説明

プラズマエッチング方法及び半導体装置の製造方法

【課題】トレンチ・ビア形状のウエハ面内均一性を向上できるプラズマエッチング方法を提供する。
【解決手段】基板上の第1配線層の上に絶縁層と金属層とを形成するステップと、絶縁層内に形成される第2配線層のためのトレンチを画成する金属マスク層を金属層から形成するステップと、金属マスク層を覆う平坦化膜を形成するステップと、トレンチの底部に形成され第1及び第2配線層を接続するビアを画成するマスク層を平坦化膜から形成するステップと、マスク層で、絶縁層の厚さよりも小さい開口を形成する第1ステップと、金属マスク層で絶縁層をエッチングしてトレンチを形成し、開口を深くしてビアを形成する第2ステップとが行われる。第1及び第2ステップでは、供給されたエッチングガスの拡散の影響が支配的な位置と、供給されたエッチングガスの流れの影響が支配的な位置とに対応してエッチングガス供給条件が調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対してプラズマエッチングを行うプラズマエッチング方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において半導体ウエハ等の基板(以下「ウエハ」という。)を加工する装置として、プラズマをウエハに照射することによって、ウエハにエッチングを行うプラズマエッチング装置がある。
【0003】
プラズマエッチングでは、フッ素、塩素、酸素等を含むエッチングガスが高周波電界により活性化されプラズマが生成される。プラズマには、荷電粒子(以下「イオン」という。)及び中性粒子(以下「ラジカル」という。)等の活性種が含まれている。イオンやラジカルなどの活性種とウエハ表面が反応して反応生成物が生じ、生じた反応生成物が揮発することによってエッチングが進行する。
【0004】
近年、半導体デバイスの製造工程においてウエハが大口径化しているため、ウエハ面内においてエッチング速度を均一化することが難しくなっている。そこで、面内均一性の改善のため、ウエハ面内の中心部領域及び周辺部領域における活性種の密度を、上部電極からのエッチングガス供給量を調整することにより均一化することが試みられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4701776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たとえばダマシンプロセスのためのトレンチ・ビア構造をプラズマエッチングにより形成する場合において、たとえばトレンチの形成に用いるエッチングガスとビアの形成に用いるエッチングガスとが異なる場合がある。本発明者らの検討によれば、異なるエッチングガスを用いる場合には、ウエハ面内においてトレンチ形状もビア形状も均一化することは難しいことが判明した。
【0007】
本発明は、上記に照らして為され、トレンチ・ビア形状のウエハ面内均一性を向上できるプラズマエッチング方法及び半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、基板に形成される第1の配線層の上に絶縁層と金属層とを順次形成するステップと、前記金属層上に形成される第1のマスク層を用いて当該金属層をエッチングすることにより、前記絶縁層内に形成される第2の配線層のためのトレンチを画成する金属マスク層を形成するステップと、前記金属マスク層を覆うように前記絶縁層上に平坦化膜を形成するステップと、前記平坦化膜をエッチングすることにより、前記トレンチの底部に形成され前記第1の配線層と前記第2の配線層とを電気的に接続するビアを画成する第2のマスク層を形成するステップと、前記プラズマエッチング装置において、前記第2のマスク層を用いて前記絶縁層をプラズマエッチングすることにより、当該絶縁層の厚さよりも小さい深さを有する開口を形成する第1のエッチングステップと、前記プラズマエッチング装置と同一のプラズマエッチング装置において、前記金属マスク層を用いて前記絶縁層をプラズマエッチングすることにより前記トレンチを形成すると共に、前記開口を更に深くすることにより前記ビアを形成する第2のエッチングステップとを備え、前記第1のエッチングステップ及び前記第2のエッチングステップにおいては、前記基板上での、供給されたエッチングガスの拡散の影響が支配的な位置と、供給されたエッチングガスの流れの影響が支配的な位置とに対応して、当該エッチングガスの供給条件が調整される、プラズマエッチング方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、トレンチ・ビア形状のウエハ面内均一性を向上できるプラズマエッチング方法及び半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法の実施に好適なプラズマエッチング装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、図1のシャワーヘッドの構造の一例を説明するための概略図である。
【図3】図3は、図1のプラズマエッチング装置のガス供給装置を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法の各工程において形成される構造体の上面図(中央)と断面図(左側及び右側)を示す。
【図6】図6は、図5に引き続いて、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法の各工程において形成される構造体の上面図(中央)と断面図(左側及び右側)を示す。
【図7】図7は、図6に引き続いて、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法の各工程において形成される構造体の上面図(中央)と断面図(左側及び右側)を示す。
【図8】図8は、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法おけるウエハ径方向位置におけるペクレ数及びエッチングレートを示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法おけるウエハ径方向位置におけるペクレ数及びエッチングレートを示す他の図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法おけるエッチングガスの供給条件を変更した場合の、エッチングレートの変化を示す概略図である。
【図11】図11は、実験結果を示す走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図12A】図12Aは、実験結果を示すグラフである。
【図12B】図12Bは、他の実験結果を示すグラフである。
【図12C】図12Cは、他の実験結果を示すグラフである。
【図13】図13は、他の実験結果を説明する説明図である。
【図14】図14は、他の実験結果を説明する説明図である。
【図15】図15は、他の実験結果を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
【0012】
(プラズマエッチング装置の概略構成)
始めに、図1を参照し、本実施形態に係るプラズマエッチング方法の実施に好適なプラズマエッチング装置について説明する。
【0013】
図1を参照すると、プラズマエッチング装置100は、例えば表面が陽極酸化処理(アルマイト処理)されたアルミニウムから成る円筒形状に成形されたチャンバ(処理容器)102を有している。チャンバ102は接地されている。
【0014】
チャンバ102内の底部には、セラミック等の絶縁板103を介して略円柱状のサセプタ支持台104が設けられている。また、サセプタ支持台104の上には、下部電極を構成するサセプタ105が設けられている。サセプタ105は、ハイパスフィルタ(HPF)105aを介して接地されている。
【0015】
サセプタ105は、その上側中央部が凸状の円板状に成形されている。サセプタ105の上には、被処理体の一例であるウエハWの直径と略同一の直径を有する静電チャック111が設けられている。静電チャック111は、円板状のセラミックス部材で構成される絶縁材と、これらの間に介在される静電電極112とを有している。また、静電チャック111の静電電極112には直流電源113が接続されている。例えば、1.5kVの直流電圧が直流電源113から静電電極112に印加されると、クーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、ウエハWが静電チャック111に吸着保持される。
【0016】
また、サセプタ105には、第1の整合器115を介して第1の高周波電源114が接続され、第2の整合器117を介して第2の高周波電源116が接続されている。第1の高周波電源114は、比較的低い周波数、例えば、13.6MHzの周波数を有するバイアス電力をサセプタ105に印加する。第2の高周波電源116は、比較的高い周波数、例えば、40MHzの周波数を有するプラズマ生成電力をサセプタ105に印加する。このプラズマ生成電力により、チャンバ102の内部にプラズマが生成される。
【0017】
絶縁板103、サセプタ支持台104、サセプタ105、及び静電チャック111には、ウエハWの裏面に伝熱媒体(例えばHeガスなどのバックサイドガス)を供給するためのガス通路118が形成されている。この伝熱媒体を介して、サセプタ105とウエハWとの間の熱伝達がなされ、ウエハWが所定の温度に維持される。
【0018】
サセプタ105の上端周縁部には、静電チャック111上に支持されたウエハWを囲むように、環状のフォーカスリング119が配置されている。フォーカスリング119は、セラミックス又は石英等の誘電材料、若しくは、導電体、例えば、ウエハWを構成する材料と同じ単結晶シリコンなどの導電性材料によって構成されている。
【0019】
プラズマの分布域をフォーカスリング119上まで拡大することで、ウエハWの外周側におけるプラズマの密度を、ウエハWの中心側におけるプラズマの密度と同程度に維持することができる。これにより、ウエハWの面内におけるプラズマエッチングの均一性を向上することができる。
【0020】
サセプタ105の上方には、サセプタ105と平行に対向して設けられ、サセプタ105に支持されるウエハWに向けてエッチングガスを供給するシャワーヘッド140(後述)を兼ねる上部電極120が設けられている。上部電極120には直流電源123が接続されている。また、上部電極120は、ローパスフィルタ(LPF)124を介して接地されている。
【0021】
また、上部電極120は、上部電極駆動部200によって、例えば鉛直方向に駆動可能に構成されている。上部電極120を鉛直方向に駆動可能に構成することにより、上部電極120とサセプタ105との間の空間の距離(以下、「ギャップ」という。)Gを調整することができる。ギャップGは、エッチングガスの拡散及び流れに大きく影響を与えるパラメータである。そのため、ギャップGを調整可能な構造とすることにより、チャンバ102の内部の上部電極120とサセプタ105との間のプラズマ分布を制御することができる。また、上部電極駆動部200により駆動される上部電極120の鉛直方向に沿った移動量は、特に制限はない。一例として、上部電極120の鉛直方向に沿った移動量を70mmとし、ギャップGを20mm以上90mm以下に調整可能な構造とすることができる。
【0022】
なお、本実施形態におけるプラズマエッチング装置100は、被エッチング面を上に向けて(フェースアップで)サセプタ105に載置されるウエハWに対して、サセプタ105の上方に配置されたシャワーヘッド140からエッチングガスを供給するが、他の実施形態におけるプラズマエッチング装置100は、ウエハが鉛直方向に沿って支持されるようにサセプタを配置し、このサセプタに支持されるウエハの横方向からエッチングガスを供給できるようにシャワーヘッドを配置しても良い。また別の実施形態においては、ウエハがフェースダウンで支持されるようにサセプタを配置し、サセプタの下方に配置されるシャワーヘッドから、フェースダウンで支持されるウエハに対してエッチングガスを供給するようにしてもよい。
【0023】
上部電極120は、チャンバ102の上部内壁にベローズ122を介して支持されている。ベローズ122はチャンバ102の上部内壁に環状の上部フランジ122aを介してボルトなどの固定手段により取付けられるとともに、上部電極120の上面に環状の上部フランジ122bを介してボルトなどの固定手段により取付けられる。
【0024】
ギャップGを調節するための、上部電極駆動部200の構成について、詳細に説明する。上部電極駆動部200は、上部電極120を支持する略円筒状の支持部材204を有する。支持部材204は上部電極120の上部略中央にボルトなどで取付けられている。
【0025】
支持部材204は、チャンバ102の上壁の略中央に形成された孔102aを出入自在に配設される。具体的には、支持部材204の外周面はスライド機構210を介してチャンバ102の孔102aの内部に支持されている。
【0026】
スライド機構210は、例えばチャンバ102の上部に断面L字状の固定部材214を介して固定部材214の鉛直部に固定された案内部材216と、この案内部材216に摺動自在に支持され、支持部材204の外周面に一方向(本実施形態では鉛直方向)に形成されたレール部212と、を有する。
【0027】
スライド機構210の案内部材216を固定する固定部材214は、その水平部が環状の水平調整板218を介してチャンバ102の上部に固定される。この水平調整板218により、上部電極120の水平位置が調整される。
【0028】
水平調整板218は、例えば、水平調整板218の周方向に等間隔で配置した複数のボルト等によりチャンバ102に固定される。また、水平調整板218の水平方向に対する傾き量を、これらのボルトの突出量により、調整することも可能である。水平調整板218が水平方向に対する傾きを調整し、上記スライド機構210の案内部材216が鉛直方向に対する傾きが調整することで、上部電極120の水平方向の傾きを調整することができる。即ち、上部電極120を常に水平位置に保つことができる。
【0029】
チャンバ102の上側には、上部電極120を駆動するための空気圧シリンダ220が、筒体201を介して取付けられている。即ち、筒体201の下端は、チャンバ102の孔102aを覆うようにボルト等で気密に取付けられており、筒体201の上端は、空気圧シリンダ220の下端に気密に取付けられている。
【0030】
空気圧シリンダ220は、一方向に駆動可能なロッド202を有している。ロッド202の下端は、支持部材204の上部略中央にボルト等で連設されている。ロッド202が駆動されることにより、上部電極120は、支持部材204によりスライド機構210に沿って移動することができる。ロッド202は、例えば円筒状に構成され、ロッド202の内部空間が支持部材204の略中央に形成された中央孔と連通して大気開放される。これにより、上部電極120とローパスフィルタ(LPF)124を介して接地する配線、及び上部電極120に直流電源123から直流電圧を印加するための給電線は、ロッド202の内部空間から支持部材204の中央孔を介して上部電極120に接続するように配線することができる。
【0031】
また、空気圧シリンダ220の側部には、例えばリニアエンコーダ205等の、上部電極120の位置を検出する位置検出手段が設けられている。一方、ロッド202の上端には、ロッド202から側方に延出する延出部207aを有する上端部材207が設けられている。上端部材207の延出部207aとリニアエンコーダ205の検出部205aとが当接している。上端部材207は上部電極120の動きに連動するため、リニアエンコーダ205により上部電極120の位置を検出することができる。
【0032】
空気圧シリンダ220は、筒状のシリンダ本体222、上部支持板224及び下部支持板226を含む。筒状のシリンダ本体222は、上部支持板224と下部支持板226とにより挟まれる構成となっている。ロッド202の外周面には、空気圧シリンダ220内を上部空間232と下部空間234に区画する環状の区画部材208が設けられている。
【0033】
空気圧シリンダ220の上部空間232には、上部支持板224の上部ポート236から圧縮空気が導入されるようになっている。また、空気圧シリンダ220の下部空間234には、下部支持板226の下部ポート238から圧縮空気が導入されるようになっている。上部ポート236及び下部ポート238から上部空間232及び下部空間234へと導入する空気量を制御することにより、ロッド202を一方向(例えば鉛直方向)へと駆動制御することができる。この空気圧シリンダ220へ導入する空気量は、空気圧シリンダ220の近傍に設けられた空気圧回路300により制御される。
【0034】
また、上部電極駆動部200は、制御部290を有しており、制御部290は、装置制御部190と接続されている。装置制御部190からの制御信号は制御部290に伝えられ、制御部290により、上部電極駆動部200の各部が駆動制御される。
【0035】
サセプタ支持台104の内部には、ウエハWの面内における温度分布を調節可能とする、温度分布調製部106が配置されている。温度分布調整部106は、ヒータ106a、106b、ヒータ用電源106c、106d、温度計106e、106f、冷媒流路107a、107bを有する。
【0036】
サセプタ支持台104の内部には、中心側から外周側に向かって、中心側ヒータ106aと外周側ヒータ106bとが設けられている。中心側ヒータ106aには、中心側ヒータ用電源106cが接続され、外周側ヒータ106bには、外周側ヒータ用電源106dが接続されている。中心側ヒータ用電源106c、外周側ヒータ用電源106dは、各々、中心側ヒータ106a、外周側ヒータ106bに投入する電力を独立に調節することができる。これにより、サセプタ支持台104及びサセプタ105に、ウエハWの径方向に沿った温度分布を発生させることができる。即ち、ウエハWの径方向に沿った温度分布を調節することができる。
【0037】
また、サセプタ支持台104の内部には、中心側から外周側に向かって、中心側温度計106e及び外周側温度計106fが設けられている。中心側温度計106e及び外周側温度計106fは、各々、サセプタ支持台104の中心側及び外周側の温度を計測し、これによりウエハWの中心側及び外周側の温度を導出できる。中心側温度計106e及び外周側温度計106fで計測された温度は、後述する装置制御部190に送られる。装置制御部190は、計測された温度から導出されたウエハWの温度が目標温度となるように、中心側ヒータ用電源106c及び外周側ヒータ用電源106dの出力を調整する。
【0038】
更に、サセプタ支持台104の内部には、中心側から外周側に向かって、中心側冷媒流路107a及び外周側冷媒流路107bを設けても良い。そして、各々に異なる温度の、例えば冷却水、フルオロカーボン系の冷媒を循環させても良い。冷媒を循環させる場合、冷媒は、中心側導入管108aを介して中心側冷媒流路107aに導入され、中心側排出管109aから排出される。一方、外周側冷媒流路107bには、外周側導入管108bを介して冷媒が導入され、外周側排出管109bから排出される。
【0039】
サセプタ105は、ヒータ106a、106bによる加熱と、冷媒からの冷却と、により、温度が調整される。したがって、ウエハWは、プラズマからの輻射やプラズマに含まれるイオンの照射などによる加熱分と、前述のサセプタ105との熱量の授受と、により、所定の温度になるように調整される。また、サセプタ支持台104は、中心側ヒータ106a(及び中心側冷媒流路107a)及び外周側ヒータ106b(及び外周側冷媒流路107b)を有する。そのため、ウエハWは、中心側と外周側とで独立して温度を調整することができる。
【0040】
また、図1には図示していないが、中心側ヒータ106aと外周側ヒータ106bとの間、又は、中心側冷媒流路107aと外周側冷媒流路107bとの間に、断熱層として断熱材又は空間を設けても良い。断熱層を設けることにより、中心側ヒータ106aと外周側ヒータ106bとの間、又は中心側冷媒流路107aと外周側冷媒流路107bとの間が熱的に遮断される。即ち、ウエハWの中心側と外周側との間に、より大きな温度分布を生じさせることができる。
【0041】
チャンバ102の底部には排気管131が接続されており、排気管131には排気装置135が接続されている。排気装置135は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、チャンバ102内を所定の減圧雰囲気(例えば0.67Pa以下)に調整する。また、チャンバ102の側壁にはゲートバルブ132が設けられている。ゲートバルブ132が開くことによって、チャンバ102内へのウエハWの搬入、及び、チャンバ102内からのウエハWの搬出が可能となる。なお、ウエハWの搬送には例えば搬送アームが用いられる。
【0042】
(エッチングガスの供給条件を調節する調節部の概略構成)
次に、図2を参照しながらシャワーヘッド140について説明する。図示のとおり、シャワーヘッド140は、エッチングガス等のガスをウエハWに供給する多数のガス噴出孔h(ha〜hd)を有する円形状の電極板141(上部電極120)と、電極板141の上面側を着脱自在に支持する電極支持体142を備えている。電極支持体142は、電極板141の外径と等しい外径を有する円盤形状を有し、電極支持体142の内側に円形状のバッファ室143が形成されている。
【0043】
バッファ室143内では、電極板141上に、図2(a)に示すように、たとえばOリングから成る1つ以上の環状隔壁部材145が配置されている。具体的には、本実施形態においては、異なる直径を有する3つの環状隔壁部材145a、145b、146cが同心円状に配置されている。これにより、バッファ室143は、電極板141の径方向に沿って、センタ領域143a、中間領域143b、周縁領域143c、及び最外縁領域143dに分割される。
また、図2(b)に示すように、領域143a〜143dの夫々は、ガス供給装置150と接続され、これによりガス供給装置150から各領域143a〜143dに対してエッチングガスが供給される。各領域143a〜143dに供給されたエッチングガスは、対応するガス噴出孔hから、サセプタ105に支持されるウエハWに向かって噴出される。
【0044】
なお、ガス噴出孔hの数と配置については、ウエハWに対してエッチングガスが均一に噴出されるように決定して良い。これに限定されないが例えば、ガス噴出孔hは、シャワーヘッド140(電極板121)の中心を中心とし、同心円状に位置する複数の同心円の各円周上に配置して良い。具体的には、300mmの直径を有するウエハWを使用する場合、センタ領域143aにおいて、半径11mmの円の円周上に4つのガス噴出孔haが(例えば等間隔で)配置され、半径33mmの円の円周上に12個のガス噴出孔hbが(例えば等間隔で)配置されている。中間領域143bにおいては、半径55mmの円の円周上に24個のガス噴出孔hcが(例えば等間隔で)配置され、半径77mmの円の円周上に36個のガス噴出孔hdが(例えば等間隔で)配置されている。周縁領域143cにおいては、図示を省略するが、半径99mmの円の円周上に48個のガス噴出孔が(例えば等間隔で)配置され、半径121mmの円の円周上に60個のガス噴出孔が(例えば等間隔で)配置されている。最外縁領域143dにおいては、図示を省略するが、半径143mmの円の円周上に80個のガス噴出孔が(例えば等間隔で)配置され、半径165mmの円の円周上に100個のガス噴出孔が(例えば等間隔で)配置されている。
【0045】
次に、図3を参照しながら、バッファ室143の各領域143a〜143dに個別にエッチングガスを供給するガス供給装置150及びガス供給系について説明する。図示のとおり、ガス供給装置150は、第1のガスボックス161と、第2のガスボックス160とを備えている。第1のガスボックス161には、複数のガス供給源(図示せず)と接続される第1の集合バルブ303が収容されており、第2のガスボックス160には、第2の集合バルブ302と、第2の集合バルブ302の各バルブに対応して設けられる、例えばマスフローコントローラ等の流量制御器301と、第3の集合バルブ300とが収容されている。
【0046】
本実施形態において、ガス供給源には、例えば、フロロカーボン系のフッ素化合物(CF系)、例えばCF、C、C、CH、CHF等のガスが封入されている。他にも、例えばCF系の反応生成物の付着を制御するガスとして例えば酸素(O)ガスが封入されている。さらに、キャリアガスとして例えばArガス、Nガス、Heガスが封入されている。
【0047】
各ガス供給源からの配管は、第1のガスボックス161内の第1の集合バルブ303における対応するバルブに接続されている。また、本実施形態では、第1の集合バルブ303の下流側において、CHFガス配管とOガス配管とが合流し、更に4本の分岐管170a、171a、172a、173aに分岐している。分岐管170a〜173aには、第1の集合バルブ303を制御することにより、CHFガス及びOガスのいずれか、又はこれらの混合ガスが流れる。
【0048】
また、同様にして、第1の集合バルブ303の下流側において、CFガス配管とNガス配管とが合流し、更に4本の分岐管170b、171b、172b、173bに分岐している。分岐管170b〜173bには、第1の集合バルブ303を制御することにより、CFガス及びNガスのいずれか、又はこれらの混合ガスが流れる。
【0049】
同様に、第1の集合バルブ303の下流側において、Oガス配管とArガス配管とが合流し、更に4本の分岐管170c、171c、172c、173cに分岐している。分岐管170c〜173cには、第1の集合バルブ303を制御することにより、Oガス及びArガスのいずれか、又はこれらの混合ガスが流れる。
【0050】
さらに第1の集合バルブ303の下流側において、Cガス配管とCガス配管とが合流し、更に4本の分岐管170d、171d、172d、173dに分岐している。分岐管170d〜173dには、第1の集合バルブ303を制御することにより、Cガス及びCガスのいずれか、又はこれらの混合ガスが流れる。
【0051】
分岐管170a〜173a、170b〜173b、170c〜170c、及び170d〜170dは、第2のバルブボックス160内の第2の集合バルブ302における対応するバルブに接続され、さらに、対応する流量制御器301を介して、第1の集合バルブ300の対応するバルブに接続されている。
第1の集合バルブ300の下流側において、分岐管170a、170b、170c、及び170dに対応した配管が配管170に合流し、配管170は、シャワーヘッド104のセンタ領域140aに連通している(図2(b)参照)。また、第1の集合バルブ300の下流側において、分岐管171a、171b、171c、及び171dに対応した配管が配管171に合流し、配管171は、シャワーヘッド104の中間領域143bに連通している(図2(b)参照)。同様に、第1の集合バルブ300の下流側において、分岐管172a、172b、172c、及び172dに対応した配管が配管172に合流し、配管172は、シャワーヘッド104の周縁領域143cに連通している(図2(b)参照)。さらに、第1の集合バルブ300の下流側において、分岐管173a、173b、173c、及び173dに対応した配管が配管173に合流し、配管173は、シャワーヘッド104の最外縁領域143dに連通している(図2(b)参照)。
【0052】
以上の構成により、第1の集合バルブ300、第2の集合バルブ302、及び第3の集合バルブ303を適宜開閉することにより、シャワーヘッド140の各領域143a〜143dに対して、各エッチングガス(混合ガスを含む)を選択的に供給することができる。即ち、図3の例においては、各ガス供給源に接続される配管は、配管170〜173のように4つに分岐されている。また、配管は第1の集合バルブ303が接続されており、所望するプロセスに応じて、ガス種を切り替えることが可能な構造となっている。このような構造にすることにより、新たなガス供給源を追加する場合や、プロセスにより不要なエッチングガスのガス供給を停止する場合も、簡易な操作で実行することができる。
【0053】
前述の通り、プラズマエッチング装置100は装置制御部190(図1)を有する。装置制御部190は、例えばCPUよりなる図示しない演算処理装置と、例えばハードディスクよりなる図示しない記録媒体を備えている。装置制御部190は、前述した、第1の高周波電源114、第2の高周波電源116、温度分布調整部106、上部電極駆動部200、ガス供給条件調整部130の各部の動作を制御する。そして、装置制御部190は、上記各部を動作させる際は、例えば装置制御部190のCPUが、例えば装置制御部190のハードディスクに記録されている、それぞれのエッチング処理に対応するプログラムに応じて、各部を制御する。
【0054】
(トレンチ・ビア構造の形成方法)
次に、図4から図7までを参照しながら、プラズマエッチング装置100を用いて行われる、本発明の実施形態によるプラズマエッチング方法を含む半導体装置製造方法を説明する。なお、図5(a)から図7(f)までにおいては、以下に説明する一連の工程の各工程より形成される構造の上面図(図中の中央)と、この上面図におけるA−A線に沿った断面図(図中の左側)と、上面図におけるB−B線に沿った断面図(図中の右側)とを示している。また、これらの図においては、便宜上、ウエハ上に形成される多数のトレンチ・ビア構造のうちの一つを示している。また、図5(b)から図7(f)までに示す工程は、プラズマエッチング装置100において連続的に行われる。
【0055】
始めに、図5(a)に示すように、ウエハに形成された配線層10の上に、ブロック層11、低誘電率体(low-k)層12、酸化シリコン層13、窒化チタン(TiN)層14、有機平坦化層15、反射防止膜16、及び第1のマスク層17がこの順に形成される(図4のステップS41)。
【0056】
ブロック層11は、例えばプラズマCVD法を用いて例えば酸化シリコンなどの材料により形成される。ブロック層11は、low-k層12による配線層10の劣化を低減するため、配線層10を保護するため、これらの層の間に形成されている。
low-k層12は、例えば3.5程度以下の低い誘電率を有する低誘電体材料により形成される。low-k層12は、例えばBlack Diamond(登録商標)、SiOFやSiOCなどの、不純物が添加された酸化シリコン、及び多孔質材料などにより形成して良く、また、水素メチルシルセスキオキサン(HSQ)及びメチルシルセスキオキサン(MSQ)などを主成分とするスピン−オン材料により形成しても良い。本実施形態においては、Black Diamondによりlow-k層12が形成されている。
【0057】
酸化シリコン層13は、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)を原料とした酸素プラズマCVD法により形成することができる。有機平坦化層15は有機材料を主成分とするスピン−オン材料により好適に形成される。これによれば、スピン−オン材料の流動性により下地層の凹凸が緩和され、平坦な上面を有する有機平坦化層15が得られる。
有機平坦化層15の上面には、反射防止膜16とフォトレジスト膜(不図示)とが順次形成され、フォトレジスト膜がフォトリソグラフィ技術によりパターン化されることにより、第1のマスク層17が得られる。第1のマスク層17は、図5(a)の例では、一の方向に延びるライン状のパターンを有し、例えば50nmの幅w1と、50nmの間隔sとを有している。第1のマスク層17のパターンは、後述するトレンチ(すなわち、後に形成される上層配線)のパターンに合わせて決定される。
【0058】
次に、図5(a)に示す構造を有するウエハがプラズマエッチング装置100のチャンバ102内に搬入される。そして、第1のマスク層17を用いて反射防止膜16及び有機平坦化層15が除去される。この除去は、例えば酸素プラズマにウエハを曝すことにより行われる。その後、塩素及び臭素等腐食成分を含むガスを用いたプラズマエッチングによりTiN層14をエッチングすると、第1のマスク層17のパターンがTiN層14へ転写される。この後、エッチングに用いた第1のマスク層17と、これの下方に残る反射防止膜16及び有機平坦化層15とを例えば酸素プラズマにより除去すると、メタルハードマスク(MHM)14aが得られる(図4のステップS42)。
【0059】
次に、MHM14aと、その下地層である酸化シリコン層13とを覆うように有機平坦化層25が形成される。有機平坦化層25は、例えば有機平坦化層15と同じ材料及び同じ方法により形成することができる。次いで、有機平坦化層25上に反射防止膜26とフォトレジスト膜とが形成され、このフォトレジスト膜をパターン化することによりフォトレジストマスク27が形成される(図4のステップS43)。フォトレジストマスク27は、図6(c)に示すように、上面形状がほぼ円形状の開口27hを有しており、開口27hの直径w2は、第1のマスク層17の間隔s(=MHM14aの間隔)よりも狭い。また、開口27hは、配線層10と電気的に接続するビアが形成されるべき位置に形成され、開口27hの直径w2は、ビアの寸法に対応している。
【0060】
続けて、フォトレジストマスク27をマスクとして、反射防止膜26及び有機平坦化層25がエッチングされ、図6(d)に示すように、有機平坦化層25から第2のマスク層25aが形成される(図4のステップS44)。第2のマスク層25aは、フォトレジストマスク27の開口27と同じ寸法を有する開口25hを有している。
【0061】
次に、第2のマスク層25aを用いて、CHF/Ar/N混合ガスにより酸化シリコン膜13とlow-k膜12とをプラズマエッチングし、このプラズマエッチングに用いた第2のマスク層25aを除去すると、図7(e)に示す構造(ビア形状)が得られる(図4のステップS45)。図示のとおり、この構造においては、酸化シリコン層13を貫通し、酸化シリコン層13及びlow-k膜12の合計厚さよりも浅い深さを有するホールtが形成されている。また、ホールtの深さはエッチング時間により決定される。
【0062】
次いで、MHM14aをマスクとして、C/Ar/N/O混合ガスにより酸化シリコン膜13とlow-k膜12とを更にプラズマエッチングすると、図7(f)に示す構造(トレンチ形状)が得られる(図4のステップS46)。具体的には、酸化シリコン膜13のMHM14aに覆われていない部分(図7(e)参照)からプラズマエッチングが進行していき、酸化シリコン膜13を貫通し、low-k膜12の所定の深さ位置にまで達するトレンチTが形成される。一方、図7(e)に示したホールtの底部もまたプラズマエッチングされていき、配線層10の上面を底面とするビアVが形成される。これにより、トレンチ・ビアTVが形成される。図示の例では、トレンチTは、幅s(第1のマスク層17の幅s)を有し、この幅sと直交する方向に延びており、ビアVは、トレンチTの底部の所定の位置に略円柱形状を有する開口として形成されている。図7(e)及び図7(f)に示すプラズマエッチングの条件等については後述する。
【0063】
この後、ダマシンプロセス(金属の埋込及びCMP)によりビアV及びトレンチTが金属により充填され、配線層10と電気的に接続するビアプラグと、ビアと一体に接続する金属配線とが形成される。
【0064】
(プラズマエッチング方法)
次に、プラズマエッチング装置100において行われるプラズマエッチング方法の一例について説明する。
シャワーヘッド140のガス噴出孔hから、シャワーヘッド140とサセプタ105との間の空間にエッチングガスが供給されると、エッチングガスは、排気管131を通して排気装置135により吸引され、サセプタ105の外周に向かって広がっていく。このとき、エッチングガス成分(例えば、ラジカル)の濃度分布は、エッチングガスが「拡散」と「流れ」のいずれに支配されて輸送されるかにより異なる。「拡散」と「流れ」のいずれかにどの程度依存しているかを定性的に示す、無次元数としてペクレ数(Pe)が知られている。ペクレ数は下記の式(1)で表される。
【0065】
Pe=uL/DAB 式(1)
ここで、u:ガスの流速(m/s)
AB:ガス種の相互拡散係数
L:代表長さ(m)
ペクレ数Peが1より小さい場合、主に「拡散」によりガスが輸送され、ペクレ数Peが1以上の場合、主に「流れ」によりガスが輸送される。
【0066】
なお、相互拡散係数DABは、ガスAとガスBの混合ガスの場合には、下記の式(2)で表される。
【0067】
【数1】

例えば、温度150℃及び圧力80mTorr(1.05x10-4atm)において、ArとCを含むエッチングガスの相互拡散係数DABは1.23×10−1/sであり、温度150℃及び圧力30mTorr(3.95x10-5atm)において、ArとCHFを含むエッチングガスの相互拡散係数DABは、0.66m/sである。
【0068】
具体的な例により説明するために、図8(a)に、プラズマエッチング装置100における、ウエハの径方向に沿ったペクレ数Peの変化を示す。図8(a)は、ArとCのエッチングガス(相互拡散係数DAB=1.23×10−1/s)を用い、代表長さL(即ち、サセプタ105と上部電極120との間のギャップG)を30mmとし、ガスの流速uを計算により算出したペクレ数Peを示す。なお、図8(a)において、横軸は、直径300mmのウエハの中心を原点(0mm)としている。
図8(a)から、ウエハの中心から径が86mmの位置でペクレ数Peが1となり、これを境に「拡散」が支配的である領域(0mmから86mmまでの領域)と「流れ」が支配的である領域(86mmから150mmまでの領域)とに区分されることがわかる。ただし、「拡散」が支配的である領域と「流れ」が支配的である領域とがペクレ数Pe=1を境に明りょうに区別される分けではなく、ペクレ数Peが例えば0.7から1.3までの範囲においては、過渡的な領域となっていると考えられる。
【0069】
また、図8(b)に、ウエハの径方向に沿ったエッチングレートを示す。具体的には、プラズマエッチング装置100におけるセンタ領域143a、中間領域143b、周縁領域143c、及び最外縁領域143d(図2参照)の各々からエッチングガスを供給し、高周波電力によりプラズマを生成してウエハ(直径300mmのベアウエハ)をエッチングし、ウエハ面内のエッチングレートを測定した。なお、図8(b)において、縦軸には、最もエッチングレートが大きい位置を1として、規格化した規格化エッチングレートをとっている。
【0070】
図8(b)を参照すると、センタ領域143aからエッチングガスと不活性ガスの混合ガスを供給し、他の領域から不活性ガスを供給した場合(△印)は、センタ領域143aの下方位置においてエッチングレートが大きくなっている。また、中間領域143bからエッチングガスと不活性ガスの混合ガスを供給し、他の領域から不活性ガスを供給した場合(◇印)においても、中間領域143bの下方位置においてエッチングレートが大きくなっている。
【0071】
また、センタ領域143aからエッチングガスを供給した場合には、センタ領域143aだけでなく、中間領域143bにおいても比較的大きなエッチングレートでウエハがエッチングされている。さらに、中間領域143bからエッチングガスを供給した場合には、周縁領域143c及び最外縁領域143dだけではなく、センタ領域143aにおいても比較的大きなエッチングレートでウエハがエッチングされることが分かる。これは、センタ領域143a及び中間領域143bに対応する領域においては、エッチングガスの「拡散」が支配的であり、図8(b)中に矢印Yで示すように、センタ領域143aの方句にも周縁領域143cの方向にもほぼ対称的にエッチングガスが拡散したためと考えられる(図8(a)参照)。
【0072】
一方、周縁領域143cからエッチングガスと不活性ガスの混合ガスを供給し、他の領域から不活性ガスを供給した場合(□印)は、周縁領域143cよりも外側の最外縁領域143dの下方位置におけるエッチングレートには増加が認められるものの、周縁領域143cよりも内側のセンタ領域143a及び中間領域143bの下方位置におけるエッチングレートは殆ど増加しない。また、最外縁領域143dからエッチングガスと不活性ガスの混合ガスを供給し、他の領域から不活性ガスを供給した場合(○印)にも、センタ領域143a及び中間領域143bの下方位置においてはエッチングレートの増加は殆ど認められない。これは、周縁領域143c及び最外縁領域143dからのエッチングガスは、センタ領域143a及び中間領域143bへは殆ど拡散せずに、「流れ」によって主に外向きにエッチングガスが輸送されるためと考えられる(図8(a)参照)。なお、図8(b)においては、エッチングガスが、センタ領域143a及び中間領域143bへは殆ど拡散しないことを小さい矢印YPIで、外向きに輸送されることを大きい矢印YPOで模式的に示している。
【0073】
また、ArとCの混合ガスに代わり、ArとCHFの混合ガス(相互拡散係数DABは0.66m/s)を用いた場合のペクレ数Peの変化と、エッチングレートの変化とを図9に示す。ArとCHFの混合ガスの相互拡散係数DABは、ArとCの混合ガスの相互拡散係数DABよりも小さく、図9(a)に示すように、ウエハの全面に対応した領域においてペクレ数Peは1よりも小さくなっている。すなわち、このArとCHFの混合ガスを用いた場合には、ウエハの全面に対応した領域において、ガスの輸送が「拡散」に支配されることとなる。このため、図9(b)に示すように、周縁領域143c及び最外縁領域143dにおいても、それぞれの下方位置から内側及び外側へ向かってほぼ対称的にエッチングレートが減少していく傾向が認められる(図9(b)中の矢印Y参照)。
【0074】
以上の結果から、エッチングガスの供給条件を調整することによりエッチングレートの面内均一性の改善を図る場合、エッチングガスの拡散が支配的となる領域と、エッチングガスの流れが支配的となる領域とでは、エッチングガスを供給する位置を変える必要があることがわかる。すなわち、拡散が支配的な領域においては、その位置に対応する(略真上にある)ガス噴出孔hからのエッチングガス供給量を調整することによりエッチングレートを制御することができ、流れが支配的な領域においては、その位置に対応するガス噴出孔hよりもむしろウエハ中心側に位置するガス噴出孔hからのエッチングガス供給量を調整することによりエッチングレートを制御することができる。
【0075】
また、上述のとおり、使用するエッチングガス(混合ガス)により相互拡散係数DABが異なり、その結果、同一のチャンバ内において、エッチングガスの拡散が支配的となる領域と、エッチングガスの流れが支配的となる領域とが大きく異なることとなる。
これは、同じチャンバを用いても、エッチング対象膜により、エッチングレートのウエハ面内均一性が異なり得ることを示唆しており、このことから、ペクレ数Peに基づく検討、及びその検討に基づいてガスの供給条件を変えることの重要性が理解される。特に、エッチングガスの拡散が支配的となる領域と、エッチングガスの流れが支配的となる領域とがチャンバ内に存在する場合に、どのようにガスの供給条件を変えるかはエッチングレートを均一化するために重要である。本実施形態によるプラズマエッチング装置100においては、3つの環状隔壁部材145によりシャワーヘッド140のバッファ室143が4つの領域143a〜143dに分割され、各々から異なる流量でエッチングガスを供給することができるため、上記の検討に基づいたガス供給条件の変更が可能となり、エッチングレートのウエハ面内での均一性を改善できるという利点がある。また、エッチング対象膜ごとに異なるエッチングガス(混合ガス)に対応して、ガス供給条件を変更することにより、ウエハ面内の均一性を改善できるため、異なる複数のエッチング対象膜を連続してエッチングすることが可能となる。
【0076】
次に、ガスの供給条件がガスの輸送に与える影響について説明する。即ち、供給ガスのどのようなパラメータが、ウエハ面内形状における、面内均一性の向上に寄与するかについて説明する。
【0077】
供給ガスの拡散は、ガス分子の平均自由行程l(m)とガスの流速u(m/s)に依存する。ここで、ガス分子の平均自由行程lは、ガスが理想気体であり、拡散分子の速度がマスクウェル分布に従うと仮定される場合、下記の式(3)で表される。
【0078】
l=(T×C)/(d×P) 式(3)
ここで、C:定数
d:ガス分子の衝突分子径(m)
P:系内の圧力(atm)
T:系内の温度(K)
一方、供給ガスの流速uも、ガスが理想気体であると仮定した場合、下記の式(4)で表される。
【0079】
u=(Q×C)/PV 式(4)
ここで、C:定数
Q:1気圧換算流量(m/s)
P:系内の圧力(atm)
V:系内の体積(m
このとき、供給ガスの拡散領域dareaは、平均自由行程l/流速uに比例するため、式(3)及び式(4)より、式(5)が導出される。
【0080】
area∝l/u=(T×V×C)/(dQ) 式(5)
ここで、C:定数
すなわち、供給ガスの拡散領域は、系内の体積、供給ガスの流量、系内の温度及び衝突分子径に依存することがわかる。なお、系内の体積とは、本実施形態では、上部電極120とサセプタ105との間の空間の体積に近似されるが、プラズマエッチング中には被処理体の径は変化しないため、上部電極120とサセプタ105との間の空間の距離(ギャップG)を指す。また、供給ガスの流量は、系内の圧力とも相関がある。さらに、衝突分子径は、供給ガスの種類(すなわち供給ガスの分子量)によって異なるため、供給ガスの拡散領域は、供給ガスの分子量にも依存する。
【0081】
供給ガスの拡散領域は、供給ガスの流量(及び供給ガスの圧力)、供給ガスの分子量、及びギャップG等のパラメータ(供給条件)に依存することを確認した実験について、図10を参照して説明する。
図10に、本実施形態におけるエッチングガスの供給条件を変更した場合のエッチングレートの変化を示す。図10に示すグラフを得る際には、センタ領域143a、中間領域143b、周縁領域143c、及び最外縁領域143dのガス噴出孔ha〜hdから供給されるガス分圧(後述のエッチング条件参照)が一定になるように、各領域143a〜143dへ供給する混合ガスの供給量を調整した。この場合の総流量は下記の通りである。ただし、最外縁領域143dのガス噴出孔からは、Cを20sccm多く供給した。図10の縦軸は、ハードマスクが形成されたシリコン酸化物のエッチングレートを、最もエッチングレートが大きい位置(最外周)を1として、規格化して示している。
【0082】
詳細なエッチング条件を下記に示す。
【0083】
チャンバ102内圧力 :80mTorr(圧力変更時:30~150mTorr)
ギャップG:30mm(ギャップ変更可能範囲:22mm~50mm)
高周波電源パワー(40MHz/13MHz):700/1000W
上部電極の電位 :0V
エッチングガスの総流量 :C4F8/Ar/N2/O2=30/1200/70/17sccm
処理時間 :60秒
なお、最外縁領域143dから供給される混合ガスには、C4F8(分子量変更時には、O又はCH2F2)=20sccmを添加し、流量変更時は、上記流量×0(.33〜1.5)の範囲で行った。
【0084】
図10の結果から、各々のパラメータが、供給ガスの拡散に対してどのような影響を及ぼすかがわかる。即ち、供給ガスの流量を低くする、供給ガスの分子量を小さくする、ギャップGを広くすることにより、供給ガスの拡散範囲が大きくなることがわかる。即ち、これらのパラメータを制御することにより、ガス(即ち、ラジカル)の濃度分布を制御することができるため、プラズマエッチング時におけるウエハの面内形状について、面内均一性を向上できることがわかる。一方、チャンバ102内の圧力は、式(5)からわかるように供給ガスの拡散領域のパラメータとはなっていないので、図10(c)においても圧力を変えても拡散領域の顕著な変化は認められない。
【0085】
(実験結果)
次に、本実施形態のプラズマエッチング装置及びプラズマエッチング方法の効果を確認するために行った実験、及びその結果について、図11及び図12を参照しながら説明する。
【0086】
(実験1)
まず、low-k膜、酸化シリコン膜、及びTiN膜をこの順に形成したウエハ(直径300mm)を用意した。これらの膜は、図5(a)を参照しながら説明した方法に従って形成した。次に、フォトリソグラフィ及びエッチングによりTiN膜をライン状にパターン化し、メタルハードマスク(MHM)を形成した。次いで、C/Ar/N/O混合ガスにより、MHMの開口に露出する酸化シリコン膜と、その下層のlow-k膜をエッチングした。このエッチングは、TiNマスクを用いて酸化シリコン膜及びlow-k膜をエッチングする点で、図7(f)を参照しながら説明した工程(図4のステップS46)に相当し、より具体的には、図7(f)に示すトレンチTを形成する場合に相当する。このため、説明の便宜上、酸化シリコン膜及びlow-k膜に形成される開口をトレンチと呼ぶこととする。
【0087】
また、このエッチングは、以下の2とおりの混合ガス供給条件で行った。
<条件1−1>
センタ領域143a: C4F8/Ar/N2/O2=1.3/53/3.1/1.0sccm
中間領域143b: C4F8/Ar/N2/O2=4.9/198/12/3.8sccm
周縁領域143c: C4F8/Ar/N2/O2=8.9/356/21/6.8sccm
最外縁領域143d: C4F8/Ar/N2/O2=14.8/593/35/11sccm
<条件1−2>
センタ領域143a: C4F8/Ar/N2/O2=1.3/53/3.1/1.0sccm
中間領域143b: C4F8/Ar/N2/O2=4.9/198/12/3.8sccm
周縁領域143c: C4F8/Ar/N2/O2=13.4/356/21/6.8sccm
最外縁領域143d: C4F8/Ar/N2/O2=0/593/35/11sccm。
【0088】
また、その他の条件については、条件1−1及び条件1−2に共通に以下のとおりとした。
<共通条件>
チャンバ120内の圧力: 80mTorr
ギャップG: 30mm
高周波電源パワー(40MHz/13MHz): 400/200W
上部電極の電位: 700V
処理時間: 95秒。
【0089】
実験1の結果を図11に示す。図11(a)は、条件1−1で行ったエッチングにより形成されたトレンチの断面を示す走査型電子顕微鏡(SEM)像であり、図11(b)は、条件1−2で行ったエッチングにより形成されたトレンチの断面を示す走査型電子顕微鏡(SEM)像である。これらの図における各SEM像の上の数値は、ウエハの中心からの位置を示している。
図11(a)を参照すると、ウエハの中心から外縁に向かう方向に沿って、トレンチの深さが浅くなる傾向が見られる。また、ウエハ中心側においては、トレンチの断面形状はほぼ長方形であるが、ウエハの外縁側においては、トレンチの内壁が傾斜し、底部が狭くなっていることが分かる。一方、図11(b)を参照すると、ウエハの中心側と外縁側でのトレンチの深さの差は殆ど認められず、トレンチの断面形状についてもウエハの中心側と外縁側で顕著な差は認められない。これらの結果を図12Aのグラフに示す。図12A(a)を参照すると、トレンチの深さに関しては、条件1−1において最大値と最小値の差は約20nmにも及ぶが、条件1−2においては、約10nmへと低減されている。また、図12A(b)に示すように、トレンチの底部の幅の最大値と最小値の差は、条件1−1において約15nmとなっているが、条件1−2においては約2nmと大幅に低減されている。すなわち、条件1−1を条件1−2へと変えることにより、エッチングプロファイルのウエハ面内均一性が改善されたことが分かる。
【0090】
次に、上記の条件と異なる条件でエッチングを行い、トレンチの断面形状のウエハ面内均一性について調べた。具体的には、下記の条件2−1及び条件2−2(共通条件は上記のとおり)のもとで、上記と同様にエッチングを行なった。
<条件2−1>
センタ領域143a: C4F8/Ar/N2/O2=1.3/53/3.1/1.0sccm
中間領域143b: C4F8/Ar/N2/O2=4.9/198/12/3.8sccm
周縁領域143c: C4F8/Ar/N2/O2=8.9/356/21/6.8sccm
最外縁領域143d: C4F8/Ar/N2/O2=0/593/35/11sccm
<条件2−2>
センタ領域143a: C4F8/Ar/N2/O2=1.3/53/3.1/1.0sccm
中間領域143b: C4F8/Ar/N2/O2=4.9/198/12/3.8sccm
周縁領域143c: C4F8/Ar/N2/O2=13.4/356/21/6.8sccm
最外縁領域143d: C4F8/Ar/N2/O2=0/593/35/11sccm。
【0091】
図12Bに、条件2−1及び2−2におけるトレンチの断面形状のウエハ面内均一性を示す。図12B(a)を参照すると、条件2−1では、周縁領域143cの下方位置における外縁側と最外縁領域143dの下方位置に近い部分においてトレンチが深くなっている(◇印)。これに対し、条件2−2では、対応する領域におけるトレンチは浅くなっており、トレンチの深さがウエハ面内でより均一化されていることが分かる(◆印)。図12B(b)には、条件2−1の場合と条件2−2の場合とにおけるトレンチの深さの差を示すが、このグラフから分かるように、条件2−1から条件2−2へ変更することにより、当該領域においてトレンチが約5nm浅くなることがわかる。しかもセンタ領域143a及び中間領域143bの下方位置においては、条件2−1から条件2−2へ変更してもトレンチの深さには殆ど差がない。この結果は、条件2−2において周縁領域143cからのCガスの供給量を増やしたことから、供給ガスの「流れ」の影響が支配的な周縁領域143cよりも外側では「流れ」の影響によりCガスが広がってエッチングレートが増加する一方、周縁領域143cよりも内側へはCガスが拡散し難いことからセンタ領域143a及び中間領域143bにおけるエッチングレートは殆ど変化しないと考えられる。
【0092】
(実験2)
実験2においては、まず、low-k膜及び酸化シリコン膜をこの順に形成したウエハ(直径300mm)を用意した。次に、フォトリソグラフィによりフォトレジストマスクを形成し、CHF/Ar/N混合ガスにより、フォトレジストマスクの開口に露出する酸化シリコン膜と、その下層のlow-k膜をエッチングした。なお、このエッチングは、有機材料で形成されるマスクを用いて酸化シリコン膜及びlow-k膜をエッチングする点で、図7(e)を参照しながら説明した工程(図4のステップS45)に相当する。すなわち、実験2におけるエッチングは、図7(e)に示すホールtを形成する工程に相当し、ホールtは後にビアV(図7(f))の形成に利用されるため、説明の便宜上、ここでのエッチングで形成される開口をビアと呼ぶこととする。
【0093】
ここでの条件は以下のとおりである。
<条件2−3>
センタ領域143a: CHF3/N2/Ar=2.6/23.7/31sccm
中間領域143b: CHF3/N2/Ar=9.9/89/58sccm
周縁領域143c: CHF3/N2/Ar=17.8/160/208sccm
最外縁領域143d: CHF3/N2/Ar=30/0/346sccm
<条件2−4>
センタ領域143a: CHF3/N2/Ar=2.6/23.7/31sccm
中間領域143b: CHF3/N2/Ar=9.9/89/58sccm
周縁領域143c: CHF3/N2/Ar=17.8/160/208sccm
最外縁領域143d: CHF3/N2/Ar=30/0/606sccm
また、その他の条件については、条件2−3及び条件2−4に共通に以下のとおりとした。
<共通条件>
チャンバ120内の圧力: 30mTorr
ギャップG: 30mm
高周波電源パワー(40MHz/13MHz): 560/0W
上部電極の電位: 0V
処理時間: 128秒。
【0094】
図12Cに、条件2−3及び2−4におけるビアの断面形状のウエハ面内均一性を示す。図12C(a)を参照すると、条件2−3においては、周縁領域143c及び最外縁領域143dにおいて、ウエハの外縁に向かってビアが深くなっていることが分かる(◇印)。一方、条件2−4では、対応する領域においてビアが浅くなっており、ビアの深さがウエハ面内でより均一化されていることが分かる(◆印)。図12C(b)には、条件2−3の場合と条件2−4の場合とにおけるビアの深さの差を示すが、このグラフから分かるように、条件2−3から条件2−4へ変更することにより、周縁領域143c及び最外縁領域143dにおいて、ウエハの外縁に向かってビアが急激に浅くなることが分かる。特に、最外縁領域143dにおいて約25nm浅くなっていることがわかる。また、センタ領域143a及び中間領域143bの下方位置においては、条件2−3から条件2−4へ変更してもトレンチの深さには殆ど差がない。条件2−4においては、条件2−3に比べ、最外縁領域143dにおけるNガス及びArガスの供給量を変化させており、最外縁領域143dのガス供給条件を変えることにより、最外縁領域143dの下方位置でのエッチングレートが変化したと考えられる。この結果は、図9を参照しながら説明したように、ペクレ数が1よりも小さい領域では、各領域143a〜143dのガス供給条件を変えると、ガス供給条件を変えた領域の下方位置でのエッチングレートを変えることができることと一致している。
【0095】
(実験3)
実験3においては、実験2のガス供給条件と異なる条件において、ビアの断面形状のウエハ面内均一性について検討を行った。具体的には、以下の2とおりの混合ガス供給条件でエッチングを行った。また、チャンバ120内の圧力等の共通条件は実験2における共通条件と同様である。
<条件3−1>
センタ領域143a: CHF3/N2/Ar=2.6/23.7/31sccm
中間領域143b: CHF3/N2/Ar=9.9/89/115sccm
周縁領域143c: CHF3/N2/Ar=17.8/160/208sccm
最外縁領域143d: CHF3/N2/Ar=30/267/346sccm
<条件3−2>
センタ領域143a: CHF3/N2/Ar=2.6/23.7/31sccm
中間領域143b: CHF3/N2/Ar=9.9/89/115sccm
周縁領域143c: CHF3/N2/Ar=17.8/160/208sccm
最外縁領域143d: CHF3/N2/Ar=30/0/346sccm。
【0096】
実験3の結果を図13に示す。図13(a)は、条件3−1でのエッチングにより形成されたビアの断面を示すSEM像であり、図13(b)は、条件3−2でのエッチングにより形成されたビアの断面を示すSEM像である。各SEM像の上の数値は、ウエハ位置を示している。また、図13(c)は、SEM像から測定したビア深さのウエハ位置依存性を示し、図13(d)は、SEM像から測定した、ビアの底部の幅のウエハ位置依存性を示す。
【0097】
図13(c)から良く理解されるように、条件3−1の場合にはウエハの外縁側でビアが浅くなる傾向にあるが、条件3−2のように最外縁領域143dにおけるガス供給条件を変更すると、外縁側においてビアが深くなる傾向が見られる。ただし、ビアの底部における幅に関しては、図13(d)に示すように、条件3−1の場合には外縁に向かって広くなるが、条件3−2の場合には、ウエハの最外縁部において僅かに広くなるものの、ほぼ一定となることがわかる。具体的には、条件3−1の場合においては底部の幅のウエハ面内における最大値と最小値の差は約16nmであるが、条件3−2の場合においては約4nmにまで減少した。このような結果から、最外縁領域143dのガス供給条件の調整によりビア形状(エッチング形状)の調整が可能であることが分かった。なお、最外縁領域143dのガス供給条件を変更した場合にも、周縁領域143cに対応する位置においてビアの深さ及び底部の幅が変化しているのは、エッチングガス(混合ガス)の拡散の影響と考えられる。
【0098】
(実験4)
次に、実験4について説明する。この実験では、下記の3とおりの条件でエッチングを行った。条件4−1は上記の条件3−2と同じであり、この条件に対してガス供給条件を変更した条件4−2及び条件4−3により、エッチング形状がどのように変化するか検討した。他の条件及びエッチング対象膜は、実験2と同様である。
<条件4−1>
センタ領域143a: CHF3/N2/Ar=2.6/23.7/31sccm
中間領域143b: CHF3/N2/Ar=9.9/89/115sccm
周縁領域143c: CHF3/N2/Ar=17.8/160/208sccm
最外縁領域143d: CHF3/N2/Ar=30/0/346sccm
<条件4−2>
センタ領域143a: CHF3/N2/Ar=2.6/23.7/31sccm
中間領域143b: CHF3/N2/Ar=9.9/89/58sccm
周縁領域143c: CHF3/N2/Ar=17.8/160/208sccm
最外縁領域143d: CHF3/N2/Ar=30/0/346sccm
<条件4−3>
センタ領域143a: CHF3/N2/Ar=2.6/23.7/31sccm
中間領域143b: CHF3/N2/Ar=9.9/89/58sccm
周縁領域143c: CHF3/N2/Ar=17.8/160/208sccm
最外縁領域143d: CHF3/N2/Ar=30/0/606sccm。
【0099】
図14(a)から図14(c)までに、各条件で形成したビア形状断面を示し、図14(d)及び図14(e)に、それぞれビア深さのウエハ位置依存性と、ビアの底部の幅のウエハ位置依存性とを示す。
【0100】
条件4−1と条件4−2とを比較すると、条件4−2では中間領域143bにおけるAr流量が58sccm(条件4−1では115sccm)へ減少している。この結果、図14(d)に示すように、全体的に深くなるものの、中間領域143bに対応するウエハ位置においてビアが相対的に深くなり、面内均一性が改善されていることが分かる。具体的には、最大値と最小値の差が32nm(条件4−1)から24nm(条件4−2)へ減少している。ここで、条件4−3に示すように、最外縁領域143dでのAr流量を606sccmへ増やすと(条件4−2では346sccm)、最外縁領域143dに対応するウエハ位置においてビアが浅くなり、その結果、ビア深さのウエハ面内均一性が改善されている。具体的には、最大値と最小値の差が24nm(条件4−2)から6nm(条件4−3)へ減少している。
また、ビアの底の幅に関しては、図14(d)に示すように、いずれの条件においても、十分なウエハ面内均一性が得られている。
以上のように、各領域143a〜143dのガス供給条件を変更することにより、ビア形状のウエハ面内均一性を大きく改善できることが分かった。
【0101】
(実験5)
次に、実験5について説明する。この実験では、下記の3とおりの条件でエッチングを行った。条件5−1は上記の条件5−3と同じであり、この条件に対してガス供給条件を変更した条件5−2及び条件5−3により、エッチング形状がどのように変化するか検討した。他の条件及びエッチング対象膜は、実験2と同様である。
<条件5−1>
センタ領域143a: CHF3/N2/Ar=2.6/23.7/31sccm
中間領域143b: CHF3/N2/Ar=9.9/89/58sccm
周縁領域143c: CHF3/N2/Ar=17.8/160/208sccm
最外縁領域143d: CHF3/N2/Ar=30/0/606sccm
<条件5−2>
センタ領域143a: CHF3/N2/Ar=1.3/23.7/31sccm
中間領域143b: CHF3/N2/Ar=4.95/89/58sccm
周縁領域143c: CHF3/N2/Ar=8.9/160/208sccm
最外縁領域143d: CHF3/N2/Ar=15/0/606sccm
<条件5−3>
センタ領域143a: CHF3/N2/Ar=1.3/23.7/31sccm
中間領域143b: CHF3/N2/Ar=4.95/89/58sccm
周縁領域143c: CHF3/N2/Ar=8.9/160/208sccm
最外縁領域143d: CHF3/N2/Ar=25/0/606sccm。
【0102】
図15(a)から図15(c)までに、各条件で形成したビア形状断面を示し、図15(d)及び図15(e)に、それぞれビア深さのウエハ位置依存性と、ビアの底部の幅のウエハ位置依存性とを示す。
【0103】
上記から分かるように、条件5−2では、条件5−1の各領域143a〜143dにおけるCHFガス流量が半減されており、他のガス流量は両条件間で同一である。このようにガス供給条件を変更した結果、図15(d)に示すように、ビアは、全体的に浅くなるとともに、ウエハ外縁側でより浅くなる傾向が見られる。CHFガス流量の半減によりビアが浅くなるのは、CHFガス流量が半減したことにより、フッ素ラジカルの量が減少し、酸化シリコン膜及びlow-k膜との反応量が減少したからである。
【0104】
さらに、条件5−3において、最外縁領域143dのAr流量(15sccm)を条件5−2の場合に比べて増やすと(25sccm)、ウエハ外縁側でビアが相対的に深くなり、ビア深さの面内均一性が改善されることがわかる。具体的には、ビア深さの最大値と最小値との差は、条件5−1の場合において6nmであり、条件5−2の場合において18nmであるが、条件5−3の場合においては4nmである。
【0105】
また、ビアの底部の幅に関しては、その最大値と最小値との差はいずれの条件においては、十分に低減されていることがわかった(2nmから6nm)。
【0106】
以上のとおり、この実験の結果からも各領域143a〜143dのガス供給条件を変更することにより、ビア形状のウエハ面内均一性を大きく改善できることが分かった。
【0107】
以上、本発明の好ましい実施形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、本発明の実施形態によるプラズマエッチング装置100でエッチング可能な被処理体は、特に限定されない。具体的には、例えば、シリコン基板よりなるウエハであって、その上に二酸化ケイ素(SiO)膜、ポリシリコン膜よりなる被エッチング膜、1層又は複数層よりなるマスク層、反射防止膜(Bottom Anti-Reflective Coating: BARC)及びフォトレジスト膜等が形成されているもの等が使用できる。このとき、レジスト膜は、予め露光、現像が行われ、所定のパターンが形成されている。
【0108】
また、上述のプラズマエッチング装置100における環状隔壁部材145の数は、1つ以上であれば特に制限されないが、例えば、図3で示すように3つとすることができる。直径300mmのウエハWを使用してプラズマエッチングする場合、エッチングガスの制御の容易さと、後述するプラズマエッチング方法によるエッチングの面内均一性とを両立する観点から、環状隔壁部材145の数は3つ(即ち、4つに分割されたバッファ室を有する)とすることが好ましい。なお、N個の環状隔壁部材145を配置することにより、N+1個に分割されたバッファ室を設置することができる。
【0109】
また、上述の配線層10(図5)は、銅(Cu)を含む金属で形成されていて良く、また、導電性のポリシリコンにより形成されていても良い。
【符号の説明】
【0110】
10、W ウエハ
105 サセプタ(支持部)
106 温度分布調整部
120 上部電極(電極)
122 ベローズ
130 調節部
140 シャワーヘッド
143 バッファ室
145 環状隔壁部材
150 ガス供給装置
190 装置制御部
200 上部電極駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成される第1の配線層の上に絶縁層と金属層とを順次形成するステップと、
前記金属層上に形成される第1のマスク層を用いて当該金属層をエッチングすることにより、前記絶縁層内に形成される第2の配線層のためのトレンチを画成する金属マスク層を形成するステップと、
前記金属マスク層を覆うように前記絶縁層上に平坦化膜を形成するステップと、
前記平坦化膜をエッチングすることにより、前記トレンチの底部に形成され前記第1の配線層と前記第2の配線層とを電気的に接続するビアプラグのためのビアを画成する第2のマスク層を形成するステップと、
プラズマエッチング装置において、前記第2のマスク層を用いて前記絶縁層をプラズマエッチングすることにより、当該絶縁層の厚さよりも小さい深さを有する開口を形成する第1のエッチングステップと、
前記プラズマエッチング装置と同一のプラズマエッチング装置において、前記金属マスク層を用いて前記絶縁層をプラズマエッチングすることにより前記トレンチを形成すると共に、前記開口を更に深くすることにより前記ビアを形成する第2のエッチングステップと
を備え、
前記第1のエッチングステップ及び前記第2のエッチングステップにおいては、前記基板上での、供給されたエッチングガスの拡散の影響が支配的な位置と、供給されたエッチングガスの流れの影響が支配的な位置とに対応して、当該エッチングガスの供給条件が調整される、プラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記第1のエッチングステップ及び前記第2のエッチングステップにおいては、前記基板の径方向中心側の部分からと、前記中心側の部分よりも前記基板の径方向外周側の部分とから、前記エッチングガスを前記基板に向けて供給し、
前記径方向外周側の部分に対応する前記基板上の空間において、供給される前記エッチングガスの拡散の影響が支配的であるなら、前記前記径方向外周側の部分から供給されるエッチングガスの供給条件を調整し、
前記径方向外周側の部分に対応する前記基板上の空間において、供給される前記エッチングガスの流れの影響が支配的であるなら、前記径方向中心側の部分から供給されるエッチングガスの供給条件を調整する、
請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記第1のエッチングステップ及び前記第2のエッチングステップにおいては、
前記径方向外周側の部分に対応する前記基板上の空間において、エッチングガスの流速をuとし、エッチングガスの拡散係数をDとし、前記径方向外周側の部分と前記基板と間隔をLとしたときに、
前記供給されたエッチングガスの拡散の影響が支配的である条件とは、uL/Dにより求まるペクレ数が1より小さいときであり、
前記供給されたエッチングガスの流れの影響が支配的である条件とは、前記ペクレ数が1以上のときである、
請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記供給条件がエッチングガスの流量である、請求項1から3に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項5】
前記エッチングガスが、フッ素系ガスと不活性ガスを含む混合ガスである、請求項1から4に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項6】
前記エッチングガスが酸素ガスを更に含む、請求項5に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法を行うステップと、
前記プラズマエッチング方法により形成された前記トレンチ及び前記ビアに対してダマシンプロセスにより金属を埋め込むことにより、ビアプラグと前記第2の配線層を形成するステップと、
を含む、半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−77594(P2013−77594A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214927(P2011−214927)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】