説明

アンダーフィル用液状封止樹脂組成物、それを用いた半導体装置、及びその製造方法

【課題】
無機充填材が高度に分散し、均一な線膨張係数と弾性率を実現することで樹脂中のストレスが非局在化し、クラックや反りの応力等が発生しにくいアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤(C)第一のカップリング剤、および、(D)第二のカップリング剤が表層に化学修飾された無機充填材、を混合してなるアンダーフィル用液状封止樹脂組成物であって、第一のカップリング剤と第二のカップリング剤の一方が酸性基を、他方が塩基性基を有することを特徴とするアンダーフィル用液状封止樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーフィル用液状封止樹脂組成物、それを用いた半導体装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材を含むアンダーフィル用液状封止樹脂組成物において、無機充填材の表面をシランカップリング剤で化学修飾して酸性処理または塩基性処理を施し、無機充填材の分散性を向上させたり、密着力を向上させたりすることがなされてきた(特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2001−024005
【特許文献2】特開2002−226673
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、フラックス成分を樹脂組成物に添加した場合に、表面処理無機充填材を用いても充填材同士が凝集し、線膨張係数や弾性率が非均一化するという点で課題を残していた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、樹脂中のストレスを緩和し、クラックや反りが低減されるところにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決する本発明は、以下のとおりである。
[1](A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤(C)第一のカップリング剤、および、(D)第二のカップリング剤が表層に化学修飾された無機充填材、を配合してなるアンダーフィル用液状封止樹脂組成物であって、第一のカップリング剤及び第二のカップリング剤の一方が酸性基を、他方が塩基性基を有することを特徴とするアンダーフィル用液状封止樹脂組成物。
[2]更に(E)第三のカップリング剤を配合してなり、当該(E)第三のカップリング剤がエポキシシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤のいずれかを含むものである[1]記載のアンダーフィル用液状封止樹脂組成物。
[3]前記第一のカップリング剤が、アルコキシシラン基および硫黄原子を含む官能基を一分子中に含む化合物であり、かつ、前記第二のカップリング剤が、塩基性基を有するカップリング剤である[1]または[2]記載のアンダーフィル用液状封止樹脂組成物。
[4]前記第一のカップリング剤が、アルコキシシラン基および窒素原子を含む官能基を一分子中に含む化合物であり、かつ、前記第二のカップリング剤が、酸性基を有するカップリング剤である[1]または[2]記載のアンダーフィル用液状封止樹脂組成物。
[5]基板と、当該基板上に配置されたチップ、及びこの二つの間隙を充填するアンダーフィルを備え、当該アンダーフィルが[1]乃至[4]のいずれかに記載のアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を硬化させてなる半導体装置。
[6]基板と、当該基板上に配置されたチップ、及びこの二つの間隙を充填するアンダーフィルを備える半導体装置の製造方法であって、(I)基板とチップの間隙に[1]乃至[4]のいずれかに記載のアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を充填する工程、(II)充填されたアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を硬化させてアンダーフィルとする工程を含む半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、無機充填材が適度に分散することで樹脂中のストレスが緩和され、クラックや反りが低減されたアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)第一のカップリング剤、および、(D)第二のカップリング剤が表層に化学修飾された無機充填材を混合してなるアンダーフィル用液状封止樹脂組成物であって、第一のカップリング剤と第二のカップリング剤の一方が酸性基を、他方が塩基性基を有することを特徴とするアンダーフィル用液状封止樹脂組成物に関するものである。なお下記は例示であり、本発明は何ら下記に限定されるものではない。以下に本発明のアンダーフィル用液状封止樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0007】
本発明で用いる(A)エポキシ樹脂とは一分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に分子量や構造は限定されるものではない。例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンのような芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイド等の脂環式エポキシ等の脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
この場合、芳香族環にグリシジルエーテル構造あるいはグリシジルアミン構造が結合した構造を含むものが耐熱性、機械特性、耐湿性という観点から好ましく、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂は信頼性、特に接着性という観点から使用する量を制限するほうが好ましい。これらは単独でも2種以上混合して使用しても良い。本発明ではアンダーフィル用液状封止樹脂組成物の態様のため、エポキシ樹脂として最終的に常温(25℃)で液状であることがこのましいが、常温で固体のエポキシ樹脂であっても常温で液状のエポキシ樹脂に溶解させ、結果的に液状の状態であればよい。
【0008】
本発明で用いる(B)硬化剤とは、エポキシ樹脂中のエポキシ基と共有結合を形成することが可能な官能基を1分子中に2個以上含むもの、ただし官能基が酸無水物基である場合には酸無水物官能基を1個以上含むものであれば特に分子量や構造は限定されるものではない。官能基の具体例としてはフェノール性水酸基、酸無水物、1級アミン、2級アミンなどがある。
【0009】
フェノール性水酸基を2個以上含む硬化剤の例としてはフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂、トリフェノールプロパン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、ビスフェノール化合物等が挙げられる。
【0010】
酸無水物官能基を1個以上含む硬化剤の例としては、テトラヒドロ酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸2無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、ドデセニル無水コハク酸などがある。
【0011】
1級アミンまたは2級アミンを2個以上含む硬化剤の例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−P−アミノベンゾエート、下記式で示されるものなどの芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0012】
【化1】

R:水素基またはアルキル基
X:水素基またはアルキル基
【0013】
上記の硬化剤は、単独で用いても、同じ官能基を含む2種以上の硬化剤を配合して用いても良く、さらにポットライフやエポキシ樹脂との硬化性を損なわない範囲であれば、異なる官能基を含む硬化剤を2種以上配合して用いてもよい。半導体装置の封止用途を考慮すると、耐熱性、電気的機械的特性という観点からフェノール樹脂及び芳香族ポリアミン型硬化剤が好ましい。更に密着性、耐湿性を兼ね備えるという観点からは芳香族ポリアミン型硬化剤が好ましい。さらに本発明の様態がアンダーフィル用液状封止樹脂組成物であることを踏まえると、室温(25℃)で液状を呈するものが好ましく、そのような芳香族ポリアミン硬化剤の具体例としては、特開平10−158365に開示してある硬化剤(式1において、n=0〜2、X=C、R=H)、特開2004−35668、137970に開示している硬化剤 (式1において、n=平均0.3、X=H、R=CH)等が入手可能である。
【0014】
本発明で用いる(B)硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂のエポキシ当量に対して硬化剤の活性水素当量で0.6〜1.4の範囲であり、より好ましくは0.7〜1.3の範囲である。ここで硬化剤の活性水素当量が0.6未満または1.4を超える場合には反応性や組成物の耐熱性が著しく損なわれるため好ましくない。ただし、硬化剤に含まれる官能基が酸無水物基の場合は、1個の酸無水物官能基から2個のカルボン酸官能基が誘導されることから、酸無水物官能基1個につき2個の活性水素が含まれるものとして計算する。
【0015】
本発明で用いる(C)第一のカップリング剤とは、インテグラルブレンド方式またはマスターバッチ方式で樹脂組成物に配合されるカップリング剤で、その化学構造としては一分子中にアルコキシ基が結合した金属原子と官能基が結合した炭化水素部を含む化学構造を有するものである。金属原子は結合しているアルコキシ基が水と反応してアルコール基が生成するならば特に限定されるものでは無いが、アンダーフィル用液状封止樹脂組成物の充填特性という観点からは珪素、アルミ、チタン、ジルコニアが好ましく、さらに好ましくは珪素およびチタンが樹脂組成物と半導体装置との間に良好な接着性を付与する。
ここでインテグラルブレンド方式とは、樹脂組成物を製造する過程で無機充填材と有機材料とを混合する際に同時にカップリング剤を配合、分散、混合する添加方法であり、マスターバッチ方式とは(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤および、または無機充填材以外の他の有機添加剤に事前にカップリング剤を分散・溶解させたのち樹脂組成物へ配合される添加方法である。
【0016】
酸性基とは、活性水素を含む官能基をいい、具体的にはチオール基や、熱分解してチオール基を発生させる官能基が挙げられる。熱分解してチオール基を発生させる官能基の具体例としてはジスルフィドやテトラスルフィド構造などが挙げられる。酸性基を有するカップリング剤の具体例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、およびこれらのチタネートカップリング剤などがある。これらは単独でも2種以上混合して使用しても良い。
【0017】
塩基性基とは、1個ないしは2個の活性水素が結合した窒素原子を有する官能基、または反応熱分解により前記の官能基を発生するような官能基である。前者の塩基性基にはアミノ基やN-フェニルアミノ基が、後者の塩基性基には、1級アミノ基をケトンまたはアルデヒドを反応させて保護したケチミン基が挙げられる。塩基性基を有するカップリング剤の具体例としては、N−アミノエチル化アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N−アミノエチル化アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル-γ-アミノブチルトリメトキシシラン、N−フェニル-γ-アミノブチルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)プロピルアミン、N−(ベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)プロピルアミン、およびこれらのチタネートカップリング剤などが挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用しても良い。
【0018】
本発明で用いる(C)第一のカップリング剤の添加量は全レジン量に対して0.03〜5.0重量%であり、より好ましくは0.1〜3.0重量%である。ここで全レジン量とは、樹脂組成物のうち無機充填材を除いたすべての成分の総重量を意味する。第一のカップリング剤の添加量が0.03重量%を超えると無機充填材の分散性が向上し、半導体装置のシリコンチップへの密着がより向上するため好ましく、5.0重量%を超えない場合には樹脂硬化時にカップリング剤から発生するアルコールによる気泡を抑制することができ好ましい。
【0019】
本発明では(D)第二のカップリング剤が表層に化学修飾された無機充填材を用いる。ここで第二のカップリング剤とは、樹脂組成物を製造する過程で、無機充填材の表層に(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤および、(C)第一のカップリング剤よりも先んじて、化学修飾されるカップリング剤を指し、その化学構造は一分子中にアルコキシ基が結合した金属原子と官能基が結合した炭化水素部を含む化学構造を有するものであればよい。金属原子は結合しているアルコキシ基が加水分解して水酸基を生成するならば特に限定されるものでは無いが、アンダーフィル用液状封止樹脂組成物の充填特性という観点からは珪素、アルミ、チタン、ジルコニアが好ましく、さらに好ましくは珪素が無機充填材表面と良好な化学結合を形成し樹脂組成物の機械特性の向上させることができる。
【0020】
無機充填材には、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、合成シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物等を挙げることができる。これらの無機充填材は、単独でも混合して使用しても良い。これらの中でも樹脂組成物の耐熱性、耐湿性、強度等を向上できることから溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ粉末が好ましい。
【0021】
前記無機充填材の形状は、特に限定されないが、充填特性の観点から形状は球状であることが好ましい。この場合、無機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.1〜20ミクロンであり、特に好ましくは0.2〜8ミクロンである。平均粒子径が0.1ミクロンを超える場合は樹脂組成物の粘度が低下するため充填性が向上し、20ミクロンを超えない場合は組成物が半導体装置の隙間へ充填する際に樹脂詰まりが生じにくいので好ましい。
【0022】
化学修飾の方法としては、無機充填材の表面に均一に処理できれば特に限定は無く、そのような方法としては例えば次の方法がある。カップリング剤の原液またはトルエン・アセトン・アルコールなどで希釈した溶液を、無機充填材粒子へ噴霧しながら混合攪拌させる乾式法、カップリング剤の溶液中に無機充填材を浸漬、スラリー化したのちに溶剤を除去する湿式法、密閉容器中でカップリング剤を減圧もしくは沸点以上に加熱することにより気化せしめ、カップリング剤気化雰囲気中で無機充填材粒子を混合・攪拌する気化法があり、第二・第三の方法が無機充填材表面に均一な化学修飾が可能である点でより好ましい。
【0023】
化学修飾の状態としては、無機充填材の表層に存在する水酸基と第二のカップリング剤とが、(1)脱水もしくは脱アルコールして縮合反応し共有結合が形成される場合、(2)水素結合によって化学吸着する場合、(3)物理吸着する場合という3通りの修飾状態を取り得るが、そのいずれの場合でも、またこれらの状態が混在しても問題は無く、樹脂組成物の機械的強度の観点からは共有結合による化学修飾を含むことが好ましい。
【0024】
第二のカップリング剤の無機充填材表面への添加量は無機充填材の量に対して0.03〜5重量%であり、より好ましくは0.1〜1.0重量%である。添加量が0.1重量%に満たない場合は樹脂組成物中の無機充填材の分散性改善度が低く、5重量%以上では無機充填材の粒子間架橋し、粒子凝集を引き起こすため好ましくない。
【0025】
また、無機充填材の分散性の損なわれない範囲で、(D)第二のカップリング剤が表層に化学修飾された無機充填材以外に、表層に化学修飾を施していない通常の無機充填材を一部用いても良い。この場合、表層に化学修飾を施していない無機充填材は、全無機充填材の50重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。全樹脂組成物中の無機充填材の含有量は30〜75重量%であり、より好ましくは40〜68重量%である。含有量が30重量%に満たない場合は樹脂組成物の熱膨張係数が大きいために半導体装置の信頼性を低下させるために好ましくなく、75重量%を超える場合には半導体装置の隙間充填の際に詰まりが発生するため好ましくない。
【0026】
本発明においては、第一のカップリング剤と第二のカップリング剤の酸性基、塩基性基が水素結合や酸-塩基反応のような化学的結合もしくは化学的相互作用を形成していることが好ましい。このような場合には、無機充填材がより多くのカップリング剤で表面を覆われることになり、樹脂中での分散性が向上するからである。
第一のカップリング剤が、第二のカップリング剤を介して無機充填材に結合している上記の場合の他、第一のカップリング剤が直接無機充填材に結合している場合もあり得る。この場合であっても本発明の分散性、流動性向上という目的を達成することができる。
【0027】
本発明に用いる(E)第三のカップリング剤とは、エポキシシランカップリング剤、アクリルカップリング剤のいずれかを含むものである。エポキシシランカップリング剤とは一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子とエポキシ基が結合した炭化水素部を含む化学構造を有するものである。具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどがある。アクリルシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子とアクリレート基が結合した炭化水素部を含む化学構造を有するものである。具体的には3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等がある。
【0028】
(E)第三のカップリング剤の添加量は全レジン量に対して0.5〜5.5重量%であり、より好ましくは1.5〜4.5重量%である。ここで全レジン量とは、樹脂組成物のうち無機充填材を除いたすべての成分の全重量を意味する。第三のカップリング剤の添加量が0.5重量%に満たない場合には半導体装置の基板表面への密着が低下し、5.5重量%を超える場合には樹脂硬化時に第三のカップリング剤から発生するアルコールによる気泡が生じるために好ましくない。
【0029】
本発明のアンダーフィル用液状封止樹脂組成物は、必要に応じて可とう性付与材を加えてもよい。この場合、可とう性付与剤は22℃以上で液状ないしはゴム状態を呈する熱可塑性樹脂であり、より好ましくはポリブタジエン骨格を有するものである。これらは樹脂組成中で海-島構造を形成し樹脂組成物の可とう性および破壊靭性を向上させる。具体的には、アクリロニトリル-ポリブタジエンゴムやその変性物、エポキシ変性したポリブタジエンゴムなどがある。本発明の樹脂組成物は、更に必要に応じてカーボンブラックなどの着色料、アンチモンや臭素化エポキシ樹脂のような難燃剤、レベリング剤、濡れ性向上剤や消泡剤などのような界面活性剤、その他の添加剤を配合しても良い。
【0030】
本発明によれば、無機充填材が高度に分散し、均一な線膨張係数と弾性率を実現することで樹脂中のストレスが非局在化し、クラックや反りの応力等が発生しにくいアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を提供することができる。また流動性に優れたアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を提供することができる。流動性に優れることで充填時に気泡が発生せず、生産性が向上するという利点を有する。
【0031】
本発明の半導体装置は、フラックスを使用するものであれば特に限定はされない。具体的にはフリップチップ型半導体装置が挙げられる。フリップチップ半導体装置とは、チップと基板とをはんだバンプを介して電気接続されたものである。はんだバンプには錫、鉛、銀、銅、ビスマスなどからなる合金で構成されることが多く、電気接続の方法としては、フリップチップボンダーなどを用いて基板上の金属パッドとチップ上の金属バンプの位置合わせを行なったあと、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて金属バンプを融点以上に加熱し、基板上の金属パッドと金属バンプとが溶融接合によりなされる。このとき、あらかじめ基板上の金属パッド部には半田ペーストや比較的融点の低い金属の層を形成しておいても良い。この電気接合工程に先んじて、金属製バンプおよび、または基板の金属パッド部の表層にフラックスが塗布される。この接合工程以外にも、チップ上に金属製バンプを形成する際にフラックスが使用される場合もある。フラックスは溶融接合の妨げとなる金属表面の酸化膜を除去し、金属同士の溶融濡れを向上する機能を有するものであればよい。電機接続のなされた半導体装置はチップと基板の平行な隙間に金属バンプが柱状に存在するような形態となり、この隙間に本発明の樹脂組成物による充填・封止がなされる。
【0032】
本発明の樹脂組成物の製法としては、エポキシ樹脂、硬化剤、第一のカップリング剤、第三のカップリング剤、(D)第二のカップリング剤が表層に化学修飾された無機充填材、その他添加剤を同時または別々に配合し、分散、混合、混練、養生してよい。より好ましくは、第1のカップリング剤と第二のカップリング剤が表層に化学修飾された無機充填材とを分散・混合させた後、5℃から30℃の温度で12〜96時間養生させることが好ましい。分散、混合、混練の方法としては、特に限定されるものではないが、プラネタリーミキサー、ボールミル、三本ロール、二本ロール、真空混合機、または他の混練装置のいずれを使用しても、あるいは前記の装置を組み合わせて使用しても良いが、最後に樹脂組成物中に含まれた気泡を取り除くために真空脱泡処理を行なう。
【0033】
本発明の半導体装置の間隙への充填・封止の方法としては、半導体装置および樹脂組成物を加熱しながら、チップの一端に樹脂組成物を塗布し、毛細管現象により隙間へ行き渡らせるのが常法であるが、生産サイクルを短縮させる目的から、半導体装置を傾斜させる、圧力差を利用して注入を加速させるなどの方法を併用しても良い。充填された樹脂は100℃〜170℃の温度範囲で1〜12時間加熱を行なうことにより硬化する。ここで温度プロファイルはたとえば、100℃1時間加熱した後にひきつづき150℃2時間加熱するような段階的に温度を変化させながら加熱硬化を行なっても良い。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
エポキシ樹脂(A)としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体的な化合物については表1の注釈に記載した。以下同様。)を50重量部、3官能グリシジルアミンを50重量部、カップリング剤(C)としてメルカプトシランカップリング剤(酸性)を0.5重量部、エポキシシランカップリング剤を5.7重量部、処理シリカ(D)として球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を306.8重量部添加剤として低応力剤6.5重量部、希釈剤2重量部、顔料0.5重量部をプラネタリーミキサーと3本ロールをもちいて混合し、25℃24時間養生後に硬化剤(B)として芳香族1級アミン硬化剤50重量部を配合し、プラネタリーミキサーと3本ロールをもちいて混合し、真空脱泡処理することによりアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を作製した。
【0035】
粘度測定の方法は、ブルックフィールド型粘度計にCP−51型コーンを装着し25℃で5rpmの条件で測定を実施した。実施例1で得られた樹脂組成物の粘度測定結果は、22Pa・sであった。組成物の粘度は半導体装置への定量供給安定性、半導体装置への塗布供給性ならびに隙間への流動特性を考慮すると35Pa.sec以下であることが好ましい。
【0036】
流動時間測定の方法には18mmx18mmの上ガラスと上ガラスよりも充分大きなスライドガラスを隙間が80umとなるようにスペーサー入り接着剤を用いて貼り合わせて平行平板を製作し、これを110℃熱板上に置いて予備加熱し、上ガラスの一辺に樹脂組成物を塗布し、樹脂組成物が充填完了するまでの時間を計測した。実施例1で得られた樹脂組成物の流動時間測定結果は、90secであった。流動時間が短いほど、半導体装置の生産サイクルが短縮することができ、上記の試験法で100秒以下であることが好ましい。
【0037】
実施例1で得られた樹脂組成物を半導体装置に充填・封止し、フィラーの分散状態評価ならびに信頼性試験を実施した。試験・評価に使用した半導体装置の構成部材は以下のとおりである。チップとしては日立超LSI社製PHASE−2TEGウエハーで、回路保護膜にポリイミドが、半田バンプにはSn/Ag/Cu組成の無鉛半田が形成された仕様のものを15mm×15mmx0.8mmtに切断し使用した。基板には、日立化成製FR5相当の0.8mmtのガラスエポキシ基板をベースとし、両面に太陽インキ社製ソルダーレジストPSR4000/AUS308を形成し、片面に上記の半田バンプ配列に相当する金メッキパッドを配したものを50mm×50mmの大きさに切断し使用した。接続用のフラックスにはTSF−6502(Kester製、ロジン系フラックス)を使用した。半導体装置の組み立ては、まず充分平滑な金属またはガラス板にドクターブレードを用いてフラックスを50ミクロン厚程度に均一塗布し、次にフリップチップボンダーを用いてフラックス膜にチップの回路面を軽く接触させたのちに離し、半田バンプにフラックスを転写させ、次にチップを基板上に圧着させる。IRリフロー炉で加熱処理し半田バンプを溶融接合して作製した。樹脂組成物の充填・封止方法は、作製した半導体装置を110℃の熱板上で加熱し、チップの一辺に調製した樹脂組成物を塗布し隙間充填させた後、150℃のオーブンで120分間樹脂を加熱硬化し、評価試験用の半導体装置を得た。
【0038】
フィラー分離現象の測定方法としては作成した半導体装置のチップ面に対して垂直に切断、研摩して電子顕微鏡(SEM)を用いて半導体装置内での樹脂組成物中のフィラーの分散状態を観察評価した。実施例1で得られた樹脂組成物を用いて作製した半導体装置においては、樹脂組成物中でフィラーが均一に存在し、良好な分散状態であった。得られた断面写真を図1に示す。
【0039】
吸湿リフロー試験の試験方法としては作製した半導体装置をJEDECレベル3の吸湿処理(30℃相対湿度60%で168時間処理)を行った後、IRリフロー処理(ピーク温度260℃)を3回行い、超音波探傷装置にて半導体装置内部での樹脂組成物の剥離の有無を確認した。実施例1で得られた樹脂組成物を用いて作製した半導体装置においては、剥離は見られず、良好な信頼性を示した。
【0040】
温度サイクル試験としては、上記の吸湿リフロー試験を行なった半導体装置を(−55℃/30分)と(125℃/30分)の冷熱サイクル処理を施し、250サイクル毎に超音波探傷装置にて半導体装置内部のチップと樹脂組成物界面の剥離の有無を確認した。実施例1で得られた樹脂組成物を用いて作製した半導体装置においては、剥離は見られず、良好な信頼性を示した。以上の結果を表1に詳細にまとめた。
【0041】
(実施例2)
エポキシ樹脂(A)としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を50重量部、及び3官能グリシジルアミンを50重量部を用いる代わりに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を100重量部を用い、硬化剤(B)として芳香族1級アミン硬化剤を50重量部を用いる代わりに、芳香族1級アミン硬化剤を39重量部用い、無機充填材含有量を実施例1と同一にするために球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を286.4重量部にした以外は実施例1と同様に実験を行い、樹脂組成物を得た。詳細な配合、樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表1にまとめた。
【0042】
(実施例3)
硬化剤(B)として芳香族1級アミン硬化剤を50重量部を用いる代わりに、芳香族1級アミン硬化剤を33重量部と芳香族2級アミン硬化剤33重量部を用いて、無機充填材含有量を実施例1と同一にするために球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を336.5重量部にした以外は実施例1と同様に実験を行い、樹脂組成物を得た。詳細な配合、樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表1にまとめた。
【0043】
(実施例4)
カップリング剤(C)として、メルカプトシランカップリング剤(酸性)を0.5重量部用いる代わりに、2級アミノシランカップリング剤(塩基性)0.5重量部を用い、処理シリカ(D)として、球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を306.8重量部用いる代わりに、球状合成シリカ(酸性シランカップリング剤処理品)を306.8重量部用用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、樹脂組成物を得た。詳細な配合、樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表1にまとめた。
【0044】
(実施例5)
エポキシ樹脂(A)としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を50重量部、及び3官能グリシジルアミンを50重量部を用いる代わりに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を100重量部を用い、硬化剤(B)として1級アミン硬化剤を50重量部を用いる代わりに、39重量部を用い、カップリング剤(C)として、メルカプトシランカップリング剤(酸性)を0.5重量部用いる代わりに、2級アミノシランカップリング剤(塩基性)0.5重量部を用い、
処理シリカ(D)として、球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を306.8重量部用いる代わりに、無機充填材含有量を実施例1と同一にするために球状合成シリカ(酸性シランカップリング剤処理品)を286.4重量部用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、樹脂組成物を得た。詳細な配合、樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表1にまとめた。
【0045】
(実施例6)
硬化剤(B)として芳香族1級アミン硬化剤を50重量部を用いる代わりに、芳香族1級アミン硬化剤を33重量部と芳香族2級アミン型硬化剤33重量部を用い、カップリング剤(C)として、メルカプトシランカップリング剤(酸性)を0.5重量部用いる代わりに、2級アミノシランカップリング剤(塩基性)0.5重量部を用い、処理シリカ(D)として、球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を306.8重量部用いる代わりに、無機充填材含有量を実施例1と同一にするために球状合成シリカ(酸性シランカップリング剤処理品)を336.5重量部用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、樹脂組成物を得た。詳細な配合、樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表1にまとめた。
【0046】
(実施例7)
実施例1と同様にしてアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を作成した。樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表2にまとめた。
【0047】
(実施例8)
エポキシシランカップリング剤5.7重量部を添加せず、添加剤として希釈剤を2重量部を用いる代わりに希釈剤を6重量部として、処理シリカ(D)として、球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を306.8重量部用いる代わりに、無機充填材含有量を実施例7と同一にするために球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を303.6重量部用いた以外は実施例1と同様にしてアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を作成した。樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表2にまとめた。
【0048】
(比較例1)
処理シリカ(D)として、球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を306.8重量部用いる代わりに、球状合成シリカを306.8重量部用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、樹脂組成物を得た。詳細な配合、樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表1にまとめた。半導体装置の断面写真については図2に示した。
【0049】
(比較例2)
カップリング剤(C)として、メルカプトシランカップリング剤(酸性)を0.5重量部用いる代わりに、2級アミノシランカップリング剤(塩基性)0.5重量部を用い、処理シリカ(D)として、球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を306.8重量部用いる代わりに、球状合成シリカを306.8重量部用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、樹脂組成物を得た。詳細な配合、樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表1にまとめた。
【0050】
(比較例3)
処理シリカ(D)として、球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を306.8重量部用いる代わりに、球状合成シリカ(酸性シランカップリング剤処理品)を306.8重量部用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、樹脂組成物を得た。詳細な配合、樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表1にまとめた。
【0051】
(比較例4)
カップリング剤(C)として、メルカプトシランカップリング剤(酸性)を0.5重量部用いる代わりに、2級アミノシランカップリング剤(塩基性)0.5重量部を用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、樹脂組成物を得た。詳細な配合、樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表1にまとめた。
【0052】
(比較例5)
カップリング剤(C)として、メルカプトシランカップリング剤(酸性)を0.5重量部を添加せず、球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を306.8重量部用いる代わりに、無機充填材含有量を実施例7と同一にするために球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を305.9重量部用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、樹脂組成物を得た。詳細な配合、樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表1にまとめた。
【0053】
(比較例6)
メルカプトシランカップリング剤0.5重量部及びエポキシシランカップリング剤5.7重量部を添加せず、添加剤として希釈剤を2重量部を用いる代わりに希釈剤を6重量部として、処理シリカ(D)として、球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を306.8重量部用いる代わりに、無機充填材含有量を実施例7と同一にするために球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を302.7重量部用いた以外は実施例1と同様にしてアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を作成した。樹脂組成物及び半導体装置の評価結果を表2にまとめた。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表1中の語句の説明を以下に行う。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂:EXA−830LVP(大日本インキ化学工業(株)製、エポキシ当量161)
3官能グリシジルアミン:4−(2,3−エポキシプロポキシ)−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−2−メチルアニリン(住友化学工業(株)製スミエポキシ ELM−100、エポキシ当量108)
芳香族1級アミン硬化剤:3,3’―ジエチル−4,4’―ジアミノジフェニルメタン(日本化薬(株)カヤハードAA、アミン当量65.3)
芳香族1級アミン硬化剤:芳香族1級アミン型硬化剤T−12(三洋化成工業(株)、アミン当量116)
メルカプトシランカップリング剤(酸性)3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業化学(株)KBM−803、分子量196.4、理論被覆面積398m/g)
2級アミノシランカップリング剤(塩基性):N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業化学(株)KBM−573、分子量255.4、理論被覆面積307m/g)
1級アミノシランカップリング剤(塩基性):3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業化学(株)KBM−903、分子量179.3、理論被覆面積436m/g)(実際には実施例・比較例で不使用)
エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業化学(株)KBM−403、分子量236.3、理論被覆面積330m/g)
球状合成シリカ:アドマテクス(株)製合成球状シリカSE−6200(平均粒径2.5μm)、SO−E3(平均粒径1μm)、SO−E2(平均粒径0.5μm)を各々45:40:15の重量比率でブレンドしたもの
球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品):球状合成シリカに、0.3重量%の2級アミノシランカップリング剤を噴霧して処理したもの
低応力剤:エポキシ変性ポリブタジエン(日本石油化学(株)製、E−1800−6.5、数平均分子量1800、エポキシ当量250)
希釈剤:エチレングリコール モノ−ノルマル-ブチルエーテルアセテート(東京化成工業株式会社製試薬)
顔料:カーボンブラック顔料(三菱化学製、MA−600)
【0057】
表1において、酸性カップリング剤と塩基性処理シリカを組み合わせた実施例1〜3では、エポキシ樹脂(A)や硬化剤(B)の配合を変えても高い流動性をしめし、フィラー分離現象は見られなかった。実施例1の断面写真である図1をみてもアンダーフィル(本発明の樹脂組成物)が均一に充填されていることが分かる。また塩基性カップリング剤と酸性処理シリカを組み合わせた実施例4〜6でも同様の結果であった。
次に酸性カップリング剤と無処理シリカの組合せ(比較例1)、塩基性カップリング剤と無処理シリカの組合せ(比較例2)の場合には、僅かに粘度が上昇し、流動時間が長く、フィラーの分離現象が見られた。比較例1の断面写真である図2を見るとアンダーフィル上部にフィラーが沈降して樹脂だけになった部分6が黒く観測できる。
酸性カップリング剤と酸性処理シリカの組合せ(比較例3)、塩基性カップリング剤と塩基性処理シリカの組合せ(実施例4)では、充填不良のために流動時間測定ができず、半導体装置によるフィラー分離現象の観測および信頼性試験評価を実施することができなかった。
カップリング剤として、酸性、塩基性カップリング剤の両方とも使用しない比較例5では、フィラー分離現象はみられなかったものの、吸湿リフロー試験において微小な剥離が観測され、温度サイクル試験後にはさらに剥離の進展が観測された。このような剥離は半導体装置の動作信頼性を低下させるため問題となる。
【0058】
表2において、メルカプトシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、球状合成シリカ(塩基性シランカップリング剤処理品)を組み合わせた実施例7では、高い流動性をしめし、フィラー分離現象は見られなかった。さらに半導体装置を吸湿リフロー試験、温度サイクル試験(1000サイクル)後においても剥離は見られず、良好な信頼性を示した。また、実施例7の樹脂組成物と基板との密着性試験では、破壊モードが基板層の内部破壊であり、樹脂組成物と基板との界面密着性が良好であった。なお、接着強度−有機基板として以下の手順で行なった。FR5相当ガラスエポキシ製基板上にソルダーレジスト(太陽インキ社製PSR−4000/AUS308)を形成した表面に樹脂組成物を塗布し、この樹脂組成物上にポリイミド(住友ベークライト製CRC−6061)を形成した2mm×2mm角のシリコンチップをPI面が樹脂組成物に接触するようにマウントし、150℃、120分で硬化し、試験片を作製する。試験片を260℃熱板に設置・加熱しながら、自動マウント測定装置(DAGE社製BT4000)を用いてダイシェア強度試験を行い、試験後の破壊部位を目視で確認した。
【0059】
エポキシシランカップリング剤を添加しなかった実施例8では、比較的良好な流動性をしめし、フィラー分離現象は見られなかった。また、実施例8の樹脂組成物の密着性試験での破壊モードが、基板表層−樹脂組成物界面の剥離が観測されることから、実施例7と比較して基板表層との密着性が低かった。実施例8を充填・封止した半導体装置は吸湿リフロー試験、温度サイクル試験(1000サイクル)後においても剥離は見られず、良好な信頼性を示した。
メルカプトシランカップリング剤とエポキシシランカップリング剤を添加しなかった比較例6では、流動性が低く、フィラー分離現象が観測された。また、比較例6の樹脂組成物の密着性試験後の破壊モードは、PI表層−樹脂組成物界面の剥離が観測されPI表面との密着性が低かった。比較例6を充填・封止した半導体装置では、吸湿リフロー試験においては剥離は観測されなかったが、温度サイクル試験(600サイクル)後にはさらに剥離が観測された。このような剥離は半導体装置の動作信頼性を低下させるため問題となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、クラックや反りの応力等が発生しにくいアンダーフィル用液状封止樹脂組成物、それを用いた半導体装置、及びその組み立て方法に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は実施例1の半導体装置の断面写真を示す。
【図2】図2は比較例1の半導体装置の断面写真を示す。
【符号の説明】
【0062】
1 半田バンプ(錫95%/銀5%)
2 シリコンチップ
3 アンダーフィル
4 金パッド
5 ソルダーレジスト
6 フィラーの分離、沈降によって出来た樹脂が多くシリカが少ない部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、
(C)第一のカップリング剤、および、
(D)第二のカップリング剤が表層に化学修飾された無機充填材、
を配合してなるアンダーフィル用液状封止樹脂組成物であって、
第一のカップリング剤及び第二のカップリング剤の一方が酸性基を、他方が塩基性基を有することを特徴とするアンダーフィル用液状封止樹脂組成物。
【請求項2】
更に(E)第三のカップリング剤を配合してなり、当該(E)第三のカップリング剤がエポキシシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤のいずれかを含むものである請求項1記載のアンダーフィル用液状封止樹脂組成物。
【請求項3】
前記第一のカップリング剤が、アルコキシシラン基および硫黄原子を含む官能基を一分子中に含む化合物であり、かつ、
前記第二のカップリング剤が、塩基性基を有するカップリング剤である請求項1または2記載のアンダーフィル用液状封止樹脂組成物。
【請求項4】
前記第一のカップリング剤が、アルコキシシラン基および窒素原子を含む官能基を一分子中に含む化合物であり、かつ、
前記第二のカップリング剤が、酸性基を有するカップリング剤である請求項1または2記載のアンダーフィル用液状封止樹脂組成物。
【請求項5】
基板と、当該基板上に配置されたチップ、及びこの二つの間隙を充填するアンダーフィルを備え、
当該アンダーフィルが請求項1乃至4のいずれかに記載のアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を硬化させてなる半導体装置。
【請求項6】
基板と、当該基板上に配置されたチップ、及びこの二つの間隙を充填するアンダーフィルを備える半導体装置の製造方法であって、
(I)基板とチップの間隙に請求項1乃至4のいずれかに記載のアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を充填する工程、
(II)充填されたアンダーフィル用液状封止樹脂組成物を硬化させてアンダーフィルとする工程、
を含む半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−193595(P2006−193595A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5747(P2005−5747)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】