説明

アミラーゼ変異体

【課題】α−アミラーゼの新規な変異体の提供。
【解決手段】親α−アミラーゼの変異体において、当該親α−アミラーゼが、バシラス・ステアロサーモフィラスから得られたα−アミラーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を示すアミノ酸配列を示し、そして前記変異体が、バシラス・ステアロサーモフィラスから得られたα−アミラーゼのアミノ酸配列のR179及びG180と同等なアミノ酸の欠失を含み、そして前記親α−アミラーゼに比べて、増加した熱安定性、酸化に対する増加した安定性、および低下したCa2+依存性の少なくとも1つを示す、ことを特徴とする変異体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親酵素に対して改良された性質(たとえば、改良された熱及び/又は酸化安定性、及び/又は減じられたカルシウムイオン依存性)、及びそれにより、改良された洗浄及び/又は皿洗い(及び/又は織物糊抜き)性能を有するα−アミラーゼ変異体に関する。本発明はまた、前記変異体をコードするDNA 構造体、及び前記DNA 構造体を有するベクター及び細胞にも関する。さらに、本発明は、アミラーゼ変異体を製造するための方法、及びアミラーゼ変異体を含んで成る洗浄添加剤及び洗浄組成物に関する。さらに、本発明は、織物糊抜きのためへのアミラーゼ変異体の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
α−アミラーゼ酵素は、長年にわたり、そして種々の異なった目的、たとえば澱粉の液化、織物の糊抜き、紙及びパルプ産業における澱粉変性、並びに醸造及びベーキングのために産業的に使用されて来た。ますます重要になっているα−アミラーゼのさらなる使用は、洗浄又は皿洗いの間の澱粉性のしみの除去である。
最近、特定の使用、たとえば澱粉の液化及び織物の糊抜きに関しての改良された性質を有するα−アミラーゼ変異体を作製する試みが行なわれて来た。
【0003】
たとえば、アメリカ特許第 5,093,257号は、B.ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)のα−アミラーゼのN末端部分及びB.リケニホルミス(B. licheniformis) のα−アミラーゼのC末端部分を含んで成るキメラ性α−アミラーゼを開示する。このキメラ性α−アミラーゼは、それらの親α−アミラーゼに比較して、ユニークな性質、たとえば異なった熱安定性を有するものとして言及されている。しかしながら、特別に記載されるキメラ性α−アミラーゼのすべては、それらの親α−アミラーゼに比較して、低められた酵素活性を有することが示されている。
【0004】
ヨーロッパ特許第 252,666号は、一般式Q−R−L(ここで、QはB.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens) からの特定のα−アミラーゼの57個のN末端アミノ酸残基に対して少なくとも75%の相同性を有する、55〜60個のアミノ酸のN末端ポリペプチド残基であり、Rは特定のポリペプチドであり、そしてLは特定のB.リケニホルミスのα−アミラーゼの 395個のC末端アミノ酸残基に対して少なくとも75%の相同性を有する、 390〜400 個のアミノ酸残基を含んで成るC末端ポリペプチドである)を有するハイブリッドアミラーゼを記載する。
【0005】
Suzukiなど(1989)は、キメラ性α−アミラーゼを開示しており、ここでB.アミロリクエファシエンスのα−アミラーゼの特定の領域が、B.リケニホルミスのα−アミラーゼのその対応する領域と置換されている。このキメラ性α−アミラーゼは、熱安定性を担当する領域を同定するために構成された。そのような領域は、B.アミロリクエファシエンスのα−アミラーゼのアミノ酸残基 177〜186 、及びアミノ酸残基 255〜270 を含むことが見出された。キメラ性α−アミラーゼにおけるアミノ酸残基の変更は、それらの熱安定性以外の酵素の性質に影響を及ぼすとは思われなかった。
【0006】
WO91/00353は、少なくとも1のアミノ酸残基においてそれらの親α−アミラーゼと異なるα−アミラーゼ変異体を開示する。前記特許出願に開示されるα−アミラーゼ変異体は、それらのアミノ酸置換のために澱粉の分解及び/又は織物の糊抜きへの適用のために改良された性質を示すものとして言及されている。その変異体のいくつかは、改良された安定性を示すが、しかし酵素活性の改良点は報告されても又は指摘もされていなかった。例示される唯一の変異体が親B.リケニホルミスのα−アミラーゼから調製され、そして次の突然変異:H133Y 又は H133Y+T1491 の1つを担持する。他の提案される突然変異はA111T である。
【0007】
フランス特許第 2,676,456号は、B.リケニホルミスのα−アミラーゼの変異体を開示しており、ここではHis 133 に隣接するアミノ酸残基及びAla 209 に隣接するアミノ酸残基がより疎水性のアミノ酸残基により置換されている。その得られるα−アミラーゼ変異体は、改良された熱安定性を有し、そして織物、紙、醸造及び澱粉液化産業において有用であるものとして言及されている。
【0008】
ヨーロッパ特許第 285,123号は、ヌクレオチド配列のランダム突然変異誘発を実施する方法を開示する。そのような配列の例として、B.ステアロサーモフィラスのα−アミラーゼをコードするヌクレオチド配列が言及されている。変異誘発される場合、低いpH値で改良された活性を有するα−アミラーゼ変異体が得られる。
上記引例のいずれも、洗剤産業に関して改良された性質を有するα−アミラーゼ変異体が構成され得ることを言及も又は示唆さえもしていない。
【0009】
ヨーロッパ特許第 525,610号は、界面活性剤(ionic tenside)に対して改良された安定性を有する変異酵素に言及している。その変異酵素は、親酵素の表面部分におけるアミノ酸残基を他のアミノ酸残基により置換することによって生成されている。ヨーロッパ特許第 525,610号に具体的に記載される唯一の変異酵素は、プロテアーゼである。アミラーゼは、界面活性剤に対して改良された安定性を得ることができる酵素の例として言及されているが、しかしそのアミラーゼのタイプ、その起源又は特異的な突然変異に関しては、特定されていない。
【0010】
WO94/02597号は、酸化剤の存在下で改良された安定性及び活性を示すα−アミラーゼ変異体を開示する。この変異アミラーゼにおいては、1又は複数のメチオニン残基が、Cys 及びMet とは異なるアミノ酸残基により置換されている。α−アミラーゼ変異体は、洗剤及び/又は皿洗い添加剤として並びに織物の糊抜きのために有用であることが言及されている。
【0011】
WO94/18314号は、B.リケニホルミスのα−アミラーゼのM197位置における、酸化的に安定したα−アミラーゼ変異体(突然変異誘発を包含する)を開示する。
ヨーロッパ特許第 368,341号は、洗浄及び皿洗いのためへの、α−アミラーゼと任意に組合わせてのプルラナーゼ及び他の澱粉分解性酵素の使用を記載する。
【0012】
本発明の目的は、中でも、問題の変異体の洗浄及び/又は皿洗い性能に関して、それらの親α−アミラーゼよりも改良された重要な性質、たとえば洗濯又は皿洗いにおいて、高められた熱安定性、酸化に対する高められた安定性、Ca2+イオンに対する減じられた依存性、及び/又は対応するpH領域における改良された安定性又は活性を有するα−アミラーゼ変異体を供給することである。そのような変異α−アミラーゼは、それらの親α−アミラーゼよりも低い用量で使用され得る利点を中でも有する。さらに、α−アミラーゼ変異体は、今日知られているα−アミラーゼ洗剤により除去され得ないか又は除去することが困難である澱粉性しみを除去することができる。
【発明の開示】
【0013】
本発明の目的は、バシラス(Bacillus) 株から選択することができ、そして現在市販されている多くのα−アミラーゼに関して、アルカリ媒体(たとえば洗濯又は皿洗いに典型的には使用されるような洗剤溶液)におけるそれらの澱粉除去性能に基づいてそれら自体、選択された特定のα−アミラーゼの安定性を、可能なら、改良することであった。これに関連して、本発明者は、親α−アミラーゼのアミノ酸配列の種々の領域における1又は複数のアミノ酸残基の適切な変性により、そのような親α−アミラーゼの上記言及されたタイプの性質を改良することが実際、可能であることを驚くべきことには、見出した。本発明はこの発見に基づかれている。
【0014】
従って、第1の観点において、本発明は、親α−アミラーゼの変異体に関し、ここで前記注目の親α−アミラーゼは:
i)本明細書において、それぞれ、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号7で示されるアミノ酸配列の1つを有し;又は
ii)配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号7で示される1又は複数のアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を示し;そして/又はそれぞれ、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号7に示されるアミノ酸配列の1つを有するα−アミラーゼに対して生ぜしめられた抗体との免疫学的交差反応性を示し;そして/又はそれぞれ、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号7に示されるアミノ酸配列の1つを有するα−アミラーゼをコードするDNA 配列と同じプローブとハイブリダイズするDNA 配列によりコードされるα−アミラーゼである。
【0015】
本発明のα−アミラーゼ変異体は、それが配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号7に示されるアミノ酸配列に対して同一のアミノ酸配列を有さない変異体であることを条件とする。
注目のα−アミラーゼのアミノ酸配列の最初の3個をコードするDNA 配列は、配列番号4(配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする)、配列番号5(配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする)、及び配列番号6(配列番号3で示されるアミノ酸配列をコードする)に示される。
【0016】
配列番号1及び配列番号2の親α−アミラーゼのアミノ酸配列、及びその対応するDNA 配列(それぞれ、配列番号4及び配列番号5)はまた、WO95/26397(本出願におけるのと同じ配列番号下で)にも開示されている。
【0017】
本発明の変異体は、(a)親α−アミラーゼの少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失されており;そして/又は(b)親α−アミラーゼの少なくとも1つのアミノ酸残基が異なったアミノ酸残基により置換されており;そして/又は(c)少なくとも1つのアミノ酸残基が親α−アミラーゼに対して挿入されている変異体である。問題の変異体は、それら自体α−アミラーゼ活性を有し、そして親α−アミラーゼに対して次の性質の少なくとも1つを示す:
【0018】
高められた熱安定性、すなわち親酵素の使用のために適切な温度よりも高い温度で酵素活性の満足できる維持;高められた酸化安定性、すなわち酸化体(たとえば、酸素、酸化漂白剤及び同様のもの)による分解に対しての高められた耐性;減じられたCa2+依存性、すなわち親α−アミラーゼの場合におけるよりも低いCa2+濃度の存在下で満足して機能する能力。そのような減じられたCa2+依存性を有するα−アミラーゼが洗剤組成物への使用のために非常に所望される。なぜならば、そのような組成物は典型的には、カルシウムイオンを強く結合する比較的多量の物質(たとえばリン酸塩、EDTA及び同様のもの)を含むからである。
【0019】
本発明の変異体により達成され得る性質の他の所望される改良又は変性(注目の親α−アミラーゼに対して)の例は次の性質である:
中性〜比較的高いpH値、たとえば7〜10.5の範囲、たとえば 8.5〜10.5の範囲のpH値での高められた安定性及び/又はα−澱粉分解活性;
変異体が使用されるべき(上記を参照のこと)媒体(たとえば、洗濯用媒体、皿洗い用媒体又は織物糊抜き用媒体)のpHに問題のα−アミラーゼ変異体のためのpI値を良好に適合せしめるためのその等電点(pI)の上昇又は下降;及び
特定タイプの基質との改良された結合性、基質に対する改良された特異性及び/又は基質の分解(加水分解)に対する改良された特異性。
【0020】
アミノ酸配列は、既知の計算法、たとえばLipman and Pearson,Science 227 (1985) p 1435 に記載される1つの方法を通して行なわれるそれぞれのアミノ酸配列の比較がX%の同一性を示す場合、親α−アミラーゼに対してX%の相同性であると思われる。GCG パッケージ、バージョン 7.3(6月、1993)からのGAP コンピュータープログラムが、GAP ペナルティーのための誤り値(default values) を用いて適切に使用され得る〔Genetic Computer Group (1991) Programme Manual for the GCG Package、バージョン7.575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711〕。
【0021】
本発明においては、洗浄及び皿洗いに関して使用されるような“改良された性能”とは、すでに上記で示されたように、それぞれ洗浄又は皿洗いの間、澱粉性のしみ、すなわち澱粉を含むしみの改良された除去を意味するものである。その性能は、従来の洗浄及び皿洗い実験において決定され得、そして改良点は、問題の親α−アミラーゼの性能との比較として評価される。皿洗い性能のインジケーターとして使用され得る小規模の“ミニ皿洗い試験”の例は、下記の実験セクションに記載されている。
【0022】
単独で又は組合して取られるα−アミラーゼ変異体の種々の異なった特徴、たとえば比活性、Km(いわゆる、ミカエリス−メンテンの式における“ミカエリス定数”)、Vmax(ミカエリス−メンテンの式に基づいて決定された一定の基質の転換の最大速度(プラトー値)〕、pI、最適pH、最適温度、熱活性化、酸化体又は界面活性剤(たとえば洗剤)に対する安定性、等は、改良された性能に寄与することが理解されるであろう。当業者は、変異体の性能は、上記特徴に基づいて、単独では予測され得ないが、しかし洗浄及び/又は皿洗い性能試験により達成されるべきであることに気づくであろう。
【0023】
さらなる観点においては、本発明は、本発明のα−アミラーゼ変異体をコードするDNA 配列を含んで成るDNA 構造体、前記DNA 構造体を担持する組換え発現ベクター、前記DNA 構造体又はベクターにより形質転換される細胞、及びα−アミラーゼ変異体の生成の助けとなる条件下でそのような細胞を培養することによってα−アミラーゼ変異体を生成するための方法(この後、α−アミラーゼは培養物から回収される)に関する。
【0024】
さらなる観点においては、本発明は、上記のようなその改良された性質のおかげで、親α−アミラーゼに比較して、改良された洗浄及び/又は皿洗い性能を示す、親α−アミラーゼの変異体を調製するための方法に関する。この方法は、
a)前記α−アミラーゼの変異体をコードする遺伝子を含む細胞集団を構成し、
b)少なくとも1つの洗浄及び/又は皿洗い条件を刺激する条件下でα−アミラーゼ活性について前記細胞集団をスクリーンし、
c)段階b)で選択された条件下で親α−アミラーゼと比較して、改良された活性を有する前記親α−アミラーゼの変異体をコードする遺伝子を含む前記細胞集団から細胞を単離し、
d)適切な培養培地において適切な条件下で段階c)で単離された細胞を培養し、そして
e)段階d)で得られた培養物からα−アミラーゼ変異体を回収することを含んで成る。
【0025】
本発明はまた、後者の方法により調製される変異体(本発明の変異体である)にも関する。
本明細書において、用語“少なくとも1つの洗浄及び/又は皿洗い条件を刺激する”とは、たとえば洗浄又は皿洗いの間、支配する温度又はpHの、又は洗浄又は皿洗い処理に使用されるべき洗剤組成物中の化学組成の刺激を意味する。用語“化学組成”とは、注目の洗剤組成物の1つの成分、又は複数の成分の組合せを包含することを意図する。複数の異なった洗剤組成物の構成成分がさらに下記に列挙される。
【0026】
段階a)で言及される“細胞集団”は、親α−アミラーゼをコードするDNA 配列をクローニングし、そして前記DNA を本明細書に記載されるような部位特定突然変異誘発又はランダム突然変異誘発にゆだねることによって適切に構成され得る。
【0027】
本明細書において、用語“変異体(variant)”とは、用語“変異体(mutant) ”と交換可能的に用いられる。用語“変異体”とは、ハイブリッドα−アミラーゼ、すなわち少なくとも2種の異なるα−澱粉分解性酵素の部分を含んで成るα−アミラーゼを包含することを意味する。従って、そのようなハイブリッドは、すでに上記で定義されたような変異体にそれぞれ由来する1又は複数の部分;又はすでに上記で定義されたような変異体にそれぞれ由来する1又は複数の部分と変性されていない親α−アミラーゼにそれぞれ由来する1又は複数の部分とから構成され得る。
【0028】
これに関連して、本発明はまた、その構成酵素のいずれかに比較して(すなわち、ハイブリッドの一部に寄与する酵素のいずれかに比較して)、改良された洗浄及び/又は皿洗い性能を有するハイブリッドα−アミラーゼを生成するための方法にも関し、ここで前記方法は、
a)組換え体を形成するために、成分α−アミラーゼの1つのα−アミラーゼ遺伝子又は対応するcDNAのN−末端コード領域を、もう1つの成分α−アミラーゼのα−アミラーゼ遺伝子又は対応するcDNAのC−末端コード領域により再構成し、
b)その成分α−アミラーゼのいづれかに比較して、改良された洗浄及び/又は皿洗い性能を有するハイブリッドα−アミラーゼを生成する組換え体を選択し、
c)適切な培養培地において適切な条件下で段階b)で選択された組換え体を培養し、そして
d)段階c)で得られた培養物からハイブリッドα−アミラーゼを回収することを含んで成る。
【0029】
さらなる観点において、本発明は、特に洗浄又は皿洗いのためへの洗剤酵素としての本発明のα−アミラーゼ変異体〔上記方法の1つにより調製されたいずれかの変異体又はハイブリッドを包含する〕の使用、前記α−アミラーゼ変異体を含んで成る洗剤添加剤及び洗剤組成物、並びに織物の糊抜きのためへの本発明のα−アミラーゼ変異体の使用に関する。
【0030】
ランダム突然変異誘発は、本発明の変異体を生成するために使用され得、そして前記発明はさらに、親α−アミラーゼの変異体を調製するための方法にも関し、ここで前記方法は、
(a)親α−アミラーゼをコードするDNA 配列をランダム突然変異誘発にゆだね、
(b)段階(a)で得られた、突然変異誘発されたDNA 配列を宿主細胞において発現し、そして
(c)親α−アミラーゼに比較して、上記のような改良された性質(たとえば低められたカルシウム依存性、高められた酸化安定性、高められた熱安定性、及び/又は比較的高いpHでの改良された活性のような性質)を有する突然変異誘発された澱粉分解性酵素を発現する宿主細胞をスクリーンすることを含んで成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
命名法
本発明の記載及び請求の範囲においては、ヌクレオチドのための便利な1文字コード及びアミノ酸残基のための便利な1文字コードが使用される。参照を容易にするために、本発明のα−アミラーゼ変異体は、次の命名法を使用により記載される:
元のアミノ酸:位置:置換されたアミノ酸。
この命名法及び例によれば、位置30でのアスパラギンによるアラニンの置換は次のように示され:
Ala 30 Asn又はA30N、
同じ位置でのアラニンの欠失は次のように示され:
Ala 30*又はA30*
そして追加のアミノ酸残基、たとえばリシンの挿入は次のように示される:
Ala 30 AlaLys又はA30AK
アミノ酸残基30〜33により例示される、アミノ酸残基の連続した範囲の欠失は、(30〜33)*として示される。
【0032】
特定のα−アミラーゼが他のα−アミラーゼに比較して“欠失”(すなわち、アミノ酸残基の欠失)を含み、そして挿入がそのような位置で行なわれる場合、これは、位置36でのアスパラギン酸の挿入に関しては、次のように示される:
*36 Asp又は*36 D。
複数の突然変異は“プラス(+)”の印により分離され、すなわち
Ala 30 Asp+Glu 34 Ser、又はA30N+E34S
は、位置30及び34での突然変異を表わす(ここで、アラニン及びグルタミン酸が置換され、すなわちそれぞれアスパラギン及びセリンにより置換されている)。
【0033】
1又は複数のどちらかのアミノ酸残基が一定の位置に挿入され得る場合、これは次のように示される:
「A30N,E」、あるいは「A30N又はA30E」。
【0034】
さらに、変性のための適切な位置が、いずれかの特定の修飾が示唆されないで本明細書において特定される場合、いずれかの他のアミノ酸残基により、その位置に存在するアミノ酸残基(すなわち、A,R,N,D,C,Q,E,G,H,I,L,K,M,F,P,S,T,W,Y及びVの間から選択された、注目の位置に通常存在する以外のいづれかのアミノ酸残基)が置換され得ることが理解されるべきである。従って、たとえば、位置202 でのメチオニンの修飾(置換)が言及される場合(但し、特定されていない)、いずれか他のアミノ酸、すなわちA,R,N,D,C,Q,E,G,H,I,L,K,F,P,S,T,W,Y及びVによりそのメチオニンは置換され得ることが理解されるべきである。
【0035】
親α−アミラーゼ
すでに示されたように、本発明のα−アミラーゼは、それぞれ、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号7に示されるアミノ酸配列の1つを有する親α−アミラーゼに基づいて、非常に適切に調製される(前記を参照のこと)。
それぞれ、配列番号1及び配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼは、親アルカリ性バシラス株(それぞれ菌株NCIB 12512及びNCIB 12513) から得られ、これらの両者は、ヨーロッパ特許第0,277,216 B1号に詳細に記載されている。それらの2種の親α−アミラーゼの調製、精製及び配列決定法は、WO95/26397〔実験セクションを参照のこと〕に記載されている。
【0036】
配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼは、バシラス・ステアロサーモフィラスから得られ、そしてJ. Bacteriol. 166 (1986) pp. 635-643中でも記載されている。
配列番号7(図1において4で番号付けされた配列と同じ配列である)に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼは、“バシラスsp. #707 ”から得られ、そしてTsukamoto など., Biochem. Biophys. Res. Commun. 151 (1988) pp. 25-31により記載されている。
【0037】
それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する上記親α−アミラーゼの変異体とは別として、本発明の他の興味ある変異体は、前記4種のアミノ酸配列の少なくとも1つと高い程度の相同性、たとえば少なくとも70%の相同性、好ましくは(すでに示されたように)少なくとも80%の相同性、所望には少なくとも85%の相同性、そしてより好ましくは少なくとも90%の相同性、たとえば95%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有する、親α−アミラーゼの変異体を包含する。
【0038】
上記ですでに示されたように、適切な親α−アミラーゼを同定するためのさらなる基準は、a)α−アミラーゼがそれぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号7に示されるアミノ酸配列の1つを有するα−アミラーゼに対して生じさせた抗体との免疫学的交差反応を示すこと、及び/又はα−アミラーゼがそれぞれ、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号7に示されるアミノ酸配列の1つを有するα−アミラーゼをコードするDNA 配列と同じプローブとハイブリダイズするDNA 配列によりコードされることである。
【0039】
すでに言及されたように、ポリヌクレオチド(たとえば酵素)の相同性の程度の決定に関しては、アミノ酸配列の比較が、既知の計算法、たとえばLipman and Pearson (1985) により記載される方法を用いて実施され得る。
免疫学的交差反応性についてのアッセイは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するα−アミラーゼ、又は配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するα−アミラーゼ、又は配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するα−アミラーゼ、又は配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するα−アミラーゼの少なくとも1つのエピトープに対して生じさせた又はそのエピトープと反応性の抗体を用いて実施され得る。
【0040】
モノクローナル又はポリクローナルのいづれかであってもよい抗体は、当業界において知られている方法、たとえばHudsonなど.(1989) により記載される方法により生成され得る。当業界において良く知られている適切なアッセイ技法の例は、たとえばHudsonなど.(1989) により記載されるようなWestern Blotting and Radial Immunodiffasion Assay を包含する。
【0041】
プローブハイブリダイゼーション〔上記b)の基準〕に基づいての適切な親α−アミラーゼの同定に使用するためのオリゴヌクレオチドプローブは、それぞれ、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号7に示される配列の1つを有するα−アミラーゼの完全な又は部分的なアミノ酸配列に基づいて、又はそれに対応する完全な又は部分的なヌクレオチド配列に基づいて適切には調製され得る。
【0042】
ハイブリダイゼーションを試験するための適切な条件は、5×SSC におけるプレソーキング、及び20%ホルムアミド、5×Denhardt's溶液、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)及び50μgの変性され、音波処理されたウシ胸腺DNA の溶液において約40℃での1時間のプレハイブリダイゼーション、続く、100μMのATP が補充された前記同じ溶液における約40℃で18時間のハイブリダイゼーション又はたとえばSambrookなど.(1989) により記載される他の方法を用いてのハイブリダイゼーションを包含する。
【0043】
特定の性質に対する突然変異の影響
本発明者により得られた結果から、注目の親α−アミラーゼに関する変異体により示される特定の性質、たとえば熱安定性、又は酸化安定性の変化は、変異体における突然変異(アミノ酸置換、欠失又は挿入)のタイプ及び位置に相当な程度、相関すると思われる。しかしながら、特定の突然変異又は突然変異のパターンが一定の性質の変化を導びくという観察は、注目の突然変異がさらに、他の性質に影響を及ぼすことができる可能性を決して除外するものではないことが理解されるべきである。
【0044】
酸化安定性
その親α−アミラーゼに対してα−アミラーゼ変異体の酸化安定性を高めることに関して、親α−アミラーゼの少なくとも1つ、そして好ましくは複数の酸化可能アミノ酸残基が欠失され、又は元の酸化可能アミノ酸残基よりも酸化に対して低い敏感性を有する他のアミノ酸残基により置換されていることが特に所望されると思われる。
【0045】
これに関して、特に適切な酸化可能アミノ酸残基は、システイン、メチオニン、トリプトファン及びチロシンである。従って、たとえば、システインを含む親α−アミラーゼの場合、システイン残基の欠失、又は低い酸化可能性のアミノ酸残基によるその置換が、親α−アミラーゼに対して改良された酸化安定性を有する変異体を得ることにおいて重要なものであろうことが予想される。
【0046】
それぞれ、配列番号1、配列番号2及び配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する上記親α−アミラーゼの場合、それらのすべてはシステイン残基を含まないが、しかし有意なメチオニン含有量を有し、メチオニン残基の欠失又は置換は特に、得られる変異体の改良された酸化安定性を達成することに関して適切である。従って、配列番号1、配列番号2及び配列番号7に示されるアミノ酸配列の位置M9, M10, M105, M202, M208, M261, M309, M382, M430 及びM440、及び/又は配列番号2に示されるアミノ酸配列の位置M323における1又は複数のメチオニン残基の欠失又は置換〔たとえば、トレオニン(T)による、又は上記列挙された他のアミノ酸の1つによる〕(又は上記親α−アミラーゼのための他の基準の1つを満たすもう1つのα−アミラーゼの配列における同等の位置でのメチオニン残基の欠失又は置換)は、酸化安定性を高めることに関して、特に効果的であると思われる。
【0047】
配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼの場合、酸化安定性を改良するために欠失され又は置換され得る適切なアミノ酸残基は、単一のシステイン残基(C363) 、及び配列番号1及び配列番号3に示される配列との類似性によれば、位置M8, M9, M96, M200, M206, M284, M307, M311, M316 及びM438に位置するメチオニン残基を包含する。
【0048】
これに関連して、用語“同等の位置”とは、両者に共通する、並列するアミノ酸残基/領域を達成するために、注目の“対照”のα−アミラーゼのアミノ酸配列(たとえば、配列番号1に示される配列)と、注目の親α−アミラーゼのアミノ酸配列との整合に基づいて、注目の対照の配列における特定の位置に最とも接近して対応する(たとえば同じアミノ酸残基により占領される)位置を示す。
【0049】
それぞれ配列番号1、配列番号2及び配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するα−アミラーゼの酸化安定性の修飾(改良点)に関する特に興味ある突然変異は、1又は複数の次のメチオニン置換(又は本発明における親α−アミラーゼの必要条件を満たす他のα−アミラーゼのアミノ酸配列におけるその同等物)である:M202A,R,N,D,Q,E,G,H,I,L,K,F,P,S,T,W,Y,V。
さらに、配列番号2に示されるアミノ酸配列における適切なメチオニン置換は、M323A,R,N,D,Q,E,G,H,I,L,K,F,P,S,T,W,Y,Vである。
【0050】
配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するα−アミラーゼの酸化安定性の修飾(改良点)に関する特に興味ある突然変異は、1又は複数の次のメチオニン置換である:M200A,R,N,D,Q,E,G,H,I,L,K,F,P,S,T,W,Y,V;M311A,R,N,D,Q,E,G,H,I,L,K,F,P,S,T,W,Y,V;及びM316A,R,N,D,Q,E,G,H,I,L,K,F,P,S,T,W,Y,V。
【0051】
熱安定性
その親α−アミラーゼに対するα−アミラーゼ変異体の熱安定性を高めることに関して、配列番号1に示されるアミノ酸配列における次のアミノ酸残基の少なくとも1つ、及び好ましくは2又はさらに3つの残基(又はそれらの同等物)を欠失することが特に所望されると思われる:F180, R181, G182, T183, G184及びK185。それぞれ、配列番号2、配列番号3及び配列番号7に示されるアミノ酸配列における、その対応する、特に適切な(及び同等の)アミノ残基は、F180, R181, G182, D183, G184及びK185(配列番号2);F178, R179, G180, I181, G182及びK183(配列番号3);並びにF180, R181, G182, H183, G184及びK185(配列番号7)である。
【0052】
このタイプの特に興味ある対様式欠失(pairwise deletion)は次の通りである:
R181*+G182*;及びT183*+G184*(配列番号1);
R181*+G182*;及びD183*+G184*(配列番号2);
R179*+G180*;及びI181*+G182*(配列番号3);並びに
R181*+G182*;及びH183*+G184*(配列番号7);
(又は、本発明における親α−アミラーゼの必要条件を満たすもう1つのα−アミラーゼにおけるそれらの対様式欠失の同等物)。
【0053】
熱安定性に関連して重要なものであると思われる他の突然変異は、配列番号1に示される配列におけるP260〜I275の1又は複数のアミノ酸残基の置換(又は本発明におけるもう1つの親α−アミラーゼにおけるその同等物)、たとえば位置269 におけるリシン残基の置換である。
【0054】
注目の親α−アミラーゼに対するα−アミラーゼ変異体の熱安定性に関連して重要なものであると思われる特定の突然変異の例は、配列番号1に示されるアミノ酸配列における1又は複数の次の置換(又は本発明におけるもう1つの親α−アミラーゼにおけるその同等物)である:K269R ; P260E ; P124P ; M105F,I,L,V;M208F,W,Y;L217I ;V206I,L,F。
【0055】
配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼのためには、重要なさらなる(同等の)突然変異は、相応して、1又は複数の次の置換である:M105F,I,L,V;M208F,W,Y;L217I ;V206I,L,F;及びK269R 。
配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼのためには、重要なさらなる(同等の)突然変異は、相応して、次の置換の1つ又は両者である:M206F,W,Y;及びL215I 。
【0056】
配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼのためには、重要なさらなる(同等の)突然変異は、相応して、1又は複数の次の置換である:M105F,I,L,V;M208F,W,Y;L217I ;及びK269R 。
【0057】
注目の親α−アミラーゼに対してα−アミラーゼ変異体の改良された熱安定性を達成することにおいて、中でも重要なものであると思われる突然変異のさらに追加の例は、配列番号1、配列番号2及び配列番号7に示されるアミノ酸配列における1又は複数の次の置換(又は本発明におけるもう1つの親α−アミラーゼにおけるその同等物)である: A354C+V479C ; L351C+M430C ;N457D,E+K385R ;L355D,E+M430R,K;L355D,E+I411R,K;及びN457D,E。
【0058】
Ca2+依存性
その親α−アミラーゼに対してのα−アミラーゼ変異体の低められたCa2+依存性を達成することに関して〔すなわち、親酵素のために必要であるよりも、外来の媒体における低い濃度のカルシウムイオンの存在下で満足する澱粉分解活性を示し、そしてたとえば、従って、カルシウムイオン−依存性条件、たとえばカルシウム−錯化剤(たとえば一定の洗剤ビルダー)を含む媒体において得られる条件に対して、親よりも低い感受性である変異体を得ることに関して〕、配列番号1、配列番号2及び配列番号7に示されるアミノ酸配列における1又は複数の次の置換(又は本発明におけるもう1つの親α−アミラーゼにおける同等の置換)を組込むことが特に所望されると思われる:Y243F, K108R, K179R, K239R, K242R, K269R, D163N, D188N, D192N, D199N, D205N, D207N, D209N, E190Q, E194Q 、及びN106D 。
【0059】
配列番号3に示されるアミノ酸配列の場合、特に所望する置換は、相応して(同等に)、1又は複数の次の置換であると思われる:K107R, K177R, K237R, K240R, D162N, D186N, D190N, D197N, D203N, D205N, D207N, E188Q及びE192Q 。
N残基によるD残基の上記置換又はQ残基によるE残基の置換と同様、Ca2+依存性を減じることへの他の適切な置換は、いずれか他のアミノ酸残基による注目のD及び/又はE残基の置換である。
【0060】
低められたCa2+依存性を達成することにおいて重要なものである思われるさらなる置換は、配列番号1、配列番号2及び配列番号7に示されるアミノ酸配列において位置113 及び151 、並びに位置351 及び430 ;並びに配列番号3に示されるアミノ酸配列において位置112 及び150 、及び位置349 及び428 で存在するアミノ酸残基の対様式置換(又は本発明におけるもう1つの親α−アミラーゼにおける同等の対様式置換)、すなわち次のアミノ酸残基の対様式置換である:
【0061】
G113+N151(配列番号1に関して);A113+T151(配列番号2及び配列番号7に関して);並びにG112+T150(配列番号3に関して);並びにL351+M430(配列番号1、配列番号2及び配列番号7に関して);並びにL349+I428(配列番号3に関して)。
低められたCa2+依存性を達成することに関してのこのタイプの特に興味ある対様式置換は次の通りである:
G113T+N151I(配列番号1に関して); A113T+T151I(配列番号2及び配列番号7に関して);並びに G112T+T150I(配列番号3に関して);並びに L351C+M430C(配列番号1、配列番号2及び配列番号7に関して);並びに L349C+I428C(配列番号3に関して)。
【0062】
Ca2+依存性のための適切な置換に関しては、酵素コンホメーションを安定化することにおいて重要なものであると思われ、そしてたとえば、α−澱粉分解性酵素内のカルシウム結合部位での又はその部位内へのカルシウムイオンの結合又は保持の強さを高めることによってこれを達成できると思われるいくつかの他の置換は、配列番号1、配列番号2及び配列番号7に示されるアミノ酸配列における1又は複数の次の置換(又は本発明におけるもう1つの親α−アミラーゼにおける同等の置換)である:G304W,F,Y,R,I,L,V,Q,N;G305A,S,N,D,Q,E,R,K;及びH408Q,E。
【0063】
配列番号3に示されるアミノ酸配列における相当する(同当の)置換は、次の通りである:G302W,F,Y,R,I,L,V,Q,N;及びG303A,S,N,D,Q,E,R,K。
低められたCa2+依存性を達成することにおいて重要なものであると思われるさらなる突然変異は、配列番号1に示されるアミノ酸配列における、R181, G182, T183及びG184から選択された位置(又は本発明における親α−アミラーゼの必要条件を満たすもう1つのα−アミラーゼのアミノ酸配列における同等の位置)でのアミノ酸の対様式欠失(すなわち2つのアミノ酸の欠失)である。従って、そのような対様式欠失は、次の通りである:
【0064】
R181*+G182*;T183*+G184*;R181*+T183*;G182*+T183*;G182*+G184*;及びR181*+G184* (配列番号1);
R181*+G182*;D183*+G184*;R181*+D183*;G182*+D183*;G182*+G184*;及びR181*+G184* (配列番号2);
R179*+G180*;I181*+G182*;R179*+I181*;G180*+I181*;G180*+G182*;及びR179*+G182* (配列番号3);及び
R181*+G182*;H183*+G184*;R181*+H183*;G182*+H183*;G182*+G184*;及びR181*+G184* (配列番号7);
(又は、本発明における親α−アミラーゼの必要条件を満たすもう1つのα−アミラーゼにおけるそれらの対様式欠失の同等物)。
【0065】
等電点(pI)
予備結果は、α−アミラーゼの洗浄性能、たとえば洗濯性能は、洗浄流体(洗浄媒体)のpHが注目のα−アミラーゼのためのpI値に近い場合、最適であることを示唆する。従って、注目の親α−アミラーゼの等電点よりも、酵素が使用されるべき媒体(たとえば洗浄媒体)のpHに、より良好に適合される等電点(pI値)を有するα−アミラーゼ変異体を生成することが所望される。
【0066】
等電点を低めることに関しては、配列番号1に示されるアミノ酸配列における好ましい突然変異は、1又は複数の次の置換を包含する:Q86E, R124P, S154D, T183D, V222E, P260E, R310A, Q346E, Q391E, N437E, K440Q及びR452H 。等電点を低めることにおけるそれらの置換の適切な組合せは次のものを包含する: Q391E+K444Q ;及び Q391E+K444Q +S154D 。
【0067】
相応して、等電点を低めることに関して、配列番号3に示されるアミノ酸配列における好ましい突然変異は、1又は複数の次の置換を包含する:L85E, S153D, I181D, K220E, P258E, R308A, P344E,Q358E 及びS435E 。
等電点を高めることに関しては、配列番号2に示されるアミノ酸配列における好ましい突然変異は1又は複数の次の置換を包含する:E86Q,L;D154S ;D183T,I;E222V,K;E260P ;A310R ;E346Q,P;E437N,S;及びH452R 。
【0068】
下記実験セクションにおいては、本発明の多くの変異体の構成が記載されている。
本発明のα−アミラーゼ変異体は、上記で論ぜられた1又は複数の改良された性質を有する他に、好ましくは、親α−アミラーゼよりも、低い基質濃度でより早い澱粉加水分解速度を有するであろう。他方では、本発明のα−アミラーゼ変異体は好ましくは、同じ条件下で試験される場合、親α−アミラーゼよりも高いVmax 及び/又は低いKm を有するものであろう。ハイブリッドα−アミラーゼの場合、比較のために使用される“親α−アミラーゼ”は、最良の性能を有する構成酵素の1つであるべきである。
Vmax 及びKm (ミカエリス−メンテンの式のパラメーター)は、良く知られた方法により決定され得る。
【0069】
α−アミラーゼ変異体の調製方法
遺伝子中への突然変異を導入するためのいくつかの方法が当業界において知られている。α−アミラーゼ−コードのDNA 配列のクローニングの手短かな議論の後、α−アミラーゼ−コードの配列内の特定部位での突然変異を生成するための方法が論ぜられるであろう。
【0070】
α−アミラーゼをコードするDNA 配列のクローニング
親α−アミラーゼをコードするDNA 配列は、当業界において良く知られている種々の方法を用いて、問題のα−アミラーゼを生成するいずれかの細胞又は微生物から単離され得る。最初に、ゲノムDNA 及び/又はcDNAライブラリーが、研究されるべきα−アミラーゼを生成する微生物からの染色体DNA 又はメッセンジャーRNA を用いて構成されるべきである。次に、α−アミラーゼのアミノ酸配列が知られている場合、相同のラベルされたオリゴヌクレオチドプローブが合成され、そしてそれを用いて、問題の生物から調製されたゲノムライブラリーからのα−アミラーゼ−コードのクローンが同定される。他方では、既知のα−アミラーゼ遺伝子に対して相同の配列を含むラベルされたオリゴヌクレオチドプローブが、低い緊縮性のハイブリダイゼーション及び洗浄条件を用いて、α−アミラーゼ−コードのクローンを同定するためのプローブとして使用され得る。
【0071】
α−アミラーゼをコードするクローンを同定するためのさらにもう1つの方法は、発現ベクター、たとえばプラスミド中へのゲノムDNA のフラグメントの挿入、得られるゲノムDNA ライブラリーによるα−アミラーゼ陰性細菌の形質転換、及び次に、α−アミラーゼのための基質を含む寒天上への前記形質転換された細菌のプレーチング、それにより、α−アミラーゼを発現するクローンの同定を包含する。
【0072】
他方では、酵素をコードするDNA 配列は、確立された標準的方法、たとえばS. L. Beaucage and M. H. Caruthers (1981) により記載されるホスホアミジット法、又はMattesなど.(1984)により記載される方法により合成的に調製され得る。そのホスホアミジット法においては、オリゴヌクレオチドは、たとえば自動DNA 合成機において合成され、精製され、アニーリングされ、連結され、そして適切なベクターにおいてクローン化される。
【0073】
最後に、DNA 配列は、標準的技法に従って、合成の、ゲノム起源の又はcDNA起源のフラグメント(適切な場合、完全なDNA 配列の種々の部分に対応するフラグメント)を連結することによって調製された、ゲノム及び合成起源のものの混合、合成及びcDNA起源のものの混合、又はゲノム及びcDNA起源のものの混合であり得る。前記DNA 配列はまた、たとえば、アメリカ特許第 4,683,202号又はR. K.Saiki など.(1988) に記載されるように、特異的プライマーを用いてのポリメラーゼ鎖反応(PCR) により調製され得る。
【0074】
特定部位の突然変異誘発
α−アミラーゼをコードするDNA 配列が単離され、そして突然変異のための所望の部位が同定されると、突然変異が合成オリゴヌクレオチドを用いて導入され得る。それらのオリゴヌクレオチドは、所望の突然変異部位を挟むヌクレオチド配列を含み;変異体ヌクレオチドがオリゴヌクレオチド合成の間に挿入される。特定の方法においては、α−アミラーゼをコードする配列を架橋する、DNA の一本鎖ギャップが、α−アミラーゼ遺伝子を担持するベクターにおいて創造される。次に、所望の突然変異を担持する合成ヌクレオチドが、一本鎖DNA の相同部分にアニールされる。
【0075】
次に、残るギャップがDNA ポリメラーゼI(クレノウフラグメント)によりフィルインされ、そして構造体がT4リガーゼを用いて連結される。この方法の特定の例は、Morinagaなど.(1984) に記載されている。アメリカ特許第 4,760,025号は、カセットのマイナーな変更を行なうことによる、複数の突然変異をコードするオリゴヌクレオチドの導入を開示する。しかしながら、種々の長さの多数のオリゴヌクレオチドが導入され得るので、さらに多くの種類の突然変異がMorinagaの方法により一度に導入され得る。
【0076】
α−アミラーゼをコードするDNA 配列中に突然変異を導入するもう1つの方法は、Nelson and Long (1989)に記載されている。それは、PCR 反応におけるプライマーの1つとして化学的に合成されたDNA 鎖を用いることにより導入された所望する突然変異を含むPCR
フラグメントの3段階生成を包含する。このPCR により生成されたフラグメントから、突然変異を担持するDNA フラグメントが制限エンドヌクレアーゼによる切断により単離され、そして発現プラスミド中に再挿入され得る。
【0077】
ランダム突然変異誘発
ランダム突然変異誘発は、注目の示されるアミノ酸配列に翻訳する遺伝子の又は完全な遺伝子内の少なくとも3つの部分における局在化された又は領域特異的ランダム突然変異誘発として、適切に行なわれる。
熱安定性を改良するための領域特異的突然変異誘発のためには、次のコドン位置が特に、適切に標的化され得る(一文字アミノ酸略語及び問題の配列におけるアミノ酸残基の番号付けを使用して):
【0078】
配列番号1に示されるアミノ酸配列において
120−140 = VEVNRSNRNQETSGEYAIEAW
178−187 = YKFRGTGKAW
264−277 = VAEFWKNDLGAIEN
配列番号2に示されるアミノ酸配列において
120−140 = VEVNPNNRNQEISGDYTIEAW
178−187 = YKFRGDGKAW
264−277 = VAEFWKNDLGALEN
【0079】
配列番号3に示されるアミノ酸配列において
119−139 = VEVNPSDRNQEISGTYQIQAW
176−185 = YKFRGIGKAW
262−275 = VGEYWSYDINKLHN
配列番号7に示されるアミノ酸配列において
120−140 = VEVNPNNRNQEVTGEYTIEAW
178−187 = YKFRGHGKAW
264−277 = VAEFWKNDLGAIEN
【0080】
Ca2+依存性の低下を達成するためには、次のコドン位置が特に、適切に標的化され得る:
配列番号1に示されるアミノ酸配列において
178−209 = YKFRGTGKAWDWEVDTENGNYDYLMYADVDMD
237−246 = AVKHIKYSFT
配列番号2に示されるアミノ酸配列において
178−209 = YKFRGDGKAWDWEVDSENGNYDYLMYADVDMD
237−246 = AVKHIKYSFT
配列番号7に示されるアミノ酸配列において
178−209 = YKFRGHGKAWDWEVDTENGNYDYLMYADIDMD
237−246 = AVKHIKYSFT
【0081】
α−アミラーゼ、変性された(たとえば、高い)基質特異性及び/又は基質の切断(加水分解)に関しての変性された(たとえば、高い)特異性により基質の改良された結合性(すなわち、α−澱粉分解性酵素のための基質である炭水化物種、たとえばアミロース又はアミロペクチンの改良された結合性)を達成するためには、配列番号1に示されるアミノ酸配列についての次のコドン位置(又は本発明におけるもう1つの親α−アミラーゼのための同等のコドン位置)が特に適切には、標的化され得ると思われる:
【0082】
配列番号1に示されるアミノ酸配列において
15−20 = WYLPND
52−58 = SQNDVGY
72−78 = KGTVRTK
104−111 = VMNHKGGA
165−174 = TDWDQSRQLQ
194−204 = ENGNYDYLMYA
234−240 = RIDAVKH
332−340 = HDSQPGEAL
【0083】
上記本発明の方法の段階a)に従って実施される、親α−アミラーゼをコードするDNA 配列のランダム突然変異誘発は、便利には、当業界において知られているいづれかの方法の使用により行なわれ得る。たとえば、ランダム突然変異誘発は、適切な物理的又は化学的突然変異誘発剤の使用により、適切なオリゴヌクレオチドの使用により、又はPCR 生成される突然変異誘発にDNA 配列をゆだねることにより実施され得る。さらに、ランダム突然変異誘発は、それらの突然変異誘発剤のいずれかの組合せの使用により行なわれ得る。
突然変異誘発剤は、トランジッション、トランスバージョン、逆位、スクランプリング、欠失及び/又は挿入を誘発する剤である。
【0084】
本発明のために適切な物理的又は化学的突然変異誘発剤は、紫外線(UV)照射、ヒドロキシルアミン、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、o−メチルヒドロキシルアミン、亜硝酸、エチルメタンスルホネート(EMS) 、亜硫酸水素ナトリウム、蟻酸及びヌクレオチド類似体を包含する。
そのような剤が使用される場合、突然変異誘発は典型的には、突然変異誘発が起こる適切な条件下で、選択された突然変異誘発剤の存在下で突然変異されるべき親酵素をコードするDNA 配列をインキュベートし、そして所望する性質を有する、突然変異誘発されたDNA を選択することによって行なわれる。
【0085】
突然変異誘発がオリゴヌクレオチドの使用により行なわれる場合、そのオリゴヌクレオチドは、変更される予定である位置で、オリゴヌクレオチドの合成の間、3種の非−親ヌクレオチドによりドープ処理され又はスパイクされ得る。そのドーピング処理及びスパイキングは、所望しないアミノ酸のためのコドンが回避されるよう行なわれる。ドープ処理された又はスパイクされたオリゴヌクレオチドは、たとえばPCR, LCR又はいづれかのDNA ポリメラーゼ及びリガーゼを用いて、いずれかの公開された技法により、澱粉分解酵素をコードするDNA 中に組込まれ得る。
【0086】
PCR −生成される突然変異誘発が用いられる場合、親α−アミラーゼ酵素をコードする、化学的に処理された又は処理されていない遺伝子は、ヌクレオチドの誤った組込みを高める条件下でPCR にゆだねられる(Deshler 1992 ; Lenngなど., Technique, Vol. 1, 1989, pp. 11-15)。
【0087】
E.コリのミューテーター株(Fowlerなど., Molec. Gen. Genet., 133, 1974, pp. 179-191)、S.セレビシアエ(S. cereviseae)又はいづれかの他の微生物が、親酵素を含むプラスミドを用いてミューテーター株を形質転換し、前記プラスミドを含むミューテーター株を増殖せしめ、そしてミューテーター株から突然変異誘発されたプラスミドを単離することによって、澱粉分解性酵素をコードするDNA のランダム突然変異誘発のために使用され得る。続いて、突然変異誘発されたプラスミドを用いて、発現生物を形質転換することができる。
【0088】
突然変異誘発されるべきDNA 配列は便利には、澱粉分解性の親酵素を発現する生物から調製されたゲノム又はcDNAライブラリーに存在することができる。他方では、DNA 配列は、適切なベクター、たとえば、それ自体、突然変異誘発剤と共にインキュベートされ又は前記剤に暴露され得るプラスミド又はバクテリオファージ上に存在することができる。突然変異誘発されるべきDNA はまた、宿主細胞のゲノムに組込まれることによって、又はその細胞に含まれるベクター上に存在することによって宿主細胞に存在することができる。最終的に、突然変異誘発されるべきDNA は、単離された形で存在することができる。ランダム突然変異にゆだねられるべきDNA 配列は好ましくは、cDNA又はゲノムDNA 配列であることが理解されるであろう。
【0089】
いくつかの場合、発現段階(b)又はスクリーン段階(c)が行なわれる前、突然変異誘発されたDNA 配列を増幅することが便利である。そのような増幅は当業界において知られている方法に従って行なわれ、ここで現在、好ましい方法は、親酵素のDNA 又はアミノ酸配列に基づいて調製されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いてのPCR 生成される増幅である。
【0090】
突然変異誘発剤と共にインキュベートし、又はその剤に暴露した後、突然変異誘発されたDNA は、発現を生ぜしめる条件下で前記DNA を担持する適切な宿主細胞を培養することによって発現される。この目的のために使用される宿主細胞は、場合によってはベクター上に存在する突然変異誘発されたDNA 配列により形質転換された細胞、又は突然変異誘発処理の間、親酵素をコードするDNA 配列を担持する細胞であり得る。
【0091】
適切な宿主細胞の例は、次のものである:バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バシラス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis) 、バシラス・レンタス(Bacillus lentus)、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バシラス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)、バシラス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バシラス・コアグランス(Bacillus coagulans) 、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans) 、バシラス・ラウタス(Bacillus lautus)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バシラス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis) 、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトマイセス・ムリナス(Streptomyces murinus) ;及びグラム陰性細菌、たとえばE.コリ(E. coli)。
突然変異誘発されたDNA 配列はさらに、突然変異誘発されたDNA配列の発現を可能にする機能をコードするDNA 配列を含んで成る。
【0092】
局在化されたランダム突然変異誘発
ランダム突然変異誘発は、好都合には、問題の親α−アミラーゼの一部に局在化され得る。これは、たとえば、酵素の一定の領域がその酵素の一定の性質のために特に重要なものであるとして同定される場合、又は改良された性質を有する変異体をもたらすことが予測されるよう修飾される場合、好都合であり得る。そのような領域は通常、親酵素の三次構造が解明され、そして酵素の機能に関連される場合に同定され得る。
【0093】
局在化されたランダム突然変異誘発は、便利には、上記の PCR−生成される突然変異誘発技法の使用により、又は当業界において良く知られているいずれかの他の適切な技法により実施される。
他方では、修飾されるべきDNA 配列の一部をコードするDNA 配列は、たとえば適切なベクター中に挿入されることによって単離され得、そして続いて、前記部分は上記で論ぜられたいずれかの突然変異誘発方法の使用により突然変異誘発にゆだねられ得る。
【0094】
本発明の上記方法におけるスクリーニング段階に関して、これは便利には、次の原理に基づくフィルターアッセイの使用により実施され得る:
興味ある突然変異誘発された澱粉分解性酵素を発現することができる微生物が適切な培地上で及び分泌されるべき酵素のために適切な条件下でインキュベートされ、ここで前記培地は第1のタンパク質−結合フィルター及びその上部に、低いタンパク質結合能力を示す第2フィルターを含んで成る二重フィルターを供給される。微生物は、第2フィルター上に位置する。インキュベーションに続いて、微生物から分泌された酵素を含んで成る第1フィルターが、微生物を含んで成る第2フィルターから分離される。第1フィルターは、所望する酵素活性についてのスクリーニングにゆだねられ、そして第2フィルター上に存在するその対応する微生物コロニーが同定される。
【0095】
酵素活性を結合するために使用されるフィルターは、いずれかのタンパク質結合フィルター、たとえばナイロン又はニトロセルロースであり得る。発現生物のコロニーを担持する上部フィルターは、タンパク質を結合するための親和性を有さないか又は低い親和性を有するいずれかのフィルター、たとえば酢酸セルロース又はDuraporeTMであり得る。フィルターは、スクリーニングのために使用されるべきいずれかの条件により予備処理され得、又は酵素活性の検出の間、処理され得る。
【0096】
酵素活性は、色素、螢光、沈殿、pHインジケーター、IR−吸光又は酵素活性の検出のためのいずれか他の技法により検出され得る。
検出化合物は、いずれかの固定化剤、たとえばアガロース、寒天、ゼラチン、ポリアクリルアミド、澱粉、フィルター紙、布;又は固定化剤のいづれかの組合せにより固定され得る。
【0097】
α−アミラーゼ活性は、アガロース上に固定される、Cibacron Redラベルされたアミロペクチンにより検出される。高められた熱安定性及び高いpH安定性を有する変異体についてのスクリーニングのためには、結合されたα−アミラーゼ変異体を有するフィルターは、pH10.5及び60℃又は65℃で特定の時間、緩衝液においてインキュベートされ、脱イオン水によりすばやくすすがれ、そして活性検出のためにアミロペクチン−アガロースマトリックス上に配置される。残留活性は、アミロペクチン分解によりCibacron Redの溶解として見られる。その条件は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するα−アミラーゼによる活性がかろうじて検出され得るようであるように選択される。安定化された変異体は、同じ条件下で、Cibacron Redの高められた発生により高められた色彩強度を示す。
【0098】
低温で及び/又は広い温度範囲にわたって活性最適度を有する変異体についてスクリーニングするためには、結合された変異体を有するフィルターが、アミロペクチン−Cibacron Red基質プレート上に直接的に配置され、そして所望する温度(たとえば4℃,10℃又は30℃)で特定の時間インキュベートされる。この時点で、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するα−アミラーゼによる活性はかろうじて検出され得、ところがより低い温度での最適な活性を有する変異体はアミロペクチン溶解の上昇を示すであろう。アミロペクチンマトリックス上でのインキュベーションの前、すべての種類の所望する培地、たとえばCa2+、界面活性剤、EDTA、又は他の適切な添加剤を含む溶液におけるインキュベーションは、そのような添加剤による問題の変異体の変更された依存性又は反応についてスクリーンするために実施され得る。
【0099】
ハイブリッドα−アミラーゼの調製方法
他の特定部位の突然変異誘発として、少なくとも2つの構成成分のα−アミラーゼのハイブリッドであるα−アミラーゼ変異体は、注目の個々の遺伝子の適切な部分を組合わせることによって調製され得る。
【0100】
天然に存在する酵素は一般的に、上記のようにランダム又は特定部位突然変異誘発により変性され得る。他方では、1つの酵素の一部が、キメラ性酵素を得るためにもう1つの酵素の一部により置換され得る。この置換は、従来のインビトロ遺伝子スプライシング技法、又はインビボ組換え技法、もしくは両技法の組合せにより達成され得る。従来のインビトロ遺伝子スプライシング技法を用いる場合、α−アミラーゼ遺伝子をコードする配列の所望する部分が適切な部位特異的制限酵素を用いて欠失され;次に、そのコード配列の欠失された部分が異なったα−アミラーゼをコードする配列の所望する部分への挿入により置換され、その結果、新規のα−アミラーゼをコードするキメラ性ヌクレオチド配列が生成される。他方では、α−アミラーゼ遺伝子は、たとえばHiguchi など. 1988により記載されるPCR オーバーレイ拡張方法の使用により融合され得る。
【0101】
インビボ組換え技法は、高い相同性の領域(DNA配列の同一性)を有する異なったDNA セグメントが再結合し、すなわちDNA を分解し、そして交換し、そして前記相同領域に新規の結合を確立することができる事実に依存する。従って、2種の異なった、但し相同のアミラーゼ酵素のためのコード配列が宿主細胞を形質転換するために使用される場合、相同配列のインビボ組換えがキメラ性遺伝子配列の生成をもたらすであろう。宿主細胞によるそれらのコード配列の翻訳は、キメラ性アミラーゼ遺伝子生成物の生成をもたらすであろう。特定のインビボ組換え技法は、アメリカ特許第 5,093,257号及びヨーロッパ特許第 252,666号に記載されている。
【0102】
他方、ハイブリッド酵素は、当業界において知られている標準の化学方法により合成され得る。たとえば、Hunkapiller など.(1984) を参照のこと。従って、適切なアミノ酸配列を有するペプチドが全体的に又は一部、合成され、そして本発明のハイブリッド酵素(変異体)を形成するために連結される。
【0103】
α−アミラーゼ変異体の発現
本発明によれば、上記方法又は当業界において知られているいづれかの他の方法により生成された、変異誘発されたα−アミラーゼ−コードのDNA 配列は、典型的には制御配列をコードするプロモーター、オペレーター、リボソーム結合部位、翻訳開始シグナル、及び場合によっては、リプレッサー遺伝子又は種々の活性化因子遺伝子を含む発現ベクターを用いて、酵素形で発現され得る。
【0104】
本発明のα−アミラーゼ変異体をコードするDNA 配列を担持する組換え発現ベクターは、便利には組換えDNA 方法にゆだねられ得るいづれかのベクターであり得、そしてベクターの選択はしばしば、それが導入される予定である宿主細胞に依存するであろう。従って、そのベクターは、自主的に複製するベクター、すなわちその複製が染色体の複製に無関係である染色体外実在物、たとえばプラスミド、バクテリオファージ又は染色体外要素、ミニクロモソーム、又は人工染色体として存在するベクターである。他方、前記ベクターは、宿主細胞中に導入される場合、宿主細胞ゲノム中に組込まれ、そしてそれが組込まれている染色体と一緒に複製されるベクターであり得る。
【0105】
前記ベクターにおいては、DNA 配列は適切なプロモーター配列に操作可能的に連結されるべきである。前記プロモーターは、選択された宿主細胞において転写活性を示すいづれかのDNA 配列であり、そして宿主細胞に対して相同又は非相同のタンパク質をコードする遺伝子に由来する。特に細菌宿主において、本発明のα−アミラーゼ変異体をコードするDNA 配列の転写を指図するための適切なプロモーターの例は、E.コリlac オペロンのプロモーター、ストレプトマイセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)のアガラーゼ遺伝子dagAプロモーター、バシラス・リケニホルミスのα−アミラーゼ遺伝子 (amyL) のプロモーター、バシラス・ステアロサーモフィラスのマルトゲン性アミラーゼ遺伝子(amyM) のプロモーター、バシラス・アミロリクエファシエンスのα−アミラーゼ(amyQ)のプロモーター、バシラス・サブチリスxylB及びxylB遺伝子のプロモーター、等である。
【0106】
真菌宿主における転写のためには、有用なプロモーターの例は、A.オリザエ (A. oryzae)のTAKAアミラーゼ、リゾムカー・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)のアスパラギン酸プロテイナーゼ、A.ニガー(A. niger) の中性α−アミラーゼ、A.ニガーの酸性安定性α−アミラーゼ、A.ニガーのグルコアミラーゼ、リゾムカー・ミエヘイのリパーゼ、A.オリザエのアルカリプロテアーゼ、A.オリザエのトリオースホスフェートイソメラーゼ又はA.ニジランス(A. nidulans)のアセトアミダーゼに由来するものである。
【0107】
本発明の発現ベクターはまた、適切な転写ターミネーター、及び本発明のα−アミラーゼをコードするDNA 配列に操作可能的に結合されるポリアデニル化配列を含んで成る。終結及びポリアデニル化配列は、適切には、プロモーターと同じ源に由来することができる。
ベクターはさらに、問題の宿主細胞においてそのベクターの複製を可能にするDNA 配列を含むことができる。そのような配列の例は、プラスミドpUC19, pACYC177, pUB110, pE194, pAMB1 及びpIJ702の複製の起点である。
【0108】
ベクターはまた、選択マーカー、たとえば宿主細胞における欠損を補充する遺伝子、たとえばB.サブチリス又はB.リケニホルミスからのdal 遺伝子、又は耐抗生物質性、たとえば耐アンピシリン、耐カナマイシン、耐クロラムフェニコール又は耐テトラサイクリン性を付与する遺伝子を含むことができる。さらに、ベクターは、アスペルギラス選択マーカー、たとえばamdS, argB, niaD及びsC、耐ヒグロマイシン性を生ぜしめるマーカーを含むことができ、又はその選択は、たとえばWO91/17243に記載のようにして、同時形質転換により達成され得る。
【0109】
細胞内発現は、たとえば一定の細菌を宿主細胞として使用する場合、多くの点で好都合であるが、一般的には、発現は細胞外である。
α−アミラーゼ変異体をコードし、そしてそれぞれプロモーター、ターミネーター及び他の要素を含む本発明のベクターを構成するために適切な方法は、当業者に良く知られている〔たとえば、Sambrookなど.(1989) を参照のこと〕。
【0110】
上記で定義されるような本発明のDNA 構造体又は発現ベクターのいづれかを含んで成る本発明の細胞は、本発明のα−アミラーゼ変異体の組換え生成において宿主細胞として好都合には使用される。細胞は、変異体をコードする本発明のDNA 構造体(1又は複数のコピーで)を宿主染色体に組込むことによって、前記構造体により形質転換され得る。この組込みは一般的には、DNA 配列が細胞において安定して維持される場合、好都合であると思われる。宿主染色体中へのDNA 構造体の組込みは、従来の方法、たとえば相同又は非相同組換えにより行なわれ得る。他方、細胞は、異なったタイプの宿主細胞に関して、上記のような発現ベクターにより形質転換され得る。
【0111】
本発明の細胞は、高等生物、たとえば哺乳類又は昆虫の細胞であり得るが、しかし好ましくは、微生物細胞、たとえば細菌又は菌類(酵母を包含する)細胞である。
適切な細菌の例は、グラム陽性細菌、たとえばバシラス・サブチリス、バシラス・リケニホルミス、バシラス・レンタス、バシラス・ブレビス、バシラス・ステアロサーモフィラス、バシラス・アルカロフィラス、バシラス・アミロリクエファシエンス、バシラス・コアグランス、バシラス・サーキュランス、バシラス・ラウタス、バシラス・メガテリウム、バシラス・ツリンギエンシス、又はストレプトマイセス・リビダンス又はストレプトマイセス・ムリナス、又はグラム陰性細菌、たとえばE.コリである。細菌の形質転換は、たとえば、それ自体知られている態様で、プロトプラスト形質転換により、又はコンピテント細胞を用いることによってもたらされ得る。
【0112】
酵母生物は好ましくは、サッカロマイセス(Saccharomyces) 又はシゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces) の種、たとえばサッカロマイセス・セレビシアエから選択され得る。糸状菌は好都合には、アスペルギラスの種、たとえばアスペルギラス・オリザエ又はアスペルギラス・ニガーに属する。真菌細胞は、それ自体既知の態様でのプロトプラスト形成及びプロトプラストの形質転換、続く、細胞壁の再生を包含する工程により形質転換され得る。アスペルギラス宿主細胞の形質転換のための適切な方法は、ヨーロッパ特許第238,023号に記載される。
【0113】
さらにもう1つの観点において、本発明は、本発明のα−アミラーゼを生成するための方法に関し、ここで前記方法は、変異体の生成を助ける条件下で上記のような宿主細胞を培養し、そして細胞及び/又は培養培地から変異体を回収することを含んで成る。
細胞を培養するために使用される培地は、問題の宿主細胞を増殖し、そして本発明のα−アミラーゼ変異体の発現を得るために適切ないずれかの従来の培地であり得る。適切な培地は、商業的な供給者から入手でき、又は公開されたレセピー(たとえばAmerican Type Culture Collectionのカタログに記載されるような)に従って調製され得る。
【0114】
宿主細胞から分泌されるα−アミラーゼ変異体は、培地から細胞を遠心分離又は濾過により分離し、そして塩、たとえば硫酸アンモニウムによる培地中のタンパク質性化合物を沈殿する既知の方法、続くクロマトグラフィー法、たとえばイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、又は同様の方法の使用により培養培地から便利には、回収され得る。
【0115】
産業上の用途
アルカリ性pH値でのそれらの活性により、本発明のα−アミラーゼ変異体は、種々の産業工程への使用のために十分に適合される。特に、それらは洗浄、皿洗い及び硬質表面清浄用洗剤組成物における成分として適用され(上記を参照のこと)、そしてまた、澱粉から甘味剤及びエタノールの製造においても有用である。従来の澱粉−転換工程及び液化及び/又は糖化工程のための条件は、たとえばアメリカ特許第 3,912,590号、ヨーロッパ特許第 252,730号及びヨーロッパ特許第63,909号に記載される。
【0116】
本発明のα−アミラーゼ変異体の適用のいくつかの分野は、下記に概略されている。
紙−関連の用途:本発明のα−アミラーゼ変異体は、特に再パルプ化が7以上のpHで生じ、そしてアミラーゼが強化澱粉の分解を通しての廃棄材料の砕解を促進することができる場合、リグノセルロース材料、たとえばパルプ、紙及び厚紙の製造において価値ある性質を有する。本発明のα−アミラーゼ変異体は、澱粉被覆された又は澱粉含有廃棄印刷紙からの紙の製造のためのインキ抜き/再循環工程への使用のために十分に適合化される。高い白色度の新しい紙を製造するために印刷インキを除去することが通常、所望される;本発明の変異体がこの手段においていかに使用されるかの例は、PCT/DK94/00437に記載されている。
【0117】
本発明のα−アミラーゼ変異体はまた、澱粉を変性することにおいてもひじょうに有用であり、ここで酵素的に変性された澱粉はアルカリ性充填剤、たとえば炭酸カルシウム、カオリン及びクレーと共に紙製造に使用される。本発明のアルカリα−アミラーゼ変異体により、充填剤の存在下で澱粉を変性することが実施でき、従って、より単純で完全な工程を可能にした。
【0118】
織物糊抜き
本発明のα−アミラーゼ変異体はまた、織物糊抜きへの使用のために十分に適合される。織物加工産業においては、α−アミラーゼは、製織の間、よこ糸上で保護被膜として作動する澱粉−含有糊剤の除去を促進するために糊抜き工程において助剤として使用される。
製織の後、糊剤被膜の完全な除去は、布が精錬され、漂白され、そして染色される続く工程において最適な結果を確保するために重要である。酵素的澱粉分解は、それが織物又は布の繊維に害を与えないので好ましいものである。
【0119】
処理費用を減じ、そしてミル処理量を高めるためには、糊抜き工程は、時々、精錬及び漂白工程と組合される。そのような場合、非酵素助剤、たとえばアルカリ又は酸化剤が典型的には、従来のα−アミラーゼは高いpHレベル及び漂白剤とほとんど適合しないので、澱粉を分解するために使用される。澱粉糊剤の非酵素的分解は、使用されるかなり攻撃的な化学物質のためにいくらかの繊維損傷を導びく。
【0120】
比較的高いpHレベルで及び酸化剤(漂白剤)の存在下で改良された澱粉−分解性能を示す本発明のα−アミラーゼ変異体は、特に、現在使用されている非酵素糊抜き剤の置換体として、上記のような糊抜き工程への使用のために十分に適合される。α−アミラーゼ変異体は、セルロース含有布又は織物を糊抜きする場合、単独で、又はセルロースと共に使用され得る。
【0121】
ビール製造
本発明のα−アミラーゼ変異体はまた、ビール製造工程においてひじょうに有用であるとも思われており;そのような工程においては、変異体は典型的には、マッシング工程(麦芽を湯に浸して混合する工程)の間、添加されるであろう。
【0122】
洗浄又は皿洗いのための洗剤添加剤及び洗剤組成物への適用
上記で論じられるような性質の改良の結果であろう改良された洗浄及び/又は皿洗い性能のために、本発明の多くのα−アミラーゼ変異体(ハイブリッドを含む)は、洗剤組成物、たとえば7〜13のpH範囲、特に8〜11のpH範囲での実施のために意図された洗剤組成物中への導入のために十分に適合化される。本発明によれば、α−アミラーゼ変異体は、洗剤組成物の成分として添加され得る。それは、洗剤組成物の形で洗剤組成物に含まれ得る。
【0123】
従って、本発明のもう1つの観点は、本発明のα−アミラーゼ変異体を含んで成る洗剤添加剤に関する。前記酵素は、1又は複数の酵素を含む別の添加剤を添加することによって、又はそれらの酵素のすべてを含んで成る組合された添加剤を添加することによって、洗剤組成物に含まれ得る。本発明の洗剤添加剤、すなわち分離された添加剤又は組合された添加剤は、たとえば顆粒、液体、スラリー、等として配合され得る。洗剤添加剤のための好ましい酵素配合物は、顆粒(特に、非ダスチング顆粒)、液体(特に、安定化された液体)、スラリー又は保護された酵素(前記を参照のこと)である。
【0124】
洗剤組成物及び洗剤添加剤はさらに、洗剤に従来使用される1又は複数の他の酵素、たとえばプロテアーゼ、リパーゼ、澱粉分解性酵素、オキシダーゼ(ペルオキシダーゼを含む)、又はセルラーゼを含むことができる。
【0125】
洗浄及び/又は皿洗い性能の実質的な改良点は、α−アミラーゼが他の澱粉分解性酵素、たとえばプルラナーゼ、イソ−アミラーゼ、β−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ又はCTG アーゼと組合される場合に得られることが見出された。前記目的のために適切な市販の澱粉分解性酵素の例は、Novo Nordisk A/S, Bagsvaerd, Denmarkから市販されている、 AMG(商標), Novamyl(商標)及び Promozyme(商標)である。従って、本発明の特定の態様は、少なくとも1種の他の澱粉分解性酵素(たとえば、上記酵素から選択される)と組合しての本発明のα−アミラーゼ変異体を含んで成る洗剤添加剤に関する。異なった洗剤酵素の組合せが使用される場合、酵素は顆粒化の前又は後で混合され得る。
【0126】
液体酵素調製物はたとえば、ポリオール、たとえばプロピレングリコール、糖又は糖アルコール、乳酸又は硼酸を添加することによって、確立された方法に従って安定化され得る。保護された酵素は、ヨーロッパ特許第 238,216号に開示される方法に従って調製され得る。
【0127】
すでに示されたように、本発明のさらにもう1つの観点は、本発明のα−アミラーゼ変異体(ハイブリッドを含む)及び界面活性剤を含んで成る、洗濯、皿洗い又は硬質表面清浄のための洗剤組成物に関する。
本発明の洗剤組成物は、いずれか便利な形で、たとえば粉末、顆粒又は液体として存在することができる。液体洗剤は、典型的には、ヨーロッパ特許第 120,659号に記載されているように、90%までの水及び0〜20%の有機溶媒を含む水性洗剤である。
【0128】
洗剤組成物
本発明のα−アミラーゼ変異体が洗剤組成物(たとえば洗濯洗剤組成物又は皿洗い洗剤組成物)の成分とて使用される場合、それはたとえば、非ダスチング顆粒、安定化された液体、又は保護された酵素の形で洗剤組成物に含まれ得る。上記のように、非ダスチング顆粒は、アメリカ特許第 4,106,991号及び第 4,661,452号(Novo Industri A/S)に開示されるようにして製造され得、そして場合によっては、当業界に知られている方法により被覆され得る。ロウ質被覆材料の例は、1000〜20000 の平均分子量を有するポリ(エチレンオキシド)製品(ポリエチレングリコール、PEG);16〜50個の酸化エチレン単位を有するエトキシル化されたノニルフェノール;アルコールが12〜20個の炭素原子を含み、そして15〜80個の酸化エチレン単位が存在するエトキシル化された脂肪アルコール;脂肪アルコール;脂肪酸;及び脂肪酸のモノ−及びジ−並びにトリグリセリドである。液体層技法による適用のために適切なフィルム形成被膜の例は、GB 1483591に与えられている。
【0129】
液体酵素調製物の形で添加される酵素は、上記のように、確立された方法に従って、ポリオール、たとえばプロピレングリコール、糖又は糖アルコール、乳酸又は硼酸の添加により安定化され得る。
本発明の洗剤組成物への包含のための保護された酵素は、ヨーロッパ特許第 238,216号に開示される方法に従って、上記のようにして調製され得る。
本発明の洗剤組成物は、いずれかの便利な形で、たとえば粉末、顆粒、ペースト又は液体として存在することができる。液体洗剤は、典型的には70%までの水及び0〜30%有機溶媒を含む水性洗剤、又は非水性洗剤であり得る。
【0130】
洗剤組成物は、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両親媒性(両性イオン)である1又は複数の界面活性剤を含んで成る。洗剤は通常、0〜50%のアニオン性界面活性剤、たとえば線状アルキルベンゼンスルホネート(LAS) 、α−オレフィンスルホネート(AOS) 、アルキルスルフェート(脂肪アルコールスルフェート)(AS)、アルコールエトキシスルフェート(AEOS又はAES)、第二アルカンスルホネート(SAS) 、α−スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキル−又はアルケニル琥珀酸又は石鹸を含むであろう。それはまた、0〜40%の非イオン性界面活性剤、たとえばアルコールエトキシレート(AEO又はAE)、アルコールプロポキシレート、カルボキシル化されたアルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化された脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、又はポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド(たとえばWO92/06154に記載されるような)を含むことができる。
【0131】
洗剤組成物はさらに、1又は複数の他の酵素、たとえばプルラナーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ペルオキシダーゼ又はオキシダーゼ、たとえばラッカーゼを含むことができる。
通常、洗剤は、1〜65%の洗剤ビルダー(いくつかの皿洗い用洗剤は90%までの洗剤ビルダーを含むことができるけれども)、又は錯生成剤、たとえばゼオライト、ジホスフェート、トリホスフェート、ホスホネート、シトレート、ニトリロ三酢酸(NTA) 、エチレンジアミンの四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTMPA)、アルキル−又はアルキレン琥珀酸、可溶性シリケート又は層状化されたシリケート(たとえば、Hoechst からの SKS-6)を含む。
【0132】
洗剤ビルダーは、リン含有及び非リン含有タイプに分割され得る。リン含有無機アルキル洗剤ビルダーの例は、水溶性塩、特にアルカリ金属ピロホスフェート、オルトホスフェート、ポリホスフェート、及びホスホネートを包含する。非リン含有無機ビルダーの例は、水溶性アルカリ金属カーボネート、ボレート及びシリケート、及び層状化されたジシリケート、並びに種々のタイプの水不溶性結晶性又は非晶性アルミノシリケート(ゼオライトが最とも知られている代表物である)を包含する。
【0133】
適切な有機ビルダーの例は、アルカリ金属、アンモニウム又は置換されたアンモニウム塩、たとえばスクシネート、マロネート、脂肪マロネート、脂肪スルホネート、カルボキシメトキシスクシネート、ポリアセテート、カルボキシレート、ポリカルボキシレート、アミノポリカルボキシレート、及びポリアセチルカルボキシレートを包含する。
洗剤はまた、洗剤ビルターを実質的に含まない。
【0134】
洗剤は1又は複数のポリマーを含むことができる。例は、カルボキシメチルセルロース(CMC;典型的にはナトリウム塩の形での)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP) 、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA) 、ポリカルボキシレート、たとえばポリアクリート、ポリマレエート、マレイン酸/アクリル酸コポリマー、及びラウリルメタクリレート/アクリル酸コポリマーである。
【0135】
洗剤組成物は、塩素/臭素タイプ及び酸素タイプの漂白剤を含むことができる。漂白剤は被覆され、又はカプセルを封入され得る。無機塩素/臭素タイプの漂白剤の例は、リチウム、ナトリウム又はカルシウム次亜塩素酸塩又は次亜臭素酸塩、及び塩素化されたリン酸三ナトリウムである。漂白剤システムはまた、H2O2源、たとえば過酸形成漂白活性剤、たとえばテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)又はノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS)と組合され得る過硼酸塩又は過酸酸塩を含んで成る。
【0136】
有機塩素/臭素タイプの漂白剤の例は、複素環式N−ブロモ及びN−クロロイミド、たとえばトリクロロイソシアヌル酸、トリブロモイソシアヌル酸、ジブロモイソシアヌル酸及びジクロロイソシアヌル酸、及び水可溶性カチオン、たとえばカリウム及びナトリウムとのそれらの塩である。ヒダントイン化合物もまた適切である。漂白剤システムはまた、たとえばアミド、イミド又はスルホンタイプのペルオキシ酸を含んで成る。
【0137】
皿洗い用洗剤においては、たとえば無機過酸塩の形での、好ましくは漂白剤前駆体を有する又はペルオキシ酸化合物としての酸素漂白剤が好ましい。適切なペルオキシ漂白化合物の典型的な例は、アルカリ金属過硼酸塩、四水和物及び一水和物、アルカリ金属過炭酸塩、過珪酸塩及び過リン酸塩である。好ましい活性剤材料はTAED又はNOBSである。
【0138】
本発明の洗剤組成物の酵素は、従来の安定化剤、たとえばポリオール、たとえばプロピレングリコール又はグリセロール、糖又は糖アルコール、乳酸、硼酸、又は硼酸誘導体、たとえば芳香族ボレートエステルを用いて安定化され得、そして前記組成物はたとえば、WO92/19709及びWO92/19708に記載されるようにして配合され得る。本発明の酵素はまた、たとえばタンパク質タイプ(EP0544777 B1に記載されるような)又は硼酸タイプの可逆性酵素インヒビターを添加することによっても安定化され得る。
【0139】
洗剤はまた、他の従来の洗剤成分、たとえば布コンディショナー、たとえばクレー、解膠剤材料、フォームブースター/フォーム抑制剤(皿洗い洗剤フォーム抑制剤において)、石鹸泡抑制剤、耐蝕性剤、土壌−懸濁剤、抗−土壌−再沈着剤、顔料、脱水剤、殺菌剤、螢光増白剤又は香料を含むことができる。
pH(使用濃度での水溶液において測定される)は、通常、中性又はアルカリ性、たとえば7〜11の範囲で存在するであろう。
本発明の範囲内の洗濯用洗剤組成物の特定の形は、次のものを包含する:
【0140】
1)下記成分を含んで成る少なくとも 600g/lの嵩密度を有する粒質物として配合される洗剤組成物:
【表1】

【0141】
2)下記成分を含んで成る少なくとも 600g/lの嵩密度を有する粒質物として配合される洗剤組成物:
【表2】

【0142】
3)下記成分を含んで成る少なくとも 600g/lの嵩密度を有する粒質物として配合される洗剤組成物:
【表3】

【0143】
4)下記成分を含んで成る少なくとも 600g/lの嵩密度を有する粒質物として配合される洗剤組成物:
【表4】

【0144】
5)下記成分を含んで成る水性液体洗剤組成物:
【表5】

【0145】
6)下記成分を含んで成る構築された水性液体洗剤組成物:
【表6】

【0146】
7)下記成分を含んで成る少なくとも 600g/lの嵩密度を有する粒質物として配合される洗剤組成物:
【0147】
【表7】

【0148】
8)下記成分を含んで成る粒質物として配合される洗剤組成物:
【表8】

【0149】
9)下記成分を含んで成る粒質物として配合される洗剤組成物:
【表9】

【0150】
10)下記成分を含んで成る水性液体洗剤組成物:
【表10】

【0151】
11)下記成分を含んで成る水性液体洗剤組成物:
【表11】

【0152】
12)下記成分を含んで成る少なくとも 600g/lの嵩密度を有する粒質物として配合される洗剤組成物:
【表12】

【0153】
13)すべての又は一部の線状アルキルベンゼンスルホネートが(C12−C18)アルキルスルフェートにより置換されている、1)〜12)に記載されるような洗剤配合物。
14)下記成分を含んで成る少なくとも 600g/lの嵩密度を有する粒質物として配合される洗剤組成物:
【0154】
【表13】

【0155】
15)下記成分を含んで成る少なくとも 600g/lの嵩密度を有する粒質物として配合される洗剤組成物:
【表14】

【0156】
16)追加の成分として又はすでに特定された漂白剤システムの置換体として、安定化された又は封入された過酸を含む、1)〜15)に記載されるような洗剤配合物。
17)過硼酸塩が過炭酸塩により置換されている、1),3),7),9)及び12)に記載されるような洗剤組成物。
【0157】
18)さらにマンガン触媒を含む、1),3),7),9),12),14)及び15)に記載されるような洗剤組成物。マンガン触媒は、たとえば“Efficient manganese catalysts for low-temperaturebleaching ”, Nature 369, 1994, pp. 637-639 に記載される化合物の1つであり得る。
【0158】
19)液体非イオン性界面活性剤、たとえば線状アルコキシル化第一アルコール、ビルダーシステム(たとえばホスフェート)、酵素及びアルカリを含んで成る非水性洗剤液体として配合される洗剤組成物。その洗剤はまた、アニオン性界面活性剤及び/又は漂白システムも含むことができる。
【0159】
本発明の範囲内の皿洗い洗剤組成物の特定の形は次の通りである:
1)粉末自動皿洗い組成物:
【表15】

【0160】
2)粉末自動皿洗い組成物:
【表16】

【0161】
3)粉末自動皿洗い組成物:
【表17】

【0162】
4)粉末自動皿洗い組成物:
【表18】

【0163】
5)粉末自動皿洗い組成物:
【表19】

【0164】
6)清浄界面活性剤システムを有する粉末及び液体皿洗い組成物:
【表20】

【0165】
7)非水性液体自動皿洗い組成物:
【表21】

【0166】
8)非水性液体皿洗い組成物:
【表22】

【0167】
9)チキソトロープ性液体自動皿洗い組成物:
【表23】

【0168】
10)液体自動皿洗い組成物:
【表24】

【0169】
11)保護された漂白剤粒子を含む液体自動皿洗い組成物:
【表25】

【0170】
11)過硼酸塩が過炭酸塩により置換されている、1),2),3),4),6)及び10)に記載されるような自動皿洗い組成物。
12)マンガン触媒をさらに含む、1)〜6)に記載されるような自動皿洗い組成物。マンガン触媒は、たとえば“Efficient manganese catalysts for low-temperature bleaching ”, Nature 369,1994, pp. 637-639 に記載される化合物の1つであり得る。
本発明のα−アミラーゼは、洗剤において従来使用される濃度で導入され得る。本発明の洗剤組成物においては、α−アミラーゼ変異体は、洗浄/皿洗い流体1l当たりα−アミラーゼ 0.00001〜1mg(純粋な酵素タンパク質として計算される)に対応する量で添加され得る。
【0171】
本発明は添付図面によりさらに説明される。
図1は、本発明における親α−アミラーゼのアミノ酸配列の整合図である。最左端上の数字は、次のようなそれぞれのアミノ酸配列を示す:
1:配列番号1に示されるアミノ酸配列;
2:配列番号2に示されるアミノ酸配列;
3:配列番号3に示されるアミノ酸配列;及び
4:配列番号7に示されるアミノ酸配列。
【0172】
図の最右端上の数字は、問題の配列の個々のためのアミノ酸の連続合計数を与える。3の番号付けされた配列(配列番号3に示されるアミノ酸配列に対応する)に関して、その整合は、1(配列番号1)、2(配列番号2)及び4(配列番号7)の番号付けされた配列において、それぞれアミノ酸番号1及びアミノ酸番号175 に対応する位置での“ギャップ”をもたらす。
【0173】
図2は、プラスミドpTVB106 の制限地図である。
図3は、プラスミドpPM103の制限地図である。
図4は、プラスミドpTVB112 の制限地図である。
図5は、プラスミドpTVB114 の制限地図である。
【0174】
実験セクション
配列番号1及び配列番号2(それぞれバシラス株NCIB 12512及びNCIB 12513から)に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼの調製、精製及び配列決定は、WO95/26397に記載されている。それらの2種のα−アミラーゼ(WO95/26397に記載されている)のpI
値及び分子量は次の通りである:
配列番号1:pI=約 8.8〜9.0 (LKB Ampholine(商標)PAGプレート上での等電点電気泳動により決定される);分子量=約55kD(SDS-PAGEにより決定される)。
配列番号2:pI=約5.8 (LKB Ampholine(商標)PAGプレート上での等電点電気泳動により決定される);分子量=約55kD(SDS-PAGEにより決定される)。
【0175】
本発明のα−アミラーゼ変異体の精製
本発明の変異体の構成及び発現は、下記例2に記載される。本発明の変異体の精製は、それぞれ配列番号1及び配列番号2に示されるアミノ酸配列の変異体に関して本明細書において例示される。
【0176】
配列番号1の変異体(pI=約9.0)の精製
発現されたα−アミラーゼ変異体を含む発酵液体を濾過し、そして硫酸アンモニウムを添加し、15%の飽和濃度にする。次に、前記液体を疎水性カラム(Toyopearl ブチル/TOSOH)上に適用する。カラムを20mMのジメチル−グルタル酸緩衝液(pH7.0)により洗浄する。α−アミラーゼをひじょうにきつく結合し、そして20mMのジメチルグルタル酸緩衝液(pH7.0)中、25%(w/w)2−プロパノールにより溶出する。溶出の後、2−プロパノールを蒸発により除去し、そしてその濃縮物を、20mMのジメチルグルタル酸緩衝液(pH6.0)により平衡化されたカチオン交換体(S−Sepharose(商標)FF, Pharmacia, Sweden) 上に適用する。
【0177】
アミラーゼを、同じ緩衝液中、0〜250mM のNaClの線状グラジエントを用いて溶出する。10mMの硼素酸塩/KCl 緩衝液(pH8.0) に対しての透析の後、サンプルをpH9.6 に調整し、そして10mMの硼素酸塩/KCl 緩衝液(pH9.6)により平衡化されたアニオン交換体(Q−Sepharose(商標)FF, Pharmacia)に適用する。アミラーゼを0〜250mM のNaClの線状グラジエントを用いて溶出する。そのpHを7.5 に調整する。α−アミラーゼは、rSDS−PAGEにより調節される場合、純粋である。すべての緩衝液は、アミラーゼを安定化するために2mMのCaCl2を含む。
【0178】
配列番号2の変異体(pI=約5.8)の精製
発現されたα−アミラーゼ変異体を含む発酵液体を濾過し、そして硫酸アンモニウムを添加し、15%の飽和濃度にする。次に、液体を疎水性カラム(Toyopearlブチル/TOSOH)上に適用する。結合されたアミラーゼを、10mMのトリス緩衝液(pH8.0) 中、15%〜0%(w/w)の硫酸アンモニウムの線状グラジエントにより溶出する。10mMの硼酸塩/KCl 緩衝液(pH8.0) に対しての溶出物の透析の後、液体を、同じ緩衝液により平衡化されたアニオン交換体(Q−Sepharose(商標)FF, Pharmacia)上に適用する。アミラーゼを、 150mMのNaClを用いて段階的に溶出する。
【0179】
溶出の後、アミラーゼサンプルを、同じ緩衝液(pH8.0) に対して透析し、NaClを除去する。透析の後、pHを9.6 に調整し、そしてアミラーゼをアニオン交換体上にもう1度、結合する。アミラーゼを0〜250mM のNaClの線状グラジエントを用いて溶出する。pHを7.5に調整する。アミラーゼは、rSDS−PAGEにより決定される場合、純粋である。すべての緩衝液は、アミラーゼを安定化するために2mMのCaCl2を含む。
【0180】
α−アミラーゼ活性の決定
α−アミラーゼ活性を、基質としてPhadehasR錠剤を用いての方法により決定する。Phadehas錠剤(Pharmacia Diagnosticにより供給されるPhadehasRアミラーゼ試験)は、ウシ血清アルブミン及び緩衝液物質と共に混合され、そして錠剤化された、架橋された不溶性の青色の澱粉ポリマーを含む。あらゆる一回の測定値の決定のためには、1つの錠剤が、50mMの Britton−Robinson緩衝液(50mMの酢酸、50mMのリン酸、50mMの硼酸、0.1mM のCaCl2,pHはNaOHにより興味ある値に調整される)5mlを含む管において懸濁される。試験は、興味ある温度で水槽において行なわれる。試験されるべきα−アミラーゼは、50mMの Britton−Robinson緩衝液×mlに希釈される。このα−アミラーゼ溶液1mlを、50mMの Britton−Robinson緩衝液5mlに添加する。澱粉をα−アミラーゼにより加水分解し、可溶性の青色フラグメントを付与する。620nm で分光光度計により測定される前記青色溶液の吸光度は、α−アミラーゼ活性の関数である。
【0181】
15分間(試験時間)のインキュベーション後での測定された 620nmでの吸光度は、620nm で 0.2〜2.0 の吸光度単位の範囲で存在することは重要である。この吸光度範囲においては、活性と吸光度との間に直線性が存在する(Lambert−Beer法)。従って、酵素の希釈度は、この基準に適合するよう調節されるべきである。
【0182】
特定された組の条件(温度、pH、反応時間、緩衝液の条件)下で、与えられたα−アミラーゼ1mgは一定量の基質を加水分解し、そして青色が生成されるであろう。その色の強度を 620nmで測定する。測定された吸光度は、与えられた組の条件下で問題のα−アミラーゼの比活性(活性/1mgの純粋なα−アミラーゼタンパク質)に直接的に比例する。従って、同一の条件下で興味ある種々のα−アミラーゼ(対照のα−アミラーゼを包含する、この場合、問題の親α−アミラーゼ)を試験する場合、与えられた温度及びpHでの個々のα−アミラーゼの比活性を直接的に比較することができ、そして対照のα−アミラーゼの比活性に対する興味ある個々のα−アミラーゼの比活性の割合を決定することができる。
【0183】
ミニ皿洗いアッセイ
次のミニ皿洗いアッセイを行なった:澱粉性材料の懸濁液を煮沸し、そして20℃に冷却した。その冷却された澱粉懸濁液を小さな、それぞれ同定されているガラスプレート(約2×2cm)上に適用し、そして乾燥キャビネットにおいて約 140℃の温度で乾燥せしめた。次に、個々のプレートを計量した。アッセイ目的のためには、55℃の温度を有する標準のヨーロッパタイプの自動皿洗い洗剤(5g/l)の溶液を調製した。洗剤を1分間、溶解せしめ、この後、問題のα−アミラーゼを前記洗剤溶液(磁気撹拌器を備えたビーカーに含まれる)に添加し、0.5mg/lの酵素濃度を付与した。
【0184】
同時に、小さな支持用クランプに保持された、計量測定されたガラスプレートを、α−アミラーゼ/洗剤溶液において実質的に垂直な位置で含浸せしめ、次にこれを55℃で15分間、撹拌した。次に、ガラスプレートをα−アミラーゼ/洗剤溶液から除去し、蒸留水によりすすぎ、乾燥キャビネットにおいて60℃で乾燥せしめ、そして再び計量した。問題のα−アミラーゼの性能〔選択された対照のα−アミラーゼに対する指数として表わされる−下記例(例1)においては、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼ〕を、次の通りに、処理の前及び処理の後、ガラスプレートの重量の差異から決定した:
【0185】
【数1】

【実施例】
【0186】
次の例は本発明を、さらに例示する。それらは、例示的であって、本発明を制限するものではない。
例1.配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼの変異体のミニ皿洗い試験
上記ミニ皿洗い試験を、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼ及び次のその変異体(その構成及び精製は下記に説明される)によりpH10.5で実施した。:T183*+G184*; Y243F ;及びK269R 。その試験は次の結果を与えた:
【0187】
親(配列番号1) 指数:100
T183*+G184* 指数:120
Y243F 指数:120
K269R 指数:131
【0188】
試験された変異体T183*+G184*(親α−アミラーゼよりも高い熱安定性を示す)、Y243F(親α−アミラーゼよりも低いカルシウムイオン依存性を示す)及びK269R(親α−アミラーゼよりも低いカルシウムイオン依存性及び高いpHでの高い安定性を示す)の個々は、親α−アミラーゼに対して有意に改良された皿洗い性能を示すことが明らかである。
【0189】
例2.それぞれ配列番号1及び配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼの変異体の作製
プライマー
下記のような変異体の構成に使用されるDNA プライマーは、次のものを包含する〔すべてのDNA プライマーは5'から3'の方向に(左から右の方向に)書かれている;Pは5'ホスフェートを示す〕:
【0190】
#7113: GCT GCG GTG ACC TCT TTA AAA AAT AAC GGC
Y296 : CC ACC GCT ATT AGA TGC ATT GTA C
#6779: CTT ACG TAT GCA GAC GTC GAT ATG GAT CAC CC
#6778: G ATC CAT ATC GAC GTC TGC ATA CGT AAG ATA GTC
#3811: TT A(C/G)G GGC AAG GCC TGG GAC TGG
#7449: C CCA GGC CTT GCC C(C/G)T AAA TTT ATA TAT TTT GTT TTG
#3810: G GTT TCG GTT CGA AGG ATT CAC TTC TAC CGC
#7450: GCG GTA GAA GTG AAT CCT TCG AAC CGA AAC CAG
B1: GGT ACT ATC GTA ACA ATG GCC GAT TGC TGA CGC TGT TAT TTG C
#6616: P CTG TGA CTG GTG AGT ACT CAA CCA AGT C
#8573: CTA CTT CCC AAT CCC AAG CTT TAC CTC GGA ATT TG
#8569: CAA ATT CCG AGG TAA AGC TTG GGA TTG GGA AGT AG
#8570: TTG AAC AAC CGT TCC ATT AAG AAG
【0191】
A.配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼの変異体の構成
プラスミドpTVB106 の記載:配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼ及びその変異体は、図2に示される、プラスミドを生む遺伝子、すなわちSF16から発現される。プラスミドpTVB106 は、プラスミドpUB110(Gryczan など., 1978)から得られた複製の起点及びクロラムフェニコールに対して耐性を付与するcat 遺伝子を含む。アミラーゼの分泌は、それぞれ配列番号4及び配列番号1に示されるヌクレオチド及びアミノ酸配列(成熟タンパク質)を有する親α−アミラーゼをコードする遺伝子に正確に融合されるTermamylTMシグナル配列、すなわち成熟タンパク質のコドン No.1により助けられる。前記Termamylプロモーターは、遺伝子の転写を開始せしめる。
【0192】
プラスミドpTVB106 は、pDN1528 に類似する(デンマーク特許出願第1155/94号を参照のこと。いくつかのユニーク制限部位、たとえばBstBI,BamHI,BstEII,EcoNI, DrdI, AflIII , DraIII , XmaI, SalI及び BglIIが図2におけるプラスミド地図上に示されている。
【0193】
変異体M202T の構成
PCR オーバーラップ拡張突然変異誘発方法を用いて、この変異体を構成する(Higuchiなど., 1988)。pTVB106の約 350bpのDNA フラグメントを、プライマー#7113及び突然変異誘発性プライマー#6778を用いてPCR 反応Aにおいて増幅する。類似するPCR 反応Bにおいては、約 300bpのDNA フラグメントを、プライマーY296及び#6779を用いて増幅する。プライマー#7113からプライマーY296に突然変異部位(M202) を結合する完全なDNA フラグメントを、それらのプライマー、及び反応A及びBからの精製されたDNA フラグメントを用いてPCR 反応Cにおいて増幅する。
【0194】
PCR 反応CのDNA を制限エンドヌクレアーゼBstEII及び AflIII により消化し、そして 480bpのフラグメントを、同じ酵素により消化されたプラスミドpTVB106 により連結し、そして低−プロテアーゼ及び低−アミラーゼバシラス カブチリス株(たとえばWO92/11357に言及される株SHA273)を形質転換する。
他のM202変異体を類似する態様で構成する。
【0195】
変異体T183*+G184*及びR181*+G182*の構成
PCR オーバーラップ拡張突然変異誘発方法を用いて、それらの変異体を構成する(Higuchiなど., 1988)。突然変異誘発性オリゴヌクレオチドを、1つの位置におけるC及びGの混合物(等しい部分)を用いて合成し;従って、2つの異なった突然変異をこの方法により構成することができる。pTVB106 の約 300bpのDNA フラグメントを、プライマー#7113及び突然変異誘発性プライマー#7449を用いてPCR 反応Aにおいて増幅する。類似するPCR 反応Bにおいて、約 400bpのDNA フラグメントを、プライマーY296及び#3811を用いて増幅する。プライマー#7113からプライマーY296に突然変異部位(アミノ酸 181−184)を結合する完全なDNA フラグメントを、それらのプライマー、及び反応A及びBからの精製されたDNA フラグメントを用いてPCR反応Cにおいて増幅する。
【0196】
PCR 反応CのDNA を制限エンドヌクレアーゼBstEII及び AflIII により消化し、そして 480bpのフラグメントを、同じ酵素により消化されたプラスミドpTVB106 により連結し、そして低−プロテアーゼ及び低−アミラーゼB.サブチリス株(たとえばWO92/11357に言及される株SHA273)を形質転換する。それらの形質転換体からのプラスミドDNA の配列決定は、2つの正しい突然変異、すなわちR181*+G182*及びT183*+G184*を同定する。
【0197】
変異体R124P の構成
PCR オーバーラップ拡張突然変異誘発方法を用いて、変異体M202T(前記を参照のこと)の構成に類似する態様でこの変異体を構成する。PCR 反応A(プライマー#3810及びB1)は約 500bpのフラグメントを生成し、そしてPCR 反応B(プライマー7450及びY296) は約 550bpのフラグメントを生成する。PCR 反応A及びBの生成物、及びプライマーB1及びY296に基づくPCR 反応Cを制限エンドヌクレアーゼBstEII及び AflIII により消化し、そしてアミノ酸位置124 を結合するその得られる 480bpのフラグメントを、同じ酵素により消化されたpTVB106 中にサブクローン化し、そして前記のようにしてB.サブチリスを形質転換する。
【0198】
変異体R124P+T183*+G184*の構成
R124P 及びT183*+G184*突然変異を組合す変異体の構成のために、2つのEcoNI制限部位(1つは位置 1.774kbで、すなわちR124P 突然変異とT183*+G184*突然変異との間に位置し、そして1つは位置 0.146kbで位置する)を用いた。T183*+G184*突然変異を含むpTVB106 様プラスミドの約1630bpのEcoNIフラグメントを、同じ酵素により消化されたR124P 突然変異を含むもう1つのpTVB106 様プラスミドのベクター部分(複製の起点を含む約3810bpのDNA フラグメント)中にサブクローン化した。バシラス・サブチリスの形質転換は、前記のようにして実施された。
【0199】
変異体G182*+G184*;R181*+T183*;Y243F ;K269R ;及びL351C +M430C の構成
それらの変異体を次の通りに構成した:配列番号1に示されるアミノ酸配列のためのコード領域の主要部分を含む特定の突然変異誘発ベクターを調製した。このベクター(pPM103と称する)の重要な特徴は、pUC プラスミドに由来する複製の起点、クロラムフェニコールに対する耐性を付与するcat 遺伝子及びbla 遺伝子のフレームシフト突然変異含有バージョン(この野生型バージョンは通常、アンピシリンに対する耐性を付与する(ampR 表現型))を包含する。bla 遺伝子のこの突然変異誘発されたバージョンは、 ampS 表現型をもたらす。プラスミドpPM103は図3に示されており、そして複製のE.コリ起点、SF16アミラーゼ遺伝子の5’−切断されたバージョン、及びori, bla, cat 及び選択された制限部位が、プラスミド上に示されている。
【0200】
突然変異は、Deng and Nickoloff〔Anal. Biochem. 200 (1992), pp. 81-88〕により記載されるように興味ある遺伝子に導入される。但し、導入される“選択プライマー”(#6616)を有するプラスミドは、Deng and Nickoloffにより概略された制限酵素消化による選択を用いる代わりに修復されたbla 遺伝子を有するプラスミドを含む形質転換されたE.コリ細胞の ampR 表現型に基づいて選択される。突然変異誘発のために使用される化学物質及び酵素は、Stratageneからの Chameleon(商標)突然変異誘発キット(カタログ番号200509)から得られた。変異体プラスミドにおけるDNA 配列の確認の後、所望する変更を含む切断された遺伝子を、約1440bpのBstBI−SalIフラグメントとしてpPM103様プラスミドからpTVB106 中にサブクローン化し、そして変異体酵素の発現のためにバシラス・サブチリスを形質転換した。
【0201】
対様式欠失変異体G182*+G184*の構成のためには、次の突然変異誘発プライマーを使用した:P CTC TGT ATC GAC TTC CCA GTC CCA AGC TTT TGT CCT GAA TTT ATA TAT TTT GTT TTG AAG
対様式欠失変異体R181*+T183*の構成のためには、次の突然変異誘発プライマーを使用した:P CTC TGT ATC GAC TTC CCA GTC CCA AGC TTT GCC TCC GAA TTT ATA TAT TTT GTT TTG AAG
【0202】
置換変異体Y243F の構成のためには、次の突然変異誘発プライマーを使用した:P ATG TGT AAG CCA ATC GCG AGT AAA GCT AAA TTT TAT ATG TTT CAC TGC ATC
置換変異体K269R の構成のためには、次の突然変異誘発プライマーを使用した:P GC ACC AAG GTC ATT TCG CCA GAA TTC AGC CAC TG
対様式置換変異体 L351C+M430C の構成のためには、次の突然変異誘発プライマーが同時に使用した:1)P TGT CAG AAC CAA CGC GTA TGC ACA TGG TTT AAA CCA TTG
2)P ACC ACC TGG ACC ATC GCT GCA GAT GGT GGC AAG GCC TGA ATT
【0203】
変異体L351C +M430C +T183*+G184*の構成
この変異体を、同じ酵素により消化されたpTVB106 様プラスミド(T183*+G184*突然変異を有する)中に L351C+M430C を含む約1430bpのHindIII−AflIII フラグメントをサブクローン化することによって、L35C+M430C 対様式置換突然変異及びT183*+G184*対様式欠失突然変異を組合すことにより構成した。
【0204】
変異体Y243F+T183*+G184*の構成
この変異体を、同じ酵素により消化されたpTVB106 様プラスミド(Y243突然変異を有する)中に、T183*+G184*を含む約1148bpの DrdIフラグメントをサブクローン化することによって、Y243F 突然変異及びT183*+G184*突然変異を組合すことにより構成した。
バシラス・サブチリス形質転換体を澱粉含有寒天プレート上でのα−アミラーゼ活性についてスクリーンし、そして正しい突然変異の存在をDNA 配列決定により調べた。
【0205】
変異体Y243F+T183*+G184*+L351C +M430C の構成
M430C対象置換変異を、約470bp のXmal−SalI断片として、同じ酵素で消化されたpTVB106 様ベクター(Y243F+T183*+T184*を含有する)にサブクローニングした。
【0206】
変異体Y243F+T183*+G184*+L351C +M430C +Q391E +K444Q の構成
突然変異Y243F+T183*+G184*+L351C +M430C を含むpPM103様ベクターを、問題の5つの突然変異を含むpTVB106 様ベクターの約1440bpのBstB1−SalIフラグメントにより、pPM103におけるSF16の切断されたバージョンを置換することにより構成した。Q391E 及びK444Q 突然変異を、pPM103に対しての上記突然変異誘発に類似する態様で次の2つの突然変異誘発プライマーの使用によりpPM103様ベクター(Y243F+T183*+G184*+L351C +M430C を含む)中に同時に導入した:
P GGC AAA AGT TTG ACG TGC CTC GAG AAG AGG GTC TAT
P TTG TCC CGC TTT ATT CTG GCC AAC ATA CAT CCA TTT
【0207】
B.配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼの変異体の構成
プラスミドpTVB112 の記載
配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するα−アミラーゼの、B.サブチリスにおける発現のために使用される、pTVB112 と称するベクターを構成した。このベクターはpTVB106 にひじょうに類似する。但し、配列番号2の成熟α−アミラーゼをコードする遺伝子がpTVB106 における PstI及びHindIII 部位間に挿入される。従って、α−アミラーゼ(配列番号2)の発現はまた、amyLプロモーター及びシグナル配列により指図される。
プラスミドpTVB112 は図4に示される。
【0208】
変異体D183*+G184*の構成
この変異体の構成を、前記で言及されたPCR オーバーラップ拡張突然変異誘発方法(前記を参照のこと)を用いて達成した。プライマー#8573及びB1をPCR 反応Aに使用し、そしてプライマー#8569及び#8570をPCR 反応Bに使用した。反応A及び反応Bからの精製されたフラグメント及びプライマー1B及び#8570をPCR 反応Cに使用し、約1020bpのDNA フラグメントをもたらした。このフラグメントを制限エンドヌクレアーゼ PstI及び MluIにより消化し、そして発現ベクター中にサブクローン化し、そしてB.サブチリスを形質転換した。
【0209】
追加の変異体の構成
配列番号1のアミノ酸配列の変異体の生成に使用されるプラスミドpPM103の構成(前記参照のこと)に類似して、プラスミド(pTVB114 と称する;図5に示される)を、変異体D183*+G184*(配列番号2)に対する連続した突然変異誘発のために構成した。突然変異は、pPM103(配列番号1)のための態様に類似する態様でpTVB114(配列番号2;D183*+G184*)に導入された。
【0210】
対様式欠失変異体R181*+D183*及びR181*+G182*の構成のために、配列番号2のための野生型遺伝子における特定されたアミノ酸を欠失する代わりに、変異体D183*+G184*におけるフランキングアミノ酸を変更することが選択された。次の突然変異誘発プライマーが、鋳型としてのpTVB114 による突然変異誘発のために使用された:
PCC CAA TCC CAA GCT TTA CCA (T/C)CG AAC TTG TAG ATA CG。
【0211】
1つの位置での2つの塩基の混合物(T/C)の存在は、1つの突然変異誘発プライマーに基づく2つの異なった欠失フランキングアミノ酸の存在を可能にする。得られるプラスミドのDNA 配列決定は、1つの又は他の突然変異の存在を確認する。対象の突然変異誘発された遺伝子を、同じ酵素により消化されたpTVB112 中に PstI−DraIII フラグメントとしてサブクローン化し、そしてS.サブチリスを形質転換する。
【0212】
G182*+G184*及びR181*+G184*の構成のために、次の突然変異誘発プライマーが鋳型としてのpTVB114 による突然変異誘発のために使用された:
PCC CAA TCC CAA GCT TTA TCT C(C/G)G AAC TTG TAG ATA CG。
前述のように、1つの位置での2つの塩基の混合物(C/G)の存在は、1つの突然変異誘発プライマーに基づく2つの異なった欠失フランキングアミノ酸の存在を可能にする。得られるプラスミドのDNA 配列決定は、1つの又は他の突然変異の存在を確認する。対象の突然変異誘発された遺伝子を、同じ酵素により消化されたpTVB112 中に PstI−DraIII フラグメントとしてサブクローン化し、そしてS.サブチリスを形質転換する。
【0213】
D183*+G184*+M202L の構成のためには、次の突然変異誘発プライマーが使用された:
PGA TCC ATA TCG ACG TCT GCA TAC AGT AAA TAA TC。
D183*+G184*+M202I の構成のためには、次の突然変異誘発プライマーが使用された:
PGA TCC ATA TCG ACG TCT GCA TAA ATT AAA TAA TC。
【0214】
例3.配列番号1及び配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼのM202置換変異体の酸化安定性の決定
A.配列番号1における配列の変異体の酸化安定性
過酸化水素が 200mMの最終濃度を付与するために添加される(時間t=0で)、50mMの Britton−Robinson緩衝液 (pH9.0)(50mMの酢酸、50mMのリン酸、50mMの硼酸、0.1mM のCaCl2,NaOHにより興味ある値に調節されたpH)におけるそれぞれの変異体の溶液を用いて、測定が行なわれた。次に、その溶液を、水槽において40℃でインキュベートした。
【0215】
過酸化水素の添加の後、5,10,15及び20分間のインキュベーションの後、残留α−アミラーゼ活性を、上記Phadebasアッセイを用いて測定した。サンプル中の残留活性を、37℃で、50mMの Britton−Robinson緩衝液(pH7.3) を用いて測定した(Novo Nordisk A/Sから要求に応じて入手できるNovo分析出版物 AF207−1/1を参照のこと)。活性の低下が、過酸化水素と共にインキュベートされていない(100%活性)0分での同じ酵素の対応する対照溶液に対して測定された。
時間の関数としての初期活性の%が、親酵素(配列番号1)及び問題の変異体のために下記表に示される。
【0216】
【表26】

【0217】
試験されたM202置換変異体のすべては、親α−アミラーゼ(配列番号1)に対しての酸化に対して有意に改良された安定性を明確に示す。
【0218】
B.配列番号2における配列の変異体の酸化安定性
測定は、それぞれ、問題の親α−アミラーゼ(配列番号2)、変異体M202L+D183*+G184*(下記表においてLとして示される)及び変異体M202I+D183*+G184*(下記表においてIとして示される)を用いて上記のようにして行なわれた。この場合、5,10,15及び30分のインキュベーション時間(過酸化水素の添加の後)が使用された。上記表におけるように、時間の関数としての初期活性の%が、親酵素及び問題の変異体について下記表に示される。
【0219】
【表27】

【0220】
試験される2種の“置換+対様式欠失”変異体(両者とも、M202置換を包含する)は明確に、親α−アミラーゼ(配列番号2)に対しての酸化に対して有意に改良された安定性を示す。
【0221】
例4.配列番号1及び配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼの変異体の熱安定性の決定
A.配列番号1における配列の対様式欠失変異体の熱安定性
測定は、50mMの Britton−Robinson緩衝液(前記参照のこと)(pH9.0) におけるそれぞれの変異体の溶液を用いて行なわれた。溶液を水槽において65℃でインキュベートし、そしてサンプルを、示される期間のインキュベーションの後、採取した。個々のサンプルの残留α−アミラーゼ活性を、上記のようにして、Phadebasアッセイを用いて測定した。活性の低下が、インキュベートされなかった(100%活性)0分で、同じ酵素の対応する参照溶液に対して測定された。
【0222】
時間の関数としての初期活性の%が、親酵素(配列番号1)及び次の問題の対様式欠失変異体のために下記表に示される。
変異体1:R181*+G182*
変異体2:R181*+T183*
変異体3:G182*+G184*
変異体4:T183*+G184*
変異体5:T183*+G184*+R124P
【0223】
【表28】

【0224】
試験された対様式欠失変異体のすべては親α−アミラーゼ(配列番号1)に対して有意に改良された熱安定性を示し、そして変異体4の対様式欠失突然変異の他に、置換R124P を包含する変異体5の熱安定性は他の変異体のものよりも著しく高いことが明らかである。置換変異体R124P(置換R124P のみを含む)についての熱量結果は親α−アミラーゼに対して約7℃の熱安定性を示すので、それぞれ、突然変異R124P 及び対様式欠失の熱安定効果がお互い強化すると思われる。
【0225】
B.配列番号2における配列の対様式欠失変異体の熱安定性
対応する測定は、親酵素(配列番号2)及び次の対様式欠失変異体のために行なわれた:
変異体A:D183*+G184*
変異体B:R181*+G182*
変異体C:G182*+G184*
【0226】
【表29】

【0227】
再び、問題の対様式欠失変異体は、親α−アミラーゼ(配列番号2)に対して有意に改良された熱安定性を示すと思われる。
【0228】
C.配列番号1における配列の多数組合せ変異体の熱安定性
対応する比較測定がまた、配列番号1に示されるアミノ酸配列の次の変異体のために行なわれた:
変異体4:T183*+G184*
変異体6:L351C +M430C
変異体7:Y243F
変異体8:Q391E +K444Q
変異体9:T183*+G184*+L351C+M430C+Y243F+Q391E+K444Q
【0229】
【表30】

【0230】
再び、複数の突然変異(個々は熱安定効果を有する)の熱安定効果は少なくとも定性的に、累積性であると思われる。
【0231】
例5.本発明のα−アミラーゼ変異体のカルシウム結合親和性
熱又は変性剤、たとえばグアニジン塩酸塩への暴露によるアミラーゼの変性が、螢光の低下により付随される。カルシウムイオンの損失は変性を導びき、そしてカルシウムに対する一連のα−アミラーゼの親和性は、十分に長時間(たとえば55℃で22時間)、異なった濃度のカルシウム(たとえば1μM〜100mM の範囲での)又は異なった濃度のEGTA(たとえば1〜1000μMの範囲での)〔EGTA=1,2−ジ(2−アミノエトキシ)エタン−N,N,N',N'−テトラ酢酸〕と共に緩衝液(たとえば50mMの HEPES, pH7)において個々のα−アミラーゼ(たとえば10μg/mlの濃度での)をインキュベートする前及びインキュベートした後の螢光測定により測定され得る。
【0232】
測定された螢光Fは、酵素の変性されていない形及び変性された形を形成するためへの寄与から成る。次の等式が、カルシウム濃度(〔Ca〕)に対するFの依存性を説明するために誘導され得る:
F=〔Ca〕/(Kdiss+〔Ca〕)(αN−βNlog(〔Ca〕))+
Kdiss/(Kdiss+〔Ca〕)(αU−βUlog(〔Ca〕))
【0233】
ここで、αN は酵素の活性(変性されていない)形の螢光であり、βN はカルシウム濃度の対数に対するαN の線状依存性であり(実験的に観察されるように)、αU は変性された形の螢光であり、そしてβU はカルシウム濃度の対数に対するαU の線状依存性である。Kdissは次のような平衡工程のための見掛けのカルシウム−結合定数である:
【0234】
【化1】

【0235】
実際、変性はひじょうにゆっくりと進行し、そして不可逆的である。変性の速度はカルシウム濃度に依存し、そして一定のα−アミラーゼのための依存性は酵素のCa−結合親和性の測定を提供する。標準組の反応条件(たとえば55℃で22時間)を定義することによって、異なったα−アミラーゼのためのKdissの意義深い比較が行なわれ得る。一般的に、α−アミラーゼのためのカルシウム解離曲線は上記等式に適合され、Kdissのその対応する値の測定が可能にされる。
Kdissについての次の値が、配列番号1及び配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する親α−アミラーゼのために、及び示されるα−アミラーゼ変異体のために本発明に従って得られた(親α−アミラーゼは括弧で示されている):
【0236】
【表31】

後者のα−澱分解性酵素のカルシウム−結合親和性は上記表を通して下方向につれて低下し、すなわち対様式欠失変異体D183* +G184* (配列番号2)は最とも強くカルシウムを結合するが(すなわち、最低のカルシウム依存性を有する)、ところが配列番号1の親α−アミラーゼは最とも弱くカルシウムを結合する(すなわち、最高のカルシウム依存性を有する)ことが、上記から明らかである。
【0237】
明細書に引用される文献
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【0238】
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Deng and Nickoloff, 1992, Anal. Biochem. 200, pp. 81-88 。
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】図1は、各種α−アミラーゼのアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【図2】図2は、プラスミドpTVB106の制限酵素地図を示す。
【図3】図3は、プラスミドpPM103の制限酵素地図を示す。
【図4】図4は、プラスミドpTVB112の制限酵素地図を示す。
【図5】図5は、プラスミドpTVB114の制限酵素地図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親α−アミラーゼの変異体において、当該親α−アミラーゼが、配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を示すアミノ酸配列を示し、そして前記変異体が、配列番号3に示されるアミノ酸配列のR179及びG180と同等なアミノ酸の欠失を含み、そして前記親α−アミラーゼに比べて、増加した熱安定性、酸化に対する増加した安定性、および低下したCa2+依存性の少なくとも1つを示す、ことを特徴とする変異体。
【請求項2】
前記親α−アミラーゼの少なくとも1つの酸化可能アミノ酸残基が欠失されており、又は前記酸化可能アミノ酸残基よりも酸化に対して低い感受性である異なったアミノ酸残基により置換されている請求項1に記載の変異体。
【請求項3】
前記酸化可能アミノ酸残基が、メチオニン、トリプトファン、システイン及びチロシンから成る群から選択される請求項2に記載の変異体。
【請求項4】
前記メチオニン残基がトレオニンにより置換されている請求項3に記載の変異体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のα−アミラーゼをコードするDNA を含んで成るDNA 構造体。
【請求項6】
請求項5に記載のDNA 構造体を担持する組換え発現ベクター。
【請求項7】
請求項5に記載のDNA構造体又は請求項6に記載のベクターにより形質転換される細胞。
【請求項8】
微生物である請求項7に記載の細胞。
【請求項9】
細菌又は菌類である請求項8に記載の細胞。
【請求項10】
前記細菌がグラム陽性細菌、例えば、バシラス・サブチリス、バシラス・リケニホルミス、バシラス・レンタス、バシラス・ブレビス、バシラス・ステアロサーモフィラス、バシラス・アルカロフィラス、バシラス・アミロリクエファシエンス、バシラス・コアグランス、バシラス・サーキュランス、バシラス・ラウタス、バシラス・ツリンギエンシス、又はストレプトマイセス・リビダンス又はストレプトマイセス・ムリナスである、請求項8項に記載の細胞。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項記載のα−アミラーゼ変異体を生成するための方法であって、請求項7〜10のいずれか1項記載の細胞を、前記α−アミラーゼ変異体の生成の助けとなる条件下で培養し、そして前記α−アミラーゼ変異体を培養物から回収することを含んで成る方法。
【請求項12】
洗浄及び/又は皿洗いへの請求項1〜4のいずれか1項記載のα−アミラーゼ変異体の使用。
【請求項13】
請求項1〜4のいずれか1項記載のα−アミラーゼ変異体を、場合によっては非ダスチング粒質物、安定化された液体又は保護された酵素の形で含んで成る、洗剤添加剤。
【請求項14】
前記添加剤1g当たり酵素タンパク質0.02〜200mg を含んで成る請求項13に記載の洗剤添加剤。
【請求項15】
さらに、他の酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、もう1つの澱粉分解性酵素、及び/又はセルラーゼを含んで成る請求請求項13又は14に記載の洗剤添加剤。
【請求項16】
請求項1〜4のいずれか1項記載のα−アミラーゼ変異体、及び界面活性剤を含んで成る洗剤組成物。
【請求項17】
さらに、他の酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、もう1つの澱粉分解性酵素及び/又はセルラーゼを含んで成る請求項16に記載の洗剤組成物。
【請求項18】
請求項1〜4のいずれか1項記載のα−アミラーゼ変異体、及び界面活性剤を含んで成る手動又は自動皿洗い用洗剤組成物。
【請求項19】
さらに、他の酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、もう1つの澱粉分解性酵素及び/又はセルラーゼを含んで成る請求項18に記載の皿洗い用洗剤組成物。
【請求項20】
請求の範囲第1〜4のいずれか1項記載のα−アミラーゼ変異体、及び界面活性剤を含んで成る手動又は自動洗濯用組成物。
【請求項21】
さらに、他の酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、もう1つの澱粉分解性酵素及び/又はセルラーゼを含んで成る請求項20に記載の洗濯用組成物。
【請求項22】
織物糊抜きのための請求項1〜4のいずれか1項に記載のα−アミラーゼ変異体の使用。
【請求項23】
澱粉からの甘味料又はエタノールの製造のための請求項1〜4のいずれか1項に記載のα−アミラーゼ変異体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−178412(P2008−178412A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21437(P2008−21437)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【分割の表示】特願平8−523186の分割
【原出願日】平成8年2月5日(1996.2.5)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】