説明

アスパラシン含量を高めたルイボス抽出物、このようなルイボス抽出物の製造方法、及びこのようなルイボス抽出物を含む化粧品

本発明は、溶媒抽出を用いて未発酵ルイボス原材料から、少なくとも5wt%の高められたアスパラシン含量で調製されたルイボス抽出物、かかるルイボス抽出物から調製された化粧品、及び増加されたアスパラシン含量及び好ましくは低減されたクロロフィル含量を有するルイボス抽出物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のルイボス抽出物、かかるルイボス抽出物の製造方法、並びにかかるルイボス抽出物を含む化粧品に関する。好ましくは、本発明に記載のルイボス抽出物は、かなり低減されたクロロフィル含量を有する。
【背景技術】
【0002】
ジャーマン・レッド・ブッシュ、ラテン・アスパラシス・リネアリス(Latin Aspalathus linearis)であるルイボスは専ら南アフリカで生育し、そして世界で唯一のその様な植物として、特に高い抗酸化性物質でありフラボノイドであるアスパラシンを含む。ルイボスは、多くの人にレッドブッシュティーとして知られている。なぜなら発酵され乾燥されたルイボスの葉は、伝統的に茶又は茶抽出物として使用されてきたからである。ルイボス植物はアルカロイドを含まず、特にカフェインを含まず、そして例えば緑茶と比べると、少量のタンニンしか有さない。このことは、胃が弱い人にもレッドブッシュティーが適しているということを意味している。
【0003】
1〜3%を超えないアスパラシン含量を有するレッドブッシュティー抽出物は市販されている。ルイボスに含まれるアスパラシンの前述の抗酸化作用をよりよく利用するために、高アスパラシン含量を有するルイボス抽出物を用いることが好ましいであろう。同時に、そのような抽出物ができるだけ低いクロロフィル含量を含む場合、好ましいであろう。なぜなら、高クロロフィル含量を有するルイボス抽出物は、化粧品に使用した際に不所望な変色を導くからである。
【発明の開示】
【0004】
従って、本発明の目的は、高められたアスパラシン含量を有し、そして好ましくは有意に低減されたクロロフィル含量を有するルイボス抽出物、並びにそのような改良ルイボス抽出物の製造方法を提供することであり、その結果かかるルイボス抽出物は化粧品に使用することもできる。
【0005】
この目的は、未発酵ルイボスの原材料から溶媒抽出を用いて調製されるルイボス抽出物によって、本発明に従って達成され、この抽出物は、少なくとも5wt%のアスパラシン含量を有し、そして0.4wt%未満のクロロフィル含量を有する。少なくとも5wt%のアスパラシン含量は、当該抽出物が例えば化粧品において使用された際に医薬の有効性を保証するために十分高い。0.4wt%未満、好ましくは0.2wt%未満、そして特に好ましくは0.1wt%未満のクロロフィル含量は、本発明に従ったルイボス抽出物を含有する製品の不所望な変色を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
好ましくは、本発明に従ったルイボス抽出物のアスパラシン含量は、10wt%超、好ましくは15wt%超、又はさらに20wt%超である。このような高アスパラシン含量を有するルイボス抽出物は、これまで得ることができなかった。高アスパラシン含量の利点は、所定の製品において、同じ有効性を達成するために少量のルイボス抽出物の添加で十分であり、このことは同様にクロロフィル含量が低いことのため、製品の不所望の変色の危険性を低減する。高アスパラシン含量のさらなる利点は、製品に加えられるルイボス抽出物の所定量について、化粧品として活性なアスパラシンの含量がかなり増加するという事実に基づく。アスパラシンは、強力な抗酸化剤としてだけではなく、抗炎症剤及び抗微生物薬としても作用し、このことは、本発明に従った抽出物が髪、皮膚、又は口のケア又は治療に使用される場合に特に利点がある。
【0007】
好ましくは、本発明に従ったルイボス抽出物は、上で特定されるよりはさらに少ない量のクロロフィルを含み、そして特に好ましくは0.15wt%未満である。
【0008】
既に言及されたように、本発明に従ったルイボス抽出物は、皮膚、髪、又は口腔内の治療又はケアのための化粧品において使用するのに特に適している。本発明に記載されるルイボス抽出物を含む薬剤、特に化粧品における薬剤は、本発明によりカバーされる。導入部において言及される目的は、従って、本発明に記載される0.01〜10wt%のルイボス抽出物を含む化粧品により達成される。その様な化粧品は、好ましくは、溶液、懸濁液、又はゲルの形態で存在する。本発明に従った化粧品の例は、歯科用ゲル、日焼け用ローション、消色クリーム(coloured vanishing creme)又はリップスティックである。
【0009】
本発明に従った化粧品がエマルジョンの液体で存在する場合、当該エマルジョンは好ましくはクリームである。化粧品用の慣用のクリーム基材が0.1wt%の本発明のルイボス抽出物を含む場合、いわゆる「二分体(half-side)」試験において実証された抗炎症性作用を有し、そして数日間皮膚に適用した後に、経皮水分蒸散量(TEWL)を有意に低下させる。さらに、本発明に記載される抽出物を加えられたその様なクリームは、皮膚への再生支持作用を有する。
【0010】
本発明に従った抽出物の強力な抗酸化作用であって、ABTS、フェントーン(fentone)、過酸化窒素、ローズ・ベンガル(Rose Bengal)、銅誘導性ローズ・ベンガル、キサンチン/キサンチン酸化酵素などの科学的に認められた試験により確認された抗酸化作用とは別に、本発明に従ったルイボス抽出物は、抗微生物作用、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia Coli)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus Aureus)、シュードモナス・アエロギノーサ(Pseudomonas Aeroginosa)への抗菌作用、並びに例えばアスペルギウス・ニガー(Aspergillus Niger)に対する殺菌作用も有する。
【0011】
本発明に従ったルイボス抽出物を含む化粧品を、長期間にわたる不所望な変色に対して保護するために、これらの化粧品は、好ましくは0.01〜2wt%、特に0.1〜2wt%の変色に対する保護添加物を含む。かかる添加物の例は、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、α-トコフェロール、α-トコフェロール・アセテート、tert.-ブチル-ヒドロキノン、ヒドロキノン、没食子酸プロピル、塩素酸ナトリウム、Na EDTA、没食子酸、フィチン酸、ローズマリー酸、ローズマリーのカルノソール酸(calnosol acid)含有抽出物、又はこれらの物質の混合物である。
【0012】
或いは、pH値を4又はそれ未満に低下させることにより、本発明に記載されるルイボス抽出物を含む化粧品を変色から保護することが可能である。
【0013】
本発明に従ったルイボス抽出物であって、高められたアスパラチン含量を有し、そして好ましくは、低減されたクロロフィル含量を有する抽出物の製造は、特別な方法を用いることにより特に上手く行われうる。それゆえ、当該方法は本発明によりカバーされる。従って、最初に言及された目的は、本発明に従ったルイボス抽出物の製造方法であって、以下のステップ:
・乾燥及び粉砕、未発酵のルイボス原材料を準備し;
・供給された原材料を、エタノール及び水の混合物からなる抽出剤で、15〜35℃の温度にて所定の抽出時間抽出し;
・抽出物をろ過し;
・減圧下で蒸発させることにより、ろ過された抽出物を乾燥するまで濃縮し;
・乾燥抽出物を粉砕し;
・粉末の抽出物を溶媒で所定の時間洗浄し;
・抽出物/溶媒混合物をろ別し、そして得られたろ過ケーキを、溶媒の所定の残存含量が得られるまで減圧下で乾燥させる
を含む方法により達成される。
【0014】
従って、本発明に記載される方法の重要なポイントは、乾燥及び未発酵ルイボス原材料からなる適切な開始物質の提供である。通常、開始物質は、収穫の際に得られたアスパラアシス・リネアリス植物の葉と茎の混合物であるが、葉のみを開始物質として使用することができることが有利である。好ましくは、供給されたルイボス原材料の含水量は、4%又はそれ未満である。なぜなら開始物質の自己発酵がそれにより防止されるからである。葉のみが開始物質として使用される場合、供給されたルイボス原材料は、7%又はそれ未満であることが必要である。7%の含水量は、(葉のみを開始物質とする)この場合、葉及び茎の混合物の場合における4%の含水量に匹敵する。なぜなら、茎はより完全に乾燥し、その結果、混合物の場合、乾燥混合物の平均含水量が低くなり、つまり、混合物において茎は、葉に比べてかなり低い含水量を有するからである。
【0015】
本発明に従った方法の好ましい実施態様に従って、80対20の比のエタノール/水混合物が抽出剤として使用される。本発明に従った本方法の好ましい実施態様では、粗製生成物対抽出物質の比は、好ましくは1対5であり、そして抽出ステップは、好ましくは1.5〜3時間室温で行われる。しかしながら、他のエタノール/水混合比が使用されてもよく、この場合エタノール画分が高いが、低くてもよく、そして必要に応じてかなり低いこともある。
【0016】
ろ過された抽出物を、蒸発により濃縮するステップは、100mbar未満の圧力で行われ、そして特に、30mbar未満の圧力で行われる。濃縮ステップにおける温度は、好ましくは最大でも40℃である。
【0017】
粉末抽出物を溶媒で洗浄するステップは、好ましくは、1.5〜3時間、1:5の抽出物:溶媒の比で行われる。
【0018】
抽出物/溶媒混合物のろ過ケーキを乾燥することにより達成される溶媒の所定の残存量は、好ましくは20ppm又はそれ未満である。
【0019】
ルイボス抽出物を製造するための本発明に従った方法の特に好ましい実施態様は、以下により詳細に記載される。4%未満の含水量に注意深く乾燥されたアスパラサス・リネアリスの未発酵及び粉砕原材料(葉及び茎)が開始物質として使用される。この原材料を、1.5〜3時間、15〜35℃で80:20の比のエタノール及び水の混合物で抽出する。
【0020】
得られた抽出物は、減圧下、好ましくは30mbarで、そして最大40℃で乾燥するまで蒸発により濃縮される。乾燥抽出物を次に粉砕し、そして室温にて1.5〜3時間洗浄した。抽出物:溶媒及び洗浄剤の比は1:5であった。
【0021】
酢酸エチルとそれらで洗浄された抽出物の混合物が、洗浄段階の後にろ過され、次にろ液を捨て、そしてろ過ケーキ中の計測可能な溶媒残渣が20ppm未満となるまで減圧下で乾燥させる。
【0022】
少なくとも15wt%のアスパラシン含量を有する微細な、ベージュ-緑色の粉末が得られ、得られた抽出物は、原材料の1〜最大3%のクロロフィルを含む。
【0023】
製造例が以下に与えられる:
3.7%のアスパラシン含量を有する4kgの乾燥及び粉砕ルイボス原材料(葉及び茎)を16kgのエタノールと4kgの水の混合物で、90分間30℃で抽出する。アスパラシス・リネアリスの不溶性残渣をろ別した後に、得られたろ液を100mbar未満の減圧下及び40℃の温度で乾燥するまで蒸発させることにより濃縮する。粗製抽出物は、微細に粉砕され、1.8kgの酢酸エチルを加え、そして混合物を90分間室温で攪拌する。混合物を次にろ過し、そしてろ過ケーキを100mbar未満の減圧下で2時間乾燥させる。16.2wt%のアスパラシンを含む340gの抽出物が得られる。抽出物は、0.058wt%のクロロフィルを含み、これは使用された原材料における0.9%のクロロフィル含量に対応する。
【実施例】
【0024】
上で記載された方法により調製される本発明に記載のルイボス抽出物を、以下の実施例に従った様々な化粧品に使用した。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒抽出により未発酵ルイボス原材料から調製され、そして少なくとも5wt%のアスパラシン含量並びに0.4wt%未満のクロロフィル含量を有することを特徴とする、ルイボス抽出物。
【請求項2】
前記アスパラシン含量が10wt%より高いことを特徴とする、請求項1に記載のルイボス抽出物。
【請求項3】
前記アスパラシン含量が15wt%より高いことを特徴とする、請求項1に記載のルイボス抽出物。
【請求項4】
前記クロロフィル含量が0.2wt%未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のルイボス抽出物。
【請求項5】
0.01〜10wt%の請求項1〜4のいずれか一項に記載のルイボス抽出物を含むことを特徴とする、化粧品。
【請求項6】
前記化粧品が溶液、懸濁液、又はゲルの形態で存在することを特徴とする、請求項5に記載の化粧品。
【請求項7】
前記化粧品が皮膚、髪、又は口腔フローラの治療及び/又はケアに使用されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の化粧品。
【請求項8】
前記化粧品が0.01〜2wt%の変色保護添加物を含むことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の化粧品。
【請求項9】
前記添加物が、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、α-トコフェロール、α-トコフェリル・アセテート、tert-ブチル-ヒドロキノン、ヒドロキノン、没食子酸プロピル、塩素酸ナトリウム、Na EDTA、没食子酸、フィチン酸、ローズマリー酸、ローズマリーのカルノソール酸含有抽出物、又はこれらの物質の混合物であることを特徴とする、請求項8に記載の化粧品。
【請求項10】
以下のステップ:
乾燥され、そして粉砕された未発酵ルイボス原材料を準備し、
エタノールと水の混合物からなる抽出剤を用いて、供給された原材料を所定の抽出時間の間抽出し、
当該抽出物をろ過し、
減圧下で蒸発させることにより乾燥するまで当該ろ過抽出物を濃縮させ、
乾燥抽出物を粉末化し、
当該粉末抽出物を溶媒で所定の時間の間洗浄し、
当該抽出物/溶液混合物をろ別し、そして得られたろ過ケーキを減圧下で溶媒の所定の残存含量が得られるまで乾燥させる
により特徴付けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のルイボス抽出物の製造方法。
【請求項11】
前記供給されたルイボス原材料の含水量が4%又はそれ未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抽出剤が、80:20の比のエタノール及び水からなることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記原材料対前記抽出剤の比率が、1:5であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抽出ステップが、15℃〜35℃の温度で行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記所定の抽出時間が、1.5〜3時間であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
蒸発により前記ろ過抽出物を濃縮するステップが、100mbar未満の圧力で、好ましくは30mbar又はそれ未満の圧力で行われることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
蒸発により前記ろ過抽出物を濃縮するステップが、最大40℃の温度で行われることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記粉末抽出物を洗浄するステップが、1:5の抽出物対溶媒の比で溶媒を用いて行われることを特徴とする、請求項10〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記粉末抽出物を洗浄するステップが、1.5〜3時間の時間の間溶媒で行われることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒の所定の残存含量が20ppm又はそれ未満であることを特徴とする、請求項10〜19のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−528533(P2008−528533A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552584(P2007−552584)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000723
【国際公開番号】WO2006/081989
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(507253048)ラップス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】