説明

アプリケーションを感知する無線システム

少なくとも1つのアンテナ(106)を有するトランスポンダ(104)にクエリメッセージを送信する送信機(102)を有する物理的オブジェクトの空間配置を感知する無線システムである。無線周波数シールド(108)は、前記送信機と1つ以上のアンテナとの間に可動に挿置可能であり、これにより、アンテナにおいて受信された前記クエリメッセージの信号強度を減衰させる。前記物理的オブジェクトの空間配置のいかなる状態においても、前記トランスポンダは、前記クエリメッセージを受信することができ、応答として、前記1つ以上のアンテナにおいて受信される前記クエリメッセージの前記信号強度に従って決定されるデータを含む応答メッセージを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプリケーションを感知するのに適した無線システムに関し、より詳細には、1以上の次元における物理的オブジェクトの空間配置の判断に関する。
【背景技術】
【0002】
基準のフレームに関する物理的オブジェクトの状態は、この基準のフレームに対する位置及び向きによって特徴付けられる。前記物理的オブジェクトは、固定されているわけではないが、互いに対して移動可能な複数の構成要素を有しており、前記のようなオブジェクトの状態は、前記オブジェクトの空間配置、即ち前記構成要素の相対的な位置及び向きによって更に特徴付けられる。前記オブジェクトの状態を判断するセンサは、状態依存動作の実施を容易にする。例えば、サーボ機構におけるアクチュエータは、フィードバックループにおける前記センサの制御下で、現在の状態から所望の状態への遷移を生じさせる。
【0003】
幅広い種類の位置センサ及び方向センサが知られている。例えば、水銀スイッチ(電気回路を短絡させる水銀によって部分的に満たされている小さいチューブ)又はジャイロスコープは、重力に対して又は加速の方向について、向きを決定するのに使用される。
【0004】
更なる例は、光学検出の使用、例えば、シャフトが回転された場合に、光源と光検出器との間の光路を遮断するための回転可能なシャフトにおける歯車の使用である。このこと及び多くの他の従来技術のセンサの不利な点は、電源及び信号配線が、前記センサからの出力信号にアクセスするための関連する接触手段と一緒に、前記検出器(例えば、光検出器)に必要であることにある。更に、いくつかのセンサは、回転を検知する目的のためだけに設けられ得る付加的な機械手段(例えば、歯車)を必要とし、これにより、コスト、重さ及び物理ボリュームをホスト製品に付加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許出願第2001−018748号には、乗り物の乗員のシートベルトのためのバックル装置であって、トランシーバとトランスポンダとが、前記バックル装置内の通路を越えて互いに対向して配列されている乗り物の乗員のシートベルトのためのバックル装置が開示されている。金属シールド板が前記通路内に滑動可能に配され、この結果、前記シートベルトのタングプレートが挿置されていない場合には、前記トランシーバと前記トランスポンダとの間の電波の送信及び受信が遮られ、前記シートベルトのタングプレートが挿置されている場合には、前記のようなシールド板が、前記トランシーバと前記トランスポンダとの間の電波の送信及び受信を許可するように移動される。従って、前記乗員が、前記シートベルを装着していることの検出が得られる。開示されている前記装置の不利な点は、前記乗員が、シートベルトを装着していないという代替的な状態は、黙示的に示されるのみであることにある。即ち、前記装置は、一方の状態を明示的に検出しているのみである。この文献は、明示的に示される必要がある各付加的な状態は、前記トランシーバにおいて前記トランスポンダからの応答を区別するための手段と一緒に、少なくとも付加的なトランスポンダを必要とすることを暗示している。
【0006】
本発明の目的は、トランスポンダを使用して複数の物理状態を明示的に判断することにより、既知の従来技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
− クエリメッセージを送信するように動作可能な送信機と、
− 少なくとも1つのアンテナを有するトランスポンダであって、前記クエリメッセージの受信の際に応答メッセージを送信するように動作可能なトランスポンダと、
− 使用時に、前記送信機と前記少なくとも1つのアンテナとの間に可動に挿置可能である無線周波数シールドであって、前記少なくとも1つのアンテナにおいて受信される前に、前記クエリメッセージの信号強度を減衰させるように動作可能である無線周波数シールドと、
− 前記応答メッセージを受け取るように動作可能である受信機と、
を有する、アプリケーションの空間的な感知のための無線システムであって、
− 前記シールドが、前記送信機と前記少なくとも1つのアンテナとの間に挿置されている場合、前記トランスポンダは、前記クエリメッセージを受信するように動作可能であって、前記応答メッセージは、1つ以上のアンテナにおいて受け取られる前記クエリメッセージの前記信号強度に従って決定されるデータを含んでいる、アプリケーションの空間的な感知のための無線システムが提供される。
【0008】
有利には、従来技術と異なり、前記クエリメッセージ(無線信号)は、前記のようなシールドが前記送信機と前記トランスポンダとの間に挿置されている場合でさえも、前記トランスポンダによって受信される。本発明は、無線信号の経路における障害物(無線周波数シールド)が、受信アンテナにおいて受信される前記無線信号の強度を減少することができ、この減少は、可変であり、採用されるシールドの種類に従って(例えば、前記シールドの材料、及び/又は該シールドが妨害する経路の量によって)予め決定されるものである特性を実現する及び開発する。有利には、前記受信アンテナにおいて受信された信号強度のこれらの変化が、検出され、前記受信アンテナに対する前記シールドの位置決めを決定するように使用される。前記シールドは、適用された減衰(前記トランスポンダのアンテナにおける減少された信号強度)が、前記トランスポンダによって区別されることができるように、前記クエリメッセージを減衰させるように振舞うと共に、十分な信号強度の前記クエリメッセージが、前記クエリメッセージの受信を保証するように前記トランスポンダの1つ以上のアンテナに到達することも保証する。特定の受信アンテナにおいて、前記クエリメッセージは、前記トランスポンダが、前記アンテナを使用して前記クエリメッセージを受け取るのを可能にするのに十分なままである強度まで減衰されることができる。前記のような構成は、前記クエリメッセージを受け取るのに1つのアンテナのみを利用するトランスポンダに適している。代替的には、特定の受信アンテナにおいて、前記クエリメッセージは、前記トランスポンダが前記アンテナを使用して前記クエリメッセージを受信するのを防止するレベルにまで減衰されることができ、この場合、前記トランスポンダのもう1つのアンテナが、前記クエリメッセージを受け取るのに使用される。明らかに、前記のような装置は、前記クエリメッセージを受け取るのに複数のアンテナを使用するトランスポンダに適している。前記シールドは、前記トランスポンダの1つ以上のアンテナにおいて受け取られた前記クエリメッセージを減衰することができる。前記トランスポンダは、1つ以上のアンテナにおいて受信された前記クエリメッセージの信号強度を判断することにより前記シールドの位置を明示的に検出する。前記シールドは、各々が1つ以上のアンテナへの無線経路を妨害するように振舞う1つ以上の要素を有していても良い。
【0009】
前記シールドは、当該システムを、前記物理的オブジェクトの空間配置の決定に適したものにする、1、2又は3の物理的次元(自由度)において移動可能であっても良い。前記シールドは、オブジェクトの、前記トランスポンダのアンテナが該オブジェクトに又は該オブジェクトの内部に取り付けられている部分を含むこともでき、例えば、前記シールドは、回転可能なシャフトの、前記トランスポンダ(及び該トランスポンダのアンテナ)が該シャフトに又は該シャフトの内部に取り付けられている部分を含むこともできる。
【0010】
本発明は、アクティブ又はパッシブトランスポンダの使用に対応している。好ましくは、パッシブトランスポンダ(例えば、RFIDタグ)は、物理的オブジェクトの領域にアクセスするのが困難である場合に適切なパッシブトランスポンダを含めることにより、該パッシブトランスポンダが空間的配置の検出を可能にするので、使用される。これは、前記トランスポンダは、(例えば、出力又は信号のための)物理的接続も、慣例的なメンテナンス(例えば、バッテリの交換)も必要としないためである。典型的なアプリケーションは、物理的オブジェクトのジョイントにおける適切なパッシブトランスポンダの使用を含んでおり、前記接続部は、2又は3の物理的次元において関着(articulated)されることもできる。好ましくは、前記のようなトランスポンダは、前記クエリメッセージを受け取るのに複数のアンテナを使用し、1つ以上のシールド要素が、1つ以上の前記アンテナにおいて受け取られる前記クエリメッセージを減衰させるように振舞う。このようにして、前記トランスポンダは、各々対応するアンテナにおいて測定された信号強度を使用して、前記物理的オブジェクトの空間配置の判断がなされることを報告する、又はそうでない場合には前記物理的オブジェクトの空間配置が判断されることを可能にする応答メッセージを生成することができる。例えば、前記空間配置が定常状態である場合、前記トランスポンダは、利用可能な測定された信号強度データから前記状態を計算することができ、前記応答メッセージは、測定された信号強度及び/又は計算された前記状態を示すデータを含むこともできる。代替的には、前記空間配置の状態は、連続的に又は繰り返し的に変化し、前記トランスポンダは、前記応答メッセージの適切な系列を使用してデータを報告することもできる。
【0011】
本発明のシステムを利用することができる物理的オブジェクトの例は、スイッチ、工作機械、乗り物、ロボット及び玩具を含む。本発明のシステムを利用することができる典型的な機械的構成の例は、並進可能な部材、回転可能なシャフト、スリーブベアリング又はジョイント、ボール及びソケットジョイント、及び自在ジョイント等を含む。有利には、トランスポンダのアンテナの物理的配置は、利得又は他のRF特性に最適化される必要はなく、このことは、ホストオブジェクトの大きさ又は形状に従って選択されることができる様々な形状因子の使用を許可する。例えば、アンテナは、二次元表面上に位置させる、又は物理オブジェクト内に埋め込むように平面であっても良い。同様に、アンテナは、三次元オブジェクト上又は三次元オブジェクト内に位置するために湾曲されていても良い。前記アンテナの大きさは、送信機電力、シールドの減衰及びアンテナ特性の関数であり、個々に又は組み合わされて、これらは、特定用途に対する適切なアンテナ配置を判断するための高度な柔軟性を提供する。
【0012】
本発明は、典型的には単一のトランスポンダを使用することにより物理オブジェクトの空間配置の状態の明示的な決定を可能にするが、代替的には、複数のトランスポンダが使用されても良い。有利には、トランスポンダは、物理オブジェクトの所望の空間配置の状態を判断し、例えば、所定の位置分解能、及び/又は他の特性を達成するように、適切なシールド素子及び/又は1つ以上のアンテナによって構成されることができる。前記システムは、パッシブトランスポンダの使用を可能にし、該パッシブトランスポンダは、電源又は信号の目的のための接続を必要とせずに、ベアリング及び関着されたジョイント等のような、到達不可能なアセンブリ内に組み込まれることもできる。パッシブトランスポンダは、小型の及び/又は到達不可能な物理的オブジェクトの配備のために適切な形状因子、大きさ及び重さを可能にすることができ、前記トランスポンダの適切な例は、RFID技術を使用しているものを含む。有利には、ホストの物理的オブジェクトは、前記トランスポンダのアンテナのためのシールドを少なくとも部分的に提供し、更に実施化を容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施例は、単に例として、添付図面を参照して以下に記載される。
【0014】
図1aは、1つの受信アンテナを使用しているトランスポンダを有する無線システムを示している。前記システムは、クエリメッセージ112をトランスポンダ104に送信する無線送信機102を有しており、前記クエリメッセージの経路は、シールド108によって妨害されていない。前記トランスポンダ112は、アンテナ106を使用して、クエリメッセージ112を受信し、これに応じて、トランスポンダ104は、アンテナ106を介して応答メッセージ114を受信機110に送信し、前記応答メッセージは、アンテナ106において受信された前記クエリメッセージの前記信号強度に従って決定されたデータを有している。当該無線システムは、アクティブ又はパッシブトランスポンダのいずれかを使用することができる。アクティブトランスポンダは、電源又は電池から得られる電力を使用して電力を供給される。パッシブトランスポンダは、アンテナ、例えば、フィリップスのHITAGのようなRFIDタグ技術によって受け取られたRFエネルギを使用して電力を供給される。
【0015】
図1bは、異なる配置の図1aの無線システムを示しており、このシステムの対応する要素は、同じ符号を使用して識別されている。この図において、シールド108は、クエリメッセージ112の経路を妨害するように、矢印Mの方向に移動されている。結果として、減少された強度のクエリメッセージ112aが、トランスポンダ104のアンテナ106において受信される。受信されたクエリメッセージ112aは、トランスポンダ104による前記クエリメッセージのデコードを可能にするのに十分な強度のものである。これに応じて、トランスポンダ104は、アンテナ106を介して応答メッセージ116を受信機110に送信し、前記応答メッセージは、図1aの場合と異なり、アンテナ106において受信された減少された信号強度のクエリメッセージ112aに従って決定されたデータを有している。この例において、シールド108は、応答メッセージ116の経路も妨害するように、矢印Mの方向に移動されており、この結果、減少された強度の応答メッセージ116aが受信機110において受信されるが、前記減少された強度の応答メッセージ116aは、受信機110による応答メッセージ116aのデコードを可能にするのに十分なものである。明らかに、示された例は、応答メッセージ116に対して高い送信出力を有するアクティブトランスポンダと共に使用するのに最も適している。前記示された例においてパッシブトランスポンダを使用するためには、好ましくは、前記シールドは、受信されたクエリメッセージ112aの信号強度を、元のクエリメッセージ112の強度と比較して最小の認識可能な量だけ減少するように配され、他の改良は、前記シールドが前記応答メッセージの経路を妨害しないように配することである。前記送信機及び前記受信機は、1つのトランシーバユニット内に組み合わされることもできる。
【0016】
図2aは、複数の受信アンテナを使用するトランスポンダを有する無線システムを示している。前記システムは、トランスポンダ204の別個のアンテナ206、208において受信されたクエリメッセージ212を送信するトランシーバ202を有する。図2bを参照すると、シールド210は、示されている方向Mに移動され、アンテナ206へのクエリメッセージ212の経路は遮られ、この結果、クエリメッセージ212は、前記トランスポンダにおいてアンテナ208のみを介して受信される。概ね、少なくとも1つのアンテナ(206及び/又は208)が、クエリメッセージ212を受信することができる。この例で示したように、アンテナ208は、常に、前記シールドの位置に関わらず、クエリメッセージ212を受信する。所定の実施例において、トランスポンダは、前記クエリメッセージを常に受信するように設計されている(即ち、前記シールドによってシールドされない)主アンテナを有することもでき、前記トランスポンダは、当該アプリケーションの要件に従う(複数の)シールドによって、個々に又は組み合わされて、選択的にシールドされる1つ以上の衛星アンテナを更に有する。他の実施例においては、前記シールドの動作は、一方又は他方のアンテナにおける前記クエリメッセージの受信を交互させることもでき、1つのこのような例は、以下で図3a及び図3bに関連して議論される。再び、現在の例を参照すると、トランスポンダ204からトランシーバ202への応答メッセージ214、216は、アンテナ206、208において受信される前記クエリメッセージの信号強度に従って決定されるデータを含んでいる。前記クエリメッセージを受信するように使用される前記アンテナは、前記応答メッセージを送信するのに使用されることもでき、示されているように、応答メッセージ214は、アンテナ206(又は208(図2aには示されていない))を使用して送信され、応答メッセージ216は、アンテナ208を使用して送信されていることにも留意されたい。図2a及び2bのシステムは、別個の送信機及び受信機装置と一緒の使用にも同様に適用可能である。
【0017】
図3a及び3bは、水銀傾斜スイッチ機構を使用している無線システムの例を示している。図3aは、水銀の液滴308を含んでいる円筒状のキャビティ306を有する水銀傾斜スイッチ機構300の平面図を示しており、前記のような滴は、双頭の矢印Mによって示されている前記キャビティに沿って移動することができる。前記キャビティの外面は、それぞれのアンテナ304a、304bへの接続310a,310bを有するパッシブRFIDトランスポンダ比較プロセッサ302をサポートしている。前記アンテナは、前記滴が前記キャビティの一方の端部から他方の端部へと移動されるので、一方又は他方のアンテナが滴308によって妨害されるように配されている。
【0018】
図3bは、前記水銀傾斜スイッチ機構を組み込んでいるシステムの側面図を示しており、この機構の対応する構成要素は、同じ符号を使用して識別されている。既知の仕方において、(軸Aに関しての方向Yにおける回転によって)水平方向に関して円筒状のキャビティ306を傾斜することによって、前記水銀の液滴は、重力により、双頭の矢印Mによって示されている前記円筒状のキャビティに沿って移動する。前記のようなシステムは、前記水銀傾斜スイッチ機構のアンテナによって受け取られるクエリメッセージ320を送信するトランシーバ312を更に有する。図3bに示されているように、アンテナ304aは、滴308によってシールドされているので、前記クエリメッセージを受け取ることができない一方で、アンテナ304bはシールドされておらず、前記クエリメッセージを受け取る。これに応じて、プロセッサ302は、アンテナ304aおよび304bにおいて受信される前記クエリメッセージの信号強度に従って決定されるデータを含んでいる応答メッセージ322を、作成し、(アンテナ304bを使用して)送信し、これにより、水銀傾斜スイッチ機構の現在の状態を前記トランシーバに示す。明らかに、前記水銀傾斜スイッチ機構は、アンテナ304bが、自身が滴308によってシールドされているために前記クエリメッセージを受け取ることができない代替的な状態に移動された場合、アンテナ304aは、シールドされておらず、前記クエリメッセージを受け取る。これに応じて、プロセッサ302は、アンテナ304a及び304bにおいて受信される前記クエリメッセージの信号強度にしたがって決定されるデータを有する応答メッセージ322を、作成し、(アンテナ304aを介して)送信し、これにより当該水銀傾斜スイッチ機構の新しい状態を前記トランシーバに示す。特定のアプリケーションの要件に従って、前記トランシーバは、前記水銀傾斜スイッチ機構の現在の状態を判断するように、クエリメッセージを適切な時間間隔で送信し、例えば、適切な時間間隔とは、前記のような機構を使用するルームサーモスタットの場合、20秒ごとであり得る。有利な点は、前記水銀傾斜スイッチ機構が、電気信号又は電源接続を必要とせず、従って、前記システムから直流隔離(galvanically isolated)されている。更に、前記トランスポンダアンテナの位置決め、大きさ及び形状は、設計者の嗜好に従って選択されることができ、概ね、前記無線システムは、短距離で動作するので、この結果、前記アンテナの利得がより最適なものでなくなり得るが、トランシーバとトランスポンダとの間のメッセージの十分な通信も保証する。代替的な、あまり好ましくない実施例において、前記水銀傾斜スイッチ機構は、1つのアンテナのみを有するトランスポンダであって、前記滴は、前記機構の状態に従って、前記アンテナを部分的にシールドするか又は前記アンテナをシールドしないかのいずれかであるような大きさである、トランスポンダを採用することもできる。この場合において、前記トランスポンダは、前記クエリメッセージを受け取ることができるが、前記仕組みが、前記滴によって前記アンテナが部分的にシールドされている状態にある場合、前記応答メッセージを送信するための前記送信出力は、減少され得る。
【0019】
図4a及び4bは、アンテナが回転可能なシャフト内に位置されているトランスポンダを有する無線システムの模式図である。図4aは、軸Aの周りに関して回転可能Yなシャフト402を示している。前記シャフト内に埋め込まれているのは、それぞれのアンテナ404a、404bへの接続408a、408bを持つプロセッサ406を有するパッシブRFIDトランスポンダである。アンテナ404a、404bは、トランシーバ410から送信されるクエリメッセージ412を受信することができる。図4bは、前記トランシーバがシャフト402の下からクエリメッセージ412を送信している、軸Aに沿って見たシャフト402の2つの角度位置P、Qを示している。前記シャフトは、アンテナ404a、404bに対してRFシールドとして振る舞う。RFシールドは、前記シャフトの材料の固有の特性であっても良く、例えば、前記シャフトは、適切な金属又は合金から作られている。代替的には、前記シャフトの材料が、シールドとして振舞うのに本質的に適していない場合、シールド材料が、前記シャフトの表面内に埋め込まれる又は前記シャフトの表面上に設けられることができる。この例において、前記シャフトの材料は、前記アンテナに対するRFシールドとして振る舞っている。アンテナ404aを参照すると、位置Pにおける場合、前記トランシーバとアンテナとの間のシャフトの材料の量が、位置Qにおける場合よりも多い。アンテナ404aを使用して送信される応答メッセージ414は、アンテナ404aにおいて受信される前記クエリメッセージの信号強度に従って決定されたデータを含んでいる。従って、位置P及びQは、例えば、前記トランスポンダにおいて受信される前記クエリ信号の最小及び最大信号強度をそれぞれ検出することにより、アンテナ404aを使用して判断されることができる。上述の議論は、図1a及び1bに関連して上述したように、前記トランスポンダ及びトランシーバそれぞれによるデコードを可能にする十分な強度のクエリ及び応答メッセージ412、414の受信を仮定している。オプションのアンテナ404bが、前記トランスポンダと前記トランシーバとの間の通信に対して、付加的な手段を提供する。アンテナ404aに対するアンテナ404bの方向は、当業者に良く知られている技法を使用して、シャフト402の回転の方向及び/又は付加的な角度位置が判断されることを可能にする。
【0020】
図5a及び5bは、スリーブジョイント又はベアリングアセンブリ内に組み込まれたトランスポンダを有する無線システムの模式図である。図5aは、軸Aを有するシャフト502と、シャフト502に対して同軸上に取り付けられているスリーブ506とを有するアセンブリ500の斜視図を示しており、前記スリーブ及びシャフトは、それぞれY及びMによって示されているように、軸Aに関する回転及び軸Aに沿った並進移動によって、互いに対して移動可能である。オプションで、前記シャフト及びスリーブは、物理的オブジェクト504、508の一部(例えば、ロボットの手足)に接続される。パッシブトランスポンダは、前記シャフト内に組み込まれており、前記シャフトの表面上の適切な位置に取り付けられている4つのアンテナ510a、510b、510c、510dを有する。スリーブ506は、この表面の一部に位置されていると共に、前記アンテナに対して適切に位置されているRFシールド512を含んでいる。前記アセンブリの外部にあるトランシーバ518は、前記トランスポンダにクエリメッセージ514を送信し、前記クエリメッセージの受信に応じて、前記トランスポンダは、アンテナ510a、510b、510c、510dの1つ以上において受信された前記クエリメッセージの信号強度に従って決定されたデータを含む応答メッセージ516を送信する。図5bは、軸Aに沿った前記アセンブリの図を示しており、クエリメッセージ514を示している。図5a及び5bを参照すると、描かれている前記スリーブ及び前記シャフトの相対的な位置は、前記シールドが前記アンテナのいずれも妨害しないようにするものであり、応答メッセージ516におけるデータは、この状態を表すであろう。次いで、アンテナ510a、510b、510c、510d及びシールド512の示されている構成に従って、前記スリーブ及びシャフトの相対的な位置が、回転及び/又は並進によって変化した場合、前記応答メッセージ516内のデータは、少なくとも1つのアンテナが、前記シールドによって部分的に妨害され、これにより前記アンテナにおいて受け取られた前記クエリメッセージの前記信号強度を減少するシールドによって部分的に妨害されるであろう、この新しい状態を表すであろう。
【0021】
図5の実施例は、典型的には、ベアリング又はジョイントにおいて典型的に見られる平面、円錐形又は球形の構成のような、他の形状に拡張されることもできる。アンテナ及びシールドの様々な構成は、各々がアンテナの一部をアドレッシングする離散的要素によって作られるシールドを含むことも可能である。あらゆる数及び/又は形状のアンテナが、前記クエリ信号を受け取る、及び/又は前記アセンブリ、ジョイント又はベアリングの相対的な動きをモニタするように、適切に配されることができる。
【0022】
上述の実施化は、単に例として表されたものであり、本発明の利点を活用するために、当業者によって容易に識別されることができる実施化の範囲の選択を表している。
【0023】
図1a及び1bを参照して上述されている記載において、送信機102を有する物理的オブジェクトの空間配置を感知する無線システムが提供されており、送信機102は、少なくとも1つのアンテナ106を有するトランスポンダ104にクエリメッセージを送信する。無線周波数シールド108は、前記送信機と1つ以上のアンテナとの間に可動に挿置可能であり、これにより、アンテナにおいて受信された前記クエリメッセージの前記信号強度を減衰させる。前記物理的オブジェクトの空間配置のいかなる状態においても、前記トランスポンダは、前記クエリメッセージを受信することができ、応答として、前記1つ以上のアンテナにおいて受信された前記クエリメッセージの前記信号強度に従って決定されたデータを含む応答メッセージを送信する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1a】1つの受信アンテナを使用しているトランスポンダを有する無線システムの模式図である。
【図1b】1つの受信アンテナを使用しているトランスポンダを有する無線システムの模式図である。
【図2a】複数の受信アンテナを使用しているトランスポンダを有する無線システムの模式図である。
【図2b】複数の受信アンテナを使用しているトランスポンダを有する無線システムの模式図である。
【図3a】水銀傾斜スイッチを使用している図2a及び2bのシステムの例である。
【図3b】水銀傾斜スイッチを使用している図2a及び2bのシステムの例である。
【図4a】アンテナが回転可能なシャフト内に位置されているトランスポンダを有する無線システムの模式図である。
【図4b】アンテナが回転可能なシャフト内に位置されているトランスポンダを有する無線システムの模式図である。
【図5a】スリーブジョイント又はベアリングアセンブリ内に組み込まれたトランスポンダを有する無線システムの模式図である。
【図5b】スリーブジョイント又はベアリングアセンブリ内に組み込まれたトランスポンダを有する無線システムの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− クエリメッセージを送信するように動作可能な送信機と、
− 少なくとも1つのアンテナを有し、前記クエリメッセージの受信の際に応答メッセージを送信するように動作可能なトランスポンダと、
− 使用の際、前記送信機と前記少なくとも1つのアンテナとの間で可動に挿置可能である無線周波数シールドであって、前記少なくとも1つのアンテナにおいて受信される前に、前記クエリメッセージの信号強度を減衰するように動作可能である無線周波数シールドと、
− 前記応答メッセージを受信するように動作可能な受信機と、
を有するアプリケーションの空間的感知のための無線システムであって、
− 前記のようなシールドは、前記送信機と前記少なくとも1つのアンテナとの間に挿置され、前記トランスポンダは前記クエリメッセージを受信するように動作可能であり、前記応答メッセージは、1つ以上の前記アンテナにおいて受信された前記クエリメッセージの前記信号強度に従って決定されるデータを含んでいる、
アプリケーションの空間的感知のための無線システム。
【請求項2】
前記無線システムは、前記トランスポンダを支持する第1要素を有する物理的オブジェクトと協動するように配される、請求項1に記載の無線システム。
【請求項3】
トランスポンダのアンテナは、前記第1要素の表面上に位置されている、請求項2に記載の無線システム。
【請求項4】
トランスポンダのアンテナは、前記第1要素のボディ内に埋め込まれている、請求項2又は3に記載の無線システム。
【請求項5】
前記物理的オブジェクトが、前記第1要素に対して移動可能に動作可能である第2要素を更に有しており、前記第2要素は、前記シールドを支持している、請求項2ないし4の何れか一項に記載の無線システム。
【請求項6】
前記第1要素が前記シールドを支持している、請求項2ないし4の何れか一項に記載の無線システム。
【請求項7】
前記第1要素が平面である、請求項2ないし6の何れか一項に記載の無線システム。
【請求項8】
前記第1要素が円筒状である、請求項2ないし6の何れか一項に記載の無線システム。
【請求項9】
前記第1要素が球状である、請求項2ないし6の何れか一項に記載の無線システム。
【請求項10】
前記トランスポンダは、前記応答メッセージのデータが、前記第1及び第2要素の相対位置の判断を可能にするように前記シールドに関して配されている複数のアンテナを有する、請求項5ないし9の何れか一項に記載の無線システム。
【請求項11】
前記第1要素は密封された円筒状のキャビティを有しており、前記密封された円筒状のキャビティは、水平方向に対して前記円筒状のキャビティを傾斜させることにより該円筒状のキャビティの軸に沿って重力により移動可能な液滴を有する前記第2要素を含んでおり、前記少なくとも1つのアンテナは、前記のような円筒状の要素の表面上に配されており、前記液滴は、前記円筒状のキャビティの所定の傾斜において、前記アンテナの無線周波数シールドを提供する、請求項5、6、8又は10に記載の無線システムにおいて使用するための傾斜センサ。
【請求項12】
前記トランスポンダがRFIDタグを有する、請求項1ないし11の何れか一項に記載の無線システムにおいて使用するためのトランスポンダ。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2007−538429(P2007−538429A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512664(P2007−512664)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051469
【国際公開番号】WO2005/109670
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】