説明

FGF−2またはFGF−β増殖因子を保護するための物質の使用

【課題】FGF−2を保護し得る物質、FGF−2の変質を予防または抑制する組成物および皮膚におけるFGF−2を変質から保護する方法の提供。
【解決手段】FGF−2を変質から保護するに有効な量のハイビスカス・アベルモスカス、即ちアンブレットの抽出物、レボクザ抽出物、ゴーギジベリー抽出物、バンハ抽出物、レソニア抽出物、カラシナ粉抽出物、ウーイイン抽出物、オオムギ抽出物および/またはゴマ抽出物から成る群から選択される植物抽出物と許容されうる賦形剤とを含んで成るヒト皮膚におけるFGF−2の変質を予防または抑制するための製薬学的組成物または化粧品組成物。外組成物は細胞外マトリクス、特に真皮の再構築を可能にし、例えば老化の抑制などに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の増殖因子の変質を抑制する目的で化粧品、皮膚化粧品または製薬学的用途用の有効成分を開発することに関する。より詳細には、本発明は、線維芽細胞増殖因子(FGF−2または塩基性FGF−2またはFGF−β)の変質を防ぐことに関する。
【0002】
本発明は、更に、真皮の特質、とりわけ後者が加齢の影響、特にヒトにおける加齢の影響を受けた時の特質を予防、制限または改善する有効成分の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
いろいろな増殖因子が皮膚レベルで関与している。そのような増殖因子の一例はFGF−2であり、これは幅広い活性スペクトルを示し、そのようなスペクトルには線維芽細胞の増殖が含まれ、それによって、皮膚の保全にとって必須であるマトリクスの巨大分子が合成される。皮膚の中のFGF−2はヘパラン硫酸プロテオグリカンで保護されている。増殖因子と細胞内マトリクスのプロテオグリカンの間に密な関係が存在することが1990年代の非特許文献1に記述され、このことは、貯留現象に加えて、そのような相互作用によって増殖因子が蛋白分解から保護されていることを説明している。その結果として増殖因子の安定性がより高くなり(例えば生体内の半減期が長くなり)、それによって、それらはそれらの機能を最適に満たすことが可能になる。
【0004】
FGF−2およびプロテオグリカン
FGF−2は、現時点で数えられる如き23種類の異なるFGFで構成されるファミリーの一部である。FGF−2は数種のアイソフォームで存在する。脊椎動物では、分子量が18、22、22.5、24および34kDaの5種類のアイソフォームが存在する。細胞の外側で検出されるフォームは18kDaのフォームのみである一方、他のアイソフォームは細胞内、より具体的には核内に拘束されている。FGF−2は、生理学的レベルで非常に重要な役割を果たす遍在する蛋白質であり、FGF−2は胚の発生、血管形成、ニューロン分化および組織修復に関与している。実際、それは大部分の組織に存在するが、より詳細には、後者の基底膜の所を標的に分布している。FGF−2は有機体の中に精製および特徴付け可能な比率で存在してはいるが、それのmRNAは検出不可能である。このことおよびそれが組織の基底膜に最終的に結合した状態で分布していると言った特殊性によって、それは初期速度で産生された後に発達中に細胞から放出されることでMECの中に貯蔵される(この過程中に基底膜が強力なリモデリングを受けることでFGF−2が局所的に放出される)と提案されている。そのような貯蔵によって成人になって必要になった状態の時にFGF−2が放出されることで組織修復および分化機能の維持に参与すると思われている。従って、加齢に伴ってFGF−2の供給が低下すると同時に最大活性状態はもはやもたらされないと思われている。
【0005】
プロテオグリカン(PG)は細胞外形態の18kDa FGF−2の潜在的貯留層を細胞外マトリクスの中に形成する。
【0006】
プロテオグリカンは細胞外、膜または細胞内に存在する分子である。それらは「コア蛋白質」と呼ばれる蛋白質鎖で構成されていて、それにいろいろなグリコアミノグリカン(GAG)が接合している。主なGAGはヘパリン硫酸(HS)、ヘパリン(HP)、コンドロイチン硫酸(CS)、デルマタン硫酸(DS)、コンドロイチン硫酸の異性体およびケラチン硫酸(KS)である。
【0007】
ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)はFGF−2と比較的強い親和力で結合していることでそれをいろいろな変質から保護しておりかつ貯留層として用いられることが文献に記述された。FGF−2と個々のGAGの特異的結合が立証された:ヘパリン硫酸。増殖する内皮細胞のMECとFGF−2の結合がヘパリンまたはヘパリン硫酸の存在下で阻害されることが立証されたが、コンドロイチン硫酸の存在下でもケラタン硫酸の存在下でもヒアルロン酸の存在下でも阻害されなかった。その上、ヘパリチナーゼ(ヘパリンおよびヘパリン硫酸の特異的酵素)による前処理を受けさせておいたMECはFGF−2と結合しないことも分かったが、コンドロイチナーゼABC(コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸の特異的酵素)を用いた時には確認されなかった。そのような結果は全部がFGF−2とMECのヘパリン硫酸の間に特異的関係が存在することを立証しており、そのような関係は他のGAGに関しては確認されていない。
【0008】
そのような相互作用に関する調査を構造レベルで実施した結果、ヘパリン硫酸がFGF−2と結合するに必要な最低限の鎖配列はC−硫酸化イズロン酸残基を少なくとも1個とN−スルフェート基を少なくとも1個含有する五糖であることが分かった。その上、FGF−2にヘパリン硫酸結合部位が存在していることでそのような相互作用が可能になる。この部位は数個の塩基性アミノ酸残基を含有する2つのβシートであるβ10およびβ11シートのレベルで存在する。また、FGF−2の生物学的受容体と結合する個別の部位がそれに存在することも分かった:FGFR。FGFとこれのシグナル伝達受容体の相互作用には、その受容体の二量化および共受容体としてのヘパリン硫酸の存在が関与している。FGF−2に対する反応のモデルは、2成分複合体であるFGF−2/HSPGが生じた後にFGFRが瞬時に結合することによって3成分複合体の生成がもたらされそして前記受容体の蛋白質キナーゼによって前記3成分複合体が二量化を起こすことで生体内生物学的活性がもたらされることを示している(非特許文献2)。このモデルは、更に、FGFRにヘパリン/ヘパリン硫酸結合部位が存在することが見つかったことでも裏付けされた。
【0009】
数種のヘパラン硫酸プロテオグリカンがFGF−2と結合する可能性があり、そのようなプロテオグリカンは細胞表面と結合しているか、MEC内に自由に存在するか或は基底膜上に存在する可能性がある。それらの中の4種類が文献の中に挙げられている。それらはβ−グリカン、即ち膜ヘパラン硫酸プロテオグリカン(しかしながら、これはTGFβに対する親和力の方が強い);グリピカン、即ちグリコシルホスホイノシトール結合を通して細胞膜と結合しているヘパラン硫酸プロテオグリカン;シンデカン、即ちFGF−2に対して最も高い親和力を有する膜貫通型ヘパラン硫酸プロテオグリカン;およびペルレカン、即ちマトリクスのヘパラン硫酸プロテオグリカンである。
【0010】
FGF−2の変質および保護
FGF−2は蛋白分解を起こし易く、生理学的温度でさえ急速に変質し得る。FGF−2がヘパリン(高度に硫酸化された天然のGAG)[これはFGF−2と非常に強力に親和することで標準的な防御をもたらす]の存在有り無しで変質を起こす条件が調査されそして文献に記述された。
【0011】
TARDIEUおよび同僚が1992年に(酸)FGF−1およびFGF−2がpHの変化に遭遇した時に示す挙動を調査した(非特許文献3)。前以てヘパリンを用いるか或は用いないで下記の3種類の条件下で試験された:pH2、pH7およびpH9。線維芽細胞増殖モデルを用い、放射性元素を取り込ませることで、FGFの変質が調査された。その結果は、FGF−2は酸性pHおよび塩基性pHで不活性になるが、ヘパリンを存在させるとFGF−2が中性のpHの時に示す観察される活性と同様な活性(または僅かのみ弱い)を維持し得ることを示している。
【0012】
前記著者は、また、同じモデルを用いてFGF−1およびFGF−2が熱で変質することも調査した。FGFの溶液をヘパリンの存在有り無しで0℃、20℃、37℃、60℃および90℃で下記のいろいろな時間インキュベートしている:1時間、24時間、7日、14日、30日および60日。その得た結果は、FGF−2の活性が温度に依存することを示している。温度を高くするとFGF−2の活性が低下する。注目すべきは、60℃および90℃の時には活性が検出されず、ヘパリンを存在させた時でさえ検出されない。他方、他の調査された温度の時、ヘパリンはFGF−2の活性を経時的に保護する。
【0013】
最後に、FGF−1およびFGF−2がトリプシンおよびキモトリプシンと遭遇した時にそれらが酵素によって起こす変質が調査された。FGF溶液をヘパリンの存在有り無しで37℃で3時間インキュベートした後、変質しなかったFGFを調査する目的で18%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動が実施された。そのようなインキュベーション時間にするとトリプシンを用いるか或はキモトリプシンを用いるかに拘わらずサンプルに存在するFGFが全部変質を起こす。他方、ヘパリンを存在させると、FGF−2に関係した18kDaの帯を確認することができ、このことは、FGF−2がヘパリンによって完全に保護されたことを意味する。
【0014】
同じようにして、GAGがFGF−2の活性形態を安定化させ、それを酸または熱による変性からさえも保護しかつ特定の細胞受容体との特異的相互作用を高めることが示された。ヘパリンを存在させるとFGFは貯蔵中の安定性がより高くなりかつ変性および蛋白分解条件に対する耐性がより高くなる。
【0015】
FGF−2が治療、治癒および組織修復で重要な役割を果たしかついろいろなストレス、例えば温度および酵素による蛋白分解などに敏感であることを考慮して、あるチームは、FGF−2を追加的に供給するか或は天然もしくは合成分子を用いてFGF−2を更に保護した時の効果を研究した。
【0016】
実際、Yamanakaは2005年に組換え型FGF−2を皮膚の潰瘍を治療する目的で局所的に用いることを記述している(非特許文献4)。FGF−2は線維芽細胞のFGF受容体を刺激して線維芽細胞の活性化および血管増殖を誘発する。FGF−2はまた修復過程中の再構築段階中にケラチノサイトの増殖に対しても作用すると思われている。
【0017】
FGF−2を熱、pHによる変性および酵素(トリプシンおよびキモトリプシン)による分解(degradation)に対して保護することでFGF−2の活性(線維芽細胞のマイトジェン活性)に可能性を持たせる目的でデキストラン誘導体が合成された(この上で引用した非特許文献3)。そのような誘導体はヘパリンよりもFGF−2を大きく保護することが分かり、その結果として、強力な抗凝血活性を有するヘパリンの代替使用に相当する化合物を得ることができる可能性が存在する。それらは組織修復に作用する製薬学的製剤用マトリクスの安定剤、ポテンシャライザー(potentializers)および保護剤である。更に、Franck他は2004年にデキストランの他の誘導体が線維芽細胞培養物中で細胞の増殖を増大させかつ増殖因子が細胞増殖に対して示す効果を助長する可能性があることも示した(非特許文献5)。
【0018】
最後に、Sylvia Colliec−Jouault他は、細菌を用いて新合成した特別なエキソ多糖の使用を取り扱っており、それは、ラットを用いた実験モデルで骨充填用移植片として用いられた(非特許文献6)。その動物は15日後に完全な治癒を示し、炎症反応は全く観察されなかった。このような結果は、エキソ多糖と可溶媒介物(FGF−2を包含)が相互作用することで説明可能であり、それによって、FGF−2の増殖活性が高まることで治癒現象が助長されると思われる。前記エキソ多糖は歯科治癒で用いられている。
【0019】
皮膚:FGF−2、プロテオグリカンおよび老化
皮膚におけるFGF−2は表皮、真皮−表皮接合部(JDE)、真皮、下皮および毛細管に存在し、それは幅広い活性スペクトルを示す。それによって真皮内で起こる線維芽細胞の増殖が確保されることで皮膚の保全に必須なマトリクスの巨大分子が合成され得るが、それはまた皮膚の他の細胞にも作用する。実際、メラニン細胞の増殖はFGF−2(これはまた毛細管形成助長因子でもある)によって抑制される。FGF−2は、線維芽細胞の所でそれを増殖させることに加えて、また、ヒアルロナンシンターゼの遺伝暗号を指定する遺伝子のmRNA率を高めることで、真皮の主GAGであるヒアルロナンの産生も高める。
【0020】
FGF−2は創傷時の治癒現象の重要な作用因子である。それは線維芽細胞レベルで常にそれの増殖を高めることで作用するが、また、ケラチノサイトに対しても作用することでコラゲナーゼ−1の発現を抑制し、それによって、皮膚が再構築される速度を速める。治癒中のそのような作用はヘパリン硫酸をトランスポータ/貯留層として用いた時には起こらないが、デルマタン硫酸を用いた時に起こる。その後に起こるFGF−2の発現は主にケラチノサイト、マクロファージおよび線維芽細胞によって起こる。FGF−2が生体内で示す半減期は37℃で中性pHの時に約24時間であると検定された(非特許文献7)。このように、FGF−2は数多くの機能を満たすことから皮膚の重要なサイトカインである。
【0021】
皮膚のプロテオグリカンおよびそれらの分布が研究された。FGF−2と相互作用し得ることが確認された主GAGは皮膚に存在する。GAGの量的および定性的分布は下記の通りであると測定された。ヒアルロン酸(31%)、コンドロイチン硫酸(25%)、ケラタン硫酸(24%)、デルマタン硫酸(20%)そして最後にヘパラン硫酸(18%)。真皮に含まれているヘパラン硫酸によって存在するFGF−2が貯蔵される。
【0022】
皮膚は老化中にいろいろな生理学的変化を起こす。最も目に見える印を形成するしわに加えて深い構造的変化も現れる。注目すべきは、真皮は退化を起こし、特に線維芽細胞の数が減少しかつ合成効力が低下する結果として退化を起こすことで、細胞外マトリクスの巨大分子が変化する。また、グリコサミノグリカンの合成が減少するとそれに伴って存在するプロテオグリカンが再編成されることも報告されている。線維芽細胞培養物を用いた研究で、老化中にヒアルロン酸の合成が非常に低下する一方でケラタンおよびコンドロイチン硫酸の合成が増加することを示すことができた。デルマタンおよびヘパラン硫酸に関して、それらの合成の減少は止まらないと思われる。それが減少するともはやFGF−2が貯蔵されなくなり、従って、FGF−2の内因性効力が保護されなくなると思われる。
【0023】
【非特許文献1】FeigeおよびBaird(Medecine/Sciences, 1992;8:805-10)
【非特許文献2】IBRAHIMIおよび同僚, Biochemistry, 2004, 43, 4724-4730
【非特許文献3】TARDIEUおよび同僚, Journal of cellular Physiology, 150:194-203;(1992)
【非特許文献4】Basic fibroblast growth factor treatment for skin ulcerations in scleroderma, cutis,2005; 76 :373-376
【非特許文献5】J.Biomater Sci. Polymer Edn. 15巻. N°11, 1463-1480頁(2004)
【非特許文献6】Exopolysaccharides produced by bacteria isolated from deep-sea hydrothermal vents : new agents with therapeutic potential, Pathologie Biologie, 52, 127-130 (2004)
【非特許文献7】SOMMERおよびRIFKIN, Journal of cellular physiology 138:215-220 (1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従来技術の文献は増殖因子、とりわけFGF−2を変質または変性から保護、特に皮膚で起こるそれから保護することを探求するものでない。
【0025】
従って、本発明の目的は、皮膚、特に真皮に内因的に供給されるFGF−2を保護、好適にはそれが皮膚バリヤーを通過してそれらの標的に到達する能力を保護する目的でヘパラン硫酸の作用を模擬する有効成分を開発することで、ヘパラン硫酸プロテオグリカンの保護作用と競合することから成る新規な技術的課題を解決することにある。別の目的は、内因的量のFGF−2を保護する有効成分を提供することで、それが細胞外マトリクス、特に真皮マトリクスの回復で利用されるようにすることにある。
【0026】
本発明の目的は、特に、FGF−2をいろいろな組織、好適には皮膚に介在する変質(degradation)または変性(denaturation)から保護する有効成分を提供することから成る技術的課題を解決することで、とりわけ、真皮マトリクスの再構築によって細胞外マトリクスの再構築、皮膚の保湿の改善、皮膚修復の助長、真皮の保全の維持、メラニン細胞増殖の改善、表皮分化の補強、または表皮、注目すべきはヒトにおける表皮の回復の補強を意図した化粧品、皮膚化粧品または製薬学的組成物を提供することにある。
【0027】
本発明の目的は、上述した課題を解決する目的で植物を源とした有効成分を提供することから成る新規な課題を解決することにある。そのような技術的課題を解決する可能性のある有効成分は毒性も皮膚の刺激も示すべきではない。
【0028】
従って、本発明の目的は、また、化粧品、皮膚−化粧品または薬剤の分野、特にヒトに局所投与の目的で用いられるそれらに関して述べられている技術的課題を解決する有効成分を提供することにある。
【0029】
本発明の目的は、また、上述した目的の達成を可能にする有効成分を選別する方法を提供することから成る新規な技術的課題を解決することにある。そのような選別方法は、好適には、多数の有効成分を一緒に再現可能かつ信頼できる様式で選別することを可能にすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上述した技術的課題を解決する有効成分を同定する目的で、本発明者らは、特にFGF−2が熱で変質することに直面して、選別すべき多数の物質に関してFGF−2保護活性を立証することを可能にするインビトロ選別モデルを開発した。
【0031】
FGF−2の保護に関して、そのような有効成分は、線維芽細胞の細胞集団を回復させることで細胞外マトリクス、とりわけ真皮マトリクスの保全を確保する主要な役割を果たすものである。従って、それらは、最初に、FGF−2の変質を有効に抑制、例えば皮膚の老化を抑制するように選択した有効成分である。
【0032】
本発明は、1番目の面に従い、FGF−2の変質に関連した少なくとも1種の皮膚変化を予防または抑制する目的で、硫酸化グリコサミノグリカン(硫酸化GAG)でも硫酸化
GAGの構造的類似物でもなくて化粧品または皮膚化粧品または製薬学的組成物に入れる有効成分としてFGF−2を保護する物質の使用に関する。
【0033】
FGF−2を保護する物質は、好適には、植物抽出物であり、硫酸化GAGも硫酸化GAGの構造的類似物も全く含有しないものである。
【0034】
前記物質として、有利には、それをハイビスカス・アベルモスカス(Hibiscus Abelmoschus)、即ちアンブレットの抽出物、レボクザ(rebokza)の抽出物、ゴーギジベリー(gougizi berries)の抽出物、バンハ(banha)の抽出物、レソニア(lessonia)の抽出物、カラシナ粉の抽出物、ウーイイン(wooyin)の抽出物、オオムギの抽出物、ゴマの抽出物、またはこの挙げた抽出物の中の少なくとも2種類を一緒にする結果としてもたらされる組み合わせ物の中の1種から成る群から選択する。
【0035】
有利には、ヒトの皮膚、好適にはJDEおよび/または真皮および/または下皮および/または表皮および/または皮膚血管壁におけるFGF−2を保護する。
【0036】
有利には、FGF−2の変質に関連した皮膚変化はヒトの皮膚、好適にはJDEおよび/または真皮および/または下皮および/または表皮および/または皮膚血管壁において起こる。
【0037】
有利には、前記物質は、乾燥状態の植物もしくは植物部分を溶液に前記溶液全体の重量を基準にして1から10%入れることを通して得た水もしくは水アルコール抽出物である。その水抽出物は好適には水グリコール抽出物である。
【0038】
増殖因子の変質は、特に少なくとも1種の変質、例えば熱による変質などの結果として起こり、それは一般に生理学的温度で起こるか或は熱にさらされそして/または酵素による変質、とりわけカテプシンGによる変質で起こる。
【0039】
有利には、前記物質または組成物を皮膚細胞の増殖、特に線維芽細胞および/またはメラニン細胞の増殖を刺激しそして/または少なくとも1種のマトリクス成分、特に少なくとも1種のコラーゲンおよび/またはミクロフィブリルの少なくとも1種の特定蛋白質、例えばフィブリリン1または2および/またはフィブリン3または5などおよび/または少なくとも1種のグリコサミノグリカン(GAG)、とりわけ硫酸化GAGの合成を増加させる目的で用いる。
【0040】
特別な態様に従う物質または組成物は、特に、細胞外マトリクス、特にJDEの細胞外マトリクス、皮膚血管壁、下皮、表皮の再構築、特に真皮マトリクスの再構築による真皮の再構築、皮膚の保湿の向上、皮膚修復の助長、真皮保全の維持、表皮分化の改善および表皮回復の補強ばかりでなくこれらの任意組み合わせ物で使用可能である。
【0041】
この上に記述したいろいろな使用は、FGF−2の変質に関連した皮膚変化を予防または抑制することに向けたものである。
【0042】
前記物質の濃度を、有利には、FGF−2の保護に有効、特に局所的に塗布した時に有効な濃度にする。前記物質を局所的に塗布した時の有効量は全組成物の0.01から10重量%の範囲であることを見いだした。
【0043】
本組成物は化粧品、皮膚−化粧品または製薬学的組成物、特にヒト用のそれらとして用いるに有用である。
【0044】
本発明に従う物質は、好適には、FGF−2を変質から保護する植物抽出物である。そのような植物抽出物は水もしくは水アルコール、好適には水グリコール抽出物であり得る。
【0045】
1つの好適な態様における物質は、ハイビスカス・アベルモスカスの種子から得た水もしくは水アルコール系ハイビスカス・アベルモスカス抽出物である。
【0046】
2番目の面に従い、本発明は、FGF−2を変質から保護する物質を組成物、とりわけ化粧品、製薬学的または皮膚−化粧品組成物を製造する目的で特にこの上に挙げたいろいろな用途で用いることに関する。
【0047】
本発明は、更に、この上に示した態様のいずれかに従って定義した組成物を特にこの上に挙げたいろいろな用途の中の少なくとも1つに関連した処理を達成する目的で用いて化粧品、製薬学的または皮膚−化粧品的に処理する方法に関する。
本発明の詳細な説明
本発明を用いて、前記マトリクスのプロテオグリカンによるFGF−2の保護を得ることができる。
【0048】
「FGF−2の保護」は、FGF−2を変質または変性に対して保護することを意味する。そのような変質または変性は一般に環境条件が理由の分解、例えば酵素または熱などによる分解として起こる。そのような変質または変性はプロテオグリカンによって与えられている保護が低下することが理由で起こり得る。
【0049】
本発明に従う選別方法を用いて、植物から抽出したいろいろな有効成分を選別することができる。植物抽出物は、FGF−2が皮膚、特にヒトの皮膚の所で起こす変質からそれを保護するとして記述されてはおらず、用いられた物質は構造がヘパラン硫酸に近い物質のみであった。
【0050】
FGF−2を熱による変質から保護するに予想外で特に有効な有効成分を同定し、これは、アオイ科、より詳細にはハイビスカス属に属する植物、更により詳細にはハイビスカス・アベルモスカス、即ちアンブレットの種子から得た水抽出物である。
【0051】
ハイビスカス・アベルモスカスは、特に、植物全体から得られた水抽出物として化粧品では専ら痩身特性を有する、より詳細には蜂巣炎を抑制するとして知られている(例えば米国特許第5,705,170号明細書を参照)。
【0052】
本発明が必要とする活性を有する他の抽出物も選択することができた。それらの活性は特に予想外であり、注目すべきは、FGF−2の保護に関して予想外である。そのような抽出物は、特に、リシウムチャイニーズ(Lycium chinense)、即ちゴーギジベリーの全体に脱水を受けさせたものから得た水抽出物、ピネリアエ・テルナタ(Pinelliae ternata)、即ちバンハの塊茎から得た水抽出物、ラファナス・サチブス(Raphanus sativus )、即ちレボクザの種子から得た水抽出物、ブラシカ・ジュンセア(Brassicajuncea )、即ちカラシナの種子から得た抽出物、コイシス・セメン(Coicis semen )、即ちウーイインの種子から得た水抽出物、ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare )、即ちオオムギの種子から得た抽出物、セサマム・インジカム(Sesamum indicum )、即ちゴールデンセサミ(golden sesame)の種子から得た抽出物、およびレソニア種の藻、即ちレソニアの全体から得た抽出物である。
【0053】
しかしながら、そのような抽出物を水抽出物単独に限定するものでない。このように、本発明は、また、本発明の範囲内の所望特性を得る目的で活性化合物の全体を水抽出物の
状態で本質的に得ることを可能にする如何なる極性溶媒も包含する。本発明者らが行った試験から、水グリコール抽出物を用いることでも所望の特性を得ることができる。水グリコール抽出物の中では水/グリコールの種類の抽出用溶媒が好適である。特に、水/ブチレングリコールの混合物が好適である。
【0054】
そのような水/アルコール混合物の比率を本分野の技術者に公知の如く変えることができる。水/アルコールの比率を一般に10/90から90/10、例えば50/50から85/15に及んで変える。
【0055】
乾燥状態の植物もしくは植物部分を溶液状態で、前記溶液全体の重量を基準にして1から10%の範囲の量で入れることを通して得た抽出物を有効成分として本発明で用いるのが好適である。
【0056】
本発明に従う組成物の本発明に従う有効成分含有量を有利には本組成物全体の0.001から20重量%、好適には0.01から10重量%にする。本組成物を局所的に塗布するか或は経口投与してもよい。
【0057】
ヒトにおけるFGF−2を変質に関して保護する潜在的活性を有する物質を選別する方法は特に下記を含んで成る:
a)潜在的活性を有する物質をFGF−2と約45℃の温度で約2時間接触させた状態にし、
b)FGF−2を変質から少なくとも50%、好適には65%防ぐ物質を選択する。
【0058】
本選別方法に、有利には、皮膚バリヤーを貫通して活性を示す物質を選択する目的で経皮貫通を試験する追加的段階を含める。
【0059】
本発明は、有利に、組成物調製方法にも関し、この方法は、前記選別方法を適用した後に選択した活性物質を組成物調製用賦形剤と混合する段階を含んで成る。
【0060】
単に例示として提供しかつ本発明の範囲を決して限定し得ない実施例を言及する説明的記述を読んだ後の本分野の技術者に本発明の他の目的、特徴および利点が明らかになるであろう。
【0061】
本実施例は本発明の一体部分であり、本説明(実施例を包含)を全体として解釈することで如何なる最新の従来技術と比較しても新規であると見られる如何なる特徴も機能および一般性の点で本発明の一体部分である。
【0062】
このように、各実施例の範囲は一般的範囲である。
【0063】
本実施例では、パーセントを特に明記しない限り全部重量で示し、温度を特に明記しない限り摂氏度で表し、そして圧力は特に明記しない限り大気圧である。
【0064】
[実施例]
【実施例1】
【0065】
熱によるFGF−2変質の研究
Tardieu他は1992年に熱によるFGF−2変質を線維芽細胞増殖モデルを用いて放射性元素を組み込むことで研究した。本発明者らは、FGF−2の安定性の調査を可能にする方法を開発し、この定量方法は大規模に使用可能であり、Tardieuが記述した方法を用いたのは達成不可能であると思われる有効成分選別の達成を可能にするも
のである。
【0066】
BSAが0.1%とメチルパラベンが0.1%入っている10mMのPBSにFGF−2が5ng/ml入っている溶液を調製する。
【0067】
この溶液を500μg/mlのヘパリンの存在有り無しでいろいろな温度、即ち4℃、20℃、37℃、50℃および80℃に置く。
【0068】
FGF−2が各調査温度で示す変質速度を測定する目的で商業的ELISAキット(R&D system、フランス)を用いてFGF−2の量測定をいろいろな時間(T=0、3時間、24時間および48時間)で実施する。
【0069】
その結果を時間T=0を基準にしたFGF−2のパーセントとして表す。実験を三重(n=3)に実施する。得た結果を図1および2に示す。
【0070】
FGF−2は、これに受けさせた温度条件に敏感である。
【0071】
図1に、FGF−2がいろいろな温度で示した安定性の時間過程を時間の関数として示す。FGF−2を4℃で貯蔵すると、FGF−2がその温度で変質したのは20%であったことから、48時間に渡って比較的安定である。温度を高くすると変質パーセントが高くなり、37℃で3時間にFGF−2は65%が変質しそして50℃の時には80%が変質する。最後に、80℃で3時間後にはFGF−2の全部が変質することが観察され、これはその温度で蛋白質が変性を起こしたことによる。
【0072】
最後に、時間を長くすればするほど観察される変質の度合がより大きくなり、37℃で24時間後にFGF−2の80%が変質する。
【0073】
図2に、FGF−2がヘパリンの存在下でいろいろな温度で示す安定性を示す。図2は、ヘパリン(これは実験的に正の対照でありかつFGF−2と強力に親和することでそれを安定にする)を0.05%存在させるとそのような変質が阻止されることを示している。ヘパリンは、FGF−2に非常に強力に親和することが知られている高度に硫酸化された多糖である。
【0074】
このような保護は80℃の時には有効でない、と言うのは、ヘパリンもまたそのような温度で変性を起こすからである。
【0075】
驚くべきことに、FGF−2が約50℃で起こす変質は短期間に起こる。実用の目的で45℃に近い温度を選択し、有効成分を選別するストレスモデルを達成するための選択パラメーターにし、実験的正の対照を好適にはヘパリンで構成させる。
【実施例2】
【0076】
FGF−2を熱変質に対して保護する有効成分を選択するためのインビトロモデル
約50℃で観察されるFGF−2の変質に特に興味が持たれる、と言うのは、短時間の間にFGF−2の約80%が変質することで数多くの試験を実施することが可能であるからである。この理由で、45℃で2.15時間のストレスを用いて選別を達成しかつFGF−2をそのような熱変質に対して保護する多数の有効成分の能力を検定することを決定した。
【0077】
適用する選別モデルは下記である:
96穴ミクロプレートの中にFGF−2を0.1%のBSA/PBS緩衝液に4.5ng
/ml入れることで生じさせた溶液を180μl分配する。蒸留水または0.05%のヘパリンまたは試験を受けさせるべきいろいろな植物から抽出したいろいろな有効成分が入っている溶液を20μl加える。前記プレートをプレート撹拌装置で撹拌した後、接着テープで覆って、45℃のオーブンの中に2.15時間入れる。このインキュベーション期間が終了した時点で前記プレートを取り出した後、FGF−2の量測定をELISAキットを用いて実施する。
【0078】
FGF−2と蒸留水のみを入れておいた対照プレートにも処理を同じ条件下で受けさせ、室温に放置する。
【0079】
その結果を、応力も変質も受けていないFGF−2対照を基準にしたFGF−2保護パーセントとして表す。
【実施例3】
【0080】
GAGおよび皮膚のプロテオグリカンを用いたモデルの検証
前記モデルを検証する目的で市販のGAGおよびPGを用いた試験を実施した。
【0081】
いろいろな濃度のGAG溶液を作成する:ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸およびヒアルロン酸を0.1%、0.01%および0.001%溶解させて試験する。
【0082】
正対照として用いたヘパリンには試験を0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%および0.00001%で受けさせる。
【0083】
試験を受けさせたプロテオグリカンはグリピカン−3およびデコリンであり、これらに試験を0.1%、0.01%および0.001%で受けさせる。
【0084】
実施例2に記述したストレスプロトコルを適用し、20μlの水の代わりに相当するGAGまたはPG溶液を20μl用いた。このようにして、試験を受けさせるGAGおよびPGに1/10の追加的希釈を受けさせる。
【0085】
図3に、皮膚のGAGによるFGF−2保護の検定を示す。
【0086】
図3に示した得た結果は、文献によるデータを立証している、即ち
ヘパリン硫酸ばかりでなくデルマタン硫酸もFGF−2を保護し、これは試験を実施した濃度の各々で起こる。実際、治癒過程中にFGF−2が示す活性を主に助長する助長因子はデルマタン硫酸である。ヒアルロナンは、これの分子量に関係なく、FGF−2を決して保護しない。コンドロイチン硫酸に関しては、それがもたらす保護はそれの用量に依存するが、しかしながら、100%には到達しない。
【0087】
図4に示す2種類のプロテオグリカン、即ちグリピカン−3およびデコリンの試験(PGによるFGF−2の保護に関する試験)は、文献によるデータを立証していた、即ちヘパリン硫酸鎖を有するグリピカン−3は用量依存様式でFGF−2を保護する一方、デコリン(コンドロイチン硫酸とデルマタン硫酸鎖で構成)は有効ではないことが分かる。
【0088】
この研究により、FGF−2の保護はGAGの構造に依存することが分かる。ヘパリン硫酸とFGF−2が相互作用することは妥当に明らかである。このような相互作用は、ヘパリン硫酸鎖を持つPGに前記モデルを用いた試験を受けさせた時に立証される。
【0089】
このような研究で文献による結果が立証されたことで我々の選別モデルは有効であり得
る。
【実施例4】
【0090】
有効成分の選別
2,000種類の植物抽出物および特徴付けられた分子から成るライブラリーを用いた選別を実施例2に従って実施した。そのような溶解させた化合物、植物抽出物、海草または特徴付けられた分子に試験を高純度でか或は実施例2に記述した反応用媒体に10%または1%入れた状態で受けさせる。
【0091】
最も有効な有効成分の結果を以下の表1に記述する。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
この上に示した抽出物を好適には植物の一部を水/アルコール混合物、好適には水/グリコールが100/0から0/100(体積/体積)の混合物の中に浸漬することで得る。次に、前記溶媒もしくは溶媒混合物を用いて希釈を実施する。
【0095】
試験を受けさせた特定の有効成分は強力な保護活性を有し、それは更に用量依存である。
【実施例5】
【0096】
ハイビスカス・アベルモスカス(アンブレット)抽出物
5a 粉砕した種子をエタノールに5%(重量/重量)入れて還流させることを通して水アルコール系アンブレット抽出物を作成する。この抽出を1時間実施した後、その溶液を濾過し、エタノールを除去し、その結果として得たものを水/グリコール(75/25)混合物に5%(重量/重量)入れて溶解させた後、いろいろなカットオフ閾値を有するセラミック製フィルターで限外濾過し、そして最終的に0.45μmで濾過する。
5b 粉砕した種子を水(75%)/BG(25%)混合物に選択的に5%(重量/重量)入れることを通して水グリコール系アンブレット抽出物を作成する。浸漬を4℃で一晩実施した後、その溶液をいろいろなカットオフ閾値を有するセラミック製フィルターで限外濾過し、そして最終的に0.45μmで濾過する。BGはブチレングリコールを意味す
る。
5c 粉砕した種子を水に好適には5%(重量/重量)入れることを通して水系アンブレット抽出物を作成する。浸漬を4℃で一晩実施した後、その溶液をいろいろなカットオフ閾値を有するセラミック製フィルターで限外濾過し、そして最終的に0.45μmで濾過する。
【実施例6】
【0097】
ゴーギジベリー抽出物
好適には、脱水を受けさせたベリー全体を水(75%)/BG(25%)混合物に5%(重量/重量)入れることを通してゴーギジベリー抽出物を作成する。浸漬を4℃で一晩実施した後、その溶液をいろいろなカットオフ閾値を有するセラミック製フィルターで限外濾過し、そして最終的に0.45μmで濾過する。
【実施例7】
【0098】
バンハ抽出物
好適には、塊茎を水(75%)/BG(25%)混合物に5%(重量/重量)入れることを通してバンハ抽出物を作成する。浸漬を4℃で一晩実施した後、その溶液をいろいろなカットオフ閾値を有するセラミック製フィルターで限外濾過し、そして最終的に0.45μmで濾過する。
【実施例8】
【0099】
レボクザ抽出物
好適には、種子を水(75%)/BG(25%)混合物に5%(重量/重量)入れることを通してバンハ抽出物を作成する。浸漬を4℃で一晩実施した後、その溶液をいろいろなカットオフ閾値を有するセラミック製フィルターで限外濾過し、そして最終的に0.45μmで濾過する。
【実施例9】
【0100】
レソニア抽出物
好適には、藻全体を水(75%)/BG(25%)混合物に5%(重量/重量)入れることを通してバンハ抽出物を作成する。浸漬を4℃で一晩実施した後、その溶液をいろいろなカットオフ閾値を有するセラミック製フィルターで限外濾過し、そして最終的に0.45μmで濾過する。
【実施例10】
【0101】
カラシナ抽出物
好適には、種子を水(75%)/BG(25%)混合物に5%(重量/重量)入れることを通してカラシナ抽出物を作成する。浸漬を4℃で一晩実施した後、その溶液をいろいろなカットオフ閾値を有するセラミック製フィルターで限外濾過し、そして最終的に0.45μmで濾過する。
【実施例11】
【0102】
ウーイイン抽出物
好適には、種子を水(75%)/BG(25%)混合物に5%(重量/重量)入れることを通してウーイイン抽出物を作成する。浸漬を4℃で一晩実施した後、その溶液をいろいろなカットオフ閾値を有するセラミック製フィルターで限外濾過し、そして最終的に0.45μmで濾過する。
【実施例12】
【0103】
オオムギ抽出物
好適には、種子を水(75%)/BG(25%)混合物に5%(重量/重量)入れることを通してオオムギ抽出物を作成する。浸漬を4℃で一晩実施した後、その溶液をいろいろなカットオフ閾値を有するセラミック製フィルターで限外濾過し、そして最終的に0.45μmで濾過する。
【実施例13】
【0104】
ゴマ抽出物
選択的に種子を水(75%)/BG(25%)混合物に5%(重量/重量)入れることを通してゴマ抽出物を作成する。浸漬を4℃で一晩実施した後、その溶液をいろいろなカットオフ閾値を有するセラミック製フィルターで限外濾過し、そして最終的に0.45μmで濾過する。
【0105】
各抽出物(実施例5−13)を部分的に保持した。最終的に、任意の防腐剤、好適にはカプリリルグリコールとフェノキシエタノールと1%のヘキシレングリコールで構成させた防腐剤をキサンタンの存在有り無しで加えた。
【実施例14】
【0106】
有効成分または植物抽出物の選択
最も有効な抽出物を実施例2の選別に従って選択した後、いろいろな濃度で試験する。使用した有効成分は実施例5−13で得た抽出物であり、それらを抽出で用いた溶媒(または溶媒混合物)で希釈する。そのような有効成分がFGF−2の熱分解に対して示す特殊性を試験する目的で前記溶媒中0.1%から10%の範囲の濃度で試験した。量測定を三重に実施する。得た結果を以下の表2に挙げる。
【0107】
【表3】

【0108】
前記抽出物は非常に有効であり、全部が用量に依存した活性を示し、従って、各有効成分が所定標的に対して示した活性特異性を表す。
【0109】
ハイビスカス・アベルモスカス(アンブレット)抽出物が最も高い活性を示し、従って、増殖因子FGF−2の保護で選択する有効成分である。
【0110】
実施例15−21では有効成分(抽出物5c)の濃度を水中の体積(体積/体積)パーセントで表す。
【実施例15】
【0111】
実施例5cに従って調製したハイビスカス・アベルモスカス(アンブレット)の水抽出物(抽出物5c)によるFGF−2の保護に関する研究
抽出物5cによるFGF−2の保護に関する調査を2つの産業的バッチで実施した。実施例2の条件に従うストレスに遭遇した時の保護を調査した。
【0112】
水で前以て希釈しておいた後に試験を受けさせる最終的反応媒体中0.01%のヘパリンで構成させた正の対照による保護は105.52%±3.04である。
【0113】
得た結果を以下の表3に挙げる:
【0114】
【表4】

【0115】
抽出物5cはFGF−2を水中1%の有効成分濃度で強力な活性を伴って用量依存様式で保護する。2つの産業的バッチで得た結果は実質的に同じである。
【0116】
抽出物5cが生理学的温度、即ち37℃でFGF−2を保護し得るか否かを検査することが絶対的に必要であった。その理由で調査を抽出物5cの存在無しにか或は存在させる抽出物5cの濃度を高くしながら37℃で24時間後のFGF−2の量を測定することで構成させた。
【0117】
0.01%のヘパリンで構成させた正の対照が示した保護は110.53%±3.20である。
【0118】
得た結果を以下の表4に挙げる:
【0119】
【表5】

【0120】
得た結果は、抽出物5cはFGF−2を生理学的温度で用量依存様式で保護することを示している。抽出物5cは、更に、45℃の時よりも変質度が低い前記温度でもFGF−2を保護する。
【実施例16】
【0121】
抽出物5cが単層線維芽細胞に対して示す細胞毒性をPNPP量測定で試験することに関する実施例
この目的は、抽出物5cが正常なヒト線維芽細胞に対して示す細胞毒性を調査することにあった。
【0122】
この量測定はp−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)が生存濃能力のある細胞の
細胞内酸ホスファターゼによってp−ニトロフェノールに変化することが基になっている。p−ニトロフェノールが405nmの所で示す吸光度は培養穴の中に入っている生存能力のある細胞の数に正比例する。
【0123】
正常なヒト線維芽細胞が密集に到達した時点で培養培地を抽出物5cを補充(濃度を0.1、0.5、1、2、3および5%に高くして)した培地または補充していない培地(対照)(200μl/穴)と交換した。
【0124】
細胞を37℃のオーブンに入れて48時間インキュベートした。
【0125】
インキュベーションそして培養培地を除去した後の細胞をPBS(燐酸塩緩衝溶液)で2回濯いだ後、0.1Mの酢酸ナトリウム(pH8)と0.1%のTriton X−100と5mMのp−ニトロフェニルホスフェートが入っている緩衝液(Sigma、フランス)(200μl)の存在の中に入れた。インキュベーションをCO含有量が5%の雰囲気中で37℃で2時間実施した後、1NのNaOHを20μl添加することで反応を停止させた。次に、反応媒体が405nmの所に示す吸光度をプレート読み装置(Victor V、Perkin Elmer、フィンランド)で測定した。
【0126】
細胞を全く入れなかった穴(「ブランク」)でp−ニトロフェニルホスフェートが酵素以外で起こす加水分解を各実験中に測定した。測定を全部六重に実施した(n=6)。
【0127】
得た結果を以下の表5に挙げる:
【0128】
【表6】

【0129】
抽出物5cは、試験を実施した濃度範囲全部に渡って細胞毒性を示さない。
【実施例17】
【0130】
抽出物5cで保護させたFGF−2による線維芽細胞増殖の研究
この研究の目的は、抽出物5cで保護されたFGF−2が正常なヒト線維芽細胞の増殖を刺激するか否かを検査することにあった。
【0131】
FGF−2の溶液を即時調製し(=変質していないFGF−2);FGF−2の溶液をヘパリンの存在無しに37℃に24時間(=変質したFGF−2)そして0.01%のヘパリンの存在下37℃に24時間置く(=FGF−2+ヘパリン)。
【0132】
各FGF−2溶液を細胞に加える目的で希釈することで最終的FGF−2濃度が下記になるようにする:0.1、0.25、0.5、0.75および1ng/ml。
【0133】
正常なヒト真皮線維芽細胞を6穴プレートに低密度になるように接種した。次に、それらをFGF−2の存在無し(対照)またはいろいろな濃度のFGF−2の存在下の培地中で増殖させた。
【0134】
48時間後に細胞内酸ホスファターゼ(PNPP)の活性量を測ることで、処理を受けさせておいたか或は受けさせてないFGF−2溶液が細胞増殖に対して示す効果を評価することができる。
【0135】
その結果を対照穴、即ち処理を受けさせていない穴を基準にした増殖パーセントとして表す。
【0136】
得た結果を以下の表6および図5に示す。
【0137】
【表7】

【0138】
図5に、変質していないFGF−2、変質したFGF−2およびFGF−2+ヘパリンの存在下で線維芽細胞が37℃で示した増殖の検定を示す。
【0139】
得た結果は、FGF−2(変質していない)は培養物中で正常なヒト線維芽細胞が示す増殖を刺激しかつそれが用量依存様式であることを示している。
【0140】
変質したFGF−2は37℃で増殖を刺激したが、変質していないFGF−2が37℃で示した様式よりもずっと弱い様式である。実際、試験を実施した各濃度に関して、変質したFGF−2が示した増殖および存在は変質していないFGF−2を用いた時に得たそれらよりも統計学的に低い。
【0141】
この実施例は、生理学的温度で変質することで真皮細胞を回復させる役割をもはや果た
すことができなくなるマトリクスのFGF−2を保護し得る有効成分を開発することが妥当であることを示している。
【0142】
ヘパリンを0.01%用いると、それはFGF−2を熱変質から保護することで、FGF−2は生物学的特性を保持する、と言うのは、増殖が維持されるか或は即時調製したFGF−2溶液を0.5ng/mlの濃度に及んで用いた時に得られた増殖よりも大きくさえあったからである。
【0143】
FGF−2を少量用いた時に観察した非常に有意な刺激およびヘパリンの存在はFGF−2をより多い量で用いた時には観察されない。
【0144】
ヘパリンの代わりに抽出物5cを用いて同じ実験を実施した。0.5%の抽出物5cが存在している中にFGF−2溶液を入れて、37℃に24時間置く。次に、線維芽細胞を入れて置いた穴にFGF−2を0.5ng/ml加える目的で前記溶液を希釈する。
【0145】
細胞に最終的に加える5c抽出物の濃度を0.0025%にする。その濃度の5c抽出物が線維芽細胞の増殖の刺激を誘発し得るか否かを前以て検査しておいた。このことは、増殖の刺激が観察されることは実際にFGF−2が抽出物5cで保護されたことによるものであることを意味する(表8を参照)。
【0146】
その得た結果を未処理対照を基準にした増殖のパーセントとして表し、以下の表7に示す:
【0147】
【表8】

【0148】
図6に、変質していないFGF−2を0.5ng/ml、変質したFGF−2を0.5ng/mlそしてFGF−2を0.5%の5c抽出物の存在下で存在させて37℃で得た線維芽細胞増殖の検定を示す。
【0149】
FGF−2と抽出物5cを37℃で一緒にインキュベートするとFGF−2が保護され、それは培養した正常なヒト線維芽細胞の増殖を刺激する能力を維持する。この得た結果により、得た線維芽細胞増殖は瞬時調製したFGF−2の存在下で得た線維芽細胞増殖と統計学的に同じであり得る。
【0150】
FGF−2を保護し得る有効成分の利点は主に線維芽細胞の細胞回復にとって興味が持たれると思われる。
【0151】
存在させる抽出物5cの濃度を高くしながら行う正常なヒト線維芽細胞の増殖の検定を37℃で48時間実施した。
【0152】
線維芽細胞をいろいろな濃度、即ち0.0025%、0.01%、0.25%、0.5%、1%および2%の5c抽出物の存在下で接種する。48時間後に酸ホスファターゼの量測定(PNPP量測定)を405nmの所で実施した後、負の対照(=未処理細胞)を基準にした増殖を計算する(%として)。各条件を六重に試験する(n=6)。
【0153】
得た結果を以下の表8に示す:
【0154】
【表9】

【0155】
10%の血清で構成させた正の対照がもたらした増殖刺激は有意であり、実験が正当であることを立証している(T+=+126%*の増殖)。
【0156】
得た結果は、5c抽出物は培養中の正常なヒト線維芽細胞の増殖を刺激しないことを示している。
【実施例18】
【0157】
増殖因子の保護がコラーゲンの合成に対して示す影響
年齢が52歳のドナーから得た正常なヒト線維芽細胞を96穴プレートに培地(DMEM、2mMのグルタミン、50IU/mlのペニシリン−50μg/mlのストレプトマイシン、10%のウシ胎仔血清で構成)と一緒に入れて24時間培養した。インキュベーション後の細胞を20μg/mlのビタミンC(正の対照)および2%および1%の5c抽出物で構成させた生成物で48時間処理した。並行して、培地のみを用いた対照も作成した。
【0158】
24時間接触させた後の培地に放射性プロリン(3H−プロリン)を加える。
【0159】
実験終了時に上澄み液を集めて、細胞内蛋白質の中に取り込まれた放射性プロリンの量を測定する。
【0160】
その得た結果を以下の表9に示す:
【0161】
【表10】

【0162】
2%および1%で試験した5c抽出物は正常なヒト線維芽細胞におけるコラーゲンの合成を刺激する能力を有し、これは有意であった。
【0163】
その得た結果は、培地の増殖因子および線維芽細胞が合成した増殖因子が保護されることでコラーゲンの合成がインビトロで刺激され得ることを示している。
【実施例19】
【0164】
増殖因子の保護が全GAGおよび硫酸化GAGの合成に対して示す影響
この研究の目的は、単層線維芽細胞培養物上で増殖因子が5c抽出物で保護されることによって全GAGの合成が刺激され得るか否かを放射能方法で測定することにあった。
【0165】
年齢が52歳のドナーから得た正常なヒト線維芽細胞を96穴プレートに培地(DMEM、2mMのグルタミン、50IU/mlのペニシリン−50μg/mlのストレプトマイシン、10%のウシ胎仔血清で構成)と一緒に入れて24時間増殖させた。インキュベーション後の細胞を20μg/mlのビタミンC(正の対照)および2%および1%の5c抽出物で構成させた生成物で72時間処理した。並行して、培地のみを用いた対照も作成した。
【0166】
48時間接触させた後の培地に放射性グルコサミン(D−(6−H)−グルコサミン)を加える。
【0167】
実験終了時に上澄み液を集めて、細胞内蛋白質の中に取り込まれた放射性プロリンの量を測定する。蛋白質の量測定を市販キット(BioRad 500−0116)を用いて実施する。
【0168】
その結果を以下の表10に示す:
【0169】
【表11】

【0170】
得た結果は、5c抽出物を正常なヒト線維芽細胞に2%および1%加えると全GAGの合成が用量効果を伴って刺激されかつこれの方が正の対照(TFG−βを10ng/ml加えた)よりも有意であり得ることを示している。
【0171】
その得た結果は、培地の増殖因子および線維芽細胞が合成した増殖因子が保護されることで全GAGの合成がインビトロで刺激され得ることを示している。
【0172】
同じようにして、硫酸化GAGを量化する目的で35S−スルフェート取り込み研究を実施する。適用する手順は、前駆体が放射性を示す以外は全GAGで適用した手順と同じである。その結果を以下の表11に挙げる:
【0173】
【表12】

【0174】
得た結果は、抽出物5cが硫酸化GAGの合成を非常に有意に用量依存様式で刺激し得ることを示している。
【0175】
このことは、抽出物5cがFGF−2に対して果たす模擬役割に加えて抽出物5cは硫酸化GAGの合成を刺激する増殖因子を保護する能力を有することでFGF−2の保護が補強され得ることを意味する、と言うのは、それらはFGF−2を保護する同じヘパリン硫酸化GAGであるからである。
【実施例20】
【0176】
5c抽出物が経皮貫通後にFGF−2を保護する活性の研究
この目的は、5c抽出物が皮膚を貫通した後でも増殖因子を保護する特性を保持しているか否かを確かめることにあった。5c抽出物の純粋な溶液をFranz細胞として置いた皮膚移植片の表面に付着させた。
【0177】
24時間のインキュベーション後、細胞を受け取るコンパートメントに入っている培地
を回収した後、凍結乾燥させた。次に、その凍結乾燥品を蒸留水に溶解させ、それに最終的に37℃の熱ストレスを用いた試験を実施例15に記述したモデルを用いて24時間受けさせた。
【0178】
図7に、5c抽出物が皮膚を貫通した後にFGF−2を保護することに関する検定を示す。
【0179】
得た結果(99.96%の保護)は、抽出物5cが保護特性を完全に保持していることを示している、と言うのは、その得た結果は実施例15の表4に示した得た結果と同じであったからである。
【0180】
この結果は、抽出物5cは皮膚組織を貫通した後でも増殖因子を保護する能力を有することで標的に到達するインテガー(integer)のままであることを示している。
【実施例21】
【0181】
FGF−2を酵素による変質に対して保護する研究
この研究の目的は、ヒト皮膚の真皮の所に存在するプロテイナーゼによって起こるFGF−2の変質を量化することにある。そのような酵素は細胞外マトリクスの変質で重要な役割を果たす。
【0182】
特に、カテプシンGは炎症に介在しかつ細胞外環境の中に分泌される。それは塩基性を有することからマトリクスの細胞表面に強力に接着する。カテプシンGはまたコラーゲンに対しても活性を示すばかりでなくまたプロテオグリカンのコア蛋白質およびマトリクスの糖蛋白に対しても活性を示す。
【0183】
この理由で、カテプシンGによるFGF−2の変質の研究を実施した。BSAを0.1%入れておいた100mMのHepes緩衝液(pH7)中で変質速度測定を実施した。カテプシンGをプレートの穴に穴1個当たり0.02Uの濃度で2ng/穴のFGF−2溶液が生じるように加えた。前記プレートを37℃でインキュベーションした後、サンプリングを15、30、60、90および120分の時に実施して、残存するFGF−2の量を測定した。
【0184】
FGF−2を瞬時計量することで対照(100%)を作成する。それと同時に、温度が原因で起こる変質を取り除きかつ酵素による変質部分のみを量化する目的で、酵素が入っていない対照の溶液を37℃にいろいろな時間で置くことで熱変質を検定する。
【0185】
得たFGF−2量(pg/ml)を以下の表12に記述する。
【0186】
【表13】

【0187】
得た結果から、FGF−2の変質度は時間に伴って高くなることが分かるであろう。前記酵素はFGF−2を90分で非常に有意に変質させ得る。
【0188】
このことから、5c抽出物によるFGF−2の保護をカテプシンGの存在下で研究する目的で前記時間を選択する。
【0189】
この上(実施例21)に記述した如き反応媒体に抽出物5cを下記のいろいろな濃度で加える:即ち0.01%、0.05%、0.1%、0.5%および1%。
【0190】
37℃で90分後のFGF−2濃度を検定し、そして残存するFGF−2のパーセントばかりでなくFGF−2の保護パーセントも計算する。試験した各濃度毎に量測定をn=9で実施する。その結果を以下の表13に記述する:
【0191】
【表14】

【0192】
5c抽出物はFGF−2を酵素による分解に対して用量依存様式で保護し得る。
【0193】
このインビトロ検定により、5c抽出物を加えることで増殖因子を細胞外マトリクスの酵素が及ぼす蛋白分解による変質から保護することができることを立証することができる。これは正に抽出物5cを化粧品で用いることの利点を補強するものである。
【実施例22】
【0194】
加齢によるFGF−2率の検出
この研究の目的は、主に皮膚のGAG含有量が変化することによって起こるFGF−2含有量の損失と年齢の間の関係を確立する目的でいわゆる「若い」皮膚といわゆる「年老いた」皮膚のFGF−2濃度を検定することにあった。
【0195】
いわゆる若いドナー(21、30、31および38歳)およびいわゆる年老いたドナー(50、55、57および58歳)から皮膚生検を採取し、粉砕した後、それにTriton X100を0.1%入れておいたPBS緩衝液(pH7)を用いた抽出を受けさせ、市販のELISAキット(R&D System、DFB50)を用いてFGF−2の量測定を実施した。そのFGF−2の濃度を市販のキットPicogreenで測定したDNA率と関係付ける。
【0196】
得た結果を図8に示す。
【0197】
図8に、いわゆる「若い」および「年老いた」皮膚の加水分解物に入っているFGF−2濃度の検定を示す。
【0198】
その結果は、若い皮膚と年老いた皮膚の間でFGF−2含有量に差があることを示している。その上、その差は統計学的に有意である(p=0.046)。
【0199】
この実施例により、有効成分を増殖因子、より詳細にはFGF−2の保護剤として用いることで皮膚の老化に関連した影響を抑制することができることを示すことができる。
【実施例23】
【0200】
本発明の生成物の配合
いろいろな部分A、B、C、D、EまたはFを一緒に混合することを本分野の技術者に公知の方法に従って進行させることで本発明に従う組成物を調製した。「本発明の生成物」は、本発明に記述する有効成分に相当する。
【0201】
本発明の生成物を水中油エマルジョン型の化粧品または製薬学的製剤で使用。
【0202】
【表15】

【0203】
【表16】

【0204】
【表17】

【実施例24】
【0205】
本発明の生成物を油中水型の配合で使用
【0206】
【表18】

【実施例25】
【0207】
本発明の生成物をシャンプーまたはシャワーゲル型の配合で使用
【0208】
【表19】

【実施例26】
【0209】
本発明の生成物を口紅型の配合および他の無水製品で使用
【0210】
【表20】

【実施例27】
【0211】
本発明の生成物を水性ゲル(アイライン、痩身剤など)の配合で使用
【0212】
【表21】

【実施例28】
【0213】
本発明の生成物を3成分乳液型の配合で使用
【0214】
【表22】

【0215】
【表23】

【実施例29】
【0216】
本発明の生成物を含有させた製薬学的製剤の調製
【0217】
【表24】

【実施例30】
【0218】
本発明の生成物を含有させた調製物が化粧品で受け入れられるか否かの評価
実施例5cに従って得た化合物をウサギの皮膚および目で評価し、ラットに1回経口投与することで異常な毒性が存在しないことを試験しかつモルモットを用いて感作効力を試験することで毒物学的試験を実施した。
【0219】
ウサギにおける主な皮膚刺激の評価:
実施例5cに記述した調製物を「皮膚に対する急性刺激/腐食効果」の研究に関するOECD指示が推奨する方法に従って3匹のウサギの皮膚に0.5mlの量で希釈無しに塗布する。
【0220】
21.02.82のJORF(French Official Journal)の中に公開された1.2.1982時点の指示で定義される判断基準に従って生成物を分類分けする。
【0221】
この試験の結果により、本発明の生成物は皮膚に刺激を与えないとして分類分けされると結論付ける。
【0222】
ウサギの目の刺激に関する評価
「目に対する急性刺激/腐食効果」の検定に関して1987年の2月24日付けのOECD指示番号405が推奨する方法に従って3匹のウサギの目に上述した調製物を混ぜ物無しに0.1mlの量で1回差した。
【0223】
この試験の結果により、前記調製物は混ぜ物無しまたは希釈無しで用いた時に91/326EEC指示の意味で目を刺激しないと見なすことができると結論付ける。
ラットに1回経口投与することによる異常な毒性が無いことに関する試験:
前記調製物を5匹のオスラットおよび5匹のメスラットに1987年2月24日時点のOECD指示番号401が推奨しかつ化粧品に適応した手順に従って体重1kg当たり5gの用量で1回経口投与した。
【0224】
測定DL0およびDL50は5,000mg/kg以上であった。従って、この試験を受けさせた調製物は摂取による危険のない調製物であると分類分けされる。
モルモットにおける皮膚感作効力の評価:
前記調製物にMagnussonおよびKligmannが記述した極大化試験、即ちOECDのガイドライン番号406に従うプロトコルを受けさせた。
【0225】
前記調製物は皮膚接触による感作を起こさないと分類分けされる。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】図1は、FGF−2がいろいろな温度で示す安定性の時間過程を時間の関数として示すグラフである。
【図2】図2は、FGF−2がヘパリンの存在下でいろいろな温度で示す安定性を示すグラフである。
【図3】図3は、皮膚のGAGによるFGF−2の保護を示すグラフである。
【図4】図4は、プロテオグリカンによるFGF−2の保護を示すグラフである。
【図5】変質していないFGF−2、変質したFGF−2およびFGF−2+ヘパリンの存在下で線維芽細胞の増殖について用量依存的に測定した結果を示すグラフである。
【図6】図5の試験において、ヘパリンの代わりに抽出物5cを用いたときの、試験結果を示すグラフである。
【図7】抽出物5cが皮膚を貫通した後にFGF−2を保護することを検定した試験結果を示すグラフである。
【図8】「若い」および「年老いた」皮膚における加水分解物中のFGF−2濃度の測定結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてのハイビスカス・アベルモスカス抽出物、レボクザ抽出物、ゴーギジベリー抽出物、バンハ抽出物、レソニア抽出物、カラシナ粉抽出物、ウーイイン抽出物、オオムギ抽出物、ゴマ抽出物またはこれらの組み合わせ物物から成る群から選択される植物抽出物と許容されうる賦形剤とを含んで成るヒト皮膚におけるFGF−2の変質を予防または抑制するための製薬学的組成物。
【請求項2】
表皮および/または真皮−表皮接合部および/または真皮細胞外マトリクスおよび/または下皮および/または皮膚血管壁におけるFGF−2を保護する請求項1記載の製薬学的組成物。
【請求項3】
抽出物が水もしくは水−アルコール抽出物である請求項1記載の製薬学的組成物。
【請求項4】
請求項3記載の製薬学的組成物であって、前記抽出物が乾燥状態の植物もしくは植物部分の1から10重量%の溶液状態にあり、前記抽出物の含有率が前記溶液の重量を基準にしたものである、上記組成物。
【請求項5】
変質が熱による変質である請求項1記載の製薬学的組成物。
【請求項6】
抽出物がハイビスカス・アベルモスカス抽出物である請求項1記載の製薬学的組成物。
【請求項7】
ハイビスカス・アベルモスカス抽出物がハイビスカス・アベルモスカスの種子から得た水もしくは水−アルコール抽出物である請求項6記載の製薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1記載の製薬学的組成物であって、有効成分が前記組成物の総重量を基準にして0.001から20重量%の範囲である、上記組成物。
【請求項9】
ハイビスカス・アベルモスカス抽出物、レボクザ抽出物、ゴーギジベリー抽出物、バンハ抽出物、レソニア抽出物、カラシナ粉抽出物、ウーイイン抽出物、オオムギ抽出物、ゴマ抽出物またはこれらの組み合わせ物物から成る群から選択される植物抽出物および許容されうる少なくとも1種の賦形剤を含んで成る化粧品組成物。
【請求項10】
植物抽出物が全組成物の0.001から20重量%を構成している請求項9記載の化粧品組成物。
【請求項11】
植物抽出物が全組成物の0.01から10重量%を構成している請求項10記載の化粧品組成物。
【請求項12】
抽出物がハイビスカス・アベルモスカス抽出物である請求項9記載の組成物。
【請求項13】
ヒトにおけるFGF−2の変質を防ぐ潜在的活性を有する物質のスクリーニング方法であって、
a)FGF−2が特定の温度で特定の時間に起こす変質速度を測定する段階、
b)潜在的活性を有する物質をFGF−2と前記(a)段階の特定温度で(a)段階の特定時間接触させた状態にし、そして前記潜在的活性を有する物質と接触させた後にFGF−2が示す変質速度を測定する段階、および
c)前記変質速度を基にしてFGF−2の変質を少なくとも50%防ぐ物質を選択する段階、
を含んで成る、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−100981(P2008−100981A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166479(P2007−166479)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(507211886)エンゲルハード・リヨン・エス・エイ・エス (2)
【Fターム(参考)】