III族窒化物半導体層の製造方法
【課題】反りの発生を低減させることができるIII族窒化物半導体層の製造方法を提供すること。
【解決手段】III族窒化物半導体層の製造方法は、下地基板10上に、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルから選択されるいずれかの炭化物層11を形成する工程と、炭化物層11の上部にIII族窒化物半導体層12を成長させる工程と、III族窒化物半導体層12中で亀裂を生じさせて、前記下地基板10を除去し、III族窒化物半導体層を得る工程とを含む
【解決手段】III族窒化物半導体層の製造方法は、下地基板10上に、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルから選択されるいずれかの炭化物層11を形成する工程と、炭化物層11の上部にIII族窒化物半導体層12を成長させる工程と、III族窒化物半導体層12中で亀裂を生じさせて、前記下地基板10を除去し、III族窒化物半導体層を得る工程とを含む
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化ガリウム(GaN)結晶を窒化物系光デバイスや電子デバイス作製用基板として用いることが提案されており、この基板を得るためにバルク結晶を作製する試みが多くの研究機関で行われている。しかしながら、GaNの解離圧が高いために、GaAsのように融液から大きなバルク結晶を得ることが難しく、GaN基板として利用できるGaNバルク結晶の作製は非常に困難である。
【0003】
このため、GaN基板を作製する方法として、サファイア(Al2O3)等の異種材料基板にHVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法によってGaN基板となるGaN層を成長させた後、異種材料基板を分離除去することにより、GaN基板を得る方法が広く採用されている。このようなGaN基板の作製方法に関連する従来技術として、特許文献1には、HVPE法を用いたGaN半導体基板の製造方法が開示されている。この方法は、いわゆるFIELO(Facet-Initiated Epitaxial Lateral Overgrowth)法である。
まず、サファイア(Al2O3)基板上に、ストライプ状に配置された断面矩形形状の被覆部および被覆部間に形成された開口部を有するマスクを形成する。
マスク形成後、その開口部からGaN層を成長させ、ファセット構造を形成させながらIII族窒化物半導体を選択横方向成長させる。そして、前記マスクの被覆部の上面を完全には覆わない状態で成長を止める。これにより、マスクの被覆部上面の一部が露出した露出部が形成される。
次に、マスクをドライエッチングにより除去して空隙を形成し、さらにGaN層を成長させる。その後、サファイア基板を剥離し、GaN層を有するGaN半導体基板を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−312971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、GaN半導体基板の反りのさらなる低減が求められているが、特許文献1に記載された方法でGaN半導体基板を製造した場合には、このような反り低減に対する要求に応えることが難しかった。
【0006】
本発明の目的は、反りの発生を低減させることができるIII族窒化物半導体層の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、特許文献1に記載された方法でGaN半導体基板を製造した場合には、以下のような問題があることがわかった。
FIELO法により、III族窒化物半導体を形成する場合、GaN層の成長の初期段階にてファセットが形成される。ファセットの出現により転位がファセットに向かって進み、下地基板に対し垂直に伸びていた転位が垂直な方向へ伸びることができなくなる。結晶欠陥はファセット の成長とともに横方向に曲げられ、GaN層の膜厚増加に伴い、成長領域では結晶欠陥が減少していくこととなる。
そのため、GaN層の下地基板側では結晶欠陥が多く、GaN層の表面側では結晶欠陥が少なくなる。このようなGaN層の厚み方向における結晶欠陥の発生率の違いがGaN層の反りの発生を招くこととなる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決すべく発案されたものであり、本発明によれば、下地基板上に、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルから選択されるいずれかの炭化物層を形成する工程と、前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる工程と、前記炭化物層の前記III族窒化物半導体層側の表面よりも上方の領域であり、前記III族窒化物半導体層中の領域で亀裂を生じさせて、前記下地基板を除去し、前記III族窒化物半導体層を得る工程とを含むIII族窒化物半導体層の製造方法が提供される。
【0009】
この発明によれば、下地基板上に、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルから選択されるいずれかの炭化物層を形成している。
このような炭化物層を形成することで、III族窒化物半導体層の成長初期段階から、転位密度を低減させることができる。そのため、III族窒化物半導体層の厚み方向での転位密度の差が小さくなり、III族窒化物半導体層の反りの発生を低減させることができる。
さらに、本発明では、III族窒化物半導体層中で亀裂を生じさせて、下地基板を除去している。このようにすることで、III族窒化物半導体層の表面側に比べ比較的転位が多く存在する下地基板側の領域を下地基板とともに除去することができる。そのため、III族窒化物半導体層の厚み方向における転位密度差を小さくすることができ、III族窒化物半導体層の反りの発生を低減させることができる。
【0010】
詳細な原理は明らになっていないが、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタルは、いずれも面心立方構造の炭化物で(111)面がIII族窒化物半導体と良好な格子整合性を有するため、格子不整合に起因した欠陥を低減したIII族窒化物半導体層を成膜できる。なお、これら炭化物表面は水分または酸素の存在する雰囲気中に暴露すると酸化皮膜を形成する。この酸化皮膜は、炭化物と結晶構造が異なるため炭化物から結晶情報の引き継ぎが難しく、種々の異なった方位の多結晶からなる皮膜となる。酸化皮膜上ではIII族窒化物半導体層の成長は抑制されてしまうが、酸化皮膜がIII族窒化物半導体層の成長時に高温に加熱されたり、還元性ガスと接触することによって酸化皮膜に微細な空隙が形成され、その空隙を通して下部の炭化物層からIII族窒化物半導体層が選択的に成長すると考えられる。いずれの炭化物層を使用しても、III族窒化物半導体層の成長初期段階から、転位密度を低減させることができる。
なお、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタルは、一般的に非化学量論組成であることが知られており、C/Mモル比は1/1以下である(以下、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Ta)。C/Mモル比が1/1を超えると、Cが遊離するため炭化物層はMC混合C膜となる。
【0011】
ここで、III族窒化物半導体層を成長させる前記工程では、III族窒化物半導体層中に、前記III族窒化物半導体層中で亀裂を生じさせるための亀裂促進層を形成することが好ましい。
【0012】
さらに、前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる前記工程では、前記亀裂促進層となり、不純物を含む第一のIII族窒化物半導体層を形成する工程と、前記第一のIII族窒化物半導体層上に前記第一のIII族窒化物半導体層とは、不純物濃度が異なる第二のIII族窒化物半導体層を形成する工程とを含むことが好ましい。
【0013】
III族窒化物半導体層を、不純物濃度が異なる少なくとも2つの層を含むものとすることで、2つの層間では弾性率が異なるものとなる。
この場合には、III族窒化物半導体層を冷却する過程で、III族窒化物半導体層の各層の弾性率の違いに起因してIII族窒化物半導体層中で亀裂を生じさせることが可能となる。
【0014】
さらには、前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる前記工程は、不純物がドーピングされていない第一アンドープIII族窒化物半導体層を形成する工程と、この第一アンドープIII族窒化物半導体層上に不純物をドープしたIII族窒化物半導体層を前記第一のIII族窒化物半導体層として形成する工程と、不純物をドープした前記III族窒化物半導体層上に、不純物がドーピングされていない第二アンドープIII族窒化物半導体層を前記第二のIII族窒化物半導体層として形成する工程とを含むことが好ましい。
【0015】
第一アンドープIII族窒化物半導体層、不純物をドープしたIII族窒化物半導体層、第二アンドープIII族窒化物半導体層を形成することで、III族窒化物半導体層で亀裂が生じやすい領域が複数形成されることとなる。具体的には、第一アンドープIII族窒化物半導体層と不純物をドープした前記III族窒化物半導体層との界面、不純物をドープしたIII族窒化物半導体層中、あるいは、不純物をドープしたIII族窒化物半導体層と第二アンドープIII族窒化物半導体層との界面といった領域で亀裂が生じやすくなる。
【0016】
さらには、第一のIII族窒化物半導体層を形成する前記工程は、ピットを形成しながら、3次元成長によりIII族窒化物半導体層を形成する工程を含み、第二のIII族窒化物半導体層を形成する前記工程では、前記第一のIII族窒化物半導体層よりもピット密度が低い、第二のIII族窒化物半導体層を2次元成長により形成することが好ましい。
【0017】
ピット形成にともなう3次元成長では、結晶成長時に雰囲気から不純物を取り込みやすい。したがって、ピット形成による3次元成長部分からなる層を含む第一のIII族窒化物半導体層を形成し、その上に第一のIII族窒化物半導体層よりもピット密度が低い、第二のIII族窒化物半導体層を成長させると、不純物濃度の異なる第一のIII族窒化物半導体層と第二のIII族窒化物半導体層を形成することができる。これにより、第一のIII族窒化物半導体層と第二のIII族窒化物半導体層との界面近傍で亀裂が生じやすくなる。
また、ピットを形成しながら、3次元成長によりIII族窒化物半導体層を形成する工程では、炭化物層上に成長したIII族窒化物半導体層に多く含まれる転位は3次元長で現れるファセットで横方向に折り曲げられるため、欠陥の低減にも有効に作用する。
ここで、3次元成長とは、下地基板表面に沿った水平方向の成長よりも、下地基板表面と垂直な空間に向かって、優先的に結晶核が成長するこという。
また、2次元成長とは、下地基板表面に沿って、水平方向に成長していくことをいう。2次元成長の場合には、水平方向の成長が基板垂直方向の成長よりも非常に速い。
【0018】
この際、前記不純物は、SiまたはOであることが好ましい。Siは、n型ドーパントとして作用し、III族窒化物半導体のドーパントとしてSiは一般的に使用されているので、利便性がある。Oは、結晶成長の際に石英構造部材などの腐食により入り易い不純物であり、特別なドーパント剤を準備せずにドーピングすることも可能である。
【0019】
さらに、本発明では、前記下地基板上に、開口部からIII族窒化物半導体層を成長させるためのマスクを形成する工程を含まない。
これにより、マスクを形成するための手間を省くことができ、III族窒化物半導体層の製造を簡略化することができる。
開口部からIII族窒化物半導体層を成長させるためのマスクを形成した場合には、III族窒化物半導体層のうち、マスク直上の領域と、開口部直上の領域とで転位密度にばらつきが生じたりする可能性がある。
これに対し、本発明では、マスクを使用しないため、III族窒化物半導体層の面方向における転位密度のばらつきを抑制することができる。
【0020】
また、前記炭化物層は、炭化チタンの層であることが好ましい。炭化チタンは、下地基板(たとえばサファイア)やIII族窒化物との格子整合性や下地基板と熱膨張係数がほぼ同じであることから格子不整合に起因した欠陥を低減したIII族窒化物半導体層を成膜できる。このようにすることで、III族窒化物半導体層の成長初期段階から、転位密度を確実に低減させることができる。
【0021】
前記炭化物層の厚みは、20nm以上、500nm以下であることが好ましい。
炭化物層の厚みを20nm以上とすることで、炭化物層は良好な結晶性が得られ、III族窒化物半導体層の結晶性向上という効果がある。
また、炭化物層の厚みを500nmより厚くしても炭化物層の結晶性は向上しがたく、成膜に長時間を費やすため生産性が低下する課題が発生するので、500nm以下とすることで良好な結晶性を有する炭化物層を生産性の低下なく成膜できるという効果がある。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、反りの発生を低減させることができるIII族窒化物半導体層の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかるGaN層の製造工程を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるGaN層の製造工程を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるGaN層の製造工程を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるGaN層の製造工程を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるGaN層の製造工程を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかるGaN層の製造工程を示す図である。
【図7】本発明の実施例9で剥離したGaN層とサファイア基板に残留したGaN層の写真である。
【図8】本発明の実施例9の剥離したGaN層とGaN層剥離後のサファイア基板の蛍光顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施例10〜17、および比較例2にかかるTiC層膜厚とGaN層の転位密度の関係を示す図である。
【図10】本発明の実施例19、および比較例3にかかるGaN層膜厚と転位密度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
はじめに、本実施形態のIII族窒化物半導体層の製造方法の概要について説明する。本実施形態では、III族窒化物半導体層はGaN層である。
本実施形態のIII族窒化物半導体層の製造方法は、下地基板上に、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルから選択されるいずれかの炭化物層を形成する工程と、炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる工程と、III族窒化物半導体層中で亀裂を生じさせて、前記下地基板を除去し、前記III族窒化物半導体層を得る工程とを含む。
【0025】
次に、本実施形態のGaN層の製造方法について詳細に説明する。
(炭化物層を形成する工程)
はじめに、図1(A)に示すように、下地基板を用意する。下地基板としては、たとえば、厚さ550μmの3インチφのサファイア(Al2O3)基板10を用意する。
次に、このサファイア基板10上に炭化チタン層11を形成する。
炭化チタン層11の成膜条件は、たとえば、以下のようにする。
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:500〜1000℃
成膜時間:4.5〜114分
圧力:0.3Pa〜0.5Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Ti
膜厚 :20nm〜500nm
成膜温度は、500℃以上、1000℃以下であることが好ましいが、600℃以上であることが好ましく、また、900℃以下であることが好ましい。
また、炭化チタン層11の厚みは、20nm以上、500nm以下であることが好ましいが、なかでも、結晶性を向上するという観点から、40nm以上とすることが好ましい。また、炭化チタン層の形成に長時間を費やさないという観点から、200nm以下とすることが好ましい。
【0026】
(GaN層の成膜)
次に、炭化チタン層11上に、GaN層12(図2(B)参照)をエピタキシャル成長させる。ここでは、FIELO法等のようにGaN層を成長させるためのマスクは使用しない。また、炭化チタン層11を窒化させる工程を設けることなく、GaN層12を形成する工程を実施する。
はじめに、図1(B)に示すように、炭化チタン層11上に第一のGaN層121をエピタキシャル成長させる。
第一のGaN層121の成長条件は、たとえば、以下のようにすることができる。
【0027】
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:900℃〜1050℃
膜厚:50μm〜100μm
不純物ドーピング:なし
【0028】
この第一のGaN層121の厚みは、50〜100μmであることが好ましいが、なかでも、65μm以上、85μm以下であることが特に好ましい。このようにすることで炭化チタン層11上に成長したGaN層121から結晶欠陥を低減することができるという効果がある。
【0029】
次に、図1(C)に示すように、第一のGaN層121上に第二のGaN層122を形成する。
第二のGaN層122の成長条件は、たとえば、以下のようにすることができる。
【0030】
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1000℃〜1050℃
膜厚:50μm〜350μm
不純物ドーピング:あり(Si)
この第二のGaN層122の厚みは、50〜350μmであることが好ましいが、なかでも、150μm以上、250μm以下であることが特に好ましい。このような膜厚にすることでGaN層121と弾性率などの物理的性状の差が明確に表れ、亀裂が入り易いという効果がある。
ここで、不純物のドーピング方法としては、たとえば、ジクロロシランを用いてSiをドーピングすることができる。不純物濃度は1×1018cm―3以上、5×1018cm―3以下であることが好ましい。不純物濃度を1×1018cm―3以上とすることでドーピングなしのGaN層121と弾性率に差をつけることができるという利点がある。また、不純物濃度を5×1018cm―3以下とすることでGaN層の結晶品質低下を抑制できるという利点がある。
第二のGaN層122は、下地基板であるサファイア基板10を分離するために、GaN層12中で亀裂を発生させるための亀裂促進層となっている。
【0031】
次に、図2(A)に示すように、第二のGaN層122上に第三のGaN層123を形成する。
第三のGaN層123の成長条件は、たとえば、以下のようにすることができる。
【0032】
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1000℃〜1050℃
膜厚:50μm〜350μm
不純物ドーピング:なし
この第三のGaN層123の厚みは、50〜350μmであることが好ましいが、なかでも、150μm以上、250μm以下であることが特に好ましい。このようにすることでGaN層122との弾性率などの物理的性質の差が明確になり、亀裂が誘発されやすいという効果がある。
【0033】
その後、図2(B)に示すように、第三のGaN層123上に第四のGaN層124を成膜する。これにより、第一のGaN層121〜第四のGaN層124を含むGaN層12が形成されることとなる。
第四のGaN層124の成長条件は、たとえば、以下のようにすることができる。
【0034】
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1000℃〜1050℃
膜厚:200μm〜1500μm
不純物ドーピング:あり(Si)
この第四のGaN層124の厚みは、200〜1500μmであることが好ましいが、なかでも、800μm以上、1200μm以下であることが特に好ましい。このようにすることでクラックなしにGaN層124が剥がれる確立が高くなるという効果がある。
ここで、不純物のドーピング方法としては、たとえば、ジクロロシランを用いてSiをドーピングすることができる。不純物濃度は0.5×1018cm―3以上、3×1018cm―3以下であることが好ましい。不純物濃度を0.5×1018cm―3以上とすることでn型GaN基板として必要な導電性を確保できるという利点がある。また、不純物濃度を3×1018cm―3以下とすることでGaNの結晶性低下を抑制できるという利点がある。
【0035】
(サファイア基板の剥離工程)
次に、図3に示すように、GaN層12中で亀裂を生じさせ、サファイア基板10を除去する。具体的には、GaN層12を形成したHVPE装置の温度を降温し、前記GaN層12を常温まで、冷却する。
GaN層12は、Siがドーピングされた第二のGaN層122と、Siがドーピングされていないアンドープである第一のGaN層121,第三のGaN層123を有している。そのため、第二のGaN層122と第一のGaN層121との間、第二のGaN層122と第三のGaN層123との間で弾性率が異なるものとなっている。すなわち、第二のGaN層122の弾性率が、第一のGaN層121,第三のGaN層123の弾性率よりも小さくなっている。
GaN層12を冷却する過程で、サファイア基板10と、GaN層12との熱膨張係数の違いによりGaN層12に凸状の反りが発生する。この反りの影響と、第二のGaN層122の弾性率と第一のGaN層121,第三のGaN層123の弾性率との差とにより、第二のGaN層122内部、第二のGaN層122と第一のGaN層121との界面、あるいは、第二のGaN層122と第三のGaN層123との界面といった領域に亀裂が生じる。
これにより、GaN層12中で亀裂が生じ、図3に示すように、サファイア基板10が除去されることとなる。
その後、サファイア基板10から剥離したGaN層12’の表面および裏面を研磨することで、平坦化した自立基板であるGaN基板を作製することができる。
【0036】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態では、下地基板であるサファイア基板10上に、炭化チタン層11を形成している。
このような炭化物層を形成することで、GaN層12の成長段階で、転位密度を低減させることができる。そのため、GaN層12の厚み方向での転位密度の差が小さくなり、GaN層12の反りの発生を低減させることができる。
さらに、本実施形態では、GaN層12中で亀裂を生じさせて、サファイア基板10を除去している。このようにすることで、GaN層12の表面側に比べ比較的転位が多く存在するサファイア基板10側の領域をサファイア基板10とともに除去することができる。そのため、サファイア基板10から分離したGaN層12’の厚み方向における転位密度差を小さくすることができ、GaN層の反りの発生を低減させることができる。
【0037】
また、本実施形態では、GaN層12を、複数の異なる弾性率の層で構成している。具体的には、Siをドーピングした第二のGaN層122と、アンドープ層である第一のGaN層121,第三のGaN層123とを形成し、これらの各層の弾性率を異なるものとしている。
GaN層12を冷却する過程で、サファイア基板10と、GaN層12との熱膨張係数の違いによりGaN層12に凸状の反りが発生する。この反りの影響と、第二のGaN層122の弾性率と第一のGaN層121,第三のGaN層123の弾性率との差とにより、第二のGaN層122内部、第二のGaN層122と第一のGaN層121との界面、あるいは、第二のGaN層122と第三のGaN層123との界面に亀裂が生じる。これによりサファイア基板10とともに、GaN層12のサファイア基板10側の領域を容易に除去することができる。
【0038】
また、炭化チタン層11は、GaN層12を形成する工程にて、表面が窒素を含むガスにより窒化されることとなる。すなわち、炭化チタン層11の表面にTiNが形成され、このTiNは、TiCと同じ面心立方晶で格子定数も近似していることから、GaN層12をエピタキシャル成長するのに適している。
【0039】
さらに、本実施形態では、炭化チタン層11の厚みを、20nm以上、500nm以下としている。炭化チタン層の厚みを20nm以上とすることで、炭化チタン層の結晶性を向上させることができるという効果がある。また、炭化チタン層の厚みを500nm以下とすることで、炭化チタン層の形成に長時間を費やさないという効果がある。
【0040】
また、従来のFIELO法により、GaN層を形成する場合には、サファイア基板を被覆するマスクを形成する必要がある。このようにマスクを使用するため、コストがかかるという問題がある。また、マスクを形成する際には、一般にSiO2膜を形成し、この膜をエッチングにより選択的に除去して開口を形成する。そのため、マスクの形成に手間を要する。
これに対し、本実施形態では、マスクを必要とせず、炭化チタン層を形成すればよいので、コストの低減を図ることができるとともに、マスクを形成するためエッチング等の手間を省くことができる。
また、開口部からGaN層を成長させるためのマスクを形成した場合には、GaN層のうち、マスク直上の領域と、開口部直上の領域とで転位密度にばらつきが生じたりする可能性がある。
これに対し、本実施形態では、マスクを使用しないため、GaN層12の面方向における転位密度のばらつきを抑制することができる。
【0041】
なお、前記実施形態では、炭化チタン層11、GaN層12等を特定の製造条件で製造したが、特に限定する趣旨ではない。すなわち、上記の膜厚、製造条件は単なる例示に過ぎず、形成する半導体層の組成、構造に応じて適宜変更可能である。
【0042】
例えば、炭化チタン層11上に、TiCと、Cとを含有する層(以下、TiC分散C膜)112を形成してもよい。
図4(A)に示すようにサファイア基板10上に前記実施形態の炭化チタン層11と同様の炭化チタン層111を成膜し、次に、図4(B)に示すように炭化チタン層111の上にC/Ti比が1を超える組成を有するTiC分散C膜112を成膜した2層構造とする。
その後、前記実施形態と同様に、炭化チタン層11や、TiC分散C膜112を窒化させる工程を設けることなく、TiC分散C膜112上にGaN層を形成する。図4(C)に示すように、GaN層121を成長させるときに、TiC分散C膜112中のCは窒化ガス中の水素と反応しCH4として気化するためTiC分散C膜112には炭化チタン層111に通じる空隙が発生する。また、TiC分散C膜112の中のTiCは結晶方位がランダムな粒子であり、大気に暴露されたときに酸化皮膜を形成しているためGaN層121の成長は抑制されるので、炭化チタン層111からTiC分散C膜の空隙を通じてGaN層121の選択成長が再現性よく実現できる。
図4(C)に示すように、GaN層121は、結晶核からファセット構造を形成しながら、3次元成長する。
その後、成長条件を調整しながらGaN層121を厚くしてゆくと図5(A)のようにピットPの形成を伴ったGaNの3次元成長が起こる。このとき、ファセット同士が衝突して、結合しながら、成長し、GaN層121は、凹凸のある表面状態となっていく。その後、3次元成長のサファイア基板垂直方向の成長速度を低減させ、3次元成長から、2次元成長に移行させて、GaN層121が完成する。このGaN層121を前記第一のGaN層とし、その上に図5(B)のようにピット形成を抑制した成長条件で成長したGaN層122を第二のGaN層を成長させる。
GaN層122は、2次元成長により、形成される層であり、GaN層122のピット密度は、GaN層121のピット密度よりも少ない。GaN層121、122を形成する際には、不純物ドーピングするが、このとき、ピットに、不純物が取り込まれることとなるので、不純物濃度の異なる第一のGaN層と第二のGaN層を容易に形成することができる。
GaN層121、122を形成したHVPE装置の温度を降温し、前記GaN層121、122を常温まで冷却する間に、GaN層121とGaN層122の界面近傍で亀裂が生じ、図6に示すように、サファイア基板10が除去されることとなる。
なお、GaNの3次元成長、2次元成長は、GaNの成長速度を調整することで、コントロールすることができる。成長速度が速くなることで、3次元成長しやすくなり、この際、ピットが形成されやすくなる。成長速度を遅くすることで、2次元成長しやすくなり、ピット形成は抑制される。
この場合おいても、開口部からGaN層を成長させるためのマスクは使用しない。
【0043】
さらに、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記各実施形態では、下地基板としてサファイア基板10を使用したが、スピネル基板、SiC基板、ZnO基板、シリコン基板、GaAs基板、GaP基板等を用いてもよい。
また、前記実施形態では、炭化物層として炭化チタン層を形成したが、これに限らず、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルであってもよい。
これらの炭化物層は面心立方構造で、窒化後によって結晶構造が変化せず、炭化物および窒化した炭化物の(111)面がIII族窒化物半導体層と格子整合に優れるという共通点を有し、GaN層12のエピタキシャル成長が可能であるという観点から、いずれも炭化チタン層と同様の効果を奏することができる。
【0044】
また、前記実施形態のサファイア基板10を剥離する工程では、サファイア基板10、GaN層12等を冷却することで、サファイア基板10が分離されるとしたが、これに限らず、GaN層12にダメージが加わらない程度の力を加えることで、サファイア基板10を剥離してもよい。
ただし、前記実施形態のように、冷却することにより、ほとんど外力を加えずに、サファイア基板10が分離除去されれば、前記GaN層に加わるダメージを確実に抑制することができる。このため、損傷の少ない高品質のGaN半導体基板が安定的に得られる。
【0045】
このようなIII族窒化物半導体基板上にIII族窒化物系素子構造を作製すれば、上下にアップダウン電極構造を有する発光ダイオードまたはレーザーダイオード等の発光素子を作ることが可能であり、高性能トランジスタ等の電子デバイスへの適用も可能である。III族窒化物半導体基板は、鏡面に研摩し、ドライエッチングまたはケミカルメカニカルポリッシング(CMP)を施した後に発光ダイオードまたはレーザーダイオード等の発光素子、さらにはトランジスタ等の電子デバイスを作製するのが最良である。また、III族窒化物半導体基板を種結晶として、HVPE法、フラックス法、アモノサーマル法などにより高品質GaN結晶を成長させることが可能である。
【0046】
さらに、前記実施形態では、炭化物層をスパッタリングにより成膜したがこれに限らず、他の方法にて成膜してもよい。
たとえば、真空蒸着により炭化物層を成膜してもよい。さらには、たとえば、下地基板を加熱しながら、金属膜と、カーボン膜とを重ねて成膜することで炭化物層を形成してもよい。また、金属塩化物と炭化水素を原料に用いてCVD(Chemical Vapor Deposition)で成膜することも可能である。
【実施例】
【0047】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
前記実施形態と同様の方法でGaN半導体基板を製造した。なお、基板としては、サファイア基板を使用した。
(炭化物層を形成する工程)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Ti
膜厚 :120nm
【0048】
(GaN層を形成する工程)
(第一のGaN層)
第一のGaN層は、GaNバッファ層と高温成長層とから構成した。第一のGaN層は、アンドープである。
(GaNバッファ層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:970℃
成膜ガス:GaClガス 180cc/min、NH3ガス 3300cc/min(V/III比=10)
厚み:5μm
(高温成長層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 200cc/min、NH3ガス 2000cc/min(V/III比=10)
厚み:70μm
【0049】
(第二のGaN層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 200cc/min、NH3ガス 2000cc/min(V/III比=10)
ドーピング:Siドープ(含有量3000ppmのジクロロシラン(Si2H2Cl2)9cc/minにHCl3cc/minを混合し、HVPE装置に導入する。)
厚み:175μm
【0050】
(第三のGaN層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 200cc/min、NH3ガス 2000cc/min(V/III比=10)
厚み:175μm
第三のGaN層は、アンドープである。
【0051】
(第四のGaN層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 180cc/min、NH3ガス 1800cc/min(V/III比=10)
ドーピング:Siドープ(含有量3000ppmのジクロロシラン(Si2H2Cl2)3cc/minにHCl3cc/minを混合し、HVPE装置に導入する。)
厚み:1100μm
【0052】
(剥離方法)
GaN層を形成したHVPE装置中の温度を降温させて、サファイア基板、炭化物層、GaN層を、常温まで冷却した。
【0053】
(実施例2)
実施例1において、炭化物層の厚みを20nmとした。その他は実施例1と同じにした。
【0054】
(実施例3)
実施例1において、炭化物層の厚みを500nmとした。その他は実施例1と同じにした。
【0055】
(比較例1)
FIELO法により、GaN層を形成した。
具体的には、以下のようにしてGaN層を得た。
下地基板として、(0001)面サファイア基板を用意した。このサファイア基板上に、1.5μmのGaN膜を形成した。
次に、このGaN膜上に、SiO2膜を形成し、フォトリソグラフィー法とウエットエッチングにより開口を有するマスクを形成した。マスクは幅3μmのストライプ状であり、ストライプの延在方向は<11−20>方向とした。また、開口の幅(短辺)は4μmとした。
【0056】
次に、以下のHVPE法により、ファセット構造を成長させた。
具体的には、III族原料にガリウム(Ga)と塩化水素(HCl)の反応生成物である塩化ガリウム(GaCl)を使用し、V族原料にアンモニア(NH3 )ガスを使用した。
サファイア基板をハイドライド成長装置にセットし、水素雰囲気で成長温度1040℃に昇温した。成長温度が安定してから、HCl流量を200cc/毎分で供給し、NH3流量2000cc/毎分で5分供給することで、{1−101}面からなるGaNのファセット構造を成長させた。
さらに、エピタキシャル成長を続け、マスクの表面が一部露出した状態で成長を一旦止めた。そして、エッチャント(10%HF水溶液)により、マスクの除去を行った。
その後、再度、基板を、ハイドライドの成長装置にセットし、水素雰囲気で成長温度1040℃に昇温した。成長温度が安定してから、HCl流量を180cc/毎分、NH3流量1800cc/毎分で300分供給することでGaN層のエピタキシャル成長を行った。GaN層の厚みは1100μmであった。
GaN層を形成したHVPE装置中の温度を降温させて、サファイア基板を含むGaN層を、常温まで冷却した。
【0057】
(実施例1〜3、および比較例1の結果)
実施例1〜3では、HVPE装置での冷却中にGaN層中で亀裂が生じ、サファイア基板と、GaN層とが分離された。
また、比較例1では、HVPE装置での冷却中にサファイア基板と、GaN層とが分離された。
表1に、実施例1〜3、および比較例1の転位密度と曲率半径の結果を示した。
転位密度は、カソードルミネッセンス(CL)法で単位観察面積当たりの暗点数を観察する方法で調べた。日立製作所製走査型電子顕微鏡S-3000Nに取り付けた堀場製作所製カソードルミネッセンス測定システムMP-10を使用し、電子線を照射したGaN層から発せられる362nmの発光像から10μm四方に存在する暗点数を調べ、その暗点密度を転位密度(cm−2)とした。
また、曲率半径は、4軸X線回折装置(フィリップス製X'Pert MRD)を使用し測定した。GaN結晶のc面において中心と、中心から20mm離れた位置でチルト角(c軸の傾き)の変化を計測し、曲率半径を算出した。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1〜3で得られたGaN層の転位密度は、7×106cm−2以下であり、曲率半径は8m以上を示した。それに対し比較例1で得られたGaN層の転位密度は1×107cm−2、曲率半径は2mであった。
【0060】
(実施例4)
実施例1において、炭化チタンを炭化ジルコニウムに変更した。
その他は、実施例1と同じにした。
炭化ジルコニウム層の形成条件は、以下の通りである。
(炭化物層を形成する工程)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Zr
膜厚 :120nm
【0061】
(実施例5)
実施例1において、炭化チタンを炭化ハフニウムに変更した。
その他は、実施例1と同じにした。
炭化ハフニウム層の形成条件は、以下の通りである。
(炭化物層を形成する工程)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Hf
膜厚 :120nm
【0062】
(実施例6)
実施例1において、炭化チタンを炭化バナジウムに変更した。
その他は、実施例1と同じにした。
炭化バナジウム層の形成条件は、以下の通りである。
(炭化物層を形成する工程)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:V
膜厚 :120nm
【0063】
(実施例7)
実施例1において、炭化チタンを炭化タンタルに変更した。
その他は、実施例1と同じにした。
炭化タンタル層の形成条件は、以下の通りである。
(炭化物層を形成する工程)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Ta
膜厚 :120nm
【0064】
(実施例4〜7の結果)
実施例4〜7では、HVPE装置での冷却中にGaN層中で亀裂が生じ、サファイア基板と、GaN層とが分離された。
表2に、実施例4〜7の転位密度と曲率半径の結果を実施例1を含めて示した。転位密度、曲率半径の測定方法は、前述したものと同じである。
【0065】
【表2】
【0066】
実施例4〜7、実施例1で得られたGaN層の転位密度は、8×106cm−2以下であり、曲率半径は8m以上を示した。
【0067】
(実施例8)
図4〜6に示した方法で、GaN層を得た。
下地基板としては、厚さ550μmの3インチφのサファイア(Al2O3)基板10を使用した。
次に、このサファイア基板10上に炭化チタン層11を形成した。
炭化チタン層11の成膜条件は、以下のようにした。
【0068】
(炭化物層を形成する工程)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Ti
膜厚 :120nm
【0069】
(GaN層121を形成する工程)
(第一のGaN層)
第一のGaN層は、GaNバッファ層(3次元成長)、3次元成長初期層および3次元成長制御層とから構成した。
(GaNバッファ層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:970℃
成膜ガス:GaClガス 180cc/min、NH3ガス 3300cc/min(V/III比=10)
厚み:5μm
(3次元初期層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 80cc/min、NH3ガス 2400cc/min(V/III比=10)
厚み:10μm
3次元初期層は、ファセットを形成しながら、3次元成長した。
(3次元成長制御層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 180cc/min、NH3ガス 1800cc/min(V/III比=10)
厚み:250μm
この3時点成長抑制層は、3次元成長を止めるために設けられた層であり、結晶の成長は、3次元成長から2次元成長に移行した。
【0070】
(第二のGaN層122)
第二のGaN層は、2次元成長により成長させたものであり、3次元成長を抑制し、平坦な成長(基板水平方向に沿った成長が優先的に行われる成長)となるような条件で成長を実施した。第一のGaN層のピット密度は32個/cm2であったのに対し、第二のGaN層では2個/cm2まで減少した。ピット密度は顕微鏡により測定した。
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 180cc/min、NH3ガス 1800cc/min(V/III比=10)
ドーピング:Siドープ(含有量3000ppmのジクロロシラン(Si2H2Cl2)3cc/minにHCl3cc/minを混合し、HVPE装置に導入した。)
厚み:1100μm
【0071】
(剥離方法)
GaN層を形成したHVPE装置中の温度を降温させて、サファイア基板、炭化物層、GaN層を、常温まで冷却した。
【0072】
(実施例9)
実施例8において、炭化物層上にTiC分散C膜を形成した。その他は、実施例8と同じにした。なお、第一のGaN層のピット密度は50個/cm2であったのに対し、第二のGaN層では9個/cm2まで減少した。ピット密度は顕微鏡より測定した。
【0073】
(炭化物層)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Ti
膜厚 :120nm
膜質 :TiC
【0074】
(TiC含有C膜)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:7.4sccm
ターゲット:Ti
膜厚 :20nm
膜質 :TiC分散C膜
【0075】
(実施例8〜9の結果)
実施例8〜9では、HVPE装置での冷却中にGaN層中で亀裂が生じ、サファイア基板と、GaN層とが分離された。
表3に、実施例8〜9の転位密度と曲率半径の結果を示した。転位密度、曲率半径の測定方法は、前述したものと同じである。
【0076】
【表3】
【0077】
実施例8〜9で得られたGaN層の転位密度は、5×106cm−2以下であり、曲率半径は10m以上を示した。
図7は、実施例9で剥離したGaN層とGaN層が残留したサファイア基板の写真である。サファイア基板に残留したGaN層はTiC層の色調を受け、黒色を示している。
図8は、実施例9の剥離したGaN層とサファイア基板側に残留したGaN層の断面の蛍光顕微鏡写真である。サファイア基板側に残留したGaN層は暗領域で示されるようにピット形成による3次元成長で占められており、剥離したGaN層は暗領域の末端部を含む状態で亀裂が入り、剥離に至ったと判断される。
【0078】
表4は、図8に示されるサファイア基板側に残留したGaN層の暗領域(3次元成長部分)と剥離したGaN層の明領域(平坦成長(2次元成長)部分)のSiおよびOのSIMS分析結果を示す。SIMS分析は、所定の部分の深さ3μmで測定した。
【0079】
【表4】
【0080】
剥離したGaN層は、OおよびSiがバックグランドレベルでそれぞれ1×1016cm―3および1×1017cm―3であったのに対し、サファイア基板側に残留したGaN層では、Oが4×1018cm―3のように高濃度で検出された。Oは、HVPE装置内部の石英構造部材や原料ガス中に含まれる酸素が発生源であると考えられる。
また、第一のGaN層中のピット密度は、第二のGaN層中のピット密度よりも高い。
【0081】
表5には、実施例9のサファイア基板側に残留したGaN層と剥離したGaN層の弾性率及びダイナミック硬さを示した。
また、サファイア基板側に残留したGaN層の弾性率およびダイナミック硬さは、図8の暗領域で示される3次元成長部分を測定した値である。剥離したGaN層の弾性率およびダイナミック硬さは、図8の明領域で示される平坦成長部分を測定した値である。
弾性率及びダイナミック硬さは、島津製作所製ダイナミック微小硬度計(DUH−W201)を使用し、115°三角錐の圧子を用いて一定の試験力P(mN)による負荷−除荷試験から求めた。ダイナミック硬さ(DH)はDH=α・P/D2で与えられ、また弾性率(ヤング率E)はE=σ/εで求められる。αは圧子固有の係数で3.8584、Dは圧子の押し込み深さ(μm)、σは単位面積当りの力(Pa)、εは長さの変化の割合を指す。試験条件は、試験力250mN、負荷速度71mN/秒、負荷保持時間2秒とした。
【0082】
【表5】
【0083】
サファイア基板側に残留したGaN層は、剥離したGaN層に比べて弾性率が1/10以下に低下し、ダイナミック硬さは1.6倍増加した。表4からも明らかなようにサファイア基板側に残留したGaN層では、3次元成長部分に不純物としてOがドーピングされたことによって弾性率およびダイナミック硬さが変化し、これら物理的性質の相違がGaN層内で水平方向への亀裂を誘発し、良好な剥離に至ったと推測される。
【0084】
(実施例10)
実施例9において、炭化物層の膜厚を20nmとした。
その他は、実施例9と同じである。
【0085】
(実施例11)
実施例9において、炭化物層の膜厚を40nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0086】
(実施例12)
実施例9において、炭化物層の膜厚を60nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0087】
(実施例13)
実施例9において、炭化物層の膜厚を100nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0088】
(実施例14)
実施例9において、炭化物層の膜厚を150nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0089】
(実施例15)
実施例9において、炭化物層の膜厚を200nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0090】
(実施例16)
実施例9において、炭化物層の膜厚を300nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0091】
(実施例17)
実施例9において、炭化物層の膜厚を500nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0092】
(実施例18)
実施例9において、炭化物層の膜厚を10nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0093】
(実施例10〜18の結果)
実施例10〜18では、HVPE装置での冷却中にGaN層中で亀裂が生じ、サファイア基板と、GaN層とが分離された。
図9に、実施例9〜18にかかるTiC層膜厚とGaN層の転位密度の関係を示した。転位密度の測定方法は、前述したとおりである。実施例9〜17のGaN層の転位密度は4×106cm−2以下であるのに対し、実施例18では1.7×107cm−2であった。ただし、曲率半径は、比較例1よりも大きいものとなった。
【0094】
(実施例19)
実施例9において、GaN層膜厚を100〜1500μmの範囲で任意に設定し、GaN層を成長した。
その他は、実施例9と同じにした。
【0095】
(比較例2)
比較例1において、GaN層膜厚を100〜3000μmの範囲で任意に設定し、GaN層を成長した。
その他は、比較例1と同じにした。
【0096】
(実施例19、および比較例2の結果)
実施例19ではGaN層膜厚が950μm以上の場合に、HVPE装置での冷却中にGaN層中で外部から力を加えることなく亀裂が生じ、サファイア基板とGaN層とが分離された。一方で比較例2ではGaN層膜厚が700μm以上の場合に、HVPE装置での冷却中にGaN層中で亀裂が生じ、サファイア基板とGaN層が分離されたが、クラックが入った。
図10には、実施例19にかかるGaN層膜厚と転位密度の関係を比較例2の場合と比較し示した。転位密度の測定方法は、前述したとおりである。実施例19におけるGaN層膜厚が265μm以下では、第一のGaN層のみであるためピットが多数存在したので、ピット間の平坦領域で評価した。実施例19では、GaN層膜厚が薄い段階で、転位密度は低減し、GaN層膜厚の増加に対し転位密度の変化が小さいことがわかる。
【符号の説明】
【0097】
10 下地基板(サファイア基板)
11 炭化チタン層(炭化物層)
111 第一の炭化チタン層
112 第二の炭化チタン層(TiC分散C膜)
12 GaN層(III族窒化物半導体層)
12’GaN層(III族窒化物半導体層)
121 第一のGaN層
122 第二のGaN層
123 第三のGaN層
124 第四のGaN層
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化ガリウム(GaN)結晶を窒化物系光デバイスや電子デバイス作製用基板として用いることが提案されており、この基板を得るためにバルク結晶を作製する試みが多くの研究機関で行われている。しかしながら、GaNの解離圧が高いために、GaAsのように融液から大きなバルク結晶を得ることが難しく、GaN基板として利用できるGaNバルク結晶の作製は非常に困難である。
【0003】
このため、GaN基板を作製する方法として、サファイア(Al2O3)等の異種材料基板にHVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法によってGaN基板となるGaN層を成長させた後、異種材料基板を分離除去することにより、GaN基板を得る方法が広く採用されている。このようなGaN基板の作製方法に関連する従来技術として、特許文献1には、HVPE法を用いたGaN半導体基板の製造方法が開示されている。この方法は、いわゆるFIELO(Facet-Initiated Epitaxial Lateral Overgrowth)法である。
まず、サファイア(Al2O3)基板上に、ストライプ状に配置された断面矩形形状の被覆部および被覆部間に形成された開口部を有するマスクを形成する。
マスク形成後、その開口部からGaN層を成長させ、ファセット構造を形成させながらIII族窒化物半導体を選択横方向成長させる。そして、前記マスクの被覆部の上面を完全には覆わない状態で成長を止める。これにより、マスクの被覆部上面の一部が露出した露出部が形成される。
次に、マスクをドライエッチングにより除去して空隙を形成し、さらにGaN層を成長させる。その後、サファイア基板を剥離し、GaN層を有するGaN半導体基板を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−312971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、GaN半導体基板の反りのさらなる低減が求められているが、特許文献1に記載された方法でGaN半導体基板を製造した場合には、このような反り低減に対する要求に応えることが難しかった。
【0006】
本発明の目的は、反りの発生を低減させることができるIII族窒化物半導体層の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、特許文献1に記載された方法でGaN半導体基板を製造した場合には、以下のような問題があることがわかった。
FIELO法により、III族窒化物半導体を形成する場合、GaN層の成長の初期段階にてファセットが形成される。ファセットの出現により転位がファセットに向かって進み、下地基板に対し垂直に伸びていた転位が垂直な方向へ伸びることができなくなる。結晶欠陥はファセット の成長とともに横方向に曲げられ、GaN層の膜厚増加に伴い、成長領域では結晶欠陥が減少していくこととなる。
そのため、GaN層の下地基板側では結晶欠陥が多く、GaN層の表面側では結晶欠陥が少なくなる。このようなGaN層の厚み方向における結晶欠陥の発生率の違いがGaN層の反りの発生を招くこととなる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決すべく発案されたものであり、本発明によれば、下地基板上に、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルから選択されるいずれかの炭化物層を形成する工程と、前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる工程と、前記炭化物層の前記III族窒化物半導体層側の表面よりも上方の領域であり、前記III族窒化物半導体層中の領域で亀裂を生じさせて、前記下地基板を除去し、前記III族窒化物半導体層を得る工程とを含むIII族窒化物半導体層の製造方法が提供される。
【0009】
この発明によれば、下地基板上に、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルから選択されるいずれかの炭化物層を形成している。
このような炭化物層を形成することで、III族窒化物半導体層の成長初期段階から、転位密度を低減させることができる。そのため、III族窒化物半導体層の厚み方向での転位密度の差が小さくなり、III族窒化物半導体層の反りの発生を低減させることができる。
さらに、本発明では、III族窒化物半導体層中で亀裂を生じさせて、下地基板を除去している。このようにすることで、III族窒化物半導体層の表面側に比べ比較的転位が多く存在する下地基板側の領域を下地基板とともに除去することができる。そのため、III族窒化物半導体層の厚み方向における転位密度差を小さくすることができ、III族窒化物半導体層の反りの発生を低減させることができる。
【0010】
詳細な原理は明らになっていないが、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタルは、いずれも面心立方構造の炭化物で(111)面がIII族窒化物半導体と良好な格子整合性を有するため、格子不整合に起因した欠陥を低減したIII族窒化物半導体層を成膜できる。なお、これら炭化物表面は水分または酸素の存在する雰囲気中に暴露すると酸化皮膜を形成する。この酸化皮膜は、炭化物と結晶構造が異なるため炭化物から結晶情報の引き継ぎが難しく、種々の異なった方位の多結晶からなる皮膜となる。酸化皮膜上ではIII族窒化物半導体層の成長は抑制されてしまうが、酸化皮膜がIII族窒化物半導体層の成長時に高温に加熱されたり、還元性ガスと接触することによって酸化皮膜に微細な空隙が形成され、その空隙を通して下部の炭化物層からIII族窒化物半導体層が選択的に成長すると考えられる。いずれの炭化物層を使用しても、III族窒化物半導体層の成長初期段階から、転位密度を低減させることができる。
なお、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタルは、一般的に非化学量論組成であることが知られており、C/Mモル比は1/1以下である(以下、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Ta)。C/Mモル比が1/1を超えると、Cが遊離するため炭化物層はMC混合C膜となる。
【0011】
ここで、III族窒化物半導体層を成長させる前記工程では、III族窒化物半導体層中に、前記III族窒化物半導体層中で亀裂を生じさせるための亀裂促進層を形成することが好ましい。
【0012】
さらに、前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる前記工程では、前記亀裂促進層となり、不純物を含む第一のIII族窒化物半導体層を形成する工程と、前記第一のIII族窒化物半導体層上に前記第一のIII族窒化物半導体層とは、不純物濃度が異なる第二のIII族窒化物半導体層を形成する工程とを含むことが好ましい。
【0013】
III族窒化物半導体層を、不純物濃度が異なる少なくとも2つの層を含むものとすることで、2つの層間では弾性率が異なるものとなる。
この場合には、III族窒化物半導体層を冷却する過程で、III族窒化物半導体層の各層の弾性率の違いに起因してIII族窒化物半導体層中で亀裂を生じさせることが可能となる。
【0014】
さらには、前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる前記工程は、不純物がドーピングされていない第一アンドープIII族窒化物半導体層を形成する工程と、この第一アンドープIII族窒化物半導体層上に不純物をドープしたIII族窒化物半導体層を前記第一のIII族窒化物半導体層として形成する工程と、不純物をドープした前記III族窒化物半導体層上に、不純物がドーピングされていない第二アンドープIII族窒化物半導体層を前記第二のIII族窒化物半導体層として形成する工程とを含むことが好ましい。
【0015】
第一アンドープIII族窒化物半導体層、不純物をドープしたIII族窒化物半導体層、第二アンドープIII族窒化物半導体層を形成することで、III族窒化物半導体層で亀裂が生じやすい領域が複数形成されることとなる。具体的には、第一アンドープIII族窒化物半導体層と不純物をドープした前記III族窒化物半導体層との界面、不純物をドープしたIII族窒化物半導体層中、あるいは、不純物をドープしたIII族窒化物半導体層と第二アンドープIII族窒化物半導体層との界面といった領域で亀裂が生じやすくなる。
【0016】
さらには、第一のIII族窒化物半導体層を形成する前記工程は、ピットを形成しながら、3次元成長によりIII族窒化物半導体層を形成する工程を含み、第二のIII族窒化物半導体層を形成する前記工程では、前記第一のIII族窒化物半導体層よりもピット密度が低い、第二のIII族窒化物半導体層を2次元成長により形成することが好ましい。
【0017】
ピット形成にともなう3次元成長では、結晶成長時に雰囲気から不純物を取り込みやすい。したがって、ピット形成による3次元成長部分からなる層を含む第一のIII族窒化物半導体層を形成し、その上に第一のIII族窒化物半導体層よりもピット密度が低い、第二のIII族窒化物半導体層を成長させると、不純物濃度の異なる第一のIII族窒化物半導体層と第二のIII族窒化物半導体層を形成することができる。これにより、第一のIII族窒化物半導体層と第二のIII族窒化物半導体層との界面近傍で亀裂が生じやすくなる。
また、ピットを形成しながら、3次元成長によりIII族窒化物半導体層を形成する工程では、炭化物層上に成長したIII族窒化物半導体層に多く含まれる転位は3次元長で現れるファセットで横方向に折り曲げられるため、欠陥の低減にも有効に作用する。
ここで、3次元成長とは、下地基板表面に沿った水平方向の成長よりも、下地基板表面と垂直な空間に向かって、優先的に結晶核が成長するこという。
また、2次元成長とは、下地基板表面に沿って、水平方向に成長していくことをいう。2次元成長の場合には、水平方向の成長が基板垂直方向の成長よりも非常に速い。
【0018】
この際、前記不純物は、SiまたはOであることが好ましい。Siは、n型ドーパントとして作用し、III族窒化物半導体のドーパントとしてSiは一般的に使用されているので、利便性がある。Oは、結晶成長の際に石英構造部材などの腐食により入り易い不純物であり、特別なドーパント剤を準備せずにドーピングすることも可能である。
【0019】
さらに、本発明では、前記下地基板上に、開口部からIII族窒化物半導体層を成長させるためのマスクを形成する工程を含まない。
これにより、マスクを形成するための手間を省くことができ、III族窒化物半導体層の製造を簡略化することができる。
開口部からIII族窒化物半導体層を成長させるためのマスクを形成した場合には、III族窒化物半導体層のうち、マスク直上の領域と、開口部直上の領域とで転位密度にばらつきが生じたりする可能性がある。
これに対し、本発明では、マスクを使用しないため、III族窒化物半導体層の面方向における転位密度のばらつきを抑制することができる。
【0020】
また、前記炭化物層は、炭化チタンの層であることが好ましい。炭化チタンは、下地基板(たとえばサファイア)やIII族窒化物との格子整合性や下地基板と熱膨張係数がほぼ同じであることから格子不整合に起因した欠陥を低減したIII族窒化物半導体層を成膜できる。このようにすることで、III族窒化物半導体層の成長初期段階から、転位密度を確実に低減させることができる。
【0021】
前記炭化物層の厚みは、20nm以上、500nm以下であることが好ましい。
炭化物層の厚みを20nm以上とすることで、炭化物層は良好な結晶性が得られ、III族窒化物半導体層の結晶性向上という効果がある。
また、炭化物層の厚みを500nmより厚くしても炭化物層の結晶性は向上しがたく、成膜に長時間を費やすため生産性が低下する課題が発生するので、500nm以下とすることで良好な結晶性を有する炭化物層を生産性の低下なく成膜できるという効果がある。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、反りの発生を低減させることができるIII族窒化物半導体層の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかるGaN層の製造工程を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるGaN層の製造工程を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるGaN層の製造工程を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるGaN層の製造工程を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるGaN層の製造工程を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかるGaN層の製造工程を示す図である。
【図7】本発明の実施例9で剥離したGaN層とサファイア基板に残留したGaN層の写真である。
【図8】本発明の実施例9の剥離したGaN層とGaN層剥離後のサファイア基板の蛍光顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施例10〜17、および比較例2にかかるTiC層膜厚とGaN層の転位密度の関係を示す図である。
【図10】本発明の実施例19、および比較例3にかかるGaN層膜厚と転位密度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
はじめに、本実施形態のIII族窒化物半導体層の製造方法の概要について説明する。本実施形態では、III族窒化物半導体層はGaN層である。
本実施形態のIII族窒化物半導体層の製造方法は、下地基板上に、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルから選択されるいずれかの炭化物層を形成する工程と、炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる工程と、III族窒化物半導体層中で亀裂を生じさせて、前記下地基板を除去し、前記III族窒化物半導体層を得る工程とを含む。
【0025】
次に、本実施形態のGaN層の製造方法について詳細に説明する。
(炭化物層を形成する工程)
はじめに、図1(A)に示すように、下地基板を用意する。下地基板としては、たとえば、厚さ550μmの3インチφのサファイア(Al2O3)基板10を用意する。
次に、このサファイア基板10上に炭化チタン層11を形成する。
炭化チタン層11の成膜条件は、たとえば、以下のようにする。
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:500〜1000℃
成膜時間:4.5〜114分
圧力:0.3Pa〜0.5Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Ti
膜厚 :20nm〜500nm
成膜温度は、500℃以上、1000℃以下であることが好ましいが、600℃以上であることが好ましく、また、900℃以下であることが好ましい。
また、炭化チタン層11の厚みは、20nm以上、500nm以下であることが好ましいが、なかでも、結晶性を向上するという観点から、40nm以上とすることが好ましい。また、炭化チタン層の形成に長時間を費やさないという観点から、200nm以下とすることが好ましい。
【0026】
(GaN層の成膜)
次に、炭化チタン層11上に、GaN層12(図2(B)参照)をエピタキシャル成長させる。ここでは、FIELO法等のようにGaN層を成長させるためのマスクは使用しない。また、炭化チタン層11を窒化させる工程を設けることなく、GaN層12を形成する工程を実施する。
はじめに、図1(B)に示すように、炭化チタン層11上に第一のGaN層121をエピタキシャル成長させる。
第一のGaN層121の成長条件は、たとえば、以下のようにすることができる。
【0027】
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:900℃〜1050℃
膜厚:50μm〜100μm
不純物ドーピング:なし
【0028】
この第一のGaN層121の厚みは、50〜100μmであることが好ましいが、なかでも、65μm以上、85μm以下であることが特に好ましい。このようにすることで炭化チタン層11上に成長したGaN層121から結晶欠陥を低減することができるという効果がある。
【0029】
次に、図1(C)に示すように、第一のGaN層121上に第二のGaN層122を形成する。
第二のGaN層122の成長条件は、たとえば、以下のようにすることができる。
【0030】
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1000℃〜1050℃
膜厚:50μm〜350μm
不純物ドーピング:あり(Si)
この第二のGaN層122の厚みは、50〜350μmであることが好ましいが、なかでも、150μm以上、250μm以下であることが特に好ましい。このような膜厚にすることでGaN層121と弾性率などの物理的性状の差が明確に表れ、亀裂が入り易いという効果がある。
ここで、不純物のドーピング方法としては、たとえば、ジクロロシランを用いてSiをドーピングすることができる。不純物濃度は1×1018cm―3以上、5×1018cm―3以下であることが好ましい。不純物濃度を1×1018cm―3以上とすることでドーピングなしのGaN層121と弾性率に差をつけることができるという利点がある。また、不純物濃度を5×1018cm―3以下とすることでGaN層の結晶品質低下を抑制できるという利点がある。
第二のGaN層122は、下地基板であるサファイア基板10を分離するために、GaN層12中で亀裂を発生させるための亀裂促進層となっている。
【0031】
次に、図2(A)に示すように、第二のGaN層122上に第三のGaN層123を形成する。
第三のGaN層123の成長条件は、たとえば、以下のようにすることができる。
【0032】
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1000℃〜1050℃
膜厚:50μm〜350μm
不純物ドーピング:なし
この第三のGaN層123の厚みは、50〜350μmであることが好ましいが、なかでも、150μm以上、250μm以下であることが特に好ましい。このようにすることでGaN層122との弾性率などの物理的性質の差が明確になり、亀裂が誘発されやすいという効果がある。
【0033】
その後、図2(B)に示すように、第三のGaN層123上に第四のGaN層124を成膜する。これにより、第一のGaN層121〜第四のGaN層124を含むGaN層12が形成されることとなる。
第四のGaN層124の成長条件は、たとえば、以下のようにすることができる。
【0034】
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1000℃〜1050℃
膜厚:200μm〜1500μm
不純物ドーピング:あり(Si)
この第四のGaN層124の厚みは、200〜1500μmであることが好ましいが、なかでも、800μm以上、1200μm以下であることが特に好ましい。このようにすることでクラックなしにGaN層124が剥がれる確立が高くなるという効果がある。
ここで、不純物のドーピング方法としては、たとえば、ジクロロシランを用いてSiをドーピングすることができる。不純物濃度は0.5×1018cm―3以上、3×1018cm―3以下であることが好ましい。不純物濃度を0.5×1018cm―3以上とすることでn型GaN基板として必要な導電性を確保できるという利点がある。また、不純物濃度を3×1018cm―3以下とすることでGaNの結晶性低下を抑制できるという利点がある。
【0035】
(サファイア基板の剥離工程)
次に、図3に示すように、GaN層12中で亀裂を生じさせ、サファイア基板10を除去する。具体的には、GaN層12を形成したHVPE装置の温度を降温し、前記GaN層12を常温まで、冷却する。
GaN層12は、Siがドーピングされた第二のGaN層122と、Siがドーピングされていないアンドープである第一のGaN層121,第三のGaN層123を有している。そのため、第二のGaN層122と第一のGaN層121との間、第二のGaN層122と第三のGaN層123との間で弾性率が異なるものとなっている。すなわち、第二のGaN層122の弾性率が、第一のGaN層121,第三のGaN層123の弾性率よりも小さくなっている。
GaN層12を冷却する過程で、サファイア基板10と、GaN層12との熱膨張係数の違いによりGaN層12に凸状の反りが発生する。この反りの影響と、第二のGaN層122の弾性率と第一のGaN層121,第三のGaN層123の弾性率との差とにより、第二のGaN層122内部、第二のGaN層122と第一のGaN層121との界面、あるいは、第二のGaN層122と第三のGaN層123との界面といった領域に亀裂が生じる。
これにより、GaN層12中で亀裂が生じ、図3に示すように、サファイア基板10が除去されることとなる。
その後、サファイア基板10から剥離したGaN層12’の表面および裏面を研磨することで、平坦化した自立基板であるGaN基板を作製することができる。
【0036】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態では、下地基板であるサファイア基板10上に、炭化チタン層11を形成している。
このような炭化物層を形成することで、GaN層12の成長段階で、転位密度を低減させることができる。そのため、GaN層12の厚み方向での転位密度の差が小さくなり、GaN層12の反りの発生を低減させることができる。
さらに、本実施形態では、GaN層12中で亀裂を生じさせて、サファイア基板10を除去している。このようにすることで、GaN層12の表面側に比べ比較的転位が多く存在するサファイア基板10側の領域をサファイア基板10とともに除去することができる。そのため、サファイア基板10から分離したGaN層12’の厚み方向における転位密度差を小さくすることができ、GaN層の反りの発生を低減させることができる。
【0037】
また、本実施形態では、GaN層12を、複数の異なる弾性率の層で構成している。具体的には、Siをドーピングした第二のGaN層122と、アンドープ層である第一のGaN層121,第三のGaN層123とを形成し、これらの各層の弾性率を異なるものとしている。
GaN層12を冷却する過程で、サファイア基板10と、GaN層12との熱膨張係数の違いによりGaN層12に凸状の反りが発生する。この反りの影響と、第二のGaN層122の弾性率と第一のGaN層121,第三のGaN層123の弾性率との差とにより、第二のGaN層122内部、第二のGaN層122と第一のGaN層121との界面、あるいは、第二のGaN層122と第三のGaN層123との界面に亀裂が生じる。これによりサファイア基板10とともに、GaN層12のサファイア基板10側の領域を容易に除去することができる。
【0038】
また、炭化チタン層11は、GaN層12を形成する工程にて、表面が窒素を含むガスにより窒化されることとなる。すなわち、炭化チタン層11の表面にTiNが形成され、このTiNは、TiCと同じ面心立方晶で格子定数も近似していることから、GaN層12をエピタキシャル成長するのに適している。
【0039】
さらに、本実施形態では、炭化チタン層11の厚みを、20nm以上、500nm以下としている。炭化チタン層の厚みを20nm以上とすることで、炭化チタン層の結晶性を向上させることができるという効果がある。また、炭化チタン層の厚みを500nm以下とすることで、炭化チタン層の形成に長時間を費やさないという効果がある。
【0040】
また、従来のFIELO法により、GaN層を形成する場合には、サファイア基板を被覆するマスクを形成する必要がある。このようにマスクを使用するため、コストがかかるという問題がある。また、マスクを形成する際には、一般にSiO2膜を形成し、この膜をエッチングにより選択的に除去して開口を形成する。そのため、マスクの形成に手間を要する。
これに対し、本実施形態では、マスクを必要とせず、炭化チタン層を形成すればよいので、コストの低減を図ることができるとともに、マスクを形成するためエッチング等の手間を省くことができる。
また、開口部からGaN層を成長させるためのマスクを形成した場合には、GaN層のうち、マスク直上の領域と、開口部直上の領域とで転位密度にばらつきが生じたりする可能性がある。
これに対し、本実施形態では、マスクを使用しないため、GaN層12の面方向における転位密度のばらつきを抑制することができる。
【0041】
なお、前記実施形態では、炭化チタン層11、GaN層12等を特定の製造条件で製造したが、特に限定する趣旨ではない。すなわち、上記の膜厚、製造条件は単なる例示に過ぎず、形成する半導体層の組成、構造に応じて適宜変更可能である。
【0042】
例えば、炭化チタン層11上に、TiCと、Cとを含有する層(以下、TiC分散C膜)112を形成してもよい。
図4(A)に示すようにサファイア基板10上に前記実施形態の炭化チタン層11と同様の炭化チタン層111を成膜し、次に、図4(B)に示すように炭化チタン層111の上にC/Ti比が1を超える組成を有するTiC分散C膜112を成膜した2層構造とする。
その後、前記実施形態と同様に、炭化チタン層11や、TiC分散C膜112を窒化させる工程を設けることなく、TiC分散C膜112上にGaN層を形成する。図4(C)に示すように、GaN層121を成長させるときに、TiC分散C膜112中のCは窒化ガス中の水素と反応しCH4として気化するためTiC分散C膜112には炭化チタン層111に通じる空隙が発生する。また、TiC分散C膜112の中のTiCは結晶方位がランダムな粒子であり、大気に暴露されたときに酸化皮膜を形成しているためGaN層121の成長は抑制されるので、炭化チタン層111からTiC分散C膜の空隙を通じてGaN層121の選択成長が再現性よく実現できる。
図4(C)に示すように、GaN層121は、結晶核からファセット構造を形成しながら、3次元成長する。
その後、成長条件を調整しながらGaN層121を厚くしてゆくと図5(A)のようにピットPの形成を伴ったGaNの3次元成長が起こる。このとき、ファセット同士が衝突して、結合しながら、成長し、GaN層121は、凹凸のある表面状態となっていく。その後、3次元成長のサファイア基板垂直方向の成長速度を低減させ、3次元成長から、2次元成長に移行させて、GaN層121が完成する。このGaN層121を前記第一のGaN層とし、その上に図5(B)のようにピット形成を抑制した成長条件で成長したGaN層122を第二のGaN層を成長させる。
GaN層122は、2次元成長により、形成される層であり、GaN層122のピット密度は、GaN層121のピット密度よりも少ない。GaN層121、122を形成する際には、不純物ドーピングするが、このとき、ピットに、不純物が取り込まれることとなるので、不純物濃度の異なる第一のGaN層と第二のGaN層を容易に形成することができる。
GaN層121、122を形成したHVPE装置の温度を降温し、前記GaN層121、122を常温まで冷却する間に、GaN層121とGaN層122の界面近傍で亀裂が生じ、図6に示すように、サファイア基板10が除去されることとなる。
なお、GaNの3次元成長、2次元成長は、GaNの成長速度を調整することで、コントロールすることができる。成長速度が速くなることで、3次元成長しやすくなり、この際、ピットが形成されやすくなる。成長速度を遅くすることで、2次元成長しやすくなり、ピット形成は抑制される。
この場合おいても、開口部からGaN層を成長させるためのマスクは使用しない。
【0043】
さらに、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記各実施形態では、下地基板としてサファイア基板10を使用したが、スピネル基板、SiC基板、ZnO基板、シリコン基板、GaAs基板、GaP基板等を用いてもよい。
また、前記実施形態では、炭化物層として炭化チタン層を形成したが、これに限らず、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルであってもよい。
これらの炭化物層は面心立方構造で、窒化後によって結晶構造が変化せず、炭化物および窒化した炭化物の(111)面がIII族窒化物半導体層と格子整合に優れるという共通点を有し、GaN層12のエピタキシャル成長が可能であるという観点から、いずれも炭化チタン層と同様の効果を奏することができる。
【0044】
また、前記実施形態のサファイア基板10を剥離する工程では、サファイア基板10、GaN層12等を冷却することで、サファイア基板10が分離されるとしたが、これに限らず、GaN層12にダメージが加わらない程度の力を加えることで、サファイア基板10を剥離してもよい。
ただし、前記実施形態のように、冷却することにより、ほとんど外力を加えずに、サファイア基板10が分離除去されれば、前記GaN層に加わるダメージを確実に抑制することができる。このため、損傷の少ない高品質のGaN半導体基板が安定的に得られる。
【0045】
このようなIII族窒化物半導体基板上にIII族窒化物系素子構造を作製すれば、上下にアップダウン電極構造を有する発光ダイオードまたはレーザーダイオード等の発光素子を作ることが可能であり、高性能トランジスタ等の電子デバイスへの適用も可能である。III族窒化物半導体基板は、鏡面に研摩し、ドライエッチングまたはケミカルメカニカルポリッシング(CMP)を施した後に発光ダイオードまたはレーザーダイオード等の発光素子、さらにはトランジスタ等の電子デバイスを作製するのが最良である。また、III族窒化物半導体基板を種結晶として、HVPE法、フラックス法、アモノサーマル法などにより高品質GaN結晶を成長させることが可能である。
【0046】
さらに、前記実施形態では、炭化物層をスパッタリングにより成膜したがこれに限らず、他の方法にて成膜してもよい。
たとえば、真空蒸着により炭化物層を成膜してもよい。さらには、たとえば、下地基板を加熱しながら、金属膜と、カーボン膜とを重ねて成膜することで炭化物層を形成してもよい。また、金属塩化物と炭化水素を原料に用いてCVD(Chemical Vapor Deposition)で成膜することも可能である。
【実施例】
【0047】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
前記実施形態と同様の方法でGaN半導体基板を製造した。なお、基板としては、サファイア基板を使用した。
(炭化物層を形成する工程)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Ti
膜厚 :120nm
【0048】
(GaN層を形成する工程)
(第一のGaN層)
第一のGaN層は、GaNバッファ層と高温成長層とから構成した。第一のGaN層は、アンドープである。
(GaNバッファ層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:970℃
成膜ガス:GaClガス 180cc/min、NH3ガス 3300cc/min(V/III比=10)
厚み:5μm
(高温成長層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 200cc/min、NH3ガス 2000cc/min(V/III比=10)
厚み:70μm
【0049】
(第二のGaN層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 200cc/min、NH3ガス 2000cc/min(V/III比=10)
ドーピング:Siドープ(含有量3000ppmのジクロロシラン(Si2H2Cl2)9cc/minにHCl3cc/minを混合し、HVPE装置に導入する。)
厚み:175μm
【0050】
(第三のGaN層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 200cc/min、NH3ガス 2000cc/min(V/III比=10)
厚み:175μm
第三のGaN層は、アンドープである。
【0051】
(第四のGaN層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 180cc/min、NH3ガス 1800cc/min(V/III比=10)
ドーピング:Siドープ(含有量3000ppmのジクロロシラン(Si2H2Cl2)3cc/minにHCl3cc/minを混合し、HVPE装置に導入する。)
厚み:1100μm
【0052】
(剥離方法)
GaN層を形成したHVPE装置中の温度を降温させて、サファイア基板、炭化物層、GaN層を、常温まで冷却した。
【0053】
(実施例2)
実施例1において、炭化物層の厚みを20nmとした。その他は実施例1と同じにした。
【0054】
(実施例3)
実施例1において、炭化物層の厚みを500nmとした。その他は実施例1と同じにした。
【0055】
(比較例1)
FIELO法により、GaN層を形成した。
具体的には、以下のようにしてGaN層を得た。
下地基板として、(0001)面サファイア基板を用意した。このサファイア基板上に、1.5μmのGaN膜を形成した。
次に、このGaN膜上に、SiO2膜を形成し、フォトリソグラフィー法とウエットエッチングにより開口を有するマスクを形成した。マスクは幅3μmのストライプ状であり、ストライプの延在方向は<11−20>方向とした。また、開口の幅(短辺)は4μmとした。
【0056】
次に、以下のHVPE法により、ファセット構造を成長させた。
具体的には、III族原料にガリウム(Ga)と塩化水素(HCl)の反応生成物である塩化ガリウム(GaCl)を使用し、V族原料にアンモニア(NH3 )ガスを使用した。
サファイア基板をハイドライド成長装置にセットし、水素雰囲気で成長温度1040℃に昇温した。成長温度が安定してから、HCl流量を200cc/毎分で供給し、NH3流量2000cc/毎分で5分供給することで、{1−101}面からなるGaNのファセット構造を成長させた。
さらに、エピタキシャル成長を続け、マスクの表面が一部露出した状態で成長を一旦止めた。そして、エッチャント(10%HF水溶液)により、マスクの除去を行った。
その後、再度、基板を、ハイドライドの成長装置にセットし、水素雰囲気で成長温度1040℃に昇温した。成長温度が安定してから、HCl流量を180cc/毎分、NH3流量1800cc/毎分で300分供給することでGaN層のエピタキシャル成長を行った。GaN層の厚みは1100μmであった。
GaN層を形成したHVPE装置中の温度を降温させて、サファイア基板を含むGaN層を、常温まで冷却した。
【0057】
(実施例1〜3、および比較例1の結果)
実施例1〜3では、HVPE装置での冷却中にGaN層中で亀裂が生じ、サファイア基板と、GaN層とが分離された。
また、比較例1では、HVPE装置での冷却中にサファイア基板と、GaN層とが分離された。
表1に、実施例1〜3、および比較例1の転位密度と曲率半径の結果を示した。
転位密度は、カソードルミネッセンス(CL)法で単位観察面積当たりの暗点数を観察する方法で調べた。日立製作所製走査型電子顕微鏡S-3000Nに取り付けた堀場製作所製カソードルミネッセンス測定システムMP-10を使用し、電子線を照射したGaN層から発せられる362nmの発光像から10μm四方に存在する暗点数を調べ、その暗点密度を転位密度(cm−2)とした。
また、曲率半径は、4軸X線回折装置(フィリップス製X'Pert MRD)を使用し測定した。GaN結晶のc面において中心と、中心から20mm離れた位置でチルト角(c軸の傾き)の変化を計測し、曲率半径を算出した。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1〜3で得られたGaN層の転位密度は、7×106cm−2以下であり、曲率半径は8m以上を示した。それに対し比較例1で得られたGaN層の転位密度は1×107cm−2、曲率半径は2mであった。
【0060】
(実施例4)
実施例1において、炭化チタンを炭化ジルコニウムに変更した。
その他は、実施例1と同じにした。
炭化ジルコニウム層の形成条件は、以下の通りである。
(炭化物層を形成する工程)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Zr
膜厚 :120nm
【0061】
(実施例5)
実施例1において、炭化チタンを炭化ハフニウムに変更した。
その他は、実施例1と同じにした。
炭化ハフニウム層の形成条件は、以下の通りである。
(炭化物層を形成する工程)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Hf
膜厚 :120nm
【0062】
(実施例6)
実施例1において、炭化チタンを炭化バナジウムに変更した。
その他は、実施例1と同じにした。
炭化バナジウム層の形成条件は、以下の通りである。
(炭化物層を形成する工程)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:V
膜厚 :120nm
【0063】
(実施例7)
実施例1において、炭化チタンを炭化タンタルに変更した。
その他は、実施例1と同じにした。
炭化タンタル層の形成条件は、以下の通りである。
(炭化物層を形成する工程)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Ta
膜厚 :120nm
【0064】
(実施例4〜7の結果)
実施例4〜7では、HVPE装置での冷却中にGaN層中で亀裂が生じ、サファイア基板と、GaN層とが分離された。
表2に、実施例4〜7の転位密度と曲率半径の結果を実施例1を含めて示した。転位密度、曲率半径の測定方法は、前述したものと同じである。
【0065】
【表2】
【0066】
実施例4〜7、実施例1で得られたGaN層の転位密度は、8×106cm−2以下であり、曲率半径は8m以上を示した。
【0067】
(実施例8)
図4〜6に示した方法で、GaN層を得た。
下地基板としては、厚さ550μmの3インチφのサファイア(Al2O3)基板10を使用した。
次に、このサファイア基板10上に炭化チタン層11を形成した。
炭化チタン層11の成膜条件は、以下のようにした。
【0068】
(炭化物層を形成する工程)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Ti
膜厚 :120nm
【0069】
(GaN層121を形成する工程)
(第一のGaN層)
第一のGaN層は、GaNバッファ層(3次元成長)、3次元成長初期層および3次元成長制御層とから構成した。
(GaNバッファ層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:970℃
成膜ガス:GaClガス 180cc/min、NH3ガス 3300cc/min(V/III比=10)
厚み:5μm
(3次元初期層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 80cc/min、NH3ガス 2400cc/min(V/III比=10)
厚み:10μm
3次元初期層は、ファセットを形成しながら、3次元成長した。
(3次元成長制御層)
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 180cc/min、NH3ガス 1800cc/min(V/III比=10)
厚み:250μm
この3時点成長抑制層は、3次元成長を止めるために設けられた層であり、結晶の成長は、3次元成長から2次元成長に移行した。
【0070】
(第二のGaN層122)
第二のGaN層は、2次元成長により成長させたものであり、3次元成長を抑制し、平坦な成長(基板水平方向に沿った成長が優先的に行われる成長)となるような条件で成長を実施した。第一のGaN層のピット密度は32個/cm2であったのに対し、第二のGaN層では2個/cm2まで減少した。ピット密度は顕微鏡により測定した。
成膜方法:HVPE(hydride vapor phase epitaxy)法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:GaClガス 180cc/min、NH3ガス 1800cc/min(V/III比=10)
ドーピング:Siドープ(含有量3000ppmのジクロロシラン(Si2H2Cl2)3cc/minにHCl3cc/minを混合し、HVPE装置に導入した。)
厚み:1100μm
【0071】
(剥離方法)
GaN層を形成したHVPE装置中の温度を降温させて、サファイア基板、炭化物層、GaN層を、常温まで冷却した。
【0072】
(実施例9)
実施例8において、炭化物層上にTiC分散C膜を形成した。その他は、実施例8と同じにした。なお、第一のGaN層のピット密度は50個/cm2であったのに対し、第二のGaN層では9個/cm2まで減少した。ピット密度は顕微鏡より測定した。
【0073】
(炭化物層)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:1.9sccm
ターゲット:Ti
膜厚 :120nm
膜質 :TiC
【0074】
(TiC含有C膜)
成膜方法:反応性スパッタリング
成膜温度:800℃
圧力:0.4Pa
スパッタガス:Arガス
反応性ガス:CH4
反応性ガス流量:7.4sccm
ターゲット:Ti
膜厚 :20nm
膜質 :TiC分散C膜
【0075】
(実施例8〜9の結果)
実施例8〜9では、HVPE装置での冷却中にGaN層中で亀裂が生じ、サファイア基板と、GaN層とが分離された。
表3に、実施例8〜9の転位密度と曲率半径の結果を示した。転位密度、曲率半径の測定方法は、前述したものと同じである。
【0076】
【表3】
【0077】
実施例8〜9で得られたGaN層の転位密度は、5×106cm−2以下であり、曲率半径は10m以上を示した。
図7は、実施例9で剥離したGaN層とGaN層が残留したサファイア基板の写真である。サファイア基板に残留したGaN層はTiC層の色調を受け、黒色を示している。
図8は、実施例9の剥離したGaN層とサファイア基板側に残留したGaN層の断面の蛍光顕微鏡写真である。サファイア基板側に残留したGaN層は暗領域で示されるようにピット形成による3次元成長で占められており、剥離したGaN層は暗領域の末端部を含む状態で亀裂が入り、剥離に至ったと判断される。
【0078】
表4は、図8に示されるサファイア基板側に残留したGaN層の暗領域(3次元成長部分)と剥離したGaN層の明領域(平坦成長(2次元成長)部分)のSiおよびOのSIMS分析結果を示す。SIMS分析は、所定の部分の深さ3μmで測定した。
【0079】
【表4】
【0080】
剥離したGaN層は、OおよびSiがバックグランドレベルでそれぞれ1×1016cm―3および1×1017cm―3であったのに対し、サファイア基板側に残留したGaN層では、Oが4×1018cm―3のように高濃度で検出された。Oは、HVPE装置内部の石英構造部材や原料ガス中に含まれる酸素が発生源であると考えられる。
また、第一のGaN層中のピット密度は、第二のGaN層中のピット密度よりも高い。
【0081】
表5には、実施例9のサファイア基板側に残留したGaN層と剥離したGaN層の弾性率及びダイナミック硬さを示した。
また、サファイア基板側に残留したGaN層の弾性率およびダイナミック硬さは、図8の暗領域で示される3次元成長部分を測定した値である。剥離したGaN層の弾性率およびダイナミック硬さは、図8の明領域で示される平坦成長部分を測定した値である。
弾性率及びダイナミック硬さは、島津製作所製ダイナミック微小硬度計(DUH−W201)を使用し、115°三角錐の圧子を用いて一定の試験力P(mN)による負荷−除荷試験から求めた。ダイナミック硬さ(DH)はDH=α・P/D2で与えられ、また弾性率(ヤング率E)はE=σ/εで求められる。αは圧子固有の係数で3.8584、Dは圧子の押し込み深さ(μm)、σは単位面積当りの力(Pa)、εは長さの変化の割合を指す。試験条件は、試験力250mN、負荷速度71mN/秒、負荷保持時間2秒とした。
【0082】
【表5】
【0083】
サファイア基板側に残留したGaN層は、剥離したGaN層に比べて弾性率が1/10以下に低下し、ダイナミック硬さは1.6倍増加した。表4からも明らかなようにサファイア基板側に残留したGaN層では、3次元成長部分に不純物としてOがドーピングされたことによって弾性率およびダイナミック硬さが変化し、これら物理的性質の相違がGaN層内で水平方向への亀裂を誘発し、良好な剥離に至ったと推測される。
【0084】
(実施例10)
実施例9において、炭化物層の膜厚を20nmとした。
その他は、実施例9と同じである。
【0085】
(実施例11)
実施例9において、炭化物層の膜厚を40nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0086】
(実施例12)
実施例9において、炭化物層の膜厚を60nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0087】
(実施例13)
実施例9において、炭化物層の膜厚を100nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0088】
(実施例14)
実施例9において、炭化物層の膜厚を150nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0089】
(実施例15)
実施例9において、炭化物層の膜厚を200nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0090】
(実施例16)
実施例9において、炭化物層の膜厚を300nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0091】
(実施例17)
実施例9において、炭化物層の膜厚を500nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0092】
(実施例18)
実施例9において、炭化物層の膜厚を10nmとした。
その他は、実施例9と同じにした。
【0093】
(実施例10〜18の結果)
実施例10〜18では、HVPE装置での冷却中にGaN層中で亀裂が生じ、サファイア基板と、GaN層とが分離された。
図9に、実施例9〜18にかかるTiC層膜厚とGaN層の転位密度の関係を示した。転位密度の測定方法は、前述したとおりである。実施例9〜17のGaN層の転位密度は4×106cm−2以下であるのに対し、実施例18では1.7×107cm−2であった。ただし、曲率半径は、比較例1よりも大きいものとなった。
【0094】
(実施例19)
実施例9において、GaN層膜厚を100〜1500μmの範囲で任意に設定し、GaN層を成長した。
その他は、実施例9と同じにした。
【0095】
(比較例2)
比較例1において、GaN層膜厚を100〜3000μmの範囲で任意に設定し、GaN層を成長した。
その他は、比較例1と同じにした。
【0096】
(実施例19、および比較例2の結果)
実施例19ではGaN層膜厚が950μm以上の場合に、HVPE装置での冷却中にGaN層中で外部から力を加えることなく亀裂が生じ、サファイア基板とGaN層とが分離された。一方で比較例2ではGaN層膜厚が700μm以上の場合に、HVPE装置での冷却中にGaN層中で亀裂が生じ、サファイア基板とGaN層が分離されたが、クラックが入った。
図10には、実施例19にかかるGaN層膜厚と転位密度の関係を比較例2の場合と比較し示した。転位密度の測定方法は、前述したとおりである。実施例19におけるGaN層膜厚が265μm以下では、第一のGaN層のみであるためピットが多数存在したので、ピット間の平坦領域で評価した。実施例19では、GaN層膜厚が薄い段階で、転位密度は低減し、GaN層膜厚の増加に対し転位密度の変化が小さいことがわかる。
【符号の説明】
【0097】
10 下地基板(サファイア基板)
11 炭化チタン層(炭化物層)
111 第一の炭化チタン層
112 第二の炭化チタン層(TiC分散C膜)
12 GaN層(III族窒化物半導体層)
12’GaN層(III族窒化物半導体層)
121 第一のGaN層
122 第二のGaN層
123 第三のGaN層
124 第四のGaN層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地基板上に、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルから選択されるいずれかの炭化物層を形成する工程と、
前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる工程と、
前記炭化物層の前記III族窒化物半導体層側の表面よりも上方の領域であり、前記III族窒化物半導体層中で亀裂を生じさせて、前記下地基板を除去し、前記III族窒化物半導体層を得る工程とを含むIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
III族窒化物半導体層を成長させる前記工程では、
III族窒化物半導体層中に、前記III族窒化物半導体層中で亀裂を生じさせるための亀裂促進層を形成するIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる前記工程では、
前記亀裂促進層となり、不純物を含む第一のIII族窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第一のIII族窒化物半導体層上に前記第一のIII族窒化物半導体層とは、不純物濃度が異なる第二のIII族窒化物半導体層を形成する工程とを含むIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる前記工程は、
不純物がドーピングされていない第一アンドープIII族窒化物半導体層を形成する工程と、
この第一アンドープIII族窒化物半導体層上に不純物をドープしたIII族窒化物半導体層を前記第一のIII族窒化物半導体層として形成する工程と、
不純物をドープした前記III族窒化物半導体層上に、不純物がドーピングされていない第二アンドープIII族窒化物半導体層を前記第二のIII族窒化物半導体層として形成する工程とを含むIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
第一のIII族窒化物半導体層を形成する前記工程は、
ピットを形成しながら、3次元成長によりIII族窒化物半導体層を形成する工程を含み、
第二のIII族窒化物半導体層を形成する前記工程では、前記第一のIII族窒化物半導体層よりもピット密度が低い、第二のIII族窒化物半導体層を2次元成長により形成するIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
前記不純物は、SiまたはOであるIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
前記下地基板上に、開口部からIII族窒化物半導体層を成長させるためのマスクを形成する工程を含まないIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
前記炭化物層は、炭化チタンの層であるIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
前記炭化物層の厚みは、20nm以上、500nm以下であるIII族窒化物半導体層の
製造方法。
【請求項1】
下地基板上に、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルから選択されるいずれかの炭化物層を形成する工程と、
前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる工程と、
前記炭化物層の前記III族窒化物半導体層側の表面よりも上方の領域であり、前記III族窒化物半導体層中で亀裂を生じさせて、前記下地基板を除去し、前記III族窒化物半導体層を得る工程とを含むIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
III族窒化物半導体層を成長させる前記工程では、
III族窒化物半導体層中に、前記III族窒化物半導体層中で亀裂を生じさせるための亀裂促進層を形成するIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる前記工程では、
前記亀裂促進層となり、不純物を含む第一のIII族窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第一のIII族窒化物半導体層上に前記第一のIII族窒化物半導体層とは、不純物濃度が異なる第二のIII族窒化物半導体層を形成する工程とを含むIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層を成長させる前記工程は、
不純物がドーピングされていない第一アンドープIII族窒化物半導体層を形成する工程と、
この第一アンドープIII族窒化物半導体層上に不純物をドープしたIII族窒化物半導体層を前記第一のIII族窒化物半導体層として形成する工程と、
不純物をドープした前記III族窒化物半導体層上に、不純物がドーピングされていない第二アンドープIII族窒化物半導体層を前記第二のIII族窒化物半導体層として形成する工程とを含むIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
第一のIII族窒化物半導体層を形成する前記工程は、
ピットを形成しながら、3次元成長によりIII族窒化物半導体層を形成する工程を含み、
第二のIII族窒化物半導体層を形成する前記工程では、前記第一のIII族窒化物半導体層よりもピット密度が低い、第二のIII族窒化物半導体層を2次元成長により形成するIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
前記不純物は、SiまたはOであるIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
前記下地基板上に、開口部からIII族窒化物半導体層を成長させるためのマスクを形成する工程を含まないIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
前記炭化物層は、炭化チタンの層であるIII族窒化物半導体層の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のIII族窒化物半導体層の製造方法において、
前記炭化物層の厚みは、20nm以上、500nm以下であるIII族窒化物半導体層の
製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−222187(P2010−222187A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71635(P2009−71635)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]