説明

ICカード

本発明は、外部装置に対する情報の送信および/または外部装置からの情報の受信を行うICカードに関するものであって、コレステリック液晶の特性を最大限に生かして情報の表示を効果的に行うことを目的とする。
本発明のICカードは、プレーナ状態において赤色光を反射するコレステリック液晶層(63)(63)と、青色光を反射するコレステリック液晶層(63)とを積層し、積層されたコレスレリック液晶層(63)(63)(63)にそれぞれ電圧を印加して、コレステリック液晶分子の配向状態をプレーナ状態とフォーカルコニック状態との間で変化させて、光を透過または反射させることにより所定の情報を表示する情報表示手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、外部装置に対する情報の送信および/または外部装置からの情報の受信をおこなうICカードに関するものであり、特に、コレステリック液晶の特性を最大限に生かして情報の表示を効果的におこない、利用者の利便性を高めることのできるICカードに関するものである。
【背景技術】
従来、メモリやマイクロプロセッサなどの集積回路(IC,Integrated Circuit)を内蔵し、情報の記憶・処理機能を有するICカードが広く利用されている。さらに、記憶しているデータを表示する表示機能を有するICカードも近年利用されるようになってきている。
この表示機能を有するICカードには、感熱発色型の材料を用いて印字消去をおこなう熱書込み方式のICカードや、磁性体材料を用いて印字消去をおこなう磁気書込み方式のICカードがある。
ところが、これらの表示方式においては、表示の書き換えをおこなうために、サーマルヘッドや磁気ヘッド等を有する情報記録装置にICカードを挿入する必要があり、非接触型のICカードへの適用には不向きであるという問題があった。
そこで、特許文献1には外部ターミナルから受けた電波を電力源として表示の書き換えをおこない、表示の保持に電力を消費しないメモリ性を有する液晶表示素子を用いて情報の表示をおこなう非接触情報記録表示方法が開示されている。この液晶表示素子の例としては、コレステリック液晶による光の選択反射を利用したものが挙げられている。
【特許文献1】特開2000−113137号公報
しかしながら、前述した文献に記載された非接触情報記録表示方法では、メモリ性を有する液晶表示素子の一例としてコレステリック液晶が挙げられているのみであり、ICカードにおいてコレステリック液晶の有する特性をいかに有効に利用するかという点が十分言及されていないという問題があった。すなわち、コレステリック液晶の特性を効果的に利用する具体的な方法が十分開示されていなかった。
たとえば、メモリ性以外にも、コレステリック液晶が有する特性を有効に利用することにより、視認性を高めるなど、表示機能を有するICカードの利便性をさらに高めることができるようになる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、コレステリック液晶の特性を最大限に生かして情報の表示を効果的におこない、利用者の利便性を高めることのできるICカードを提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明によれば、外部装置に対する情報の送信および/または該外部装置からの情報の受信をおこなうICカードであって、プレーナ状態においてそれぞれ異なる主波長の光を反射するコレステリック相を形成する液晶層を少なくとも2層以上に積層し、積層されたコレステリック相を形成する液晶層に電圧を印加してコレステリック相を形成する液晶の液晶分子の配向状態を変化させ、光を透過または反射させることにより所定の情報を表示する情報表示手段を備えたこと、を特徴とする。
また、本発明によれば、外部装置に対する情報の送信および/または該外部装置からの情報の受信をおこなうICカードであって、情報を表示するパターンを形成するセグメントごとに、プレーナ状態においてそれぞれ異なる波長の光を反射するコレステリック相を形成する液晶層を少なくとも2つ以上並列し、並列されたコレステリック相を形成する液晶層に電圧を印加してコレステリック相を形成する液晶の液晶分子の配向状態を変化させ、光を透過または反射させることにより所定の情報を表示する情報表示手段を備えたこと、を特徴とする。
これらの発明によれば、表示される情報に応じて表示色を変えるなどして視認性を高め、コレステリック相を形成する液晶の特性を最大限に生かして情報の表示を効果的におこない、利用者の利便性を高めることができる。また、コレステリック相を形成する液晶を用いることにより、明度の高いカラー表示が可能な液晶ディスプレイを備えたICカードを安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施の形態1に係るICカードシステムの構成を示す図であり、第2図は、実施の形態1に係るICカードのハードウェア構成を示す概略構成図であり、第3図は、コレステリック液晶による液晶ディスプレイの表示原理について説明する説明図であり、第4図は、コレステリック液晶を用いておこなったデータ表示の一例を示す図であり、第5図は、コレステリック液晶の液晶分子の配向状態の設定方法を説明する概念図であり、第6図は、実施の形態1に係る液晶ディスプレイの構造を示す図であり、第7図は、赤色光と青色光とが混じりあって生じた白色光のスペクトルの一例を示す図であり、第8図は、実施の形態1に係る液晶ディスプレイのカラー表示の一例を示す図であり、第9図は、人間の視感度特性を表す視感度曲線を示す図であり、第10図は、青色反射光の明度と青色反射光のスペクトルの半値幅との間の関係を示す図であり、第11図は、赤色反射光および青色反射光が混じりあってできる白色反射光の明度と青色反射光の半値幅との間の関係を示す図であり、第12図は、赤色反射光および青色反射光が混じりあってできる白色反射光の青色反射光に対するコントラスト比と青色反射光の半値幅との間の関係を示す図であり、第13図は、実施の形態1に係る液晶ディスプレイの表示の一例を示す図であり、第14図は、実施の形態2に係る液晶ディスプレイの構成を示す図であり、第15図は、コレステリック液晶層により反射される赤色光、緑色光および青色光のスペクトルを示した図であり、第16図は、白黒の縞模様の空間周波数に対する視覚伝達関数を示す図であり、第17図は、実施の形態3に係るICカードシステムの構成を示す図であり、第18図は、実施の形態3に係るデータの表示方式を説明するための概念図であり、第19図は、実施の形態3に係る液晶ディスプレイの構造を示す図であり、第20図は、第19図に示した液晶ディスプレイの構造を簡略化した構造を示す図であり、第21図は、第20図に示した液晶ディスプレイを用いて単一のデータ表示から2つのデータ表示に切り替える切り替え表示の一例を示す図であり、第22図は、第20図または第21図に示した液晶ディスプレイを備えたICカードの概観を示す図であり、第23図は、実施の形態4に係る液晶ディスプレイの構成を示す図であり、第24図は、蓄光層を備えた液晶ディスプレイの表示の一例を示す図であり、第25図は、4分の1波長板および偏光板を用いて改良した液晶ディスプレイの構成を示す図であり、第26図は、右円偏光の光を反射するコレステリック液晶層と左円偏光の光を反射するコレステリック液晶層を有する液晶ディスプレイの構成を示す図であり、第27図は、暗所において蓄光層により発せられた光のコレステリック液晶部透過後のスペクトルを示す図であり、第28図は、ICカードがリーダ/ライタから光エネルギーの供給を受ける方式を示す図であり、第29図は、極性が正負逆転し、かつ、振幅の絶対値が等しい交流パルス電圧の一例を示す図であり、第30図は、コレステリック液晶層に印加される直流パルス電圧の一例を示す図であり、第31図は、極性の反転時に電圧が印加されないインターバルを有する交流パルス電圧の一例を示す図であり、第32図は、正負の電圧振幅が異なる交流パルス電圧の一例を示す図であり、第33図は、液晶ディスプレイの表示の書き換え回数に応じて極性が異なる直流パルス電圧の一例を示す図であり、第34図は、表示の書き換えを2段階でおこなう場合に印加する直流パルス電圧の一例を示す図であり、第35図は、コレステリック液晶の状態を遷移させるのに必要な電圧と温度との関係を示す図であり、第36図は、コレステリック液晶に電圧を印加する電圧印加回数と表示の明度およびコントラストとの間の関係を示す図であり、第37図は、コレステリック液晶の初期化のタイミングを示すタイミング図であり、第38図は、コレステリック液晶層の表示の初期化処理を示す図であり、第39図は、液晶ディスプレイの表示の切り替えによりデータ通信の完了を通知する通知処理を示す図であり、第40図は、コレステリック液晶に印加する交流パルス電圧の減衰を示す図であり、第41図は、データ通信の終了を通知する音を発生するICカードの構造を示す図であり、第42図は、ICカードが利用者にデータ通信が正常に終了したかどうかを通知する通知処理の処理手順を示すフローチャートであり、第43図は、コレステリック液晶で構成される液晶ディスプレイを気温計として用いる場合の表示状態の一例を示す図であり、第44図は、コレステリック液晶で構成される液晶ディスプレイを体温計として用いる場合の表示の一例を示す図であり、第45図は、実施の形態8に係る温度計が測定する温度範囲とコレステリック液晶がプレーナ状態において反射する反射光波長との間の関係を示す図であり、第46図は、気温計として機能する液晶ディスプレイを備えたICカードの一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、添付図面を参照して、この発明に係るICカードおよび外部装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下では、ICカードと外部装置とが非接触で通信する非接触型のICカードの例を示すが、本発明はそれに限定されるものではなく、外部装置と接触して通信する接触型ICカード、および、接触型と非接触型の両方を兼ね備えたハイブリッド型ICカードにも同様に適用されるものである。
(実施の形態1)
まず、本実施の形態1に係るICカードシステムの構成について説明する。第1図は、実施の形態1に係るICカードシステムの構成を示す図である。同図に示すように、このICカードシステムは、ホストコンピュータ10、リーダ/ライタ11およびICカード12から構成される。
ホストコンピュータ10は、ICカード12に送信するデータの生成やICカード12から受信したデータのデータ処理および管理などをおこなうコンピュータである。リーダ/ライタ11は、ホストコンピュータ10に接続され、ICカード12との間で通信を確立して、データの授受をおこなう装置である。
ICカード12は、ICチップが組み込まれたカード状のデバイスであり、リーダ/ライタ11との間で種々の情報を送受信する。また、ICカード12は、受信したデータに対して演算や記憶などのデータ処理をおこなうことができる。
さらに、本発明に係るICカード12は、熱書込み方式や磁気書き込み方式のICカードとは異なり、リーダ/ライタ11から受信したデータの内容や、演算結果、記憶しているデータなどをカラー表示するよう構成され、ICカード12の利便性をさらに高めている。このカラー表示は、異なる波長の光をそれぞれ反射する複数のコレステリック液晶層を用いることにより実現している。また、液晶ディスプレイがコレステリック液晶を利用して構成されるため、電圧を常時印加していなくとも表示を保持することができ、電力の消費量が少なくてすむ。
第1図に示すように、このICカード12は、通信部13、記憶部14、情報表示部15および制御部16を有する。通信部13は、リーダ/ライタ11との間でデータ通信をおこなう通信部である。記憶部14は、リーダ/ライタ11から受信したデータや、データの演算処理をおこなった結果などを記憶する記憶部である。
情報表示部15は、リーダ/ライタ11から受信したデータや、記憶部14に記憶されたデータ、あるいはエラーメッセージなどの種々の情報を複数のコレステリック液晶層を用いることによりカラー表示する表示部である。カラー表示をおこなう具体的な方法については後に詳しく説明する。
制御部16は、各機能部13〜15に種々の制御信号を送信し、ICカード12の全体制御をおこなう制御部である。またこの制御部16は、データの記憶や演算などのさまざまな処理をおこなう。たとえば、受信したデータが所定の条件を満足したかどうかを判定し、判定結果に基づいてデータの表示色を変更するよう情報表示部15に要求する処理などをおこなう。
第2図は、実施の形態1に係るICカード12のハードウェア構成を示す概略構成図である。ICカード12は、アンテナ20、液晶ディスプレイ21、液晶ディスプレイ制御IC22、通信制御IC23およびカード制御IC24を有する。
アンテナ20および通信制御IC23は、第1図に示した通信部13に対応し、液晶ディスプレイ21および液晶ディスプレイ制御IC22は、第1図に示した情報表示部15に対応し、カード制御IC24は、第1図に示した記憶部14および制御部16に対応する。
アンテナ20は、リーダ/ライタ11との間で通信する際に、電波を空間に放射し、あるいは、電波を空間から受け取る金属線である。液晶ディスプレイ21は、データやメッセージなどをカラー表示するディスプレイである。液晶ディスプレイ制御IC22は、液晶ディスプレイ21を制御して、データやメッセージなどをカラー表示するICである。
通信制御IC23は、アンテナ20から電波を放射して、リーダ/ライタ11にデータを送信する処理の制御をおこなうICである。また、この通信制御IC23は、アンテナ20が受け取った電波から通信データを抽出する処理をおこなう。
カード制御IC24は、液晶ディスプレイ制御IC22や通信制御IC23に種々の制御信号を送信し、ICカード12の全体制御をおこなう。また、このカード制御IC24は、内部に種々のデータを記憶するメモリを有している。さらに、このカード制御IC24は、データの演算や記憶などのさまざまなデータ処理をおこなうことができ、演算結果などをメモリに記憶することができる。
つぎに、コレステリック液晶による液晶ディスプレイの表示原理について説明する。第3図は、コレステリック液晶による液晶ディスプレイの表示原理について説明する説明図である。コレステリック液晶は、液晶分子が螺旋構造を形成している液晶であり、第3図(a)に示すプレーナ状態および第3図(b)に示すフォーカルコニック状態の2つの安定した状態が存在する。これらの状態は、電圧が印加されていなくとも安定して存在することができるため、双安定性と称される。
プレーナ状態は、螺旋構造を有する液晶分子30の螺旋軸方向が電極31および32により発生された電界の方向となっており、特定の波長帯域の光を反射する。液晶分子30の螺旋構造における周期(ピッチ)をpとすると、反射率が最大となる光の波長λと、液晶の平均屈折率nとの間の関係は、λ=p×nで表され、反射される光の反射波長帯域Δλと、液晶の屈折率異方性Δnとの間の関係は、Δλ=p×Δnで表される。反射波長帯域Δλは、液晶の屈折率異方性Δnが大きくなるにつれ広くなる。
また、コレステリック液晶は、螺旋構造のねじれの向きと同じ巻きとなる円偏光を選択的に反射する。したがって、右円偏光あるいは左円偏光のいずれか一方が反射され、他方は透過するので反射率は理論上50%となる。
フォーカルコニック状態は、螺旋構造を有する液晶分子30の螺旋軸方向が電極31および32により発生された電界の方向と垂直になっており、入射した光のほとんどを透過する。
第4図は、コレステリック液晶を用いておこなったデータ表示の一例を示す図である。第4図には、「333333」という数字を液晶ディスプレイ21に表示した例を示している。各数字を表示する表示パターンは、7つのセグメント40〜40により形成される。そして、各セグメント40〜40は独立にコレステリック液晶の状態をプレーナ状態あるいはフォーカルコニック状態に設定することができ、それによりさまざまな表示パターンを形成する。
たとえば、「3」の数字を表示する場合には、セグメント40、セグメント40、セグメント40、セグメント40およびセグメント40をプレーナ状態に、セグメント40およびセグメント40をフォーカルコニック状態に設定し、光の反射および透過を制御することにより表示をおこなう。
つぎに、コレステリック液晶の液晶分子の配向状態の設定方法について説明する。第5図は、コレステリック液晶の液晶分子の配向状態の設定方法を説明する概念図である。第5図には、コレステリック液晶が光を反射する反射率と、コレステリック液晶に印加された電圧パルスとの関係が示されている。実線50は、プレーナ状態からフォーカルコニック状態に状態を変化させる場合の関係を示し、点線51は、フォーカルコニック状態からプレーナ状態に状態を変化させる場合の関係を示している。
実線50においては、電圧値Vは、プレーナ状態からフォーカルコニック状態に状態が遷移を始める電圧パルスの閾値電圧であり、電圧値Vおよび電圧値Vは、フォーカルコニック状態となる電圧範囲である。また、電圧値Vは、完全なプレーナ状態にコレステリック液晶が遷移する電圧パルスの電圧値である。なお、プレーナ状態に遷移するまでにはホメオトロピック状態を経由する。ホメオトロピック状態は、液晶分子の螺旋構造がほどけ、液晶分子の長軸が電界の向きに向いた状態である。
点線51においては、電圧値Vは、フォーカルコニック状態からプレーナ状態に遷移を始める電圧パルスの閾値電圧であり、電圧値Vは、完全なプレーナ状態となる電圧パルスの閾値電圧である。
したがって、プレーナ状態からフォーカルコニック状態に状態を設定する場合には、電圧値Vから電圧値Vの範囲内の電圧パルスを与える。また、フォーカルコニック状態からプレーナ状態に状態を設定する場合には、電圧値V以上の電圧パルスを与える。
また、中間的な大きさの電圧パルス、すなわち、実線50における電圧値Vから電圧値Vの範囲、および、電圧値Vから電圧値Vの範囲の電圧パルスの印加では、コレステリック液晶の配向状態は、プレーナ状態とフォーカルコニック状態とが混在した状態となり、反射される光の色は、プレーナ状態における色とフォーカルコニック状態における色との間の中間的な色となる。点線51における電圧値Vから電圧値Vの範囲の電圧の印加にも同様のことが言える。
ここで、電圧の印加は、極性が正負逆転し、振幅の絶対値が等しい交流パルス電圧を用いておこなう。これは、コレステリック液晶内のイオン性物質が分極し、表示品位が劣化するのを防止するためである。
つぎに、本実施の形態1に係る液晶ディスプレイ21の構造について説明する。第6図は、実施の形態1に係る液晶ディスプレイ21の構造を示す図である。第6図には、データの表示パターンを形成する各セグメント41〜41を示す平面図と、セグメント41および41を通る直線(一点鎖線)で切断した断面図とが示されている。
第6図の断面図に示すように、この液晶ディスプレイ21は高分子フィルム60〜60、隔壁層61、ITO(Indium−Tin Oxide)電極62〜62、コレステリック液晶層63〜63および光吸収層64を有する。
高分子フィルム60〜60は、表面上にITO電極62〜62が形成される透明フィルム基板であり、ポリエチレンテレフタレート(PET,Polyethylene terephthalate)やポリエチレンナフタレート(PEN,Polyethylene Naphthalate)などにより形成される。ここで、本実施の形態1では、透明基板として高分子フィルム60〜60を用いることとするが、高分子フィルム60〜60の代わりに薄いガラス基板を用いることとしてもよい。
隔壁層61は、ITO電極62、62およびコレステリック液晶層63、63を隔離する層である。ITO電極62〜62は、コレステリック液晶層63〜63に電圧を印加する透明電極である。コレステリック液晶層63〜63は、プレーナ状態において所定の波長の光を反射し、フォーカルコニック状態においては光を透過する液晶層である。光吸収層64は、コレステリック液晶層63〜63を透過した光を吸収し、黒色を呈する層である。光吸収層64の機能により、コレステリック液晶層63〜63がフォーカルコニック状態であるとき、表示パターンを黒色で表示することができる。
ITO電極62および62は、表示パターンを形成する各セグメント41および41の形に整形され、情報の表示面に平行に配置されている。また、ITO電極62は、ITO電極62および62と組となって機能し、セグメント41に対応するコレステリック液晶層63と、セグメント41に対応するコレステリック液晶層63とに独立に電圧を印加することができる。
コレステリック液晶層63、63および63は、ITO電極62〜62を介して電圧パルスの印加を受け、プレーナ状態とフォーカルコニック状態との間で状態が変化する。そして、上部のコレステリック液晶層63および63と、下部のコレステリック液晶層63とが異なる波長の光をプレーナ状態において反射するよう構成することにより、複数色によるカラー表示を実現することができる。
たとえば、コレステリック液晶層63および63の反射光を赤色光とし、コレステリック液晶層63の反射光を青色光とすると、コレステリック液晶層63および63とコレステリック液晶層63との双方をプレーナ状態にした場合は、コレステリック液晶層63および63から反射された赤色光と、コレステリック液晶層63から反射された青色光とが混じりあい、加法混色により白色の表示色となる。第7図には、赤色光と青色光とが混じりあって生じた白色光のスペクトルの一例が示されている。
また、コレステリック液晶層63および63をプレーナ状態に、コレステリック液晶層63をフォーカルコニック状態にした場合は、表示色が赤色になる。コレステリック液晶層63および63をフォーカルコニック状態に、コレステリック液晶層63をプレーナ状態にした場合は、表示色が青色となる。コレステリック液晶層63および63およびコレステリック液晶層63の双方をフォーカルコニック状態にした場合には、光吸収層64により光が吸収され、黒色の表示となる。
なお、ここでは、ITO電極62および62とコレステリック液晶層63とを、表示パターンを形成する各セグメン41〜41に共通のべた構造としたが、このようにそれらを共通化することにより、電圧を印加する回路を簡略化することができ、低いコストでICカードを製造することができる。
第8図は、実施の形態1に係る液晶ディスプレイのカラー表示の一例を示す図である。第8図(a)は、数字の表示色を白色とした場合であり、第8図(b)は、数字の表示色を赤色とした場合の図である。第8図(a)の場合には、背景色である黒色80に対して、白色81と青色82とで数字の表示パターンが形成される。この白色81の表示は、第6図に示したコレステリック液晶層63および63とコレステリック液晶層63とを、ともにプレーナ状態することにより実現することができる。ここで、コレステリック液晶層63の反射光が呈する青色82は、できるだけ暗い色になるようにし、黒色80の背景色との区別がつきにくくする。
第8図(b)の場合には、背景色である黒色80に対して、赤色83と黒色84とで数字の表示パターンが形成される。この赤色83の表示は、第6図に示したコレステリック液晶63および63をプレーナ状態に、コレステリック液晶層63をフォーカルコニック状態に設定することにより実現することができる。
ここで、表示のコントラストを高めるためには、コレステリック液晶層63および63により反射される赤色反射光のスペクトルの主波長は、570ナノメートル以上640ナノメートル以下の範囲内で、かつ、反射光の反射帯域が広いことが望ましい。また、コレステリック液晶層63により反射される青色反射光のスペクトルの主波長は、450ナノメートル以上500ナノメートル以下の範囲内で、かつ、反射光の反射帯域が狭いことが望ましい。
第9図は、人間の視感度特性を表す視感度曲線を示す図である。第9図に示すように、人間の視感度は、およそ555ナノメートルにピークを有する。すなわち、そのピークに近い色ほど人間の目に明るく感じられる。そのため、表示パターンを構成する赤色反射光の主波長は、できるだけ555ナノメートルのピークに近づけ、570ナノメートル以上640ナノメートル以下の範囲内とする。また、青色反射光の主波長は、できるだけ555ナノメートルのピークから遠ざけ、450ナノメートル以上500ナノメートル以下の範囲内とする。
つぎに、反射光の反射帯域の帯域幅と表示のコントラストの関係について説明する。第10図は、青色反射光の明度と青色反射光のスペクトルの半値幅との間の関係を示す図である。第10図に示すように、青色反射光の半値幅が狭いほど明度が低くなる。したがって、青色反射光の反射帯域をできるだけ狭くすることで濃い表示色とすることができ、第8図における背景色の黒色80との区別をつきにくくすることができる。
第11図は、赤色反射光および青色反射光が混じりあってできる白色反射光の明度と青色反射光の半値幅との間の関係を示す図である。ここで、赤色反射光の半値幅(ピーク反射率の半分の領域で,概ね反射率20〜25%)は約90ナノメートルとしている。第11図に示すように、この白色反射光の明度は、青色反射光の半値幅が狭くなってもほぼ一定とすることができ、明るい白色反射光の表示が得られることがわかる。
第12図は、赤色反射光および青色反射光が混じりあってできる白色反射光の青色反射光に対するコントラスト比と青色反射光の半値幅との間の関係を示す図である。ここでも、赤色反射光の半値幅は約90ナノメートルとしている。第12図に示すように、青色反射光の半値幅が狭くなるにつれて、コントラスト比が大きくなり、視認性が向上することがわかる。逆に、半値幅が70ナノメートル以上になると、コントラストが5未満となり、視認性が劣化する。
このように、赤色反射光の反射帯域を広く、青色反射光の反射帯域を狭くすることで、表示パターンを明瞭に認識できるようにすることができる。また、青色の視感度は、青色領域の面積が小さいとさらに低下するため、ICカードの液晶ディスプレイにおいてはさらに青色を目立たなくすることができる。
また、赤色光を反射するコレステリック液晶層63および63を、右円偏光の光を反射する螺旋構造を有する液晶分子で形成し、青色光を反射するコレステリック液晶層63を、左円偏光の光を反射する螺旋構造を有する液晶分子で形成してもよい。これにより、コレステリック液晶層63および63の反射波長帯域とコレステリック液晶層63の反射波長帯域との共通する波長領域の光が、右円偏向成分および左円偏向成分の両方とも反射されるようになるので、明度の高い表示パターンを得ることができる。コレステリック液晶層63および63が、左円偏光の光を反射し、コレステリック液晶層63が、右円偏光の光を反射するよう構成することとしてもよい。
また、赤色光を反射するコレステリック液晶層63および63を、右円偏光の光を反射するコレステリック液晶層と左円偏光の光を反射するコレステリック液晶層とを2層組み合わせて形成してもよい。青色光を反射するコレステリック液晶層63に関しても同様のことが言える。
第13図は、実施の形態1に係る液晶ディスプレイ21の表示の一例を示す図である。ここでは、銀行などの預貯金残高の表示をおこなうICカード12の例を示している。第13図(a)は、残高が所定の額以上である場合の表示例であり、数字の表示パターンが白色で表示されている。また、第13図(b)は、残高が所定の額未満である場合の表示例であり、数字の表示パターンが赤色で表示されている。
このように、液晶ディスプレイ21をカラー表示できるように構成し、所定の条件を満足したかどうかに基づいて異なる色で残高を表示することにより、ICカード12の利用者に注意を促すことができる。ここでは、銀行などに対する預金残高の表示をおこなうICカード12の例を示したが、デパートなどの買物ポイントの表示をおこなうICカードなどにも同様の技術を適用することができる。
つぎに、本実施の形態1に係る液晶ディスプレイの作製方法について説明する。まず、第6図に示したコレステリック液晶層63および63を、液晶分子に右回りの捩れを誘起するカイラル剤をネマチック液晶材料に適量混合することにより、反射する赤色光の主波長が約480ナノメートルで、反射スペクトルの半値幅が約70ナノメートルとなり、かつ、右円偏光の光のみを反射するよう形成する。
また、コレステリック液晶層63を、液晶分子に左回りの捩れを誘起するカイラル剤をネマチック液晶材料に適量混合することにより、反射する青色光の主波長が約590ナノメートルで、反射スペクトルの半値幅が約90ナノメートルとなり、かつ、左円偏光の光のみを反射するよう形成する。ここで、コレステリック液晶層63〜63の厚みはそれぞれ約5マイクロメートルとしている。
そして、形成されたコレステリック液晶層63〜63は、第6図に示したように、ITO電極62〜62が蒸着された厚みが約150マイクロメートルの高分子フィルム60〜60により狭持され、積層化される。さらに最下部に厚さが1〜5マイクロメートル程度の光吸収層64を接着し、全体の厚みが約460マイクロメートルとなる液晶ディスプレイ21が形成される。
この液晶ディスプレイ21を用いて表示をおこなったところ、CIE(Commission Internationale de l’Eclairage)表色系において、白色の色度が、(x,y)=(0.31,0.33)、明度がY=0.32となり、良好な白色を示した。また、赤色の色度が、(x,y)=(0.57,0.40)、明度が、Y=0.21となり、良好な赤色を示した。
その際、コレステリック液晶層63〜63にそれぞれ印加される電圧は、1周期が50ミリ秒である1周期分の交流パルス電圧であり、コレステリック液晶層63〜63をプレーナ状態とする際にはプラスマイナス40ボルト、フォーカルコニック状態とする際にはプラスマイナス18ボルトの振幅値を有する交流パルス電圧とした。
以上説明してきたように、本実施の形態1では、ICカード12が、プレーナ状態において赤色光を反射するコレステリック液晶層63および63と、青色光を反射するコレステリック液晶層63とを積層し、積層されたコレステリック液晶層63〜63にそれぞれ電圧を印加して、コレステリック液晶の配向状態をプレーナ状態とフォーカルコニック状態との間で変化させ、光を透過または反射させることにより所定の情報を表示することとしたので、表示される情報に応じて表示色を変えるなどして視認性を高め、ICカード12の利便性をさらに向上させることができる。
なお、本実施の形態1では、2層のコレステリック液晶層を上下に積層することとしたが、これに限定されるものではなく、3層以上のコレステリック液晶層を積層することとしてもよい。
また、本実施の形態1では、コレステリック液晶の積層構造を液晶ディスプレイを有するICカードに応用することとしたが、これに限定されるものではなく、他の用途の電子ペーパ技術に同様の技術を適用することができる。
(実施の形態2)
ところで、上記実施の形態1では、異なる波長の光を反射するコレステリック液晶層を少なくとも2層以上に積層し、カラー表示を実現する場合について説明したが、表示パターンを形成するセグメントごとに、異なる波長の光を反射するコレステリック液晶層を少なくとも2つ以上並列し、カラー表示を実現するようにしてもよい。そこで、本実施の形態2では、異なる波長の光を反射するコレステリック液晶層を少なくとも2つ以上並列し、カラー表示を実現する場合について説明する。
まず、本実施の形態2に係る液晶ディスプレイの構成について説明する。第14図は、実施の形態2に係る液晶ディスプレイの構成を示す図である。第14図(a)は、データの表示パターンを形成するセグメント140〜140をそれぞれ2つに分割し、プレーナ状態において互いに補色となる色の光を反射する2つのコレステリック液晶層を並列して配設した場合である。
また、第14図(b)は、データの表示パターンを形成するセグメント141〜141をそれぞれ9つに分割し、プレーナ状態において赤色の光を反射する3つのコレステリック液晶層と、緑色の光を反射する3つのコレステリック液晶層と、青色の光を反射する3つのコレステリック液晶層とを、同色の光を反射するコレステリック液晶が隣り合わないように並列して配設した場合である。
第14図(a)の場合は、2つのコレステリック液晶層を赤色と青色など、互いに補色関係にある色の光をプレーナ状態において反射するよう形成することにより、反射された赤色光と青色光とが混じりあい、並置混色によって白色のパターンを表示することができる。
2つのコレステリック液晶層の一方をプレーナ状態とし、もう一方をフォーカルコニック状態とした場合には、表示パターンの色はプレーナ状態となったコレステリック液晶層が反射する光の色、すなわち、赤色または青色となる。2つのコレステリック液晶層がフォーカルコニック状態である場合には、コレステリック液晶層の下部に配設された下部層の色が表示される。ここで、下部層を光吸収層とすれば、表示色は黒色となる。
このように、情報の表示パターンを形成するセグメント140〜140を2つに分割し、異なる色の光を反射するコレステリック液晶層を並列に配設することにより、白色、赤色、青色および黒色の4色の表示が可能となる。
第14図(b)の場合は、プレーナ状態において、赤色光を反射するコレステリック液晶と、緑色光を反射するコレステリック液晶と、青色光を反射するコレステリック液晶とを形成し、それらを並列に配設することにより、RGB(Red−Green−Blue)表示を可能とし、反射された赤色光、緑色光および青色光との並置混色によって白色のパターンを表示することができる。
第15図は、コレステリック液晶層により反射される赤色光、緑色光および青色光のスペクトルを示した図である。このような青色に対応する波長150の光、緑色に対応する波長151の光、および、赤色に対応する波長152の光を反射するコレステリック液晶層を並列に配設することによりRGB表示をおこなうことができるようになる。このRGB表示においては、赤色光、緑色光および青色光を反射する各コレステリック液晶をプレーナ状態あるいはフォーカルコニック状態に設定することにより、白色、シアン、マゼンタ、イエロー、赤色、緑色、青色および黒色の合計8色の表示が可能となる。
ここで、表示色が黒色となるのは、コレステリック液晶層の下部に光吸収層が配設されており、すべてのコレステリック液晶層がフォーカルコニック状態となった場合である。また、コレステリック液晶は、プレーナ状態とフォーカルコニック状態とを混在させ、プレーナ状態における色とフォーカルコニック状態における色との間の中間的な色を表示することもできるため、さらに表示の階調数を増加させることも可能である。
同様のRGB表示をおこなう方法としては、赤色、緑色および青色をプレーナ状態において反射するコレステリック液晶層を3層積層する方法も考えられるが、ICカードのような限られた厚みでは製造の難度が大きく上昇しコストが高くなるため、本実施の形態の方法が、より適している。また、カラーフィルタを用いたカラー表示方法では、光利用効率が悪く、本実施の形態の方法に比べ、表示が暗くなる。さらに、反射型液晶を用いる方法では、液晶素子がメモリ性を有していないので電源を常に供給する必要があるという問題がある。
第16図は、白黒の縞模様の空間周波数に対する視覚伝達関数を示す図である。視覚伝達関数とは、人間の目に対する変調度伝達関数(MTF,Modular Transfer Function)であり、解像度チャートを35センチメートルの距離から見た場合の目の応答特性を表す関数である。横軸の空間周波数とは、幅1ミリメートル内にある白黒の縞模様の繰り返し回数である。たとえば、5Cycle/mmでは、幅1ミリメートル内で5回白黒のパターンが繰り返されていることを示す。
第16図に示すように、視覚伝達関数は、空間周波数が0.79Cycle/mm(黒のパターン1つの幅に換算すると、(1÷0.79)÷2=0.633mm。)で感度がピークとなり、空間周波数が高くなるにつれて感度が徐々に低下していく。感度が低下すると、白黒のコントラストが徐々に感じられなくなり、灰色のパターンとして感じられるようになる。
第16図に示した視覚伝達関数は白黒の縞模様に対するものであり、有彩色のパターンでは目の感度は若干低下する。しかしながら、プレーナ状態において各色を反射するコレステリック液晶層の幅が約1mm以下であれば、通常の姿勢での観察であれば並列されたコレステリック液晶により反射される各色が混色されて見えるようになる。
上記のカラー表示が可能な液晶ディスプレイは、銀行などの預貯金残高の表示をおこなうICカードや、デパートなどの買物ポイントの表示をおこなうICカードなどに備えられる。そして、預貯金の残高や買物ポイントのポイント数が所定の条件を満足した場合に、色を変えて表示することにより、ICカードの利用者に注意を促すことができ、ICカードの利便性をさらに高めることができる。
第14図では、数字を表示する場合について説明したが、アルファベットなどの文字の表示パターンに対応したセグメントとすれば、表示する単語ごとに表示色をかえることもでき、ICカードの利便性をさらに高めることができる。
つぎに、第14図(b)に示した液晶ディスプレイの作製方法について説明する。まず、プレーナ状態において反射される光の主波長が450ナノメートル以上490ナノメートル以下(赤色に対応)、530ナノメートル以上570ナノメートル以下(緑色に対応)、および610ナノメートル以上650ナノメートル以下(青色に対応)となるコレステリック液晶を、ネマチック液晶にカイラル剤を適量混合してそれぞれ形成する。より好ましくは、赤色に対応する反射光の主波長を約480ナノメートル、緑色に対応する反射光の主波長を約550ナノメートル、青色に対応する反射光の主波長を約620ナノメートルとする。その際、各コレステリック液晶層の駆動電圧が同等になるよう調整すると、回路を安価に製造することができる。ここで、コレステリック液晶層の厚みは、約5マイクロメートル前後とする。
各コレステリック液晶層に印加される電圧は、1周期が50ミリ秒である交流パルス電圧であり、コレステリック液晶層をプレーナ状態とする際にはプラスマイナス40ボルト、フォーカルコニック状態とする際にはプラスマイナス18ボルトの振幅値を有する交流パルス電圧とする。
以上説明してきたように、本実施の形態2では、データの表示パターンを形成するセグメント140〜140または141〜141ごとに、プレーナ状態においてそれぞれ異なる波長の光を反射するコレステリック液晶層を少なくとも2つ以上並列し、並列されたコレステリック液晶層に電圧を印加してコレステリック液晶の配向状態を変化させ、光を透過または反射させることにより所定の情報を表示することとしたので、表示されるデータに応じて表示色を変えるなどして、ICカードの利便性をさらに高めることができる。また、明度の高いカラー表示が可能な液晶ディスプレイを備えたICカードを安価に製造することができる。
なお、本実施の形態2では、液晶ディスプレイを有するICカードにコレステリック液晶の並列構造を適用することとしたが、これに限定されるものではなく、他の用途の電子ペーパ技術に同様の技術を適用することができる。また、コレステリック液晶を用いた液晶ディスプレイだけでなく、電気泳動方式やツイストボール方式など、その他の表示方式に対しても、本実施の形態2で述べた並列構造を同様に適用することができる。
(実施の形態3)
ところで、上記実施の形態1または2では、異なる波長の光を反射するコレステリック液晶層を少なくとも2層以上に積層または並列してカラー表示により単一のデータを表示する場合について説明したが、複数のデータの表示を一斉におこなって利便性をさらに向上させるようにICカードを構成することとしてもよい。そこで、本実施の形態3では、ICカードが複数のデータを一斉に表示する場合について説明することとする。
まず、本実施の形態3に係るICカードシステムの構成について説明する。第17図は、実施の形態3に係るICカードシステムの構成を示す図である。なお、第1図で説明したICカードシステムと同様の機能部については詳しい説明を省略する。
第17図に示すように、このICカードシステムは、ホストコンピュータ170、リーダ/ライタ171およびICカード172から構成される。ICカード172は、ICチップが組み込まれたカード状のデバイスであり、リーダ/ライタ171との間で種々のデータを送受信する。また、ICカード172は、受信したデータに対して演算や記憶などのデータ処理をおこなうことができる。
さらに、本発明に係るICカード172は、リーダ/ライタ171から受信したデータの内容や、演算結果、記憶しているデータなどをカラー表示するよう構成されている。その際、異なる種類のデータをカラーで一斉表示することができ、ICカード172の利便性をさらに高めている。
第17図に示すように、このICカード172は、通信部173、記憶部174、情報表示部175、入力受付部176、蓄電部177および制御部178を有する。通信部173は、リーダ/ライタ171との間でデータ通信をおこなう通信部である。記憶部174は、リーダ/ライタ171から受信したデータや、データの演算処理をおこなった結果などを記憶する記憶部である。
情報表示部175は、リーダ/ライタ11から受信したデータや、記憶部174に記憶されたデータ、あるいはエラーメッセージなどの複数のデータを、コレステリック液晶層を用いることによりカラーで一斉表示する表示部である。入力受付部176は、情報表示部175が表示するデータの表示様式を、単一データの表示と複数データの表示との間で切り替えるボタンなどの入力デバイスである。この入力受付部176は、情報表示部175の表示制御をおこなう専用の入出力チャネルを有しており、ICカード全体を制御する後述の制御部178を介することなく、記憶部174からデータを読み出し、表示の切り替えをおこなうことができる。これにより、高速にデータの表示をおこなうことができる。
蓄電部177は、リーダ/ライタ171から送信された電波のエネルギーを蓄積し、ICカード172に電力を供給する電源部である。この蓄電部177に電力を蓄電しておくことにより、ICカード172は、リーダ/ライタ171との通信をおこなっていないときでも、単一データの表示と複数データの表示との間の表示の切り替えをことができる。制御部178は、各機能部173〜177に種々の制御信号を送信し、ICカード172の全体制御をおこなう制御部である。
つぎに、本実施の形態3に係るデータの表示方式について説明する。第18図は、実施の形態3に係るデータの表示方式を説明するための概念図である。本実施の形態3における液晶ディスプレイには、上下2段に数字パターンを表示できるように各桁にセグメントが14ずつ配設されている。第18図(a)は、この液晶ディスプレイを用いて「123456」という1つの数字データ180を表示した場合であり、第18図(b)は、この液晶ディスプレイを用いて「380000」と「200000」の2つの数字データ181および182を表示した場合である。また、2つの数字データ181および182を表示する場合には、互いに異なる色で表示することにより視認性を向上させる。
つぎに、本実施の形態3に係る液晶ディスプレイの構造について説明する。第19図は、実施の形態3に係る液晶ディスプレイの構造を示す図である。第19図には、情報の表示パターンを形成する各セグメント190〜19014を示す平面図と、セグメント190、190、190および19012を通る直線(一点鎖線)で切断した断面図とが示されている。なお、以下では、第6図と同様の部分については詳細な説明を省略する。
第19図の断面図に示すように、この液晶ディスプレイは高分子フィルム191〜191、ITO電極192〜19212、隔壁層193〜193、コレステリック液晶層194〜194および光吸収層195を有する。
高分子フィルム191〜191は、表面上にITO電極192〜19212が形成される透明フィルム基板である。ITO電極192〜19212は、コレステリック液晶層194〜194に電圧を印加する電極である。隔壁層193〜193は、ITO電極192、192、192、192、192、192、19210および、19211およびコレステリック液晶層194〜194を隔離する層である。コレステリック液晶層194〜194は、プレーナ状態において所定の波長の光を反射し、フォーカルコニック状態においては光を透過する液晶層である。光吸収層195は、コレステリック液晶層194〜194を透過した光を吸収し、黒色を呈する層である。
ここでは、コレステリック液晶層194、194、194および194は、プレーナ状態において緑色の波長を有する光を反射するように形成される。好ましくは、反射光の主波長が530ナノメートル以上570ナノメートル以下の範囲とすると、明るい表示とすることができる。
また、コレステリック液晶層194および194は、プレーナ状態において青色の波長を有する光を反射するように形成され、コレステリック液晶層194および194は、プレーナ状態において赤色の波長を有する光を反射するように形成される。ここで、青色反射光の主波長を450ナノメートル以上490ナノメートル以下、赤色反射光の主波長を610ナノメートル以上650ナノメートル以下とすると、緑色の反射光と混ぜ合わされた場合に混色の度合いが好ましいものとなる。
そして、コレステリック液晶層194〜194に独立に電圧を印加し、それぞれをプレーナ状態あるいはフォーカルコニック状態に設定することにより、異なる色でセグメント190〜190とセグメント190〜19014とに数字を表示することができる。
具体的には、コレステリック液晶層194および194とコレステリック液晶層194および194とがプレーナ状態となる場合には、緑色と青色との混色となるので表示色はシアンとなり、コレステリック液晶層194および194とコレステリック液晶層194および194とがプレーナ状態となる場合には、緑色と赤色との混色となるので表示色はマゼンタとなる。シアンとマゼンタは反対色であるため、同時に表示させると色の対比効果により明瞭に区別して視認できるようになる。
第20図は、第19図に示した液晶ディスプレイの構造を簡略化した構造を示す図である。第20図に示された構造においては、第19図のITO電極192および192が、ITO電極19213に、第19図のITO電極19210および19211が、べた構造のITO電極19214に置換えられている。また、第19図のコレステリック液晶層194および194が、べた構造のコレステリック液晶層194に、第19図のコレステリック液晶層194および194が、べた構造のコレステリック液晶層19410に置換えられている。
このように、第19図のITO電極192および192と、ITO電極19210および19211と、コレステリック液晶層194および194と、コレステリック液晶層194および194とをべた構造とすることにより、コレステリック液晶の配向状態を切り替える回路を簡略化することができ、低いコストでICカードを製造することができる。
コレステリック液晶層194および194とコレステリック液晶層194とがプレーナ状態となる場合には、数字の表示パターンを形成するセグメント190〜190のうち、数字の部分以外はコレステリック液晶層194の反射光の色である青色の表示色となる。また、コレステリック液晶層194および194とコレステリック液晶層19410とがプレーナ状態となる場合には、数字の表示パターンを形成するセグメント190〜19014のうち、数字の部分以外はコレステリック液晶層19410の反射光の色である赤色の表示色となる。
そのため、青色反射光と赤色反射光との波長帯域を、第9図に示した視感度曲線の両端に該当する近紫外領域および近赤外領域の波長帯域にそれぞれ設定することにより、表示パターン以外の部分の青色反射光と赤色反射光との視感度が低くなり、数字部分との間の色のコントラストを大きくすることができる。
また、緑色光を反射するコレステリック液晶層194、194、194および194を、右円偏光の光を反射する螺旋構造を有する液晶分子で形成し、青色光を反射するコレステリック液晶層194および194と、赤色光を反射するコレステリック液晶層194および194とを左円偏光の光を反射する螺旋構造を有する液晶分子で形成すると、上下のコレステリック液晶層の反射波長帯域において共通する波長領域の光が、右円偏向成分および左円偏向成分の両方とも反射されるようになるので、明度の高い表示パターンを得ることができる。コレステリック液晶層194、194、194および194が、左円偏光の光を反射し、コレステリック液晶層194および194とコレステリック液晶層194および194とが、右円偏光の光を反射するようにしてもよい。
第21図は、第20図に示した液晶ディスプレイを用いて単一のデータ表示から2つのデータ表示に切り替える切り替え表示の一例を示す図である。第21図(a)に示すように、第1の表示モードにおいては、第19図または第20図に示した上下14個のセグメント190〜19014を用いて単一のデータを緑色210で表示する。そして、第17図に示された入力受付部176により、表示の切り替え指示を受け付けた場合には、第21図(b−1)または(b−2)に示すような表示に切り替えられる。
第21図(b−1)は、シアン211とマゼンタ213との表示色で2つのデータを表示した場合である。数字部分以外は、青色212および赤色214の表示となる。第21図(b−2)は、シアン215と緑色217との表示色で2つのデータを表示した場合である。この場合、数字部分以外は、青色216および黒色218の表示となる。緑色217と背景となる黒色とは色が良好に融合するため、第21図(b−2)のような色の組み合わせも適切である。
第22図は、第20図または第21図に示した液晶ディスプレイ221を備えたICカード220の概観を示す図である。このICカード220は、単一のデータと2つのデータとを切り替え表示できる液晶ディスプレイ221と、その切り替えを指示するための表示切替ボタン222とを有している。
ICカード220の利用者は表示切替ボタン222を押圧することにより、単一のデータと2つのデータとを切り替え表示することができる。たとえば、表示切替ボタン222を一度押圧すると単一のデータの表示がおこなわれ、再度表示切替ボタン222を押圧すると2つのデータの表示がおこなわれ、さらにもう一度表示切替ボタン222を押圧すると表示が消去されるように構成する。
以上説明してきたように、本実施の形態3では、単一のデータの表示から複数のデータの一斉表示へと切り替える切替要求の入力を受け付ける入力受付部176をさらに備え、情報表示部175は、入力受付部176により表示の切替要求の入力を受け付けた場合に、単一のデータの表示から複数のデータの一斉表示へと切り替えることとしたので、複数のデータを即座に確認することができ、ICカード220の利便性を高めることができる。
なお、本実施の形態3では、表示切替ボタン222の押圧により単一のデータと2つのデータとを切り替え表示する場合を示したが、これに限定されるものではなく、ジョグダイヤルの回転により切り替え表示をおこなうこととしてもよい。ジョグダイヤルを表示切替ボタン222の代わりに用いることにより、表示切替ボタン222を不意に押圧し、表示が不必要におこなわれるのを防止することができる。
この場合は、たとえば、ジョグダイヤルを1回転させると単一データの表示がおこなわれ、再度ジョグダイヤルを1回転させると2つのデータの表示がおこなわれ、さらにジョグダイヤルを1回転させると表示が消去されるように構成する。さらに、ジョグダイヤルの回転を電力に変換する回路を設け、発生した電力を用いて表示をおこなうように構成してもよい。
また、本実施の形態3では、リーダ/ライタ171から電力の供給を受けることとしたが、これに限定されるものではなく、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistants)などの他の装置から有線または無線で供給を受けるようにしてもよい。また、ICカード172に太陽電池を備え、太陽電池から電力の供給を受けることとしてもよい。より、好ましくは、電力供給をおこなう装置を各地に備え、どこにいる場合でも容易に電力の供給を受けられるよう整備されると、ICカード172の利便性が大きく向上する。
また、本実施の形態3では、異なる主波長の光を反射する2つのコレステリック液晶層を有する液晶ディスプレイを用いて複数データの一斉表示をおこなうこととしたが、これに限定されるものではなく、コレステリック液晶層が1つのみの場合に単一の色で複数データの一斉表示をおこなうこととしてもよい。
(実施の形態4)
ところで、上記実施の形態1、2または3では、カラー表示をおこなうことのできるコレステリック液晶を用いた液晶ディスプレイをICカードに備える場合について説明したが、暗所において発光し、液晶表示面を照射する蓄光層を液晶ディスプレイに備えることにより、暗所においての視認性を向上することができる。そこで、本実施の形態4では、液晶ディスプレイにさらに蓄光層を備えた場合について説明する。
まず、本実施の形態4に係る液晶ディスプレイの構成について説明する。第23図は、実施の形態4に係る液晶ディスプレイの構成を示す図である。第23図に示すように、この液晶ディスプレイはコレステリック液晶部230、蓄光層231および光吸収層232を有する。
コレステリック液晶部230は、実施の形態1〜3で示したようなカラー表示が可能な液晶ディスプレイ部である。ただし、実施の形態1〜3で示した液晶ディスプレイの光吸収層は、光吸収層232で代替されている。蓄光層231は、光の照射を受けるとそのエネルギーを蓄積し、数十分から数時間発光する蓄光顔料や夜光材料などにより形成される透明な層である。光吸収層232は、光を吸収し、黒色を呈する層である。
第24図は、蓄光層231を備えた液晶ディスプレイの表示の一例を示す図である。第24図(a)は、明所において数字の「3」を表示した表示例であり、第24図(b)は、暗所において数字の「3」を表示した表示例である。
第24図(a)では、蓄光層231は光のエネルギーを蓄積している状態であり、蓄光層231の発光はほとんど気にならない。たとえば、コレステリック液晶部230が緑色240の波長の光のみを反射するよう形成されている場合、数字部分以外は光吸収層232により黒色241となる。
第24図(b)では、コレステリック液晶部230が緑色240の波長の光のみを反射するよう形成されている場合、蓄光層231から発光された光のうち、緑色240の波長の光が反射される。また、暗所であるために外部から入射する光の量も少ないため、第24図(a)の緑色240に比べて数字部分の表示は暗い緑色242の表示となる。しかしながら、表示パターン以外の部分は蓄光層232から発光された光が透過して明るくなり、第24図(a)に示した表示とは明暗が反転して暗所でも表示を十分に認識することができるようになる。
この場合、蓄光層232が発する光の主波長をコレステリック液晶部230が反射する光の主波長とほぼ一致させ、さらに、蓄光層232の発する光の波長帯域を、コレステリック液晶部230が反射する光の波長帯域よりもできるだけ広くするようにすることで、表示パターンと表示パターン以外の部分との間のコントラストを大きくすることができ、視認性を向上させることができる。
つぎに、第23図に示した蓄光層232を有する液晶ディスプレイをさらに改良した液晶ディスプレイについて説明する。第25図は、4分の1波長板251および偏光板252を用いて改良した液晶ディスプレイの構成を示す図である。第25図に示すように、この液晶ディスプレイは、コレステリック液晶部250、4分の1波長板251、偏光板252、蓄光層253および光吸収層254を有する。
コレステリック液晶部250は、実施の形態1〜3で示したようなカラー表示が可能な液晶ディスプレイ部である。ただし、実施の形態1〜3で示した液晶ディスプレイの光吸収層は、光吸収層254で代替されている。4分の1波長板251は、平面偏光を右円偏光または左円偏光に変換する波長板である。偏光板252は、光を平面偏光に変換する偏光板である。蓄光層253は、光の照射を受けるとそのエネルギーを蓄積し、数十分から数時間発光する蓄光顔料や夜光材料などにより形成される透明な層であり、発せられる光の主波長はコレステリック液晶部250が反射する光の主波長とほぼ一致している。光吸収層254は、光を吸収し、黒色を呈する層である。
このように、蓄光層253の上部に偏光板252と4分の1波長板251とを配置して、蓄光層253から発せられた光が右円偏光または左円偏光に変換されるようにし、コレステリック液晶部250をプレーナ状態において右円偏光または左円偏光の光を反射するように構成する。すると、コレステリック液晶部250がプレーナ状態となった場合に、蓄光層253から発せられた光はコレステリック液晶部250により反射され、表示パターンがより暗くなり、表示パターン以外の部分は蓄光層253から発せられた光により明るくなるので、表示パターンとそれ以外の部分との間のコントラストをさらに大きくすることができ、視認性を向上させることができる。
第26図は、右円偏光の光を反射するコレステリック液晶層260と左円偏光の光を反射するコレステリック液晶層260を有する液晶ディスプレイの構成を示す図である。第26図に示すように、この液晶ディスプレイは、コレステリック液晶部260および260、蓄光層261および光吸収層262を有する。
コレステリック液晶部260および260は、実施の形態1〜3で示したようなカラー表示が可能な液晶ディスプレイ部である。ただし、実施の形態1〜3で示した液晶ディスプレイの光吸収層は、光吸収層262で代替されている。また、コレステリック液晶部260は、右円偏光の光のみを反射し、コレステリック液晶部260は、左円偏光の光のみを反射するよう構成されている。蓄光層261は、光の照射を受けるとそのエネルギーを蓄積し、数十分から数時間発光する蓄光顔料や夜光材料などにより形成される透明な層であり、発せられる光の主波長はコレステリック液晶部250が反射する光の主波長とほぼ一致している。光吸収層262は、光を吸収し、黒色を呈する層である。
このように、右円偏光および左円偏光の光をそれぞれ反射するコレステリック液晶部260および260を配設することにより、明所においては上下のコレステリック液晶層260および260の反射波長帯域において共通する波長領域の光が、右円偏向成分および左円偏向成分の両方とも反射されるようになるので、明瞭な表示パターンを得ることができる。
ここでは、コレステリック液晶層260が右円偏光の光を反射し、コレステリック液晶層260が左円偏光の光を反射するようにしたが、コレステリック液晶層260が左円偏光の光を反射し、コレステリック液晶層260が右円偏光の光を反射するようにしてもよい。
暗所においては蓄光層261から発せられた光の遮蔽率が大きく向上し、表示パターンがより暗くなるので、表示パターンと表示パターン以外の部分との間のコントラストをさらに大きくすることができ、視認性を向上させることができる。この場合には、第25図で示した液晶ディスプレイの構成と異なり、4分の1波長板251と偏光板252とを必要とせずに、視認性の向上が図れる。
第27図は、暗所において蓄光層により発せられた光のコレステリック液晶部透過後のスペクトルを示す図である。第27図(a)は、表示パターン以外の部分の光のスペクトル,すなわち蓄光層から発せられた光のスペクトル例であり、表示パターン以外の部分では蓄光層261から発せられた光のほとんどはコレステリック液晶部を透過する。第27図(b)は、表示パターンの部分の光のスペクトルであり、第27図(a)のピーク波長を示す光が左円偏光の光を反射するコレステリック液晶部260を透過した場合のスペクトルである。この場合、同図(a)のピーク波長を示す光のほぼ半分が反射される。
第27図(c)は、第27図(b)と同じく、表示パターンの部分の光のスペクトルであり、第27図(a)のピーク波長を示す光が左円偏光を反射するコレステリック液晶部260および右円偏光を反射するコレステリック液晶部260の両方を透過した場合のスペクトルである。この場合は、第27図(a)のピーク波長を示す光の大部分が反射される。したがって、右円偏光を反射するコレステリック液晶部と左円偏光を反射するコレステリック液晶部とを双方配設することにより、表示パターンと非表示パターンとの間のコントラストをさらに大きくすることができ、視認性を向上させることができる。
つぎに、ICカードがリーダ/ライタから光エネルギーの供給を受ける方式について説明する。第28図は、ICカード282がリーダ/ライタ280から光エネルギーの供給を受ける方式を示す図である。第28図に示すように、ICカード282がリーダ/ライタ280との通信をおこなうために、リーダ/ライタ280上に翳されている場合を示している。リーダ/ライタ280は、ICカード282に光エネルギーを供給する光源281を有する。一方、ICカード282は、リーダ/ライタ280から照射される光のエネルギーを液晶ディスプレイ283に備えられた蓄光層261が蓄積し、暗所においてはそのエネルギーを利用して発光する。このようにして、ICカード282が通信をおこなうたびに確実に光エネルギーの蓄積をおこなうことができる。
以上説明したように、本実施の形態4では、光エネルギーを蓄積し、蓄積した光エネルギーを利用して発光する蓄光層261を備え、蓄光層261により発光された光がコレステリック液晶部を照射するよう構成され、また、蓄光層261により発光される光の反射主波長は、コレステリック液晶230、250、260および260がプレーナ状態において反射する反射光の反射主波長とほぼ等しいこととしたので、暗所においても視認性が高い液晶ディスプレイを備えたICカードを実現することができる。
なお、本実施の形態4では、コレステリック液晶を用いた液晶ディスプレイに蓄光層を備えることとしたが、これに限定されるものではなく、電気泳動方式やツイストボール方式などのその他の表示方式においても、蓄光層を備えることとしてもよい。
また、本実施の形態4では、異なる主波長の光を反射する2つのコレステリック液晶層を有する液晶ディスプレイに対して蓄光層を備えることとしたが、これに限定されるものではなく、コレステリック液晶層が3つ以上の場合に蓄光層を備えるようにしてもよいし、コレステリック液晶層が1つのみの場合に蓄光層を備えることとしてもよい。
(実施の形態5)
ところで、上記実施の形態1〜5においては、コレステリック液晶層の液晶分子の配向状態をプレーナ状態あるいはフォーカルコニック状態に遷移させるために、極性が正負逆転し、振幅の絶対値が等しい交流パルス電圧を用いることとしたが、ICカードに備えられる液晶ディスプレイは、他の用途に用いられる液晶ディスプレイに比べて表示パターンの書き換え頻度が少ないため、上記交流パルス電圧とは異なる電圧波形を用いることとしてもよい。そこで、本実施の形態5では、ICカードへの適用に最適化された電圧波形を用いて液晶ディスプレイを駆動させる場合について説明する。
まず、極性が正負逆転し、かつ、振幅の絶対値が等しい交流パルス電圧について説明する。第29図は、極性が正負逆転し、かつ、振幅の絶対値が等しい交流パルス電圧の一例を示す図である。第29図(a)は、フォーカルコニック状態からプレーナ状態にコレステリック液晶層の状態を遷移させる場合に印加される交流パルス電圧である。この場合、振幅がプラスマイナス40ボルトの交流パルス電圧を50ミリ秒の幅で印加する。第29図(b)は、プレーナ状態からフォーカルコニック状態にコレステリック液晶層の状態を遷移させる場合に印加される交流パルス電圧である。この場合は、振幅がプラスマイナス18ボルトの交流パルス電圧を50ミリ秒の幅で印加する。
ここで、交流パルス電圧のパルス幅をおよそ50ミリ秒とするのは、材料にもよるが、プレーナ状態あるいはフォーカルコニック状態に状態を十分遷移させるためには、およそ50ミリ秒以上のパルス幅を有するパルス電圧の印加が必要となるためである。
このように、極性が正負逆転し、かつ、振幅の絶対値が等しい交流パルス電圧を印加するのは、コレステリック液晶内のイオン性物質が分極し、劣化するのを防止するためである。ところが、第29図(a)のような交流パルス電圧を印加するためには、耐電圧マージンが80ボルト以上である電圧駆動回路が必要となり、ICカードの製造コストが高くなる。そこで、電圧駆動回路の耐電圧マージンを小さくすることができる波形のパルス電圧を以下に示すこととする。
第30図は、コレステリック液晶層に印加される直流パルス電圧の一例を示す図である。第30図(a−1)は、フォーカルコニック状態からプレーナ状態に遷移させる場合に印加される極性が正の直流パルス電圧であり、第30図(a−2)は、プレーナ状態からフォーカルコニック状態に遷移させる場合に印加される極性が負の直流パルス電圧である。第30図(a−1)のパルス波形と第30図(a−2)のパルス波形は極性が反転しており、状態の切り替えをおこなうたびに極性が反転するパルス電圧を印加することにより、電圧駆動回路の耐電圧マージンを小さくできる。
また、第30図(b−1)および第30図(b−2)に示すように、フォーカルコニック状態からプレーナ状態に遷移させる場合に印加される直流パルス電圧の極性を負とし、第30図(a−2)は、プレーナ状態からフォーカルコニック状態に遷移させる場合に印加される直流パルス電圧の極性を正としてもよい。
ここで、第30図に示した波形は直流パルス電圧であり、第29図に示した交流パルス電圧に比べて、コレステリック液晶が分極することにより劣化するのを抑制する効果は小さい。しかしながら、ICカードの液晶ディスプレイにおいては、液晶ディスプレイなどのように、表示の書き換え回数が多くないので実用上は問題がない。
たとえば、STN(Super Twisted Nematic)等の液晶ディスプレイにおいて、毎秒30フレームで1日平均1時間表示をおこなったとすると、一年間では1画素あたり約4千万回パルス電圧が印加されることになる。一方、ICカードの表示の書き換え回数は、ICカードが使用される期間全体で1万回程度とされ、液晶ディスプレイのように毎秒30フレームといった頻度で書き換えられることもないので、第30図に示したような直流パルス電圧を用いる方法でも十分実用可能である。
第31図は、極性の反転時に電圧が印加されないインターバルを有する交流パルス電圧の一例を示す図である。第31図(a)は、フォーカルコニック状態からプレーナ状態に遷移させる場合に印加される交流パルス電圧であり、第31図(b)は、プレーナ状態からフォーカルコニック状態に遷移させる場合に印加される交流パルス電圧である。
第31図(a)および(b)においては、各交流パルス電圧は、極性の反転時に電圧が印加されないインターバルを有している。このインターバルは、好ましくは、液晶分子の配向変化が進行する前の約10ミリ秒以下とする。これは、プレーナ状態あるいはフォーカルコニック状態に状態を十分遷移させるためには、正負極性が反転する交流パルス電圧のパルス幅はおよそ50ミリ秒以上必要となるが、インターバルを10ミリ秒以上とすると、パルス幅が短い2つの独立した直流パルス電圧となり、状態が遷移しにくくなるためである。このような波形の交流パルス電圧を用いることにより、第29図に示したように正値の電圧から負値の電圧へと電圧値が一度に大きく変化することがなくなり、電圧駆動回路の耐電圧マージンが小さくて済むという利点が生じる。
第32図は、正負の電圧振幅が異なる交流パルス電圧の一例を示す図である。第32図(a)は、フォーカルコニック状態からプレーナ状態に遷移させる場合に印加される交流パルス電圧であり、第32図(b)は、プレーナ状態からフォーカルコニック状態に遷移させる場合に印加される交流パルス電圧である。
第32図(a)では、電圧の正の振幅値はフォーカルコニック状態からプレーナ状態に遷移させるのに必要な電圧値(第5図に示した電圧値V)以上であり、電圧の負の振幅値は絶対値がその電圧値より小さい値とする。また、第32図(b)では、電圧の正の振幅値はプレーナ状態からフォーカルコニック状態に遷移させるのに必要な範囲内の電圧値(第5図に示した電圧値VからVの範囲の電圧値)であり、電圧の負の振幅値は絶対値がその電圧値より小さい値とする。これにより、電圧駆動回路の耐電圧マージンを小さくすることができるとともに、コレステリック液晶が分極することにより劣化するのを抑制することができる。
第32図(a)では、1つの正の電圧パルスの前後に2つの負の電圧パルスを印加することとしているが、電圧駆動回路のコストをさらに安く抑えるため、印加する負の電圧パルスを1つのみにしてもよい。第32図(b)でも同様である。また、第32図では、フォーカルコニック状態からプレーナ状態に遷移させる場合に印加される交流パルス電圧の極性と、プレーナ状態からフォーカルコニック状態に遷移させる場合に印加される交流パルス電圧の極性とを同じ極性としたが、それらを逆の極性としてもよい。
第33図は、液晶ディスプレイの表示の書き換え回数に応じて極性が異なる直流パルス電圧の一例を示す図である。第33図(a−1)は、書き換え回数が偶数である場合に、フォーカルコニック状態からプレーナ状態に遷移させるために印加される極性が正の直流パルス電圧であり、第33図(a−2)は、書き換え回数が偶数である場合に、プレーナ状態からフォーカルコニック状態に遷移させるために印加される極性が正の直流パルス電圧である。
第33図(b−1)は、書き換え回数が奇数である場合に、フォーカルコニック状態からプレーナ状態に遷移させるために印加される極性が負の直流パルス電圧であり、第33図(b−2)は、書き換え回数が奇数である場合に、プレーナ状態からフォーカルコニック状態に遷移させるために印加される極性が負の直流パルス電圧である。以降、表示の書き換えをおこなうたびに、第33図(a−1)および(a−2)に示される正の極性の直流パルス電圧と、第33図(b−1)および(b−2)に示される負の極性の直流パルス電圧とを交互に印加する。
このように、書き換え回数に応じて印加される直流パルス電圧の極性を交互に変更することにより、電圧駆動回路の耐電圧マージンを小さくすることができるとともに、コレステリック液晶が分極することによって生じる劣化を抑制することができる。
書き換え回数の記憶は、ICカードが有する記憶部によりおこなわれるか、ICカードとの間で通信をおこなうリーダ/ライタが有する記憶部によりおこなわれる。ICカードが書き換え回数を記憶する場合には、リーダ/ライタは、ICカードから書き換え回数のデータを読み込み、たとえば、書込み回数が偶数であれば正の極性の直流パルス電圧で表示を書き換えるよう制御する電波を放射する。書込み回数が奇数であれば負の極性の直流パルス電圧で表示を書き換えるよう制御する電波を放射する。その後、ICカードは記憶部に記憶された書込み回数を1増加させる。
リーダ/ライタが書き換え回数を記憶する場合には、不特定多数のICカードの書き換え回数を累積して記憶する。この場合は、同一のICカードに2回続けて同じ極性の直流パルス電圧が印加される可能性が生じるが、長期的に見れば、正の極性の直流パルス電圧が印加される確率と、負の極性の直流パルス電圧が印加される確率とは半々となるため、実用上は問題がない。
また、第30図で示したパルス波形を用いる方法、あるいは、第32図で示したパルス波形を用いる方法と第33図で示した表示の書き換え回数に応じて印加する電圧の極性を決定する方法とを組み合わせると、コレステリック液晶が分極することによって生じる劣化をさらに効果的に抑制することができる。
第34図は、表示の書き換えを2段階でおこなう場合に印加する直流パルス電圧の一例を示す図である。第34図(a−1)は、すべての表示セグメントをプレーナ状態にリセットするために印加する正の極性の直流パルス電圧であり、第34図(a−2)は、そのプレーナ状態をフォーカルコニック状態に遷移させ、所定の表示パターンを形成するために印加する負の極性の直流パルス電圧である。また、第34図(b−1)は、すべての表示セグメントをフォーカルコニック状態にリセットするために印加する正の極性の直流パルス電圧であり、第34図(b−2)は、そのフォーカルコニック状態をプレーナ状態に遷移させ、所定の表示パターンを形成するために印加する負の極性の直流パルス電圧である。
このように、コレステリック液晶のリセットと表示パターンの形成とを極性の異なる直流パルス電圧を2段階で印加しておこなうことにより、電圧駆動回路の耐電圧マージンを小さくすることができるとともに、コレステリック液晶が分極することによって生じる劣化を抑制することができる。
以上説明してきたように、本実施の形態5では、ICカードの液晶ディスプレイにおける表示パターンの書き換え頻度が少ないことを利用して、直流パルス電圧や、極性の反転時に電圧が印加されないインターバルを有する交流パルス電圧、あるいは、正負で振幅が異なる交流パルス電圧などを用いて表示の書き換えをおこなうこととしたので、電圧駆動回路の耐電圧マージンを小さくすることができるとともに、コレステリック液晶が分極することによって生じる劣化を抑制することができる。
なお、本実施の形態5では、液晶ディスプレイを有するICカードに応用することとしたが、これに限定されるものではなく、他の用途の電子ペーパ技術に同様の技術を適用することができる。また、液晶ディスプレイを構成するコレステリック液晶層の数は、実施の形態1または2に示されるように複数色の表示ができるよう複数であってもよいし、単数であってもよい。
(実施の形態6)
ところで、上記実施の形態1〜5では、プレーナ状態をフォーカルコニック状態に、あるいは、フォーカルコニック状態をプレーナ状態に遷移させて表示を書き換える場合に一度だけ電圧を印加して表示を書き換えることとしたが、複数回の電圧パルスの印加では状態遷移がより完全になるため、コレステリック液晶層に電圧を複数回印加することとしてもよい。そこで、本実施の形態6では、コレステリック液晶層に電圧を複数回印加して所定の表示をおこなう場合について説明する。
まず、コレステリック液晶の状態を遷移させるのに必要な電圧と温度との関係について説明する。一般に、コレステリック液晶は、低い温度になるほど粘性が増加するため、状態を遷移させるのに必要となる印加電圧は大きくなる。第35図は、コレステリック液晶の状態を遷移させるのに必要な電圧と温度との関係を示す図である。
第35図(a)は、コレステリック液晶の状態を遷移させるのに印加する交流パルス電圧のパルス幅が10ミリ秒の場合の関係であり、実線350と351とに挟まれた範囲は、コレステリック液晶がフォーカルコニック状態となる電圧範囲、点線352より電圧値が大きい範囲は、コレステリック液晶がプレーナ状態となる電圧範囲である。
また、第35図(b)は、コレステリック液晶の状態を遷移させるのに印加する交流パルス電圧のパルス幅が50ミリ秒の場合の関係であり、実線353と354とに挟まれた範囲は、コレステリック液晶がフォーカルコニック状態となる電圧範囲、点線355より電圧値が大きい範囲は、コレステリック液晶がプレーナ状態となる電圧範囲である。
第35図に示すように、状態を変化させるのに必要な電圧値の温度依存性は、印加する交流パルス電圧のパルス幅が小さいほど顕著なものとなる。具体的には、第35図(a)に示すパルス幅が10ミリ秒の場合には、摂氏0度から摂氏50度の温度範囲において、フォーカルコニック状態となる電圧マージンは、25ボルトから26ボルトの範囲と狭く、また、プレーナ状態となる電圧値も44ボルトと大きい。一方、第35図(b)に示すパルス幅が50ミリ秒の場合には、摂氏0度から摂氏50度の温度範囲において、フォーカルコニック状態となる電圧マージンは、15ボルトから24ボルトの範囲と広く、また、プレーナ状態となる電圧値も33ボルトと小さい。さらに、パルス幅を100ミリ秒とすると、フォーカルコニック状態となる電圧マージンがさらに広くなり、プレーナ状態となる電圧値も小さくなる。
また、ICカードなどの液晶ディスプレイにコレステリック液晶を用いる場合には、コレステリック液晶層を薄く形成する必要があるが、コレステリック液晶層が薄い場合には、状態を変化させるのに要する電圧が全体的に低くなり、第35図(a)または第35図(b)に示したフォーカルコニック状態となる電圧マージンが狭くなる。さらに、表示パターンの明度も低くなる。したがって、ICカードなどの液晶ディスプレイにコレステリック液晶を用いる場合には、印加するパルス電圧のパルス幅ができるだけ大きい方が望ましい。
さらに、パルス幅が小さいと、残像や表示のコントラストの低下といった問題が生じる。たとえば、第35図(a)において、コレステリック液晶に印加する電圧を23ボルトとした場合に、摂氏50度ではフォーカルコニック状態に遷移するのに十分な電圧であったものが、摂氏0度にまで温度が下がるとフォーカルコニック状態に完全には遷移しない電圧値となる。そのため、コレステリック液晶層を光が透過する際に、プレーナ状態となっている一部のコレステリック液晶により光の一部が反射されて、前回の表示パターンの像が残ったり、表示のコントラストが低下したりする。
また、プレーナ状態に遷移する場合にも、温度の低下により、印加した電圧値がプレーナ状態に完全には遷移しない電圧値となるような場合が生じうる。そのため、コレステリック液晶層により光が反射される際に、フォーカルコニック状態となっている一部のコレステリック液晶により光の一部が透過されて、明度が上昇せず、表示のコントラストが低下したりする。
この問題は、電圧を複数回印加することにより改善することができる。第36図は、コレステリック液晶に電圧を印加する電圧印加回数と表示の明度およびコントラストとの間の関係を示す図である。第36図において、実線360は、電圧を印加することによりフォーカルコニック状態からプレーナ状態へ状態を遷移させる場合である。この場合、1回目の電圧印加では、コレステリック液晶層に反射された反射光の明度がY=0.28であったものが、2回目の電圧印加では、Y=0.30に向上している。また、コントラストは14から15に増加している。
また、点線361は、電圧を印加することによりプレーナ状態からフォーカルコニック状態へ状態を遷移させる場合である。この場合、1回目の電圧印加では、コレステリック液晶層に反射された反射光の明度がY=0.03であったものが、2回目の電圧印加では、Y=0.02に低下している。また、コントラストは10から15に増加している。
このように、電圧を印加する回数を増加させることにより、プレーナ状態においては明度を増加させるとともにコントラストをより向上させ、フォーカルコニック状態においては明度を低下させるとともにコントラストをより向上させることができる。
つぎに、液晶ディスプレイに表示をおこなう場合のコレステリック液晶層の初期化について説明する。第37図は、コレステリック液晶の初期化のタイミングを示すタイミング図である。このタイミング図は、国際標準規格であるISO/IEC10536に基づくものである。第37図(a)は、ICカードと通信をおこなうリーダ/ライタが電波を放射することにより電力をICカードに伝送するタイミングを示しており、第37図(b)は、ICカードがリーダ/ライタにデータを送信するタイミングを示しており、第37図(c)は、リーダ/ライタがICカードにデータを送信するタイミングを示しており、第37図(d)は、ICカードが液晶ディスプレイのコレステリック液晶層の初期化をおこなうタイミングを示している。
また、T0は、リセット復帰時間と呼ばれ、リーダ/ライタが前回電力を伝送した影響をリセットする時間であり、ICカードに電力が供給されない時間である。T1は、最大電力立ち上がり時間と呼ばれ、ICカードが処理をおこなうのに必要な値にまで電力値が立ち上がるのに必要な時間である。T2は、データ伝送準備時間と呼ばれ、ICカードが安定するための通信を準備するに要する時間であり、この時間帯に、リーダ/ライタからICカードに論理レベルが1となる信号が送信される。T3は安定ロジック時間と呼ばれ、リーダ/ライタがICカードに、また、ICカードがリーダ/ライタに、論理レベルが1となる信号を送信する時間帯である。T4は、最大ATR送出時間と呼ばれ、ICカードがリーダ/ライタに転送プロトコルを定義するためのATR(Answer To Reset)の送信を開始する時間帯である。ただし、ICカードは、T2のデータ伝送準備時間にATRの送信を開始してもよい。
ここで、ISO/IEC10536の規格では、T0は、8ミリ秒以上の時間とし、T1は、0.2ミリ秒以下の時間とし、T2は、8ミリ秒とし、T3は、2ミリ秒とし、T4は、30ミリ秒以下とするよう規定されている。
ここで、ICカードの電力が完全に立ち上がる時間T2からICカードの処理を制御するオペレーティングシステムの起動が終了するまでの時間が通常100ミリ秒程度あるので、この時間の間に第35図で説明したようなパルス幅が50ミリ秒の交流パルス電圧を印加することが十分可能となる。すなわち、第37図(d)に示すように、この100ミリ秒程度の時間を利用して、第36図で説明した1回目の電圧印加をおこなうこととすれば、ICカードの限られた駆動時間を有効に利用し、表示のコントラストを向上させることができる。
ICカードは、時間T2において、リーダ/ライタにより送信される論理レベル1の信号とともに、表示パターンを初期化する制御信号を受信する。そして、受信した電波から変換した電圧を利用してコレステリック液晶層に電圧を印加し、表示パターンを初期化する。そして、表示パターンの初期化が終了した後、ICカードとリーダ/ライタとの間での情報の送受信を開始し、2回目の電圧印加をおこなって、所定のデータの表示をおこなう。
初期化をおこなうために印加する交流パルス電圧のパルス幅は、50ミリ秒程度であればよいが、第35図で説明したように、できるだけ長いパルス幅とすると、コレステリック液晶層をフォーカルコニック状態とする電圧マージンが広くなり、また、コレステリック液晶層をプレーナ状態とする電圧値も小さくなるので好ましい。
第38図は、コレステリック液晶層の表示の初期化処理を示す図である。第38図に示すように、表示の初期化をおこなうには2つの方法がある。1つは、第38図(a−1)に示すように、表示パターンを形成するすべてのセグメント380に対応するコレステリック液晶層をプレーナ状態にする方法であり、もう1つは、表示パターンを形成するすべてのセグメント382に対応するコレステリック液晶層をフォーカルコニック状態にする方法である。
コレステリック液晶層をプレーナ状態にする方法では、第37図(d)に示したタイミングでプレーナ状態に設定する電圧を印加する。そして、第38図(b)に示すように、リーダ/ライタとの間で通信が開始された後、リーダ/ライタから受信したデータを基に、所定の表示パターンを形成するよう各セグメント384に電圧を再度印加してプレーナ状態を持続させるか、フォーカルコニック状態に状態を遷移させる。ここで、第36図で説明したように、プレーナ状態に設定する電圧を2回印加されたセグメントは、より明度が上昇し、背景色385との間のコントラストを大きくすることができる。
コレステリック液晶層をフォーカルコニック状態にする方法では、第37図(d)に示したタイミングでフォーカルコニック状態に設定する電圧を印加する。そして、第38図(b)に示すように、リーダ/ライタとの間で通信が開始された後、リーダ/ライタから受信したデータを基に、所定の表示パターンを形成するよう各セグメント384に電圧を再度印加してフォーカルコニック状態を持続するか、プレーナ状態に状態を遷移させる。ここで、第36図で説明したように、フォーカルコニック状態に設定する電圧を2回印加されたセグメントは、より明度が低下し、表示パターンを形成するセグメント384との間のコントラストを大きくすることができる。
以上説明してきたように、本実施の形態6では、表示パターンの初期化をリーダ/ライタとの間の通信の初期化実行中に発せられる所定の信号と同期をとることにより開始することとしたので、ICカードの限られた駆動時間を有効に利用して表示パターンの初期化をおこなうことができる。
また、表示パターンの初期化をコレステリック液晶の状態をプレーナ状態またはフォーカルコニック状態に設定する電圧を印加することにより実行し、所定のデータを表示する際に、コレステリック液晶の状態を初期化により設定された状態に維持する表示セグメントに対して、初期化と同じコレステリック液晶の状態に設定する電圧を再度印加することとしたので、表示のコントラストをさらに高めることができる。
なお、本実施の形態6では、コレステリック液晶を用いた液晶ディスプレイを有するICカードが、表示パターンの初期化をリーダ/ライタとの間の通信の初期化実行中に発せられる所定の信号と同期をとることにより開始することとしたが、これに限定されるものではなく、電気泳動方式やツイストボール方式などのその他の表示方式においても、同様の処理をおこなうこととしてもよい。
また、液晶ディスプレイを構成するコレステリック液晶層の数は、実施の形態1または2に示されるように複数色の表示ができるよう複数であってもよいし、単数であってもよい。
(実施の形態7)
ところで、上記実施の形態1〜6では、ICカードとリーダ/ライタとの間でデータ通信をおこなうこととしたが、通信が完了した場合にICカードの利用者に通信が完了したことを通知するようICカードを構成することとしてもよい。そこで、本実施の形態7では、ICカードがリーダ/ライタとの間でのデータ通信が完了したことを通知する場合について説明することとする。
まず、液晶ディスプレイの表示の切り替えによりデータ通信の完了を通知する通知処理について説明する。第39図は、液晶ディスプレイの表示の切り替えによりデータ通信の完了を通知する通知処理を示す図である。第39図(a−1)および第39図(a−2)は、通信が正常におこなわれた場合に切り替え表示される表示パターンであり、第39図(b−1)および第39図(b−2)は、通信が正常におこなわれなかった場合に切り替え表示される表示パターンである。
たとえば、第6図に示すような上下2層のコレステリック液晶層を有する液晶ディスプレイにおいて、上部層がプレーナ状態において緑色の光を反射し、下部層がプレーナ状態において青色の光を反射する場合には、通常の表示では、上部層のみがプレーナ状態となり緑色の表示色でデータが表示される。
そして、リーダ/ライタとの間の通信が正常に完了した場合には、上部層をプレーナ状態にしておき、下部層をプレーナ状態とホメオトロピック状態とで交互に状態を変化させることにより、緑色と青色の混色であるシアンでの表示390と、緑色での表示392とを切り替えることができ、利用者に通信が正常に終了したことを即座かつ明瞭に通知することができる。
また、リーダ/ライタとの間の通信が正常に完了しなかった場合には、下部層をフォーカルコニック状態にしておき、上部層をプレーナ状態とホメオトロピック状態とで交互に状態を変化させることにより、緑色での表示394と、何も表示しない状態396とを切り替えることができ、利用者に通信が正常に終了しなかったことを即座かつ明瞭に通知することができる。特に、非接触型のICカードでは、ICカードをリーダ/ライタから遠ざけると、通信が不安定になることがあるので、上記のようにICカードの液晶ディスプレイを構成することにより、ICカードの利便性をさらに高めることができる。
ここで、ICカードは、リーダ/ライタからのデータを所定の時間受信しなかった場合などに通信に異常が生じたと判定する。そして、ICカードを制御するカード制御ICが割り込み信号を発生させ、液晶ディスプレイ制御ICが第39図に示したような点滅表示をおこなうよう制御する。
また、ICカードが駆動電力の供給をリーダ/ライタから受けている場合には、ICカードに電力を供給する電波が減衰するにつれ、液晶ディスプレイのコレステリック液晶層に印加する電圧値が低下する。第40図は、コレステリック液晶に印加する交流パルス電圧の減衰を示す図である。第40図に示すように、時刻T0から時刻T1の間では、交流パルス電圧400の振幅値が第5図に示した電圧値V4を上回り、プレーナ状態を維持できるが、時刻T1以降のように、交流パルス電圧401の振幅値が減衰すると、第5図に示した電圧値V2と電圧値V3との間の電圧値となり、フォーカルコニック状態に状態が変化する。
すなわち、通信が正常に終了した第39図(a−1)および(a−2)の場合には、リーダ/ライタからの電力の供給を受けて、上部層をプレーナ状態にし、下部層の状態をプレーナ状態とホメオトロピック状態との間で切り替えるため、表示パターンの色はシアン色と緑色とで変化するが、交流パルス電圧の振幅値が減衰すると、下部層の状態がフォーカルコニック状態へと固定されるため、緑色一色の表示となる。
また、通信が正常に終了しなかった第39図(b−1)および(b−2)の場合には、リーダ/ライタからの電力の供給を受けて、下部層をフォーカルコニック状態にしておき、上部層の状態をプレーナ状態とホメオトロピック状態との間で切り替えるため、緑色の表示パターンである状態と、何も表示されない状態とで変化するが、交流パルス電圧の振幅値が減衰すると、上部層の状態がフォーカルコニック状態へと固定されるため、無表示状態となる。なお、このような電圧パルスの減衰をもたらすには、適正な容量を持つコンデンサを具備させるか、あるいは電池などの一時的な蓄電部を具備させればよい。
このように、通信が正常に終了した場合に、交流パルス電圧が減衰するにつれ、ICカードの表示が点滅表示から通常の表示と変化する。また、通信が正常に終了しなかった場合には、交流パルス電圧が減衰するにつれ、ICカードの表示が点滅表示から無表示状態へと変化する。そのため、ICカードの表示状態を通常の状態へと復帰させるための駆動回路が不要となり、製造コストを安価にすることができる。
なお、ここでは、液晶ディスプレイを点滅表示させることにより、通信が終了したことを通知することとしたが、さらにICカードが音を発生させることにより、利用者に通信の終了を通知することとしてもよい。
第41図は、データ通信の終了を通知する音を発生するICカードの構造を示す図である。第41図に示すように、このICカードは、振動フィルム410、バイブレータ411、高分子フィルム412および412、コレステリック液晶部413、シール材414〜414および壁面部415〜415を有する。
振動フィルム410は、振動することにより音を放射するフィルムであり、バイブレータ411は、振動フィルム410を振動させ、音を発生させるバイブレータである。高分子フィルム412および412は、表面上に電極が形成された透明フィルム基板であり、コレステリック液晶部413は、実施の形態1〜6で示したような液晶ディスプレイ部である。シール材414〜414は、振動フィルム410、バイブレータ411、高分子フィルム412および412およびコレステリック液晶部413を固定するシール材であり、壁面部415〜415は、上記各部を側面から固定する壁面部である。
この場合、振動フィルム410自体をコレステリック液晶部413の基板とすると、振動フィルム410の振動によりコレステリック液晶の配向状態が変化してしまうので、コレステリック液晶部413の基板には、高分子フィルム412および412を用いることとする。
通信が正常に終了した場合には、バイブレータ411が高い振動数で振動フィルム410を振動させることにより高音を発生させ、通信が正常に終了しなかった場合には、バイブレータ411が低い振動数で振動フィルム410を振動させることにより低音を発生させるなどして、音の違いにより利用者に通信が正常に終了したかどうかを明瞭に通知することができる。
第42図は、ICカードが利用者にデータ通信が正常に終了したかどうかを通知する通知処理の処理手順を示すフローチャートである。まず、このICカードは、通信の初期化をおこない、リーダ/ライタとの間で通信可能な状態とし(ステップS420)、リーダ/ライタとの間で通信処理を実行する(ステップS421)。
そして、ICカードは、通信処理が正常に終了したかどうかを調べ(ステップS422)、通信処理が正常に終了しなかった場合には(ステップS422,No)、第39図(b−1)および(b−2)で説明したように、通信に異常が生じたことを示す表示を点滅させ、あるいは、低音を発生させて利用者に通知し(ステップS426)、ステップS420に移行する。通信処理が正常に終了した場合には(ステップS423,Yes)、受信したデータを表示し(ステップS424)、第39図(a−1)および(a−2)で説明したように、通信が完了したことを示すために表示したデータを点滅させ、あるいは、高音を発生させて利用者に通知し(ステップS426)、この通知処理を終了する。
なお、上記フローチャートでは、音あるいは表示の点滅により通信が正常に終了したかどうかを利用者に通知することとしたが、両方同時に適用してもよい。また、表示の点滅に関しては、利用者に明瞭に通知できるよう、点滅時間や表示色などを任意に選択する。また、出力する音に関しても、音の大きさや高低、パターン、リズムなど任意の表現をとることができる。
以上説明してきたように、本実施の形態7によれば、リーダ/ライタに対するデータの送信やリーダ/ライタからのデータの受信が終了した場合に、表示を点滅させ、あるいは、音を発生させることにより通信が終了したことを利用者に通知することとしたので、リーダ/ライタとの間の通信が問題なく完了したかどうかを容易に確認することができ、ICカードの利便性を高めることができる。
なお、本実施の形態7では、コレステリック液晶の液晶ディスプレイを有するICカードを用いることとしたが、液晶ディスプレイを構成するコレステリック液晶層の数は、実施の形態1または2に示されるように複数色の表示ができるよう複数であってもよいし、単数であってもよい。
また、本実施の形態7で説明した技術は、コレステリック液晶の液晶ディスプレイに適用が限定されるものではなく、電気泳動方式やツイストボール方式などのその他の表示方式の液晶ディスプレイに対しても、同様の技術を適用することができる。また、単純マトリックス方式などで液晶表示がおこなわれる他の用途の電子ペーパ技術にも同様の技術を適用することができる。
(実施の形態8)
ところで、上記実施の形態1〜7では、コレステリック液晶層の液晶分子の配向状態を変化させ、入射する光を反射または透過させることにより所定のデータを表示することとしたが、コレステリック液晶が有する反射光波長の温度依存性を利用して、さらに温度計としての機能を液晶ディスプレイに持たせることとしてもよい。そこで、本実施の形態8では、コレステリック液晶が有する反射光波長の温度依存性を利用して、液晶ディスプレイが温度計としても機能する場合について説明する。
まず、コレステリック液晶が有する反射光波長の温度依存性について説明する。第3図に示したように、コレステリック液晶は、液晶分子が螺旋構造を形成している液晶であり、プレーナ状態においてコレステリック液晶により反射される反射光の波長は、その螺旋構造のピッチに依存する。
コレステリック液晶には、高温になると、螺旋構造のピッチが長くなるものと、短くなるものの2種類がある。螺旋構造のピッチが長くなると、反射光の波長は赤色の波長領域側(長波長側)に遷移し、螺旋構造のピッチが短くなると、反射光の波長は青色の波長領域側(短波長側)に遷移する。すなわち、このような反射光の色と温度との関係を利用することにより、コレステリック液晶層を有する液晶ディスプレイを温度計として用いることができる。
つぎに、コレステリック液晶で構成される液晶ディスプレイを温度計として用いる場合の表示状態について説明する。第43図は、コレステリック液晶で構成される液晶ディスプレイを気温計として用いる場合の表示状態の一例を示す図である。ここでは、高温になった場合にプレーナ状態における反射光の波長が赤色の波長領域側に遷移し、低温になった場合に青色の波長領域側に遷移するコレステリック液晶を用いることとする。
これは、高温になるほど暖色である赤色の波長領域側に、低温になるほど寒色である青色の波長領域側に反射光の波長が遷移すると、人間の感覚に適合するためである。ただし、高温になった場合に反射光の波長が青色の波長領域側に遷移し、低温になった場合に赤色の波長領域側に遷移するコレステリック液晶を用いても、温度測定上問題はない。
コレステリック液晶を気温計として利用する場合には、幅広い温度範囲で可視光領域の光を反射するようにするのが好ましい。具体的には、摂氏マイナス20度から摂氏80度程度の範囲で、反射光の主波長がおよそ400ナノメートル以上700ナノメートル以下の範囲になるようにコレステリック液晶を調整する。特に、摂氏マイナス20度で反射光の主波長が400ナノメートル前後、摂氏80度で反射光の主波長が700ナノメートル前後とするのが好ましい。また、コレステリック液晶に強い直射日光が当たると、直射日光に含まれる紫外線によりコレステリック液晶が劣化してしまうため、液晶ディスプレイの表面に紫外線カットフィルムを備えることとしてもよい。
第43図(a)は、気温が摂氏0度のときのデータの表示状態であり、青色430の表示色でデータが表示されている。第43図(b)は、気温が摂氏20度のときのデータの表示状態であり、緑色431の表示色でデータが表示されている。第43図(c)は、気温が摂氏50度のときのデータの表示状態であり、赤色432の表示色でデータが表示されている。
第44図は、コレステリック液晶で構成される液晶ディスプレイを体温計として用いる場合の表示の一例を示す図である。この場合は、人間の体温の範囲である摂氏34度から摂氏42度付近の温度範囲で、反射光の主波長が550ナノメートル以上600ナノメートル以下の範囲になるようにコレステリック液晶を調整する。
第44図(a)は、人間の平熱である摂氏36度付近のときのデータの表示状態であり、緑色440の表示色でデータが表示されている。第44図(b)は、微熱の状態である摂氏37度付近の時のデータの表示状態であり、黄色441の表示色でデータが表示されている。黄色は、利用者に注意を促すのに適した色として最適なものである。第44図(c)は、体温が摂氏38度以上になった場合のデータの表示状態であり、赤色442の表示色でデータが表示されている。この赤色の表示により、利用者に体調の異変を即座に知らせることができる。
第45図は、実施の形態8に係る温度計が測定する温度範囲とコレステリック液晶がプレーナ状態において反射する反射光波長との間の関係を示す図である。第45図に示すように、コレステリック液晶を気温計として利用する場合には、摂氏マイナス20度から摂氏80度程度の範囲で、反射光の主波長がおよそ400ナノメートル以上700ナノメートル以下の範囲になるようにコレステリック液晶を調整する。また、コレステリック液晶を体温計として利用する場合には、摂氏34度から摂氏42度付近の範囲で、反射光の主波長が550ナノメートル以上600ナノメートル以下の範囲になるようにコレステリック液晶を調整する。
第46図は、気温計として機能する液晶ディスプレイを備えたICカードの一例を示す図である。第46図(a)に示すように、気温が低いときには、データの表示色が青色460となり、気温が高いときには、データの表示色が赤色461となる。さらに、図示はしていないが、温度とデータの表示色の対応関係を表示した参照表などをICカードに印刷し、利用者が参照できるようにする。
上述してきたように、本実施の形態8によれば、コレステリック液晶が有する反射光波長の温度依存性を利用して、さらに温度計としての機能を液晶ディスプレイに持たせることとしたので、多機能型のICカードを実現することができる。
なお、本実施の形態8では、データの表示をおこなう液晶ディスプレイに温度計としての機能をもたせることとしたが、これに限定されるものではなく、温度計として機能するコレステリック液晶部分を、データを表示する液晶ディスプレイとは別に設けることとしてもよい。また、液晶ディスプレイを構成するコレステリック液晶層の数は、実施の形態1または2に示されるように複数色の表示ができるよう複数であってもよいし、単数であってもよい。
【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明にかかるICカードは、コレステリック液晶の特性を最大限に生かして情報の表示を効果的におこない、利用者の利便性を高める必要があるICカードに有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44】

【図45】

【図46】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置に対する情報の送信および/または該外部装置からの情報の受信をおこなうICカードであって、
プレーナ状態においてそれぞれ異なる主波長の光を反射するコレステリック相を形成する液晶層を少なくとも2層以上に積層し、積層されたコレステリック相を形成する液晶層に電圧を印加してコレステリック相を形成する液晶の液晶分子の配向状態を変化させ、光を透過または反射させることにより所定の情報を表示する情報表示手段を備えたこと、
を特徴とするICカード。
【請求項2】
前記情報表示手段は、積層されたすべてのコレステリック相を形成する液晶層を透過した光を吸収する光吸収層をさらに備えたことを特徴とする請求の範囲第1項に記載のICカード。
【請求項3】
前記情報表示手段は、プレーナ状態において互いに補色関係にある2つの光をそれぞれ反射する2つの積層されたコレステリック相を形成する液晶層を備えたことを特徴とする請求の範囲第1項に記載のICカード。
【請求項4】
前記補色関係にある2つの光の主波長は、それぞれ570ナノメートル以上640ナノメートル以下の範囲および450ナノメートル以上500ナノメートル以下の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第3項に記載のICカード。
【請求項5】
前記情報表示手段は、情報を表示するパターンを形成する複数のセグメントごとに独立して電圧を印加する電極を備えたコレステリック相を形成する液晶層と、前記複数のセグメントに一律に電圧を印加する電極を備えたコレステリック相を形成する液晶層とが積層されていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のICカード。
【請求項6】
積層された複数のコレステリック相を形成する液晶層は、左円偏光の光を反射する液晶分子の螺旋構造を有するコレステリック相を形成する液晶層と、右円偏光の光を反射する液晶分子の螺旋構造を有するコレステリック相を形成する液晶層とを含んでいることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のICカード。
【請求項7】
表示をおこなう情報が所定の条件を満足したかどうかを判定する条件判定手段をさらに備え、前記情報表示手段は、前記条件判定手段による判定結果に基づいて、積層されたコレステリック相を形成する液晶層に電圧を印加してコレステリック相を形成する液晶の液晶分子の配向状態を変化させ、光を透過または反射させることにより前記情報の表示色を所定の表示色に設定することを特徴とする請求の範囲第1項に記載のICカード。
【請求項8】
外部装置に対する情報の送信および/または該外部装置からの情報の受信をおこなうICカードであって、
情報を表示するパターンを形成するセグメントごとに、プレーナ状態においてそれぞれ異なる波長の光を反射するコレステリック相を形成する液晶層を少なくとも2つ以上並列し、並列されたコレステリック相を形成する液晶層に電圧を印加してコレステリック相を形成する液晶の液晶分子の配向状態を変化させ、光を透過または反射させることにより所定の情報を表示する情報表示手段を備えたこと、
を特徴とするICカード。
【請求項9】
前記情報表示手段の並列された各コレステリック相を形成する液晶層の幅は1ミリメートル以下であることを特徴とする請求の範囲第8項に記載のICカード。
【請求項10】
前記情報表示手段は、プレーナ状態において互いに補色関係にある2つの光をそれぞれ反射する2つの並列されたコレステリック相を形成する液晶層を備えたことを特徴とする請求の範囲第8項に記載のICカード。
【請求項11】
前記情報表示手段は、プレーナ状態において主波長が450ナノメートル以上490ナノメートル以下、530ナノメートル以上570ナノメートル以下、および、610ナノメートル以上650ナノメートル以下である光をそれぞれ反射するコレステリック相を形成する液晶層を少なくとも3つ並列したことを特徴とする請求の範囲第8項に記載のICカード。
【請求項12】
単一の情報の表示から複数の情報の一斉表示へと切り替える切替要求の入力を受け付ける入力受付手段をさらに備え、前記情報表示手段は、前記切替要求受付手段により切替要求を受け付けた場合に、単一の情報の表示から複数の情報の一斉表示へと切り替えることを特徴とする請求の範囲第1項または第8項に記載のICカード。
【請求項13】
前記情報表示手段は、前記複数の情報をそれぞれ異なる色で表示することを特徴とする請求の範囲第12項に記載のICカード。
【請求項14】
前記情報表示手段は、2つの情報を一斉表示する場合に、第1のコレステリック相を形成する液晶が反射する主波長が530ナノメートル以上570ナノメートル以下の光および第2のコレステリック相を形成する液晶が反射する主波長が450ナノメートル以上490ナノメートル以下の光の重ね合わせにより生じる色と、第3のコレステリック相を形成する液晶が反射する主波長が530ナノメートル以上570ナノメートル以下の光および第4のコレステリック相を形成する液晶が反射する主波長が610ナノメートル以上650ナノメートル以下の光の重ね合わせにより生じる色とでそれぞれの情報を表示することを特徴とする請求の範囲第12項に記載のICカード。
【請求項15】
電力を蓄積する電力蓄積手段をさらに備え、前記情報表示手段は、前記電力蓄積手段により蓄積された電力を利用して情報の表示をおこなうことを特徴とする請求の範囲第12項に記載のICカード。
【請求項16】
前記電力蓄積手段は、振動による運動エネルギーを電力に変換し、変換された電力を蓄積することを特徴とする請求の範囲第15項に記載のICカード。
【請求項17】
前記電力蓄積手段は、光のエネルギーを電力に変換し、変換された電力を蓄積することを特徴とする請求の範囲第15項に記載のICカード。
【請求項18】
前記電力蓄積手段は、外部の電力供給装置から供給された電力を蓄積することを特徴とする請求の範囲第15項に記載のICカード。
【請求項19】
前記情報表示手段は、光エネルギーを蓄積し、蓄積した光エネルギーを利用して発光する蓄光層をさらに備え、該蓄光層により発光された光が前記コレステリック相を形成する液晶層を照射するよう構成されていることを特徴とする請求の範囲第1項、第6項または第8項に記載のICカード。
【請求項20】
前記蓄光層により発光される光の主波長は、前記コレステリック相を形成する液晶がプレーナ状態において反射する反射光の波長領域に含まれることを特徴とする請求の範囲第19項に記載のICカード。
【請求項21】
前記コレステリック相を形成する液晶層は、プレーナ状態において左円偏光または右円偏光の光を反射する液晶分子の螺旋構造を有し、前記情報表示手段は、左円偏光または右円偏光の光を反射するコレステリック相を形成する液晶層と前記蓄光層との間に、光の偏光状態をそれぞれ左円偏光または右円偏光に変換する4分の1波長板と偏光板とを備えたことを特徴とする請求の範囲第19項に記載のICカード。
【請求項22】
前記外部装置から光エネルギーの供給を受け付ける光エネルギー受付手段をさらに備え、前記蓄光層は、光エネルギー受付手段により受け付けられた光エネルギーを蓄積することを特徴とする請求の範囲第19項に記載のICカード。
【請求項23】
前記情報表示手段によりコレステリック相を形成する液晶に電圧を印加してコレステリック相を形成する液晶の液晶分子の配向状態をプレーナ状態とフォーカルコニック状態との間で切り替える場合に、該状態を切り替える際に印加する正負いずれかの極性を示す電圧の極性を、プレーナ状態に切り替える電圧とフォーカルコニック状態に切り替える電圧とで反対の極性とすることを特徴とする請求の範囲第1項または第8項に記載のICカード。
【請求項24】
前記情報表示手段は、情報の表示に係る初期化を前記コレステリック相を形成する液晶の液晶分子の配向状態をプレーナ状態またはフォーカルコニック状態に設定する電圧を印加することにより実行し、該配向状態をフォーカルコニック状態またはプレーナ状態に切り替える場合に、該状態を切り替える際に印加する正負いずれかの極性を示す電圧の極性を、前記情報の表示に係る初期化を実行する際に印加した電圧の極性と反対の極性とすることを特徴とする請求の範囲第1項または第8項に記載のICカード。
【請求項25】
前記情報表示手段によりコレステリック相を形成する液晶に電圧を印加してコレステリック相を形成する液晶の液晶分子の配向状態をプレーナ状態とフォーカルコニック状態との間で切り替える場合に、該状態を切り替える際に印加する正負の極性が反転する電圧を、該極性の反転時に電圧が印加されない期間を有する電圧とすることを特徴とする請求の範囲第1項または第8項に記載のICカード。
【請求項26】
前記情報表示手段によりコレステリック相を形成する液晶に電圧を印加してコレステリック相を形成する液晶の液晶分子の配向状態をプレーナ状態とフォーカルコニック状態との間で切り替える場合に、該状態を切り替える際に印加する正負いずれかの極性を示す電圧の極性を、該状態を切り替えた回数に基づいて正負いずれかに設定することを特徴とする請求の範囲第1項または第8項に記載のICカード。
【請求項27】
前記情報表示手段によりコレステリック相を形成する液晶の液晶分子の配向状態が切り替えられた回数を記憶する切替回数記憶手段をさらに備え、前記情報表示手段は、該状態を切り替える際に印加する正負いずれかの極性を示す電圧の極性を、前記切替回数記憶手段により記憶された回数に基づいて正負いずれかに設定することを特徴とする請求の範囲第26項に記載のICカード。
【請求項28】
前記情報表示手段は、コレステリック相を形成する液晶に電圧を印加してコレステリック相を形成する液晶の液晶分子の配向状態をプレーナ状態とフォーカルコニック状態との間で切り替える場合に、該状態を切り替える際に印加する電圧は極性が反転する電圧であり、かつ、正負いずれか一方の極性の電圧の絶対値は該状態の切り替えに必要な値であり、他方の極性の電圧の絶対値は、前記状態の切り替えが生じない値であることを特徴とする請求の範囲第1項または第8項に記載のICカード。
【請求項29】
前記情報表示手段は、前記情報の表示に係る初期化を前記外部装置との間の通信の初期化実行中に発せられる所定の信号と同期をとることにより開始することを特徴とする特許請求の範囲第1項または第8項に記載のICカード。
【請求項30】
前記情報表示手段は、前記情報の表示に係る初期化を前記コレステリック相を形成する液晶の液晶分子の配向状態をプレーナ状態またはフォーカルコニック状態に設定する電圧を印加することにより実行し、前記所定の情報を表示する際、該配向状態を前記初期化により設定された状態に維持する場合に、前記初期化により設定された配向状態にコレステリック相を形成する液晶の状態を設定する電圧を再度印加することを特徴とする請求の範囲第29項に記載のICカード。
【請求項31】
前記情報表示手段は、前記外部装置に対する情報の送信および/または前記外部装置からの情報の受信が終了した場合に、通信が終了したことを示す通信終了信号を発することを特徴とする請求の範囲第1項または第8項に記載のICカード。
【請求項32】
前記情報表示手段は、前記外部装置に対する情報の送信および/または前記外部装置からの情報の受信が終了した場合に、前記コレステリック相を形成する液晶に電圧を印加してコレステリック相を形成する液晶の配向状態をプレーナ状態とホメオトロピック状態との間で切り替えることにより所定の情報を点滅表示することを特徴とする請求の範囲第31項に記載のICカード。
【請求項33】
音を発生する音発生手段をさらに備え、前記外部装置に対する情報の送信および/または前記外部装置からの情報の受信が終了した場合に、前記音発生手段は、通信が終了したことを示す音を発生することを特徴とする請求の範囲第31項に記載のICカード。
【請求項34】
前記コレステリック相を形成する液晶層は、所定の温度範囲に対してプレーナ状態において可視光領域の光を反射するよう形成され、前記情報表示手段は、光を透過または反射させることにより所定の情報を表示するとともに、温度に係る情報を該温度に応じた前記コレステリック相を形成する液晶層の反射光の色で表示することを特徴とする請求の範囲第1項または第8項に記載のICカード。
【請求項35】
前記情報表示手段により表示された前記コレステリック相を形成する液晶層の反射光の色と温度に係る情報との間の対応関係を示す対応関係表示手段をさらに備えたことを特徴とする請求の範囲第34項に記載のICカード。
【請求項36】
前記情報表示手段は、前記コレステリック相を形成する液晶層に紫外線が入射するのを抑制する紫外線カット層を備えていることを特徴とする請求の範囲第34項に記載のICカード。
【請求項37】
前記コレステリック相を形成する液晶層は、温度が高くなるほどプレーナ状態において反射する光の波長が長くなることを特徴とする請求の範囲第34項に記載のICカード。

【国際公開番号】WO2005/024499
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【発行日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508784(P2005−508784)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011307
【国際出願日】平成15年9月4日(2003.9.4)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】