシンクロナスメモリが広く使用されている。中でも、DDR(Double Data Rate)型のシンクロナスメモリでは、入出力データを外部クロック信号に対して正確に同期させる必要があることから、外部クロック信号に同期した内部クロック信号を生成するためのDLL回路が必須である(特許文献1参照)。
【0003】
外部クロック信号には、ジッタ成分が含まれる場合がある。ジッタ成分とはクロック周波数のゆらぎであり、このゆらぎは所定の周波数を有している。したがって、外部クロック信号にジッタ成分が含まれる場合、DLL回路は内部クロック信号を外部クロック信号のジッタに追従させる必要がある。
【0004】
しかしながら、サンプリング定理により、内部クロック信号の調整周波数、すなわちサンプリング周波数の1/2を超える周波数は再現することができない。このことは、外部クロック信号に含まれるジッタ成分がサンプリング周波数の1/2を超えている場合には、DLL回路によって生成される内部クロック信号をジッタに追従させることができないことを意味する。
【0005】
しかも、ジッタ成分がサンプリング周波数の1/2を超えるとエイリアシングが生じ、さらに、サンプリング周波数の整数倍に近いケースにおいては、DLL回路が内部クロック信号を誤った方向に連続的に制御してしまうため、内部クロック信号の位相が所望の位相から大きくずれてしまうという問題があった。
【0006】
図6は、内部クロック信号が誤った方向に連続的に制御される現象を説明するための波形図である。
【0007】
図6に示す例では、サンプリング周波数をfとし、ジッタ周波数をfとした場合、
>f/2
であり、且つ、サンプリング周波数fとジッタ周波数をfが近接している。このような場合、サンプリング点S1〜S12まで連続して「位相遅れ」の判定となり、サンプリング点S13以降図示しないサンプリング点まで連続して「位相進み」の判定となる。しかしながら、図6に示すように、実際のサンプリング点S1〜S12までの期間に約11周期のジッタ成分が現れており、12回連続した「位相遅れ」の判定は誤りである。サンプリング点S13以降についても同様であり、複数回連続した「位相進み」の判定は誤りである。このような誤動作が発生すると、DLL回路は内部クロック信号の制御方向を誤った方向に連続制御してしまうため、所望の位相から大きくずれてしまう。
【0008】
このような問題を解決するためには、サンプリング周波数を高くすることが有効である。しかしながら、内部クロック信号の調整にはある程度の時間が必要であることから、サンプリング周波数には限界がある。また、サンプリング周波数を高くすると、消費電力が増大するという問題もある。
【特許文献1】特開2008−217947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来のDLL回路は、消費電力を増大させることなくエイリアシングによる誤動作の発生を防止することは困難であった。したがって、消費電力の増大を抑制しつつ、エイリアシングによる誤動作の発生を防止可能なDLL回路が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるDLL回路は、第1のクロック信号を遅延させることによって第2のクロック信号を生成する第1のディレイラインと、第1のディレイラインの遅延量を設定するカウンタ回路と、第1のクロック信号の位相に基づいて位相判定信号を生成する位相検出回路と、第1のクロック信号に含まれるジッタ成分が所定の周波数以上であることに応答して、位相判定信号に基づいたカウンタ回路のカウント値の更新を禁止するアンチエイリアス回路とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明による半導体装置は、上記のDLL回路と、第2のクロック信号に同期して外部出力信号を出力する出力バッファと、出力バッファと実質的に同一の回路構成を有し、第2のクロック信号に同期して第3のクロック信号を出力するするレプリカバッファとを備え、位相検出回路は、第1及び第3のクロック信号を比較することによって第1のクロック信号の位相を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、エイリアシングによる誤動作が発生しうる条件を検知した場合にカウンタ回路の更新を禁止していることから、サンプリング周波数を高めることなく、DLL回路の出力である第2のクロック信号が誤った方向に連続制御されるという問題がなくなる。しかも、カウンタ回路の更新を禁止した場合、更新に伴う電力消費が生じないことから、むしろ全体的な消費電力を削減することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の好ましい第1の実施形態による半導体装置10の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態による半導体装置10は、内部出力信号DRを出力する内部回路11と、内部出力信号DRに基づいて外部出力信号DQを出力する出力バッファ12と、出力バッファ12の動作タイミングを制御するDLL回路100とを備えている。内部回路11については、半導体装置10の種類によって異なり、例えば、本実施形態による半導体装置10がDRAMであれば、メモリセルアレイ、カラムスイッチ、リードアンプなどが含まれる。
【0016】
出力バッファ12は、出力端子13を介して外部出力信号DQを外部に出力する回路であり、外部出力信号DQの出力タイミングは、クロック端子14を介して入力される外部クロック信号CLK(第1のクロック信号)と同期している必要がある。出力バッファ12の動作タイミングは、DLL回路100によって制御される。以下、DLL回路の構成について詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、DLL回路100は、ディレイライン110と、分周回路120と、カウンタ回路130と、位相検出回路140と、アンチエイリアス回路200とを備えている。
【0018】
ディレイライン110は、外部クロック信号CLKを遅延させることによって内部クロック信号LCLK(第2のクロック信号)を生成する回路である。特に限定されるものではないが、ディレイライン110には、相対的に粗い調整ピッチで外部クロック信号を遅延させるコースディレイラインと、相対的に細かい調整ピッチで外部クロック信号を遅延させるファインディレイラインを含んでいることが好ましい。
【0019】
図1に示すように、内部クロック信号LCLKは、出力バッファ12及びレプリカバッファ15に供給される。出力バッファ12は、上述の通り、内部回路11より供給される内部出力信号DRを受け、これを外部出力信号DQとして出力端子13に供給する回路である。一方、レプリカバッファ15は、出力バッファ12と実質的に同一の回路構成を有しており、内部クロック信号LCLKに同期してレプリカクロック信号RCLK(第3のクロック信号)を出力する回路である。これにより、レプリカクロック信号RCLKの位相は、外部出力信号DQの位相と正確に一致することになる。但し、レプリカバッファ15を構成するトランジスタのサイズとしては、出力バッファ12を構成するトランジスタのサイズと同一である必要はなく、インピーダンスが実質的に同じである限り、シュリンクしたトランジスタを用いても構わない。
【0020】
分周回路120は、外部クロック信号CLKをN分周することによりサンプリングクロック信号SYNCLKを生成する回路である。サンプリングクロック信号SYNCLKは、カウンタ回路130及びアンチエイリアス回路200に供給され、サンプリングのタイミングを示す同期信号として用いられる。分周回路120を用いている理由は、カウンタ回路130の更新及びディレイライン110の遅延量の変更にはある一定の時間が必要だからであり、外部クロック信号CLKの毎周期ごとにカウンタ回路130の更新及びディレイライン110の遅延量変更を行うことは困難だからである。また、カウンタ回路130の更新及びディレイライン110の遅延量変更を必要以上に高頻度に行うと、消費電力が大幅に増大するからである。特に限定されるものではないが、本実施形態では、分周回路120の分周数Nを8に設定している。つまり、外部クロック信号CLKの周波数をfCLKとし、サンプリングクロック信号SYNCLKの周波数、つまりサンプリング周波数をfとした場合、
=fCLK/8
である。
【0021】
カウンタ回路130は、ディレイライン110の遅延量を設定する回路であり、サンプリングクロック信号SYNCLKに同期して、そのカウント値が更新される。カウント値の増減は、アンチエイリアス回路200から供給されるアップダウン信号UPDNに基づいて定められる。つまり、アップダウン信号UPDNがアップカウントを示している場合、カウンタ回路130はサンプリングクロック信号SYNCLKに同期してそのカウント値をアップカウントし、これにより、ディレイライン110の遅延量を増大させる。逆に、アップダウン信号UPDNがダウンカウントを示している場合、カウンタ回路130はサンプリングクロック信号SYNCLKに同期してそのカウント値をダウンカウントし、これにより、ディレイライン110の遅延量を減少させる。
【0022】
カウンタ回路130におけるカウント値の更新は、アンチエイリアス回路200から供給されるカウンタイネーブル信号CENによって許可又は禁止される。つまり、サンプリングクロック信号SYNCLKのアクティブエッジが現れた場合であっても、カウンタイネーブル信号CENがディセーブル状態であれば、カウント値の更新は禁止される。したがって、カウント値の更新が許可されるのは、サンプリングクロック信号SYNCLKのアクティブエッジが現れた時点で、カウンタイネーブル信号CENがイネーブル状態である場合に限られる。
【0023】
位相検出回路140は、外部クロック信号CLKとレプリカクロック信号RCLKとの位相差を検出する回路である。上述の通り、レプリカクロック信号RCLKの位相は外部出力信号DQの位相と一致するよう、ディレイライン110によって調整されるが、電圧や温度などディレイライン110の遅延量に影響を与えるパラメータの変動や、外部クロック信号CLK自体の周波数変動などによって、両者の位相は刻々と変化する。位相検出回路140はこのような変化を検出し、外部クロック信号CLKに対してレプリカクロック信号RCLKが進んでいるか或いは遅れているかを判定する。判定は外部クロック信号CLKの毎周期ごとに行われ、その結果は位相判定信号PD0としてアンチエイリアス回路200に供給され、カウンタ回路130のカウント値を更新に利用される。
【0024】
アンチエイリアス回路200は、外部クロック信号CLK、サンプリングクロック信号SYNCLK及び位相判定信号PD0を受け、これらに基づいてアップダウン信号UPDN及びカウンタイネーブル信号CENを生成する回路である。
【0025】
アンチエイリアス回路200の基本的な動作は次の通りである。すなわち、1サンプリング周期に亘って位相判定信号PD0を監視し、その結果、レプリカクロック信号RCLKが進んでいると判定した場合には、アップダウン信号UPDNをアップカウント状態とし、これによってディレイライン110の遅延量を増大させる。逆に、レプリカクロック信号RCLKが遅れていると判定した場合には、アップダウン信号UPDNをダウンカウント状態とし、これによってディレイライン110の遅延量を減少させる。さらに、外部クロック信号CLKに含まれるジッタ成分が所定の周波数以上であるか否かを判定し、その結果、ジッタの周波数が所定の周波数未満であればカウンタイネーブル信号CENをイネーブル状態とし、逆に、ジッタの周波数が所定の周波数以上であればカウンタイネーブル信号CENをディセーブル状態とする。
【0026】
かかる動作により、カウンタ回路130の更新は、外部クロック信号CLKに含まれるジッタ成分が所定の周波数以上である場合には禁止されることになる。以下、アンチエイリアス回路200について詳細に説明する。
【0027】
図2は、アンチエイリアス回路200の回路図である。
【0028】
図2に示すように、アンチエイリアス回路200は、サンプリングクロック信号SYNCLKの立ち上がりエッジに応答してリセットパルスRSTを生成するリセットパルス生成部210を有している。リセットパルス生成部210は、ディレイ素子211、インバータ212及びNAND回路213によって構成されている。リセットパルス生成部210によって生成されるリセットパルスRSTは、SRラッチ220,230のリセット入力端に共通に供給される。
【0029】
SRラッチ220は、NAND回路221,222が循環接続された構成を有しており、そのセット入力端には、D−F/F回路240、インバータ241、NAND回路242によって生成されるアップカウント信号UP0が供給される。D−F/F回路240は、外部クロック信号CLKに同期して位相判定信号PD0をラッチする回路である。
【0030】
SRラッチ230は、NAND回路231,232が循環接続された構成を有しており、そのセット入力端には、D−F/F回路240及びNAND回路243によって生成されるダウンカウント信号DN0が供給される。
【0031】
SRラッチ220の出力UPはD−F/F回路251に供給され、D−F/F回路251の出力はアップダウン信号UPDNとして用いられる。D−F/F回路251は、外部クロック信号CLKに同期してSRラッチ220の出力をラッチする回路である。
【0032】
さらに、SRラッチ220,230の出力UP,DNは、NOR回路261及びインバータ262からなるOR回路260に供給され、その出力CEN0はD−F/F回路252に供給される。D−F/F回路252の出力はカウンタイネーブル信号CENとして用いられる。D−F/F回路252は、外部クロック信号CLKに同期してOR回路260の出力CEN0をラッチする回路である。
【0033】
このような回路構成により、リセットパルスRSTが活性化するとSRラッチ220,230がリセットされる。これにより、位相判定信号PD0のレベルにかかわらず、カウンタイネーブル信号CENはハイレベル(イネーブル状態)となる。一方、位相判定信号PD0のレベルに応じてSRラッチ220,230のいずれか一方がセットされるため、これに応じてアップダウン信号UPDNのレベルが決まる。そして、同じサンプリング期間内において位相判定信号PD0の論理レベルが変化すると、SRラッチ220,230の両方がセットされるため、カウンタイネーブル信号CENはローレベル(ディセーブル状態)に変化する。
【0034】
このように、アンチエイリアス回路200は、同じサンプリング期間内において位相判定信号PD0が変化すると、カウンタイネーブル信号CENをディセーブル状態とする動作を行う。次に、タイミングチャートを用いてアンチエイリアス回路200の動作をより具体的に説明する。
【0035】
図3は、アンチエイリアス回路200の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0036】
図3に示すように、アンチエイリアス回路200は、外部クロック信号CLKの8周期ごとにリセットパルスRSTを活性化させる。これは、サンプリングクロック信号SYNCLKが外部クロック信号CLKを8分周した信号だからである。図3に示す例では、時刻t10においてサンプリングクロック信号SYNCLKが活性化した後、外部クロック信号CLKの最初のアクティブエッジが到来する時点における位相判定信号PD0がハイレベルであることから、アップカウント信号UP0はハイレベルに固定され、ダウンカウント信号DN0はクロッキングする。その結果、SRラッチ220はリセット状態を保持し、SRラッチ230はセット状態となることから、アップダウン信号UPDNはハイレベル、カウンタイネーブル信号CENもハイレベルとなる。したがって、時刻t20におけるカウンタ回路130の更新動作が許可され、アップカウントが行われる。
【0037】
時刻t20において次のサンプリングクロック信号SYNCLKが活性化すると、SRラッチ220,230が再びリセットされるが、時刻t20においてサンプリングクロック信号SYNCLKが活性化した後、外部クロック信号CLKの最初のアクティブエッジが到来する時点における位相判定信号PD0がローレベルであることから、ダウンカウント信号DN0はハイレベルに固定され、アップカウント信号UP0はクロッキングする。その結果、SRラッチ230はリセット状態を保持し、SRラッチ220はセット状態となる。しかしながら、図3に示す例では、次にサンプリングクロック信号SYNCLKが活性化する時刻t30より以前の時刻t21において、位相判定信号PD0のレベルが変化している。その結果、カウンタイネーブル信号CENはローレベルとなり、時刻t30におけるカウンタ回路130の更新動作は禁止される。
【0038】
このように、アンチエイリアス回路200は、サンプリング期間中において位相判定信号PD0の論理レベルが変化しない場合、つまり、外部クロック信号CLKの8周期に亘って位相判定信号PD0が変化しない場合には、カウンタイネーブル信号CENをイネーブル状態とする一方、サンプリング期間中において位相判定信号PD0の論理レベルが変化した場合には、カウンタイネーブル信号CENをディセーブル状態とする。ここで、サンプリング期間中において位相判定信号PD0の論理レベルが変化しない場合とは、外部クロック信号CLKにジッタが含まれている場合であっても、ジッタの周波数fがサンプリング周波数fの1/2以下であることを意味する。
【0039】
図4は、ジッタの周波数fとサンプリング周波数fとの関係を示す図であり、(a)はf>f/2である場合、(b),(c)はf=f/2である場合、(d)はf<f/2である場合をそれぞれ示している。
【0040】
図4(a)に示すように、f>f/2である場合は、ジッタ成分による外部クロック信号CLKの遅れと進みの切り替わり点Xが全てのサンプリング周期Tに必ず含まれることになる。このような周波数を持ったジッタ成分はサンプリング定理により追従不可能であることから、アンチエイリアス回路200によって遮断される。
【0041】
一方、図4(b),(c)に示すように、f=f/2である場合は、切り替わり点Xの出現周期とサンプリング周期が一致する。したがって、ジッタが図4(b)に示す位相であれば、切り替わり点Xとサンプリング点Sとは一致し、ジッタが図4(c)に示す位相であれば、切り替わり点Xが全てのサンプリング周期に含まれることになる。
【0042】
これに対し、図4(d)に示すように、f<f/2である場合は、切り替わり点Xが含まれるサンプリング周期と、切り替わり点Xが含まれないサンプリング周期が必ず混在することになる。したがって、切り替わり点Xが含まれないサンプリング周期においてはカウンタ回路130の更新が許可され、切り替わり点Xが含まれるサンプリング周期においてはカウンタ回路130の更新が禁止されることになる。
【0043】
このように、外部クロック信号CLKにDLL回路100が追従不可能なジッタ成分が含まれている場合、カウンタ回路130の更新が禁止されることから、図6に示したようなエイリアシングによる誤動作の発生を防止することが可能となる。
【0044】
但し、図4(d)に示したように、ジッタの周波数fがサンプリング周波数fの1/2以下であっても、いずれかのサンプリング周期には必ず切り替わり点Xが発生することから、当該サンプリング周期においてはカウンタ回路130の更新が禁止されてしまう。このようなサンプリング周期は、ジッタの周波数fがサンプリング周波数fの1/2に近いほど高頻度に発生し、この場合にはカウンタ回路130の更新禁止が頻繁に発生する。このような場合であっても、DLL回路100は正しくロック状態を保つことができるが、アプリケーションによってこれが問題となるケースにおいては、同一サンプリング期間内において位相判定信号PD0が変化した場合であっても、所定のケースにおいてはカウンタ回路130の更新を許可するよう、アンチエイリアス回路200を構成しても構わない。
【0045】
具体的には、サンプリング期間中における位相判定信号PD0がN/2回を超えて連続して同じ値である場合に、カウンタ回路130の更新を許可しても構わない。ここで、Nとは分周回路120の分周数であり、上記実施形態では8である。したがって、この場合は、位相判定信号PD0が5回以上連続して同じ値であれば、カウンタ回路130の更新が許可される。同様に、分周回路120の分周数Nが16であれば、位相判定信号PD0が9回以上連続して同じ値であれば、カウンタ回路130の更新が許可される。これによれば、エイリアシングによる誤動作をある程度防止しつつ、カウンタ回路130の更新を高頻度に行うことが可能となる。これに対し、サンプリング期間中における位相判定信号PD0の連続回数がN/2回以下である場合には、カウンタ回路130の更新を許可すべきではない。このようなケースにおいてカウンタ回路130の更新を許可すると、エイリアシングを十分に除去することができないからである。
【0046】
また、ノイズ等によって、同一サンプリング期間中に位相判定信号PD0が1回だけ異なる論理レベルとなるケースも考えられる。したがって、このようなケースにおいてカウンタ回路130の更新を禁止すると、ノイズの影響を受けやすくなる可能性もある。このような問題を解決するためには、同一サンプリング期間中に位相判定信号PD0が1回だけ異なる論理レベルとなった場合には、これをノイズとみなして無視しても構わない。つまり、分周数Nが8である場合には、連続/不連続を問わず、位相判定信号PD0が7回以上同じ値であればカウンタ回路130の更新を許可すればよい。同様に、分周数Nが16である場合には、連続/不連続を問わず、位相判定信号PD0が15回以上同じ値であればカウンタ回路130の更新を許可すればよい。
【0047】
尚、分周数Nが大きい場合には、位相判定信号PD0が2回だけ(又はそれ以上)異なる論理レベルとなったケースにおいても、これをノイズとみなして無視しても構わない。例えば、分周数Nが16である場合には、連続/不連続を問わず、位相判定信号PD0が14回以上同じ値であればカウンタ回路130の更新を許可しても構わないし、分周数Nが32である場合には、連続/不連続を問わず、位相判定信号PD0が30回以上同じ値であればカウンタ回路130の更新を許可しても構わない。異なる論理レベルとなる2回又はそれ以上の位相判定信号PD0を無視する場合には、これら位相判定信号PD0が不連続に発生したものであることを条件とすることも好ましい。ノイズによる位相判定信号PD0の反転は不規則に発生するものと考えられるからである。
【0048】
逆に、ジッタの影響をより確実に排除する必要がある場合には、サンプリング周期を超える期間に亘って位相判定信号PD0を監視し、当該期間中において位相判定信号PD0が変化しない場合にカウンタイネーブル信号CENをイネーブル状態とすればよい。これによれば、カウンタイネーブル信号CENがイネーブル状態となる条件がより厳しくなるが、より低周波のジッタ成分を除去することが可能となる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、サンプリング定理により再現することができないジッタが遮断されることから、サンプリング周波数を高めることなく、DLL回路100の出力である内部クロック信号LCLKの誤差を低減することが可能となる。しかも、カウンタ回路130の無駄な更新を行わないことから、消費電力を削減することも可能となる。
【0050】
次に、本発明の好ましい第2の実施形態について説明する。
【0051】
図5は、本発明の好ましい第2の実施形態による半導体装置20の構成を示すブロック図である。
【0052】
図5に示すように、本実施形態による半導体装置20は、ディレイライン160、カウンタ回路170及びデューティ検出回路180をさらに備え、これら2つのディレイライン110,160の出力を信号合成器190によって合成することによって内部クロック信号LCLKを生成する。その他の点については上述した第1の実施形態による半導体装置10と基本的に同じであることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0053】
ディレイライン160及びカウンタ回路170は、インバータ250によって反転した外部クロック信号CLKのデューティを補正するデューティ補正回路を構成する。具体的には、ディレイライン160は、外部クロック信号CLKの立ち下がりエッジの位置を調整することによって内部クロック信号LCLKのデューティを調整する。その調整量は、カウンタ回路170によって定められる。一方、ディレイライン110は、外部クロック信号CLKの立ち上がりエッジの位置を調整することによって内部クロック信号LCLKの位相を調整する。これにより、信号合成器190によって生成される内部クロック信号LCLKは、位相及びデューティとも正しく調整された信号となる。
【0054】
カウンタ回路170は、ディレイライン160の遅延量を設定する回路であり、サンプリングクロック信号SYNCLKに同期して、そのカウント値が更新される。カウント値の増減は、デューティ検出回路180から供給されるアップダウン信号UPDN1に基づいて定められる。つまり、アップダウン信号UPDN1がアップカウントを示している場合、カウンタ回路170はサンプリングクロック信号SYNCLKに同期してそのカウント値をアップカウントし、これにより、ディレイライン160の遅延量を増大させる。逆に、アップダウン信号UPDN1がダウンカウントを示している場合、カウンタ回路170はサンプリングクロック信号SYNCLKに同期してそのカウント値をダウンカウントし、これにより、ディレイライン160の遅延量を減少させる。
【0055】
デューティ検出回路180は、ディレイライン110,160に基づいて、内部クロック信号LCLKのデューティを検出する回路である。
【0056】
カウンタ回路170におけるカウント値の更新は、アンチエイリアス回路200から供給されるカウンタイネーブル信号CENによって許可又は禁止される。すなわち、カウンタイネーブル信号CENがディセーブル状態になると、カウンタ回路130だけでなく、カウンタ回路170についてもカウント値の更新が禁止されることになる。これにより、デューティ調整側においても、追従不可能なジッタの影響によって誤った方向にデューティが調整され続けるという問題がなくなる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の好ましい第1の実施形態による半導体装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】アンチエイリアス回路200の回路図である。
【図3】アンチエイリアス回路200の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】ジッタの周波数fとサンプリング周波数fとの関係を示す図であり、(a)はf>f/2である場合、(b),(c)はf=f/2である場合、(d)はf<f/2である場合をそれぞれ示している。
【図5】本発明の好ましい第2の実施形態による半導体装置20の構成を示すブロック図である。
【図6】エイリアシングによる誤動作が発生するメカニズムを説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0059】
10,20 半導体装置
11 内部回路
12 出力バッファ
13 出力端子
14 クロック端子
15 レプリカバッファ
100 DLL回路
110,160 ディレイライン
120 分周回路
130,170 カウンタ回路
140 位相検出回路
190 信号合成器
200 アンチエイリアス回路
210 リセットパルス生成部
220,230 SRラッチ
CLK 外部クロック信号
LCLK 内部クロック信号
RCLK レプリカクロック信号
SYNCLK サンプリングクロック信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロック信号を遅延させることによって第2のクロック信号を生成する第1のディレイラインと、
前記第1のディレイラインの遅延量を設定する第1のカウンタ回路と、
前記第1のクロック信号の位相に基づいて位相判定信号を生成する位相検出回路と、
前記第1のクロック信号に含まれるジッタ成分が所定の周波数以上であることに応答して、前記位相判定信号に基づいた前記第1のカウンタ回路のカウント値の更新を禁止するアンチエイリアス回路と、を備えることを特徴とするDLL回路。
【請求項2】
前記アンチエイリアス回路は、前記位相判定信号に基づいて前記第1のカウンタ回路のカウント値の更新の可否を判定することを特徴とする請求項1に記載のDLL回路。
【請求項3】
前記第1のクロック信号をN分周することによりサンプリングクロック信号を生成する分周回路をさらに備え、
前記第1のカウンタ回路は、前記サンプリングクロック信号に同期して前記第1のカウンタ回路のカウント値の更新を行い、
前記アンチエイリアス回路は、前記サンプリングクロック信号の1周期の期間中における前記位相判定信号の少なくとも一部に基づいて、前記第1のカウンタ回路のカウント値の更新の可否を判定することを特徴とする請求項2に記載のDLL回路。
【請求項4】
前記アンチエイリアス回路は、前記サンプリングクロック信号の1周期の期間中における前記位相判定信号がN/2回を超えて連続して同じ値であることに応答して、前記第1のカウンタ回路のカウント値の更新を許可することを特徴とする請求項3に記載のDLL回路。
【請求項5】
前記アンチエイリアス回路は、前記サンプリングクロック信号の1周期の期間中における前記位相判定信号が全て同じ値であることに応答して、前記第1のカウンタ回路のカウント値の更新を許可することを特徴とする請求項3に記載のDLL回路。
【請求項6】
前記アンチエイリアス回路は、前記位相判定信号が前記サンプリングクロック信号の1周期の期間を超えて同じ値であることに応答して、前記第1のカウンタ回路のカウント値の更新を許可することを特徴とする請求項3に記載のDLL回路。
【請求項7】
前記第2のクロック信号のデューティを検出するデューティ検出回路と、
前記デューティ検出回路の検出結果に基づいて前記第2のクロック信号のデューティを補正するデューティ補正回路と、をさらに備え、
前記アンチエイリアス回路は、前記第1のクロック信号に含まれるジッタ成分が前記所定の周波数以上であることに応答して、前記デューティ補正回路によるデューティの補正を禁止することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のDLL回路。
【請求項8】
前記デューティ補正回路は、前記第1のクロック信号の一方のエッジを遅延させることによって前記第2のクロック信号のデューティを調整する第2のディレイラインと、前記第2のディレイラインの遅延量を設定する第2のカウンタ回路とを含み、
前記第1のクロック信号に含まれるジッタ成分が前記所定の周波数以上であることに応答して、前記デューティ検出回路によるによる前記第2のカウンタ回路のカウント値の更新を禁止することを特徴とする請求項7に記載のDLL回路。
【請求項9】
前記位相検出回路は、前記第2のクロック信号を遅延させた第3のクロック信号と、前記第1のクロック信号とを比較することによって、前記第1のクロック信号の位相を判定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のDLL回路。
【請求項10】
請求項9に記載のDLL回路を備える半導体装置であって、
前記第2のクロック信号に同期して外部出力信号を出力する出力バッファと、前記出力バッファと実質的に同一の回路構成を有し、前記第2のクロック信号に同期して前記第3のクロック信号を出力するするレプリカバッファとを備えていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−124020(P2010−124020A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292940(P2008−292940)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】