説明

SAWデバイス

【課題】ダムを利用してフィルター部における配置及び配線の自由度を向上させることにより小型化が可能なSAWデバイスを提供すること。
【解決手段】SAWデバイス1は、実装基板20と、導体バンプ14と、実装基板20にフリップチップ実装されたSAWチップ10と、SAWチップ10を被覆する封止樹脂30と、を含み、さらに、金属又は合金で構成され、封止樹脂30の流入を阻止するためのダム15が設けられている。SAWチップ10の圧電基板11には、直列に接続されたSAWフィルター40と50を含むフィルター部12が形成されている。SAWフィルター40、50は、縦結合1次−3次DMSフィルターとして構成され、SAWフィルター40のIDT43の櫛形電極43a及びIDT45の櫛形電極45aと、SAWフィルター50のIDT53の櫛形電極53b及びIDT55の櫛形電極55bとがダム15と配線接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAWデバイス等に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電基板上に形成されたIDT(Interdigital Transducer)により励振される弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を利用した弾性表面波(SAW)フィルターを備えたSAWデバイスは、高周波帯域の周波数フィルターとして携帯電話機やキーレスエントリーシステム等、様々な電子機器やシステムに用いられている。
【0003】
近年、半導体部品においてCSP(Chip Size Package)と呼ばれる小型パッケージング技術が一般化するのに伴って、SAWデバイスにおいても、デバイスの小型化を容易にし、バッチ式の製造方法により生産性を向上させる目的で、CSP技術を用いた生産方法が導入されるようになっている。
【0004】
例えば、SAWフィルターが形成されたSAWチップを実装基板にフェイスダウンでフリップチップ実装し、SAWフィルターの周辺に気密な内部空間が形成されるように、SAWチップの外面を樹脂で封止したSAWデバイスが知られている。これにより、基板に実装したSAWチップの外面が露出しないようにして破損から保護し、耐湿性、気密性に優れた高品質なSAWデバイスが提供される。
【0005】
特許文献1では、このようなSAWデバイスにおいて、基板に実装したSAWチップを封止する樹脂がSAWフィルターの周辺に流入することを防止するために、SAWチップの電極形成面の周縁部に樹脂からなるダムを形成したSAWデバイスが提案されている。さらに、特許文献2に記載されているようにダムの幅を広くして補強を図ったり、特許文献3に記載されているようにダムを吸音材として利用するSAWデバイスも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−229632号公報
【特許文献2】特開2007−324652号公報
【特許文献3】特開2008−42430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来のSAWデバイスでは、SAWチップは図7に示すように構成される。図7は、SAWチップの下面側の概略的な平面図であり、図7においてSAWチップ200の下面には、フィルター部202、接続パッド203A〜203H、ダム205等が形成されている。フィルター部202は、2つの縦結合1次−3次2重モードSAWフィルター(縦結合1次−3次DMS(Double Mode SAW)フィルター)210及び220が直列に接続されて構成されている。すなわち、IDT213の櫛形電極213b及びIDT215の櫛形電極215bがそれぞれIDT223の櫛形電極223a及びIDT225の櫛形電極225aと接続されている。また、IDT214の櫛形電極214a及び214bは、それぞれ接続パッド203A及び203Bに接続されており、接続パッド203A及び203Bにそれぞれ接続された2つの導体バンプ(図示しない)を介して平衡入力信号又は不平衡入力信号が入力される。さらに、IDT224の櫛形電極224a及び224bは、それぞれ接続パッド203C及び203Dに接続されており、接続パッド203C及び203Dにそれぞれ接続された2つの導体バンプ(図示しない)を介して平衡出力信号又は不平衡出力信号を出力する。
【0008】
また、従来のSAWデバイスでは、IDT213の櫛形電極213a及びIDT215の櫛形電極215aは、それぞれ接続パッド203E及び203Fに接続されており、接続パッド203E及び203Fにそれぞれ接続された2つの導体バンプ(図示しない)を介して接地されている。同様に、IDT223の櫛形電極223b及びIDT225の櫛形電極225bは、それぞれ接続パッド203G及び203Hに接続されており、接続パッド203G及び203Hにそれぞれ接続された2つの導体バンプ(図示しない)を介して接地されている。
【0009】
このように、従来のSAWデバイスでは、IDT213の櫛形電極213a及びIDT215の櫛形電極215a、IDT223の櫛形電極223b及びIDT225の櫛形電極225bをすべて同電位とするために接続パッド203E〜203Hを介して接地する必要があった。しかし、ダム205の配置領域を確保する必要があり、また、接続パッドは導体バンプを接続可能なサイズでなければならないため、接続パッドの配置が制限されるとともに接続パッドに接続される配線の自由度も小さくなり、SAWデバイスを小型化することが難しいという問題があった。さらに、マルチバンドのフィルターデバイスのように複数のフィルター部を含むSAWデバイスでは、接続パッドの配置がさらに制限されるため、SAWデバイスの小型化がより難しい。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、ダムを利用してフィルター部における配置及び配線の自由度を向上させることにより小型化が可能なSAWデバイスを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、絶縁基板と、当該絶縁基板の底部に設けられた表面実装用の実装端子と、当該絶縁基板の上部に設けられ前記実装端子と導通した配線パターンと、を備えた実装基板と、導体バンプと、第1のSAWフィルターと第2のSAWフィルターとを直列接続したフィルター部及び前記フィルター部の入力又は出力に接続された接続パッドが形成された圧電基板を備え、前記接続パッドが前記導体バンプを介して前記配線パターンと接続されることにより前記実装基板にフリップチップ実装されたSAWチップと、前記SAWチップと前記実装基板との間に気密空間が形成されるように前記SAWチップの外面を被覆する封止樹脂と、を含むSAWデバイスであって、前記SAWチップの外周には、金属又は合金で構成され、前記SAWフィルターの周辺への前記封止樹脂の流入を阻止するためのダムが設けられ、前記フィルター部は、前記第1のSAWフィルター及び前記第2のSAWフィルターは、前記接続パッドに接続された第1のIDTと、当該第1のIDTの両側に近接して配置された第2のIDT及び第3のIDTと、前記第1のIDT、前記第2のIDT及び前記第3のIDTを挟むように前記第2のIDT及び前記第3のIDTの隣に近接してそれぞれ配置された2つの反射器とを含み、前記第1のIDT、前記第2のIDT及び前記第3のIDTの間の音響結合によって生じる1次と3次の振動モードを利用する縦結合1次−3次2重モードSAWフィルターとして構成され、前記第1のSAWフィルターの前記第2のIDTの一方の櫛形電極と前記第2のSAWフィルターの前記第2のIDTの一方の櫛形電極とが配線接続されるとともに、前記第1のSAWフィルターの前記第3のIDTの一方の櫛形電極と前記第2のSAWフィルターの前記第3のIDTの一方の櫛形電極とが配線接続され、前記第1のSAWフィルターの前記第2のIDTの他方の櫛形電極及び前記第3のIDTの他方の櫛形電極と、前記第2のSAWフィルターの前記第2のIDTの他方の櫛形電極及び前記第3のIDTの他方の櫛形電極とが前記ダムと配線接続されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のSAWデバイスでは、封止樹脂の流入を阻止するためのダムを低抵抗な配線としても利用し、第1のSAWフィルター及び第2のSAWフィルターの両側IDT(第2のIDTと第3のIDT)の基準電位をすべて同電位とすることにより、フィルター部がフィルターとして機能できるようにしている。すなわち、本発明のSAWデバイスでは、従来と異なり、第1のSAWフィルター及び第2のSAWフィルターの両側IDTに接地用の導体バンプを直接接続する必要がないため、この接地用の導体バンプを接続する接続パッドの配置領域を確保する必要がない。従って、本発明によれば、フィルター部の配置及び配線の自由度を向上させることができ、SAWデバイスを小型化することができる。
【0013】
(2)このSAWデバイスにおいて、前記ダムは、前記導体バンプのいずれにも接続されていないように構成されていてもよい。
【0014】
本発明のSAWデバイスでは、ダムは、金属又は合金で構成されており、かつ、封止樹脂の流入を阻止するのに十分な厚みがあるので、抵抗値が十分小さい。従って、SAWフィルターの特性要求が厳しくなければ、フローティングにしたダムの電位をSAWフィルターの基準電位とすることが可能であり、そのためダムを接地するための導体バンプが不要である。従って、本発明によれば、SAWデバイスを小型化することができる。
【0015】
(3)このSAWデバイスにおいて、前記ダムは、少なくとも1つの前記導体バンプを介して接地されているように構成されていてもよい。
【0016】
本発明によれば、ダムを接地することによりダムの電位を安定させることができるので、ダムをフローティングする場合と比較してより良好なフィルター特性を実現することができる。
【0017】
(4)このSAWデバイスは、複数の前記フィルター部を含むように構成されていてもよい。
【0018】
本発明によれば、複数のフィルター部を含むSAWデバイスにおいても、ダムを配線として利用することにより、第1のSAWフィルター及び第2のSAWフィルターの両側IDTの基準電位をすべて同電位とすることができる。そのため、複数のフィルター部を含むSAWデバイスにおいても、第1のSAWフィルター及び第2のSAWフィルターの両側IDTを接地用の導体バンプと接続するための接続パッドの配置領域を確保する必要がない。従って、本発明によれば、フィルター部の配置及び配線の自由度を向上させることができ、SAWデバイスを小型化することができる。
【0019】
(5)このSAWデバイスにおいて、前記フィルター部は、入力及び出力の少なくとも一方が平衡であるように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態のSAWデバイスの外観斜視図。
【図2】第1実施形態のSAWデバイスの概略断面図。
【図3】SAWチップの下面側の概略平面図。
【図4】第1実施形態の変形例におけるSAWチップの概略平面図。
【図5】第2実施形態におけるSAWチップの概略平面図。
【図6】第2実施形態の変形例におけるSAWチップの概略平面図。
【図7】従来のSAWデバイスにおけるSAWチップの概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のSAWデバイスの外観斜視図であり、図2は、第1実施形態のSAWデバイスの概略断面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、第1実施形態のSAWデバイス1は、SAWチップ10、実装基板20及び封止樹脂30を含んで構成されている。
【0024】
図2に示すように、実装基板20は、絶縁基板21と、絶縁基板21の底部に設けられた表面実装用の実装端子22と、絶縁基板21の上面に設けられ内部配線24を介して実装端子22と導通した配線パターン23と、を備えている。絶縁基板21は、ガラス、樹脂、セラミック、ガラスエポキシ、アルミナ等で構成されている。
【0025】
SAWチップ10は、圧電基板11を備え、圧電基板11の下面にはフィルター部12及びフィルター部12の入力又は出力に接続された接続パッド13が形成されている。圧電基板11は、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ほう酸リチウム(Li2B4O7, LBO)等の単結晶材料や、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)等の圧電性薄膜、圧電性セラミックス材料などで構成されている。
【0026】
そして、接続パッド13が導体バンプ14を介して実装基板20の配線パターン23と接続されることにより、SAWチップ10が実装基板20にフリップチップ実装されている。導体バンプ14は、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属、導電性接着剤、半田等で構成される。
【0027】
封止樹脂30は、SAWチップ10の下面と実装基板20の上面との間の空間を気密化させて気密空間31が形成されるように、SAWチップ10の下面を除いた外面(上面及び側面)を被覆している。気密空間31を形成することにより、SAWフィルター12における弾性表面波の伝搬を確保し、所望のフィルター特性を実現することができる。
【0028】
封止樹脂30は、樹脂シートを一旦軟化温度まで加熱昇温させてから加圧変形させてSAWチップ10の外面と実装基板20の上面に密着させた後で、硬化温度まで加熱昇温させて形状を固定することにより形成される。封止樹脂30により、SAWチップ10の気密性を確保するとともに、実装基板20に対するSAWチップ10の固定力を補強することができる。
【0029】
樹脂封止工程の際にフィルター部12の周辺に封止樹脂30が流入するのを防止するために、SAWチップ10の下面の周縁部にダム15が設けられている。樹脂封止工程の際の加熱と加圧によってダム15が変形しないように、ダム15は金属又は合金から形成されている。また、ダム15は実装基板20に接触しておらず、ダム15の下面と実装基板20との間はギャップGだけ離れている。そのため、ダム15には、実装基板20とSAWチップ15との熱膨張係数の差に起因する応力が発生しないようになっている。
【0030】
フィルター部12の周辺への封止樹脂30の流入量を低減するためにギャップGは狭い方が好ましい。例えば、ダム15の厚みを大きくしたり、ダム15の真下の実装基板20の上面に外周パターンを設けることにより、ギャップGを狭くすることができる。
【0031】
なお、ダム15は実装基板20の上面に設けても良いが、実装基板20を複数個連接した配線基板母材上に、一括して、且つ高い寸法精度で金属又は合金からなるダム15を形成するには、ダムパターンに対応したフォトリソグラフィ技術によるレジストパターンを配線基板母材上に形成する必要がある。高寸法精度であるレジストパターンに対し、配線基板母材上の配線パターンは寸法精度が悪く、配線基板母材全体に渡って精度良く配線パターンとダムパターンを合わせ込むことが困難であり、高密度配線に不向きである。従って、ダム15はSAWチップ10の下面に形成するのが好ましい。
【0032】
図3は、SAWチップ10の一例を示す図であり、SAWチップ10の下面側の概略平面図である。
【0033】
図3に示すように、第1実施形態におけるSAWチップ10は、その下面の周縁部にダム15が形成されており、ダム15に取り囲まれるようにフィルター部12が形成されている。
【0034】
フィルター部12は、2つの縦結合1次−3次DMSフィルター40及び50を含んで構成されている。
【0035】
縦結合1次−3次DMSフィルター40は、圧電基板11の主表面上に形成された、反射器41、IDT43(本発明における「第2のIDT」に相当する)、IDT44(本発明における「第1のIDT」に相当する)、IDT45(本発明における「第3のIDT」に相当する)、反射器42を含んで構成されている。
【0036】
IDT43、IDT44、IDT45は、弾性表面波の伝搬方向に沿って、反射器41と反射器42の間にこの順に近接して配置されている。
【0037】
IDT43は、一定間隔dで形成された複数の電極指を有する櫛状の電極43a、43bが互いに間挿し合うように対向して配置されている。
【0038】
IDT44は、IDT43と同じ一定間隔dで形成された複数の電極指を有する櫛状の電極44a、44bが互いに間挿し合うように対向して配置されている。
【0039】
IDT45は、IDT43と同じ一定間隔dで形成された複数の電極指を有する櫛状の電極45a、45bが互いに間挿し合うように対向して配置されている。
【0040】
反射器41と反射器42は、IDT43、IDT44、IDT45の両側に近接して配置され、一定のグレーティングピッチ(d)で電極が形成されている。
【0041】
同様に、縦結合1次−3次DMSフィルター50は、圧電基板11の主表面上に形成された、反射器51、IDT53、IDT54、IDT55、反射器52を含んで構成されている。これらの配置は、図3に示すように、縦結合1次−3次DMSフィルター40と同じであるため、その説明を省略する。
【0042】
縦結合1次−3次DMSフィルター40において、IDT44の電極44a及び44bはそれぞれ接続パッド13A及び13Bと接続されている。同様に、縦結合1次−3次DMSフィルター50において、IDT54の電極54a及び54bはそれぞれ接続パッド13C及び13Dと接続されている。そして、接続パッド13A、13B、13C、13Dは、図2に示すように、導体バンプ14を介して実装基板20の異なる4つの配線パターン23とそれぞれ接続されている。
【0043】
また、IDT43の電極43bとIDT53の電極53a、IDT45の電極45bとIDT55の電極55aがそれぞれ接続されている。
【0044】
このように、第1実施形態のフィルター部12は、2つの縦結合1次−3次DMSフィルター40及び50が直列に接続されて構成されている。
【0045】
接続パッド13A及び13Bとそれぞれ導通する2つの実装端子22から、f=v/2d(vは弾性表面波が圧電基板11の表面を伝搬する速度)付近の周波数を有する平衡入力信号又は不平衡入力信号が供給されると、IDT44により1波長(λ)が2dに等しい弾性表面波が励起される。そして、IDT44により励起された弾性表面波がIDT43及びIDT45に到達すると、IDT43の電極43b及びIDT45の電極45bにf=v/2d付近の周波数を有する信号が発生する。
【0046】
この信号がIDT53の電極53a及びIDT55の電極55aに供給され、IDT53及び55により1波長(λ)が2dに等しい弾性表面波が励起される。そして、IDT53及び55により励起された弾性表面波がIDT54に到達すると、IDT54の電極54a及54bにf=v/2d付近の周波数を有する平衡出力信号又は不平衡出力信号が発生し、接続パッド13C及び13Dを介して2つの実装端子22から出力される。
【0047】
このようにして、第1実施形態におけるフィルター部12は、中心周波数をf=v/2dとするバンドパスフィルターとして機能することができる。この中心周波数が所望の周波数になるように、縦結合1次−3次DMSフィルター40及び50の電極指ピッチdが決められる。そして、IDT43、44、45の間の音響結合によって生じる1次と3次の振動モードが反射器41と反射器42の間に閉じ込められるとともに、IDT53、54、55の間の音響結合によって生じる1次と3次の振動モードが反射器51と反射器52の間に閉じ込められ、これら2つの振動モードに基づいてフィルター部12の通過帯域が決定される。
【0048】
圧電基板11の材料として温度による周波数シフトが少ないSTカット水晶を使用することにより、例えば、中心周波数が数100MHz、通過帯域幅が数100kHz(すなわち、比帯域(通過帯域幅/中心周波数)が0.1%程度)のバンドパスフィルターを実現することができる。
【0049】
なお、反射効率を高め低損失のフィルターを実現すべく、縦結合1次−3次DMSフィルター40において、反射器41および反射器42のグレーティングピッチdをIDT43、IDT44及びIDT45の電極指ピッチdよりも少しく大きく設定することが望ましい。縦結合1次−3次DMSフィルター50についても同様である。
【0050】
第1実施形態では、IDT43の電極43a及びIDT45の電極45aが接続パッド13のいずれにも接続されておらず、それぞれ配線パターン46及び47を介してダム15と接続されている点に特徴がある。同様に、IDT53の電極53b及びIDT55の電極55bは、接続パッド13のいずれにも接続されておらず、それぞれ配線パターン56及び57を介してダム15と接続されている。
【0051】
ここで、ダム15は、SAWチップ10の下面に形成された接続パッド13や接続パッド13とフィルター部12とを接続する配線等よりも膜厚が厚いので低抵抗な配線として利用することができる。すなわち、第1実施形態では、ダム15を低抵抗な配線として利用することで、IDT43の電極43a及び45a、IDT53の電極53b及び55bの電位(基準電位)をほぼ等しくしている。
【0052】
さらに、ダム15の抵抗値は十分に低く、ダム15自体も接続パッドを介して接地用の導体バンプに接続する必要がないためフローティングになっている。すなわち、IDT43の電極43a及び45a、IDT53の電極53b及び55bは接地されていない。
【0053】
このように、第1実施形態のSAWデバイスでは、従来と異なり、IDT43の電極43a及び45a、IDT53の電極53b及び55bをそれぞれ接地するための導体バンプが不要であり、さらに、ダム15を接地するための導体バンプも不要であるため、これらの導体バンプに接続される接続パッドの配置領域を確保する必要がない。従って、第1実施形態によれば、フィルター部12の配置及び配線の自由度を向上させることができ、SAWデバイスを小型化することができる。
【0054】
図4は、第1実施形態のSAWデバイス1の変形例におけるSAWチップ10の構成を示す図であり、SAWチップ10の下面側の概略平面図である。本変形例において、SAWチップ10以外は図2と同じ構成にすることができるため、その説明を省略する。
【0055】
図4に示す本変形例におけるSAWチップ10では、ダム15の形状を八角形にして、圧電基板11の四隅にダム15が配置されないようにしている。即ち、図3に示したようにダム15を圧電基板11の四隅まで形成した場合、フリップチップ実装時にSAWチップ10が傾いてしまった場合にダム15が実装基板20に当たってしまい、SAWチップ10の実装強度の劣化やSAWチップ10の破損等の不具合が生じる場合がある。特に、SAWチップ10に設けたダム15と実装基板20とのギャップGを小さくするほど、ダム15が実装基板20に当たりやすくなってしまう問題が生じる。このような理由から、圧電基板11のの四隅にダム15が配置されないようにすれば、フリップチップ実装時にSAWチップ10が多少傾いたとしても、ダム15が実装基板20に当たらなくなる。
【0056】
本変形例におけるSAWチップ10のその他の構成は、図3に示した第1実施形態におけるSAWチップ10の構成と同様であるため、同じ符号を付しておりその説明を省略する。
【0057】
このように、本変形例のSAWデバイスによれば、ダム15が圧電基板11の四隅に配置されないようにしたので、SAWチップ10の実装角度を厳密に制御する必要がなくなり、製造効率を高めることができる。なお、図4ではダム15の形状は八角形となっているが、SAWチップ10の四隅にダム15が配置されないようにしてあれば、八角形以上の多角形、円、楕円等の形状であっても良い。また、ダム15の形状が多角形の場合、各頂点の少なくとも一つを円弧により丸めても良い。
【0058】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態のSAWデバイス1におけるSAWチップ10の構成を示す図であり、SAWチップ10の下面側の概略平面図である。第2実施形態において、SAWチップ10以外は図2に示した第1実施形態と同じ構成にすることができるため、その説明を省略する。
【0059】
図5に示すように、第2実施形態におけるSAWチップ10は、3つのフィルター部12A、12B、12Cを含んで構成されており、マルチバンドフィルターとして機能する。
【0060】
フィルター部12Aは、2つの縦結合1次−3次DMSフィルター60及び70が直列に接続されており、接続パッド13A及び13Bとそれぞれ導通した2つの実装端子22を入力端子とし、接続パッド13C及び13Dとそれぞれ導通した2つの実装端子22を出力端子とするバンドパスフィルターとして機能する。縦結合1次−3次DMSフィルター60は、反射器61、IDT63、IDT64、IDT65、反射器62を含んで構成されており、縦結合1次−3次DMSフィルター70は、反射器71、IDT73、IDT74、IDT75、反射器72を含んで構成されている。
【0061】
同様に、フィルター部12Bは、2つの縦結合1次−3次DMSフィルター80及び90が直列に接続されており、接続パッド13E及び13Fとそれぞれ導通した2つの実装端子22を入力端子とし、接続パッド13G及び13Hとそれぞれ導通した2つの実装端子22を出力端子とするバンドパスフィルターとして機能する。縦結合1次−3次DMSフィルター80は、反射器81、IDT83、IDT84、IDT85、反射器82を含んで構成されており、縦結合1次−3次DMSフィルター90は、反射器91、IDT93、IDT94、IDT95、反射器92を含んで構成されている。
【0062】
同様に、フィルター部12Cは、2つの縦結合1次−3次DMSフィルター100及び110が直列に接続されており、接続パッド13I及び13Jとそれぞれ導通した2つの実装端子22を入力端子とし、接続パッド13K及び13Lとそれぞれ導通した2つの実装端子22を出力端子とするバンドパスフィルターとして機能する。縦結合1次−3次DMSフィルター100は、反射器101、IDT103、IDT104、IDT105、反射器102を含んで構成されており、縦結合1次−3次DMSフィルター110は、反射器111、IDT113、IDT114、IDT115、反射器112を含んで構成されている。
【0063】
入力あるいは出力が不平衡信号に限定される場合は基準電位に接続される実装端子22はお互いに接続し共通化することが可能であり、複数の1次−3次DMSフィルターを含む構成であっても互いのフィルターの間で実装端子22を共通化して端子の数を少なくすることができる。
【0064】
フィルター部12A、12B、12Cの具体的な構成は、図3に示したフィルター部12の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0065】
第1実施形態と同じく第2実施形態においても、フィルター部12Aにおいて、IDT63の電極63a及びIDT65の電極65aが接続パッド13のいずれにも接続されておらず、それぞれ配線パターン66及び67を介してダム15と接続されている。また、IDT73の電極73b及びIDT75の電極75bは、接続パッド13のいずれにも接続されておらず、それぞれ配線パターン76及び77を介してダム15と接続されている。
【0066】
同様に、フィルター部12Bにおいて、IDT83の電極83a及びIDT85の電極85aが接続パッド13のいずれにも接続されておらず、それぞれ配線パターン86及び87を介してダム15と接続されている。また、IDT93の電極93b及びIDT95の電極95bは、接続パッド13のいずれにも接続されておらず、それぞれ配線パターン96及び97を介してダム15と接続されている。
【0067】
同様に、フィルター部12Cにおいて、IDT103の電極103a及びIDT105の電極105aが接続パッド13のいずれにも接続されておらず、それぞれ配線パターン106及び107を介してダム15と接続されている。また、IDT113の電極113b及びIDT115の電極115bは、接続パッド13のいずれにも接続されておらず、それぞれ配線パターン116及び117を介してダム15と接続されている。
【0068】
このように、第1実施形態と同じく第2実施形態においても、従来は必要であった接地用の導体バンプと接続する接続パッドの配置領域を確保する必要がなく、フィルター部12A、12B、12Cの配置及び配線の自由度を向上させることができる。例えば、図5に示すように、フィルター部12A、12B、12Cの間隔を非常に狭く配置することにより、SAWチップ10をより小型化することができる。
【0069】
図6は、第2実施形態のSAWデバイス1の変形例におけるSAWチップ10の構成を示す図であり、SAWチップ10の下面側の概略平面図である。本変形例において、SAWチップ10以外は第2実施形態と同じ構成にすることができるため、その説明を省略する。
【0070】
図4に示した第1実施形態の変形例におけるSAWチップ10と同じく図6に示す本変形例におけるSAWチップ10では、ダム15の形状を八角形にして、圧電基板11の四隅にダム15が配置されないようにしており、フリップチップ実装時にSAWチップ10が多少傾いたとしても、ダム15が実装基板20に当たらなくなる。
【0071】
本変形例におけるSAWチップ10のその他の構成は、図5に示した第2実施形態におけるSAWチップ10の構成と同様であるため、同じ符号を付しておりその説明を省略する。
【0072】
このように、本変形例のSAWデバイスによれば、ダム15が圧電基板11の四隅に配置されないようにしたので、SAWチップ10の実装角度を厳密に制御する必要がなくなり、製造効率を高めることができる。なお、図6ではダム15の形状は八角形となっているが、SAWチップ10の四隅にダム15が配置されないようにしてあれば、八角形以上の多角形、円、楕円等の形状であっても良い。また、ダム15の形状が多角形の場合、各頂点の少なくとも一つを円弧により丸めても良い。
【0073】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0074】
例えば、図3〜図6に示したSAWチップ10では、ダム15は接続パッドを介して導体バンプのいずれにも接続されておらずフローティングになっているが、接地用の少なくとも1つの導体バンプを設けて、ダム15を接続パッドを介してこの導体バンプに接続するようにしてもよい。このようにすれば、接地用の接続パッドを配置するための領域とダム15とこの接続パッドを接続する配線領域が必要になるためSAWチップ10のサイズが少しだけ大きくなる場合もあるが、ダム15の電位を安定させることができるのでより良好なフィルター特性を実現することができる。
【0075】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0076】
1 SAWデバイス、10 SAWチップ、11 圧電基板、12 フィルター部、12A〜12C フィルター部、13 接続パッド、13A〜13L 接続パッド、14 導体バンプ、15 ダム、20 実装基板、21 絶縁基板、22 実装端子、23 配線パターン、24 内部配線、30 封止樹脂、31 気密空間、40 縦結合1次−3次DMSフィルター、41〜42 反射器、43〜45 IDT、46〜47 配線パターン、50 縦結合1次−3次DMSフィルター、51〜52 反射器、53〜55 IDT、56〜57 配線パターン、60 縦結合1次−3次DMSフィルター、61〜62 反射器、63〜65 IDT、66〜67 配線パターン、70 縦結合1次−3次DMSフィルター、71〜72 反射器、73〜75 IDT、76〜77 配線パターン、80 縦結合1次−3次DMSフィルター、81〜82 反射器、83〜85 IDT、86〜87 配線パターン、90 縦結合1次−3次DMSフィルター、91〜92 反射器、93〜95 IDT、96〜97 配線パターン、100 縦結合1次−3次DMSフィルター、101〜102 反射器、103〜105 IDT、106〜107 配線パターン、110 縦結合1次−3次DMSフィルター、111〜112 反射器、113〜115 IDT、116〜117 配線パターン、200 SAWチップ、202 フィルター部、203A〜203H 接続パッド、205 ダム、210 縦結合1次−3次DMSフィルター、213〜215 IDT、220 縦結合1次−3次DMSフィルター、223〜225 IDT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、当該絶縁基板の底部に設けられた表面実装用の実装端子と、当該絶縁基板の上部に設けられ前記実装端子と導通した配線パターンと、を備えた実装基板と、
導体バンプと、
第1のSAWフィルターと第2のSAWフィルターとを直列接続したフィルター部及び前記フィルター部の入力又は出力に接続された接続パッドが形成された圧電基板を備え、前記接続パッドが前記導体バンプを介して前記配線パターンと接続されることにより前記実装基板にフリップチップ実装されたSAWチップと、
前記SAWチップと前記実装基板との間に気密空間が形成されるように前記SAWチップの外面を被覆する封止樹脂と、を含むSAWデバイスであって、
前記SAWチップの外周には、金属又は合金で構成され、前記SAWフィルターの周辺への前記封止樹脂の流入を阻止するためのダムが設けられ、
前記フィルター部は、
前記第1のSAWフィルター及び前記第2のSAWフィルターは、前記接続パッドに接続された第1のIDTと、当該第1のIDTの両側に近接して配置された第2のIDT及び第3のIDTと、前記第1のIDT、前記第2のIDT及び前記第3のIDTを挟むように前記第2のIDT及び前記第3のIDTの隣に近接してそれぞれ配置された2つの反射器とを含み、前記第1のIDT、前記第2のIDT及び前記第3のIDTの間の音響結合によって生じる1次と3次の振動モードを利用する縦結合1次−3次2重モードSAWフィルターとして構成され、前記第1のSAWフィルターの前記第2のIDTの一方の櫛形電極と前記第2のSAWフィルターの前記第2のIDTの一方の櫛形電極とが配線接続されるとともに、前記第1のSAWフィルターの前記第3のIDTの一方の櫛形電極と前記第2のSAWフィルターの前記第3のIDTの一方の櫛形電極とが配線接続され、前記第1のSAWフィルターの前記第2のIDTの他方の櫛形電極及び前記第3のIDTの他方の櫛形電極と、前記第2のSAWフィルターの前記第2のIDTの他方の櫛形電極及び前記第3のIDTの他方の櫛形電極とが前記ダムと配線接続されていることを特徴とするSAWデバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記ダムは、
前記導体バンプのいずれにも接続されていないことを特徴とするSAWデバイス。
【請求項3】
請求項1において、
前記ダムは、
少なくとも1つの前記導体バンプを介して接地されていることを特徴とするSAWデバイス。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
複数の前記フィルター部を含むことを特徴とするSAWデバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記フィルター部は、
入力及び出力の少なくとも一方が平衡であることを特徴とするSAWデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−245739(P2010−245739A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90949(P2009−90949)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】