アルミニウム厚膜組成物、電極、半導体デバイスおよびそれらを作製する方法
【課題】鉛を含むことなしに、優れた電気性能を提供する導電体組成物の提供。
【解決手段】(a)アルミニウム含有粉末と;(b)少なくとも1つのガラスフリット組成物と;(c)有機媒質とを含み、成分(a)および(b)が成分(c)中に分散され、ガラスフリット組成物(b)は焼成時に再結晶プロセスを受けてガラスおよび結晶相の両方を遊離させ、再結晶プロセスにおいて発生するガラス相はガラスフリット組成物(b)の当初軟化点よりも低い軟化点を有するガラスを含むことを特徴とする厚膜導電体組成物。この厚膜導電体組成物は、太陽電池の裏面電極を形成することにおいて有用である。
【解決手段】(a)アルミニウム含有粉末と;(b)少なくとも1つのガラスフリット組成物と;(c)有機媒質とを含み、成分(a)および(b)が成分(c)中に分散され、ガラスフリット組成物(b)は焼成時に再結晶プロセスを受けてガラスおよび結晶相の両方を遊離させ、再結晶プロセスにおいて発生するガラス相はガラスフリット組成物(b)の当初軟化点よりも低い軟化点を有するガラスを含むことを特徴とする厚膜導電体組成物。この厚膜導電体組成物は、太陽電池の裏面電極を形成することにおいて有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として厚膜組成物、電極および半導体デバイスに関連する。さらに、シリコン半導体デバイスに関連する。詳細には、太陽電池の厚膜電極の形成に用いられる導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はフォトダイオードおよび太陽電池のような受光素子において特に有効である。しかしながら、本発明は広範囲の半導体デバイスに対して適用することができる。本発明の背景を、先行技術の具体例としての太陽電池に関連して、以下に記載する。
【0003】
p型ベースを有する慣用の太陽電池構造は、典型的には電池の表面(おもてめん)すなわち太陽側の面の上の負極と、裏面上の正極とを有する。半導体本体のp−n接合に注ぐ適切な波長の放射線が、該本体内に正孔−電子対を発生させるための外部エネルギー源として役立つことはよく知られている。p−n接合に存在するポテンシャルの差が、正孔および電子を該接合を横切って反対方向に移動させ、それによって外部回路に電力を送達することができる電流の流れを生じさせる。大抵の太陽電池は、金属化されたシリコンウェーハ、すなわち、導電性である金属接点を装備したシリコンウェーハの形態である。
【0004】
太陽電池の形成中に、一般的に、Alペーストがシリコンウェーハの裏面にスクリーン印刷され、そして乾燥される。次いで、ウェーハはAlの融点より高い温度で焼成されて、Al−Si溶融物を形成し、引き続いて、冷却段階において、Alをドープされたシリコンのエピタキシャル成長層が形成される。この層は一般的に裏面電界(BSF)層と呼ばれ、太陽電池のエネルギー変換効率を向上させることを補助する。
【0005】
現在用いられている大抵の発電用太陽電池は、シリコン太陽電池である。大量生産におけるプロセス流れは、概して最大限の簡略化を達成し、かつ製造コストを最小限にすることを目的とする。個々の電極は、金属ペーストのスクリーン印刷のような方法を用いて作製される。
【0006】
この製造方法の例を、図1に関連して以下に記載する。図1Aは、p型シリコン基板10を示す。
【0007】
図1Bにおいて、逆の導電型を有するn型拡散層20を、リン(P)などの熱拡散によって形成する。オキシ塩化リン(POCl3)は、気体状リン拡散源として一般的に用いられ、他の液体状源はリン酸などである。特段の修正がない場合、拡散層20はシリコン基板10の全表面上に形成される。この拡散層は数十オーム毎平方(Ω/□)のオーダーのシート抵抗値と、約0.3〜0.5μmの厚さとを有する。p−n接合は、p型ドーパントの濃度がn型ドーパントの濃度と等しいところに形成され、太陽側面に近いp−n接合を有する慣用の電池は、0.05μmと0.5μmとの間の接合深さを有する。
【0008】
拡散層の形成の後に、フッ化水素酸のような酸によるエッチングによって、残りの表面から過剰の表面ガラスを除去する。次に、プラズマ化学気相成長法(CVD)のような方法により、図1Dに示されるような方法で、n型拡散層20の上の反射防止コーティングとして、窒化ケイ素膜30を0.05μmと0.1μmとの間の厚さに形成する。
【0009】
図1Eに示されるように、表面電極用の銀ペースト500を窒化ケイ素膜30の上にスクリーン印刷し、次いで乾燥させる。加えて、次に、裏面の銀または銀/アルミニウムペースト70およびアルミニウムペースト60を基板の裏面上にスクリーン印刷(または何らかの他の付着方法)し、引き続いて基板の裏面上で乾燥させる。通常、2つの平行なストリップとして、または相互接続ストリング(予備ハンダ付けされる銅リボン)をハンダ付けするための準備ができた矩形として、裏面の銀または銀/アルミニウムが最初にシリコン上にスクリーン印刷され、次いで、その銀または銀/アルミニウム上にわずかに重なり合いながら、アルミニウムが露出した区域に印刷される。いくつかの場合においては、アルミニウムが印刷された後に、銀または銀/アルミニウムが印刷される。次いで、典型的には、数分から数十分の期間にわたって約700〜950℃の温度範囲の赤外炉中で、焼成を実施する。表面電極および裏面電極を、順次的に焼成することもできるし、共焼成することもできる。
【0010】
その結果、図1Fに示すように、焼成プロセス中にペーストからの溶融アルミニウムがシリコンを溶解し、そして次にシリコンベース10上にエピタキシャル成長するシリコンをドープして、高濃度のアルミニウムドーパントを含有するp+層40を形成する。この層は、一般的に裏面電界(BSF)層と呼ばれ、太陽電池のエネルギー変換効率を向上させることを補助する。
【0011】
焼成によって、アルミニウムペーストは、乾燥状態60からアルミニウム裏面電極61へと転換される。先行技術の裏面アルミニウムペーストは、粒子が形成され、かつ粒度および形状が差別されない噴霧法から誘導される主として球形状のアルミニウム粒子を用いる。裏面の銀または銀/アルミニウムペースト70は、同時に焼成されて、銀または銀/アルミニウム裏面電極71になる。焼成中に、裏面アルミニウムと裏面銀または銀/アルミニウムとの間の境界は合金状態となり、同様に電気的に接続される。部分的にはp+層40を形成する必要のために、アルミニウム電極は裏面電極の大部分の面積を占める。アルミニウム電極に対するハンダ付けが不可能であるので、予めハンダ付けされた銅リボンなどの手段による太陽電池の相互接続のための電極として、裏面の一部(多くの場合に2〜6mm幅のバスバーとして)の上に銀または銀/アルミニウム裏面電極を形成する。加えて、表面電極を形成する銀ペースト500は、焼成中に焼結し、そして窒化ケイ素膜30を貫いて浸透し、それによって、n型層20と電気的に接触することができる。この種のプロセスは、一般的にファイアスルー(fire through)と呼ばれる。このファイアスルー状態は、図1Fの層501において明白である
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
加えて、慣用の太陽電池が実用的設計を提供するものの、より高い効率を有するデバイスを提供する必要が依然として存在する。同様に、そのようなデバイスを先行技術よりも低い温度において形成する方法を提供する必要が存在する。そのような方法は、製造業者に対して増大した適応性を提供するためのより広い温度範囲にわたる共焼成を可能にし、およびより厚いウェーハ原料およびより薄いウェーハ原料のための熱負荷の補償を可能にするであろう。本発明はそのようなデバイスおよびその形成のための方法を提供する。
【0013】
さらに、デバイスの電気的性能および他の関連する特性を維持すると同時に無鉛である組成物を提供するための継続中の努力が存在する。本発明者らは、電気的性能を依然として維持するそのような無鉛システムおよび優れた電気性能を提供する新規組成物を同時に提供する、新規の含アルミニウム組成物および半導体デバイスを創造する。さらに、本発明の組成物は、本発明のいくつかの実施形態において減少した反りをもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、p型電極を形成するのに使用するための厚膜導電体組成物に関連する。さらに、本発明は、そのような組成物を形成するための方法、および半導体デバイスにおける該組成物の使用、ならびに半導体デバイス自身に関連する。
【0015】
本発明は、(c)有機媒体中に分散された(a)アルミニウム含有粉末;(b)少なくとも1つのガラスフリット組成物から構成される厚膜導電体組成物を指向し、前記ガラスフリット組成物が焼成時に再結晶プロセスを受け、ガラス相および結晶相の両方を遊離させ、および前記再結晶プロセスの前記ガラス相は、前記ガラスフリット組成物の当初軟化点よりも低い軟化点を有するガラスを含む。
【0016】
本発明は、さらに、p型領域およびn型領域、ならびにp−n接合を有するシリコン基板を用いて太陽電池を形成する方法を指向し、該方法は、前記基板の裏面をスクリーン印刷する工程と、前述の組成物をスクリーン印刷する工程と、500〜990℃の温度において印刷された表面を焼成する工程とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の厚膜組成物の主構成要素は、アルミニウム含有粉末、ガラスフリットおよび有機媒質である。1つの実施形態において、組成物中のガラスフリットは無鉛ガラス組成物である。本発明の組成物は、先行技術と比較して優れた電気的性能を可能にする。同様に、該組成物は先行技術の系よりも小さい反りを提供する。
【0018】
(アルミニウム含有粉末)
本発明の金属性粉末は、アルミニウム含有粉末である。1つの実施形態において、アルミニウム含有粉末は、噴霧されたアルミニウムを含む。噴霧アルミニウムは、空気雰囲気または不活性雰囲気のいずれの中で噴霧されてもよい。噴霧アルミニウム粉末の平均粒度分布は、3〜50ミクロンの範囲内である。アルミニウム含有粉末の平均粒度分布は3〜20ミクロンの範囲内である。
【0019】
本発明のアルミニウム含有粉末は、銀含有粉末のような他の金属性粉末をさらに伴ってもよい。
【0020】
(無機結合剤−ガラスフリット)
本明細書に前述されるアルミニウム含有粉末は、有機媒質中に微細に分散され、および1種または複数種の無機結合剤をさらに伴う。具体的には、本発明において有用な無機結合剤は、ガラスフリットである。本発明は、少なくとも1つのガラスフリット組成物を含まなければならず、ここで、焼成時に前記ガラスフリット組成物は再結晶または相分離を受け、そして当初軟化点よりも低い軟化点を有する分離された相を伴うフリットを遊離する。そのようにして、そのようなガラスフリットを含む厚膜組成物は、加工の際により低い反り特性を与える。典型的には、ガラスフリット組成物の当初軟化点は、325℃〜600℃の範囲内である。
【0021】
1つの実施形態において、本発明のガラスフリットは、焼成時に再結晶または相分離を受けて、当初軟化点よりも低い軟化点を有する分離された相を伴うフリットを遊離する無鉛ガラスフリットである。1つまたは複数のフリットの混合物も可能である。
【0022】
アルミニウム組成物における無機結合剤の機能は、主として、焼成プロセス中に溶融アルミニウムがシリコンに到達する効率を高めるための手段を提供することである。この機能に加えて、結合剤は、いくらかのさらなる凝集性および基板に対する接着特性を提供する。この場合における無機結合剤の必要性は、ウェーハ加工に由来する残存物としてシリカまたはケイ酸ガラスの層を有するシリコン基板において最も重要である。無機結合剤は、完成された電池におけるアルミニウム層の反りに影響を及ぼす。また、結合剤は、シリコン中へのアルミニウムの合金化深さを増大させ、したがって、共晶的に成長するシリコン層中のアルミニウムドーパント濃度を向上すなわち増大させることができる。
【0023】
本発明のガラスフリットの化学的性質は重要である。ガラスフリットは、環境に関する法律または潜在的に環境に影響を与える重金属を排除するという社会的要望のような他の考慮すべき事項を脅かすことなしにアルミニウム厚膜ペーストの電気的性能を高めること対してそれらが有する有効性に基づいて選択される。
【0024】
無機結合剤としてのガラスフリットの含有量は、得られる電池の電気的性能に影響を及ぼすという点において重要である。含有量はガラスまたは無機含有量によって決定される。含有量は、ガラスフリットの化学的性質に依存して、全厚膜組成物を基準として0.01質量%と5質量%との間であり、電気的性能および反りのために好ましい範囲は、0.01質量%と2質量%との範囲内である。
【0025】
組成物において有用であるガラス結合剤は、当該技術において知られている。いくつかの例は、ボロシリケートガラス類およびアルミノシリケートガラス類を含む。例は、B2O3、SiO2、Al2O3、CdO、CaO、BaO、ZnO、SiO2、Na2O、Li2O、PbOおよびZrOのような酸化物の組み合わせをさらに含み、それら酸化物を独立的または組み合わせて用いてガラス結合剤を形成してもよい。厚膜組成物において有用な典型的な金属酸化物は知られており、たとえばZnO、MgO、CoO、NiO、FeO、MnOおよびそれらの混合物であることができる。反り特性に影響するガラス結合剤は組成物において特異的である。
【0026】
好ましく用いられる慣用のガラスフリットは、鉛ボロシリケートフリット、ビスマス、カドミウム、バリウム、カルシウムまたは他のアルカリ土類金属ボロシリケートフリットのような、ボロシリケートフリットである。そのようなガラスフリットの調製はよく知られており、および、たとえば、構成成分の酸化物の形態にあるガラスの構成成分を一緒にして溶融させる工程と、そのような溶融組成物を水中に注いでフリットを形成する工程とからなる。もちろん、バッチ原料は、フリット製造の通常の条件下で所望される酸化物を与える任意の化合物であってもよい。たとえば、酸化ホウ素はホウ酸から得られ、二酸化ケイ素はヒウチ石から得られ、酸化バリウムは炭酸バリウムなどから生成させることができる。
【0027】
好ましくは、ガラスを、水または不活性、低粘度、低沸点の有機液体を用いるボールミル中で粉砕して、フリットの粒度を低減させ、かつ実質的に均一な大きさのフリットを得る。次に水または前記有機液体中で沈降させ微細粉を分離させ、そして微細粉を含有する上澄み液を除去する。同様に、他の分級方法を用いてもよい。
【0028】
ガラスは、慣用のガラス作成技術、所望される比率において所望される成分を混合し、該混合物を加熱して溶融物を形成することによって調製される。当該技術においてよく知られているように、加熱は、溶融物が完全に液体になり、かつ均一になるような、ピーク温度および時間にわたって実施される。所望されるガラス転移温度は325℃〜600℃の範囲内である。
【0029】
無機結合剤粒子の少なくとも85%が0.1〜10μmであることが好ましい。この理由は、より大きな表面積を有するより小さい粒子は、有機材料を吸着し、それによってクリーンな分解を妨げる傾向があることである。一方、より大きな粒子は、より劣悪な焼結特性を有する傾向がある。総ペースト含有物に対する無機結合剤の質量比が0.1から−2.0の範囲内であること、およびより好ましくは0.2〜1.25の範囲内であることが好ましい。
【0030】
(有機媒質)
無機成分は、典型的には機械的混合によって有機媒質と混合されて、印刷するのに好適な稠度およびレオロジーを有する「ペースト」と呼ばれる粘稠組成物を形成する。有機媒質として広範な不活性粘稠材料を用いることができる。有機媒質は、その中に無機成分が妥当な程度の安定性を有して分散可能であるものでなければならない。媒質のレオロジー的特性は、組成物の良好な付着特性(固形分の安定な分散、スクリーン印刷のために好適な粘度およびチクソトロピー、基板およびペースト固形分に対する好適な濡れ性、良好な乾燥速度および良好な焼成特性を含む)を与えるようなものでなければならない。本発明の厚膜組成物中に用いられる有機ビヒクルは、好ましくは非水性不活性液体である。種々の有機ビヒクルの任意のものを使用することができ、それらは増粘剤、安定剤および/または他の一般的添加剤を含有してもしなくてもよい。有機媒質は、典型的には溶媒中のポリマーの溶液である。さらに、界面活性剤のような少量の添加剤が有機媒質の一部であってもよい。この目的のために最も頻繁に用いられるポリマーはエチルセルロースである。ポリマーの他の例は、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、エチルセルロースとフェノール樹脂との混合物、低級アルコールのポリメタクリレート類を含み、および同様に、エチレングリコールモノアセテートのモノブチルエーテルを用いることができる。厚膜組成物中に見いだされ、最も広く用いられる溶媒は、エステルアルコール類、およびα−テルピネオールまたはβ−テルピネオールのようなテルペン類、またはそれらとケロシン、ジブチルフタレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ヘキシレングリコールおよび高沸点アルコール類のような他の溶媒との混合物、ならびにアルコールエステル類である。加えて、基板への付着後の迅速な硬化を促進するための揮発性液体を、ビヒクル中に含むことができる。これらおよび他の溶媒の種々の組み合わせを配合して、所望される粘度および揮発性の必要条件を得る。
【0031】
有機媒質中に存在するポリマーは、総組成物の0質量%〜11質量%の範囲内である。有機ポリマー含有媒質を用いて、本発明の厚膜組成物を予め決定されたスクリーン印刷可能な粘度に調整してもよい。
【0032】
分散物中の無機成分に対する厚膜組成物中の有機媒質の比率は、ペーストを付着する方法、および用いられる有機媒質の種類に依存し、およびそれは変化することができる。良好な濡れ性を得るために、通常、分散物は、40〜95質量%の無機成分と、5〜60質量%の有機媒質(ビヒクル)を含有する。
【0033】
特許請求の範囲の範囲内で、280℃と900℃との間で発熱性化学反応を提供するポリマー類または有機種または無機種の添加が、これらの種がドープされたシリコン系の半導体特性に対する毒とみなされないシステムの総体的性能に関して有益であることが見いだされる。
【0034】
本発明の導電性ペーストは、典型的には、伝統的ロールミリングと等価である分散技術であるパワー混合により慣用的に製造される。同様にロールミリングまたは他の混合技術を用いることができる。本発明の導電性ペーストは、好ましくは、スクリーン印刷によって太陽電池の裏面の所望される部分の上に塗布される。そのような方法による塗布の際に、規定された範囲内の粘度を有することが望ましい。シリコーンパッド印刷のような他の付着方法を用いることができる。本発明の導電性ペーストの粘度は、Brookfield HBT粘度計および#14スピンドルを用い、ユーティリティカップにより10rpmのスピンドル速度および25℃において測定される際に、好ましくは20〜200PaSである。
【0035】
銀/アルミニウム膜または銀膜は、共焼成と呼ばれるプロセスにおいて、本発明のアルミニウムペーストと同時に共焼成することができる。次に、本発明の導電性ペースト(アルミニウム導電性ペースト)を用いて太陽電池を調製する例を、図面(図2)を参照して説明する。
【0036】
最初に、Si基板102を準備する。Si基板(通常、表面に接近したp−n接合を有する)の受光側の面(表面)に、電極(たとえば、主としてAgから構成される電極)104を取り付ける(図2A)。基板の裏面上に、AgまたはAg/Al導電性ペースト(たとえば、PV202またはPV502またはPV583またはPV581(本件特許出願人から商業的に入手可能である)であるが、太陽電池に用いられる限り特に制限はされない)を塗布して、他の電池の組との並列電気構成における相互接続を可能にするバスバーまたはタブを形成する。基板の裏面上に、太陽電池の裏面(またはp型接点)電極106として用いられる本発明の新規アルミニウムペーストを、前述の導電性AgまたはAg/Alペーストとのわずかな重なり合いを可能にするパターンを用いるスクリーン印刷によって塗布し、次いで乾燥する(図2B)。それぞれのペーストの乾燥温度は、20分間にわたる静止型乾燥器における150℃以下、あるいは、3分間にわたり200℃より高い温度を用いるバンド乾燥器における7分間(DEK乾燥器モデル1209の設定:ランプ設定9および速度3)である。また、アルミニウムペーストは好ましくは15〜60μmの乾燥膜厚を有し、および本発明の銀/アルミニウム導電性ペーストの膜厚は好ましくは15〜30μmである。また、アルミニウムペーストと銀/アルミニウム導電性ペーストの重なり合った部分は、好ましくは0.5〜2.5mmである。
【0037】
次に、得られた基板を、たとえば3秒間〜15分間にわたって700〜1000℃の温度において焼成して、所望される太陽電池を得る(図2D)。本発明の組成物が焼成されて有機媒質が除去され、そしてガラスフリットが焼結して、前記組成物から電極が形成される。
【0038】
図2Dに示すような、本発明の導電性組成物を用いて得られる太陽電池は、基板(たとえばSi基板)の受光面(表面)上に電極104を有し、裏面上に主としてAlから構成されるAl電極110と主としてAgおよびAlから構成される銀/アルミニウム電極112とを有する。
【0039】
本発明を、実際の実施例を提供することによりさらに詳細に議論する。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実際の実施例によって何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0040】
本明細書に記載される実施例は、窒化ケイ素反射防止コーティングを有し、かつ表側の面のn型接点厚膜銀ペーストを用いる慣用の電池設計であるウェーハ上の前記実施例のペーストを焼成することに基づく。ペーストの性能は、電気的特性に関して定義され、およびさらに焼成後の反り(室温における焼成された電池のたわみ、および平坦な電池を達成するためにウェーハ中心が移動する距離として定義される)に関して定義される。
【0041】
(1) ガラスフリットを有するアルミニウムペースト
ここでは、ガラスフリットとアルミニウム粉末の混合物を記載する。アルミニウム粉末に対する相対的なガラス含有量および粒度は、電気的特性およびより薄い電池の反りの程度に影響を及ぼす。
【0042】
この例において、4種のガラス組成物を記載し、それらのうち3種は鉛ボロシリケート組成物であり、1種が鉛不含有ガラスである。それらの系は、AおよびBが軟化および凍結するガラス系であるのに対し、CおよびDは軟化するが、冷却中に結晶化し、ガラスCは350℃未満の温度まで液体のままである点において異なる。ガラスAは先行技術のガラス組成物を表わし、ガラスB、CおよびDは新規厚膜組成物中に含まれるガラスを表わす。
【0043】
【表1】
【0044】
これらのガラスを、アルミニウムペーストに関する当該技術の方法によるようにして、アルミニウム粉末を含有するSilberline(UK)製の製品L20261中に混合した。フリットA、B、CおよびDの添加量(質量)は、74質量%のアルミニウム粉末に基づいて0.25%から2.5%の間で変化し、次の工程が印刷および焼成である点まで予備加工された多結晶シリコン125mm平方の厚さ270ミクロンのウェーハ上に印刷された。それらウェーハを、Centrotherm4ゾーン炉中で焼成することによって電池へと変換した。ここで、Centrotherm4ゾーン炉は、ゾーン1=450℃、ゾーン2=520℃、ゾーン3=575℃および925℃または950℃に設定される最終ゾーンとして規定されるゾーン温度を使用し、2500mm/分のベルト速度を使用した。電気的性能および反りの測定を実施し、効率の測定を第2表および第3表に示し、およびフィルファクター(FF)を第4表および第5表に示し、反りを第6表に示した。
【0045】
Youngら(PVSEC会議(New Orleans))によって報告された研究によれば、質量がこの値未満である場合に電気的性能が極度に低下する点が存在するという、電気的性能と質量堆積量(または厚さ)との間の関係があることに注目すべきであり、この理由によって、飽和値とも呼ばれるこれよりも大きな厚さでペーストが印刷される層の厚さを第7表にて報告する。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
記載した例は、アルミニウム粉末に対するガラスフリットA、B、CおよびDの添加が、単独で、より良好な電気的性能を提供することを示す。その性能は、フリットの含有量、化学的性質および焼成温度の関数である。
【0053】
バイメタル板モデルに基づけば、ベース基板からの膨張温度係数の差が大きい材料がより大きな反りを有することが予測され、および高い凝固点を有する材料もまたより大きな反りに寄与するであろうことが予測される。バイメタル板モデルは、系に対するフリットの添加が増大する場合に反りがより大きくなることを予言する。バイメタル板の曲がりの式は、
【0054】
【数1】
【0055】
(式中、δは曲がり(m)であり、taは上部層の厚さ(m)であり、tbは底部層の厚さ(m)であり、Tfは凝固温度(℃)であり、Tは測定温度(℃)であり、αaは上部成分のTCE(10-6K-1)であり、αbは底部成分のTCE(10-6K-11)であり、Eaは上部成分の弾性率(Pa)であり、Ebは底部成分の弾性率(Pa)であり、およびdはより小さい成分の幅(m)である)で与えられる。
【0056】
【表8】
【0057】
このように、記載された実施例において、
− 反りの程度は、バイメタル板の予測に基づくラインに一致して、フリットの増加につれて概して増大する。
− 反りの程度は、シリコン(2.4ppm/K)に比較して大きなαを有するガラスとともに増加すると予測される。ガラスCおよびDは、反りがより少ないので、バイメタルモデルから予測される挙動に従わない。
− ガラスの軟化点が上昇する際に、反りの程度は減少する。ガラスCおよびDは、より低い軟化点の系よりも反りが少ないので、バイメタルモデルから予測されるこの挙動に従わない。
− 0.5%添加未満の反りの程度は、ガラスの全く無い系よりも少ない可能性があり、これはこれらの実施例に記載されるフリットの化学的性質ではなく添加の特性である。
− ガラスフリットCおよびDは、冷却中に、ガラス内の結晶性析出物へと再結晶(相分離)し、該析出物は、系に当初加えられた系よりも低い軟化点または凝固点の相によって取り囲まれることが知られている。図4は、軟化点(℃単位)の関数としての反りを表わす。
− 独特には、ここに記載した結晶化する系の反りの程度は、ガラスDに関して示されるようにフリット含量が増大するにつれてより少なくなることができる。ガラスDの場合、図5に示す膨張測定曲線に示されるように、概略的に室温から150℃の間においてαが負である。系が慣用のフリットよりも小さい反りを促進する能力は、この系が225ミクロン未満の厚さを有するシリコン電池において非常に小さい反りを与えることを可能にし、それゆえに製造業者が後焼成ハンドリング中にそれらを用いることを可能にし、およびモジュール製造業者に取り扱いの困難さに起因して破壊される傾向の低下を与えることを可能にする。図6は、同定されたガラスフリットのそれぞれを有する270ミクロンウェーハ(125×125mm)における反り性能を例示する。
【0058】
(太陽電池の製造)
本発明は、フォトダイオードおよび太陽電池のような受光素子において特に有効であるが、広い範囲の半導体装置に適用することができる。以下の議論は、本発明の組成物を用いて、どのように太陽電池を形成するかを記載する。当業者は、本発明において種々の太陽電池形成の実施形態が有用であることを理解する。
【0059】
得られるアルミニウム導電性ペーストを用いて、太陽電池を以下の順序において形成した。
【0060】
(1) 表面上の銀電極(たとえば、本件特許出願人から商業的に入手可能なPV147 Ag組成物)を有するSi基板の裏面に、印刷および乾燥させる。典型的な乾燥厚さは、15〜25ミクロンの範囲内である。次いで、AgまたはAg/Alペースト(たとえば、PV202は、本件特許出願人から商業的に入手可能なAg/Al組成物である)を印刷し、5〜6mm幅のバスバーとして乾燥させる。次いで、太陽電池の裏面電極用のアルミニウムペースト(本発明の新規組成物を表わす)を30〜60μmの乾燥膜厚にてスクリーン印刷して、両縁部で1mmにわたるAg/Alバスバーとアルミニウム膜との重なりを提供し、電気的連続性を保証した。焼成の前に、アルミニウムペーストを乾燥させた。
【0061】
(2) 次いで、850〜965℃のピーク温度設定を有する炉内で、炉の寸法および温度設定に依存して3〜10分間にわたって、乾燥させたウェーハを焼成した。焼成の後に太陽電池が形成された。
【0062】
(試験手順−効率)
前述の方法に従って組み立てられた太陽電池を、効率を測定するための商用IV試験器(IEET Ltd.)内に配置した。IV試験器のランプは、既知の強度を有し、電池の表面に照射される日光を模倣し、電池の表に印刷されたバスバーをIV試験器の多極プローブに接続し、そして効率を計算するために電気信号をプローブを通してコンピュータに送信した。
【0063】
標準的な表面接点ペーストPV147 Ag導電体(本件特許出願人から商業的に入手可能である)を用いて、太陽電池を調製した。
【0064】
厚膜ペーストを付着し焼成する点まで加工され、PV電池製造業者から供給されたウェーハ上に、サンプルを印刷した。次いで加工されたウェーハについて、電気的性能を測定した。結果はAl粉末に添加される際のフリットA,B,CおよびDの使用が、フリット未使用系に比較して、電気的性能を改善したことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1A】半導体装置の作成を例示するプロセス流れ図である。
【図1B】半導体装置の作成を例示するプロセス流れ図である。
【図1C】半導体装置の作成を例示するプロセス流れ図である。
【図1D】半導体装置の作成を例示するプロセス流れ図である。
【図1E】半導体装置の作成を例示するプロセス流れ図である。
【図1F】半導体装置の作成を例示するプロセス流れ図である。
【図2A】本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池を製造する製造方法を説明する図である。
【図2B】本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池を製造する製造方法を説明する図である。
【図2C】本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池を製造する製造方法を説明する図である。
【図2D】本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池を製造する製造方法を説明する図である。
【図2E】本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池を製造する製造方法を説明する図である。
【図2F】本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池を製造する製造方法を説明する図である。
【図3】α(ppm/K)の関数としての反りを示すグラフである。
【図4】軟化点の関数としての反りを示すグラフである。
【図5】ガラスDの膨張特性の膨張計による評価を示すグラフである。
【図6】270ミクロンウェーハにおけるガラスフリットのパーセントの関数としての反りを示すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
10 p型シリコン基板
20 n型拡散層
30 窒化ケイ素膜、酸化チタン膜または酸化ケイ素膜
40 p+層(裏面電界、BSF)
60 裏面に形成されたアルミニウムペースト
61 アルミニウム裏面電極(裏面のアルミニウムペーストを焼成することによって得られる)
70 裏面に形成された銀または銀/アルミニウムペースト
71 銀または銀/アルミニウム裏面電極(裏面銀ペーストを焼成することによって得られる)
102 シリコン基板
104 受光面側電極
106 第1電極用ペースト組成物
108 第2電極用導電性ペースト
110 第1電極
112 第2電極
500 表面に形成された銀ペースト
501 銀表面電極(表面銀ペーストの焼成により形成される)
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として厚膜組成物、電極および半導体デバイスに関連する。さらに、シリコン半導体デバイスに関連する。詳細には、太陽電池の厚膜電極の形成に用いられる導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はフォトダイオードおよび太陽電池のような受光素子において特に有効である。しかしながら、本発明は広範囲の半導体デバイスに対して適用することができる。本発明の背景を、先行技術の具体例としての太陽電池に関連して、以下に記載する。
【0003】
p型ベースを有する慣用の太陽電池構造は、典型的には電池の表面(おもてめん)すなわち太陽側の面の上の負極と、裏面上の正極とを有する。半導体本体のp−n接合に注ぐ適切な波長の放射線が、該本体内に正孔−電子対を発生させるための外部エネルギー源として役立つことはよく知られている。p−n接合に存在するポテンシャルの差が、正孔および電子を該接合を横切って反対方向に移動させ、それによって外部回路に電力を送達することができる電流の流れを生じさせる。大抵の太陽電池は、金属化されたシリコンウェーハ、すなわち、導電性である金属接点を装備したシリコンウェーハの形態である。
【0004】
太陽電池の形成中に、一般的に、Alペーストがシリコンウェーハの裏面にスクリーン印刷され、そして乾燥される。次いで、ウェーハはAlの融点より高い温度で焼成されて、Al−Si溶融物を形成し、引き続いて、冷却段階において、Alをドープされたシリコンのエピタキシャル成長層が形成される。この層は一般的に裏面電界(BSF)層と呼ばれ、太陽電池のエネルギー変換効率を向上させることを補助する。
【0005】
現在用いられている大抵の発電用太陽電池は、シリコン太陽電池である。大量生産におけるプロセス流れは、概して最大限の簡略化を達成し、かつ製造コストを最小限にすることを目的とする。個々の電極は、金属ペーストのスクリーン印刷のような方法を用いて作製される。
【0006】
この製造方法の例を、図1に関連して以下に記載する。図1Aは、p型シリコン基板10を示す。
【0007】
図1Bにおいて、逆の導電型を有するn型拡散層20を、リン(P)などの熱拡散によって形成する。オキシ塩化リン(POCl3)は、気体状リン拡散源として一般的に用いられ、他の液体状源はリン酸などである。特段の修正がない場合、拡散層20はシリコン基板10の全表面上に形成される。この拡散層は数十オーム毎平方(Ω/□)のオーダーのシート抵抗値と、約0.3〜0.5μmの厚さとを有する。p−n接合は、p型ドーパントの濃度がn型ドーパントの濃度と等しいところに形成され、太陽側面に近いp−n接合を有する慣用の電池は、0.05μmと0.5μmとの間の接合深さを有する。
【0008】
拡散層の形成の後に、フッ化水素酸のような酸によるエッチングによって、残りの表面から過剰の表面ガラスを除去する。次に、プラズマ化学気相成長法(CVD)のような方法により、図1Dに示されるような方法で、n型拡散層20の上の反射防止コーティングとして、窒化ケイ素膜30を0.05μmと0.1μmとの間の厚さに形成する。
【0009】
図1Eに示されるように、表面電極用の銀ペースト500を窒化ケイ素膜30の上にスクリーン印刷し、次いで乾燥させる。加えて、次に、裏面の銀または銀/アルミニウムペースト70およびアルミニウムペースト60を基板の裏面上にスクリーン印刷(または何らかの他の付着方法)し、引き続いて基板の裏面上で乾燥させる。通常、2つの平行なストリップとして、または相互接続ストリング(予備ハンダ付けされる銅リボン)をハンダ付けするための準備ができた矩形として、裏面の銀または銀/アルミニウムが最初にシリコン上にスクリーン印刷され、次いで、その銀または銀/アルミニウム上にわずかに重なり合いながら、アルミニウムが露出した区域に印刷される。いくつかの場合においては、アルミニウムが印刷された後に、銀または銀/アルミニウムが印刷される。次いで、典型的には、数分から数十分の期間にわたって約700〜950℃の温度範囲の赤外炉中で、焼成を実施する。表面電極および裏面電極を、順次的に焼成することもできるし、共焼成することもできる。
【0010】
その結果、図1Fに示すように、焼成プロセス中にペーストからの溶融アルミニウムがシリコンを溶解し、そして次にシリコンベース10上にエピタキシャル成長するシリコンをドープして、高濃度のアルミニウムドーパントを含有するp+層40を形成する。この層は、一般的に裏面電界(BSF)層と呼ばれ、太陽電池のエネルギー変換効率を向上させることを補助する。
【0011】
焼成によって、アルミニウムペーストは、乾燥状態60からアルミニウム裏面電極61へと転換される。先行技術の裏面アルミニウムペーストは、粒子が形成され、かつ粒度および形状が差別されない噴霧法から誘導される主として球形状のアルミニウム粒子を用いる。裏面の銀または銀/アルミニウムペースト70は、同時に焼成されて、銀または銀/アルミニウム裏面電極71になる。焼成中に、裏面アルミニウムと裏面銀または銀/アルミニウムとの間の境界は合金状態となり、同様に電気的に接続される。部分的にはp+層40を形成する必要のために、アルミニウム電極は裏面電極の大部分の面積を占める。アルミニウム電極に対するハンダ付けが不可能であるので、予めハンダ付けされた銅リボンなどの手段による太陽電池の相互接続のための電極として、裏面の一部(多くの場合に2〜6mm幅のバスバーとして)の上に銀または銀/アルミニウム裏面電極を形成する。加えて、表面電極を形成する銀ペースト500は、焼成中に焼結し、そして窒化ケイ素膜30を貫いて浸透し、それによって、n型層20と電気的に接触することができる。この種のプロセスは、一般的にファイアスルー(fire through)と呼ばれる。このファイアスルー状態は、図1Fの層501において明白である
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
加えて、慣用の太陽電池が実用的設計を提供するものの、より高い効率を有するデバイスを提供する必要が依然として存在する。同様に、そのようなデバイスを先行技術よりも低い温度において形成する方法を提供する必要が存在する。そのような方法は、製造業者に対して増大した適応性を提供するためのより広い温度範囲にわたる共焼成を可能にし、およびより厚いウェーハ原料およびより薄いウェーハ原料のための熱負荷の補償を可能にするであろう。本発明はそのようなデバイスおよびその形成のための方法を提供する。
【0013】
さらに、デバイスの電気的性能および他の関連する特性を維持すると同時に無鉛である組成物を提供するための継続中の努力が存在する。本発明者らは、電気的性能を依然として維持するそのような無鉛システムおよび優れた電気性能を提供する新規組成物を同時に提供する、新規の含アルミニウム組成物および半導体デバイスを創造する。さらに、本発明の組成物は、本発明のいくつかの実施形態において減少した反りをもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、p型電極を形成するのに使用するための厚膜導電体組成物に関連する。さらに、本発明は、そのような組成物を形成するための方法、および半導体デバイスにおける該組成物の使用、ならびに半導体デバイス自身に関連する。
【0015】
本発明は、(c)有機媒体中に分散された(a)アルミニウム含有粉末;(b)少なくとも1つのガラスフリット組成物から構成される厚膜導電体組成物を指向し、前記ガラスフリット組成物が焼成時に再結晶プロセスを受け、ガラス相および結晶相の両方を遊離させ、および前記再結晶プロセスの前記ガラス相は、前記ガラスフリット組成物の当初軟化点よりも低い軟化点を有するガラスを含む。
【0016】
本発明は、さらに、p型領域およびn型領域、ならびにp−n接合を有するシリコン基板を用いて太陽電池を形成する方法を指向し、該方法は、前記基板の裏面をスクリーン印刷する工程と、前述の組成物をスクリーン印刷する工程と、500〜990℃の温度において印刷された表面を焼成する工程とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の厚膜組成物の主構成要素は、アルミニウム含有粉末、ガラスフリットおよび有機媒質である。1つの実施形態において、組成物中のガラスフリットは無鉛ガラス組成物である。本発明の組成物は、先行技術と比較して優れた電気的性能を可能にする。同様に、該組成物は先行技術の系よりも小さい反りを提供する。
【0018】
(アルミニウム含有粉末)
本発明の金属性粉末は、アルミニウム含有粉末である。1つの実施形態において、アルミニウム含有粉末は、噴霧されたアルミニウムを含む。噴霧アルミニウムは、空気雰囲気または不活性雰囲気のいずれの中で噴霧されてもよい。噴霧アルミニウム粉末の平均粒度分布は、3〜50ミクロンの範囲内である。アルミニウム含有粉末の平均粒度分布は3〜20ミクロンの範囲内である。
【0019】
本発明のアルミニウム含有粉末は、銀含有粉末のような他の金属性粉末をさらに伴ってもよい。
【0020】
(無機結合剤−ガラスフリット)
本明細書に前述されるアルミニウム含有粉末は、有機媒質中に微細に分散され、および1種または複数種の無機結合剤をさらに伴う。具体的には、本発明において有用な無機結合剤は、ガラスフリットである。本発明は、少なくとも1つのガラスフリット組成物を含まなければならず、ここで、焼成時に前記ガラスフリット組成物は再結晶または相分離を受け、そして当初軟化点よりも低い軟化点を有する分離された相を伴うフリットを遊離する。そのようにして、そのようなガラスフリットを含む厚膜組成物は、加工の際により低い反り特性を与える。典型的には、ガラスフリット組成物の当初軟化点は、325℃〜600℃の範囲内である。
【0021】
1つの実施形態において、本発明のガラスフリットは、焼成時に再結晶または相分離を受けて、当初軟化点よりも低い軟化点を有する分離された相を伴うフリットを遊離する無鉛ガラスフリットである。1つまたは複数のフリットの混合物も可能である。
【0022】
アルミニウム組成物における無機結合剤の機能は、主として、焼成プロセス中に溶融アルミニウムがシリコンに到達する効率を高めるための手段を提供することである。この機能に加えて、結合剤は、いくらかのさらなる凝集性および基板に対する接着特性を提供する。この場合における無機結合剤の必要性は、ウェーハ加工に由来する残存物としてシリカまたはケイ酸ガラスの層を有するシリコン基板において最も重要である。無機結合剤は、完成された電池におけるアルミニウム層の反りに影響を及ぼす。また、結合剤は、シリコン中へのアルミニウムの合金化深さを増大させ、したがって、共晶的に成長するシリコン層中のアルミニウムドーパント濃度を向上すなわち増大させることができる。
【0023】
本発明のガラスフリットの化学的性質は重要である。ガラスフリットは、環境に関する法律または潜在的に環境に影響を与える重金属を排除するという社会的要望のような他の考慮すべき事項を脅かすことなしにアルミニウム厚膜ペーストの電気的性能を高めること対してそれらが有する有効性に基づいて選択される。
【0024】
無機結合剤としてのガラスフリットの含有量は、得られる電池の電気的性能に影響を及ぼすという点において重要である。含有量はガラスまたは無機含有量によって決定される。含有量は、ガラスフリットの化学的性質に依存して、全厚膜組成物を基準として0.01質量%と5質量%との間であり、電気的性能および反りのために好ましい範囲は、0.01質量%と2質量%との範囲内である。
【0025】
組成物において有用であるガラス結合剤は、当該技術において知られている。いくつかの例は、ボロシリケートガラス類およびアルミノシリケートガラス類を含む。例は、B2O3、SiO2、Al2O3、CdO、CaO、BaO、ZnO、SiO2、Na2O、Li2O、PbOおよびZrOのような酸化物の組み合わせをさらに含み、それら酸化物を独立的または組み合わせて用いてガラス結合剤を形成してもよい。厚膜組成物において有用な典型的な金属酸化物は知られており、たとえばZnO、MgO、CoO、NiO、FeO、MnOおよびそれらの混合物であることができる。反り特性に影響するガラス結合剤は組成物において特異的である。
【0026】
好ましく用いられる慣用のガラスフリットは、鉛ボロシリケートフリット、ビスマス、カドミウム、バリウム、カルシウムまたは他のアルカリ土類金属ボロシリケートフリットのような、ボロシリケートフリットである。そのようなガラスフリットの調製はよく知られており、および、たとえば、構成成分の酸化物の形態にあるガラスの構成成分を一緒にして溶融させる工程と、そのような溶融組成物を水中に注いでフリットを形成する工程とからなる。もちろん、バッチ原料は、フリット製造の通常の条件下で所望される酸化物を与える任意の化合物であってもよい。たとえば、酸化ホウ素はホウ酸から得られ、二酸化ケイ素はヒウチ石から得られ、酸化バリウムは炭酸バリウムなどから生成させることができる。
【0027】
好ましくは、ガラスを、水または不活性、低粘度、低沸点の有機液体を用いるボールミル中で粉砕して、フリットの粒度を低減させ、かつ実質的に均一な大きさのフリットを得る。次に水または前記有機液体中で沈降させ微細粉を分離させ、そして微細粉を含有する上澄み液を除去する。同様に、他の分級方法を用いてもよい。
【0028】
ガラスは、慣用のガラス作成技術、所望される比率において所望される成分を混合し、該混合物を加熱して溶融物を形成することによって調製される。当該技術においてよく知られているように、加熱は、溶融物が完全に液体になり、かつ均一になるような、ピーク温度および時間にわたって実施される。所望されるガラス転移温度は325℃〜600℃の範囲内である。
【0029】
無機結合剤粒子の少なくとも85%が0.1〜10μmであることが好ましい。この理由は、より大きな表面積を有するより小さい粒子は、有機材料を吸着し、それによってクリーンな分解を妨げる傾向があることである。一方、より大きな粒子は、より劣悪な焼結特性を有する傾向がある。総ペースト含有物に対する無機結合剤の質量比が0.1から−2.0の範囲内であること、およびより好ましくは0.2〜1.25の範囲内であることが好ましい。
【0030】
(有機媒質)
無機成分は、典型的には機械的混合によって有機媒質と混合されて、印刷するのに好適な稠度およびレオロジーを有する「ペースト」と呼ばれる粘稠組成物を形成する。有機媒質として広範な不活性粘稠材料を用いることができる。有機媒質は、その中に無機成分が妥当な程度の安定性を有して分散可能であるものでなければならない。媒質のレオロジー的特性は、組成物の良好な付着特性(固形分の安定な分散、スクリーン印刷のために好適な粘度およびチクソトロピー、基板およびペースト固形分に対する好適な濡れ性、良好な乾燥速度および良好な焼成特性を含む)を与えるようなものでなければならない。本発明の厚膜組成物中に用いられる有機ビヒクルは、好ましくは非水性不活性液体である。種々の有機ビヒクルの任意のものを使用することができ、それらは増粘剤、安定剤および/または他の一般的添加剤を含有してもしなくてもよい。有機媒質は、典型的には溶媒中のポリマーの溶液である。さらに、界面活性剤のような少量の添加剤が有機媒質の一部であってもよい。この目的のために最も頻繁に用いられるポリマーはエチルセルロースである。ポリマーの他の例は、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、エチルセルロースとフェノール樹脂との混合物、低級アルコールのポリメタクリレート類を含み、および同様に、エチレングリコールモノアセテートのモノブチルエーテルを用いることができる。厚膜組成物中に見いだされ、最も広く用いられる溶媒は、エステルアルコール類、およびα−テルピネオールまたはβ−テルピネオールのようなテルペン類、またはそれらとケロシン、ジブチルフタレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ヘキシレングリコールおよび高沸点アルコール類のような他の溶媒との混合物、ならびにアルコールエステル類である。加えて、基板への付着後の迅速な硬化を促進するための揮発性液体を、ビヒクル中に含むことができる。これらおよび他の溶媒の種々の組み合わせを配合して、所望される粘度および揮発性の必要条件を得る。
【0031】
有機媒質中に存在するポリマーは、総組成物の0質量%〜11質量%の範囲内である。有機ポリマー含有媒質を用いて、本発明の厚膜組成物を予め決定されたスクリーン印刷可能な粘度に調整してもよい。
【0032】
分散物中の無機成分に対する厚膜組成物中の有機媒質の比率は、ペーストを付着する方法、および用いられる有機媒質の種類に依存し、およびそれは変化することができる。良好な濡れ性を得るために、通常、分散物は、40〜95質量%の無機成分と、5〜60質量%の有機媒質(ビヒクル)を含有する。
【0033】
特許請求の範囲の範囲内で、280℃と900℃との間で発熱性化学反応を提供するポリマー類または有機種または無機種の添加が、これらの種がドープされたシリコン系の半導体特性に対する毒とみなされないシステムの総体的性能に関して有益であることが見いだされる。
【0034】
本発明の導電性ペーストは、典型的には、伝統的ロールミリングと等価である分散技術であるパワー混合により慣用的に製造される。同様にロールミリングまたは他の混合技術を用いることができる。本発明の導電性ペーストは、好ましくは、スクリーン印刷によって太陽電池の裏面の所望される部分の上に塗布される。そのような方法による塗布の際に、規定された範囲内の粘度を有することが望ましい。シリコーンパッド印刷のような他の付着方法を用いることができる。本発明の導電性ペーストの粘度は、Brookfield HBT粘度計および#14スピンドルを用い、ユーティリティカップにより10rpmのスピンドル速度および25℃において測定される際に、好ましくは20〜200PaSである。
【0035】
銀/アルミニウム膜または銀膜は、共焼成と呼ばれるプロセスにおいて、本発明のアルミニウムペーストと同時に共焼成することができる。次に、本発明の導電性ペースト(アルミニウム導電性ペースト)を用いて太陽電池を調製する例を、図面(図2)を参照して説明する。
【0036】
最初に、Si基板102を準備する。Si基板(通常、表面に接近したp−n接合を有する)の受光側の面(表面)に、電極(たとえば、主としてAgから構成される電極)104を取り付ける(図2A)。基板の裏面上に、AgまたはAg/Al導電性ペースト(たとえば、PV202またはPV502またはPV583またはPV581(本件特許出願人から商業的に入手可能である)であるが、太陽電池に用いられる限り特に制限はされない)を塗布して、他の電池の組との並列電気構成における相互接続を可能にするバスバーまたはタブを形成する。基板の裏面上に、太陽電池の裏面(またはp型接点)電極106として用いられる本発明の新規アルミニウムペーストを、前述の導電性AgまたはAg/Alペーストとのわずかな重なり合いを可能にするパターンを用いるスクリーン印刷によって塗布し、次いで乾燥する(図2B)。それぞれのペーストの乾燥温度は、20分間にわたる静止型乾燥器における150℃以下、あるいは、3分間にわたり200℃より高い温度を用いるバンド乾燥器における7分間(DEK乾燥器モデル1209の設定:ランプ設定9および速度3)である。また、アルミニウムペーストは好ましくは15〜60μmの乾燥膜厚を有し、および本発明の銀/アルミニウム導電性ペーストの膜厚は好ましくは15〜30μmである。また、アルミニウムペーストと銀/アルミニウム導電性ペーストの重なり合った部分は、好ましくは0.5〜2.5mmである。
【0037】
次に、得られた基板を、たとえば3秒間〜15分間にわたって700〜1000℃の温度において焼成して、所望される太陽電池を得る(図2D)。本発明の組成物が焼成されて有機媒質が除去され、そしてガラスフリットが焼結して、前記組成物から電極が形成される。
【0038】
図2Dに示すような、本発明の導電性組成物を用いて得られる太陽電池は、基板(たとえばSi基板)の受光面(表面)上に電極104を有し、裏面上に主としてAlから構成されるAl電極110と主としてAgおよびAlから構成される銀/アルミニウム電極112とを有する。
【0039】
本発明を、実際の実施例を提供することによりさらに詳細に議論する。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実際の実施例によって何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0040】
本明細書に記載される実施例は、窒化ケイ素反射防止コーティングを有し、かつ表側の面のn型接点厚膜銀ペーストを用いる慣用の電池設計であるウェーハ上の前記実施例のペーストを焼成することに基づく。ペーストの性能は、電気的特性に関して定義され、およびさらに焼成後の反り(室温における焼成された電池のたわみ、および平坦な電池を達成するためにウェーハ中心が移動する距離として定義される)に関して定義される。
【0041】
(1) ガラスフリットを有するアルミニウムペースト
ここでは、ガラスフリットとアルミニウム粉末の混合物を記載する。アルミニウム粉末に対する相対的なガラス含有量および粒度は、電気的特性およびより薄い電池の反りの程度に影響を及ぼす。
【0042】
この例において、4種のガラス組成物を記載し、それらのうち3種は鉛ボロシリケート組成物であり、1種が鉛不含有ガラスである。それらの系は、AおよびBが軟化および凍結するガラス系であるのに対し、CおよびDは軟化するが、冷却中に結晶化し、ガラスCは350℃未満の温度まで液体のままである点において異なる。ガラスAは先行技術のガラス組成物を表わし、ガラスB、CおよびDは新規厚膜組成物中に含まれるガラスを表わす。
【0043】
【表1】
【0044】
これらのガラスを、アルミニウムペーストに関する当該技術の方法によるようにして、アルミニウム粉末を含有するSilberline(UK)製の製品L20261中に混合した。フリットA、B、CおよびDの添加量(質量)は、74質量%のアルミニウム粉末に基づいて0.25%から2.5%の間で変化し、次の工程が印刷および焼成である点まで予備加工された多結晶シリコン125mm平方の厚さ270ミクロンのウェーハ上に印刷された。それらウェーハを、Centrotherm4ゾーン炉中で焼成することによって電池へと変換した。ここで、Centrotherm4ゾーン炉は、ゾーン1=450℃、ゾーン2=520℃、ゾーン3=575℃および925℃または950℃に設定される最終ゾーンとして規定されるゾーン温度を使用し、2500mm/分のベルト速度を使用した。電気的性能および反りの測定を実施し、効率の測定を第2表および第3表に示し、およびフィルファクター(FF)を第4表および第5表に示し、反りを第6表に示した。
【0045】
Youngら(PVSEC会議(New Orleans))によって報告された研究によれば、質量がこの値未満である場合に電気的性能が極度に低下する点が存在するという、電気的性能と質量堆積量(または厚さ)との間の関係があることに注目すべきであり、この理由によって、飽和値とも呼ばれるこれよりも大きな厚さでペーストが印刷される層の厚さを第7表にて報告する。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
記載した例は、アルミニウム粉末に対するガラスフリットA、B、CおよびDの添加が、単独で、より良好な電気的性能を提供することを示す。その性能は、フリットの含有量、化学的性質および焼成温度の関数である。
【0053】
バイメタル板モデルに基づけば、ベース基板からの膨張温度係数の差が大きい材料がより大きな反りを有することが予測され、および高い凝固点を有する材料もまたより大きな反りに寄与するであろうことが予測される。バイメタル板モデルは、系に対するフリットの添加が増大する場合に反りがより大きくなることを予言する。バイメタル板の曲がりの式は、
【0054】
【数1】
【0055】
(式中、δは曲がり(m)であり、taは上部層の厚さ(m)であり、tbは底部層の厚さ(m)であり、Tfは凝固温度(℃)であり、Tは測定温度(℃)であり、αaは上部成分のTCE(10-6K-1)であり、αbは底部成分のTCE(10-6K-11)であり、Eaは上部成分の弾性率(Pa)であり、Ebは底部成分の弾性率(Pa)であり、およびdはより小さい成分の幅(m)である)で与えられる。
【0056】
【表8】
【0057】
このように、記載された実施例において、
− 反りの程度は、バイメタル板の予測に基づくラインに一致して、フリットの増加につれて概して増大する。
− 反りの程度は、シリコン(2.4ppm/K)に比較して大きなαを有するガラスとともに増加すると予測される。ガラスCおよびDは、反りがより少ないので、バイメタルモデルから予測される挙動に従わない。
− ガラスの軟化点が上昇する際に、反りの程度は減少する。ガラスCおよびDは、より低い軟化点の系よりも反りが少ないので、バイメタルモデルから予測されるこの挙動に従わない。
− 0.5%添加未満の反りの程度は、ガラスの全く無い系よりも少ない可能性があり、これはこれらの実施例に記載されるフリットの化学的性質ではなく添加の特性である。
− ガラスフリットCおよびDは、冷却中に、ガラス内の結晶性析出物へと再結晶(相分離)し、該析出物は、系に当初加えられた系よりも低い軟化点または凝固点の相によって取り囲まれることが知られている。図4は、軟化点(℃単位)の関数としての反りを表わす。
− 独特には、ここに記載した結晶化する系の反りの程度は、ガラスDに関して示されるようにフリット含量が増大するにつれてより少なくなることができる。ガラスDの場合、図5に示す膨張測定曲線に示されるように、概略的に室温から150℃の間においてαが負である。系が慣用のフリットよりも小さい反りを促進する能力は、この系が225ミクロン未満の厚さを有するシリコン電池において非常に小さい反りを与えることを可能にし、それゆえに製造業者が後焼成ハンドリング中にそれらを用いることを可能にし、およびモジュール製造業者に取り扱いの困難さに起因して破壊される傾向の低下を与えることを可能にする。図6は、同定されたガラスフリットのそれぞれを有する270ミクロンウェーハ(125×125mm)における反り性能を例示する。
【0058】
(太陽電池の製造)
本発明は、フォトダイオードおよび太陽電池のような受光素子において特に有効であるが、広い範囲の半導体装置に適用することができる。以下の議論は、本発明の組成物を用いて、どのように太陽電池を形成するかを記載する。当業者は、本発明において種々の太陽電池形成の実施形態が有用であることを理解する。
【0059】
得られるアルミニウム導電性ペーストを用いて、太陽電池を以下の順序において形成した。
【0060】
(1) 表面上の銀電極(たとえば、本件特許出願人から商業的に入手可能なPV147 Ag組成物)を有するSi基板の裏面に、印刷および乾燥させる。典型的な乾燥厚さは、15〜25ミクロンの範囲内である。次いで、AgまたはAg/Alペースト(たとえば、PV202は、本件特許出願人から商業的に入手可能なAg/Al組成物である)を印刷し、5〜6mm幅のバスバーとして乾燥させる。次いで、太陽電池の裏面電極用のアルミニウムペースト(本発明の新規組成物を表わす)を30〜60μmの乾燥膜厚にてスクリーン印刷して、両縁部で1mmにわたるAg/Alバスバーとアルミニウム膜との重なりを提供し、電気的連続性を保証した。焼成の前に、アルミニウムペーストを乾燥させた。
【0061】
(2) 次いで、850〜965℃のピーク温度設定を有する炉内で、炉の寸法および温度設定に依存して3〜10分間にわたって、乾燥させたウェーハを焼成した。焼成の後に太陽電池が形成された。
【0062】
(試験手順−効率)
前述の方法に従って組み立てられた太陽電池を、効率を測定するための商用IV試験器(IEET Ltd.)内に配置した。IV試験器のランプは、既知の強度を有し、電池の表面に照射される日光を模倣し、電池の表に印刷されたバスバーをIV試験器の多極プローブに接続し、そして効率を計算するために電気信号をプローブを通してコンピュータに送信した。
【0063】
標準的な表面接点ペーストPV147 Ag導電体(本件特許出願人から商業的に入手可能である)を用いて、太陽電池を調製した。
【0064】
厚膜ペーストを付着し焼成する点まで加工され、PV電池製造業者から供給されたウェーハ上に、サンプルを印刷した。次いで加工されたウェーハについて、電気的性能を測定した。結果はAl粉末に添加される際のフリットA,B,CおよびDの使用が、フリット未使用系に比較して、電気的性能を改善したことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1A】半導体装置の作成を例示するプロセス流れ図である。
【図1B】半導体装置の作成を例示するプロセス流れ図である。
【図1C】半導体装置の作成を例示するプロセス流れ図である。
【図1D】半導体装置の作成を例示するプロセス流れ図である。
【図1E】半導体装置の作成を例示するプロセス流れ図である。
【図1F】半導体装置の作成を例示するプロセス流れ図である。
【図2A】本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池を製造する製造方法を説明する図である。
【図2B】本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池を製造する製造方法を説明する図である。
【図2C】本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池を製造する製造方法を説明する図である。
【図2D】本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池を製造する製造方法を説明する図である。
【図2E】本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池を製造する製造方法を説明する図である。
【図2F】本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池を製造する製造方法を説明する図である。
【図3】α(ppm/K)の関数としての反りを示すグラフである。
【図4】軟化点の関数としての反りを示すグラフである。
【図5】ガラスDの膨張特性の膨張計による評価を示すグラフである。
【図6】270ミクロンウェーハにおけるガラスフリットのパーセントの関数としての反りを示すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
10 p型シリコン基板
20 n型拡散層
30 窒化ケイ素膜、酸化チタン膜または酸化ケイ素膜
40 p+層(裏面電界、BSF)
60 裏面に形成されたアルミニウムペースト
61 アルミニウム裏面電極(裏面のアルミニウムペーストを焼成することによって得られる)
70 裏面に形成された銀または銀/アルミニウムペースト
71 銀または銀/アルミニウム裏面電極(裏面銀ペーストを焼成することによって得られる)
102 シリコン基板
104 受光面側電極
106 第1電極用ペースト組成物
108 第2電極用導電性ペースト
110 第1電極
112 第2電極
500 表面に形成された銀ペースト
501 銀表面電極(表面銀ペーストの焼成により形成される)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) アルミニウム含有粉末と;
(b) 少なくとも1つのガラスフリット組成物と;
(c) 有機媒質と
を含み、成分(a)および(b)が成分(c)中に分散され、前記ガラスフリット組成物は焼成時に再結晶プロセスを受けてガラス相および結晶相の両方を遊離させ、前記再結晶プロセスの前記ガラス相は、前記ガラスフリット組成物の当初軟化点よりも低い軟化点を有するガラスを含むことを特徴とする厚膜導電体組成物。
【請求項2】
前記当初軟化点が325℃〜600℃の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ガラスフリット総含有量は、全厚膜組成物を基準として0.01質量%〜5質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Ag含有粉末をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ガラスフリット組成物は、無鉛ガラスフリット組成物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機媒質は、ポリマー結合剤および揮発性有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
焼成の際に、前記組成物が280℃から900℃の間で発熱的化学反応を与えることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
p型領域およびn型領域、ならびにp−n接合を有するシリコン基板を用いて太陽電池を形成する方法であって、前記基板の裏面をスクリーン印刷する工程と、請求項1に記載の組成物をスクリーン印刷する工程と、印刷された基板を500〜990℃の温度において焼成する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物を用いることを特徴とする電極。
【請求項10】
請求項4に記載の方法によって形成されることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項11】
請求項1に記載の厚膜組成物を用いることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項12】
請求項4に記載の組成物を用いることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項13】
20℃〜200℃の温度範囲またはその一部において負の膨張温度係数を示すガラスフリット組成物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の厚膜導電体組成物。
【請求項1】
(a) アルミニウム含有粉末と;
(b) 少なくとも1つのガラスフリット組成物と;
(c) 有機媒質と
を含み、成分(a)および(b)が成分(c)中に分散され、前記ガラスフリット組成物は焼成時に再結晶プロセスを受けてガラス相および結晶相の両方を遊離させ、前記再結晶プロセスの前記ガラス相は、前記ガラスフリット組成物の当初軟化点よりも低い軟化点を有するガラスを含むことを特徴とする厚膜導電体組成物。
【請求項2】
前記当初軟化点が325℃〜600℃の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ガラスフリット総含有量は、全厚膜組成物を基準として0.01質量%〜5質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Ag含有粉末をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ガラスフリット組成物は、無鉛ガラスフリット組成物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機媒質は、ポリマー結合剤および揮発性有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
焼成の際に、前記組成物が280℃から900℃の間で発熱的化学反応を与えることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
p型領域およびn型領域、ならびにp−n接合を有するシリコン基板を用いて太陽電池を形成する方法であって、前記基板の裏面をスクリーン印刷する工程と、請求項1に記載の組成物をスクリーン印刷する工程と、印刷された基板を500〜990℃の温度において焼成する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物を用いることを特徴とする電極。
【請求項10】
請求項4に記載の方法によって形成されることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項11】
請求項1に記載の厚膜組成物を用いることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項12】
請求項4に記載の組成物を用いることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項13】
20℃〜200℃の温度範囲またはその一部において負の膨張温度係数を示すガラスフリット組成物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の厚膜導電体組成物。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2007−59380(P2007−59380A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−158906(P2006−158906)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158906(P2006−158906)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
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