説明

インクジェットヘッド記録装置

【課題】インクジェットの吐出不良による画像不良を回避することができるインクジェットヘッド記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド10は、ノズル19への分岐後流路に設けられた開放面(開口)33と、該開放面33上流を閉鎖可能の流路閉鎖部材23と、各ノズル19への機能性液状体供給流路34とは別経路で配置された液加減圧部26と、流路閉鎖部材23により分岐後流路を閉鎖した後、ノズル19と液加減圧部26とを接続して機能性液状体32の加減圧を行う加減圧制御手段30と、を備える。パージ処理時に、流路閉鎖部材23によってノズル19への開口33上流を閉鎖した後、液加減圧部26によりノズル19と液加減圧部26とを連結させて、機能性液状体32の加減圧を行い、ノズル19に圧力を作用させてノズル19の吐出不良を解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド記録装置に関し、特に、ノズルへの加減圧機構を有し、インクジェットヘッドの吐出不良を改善することができるインクジェットヘッド記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線、電子線などの活性エネルギー照射により硬化する機能性材料(機能性液状体)をインクジェットヘッドのノズルから被記録媒体上に吐出し、活性エネルギー照射により機能性材料を硬化させて画像形成を行うインクジェットヘッド記録装置は、環境に優しい、種々の被記録媒体に高速で記録できる、滲みにくく高精細画像が得られる、などの多くの特徴を有している。特に紫外線硬化型機能性材料(紫外線硬化型インク)を用いた記録装置は光源の扱い易さ、コンパクト化が容易、等の観点から開発が進んでいる。
【0003】
一方、インクジェットヘッドは多数のノズルを有し、ノズルの吐出不良が発生すると画像欠陥として視認される。ノズルの吐出不良は、インク流路内での泡の発生・混入やインク析出物等が原因と考えられる。ノズルの吐出不良に対する対策としては、インクジェットヘッドに接続するインクタンクを介して、加圧機構からノズルを加圧する加圧パージを行って、ノズルの吐出不良の改善を図るようにしたインクジェットプリンタおよびパージ方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−252928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のインクジェットプリンタによると、複数のノズルを同時に加圧してパージするため、ノズルの状況によっては泡や析出物を除去するのに十分な圧力が加わらず、泡や析出物を除去することができず、吐出不良が改善されないことがあった。例えば、あるノズルに泡が混入した場合、そのノズルに高いパージ圧をかけて、インクと共に泡を放出したいが、従来の構造では他のノズル(泡が混入していないノズル)からインクが出てしまうためにパージ圧があまり上がらず、泡を放出できない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、インクジェットの吐出不良による画像不良を回避することができるインクジェットヘッド記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記インクジェットヘッド記録装置によって達成される。
(1)機能性液状体をインクジェットヘッドのノズルから記録媒体上へ吐出するインクジェットヘッド記録装置であって、前記各ノズルへの前記機能性液状体の分岐後の流路に設けられた開口部と、前記各ノズルへの分岐後の流路でインクタンク側の前記開口部を閉鎖可能とする流路閉鎖部材と、前記各ノズルへの前記機能性液状体供給流路とは別経路で配置された液加減圧部と、前記各開口部を前記液加減圧部へ選択的に連結できる連結部材と、前記流路閉鎖部材により分岐後の流路を閉鎖し、前記連結部材により所定ノズルと前記液加減圧部とを接続して機能性液状体の加減圧を実施する加減圧制御手段とを備えるインクジェットヘッド記録装置。
【0008】
上記構成のインクジェットヘッド記録装置によれば、ノズルへの分岐後の流路に設けられた開口部と、インクタンク側の該開口部を閉鎖可能とする流路閉鎖部材と、各ノズルへの機能性液状体供給流路とは別経路で配置された液加減圧部と、各開口部と液加減圧部とを選択的に連結する連結部材と、流路閉鎖部材により分岐後の流路を閉鎖した後、連結部材によりノズルと液加減圧部とを接続して機能性液状体の加減圧を行う加減圧制御手段と、を備えたので、所定のタイミングで、流路閉鎖部材によって所望のノズルへの開口部を閉鎖し、更に、連結部材により選択された開口部と液加減圧部とを接続して機能性液状体の加減圧(以降、パージ処理と称する)を行い、泡などの異物を除去するのに十分な圧力を選択されたノズルのみに作用させてノズルの吐出不良を解消することができる。
【0009】
(2)前記連結部材が、所定数の前記ノズルとの接続口を備える上記(1)に記載のインクジェットヘッド記録装置。
【0010】
上記構成のインクジェットヘッド記録装置によれば、連結部材が、所定数の前記ノズルとの接続口を備えるので、多数のノズルの中から選択された一部のノズルと液加減圧部とを接続させて、パージ処理が必要な複数ノズルに対して選択的にパージ圧を作用させることができる。これにより、加圧されるノズル数を限定して圧力の低下を抑制できる。従って、全ノズルに対してパージ処理したときに生じるパージ圧の抜け発生を防止しつつ、ある程度の迅速化が可能となり、パージ処理が必要なノズルに対して効率的にパージ処理することができる。
【0011】
(3)前記加減圧制御手段が、吐出不良ノズル検出手段と連動する上記(1)または(2)に記載のインクジェットヘッド記録装置。
【0012】
上記構成のインクジェットヘッド記録装置によれば、加減圧制御手段が、吐出不良ノズル検出手段と連動するので、連結部材により該吐出不良ノズルを液加減圧部に接続させてパージ処理を行い、吐出不良ノズルの吐出不良を確実に解消することができる。
【0013】
(4)前記ノズルから所定数の液吐出後に、前記加減圧制御手段が、加減圧を実施する上記(1)または(2)に記載のインクジェットヘッド記録装置。
【0014】
上記構成のインクジェットヘッド記録装置によれば、前記ノズルから所定数の液吐出後に、加減圧制御手段が加減圧を実施することができ、減圧することを加えることで加圧することのみよりも不良要因を効果的に除去することができ、ノズルの吐出不良による画像形成不良をより強力に回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インクジェットの吐出不良による画像不良を回避することができるインクジェットヘッド記録装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は本発明に係るインクジェット記録装置の内、活性エネルギー硬化型インクジェット記録方法を実施するインクジェット記録装置の一実施の形態の構成概略図、図2は図1に示した活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置におけるインクジェットヘッドによる画像記録部の拡大斜視図である。
【0017】
この実施形態の活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置110は、活性エネルギー硬化型インクとして、紫外線の照射によって硬化するUV硬化型インクを使用するものである。
図1において、活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置110の筐体112では、送出側ロール121に巻回された被記録媒体Sが搬送ローラ130により延出され、可撓性の遮光扉114を通過して筐体112内に搬送されている。この搬送された被記録媒体Sは筐体112の反対側に配置された可撓性の遮光扉116から送出されて、巻き取り側ロール123に巻き取られている。筐体112内に搬入された被記録媒体Sは搬送保持ローラ142により保持されプラテン140上へ送出される。更に、プラテン140を挟んだ反対側に配置された搬送保持ローラ144により被記録媒体Sが保持され、プラテン140上での走査搬送を行い、遮光扉116から送出される。プラテン140では被記録媒体Sを挟んだ対向位置に画像記録部150が配置されている。画像記録部150は、プラテン140上で走査搬送されている被記録媒体Sにインクジェット画像記録と活性エネルギー(本実施形態では紫外光)照射定着とを行っている。画像記録部150へは図示しない供給経路によりインクを供給し貯留するインク貯留部が筐体112内に備えられている。
【0018】
画像記録部150では、インクジェットヘッドであるヘッドユニット152がそのインク吐出部先端を画像記録位置でプラテン140に向けて備えられており、後述の図2に示すように被記録媒体Sの幅方向長さをアレーとするフルライン型のヘッドであり、ピエゾ型のヘッドを採用している。ヘッドユニット152は、活性エネルギーにより硬化可能なインクを被記録媒体Sに向けて吐出する。このヘッドユニット152にはインクジェットヘッド駆動装置であるヘッドドライバ154が接続されてインク各色の吐出量を制御する。ヘッドユニット152の下流には活性エネルギー照射部156が配置されている。また、画像記録部150には、不図示のインク供給部がインク供給のために接続されている。
【0019】
図3は1つのインクジェットヘッドの更に一部を破断して示す斜視図、図4は図3におけるA−A線断面図、図5は各ノズルへの開口を閉鎖する流路閉鎖部材の斜視図である。
フルライン型のインクジェットヘッドユニット152にはインクジェットヘッド10が、通常、色毎に備えられ、4〜6個程度が隣設される。図3では、これらインクジェットヘッド10の内の1つで、更にその一部の破断図として示している。
【0020】
このインクジェットヘッド10は、基板14とインク室カバー15とを接着などにより一体化してヘッド本体16を形成した後、このヘッド本体16の正面部14aに厚さ10〜100μm程度のノズルプレート17を接着して構成されている。更に、インク室カバー15をはさんでノズルプレート17の対向側に液加減圧部26が配置されている。
【0021】
基板14には、正面部14aとこれに続く側面部14bにかけて開放された複数のスリット溝18が所定の間隔で形成されている。ノズルプレート17には、スリット溝18毎に開口するノズル19が形成されている。スリット溝18は、ノズルプレート17の各ノズル19に機能性液状体(本実施例ではインク)32を個別に供給するためのインク流路の一部であり、ICウェハーの切断等に用いているダイシングソーのダイヤモンドホィール等により並行に研削されて形成される。スリット溝18のサイズは、仕様により異なるが、例えば、スリット溝18の深さが0.4mm、溝幅が80μm、スリット溝18の長さは10mm程度である。
【0022】
図3に示すように、インク室カバー15には、ノズル19の配列方向と平行(スリット溝18の長手方向に対して直角)に、断面がコの字形の流路閉鎖部材収容溝20が形成されている。
流路閉鎖部材収容溝20の長手方向角部は、略45°で面取りされた面取り部20aが形成されている。また、流路閉鎖部材収容溝20には、通常の画像形成に使用されてインク供給されるインク供給口21とインク送出口22が形成されている。
【0023】
インク室カバー15は、流路閉鎖部材収容溝20内に流路閉鎖部材23がスライド自在に挿入され、流路閉鎖部材収容溝20の長手方向が各スリット溝18と直角となるように配置されて、基板14の側面部14bに接着などによって一体に固着される。
【0024】
これにより、各スリット溝18は、開口として作用するスリット溝18の開放面33(基板14の側面部14b)が流路閉鎖部材23と連結部材24とによって閉鎖されて、互いに独立した機能性液状体供給流路34(図6にて図示)が構成される。また、インク室カバー15には、流路閉鎖部材収容溝20と流路閉鎖部材23とにより画成されて共通インク室25(図4にて図示)が形成される。
【0025】
更に、スリット溝18の開放面33(基板14の側面部14b)でノズルプレート17の対向側には前述の液加減圧部26が配置されている。液加減圧部26は開放面33上で密閉状態を保ちつつスリット溝18に対し垂直方向へスライド自在に保持されている。更に、液加減圧部26にはスリット溝18へ繋がる貫通穴24が少なくとも1個備えられ、機能性液状体32の収容用インクタンク11へチューブ12により接続されている。インクタンク11は、更にインクタンク11内の圧力を加圧し、または減圧する加減圧装置13に接続されている。
【0026】
図5に示すように、流路閉鎖部材23は、長手方向の両側面が、流路閉鎖部材収容溝20の面取り部20aに対応して、略45°の傾斜を有する傾斜面23aに形成された断面台形の板状部材であり、流路閉鎖部材収容溝20にスライド自在に組み込まれたとき、傾斜面23aが流路閉鎖部材収容溝20の面取り部20aに接触して、下面23cが基板14の側面部14bと摺接する。即ち、流路閉鎖部材23は、開口33(スリット溝18の開放面)を閉鎖しながら流路閉鎖部材収容溝20内にスライド自在に収容される。
【0027】
流路閉鎖部材23には、スリット溝18の間隔と同一ピッチで複数の角穴23bが板厚方向に貫通して形成されている。隣接する角穴23bの間に形成される穴の間隔Pは、スリット溝18の幅Lよりも広くなっている。
【0028】
流路閉鎖部材23は、流路閉鎖部材収容溝20内で矢印DまたはE方向にスライド移動して、各スリット溝18と角穴23bとが一致してノズル19へのインク32の供給が可能となるインク供給位置と(図6参照)、角穴23bがスリット溝18の中間に位置してスリット溝18の開口(開放面)33が流路閉鎖部材23により閉鎖される閉鎖位置と、に移動する(図7参照)。この移動は磁気などを利用することにより、非接触で実施することが可能である。
【0029】
液加減圧部26は、矢印GまたはH方向に移動させることにより、選択された任意のスリット溝18と貫通穴24とを一致させて液加減圧部26から該スリット溝18へのインクの供給を許容するパージ位置と、連結部材24によりすべてのスリット溝18が閉鎖されての連通が遮断される遮断位置と、に切り換えられる。
【0030】
図3に戻って、加減圧装置13は、インクタンク11内の圧力を加圧し、または減圧してインク32をノズル19に圧送し、またはノズル19から吸引してパージ処理するためのものであり、例えば、加圧ポンプや吸引ポンプである。
【0031】
加減圧制御手段30は、加減圧装置13を制御してインクタンク11内の圧力を加圧、或いは、減圧すると共に、流路閉鎖部材23および液加減圧部26を駆動する駆動装置(図示せず)を所定のタイミングで制御して、流路閉鎖部材23および液加減圧部26をそれぞれ流路閉鎖部材収容溝20内、または開放面(開口)33上でスライド移動させる。
【0032】
即ち、加減圧制御手段30に制御されて、流路閉鎖部材23がインク供給位置または閉鎖位置に位置し、液加減圧部26がパージ位置または遮断位置に位置すると共に、インクタンク11内の圧力が加圧、或いは、減圧される。
【0033】
次にインクジェットヘッド10の作用について図6から図9に基づいて説明する。図6は流路閉鎖部材により各ノズルへの開口が開放された状態を示す図3におけるB−B線断面図、図7は流路閉鎖部材により各ノズルへの開口が閉鎖された状態を示す図3におけるB−B線断面図、図8は連結部材によりすべてのノズルへの開口と液加減圧部との接続が遮断されて状態を示す図3におけるC−C線断面図、図9は選択された所定のノズルの開口と液加減圧部とが連結部材により接続された状態を示す図3におけるC−C線断面図である。
【0034】
先ず、ノズル19からインク32を吐出して記録媒体S上に画像を形成する画像形成時のインクジェットヘッド10の作用について説明する。図6に示すように、流路閉鎖部材23は、加減圧制御手段30に制御されてスリット溝18と角穴23bとが一致するインク供給位置にあり、インク供給口21から供給されるインク32は、インク室25、流路閉鎖部材23の角穴23b、スリット溝18を通りノズル19に供給される。
【0035】
ここで、ピエゾ素子やサーマルヘッドなどのインク吐出加圧手段(図示せず)を作動させてスリット溝18内のインクを加圧することで、ノズル19からインク滴を吐出させて画像を形成する。
【0036】
インクジェットヘッド10の吐出不良が発生したり、或いは、インクジェットヘッド10からの吐出回数が予め決められた所定数に達して、ノズル19のパージ処理が必要になると、図7に示すように、加減圧制御手段30に制御されて、流路閉鎖部材23が矢印D方向に1/2ピッチ(図5 P幅)移動して閉鎖位置に位置し、スリット溝18の開放面(開口)33と共通インク室25との接続を遮断する。
【0037】
ここで、隣接する角穴23b間の間隔P(図5参照)は、スリット溝18の幅L(図2参照)よりも広いので、流路閉鎖部材23が1/2ピッチスライド移動すると、スリット溝18の開放面33は、角穴23b間の壁の下面により確実に遮蔽される。
【0038】
また同時に、液加減圧部26は、図9に示すように、加減圧制御手段30に制御されて、矢印GまたはH方向に移動して、パージ処理すべきノズル19に対応するスリット溝18と貫通穴24とが一致するパージ位置に位置する。これにより、選択されたノズル19がインクタンク11に接続される。
【0039】
ここで、加減圧装置13を作動させてインクタンク11内の圧力を高めると、インクタンク11内のインク32は、チューブ12を通って液加減圧部26に供給され、更に、貫通穴24、選択された(パージ処理すべき)スリット溝18を介してノズル19に高圧を作用させて、発生した気泡などをインクと共に排出し、ノズル19の内部を清掃してインク詰まりなどの不具合を解消する。尚、加減圧装置13により負圧を発生させて、ノズル19から吸引してノズル19の内部を清掃するようにしてもよい。
【0040】
上記したパージ処理は、画像形成と次の画像形成の間、画像の種類が変更されるとき、或いは、作業の開始、中断、または終了時などのメンテナンス実施時に実施するのが望ましい。このとき、インク32の受け皿をインクジェットヘッド10の下方に配置するか、インクジェットヘッド10を記録領域外のメンテナンスステーションに移動させてからパージ処理を行って、ノズル19から排出されるインク32を周囲に飛散させることなく処理する。
【0041】
上記したように、本発明のインクジェットヘッド記録装置110は、選択されたノズル19を個別にパージ処理するので、すべてのノズル19を同時に処理する場合と比較して、パージ処理によるインク32の消耗量を大幅に低減することができ、メンテナンス費用を抑制することが可能となる。
【0042】
上記の実施形態においては、液加減圧部26に1つの貫通穴24を設け、1つのノズル19ごとにパージ処理するものとして説明したが、例えば、1〜10個の複数の貫通穴24を設け、複数個のノズル19を同時にパージ処理するようにしてもよく、より効率的な処理が可能となる。
ここで、1つの貫通穴24の場合、全スリット溝18を常に密閉するために、液加減圧部26の長さは全スリット溝18の範囲の少なくとも2倍が必要となる。複数の貫通穴24の場合、その都度、短く設定することが可能となる。
また、流路閉鎖部材23は密閉状態のインク室カバー15内に収容されているが、スライド方向(矢印DとE方向)へインク室カバー15から繰り出す構成とすることもできる。この時、インク室カバー15で流路閉鎖部材23が出入する開口はインク漏れが起きないように密閉されている。
【0043】
尚、上記したパージ処理は、ノズル19からのインク吐出数が所定の吐出数を経過した時点で定期的に行うようにすれば、常にノズル19の吐出不良が回避された状態を維持することができ、高画質の画像が得られる。また、吐出不良ノズル検出手段(図示せず)を備えて吐出不良ノズルを検出するようにしてもよく、この場合は効率的に吐出不良ノズルに対してパージ処理することができる。
【0044】
次に、本実施形態に関する部分のヘッドドライバ154の構成と、当該ヘッドドライバ154の制御による活性エネルギー硬化型インクジェット記録方法の例について説明する。
図10は、本実施形態のインクジェットヘッド駆動装置を示すブロック図である。
インクジェット駆動装置であるヘッドドライバ154は、図3に示すように、インクジェットヘッドユニット152を構成する各インクジェットヘッド10によるインク吐出のための記録用画像データを保存しているメモリ81と、記録用画像データから画像となるピクセル又は非画像となるピクセルが所定連続数となる画像部分を算出する画素データ解析手段82と、インクジェットヘッド10の吐出が算出されるピクセルの所定連続数Nを設定する所定値設定手段83と、画素データ解析手段82にて算出された前記被記録媒体の搬送方向に対応する画像となるピクセル又は非画像となるピクセルの連続数nと前記所定値設定手段83により設定された所定連続数Nとを比較し、画素データ解析手段82にて算出された数値が所定値Nを超える場合に、これに対応するインクジェットヘッド10のパージ処理ノズルを決定するパージ処理ノズル決定手段84と、を備えている。
【0045】
このパージ処理ノズル決定手段84で決定したノズルに対して、パージ処理用のデータをインクジェットヘッド10に送出するのが加減圧制御手段30である。そして、パージ処理が適宜のタイミングで実行される。
【0046】
なお、メモリ81に保存される記録用画像データは、当該活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置110に接続されるコンピュータ等による入力部86から、入力可能になっている。
【0047】
以上のヘッドドライバ154を備えたことによって、活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置110は、次に示す本実施形態のインクジェットヘッド駆動方法を実施する。即ち、被記録媒体の搬送方向に対応する画像となるピクセル又は非画像となるピクセルの所定連続数を基に、ヘッドをハ゜ーシ゛するインクジェットヘッド駆動方法である。
【0048】
ここで、上記インクジェットヘッド記録方法において、被記録媒体の搬送方向に対応する画像データにおいて、所定連続数Nを1万ピクセルと設定する。この数値は、『インクジェットヘッドCA3(東芝テック製)を温度45℃、駆動電圧23V、インク高さ-80mm、周波数4.8kHz、ドロップ数7ドロップで、45℃で粘度10cP、表面張力30mN/mのインクを吐出する』といった構成のインクジェットヘッドにおいて、過去のデータから有効なものである。このように、インクの吐出不良が発生する被記録媒体の搬送方向に対応する前記ピクセルの連続数より少ない1万ピクセル前後でパージ処理を実施することにより、連続吐出により発生するインクに関する障害を取り除くようにすれば、連続吐出に起因したインクの吐出不良を効率良く防止することができる。
【0049】
また、他の実施形態として、上記インクジェットヘッド記録方法において、被記録媒体の搬送方向に対応する所定連続数Nがインクジェットヘッドユニット152の各ノズル内インクでの泡発生前のピクセル連続数とすることができる。この連続数は、過去の泡発生時のデータから設定される。これは、ヘッドユニット個々の特性でもあり、予め測定されて決定されることになる。
このような構成にすると、連続吐出に起因したインクの吐出不良の一要因は、ノズルの開口端周辺に停留しているインク液中への気泡の混入であるため、上記のようにインクの泡発生の手前で、パージ処理を実施することにより、気泡混入を解消でき、連続吐出に起因したインクの吐出不良を効率良く防止することができる。
【0050】
また、更に他の実施形態として、上記インクジェットヘッド記録方法において、被記録媒体の搬送方向に対応する非画像となるピクセルの所定連続数Nがノズル内インクの凝集や固着発生手前に対応する連続数である構成とすることができる。これは、ヘッドユニット個々の特性でもあり、予め測定されて決定されることになる。
このような構成にすると、ノズルの連続休止に起因したインクの吐出不良の一要因である、インク液中の溶媒の蒸発や成分の凝集によるインクの固着に対し、上記のようにインクの固着発生の手前で、パージ処理を実施することにより、溶媒の蒸発や成分の凝集によるインクの固着を未然に防ぎ、連続休止に起因したインクの吐出不良を効率良く防止することができる。
【0051】
このように、加減圧制御手段30が画像データから各ノズルのパージ処理を選択設定することで、ある期間吐出を行わなかったノズルや、ある期間連続で吐出を行ったノズルに対してのみインク圧力を確実に伝えて、パージ処理を実行し、ノズル詰まりを抑制して高速且つ高画質な画像形成を行うことができる。
【0052】
また、インクジェットヘッド10への初期インク32の充填時には、インクタンク11に圧力を加えてインク32をインクジェットヘッド10に送り込む必要があるが、本発明の加減圧装置13を利用してインク32の充填を行うこともできる。
【0053】
また、本実施形態のインクジェット記録装置により画像が記録される被記録媒体および機能性液状体は、紙やインクに限定されるものではない。例えば、高分子フィルムやガラス上にインクを吐出して ディスプレイ用カラーフィルターを作成したり、溶接状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成する装置とすることもできる。
【0054】
ここで、本発明でいう「活性エネルギー」とは、その照射によりインク組成物中において開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば、特に制限はなく、広く、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点からは、紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。従って、本発明のインク組成物としては、紫外線を照射することにより硬化可能なインク組成物であることが好ましい。
【0055】
本発明のインクジェット記録装置において、活性エネルギーのピーク波長は、インク組成物中の増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nm、好ましくは、300〜450nm、より好ましくは、350〜450nmであることが適当である。また、本発明のインク組成物の(a)電子移動型開始系は、低出力の活性エネルギーであっても十分な感度を有するものである。従って、活性エネルギーの出力は、例えば、2,000mJ/cm2以下、好ましくは、10〜2,000mJ/cm2、より好ましくは、20〜1,000mJ/cm2、更に好ましくは、50〜800mJ/cm2の照射エネルギーであることが適当である。また、活性エネルギーは、露光面照度(被記録媒体表面の最高照度)が、例えば、10〜2,000mW/cm2、好ましくは、20〜1,000mW/cm2で照射されることが適当である。
特に、本発明のインクジェット記録装置では、活性エネルギー照射が、発光波長ピークが390〜420nmであり、かつ、前記被記録媒体表面での最高照度が10〜1,000mW/cm2となる紫外線を発生する発光ダイオードから照射されることが好ましい。
【0056】
また、本発明のインクジェット記録装置では、活性エネルギーは被記録媒体上に吐出されたインク組成物に対して、例えば、0.01〜120秒、好ましくは0.1〜90秒照射することが適当である。
更に、本発明のインクジェット記録装置では、インク組成物を一定温度に加温するとともに、インク組成物の被記録媒体への着弾から活性エネルギーの照射までの時間を、0.01〜0.5秒とすることが望ましく、好ましくは0.02〜0.3秒、更に好ましくは0.03〜0.15秒である。このようにインク組成物の被記録媒体への着弾から活性エネルギーの照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。
【0057】
なお、本発明のインクジェット記録装置を用いてカラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。このように重ねることにより、下部のインクまで活性エネルギーが到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、臭気の低減、密着性の向上が期待できる。また、活性エネルギーの照射は、全色を射出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
【0058】
また、上述したように、本発明のインク組成物のような活性エネルギー硬化型インクは、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが望ましいことから、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温による温度制御を行うことが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、或いは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0059】
また、活性エネルギー源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェットには、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。更には、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、活性エネルギー硬化型インクジェット用放射源として期待されている。
【0060】
また、上記のように、活性エネルギー源として、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に、一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性エネルギーを放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性エネルギー源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
【0061】
〔被記録媒体〕
本発明のインク組成物を適用しうる被記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料或いは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等を挙げることができる。その他、被記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も被記録媒体として使用可能である。
本発明のインク組成物において、硬化時の熱収縮が少ない材料を選択した場合、硬化したインク組成物と被記録媒体との密着性に優れるため、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいフィルム、例えば、熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムなどにおいても、高精細な画像を形成しうるという利点を有する。
【0062】
以下に、本発明で使用できるインク組成物に用いられる各構成成分について順次説明する。
〔インク組成物〕
本発明に用いられるインク組成物は、活性エネルギーの照射により硬化可能なインク組成物であり、例えば、カチオン重合系インク組成物、ラジカル重合系インク組成物、水性インク組成物等が挙げられる。これら組成物について以下詳細に説明する。
【0063】
(カチオン重合系インク組成物)
カチオン重合系インク組成物は、(a)カチオン重合性化合物と、(b)活性エネルギーの照射により酸を発生する化合物、(c)着色剤を含有する。所望により、更に紫外線吸収剤、増感剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、界面活性剤等を含有してもよい。
以下、カチオン重合系インク組成物に用いられる各構成成分について順次説明する。
【0064】
〔(a)カチオン重合性化合物〕
本発明に用いられる(a)カチオン重合性化合物は、後述する(b)活性エネルギーの照射により酸を発生する化合物から発生する酸により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、同2001−40068、同2001−55507、同2001−310938、同2001−310937、同2001−220526などの各公報に記載されている、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0065】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、脂肪族エポキシドなどが挙げられる。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0066】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
【0067】
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等が挙げられる。その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0068】
エポキシ化合物は、単官能であっても多官能であってもよい。
本発明に用いうる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0069】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3',4'−エポキシ−6'−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0070】
これらのエポキシ化合物の中でも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0071】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0072】
ビニルエーテル化合物は、単官能であっても多官能であってもよい。
具体的には、単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0073】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0074】
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0075】
本発明におけるオキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526、同2001−310937、同2003−341217の各公報に記載される如き、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明のインク組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインク組成物と被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0076】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217公報、段落番号〔0021〕乃至〔0084〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
本発明で使用するオキセタン化合物の中でも、インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
【0077】
本発明のインク組成物には、これらのカチオン重合性化合物を、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、インク硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、オキセタン化合物とエポキシ化合物とから選ばれる少なくとも1種の化合物と、ビニルエーテル化合物とを併用することが好ましい。
インク組成物中の(a)カチオン重合性化合物の含有量は、組成物の全固形分に対し、10〜95質量%が適当であり、好ましくは30〜90質量%、更に好ましくは50〜85質量%の範囲である。
【0078】
[(b)活性エネルギーの照射により酸を発生する化合物]
本発明のインク組成物は、活性エネルギーの照射により酸を発生する化合物(以下、適宜、「光酸発生剤」と称する。)を含有する。
本発明に用いうる光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
【0079】
このような光酸発生剤としては、例えば、活性エネルギーの照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0080】
光酸発生剤としては、また、特開2002−122994公報、段落番号〔0029〕乃至〔0030〕に記載のオキサゾール誘導体、s−トリアジン誘導体なども好適に用いられる。更に、特開2002−122994公報、段落番号〔0037〕乃至〔0063〕に例示されるオニウム塩化合物、スルホネート系化合物も、本発明における光酸発生剤として、好適に使用しうる。
【0081】
(b)光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
インク組成物中の(b)光酸発生剤の含有量は、インク組成物の全固形分換算で、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0082】
[(c)着色剤]
本発明のインク組成物は、着色剤を添加することで、可視画像を形成することができる。例えば、平版印刷版の画像部領域を形成する場合などには、必ずしも添加する必要はないが、得られた平版印刷版の検版性の観点からは着色剤を用いることも好ましい。
ここで用いることのできる着色剤には、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の色材、(顔料、染料)を適宜選択して用いることができる。例えば、耐候性に優れた画像を形成する場合には、顔料が好ましい。染料としては、水溶性染料及び油溶性染料のいずれも使用できるが、油溶性染料が好ましい。
【0083】
〔顔料〕
本発明に好ましく使用される顔料について述べる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、又は顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0084】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0085】
赤或いはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G'レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0086】
青或いはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0087】
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0088】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
【0089】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0090】
顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、Zeneca社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0091】
インク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記(a)カチオン重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、活性エネルギー硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、(a)カチオン重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0092】
顔料の平均粒径は、0.02〜4μmにするのが好ましく、0.02〜2μmとするのが更に好ましく、より好ましくは、0.02〜1.0μmの範囲である。
顔料粒子の平均粒径を上記好ましい範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
【0093】
〔染料〕
本発明に用いる染料は、油溶性のものが好ましい。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であるものを意味し、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下である。従って、所謂、水に不溶性の油溶性染料が好ましく用いられる。
【0094】
本発明に用いる染料は、インク組成物に必要量溶解させるために上記記載の染料母核に対して油溶化基を導入することも好ましい。
油溶化基としては、長鎖、分岐アルキル基、長鎖、分岐アルコキシ基、長鎖、分岐アルキルチオ基、長鎖、分岐アルキルスルホニル基、長鎖、分岐アシルオキシ基、長鎖、分岐アルコキシカルボニル基、長鎖、分岐アシル基、長鎖、分岐アシルアミノ基長鎖、分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖、分岐アルキルアミノスルホニル基及びこれら長鎖、分岐置換基を含むアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、アリールスルホニルアミノ基等が挙げられる。
また、カルボン酸、スルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖、分岐アルコール、アミン、フェノール、アニリン誘導体を用いて油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
【0095】
前記油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、インク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性が良くなる。
また、退色、特にオゾンなどの酸化性物質に対する耐性や硬化特性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)ことが望ましい。このため、本発明で用いる油溶性染料として、酸化電位が1.0V(vsSCE)以上であるものが好ましく用いられる。酸化電位は高いほうが好ましく、酸化電位が1.1V(vsSCE)以上のものがより好ましく、1.15V(vsSCE)以上のものが特に好ましい。
【0096】
イエロー色の染料としては、特開2004−250483号公報の記載の一般式(Y−I)で表される構造の化合物が好ましい。
特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]から[0071]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0097】
マゼンタ色の染料としては、特開2002−114930号公報に記載の一般式(3)、(4)で表される構造の化合物が好ましく、具体例としては、特開2002−114930号公報の段落[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]から[0122]に記載されている一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例として特開2002−121414号公報の段落番号[0123]から[0132]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)の油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0098】
シアン色の染料としては、特開2001−181547号公報に記載の式(I)〜(IV)で表される染料、特開2002−121414号公報の段落番号[0063]から[0078]に記載されている一般式(IV−1)〜(IV−4)で表される染料が好ましいものとして挙げられ、具体例として特開2001−181547号公報の段落番号[0052]から[0066]、特開2002−121414号公報の段落番号[0079]から[0081]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]から[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更に一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]から[0201]に記載の化合物が挙げられる。尚、前記式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)の油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0099】
これらの着色剤はインク組成物中、固形分換算で1〜20質量%添加されることが好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
本発明のインク組成物には、前記の必須成分に加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。これらの任意成分について説明する。
【0100】
〔紫外線吸収剤〕
本発明においては、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%程度である。
【0101】
〔増感剤〕
本発明のインク組成物には、光酸発生剤の酸発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、必要に応じ、増感剤を添加してもよい。増感剤としては、光酸発生剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものであれば、何れでもよい。好ましくは、アントラセン、9,10−ジアルコキシアントラセン、ピレン、ペリレンなどの芳香族多縮環化合物、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーケトンなどの芳香族ケトン化合物、フェノチアジン、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物が挙げられる。添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、光酸発生剤に対し0.01〜1モル%、好ましくは0.1〜0.5モル%で使用される。
【0102】
〔酸化防止剤〕
インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.1〜8質量%程度である。
【0103】
〔褪色防止剤〕
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.1〜8質量%程度である。
【0104】
〔導電性塩類〕
本発明のインク組成物には、射出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0105】
〔溶剤〕
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0106】
〔高分子化合物〕
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0107】
〔界面活性剤〕
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0108】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0109】
[ラジカル重合系インク組成物]
ラジカル重合系インク組成物は、(d)ラジカル重合性化合物と(e)重合開始剤、(f)着色剤を含有する。所望により、更に、増感色素、共増感剤等を含有してもよい。
以下、ラジカル重合系インク組成物に用いられる各構成成分について順次説明する。
【0110】
(d)[ラジカル重合性化合物]
ラジカル重合性化合物としては、例えば、以下に挙げるような付加重合化能なエチレン性不飽和結合を有する化合物が含まれる。
【0111】
[付加重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物]
本発明のインク組成物に用い得る付加重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、上記不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等があげられる。
【0112】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、へキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0113】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、へキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(アクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0114】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネー卜等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。さらに、前述のエステルモノマーの混合物もあげることができる。また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−へキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−へキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0115】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加した1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等があげられる。CH2=C(R)COOCH2CH(R')OH (A)(ただし、RおよびR'はHあるいはCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号に記載されているようなウレタンアクリレー卜類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ぺージ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。本発明において、これらのモノマーはプレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態で使用しうる。
【0116】
ラジカル重合性化合物の使用量はインク組成物の全成分に対して、通常1〜99.99%、好ましくは5〜90.0%、更に好ましくは10〜70%である(ここで言う%は質量%である)。
【0117】
(e)〔光重合開始剤〕
次に本発明のラジカル重合系インク組成物に使用される光重合開始剤について説明する。
本発明における光重合開始剤は光の作用、または、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物である。
【0118】
好ましい光重合開始剤としては(イ)芳香族ケトン類、(ロ)芳香族オニウム塩化合物、(ハ)有機過酸化物、(ニ)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(ホ)ケトオキシムエステル化合物、(ヘ)ボレート化合物、(ト)アジニウム化合物、(チ)メタロセン化合物、(リ)活性エステル化合物、(ヌ)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
【0119】
(f)[着色剤]
カチオン重合系インク組成物に記載した(c)着色剤と同じものを利用することができる。
本発明のインク組成物には、前記の必須成分に加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。これらの任意成分について説明する。
〔増感色素〕
本発明においては、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加しても良い。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
【0120】
〔共増感剤〕
さらに本発明のインクには、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えても良い。
【0121】
この様な共増感剤の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0122】
別の例としてはチオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0123】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0124】
また、保存性を高める観点から、重合禁止剤を200〜20000ppm添加することが好ましい。本発明のインクジェト記録用インクは、40〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して射出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
【0125】
〔その他〕
この他に、必要に応じて公知の化合物を用いることができ、例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を適宜選択して用いることができる。また、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーを含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0126】
また、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0127】
また、インク色材の遮光効果による感度低下を防ぐ手段として、重合開始剤寿命の長いカチオン重合性モノマーと重合開始剤とを組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも好ましい態様の一つである。
【0128】
[水性インク組成物]
水性インク組成物は、重合性化合物と活性エネルギーの作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤を含有する。所望により、更に、色材、等を含有してもよい。
【0129】
[重合性化合物]
本発明の水性インク組成物に含まれる重合性化合物としては、公知の水性インク組成物に含まれる重合性化合物を用いることができる。
水性インク組成物は、硬化速度、密着性、柔軟性などのエンドユーザー特性を考慮した処方を最適化するために、反応性材料を加えることができる。このような反応性材料としては、(メタ)クリレート(即ち、アクリレート及び/又はメタクリレート)モノマー及びオリゴマー、エポキサイド並びにオキセタンなどが用いられる。
アクリレートモノマーの例としては、フェノキシエチルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート)、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)トリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビス(ペンタエリスリトール)ヘキサアクリレート、エトキシ化又はプロポキシ化グリコール及びポリオールのアクリレート(例えば、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート)、及びこれらの混合物が挙げられる。
アクリレートオリゴマーの例としては、エトキシ化ポリエチレングリコール、エトキシ化トリメチロールプロパンアクリレート及びポリエーテルアクリレート及びそのエトキシ化物、及びウレタンアクリレートオリゴマーが挙げられる。
メタクリレートの例としては、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。
オリゴマーの添加量は、インク組成物全重量に対して1〜80重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。
【0130】
〔活性エネルギーの作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤〕
本発明のインク組成物に用いることができる重合開始剤について説明する。一例としては、例えば、波長400nm前後までの光重合開始剤が挙げられる。このような光重合開始剤としては、例えば、長波長領域に官能性、即ち、紫外線を受けてラジカルを生成する感受性を持つ物質である下記一般式で表される光重合開始剤(以下、TX系と略称する)が挙げられ、本発明においては、これらの中から適宜に選択して使用することが特に好ましい。
【0131】
【化1】

【0132】
上記一般式TX−1〜TX−3中、R2は−(CH2)x−(x=0または1)、−O−(CH2)y−(y=1または2)、置換若しくは未置換のフェニレン基を表わす。またR2がフェニレン基の場合には、ベンゼン環中の水素原子の少なくとも1つが、例えば、カルボキシル基若しくはその塩、スルホン酸若しくはその塩、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、炭素数1〜4のアルコキシル基、フェノキシ基等のアリールオキシ基等から選ばれる1つまたは2つ以上の基や原子で置換されていてもよい。Mは、水素原子若しくはアルカリ金属(例えば、Li、Na、K等)を表わす。更に、R3及びR4は各々独立に、水素原子、または置換若しくは未置換のアルキル基を表わす。ここでアルキル基の例としては、例えば、炭素数1〜10程度、特には、炭素数1〜3程度の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、これらのアルキル基の置換基の例としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、シュウ素原子等)、水酸基、アルコキシル基(炭素数1〜3程度)等が挙げられる。また、mは1〜10の整数を表わす。
【0133】
更に本発明において、下記一般式からなる光重合開始剤 Irgacure2959(商品名:Ciba Specialty Chemicals製)の水溶性の誘導体(以下、IC系と略称する)を使用することもできる。具体的には、下記式からなるIC−1〜IC−3を使用することができる。
【0134】
【化2】

【0135】
〔クリアインクとする場合の処方〕
上述した水溶性重合性化合物は、上記したような色材を含有させることなく、透明な水性インクの形態とすることで、クリアインクとすることができる。特に、インクジェット記録特性を有するように調製すれば、水性光硬化型のインクジェット記録用のクリアインクが得られる。かかるインクを用いれば、色材を含有していないので、クリアな皮膜を得ることができる。色材を含有しないクリアインクの用途としては、画像印刷への適性を被記録材に付与するためのアンダーコート用としたり、或いは、通常のインクで形成した画像の表面保護、更なる装飾や光沢付与等を目的としたオーバーコート用としての用途等が挙げられる。クリアインクには、これらの用途に応じて、着色を目的としない無色の顔料や微粒子等を分散して含有させることもできる。これらを添加することによって、アンダーコート、オーバーコートいずれにおいても、印刷物の画質、堅牢性、施工性(ハンドリング性)等の諸特性を向上させることができる。
【0136】
そのようなクリアなインクに適用する場合の処方条件としては、インクの主成分とする水溶性重合性化合物が10〜85%、光重合開始剤(例えば、紫外線重合触媒)を、上記水溶性重合性化合物100質量部に対して1〜10質量部含有され、同時に、インク100部に対して光重合開始剤が最低0.5部が含有されているように調製することが好ましい。
【0137】
〔色材含有インクにおける材料構成〕
上述した水溶性重合性化合物を色材を含有するインクに利用する場合には、含有させた色材の吸収特性に合わせて、インク中における重合開始剤と重合性物質の濃度を調節することが好ましい。前記したように、配合量としては、水或いは溶剤の量を、質量基準で、40%〜90%の範囲、好ましくは60%〜75%の範囲とする。更に、インク中における重合性化合物の含有量は、インク全量に対して、質量基準で1%〜30%の範囲、好ましくは、5%〜20%の範囲とする。重合開始剤は、重合性化合物の含有量に依存するが、概ね、インク全量に対して、質量基準で0.1〜7%、好ましくは、0.3〜5%の範囲である。
【0138】
インクの色材として顔料が使用される場合には、インク中における純顔料分の濃度は、概ね、インク全量に対して0.3質量%〜10質量%の範囲である。顔料の着色力は顔料粒子の分散状態に依存するが、約0.3〜1%の範囲であると、淡色のインクとして利用される範囲となる。また、それ以上であると、一般のカラー着色用に用いられる濃度を与える。
【0139】
[インク組成物の好ましい物性]
本発明のインク組成物は、射出性を考慮し、射出時の温度において、インク粘度が20mPa・s以下であることが好ましく、更に好ましくは10mPa・s以下であり、上記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。
【0140】
本発明のインク組成物の共通の表面張力としては、好ましくは20〜40mN/m、更に好ましくは25〜35mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点はで40mN/m以下が好ましい。
【0141】
このようにして調整された本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インクとして好適に用いられる。インクジェット記録用インクとして用いる場合には、インク組成物をインクジェットプリンターにより被記録媒体に射出し、その後、射出されたインク組成物に活性エネルギーを照射して硬化して記録を行う。
このインクにより得られた印刷物は、画像部が紫外線などの活性エネルギー照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、インクによる画像形成以外にも、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成など、種々の用途に使用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】インクジェットヘッド記録装置の構成を示す要部斜視図。
【図2】図1に示した活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置におけるインクジェットヘッドによる画像記録部の拡大斜視図。
【図3】インクジェットヘッドの一部を破断して示す斜視図。
【図4】図3におけるA−A線断面図。
【図5】各ノズルへの開口を閉鎖する流路閉鎖部材の斜視図。
【図6】流路閉鎖部材により各ノズルへの開口が開放された状態を示す図2におけるB−B線断面図。
【図7】流路閉鎖部材により各ノズルへの開口が閉鎖された状態を示す図2におけるB−B線断面図。
【図8】連結部材によりすべてのノズルの開口と液加減圧部との接続が遮断された状態を示す図2におけるC−C線断面図。
【図9】選択された所定のノズルの開口と液加減圧部とが連結部材により接続された状態を示す図2におけるC−C線断面図。
【図10】本実施形態のインクジェットヘッド駆動装置を示すブロック図。
【符号の説明】
【0143】
10 インクジェットヘッド
18 スリット
19 ノズル
23 流路閉鎖部材
24 貫通穴
26 液加減圧部
30 加減圧制御手段
32 インク(機能性液状体)
33 スリット溝の開放面(開口)
110 インクジェットヘッド記録装置
S 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性液状体をインクジェットヘッドのノズルから記録媒体上へ吐出するインクジェットヘッド記録装置であって、
前記各ノズルへの前記機能性液状体の分岐後の流路に設けられた開口部と、
前記各ノズルへの分岐後の流路でインクタンク側の前記開口部を閉鎖可能とする流路閉鎖部材と、
前記各ノズルへの前記機能性液状体の供給流路とは別経路で配置された液加減圧部と、
前記各開口部を前記液加減圧部へ選択的に連結できる連結部材と、
前記流路閉鎖部材により分岐後の流路を閉鎖し、前記連結部材により所定ノズルと前記液加減圧部とを接続して機能性液状体の加減圧を実施する加減圧制御手段とを備えるインクジェットヘッド記録装置。
【請求項2】
前記連結部材が、所定数の前記ノズルとの接続口を備える請求項1記載のインクジェットヘッド記録装置。
【請求項3】
前記加減圧制御手段が、吐出不良ノズル検出手段と連動する請求項1又は請求項2記載のインクジェットヘッド記録装置。
【請求項4】
前記ノズルから所定数の液吐出後に、前記加減圧制御手段が加減圧を実施する請求項1又は請求項2記載のインクジェットヘッド記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−296739(P2007−296739A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126193(P2006−126193)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】