説明

TPモジュレーターの、アスピリン感受性集団および他の集団における心血管障害の治療のための使用

本発明は、COX-1酵素阻害剤での療法が阻害剤に対する感受性、不耐性または抵抗性のため使用できない個体において心血管障害の治療または予防に有用な方法および組成物を提供する。加えて、本発明は、治療上有効用量のTPモジュレーターを受けており、アスピリンまたはもう1つのCOX-1阻害剤を回避し、および/または摂取しないように指示され、またはアドバイスされている個体において心血管障害を治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2007年5月3日に出願された米国仮特許出願第60/915,784号、2007年5月3日に出願された米国仮特許出願第60/915,785号、2007年6月29日に出願された米国仮特許出願第60/947,316号および2007年6月29日に出願された米国仮特許出願第60/947,289号の35U.S.C.第119条(e)下の利益を主張し、ここに、これらの(4つの)仮出願をここに引用してその全体を援用する。
【0002】
本発明は、トロンボキサン受容体阻害剤のような抗血栓剤を用い、アスピリン感受性集団および他の集団における血栓症および他の心血管病、および障害を治療し、または予防する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
動脈血栓症は急性心筋梗塞および血栓性発作を引き起こし、西欧諸国における罹患率および死亡率の主な原因である。動脈血栓症における血小板の役割はよく確立されており、というのは、動脈血栓は主として血小板から構成され、抗血小板薬物は急性心筋梗塞および血栓性発作の発生率を低下させるのに有効だからである。血小板は動脈血栓症の形成においてのみならず、アテローム性動脈硬化症それ自体の進行においても中枢的な役割を演じる。アテローム性動脈硬化症の進行における血小板の関与は、アテローム性動脈硬化症病は炎症に対する応答であり、血小板血栓から放出される炎症メディエーター(例えば、sCD40L、RANTES、TGFα、PF4、PDGF)はアテローム性動脈硬化症病巣の発生に対する強力な寄与体であるという認識から展開されたより最近の知見である(Huo Y.らの文献、Nat Med 9:61-67(2003); Massberg S.らの文献、J. Exp. Med. 196:887-896(2002); Burger P.C.らの文献、Blood 101:2661-2666(2003)を参照されたい)。
【0004】
血小板血栓症の原因であるメカニズムは特定されている。動脈剪断速度下での血小板の接着は、主として、コラーゲンによって媒介され、これは血漿からフォン・ヴィレブランド因子を動員し、これは、今度は、血小板膜GP Ib-V-IXによって認識され、血管損傷の部位において血小板の動員を誘起する。また、血小板は血小板上の2つのコラーゲン受容体、インテグリンαβ、および免疫グロブリン−含有コラーゲン受容体GP VIを介してコラーゲンに直接結合する。血小板の活性化は、最初に、一次アゴニスト、血小板接着の間のコラーゲン、およびトロンビン、血管病巣の部位に露出された組織因子(TF)に応答して発生するプロテアーゼによって、また、異なるリガンド(例えば、フィブリノーゲン、vWF、およびCD40L)によるGP IIb-IIIaの係合によって媒介される。加えて、活性化された血小板に放出されたいくつかの二次アゴニストは、オートクリンループで機能して血小板の活性化を増強させる。1つは一次血小板アゴニストに応答してのリン脂質からのアラキドン酸の放出によって開始されるプロスタノイド経路の産物であるトロンボキサンA2 (TXA2)である。放出されたアラキドネートは、続いて、血小板酵素であるCOX-1によって修飾され、広く分布したトロンボキサンシンターゼに対する基質であるプロスタグランジンH2 (PGH2)を生じ、これはトロンボキサンA2 (TXA2)を生じる。双方の産物PGH2およびTXA2は、TPとしても知られた TXA2受容体への結合によって血小板活性化を誘導する効力のある血小板アゴニストである。もう1つの二次アゴニストはアデノシン二リン酸(ADP)であり、これは血小板の活性化に際して血小板濃染顆粒から放出される。ADPは2つのG-プロテインカップルド受容体P2Y1およびP2Y12に結合する。さらなる二次メディエーターはGas6およびCD40Lを誘導する。
【0005】
心血管病に罹った患者での血小板機能の調節で用いる一次抗血小板薬物はアスピリンである。アスピリンの広範な使用は、有害な事象の20ないし25%低下を示す数百の無作為臨床試験に基づく(BMJ 324:71-86(2002))。最初の研究の1つは、梗塞生存の第二国際研究(Second International Study of Infarct Survival)(ISIS-2)、疑われる急性心筋梗塞の17,187の症例の中で、静脈内ストレプトキナーゼ、経口アスピリン、双方、またはいずれでもない、の無作為試験であった(ISIS-2共同グループ(Collaborative Group), J.Am.Coll.Cardiol. 12:3A-13A(1988) および該ISIS-2共同グループ(Collaborative Group), BMJ 316:1337-1343(1998))。引き続いて、抗血栓症被験者共同研究(Antithrombotic Trialist's Collaboration), BMJ 324:71-86(2002)にまとめられた多数の試験は、血管事象において総じて22%低下を示す3つの観察を拡大した。さらなる例は一次予防プロジェクト(Primary Prevention Project)(de Gaetano G.らの文献Lancet 357:89-95(2001))を含み、そこでは、アスピリンの使用(100mg/日)は、心血管死亡の発生率を、危険性がある患者において、1.4%から0.8%まで有意に低下させた。最近完成されたHOT試験において、高血圧患者が低用量アスピリン(75mg/日)またはプラセボに無作為化された(HOT研究グループ(Study Group), Lancet 351:1755-1762(1998)を参照されたい)。低用量アスピリン養生法の結果、心血管事象において15%の低下および心筋梗塞において36%低下がもたらされた。これらのデータは、アスピリンが罹患率および死亡率を、危険性がある患者集団において、20ないし25%だけ効果的に低下させることを明瞭に示す(Patrono C. らの文献Chest 126:234S-264S(2004)を参照されたい)。
【0006】
クロピドグレル(チエノピリジン)は第二の最も広く用いられる抗血小板薬物である。それは、ADP受容体P2Y12を不可逆的に不活化する活性な代謝産物を生じさせるのに肝代謝を必要とするプロドラッグである。クロピドグレルはCAPRIE試験(Lancet 348:1329-39(1996)を参照されたい)においてアスピリンよりもより効果的であることが示されたが、引き続いてのCURE試験(Yusuf S.らの文献NEJM 345:494-502(2001)を参照されたい)は、クロピドグレルをアスピリンと組合せると、不安定なアンギナまたは非−STセグメント上昇MIを持つ患者に20%相対危険低下 vs プラセボ+アスピリンを付与したことを確立した。PCI-CUREサブスタディは、この利点が経皮介入(PCI)を受けている患者まで拡大されることを示した(Mehtaらの文献Lancet 358:527-33(2001)を参照されたい)。
【0007】
血栓症を阻害するにおけるアスピリンの薬理学的作用は、主として、血小板中でのプロスタグランジンH(PGH)シンターゼ1(COX-1)の阻害によるものである(図1)。血小板活性化に続いて、COX-1は、まず、オキシダーゼとして機能して、(リン脂質から放出された)アラキドン酸をプロスタグランジンG2(PGG2)まで酸化し、第二に、ペルオキシダーゼとして機能してプロスタグランジンH2(PGH2)を生じさせる。PGH2は少なくとも4つの酵素によって代謝されて、トロンボキサンA2(TXA2)、血小板アゴニストおよびいくつかのプロスタグランジン類;血小板機能の阻害剤であるプロスタグランジンD2(PGD2);血小板機能に対して二重の活性を呈するプロスタグランジンE2(PGE2);およびさらなる代謝産物であるプロスタグランジンF(PGF)を生じる。
【0008】
アスピリンは細胞膜を通って拡散し、まず、アルギニン残基(120)に結合し、次いで、活性部位(Ser-529)においてCOX-1を不可逆的にアセチル化することによって機能する。COX-1阻害は不可逆的であるが故に、アスピリンの抗血小板活性は血小板の寿命を通じて継続する。アスピリンの最適な抗血栓活性はTXA2合成の90%を超える阻害を必要とし、75および320mg/日の間の範囲の用量で得られる(BMJ 308:81-106(2004); およびPatrono C.の文献、NEJM 330:1287-94(1994)を参照されたい)。また、アスピシンはセリン残基516(図1)のアセチル化を介してCOX-2を阻害する。COX-2は、炎症および癌においてプロスタグランジンのほとんどの生産を担う酵素から誘導可能である。アスピリンによる血管PGI2の心血管保護効果の阻害は、長い間、アスピリンの保護効果に対して可能なブレーキとして機能すると考えられてきた。例えば、頸動脈内膜切除術を受けることが計画された3000人の患者を調べたアセチルサリチル酸および頸動脈内膜切除術試験は、3ヶ月における卒中、MIまたは脂肪の合わせた率は、アスピリンの高−用量グループにおけるよりも低−用量グループにおいて有意に低いことを示した(Taylorらの文献 Lancet 1999; 353:2179-84)。
【0009】
アスピリンに固有のいくつかの薬物動態および薬力学特徴はその正味の抗血栓効力を付与する。全血管樹に対する効果を妨げる短い半減期(ヒト循環においては〜20分);(ほぼ100倍だけの)COX-2よりもCOX-1に向けてのより高い選択性;および血管および炎症細胞においてCOX-2が代謝回転するという事実は数時間以内に起こり、他方、COX-1は循環血小板に再生できない。
【0010】
アスピリンの成功は顕著であるが、幾人かの個体はアスピリン療法から利益を受けず、他方、他の個体はその保護効果から利益を受けることができないことが明らかとなった。第一のグループは、アスピリン療法にも拘わらず発症する血栓事象を記載するいわゆる「アスピリン抵抗性」現象に関する。出現するデータは、アスピリンおよびプロピドグレルに対する抗血栓応答は可変的であり、非応答体を含み得ることを示す。アスピリン抵抗性はTXB2レベル(TXA2生合成のマーカー)を阻害するか、または血小板機能のイン・ビトロテスト(すなわち、血小板豊富血漿または全血における光透過率アグレゴメトリー、RPFA(ウルテグラ(Ultegra)迅速血小板機能アッセイ(Rapid Platelet Function Assay))、血小板機能アナライザー、PFA-100、およびトロンボエラストグラフ)を発効させるアスピリンの無能力に関連付けられてきた。アスピリン抵抗性のより正確な定義は、血栓事象を妨げるその無能力に関連させるべきである。
【0011】
アスピリン療法に対する患者での血栓事象を説明するいくつかの仮説が存在する。最初の、恐らくは最も普通の許容されたものは、プロスタグランジン−非依存性経路において機能する多数の血小板アゴニストの存在である。第二のものは、アスピリンによる最適なCOX-1阻害に拘わらず、COX-2−依存性TXA2合成を示す報告に基づいている(Vejar, M.らの文献、Circulation 81(1 Suppl): 14-11(1990)を参照されたい)。この知見に従うと、冠動脈バイパスグラフト(coronary artery bypass graft)(CABG)患者における血小板代謝回転はアスピリン抵抗性を誘起することが疑われる。というのは、COX-2を発現する新しく形成された血小板(Rocca B.らの文献、PNAS 99:7634-9(2002)を参照されたい)はアスピリンによる阻害に対して感受性がより低いだろうからである(Zimmermann N.らの文献、Circulation 108:542-7(2003)を参照されたい)。同一の研究において、著者らは、アスピリン−処理個体における混合トロンボキサンシンターゼおよび受容体アンタゴニスト(テルボグレル)のさらなる抗凝集活性を示しており、これは、COX-1−非依存性TXA2合成の存在を示す。アスピリン抵抗性のもう1つの潜在的原因は、COX-1の可逆的阻害剤(すなわち、イブプロフェン)の同時投与がアスピリンの抗凝集活性を低下させる(Cattela-Lawson F.らの文献、NEJM 345:1809-17(2001)を参照されたい)ことを示したCatella-Lawsonによって記載されている。
【0012】
第二のグループは、アスピリン感受性であって、かくして、アスピリンによって供された心血管保護のそれ自体を役立てることができない心血管血栓事象の危険性がある個体に関する。種々のホメオスタシス系におけるCOX-1の広い役割は、アスピリンに帰せられる副作用の多くの起源におけるものである。事実、COX-1は血小板凝集にとって、また、胃粘膜の統合性、腎臓水−塩バランス、および正常な血管の調子についても必須である。
【0013】
アスピリンの最も普通の有害効果は、胃腸上部出血の実質的増加である(Patronoらの文献、Chest 126:234S-264S(2004)を参照されたい)。この副作用はTXA2のプロ−凝集活性の阻害、およびPGE2およびPGI2の低下したレベルによって媒介される胃腸粘膜の低下した細胞保護の双方に帰せられる。プロトンポンプ阻害剤の使用は出血の危険性を低下させるにおいて、あるレベルの有効性を示したが(Lanas A.らの文献、NEJM 343:834-9(2000)を参照されたい)、アスピリンの日用量(75ないし325mg)を必要とする心血管病を持つ冠動脈病(CAD)患者において抗−分泌剤の保護効果の臨床的評価はこれまでなかった。加えて、75ないし325mg用量のアスピリンを摂取する10人の個体のうち1人が胃十二指腸潰瘍を発症したと見積もられる(Yeomans N.D.らの文献、Aliment. Pharmacol. Ther. 22:795-801(2005)を参照されたい)。
【0014】
アスピリンのもう1つの酷い副作用は、アスピリン不耐性に関する。アスピリン−亢進気道病(ほぼ10%の有病率を伴う)、蕁麻疹/血管浮腫(<0.5%)、およびより稀な全身感受性(アナフィラキシー)が一般的集団において報告されている。アスピリンまたはNSAID投与に際しての蕁麻疹/血管浮腫は、慢性特発性蕁麻疹を持つ患者で起こり得る。ロイコトリエンの増大したレベルは血管透過性を増強させ、蕁麻疹を誘導することが疑われる(Grattan C.E.らの文献、Clin. Exp. Dermatol. 28:123-7(2003)を参照されたい)。蕁麻疹/血管浮腫は、1以上のNSAIDでの投与後に、特発性蕁麻疹の履歴がない患者においても、やはり起こり得るが、NSAIDに対する薬物−特異的IgE抗体の生産によって誘起されると信じられている。稀な場合において、NSAIDはIgE−依存的にアナフィラキシーを誘発し得る。しかしながら、アスピリン感受性におけるアスピリンの最も普通の副作用は鼻炎および喘息に関連する。アスピリンまたはNSAIDでの経口投与は、喘息成人の5ないし20%がひどい気管支収縮を発症し、従って、これらの療法に対して不耐性である。その結果、アスピリンおよびNSAIDは喘息患者に対して禁忌とされる(Spector S.L.らの文献、J. Allergy Clin. Immunol. 64:500-506(1979)およびStevensonらの文献「アレルギー:原理および実践において(In Allergy: Principles and Practice)」, Rosby Yearbook, Inc., St. Louis MO., 1747-68(1993)を参照されたい)。
【0015】
COX-1の阻害は、アスピリン(および他のNSAID)−誘導喘息発作の直接的原因であると信じられている(図2)。COX-1の阻害は、アラキドン酸の代謝をロイコトリエン(LT)の増大した合成に向けて再度指令する。アスピリン(またはCOX-1に対して作用する他のNSAID)不耐性に関与するロイコトリエン代謝産物は、全て、気管支および血管収縮を媒介し、および血管透過性および好酸球化学走性を増加させることが知られている、(好中球化学走性および活性化における)LTB4、LTC4 、LTD4 およびLTE4を含む。システイニルロイコトリエンのプロ−炎症作用のほとんどは、CysLT1受容体へのその結合に由来するものであった(Sousa A. R.らの文献、N. Engl. J.. Med.347:1493-1499(2002)を参照されたい)。
【0016】
アスピリンがLTレベルを上昇させるメカニズムはPGE2合成の遮断に帰される(Pavord I.D.らの文献Lancet 345;436-438(1995)を参照されたい)。PGE2は5−リポキシゲナーゼ活性化蛋白質(FLAP)および5−リポキシゲナーゼの双方の内因性阻害剤である。その結果、減少したPGE2レベルは、LTの合成および肥満細胞(Szczeklik A.らの文献、J. Allergy Clin. Immunol. 111:913-921(2003)を参照されたい)、ヒト好酸球(Docherty J.C.らの文献、Biochem. Biophys. Res. Commun.148:534-8(1987)を参照されたい)、および好中球(Tenor H.A.らの文献、Br. J. Pharmacol.118:1727-35(1996)を参照されたい)からのヒスタミン放出を増強させる。しかしながら、PGE2の唯一の阻害は喘息発作それ自体を説明しない。というのは、PGE2の流体レベルはアスピリン−耐性およびアスピリン−不耐性喘息患者の間で異ならないからである(Szczeklik A.らの文献、Am.J.Resp.Crit.Care Med. 154:1608-1614(1996)を参照されたい)。
【0017】
不耐性反応を担う他のメカニズムが存在し、いくつかは記載されてきた。LTC4シンターゼ(LTD4およびLTE4双方の前駆体であるLTC4を形成する酵素)を発現する細胞(ほとんどは好酸球)の過剰提示が、アスピリン耐性喘息患者と比較した場合に、アスピリン−不耐性喘息患者の気管支バイオプシーで示されており、他方、COX-1、COX-2、5-LO、FLAPおよびLTA4ヒドロラーゼの発現の同様なレベルが耐性および不耐性喘息患者の双方で報告された(Cowburn A.S.らの文献、J. Clin. Invest. 101:834-846(1998)を参照されたい)。そのような細胞の存在が元来におけるものであるか、または不耐性の結果であるかは確立されなかった。また、CysLT1(システイニルロイコトリエン受容体)を発現する増大した数の鼻炎症性白血球が、慢性鼻副鼻腔炎を持つアスピリン−感受性患者において記載された(Sousa A.R.らの文献、N. Engl. J. Med. 347:1493-1499(2002)を参照されたい)。最後に、遺伝的多形が、アスピリン−不耐性に関連し得る5-LO遺伝子で見出されている(Kim S. H.らの文献J. Korean Med. Sci. 20:1017-22(2005)を参照されたい)。しかしながら、遺伝的多形が不耐性と相関するか否かを決定するには、より多くの作業が必要であろう。
【0018】
いくつかの方法が、アスピリン−誘導喘息発作を治療するのに首尾よく用いられてきた。システイニル−ロイコトリエン合成阻害剤、およびcys-LT受容体の選択的アンタゴニストは、アスピリン−誘導呼吸器系反応の顕著な減衰を示した(Holgate S.T.らの文献、J. Allergy Clin. Immunol. 38:1-13(1996);Israelの文献、Am. Rev. Respir. Dis. 148:1447-1451(1993); Nasserらの文献、Thorax 49:794-56(1994); Christieらの文献、Am. Rev.Resp.Dis.143:1025-29(1991);Dahlenらの文献、Eur.Resp.J.6:1018-26(1993);および Yamamotoらの文献Am. J. Respir. Crit. Care Med. 150:254-7(1994)を参照されたい)。他の者は、アスピリン療法前のPGE2の吸入によってアスピリン−不耐性喘息患者における有意な保護を示した(Sestiniらの文献、Am. J. Crit. Care Med 153:572-5(1996))。
【0019】
アスピリン−不耐性を治療する最も普通のアプローチは、アスピリン−脱感作である。アセチルサリチル脱感作とは、まず、アスピリン療法を停止させ、次いで、経口アセチルサリチル酸への暴露をゆっくりと増加させることによる、薬理学的および免疫学的反応の排除をいう。この方法は、気道反応に連結されたアスピリン−感受性反応に関与する全てのプロ−炎症マーカーを低下させることが示された(Namazy J. A., Simon R. A.の文献、Ann. Allergy Asthma Immunol. 89:542-50(2002)を参照されたい;ロイコトリエンの低下した生産、ロイコトリエンに対するCys-LT1受容体のダウンレギュレーション、およびヒスタミンの減少したレベル)。
【0020】
先に概略を説明したように、アセチルサリチル酸脱感作療法は、一般的な集団について利用可能である。しかしながら、医師は、多くの理由で、公知のアスピリン感受性を持つ心血管病(CAD)患者において稀にはこの療法を用いる。まず、それは注意深いメカニズム的アプローチ、および心臓専門医およびアレルギー専門医の双方の関与を必要とする。第二に、アスピリン脱感作の安全性はCADを持つ患者では決して調べられたことがない。事実、米国心臓学会(American College of Cardiology)およびアメリカ心臓協会(American Heart Association)の双方のガイドラインは、アスピリンまたはNSAIDに対する真の感受性が報告されたのでなければ、冠動脈心臓病および心筋梗塞を持つ患者におけるアスピリン療法に対してクラスIの指示を示している(Braunwaldらの文献、Circulation 102:1193-1203(2000); Ryanらの文献、Circulation 100:1016-30(1999)を参照されたい)。これらの患者において推奨される代替療法は、チエノピリジン(クロピドグレルまたはチクロピジンいずれか)の使用であった。しかしながら、CUREおよびCREDO試験の結果は、不安定なアンギナ/非-Q-波心筋梗塞を持つ患者についての、アスピリン+クロピドグレルにの組合せに対する新しいクラスIの指示に導く(Braunwaldらの文献、J.Am.Coll.Cardiol.36:990-1062(2000)を参照されたい)。この組合せ療法は、急性および亜急性ステント血栓症の危険を低下させるためにも示されている(Mehtaらの文献、Lancet 358:527-33(2001); Moses J. W.らの文献、NEJM 349:1315-23(2003);およびMorice M. C.らの文献、NEJM 346:1773-80(2002)を参照されたい)。
【0021】
従って、アスピリン不耐性集団にとって、アスピリンによって供される心血管保護を模倣するが、アスピリンに固有の炎症反応を開始しない代替薬物を用いるのは可能であるかと質問されるかも知れない。長く要望されていたのに拘わらず、この問題は依然として回答するのが困難なままである。事実、抗−血栓剤の現存する臨床的研究は、共通して、研究からアスピリン感受性個体を排除している。
【0022】
COX-1の作用から得られた血栓形成促進性産物であるTXA2は、TPとしても知られているTXA2受容体に作用することによって血小板を活性化させる。エクス・ビボ実験は、アスピリンおよびTPアンタゴニストが、コラーゲンのような血小板アゴニストによって誘導された血小板刺激性事象を阻害することを示しており、および動物モデルにおける実験は、TPアンタゴニストが動脈血栓症をブロックするにおいてアスピリンと同程度に有効であることを示している。従って、データは、TXA2がアスピリンによってブロックされる血栓形成促進性メディエーターであり、およびTP拮抗作用がこの血栓形成促進性メディエーターの作用をブロックするための代替戦略を提供することを示す。しかしながら、その密接な関連作用態様に鑑みると、アスピリン−感受性集団における脳血管および心血管血栓を治療し、または予防するためのTPアンタゴニスト療法の適当性は未知かつ不確実なままである。
【0023】
TXA2受容体アンタゴニストの発見および開発は、ほぼ30年の間、多くの製薬会社の目的で有った(Dongne J-Mらの文献、Exp. Opin. Ther. Patents 11:1663-1675(2001)を参照されたい)。同時TXA2シンターゼ阻害活性を持つ、または持たない、これらの会社によって同定された化合物はイフェトロバン(BMS)、リドグレル(Janssen)、テルボグレル(BI)、UK-147535(Pfizer)、 GR 32191(Glaxo)、およびS-18886(Servier)を含む。前臨床薬理学は、このクラスの化合物が、トロンボキサン経路の阻害によって得られる有効な抗血栓活性を有することを確立した。これらの化合物は、また、血管床内のTXA2受容体に作用するTXA2および他のプロスタノイドによって誘導された血管収縮を妨げる。男性におけるこれらの化合物のいくつかの薬物動態特性は1日1回の投与に合致する(Samara E.の文献、Cardiovasc. Drug Rev. 14:272-285(1996)およびLiao Wらの文献、Clin. Pharmacol. Ther. 55:2(1994)を参照されたい)。これらの化合物のいくつかは特別な問題を有するが、総じて、このクラスの化合物は胃腸出血に対するその最小効果に関して安全なように見える。
【0024】
しかしながら、あいにくと、TXA2アンタゴニストについての米国におけるII/III相試験は成功することが証明されなかった。従って、これらの化合物のいずれも市場に到達しなかった。CARPORT試験において、GR 32191は再狭窄の予防において活性を欠如することが判明した(Serruys P. W.らの文献、Circulation 84:1568-1580(1991)を参照されたい)。RAPT(リドグレル−対−アスピリン開存性試験(Ridogrel vs. Aspirin Patency Trial))研究においては、急性心筋梗塞に罹った907人の患者を、ストレプトキナーゼに加えてアスピリンまたはリドグレルいずれかを受けるように無作為化した。該研究は、リドグレルが新しい虚血症事象を予防するにおいてアスピリンよりも有効であろうと結論したが、リドグレルは、ストレプトキナーゼのフィブリン溶解効果を増強させるにおいてアスピリンよりも優れていることが判明しなかった(RTPR調査官(The RAPT Investigators), Circulation 89:588-595(1994))。スロトロバンは、PTCAに続いての後期臨床的結果および再狭窄についてのM-HEART-II実験において752人の患者で調べられた。スロトロンバンは、再狭窄に対するアスピリンまたはプラセボと異ならないことが判明し、死亡、MIまたは臨床的に重要な再狭窄の組み合わせられた終点として定義される臨床的事象を低下させるにおいてアスピリンよりも劣っていた(Savage M. P.らの文献、Circulation 92:3194-3200(1995)を参照されたい)。それにも拘わらず、臨床的適応の貧弱な選択は、主として、この薬物クラスの有効性の明らかな欠如を説明することは共通して認められている。これは、ピコタミド(トロンボキサンシンターゼおよび受容体アンタゴニスト二元体)が、末梢動脈病を持つ2型糖尿病患者において死亡率を低下させるのにアスピリンよりも有意に効果的であったことを示すDAVID実験によって確認された(Neri Serneriの文献、European Heart Journal 25:1845-52(2004)を参照されたい)。
【0025】
長年の間、血小板凝集におけるADPおよびTXA2の機能が、GP IIb-IIIaの活性化状態を維持しつつ、さらなる血小板活性化および循環血小板の創傷の部位への動員を引き起こすことであると信じられていた。実験的証拠は、血栓症障害の管理において利用される技術水準の抗血小板療法(クロピドグレル+アスピリン)の臨床効果が、2つの薬物の脱安定化活性における相乗作用に由来することを示唆する。事実、血栓症のイン・ビボ動物モデルは、ADPおよびTXA2の一次機能は、事実、血栓の安定性に関連し、血栓の成長には関連しないだろうことを示した。TXA2の、動脈血栓の結合の寄与は、イヌ冠動脈血栓症モデルにおいて20年前に報告されていた(Fitzgerald, D. J.らの文献、J. Clin. Invest. 77: 496-502(1986))が、ヒト動脈血栓症の動態におけるその相対的役割は依然としてあまり理解されていないままである。
【0026】
TXA2受容体アンタゴニストであるセラトロダスト、およびトロンボキサンシンターゼ阻害剤であるオザグレルは、今日、日本において抗−喘息薬物として市販されている。セラトロダスト、およびトロンボキサン受容体アンタゴニストであるラマトロバンは、同一の適応症について米国で臨床試験中である。アスピリン感受性個体に関するこれらの剤の適当性はやはり未だ確立されていない。TPモジュレーターは、部分的には、気管支収縮を促進するにおいてPGD2の作用をブロックすることによって働くことができる(Johnstonらの文献、Eur. Resp. J. 8:411:415(1995)を参照されたい)。
【0027】
合衆国における500万の子供を含めた約1700万の人々は喘息を有しており、これは、国立アレルギー・感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases)によると、合衆国の人口の6.4%を占める。他の当局は同様な見積もり:810万の子供(国民健康調査(National Health Interview Survey), 1997);1000人当たり51人(国民健康調査(National Health Interview Survey),1995);合衆国人口の1,450万人、または合衆国の人口の5%(米国立女性健康情報センター(National Women's Health Information Center));および1995年における1490万人(国立心肺血液研究所(National Heart, Lung and Blood Institute))を提供している。これらのうち、10ないし20%は、脳血管および脳血管動脈血栓症の予防におけるアスピリン療法が禁忌とされているアスピリン−不耐性個体である(Jenkins, C. らの文献、BMJ 328:434(2004))。従って、アスピリン−感受性である患者において有害な脳血管および心血管事象を予防しまたは治療する方法に対する、大きな未だ満足されていない要望が存在する。本発明は、この満足されていない要望を満たす方法および組成物を提供する。
【発明の概要】
【0028】
驚くべきことに、TPモジュレーターの抗−血栓作用は、アスピリンによって阻害される内因性血小板剤によって、および注目することには、部分的には、いくつかの他の系におけるその効果がTPモジュレーターによってブロックされる剤であるPGD2によって媒介されることが見出された。従って、本発明は、COX-1酵素阻害剤での療法が、阻害剤に対する感受性、不耐性または抵抗性いずれかのため使用できない個体において、心血管障害の治療または予防に有用な方法および組成物を提供する。ある実施態様において、COX-1阻害剤は、アスピリンまたはNSAIDである。
【0029】
1つの実施態様において、本発明は、治療上有効量のトロンボキサンA2受容体(TP)モジュレーターを、単独で、あるいはADP受容体モジュレーターとの組み合わせ療法にて投与することによって、これらの個体を治療する方法を提供する。特別な実施態様において、TPモジュレーターは血小板TPのアンタゴニスト、またはトロンボキサンシンテターゼの混合阻害剤である。TPモジュレーターは混合TPアンタゴニストまたはTP阻害剤であってもなくてもよい。特別な実施態様において、ADPモジュレーターは血小板ADP受容体のアンタゴニストまたは不活化剤、またはヒトCD39(例えば、組換え可溶性ecto-ADPase/CD39)のモジュレーターである。
【0030】
いくつかの実施態様において、不耐性はアスピリンまたはもう1つのCOX-1阻害剤との接触によってもたらされる急性喘息である。他の実施態様において、感受性はCOX-1阻害剤によって誘導される胃腸出血によるものである。なおもう1つの実施態様において、感受性は腎臓またはその機能に対するCOX-1阻害剤の有害効果によるものである。いくつかの実施態様において、個体は、そうでなければ、COX-1阻害剤の投与によって亢進または誘導される効果を必要としない。いくつかのさらなる実施態様において、個体は、COX-1阻害剤(例えば、アスピリン)の投与によってもたらされる喘息はさておき喘息療法を同時に必要性とするものではない。
【0031】
いくつかの実施態様において、個体はCOX-1阻害剤に対して感受性、不耐性、または抵抗性であることが知られた個体であり、あるいはCOX-1阻害剤に対して感受性、不耐性、または抵抗性であると予測されるものである。他の実施態様において、個体は、まず、個体がアスピリンまたはもう1つのNSAIDの投与に続いて先行する有害反応を有したか否かを決定するために個体に質問することによってTPモジュレーターの投与に対して選択され、ここに、肯定的応答は個体をアスピリン−感受性個体として同定する。さらなる実施態様において、有害反応は:減少した強制的呼気容量、喘息、息切れ、困難な呼吸または嚥下、吐き気、胃出血、貧血または低い血中細胞カウント、鼻炎、鼻詰まり、咳、蕁麻疹、失神、めまい、または血圧の降下よりなる群から選択される。
【0032】
他の実施態様において、個体は、アスピリンまたはNSAIDを個体に投与し、ロイコトリエンE4(LTE4)の存在について個体からの試料をスクリニーングすることによって療法について選択され、ここに、試料中の上昇したLTE4レベルの存在は個体をアスピリン感受性個体として同定する。試料は、限定されるものではないが、血液、血漿、血清または尿であり得る。
【0033】
さらに他の実施態様において、個体は、誘発量のアスピリンまたは他のNSAIDを個体に投与し;次いで、個体の強制的呼気容量(FEV1)を測定することによって療法について選択され、ここに、減少したFEV1は個体をアスピリン感受性個体として同定する。
【0034】
なおもう1つの実施態様において、アスピリン感受性個体は、アスピリンまたはもう1つのNSAIDを個体に投与し;次いで、音響鼻腔計測法によって個体の鼻容量を測定することによって選択され、ここに、減少した鼻容量は個体をアスピリン感受性個体として同定する。アスピリンは、鼻内、またはいずれの注目する他の経路によって投与してもよい。
【0035】
他の実施態様において、治療すべき個体は、望まない副作用のため、限定されるものではないが、心血管障害を含めたいずれかの障害の治療のためのアスピリンまたはNSAID養生法に愁訴しないことが判明した患者である。
【0036】
前記のいずれかのいくつかの実施態様において、TPアンタゴニストはイフェトロバン、5-ヘキセン酸、6-[3-[[(シアノアミノ)[(1,1-ジメチルエチル)アミノ]メチレン]アミノ]フェニル]-6-(3-ピリジニル)-,(イプシロン)-)(テルボグレル)、4-メトキシ-N,N'-ビス(3-ピリジニルメチル)-1,3-ベンゼンジカルボキサミド(ピコタミド)、S-18886、5-[(2-クロロフェニル)メチル]-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、N-[2-(メチルチオ)エチル]-2-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ]-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビスホスホン酸とのモノアンヒドリド、2-(プロピルチオ)-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビス(ホスホン酸)とのモノアンヒドリド、(+)-(S)-α-(2-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-酢酸メチル、2-アセトキシ-5-(α-クロロプロピルカルボニル-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、およびその医薬上許容される塩である。
【0037】
いくつかの実施態様において、TPモジュレーターまたは混合TPアンタゴニストは酸化窒素(NO)−供与部位を有する。いくつかの実施態様において、TPモジュレーターまたは混合TPアゴニストは、NO-ドナー、または代謝されてNOをイン・ビボで放出する化合物と共に投与される。そのような剤は当該分野でよく知られており、限定されるものではないが、ニトログリセリンおよびアルギニンを含む。
【0038】
前記のいずれかの他の実施態様において、個体にはさらにHMG-CoAレダクターゼ阻害剤が投与される。スタチンと通常は言われるこれらの剤はアトルバスタチン(Lipitor)、シンバスタチン(Zocor)、プラバスタチン(Pravachol)、ロバスタチン(Mevacor)、フルバスタチン(Lescol)、およびロスバスタチン(Crestor)を含む。該レダクターゼ阻害剤は、別々に、あるいはTPモジュレーターと組み合わせて投与してもよい。
【0039】
前記のいずれかのさらなるいくつかの実施態様において、TPアゴニストは直接的トロンビン阻害剤または第Xa因子阻害剤との組合せ療法で投与することができる。それらは別々に投与してもよく、あるいは単一の医薬組成物に共処方してもよい。
【0040】
前記のいずれかのいくつかの実施態様において、心血管障害は急性心筋虚血症、急性心筋梗塞、およびアンギナよりなる群から選択される急性冠動脈症候群である。さらなる実施態様において、心血管障害はアテローム性動脈硬化症、血小板増加症、末梢動脈閉塞、狭窄よりなる群から選択される血栓性障害である。いくつかの実施態様において、アスピリン−感受性、不耐性、または抵抗性個体は冠動脈ステントを有する。1つの実施態様において、個体は冠動脈バイパス移植術を受けることが予定されている、現在受けている、または最近受けたことがある。
【0041】
前記のいずれかのいくつかの実施態様において、TPアンタゴニストは、求められる利点が望まれる限りの間、投与することができる。特別な実施態様において、TPアンタゴニストは維持放出形態で投与され、ここに、TPアンタゴニストは隔週、毎週、または毎月投与される。少なくとも一週間ないし二週間の投与期間が、最初に利点を達成するのに必要であろう。
【0042】
特別な実施態様において、ADP受容体アンタゴニストまたは不活化剤はチエノピリジン誘導体(例えば、クロピドグレル)、プラスグレル、またはチクロピジンである。いくつかのさらなる実施態様において、TPアンタゴニストの有効用量は、ADP受容体アンタゴニストの存在下で低下される。該低下は少なくとも約25%、50%、または75%であってよい。
【0043】
1つの実施態様において、ADP受容体アンタゴニストは式I:
【化1】

で示される構造を有するか、またはその医薬上許容される塩である。
【0044】
前記のいずれかの実施態様のいくつかにおいて、個体におけるPGD2レベルは、TPモジュレーターの血栓抑制(dethrombotic)作用を媒介するのに十分である。いくつかのさらなる実施態様において、本発明は、トロンボキサンA2受容体アンタゴニストまたはトロンボキサンシンターゼ阻害剤およびADP受容体(例えば、P2Y12)を阻害し、または不活化する第二の剤を投与することによる治療方法を提供し、ここに、治療される個体のPGD2レベルはCOX-1阻害剤の投与によって影響されず、かくして、第一の剤の血栓抑制作用を媒介することができる。
【0045】
もう1つの局面において、本発明は、PGD2が、部分的には、TPモジュレーターの血栓抑制効果を媒介する強力な血栓抑制剤であり、およびアスピリンがTPモジュレーターのこの有益な効果に拮抗するという驚くべき知見に関する。この局面において、本発明は、治療上有効用量のTPモジュレーターを受けており、アスピリンまたはもう1つのCOX-1阻害剤を回避し、および/または摂取しないよう指示され、またはアドバイスされているヒト個体対象において心血管障害を治療する方法を提供する。該指令またはアドバイスは書面、または口頭による伝達を含めたいずれの媒体によるものであってもよい。このアドバイスは、例えば、PGD2レベルに対するアスピリンまたはもう一つのCOX-1阻害剤の効果を回避することによってTPモジュレーターの血栓抑制活性を最大化するように働くことができる。さらなる実施態様において、対象は、治療上有効量のATPモジュレーターでも治療されている。この局面における前記のいくつかのさらなる実施態様において、治療すべき個体はアスピリン感受性、不耐性または抵抗性でなく、またはアスピリンがそうでなければ禁忌とされる者ではない。この局面におけるいくつかのさらなる実施態様において、個体は、アスピリン感受性であってもそうでなくてもよい喘息を有する。この局面におけるいくつかのさらなる実施態様において、個体は冠動脈病または急性心筋梗塞または卒中を有する。他の実施態様において、個体は急性血栓事象を有する。いくつかの実施態様において、個体は喘息および心血管障害を有する対象である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、プロスタグランジン合成についてのアスピリンによるCOX-1およびCOX-2阻害に対する下流効果示す。
【図2】図2は、COX-1の阻害によって影響される代謝経路、およびどのようにしてそれがアスピリンまたはCOX-1阻害剤感度に関連するかを示す。
【図3】図3は、正常なボランティアにおけるイフェトロバンおよびアスピリンの抗血栓活性を示す。Y-軸は蛍光単位を表わし、およびX-軸は秒での時間を表わす。
【図4】図4は、クロピドグレルと組み合わせたイフェトロバンおよびアスピリンの抗血栓プロフィールを示す。Y-軸は蛍光単位を表わし、およびX-軸は秒での時間を表わす。
【図5】図5は、血栓安定性に対するPGD2の効果を示す。Y-軸は蛍光単位を表わし、およびX-軸の時間は秒での単位を表わす。図5AはTPアンタゴニストによって誘導された血栓抑制を示し;図5Bは、TPを通じての継続するTXA2-誘導シグナリングが安定な血栓を維持するのに必要とされることを示し;および図5Cは、TPアンタゴニストの血栓抑制活性が以前のアスピリン治療によって防げられ、および生理学的濃度のPGD2の添加がアスピリン処理血液において血栓抑制活性を誘導したことを示す。
【図6】図6は、本発明による使用のためのいくつかの好ましいTPモジュレーターを記載する。
【図7】図7は、灌流チャンバーアッセイを用いて決定した、健康なボランティア(図7A)およびアスピリン−不耐性(AERD)-喘息患者(図7B)における100nmまたは350nmイフェトロバン(103)−対−アスピリンの抗血栓活性を示すグラフを供する。血栓症の阻害は、対照と比較した蛍光強度の低下として示される。
【図8】図8は、コラーゲン−誘導血小板凝集アッセイを用いて決定した、健康なボランティア(図8A)およびアスピリン−不耐性(AERD)-喘息患者(図8B)における1M、100nM、および350nMイフェトロバン(103)−対−アスピリンの抗血栓活性を示す棒グラフを供する。示されるように、コラーゲン−誘導血小板凝集の統計学的に有意な阻害は、正常なボランティア(P=0.0281)およびAERD患者の双方において濃度>100nMで示された。NSは有意でないことを示す。
【図9】図9は、灌流チャンバーアッセイを用いて決定した、アスピリン−不耐性(AERD)-喘息患者においてアスピリンと比較した2mM SQ29548および5Mテルボグレルの抗血栓活性を示すグラフである。
【図10】図10は、アラキドン酸−誘導血小板凝集アッセイによって決定した、健康なボランティア(図10A)およびアスピリン−不耐性(AERD)-喘息患者(図10B)における1M、350nM、および100nMイフェトロバン−対−アスピリンの抗血栓活性を示すグラフを供する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、部分的には、TPモジュレーターの抗−血栓作用が、その合成がアスピリンの使用によっておよび、部分的には、その効果がいくつかの他の系においてはTPモジュレーターによってブロックされる剤であるPGD2によって媒介されるという驚くべき発見に基づく。PGD2の合成はCOX-1阻害剤によって阻害されることが知られている(図1を参照されたい)。TP拮抗作用は(アスピリン−不耐性反応の主な原因であると考えられる)PGE2を阻害せず、PGD2の生産をブロックしないので、本発明は、TPの標的化が、アスピリン−感受性、アスピリン−不耐性、およびアスピリン−抵抗性個体で用いる理想的なアスピリン−代替療法であることを確立する。
【0048】
従って、本発明は、COX-1酵素阻害剤での療法が阻害剤に対する感受性、不耐性、または抵抗性のため使用できない個体において、例えば、心血管障害を含めた病気、障害、および創傷の治療または予防で有用な方法および組成物を提供する。加えて、本発明は、治療上有効用量のTPモジュレーターを対象に供し、個体にアスピリンまたはいずれかの他のCOX-1阻害剤を回避し、および/または摂取しないように指示しまたはアドバイスすることを含む、個体において病気および障害を治療する方法を提供する。本発明は、さらに、本発明の方法を実施するのに適した組成物およびキットを提供する。
【0049】
(定義)
本発明に従い、かつ本明細書中で用いるように、以下の用語を、明示的にそうでないことが述べられているのでなければ、以下の意味を有すると定義する。冠詞「ある」は、本明細書中で用いるように、冠詞の文法的目的語の1、または1を超える(すなわち、少なくとも1つ)をいう。例として、「あるエレメント」は、1つのエレメントまたは1を超えるエレメントを意味する。用語「アスピリン」または「ASA」とは、オルト−アセチルサリチル酸およびその医薬上許容される処方物をいう。用語「非−ステロイド抗−炎症薬物」または「NSAID」とは、鎮痛、解熱および抗−炎症活性を持ち、かつステロイドではない薬物をいう。NSAIDは、本明細書中においては、COX-1阻害剤に限定される。
【0050】
用語「アスピリン−不耐性個体」または「COX-1阻害剤不耐性個体」とは、本明細書中で用いるように、アスピリン(例えば、経口、静脈内、気管内または鼻内)またはもう1つのCOX-1阻害剤に対する喘息性応答を有していた、または有するようである個体をいう。アスピリン−誘導またはCOX-1阻害剤−誘導喘息の1つの代表は、上部および下部気道の好酸球性炎症を持つ個体を含めて、最も普通には、cysLT発生のマーカーとしてのN−アセチルLTE4の上昇したベースライン排出を含めて、慢性であり得る。COX-1阻害剤誘導喘息またはアスピリン−誘導喘息とは、急性病をいい、ここに、アスピリン、または例えば、NSAIDは、皮膚蕁麻疹および腹部疝痛のような皮膚粘膜発現が伴いかねない、生命を脅かす気管支痙攣を誘導する。皮膚粘膜形態は気管支喘息のバックグラウンドなくして起こりかねず、アトピーまたは好酸球増多症には余り関連しない。該用語は、アスピリンまたは非−ステロイド抗−炎症薬物(NSAID)使用に関連付けされてきた気管支痙攣または血管浮腫の履歴を持つ個体を含む。該用語は、ASA/NSAID投与と組合されて起こり、かつ陽性完了相チャレンジテスト(positive provocative challenge test)(鼻、経口または気管支)またはN−アセチルLTE4の上昇した排出いずれかによって確認されている気管支痙攣、血管浮腫または鼻ポリーブの履歴のためASA/NSAIDの使用が禁忌とされている患者も含む。
【0051】
用語「アスピリン−抵抗性」または「COX-1阻害剤抵抗性」とは、出血時間および/または血小板機能に対するASAおよび/またはNSAIDまたは他のCOX-1酵素阻害剤の効果の示された欠如を有する個体をいう。
【0052】
用語「アスピリン−感受性」または「COX-1阻害剤−感受性」とは、アスピリン不耐性(前記参照)、(胃潰瘍のような)活性G1病の履歴、(胸やけ、吐き気または腹部疼痛のような)ASA/NSAID使用に連結されたG1兆候、または出血素因のためASA/NSAIDを摂取することができない患者をいう。
【0053】
用語「心血管障害」とは、本明細書中で用いるように、血栓性障害(すなわち、血管中の血餅の形成に関連する障害;血餅は血小板、赤血球細胞、フィブリン、白血球で形成され得る)および急性冠動脈症候群(例えば、急性心筋虚血症、急性心筋梗塞、および安定なまたは不安定なアンギナ)および脳血管障害(例えば、血栓症に関連する卒中)、心筋梗塞、安定なまたは不安定なアンギナ、PTCA後の再閉塞、PTCA後の再狭窄、ならびに間歇的な跛行、一過性虚血性発作、卒中、例えば、虚血性卒中、および可逆性虚血症神経学的欠陥を含めた、心臓および循環系に影響するいずれの病気または障害もいう。主題の心血管障害を持つ患者を診断する方法は医学分野における当業者に知られている。
【0054】
用語「トロンボキサン」または「TX」は、本明細書中で用いるように、エイコサノイドとして公知の脂質のファミリーのメンバーをいう。トロンボキサンはトロンボキサンシンテターゼによって血小板中で生じ、血管収縮、血小板凝集、および肺における気管支収縮を促進するように作用する。トロンボキサンは血管収縮、血小板凝集および血小板接着性の重要なメディエーターである。トロンボキサンA2またはTXA2とは、トロンボキサンの活性な形態をいい、トロンボキサンB2またはTXB2とは、トロンボキサンの不活性な形態をいう。
【0055】
用語「トロンボキサン受容体」または「TP」とは、本明細書中で用いるように、トロンボキサンに対する細胞受容体をいう。TPは、例えば、平滑筋細胞、内皮細胞および血小板を含めた多数の異なる細胞型で発現される。トボンボキサン受容体をコードする核酸配列はGenbankアクセス番号NM_001060; NM_201636; U30503;およびE03829に記載されている。
【0056】
COX-1阻害剤NSAIDは、限定されるものではないが、アスピリン、インドブフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、インドメタシン、ケトロラック、メフェナム酸、ナブメトン、イブプロフェン、アセタミノフェン、エトドラックを含む。本発明に従って用いられる好ましいCOX-1阻害剤はアスピリンである。本発明に従って用いられるTPモジュレーター、TPアンタゴニスト、トロンボキサンシンターゼ阻害剤、およびADP受容体モジュレーターの治療効果はCox-1の阻害を通じて媒介されない。
【0057】
そうでないことが示されるのでなければ、ADP受容体モジュレーターまたはトロンボキサンA2受容体モジュレーターへの言及は、当該分野で公知の薬物の全ての医薬上許容される形態を含む。例えば、薬物のいずれかの医薬上許容される塩は組成物にて用いてもよい。しかしながら、引用される投与は、例えば、その酸または塩基形態の薬物それ自体をいう。
【0058】
健康状態に関して用いる場合、用語「慢性」は、生涯のもの、または不定期の長さで執拗なものであってよい、通常は、1ヶ月以上継続する、長く継続する疾患を示す。医薬剤の投与に関連して用いる場合、用語「慢性」、「慢性的に」等とは、少なくとも1ヶ月以上の期間通常継続し、かつ不定期の期間であってよい投与をいう。
【0059】
本明細書中で用いるように、文脈が明瞭にそうでないことを示すのでなければ、「治療する」、および「治療」、「治療している」等のような同様な単語は、臨床的結果を含めた、かつそれが好ましい、有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。治療は、任意に、病気または疾患(例えば、血栓症または関連する病気または障害)の低下または緩和のいずれか、あるいは病気または疾患の進行の遅延を含むことができる。
【0060】
本明細書中で用いるように、文脈が明瞭にそうでないことを示すのでなければ、「予防する」、および「予防」、「予防している」等の同様な単語は、病気または疾患(例えば、血栓症、または関連する病気または障害)の開始または再発を予防する、または病気または疾患の兆候の発生または再発を予防するためのアプローチ、あるいは任意に病気または疾患の開始または再発を遅延させる、あるいは病気または疾患の兆候の発生または再発を遅延させるためのアプローチである。
【0061】
一般に、対象には、有効量の抗血栓剤を供し、あるいはその意図した目的で有効量を用いる。本明細書中で用いるように、物質、例えば、抗血栓剤の「有効量」または「治療上有効量」は、臨床的結果を含めた有益な結果のような所望の生物学的または心理学的効果を奏するのに十分な量である。例えば、本発明の方法のある実施態様の文脈においては、抗血栓剤の有効量は、血栓症をイン・ビボまたはエクス・ビボにて、あるいは関連する病気または障害を低下させ、または緩和するのに十分な量である。主題の病気および障害を持つ患者を診断する方法は当業者に知られている。
【0062】
A.血栓症および他の病気および障害を治療および予防する方法
本発明の方法はイン・ビトロおよびイン・ビボ双方で実施して、血小板凝集または血液凝固を阻害し、低下させ、または予防し、あるいは血栓症ならびに他の病気および障害を治療し、または予防することができる。1つの実施態様において、本発明の方法は使用に先立って貯蔵されている血小板製剤に対して行われる。他の実施態様において、本発明の方法は個体、例えば、哺乳動物、特に、ヒトを含む患者に対してイン・ビボで行われる。
【0063】
ある実施態様において、本発明の方法は1以上のTPアンタゴニストを、単独で、あるいは1以上のさらなる治療剤と組合せて、アスピリン−抵抗性、アスピリン−感受性、またはアスピリン−不耐性であると決定されている対象に供することを含む。加えて、他の実施態様において、本発明の方法は、血小板を1以上のTPアンタゴニストに、単独で、または1以上のさらなる治療剤と組合せて接触させることを含む。血小板は対象内に存在してもよく、あるいはそれは永久にまたは一時的に対象から取り出してもよい。
【0064】
本発明の方法は、有効量のTPモジュレーター、例えば、TPアンタゴニストを、単独で、あるいは1以上の治療剤と組み合わせて用いて実施してもよい。特別な実施態様において、さらなる治療剤は抗血栓剤である。ある実施態様において、さらなる治療剤はADPモジュレーター、例えば、ADP受容体アンタゴニストまたはCD39モジュレーター、あるいはHMGCoAレダクターゼ阻害剤である。1以上のさらなる治療剤と組合せて用いる場合、TPモジュレーターおよび1以上のさらなる治療剤を、対象または血小板に、同時にまたは異なる時点で、かつ同一または異なる投与経路によって供してもよい。
【0065】
種々の実施態様において、本発明の方法を実施して、アスピリンまたはもう1つのCOX-1阻害剤、またはNSAIDによって治療されまたは予防されるいずれの病気または障害も治療し、または予防する。加えて、本発明の方法は、医学的手法の間に実施して、例えば、血小板凝集または個体に対する創傷を予防することができる。本発明の方法から利益を受け得る特定の病気および障害、ならびに医学的手法の例は後に記載する。
【0066】
動脈血栓症および凝固の障害は、限定されるものではないが、心筋梗塞、例えば、急性心筋梗塞、血栓性卒中、アテローム性動脈硬化病、不安定なアンギナ、難治性アンギナ、一過性虚血性発作、塞栓性卒中、播種性血管内凝固、敗血症ショック、静脈深部血栓症、肺塞栓症、再閉塞、再狭窄、肺塞栓症、および閉塞性冠動脈血栓、または血栓溶解療法、経皮経腔的冠動脈血管形成術、または冠動脈バイパス移植術(CABG)に由来する他の合併症を含めた、種々の心血管−関連病および障害に関連している。加えて、本発明の方法および組成物を用いて、Cox-2と関連付けられてきた、肺高血圧、例えば、低酸素症−誘導肺高血圧、および血管内血栓症(Cathcart, M. C.らの文献、J. Pharmacol. Exp. Ther. March 28, 2008 DOI:10.1124/jpet.107.134221)を治療または予防することができる。
【0067】
アスピリンは、心筋に対する損傷の程度を制限し、さらなる心臓発作を予防し、および生存を改善するために、心臓発作を有する患者のために頻繁に処方される。アスピリンは、以前に心臓発作を起こした、または卒中を起こした患者に対して、および一過的な虚血性発作(TIA)および労作性アンギナに罹った患者に対して長期ベースでしばしば処方されて、心臓発作および虚血性卒中を予防する。アスピリンは、不安定なアンギナを有する患者に対しても処方されて、心臓発作を予防し、および生存を改善する。加えて、アスピリンは、虚血性卒中を有する患者に処方されて、脳に対する損傷を制限し、もう1つの卒中を予防し、および生存を改善する。
【0068】
本発明の方法はこれらおよび他の血栓症または凝固−関連病および障害のいずれかの治療または予防で用いてもよい。任意に、ADP受容体モジュレーターと共にTPモジュレーターは、COX-1阻害剤−感受性、−不耐性、または−抵抗性個体において、末梢動脈病、動脈または静脈血栓症、不安定なアンギナ、一過的虚血性発作および高血圧の治療および予防で特に有用である。かくして、本発明の療法は特にアスピリンを含めたCOX-1阻害剤の使用を回避する。
【0069】
特別な実施態様において、本発明は、血小板凝集または血液凝固の危険性がある、またはそのように診断されたアスピリン−抵抗性、アスピリン−感受性、またはアスピリン−不耐性患者にTPアンタゴニストを供することを含む、血小板凝集または血液凝固を阻害し、低下させ、または予防する方法を含む。
【0070】
関連する実施態様において、本発明は、血小板凝集または血液凝固の危険性がある、またはそのように診断されたアスピリン−抵抗性、アスピリン−感受性、またはアスピリン−不耐性患者にTPアンタゴニストを供することを含む、血栓症、心血管病または障害を治療し、または予防する方法を含む。
【0071】
もう1つの関連する実施態様において、本発明は、冠動脈バイパス術を受けつつある、または受けることが計画されたアスピリン−抵抗性、アスピリン−感受性、またはアスピリン−不耐性患者にTPアンタゴニストを供することを含む、冠動脈バイパス術、例えば、CABG中の患者において血栓症または血栓事象を治療し、または予防する方法を含む。アスピリンは、冠動脈ステントの置き換えおよび冠動脈バイバス術(CABG)と共に、またはそれなくして、経皮経腔的冠動脈血管形成術(PTCA)を含めた、ブロックされた動脈を開き、またはバイパスするための外科的処置を受けつつある患者にしばしば処方される。また、アスピリンは、ステントおよび/またはバイパスされた血管において血餅形成を予防するためにも長期間ベースで処方される。
【0072】
本発明の種々の実施態様において、TPモジュレーターおよび、任意に、ADP受容体モジュレーターは、医学的手法の間に、または医学的手法に先立って個体に供される。一般に、TPモジュレーターおよび、任意に、ADP受容体モジュレーターは、医学的手法、例えば、冠動脈外科的処置中に、またはその後に血小板凝集または血栓症を低下させるのに十分な量で個体に供される。
【0073】
心肺外科的処置は、心肺バイパス、例えば、オン−ポンプ冠動脈バイパス術を用いて行ってもよい。しかしながら、これには、頻繁に、血小板カウントの減少および血小板活性化の増加が伴う。本発明は、オン−ポンプ冠動脈バイパス術に先立って、またはその間に、TPアンタゴニストを単独で、またはADP受容体アンタゴニストと組合せて供することを含む、オン−ポンプ冠動脈バイパス術を行う方法を提供する。この方法は該手法の間に血小板の喪失を低下させるはずである。
【0074】
本発明の方法は、透析を受けつつある患者の治療でやはり有利である。特に、患者には、透析に先立って、またはその間に、TPアンタゴニストを単独で、あるいはADP受容体アンタゴニストと組合せて供して、透析ポンプユニット中で接着し、または凝集し得る血小板の喪失を低下させることができる。別法として、あるいは加えて、チューブのような、患者の血液と接触するようになるポンプユニットまたはその部分はTPアンタゴニスト単独、またはADP受容体アンタゴニストと組合せたTPアンタゴニストで被覆してもよい。
【0075】
同様に、ステントまたは他のデバイスをTPアンタゴニスト単独で、またはADP受容体アンタゴニストと組合せたTPアンタゴニストで被覆して、ステント中のまたはステントの領域の近くでの血餅形成を予防することができる。
【0076】
血小板血症または血小板増加症は、増加した血中血餅形成に導き得る、骨髄中の血小板の増大した生産によって特徴付けられる。従って、本発明は、この病気を持つと診断された、またはその危険性がある患者、例えば、アスピリン−感受性またはアスピリン−抵抗性患者に、任意に、ADP受容体アンタゴニストと組合せてTPアンタゴニストを供することによって血小板血症または血小板増加症を治療する方法を提供する。
【0077】
本発明の方法は、例えば、アスピリン−感受性またはアスピリン−抵抗性個体において急性肺損傷の治療または予防に適合させてもよい。その重症バージョンが急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である急性肺損傷または低酸素性呼吸器系不全は、敗血症のような全身炎症プロセスとしばしば関連付けられており、また外傷、肺炎、および火傷等によって引き起こされる。急性肺損傷を持つ患者は典型的には換気され、アスピリン治療は禁忌とされている。本発明は、単独で、またはADP受容体アンタゴニストと組合せてTPアンタゴニストを、急性肺損傷を有する個体に供することを含む、急性肺損傷を治療する方法を提供する。
【0078】
アスピリンまたはCOX-1阻害剤での治療に対する代替法を供する本発明の方法は、アスピリンからライ症候群を発症する危険性があるウイルス感染を有する、またはそれから回復しつある子供の治療においてやはり有利である。従って、本発明は、単独で、またはADP受容体アンタゴニストと組合せてTPアンタゴニストを個体に供することを含む、アスピリンまたは他のサリシレートに対して応答するライ症候群を発症する危険性がある個体を治療する方法を提供する。ある実施態様において、該方法が実施されて、疼痛、不快または発熱を低下させる。
【0079】
ある実施態様において、該方法は、さらに、例えば、患者に質問することによって、患者がアスピリン−感受性またはアスピリン−不耐性であるかを決定することを含む。本発明の方法の特別な実施態様において、患者はアスピリンまたはいずれかのもう1つのCOX-1阻害剤を摂取しないようにも指令される。
【0080】
他の実施態様において、該方法のいずれも、さらに、ADPモジュレーター、例えば、ADP受容体アンタゴニストを患者に供することを含む。TPモジュレーターおよびADPモジュレーターは、同一時点に、またはいずれかの順序で患者に供してもよい。
【0081】
TPモジュレーターおよび、任意に、ADPモジュレーターは同時点様式で与えるべきであり、所望の利点を与えるのに十分な量で送達するべきである。好ましくは、モジュレーターは、本明細書中に記載された単位投与形態で一緒に送達される。療法の持続は、治療すべき障害の持続に合致されるであろう。典型的には、療法は、引用された心血管疾患の多くのものの慢性的性質、または慢性的予防に対する必要性を仮定すれば、慢性的であろう。
【0082】
特別な実施態様において、本発明の方法は、患者を治療するのに必要であると従前には考えられており、またはそのように従前は用いられていたよりも高い用量または高い血漿中濃度のTPモジュレーターを用いて実施される。これらは、例えば、標準的なイン・ビトロでのU-46619-誘導血小板凝集アッセイを用いて血小板凝集を阻害するにおいて有効であると決定された濃度よりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍高くてもよい。
【0083】
TPモジュレーターおよび、任意に、ADPモジュレーターの量は単一の用量として投与してもよく、あるいは周期的に投与して、所望の血漿中濃度を維持してもよい。例えば、それは6、12、24、48、または72時間毎に投与してもよい。
【0084】
特別な実施態様において、TPモジュレーターは、1、5、10、20、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000nMよりも大きな、またはそれと同等な血漿中濃度を達成するのに十分な量で投与される。特別な実施態様において、それは、350nMよりも大きな、またはそれと同等な血漿中レベルを達成するのに十分な量で投与される。ある実施態様において、それは、1ないし10nM、1ないし100nM、10ないし1000nM、50ないし500nM、100ないし500nM、200ないし400nM、200ないし1000nM、または500ないし1000nMの範囲の血漿中濃度を達成するのに十分な量で投与される。
【0085】
特別な実施態様において、イフェトロバンまたは他のTPモジュレーターは、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも250nM、少なくとも300nM、または少なくとも350nMの血漿中濃度を達成するのに十分な量で投与される。ある実施態様において、イフェトロバンは、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも250nM、少なくとも300nM、または少なくとも350nMの血中濃度を少なくとも6、12、24、または48時間維持するのに十分な量で投与される。
【0086】
特別な実施態様において、イフェトロバンまたは他のTPモジュレーターは、約0.01mg/kgないし約100mg/kg、約0.1mg/kgないし約100mg/kg、約1mg/kgないし約100mg/kg、または約10mg/kgないし約100mg/kgの範囲内の量で投与される。特別な実施態様において、抗血栓剤は約1mg/kgないし約10mg/kg、約2mg/kgないし約10mg/kg、約4mg/kgないし約8mg/kg、または約6mg/kgないし約8mg/kgの範囲内の量で投与される。1つの実施態様において、それはほぼ7mg/kgで投与される。
【0087】
ADPモジュレーターのような他の化合物は、本明細書中に記載された用量および範囲のいずれも含めた治療上有効量で投与してよい。投与される化合物の量は、もちろん、治療すべき対象、対象の体重、苦痛の酷さ、投与の方法および処方する医師の判断に依存するであろう。有効量の決定は、特に、本明細書中に提供した詳細な開示に徴して、十分当業者の技量内のものである。
【0088】
1.TPモジュレーター
本明細書中で用いられる用語「トロンボキサンA2受容体アンタゴニスト」または「トロンボキサン受容体アンタゴニスト」または「TPアンタゴニスト」とは、トロンボキサン受容体の発現または活性を、標準的なバイオアッセイにおいて、またはイン・ビボにて、または治療上有効用量で用いた場合に少なくともまたは少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%だけ阻害する化合物をいう。ある実施態様においては、TPアンタゴニストはトロンボキサンA2のTPへの結合を阻害する。TPアンタゴニストは競合的アンタゴニスト(すなわち、TPについてアゴニストと競合するアンタゴニスト)および非−競合的アンタゴニストを含む。TPアンタゴニストは受容体に対する抗体を含む。該抗体はモノクローナルであってよい。それらはヒトまたはヒト化抗体であってよい。TPアンタゴニストはトロンボキサンシンターゼ阻害剤ならびにTPアンタゴニスト活性およびトロンボキサンシンターゼ阻害剤活性の双方を有する化合物も含む。
【0089】
TPアンタゴニストは、例えば、イフェトロバン(BMS;[1S-(1α,2α,3α,4α)]-2-[[3-[4-[(ペンチルアミノ)カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]メチル]ベンゼンプロパン酸)、5-ヘキセン酸、6-[3-[[(シアノアミノ)[(1,1-ジメチルエチル)アミノ]メチレン]アミノ]フェニル]-6-(3-ピリジニル)-、(ε-)(テルボグレル)、5-[(2-クロロフェニル)メチル]-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、N-[2-(メチルチオ)エチル]-2-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ]-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビスホスホン酸とのモノアンヒドリド、2-(プロピルチオ)-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビス(ホスホン酸)とのモノアンヒドリド、(+)-(S)-α-(2-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-酢酸メチル、2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、4-メトキシ-N,N'-ビス(3-ピリジニルメチル)-1,3-ベンゼンジカルボキサミド(ピコタミド)、リドグレル(Janssen)、スロトロバン、UK-147535(Pfizer)、GR 32191(Glaxo)、バリプロストおよび、S-18886(Servier)のような小分子を含む。
【0090】
本明細書中で用いるのに適したさらなるTPアンタゴニストは、米国特許第6,509,348号にも記載されている。これらは、限定されるものではないが、好ましいものである[1S-(1α,2α,3α,4α)]-2-[[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]メチル]ベンゼンプロパン酸(SQ33,961)、またはそのエステルまたは塩を含めた、1992年3月31日に発行された米国特許第5,100,889号に開示されたフェニレン間7-オキサビシクロヘプチル置換複素環アミドプロスタグランジンアナログ;[1S-(1α,2α,3α,4α)]-2-[[3-[4-[[[(4-クロロフェニル)ブチル]アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]メチル]ベンゼンプロパン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-(1α,2α,3α,4α)]-3-[[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]メチル]ベンゼン酢酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-((1α,2α,3α,4α)]-2-[[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]メチル]フェノキシ]酢酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-((1α,2α,3α,4α)]-2-[[3-[4-[[-7,7-ジメチルオクチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2イル]メチル]ベンゼンプロパン酸、またはそのエステルまたは塩およびイフェトロバン;[1S-(1α,2α(Z),3α,4α)]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩を含めた、1992年3月31日に発行された米国特許第5,100,889号に開示された7-オキサビシクロヘプチル置換複素環アミドプロスタグランジンアナログ;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-チアゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)メチルアミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[(1-ピロリジニル)カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(2-シクロヘキシルエチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[[2-(4-クロロフェニル)エチル]アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-クロロフェニル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[[4-(4-クロロフェニル)ブチル]アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4a-[[(6-シクロヘキシルヘキシル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(6-シクロヘキシルヘキシル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[(プロピルアミノ)カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-ブチルフェニル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[(2,3-ジヒドロ-1H-インドール-1-イル)カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-N-(フェニルスルホニル)-4-ヘキセンアミド;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-N-(メチルスルホニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセンアミド;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-7-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-5-ヘプテン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]] -6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-1H-イミダゾール-2-イル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α,3α,4α)]-6-[3-[4-[[(7,7-ジメチルオクチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;[1S-[1α,2α(E),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸;[1S-[1α,2α,3α,4α)] -3-[4-[[(4-(シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-ヘキサン酸またはそのエステルまたは塩を含み、好ましい化合物は[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-2-オキサゾリル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸、またはそのエステルまたは塩;Snitmanらに対する米国特許第4,537,981号に開示された7-オキサビシクロヘプタンおよび7-オキサビシクロヘプテン化合物、特に、[1S-[1α,2α(Z),3α(1E,3S*,4R*),4α)]]-7-[3-(3-ヒドロキシ-4-フェニル-1-ペンテニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-5-ヘプテン酸(SQ29,548);Nakaneらに対する米国特許第4,416,896号に開示された7-オキサビシクロヘプタン置換アミノプロスタグランジンアナログ、特に、[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]] -7-[3-[[2-(フェニルアミノ)カルボニル]ヒドラジノ]メチル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-5-ヘプテン酸Nakaneらに対する米国特許第4,663,336号に開示された7-オキサビシクロヘプタン置換ジアミドプロスタグランジンアナログ、特に、[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-7-[3-[[[[(1-オキソヘプチル)アミノ]アセチル]アミノ]メチル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-5-ヘプテン酸および対応するテトラゾール、および[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-7-[3-[[[[(4-シクロヘキシル-1-オキソブチル)アミノ]アセチル]アミノ]メチル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-5-ヘプテン酸;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[[4-(4-シクロヘキシル-1-ヒドロキシブチル)-1H-イミダゾール-1-イル]メチル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸またはそのメチルエステルを含めた1990年12月11日に発行された米国特許第4,977,174号に開示された7-オキサビシクロヘプタンイミダゾールプロスタグランジンアナログ;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[[4-(3-シクロヘキシルプロピル)-1H-イミダゾール-1-イル]メチル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸またはそのメチルエステル;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[[4-(4-シクロヘキシル-1-オキソブチル)-1H-イミダゾール-1-イル]メチル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸またはそのメチルエステル;[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]] -6-[3-(1H-イミダゾール-1-イルメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸またはそのメチルエステル;または[1S-[1α,2α(Z),3α,4α)]]-6-[3-[[4-[[(4-シクロヘキシルブチル)アミノ]カルボニル]-1H-イミダゾール-1-イル]メチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル]-4-ヘキセン酸またはそのメチルエステル;Witteらに対する米国特許第4,258,058号に開示されたフェノキシアルキルカルボン酸、特に、4-[2-(ベンゼンスルホンアミド)エチル]フェノキシ酢酸 (BM 13,177Boehringer Mannheim)、Witteらに対する米国特許第4,443,477号に開示されたスルホンアミドフェニルカルボン酸、特に、4-[2-(4-クロロベンゼンスルホンアミド)エチル]フェニル酢酸(BM 13,505, Boehringer Mannheim)、米国特許第4,752,616号に開示されたアリールチオアルキルフェニルカルボン酸、特に、4-(3-((4-クロロフェニル)スルホニル)プロピル]ベンゼン酢酸、ヤピプロスト、R68,070ともいわれる(E)-5-[[[(ピリジニル)[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチレン]アミノ]オキシ]ペンタン酸--Janssen Research Laboratories、3-[1-(4-クロロフェニルメチル)-5-フルオロ-3-メチルインドール-2-イル]-2,2-ジメチルプロパン酸[(L-655240 Merck-Frosst)Eur. J. Pharmacol. 135(2):193, Mar. 17, 1987]、5(Z)-7-([2,4,5-シス]-4-(2-ヒドロキシフェニル)-2-トリフルオロメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)ヘプテン酸(ICI 185282, Brit. J. Pharmacol. 90(Proc. Suppl):228 P-Abs, March 87)、5(Z)-7-[2,2-ジメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン-シス−5−イル]−ヘプテン酸(ICI 159995, Brit. J. Pharmacol. 86(Proc. Suppl): 808 P-Abs, December 85)、N,N'-ビス[7-(3-クロロベンゼンアミノスルホニル)-1,2,3,4-テトラヒドロ−イソキノリル]ジスルホニルイミド(SKF 88046, Pharmacologist 25(3): 116 Abs., 117 Abs, August 83)、[1α(Z)-2β,5α]-(+)-7-[5-[[(1,1'-ビフェニル)-4-イル]メトキシ]-2-(4-モルホリニル)-3-オキソシクロペンチル]-4-ヘプテン酸(AH 23848Glaxo, Circulation 72(6): 1208, December 85, 臭化レバロルファンアリル(CM 32,191 Sanofi, Life Sci. 31(20-21): 2261, Nov. 15, 1982)、(Z,2-エンド-3-オキソ)-7-(3-アセチル-2-ビシクロ[2.1.1]ヘプチル-5-1-ヘプタ-3Z-エン酸、4-フェニル-チオセミカルバゾン(EP092Univ. Edinburgh, Brit. J. Pharmacol. 84(3): 595, March 85 ); GR 32,191(ヴァピプロスト(Vapiprost))--[1R-[1α(Z),2β,3β,5α]]-(+)-7-[5-([1,1'-ビフェニル]-4-イルメトキシ)-3-ヒドロキシ-2-(1-ピペリジニル)シクロペンチル]-4-ヘプテン酸;ICI 192,605--4(Z)-6-[(2,4,5-シス)2-(2-クロロフェニル)-4-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキサン-5-イル]ヘキセン酸;BAY u 3405(ラマトロバン)--3-[[(4-フルオロフェニル)スルホニル]アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロ-9H-カルバゾール-9-プロパン酸;またはONO 3708--7-[2α,4α-(-(ジ-メチルメタノ)-6β-(2-シクロペンチル-2β-ヒドロキシアセタミド)-1α-シクロヘキシル)-5(Z)-ヘプテン酸;(±)(5Z)-7-[3-エンド-[(フェニルスルホニル)アミノ]ビシクロ][2.1.1]ヘプタ-2-エキソ-イル]-ヘプテン酸(S-1452, Shionogi domitroban, AnboxanTM );(-)6,8-ジフルオロ-9-p-メチルスルホニルベンジル-1,2,3,4-テトラヒドロカルバゾール-1-イル-酢酸(L670596, Merck)および(3-[1-(4-クロロベンジル)-5-フルオロ-3-メチル-インドール-2-イル]-2,2-ジメチルプロパン酸(L655240, Merck)である。本発明に従って用いてもよいTPアンタゴニストは、典型的には、単位用量当り1ないし1000mgおよび1日当たり1-5000mgの、ベンゼンアルコン酸およびベンゼンスルホンアミド誘導体も含む。
【0091】
1つの特別な実施態様において、TPモジュレーターは、前記した、あるいは別法として:3-[2-[[(1S,4R,5S,6R)-5-[4-(ペンチルカルバモイル)-1,3-オキサゾール-2-イル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-6-イル]メチル]フェニル]プロパノエートと記載されるイフェトロバン、または3-[2-[[(1S,4R,5S,6R)-5-[4-(ペンチルカルバモイル)-1,3-オキサゾール-2-イル]-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-6-イル]メチル]フェニル]プロパン酸ナトリウムであるイフェトロバンナトリウムである。本明細書中で用いるように、用語イフェトロバンはイフェトロバンおよびイフェトロバンナトリウムを共に含む。イフェトロバンの構造は式I:
【化2】

に示される。
【0092】
本発明に従って用いられるある例示的なTPモジュレーター(例えば、テルボグレル(Boehringer Ingellheim)、イフェトロバン、UK-147,535(Pfizer)、S 18886(Servier)、Seratodast AA-2414(Takeda/AstraZenica)、ラマトロバン(Bayer AG)およびリドグレル(Janssen)、およびBMI-531(Univ. Liege)は、図3に記載されている。加えて、NOドナー部位を含むTPアンタゴニストも考えられる。
【0093】
TPアンタゴニストは、TPに結合し、その活性を阻害するポリペプチドおよび核酸も含む。TPモジュレーターは選択的または混合TPアンタゴニストまたはTP阻害剤であってよい。受容体はヒト受容体であり得る。
【0094】
本発明によって考えられる他のTPモジュレーターおよびADP受容体アンタゴニストは、例えば、米国特許第6,689,786号および第7,056,926号、米国特許出願第11/556,490号および第11/556,518号、および米国仮特許出願第60/846,328号に記載されたもの、およびその医薬上許容される塩を含む。
【0095】
2.ADP受容体モジュレーター
本明細書中で用いられる用語「ADP受容体アンタゴニスト」とは、治療上有効用量または濃度を用いた場合に、ADP受容体の活性を少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%だけ阻害し、または低下させることができる化合物をいう。ADP受容体アンタゴニストは、小分子および/または、例えば、クロピドゲルのようなチエノピリジン誘導体を含めたプロドラッグを含む。ADP受容体アンタゴニストは、ADP受容体に結合し、その活性を阻害するポリペプチドおよび核酸も含む。ADP受容体不活性化剤は、受容体を修飾して、その活性をブロックする剤である。ADP受容体アンタゴニストは、該受容体に対する抗体を含むことができる。該抗体はモノクローナルであってよい。それらはヒトまたはヒト化抗体であってよい。それらはヒトADP受容体に向けることができる。
【0096】
ADP受容体アンタゴニストの例は、限定されるものではないが、クロピドグレル、プラスグレル、およびチクロピジンのようなチエノピリジン誘導体およびカングレロールおよびAZD6140のような直接的作用剤を含む。
【0097】
本発明に従って用いるADP受容体モジュレーターの例は:米国特許第4,051,141号または米国特許第4,127,580号に記載された5-[(2-クロロフェニル)メチル]-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン;米国特許第5,955,447号およびJournal of Medicinal Chemistry, 1999, Vol. 42, p. 213-220に記載されたN-[2-(メチルチオ)エチル)-2-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ]-5'アデニル酸、ジクロロメチレンビスホスホン酸とのモノアンヒドリド;Journal of Medicinal Chemistry, 1999, Vol.42, p.213-220に記載された2-(プロピルチオ)-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビス(ホスホン酸)とのモノアンヒドリド;米国特許第4,529,596号、米国特許第4,847,265号または米国特許第5,576,328号に記載された(+)-(S)-α-(2-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-酢酸メチル;米国特許第5,288,726号またはWO 02/04461に記載された2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、またはその医薬上許容される塩;5-[(2-クロロフェニル)メチル]-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン(特に、その塩酸塩)、N-[2-(メチルチオ)エチル]-2-[-(3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ]-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビスホスホン酸とのモノアンヒドリド、(+)-(S)-α-(2-クロロフェニル-1)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-酢酸メチル(特に、その硫酸塩)、または2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン(特に、その塩酸塩)、またはその医薬上許容される塩、より好ましくは、2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、またはその医薬上許容される塩(特に、その塩酸塩)、およびこれらの特許および出願に記載されたいずれかの他のADPモジュレーターおよびADP受容体アンタゴニストを含む。
【0098】
1つの実施態様において、ADP受容体アンタゴニストは式I:
【化3】

に示される構造を有し、またはその医薬上許容される塩である。この化合物は、P2Y12 ADP受容体に特異的に結合し、かつクロピドグレルよりも優れた薬物動態的特性を有するADP-媒介血小板凝集の可逆的阻害剤である。加えて、それは予め形成された血栓を取り除くことが示されている。
【0099】
さらなるおよび関連する抗血栓剤は、例えば、米国特許第6,689,786号、第7,022,731号、第6,906,063号、第7,056,926号、第6,667,306号、第6,762,029号、第6,844,367号、第6,376,515号、第6,835,739号、第7,022,695号、第6,211,154号、第6,545,054号、第6,777,413号、第6,534,535号、第6,545,055号、第6,638,980号、第6,720,317号、第6,686,368号、第6,632,815号、第6,673,817号、および第7,022,695号、ならびに米国特許出願第11/304,054号、第11/107,324号、第11/236,051号、第10/942,733号、第10/959,909号、第11/158,274号、第11/298,317号、第11/298,296号、第および11/284,805号に記載されている。これらの剤は商業的に購入してもよく、あるいは公開された方法に従って製造してもよい。
【0100】
特別な実施態様において、ADPモジュレーターは血小板ADP受容体のアンタゴニストまたは不活性化剤、またはヒトCD39モジュレーター(例えば、組換え可溶性ecto-ADPase/CD39)である。
【0101】
ADP受容体モジュレーターは、例えば、米国特許第4,051,141号、第4,127,580号、第5,955,477号、Journal of Medicinal Chemistry, 1999,Vol.42,p.213-220、米国特許第5,721,219号、第4,529,596号、第4,847,265号、第5,576,328号、第5,288,726号、またはWO 02/04461に記載された方法、あるいはそれに類似する方法(また、その中に開示されたADPモジュレーター主題に関してはここに引用して援用する米国特許出願公開番号20050192245も参照されたい)に従って容易に調製することができる。
【0102】
3.HMG CoAレダクターゼ阻害剤
ここに使用するのに適した、スタチンとも言われる、HMG CoAレダクターゼ阻害剤は、限定されるものではないが、米国特許第3,983,140号に開示されたメバスタチンおよび関連化合物、米国特許第4,231,938号に開示されたロバスタチン(メビノリン)および関連化合物、米国特許第4,346,227号に開示されたようなプラバスタチンおよび関連化合物、米国特許第4,448,784号、および第4,450,171号に開示されたシンバスタチンおよび関連化合物を含み、プラバスタチン、ロバスタチンまたはシンバスタチンが好ましい。ここに使用してもよい他のHMG CoAレダクターゼ阻害剤は、限定されるものではないが、フルバスタチン、セリバスタチン、アトロバスタチン、米国特許第4,613,610号に開示されたメバロノラクトン誘導体のピラゾールアナログ、PCT出願WO 86/03488に開示されたメバロノラクトン誘導体のインデンアナログ、米国特許第4,647,576号に開示された6-[2-(置換-ピロール-1-イル)アルキル]ピラン-2-オンおよぼその誘導体、SearleのSC-45355(3-置換ペンタン二酸誘導体)ジクロロアセテート、PCT出願WO 86/07054に開示されたメバロノラクトンのイミダゾールアナログ、フランス特許第2,596,393号に開示された3-カルボキシ-2-ヒドロキシ-プロパン-ホスホン酸誘導体、欧州特許出願第0221025号に開示された2,3-ジ-置換ピロール、フランおよびチオフェン誘導体、米国特許第4,686,237号に開示されたメバロノラクトンのナフチルアナログ、米国特許第4,499,289号に開示されたようなオクタヒドロナフタレン、欧州特許出願第0,142,146 A2号に開示されたメビノリン(ロバスタチン)のケトアナログ、ならびに他の公知のHMG CoAレダクターゼ阻害剤を含む。加えて、ここに使用するのに適当なHMG CoAレダクターゼを阻害するのに有用なホスフィン酸化合物はGB 2205837に開示されている。
【0103】
4.アスピリン感受性、不耐性、および抵抗性個体を同定する方法
アスピリン-感受性、アスピリン-不耐性、またはアスピリン-抵抗性である個体を同定する方法は当業者によく知られている(Jenkinsらの文献、BMJ 328:434(2004)); Cowburn A. S.らの文献、J. Clin. Invest. 101(4):834-846 (1998); 欧州特許出願公開番号EP 1 190 714 A2; Nizankowskaらの文献、Eur. Respir. J. 15:863-869(2000)); Casadevall J.らの文献、Thorax 55:921-24(2000); Johnstonらの文献、Eur. Respir, J. 8:411-15(1995); およびRamanuja S.らの文献、Circulation 110: e1-e4(2004)を参照されたい)。
【0104】
加えて、アスピリン-感受性個体は、個体の医学的記録をレビューし、または個体が従前にアスピリンまたはいずれかの他のCOX-1阻害剤、またはNSAID、例えば、アスピリン(Bayer(登録商標))、イブプロフェン(Advil(登録商標))、ナプロキセン(Aleve(登録商標)またはNasrosyn(登録商標))、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ジクロフェナック(Voltaren(登録商標))、エトドラック(Lodine(登録商標))、フェノプロフェン(Nalfon(登録商標))、インドメタシン(Indocin(登録商標))、ケトプロフェン(Orudis(登録商標)、Oruvail(登録商標))、ケトララック(Toradol(登録商標))、ナブメトン(Relafen(登録商標))、オキサプロジン(Daypro(登録商標))、スリンダック(Clinoril(登録商標))、トルメチン(Tolectin(登録商標))、およびロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))に応答しての有害効果を有したか否かに関して個体に問い合わせすることによって同定してもよい。
【0105】
アスピリンに応答しての典型的な有害効果の例は、例えば、減少した強制呼気容量、減少した鼻容量、喘息、吐き気、胃出血、耳鳴り、鼻詰まり、咳、蕁麻疹、および血圧の降下を含む。アスピリン-感受性個体は、例えば、血液または尿のような生物学的試料からの、アッセイしてもよい、上昇したレベルのロイコトリエンE4を個体が有することに基づいて同定してもよい。
【0106】
アスピリン-抵抗性個体を同定する方法は、例えば、米国特許出願公開番号US2006/016165に記載されている。血小板機能のいくつかの実験室的テストが設計されており、全血を用いてアスピリン-抵抗性を同定するのに利用できる。利用された2つの主なツールは、アルテグラ迅速血小板機能アッセイ(Ultegra Rapid Platelet Function Assay)(RPFA-ASA)およびPFA-100デバイスである。
【0107】
RPFA-ASAカートリッジは、アスピリン治療によって達成された血小板凝集の阻害のレベルに取り組むように具体的に設計されている。製造業者によって述べられているように、それはアスピリンの効果の定性的尺度である。そのアッセイにおいて、フィブリノーゲン-被覆ビーズは、金属カチオンおよび没食子酸プロピルによる刺激に続いてのGP IIb-IIIa受容体への結合を介して血小板を凝集させる。凝集によって誘起される光学シグナルの変化(活性化された血小板が全血懸濁液中のビーズに結合し、それを凝集させるにつれて光透過率が増大する)が測定される。最近の研究は、このデバイスを用いてアスピリンの非-応答性の高い発生率(23%)を検出しており、アスピリン非-応答体である確率の2倍でもって関連すべき冠動脈病の履歴を決定している(Wang, J. C.らの文献、Am J Cardial, 92(12):1492-4(2003))。しかしながら、アスピリン抵抗性は、GP IIb-IIIa阻害剤、ジピリダモール、ピラビックス(またはチクリド)、またはNSAID(イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナック、インドメタシン、ピロキシカム)いずれかを処方された患者においては、アスピリン抵抗性はRPFAアッセイによって評価することができない。というのは、それらの化合物はアッセイに干渉するからである。
【0108】
PFA-100デバイスにおいては、クエン加血液試料の血小板ホメオスタシス能力(PHC)は、血小板プラグが、(アスピリンの検出で用いられる)コラーゲン-エピネフリン被覆膜へと切断された150M開口を閉塞するのに必要な時間によって決定される。PFA-100系においては、クエン加血液の試料は、約4,000ないし5,000/秒の剪断速度にて開口を通って吸引される。これらの剪断の高い条件下では、GP IbaおよびGP IIb-IIIaの双方とのvWF相互作用は血栓プロセスを誘起する。臨床的事象の関係では、vWFの血漿中レベルは、血小板-リッチな血栓の形成および内皮細胞の創傷に続いて増加すると予測される。
【0109】
B.医薬組成物
例えば、ADP受容体モジュレーターおよびHMG CoAレダクターゼ阻害剤を含めたTPモジュレーターおよび他の剤は、例えば、経口、鼻内、直腸、舌下、バッカル、非経口、または経皮を含めたいずれかの適当な送達の経路によって投与してもよく、これらの剤は、かくして、それに従って処方してもよい。
【0110】
該剤は、典型的には、医薬組成物で通常使用される担体、ビヒクルおよび/または賦形剤、例えば、タルク、アラビアガム、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、カカオバター、水性または非水性溶媒、油、パラフィン誘導体、グリコール等で処方される。着色および香味剤を、経口投与用に設計された製剤に添加してもよい。
【0111】
液剤は水、あるいはエタノール、1-2プロピレングリコール、ポリグリコール、ジメチルスルホキシド、脂肪アルコール、トリグリセリド、グリセリンの部分エステル等のような生理学的に適合する有機溶媒を用いて調製してもよい。有効成分を含有する非経口組成物は慣用的な技術を用いて調製してもよく、滅菌等張生理食塩水、水、1,3-ブタンジオール、エタノール、1,2-プロピレングリコール、水と混合されたポリグリコール、リンゲル液等を含む。
【0112】
組成物は、本発明に従って用いられる、1以上のTPモジュレーターおよび、任意に、1以上のADPモジュレーターを含んでもよい。それらは、さらに、例えば、スタチンのような1以上のさらなる剤を含んでもよい。これらの化合物はその医薬上許容される塩として処方されてもよい。そのような酸塩の中には以下の:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、二硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニル−プロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が含まれる。塩基塩はアンモニウム塩、ナトリウムおよびカリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウムのようなアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩のような有機塩基との塩、N-メチル-D-グルカミン、およびアルギニンおよびリシン等のようなアミノ酸との塩を含む。
【0113】
さらに、いずれの塩基性窒素−含有基も塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチルのようなハロゲン化低級アルキル;硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミルのような硫酸ジアルキル、塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルのような長鎖ハロゲン化物;臭化ベンジルおよびフェネチルのようなハロゲン化アラルキル等のような剤で第四級化してもよい。水または油可溶性または分散性生成物はそれにより得られる。
【0114】
本発明の医薬組成物は、とりわけ、慣用的な造粒、混合、溶解、カプセル化、凍結乾燥、または乳化プロセスのような当該分野でよく知られた方法によって製造することができる。組成物は顆粒、沈殿、または粒状物、凍結乾燥した、回転乾燥した、または噴霧乾燥した粉末、アモルファス粉末を含めた粉末を含めた粉末、錠剤、カプセル剤、シロップ、坐薬、注射、エマルジョン、エリキシル、懸濁液または溶液を含めた種々の形態で生産してもよい。処方は、任意に、安定化剤、pH修飾剤、界面活性剤、生物学的利用性修飾剤およびこれらの組合せを含有してもよい。
【0115】
医薬処方は油、水、アルコール、およびその組合せのような滅菌液体を用いて液状懸濁液または溶液として調製してもよい。医薬上適当な界面活性剤、懸濁化剤、または乳化剤を経口または非経口投与用に加えてもよい。懸濁液は落花生油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油およびオリーブ油のような油を含んでもよい。懸濁液製剤はオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリドおよびアセチル化脂肪酸グリセリドのような脂肪酸のエステルを含有してもよい。懸濁液処方物はエタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、グリセロールおよびプロピレングリコールのようなアルコールを含んでもよい。ポリ(エチレングリコール)のようなエーテル、鉱油およびペテロラタムのような石油系炭化水素および水を懸濁液処方物で用いてもよい。
【0116】
これらの組成物で用いてもよい医薬上許容される担体はイオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清蛋白質、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物のような緩衝液物質、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース−ベースの物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を含む。
【0117】
1つの実施態様によると、本発明の組成物は、哺乳動物、好ましくはヒトへの医薬投与のために処方される。本発明のそのような医薬組成物は経口、非経口、吸入スプレイ、局所、直腸、鼻内、バッカル、膣または移植された貯蔵庫を介して投与してもよい。本明細書中で用いる用語「非経口」は皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、鞘内、肝臓内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む。好ましくは、組成物は経口または静脈内投与される。本発明の処方物は短期−作用性、即−放出性、または長期−作用性として設計してもよい。なおさらに、化合物は持続放出処方物としての投与(例えば、注射)のような全身手段よりはむしろ局所手段で投与することができる。
【0118】
本発明の組成物の滅菌注射形態は水性または油性懸濁液であってよい。これらの懸濁液は、適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤を用いて当該分野で公知の技術に従って処方してもよい。滅菌注射製剤は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、非−毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液であってもよい。使用してもよい許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌不揮発性油は、慣用的には、溶媒または懸濁化媒体として使用される。この目的では、合成モノ−またはジ−グリセリドを含めたいずれの無刺激性不揮発性油を使用してもよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、特に、そのポリオキシエチル化バージョンでの、オリーブ油またはヒマシ油のような天然の医薬上許容される油がそうであるように、注射剤の製剤で有用である。これらの油溶液または懸濁液は、エマルジョンおよび懸濁液を含めた医薬上許容される投与形態の処方物で通常使用されるカルボキシメチルセルロールまたは同様な分散剤のような長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含有してもよい。医薬上許容される固体、液体または他の投与形態の製造で通常使用されるTween、Spanおよび他の乳化剤または生物学的利用性増強剤のような他の通常使用される界面活性剤を処方の目的で使用してもよい。化合物は、ボーラス注射または連続注入によるような注射による非経口投与のために処方してもよい。注射用の単位投与形態はアンプルまたは多−用量容器中に入れてもよい。
【0119】
本発明の医薬組成物はカプセル剤、錠剤、水性懸濁液または溶液を含めた、いずれの経口的に許容される投与形態であってもよい。経口使用のための錠剤の場合においては、通常使用される担体はラクトースおよびトウモロコシ澱粉を含む。ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤も典型的には加えられる。カプセル形態では、有用な希釈剤はラクトースおよび乾燥したトウモロコシ澱粉を含む。水性懸濁液を経口使用で必要とする場合、有効成分を乳化および懸濁化剤と組合せる。所望であれば、ある種の甘味、香味または着色剤を加えてもよい。
【0120】
別法として、本発明の医薬組成物は直腸投与用の坐薬の形態であってもよい。これらは、室温では固体であるが、直腸温度では液体であり、従って、直腸中で融解して薬物を放出する適当な非−刺激性賦形剤と該剤とを混合することによって調製してもよい。そのような物質はカカオバター、蜜?およびポリエチレングリコールを含む。
【0121】
本発明の医薬組成物は、特に、治療の標的が、目、皮膚、または下部腸管の病気を含めた、局所適用によって容易に接近可能な領域または器官を含む。適当な局所処方物はこれらの領域または器官の各々について容易に調製される。
【0122】
下部腸管用の局所適用は、直腸坐薬処方物(前記参照)または適当な浣腸処方物にて行ってもよい。局所適用では、医薬組成物は、1以上の担体に懸濁または溶解させた活性な成分を含有する適当な軟膏に処方してもよい。本発明の化合物の局所投与用の担体は、限定されるものではないが、鉱油、液状ペテロラタム、白色ペテロラタム、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水を含む。別法として、医薬組成物は、1以上の医薬上許容される担体に懸濁または溶解させた活性成分を含有する適当なローションまたはクリームに処方してもよい。適当な担体は鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステル、ワックス、セチルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水を含む。
【0123】
本発明は、TPモジュレーターを単独で、あるいはADPモジュレーターと組合せて含む投与形態を含む。これらの投与形態は、さらに、スタチンを含んでもよい。本発明の投与形態は、一定量のTPモジュレーター、および処方された量で投与または摂取する場合に有効であるのに十分ないずれかの他の存在する剤を含む。かくして、投与形態は単一の単位投与形態、例えば、錠剤中に、または2以上の単位投与形態、例えば、錠剤中に、治療上有効量のTPモジュレーター、および存在するいずれかの他の剤を含んでもよい。単一の単位投与形態に治療上有効量を含むのが望ましいが、2以上の単位投与形態を用いて、例えば、必要な剤の容量のため、治療上有効量を送達することが時々必要である。
【0124】
投与形態は、例えば、錠剤、トローチ、カプセル、カプレット、糖衣錠、ロゼンジ、非経口剤、液体、粉末、および皮膚の表面への移植または投与のために設計された処方物を含んでもよい。特に適当な投与形態は経口投与用の錠剤またはカプセル、ならびに静脈内負荷用量を保持する容器である。全ての投与形態は、当該分野で標準的な方法を用いて調製してもよい(例えば、「レミングトンの製剤学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」, 第16版 A. Oslo ed., Easton, Pa.(1980)を参照されたい)。
【0125】
有効量を含有する前記投与形態のいずれも、ルーチン的な実験の範囲内にあり、かつ本発明の範囲内にある。治療上有効な用量は、投与の経路および投与形態に依存して変化し得る。本発明の好ましい化合物または化合物類は、高い治療指標を呈する処方物である。治療指標は、LD50およびED50の間の比率として表すことができる毒性および治療効果の間の用量比率である。LD50は集団の50%に対して致死的な用量であって、ED50は集団の50%において治療的に有効な用量である。該LD50およびED50は、動物細胞培養または実験動物において標準的な医薬的手法によって決定される。
【0126】
本明細書中に記載された組成物は、シールされたアンプルまたはバイアルのような単位−用量または多−用量容器中に供してもよい。そのような容器は、典型的には、使用するまで処方物の滅菌性および安定性を維持するようにシールされる。一般に、液体処方物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンとして貯蔵してもよい。別法として、組成物は、使用の直前に滅菌液状担体の添加しか必要としない凍結−乾燥された条件に貯蔵してもよい。
【0127】
患者への投与のための組成物は1以上の投与単位の形態を採ってもよく、ここに、例えば、錠剤、カプセル剤またはカシェ剤は単一の投与単位であってよく、エアロゾル形態のTPモジュレーターの容器は複数の投与単位を保持してもよい。ある実施態様において、本発明の組成物の投与単位は、治療上有効量の静脈内投与に適したTPモジュレーターの処方物を含む、静脈内負荷用量を保持するカプセルまたは容器として供される。特別な実施態様において、TPアンタゴニストのような抗血栓剤を含む組成物は、1以上の静脈内用量にて、または連続的注入によって投与される。特別な実施態様において、静脈内負荷用量は約1、5、10、20、30、50、100、125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950または1000mgの抗血栓剤、あるいはイフェトロバンのようなTPアンタゴニストを含む。特別な実施態様において、静脈内負荷用量は約400ないし500mgのイフェトロバンを含む。
【0128】
特別な実施態様において、TPアンタゴニストを含む組成物は、典型的には、経口投与用の1以上の用量の錠剤処方物にて投与される。錠剤処方物は、例えば、即時放出処方物、制御放出処方物、または延長放出処方物であってよい。特別な実施態様において、錠剤は約1、5、10、20、30、50、100、125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950または1000mgの、イフェトロバンのようなTPアンタゴニストを含む。特別な実施態様において、錠剤処方は約200ないし250または400ないし500mgのイフェトロバンを含む。
【0129】
本明細書中で用いるように、「制御放出」とは、同一量の有効成分を含有する即時放出処方が同一時間の間に放出するであろうよりも、長時間にわたって持続されかつ調節された様式での処方から有効成分の放出をいう。例えば、抗血栓剤を含む即時放出処方物はヒト対象への投与から15分以内に処方物から80%の有効成分を放出してもよく、他方、同一量の抗血栓剤を含む本発明の延長放出処方物は15分よりも長い時間内に、好ましくは、6ないし12時間内に有効成分の80%を放出するであろう。制御放出処方物は、それを必要とする哺乳動物への投与のより低い頻度を可能とする。加えて、制御放出処方は、それを必要とする哺乳動物への投与に際して、化合物の動態学的または毒性的プロフィールを改良することができる。
【0130】
本明細書中で用いるように、「延長放出」とは、同一量の有効成分を含有する即時放出処方物が同一時間の間に放出するであろうよりも長い時間にわたって持続されかつ調節された様式での処方物からの有効成分の放出をいう。例えば、抗血栓剤を含む即時放出処方物はヒト対象への投与から15分内に処方物から有効成分の80%を放出でき、他方、同一量の抗血栓剤を含む本発明の延長放出処方物は15分よりも長い時間内に、好ましくは、12時間よりも長い時間内に、例えば、24時間内に有効成分の80%を放出するであろう。さらに、本発明の延長放出処方物は、同一量の有効成分を含有する比較制御放出処方物が同一時間にわたって放出するであろうよりも、イン・ビボにてより長い時間にわたって有効成分、好ましくはイフェトロバンを放出する。非限定的例として、有効成分であるイフェトロバンを含有する比較制御放出処方物は、ヒト対象への投与から4ないし6時間の時間にわたってイン・ビボにて処方物に存在する有効成分の量の80%を放出することができ、他方、本発明の延長放出処方物は6ないし24時間の時間にわたってイン・ビボにて有効成分の同一量の80%を放出することができる。従って、本発明の延長放出処方物は、対応する制御放出処方物よりも患者への投与のより低い頻度を可能とする。加えて、延長放出処方物は患者への投与に際して有効成分の薬物動態学的または毒性的プロフィールを改善することができる。
【0131】
これらの単位投与処方物は、1日につき1回、1日につき2回または1日につき2回を超えての、患者への投与のために調製することができる。本発明による医薬組成物の所望の用量は単一用量にて、あるいは適当な間隔にて投与される分割用量として、例えば、1日当たり2、3以上の用量として便宜には供することができる。ある実施態様において、成人についてのTPモジュレーターの適当な日用量は、1日当たり、1および5000mgの間、1および1000mgの間、10および1000mgの間、50および500mgの間、100および500mgの間、200および500mgの間、300および500mgの間、または400および500mgの間である。従って、毎日2回投与する場合には、成人について適当な単一用量は0.5および2500mgの間、0.5および500mgの間、5および500mgの間、25および250mgの間、50および250mgの間、100および250mgの間、150および250mgの間または200および250mgの間である。単位用量処方物は多−投与に対して容易に適合させることができる。
【0132】
特別な実施態様において、イフェトロバンの単位投与形態は約450mgのイフェトロバンを含有する単一カプセル、あるいは各々が約225mgのイフェトロバンを含有する2つのカプセルである。前記した代表的な投与形態とは別に、医薬上許容される賦形剤および担体、ならびに投与形態が、一般には、当業者に公知であり、本発明に含まれる。いずれかの特定の患者のための特定の投与および治療養生法は、使用される特定の化合物の活性、患者の年齢、体重、一般的な健康、性別およびダイエット、ならびに投与の時間、排出の速度、薬物の組合せ、治療する医師の判断、および治療すべき特定の病気の酷さを含めた種々の因子に依存するであろうと理解されるべきである。有効成分の量は、組成物中の、もし存在すれば、特定の化合物および他の治療剤にも依存するであろう。
【0133】
本明細書に記載されるように、本発明の抗血栓剤、例えば、TPアンタゴニストは、例えば、TPアンタゴニスト、トロンボキサンアンタゴニスト、ADP受容体アンタゴニスト、またはCD39モジュレーターを含めた1以上の他の抗血栓剤または医薬剤と組合せて用いてもよい。組み合わせて用いる場合、より低い用量の1以上の組み合わせた抗血栓剤を利用して、所望の効果を達成することができ、というのは、該2以上の抗血栓剤は相加的にまたは相乗的に作用し得るからであると理解される。従って、1以上の組み合わせた抗血栓剤の治療上有効量は、抗血栓剤が単独で投与される場合の治療上有効量の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、または20%未満に相当し得る。
【0134】
該2以上の抗血栓剤は同一の投与経路によってまたは異なる投与経路によって、同時にまたは異なる時点で投与してもよい。例えば、投与スケジュールを調節するためには、抗血栓剤を、同時に、または異なる協働した時間に個々の投与単位にて別々に投与してもよい。各物質は前記したのと同様な様式で別々の単位投与形態にて個々に処方することができる。しかしながら、抗血栓剤の固定された組合せはより便宜であって、特に、経口投与用の錠剤またはカプセルにおいて好ましい。かくして、本発明は2以上の抗血栓剤を含む単位投与処方物も提供し、ここに、各血栓剤は組み合わせて投与された場合に、治療上有効量にて存在させる。
【0135】
特別な実施態様において、患者にはイフェトロバンおよび1以上のさらなる抗血栓剤を供する。加えて、本発明は、イフェトロバン、および1以上のさらなる抗血栓剤を含む組合せ単位投与処方物を含む。例えば、本発明の方法は、もう1つのTPアンタゴニストまたはADP受容体アンタゴニストと組合せてイフェトロバンを患者に供することを含むことができる。特別な実施態様において、イフェトロバンがP2Y12阻害剤、クロピドグレル、プラスグレル、またはカングレロールと組合せて供される。特別な実施態様において、当該剤をアスピリンと組み合せて用いる場合に有効なことが従前に示された量にて、(イフェトロバンまたはもう1つの抗血栓剤と組合せて)さらなる抗血栓剤が供される。
【0136】
ある実施態様において、クロピドグレルは約10ないし約1000mg、好ましくは約25ないし約600mg、最も好ましくは約50ないし約100mgの範囲内の経口日用量で供される。1つの特別な実施態様において、ほぼ400ないし500mgのイフェトロバンおよびほぼ50ないし100mgのクロピドグレルが1日当たりに患者に供される。関連する実施態様において、ほぼ200ないし400mgのイフェトロバンおよび25ないし50mgのクロピドグレルが1日当たりに患者に供される。1つの特別な実施態様において、患者には、1日当たり約450mgのイフェトロバンおよび約75mgのクロピドグレル(例えば、「Plavix(登録商標)」)が供される。
【0137】
ある実施態様において、チクロピジンは1997 PDR(250mg 1日2回)に記載された日用量で供されるが、約10ないし約1000mg、好ましくは約25ないし約800mgの日用量を本発明に従って使用してもよい。1つの特別な実施態様において、ほぼ400ないし500mgのイフェトロバンおよびほぼ250ないし750mgのチクロピジンを1日当たりに患者に供する。関連する実施態様において、ほぼ200ないし400mgのイフェトロバンおよび100ないし250mgのチクロピジンを1日当たりに患者に供する。1つの特別な実施態様において、患者には、1日当たり、約450mgのイフェトロバンおよび約500mgのチクロピジン(例えば、「Tidclid(登録商標)」)が供される。
【0138】
ある実施態様において、プラスグレルは1日当たり1ないし100mg、または1日当たり約10mgの日用量で供される。1つの特別な実施態様において、ほぼ400ないし500mgのイフェトロバンおよびほぼ1ないし100mgのプラスグレルが1日当たりに患者に供される。関連する実施態様において、ほぼ200ないし400mgのイフェトロバンおよび1ないし5mgのプラスグレルが1日当たりに患者に供される。1つの特別な実施態様において、患者には約450mgのイフェトロバンおよび約10mgのプラスグレルが1日当たりに供される。
【0139】
本発明は、さらに、イフェトロバン、および本明細書中に記載されたもののいずれかを含めた1以上のさらなる抗血栓剤を含む単位用量を提供する。特別な実施態様において、さらなる抗血栓剤はADP受容体アンタゴニストである。特別な実施態様において、さらなる抗血栓剤はP2Y12阻害剤である。本発明の単位用量は、特別な実施態様において、日用量のイフェトロバンおよび日用量のさらなる1以上の抗血栓剤を含む。別法として、単位用量は、当該日用量が、例えば、同一の時点または異なる時点で2つの単位用量にて摂取できるように、抗血栓剤の日用量の50%のような日用量の一部を含む。
【0140】
以下の実施例は説明のためにのみ供され、断じて限定するものではない。当業者であれば、実質的に同様な結果を得るように変形し、または修飾することができる種々の非−臨界的パラメーターを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0141】
(実施例1)
正常なボランティアにおけるイフェトロバンおよびアスピリンの抗血栓活性
正常なボランティア(n=10)の全血に混ぜた(イン・ビトロで加えられた)イフェトロバンはアスピリンに対して同様な抗血栓活性を呈する(最小5日間の間の325mg/日;図3)。実験は、第Xa因子阻害剤(10M)で抗凝固処理した全血をヒトコラーゲンIII型−被覆灌流チャンバーを通して灌流することによって行った。ローダミン6G(1.25g/ml最終濃度)を用いて血小板をイン・ビトロにて蛍光標識し、蛍光顕微鏡を用いてコラーゲン表面に動員された蛍光血小板の量を測定することによって、血栓症をリアルタイムでモニターした。結果を図3に示す。
【0142】
(実施例2)
効果およびADPモジュレーター
次に、ADPモジュレーターの効果を、灌流チャンバーデバイスを用いて観察されたように、クロピドグレル(2週間の間の75mg/日)で処理された正常なボランティア(n=10)の全血に混ぜたイフェトロバンの抗血栓効果に関して調べた。(30nMないし1Mの範囲の濃度の)イフェトロバンは、図4に示すように、血栓症を、クロピドグレルバックグラウンドにてアスピリンと同程度まで阻害した。
【0143】
(実施例3)
血栓を脱安定化させるにおけるPGD2の役割
予め形成された血栓へのTPアンタゴニストの添加は血栓抑制を引き起こした(図5A)。U46619(TXA2ミメティック)は血栓安定性を促進できる(図5B)ので、TPを通じた継続したTXA2−誘導シグナリングが安定な血栓を維持するのに必要とされると結論された(図5B)。また、驚くべきことに、TPアンタゴニストの脱血栓症活性は従前のアスピリン治療によって妨げられたることが判明した(図5C)。生理学的濃度のPGD2の添加は、アスピリン処理した血液中でかなり血栓抑制活性を誘導した。
【0144】
前記結果の考察
従前のイン・ビボ研究は、トロンボキサン経路がブロックされた場合に達成された抗血小板活性をCOX-1阻害が部分的に阻害することを示している。Greseleおよび同僚は、インドメタシンが、BM 13.177(トロンボキサン受容体アンタゴニスト)の出血時間の延長活性を促進するダゾキシベン(トロンボキサンシンターゼ阻害剤)の能力をブロックすることを見出した(Gresele P.らの文献、J. Clin. Invest. 80: 1435-45(1987)を参照されたい)。Fitzgeraldおよび共同研究者は、アスピリンが、U63,557a(トロンボキサンシンターゼ阻害剤)とL636,499(トロンボキサン受容体アンタゴニスト)との組合せ使用によって達成されたイヌの冠動脈における閉塞時間の延長を阻害することを示した(Fitzgerald,D. J.らの文献、J. Clin. Invest. 82: 1708-13(1988)を参照されたい)。血小板の文献においては、アスピリンは血栓形成促進性メディエーターであるTXA2の生産をブロックするが、それはPGD2(PGD2はCOX-1によって生じる血小板阻害性プロスタグランジンの1つである)のような抗血栓メメディエーターの活性も減少させると長い間認識されてきた。今回、PGD2は、その効果がTPモジュレーターによってブロックされない強力な内因性血栓抑制剤である(図5C)ことが驚くべきことに発見された。前記した結果は、TP拮抗作用によって達成された血栓抑制活性が、PGD2のような安定性の内因性COX-1-依存性阻害剤によるものであることを示す。PGD2が血小板反応性を行うメカニズムは知られており、P2Y12の阻害剤によって共有された経路である、血小板アデニレートシクラーゼの活性化を含む(Cooper B.らの文献、Blood 54:684-93(1979)を参照されたい)。かくして、これらのデータは、TPアンタゴニストによる血栓症の逆行を予測する。
【0145】
冠動脈病に罹った患者で利用される技術水準の慢性抗血小板療法は、アスピリンおよびクロピドグレルの組合せにある。直接的TPアンタゴニスト(第2週の最後において全血に混ぜた、イフェトロバン)の存在下でのクロピドグレル(2週間の間の75mg/日)に対する12人の健康な個体の抗血栓プロフィールは評価され、組合せ療法(3週間の75mg/日クロピドグレル+第3週にわたる325mg/日アスピリン)に際して得られたのと比較されている。実験データは、イフェトロバンおよびアスピリン双方の効果がクロピドグレルの抗血栓活性とで相乗効果を生じ、P2Y12拮抗作用バックグラウンドに対して、TPアンタゴニスト vs アスピリンの少なくとも非−劣等性を予測することを示す(図4)。
【0146】
CLARITYの研究は、いくつかの利点が、ST−セグメント上昇に罹った急性心筋梗塞(AMI)患者におけるクロピドグレルの使用に関連することを示している(梗塞関連動脈の関存性率の改良、および虚血性合併症の低下)(Sabatine M. S.らの文献、NEJM 352:1179-89(2005)を参照されたい)。しかしながら、短縮されたSTセグメント上昇を逆行させるクロピドグレルの無能力は、クロピドグレルの活性な代謝産物(クロピドグレルは、P2Y12をブロックする活性な代謝産物を生じさせるのに肝臓の代謝を必要とするプロドラッグである)が、血栓抑制を誘導するのに必要な濃度を達成しなかったことを示し得る。従って、作用の速い開始を伴うTPモジュレーターは、クロピドグレル処理AMI患者に対してより高い保護を供するであろうと予測される。
【0147】
TPモジュレーターまたはTXA2の阻害剤の1つの主な利点は、それらが血栓症および炎症の内因性の負のモジュレーターの合成に影響しないことである。事実、TPおよび混合シンターゼ/TPアンタゴニストの阻害剤がPGD2およびPGE2のレベルを低下させず(および潜在的に上昇させる)。従って、冠動脈病を持つアスピリン−耐性およびアスピリン−不耐性喘息患者は、関連する危険性なくしてTPアンタゴニストの保護効果から利点を受けるであろうと予測される。
【0148】
(実施例4)
P2Y12アンタゴニストと組み合わせたインドメタシンまたはイフェトロバンの抗血栓効果
この研究において、固定された濃度の直接的P2Y12アンタゴニストを含有する全血にイン・ビトロで混ぜた、インドメタシン(10nMおよび10uMの間)、ビヒクル対照、およびイフェトロバン(10nMおよび10uMの間)の抗血栓および抗−凝集効果を調べる。P2Y12はクロピドグレルの活性な代謝産物によって標的化される血小板の表面に存在する2つのADP受容体の1つである。
【0149】
実験は、リアルタイム血栓症灌流チャンバーデバイスで行う。この系においては、第Xa因子抗凝固処理全血の灌流によって誘起されたリアルタイム血栓プロセスを、動脈剪断速度にてコラーゲン被覆灌流チャンバーを用いて調べる。インドメタシンおよびイフェトロバンは、直接的P2Y12アンタゴニストによって達成されたものに対する血栓プロセスのさらなる阻害を供すると予測される。
【0150】
PRP−誘導血小板凝集は、血小板アゴニストとしての、アラキドン酸(200Mおよび1mMの間)、U46619(TPアゴニスト)(0.5Mおよび5Mの間)およびコラーゲン(4g/ml程度)で行う。インドメタシンおよびイフェトロバンは、コラーゲン-誘導血小板凝集に対する直接的P2Y12アンタゴニストで得られたものに対する凝集プロセスのさらなる阻害を供すると予測される。
【0151】
(実施例5)
イン・ビボでのクロピドグレルと組合せたイフェトロバンおよびアスピリンの抗血栓効果
イフェトロバンおよびアスピリンの抗血栓活性は、野生型およびP2Y12ヘテロ接合性マウスまたはクロピドグレルで処理された野生型マウスを用いてイン・ビボで評価する。結果は、イン・ビボにて、P2Y12およびTPアンタゴニストの組合せが、P2Y12アンタゴニストおよびアスピリンと同様な血餅形成に対する保護を供することができるのを示すであろう。
【0152】
利用される方法は生体顕微鏡検査である。この系においては、腸管膜動脈の創傷は、従前に塩化第二鉄溶液に浸漬されている濾紙の局所的適用によって行われる。創傷した血管壁上への蛍光標識血小板の動員のモニタリングは、コンピューターに連結された倒立蛍光顕微鏡を用いてリアルタイムで行う。イフェトロバンおよびアスピリンは、野生型動物において少なくとも同様な抗血栓活性、およびP2Y12ヘテロ接合性動物においてかなりの阻害を呈すると予測される。
【0153】
胃腸出血のイン・ビボモニタリング、およびロイコトリエンのレベルの決定を行う。ロイコトリエンはアスピリン療法に応答して増加し、他方、イフェトロバン−処理動物においては一定に維持されると予測される。
【0154】
(実施例6)
アスピリン−不耐性患者におけるクロピドグレルと組合せたインドメタシンまたはイフェトロバンの抗血栓効果
クロピドグレル(最小5日間の75mg/日、n10)での処理前および後のアスピリン−不耐性個体の血液中にイン・ビトロで混ぜた、ビヒクル対照、インドメタシン(10nMないし10uM)、およびイフェトロバン(10nMないし3uM)の抗血栓および抗−凝集効果の用量応答実験を行う。実験は、動脈剪断速度条件下でリアルタイム灌流チャンバーアッセイで行う。イフェトロバンおよびインドメタシンはクロピドグレルによって達成された阻害の程度を増加させるであろうと予測される。該実験の目標は、TPアンタゴニストを用いることによって、アスピリン−不耐性個体においてさらなる保護が達成することができるのを示すことである。インドメタシンはイン・ビトロでアスピリンを置換えるのに用いられるCox-1阻害剤である(アスピリンは技術的理由でイン・ビトロにて、またはアスピリン不耐性喘息(AIA)個体は評価されるので、イン・ビボで用いることができる)。インドメタシンを用いることによって、我々は、Cox-1阻害が、事実、さらなる抗血栓特性を供することができるのを確認することができる;しかしながら、不耐性はCOX-1阻害剤の使用を妨げる。コラーゲン、AA、およびU46619−誘導血小板凝集は先のように行われる。増大した阻害 vs クロピドグレル単独が観察されると予測される。
【0155】
(実施例7)
正常およびアスピリン−感受性またはアスピリン−不耐性患者におけるイフェトロバンの不耐性、安全性および薬物動態分析
不耐性、安全性およびPDアッセイは同時に行う。イフェトロバンの抗−凝集および抗血栓活性は、まず、(ベースラインにおいて、および5日間の処理後に)正常なボランティアにおいて、次いで、アスピリン−感受性、アスピリン−不耐性およびアスピリン−抵抗性個体において評価する。血漿中でテストされる/達成されるイフェトロバンの用量は10nMおよび1uMの間の範囲である。
【0156】
血栓プロセスは、正常なボランティアにおけるクロピドグレルのそれと同等な抗血栓活性を示す用量[0.625ないし1.25uM]にて、固定された用量のP2Y12アンタゴニストの不存在下および存在下で動脈剪断速度条件下で灌流チャンバー系を用いて評価する。U46619-、AA-およびコラーゲン−誘導血小板凝集の評価は前記したように行う。
【0157】
さらなる対象において、ADPモジュレーターをさらに投与する。アスピリン−不耐性の兆候および症状をモニターする。単独の、またはADPモジュレーターと組合せたTPモジュレーターはアスピリン−感受性または不耐性または抵抗性の兆候および症状を誘導しない。
【0158】
(実施例8)
アスピリン−耐性およびアスピリン−感受性患者におけるイフェトロバンの抗血小板効果
アスピリン不耐性(AERD)−喘息(AIA)患者および健康なボランティアの血栓プロフィールを、実質的には実施例1に記載したように、生理学的血小板アゴニストを用いて脱感作後にイフェトロバンおよびアスピリンの抗血小板効果を比較することによって評価した。
【0159】
リアルタイム灌流チャンバーアッセイ(RTTP)はFax阻害剤(10uM 034)で抗凝固処理した血液を用いて行い、コラーゲン−被覆毛細管を通して灌流した(1100/秒)。コラーゲン表面での血栓形成は、蛍光顕微鏡を用いてリアルタイムでモニターして、蛍光標識(R6G)血小板を検出した。
【0160】
光透過率アグレゴメトリー(Light Transmittance Aggregometry)(LTA)アッセイは標準的な手法によって行い、血小板の凝集はコラーゲンまたはアラキドン酸で開始した。アッセイはアスピリン脱感作の前(イン・ビトロで混ぜた+/-イフェトロバン)および後に行った。図7に示すように、灌流チャンバーアッセイを用いて測定した場合、イフェトロバンは健康なボランティア(図7A)およびAERD患者(図7B)双方において有意な抗血栓活性 vs アスピリンを有した。
【0161】
イフェトロバンはコラーゲン−誘導血小板凝集アッセイにおいて健康なボランティアおよびAERD患者双方において有意な抗−凝集活性も示した(図8)。具体的には、イフェトロバンは、正常なボランティア(図8A)およびAERD患者(図8B)の双方において、濃度>100nMにてコラーゲン−誘導血小板凝集および血栓症に対してアスピリン効果を再生した。
【0162】
血栓症を阻害する他のTPアンタゴニストの能力は、直接的作用TPアンタゴニストであるSQ29548、およびTPおよびTxAシンターゼの混合阻害剤であるテルボグレルを用いて示された。灌流チャンバーテスト(RTTP)を用いて決定されたように、イン・ビトロで混ぜたSQ29548およびテルボグレルの双方は、AERD患者において(脱感作後に)アスピリンと同様なレベルの血栓症の阻害を供した(図9)。
【0163】
健康なボランティアおよびAERD患者におけるイフェトロバン vs アスピリンの抗−凝集活性は、アラキドン酸−誘導血小板凝集アッセイを用いてさらに示された(図10Aおよび10B)。本明細書中に記載された実施例および実施態様は説明目的のためだけであり、それに徴して種々の修飾または変形が当業者に示唆され、本出願の精神および範囲、および添付の請求の範囲内に含まれると理解される。本明細書中に引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、全ての目的で、ここに引用してその全体を援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
COX-1阻害剤での療法が有害であることが判明しているか、または有害であると予測される個体において病気、障害または創傷を治療または予防する方法であって、治療上有効量のTPモジュレーターおよび、任意に、ADP受容体モジュレーターまたはCD39モジュレーターを個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
該COX-1阻害剤がアスピリンである請求項1記載の方法。
【請求項3】
該COX-1阻害剤が非−ステロイド抗−炎症薬物である請求項1記載の方法。
【請求項4】
該個体がアスピリン−不耐性である請求項1記載の方法。
【請求項5】
該個体がアスピリン−感受性である請求項1記載の方法。
【請求項6】
該TPモジュレーターが、イフェトロバン、テルボグレル、ピコタミド、S-18886、UK-147,535、セラトダスト-AA-2414、ラマトロバン、リドグレル、BMI-531、または酸化窒素供与TPアンタゴニストである請求項1記載の方法。
【請求項7】
該ADP受容体モジュレーターがN-[2-(メチルチオ)エチル]-2-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ]-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビスホスホン酸とのモノアンヒドリド、2-(プロピルチオ)-5'-アデニル酸、ジクロロメチレンビス(ホスホン酸)とのモノアンヒドリド、(+)-(S)-α-(2-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-酢酸メチル、または2-アセトキシ-5-(α-シクロプロピルカルボニル-2-フルオロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジンである請求項1記載の方法。
【請求項8】
該ADP受容体モジュレーターがクロピドグレルである請求項1記載の方法
【請求項9】
該TPモジュレーターの有効量が約1mg/kgないし約200mg/kgである請求項1記載の方法。
【請求項10】
該TPモジュレーターの有効量が約5mg/kgないし約150mg/kgである請求項1記載の方法。
【請求項11】
該TPモジュレーターの有効量が約10mg/kgないし約100mg/kgである請求項1記載の方法。
【請求項12】
該TPモジュレーターの有効量が約20mg/kgないし約50mg/kgである請求項1記載の方法。
【請求項13】
さらに、治療上有効量のTPモジュレーターおよび、任意に、ADP受容体モジュレーターまたはCD39モジュレーターを個体に投与するに先立って、個体がアスピリン−感受性またはアスピリン−不耐性であると同定する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項14】
個体に、アスピリンの投与に続いて従前に有害な反応を有したか否かを決定するように問合せをし、ここで、肯定的な応答は個体がアスピリン−感受性であると同定する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
該有害な反応が:減少した強制呼気容量、喘息、吐き気、胃出血、耳鳴り、鼻詰まり、咳、蕁麻疹、および血圧の降下よりなる群から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
該個体が:
該個体にアスピリンを投与し;次いで、
個体からの生物学的試料をロイコトリエンE4(LTE4)の存在についてスクリーニングする;
ことによってアスピリン−感受性であると同定され、ここで、該生物学的試料中のLTE4の存在は個体がアスピリン感受性であると同定する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
該生物学的試料が血液または尿である請求項16記載の方法。
【請求項18】
該個体が:
該個体にアスピリンを投与し;次いで、
個体の強制呼気容量(FEV1)を測定する;
ことによってアスピリン−感受性であると決定され、ここで、減少したFEV1は個体がアスピリン−感受性であると同定する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
該個体が:
該個体にアスピリンを投与し;次いで、
個体の鼻容量を測定する;
ことによってアスピリン−感受性であると決定され、ここで、減少した鼻容量は個体がアスピリン−感受性であると同定する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
該投与が、投与から約2ないし約10時間後に、約10ないし約500ng/mlのTPモジュレーターの平均血漿中濃度に導く、請求項1記載の方法。
【請求項21】
該TPモジュレーターがTPアンタゴニストである、請求項1記載の方法。
【請求項22】
該TPアンタゴニストがイフェトロバンである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
該病気または障害が心血管病もしくは障害である、請求項1記載の方法。
【請求項24】
該心血管病または障害が急性冠動脈症候群または血栓障害である請求項23記載の方法。
【請求項25】
該急性冠動脈症候群が:急性心筋虚血症、急性心筋梗塞、およびアンギナよりなる群から選択される請求項24記載の方法。
【請求項26】
該血栓障害が:アテローム性動脈硬化症、血小板増加症、末梢動脈閉塞、および狭窄よりなる群から選択される請求項24記載の方法。
【請求項27】
該病気または障害が:鎌状赤血球貧血、卒中、喘息、肺高血圧、および急性肺損傷よりなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項28】
有効用量のADP受容体モジュレーターを個体に投与することを含む請求項1記載の方法。
【請求項29】
該ADP受容体モジュレーターの有効用量が約1mg/kgないし約200mg/kgである請求項28記載の方法。
【請求項30】
該ADP受容体アンタゴニストの有効用量が約1mg/kgないし約150mg/kgである請求項28記載の方法。
【請求項31】
該ADP受容体モジュレーターの有効用量が約10mg/kgないし約100mg/kgである請求項28記載の方法。
【請求項32】
該ADP受容体モジュレーターの有効用量が約20mg/kgないし約50mg/kgである請求項28記載の方法。
【請求項33】
該ADP受容体モジュレーターがチエノピリジン誘導体である請求項28記載の方法。
【請求項34】
該チエノピリジン誘導体がチクロピリジンまたはプラスグレルである請求項33記載の方法。
【請求項35】
該TPモジュレーターの有効用量が、ADP受容体モジュレーターの投与によって低下される請求項28記載の方法。
【請求項36】
該TPアンタゴニストの有効用量が、ADP受容体モジュレーターの投与によって少なくとも25%だけ低下される請求項35記載の方法。
【請求項37】
該TPモジュレーターの有効用量が、ADP受容体モジュレーターの存在下で少なくとも50%だけ低下される請求項35記載の方法。
【請求項38】
該TPモジュレーターの有効用量が、ADP受容体モジュレーターの投与によって少なくとも75%だけ低下される請求項35記載の方法。
【請求項39】
該個体が冠動脈ステントを有する請求項1記載の方法。
【請求項40】
該個体が冠動脈バイパス術を受けている、または受けることが予定されている請求項1記載の方法。
【請求項41】
心血管障害について個体を治療する方法であって、治療上有効量のTPモジュレーターおよび、任意に、ADP受容体モジュレーターまたはCD39モジュレーターを投与し、次いで、個体にアスピリンまたはNSAIDを摂取しないように指示し、またはアドバイスすることを含む方法。
【請求項42】
該個体が急性動脈血栓症を有したことがある請求項41記載の方法。
【請求項43】
該個体がアスピリン−感受性またはアスピリン−不耐性であることが知られていない請求項41記載の方法。
【請求項44】
COX-1阻害剤での療法が有害であることが判明した個体において血栓症を治療または予防する方法であって、治療上有効量のTPモジュレーターおよび、任意に、ADP受容体モジュレーターまたはCD39モジュレーターを個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項45】
個体のオン−ポンプ冠動脈バイパス術の間に血小板の喪失または凝集を低下させる方法であって、冠動脈バイパス術に先立って、またはその間に、有効量のTPモジュレーターおよび、任意に、ADP受容体モジュレーターまたはCD39モジュレーターを個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項46】
アスピリン−感受性またはアスピリン−抵抗性個体において血小板凝集を阻害する方法であって、少なくとも350nMの血中濃度を少なくとも6、12、24、または48時間維持するのに十分な量のイフェトロバンを個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
さらに、ADP受容体アンタゴニストを個体に投与することを含む、請求項46記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A−B】
image rotate

【図8A−B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A−B】
image rotate


【公表番号】特表2010−527331(P2010−527331A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506698(P2010−506698)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/062565
【国際公開番号】WO2008/137791
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509303464)ポルトラ ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】