説明

イオウ含有化合物、その調製方法および薬学的使用

【課題】イオウ含有化合物、その調製方法および薬学的使用を提供する。
【解決手段】式1


(式中、R1はH、R5、またはR5C(=O)を示し、R2はSまたは(O=)S(=O)を示し、R3はH、CH3等を示し、R4はR5、OR5、等を示し、R5はアルキル基等を示す)のイオウ含有化合物、その調製および誘導性酸化窒素シンターゼ、シクロオキシゲナーゼ−2と関連付けられている疾患を治療する上での使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は新規なイオウ含有化合物に関する。前記イオウ含有化合物は、誘導性酸化窒素シンターゼ(iNOS)および/またはシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の機能を阻害する能力を有する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
文明の進歩に伴って、我々人類は長寿を手にしたのみならず、日々の生活の質を重視するようになった。しかし現在、癌、慢性疼痛およびアテローム性動脈硬化などの多くの疾患に対する特異的かつ効果的薬剤はいまだに存在しない。
【0003】
多数の研究において、炎症がいくつかの疾患の発生において重要な役割を果たすことが証明されている。炎症関連疾患の発生は、フリーラジカル、汚染、食物、加齢、および圧迫によって誘発される慢性および長期炎症と高度に関連付けられている。
【0004】
アテローム性動脈硬化は血管の形を変化させ、さらに血管内径の低下を引き起こす。したがってそれは、主要な死因の1つである、心筋梗塞、脳卒中、および末梢血管疾患などの急性および致命的心臓血管疾患の重要な危険因子である(Libby, Am J Clin Nutr 83:456S-460S, 2006)。アテローム性動脈硬化は、慢性炎症性心臓血管疾患であることが証明されている(Ross, N Engl J Med 340: 115-126, 1999)。血管の内膜細胞が圧迫されるかまたは損傷すると、単球はマクロファージに分化するように誘導されて、損傷組織周辺に豊富に蓄積する。一連の炎症性反応を通じて、血管の平滑筋細胞は増殖して炎症性細胞が蓄積し、このような反応は血流を損ない最終的に心臓血管疾患をもたらす(Lucas and Greaves, Exp Rev Mol Med 3:1-18, 2001; Gordon, Bioessays 17:977-986, 1995)。動物モデル研究では、誘導性酸化窒素シンターゼおよびシクロオキシゲナーゼ−2の炎症性の重要な要素が、アテローム性動脈硬化において重要な役割を果たすことが示されている(Cipollone, Lupus 14:756-759, 2005; Boyle, Curr Vasc Pharmacol 3:63-68, 2005)。さらに誘導性酸化窒素シンターゼおよびシクロオキシゲナーゼ−2の大半は、マクロファージおよび増殖した平滑筋細胞を含んでなるヒトアテローム性動脈硬化組織内で発現する(Baker et al, Arterioscler Thromb Vasc Biol 19:646-655, 1999; Buttery et al, Lab Invest 75:77-85, 1996)。現在、誘導性酸化窒素シンターゼおよびシクロオキシゲナーゼ−2阻害剤は、アテローム性動脈硬化の発生を顕著に防止することが証明されている(Burleigh et al, Circulation 105:1816-23, 2002; Hayashi et al, Atherosclerosis 187:316-324, 2006; Osiecki, Altern Med Rev. 9: 32-53, 2004)。
【0005】
International Association for the Study of Pain(IASP)の策定する定義によれば、疼痛は、実際のまたは潜在的な組織損傷と関連付けられている、またはこのような損傷の観点から述べられる、不快な感覚および感情の経験である。寿命の延長と共に、疼痛の機会および長さは高まっている。控えめに見積もって、世界的な鎮痛剤の消費は1000億米ドル程度に達している。疼痛制御を通じて生活の質を改善することは、重要な課題である。様々な疼痛の内、神経障害性疼痛の要因は、真性糖尿病に起因する末端の循環低下、切断術または負傷に起因するニューロン損傷、ウイルス性感染および未知の理由など多岐にわたる。臨床的に、鎮痛剤は依存性鎮痛剤および非依存性鎮痛剤に区分される。依存性鎮痛剤は主にアヘン剤を含んでなるが、神経障害性疼痛に対するその効果は十分ではない。非依存性鎮痛剤は、ステロイドタイプおよび非ステロイドタイプを含んでなる。ステロイド鎮痛剤は、主に抗炎症経路を通じて疼痛を緩和する。しかしステロイド鎮痛剤は非特異的であり、副作用が顕著である。長期使用は禁じられている。他方、非ステロイド鎮痛剤は、疼痛緩和タイプ(Panadolなど)および抗炎症薬タイプ(Aspirinなど)を含んでなる。非ステロイド抗炎症薬(NSAID)は、現在、副作用がより少なく安全であることが知られている。特定NSAIDの機序は、誘導性酸化窒素シンターゼおよびシクロオキシゲナーゼ−2経路の阻害を通じて、疼痛を緩和することである(Turini and DuBois, Annual Rev Med 53:35, 2002; Handy et al, Br J Pharmacol 123:1119-1126, 1998; Osborne et al, Br J Pharmacol 126:1840-1846, 1999)。誘導性酸化窒素シンターゼまたはシクロオキシゲナーゼ−2によって触媒されるNOまたはPGE2の生成物は、中枢神経系および末梢組織における疼痛の発生、維持、および感受性にとって重要であることが示されている(Moalem and Tracey, Brain Res Rev 51:240-264, 2006)。疼痛緩和のために神経遮断剤を使用するのと比較して、誘導性酸化窒素シンターゼお
よびシクロオキシゲナーゼ−2阻害剤を投与することは、運動およびニューロンに影響しない。したがってこれは、薬剤開発にとって重要な側面である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
本発明の1つの目的は、新規なイオウ含有化合物を提供することである。前記イオウ含有化合物は化学的に合成でき、生体外で炎症性タンパク質の機能を顕著に阻害できる。さらにイオウ含有化合物は、誘導性酸化窒素シンターゼおよび/またはシクロオキシゲナーゼ−2と関連付けられている疾患を治療できることが示される。
【0007】
本発明の別の目的は、上述のイオウ含有化合物を調製する方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、誘導性酸化窒素シンターゼおよび/またはシクロオキシゲナーゼ−2を阻害する方法を提供することである。
【0009】
本発明のなおもさらに別の目的は、前記イオウ含有化合物を対象に投与するステップを含んでなる、誘導性酸化窒素シンターゼおよび/またはシクロオキシゲナーゼ−2と関連付けられている疾患を治療する方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明に係るイオウ含有化合物は、一般式1、
【化1】

(式中、
はH、RおよびRC(=O)からなる群から選択され、
はSおよび(O=)S(=O)からなる群から選択され、
はH、CHおよびCHCHC(=O)ORからなる群から選択され、
はR、OR
【化2】


N(R、NH、NHR、およびOHからなる群から選択され、
は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基および非置換または置換フェニル基から選択され、
好ましくはRはメチル、エチル、および非置換フェニルからなる群から選択されるが、
ただしRがCHCHC(=O)ORであるとき、RはORであり、
がHで、RがSで、RがHであるとき、RはCHではない)
によって表される。
【0011】
本発明の好ましい実施態様に従って、一般式1で表される化合物は、式3〜22
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

の1つによって表される。
【0012】
本発明はまた、
(I)RがHで、RがSであるとき、一般式23、
【化7】

(式中、RはHおよびCHからなる群から選択される)で表される化合物と、
式24、
【化8】

で表される2−メルカプトエタノールとを反応させて、一般式25、
【化9】

で表される化合物を得るステップと、
(II)RがRC(=O)であるとき、一般式25で表される化合物をエステル化するステップと、
(III)RがRであるとき、一般式25で表される化合物をアルキル化するステップと、
(IV)Rが(O=)S(=O)であるとき、一般式25で表される化合物を酸化するステップと、
(V)RがRC(=O)で、Rが(O=)S(=O)であるとき、一般式25で表される化合物をエステル化して酸化するステップと、
(VI)RがRで、Rが(O=)S(=O)であるとき、一般式25で表される化合物をアルキル化して酸化するステップと、
(VII)RがHで、RがSで、RがHで、RがCHであるとき、式27、
【化10】

で表される化合物と、式24で表される2−メルカプトエタノールとをトリエチルアミンの存在下で反応させるステップと
を含んでなる、一般式2、
【化11】

(式中、
はH、RおよびRC(=O)からなる群から選択され、
はSおよび(O=)S(=O)からなる群から選択され、
はH、CHおよびCHCHC(=O)ORからなる群から選択され、
はR、OR
【化12】


N(R、NH、NHR、およびOHからなる群から選択され、
は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基および非置換または置換フェニル基から選択されるが、
ただしRがCHCHC(=O)ORであるとき、RはORである)
で表される化合物を調製する方法も提供する。
【0013】
特に本発明に係る方法は、以下の方法の1つである。
【0014】
(I)RがHで、RがSであるとき、本発明の方法は、一般式23、
【化13】

(式中、RはHおよびCHからなる群から選択され、好ましくはHである)で表される化合物と、式24で表される2−メルカプトエタノールとを反応させて、一般式25で表される化合物を得るステップを含んでなる。好ましくは上の反応は、トリエチルアミンの存在下で実施される。本発明の一実施態様では、反応物質をアセトンに溶解して氷浴中で反応させる。別の態様では、RがCHCHC(=O)ORであるとき、反応を溶媒の不存在下で行う。
【0015】
(II)RがRC(=O)であるとき、本発明に係る方法は、一般式25で表される化合物をエステル化するステップを含んでなる。好ましくは上の反応は、トリエチルアミンの存在下で実施される。本発明の一実施態様では、反応物質をジクロロメタン中に溶解する。本発明の好ましい一実施態様では、RがCHC(=O)であるとき、本方法は一般式25で表される化合物と無水酢酸とを反応させるステップを含んでなる。本発明の別の好ましい一実施態様では、RがCC(=O)であるとき、本方法は一般式25で表される化合物と塩化ベンゾイルとを反応させるステップを含んでなる。
【0016】
(III)RがRであるとき、本発明に係る方法は、一般式25で表される化合物をアルキル化するステップを含んでなる。本発明の好ましい一実施態様では、RがCHであるとき、本方法は一般式25で表される化合物とCHIとを反応させるステップを含んでなる。
【0017】
(IV)Rが(O=)S(=O)であるとき、本発明に係る方法は、一般式25で表される化合物を酸化するステップを含んでなる。好ましくは酸化は、過酸化水素またはm−クロロペルオキシ安息香酸を用いて実施される。本発明の一実施態様では、過酸化水素を使用する場合、酸化をMnSO・HOによって触媒し、反応物質をアセトニトリル中に溶解させる。m−クロロペルオキシ安息香酸を使用して酸化を行う場合、反応物質をジクロロメタン中に溶解させる。
【0018】
(V)RがRC(=O)で、Rが(O=)S(=O)であるとき、本発明に係る方法は、上述の一般式25で表される化合物をエステル化して酸化するステップを含んでなる。
【0019】
(VI)RがRで、Rが(O=)S(=O)であるとき、本発明に係る方法は、上述の一般式25で表される化合物をアルキル化して酸化するステップを含んでなる。
【0020】
(VII)RがHで、RがSで、RがHで、RがCHであるとき、本発明に係る方法は、式27で表される化合物と式24で表される2−メルカプトエタノールとをトリエチルアミンの存在下で反応させるステップを含んでなる。
【0021】
本発明はまた、誘導性酸化窒素シンターゼおよび/またはシクロオキシゲナーゼ−2を阻害する方法も提供する。
【0022】
本発明はさらに、一般式1で表される化合物を対象に投与するステップを含んでなる、誘導性酸化窒素シンターゼおよび/またはシクロオキシゲナーゼ−2と関連付けられている疾患を治療する方法に関する。一般式1で表される化合物は、誘導性酸化窒素シンターゼおよび/またはシクロオキシゲナーゼ−2の蓄積を阻害する能力を有するので、これは誘導性酸化窒素シンターゼおよび/またはシクロオキシゲナーゼ−2と関連付けられている疾患を治療する上で有用である。関節炎(Cuzzocrea et al, Arthritis Rheum. 52:1929-40, 2005)、多発性硬化症(Misko et al, J Neuroimmunol. 61:195-204, 1995)、炎症性疼痛 (Toriyabe et al, Anesthesiology 101, 983-990, 2004)、および脊髄損傷(Lopez-Vales et al, Spine. 31:1100-6, 2006)などの多くの疾患が、誘導性酸化窒素シンターゼおよび/またはシクロオキシゲナーゼ−2の機能に関係していることが報告されている。したがって疾患は、好ましくは炎症、アテローム性動脈硬化、神経障害性疼痛、炎症性新生内膜増殖、関節炎、多発性硬化症、炎症性疼痛、および脊髄損傷からなる群から選択される。ラットにおけるアテローム性動脈硬化の1つの生体内モデルでは、一般式1で表される化合物が、アテローム性動脈硬化を治療する能力を有することが示される。本発明の別の実施態様では、くも膜下腔内注射を通じて一般式1で表される化合物を投与することは、神経障害性疼痛を治療する上で効果的である。さらに多発性硬化症動物モデルでは、一般式1で表される化合物が、多発性硬化症を治療する能力を有することが示される。
【0023】
一般式1で表される化合物は、経口的にまたは注射を通じて投与できる。好ましくは化合物は注射によって投与される。
【0024】
以下の実施例は、あくまで例示を目的として供され本発明の範囲を限定することは意図されない。
【実施例】
【0025】
調製品1
22mLのアセトンを含有する丸底フラスコに、2−メルカプトエタノール(1.80g、98%、27.14mmole)およびトリエチルアミン(0.53mL、3.77mmole)を入れた。0℃氷浴内での撹拌に続き、4mLアセトン中のメチルビニルケトン溶液(2.31mL、27.14mmole)をフラスコ内に徐々に滴下した。添加後、反応の温度を室温に上昇させて、反応を16時間継続した。溶媒を含まない生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供して、式26、
【化14】

で表されるチオエーテル化合物(3.35g、収率100%)を得た。
【0026】
式26で表されるチオエーテル化合物:無色の油、IR(KBr)vmax3405,1713,1416,1362,1161,1045,1010cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ3.73(2H,dt,J=5.6,5.4Hz),2.75(4H,brs),2.72(2H,t,J=5.4Hz),2.46(1H,t,J=5.6Hz,OH)2.17(3H,s);13CNMR(CDCl,75MHz)δ207.0(qC),60.6(CH),43.7(CH),35.6(CH),30.2(CH),25.4(CH);ESIMSm/z171[M+Na];HRESIMSm/z171.0458[M+Na](C12SNa,171.0456についての計算)。
【0027】
調製品2
500mL丸底フラスコ(フラスコA)内で、調製品1として調製された式26で表されるチオエーテル化合物(1.00g、6.76mmole)およびMnSO・HO(23mg、0.14mmole)と、アセトニトリル(156mL)とを混合して、混合物を室温で激しく撹拌した。ナトリウム水素炭酸塩緩衝液(115mL、0.2M、pH=8.0)および30%過酸化水素溶液(3.38mL)の水溶液を250mLフラスコ内に入れて、0℃で良く撹拌して次に徐々にフラスコAに添加した。2時間反応させた後、酢酸エチル/イソプロピルアルコール(3:1)を抽出物に添加した(200mL×6)。合わせた有機抽出物を減圧下で濃縮し、式3で表される化合物を得るために残留物をシリカゲルカラム上で精製した(ヘキサン/EtOAc=1:3での溶出)(1.03g、収率84%)。
【0028】
式3で表される化合物:無色の結晶、融点59−60℃;IR(KBr)vmax3416,1715,1416,1366,1311,1120,1009cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ4.02(2H,t,J=5.4Hz),3.36(2H,t,J=7.3Hz),3.21(2H,t,J=5.4Hz),2.97(2H,t,J=7.3Hz),2.20(3H,s);13CNMR(CDCl,75MHz)δ204.9(qC),56.0(CH),55.7(CH),48.7(CH),34.9(CH),29.7(CH);ESIMSm/z203[M+Na];HRESIMSm/z203.0354[M+Na](C12SNa,203.0354についての計算)。
【0029】
調製品3
125mL丸底フラスコ内で、ジクロロメタン(64mL)中の調製品1として調製された式26で表されるチオエーテル化合物溶液(1.00g、6.76mmole)を撹拌しながら、m−クロロペルオキシ安息香酸(2.92g、16.90mmole)をバッチで徐々に添加した。添加後、チオエーテル化合物が完全に消費されるまで反応をTLCでモニターした。次にジクロロメタンを除去して、得られた混合物に100mL飽和ナトリウム水素炭酸塩溶液を添加して激しく撹拌した。得られた粗生成物を酢酸エチル(100mL×10)で抽出し、合わせた抽出物を減圧下で濃縮した。得られた生成物をシリカゲルカラムで精製し(ヘキサン/EtOAc=1:3での溶出)、式3で表される化合物を得た(1.00g、収率82%)。
【0030】
調製品4
ジクロロメタン(2mL)中の式3で表される化合物(20.0mg、0.114mmole)およびトリエチルアミン(25μL)の撹拌される溶液に、無水酢酸(40μL)を室温で徐々に添加した。反応を16時間継続し、溶媒を含まない生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=2:3での溶出)に供して、式4で表される化合物を得た(25.0mg、収率98%)。
【0031】
式4で表される化合物:無色の油、IR(KBr)vmax1743,1720,1366,1317,1234,1125,1070,1036cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ4.52(2H,t,J=5.8Hz),3.36(2H,t,J=7.2Hz),3.34(2H,t,J=5.8Hz),3.03(2H,t,J=7.2Hz),2.25(3H,s),2.11(3H,s);13CNMR(CDCl,75MHz)δ204.0(qC),170.2(qC),57.5(CH),52.8(CH),48.5(CH),34.9(CH),29.8(CH),20.7(CH);ESIMSm/z245[M+Na];HRESIMSm/z245.0458[M+Na](C14SNa,245.0460についての計算)。
【0032】
調製品5
ジクロロメタン(2mL)中の式3で表される化合物(20.0mg、0.114mmole)およびトリエチルアミン(25μL)の撹拌される溶液に、塩化ベンゾイル(50μL)を室温で緩慢に添加した。反応を5時間継続し、溶媒を含まない生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=5:3での溶出)に供して、式5で表される化合物を得た(29.8mg、収率92%)。
【0033】
式5で表される化合物:無色の結晶、融点=79−80℃;IR(KBr)vmax1714,1710,1315,1276,1133,1119cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ8.04(2H,d,J=7.5Hz),7.60(1H,t,J=7.5Hz),7.47(2H,t,J=7.5Hz),4.78(2H,t,J=5.7Hz),3.48(2H,t,J=5.7Hz),3.41(2H,t,J=7.2Hz),3.03(2H,t,J=7.2Hz),2.21(3H,s);13CNMR(CDCl,75MHz)δ203.8(qC),165.8(qC),133.5(CH),129.6(CH×2),129.0(qC),128.6(CH×2),58.0(CH),53.0(CH),48.6(CH),34.9(CH),29.7(CH);ESIMSm/z307[M+Na];HRESIMSm/z307.0613[M+Na](C1316SNa,307.0616についての計算)。
【0034】
調製品6
調製品1と同様に、エチルビニルケトン、エチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、およびアクリルアミドをはじめとするα,β−不飽和カルボニル化合物を独立して2−メルカプトエタノールと反応させ、それぞれ式6(収率100%)、8(収率100%)、10(収率100%)、12(収率100%)、および14(収率90%)で表される対応するチオエーテル化合物を得た。アクリルアミドの溶解性が十分でないためにより極性の溶媒(メタノール/アセトン=1:1)の存在を必要とした式14で表される化合物の調製を除いて、上の反応はアセトン存在下で実施した。調製品2と同様に、式6、8、10、12、および14の中間体を過酸化水素で酸化して、それぞれ式7(収率87%)、9(収率85%)、11(収率87%)、13(収率83%)、および15(収率84%)で表される化合物を得た。さらに溶媒の存在なしで進行するエチルアクリレートおよび2−メルカプトエタノールの反応は、式8(収率45%)および式16(収率22%)で表される両方の化合物を与えた。式16で表される化合物を過酸化水素で酸化して、式17で表される化合物を調製した(収率84%)。
【0035】
式6で表される化合物:無色の油;IR(KBr)vmax3418,1714,1458,1411,1375,1361,1113,1046,1013cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ3.75(2H,t,J=6.2Hz),2.70−2.80(6H,m),2.48(2H,q,J=7.3Hz),1.06(3H,t,J=7.3Hz);13CNMR(CDCl,75MHz)δ209.9(qC),60.6(CH),42.0(CH),35.9(CH),34.8(CH),25.3(CH),7.3(CH);ESIMSm/z185[M+Na];HRESIMSm/z185.0611[M+Na](C14SNa,185.0612についての計算)。
【0036】
式7で表される化合物:無色の油;融点=44−45℃;IR(KBr)vmax3419,1715,1312,1280,1123cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ4.01(2H,t,J=5.2Hz),3.36(2H,t,J=7.3Hz),3.19(2H,t,J=5.2Hz),2.93(2H,t,J=7.3Hz),2.47(2H,q,J=7.3Hz),1.01(3H,t,J=7.3Hz);13CNMR(CDCl,75MHz)δ207.6(qC),56.0(CH),55.7(CH),48.8(CH),35.8(CH),33.6(CH),7.5(CH);ESIMSm/z217[M+Na];HRESIMSm/z217.0508[M+Na](C14SNa,217.0510についての計算)。
【0037】
式8で表される化合物:無色の油;IR(KBr)vmax3440,1732,1373,1249,1185,1044cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ4.16(2H,q,J=7.1Hz),3.74(2H,t,J=6.1Hz),2.82(2H,t,J=7.1Hz),2.74(2H,t,J=6.1Hz),2.62(2H,t,J=7.1Hz),1.27(3H,t,J=7.1Hz);13CNMR(CDCl,75MHz)δ172.1(qC),60.8(CH×2),35.1(CH),34.9(CH),26.8(CH),14.2(CH);ESIMSm/z201[M+Na];HRESIMSm/z201.0563[M+Na](C14SNa,201.0561についての計算)。
【0038】
式9で表される化合物:無色の油;IR(KBr)vmax3503,1732,1313,1281,1120,1065cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ4.19(2H,q,J=7.1Hz),4.12(2H,t,J=5.0Hz),3.46(2H,t,J=7.4Hz),3.25(2H,t,J=5.0Hz),2.88(2H,t,J=7.4Hz),1.28(3H,t,J=7.1Hz);13CNMR(CDCl,75MHz)δ170.7(qC),61.5(CH),56.2(CH),55.6(CH),49.9(CH),26.8(CH),14.0(CH);ESIMSm/z233[M+Na];HRESIMSm/z233.0458[M+Na](C14SNa,233.0460についての計算)。
【0039】
式10で表される化合物:無色の油;IR(KBr)vmax3399,1630,1500,1403,1143,1048,1014cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ3.77(2H,t,J=5.9Hz),3.02(3H,s),2.96(3H,s),2.87(2H,t,J=7.2Hz),2.75(2H,t,J=5.9Hz),2.62(2H,t,J=7.2Hz);13CNMR(CDCl,75MHz)δ171.1(qC),60.8(CH),37.0(CH),35.4(CH×1,CH×1),33.5(CH),26.8(CH);ESIMSm/z200[M+Na];HRESIMSm/z200.0719[M+Na](C15NOSNa,200.0721についての計算)。
【0040】
式11で表される化合物:無色の油;IR(KBr)vmax3371,1634,1503,1405,1312,1278,1119,1065cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ4.06(2H,t,J=5.2Hz),3.49(2H,t,J=7.2Hz),3.25(2H,t,J=5.2Hz),3.03(3H,s),2.94(3H,s),2.87(2H,t,J=7.2Hz);13CNMR(CDCl,75MHz)δ169.4(qC),56.2(CH),56.0(CH),50.3(CH),37.1(CH),35.7(CH),25.7(CH);ESIMSm/z232[M+Na];HRESIMSm/z232.0618[M+Na](C15NOSNa,232.0619についての計算)。
【0041】
式12で表される化合物:無色の油;IR(KBr)vmax3418,1633,1463,1437,1271,1248,1115,1067,1028cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ3.76(2H,t,J=6.0Hz),3.69(4H,m),3.63(2H,m),3.48(2H,dd,J=4.5,4.9Hz),2.87(2H,t,J=7.2Hz),2.74(2H,t,J=6.0Hz),2.63(2H,t,J=7.2Hz);13CNMR(CDCl,75MHz)δ169.8(qC),66.6(CH),66.3(CH),60.8(CH),45.7(CH),41.9(CH),35.2(CH),33.2(CH)26.8(CH);ESIMSm/z242[M+Na];HRESIMSm/z242.0815[M+Na](C17NOSNa,242.0813についての計算)。
【0042】
式13で表される化合物:無色の針状;融点=109−110℃;IR(KBr)vmax3420,1637,1452,1311,1275,1117,1067,1028cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ4.06(2H,t,J=5.2Hz),3.57−3.67(6H,m),3.49(2H,t,J=7.2Hz),3.47(2H,m),3.25(2H,t,J=5.2Hz),2.86(2H,t,J=7.2Hz);13CNMR(CDCl,75MHz)δ168.0(qC),66.5(CH),66.3(CH),56.2(CH),56.0(CH),50.2(CH),45.7(CH),42.3(CH)25.3(CH);ESIMSm/z274[M+Na];HRESIMSm/z274.0722[M+Na](C17NOSNa,274.0725についての計算)。
【0043】
式14で表される化合物:白色粉末;IR(KBr)vmax3354,3196,1661,1414cm−1HNMR(ピリジン−d5,300MHz)δ4.02(2H,t,J=6.7Hz),3.13(2H,t,J=7.2Hz),2.93(2H,t,J=6.7Hz),2.82(2H,t,J=7.2Hz);13CNMR(ピリジン−d5,75MHz)δ174.3(qC),61.7(CH),36.6(CH),35.2(CH),28.1(CH);ESIMSm/z172[M+Na];HRESIMSm/z172.0407[M+Na](C11NOSNa,172.0408についての計算)。
【0044】
式15で表される化合物:白色粉末;IR(KBr)vmax3370,3200,1661,1395cm−1HNMR(ピリジン−d5,300MHz)δ4.35(2H,t,J=5.6Hz),4.06(2H,t,J=7.6Hz),3.64(2H,t,J=5.6Hz),3.25(2H,t,J=7.6Hz);13CNMR(ピリジン−d5,75MHz)δ174.3(qC),61.7(CH),36.6(CH),35.2(CH),28.1(CH);ESIMSm/z204[M+Na];HRESIMSm/z204.0305[M+Na](C11NOSNa,204.0306についての計算)。
【0045】
式16で表される化合物:無色の油;IR(KBr)vmax3438,1731,1377,1299,1206,1162,1043cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ4.10(2H,q,J=7.0Hz),4.05(2H,q,J=7.0Hz),3.65(2H,t,J=6.0Hz),2.54−2.74(5H,m),2.28(2H,m),1.91(2H,m),1.20(3H,t,J=7.0Hz),1.18(3H,t,J=7.0Hz);13CNMR(CDCl,75MHz)δ174.1(qC),172.8(qC),60.89(CH),60.86(CH),60.6(CH),45.3(CH),35.5(CH),33.6(CH),31.7(CH)26.7(CH),14.22(CH),14.18(CH);ESIMSm/z301[M+Na];HRESIMSm/z301.1084[M+Na](C1222SNa,301.1086についての計算)。
【0046】
式17で表される化合物:無色の油;IR(KBr)vmax3439,1732,1380,1312,1290,1206,1120cm−1HNMR(CDCl,300MHz)δ4.21(2H,q,J=7.1Hz),4.15(2H,q,J=7.1Hz),4.11(2H,t,J=5.3Hz),3.72(1H,dd,J=14.2,9.3Hz),3.25(2H,t,J=5.3Hz),3.21(1H,dd,J=14.2,4.9Hz),3.13(1H,m),2.39(2H,t,J=7.4Hz),2.04(2H,t,J=7.4Hz),1.30(3H,t,J=7.1Hz),1.27(3H,t,J=7.1Hz);13CNMR(CDCl,75MHz)δ173.0(qC),172.4(qC),61.6(CH),60.8(CH),56.4(CH),55.1(CH),55.8(CH),38.7(CH),31.1(CH)27.2(CH),14.1(CH),14.0(CH);ESIMSm/z333[M+Na];HRESIMSm/z333.0986[M+Na](C1222SNa,333.0987についての計算)。
【0047】
生体外抗炎症アッセイ
American Type Culture Collectionから購入されたマウスマクロファージ細胞系であるRAW264.7(ATCC,NoTIB−71)を生体外モデルにおいて選択した。37℃および5%COにおいて、10%ウシ胎仔血清(FBS)およびペニシリンG(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を含有するDMEM(Dulcbecco/s Modified Eagle medium)中で細胞を培養した。80%の集密に達したら、細胞をトリプシンと共に継代培養した。36時間継代培養した後に、細胞に抗炎症アッセイを施した。10cm培養皿内で3×10個のRAW264.7細胞を培養し、リポ多糖類(LPS、0.01μg/ml;Sigma L2654)を投与した。16時間後、細胞を収集した。実験群では、式3で表される化合物を培養皿に添加した10分以内にLPSが続いた。
【0048】
誘導性酸化窒素シンターゼおよび/またはシクロオキシゲナーゼ−2のタンパク質発現のアッセイ
収集されたRAW264.7細胞を200μLの4℃溶解緩衝液(50mMトリス[pH7.5]、150mM NaCl、1% TritonX-100、0.1mM EDTA、0.1mM EGTA、10μg PMSF、1μg/mLアプロチニン、20mM NaF、および0.2mM NaVO)に溶解した。4℃において25,000gで30分間サンプルを遠心分離してペレットを除去した。米国カリフォルニア州ハーキュリーズのBio-Rad LaboratoriesからのBio-RadDCタンパク質アッセイキットで上清をアッセイし、タンパク質含量を推定するために、米国のThermo Electron CorporationからのELISAリーダーで吸光度を読み取った。等容積に較正したサンプルを同一容積のサンプル緩衝液(2%SDS、10%グリセロール、0.1%ブロモフェノールブルー、10%2−メルカプトエタノール、および50mMトリス)と共に入れた。タンパク質を10%SDS−PAGEで分離して、米国マサチューセッツ州ベッドフォードのMilliporeからのPVDF膜(0.45mm、Immobilon-P)に転写した(1.5A、4℃、2.5時間)。5%スキムミルクを含有するTTBS(トリス−HCl 20mM、NaCl 137mM、pH7.4、および0.1% Tween 20)で、転写PVDF膜を室温で1時間ブロックして、米国ケンタッキー州レキシントンのTransduction Laboratoriesからのポリクローナル抗誘導性酸化窒素シンターゼ抗体、または米国ミシガン州アナーバーのCaymanからのポリクローナル抗シクロオキシゲナーゼ−2抗体と室温で3時間反応させた。TTBSで3回洗浄した後、サンプルをHRP−コンジュゲート抗ウサギIgG抗体(1:2000)と室温で1時間反応させた。TTBSで3回洗浄した後、高感度化学ルミネッセンス検出キットを使用してPVDF膜と反応させ、タンパク質発現を検出するために米国ニューヨーク州ロチェスターのKodakからのX−線フィルム(Kodak X-OMAT LS)を露光した。米国シルバースプリングのMedia CyberneticsからのImage-Pro plus 4.5ソフトウェアで相対量を計算した。LPSのみを添加した群を100%とした。米国ミズーリ州セントルイスのSigmaからのβ−アクチン(モノクローナル抗体)を内部対照とした。
【0049】
結果を図1に示す。10〜30μMの式3で表される化合物は、LPS(0.01μg/ml)によって刺激されたマクロファージの誘導性酸化窒素シンターゼの効果を顕著に阻害し、50%阻害濃度(IC50)は3.64±0.28μMである。5〜30μMの式3で表される化合物はまた、LPS(0.01μg/ml)によって刺激されたマクロファージのシクロオキシゲナーゼ−2の効果を顕著に阻害し、IC50は32.1±8.1μMである。しかし50μMの濃度では、式3で表される化合物はβ−アクチンのタンパク質発現を阻害する。
【0050】
動物モデル
くも膜下腔内カテーテル手術
Wen et al, Brain Res 963:1-7, 2003の記述に従って手術を実施した。オスのウィスター系ラットの硬膜を大後頭孔近くで切開し、8.5cmのPE管(外径:0.014インチ、内径:0.008インチ)を移植した。薬剤は腰椎近くで作用し、注射の末端を頭部に固定した。くも膜下腔内カテーテルにおいて運動または血液に欠陥がある動物は除外した。
【0051】
神経障害性疼痛の動物モデル
Bennett and Xie (Pain 33:87-107, 1988)によって確立された座骨神経絞扼性神経損傷(CCI)に類似したモデルを確立した。4個のOキャットカットライン(O cat cut line)を使用して、座骨神経上に4個の結び目を作った。1週間後、熱痛覚過敏動態を刺激した。神経障害性疼痛緩和に対する式3で表される化合物の効果を評価するために、Hargreaves et al (Pain 32:77-88, 1988)によって確立されたのと類似した方法で熱痛覚過敏動態をアッセイし、米国カリフォルニア州ウッドランドヒルズのIITC Inc.からの無痛覚計(analgesiometer)で記録した。
【0052】
各動物のデータを最大効果百分率(MPE)と共に示し、統計学的に分析した。
MPE(%)=(薬剤投与後の経過時間−基礎時間)/(30秒間−基礎時間)[]×100%
【0053】
より高いMPEが得られたときに疼痛緩和の効果はより良く、MPEの最大値は100であった。
【0054】
神経障害性疼痛緩和の結果を図2に示す。熱痛覚過敏は座骨神経損傷の7日後に始まった。脚を引っ込めるまでの時間は30秒から約14秒に減少した。0.1、0.5、1、または5μgの式3で表される化合物のくも膜下腔内注射は、熱痛覚過敏阻害に対して全て顕著な効果を示す。MPEを計算したところ、50%有効量(ED50)は0.75±0.05μgである。
【0055】
ラットにおけるアテローム性動脈硬化モデル
Berger et al (Atherosclerosis 175:229-234, 2004)およびChen et al (Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol 368:127-133, 2003)の参考文献に従って、手術を実施した。2Fプローブバルーンカテーテルを用いて2.5%イソフルラン(空気および酸素の1:1の混合)で動物に麻酔をかけた。カテーテルを食塩水で予備充填し、右頚の外頸動脈から右総頸動脈内へ配置した。カテーテルが右総頸動脈に約1.5cm入ったら、バルーンを膨張させて前後に3回擦った。次にカテーテルを除去して、外頸動脈を結紮して切開を縫合した。3週間後に動物を屠殺して、両側からの総頸動脈を採取して、4%パラホルムアルデヒドで1日固定して薄く(3μm)切り、H & E染色を施した。光学的鏡検法下でサンプルを観察し撮影した。新生内膜増殖の厚さを判定した。各ラットの右側を実験群とし、左側を対照群とした。
【0056】
実験群では、式3で表される化合物を投与した。予備段階の結果は、化合物を日に1度投与することで、新生内膜増殖が顕著に改善されることを示す。
【0057】
バルーン誘発血管形成術によって刺激されたアテローム性動脈硬化に対する抗アテローム性動脈硬化の効果を図3に示す。術後24日目に、切片において頸動脈内の新生内膜増殖が観察された。式3で表される化合物を術後10〜24日目まで皮下注射を通じて3mg/kg/日で投与し、それはバルーン誘発血管形成術によって刺激された新生内膜増殖を改善する。内膜/中膜を数値化すると、式3で表される化合物はアテローム性動脈硬化を顕著に改善することが分かる。
【0058】
多発性硬化症動物モデル
体重280〜300gのメスのLewisラットを多発性硬化症(MS、脳脊髄炎、EAEとも称される)モデルで使用した(Boulerne et al, J Neurosci. 2002;22:123-32, 2004)。動物に2.5%イソフルランで麻酔をかけ、100%の免疫を与えるために1mgの不活性化結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Raと50μgのモルモットミエリン塩基性タンパク質(MBP)とを含有する50μLの完全フロイントアジュバント(Sigma)を後脚から皮下注射した。対照群では、ラットに不活性化結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Raを含有するがモルモットミエリン塩基性タンパク質なしの完全フロイントアジュバントを注射した。免疫化後11〜12日目に病気が観察され、14〜15日目にピークに達した。
【0059】
神経機能を15日目に評価した。スコアを次を表す:0:臨床症状なし、1:尾の機能喪失、2:後脚の部分麻痺;、3:後脚の完全麻痺、4:四肢の麻痺、5:全身の完全麻痺、6:死亡(Liu et al. J Neuroimmunol. 2003;139:27-35, 1998)。
【0060】
ラットを4群に分け、各群は4匹の動物を含んだ。
対照群:不活性化結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Raを含有するが、モルモットミエリン塩基性タンパク質なしの完全フロイントアジュバントをラットに後脚から皮下注射した。くも膜下腔内カテーテルを通じて20μLの生理食塩水を日に2回、7日目から5日間にわたり投与した。
多発性硬化症群:不活性化結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Raとモルモットミエリン塩基性タンパク質とを含有する完全フロイントアジュバントをラットに後脚から皮下注射した。くも膜下腔内カテーテルを通じて20μLの生理食塩水を日に2回、7日目から5日間にわたり投与した。
処置を伴う多発性硬化症群:不活性化結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Raとモルモットミエリン塩基性タンパク質とを含有する完全フロイントアジュバントをラットに後脚から皮下注射した。くも膜下腔内カテーテルを通じて10μg/20μLの式3で表される化合物を日に2回、7日目から5日間にわたり投与した。
処置を伴う正常ラット群:くも膜下腔内カテーテルを通じて10μg/20μLの式3で表される化合物を日に2回、7日目から5日間にわたり投与した。
【0061】
対照群および処置を伴う正常ラット群のスコアは0である。多発性硬化症群のスコアは4.6±0.2であり、処置を伴う多発性硬化症群のスコアは0.5±0.3である。これは式3で表される化合物を、くも膜下腔内カテーテルを通じて投与することが、多発性硬化症の進行を顕著に抑制することを示す(図4および5)。
【0062】
統計
全てのデータは平均±標準偏差S.E.M.で示し、一元配置分散分析(ANOVA)およびダネット検定で分析した。P<0.05は有意差を示す。生体外抗炎症アッセイでは、LPSのみの投与を100%とした。動物モデルでは、各群を4〜8回反復した。
【0063】
本発明の実施態様を例示して説明したが、当業者によって様々な変更および改良ができる。本発明は例示される特定形態に限定されず、本発明の趣旨と範囲を逸脱しない全ての変更は、特許請求の範囲で定義される範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図面の簡単な説明
【図1】リポ多糖類(LPS)によって刺激されるマクロファージにより発現される誘導性酸化窒素シンターゼおよびシクロオキシゲナーゼ−2に対する、異なる濃度の式3で表される化合物の効果を示す。A:ウエスタンブロットの結果、B:誘導性酸化窒素シンターゼの発現に対する異なる濃度の式3で表される化合物の効果の統計学的データ、C:シクロオキシゲナーゼ−2の発現に対する異なる濃度の式3で表される化合物の効果の統計学的データ。各試験は6回繰り返した。
【図2】座骨神経における絞扼性神経損傷の神経障害性疼痛緩和に対する、式3で表される化合物の効果を示す。A:脚を引っ込めるまでの時間に対する、異なる濃度でくも膜下腔内に投与された式3で表される化合物の効果の結果。B:くも膜下腔内に投与された式3で表される化合物の最大効果百分率(MPE)。C:MPEを使用して計算された、式3で表される化合物の用量反応曲線および50%有効量(ED50)。各点は少なくとも6回繰り返した。
【図3】バルーン誘発血管形成によって刺激された頸動脈の新生内膜増殖に対する、式3で表される化合物の効果を示す。A:対照群、B:損傷群、C:式3で表される化合物で処置された実験群。D、E、およびFは、それぞれA、B、およびCの拡大図である。G:内膜/中膜の数値化の統計学的結果。
【図4】多発性硬化症に対する式3で表される化合物の効果を示す。
【図5】(a)未処置、および(b)式3で表される化合物によって処置された多発性硬化症動物モデルの写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1、
【化1】

(式中、
はH、R、およびRC(=O)からなる群から選択され、
はSおよび(O=)S(=O)からなる群から選択され、
はH、CHおよびCHCHC(=O)ORからなる群から選択され、
はR、OR
【化2】


N(R、NH、NHR、およびOHからなる群から選択され、
は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基および非置換または置換フェニル基から選択されるが、
ただしRがCHCHC(=O)ORであるとき、RはORであり、
がHであるとき、RはSであり、RがHであるとき、RはCHではない)
で表される化合物。
【請求項2】
がメチル、エチル、および非置換フェニルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記式3〜22、
【化3】

【化4】

【化5】

で表される化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
(I)RがHで、RがSであるとき、下記一般式23、
【化6】

(式中、RはHおよびCHからなる群から選択される)で表される化合物と、
下記一般式24、
【化7】

で表される2−メルカプトエタノールとを反応させて、下記一般式25、
【化8】

で表される化合物を得るステップと、
(II)RがRC(=O)であるとき、一般式25で表される化合物をエステル化するステップと、
(III)RがRであるとき、一般式25で表される化合物をアルキル化するステップと、
(IV)Rが(O=)S(=O)であるとき、一般式25で表される化合物を酸化するステップと、
(V)RがRC(=O)で、Rが(O=)S(=O)であるとき、一般式25で表される化合物をエステル化して酸化するステップと、
(VI)RがRで、Rが(O=)S(=O)であるとき、一般式25で表される化合物をアルキル化して酸化するステップと、
(VII)RがHで、RがSで、RがHで、RがCHであるとき、下記式27、
【化9】

で表される化合物と、式24で表される2−メルカプトエタノールとをトリエチルアミンの存在下で反応させるステップと
を含んでなる、一般式2、
【化10】

(式中、
はH、RおよびRC(=O)からなる群から選択され、
はSおよび(O=)S(=O)からなる群から選択され、
はH、CHおよびCHCHC(=O)ORからなる群から選択され、
はR、OR
【化11】


N(R、NH、NHR、およびOHからなる群から選択され、
は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基および非置換または置換フェニル基から選択されるが、
ただしRがCHCHC(=O)ORであるとき、RはORである)
で表される化合物を調製する方法。
【請求項5】
がHである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式23および24で表される化合物をトリエチルアミンの存在下で反応させる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
式23および24で表される化合物をアセトン中に溶解させる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
がCHCHC(=O)ORであるとき、式23および24で表される化合物を溶媒の不存在下で反応させる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
エステル化がトリエチルアミンの存在下で実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
エステル化反応物質をジクロロメタン中に溶解させる、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
がCHC(=O)であるとき、エステル化が一般式25で表される化合物と無水酢酸とを反応させるステップを含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
がCC(=O)であるとき、エステル化が一般式25で表される化合物と塩化ベンゾイルとを反応させるステップを含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
がCHであるとき、アルキル化が一般式25で表される化合物とCHIとを反応させるステップを含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
酸化が過酸化水素を用いて実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
酸化がMnSO・HOによって触媒される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
酸化反応物質をアセトニトリル中に溶解させる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
酸化がm−クロロペルオキシ安息香酸を用いて実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
酸化反応物質をジクロロメタン中に溶解させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物を対象に投与するステップを含んでなる、誘導性酸化窒素シンターゼおよび/またはシクロオキシゲナーゼ−2を阻害する方法。
【請求項20】
化合物が、下記式3、
【化12】

で表される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の化合物を対象に投与するステップを含んでなる、誘導性酸化窒素シンターゼおよび/またはシクロオキシゲナーゼ−2と関連付けられている疾患を治療する方法。
【請求項22】
疾患が、炎症、アテローム性動脈硬化、神経障害性疼痛、炎症性新生内膜増殖、関節炎、多発性硬化症、炎症性疼痛、および脊髄損傷からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
化合物が注射によって投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
化合物が、下記式3、
【化13】

で表される、請求項21に記載の方法。

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−108028(P2009−108028A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−195689(P2008−195689)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(507324496)国立中山大学 (4)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL SUN YAT−SEN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 70, Lian−Hai Road, Gu−Shan District, Kaohsiung City, Taiwan
【Fターム(参考)】