説明

SBW車両の制御方法

【課題】運転者が意図したエンジンオフ操作はもちろん不注意や非常事態によってエンジンオフ操作をする場合にも、急停車等のように車両の走行に障害をもたらしたり変速機の部品に損傷等が発生したりしないようにし、常に安定したP段転換がなされ、車両の出発時の急発進状況を防止するSBW車両の制御方法を提供する。
【解決手段】車両のエンジンオフ操作がなされると、現在の車速が0であるかを判断する車速判断段階と、現在の車速が0でない場合、エンジンオフ操作以前の変速段を維持する変速段維持段階と、変速段維持段階以後に制動装置を作動させて車速を減少させる減速段階と、減速段階以後の車の停車時にP段に転換するパーキングロック段階、とを含んで構成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SBW車両の制御方法に係り、より詳しくは、SBW(SHIFT BY WIRE)システムが搭載された車両で、運転者のP段操作によるSBW車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SBWシステムは、従来のケーブルによる機械的な変位の伝達なしに、運転者の変速操作を電気的な信号に変換して変速機に提供することにより、変速機が制御されるシステムである。
したがって、SBWシステムが搭載された車両では、運転者が変速操作装置でP−R−N−D段を選択すると電気的な信号のみが変速機に伝達されて相応する変速操作がなされ、運転者が駐車のためにP段を選択すると、変速機に設置されたモーターが駆動されてパーキングスプラグが作動し、変速機内部のギアを拘束するようになる(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
図1は、従来の技術によるSBW車両の制御方法を例示したフロー図であり、SBW車両で運転者がP段を選択する変速操作をした場合の処理方法を図示したものである。運転者がP段以外の段でも車両のエンジンをOFFすると、自動的にP段転換がなされ、エンジンが停止する。
このようなP段制御方法は、車両を正常に停車させた後に運転者がエンジンをオフさせる場合には(S500)、自動的にP段が設定されるため(S502)、より安定的な駐車状態の確保を可能にし、また、車両の再始動時の急発進を防止する等の長所があるが、反面、運転者が車両を走行する途中で不注意や非常事態によってエンジンオフの操作がなされた場合、運転者の意図と関係なしに車両の走行中にP段転換がなされる。このため、変速機の内部部品が損傷したり、車両が急停車する等の危険性を内包している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−271917号公報
【特許文献2】特開2005−008007号公報
【特許文献3】特開2007−154964号公報
【特許文献4】特開2008−051255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、運転者が意図したエンジンオフ操作はもちろん不注意や非常事態によってエンジンオフ操作をした場合にも、急停車等の車両の走行に支障をもたらしたり変速機の部品に損傷等が発生したりしないようにし、常に安定したP段転換がなされ、車両の出発時の急発進状況を防止するSBW車両の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するためになされた本発明のSBW車両の制御方法は、車両のエンジンオフ操作がなされると、現在の車速が0であるかを判断する車速判断段階と、現在の車速が0でない場合、エンジンオフ操作以前の変速段を維持する変速段維持段階と、変速段維持段階以後に制動装置を作動させて車速を減少させる減速段階と、減速段階以後の車の停車時にP段へ転換するパーキングロック段階と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明によるSBW車両の制御方法は、SBW車両で運転者によるエンジンオフ操作が入力されると、P段への転換以前に現在の車速を判断する車速判断段階を先行して遂行し、その結果によって直ちにP段転換をするか、または減速後にP段転換するかを判断して制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、運転者が意図したエンジンオフ操作はもちろん不注意や非常事態によってエンジンオフ操作をした場合にも、急停車することなく、徐々に減速し、円滑な車両の停車が可能であり、また、変速機の部品に損傷等が発生しないようにする効果を有する。また、常に安定したP段転換がなされ、車両の出発時の急発進状況を防止することができるため、車両の走行中や発進時の安全を確保できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来の技術によるSBW車両の制御方法を例示したフロー図である。
【図2】本発明によるSBW車両の制御方法を例示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図2は、本発明によるSBW車両の制御方法を例示したフロー図である。
図2を参照して本発明の実施例を説明する。本発明のSBW車両の制御方法は、車両のエンジンオフ操作がなされると、現在の車速が0であるかを判断する車速判断段階S10と、現在の車速が0でない場合、エンジンオフ操作以前の変速段を維持する変速段維持段階S20と、変速段維持段階S20以後、制動装置を作動させて車速を減少させる減速段階S30と、減速段階S30以後、車両が停車したらP段へ転換するパーキングロック段階S40とを含んで構成される。
すなわち、SBW搭載車両で運転者によるエンジンオフ操作が入力されると、P段への転換以前に現在の車速を判断する車速判断段階S10を先行して遂行し、その結果によって直ちにP段転換をするか、または減速後にP段転換をするかを判断して制御する。車速判断段階S10の遂行の結果、車速が所定の基準車速以上であり、車両の停車状態ではないと判断された場合には、エンジンオフ操作以前の変速段を維持した状態でまず減速を遂行し、減速以後に車速が基準車速未満であり、車両が停車できる状態であると判断された場合にP段転換を遂行する。
【0011】
上記制御により、車両が走行中の場合に運転者が意図しないP段転換が防止されるようになり、変速機の部品が損傷したり車が急停車する等の危険を防止することができる。
ちなみに、所定の基準車速は車両が停車した状態とみることができるP段転換が可能な車速として設定される。所定の基準車速は、例えば0〜2km/hの速度に設定される。
もちろん、車速判断段階S10の遂行結果、現在の車速が0の停車状態であると判断されると自動的にP段へ転換する駐車段階S50を遂行する。このため、P段でエンジンオフをしなくても車を再び始動する時には必ずP段状態が確保されており、再始動時のP段以外からの急発進等を防止し、安全性を確保する。
一方、パーキングロック段階S40を遂行した以後には、車両の減速に使用された制動装置を解除して制御を終了する処理終了段階S60を遂行する。
【0012】
以上のように本発明によるSBW車両の制御方法を使用すると、車両の停車時にはいずれの変速段でエンジンオフ操作があっても自動的にP段転換がなされて、車両の再始動時の急発進が防止される等安全性の確保がなされるのはもちろん、車両の走行時にエンジンオフ操作があった場合には、まず現在の変速段を維持した状態で車速を自動的に減速させてP段転換が可能な停車状態にした後に、P段へ自動転換されるようにすることにより、車両の走行中の突然の停車や変速機部品の破損等を防止し、円滑な車両の停車及び駐車状態の確保を可能にして車両の安全性を確実なものとする。
【0013】
以上、本発明を好ましい実施例を使って詳しく説明したが、本発明の範囲は特定の実施例に限定されるのではなく、特許請求の範囲によって解釈されなければならない。また、この技術分野で通常の知識を習得した者なら、本発明の技術的範囲内で多くの修正と変形ができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0014】
S10; 車速判断段階
S20; 変速段維持段階
S30; 減速段階
S40; パーキングロック段階
S50; 駐車段階
S60; 処理終了段階
S500; 運転者がエンジンをオフさせる段階
S502; 自動的にP段が設定される段階



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンオフ操作がなされると、現在の車速が0であるかを判断する車速判断段階と、
現在の車速が0でない場合、エンジンオフ操作以前の変速段を維持する変速段維持段階と、
前記変速段維持段階以後に制動装置を作動させて車速を減少させる減速段階と、
前記減速段階以後の車両停車時にP段へ転換するパーキングロック段階と、
を含んで構成されたことを特徴とするSBW車両の制御方法。
【請求項2】
前記車速判断段階の遂行結果、現在の車速が0で停車状態であることが判断されると自動的にP段へ転換する駐車段階、
をさらに含んで構成されたことを特徴とする請求項1に記載のSBW車両の制御方法。
【請求項3】
前記パーキングロック段階遂行以後には、前記制動装置を解除して制御を終了する処理終了段階をさらに含んで構成されたことを特徴とする請求項1に記載のSBW車両の制御方法。
【請求項4】
SBW車両で運転者によるエンジンオフ操作が入力されると、P段への転換以前に現在の車速を判断する車速判断段階を先行して遂行し、その結果によって直ちにP段転換をするか、または減速後にP段転換をするかを判断して制御することを特徴とするSBW車両の制御方法。
【請求項5】
前記車速判断段階の遂行結果、車速が所定の基準車速以上で車両が停車状態ではないと判断される場合、前記エンジンオフ操作以前の変速段を維持した状態で減速を遂行し、減速以後に、車速が前記基準車速未満で車両の停車状態と判断される場合にP段転換を遂行することを特徴とする請求項4に記載のSBW車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−107616(P2013−107616A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−69767(P2012−69767)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】