説明

アクチュエータ

ケース(100)と、このケース(100)の内部で回転自在に支持された回転体(200)と、磁力により回転体を回転駆動するステータ(110)とを備える。ステータ(110)は、ケース(100)の外部に装着された鉄心(111)と当該鉄心(111)に巻回された磁気コイル(112)とを含む。そして、磁極を構成する鉄心(111)の端面が、少なくとも非積層強磁性体で形成され、かつケース(100)の内壁の一部を形成するように当該ケース(100)の内面に露出した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、ケースの内部で移動自在な移動子、磁力によりこの移動子を駆動する固定子とを備えたアクチュエータに関し、特に、高真空や高温環境下での使用に好適なアクチュエータに関する。
【背景技術】
真空ポンプやターボ分子ポンプなどの駆動源に用いられるアクチュエータとして、真空モータが知られている。真空モータは、回転体とこの回転体を回転駆動するための電磁石からなるステータとを備えている。電磁石は、周知のごとく、鉄心の周囲に磁気コイルを巻回して形成されている。そして、電磁石を形成する鉄心には、渦電流の防止と吸引力強化のため、積層鋼板が使われている。積層鋼板は、複数枚の薄厚鋼板を樹脂製接着剤によって接着した構成である。
さて、真空モータは、ケースの内部を高真空雰囲気とする必要がある。しかし、従来の真空モータは、このケースの内部に、回転体とステータとが配設されており(例えば、特開平10−288191号公報参照)、しかもステータを構成する電磁石の鉄心に積層鋼板が用いられていたので、この積層鋼板にサンドイッチされた樹脂製接着剤から放出されるガスの影響により、ケース内を高真空雰囲気とすることが困難であった。
さらに、真空モータを高温下で運転する必要のある場合は、積層鋼板にサンドイッチされた樹脂製接着剤から多量のガスが放出されるため、いっそう高真空雰囲気を形成することが困難であった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、ケース内を高真空雰囲気に形成することができ、しかも高温下での運転にも充分な耐久性を保持することができるアクチュエータの提供を目的とする。
【発明の開示】
本発明は、ケースと、このケースの内部で移動自在な移動体と、磁力により移動体を駆動するステータとを備えたアクチュエータにおいて、
ステータは、
ケースの外部に装着された鉄心と当該鉄心に巻回された磁気コイルとを含み、
磁極を構成する鉄心の少なくとも端面が非積層強磁性体で形成され、かつケースの内壁の一部を形成するように当該ケースの内面に露出していることを特徴とする。
ここで、移動体は、ケースの内部で回転自在に支持された回転体で構成することができる。その場合、ステータは、回転体を回転駆動するように周方向に一定間隔をおいてケースに配設する。
ステータをケースの外部に配設することで、ステータを構成する鉄心が積層鋼板で形成されていても、積層鋼板からの放出ガスの影響を受けることなく、ケース内を高真空雰囲気とすることができる。
しかし、ステータをケースの外部に配設しただけでは、回転体との間の間隔が広がってしまい、回転体を駆動するために必要な磁力が弱まり、充分なトルクが得られないおそれがある。
そこで、本発明は、磁極を構成する鉄心の少なくとも端面を非積層強磁性体で形成し、さらにこの鉄心の端面をケースの内面に露出させることで、回転体との間の間隔を狭めている。これにより、強力な磁力を得ることができ、充分に大きなトルクをもって回転体を回転駆動することが可能となる。鉄心の端面は、非積層強磁性体で形成してあるので、ケースの内面に露出させても当該部位からガスが放出されることはない。しかも非積層強磁性体で形成した鉄心は、高温下や温度変化の激しい環境下においても高い耐久性,耐食性を保持することができる。
また、移動体を非接触にて移動自在に支持する磁気軸受を備えたアクチュエータにおいては、磁気軸受についても上記ステータと同様の構成を適用することが好ましい。
磁気軸受は、軸受用電磁石と、移動体における軸受用電磁石の磁極と対向する部位に設けられた軸受用強磁性体部とを備えている。
軸受用電磁石は、
ケースの外部に装着された鉄心と当該鉄心に巻回された磁気コイルとを含み、
磁極を構成する鉄心の少なくとも端面が非積層強磁性体で形成され、ケースの内壁の一部を形成するように当該ケースの内面に露出した構成とする。
これにより、磁気軸受を構成する鉄心が積層鋼板で形成されていても、積層鋼板からの放出ガスの影響を受けることなく、ケース内を高真空雰囲気とすることができる。
そして、磁極を構成する鉄心の端面を少なくとも非積層強磁性体で形成し、さらにこの鉄心の端面をケースの内面に露出することで、移動体に設けられた軸受用強磁性体部との間の間隔を狭めている。これにより、強力な磁力をもって移動体を非接触で支持することが可能となる。ここでも、鉄心の端面は、非積層強磁性体で形成してあるので、ケースの内面に露出させても当該部位からガスが放出されることはない。しかも非積層強磁性体で形成した鉄心は、高温下や温度変化の激しい環境下においても高い耐久性,耐食性を保持することができる。
さらに、磁気軸受は、軸受用強磁性体部を塊状の非積層強磁性体で形成することが好ましい。軸受用強磁性体部に積層鋼板を用いることなく、塊状の非積層強磁性体で形成することにより、ケース内にガスの放出源がなくなり、ケース内を高真空雰囲気とすることができる。
このように、軸受用強磁性体部を塊状の非積層強磁性体で形成しても、軸受用電磁石を形成する鉄心の端面をケースの内面に露出させて、軸受用強磁性体部との間隔を狭めているので、それらの部材間に強力な磁力を生じさせることが可能である。
ここで、移動体がケースの内部で回転自在に支持された回転体の場合には、軸受用電磁石と軸受用強磁性体部とを、次のように構成することが好ましい。
すなわち、軸受用電磁石は、回転体を軸方向に支持するスラスト電磁石と、回転体を径方向に支持するラジアル電磁石とを含む構成とする。
また、軸受用強磁性体部は、スラスト電磁石の磁極と対向する部位に設けられたスラスト強磁性体部と、ラジアル電磁石の磁極と対向する部位に設けられたラジアル強磁性体部とを含む構成とする。
このように構成することで、回転体をスラスト方向(軸方向)とラジアル方向(径方向)のそれぞれに非接触にて支持することができ、摩擦による金属粉の飛散がなく高真空雰囲気を持続させることが可能となる。
ここで、回転体には、各軸受用強磁性体部の間に非磁性体を介在させることが好ましい。
各軸受用強磁性体部を電磁的に遮断することなく隣接させた場合、相互に隣接する軸受用強磁性体部から磁力線の干渉が発生して、磁力が低下してしまうおそれがある。そこで、各軸受用強磁性体部の間に非磁性体を介在させることで、各軸受用強磁性体部を磁気的に遮断してこの種の弊害を回避することができる。
さらに、ラジアル電磁石は、回転体の異なる2箇所を径方向に支持する第1,第2ラジアル電磁石を含み、
ラジアル強磁性体部は、第1ラジアル電磁石の磁極と対向する部位に設けられた第1ラジアル強磁性体部と、第2ラジアル電磁石の磁極と対向する部位に設けられた第2ラジアル強磁性体部とを含む構成とすることが好ましい。
これにより回転体の傾きを防止して常に一定の姿勢で回転体を支持することが可能となる。
ここで、回転体は、径方向に複数の磁極が突出したロータ部と、このロータ部と同軸上で軸方向に延びる回転軸部とを含み、回転軸部を非磁性体で形成し、
第1ラジアル強磁性体部を、回転軸部の軸方向一端部に設けるとともに、第2ラジアル強磁性体部を、回転軸部の軸方向他端部に設けることが好ましい。
この構成により、ロータ部と各ラジアル強磁性体部とを、非磁性体の回転軸部によって磁気的に遮断することができ、簡単な構成で磁力線の干渉を回避することが可能となる。
さらに、回転体のロータ部を塊状の非積層強磁性体で形成するとともに、スラスト強磁性体部をロータ部と一体形成すれば、スラスト強磁性体部を別個に設ける必要がなくなり、構成が簡素化されて製作コストの低価格化を実現することができる。
また、各ラジアル電磁石は、それぞれ回転体の周囲に一定間隔をおいて複数設置することになる。ここで、各ラジアル電磁石の鉄心が磁極となる複数の端面を有する場合、これら各端面は軸方向に配置することが好ましい。
このような配置とすれば、ラジアル電磁石の鉄心の端面から放出される磁力線が、隣接するラジアル電磁石の鉄心の端面から放出される磁力線と干渉して磁力が不安定となる弊害を回避することができる。
上述したように、本発明によれば、ケース内を高真空雰囲気に形成することができ、しかも高温下や温度変化の激しい環境下においても充分な耐久性,耐食性を保持することができる。
上述した構成において、移動体は、ケースの内部で直線移動自在な構成としてもよく、またステータは、移動体を直線的に駆動するように当該移動方向へ一定間隔をおいてケースに配設してもよい。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明を回転式のモータ装置に適用した実施形態を示す断面正面図である。
図2は、回転体の構成を示す一部断面正面図である。
図3は、ケースとそこに装着された部品を示す正面断面図である。
図4は、ロータ部およびステータの鉄心に関する図1のA−A線断面図である。
図5は、第1ラジアル強磁性体部および第1ラジアル電磁石の鉄心に関する図1のB−B線断面図である。
図6は、本発明をリニアモータに適用した実施形態を示す断面正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明に係る好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明を回転式のモータ装置に適用した実施形態を示す断面正面図である。図2および図3はそれぞれ図1に示したモータ装置の構成要素を示す図で、図2は回転体の構成を示す一部断面正面図である。図3はケースとそこに装着された部品を示す正面断面図である。
これらの図面に示すモータ装置は、高温下で運転される真空モータに好適な構成を備えている。
モータ装置は、ケース100と、このケース100の内部で回転自在に支持された回転体200とを備えている。
回転体200は、図2に示すように、非磁性体からなる丸棒状の回転軸部210と、そのほぼ中央に装着された円盤状のロータ部220と備えており、回転軸部210の一端部側には、環状の第1ラジアル強磁性体部230が外嵌固定されている。また、回転軸部210の他端部側には、環状の第2ラジアル強磁性体部240が外嵌固定されている。そして、ロータ部220と各ラジアル強磁性体部230,240の間には、非磁性体からなる回転軸部210又は環状の非磁性体211が介在している。
この構成により、ロータ部220と各ラジアル強磁性体部230,240とを、非磁性体の回転軸部210や環状の非磁性体211によって磁気的に遮断することができ、簡単な構成で磁力線の干渉を回避することが可能となる。
ロータ部220は、塊状の非積層強磁性体で形成してある。このロータ部220は、図4に示すように、径方向に複数の磁極220aが突出して形成されており、これら磁極の内側(中心寄り)の部分がスラスト強磁性体部221を形成している。
ケース100は、内部が中空となっており、その中空部内に回転体200が収容される(図1参照)。ケース100の外部には、図3に示すように、ステータ110が設けられ、さらにスラスト電磁石120、第1ラジアル電磁石130、第2ラジアル電磁石140の各軸受用電磁石が設けられている。さらに、適所に回転体200との間の間隔を検出するための非接触センサ150,151,152が設けられている。これら非接触センサとしては、例えば、渦電流センサ、静電容量センサ、光学式センサなどを適用することができる。
ここで、ロータ部220とステータ110は、回転体200を磁力によって回転駆動するための回転駆動部を形成している。ステータ110は、U字状の鉄心111と、この鉄心111の各腕部に巻回された電磁コイル112とで構成された電磁石である。鉄心111は、複数枚の薄厚鋼板を積層してなる積層鋼板で形成してあり、その端面には非積層強磁性体の薄板113が貼り付けてある(図3参照)。そして、この非積層強磁性体の薄板113が貼り付けられた鉄心111の端面を、ケース100の内面に露出させるようにして、ケース100の外部にステータ110が装着されている。ここで、鉄心111の端面は、ケース100の内壁の一部を形成する。
ステータ110をケース100の外部に配設することで、ステータ110を構成する鉄心111が積層鋼板で形成されていても、積層鋼板からの放出ガスの影響を受けることなく、ケース100内を高真空雰囲気とすることができる。さらに、鉄心111の端面をケース100の内面に露出させることで、回転体200との間の間隔を狭め、強力な磁力を得ることができる。
ステータ110は、図4に示すように、ロータ部220の周囲で等間隔をおいて複数個(図4では12個)配設されている。これら各ステータ110の鉄心111が有する2つの端面は、軸方向に沿って配置してある。このような配置とすれば、各ステータ110の鉄心111の端面から放出される磁力線aが、隣接するステータ110の鉄心から放出される磁力線aと干渉して磁力が不安定となる弊害を回避することができる。
ロータ部220とステータ110は、スイッチトリラクタンスモータ(Switched Reluctance Motor;SRモータ)の動作原理をもって、回転体200を回転駆動する。すなわち、ステータ110の電磁コイル112に電流を流すと、鉄心111の端面が磁極となり、一方の端面から磁力線aが発生する(図1参照)。この磁力線aは、ロータ部220の外周に突出形成された磁極220aを通って、鉄心111の他方の端面に帰還するループを描く。この磁力線aによって、ロータ部220の磁極220aが吸引されて、ステータ110の鉄心111の端面に近づいていく。複数のステータ110の各電磁コイル112に流す電流を制御することで、逐次、周方向にロータ部220の吸引力を移動させることができ、これにより回転体200を回転させることができる。
スラスト電磁石120とスラスト強磁性体部221、第1ラジアル電磁石130と第1ラジアル強磁性体部230、そして、第2ラジアル電磁石140と第2ラジアル強磁性体部240は、互いに対になって磁気軸受を構成している。すなわち、スラスト電磁石120とスラスト強磁性体部221は、回転体200を軸方向(上方)へ磁気浮上させる機能を有しており、第1ラジアル電磁石130と第1ラジアル強磁性体部230は、回転体200の一端部を径方向に非接触で支持する機能を有しており、そして第2ラジアル電磁石140と第2ラジアル強磁性体部240は、回転体200の他端部を径方向に非接触で支持する機能を有している。
スラスト電磁石120は、回転体200のロータ部220に一体形成したスラスト強磁性体部221を上下方向から挟むように、ケース100の軸方向中間部に一対設けられている(図1参照)。
本実施形態では、図3に示すように、スラスト電磁石120を、塊状の非積層強磁性体からなる環状の鉄心121と、この鉄心121の中間部に形成した環状の凹部121a内に巻回した磁気コイル122とで構成してある。鉄心121および磁気コイル122は、ケース100と同軸状に設けてある。そして、鉄心121はケース100の一部を構成している。一対のスラスト電磁石120は、鉄心121の端面がケース100の内壁を形成しており、それら鉄心121の端面が、スラスト強磁性体部221に対して上下方向から対向している。なお、磁気コイル122が巻回された鉄心121の凹部121aは、その開口部に非磁性体123が装着してあり、この非磁性体123によって磁気コイル122がケース100の中空部から隔離されている。
各スラスト電磁石120の磁気コイル122に電流を流すと、鉄心121の端面が磁極となって磁力線aが発生する(図1参照)。この磁力線aによって、回転体200のロータ部220に一体形成したスラスト強磁性体部221が、上下両方向から吸引されてその中間部に磁気浮上する。回転体200の上下位置は、非接触センサ150によって監視されており、この非接触センサ150からの検出信号をフィードバックして、回転体200が磁気浮上状態を保つように磁気コイル122へ流す電流が制御される。
第1ラジアル電磁石130は、図3に示すように、U字状の鉄心131と、この鉄心の各腕部に巻回された電磁コイル132とで構成してある。鉄心は、複数枚の薄厚鋼板を積層してなる積層鋼板で形成してあり、その端面には非積層強磁性体の薄板133が貼り付けてある。そして、この非積層強磁性体の薄板133が貼り付けられた鉄心131の端面を、ケース100の内面に露出させるようにして、ケース100の外部に第1ラジアル電磁石130が装着されている。ここで、鉄心131の端面は、ケース100の内壁の一部を形成する。
このように、第1ラジアル電磁石130をケース100の外部に配設することで、第1ラジアル電磁石130を構成する鉄心131が積層鋼板で形成されていても、積層鋼板からの放出ガスの影響を受けることなく、ケース100内を高真空雰囲気とすることができる。さらに、鉄心131の端面をケース100の内面に露出させることで、回転体200との間の間隔を狭まり、強力な磁力を得ることができる。
第1ラジアル電磁石130は、図5に示すように、回転体200の回転軸部210に外嵌した第1ラジアル強磁性体部230の周囲で等間隔をおいて複数個(図5では4個)配設されている。各第1ラジアル電磁石130の鉄心131の端面は、第1ラジアル強磁性体部230と対向している。
ここで、各第1ラジアル電磁石130の鉄心131が有する2つの端面は、軸方向に並べて配置してある。このような配置とすれば、各第1ラジアル電磁石130の鉄心131の端面から放出される磁力線aが、隣接する第1ラジアル電磁石130の鉄心131から放出される磁力線aと干渉して磁力が不安定となる弊害を回避することができる。
各第1ラジアル電磁石130の磁気コイル132に電流を流すと、鉄心131の端面が磁極となって磁力線aが発生する(図1参照)。この磁力線aによって、回転体200の回転軸部210に外嵌した第1ラジアル強磁性体部230が、径方向から吸引されてその中間部に非接触にて支持される。回転体200の一端部の傾きは、非接触センサ151によって監視されており、この非接触センサ151からの検出信号をフィードバックして、回転体200の一端部が軸中心位置を保つように磁気コイル132へ流す電流が制御される。
第2ラジアル電磁石140も、第1ラジアル電磁石130と同様に、U字状の鉄心141と、この鉄心141の各腕部に巻回された電磁コイル142とで構成してある。鉄心141は、複数枚の薄厚鋼板を積層してなる積層鋼板で形成してあり、その端面には非積層強磁性体の薄板143が貼り付けてある。そして、この非積層強磁性体の薄板143が貼り付けられた鉄心141の端面を、ケース100の内面に露出させるようにして、ケース100の外部に第2ラジアル電磁石140が装着されている。ここで、鉄心141の端面は、ケース100の内壁の一部を形成する。
このように、第2ラジアル電磁石140をケース100の外部に配設することで、第2ラジアル電磁石140を構成する鉄心141が積層鋼板で形成されていても、積層鋼板からの放出ガスの影響を受けることなく、ケース100内を高真空雰囲気とすることができる。さらに、鉄心141の端面をケース100の内面に露出させることで、回転体200との間の間隔を狭まり、強力な磁力を得ることができる。
第2ラジアル電磁石140も、回転体200の回転軸部210に外嵌した第2ラジアル強磁性体部240の周囲で等間隔をおいて複数個(本実施形態では、第1ラジアル電磁石130と同様に4個)配設されている。各第2ラジアル電磁石140の鉄心141の端面は、第2ラジアル強磁性体部240と対向している。
ここでも、各第2ラジアル電磁石140の鉄心141が有する2つの端面は、軸方向に並べて配置してある。このような配置とすれば、各第2ラジアル電磁石140の鉄心141の端面から放出される磁力線aが、隣接する第2ラジアル電磁石140の鉄心141から放出される磁力線aと干渉して磁力が不安定となる弊害を回避することができる。
各第2ラジアル電磁石140の磁気コイル142に電流を流すと、鉄心141の端面が磁極となって磁力線aが発生する(図1参照)。この磁力線aによって、回転体200の回転軸部210に外嵌した第2ラジアル強磁性体部240が、径方向から吸引されてその中間部に非接触にて支持される。回転体200の他端部の傾きは、非接触センサ152によって監視されており、この非接触センサ152からの検出信号をフィードバックして、回転体200の他端部が軸中心位置を保つように磁気コイル142へ流す電流が制御される。
上述した実施形態において、ロータ部220、ステータ110の鉄心111の端面に貼り付けた薄板113、スラスト電磁石120の鉄心121、第1,第2ラジアル強磁性体部230,240は、非積層強磁性体で形成したが、これら各部材に好適な非積層強磁性体としては、JIS規格(日本工業規格)で400番台が付されたステンレス(電磁ステンレス)がある。この他にも、純鉄、鋼、パーメンジュール(Fe50/Co50)等の合金、フェライトなどを適用することも可能である。ただし、透磁率が高く、耐食性に優れ、渦電流特性が良好で、ガス吸着性が低いという点において、上記電磁ステンレスがもっとも好ましい。
〔その他の実施形態〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明はステッピングモータ等のモータ装置にも適応が可能である。
また、渦電流特性および吸引力の低下は否めないものの、必要に応じてステータ110、第1ラジアル電磁石130、第2ラジアル電磁石140の各鉄心を、塊状の非積層強磁性体で構成することも可能である。
上記実施形態では、スラスト強磁性体部221をロータ部220と一体に形成したが、これらを別の部材としてスラスト強磁性体部を別所に設けることもできる。
また、上記構成のスラスト電磁石120、およびスラスト強磁性体部221のみを利用して、移動体(回転体200に相当)を磁気浮上させるアクチュエータを構成することもできる。
図6は、本発明をリニアモータに適用した他の実施形態を示す断面図である。なお、図6に示す実施形態において、先に示した実施形態と同一部分又は相当する部分には同一符号を付すこととし、その部分の詳細な説明は省略する。
図6に示すリニアモータは、ケース100と、このケース100の内部で長手方向に直線的に移動自在な移動体200とを備えている。
移動体200は強磁性体からなり、その外周面には一定間隔毎に複数の磁極220aが突出して形成されている。
一方、ケース100は内部が中空となっており、その中空部内に移動体200が収容される。ケース100の外部には、長手方向に一定間隔をおいて複数のステータ110が設けられている。
ここで、移動体200の磁極220aとステータ110は、移動体200を磁力220aによって直線的に駆動するための駆動部を形成している。ステータ110は、U字状の鉄心111と、この鉄心111の各腕部に巻回された電磁コイル(図示せず)とで構成された電磁石である。鉄心111は、複数枚の薄厚鋼板を積層してなる積層鋼板で形成してあり、その端面には非積層強磁性体の薄板113が貼り付けてある。
そして、この非積層強磁性体の薄板113が貼り付けられた鉄心111の端面を、ケース100の内面に露出させるようにして、ケース100の外部にステータ110が装着されている。ここで、鉄心111の端面は、ケース100の内壁の一部を形成する。
ステータ110をケース100の外部に配設することで、ステータ110を構成する鉄心111が積層鋼板で形成されていても、積層鋼板からの放出ガスの影響を受けることなく、ケース100内を高真空雰囲気とすることができる。さらに、鉄心111の端面をケース100の内面に露出させることで、移動体200との間の間隔を狭め、強力な磁力を得ることができる。
ステータ110の電磁コイル(図示せず)に電流を流すと、鉄心111の端面が磁極となり、一方の端面から磁力線が発生する。この磁力線は、移動体200の外周に突出形成された磁極220aを通って、鉄心111の他方の端面に帰還するループを描く。この磁力線によって、移動体200の磁極220aが吸引されて、ステータ110の鉄心111の端面に近づいていく。複数のステータ110の各電磁コイル112に流す電流を制御することで、逐次、長手方向に移動体200の磁極220aに対し吸引力を移動させることができ、これにより移動体200を直線的に移動させることができる。
なお、図6に示した構成のリニアモータは、移動体200を任意の高さ位置まで浮上させて静止させておく磁気浮上装置としての応用も可能である。
上述した実施形態においても、移動体200、およびステータ110の鉄心111の端面に貼り付けた薄板113を形成する非積層強磁性体としては、JIS規格で400番台が付されたステンレス(電磁ステンレス)が好適である。この他にも、純鉄、鋼、パーメンジュール(Fe50/Co50)等の合金、フェライトなどを適用することも可能である。ただし、透磁率が高く、耐食性に優れ、渦電流特性が良好で、ガス吸着性が低いという点において、上記電磁ステンレスがもっとも好ましい。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、ケース内を高真空雰囲気に形成することができ、しかも高温下や温度変化の激しい環境下においても充分な耐久性,耐食性を保持することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、このケースの内部で移動自在な移動体と、磁力により前記移動体を駆動するステータとを備えたアクチュエータにおいて、
前記ステータは、
前記ケースの外部に装着された鉄心と当該鉄心に巻回された磁気コイルとを含み、
磁極を構成する前記鉄心の少なくとも端面が非積層強磁性体で形成され、かつ前記ケースの内壁の一部を形成するように当該ケースの内面に露出しているアクチュエータ。
【請求項2】
前記移動体は、前記ケースの内部で回転自在に支持された回転体であり、
前記ステータは、前記回転体を回転駆動するように周方向に一定間隔をおいて前記ケースに配設されている請求の範囲1のアクチュエータ。
【請求項3】
前記移動体は、前記ケースの内部で直線移動自在であり、
前記ステータは、前記移動体を直線的に駆動するように当該移動方向へ一定間隔をおいて前記ケースに配設されている請求の範囲1のアクチュエータ。
【請求項4】
ケースと、このケースの内部で移動自在な移動体と、磁力により前記移動体を駆動するステータと、前記移動体を非接触にて移動自在に支持する磁気軸受とを備えたアクチュエータにおいて、
前記磁気軸受は、
軸受用電磁石と、前記移動体における前記軸受用電磁石の磁極と対向する部位に設けられた軸受用強磁性体部とを備え、
前記軸受用電磁石は、
前記ケースの外部に装着された鉄心と当該鉄心に巻回された磁気コイルとを含み、
磁極を構成する前記鉄心の少なくとも端面が非積層強磁性体で形成され、前記ケースの内壁の一部を形成するように当該ケースの内面に露出していることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
前記移動体は、前記ケースの内部で回転自在に支持された回転体であり、
前記ステータは、前記回転体を回転駆動するように周方向に一定間隔をおいて前記ケースに配設されている請求の範囲4のアクチュエータ。
【請求項6】
前記回転体は、前記軸受用強磁性体部との間に非磁性体を介在させてある請求の範囲5のアクチュエータ。
【請求項7】
前記軸受用電磁石は、前記回転体を軸方向に支持するスラスト電磁石と、前記回転体を径方向に支持するラジアル電磁石とを含み、
前記軸受用強磁性体部は、前記スラスト電磁石の磁極と対向する部位に設けられたスラスト強磁性体部と、前記ラジアル電磁石の磁極と対向する部位に設けられたラジアル強磁性体部とを含む構成である請求の範囲5のアクチュエータ。
【請求項8】
前記ラジアル電磁石は、前記回転体の異なる2箇所を径方向に支持する第1,第2ラジアル電磁石を含み、
前記ラジアル強磁性体部は、前記第1ラジアル電磁石の磁極と対向する部位に設けられた第1ラジアル強磁性体部と、前記第2ラジアル電磁石の磁極と対向する部位に設けられた第2ラジアル強磁性体部とを含む構成である請求の範囲7のアクチュエータ
【請求項9】
前記回転体は、径方向に複数の磁極が突出したロータ部と、このロータ部と同軸上で軸方向に延びる回転軸部とを含み、当該回転軸部を非磁性体で形成し、
前記第1ラジアル強磁性体部を、前記回転軸部の軸方向一端部に設けるとともに、前記第2ラジアル強磁性体部を、前記回転軸部の軸方向他端部に設けた請求の範囲8のアクチュエータ。
【請求項10】
前記回転体のロータ部を塊状の非積層強磁性体で形成するとともに、前記スラスト強磁性体部を前記ロータ部と一体形成した請求の範囲7のアクチュエータ。
【請求項11】
前記移動体は、前記ケースの内部で直線移動自在であり、
前記ステータは、前記移動体を直線的に駆動するように当該移動方向へ一定間隔をおいて前記ケースに配設されている請求の範囲4のアクチュエータ。
【請求項12】
前記磁気軸受は、
前記軸受用強磁性体部が塊状の非積層強磁性体で形成されていることを特徴とする請求の範囲4のアクチュエータ。

【国際公開番号】WO2005/039019
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514707(P2005−514707)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010071
【国際出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】