説明

X線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラム

【課題】 検査対象とすべき最適な断層像を特定することが困難であり、結果として高精度の検査を行うことができなかった。
【解決手段】 X線によって検査対象を検査するにあたり、X線を基板上の検査対象品に照射して異なる方向から撮影した複数のX線画像を取得し、上記複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行し、当該再構成演算によって得られた再構成情報に含まれる上記基板の配線パターンの情報に基づいて上記検査対象品の検査位置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、検査対象品にX線を照射して異なる位置に配設した検出器によってX線画像を撮影し、検査対象品の3次元構造を再構成することによって当該検査対象品の良否判定等が行われている。例えば、基板に対して水平な断層像として検査対象品の画像を取得し、この断層像に基づいて検査対象品の直径の実測値を取得し、期待される値と比較することによって良否判定を行っている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表2003−514233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来のX線検査装置においては、検査対象とすべき最適な断層像を特定することが困難であり、結果として高精度の検査を行うことができなかった。
具体的には、BGAのはんだバンプなど、小さな検査対象品について検査を行うためには、検査対象の像が含まれる検査位置を正確に特定する必要がある。しかし、上述の特許文献1に開示されているように水平スライス画像に基づいてはんだ量を計算し、計算されたはんだの分布から最良の水平スライス画像を取得する構成を採用しても、検査位置を正確に特定することはできない。すなわち、検査対象であるはんだバンプには不良品が含まれ得るが、不良品と良品とでははんだの分布が異なり、分布は安定した値にはならない。この構成は、検査対象品の情報に基づいて検査対象品の検査位置を決めていることになるので、検査位置を決定するための精度が検査対象品の良否に影響される。従って、信頼性の高い良否判定を行うことはできない。
【0004】
また、自動車の搭載部品など、全数検査を必要とする検査対象品を検査する場合、生産効率を向上するためには、高精度の検査を自動で高速に実施することが極めて重要である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、高精度の検査を自動で高速に行うことが可能なX線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的の少なくともひとつを達成するため、異なる位置に検出器を配置して基板上の検査対象品を撮影した複数のX線画像を取得し、各X線画像に基づいて再構成演算を行う。再構成演算によれば、照射範囲の物質の構造に関する情報を示す再構成情報(例えば3次元画像)が得られるので、この情報によれば、基板に形成されている配線パターンの情報を取得することができる。
【0006】
配線パターンは基板の面に対して平行な面内で形成されているので、配線パターンの情報を取得することができれば、当該配線パターンとの相対関係に基づいて任意の位置を正確に取得することができる。この結果、配線パターンに対して予め決められた関係にある検査位置を正確に決定し、当該検査位置の再構成情報に基づいて正確に良否判定を実行することが可能になる。
【0007】
ここで、上記X線画像取得手段においては、X線の出力範囲内に検査対象品を配置し、透過したX線を検出器によって撮影したX線画像を取得する。また、X線は、異なる位置に配設した検出器によって撮影され、各位置にて撮影されたX線画像を取得することで複数のX線画像を取得する。各X線画像の撮影位置が異なることを利用し、公知の手法を用いれば、検査対象品について再構成演算を行って検査を行うことができる。
【0008】
X線画像を取得するためには、X線源からのX線を検査対象品に対して照射することができればよい。X線検査装置の構造を簡易な構造とし、可動部を少なくして検査の高速化を図るためには、所定の立体角の範囲にX線を出力することができるX線源を採用するのが好ましい。この構成においては、X線の出力範囲に検出面が含まれるようにX線の検出器を配置すればよい。すなわち、照射範囲に制約のあるX線管を使用するのではなく、広い範囲にX線が照射されるX線管を使用することによって、X線画像の撮影に際してX線源の角度変更や移動を伴わずに複数のX線画像を取得可能である。
【0009】
尚、このようなX線源としては、例えば、透過型開放管を採用すればよい。すなわち、透過型開放管においては、薄いターゲットに衝突した電子によってX線が発生し、X線が当該ターゲットを透過して外部に出力される際にほぼ全方位(立体角2π)が出力範囲になる。むろん、ほとんどの場合、被検査対象について撮像するための照射範囲として立体角2πは必要なく、少なくとも異なる位置に配設された検出面を含む立体角でX線を照射するX線源を採用すればよいが、立体角が大きいほど本発明を適用できる検査対象品が多くなり、汎用性が高くなる。
【0010】
むろん、X線画像を取得するための装置構成は、種々の構成を採用可能であり、異なる位置に配設した検出器によってX線画像を取得することができる限りにおいて、種々の装置を採用可能である。また、異なる位置に検出器を配設するために、ひとつの検出器を移動させてもよいし、予め複数の位置に対して検出器を固定的に配設してもよいし、複数の検出器を移動させてもよい。
【0011】
X線画像の撮影に際しては、X線画像内に所望の検査対象品が含まれるように配設することができればよい。このためには、検査対象品を容易に移動できる構成を採用するのが好ましく、例えば、X−Yステージ等に複数の対象品を載置する構成を採用することができる。尚、本発明においては、異なる位置に配設した検出器によって検査対象品を撮影するので、再構成演算を行うのに必要なX線画像を取得するために検査対象品を回転移動させる必要がない。従って、検査対象品を回転移動させるX線検査装置と比較して、X線源と検査対象品とを近接させることが可能である。このため、X線画像取得手段の検出面において容易に大きな拡大率のX線画像を取得することができ、高精度の検査を実施することが可能である。
【0012】
X線画像は、検査対象品を透過したX線を示していれば良く、異なる位置に配設した検出器にてこのX線画像を取得することができれば良い。これらの検出手段としては、例えば、2次元的に配置したCCDによってX線の強度を計測するセンサを採用可能である。また、検出面は、X線源の焦点に対向していればよく、検査対象品が平面に配置される場合には、配置される平面に対する相対的な関係が異なる複数の位置に検出面を配設する。むろん、検出器はイメージインテンシファイアなど、種々の構成を採用可能である。
【0013】
本発明においては、再構成演算手段によって再構成演算を実行することにより、検査対象品の3次元構造に関する情報(再構成情報)を取得するので、X線画像取得手段においては、検査対象品の3次元構造に関する情報を取得できるように複数のX線画像を取得する。例えば、異なる位置に配設した検出器のそれぞれにおいて、検出器とX線源の焦点とを結ぶ直線が異なる直線であれば、2つのX線画像に基づいて検査対象品の3次元構造を取得することができ、検出器をこのような配置としてX線画像を取得すればよい。むろん、3次元構造を取得するための手法は特に限定されず、2次元的な画像を逐次算出する手法を採用してもよい。
【0014】
尚、異なる方向から撮影したX線画像を用いれば、再構成演算手段によって再構成演算を実行することが可能であるが、この再構成演算を行う場合には、検査対象品に対して所定の対称性を有する位置からX線画像を撮影するのが好ましい。このためには、検査対象品を配置する平面に対して所定の関係を持つ軸を中心にX線検出器の検出面を回転させたことを想定した場合の位置(以下、回転位置と呼ぶ)に検出面を配設する。より具体的には、X線源の焦点とX線照射範囲の中心とを結ぶ直線を軸とし、この軸を中心にした所定の半径の円周上に回転位置を想定すればよい。むろん、この軸に垂直な軸を中心にした所定の半径の円周上に回転位置を想定しても良い。
【0015】
以上のように、検出面を複数の回転位置に配設すれば、回転対称性のある位置から検査対象品を撮影することができ、撮影したX線画像の回転対称性を考慮して3次元構造を解析することが可能になる。尚、この構成においては複数の回転位置にてX線画像を取得するが、X線画像を取得するために検査対象品を回転させることはない。従って、簡易な構成によって検査対象を平面移動させるのみで検査対象品の検査を行うことが可能になり、多数の検査対象品を検査する場合であっても高速にその処理を実施することができる。
【0016】
本発明のX線検査装置においては、再構成演算によって得られた再構成情報に基づいて良否判定を行う。この良否判定としては、検査対象の断層像、断面積、形状、はんだ付けにおけるブリッジや接触不良の有無等を検査する構成を採用可能である。この良否判定に際しては、検査を行うための検査位置、例えば、検査対象となる断層面の位置、はんだ付けにおけるブリッジや接触不良の有無を検査する対象となる位置等を特定する必要がある。
【0017】
そこで、決定手段によって検査位置を決定するが、ここでは、配線パターンの情報に基づいて検査位置を決定することができればよい。すなわち、本発明においては、基板上の部品を検査対象品としており、基板に対して配線パターンが配線済みの状態で検査対象品を基板に実装することを想定しているので、検査対象品の良否にかかわらず配線パターンは変化しない。従って、配線パターンに基づいて検査位置を特定すれば、検査対象品の良否にかかわらず、正確に検査位置を決定することができる。また、配線パターンと検査位置との位置関係は予め特定することができるので、配線パターンの情報に基づいて自動で検査位置を決定することができる。この結果、高精度の検査を自動で高速に行うことが可能である。
【0018】
決定手段において決定する検査位置は、種々の手法によって特定することができる。例えば、基板に対して垂直な方向における配線パターンの位置から検査位置を特定してもよい。すなわち、配線パターンは基板によって種々のパターンであるが、配線パターンは基板に対して平行に配線されるので、基板に対して垂直な方向で配線パターンの位置を特定すれば、この配線パターンとの相対的な距離によって基板に対して垂直な方向にある任意の位置を正確に特定することができる。
【0019】
そこで、請求項2のように、基板に対して平行な方向の断層像に含まれる上記基板の配線パターンの情報から基板に対して垂直な方向における配線パターンの位置を特定し、上記検査位置を決定する構成を採用してもよい。この構成によれば、配線パターンの位置に基づいて検査位置を正確に決定することができるので、配線パターンに含まれるパッドに対してはんだ付けを行う場合など、配線パターンに対して所定の関係にある検査対象を正確に検査することができる。
【0020】
より具体的には、上述のように検査対象の断層像、断面積、形状、はんだ付けにおけるブリッジや接触不良の有無等を検査する際には、上記再構成演算後の再構成情報において良否を判断可能な情報が含まれる部分を利用する。このような部分は、検査対象品のどの部分であるのかを予め特定することができるので、この部分が配線パターンの位置とどのような関係にあるのかを予め特定しておけば、配線パターンの位置に基づいて正確に検査位置を決定することができる。
【0021】
尚、上述のように配線パターンは基板に対して平行な面内で形成されるので、基板に対して平行な方向の断層像であって、当該基板に対して垂直な方向の位置が異なる複数の断層像を取得し、各断層像の中から配線パターンが含まれる像を抽出すれば、この断層像の位置(基板に対して垂直な方向の位置)が配線パターンの位置であるとすることができる。また、複数の断層像に配線パターンの像が含まれる場合には、配線パターンが最も鮮明に結像している断層像を選択するなど、種々の手法を採用することができる。
【0022】
さらに、配線パターンの情報としては、種々の情報を利用可能であるが、その好ましい一例として、配線パターンの像に特徴的な特徴量を利用可能である。すなわち、請求項3のように、当該特徴量を抽出すれば、上記再構成された再構成情報の中で配線パターンの情報を特定することができる。すなわち、再構成情報によって形成される像から配線パターンの像を抽出することができる。この結果、配線パターンの位置を特定することができ、この位置との相対関係によって正確に検査位置を特定することが可能になる。
【0023】
上記再構成された再構成情報から配線パターンの情報を特定するためには種々の情報を採用可能であり、例えば、請求項4のように、画像のエッジ情報に基づいて配線パターンの情報であるか否かを特定してもよい。すなわち、再構成された再構成情報によれば、任意の面内についての断層像を作成可能であり、この断層像に配線パターンが含まれる場合には、配線の境界がエッジとして抽出できるはずである。そこで、画像のエッジ情報を参照すれば、再構成情報に含まれる情報が配線パターンの情報であるか否かを容易に特定することができる。
【0024】
ここで、画像のエッジ情報を抽出するための構成は、種々の構成を採用可能である。例えば、エッジ抽出フィルタ(Sobelフィルタ,Prewittフィルタ,Robertsフィルタ,Laplacianフィルタ等)によってエッジ画素を検出する構成を採用可能である。むろん、エッジ画素の抽出に際しては、一旦、ぼかし処理を行ってノイズやアーチファクトの影響を低減するなど、種々の構成を採用可能である。
【0025】
さらに、エッジに基づいて配線パターンであるか否かを判定するための構成も種々の構成を採用可能であり、エッジ画素の量に基づいて判定してもよいし、エッジの方向、エッジ画素が出現する様子がランダムであるか否か等によって判定してもよいし、パターンマッチングによって所定のエッジパターンに一致しているか否かを判定する構成を採用してもよい。
【0026】
むろん、配線パターンであるか否かを判定するための情報としては、エッジ情報に限られず、種々の情報を利用可能である。例えば、画像の明るさによって配線パターンであるか否かを判定してもよい。すなわち、配線パターンの像が周囲より明るく結像するのであれば、基板に対して垂直な方向に画像をスキャンし、明るさが極大になる位置が配線パターンの位置であるとすることができる。
【0027】
また、画像の空間周波数解析を利用してもよい。例えば、画像内に配線パターンが含まれることによって、画像の空間周波数が所定の範囲をとるのであれば、画像をフーリエ変換し、所定の空間周波数を持つスペクトルを算出し、あるいはそのスペクトルを積分する構成を採用可能である。すなわち、複数の断層像でこのスペクトルや積分値を比較し、配線パターンの画像である場合のスペクトルや積分値に最も近い断層像を配線パターンを含む断層像であるとすればよい。
【0028】
さらに、画像データのヒストグラムを利用してもよい。例えば、X線の強度を階調値とした画像データによってX線画像を表現しているとき、画素毎の階調値についてヒストグラムを計算する。このヒストグラムにおいて、分布が離散的である場合や、分散が小さい場合には、特定の濃度のパターンが集中していることになる。そこで、X線画像について画素毎の階調値のヒストグラムを算出し、画像内に配線パターンが含まれる場合の濃度に相当する階調値の近傍(この階調値の前後所定範囲内)でヒストグラムの分布を分析すれば、断層像が配線パターンの画像であるか否かを判定することができる。
【0029】
さらに、配線パターンの境界は直線的であることを利用して配線パターンの画像であるか否かを判定してもよい。例えば、ハフ変換を用いて画像から直線的なパターンを検出し、この直線が所定以上の長さである場合や、所定のパターンである場合などに配線パターンの画像であると判定する構成を採用可能である。
【0030】
さらに、検査位置を決定する際に利用する配線パターンの情報は、任意の位置の配線パターンの情報であればよいが、より確実に配線パターンの情報を抽出するために好ましい部位の情報を利用する構成を採用してもよい。すなわち、再構成演算による再構成情報においては、その情報の質が再構成情報の部位によって異なっている。例えば、再構成演算を行うためのX線画像の数が少ないことによって、X線の吸収率が大きな物質の周囲に本来存在しないはずの像(アーチファクト)が形成されることがある。
【0031】
そこで、請求項5のようにこのアーチファクトの影響を排除するため、アーチファクトの影響が所定以下の部位における配線パターンの情報に基づいて、上記検査位置を決定する。すなわち、X線の吸収率が大きな物質の近傍やX線の吸収率が大きな物質が密集している部位にはアーチファクトが生じ得るので、このような部位から離れた部位における配線パターンの情報を利用する。この結果、アーチファクトの影響を排除しながら検査位置を決定することが可能になる。
【0032】
尚、ここでは、アーチファクトの影響を抑えながら画像を解析することができればよい。従って、アーチファクトの影響を定量的に測定できなくてもよく、例えば、解析対象として選択する部位において、上記X線の吸収率が大きな物質の像が所定数以下である場合や、当該物質と解析対象とすべき部位との距離が所定の距離以上である場合にアーチファクトの影響が所定以下の部位であるとしてもよい。
【0033】
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法においても本発明を適用可能である。その一例として、請求項6にかかる発明は、請求項1に対応した方法を実現する構成としてある。むろん、その実質的な動作については上述した装置の場合と同様である。また、請求項2〜請求項5に対応した方法も構成可能である。以上のようなX線検査装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。
【0034】
むろん、発明の実施態様がソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。発明の思想の具現化例として上記方法を制御するためのソフトウェアとなる場合には、かかるソフトウェアあるいはソフトウェアを記録した記録媒体上においても当然に存在し、利用される。その一例として、請求項7にかかる発明は、請求項1に対応した機能をソフトウェアで実現する構成としてある。むろん、請求項2〜請求項5に対応したソフトウェアも構成可能である。
【0035】
また、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。一次複製品、二次複製品などの複製段階についても同等である。その他、供給装置として通信回線を利用して行う場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)本発明の構成:
(2)X線検査処理:
(3)他の実施形態:
【0037】
(1)本発明の構成:
図1は本発明にかかるX線検査装置10の概略ブロック図である。同図において、このX線検査装置10は、X線発生器11とX−Yステージ12とX線検出器13aと搬送装置14とを備えており、各部をCPU25によって制御する。すなわち、X線検査装置10はCPU25を含む制御系としてX線制御機構21とステージ制御機構22と画像取得機構23と搬送機構24とCPU25と入力部26と出力部27とメモリ28と高さセンサ制御機構29とを備えている。この構成において、CPU25は、メモリ28に記録された図示しないプログラムを実行し、各部を制御し、また所定の演算処理を実施することができる。
【0038】
メモリ28はデータを蓄積可能な記憶媒体であり、予め検査対象データ28aと撮像条件データ28bとが記録されている。検査対象データ28aは、検査対象品の位置を示すデータであり、本実施形態においては、基板上に配設された複数のバンプをX線検出器13aの視野に配設するためのデータである。すなわち、本実施形態においては、基板上に規則的に並べられたバンプを検査対象品としている。また、本実施形態においては、バンプが実装された基板の厚さを示すデータも検査対象データ28aに含まれている。
【0039】
撮像条件データ28bは、X線発生器11にてX線を発生させる際の条件を示すデータであり、X線管に対する印加電圧,撮像時間等を含む。また、メモリ28には、CPU25の処理過程で生成される各種データを記憶することが可能である。例えば、上記X線検出器13aによって取得したX線画像を示すX線画像データ28cを記憶することができる。尚、メモリ28はデータを蓄積可能であればよく、RAMやHDD等種々の記憶媒体を採用可能である。
【0040】
X線制御機構21は、上記撮像条件データ28bを参照し、X線発生器11を制御して所定のX線を発生させることができる。X線発生器11は、いわゆる透過型開放管であり、X線の出力位置である焦点Fからほぼ全方位、すなわち、立体角2πの範囲にX線を出力する。
【0041】
ステージ制御機構22はX−Yステージ12と接続されており、上記検査対象データ28aに基づいて同X−Yステージ12を制御する。本実施形態において、検査対象品はバンプであり、バンプが配設された基板をX−Yステージ12上に載置して良否判定を行う。従って、良否判定の際にステージ制御機構22は、上記検査対象データ28aを参照し、バンプがX線検出器13aの視野に含まれるようにX−Yステージ12を制御する。
【0042】
また、搬送機構24は、搬送装置14を制御して基板12aをX−Yステージ12に搬入する。すなわち、搬送装置14によって一方向に基板12aを搬送し、X−Yステージ12において基板12a上の複数のバンプを検査し、搬送装置14にて検査後の基板12aを搬出する処理を連続的に実施できるように構成されている。
【0043】
画像取得機構23はX線検出器13aに接続されており、同X線検出器13aが出力する検出値によって検査対象品のX線画像を取得する。取得したX線画像は、X線画像データ28cとしてメモリ28に記憶される。本実施形態におけるX線検出器13aは、2次元的に分布したセンサを備えており、検出したX線からX線の2次元分布を示すX線画像データを生成することができる。
【0044】
本実施形態においては、バンプがX線検出器13aの視野に含まれるようにしてX線画像を取得するので、上記X線画像にはバンプの透過像が含まれることになる。また、上記基板12aには、銅などの電気伝導体によって配線パターンが形成されており、上記X線画像には当該配線パターンの透過像も含まれる。尚、本実施形態におけるバンプは、前工程において溶融され、上記配線パターンのパッドに予め形成されたはんだと接合するようになっている。従って、両はんだが溶融し、接合していれば良品であり、接合が不十分であれば不良品である。
【0045】
X線検出器13aはアームを介して回転機構13bに接続されており、X線検出器13aは、X線発生器11の焦点Fから鉛直上方に延ばした軸Aを中心に半径Rの円周上を回転可能である。この回転機構13bは、画像取得機構23のθ制御部23aによって制御される。また、X線発生器11の焦点FからX線検出器13aにおける検出面の中心に対して延ばした直線と、当該検出面とが直交するように検出面が配向されている。
【0046】
出力部27は上記X線画像等を表示するディスプレイであり、入力部26は利用者の入力を受け付ける操作入力機器である。すなわち、利用者は入力部26を介して種々の入力を実行可能であるし、CPU25の処理によって得られる種々の演算結果やX線画像データ、検査対象品の良否判定結果等を出力部27に表示することができる。
【0047】
高さセンサ制御機構29は、高さセンサ15に接続されており、上記検査対象データ28aに基づいて、X線発生器11の焦点Fと基板12aとの距離(z方向の高さ:本実施形態では焦点Fの高さが"0")を取得する。高さセンサ15は、この距離を計測するセンサであれば良く、種々のセンサを採用可能である。尚、当該高さの計測は、後述するように高精度の測定を必要としないので、任意の位置において基板12aの高さを計測してもよいし、検査対象のバンプが載置された部分にて基板12aの高さを計測してもよく、種々の構成を採用可能である。
【0048】
CPU25は、メモリ28に蓄積された各種制御プログラムに従って所定の演算処理を実行可能であり、検査対象品の検査を行うために、図1に示す搬送制御部25aとX線制御部25bとステージ制御部25cと画像取得部25dと良否判定部25eと高さセンサ制御部25fとにおける演算を実行する。搬送制御部25aは、搬送機構24を制御して、適切なタイミングで基板12aをX−Yステージ12に供給し、また、適切なタイミングで搬送装置14を駆動して検査済みの基板12aをX−Yステージ12から取り除く。
【0049】
X線制御部25bは、上記撮像条件データ28bを取得し、上記X線制御機構21を制御して所定のX線をX線発生器11から出力させる。ステージ制御部25cは、上記検査対象データ28aを取得し、バンプをX線検出器13aの視野内に配置するための座標値を算出し、ステージ制御機構22に供給する。この結果、ステージ制御機構22は、この座標値がX線検出器13aのいずれかの視野に含まれるようにX−Yステージ12を移動させる。
【0050】
画像取得部25dは、画像取得機構23のθ制御部23aに指示を行い、X線検出器13aを回転させる。また、画像取得機構23が取得するX線画像データ28cをメモリ28に記録する。良否判定部25eは、X線画像データ28cに基づいて再構成演算を行い、当該再構成演算結果に基づいてバンプが良品であるか、不良品であるかを判定する。このとき、再構成演算結果に基づいてバンプの検査を行うべき検査位置を正確に特定する処理を行っており、この結果、正確な良否判定を行うことができる。
【0051】
高さセンサ制御部25fは、上記検査対象データ28aを取得し、基板12a上で検査対象のバンプが載置されている位置を特定して上記高さセンサ制御機構29に指示する。このとき、ステージ制御機構22によってX−Yステージ12を移動させ、基板12a上で検査対象のバンプが載置されている位置を高さセンサ15によって計測可能な位置に配設する。その後、高さセンサ制御機構29は高さセンサ15を制御し、X線発生器11の焦点Fと基板12aの下面との距離を取得する。
【0052】
(2)X線検査処理:
本実施形態においては、上述の構成において図2に示すフローチャートに従って検査対象品の良否判定を行う。本実施形態においては、多数の基板12aを搬送装置14によって搬送し、逐次X−Yステージ12上で基板12a上のバンプを検査する。このため、検査に際しては、まずステップS100にて搬送制御部25aが搬送機構24に指示を出し、搬送装置14によって検査対象の基板12aをX−Yステージ12上に搬送する。
【0053】
次に、検査対象となる複数のバンプをX線検出器13aの視野内に移動させてX線画像を取得するため、変数nを"0"に初期化する(ステップS105)。続いて、画像取得部25dはθ制御部23aに指示を行い、回転機構13bを駆動して予め決められた回転位置にX線検出器13aを移動させる(ステップS110)。本実施形態においては、回転角θnをθn=(n/N)×360°と定義しており、θ=0°の角度は予め決めてある。
【0054】
また、上記変数nは最大値をNとする整数である。従って、X線検出器13aは360°/Nずつ回転することになる。N+1は、X線画像を撮影する回転位置の数であり、要求される検査速度と検査精度、アーチファクトの程度および検査対象品の外形(軸対称性)から決定すればよい。例えば、N=31等(撮影回数32)を採用可能であるが、より少ない撮影回数(例えば、N=4,撮影回数5)でX線画像を取得し、補間演算によって擬似的にX線画像の枚数を増加する構成を採用してもよい。
【0055】
X線検出器13aの回転動作を行うと、当該回転後の検出器の視野内に検査対象であるバンプが含まれるようにX−Yステージ12を移動させる(ステップS115)。このとき、ステージ制御部25cは上記検査対象データ28aを参照し、座標(xi,yi)がX線検出器13aの視野中心となるようにステージ制御機構22に指示する。この結果、ステージ制御機構22はX−Yステージ12を移動させ、座標(xi,yi)をX線検出器13aの視野中心に配置する。
【0056】
すなわち、座標(xi,yi)は、検査対象のバンプをX線検出器13aの視野内に移動させるために予め基板12a上に設定された座標であり、X線検出器13aが上記回転角θnに配設されているときの視野中心は、X線検出器13aとX線発生器11の焦点Fとの相対関係から取得することができる。そこで、座標(xi,yi)をX線検出器13aの視野内に移動させることで、複数のバンプの透過像がX線検出器13aで取得されるように基板12aの位置を制御することができる。
【0057】
図3,図4は、この例を説明するための図であり、座標系およびX線検出器13a、X線発生器11の位置関係を示す図である。これらの図においては、X−Yステージ12による移動平面をx−y平面とし、この平面に垂直な方向をz方向としている。図3は、z−x平面を眺めた図であり、図4はx−y平面を眺めた図である。
【0058】
図3に示すように、X線検出器13aの検出面は、その中心と焦点Fとを結ぶ直線lに対して垂直になるように配向されている。すなわち、軸Aに対して傾斜され、x−y平面と検出面とに対して所定の角度(傾斜角)αが与えられている。上記直線lは、X線検出器13aの視野中心に相当するので、X線検出器13aの回転角θnから図4に示すように視野領域FOVを特定することができる。
【0059】
すなわち、上記直線lと上記x−y平面との交点を含む所定の領域がX線検出器13aの視野領域FOVとなるので、X線検出器13aの回転角θnを想定すれば、各回転角θnに対応する視野中心とその周辺の所定領域から視野領域FOVを決定することができる。そこで、上記ステージ制御機構22は視野領域FOVの中心と座標(xi,yi)とが一致するように、X−Yステージ12を移動させることになる。
【0060】
尚、図4においては、中心Oから−y方向に延ばした直線をθ=0とし、時計回りの回転角がθnであり、θn=0°,90°,180°,270°の視野領域をそれぞれFOV1〜FOV4としている。むろん、ステップS115においては、X線検出器13aの視野内に検査対象となるバンプを配設することができる限りにおいて種々の制御手法を採用可能である。また、一般的には、視野領域FOVの中に複数のバンプが含まれるので、異なる視野領域において共通のバンプの透過像が撮影される場合には、当該共通のバンプのすべてを検査対象にすることが好ましい。
【0061】
ステップS115にて、座標(xi,yi)をX線検出器13aの視野中心に配置したら、X線制御部25bおよび画像取得部25dの制御により、X線検出器13aにて回転角θnのX線画像Pθnを撮影する(ステップS120)。すなわち、X線制御部25bは、上記撮像条件データ28bを取得し、当該撮像条件データ28bに示される条件でX線を出力するようにX線制御機構21に対して指示を行う。この結果、X線発生器11が立体角2πの範囲でX線を出力するので、画像取得部25dはX線検出器13aが検出したX線画像を取得する。
【0062】
ステップS120にて回転角θnのX線画像Pθnを撮影すると、変数nが最大値Nに達しているか否かを判別し(ステップS125)、最大値Nに達していると判別されなければ変数nをインクリメントして(ステップS130)、ステップS110以降の処理を繰り返す。ステップS125にて変数nが最大値Nに達していると判別されたときには、必要な回数の撮影が終了しているので、以降の処理にて良否判定を行う。このため、本実施形態においては、良否判定部25eがX線画像Pθ0〜PθNを用いて3次元画像の再構成演算を行う(ステップS135)。
【0063】
再構成演算は、バンプの3次元構造を再構成することができれば良く、種々の処理を採用可能である。例えば、フィルタ補正逆投影法を採用可能である。この処理においては、まず、X線画像Pθ0〜PθNのいずれかに対してフーリエ変換を実施し、フーリエ変換で得られた結果に対して周波数空間でフィルタ補正関数を乗じる。さらに、この結果に対して逆フーリエ変換を実施することで、フィルタ補正を行った画像を取得する。尚、このフィルタ補正関数は、画像のエッジを強調するための関数等を採用可能である。
【0064】
続いて、フィルタ補正後の画像を、それが投影された軌跡に沿って3次元空間へ逆投影する。すなわち、X線検出器13aの検出面におけるある位置の像に対応する軌跡は、X線発生器11の焦点Fとこの位置とを結ぶ直線であるので、この直線上に上記画像を逆投影する。以上の逆投影をX線画像Pθ0〜PθNのすべてについて行うと、3次元空間上でバンプが存在する部分のX線吸収係数分布が強調され、バンプの3次元形状が得られる。
【0065】
次に、良否判定を行うための検査位置を特定する処理を行う。すなわち、再構成演算結果を利用してバンプの良否を正確に判定するためには、良品と不良品との差異が明確に現れる部位を検査対象とする必要があり、この部位を検査位置として特定する。本実施形態においては、基板12aの配線パターンと同じ高さ(z方向の位置)をバンプの検査位置とする。
【0066】
図5は、本実施形態におけるバンプとその良否の様子を説明する説明図である。この図の上部には基板12aを横方向(xあるいはy方向)から眺めた状態、下部には位置Tの断層像を縦方向(z方向)から眺めた状態を模式的に示している。この図の上部において、基板12aの上面にはレジスト12eおよびパッド12dが形成されている。パッド12dは銅などの導電体によって形成される配線パターンの端部であり、バンプ12cとの接点となる部分である。レジスト12eは、パッド12dの間および配線パターンの上面に塗布される樹脂であり、必要に応じて配線パターンの表面を絶縁している。
【0067】
バンプ12cは、予めチップ12bの下面に形成されているボール状のはんだであり、このバンプ12cを介してチップ12bの接点とパッド12dとを導通させることによって基板12aに対してチップ12bを実装するようになっている。この実装を行うために、予めパッド12d上にはんだのランドが形成され、当該ランドと未溶融のバンプとを接触させながら両者を溶融して結合する。従って、はんだが確実に溶融し、導通を確保している状態が良品である。
【0068】
図5においては、左側のバンプ12cが良品であり、右側のバンプ12cが不良品である。この良否は各種の手法によって判定可能である。例えば、図5に示すレジスト12eがパッドの周りに存在しない、いわゆるノーマルレジストであることを利用して良否判定を行うことが可能である。すなわち、ノーマルレジストにおいて、はんだの溶融前にパッド12dの周りにはんだは存在しないが、はんだが適切に溶融すると図5の上部左側に示すようにバンプ12cがたる型になり、溶融したはんだがパッド12dとレジスト12eとの間に浸入する。
【0069】
一方、はんだが溶融せず、あるいは溶融が不十分である場合には、図5の上部右側に示すようにバンプ12cがボール状のままであり、パッド12dとレジスト12eとの間に侵入しない。この様子は、図5の下部に示す位置Tの断層像において容易に観察することができる。すなわち、バンプ12cが良品である場合には図5の下部左側に示すようにパッド12dの周りに略円形にはんだが存在し、バンプ12cが不良品である場合には図5の下部右側に示すようにパッド12dの周りにはんだは存在しない。
【0070】
そこで、上記図5に示す位置Tを検査位置とし、この位置の断層像を解析すれば、容易かつ確実にバンプ12cの良否を判定することが可能である。すなわち、X線画像においては、X線の吸収率によって画像の濃度が異なるので、位置Tの断層像を観察すれば、パッド12dの周りにはんだが存在するか否かを容易に観察することができる。ここで、パッド12d等の配線パターンは薄いので、正確に位置Tを特定し、パッド12dの周辺を観察することが良否判定の精度にとって極めて重要な要素となる。
【0071】
そこで、検査位置を正確に特定するために、本実施形態では、まず、検査位置を大まかに特定する。このため、良否判定部25eは高さセンサ制御部25fに指示を行い、座標(xi,yi)における基板12aの高さZoptを計測させる(ステップS140)。すなわち、座標(xi,yi)は検査対象のバンプが載置された基板12a上の部位をx−y平面で示しているので、この部位が高さセンサ15の測定対象位置に配設されるように、X線制御機構21がX−Yステージ12を制御し、基板12aを移動させる。
【0072】
図3に示すように高さセンサ15は基板12aの下方に配設されており、レーザー出力器15aとラインセンサ15bとを備えている。レーザー出力器15aは基板12aに向けてレーザー光を出力可能であり、ラインセンサ15bは基板12aにて反射したレーザー光を検出するセンサである。ラインセンサ15bは、ある方向に沿って並べられた複数のセンサを備えており、レーザー光の出力方向の水平成分と当該ラインセンサが並べられる方向は一致している。
【0073】
従って、基板12aが垂直方向へ変動することに伴って反射レーザー光が変動すると、反射レーザー光がラインセンサ15bに到達する位置も変動する(例えば、基板12aが下方に変動すると、レーザー光の軌跡は実線から破線のように変動する)。そこで、ラインセンサ15bにて検出する反射レーザー光の輝度が最大となる位置が反射レーザー光の到達位置であるとし、この到達位置に基づいて基板12aと焦点Fとの距離(高さZopt)を計測する。
【0074】
尚、本実施形態においては、座標(xi,yi)において基板12aの高さZoptを計測しているが、基板12a上のどの位置においても高さZoptがほぼ同一であれば、座標(xi,yi)以外の任意の位置で高さZoptを計測すればよい。配線パターンは基板12aの上面に形成されているので、良否判定部25eはさらに検査対象データ28aを参照して当該基板12aの厚さZoffsetを取得する(ステップS145)。
【0075】
以上のようにして取得した高さZoptと厚さZoffsetとの和が上記X線発生器11の焦点Fから配線パターンまでの大まかな距離に相当するので、良否判定部25eはこの距離の近傍において焦点Fから配線パターンまでの正確な高さを取得して検査位置とすべく、複数の断層像を解析する。本実施形態においては、再構成演算によって生成されたアーチファクトの影響をできるだけ排除するため、アーチファクトの影響が少ない部位を解析領域ROIとして設定する(ステップS150)。
【0076】
この解析領域ROIは、種々の手法に基づいて決定することができるが、本実施形態においては、複数のバンプが並んでいる断層像において、上下左右のいずれか一方のみにバンプの像およびこの像によるアーチファクトが存在し、他の三方にはバンプの像およびアーチファクトが存在しない部分を解析領域ROIとしている。尚、解析領域ROIは配線パターンの高さを特定するための領域であり、x−y平面に平行な断層像の中で、配線パターンの像が含まれ得る位置に設定される。
【0077】
図6A〜図6Fは、位置Tの近傍における複数の断層像の例を示す図であり、図6Eにおいて解析領域ROIを示している。本実施形態において解析領域ROIは、三方にバンプの像およびアーチファクトが存在せず、配線パターンの像が存在する部分であり、図6Eに示す2箇所のいずれであっても解析領域ROIとして採用可能である。むろん、ここでは、アーチファクトの影響を抑えながら解析を行うことができればよく、アーチファクトが厳密に"0"になる必要はない。すなわち、バンプの像にはさまれた領域Rに比較して、図6Eに示すROIであればアーチファクトが少ないので、良好な解析を実施可能である。
【0078】
いずれにしても、ステップS150においては、予め決められた規則に従ってx−y平面内で解析領域ROIを特定する。解析領域ROIを決定したら、複数の断層像毎に解析を行う。このため、まず、焦点Fからの高さを示す座標zを"−Z/2+Zopt+Zoffset
"に初期化する(ステップS155)。尚、Zは座標zの変動範囲を示す数値であり、座標zをZopt+Zoffsetを中心として−Z/2〜Z/2の範囲で変動させることになる。
【0079】
次に、良否判定部25eは、再構成演算後の再構成情報から断層像F(x,y,z)を取得する(ステップS160)。ここで、x,yは上記解析領域ROIにおける座標値を値域とした複数の値であり、zは上記ステップS155(ループ処理の最中ではステップS180)にて設定された値である。この処理により、座標zにおける解析領域ROI内の断層像を取得することになる。
【0080】
断層像F(x,y,z)を取得したら、当該断層像F(x,y,z)に対してエッジ抽出フィルタ(例えばSobelフィルタ等)を適用し、エッジ画像FE(x,y,z)を取得する(ステップS165)。エッジ画像FE(x,y,z)は、座標zにおける解析領域ROIについてエッジ画素に有意な値を持つ画像であるので、本実施形態においては、解析領域ROI内の各画素における階調値(エッジ画像FE(x,y,z)の値)を足し合わせてエッジの強度を示す値Etot(z)を取得する(ステップS170)。
【0081】
座標zにおける断層像のエッジ強度値Etot(z)を算出したら、座標zが"Z/2+Zopt+Zoffset"を超えているか否かを判別する(ステップS175)。同ステップS175にて座標zが"Z/2+Zopt+Zoffset"を超えていると判別されなければ、座標zをインクリメントし(ステップS180)、ステップS160以降の処理を繰り返す。ステップS175にて座標zが"Z/2+Zopt+Zoffset"を超えていると判別されたときには、各座標zにおけるエッジ強度値Etot(z)を比較し、当該エッジ強度値Etot(z)が最大の値となっている座標zを検査位置とする(ステップS185)。
【0082】
すなわち、配線パターンは所定の幅で基板12a上に形成されているので、x−y平面に平行な断層像においては、配線パターンの境界がエッジとなる。また、座標zと配線パターンの高さとが一致している断層像においては配線パターンの像が鮮明になるため、像がシャープになり、エッジがより明確になる。そこで、本実施形態においては、解析領域ROI内で最もエッジ強度が強い断層像の座標zが配線パターンの座標zと一致しているとし、この座標zを検査位置としていることになる。
【0083】
図6A〜図6Fはこの例を示しており、図6A〜図6Fの順で座標zが大きくなっている。この例において、図6Aでは配線パターンの像が不鮮明であり、解析領域ROIにおいて多くのエッジ画素は検出されない。図6B〜図6Fと座標zが大きくなるに連れて徐々に解析領域ROIの配線パターンにおけるエッジが鮮明になる。この例においては、図6C〜図6Eあたりで上記エッジ強度値Etot(z)が最大となる。
【0084】
図6C〜図6Eの座標zは配線パターンの座標zと一致しており、これらの座標zにおける断層像においては、図6C〜図6Eに示すようにパッド12dの周辺にはんだが侵入しているか否かを確実に判定することが可能である。そこで、上述の処理によって、検査位置となる座標zを特定した後、良否判定部25eは、当該座標zにおけるバンプの断層像を取得して良否判定を行う(ステップS190)。
【0085】
すなわち、上記図5に示すパッド12dの周りにきれいにはんだが浸入しているか否かを当該断層像に基づいて判定し、バンプ12cの良否を判定する。以上のように、本発明においては、良否判定を行うべき位置を自動で正確に特定した後に良否判定を行っているので、高精度の検査を自動で高速に行うことが可能である。尚、図6に示す例においては、z方向の分解能が高いことに起因し、複数の座標zにおける透過像を良否判定に使用可能であるが、むろん、z方向の分解能は要求される検査精度や検査速度に応じて適宜変更可能である。
【0086】
(3)他の実施形態:
本発明においては、再構成演算結果から基板の配線パターンの情報を取得し、この情報に基づいて検査位置を特定することができればよく、上記実施形態の他、種々の構成を採用可能である。例えば、複数の回転位置にてX線画像を取得するにあたり、X線検出器13aを回転させるのではなく、固定的に配置された複数の検出面によってX線画像を取得しても良い。
【0087】
図7は、複数の検出器によってX線画像を取得するX線検査装置100の概略構成図である。同図に示すように、X線検査装置100の構成は多くの点でX線検査装置10の構成と共通であり、共通の構成については図1と同じ符号で示してある。図7に示すX線検査装置100は、X線画像取得手段として、複数のX線検出器130aを備えている。各X線検出器130aは、X線発生器11の焦点Fから鉛直上方に延ばした軸Aを中心にした半径Rの円周上に検出面の中心が存在するように配置されている。
【0088】
また、図7に示す構成においても、各検出面は軸Aに対して傾斜角αで傾斜されており、各検出面はX線発生器11によるX線の出力範囲内に含まれる。また、上記X線検出器130aの回転位置は上記図1におけるX線検出器13aの回転位置と同様に定義され、図7に示す例では、本実施形態では軸Aを中心に90度ずつ回転した4つの回転位置にX線検出器130aを配設しているが、むろん、より多数の位置あるいはより少数の位置にX線検出器130aを配設してもよい。
【0089】
以上の構成において、画像取得機構230では、回転機構に対する制御が不要である。すなわち、X線画像取得手段によるX線画像の撮影において、ステップS110の回転動作は不要であり、ステージ制御部25cによるX−Yステージ12の移動のみによってθ毎のX線画像Pθnを撮影することができる。このような構成においては、X線画像取得
手段での撮影に際してθ回転動作を行う必要がないので、非常に高速に検査を進めることが可能である。
【0090】
さらに、上述の実施形態においては、バンプを配設するx−y平面に対して垂直な軸を中心に回転を行った回転位置を想定し、各回転位置でX線画像を撮影していたが、むろん、バンプと検出器との相対的な関係は、このような関係に限られない。例えば、上記x−y平面に対して平行な軸を中心に回転を行った回転位置を想定し、各回転位置におけるX線画像を撮影しても良い。この場合であっても、一枚のX線画像において複数のバンプが含まれるように撮影し、各画像から同じバンプの透過像を抽出して、再構成演算を行えばよい。
【0091】
さらに、検査位置を配線パターンの高さと同じにすることが必須ではなく、配線パターンの高さに基づいて検査位置を特定することができればよい。例えば、図5に示す位置Tを検査位置として判定を行ってもよい。この位置Tは、バンプ12cが溶融しない場
合に、ボール状のはんだとパッド12d上のはんだとが接する位置であり、バンプ12cが不良であれば、この位置Tにおけるはんだの面積は小さくなる。一方、バンプ12c
が良品であれば、この位置Tにおけるはんだの面積は大きくなる。
【0092】
従って、この検査位置を特定することができれば、はんだの良否判定を高精度に実施することができる。この位置Tは、予めパッド12d上に形成しておくはんだの量や未溶融状態でのバンプ12cの径などから予め特定することができる。従って、配線パターンの座標zから所定のオフセットであることを予め特定しておけば、上記図2と同様の処理によって配線パターンの座標zを特定した後に、当該オフセットを与えることで検査位置を特定することが可能である。
【0093】
さらに、良否判定の手法としても、上述のようにパッド12dの周囲へのはんだの侵入やはんだの断面積に基づくものに限定されない。例えば、ある検査位置におけるブリッジの有無やボイドの有無、外形の形状等種々の指標によって良否判定を行うことが可能である。むろん、ひとつの指標のみに基づいて良否判定を行うことも必須ではなく、複数の指標を組み合わせて良否判定を行ってもよい。
【0094】
さらに、配線パターンを抽出する際の画像処理としても上述の処理に限定されない。例えば、断層像の明るさに基づいて配線パターンの座標zを特定する構成を採用してもよい。すなわち、図6A〜図6Fに示すように、配線パターンのX線吸収率とその周りの樹脂におけるX線吸収率とは異なるので、これらの像の濃度が異なる。図6A〜図6Fにおいては、断層像の座標zが変化して配線パターンの像が鮮明になると、配線パターンの部分がはっきりと明るくなる。
【0095】
このように、ある解析領域ROIの明るさの変化を座標zに沿って観察していくと、配線パターンを含む像と配線パターンを含まない像とで明るさが変化する。そこで、配線パターンであることに起因する明るさの変動を捉えれば、配線パターンの座標zを特定することが可能である。
【0096】
また、図6A〜図6Fに示すように、解析領域ROIに鮮明な配線パターンが含まれるか否かによってその空間周波数が変化する。そこで、解析領域ROIの画像についてフーリエ変換を行い、その空間周波数が配線パターンを含む画像の空間周波数であるか否かを解析してもよい。むろん、解析対象となる空間周波数域を予め特定しておき、当該空間周波数域のスペクトルのみを解析する構成を採用するなど、種々の構成を採用可能である。
【0097】
さらに、解析領域ROIの階調値についてヒストグラムを取得し、有意なヒストグラムとなっている階調値の数("0"以外の度数分布を持つ階調値の数)やその分散によって人工的な構造物を含む画像であるか否かを判定し、この判定によって配線パターンの座標zを特定してもよい。
【0098】
さらに、配線パターンを示すパターン画像を予め登録しておき、このパターン画像と解析領域ROIの断層像とを比較するパターンマッチングを行うことによって配線パターンの座標zを特定してもよい。さらに、解析領域ROIの断層像についてハフ変換を行い、配線パターンの境界に相当する直線成分の有無や直線成分の量、直線成分の向きによって配線パターンの座標zを特定してもよい。むろん、上述のようにして抽出したエッジの連なり具合によってエッジの方向やエッジの出現度合いの乱雑さ等を利用して配線パターンの座標zを特定してもよく、種々の構成を採用可能である。
【0099】
さらに、上記図2に示す処理手順を採用することが必須というわけではなく、ステップS135をスキップし、ステップS160の前に再構成演算を行って座標zにおける解析領域ROIの2次元スライス画像を算出してもよい。すなわち、解析領域ROIのスライス画像を逐次算出しながらステップS160〜S180のループ処理を行って検査位置を特定してもよい。むろん、この場合、良否判定を行う前に、再構成演算を行って検査位置における像を取得することになる。この構成によれば、必要最低限の情報のみを再構成する処理手順にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明にかかるX線検査装置の概略ブロック図である。
【図2】X線検査処理のフローチャートである。
【図3】X線検査装置の構成を座標系とともに説明する説明図である。
【図4】視野領域の例を示す図である。
【図5】バンプとその良否の様子を説明する説明図である。
【図6】検査位置の近傍における複数の断層像の例を示す図である。
【図7】複数の検出器によってX線画像を取得するX線検査装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0101】
10…X線検査装置
11…X線発生器
12…X−Yステージ
12b…チップ
12c…バンプ
12d…パッド
12e…レジスト
12a…基板
13b…回転機構
13a…X線検出器
14…搬送装置
15…センサ
15b…ラインセンサ
15a…レーザー出力器
21…X線制御機構
22…ステージ制御機構
23…画像取得機構
23a…θ制御部
24…搬送機構
25…CPU
25a…搬送制御部
25b…X線制御部
25c…ステージ制御部
25d…画像取得部
25e…良否判定部
25f…高さセンサ制御部
28…メモリ
28a…検査対象データ
28b…撮像条件データ
28c…X線画像データ
29…高さセンサ制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を基板上の検査対象品に照射して異なる方向から撮影した複数のX線画像を取得するX線画像取得手段と、
上記複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行する再構成演算手段と、
当該再構成演算によって得られた再構成情報に含まれる上記基板の配線パターンの情報に基づいて上記検査対象品の検査位置を決定する決定手段とを備えることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
上記決定手段は、上記基板に対して平行な方向の断層像であって、当該基板に対して垂直な方向の位置が異なる複数の断層像を取得し、各断層像に含まれる上記基板の配線パターンの情報から上記基板に対して垂直な方向における上記配線パターンの位置を特定し、上記検査位置を決定することを特徴とする上記請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
上記決定手段は、上記配線パターンの像に特徴的な特徴量を上記再構成情報から抽出し、当該特徴量に基づいて上記検査位置を特定することを特徴とする上記請求項1または請求項2のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項4】
上記特徴量は、画像のエッジ情報であることを特徴とする上記請求項3に記載のX線検査装置。
【請求項5】
上記決定手段は、上記再構成情報に含まれるアーチファクトの影響が所定以下の部位における配線パターンの情報に基づいて、上記検査位置を決定することを特徴とする上記請求項1〜請求項4のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項6】
X線によって検査対象を検査するX線検査方法であって、
X線を基板上の検査対象品に照射して異なる方向から撮影した複数のX線画像を取得するX線画像取得工程と、
上記複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行する再構成演算工程と、
当該再構成演算によって得られた再構成情報に含まれる上記基板の配線パターンの情報に基づいて上記検査対象品の検査位置を決定する決定工程とを備えることを特徴とするX線検査方法。
【請求項7】
X線によって検査対象を検査するX線検査プログラムであって、
X線を基板上の検査対象品に照射して異なる方向から撮影した複数のX線画像を取得するX線画像取得機能と、
上記複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行する再構成演算機能と、
当該再構成演算によって得られた再構成情報に含まれる上記基板の配線パターンの情報に基づいて上記検査対象品の検査位置を決定する決定機能とをコンピュータに実現させることを特徴とするX線検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−26334(P2008−26334A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228918(P2007−228918)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【分割の表示】特願2005−110815(P2005−110815)の分割
【原出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】