説明

アンテナスイッチ回路及び通信端末

【課題】許容電力と挿入損出との特性を両立させるとともに、アンテナスイッチ回路の小型化を可能とし、且つスイッチング状態の更なる安定化を図ることができるようにする。
【解決手段】本発明によるアンテナスイッチ回路は、送信ポートとアンテナポートとの間に直列に接続された直列トランジスタ回路と、前記送信ポートと前記アンテナポートとの間に並列に接続された並列トランジスタ回路と、前記送信ポートと前記並列トランジスタ回路との間に設けられ、インピーダンス変換を行うことによって、前記送信ポートから入力された送信信号の電圧振幅を所定の変換比率で縮小するインピーダンス変換回路とを備え、前記インピーダンス変換回路は、前記並列トランジスタ回路に出力される端子間電圧が当該並列トランジスタ回路の閾値以下となるように前記所定の変換比率が設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナの接続先を送信ポート又は受信ポートに切り換えるアンテナスイッチ回路に関する。また、本発明は、アンテナスイッチ回路を搭載した通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機では、近年、WCDMAとGSMとの2つのシステムを搭載したデュアルモード(DualMode)の方式のものが主流となりつつある。この場合、GSMのシステムを用いる場合には、高出力であるため、アンテナスイッチ回路において、許容電力と挿入損出特性との2つの特性を両立させることが重要になってきている。
【0003】
また、アンテナスイッチ回路に関連する技術が、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、アンテナ端子、受信端子及び送信端子とスイッチ回路との間にそれぞれインピーダンス変換回路を設けた信号切換えスイッチが記載されている。そして、スイッチ回路からインピーダンス変換回路をみたときにインピーダンスが、アンテナ端子、受信端子及び送信端子からインピーダンス変換回路をみたときのインピーダンスよりも小さくなるようにすることによって、スイッチ回路内部を伝搬する信号電力の電圧波の振幅を小さくしている。そのように構成することによって、大電力の信号を入力した場合においても、ある程度スイッチング状態を安定に保ち、最大伝送可能電力を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−93471号公報(段落0037−0038、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンテナスイッチ回路において、一般に、次のような課題がある。例えば、GSM900を用いる場合、出力が最大約+35dBmとなり、50Ω負荷では約±17.8Vの電圧振幅となる。この大きな電圧振幅に耐え得るために、アンテナスイッチ回路においてFETを多段接続することが行われている。そのため、アンテナスイッチ回路を小型化することができない。なお、一般に、アンテナスイッチ回路で発生する非線形歪はオフしているFETの容量が原因となっており、オフ容量を低減させることでFETの線形性を確保できると知られている。
【0006】
また、例えば、アンテナスイッチ回路において良好な特性を得るために、アンテナスイッチ回路に昇圧回路を搭載することが行われている。このことからも、アンテナスイッチ回路を小型化することができない。
【0007】
図7は、アンテナスイッチ回路のSPDT(Single Pole Double Throw)の概要を示す説明図である。アンテナスイッチ回路では、高出力システムに対応するために、図7に示すように、FET91,92を多段接続することが行われている。そのように、1個あたりのFETにかかるドレインソース間電圧を分圧することによって、ゲートソース電圧を分圧し、最大許容電力を向上させている。
【0008】
しかしながら、FETを多段接続すると、通過ロスを生じたり、オフ容量やチップ面積の増加を招いてしまう。また、更に多段接続しても、通信システムの電源電圧では、電圧振幅を並列FET91の閾値以下に抑えることができない場合があり、最大許容電力が制限されてしまう。
【0009】
上記のような最大許容電力の制限等の不都合を改善するために、図7に示すように、アンテナスイッチ回路において、別途昇圧回路93を用いて論理回路94の出力を増幅することが行われている。そのように構成することによって、通信システムの電源電圧よりもFETに印加されるゲート電位の方を大きくすることができ、ゲートソース間電圧を大きく保つことできる。従って、高出力の電圧振幅においても、並列FET91の閾値以下で動作することを可能とし、並列FET91がオフ状態となり且つ直列FET92がオン状態となる状態を確実に保つようにしている。
【0010】
しかしながら、昇圧回路93を設けるようにすると、アンテナスイッチ回路内に大規模なチップ面積を必要とするので、微細化が困難となり、コスト増加に影響を与える。また、昇圧回路は発振回路を内蔵しているので、不要なスプリアスを発生し、通信システムの受信特性に影響を与えてしまう。さらに、昇圧回路93分の消費電流が生じ、消費電流の増加を招いてしまう。
【0011】
特許文献1に記載された関連技術を用いれば、インピーダンス変換回路を設けることによって、大電力の信号を入力した場合におけるスイッチング状態の安定化や最大伝送可能電力の向上をある程度確保することができる。しかし、特許文献1には、高出力の電圧振幅においても信号切換えスイッチにおける並列FETの閾値以下で動作可能とするように構成することは開示されておらず、必ずしもスイッチング状態を安定化できるとはかぎらない。
【0012】
そこで、本発明は、許容電力と挿入損出との特性を両立させるとともに、アンテナスイッチ回路の小型化を可能とし、且つスイッチング状態の更なる安定化を図ることができるアンテナスイッチ回路及び通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるアンテナスイッチ回路は、送信ポートとアンテナポートとの間に直列に接続された直列トランジスタ回路と、送信ポートとアンテナポートとの間に並列に接続された並列トランジスタ回路と、送信ポートと並列トランジスタ回路との間に設けられ、インピーダンス変換を行うことによって、送信ポートから入力された送信信号の電圧振幅を所定の変換比率で縮小するインピーダンス変換回路とを備え、インピーダンス変換回路は、並列トランジスタ回路に出力される端子間電圧が当該並列トランジスタ回路の閾値以下となるように所定の変換比率が設定されていることを特徴とする。
【0014】
本発明による通信端末は、アンテナの接続先を送信ポート又は受信ポートに切り換えるアンテナスイッチ回路を備え、アンテナスイッチ回路は、送信ポートとアンテナポートとの間に直列に接続された直列トランジスタ回路と、送信ポートとアンテナポートとの間に並列に接続された並列トランジスタ回路と、送信ポートと並列トランジスタ回路との間に設けられ、インピーダンス変換を行うことによって、送信ポートから入力された送信信号の電圧振幅を所定の変換比率で縮小するインピーダンス変換回路とを含み、インピーダンス変換回路は、並列トランジスタ回路に出力される端子間電圧が当該並列トランジスタ回路の閾値以下となるように所定の変換比率が設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、許容電力と挿入損出との特性を両立させるとともに、アンテナスイッチ回路の小型化を可能とし、且つスイッチング状態の更なる安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるSPDTアンテナスイッチ回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示すSPDTアンテナスイッチ回路が搭載するインピーダンス変換回路の動作原理を説明するための説明図である。
【図3】並列FETに入力されるゲートソース間電圧VGS2を説明するための説明図である。
【図4】直列FET1のゲートソース間電圧VGS1を説明するための説明図である。
【図5】第2の実施形態におけるSPDTアンテナスイッチ回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】SPDTアンテナスイッチ回路の最小の構成例を示すブロック図である。
【図7】アンテナスイッチ回路のSPDTの概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態1.
以下、本発明の第1の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明によるSPDTアンテナスイッチ回路の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態において、SPDTアンテナスイッチ回路は、例えば、アンテナポート(ANTポート)の接続先を送信ポート(Txポート)側又は受信ポート(Rxポート)側に切り換えるために用いられる。なお、本実施形態では、1つのアンテナポートと2つの送受信ポートとの接続を切り替えるSPDT型のアンテナスイッチ回路の場合を説明するが、本発明は、SPDT型以外のアンテナスイッチ回路にも適用可能である。例えば、本発明は、複数のアンテナポートや3以上の送受信ポートを備えたシステムにおいて、アンテナポートと送受信ポートとの間の接続を切り替えるnPnT型のアンテナスイッチ回路にも適用可能である。
【0018】
本実施の形態では、SPDTアンテナスイッチ回路は、例えば、WCDMAやGSM等のシステムを搭載した携帯電話機等の携帯端末に適用されるものとする。なお、SPDTアンテナスイッチ回路は、携帯電話機にかぎらず、例えば、WLAN通信端末や、Bluetooth等の通信手段を用いた携帯端末通信装置等の通信端末に適用されてもよい。
【0019】
図1に示すように、SPDTアンテナスイッチ回路において、Txポート側にはインピーダンス変換回路3が接続されている。インピーダンス変換回路3は、コンデンサ等の回路素子を含み、Txポート側からSPDTアンテナスイッチ回路側に直流電流を直接流さないように構成されている。また、インピーダンス変換回路3は、隣接して配置される電界効果トランジスタ(FET)1,2がバイアス可能に構成されている。なお、本実施形態では、SPDTアンテナスイッチ回路内において、Txポート及びRxポートとANTポートとの間にそれぞれ並列接続されたFET1,11を並列FETという。また、Txポート及びRxポートとANTポートとの間にそれぞれ直列接続されたFET2,10を直列FETという。
【0020】
また、インピーダンス変換回路3には、並列FET1のソース電極及び直列FET2のソース電極が接続されている。インピーダンス変換回路3は、Txポートと並列FET1との間に設けられ、インピーダンス変換を行うことによって、Txポートから入力された送信信号の電圧振幅を所定の変換比率で縮小する機能を備える。なお、本実施形態では、インピーダンス変換回路3は、並列FET1に出力されるゲートソース間電圧が並列FET1の閾値以下となるように変換比率が設定されている。
【0021】
また、それらのFET1,2のソース電極及びドレイン電極には、バイアス抵抗を介して同電位の電圧がバイアスされており、直流的に安定している。また、並列FET1のドレイン電極は、コンデンサを介して高周波的に接地されている。
【0022】
また、並列FET1及び直列FET2のゲート電極には、それぞれ、論理回路5から発生する制御電圧VCT1及びVCT2が、ゲート抵抗を介して印加される。また、並列FET1及び直列FET2のゲートとソースとの間には、それぞれ、ゲートソース電圧VGS1及びVGS2が印加される。また、並列FET1に印加される制御電圧VCT1は、Rxポート側に接続される直列FET10のゲート電極にも印加される。また、直列FET2に印加される制御電圧VCT2は、Rxポート側に接続される並列FET11にも印加される。そして、そのような接続状態及び制御電圧の印加状態によって、各々のFETの動作状態の同期がとれているものとする。
【0023】
さらに、直列FET2のドレイン電極とアンテナポート(ANTポート)との間には、インピーダンス変換回路4が配置され、携帯端末が搭載するWCDMAやGSM等のシステムの負荷インピーダンス12とインピーダンス整合される。すなわち、本実施形態では、インピーダンス変換回路3によって電圧振幅が縮小された送信信号が並列FET1及び直列FET2に入力されるのであるから、直列FET2からの出力側に、元の電圧振幅レベルに戻すためのインピーダンス変換回路4が必要となる。
【0024】
また、Rxポート側についても、同様に、直列FET10及び並列FET11のソース電極が、それぞれRxポートに接続されている。また、それらのFET10,11のソース電極及びドレイン電極には、バイアス抵抗を介して同電位の電圧がバイアスされており、直流的に安定している。また、並列FET11のドレイン電極は、コンデンサを介して高周波的に接地されている。さらに、直列FET10のドレイン電極は、アンテナポート(ANTポート)に接続されている。
【0025】
以上に説明したように、SPDTアンテナスイッチ回路は構成される。なお、本実施形態で示した構成にかぎらず、例えば、FETはゲート電極に対して対称構造であるので、図1に示すSPDTアンテナスイッチ回路において、ソース電極とドレイン電極とを逆に配置して構成するようにしてもよい。
【0026】
また、SPDTアンテナスイッチ回路において、FETとして、N型(Nch)のFETを用いてもよく、P型(Pch)のFETを用いてもよい。また、本実施形態では、各FET1,2,10,11を単体で構成する場合を示したが、各FET1,2,10,11を複数のFETを用いて多段に接続した構造としてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、インピーダンス変換回路3,4として、コンデンサ等の回路素子を用いて構成される回路を用いる場合を示したが、SPDTアンテナスイッチ回路が搭載するインピーダンス変換回路は、本実施形態で示したものにかぎられない。例えば、SPDTアンテナスイッチ回路は、バラン(平衡・不平衡変換器)や、トランス、インダクタンスLとキャパシタンスCとで構成されるLC整合回路、マイクロストリップ線路を用いて構成されたインピーダンス変換回路3,4を搭載していてもよい。
【0028】
次に、動作について説明する。図2は、図1に示すSPDTアンテナスイッチ回路が搭載するインピーダンス変換回路3の動作原理を説明するための説明図である。図2に示すように、インピーダンス変換回路3には、例えば、WCDMAやGSM等のシステムから高出力の送信信号が入力される。図2に示す例では、インピーダンス変換回路3は、例えば、電圧振幅をn:1に変換するトランスを用いて構成されている。そして、インピーダンス変換回路3は、入力した高出力の送信信号をインピーダンス変換し、電圧振幅を1/nに変換した信号を出力する。
【0029】
理想な状態を仮定し変換ロスを0とすると、変換後の送信信号の電流振幅はn倍となり、電力が変動しないように保存される。インピーダンス変換回路3によって電圧振幅が1/nに変換された送信信号は、図1に示す直列FET2及び並列FET1のソース電極に入力される。
【0030】
本実施形態では、インピーダンス変換回路3として、適切な変換比率nを有する回路を用いるものとし、図3に示すように、並列FET1に入力されるゲートソース間電圧VGS1を常にFETの閾値以下に抑えることが可能であるとする。そのため、並列FET1のオフ状態を確実に保つことができる。従って、並列FET1がオン状態にならないので、送信信号がグランド(GND)に漏れることのない伝送モードを保つことができ、挿入損出を改善することができる。
【0031】
また、本実施形態では、並列FET1のゲートソース間電圧を大きく(すなわち、ゲートとソースとの間の電位差を大きく)することができる。従って、ゲート直下におけるチャネルが完全に空乏化されることにより、確実なオフ容量の低減を図ることができる。また、高出力の送信信号が入力された場合であっても、オフ容量が電圧によって変動することを抑制することができる。すなわち、オフ容量の線形性を高めることができる。よって、オフ容量の低減により容量損失を低減することができ、オフ容量の線形性が向上することによりIMD(Inter Modulation Distortion )や高調波歪の発生を抑制することができる。
【0032】
逆に、図4に示すように、直列FET2のゲートソース間電圧VGS2については、常にFETの閾値以上となるように印加することが可能となり、直列FET2のオン状態を確実に保つことができる。従って、直列FET2がオフ状態にならないので、ドレインソース間のオン抵抗が電圧によって変動することを抑制することができ、送信信号入力時における挿入損出を改善することがでえきる。
【0033】
以上に説明したように、本実施形態によれば、SPDTアンテナスイッチ回路において、Txポート側のFET1,2の入出力の両側にインピーダンス変換回路3を備える。そのように構成することによって、高出力の送信信号が入力された場合であっても、FET1,2に入力される信号の電圧振幅が変換されるので、FETの閾値電圧以下で安定に動作させることができる。さらに、インピーダンス変換回路4を設けることによって、WCDMAやGMS等のシステムのインピーダンスに戻すことができ、通常の電圧振幅の送信信号を得ることができる。そのため、携帯端末等が搭載する通信システムのアンテナスイッチ回路において、高出力な通信システムを用いる場合であっても、昇圧回路を不要とすることができ、FETで発生する非線形歪を抑え、低挿入損出を確保することができる。
【0034】
すなわち、本実施形態によれば、SPDTアンテナスイッチ回路において、昇圧回路を必要とすることなく構成できるので、チップ面積を抑えることができ、小型化且つ低コスト化を実現することができる。また、昇圧回路を必要としていないので、不要なスプリアスを抑えることができるとともに、消費電流を抑えることができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、FETを必要以上に多段接続することなく構成できるので、挿入損出を抑えることができる。また、FETを必要以上に多段接続することなく構成できるので、チップ面積を抑えることができ、小型化且つ低コスト化を実現することができる。
【0036】
従って、許容電力と挿入損出との特性を両立させるとともに、SPDTアンテナスイッチ回路の小型化を可能とし、且つスイッチング状態の更なる安定化を図ることができる。
【0037】
実施形態2.
次に、本発明の第2の実施形態を図面を参照して説明する。図5は、第2の実施形態におけるSPDTアンテナスイッチ回路の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態では、図5に示すように、SPDTアンテナスイッチ回路の基本的構成は第1の実施形態と同様であるが、インピーダンス変換回路を電力増幅器(以下、パワーアンプという。)と複合化して構成している。なお、図5に示す例では、インピーダンス変換回路がコンデンサを用いて実現されている場合が示されている。
【0038】
本実施形態では、SPDTアンテナスイッチ回路には、パワーアンプが搭載されている。一般に、パワーアンプを用いる場合、パワーアンプ本体部分と出力整合を行うための出力整合回路とがセットで用いられることが多い。本実施形態では、図5に示すように、SPDTアンテナスイッチ回路において、出力整合回路42を除いたパワーアンプ41部分のみがTxポート側に接続されている。
【0039】
出力制御回路42を除いたパワーアンプ41部分のみの場合、パワーアンプ41の出力インピーダンスは、本来、電力を取り出すために低い値となっている。そのため、パワーアンプ41が出力する信号の出力電圧振幅も最大で電源電圧の約2倍程度である。従って、本実施形態では、アンテナスイッチ回路のFET1,2に印加するゲートソース間電圧をパワーアンプ41が出力する信号の出力振幅に合わせるようにし、且つFET1,2通過後の直列FET2の出力側にパワーアンプ41の整合回路42を配置している。そのように構成することによって、SPDTアンテナスイッチ回路において、パワーアンプ41の出力整合回路42を代用することによって、第1の実施形態で示したインピーダンス変換回路4を設ける必要をなくすことができ、パワーアンプを用いた場合のSPDTアンテナスイッチ回路のコストを低減させることができる。
【0040】
以上に説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態で示した効果に加えて、パワーアンプ41の出力整合回路42を代用することによって、インピーダンス変換回路4を設ける必要をなくすことができ、パワーアンプを用いた場合のSPDTアンテナスイッチ回路のコストを低減させることができる。
【0041】
次に、本発明によるSPDTアンテナスイッチ回路の最小構成について説明する。図6は、SPDTアンテナスイッチ回路の最小の構成例を示すブロック図である。図6に示すように、SPDTアンテナスイッチ回路は、最小の構成要素として、直列FET2と、並列FET1と、インピーダンス変換回路3とを含む。
【0042】
SPDTアンテナスイッチ回路において、直列FET2は、TxポートとANTポートとの間に直列に接続される。また、並列FET1は、TxポートとANTポートとの間に並列に接続される。また、インピーダンス変換回路3は、Txポートと並列FET1との間に設けられ、インピーダンス変換を行うことによって、Txポートから入力された送信信号の電圧振幅を所定の変換比率で縮小する機能を備える。また、インピーダンス変換回路3は、並列FET1に出力される端子間電圧が当該並列FET1の閾値以下となるように所定の変換比率が設定されている。
【0043】
図6に示す最小構成のSPDTアンテナスイッチ回路によれば、許容電力と挿入損出との特性を両立させるとともに、SPDTアンテナスイッチ回路の小型化を可能とし、且つスイッチング状態の更なる安定化を図ることができる。
【0044】
なお、上記に示した各実施形態では、以下の(1)〜(6)に示すようなアンテナスイッチ回路の特徴的構成が示されている。
【0045】
(1)アンテナスイッチ回路(例えば、SPDTアンテナスイッチ回路)は、送信ポート(例えば、Txポート)とアンテナポート(例えば、ANTポート)との間に直列に接続された直列トランジスタ回路(例えば、直列FET2)と、送信ポートとアンテナポートとの間に並列に接続された並列トランジスタ回路(例えば、並列FET1)と、送信ポートと並列トランジスタ回路との間に設けられ、インピーダンス変換を行うことによって、送信ポートから入力された送信信号の電圧振幅を所定の変換比率(例えば、n:1)で縮小するインピーダンス変換回路(例えば、インピーダンス変換回路3)とを備え、インピーダンス変換回路は、並列トランジスタ回路に出力される端子間電圧(例えば、ゲートソース間電圧VGS1)が当該並列トランジスタ回路の閾値以下となるように所定の変換比率が設定されていることを特徴とする。
【0046】
(2)また、アンテナスイッチ回路は、整合回路(例えば、出力整合回路42)を伴う電力増幅器(例えば、パワーアンプ41)を備え、整合回路を除いた電力増幅器部分と複合化されたインピーダンス変換回路が、送信ポートと並列トランジスタ回路との間に設けられ、整合回路が直列トランジスタ回路の出力側に設けられているように構成されていてもよい。
【0047】
(3)また、アンテナスイッチ回路において、インピーダンス変換回路は、トランスを用いて構成されていてもよい。
【0048】
(4)また、アンテナスイッチ回路において、インピーダンス変換回路は、バランを用いて構成されていてもよい。
【0049】
(5)また、アンテナスイッチ回路において、インピーダンス変換回路は、マイクロストリップ線路を用いて構成されていてもよい。
【0050】
(6)また、アンテナスイッチ回路において、インピーダンス変換回路は、インダクタンスとキャパシタンスとを含む整合回路(例えば、LC整合回路)を用いて構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば、WCDMAやGSM等のシステムを搭載した携帯電話機等の携帯端末に適用される。また、本発明は、例えば、WLAN通信端末や、Bluetooth等の通信手段を用いた携帯端末通信装置等の通信端末に適用される。
【符号の説明】
【0052】
1,11 並列FET
2,10 直列FET
3,4 インピーダンス変換回路
5 論理回路
12 負荷インピーダンス
41 電力増幅器
42 出力整合回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信ポートとアンテナポートとの間に直列に接続された直列トランジスタ回路と、
前記送信ポートと前記アンテナポートとの間に並列に接続された並列トランジスタ回路と、
前記送信ポートと前記並列トランジスタ回路との間に設けられ、インピーダンス変換を行うことによって、前記送信ポートから入力された送信信号の電圧振幅を所定の変換比率で縮小するインピーダンス変換回路とを備え、
前記インピーダンス変換回路は、前記並列トランジスタ回路に出力される端子間電圧が当該並列トランジスタ回路の閾値以下となるように前記所定の変換比率が設定されている
ことを特徴とするアンテナスイッチ回路。
【請求項2】
整合回路を伴う電力増幅器を備え、
前記整合回路を除いた前記電力増幅器部分と複合化されたインピーダンス変換回路が、送信ポートと並列トランジスタ回路との間に設けられ、
前記整合回路が直列トランジスタ回路の出力側に設けられている
請求項1記載のアンテナスイッチ回路。
【請求項3】
インピーダンス変換回路は、トランスを用いて構成されている
請求項1又は請求項2記載のアンテナスイッチ回路。
【請求項4】
インピーダンス変換回路は、バランを用いて構成されている
請求項1又は請求項2記載のアンテナスイッチ回路。
【請求項5】
インピーダンス変換回路は、マイクロストリップ線路を用いて構成されている
請求項1又は請求項2記載のアンテナスイッチ回路。
【請求項6】
インピーダンス変換回路は、インダクタンスとキャパシタンスとを含む整合回路を用いて構成されている
請求項1又は請求項2記載のアンテナスイッチ回路。
【請求項7】
アンテナの接続先を送信ポート又は受信ポートに切り換えるアンテナスイッチ回路を備え、
前記アンテナスイッチ回路は、
送信ポートとアンテナポートとの間に直列に接続された直列トランジスタ回路と、
前記送信ポートと前記アンテナポートとの間に並列に接続された並列トランジスタ回路と、
前記送信ポートと前記並列トランジスタ回路との間に設けられ、インピーダンス変換を行うことによって、前記送信ポートから入力された送信信号の電圧振幅を所定の変換比率で縮小するインピーダンス変換回路とを含み、
前記インピーダンス変換回路は、前記並列トランジスタ回路に出力される端子間電圧が当該並列トランジスタ回路の閾値以下となるように前記所定の変換比率が設定されている
ことを特徴とする通信端末。
【請求項8】
アンテナスイッチ回路は、整合回路を伴う電力増幅器を含み、
前記整合回路を除いた前記電力増幅器部分と複合化されたインピーダンス変換回路が、送信ポートと並列トランジスタ回路との間に設けられ、
前記整合回路が直列トランジスタ回路の出力側に設けられている
請求項7記載の通信端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−219955(P2010−219955A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65215(P2009−65215)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
2.Bluetooth
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】