インシュレータの取り付け構造
【課題】たとえ車体パネルにインシュレータを取付けたとしても、当該取付部の剛性が他の部位に比較してそれほど高くならないように構成した。
【解決手段】車体パネル1aとフェンダパネル6及びフェンダプロテクタ7とにより形成された空間部14を流通する空気を遮断するインシュレータ15を車体パネル1aに取り付ける取り付け手段18に、フェンダパネル6に加わる衝撃力により破断する破断部18dを設けたもので、自動車の衝突時フェンダパネル6に過大な衝撃力が加わると、車体パネル1aよりインシュレータ15が脱落して、フェンダパネル6の変形をインシュレータ15が妨げることがないため、衝突時の衝撃をフェンダパネル6が効率よく吸収でき、これによって衝突による衝撃を低減することができる。
【解決手段】車体パネル1aとフェンダパネル6及びフェンダプロテクタ7とにより形成された空間部14を流通する空気を遮断するインシュレータ15を車体パネル1aに取り付ける取り付け手段18に、フェンダパネル6に加わる衝撃力により破断する破断部18dを設けたもので、自動車の衝突時フェンダパネル6に過大な衝撃力が加わると、車体パネル1aよりインシュレータ15が脱落して、フェンダパネル6の変形をインシュレータ15が妨げることがないため、衝突時の衝撃をフェンダパネル6が効率よく吸収でき、これによって衝突による衝撃を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン室内の熱気等が車室内へ流入するのを防止するインシュレータの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来乗用車等の自動車の多くは、車体の前部にエンジン室が設置されていて、このエンジン室内に動力用のエンジンが収容されている。
【0003】
またエンジン室は、上面が開閉自在なフードより覆われており、エンジン室の両側は前輪が収容されたタイヤハウスとなっていて、タイヤハウスの上面と側面は、フロントフェンダ(フェンダパネル)により覆われている。
【0004】
フェンダパネルは、エンジン室の上部両側に設けられたエプロンメンバに取り付けられており、エプロンメンバはフェンダライナの上面に取り付けられている。
【0005】
エンジン室の後部には、フロントガラスの下方に位置するようにエアボックスが設置されており、カウルトップカバーに開口された通気孔よりエアボックス内に取り込んだ外気を車室内へ流入させることにより、車室内の換気が行えるようになっている。
【0006】
しかし前記構造のエンジン室を有する自動車では、フェンダパネルとエプロンメンバ及びフェンダライナにより形成された空間部が流路となって、自動車の走行時エンジン室内の熱気や臭気が車室内へ流入することがある。
【0007】
またフロントバンパーに通気口等が開口された自動車では、降雪時に走行すると、通気口より流入した雪がフェンダパネルとエプロンメンバ及びフェンダライナにより形成された空間部を通ってヒータ近傍にまで侵入することがある。
【0008】
これを防止するため、インシュレータとして、例えば雪が入り込むのを防止する雪入り込み防止構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
前記雪入り込み防止構造は、車体前部から後方へ形成された空気流路の途中に、仕切り部材を横設すると共に、仕切り部材の側近に多孔質性弾性部材を隣接配置している。
【0010】
また仕切り部材は、外周面にシール材を一体に設けた樹脂製板材より形成されていて、フロントフェンダとエプロンメンバ及びフェンダライナとにより囲まれた領域に設置されていて仕切り部材より突設された係合部を、エプロンメンバに形成された開口部に係合することにより、エプロンメンバに仕切り部材が取り付けられている。
【特許文献1】特開2003−191863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記雪入り込み構造によれば、降雪時走行した際フロントバンパーの通気口より空気流路に侵入した雪を仕切り部材が遮断するため、ヒータへの雪の入り込みを確実に防止できる効果が得られる他に、エンジン室内の熱気や臭気が車室内へ流入するのを防止できる効果も得られる。
【0012】
しかしこのような仕切り部材をエプロンメンバに取り付けた場合、エプロンメンバにおける仕切り部材の取り付け部位は、剛性が高くなってしまい、他の部位との間で衝撃吸収構造に強弱が生じてしまうことになる。
【0013】
本発明はかかる点を改善するためになされたもので、たとえ車体パネルにインシュレータを取付けたとしても、当該取付部の剛性が他の部位に比較してそれほど高くならないように構成したインシュレータの取り付け構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のインシュレータの取り付け構造は、車体パネルとフェンダパネル及びフェンダプロテクタとにより形成された空間部に流通する空気を遮断するインシュレータを前記空間部に取り付けるためのインシュレータ取り付け構造であって、前記インシュレータを前記車体パネルに取り付ける取り付け手段に、前記フェンダパネルに加わる衝撃力により破断する破断部を設けたものである。
【0015】
前記構成により、空間部を流通する空気をインシュレータが遮断するため、自動車の走行時エンジン室内の熱気や臭気が車室内へ流入するのを確実に防止することができる。
【0016】
また自動車が障害物等に衝突した際、フェンダパネルに過大な衝撃力が加わると、インシュレータを車体パネルに取り付けている取り付け手段に設けられた破断部が破断して、車体パネルよりインシュレータが脱落するため、インシュレータの取り付け部位の剛性が他の部位に比して同等にすることができ、インシュレータがフェンダパネルの変形を妨げることがない。これによってフェンダパネルの変形により衝突時の衝撃を効率よく吸収するため、衝突による衝撃を低減することができる。
【0017】
本発明のインシュレータの取り付け構造は、取り付け手段を、インシュレータと一体または別体に設けられたクリップと、車体フレーム側に設けられ、かつクリップを嵌合する取り付け孔とから形成すると共に、クリップの基部を薄肉とすることにより破断部を形成したものである。
【0018】
前記構成により、インシュレータやクリップを樹脂により成形する際、破断部も同時に成形することができるため、破断部が容易かつ安価に形成できる上、フェンダパネルに所定値以上の外力が加わると、インシュレータの取り付け部と車体パネルとの間に生じる剪断力により破断部が破断するため、クリップが車体パネルに強固に係止されていても、インシュレータを確実に脱落させることができる。
【0019】
本発明のインシュレータの取り付け構造は、クリップが複数個から構成されており、かつ前記各クリップを前記インシュレータに配置された際、一部のクリップを後方へオフセットさせて配置してなるものである。
【0020】
前記構成により、複数のクリップによりインシュレータを確実に車体パネルに固定することができると共に、クリップの一部を後方へオフセットさせて配置することにより、残りの取り付け手段を中心にインシュレータに回転モーメントが発生するため、斜め前方からフェンダパネルに作用する衝撃に対し、インシュレータがより脱落しやすくなる。
【0021】
本発明のインシュレータの取り付け構造は、クリップをほぼ角筒状に形成し、かつインシュレータに少なくとも1個配置したものである。
【0022】
前記構成により、ほぼ角筒状のクリップがインシュレータの回転を阻止するため、車体パネルへインシュレータを取り付ける取り付け手段が1個所でよく、取り付け部の構造を簡素化できる。
【0023】
本発明のインシュレータの取り付け構造は、破断部を、インシュレータにおけるクリップ突設部近傍を薄肉とすることにより形成したものである。
【0024】
前記構成により、インシュレータを樹脂により成形する際、破断部も同時に成形することができるため、破断部が容易かつ安価に形成できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のインシュレータの取り付け構造によれば、空間部を流通する空気をインシュレータが遮断するため、自動車の走行時エンジン室内の熱気や臭気が車室内へ流入するのを確実に防止することができると共に、自動車が障害物等に衝突した際、フェンダパネルに過大な衝撃力が加わると、インシュレータを車体パネルに取り付けている取り付け手段に設けられた破断部が破断して、車体パネルよりインシュレータが脱落するため、インシュレータの取り付け部位の剛性が他の部位に比して同等にすることができ、インシュレータがフェンダパネルの変形を妨げることがなく、これによってフェンダパネルの変形により衝突時の衝撃を効率よく吸収するため、衝突による衝撃を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
【0027】
図1はインシュレータの取り付け構造を採用した自動車の斜視図、図2は図1のA−A線に沿う断面図、図3は図1のB−B線に沿う断面図、図4はインシュレータの斜視図、図5はインシュレータの取り付け状態を示す正面図、図6は図5のC円内の拡大図、図7は図5のDの方向からの矢視図である。
【0028】
図1に示す自動車は例えば乗用車であって、車体1の前部にエンジン室2が設けられており、エンジン室2内には、動力用のエンジン11が搭載されている。
【0029】
エンジン室2は、上下方向へ開閉自在なフード3により覆われており、エンジン室2の両側には、前輪4が収容されたタイヤハウス5が設けられている。
【0030】
タイヤハウス5は、車体パネル1aに固着されたフェンダパネル6により上面と側面が覆われており、フェンダパネル6内には、前輪4の上方に位置し、かつ車体パネル1aとフェンダパネル6の間に横架されてフェンダプロテクタ7がほぼ水平に設けられている。
【0031】
エンジン室2の後部上方には、カウルトップカバー8が設けられていて、このカウルトップカバー8の前端側上面に設けられたシール9がフード3を後端部下面に当接することにより、エンジン室2内へ雨水等が浸入するのを防止しており、カウルトップカバー8のほぼ中央部には、複数のスリットよりなる通気孔8aが形成されている。
【0032】
カウルトップカバー8の後端縁は、フロントガラス10の下端に連設されていると共に、カウルトップカバー8の下側にエアボックス12が設置されている。
【0033】
エアボックス12の後面には、車室13内に連通する通気孔12aが開口されていて、自動車の走行時カウルトップカバー8の通気孔8aよりエアボックス12内へ取り込まれた外気を、エアボックス12の通気孔12aより車室13内へ流入させることにより、車室13内の換気が行えるようになっている。
【0034】
一方タイヤハウス5の上方には、車体パネル1aとフェンダパネル6及びフェンダプロテクタ7により囲まれた断面がほぼ3角形状の空間部14が前後方向に形成されており、これら空間部14の途中には、エンジン室2内の熱気や臭気等が車室13内へ侵入するのを遮断したり、車体1前後の開口部から空間部14内に侵入した雪や雨水がヒータ部等に達するのを防止するインシュレータ15が設けられている。
【0035】
インシュレータ15は図4及び図5に示すように、空間部14の断面積より面積が小さく、かつ空間部14の断面とほぼ相似形のインシュレータ本体16と、その周辺に設けられたシール部材17とからなる。
【0036】
インシュレータ本体16は、例えばPP(ポリプロピレン)やPPC(ポリプロピレンに添加剤を加えた複合材)、ABS(アクロニトルブタジエンスチレン共重合体)等の熱可塑性樹脂により板状に成形されていて、垂直辺16aに一対の取り付け手段18が上下に離間して設けられている。
【0037】
取り付け手段18は、インシュレータ15を車体パネル1aの側面にほぼ垂直に取り付けるためのもので、垂直辺16aより一体に突設された筒状のクリップ18aよりなる。
【0038】
クリップ18aの先端は、車体パネル1aに穿設された取り付け孔1bにクリップ18aが圧入しやすいようにテーパ状に形成されており、クリップ18aの外周面には、中心を挟んで対向する位置に一対の係止爪18bが形成されている。
【0039】
係止爪18bは、一端側がクリップ18aの先端側に連設され、他端側はクリップ18aの中心方向に弾性変形自在な舌片状に形成されていて、先端部にフック状の係止部18cが外側へ向けて突設されており、クリップ18aを車体パネル1aの取り付け孔1bへ圧入した際、係止部18cが取り付け孔1bの開口縁に係止されるようになっている。
【0040】
またクリップ18aの基部には、インシュレータ15に強い衝撃が加わった際、クリップ18aが基部より破断するように破断部18dが図6に示すように形成されている。
【0041】
破断部18dは、クリップ18aを形成する筒状体の肉厚を薄くすることにより形成されていて、インシュレータ本体16を樹脂により成形する際クリップ18aの基部に一体に形成されている。
【0042】
一方インシュレータ本体16の垂直辺16aには、各取り付け手段18の間と、下側の取り付け手段18と底辺16bの間に凹部16cが形成されている。
【0043】
これら凹部16cは、電装部品に配線されたハーネスやケーブル(ともに図示せず)を通すためのもので、これら凹部16cと、インシュレータ本体16のほぼ全周にシール部材17が両面テープや接着等の手段で取り付けられている。
【0044】
シール部材17は、ウレタンやTPO(熱可塑性オレフィン系エラストマー)等の弾性を有する独立気泡の発泡樹脂により形成されていて、インシュレータ本体16の周辺部の厚みとほぼ同じか、これよりやや薄く形成されている。
【0045】
そして取り付け手段18によりインシュレータ15を車体パネル1aの外側面に取り付ける際、図5の仮想線で示すフェンダパネル6の外側へ突出する圧縮代分だけ圧縮された状態で、フェンダパネル6の内面に圧接され、インシュレータ本体16の頂部16dを囲むように設けられたシール部材17は車体パネル1aの上面に圧接され、そしてインシュレータ本体16の底辺16bに設けられたシール部材17は、フェンダプロテクタ7の上面に圧接されて、インシュレータ本体16の周辺とフェンダパネル6の内面や車体パネル1aとの間及びフェンダプロテクタ7の間に発生する隙間を塞ぐようになっている。
【0046】
次に前記構成されたインシュレータの取り付け構造の作用を説明する。
【0047】
前輪4のタイヤハウス5を覆うフェンダパネル6と車体パネル1a、フェンダプロテクタ7により形成された断面ほぼ3角形状の空間部14は、途中に設けられたインシュレータ15により遮断されているため、空間部14を介してエンジン室2内の熱気や臭気等が車室13内へ侵入するのを防止することができる。
【0048】
また車体1の前面に開口された通気孔等から空間部14内に雪や雨水等が侵入してもインシュレータ15により遮断されるため、エンジン室2後方に設置されたヒータ等に侵入するのを防止することもできる。
【0049】
一方インシュレータ15は、インシュレータ本体16より突設された取り付け手段18により車体パネル1aに取り付けられているが、取り付け手段18を形成するクリップ18aの基部には、薄肉に形成された破断部18dが設けられている。
【0050】
この破断部18dは、空間部14に流入した空気の風圧や、自動車が走行する際の振動等により破断することはないが、自動車が歩行者や障害物等に衝突してフェンダパネル6に過大な衝撃が加わった場合、破断部18dが破断して、インシュレータ15がフェンダパネル6内に脱落する。
【0051】
すなわち最近の自動車は、衝突時の衝撃を低減するため柔軟構造を採用しており、自動車が歩行者や障害物等に衝突した際、フード3やフェンダパネル6が変形することにより衝撃を吸収しているが、フェンダパネル6に過大な衝撃が加わると、まずインシュレータ15の取り付け手段18に設けられた破断部18dが破断して、インシュレータ15が車体パネル1aより脱落する。
【0052】
その後フェンダパネル6が衝撃により変形を開始するが、すでにインシュレータ15は脱落していてフェンダパネル6の変形を妨げることがないため、フェンダパネル6の変形により衝突時の衝撃を吸収することができるようになる。
【0053】
またフェンダパネル6が変形しても、インシュレータ15が外側へ突出することがないので、インシュレータによる2次的被害の可能性も少ない。
【0054】
なお前記実施の形態では、インシュレータ本体16の垂直辺16aに設けた取り付け手段18を、垂直方向に一直線状に配置したが、図8に示す取り付け手段の第1変形例のように、上側の取り付け手段18を下側の取り付け手段18に対し後方へ例えば25度オフセットさせて設けてもよい。この場合、車体パネル1aの側面に形成する取り付け孔も、上側の取り付け手段18に合わせて約25度後方へオフセットさせて設けることにより、車体パネル1aの側面にインシュレータ15をほぼ垂直に取り付けることができるため、前記実施の形態と同様に、空間部を流通する空気を確実に遮断することができる。
【0055】
また図8に示すように、上側の取り付け手段18を後方へオフセットして設けることにより、フェンダパネル6の斜め前方から矢印Xで示すように衝撃が作用した場合、下側の取り付け手段18を中心にインシュレータ15の上部に、矢印Y方向の回転モーメントが発生するため、フェンダパネル6に作用する衝撃に対し、インシュレータ15がより脱落しやすくなる。
【0056】
一方図9は取り付け手段18の第2変形例を示すもので、この変形例では、取り付け手段18のクリップ18aをインシュレータ本体16と別体に成形しており、クリップ18aの基端部に突設した軸部18fをインシュレータ本体16の垂直辺16aに形成した嵌合孔16fへ嵌合した後、軸部18fの先端を熱加締めしすることにより、インシュレータ本体16に対しクリップ18aを取り付けた構成となっている。
【0057】
この第2変形例によれば、軸部18fの径を予め小径に形成して、軸部18fを破断部18dとすることにより、フェンダパネル6に作用する過大な衝撃に対し、軸部18fが破断してインシュレータ15が脱落するため、前記実施の形態と同様な作用効果が得られるようになる。
【0058】
また前記実施の形態では、インシュレータ本体16に取り付け手段18を2個所設けたが、図10ないし図12に示す取り付け手段18の第3変形例のように、インシュレータ本体16の垂直辺16aのほぼ中央部分に1個所設けるようにしてもよい。
【0059】
この場合インシュレータ本体16が取り付け手段18を中心に回転することがあるため、クリップ18aを図11に示すようにほぼ角筒状に形成し、車体パネル1a側の取り付け孔1bも角孔として、取り付け孔1bにクリップ18aを圧入することにより、インシュレータ本体16が回転するのを防止しており、クリップ18の上下面に図12に示すように薄肉な破断部18dを形成することにより、前記実施の形態と同様な作用効果が得られるようになる。
【0060】
さらに図13及び図14は破断部18dの第1、第2変形例を示すもので、第1変形例は取り付け手段18のクリップ18aが突設されたインシュレータ本体16の垂直辺16aの内側を凹入させて、クリップ18aの近傍に薄肉な破断部18dを形成しており、第2変形例は垂直辺16aの外側を凹入させて、クリップ18aの近傍に薄肉な破断部18dを形成したもので、何れの変形例の場合もインシュレータ15に衝撃が作用すると破断部18dが破断して、インシュレータ15が脱落するため、前記実施の形態と同様な作用効果が得られるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の自動車のインシュレータの取り付け構造は、空間部を流通する空気をインシュレータが遮断するため、自動車の走行時エンジン室内の熱気や臭気が車室内へ流入するのを確実に防止することができると共に、自動車が障害物等に衝突した際、フェンダパネルに過大な衝撃力が加わると、インシュレータを車体パネルに取り付けている取り付け手段に設けられた破断部が破断して、車体パネルよりインシュレータが脱落するため、インシュレータの取り付け部位の剛性が他の部位に比して同等にすることができ、インシュレータがフェンダパネルの変形を妨げることがなく、これによってフェンダパネルの変形により衝突時の衝撃を効率よく吸収するため、衝突による衝撃を低減することができるため、空間部を流通する空気をインシュレータが遮断して、エンジン室内の熱気等が車室内へ流入するのを防止するインシュレータの取り付け構造に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造を採用した自動車の斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図4】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造に使用するインシュレータの斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造に使用するインシュレータの正面図である。
【図6】図5のC円内の拡大図である。
【図7】図5のD方向からの矢視図である。
【図8】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造おける取り付け手段の第1変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造における取り付け手段の第2変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造における取り付け手段の第3変形例を示す正面図である。
【図11】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造における取り付け手段の第3変形例を示す斜視図である。
【図12】図11のE−E線に沿う断面図である。
【図13】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造における破断部の第1変形例を示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造における破断部の第2変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1a 車体パネル
1b 取り付け孔
6 フェンダパネル
7 フェンダプロテクタ
15 インシュレータ
18 取り付け手段
18a クリップ
18d 破断部
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン室内の熱気等が車室内へ流入するのを防止するインシュレータの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来乗用車等の自動車の多くは、車体の前部にエンジン室が設置されていて、このエンジン室内に動力用のエンジンが収容されている。
【0003】
またエンジン室は、上面が開閉自在なフードより覆われており、エンジン室の両側は前輪が収容されたタイヤハウスとなっていて、タイヤハウスの上面と側面は、フロントフェンダ(フェンダパネル)により覆われている。
【0004】
フェンダパネルは、エンジン室の上部両側に設けられたエプロンメンバに取り付けられており、エプロンメンバはフェンダライナの上面に取り付けられている。
【0005】
エンジン室の後部には、フロントガラスの下方に位置するようにエアボックスが設置されており、カウルトップカバーに開口された通気孔よりエアボックス内に取り込んだ外気を車室内へ流入させることにより、車室内の換気が行えるようになっている。
【0006】
しかし前記構造のエンジン室を有する自動車では、フェンダパネルとエプロンメンバ及びフェンダライナにより形成された空間部が流路となって、自動車の走行時エンジン室内の熱気や臭気が車室内へ流入することがある。
【0007】
またフロントバンパーに通気口等が開口された自動車では、降雪時に走行すると、通気口より流入した雪がフェンダパネルとエプロンメンバ及びフェンダライナにより形成された空間部を通ってヒータ近傍にまで侵入することがある。
【0008】
これを防止するため、インシュレータとして、例えば雪が入り込むのを防止する雪入り込み防止構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
前記雪入り込み防止構造は、車体前部から後方へ形成された空気流路の途中に、仕切り部材を横設すると共に、仕切り部材の側近に多孔質性弾性部材を隣接配置している。
【0010】
また仕切り部材は、外周面にシール材を一体に設けた樹脂製板材より形成されていて、フロントフェンダとエプロンメンバ及びフェンダライナとにより囲まれた領域に設置されていて仕切り部材より突設された係合部を、エプロンメンバに形成された開口部に係合することにより、エプロンメンバに仕切り部材が取り付けられている。
【特許文献1】特開2003−191863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記雪入り込み構造によれば、降雪時走行した際フロントバンパーの通気口より空気流路に侵入した雪を仕切り部材が遮断するため、ヒータへの雪の入り込みを確実に防止できる効果が得られる他に、エンジン室内の熱気や臭気が車室内へ流入するのを防止できる効果も得られる。
【0012】
しかしこのような仕切り部材をエプロンメンバに取り付けた場合、エプロンメンバにおける仕切り部材の取り付け部位は、剛性が高くなってしまい、他の部位との間で衝撃吸収構造に強弱が生じてしまうことになる。
【0013】
本発明はかかる点を改善するためになされたもので、たとえ車体パネルにインシュレータを取付けたとしても、当該取付部の剛性が他の部位に比較してそれほど高くならないように構成したインシュレータの取り付け構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のインシュレータの取り付け構造は、車体パネルとフェンダパネル及びフェンダプロテクタとにより形成された空間部に流通する空気を遮断するインシュレータを前記空間部に取り付けるためのインシュレータ取り付け構造であって、前記インシュレータを前記車体パネルに取り付ける取り付け手段に、前記フェンダパネルに加わる衝撃力により破断する破断部を設けたものである。
【0015】
前記構成により、空間部を流通する空気をインシュレータが遮断するため、自動車の走行時エンジン室内の熱気や臭気が車室内へ流入するのを確実に防止することができる。
【0016】
また自動車が障害物等に衝突した際、フェンダパネルに過大な衝撃力が加わると、インシュレータを車体パネルに取り付けている取り付け手段に設けられた破断部が破断して、車体パネルよりインシュレータが脱落するため、インシュレータの取り付け部位の剛性が他の部位に比して同等にすることができ、インシュレータがフェンダパネルの変形を妨げることがない。これによってフェンダパネルの変形により衝突時の衝撃を効率よく吸収するため、衝突による衝撃を低減することができる。
【0017】
本発明のインシュレータの取り付け構造は、取り付け手段を、インシュレータと一体または別体に設けられたクリップと、車体フレーム側に設けられ、かつクリップを嵌合する取り付け孔とから形成すると共に、クリップの基部を薄肉とすることにより破断部を形成したものである。
【0018】
前記構成により、インシュレータやクリップを樹脂により成形する際、破断部も同時に成形することができるため、破断部が容易かつ安価に形成できる上、フェンダパネルに所定値以上の外力が加わると、インシュレータの取り付け部と車体パネルとの間に生じる剪断力により破断部が破断するため、クリップが車体パネルに強固に係止されていても、インシュレータを確実に脱落させることができる。
【0019】
本発明のインシュレータの取り付け構造は、クリップが複数個から構成されており、かつ前記各クリップを前記インシュレータに配置された際、一部のクリップを後方へオフセットさせて配置してなるものである。
【0020】
前記構成により、複数のクリップによりインシュレータを確実に車体パネルに固定することができると共に、クリップの一部を後方へオフセットさせて配置することにより、残りの取り付け手段を中心にインシュレータに回転モーメントが発生するため、斜め前方からフェンダパネルに作用する衝撃に対し、インシュレータがより脱落しやすくなる。
【0021】
本発明のインシュレータの取り付け構造は、クリップをほぼ角筒状に形成し、かつインシュレータに少なくとも1個配置したものである。
【0022】
前記構成により、ほぼ角筒状のクリップがインシュレータの回転を阻止するため、車体パネルへインシュレータを取り付ける取り付け手段が1個所でよく、取り付け部の構造を簡素化できる。
【0023】
本発明のインシュレータの取り付け構造は、破断部を、インシュレータにおけるクリップ突設部近傍を薄肉とすることにより形成したものである。
【0024】
前記構成により、インシュレータを樹脂により成形する際、破断部も同時に成形することができるため、破断部が容易かつ安価に形成できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のインシュレータの取り付け構造によれば、空間部を流通する空気をインシュレータが遮断するため、自動車の走行時エンジン室内の熱気や臭気が車室内へ流入するのを確実に防止することができると共に、自動車が障害物等に衝突した際、フェンダパネルに過大な衝撃力が加わると、インシュレータを車体パネルに取り付けている取り付け手段に設けられた破断部が破断して、車体パネルよりインシュレータが脱落するため、インシュレータの取り付け部位の剛性が他の部位に比して同等にすることができ、インシュレータがフェンダパネルの変形を妨げることがなく、これによってフェンダパネルの変形により衝突時の衝撃を効率よく吸収するため、衝突による衝撃を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
【0027】
図1はインシュレータの取り付け構造を採用した自動車の斜視図、図2は図1のA−A線に沿う断面図、図3は図1のB−B線に沿う断面図、図4はインシュレータの斜視図、図5はインシュレータの取り付け状態を示す正面図、図6は図5のC円内の拡大図、図7は図5のDの方向からの矢視図である。
【0028】
図1に示す自動車は例えば乗用車であって、車体1の前部にエンジン室2が設けられており、エンジン室2内には、動力用のエンジン11が搭載されている。
【0029】
エンジン室2は、上下方向へ開閉自在なフード3により覆われており、エンジン室2の両側には、前輪4が収容されたタイヤハウス5が設けられている。
【0030】
タイヤハウス5は、車体パネル1aに固着されたフェンダパネル6により上面と側面が覆われており、フェンダパネル6内には、前輪4の上方に位置し、かつ車体パネル1aとフェンダパネル6の間に横架されてフェンダプロテクタ7がほぼ水平に設けられている。
【0031】
エンジン室2の後部上方には、カウルトップカバー8が設けられていて、このカウルトップカバー8の前端側上面に設けられたシール9がフード3を後端部下面に当接することにより、エンジン室2内へ雨水等が浸入するのを防止しており、カウルトップカバー8のほぼ中央部には、複数のスリットよりなる通気孔8aが形成されている。
【0032】
カウルトップカバー8の後端縁は、フロントガラス10の下端に連設されていると共に、カウルトップカバー8の下側にエアボックス12が設置されている。
【0033】
エアボックス12の後面には、車室13内に連通する通気孔12aが開口されていて、自動車の走行時カウルトップカバー8の通気孔8aよりエアボックス12内へ取り込まれた外気を、エアボックス12の通気孔12aより車室13内へ流入させることにより、車室13内の換気が行えるようになっている。
【0034】
一方タイヤハウス5の上方には、車体パネル1aとフェンダパネル6及びフェンダプロテクタ7により囲まれた断面がほぼ3角形状の空間部14が前後方向に形成されており、これら空間部14の途中には、エンジン室2内の熱気や臭気等が車室13内へ侵入するのを遮断したり、車体1前後の開口部から空間部14内に侵入した雪や雨水がヒータ部等に達するのを防止するインシュレータ15が設けられている。
【0035】
インシュレータ15は図4及び図5に示すように、空間部14の断面積より面積が小さく、かつ空間部14の断面とほぼ相似形のインシュレータ本体16と、その周辺に設けられたシール部材17とからなる。
【0036】
インシュレータ本体16は、例えばPP(ポリプロピレン)やPPC(ポリプロピレンに添加剤を加えた複合材)、ABS(アクロニトルブタジエンスチレン共重合体)等の熱可塑性樹脂により板状に成形されていて、垂直辺16aに一対の取り付け手段18が上下に離間して設けられている。
【0037】
取り付け手段18は、インシュレータ15を車体パネル1aの側面にほぼ垂直に取り付けるためのもので、垂直辺16aより一体に突設された筒状のクリップ18aよりなる。
【0038】
クリップ18aの先端は、車体パネル1aに穿設された取り付け孔1bにクリップ18aが圧入しやすいようにテーパ状に形成されており、クリップ18aの外周面には、中心を挟んで対向する位置に一対の係止爪18bが形成されている。
【0039】
係止爪18bは、一端側がクリップ18aの先端側に連設され、他端側はクリップ18aの中心方向に弾性変形自在な舌片状に形成されていて、先端部にフック状の係止部18cが外側へ向けて突設されており、クリップ18aを車体パネル1aの取り付け孔1bへ圧入した際、係止部18cが取り付け孔1bの開口縁に係止されるようになっている。
【0040】
またクリップ18aの基部には、インシュレータ15に強い衝撃が加わった際、クリップ18aが基部より破断するように破断部18dが図6に示すように形成されている。
【0041】
破断部18dは、クリップ18aを形成する筒状体の肉厚を薄くすることにより形成されていて、インシュレータ本体16を樹脂により成形する際クリップ18aの基部に一体に形成されている。
【0042】
一方インシュレータ本体16の垂直辺16aには、各取り付け手段18の間と、下側の取り付け手段18と底辺16bの間に凹部16cが形成されている。
【0043】
これら凹部16cは、電装部品に配線されたハーネスやケーブル(ともに図示せず)を通すためのもので、これら凹部16cと、インシュレータ本体16のほぼ全周にシール部材17が両面テープや接着等の手段で取り付けられている。
【0044】
シール部材17は、ウレタンやTPO(熱可塑性オレフィン系エラストマー)等の弾性を有する独立気泡の発泡樹脂により形成されていて、インシュレータ本体16の周辺部の厚みとほぼ同じか、これよりやや薄く形成されている。
【0045】
そして取り付け手段18によりインシュレータ15を車体パネル1aの外側面に取り付ける際、図5の仮想線で示すフェンダパネル6の外側へ突出する圧縮代分だけ圧縮された状態で、フェンダパネル6の内面に圧接され、インシュレータ本体16の頂部16dを囲むように設けられたシール部材17は車体パネル1aの上面に圧接され、そしてインシュレータ本体16の底辺16bに設けられたシール部材17は、フェンダプロテクタ7の上面に圧接されて、インシュレータ本体16の周辺とフェンダパネル6の内面や車体パネル1aとの間及びフェンダプロテクタ7の間に発生する隙間を塞ぐようになっている。
【0046】
次に前記構成されたインシュレータの取り付け構造の作用を説明する。
【0047】
前輪4のタイヤハウス5を覆うフェンダパネル6と車体パネル1a、フェンダプロテクタ7により形成された断面ほぼ3角形状の空間部14は、途中に設けられたインシュレータ15により遮断されているため、空間部14を介してエンジン室2内の熱気や臭気等が車室13内へ侵入するのを防止することができる。
【0048】
また車体1の前面に開口された通気孔等から空間部14内に雪や雨水等が侵入してもインシュレータ15により遮断されるため、エンジン室2後方に設置されたヒータ等に侵入するのを防止することもできる。
【0049】
一方インシュレータ15は、インシュレータ本体16より突設された取り付け手段18により車体パネル1aに取り付けられているが、取り付け手段18を形成するクリップ18aの基部には、薄肉に形成された破断部18dが設けられている。
【0050】
この破断部18dは、空間部14に流入した空気の風圧や、自動車が走行する際の振動等により破断することはないが、自動車が歩行者や障害物等に衝突してフェンダパネル6に過大な衝撃が加わった場合、破断部18dが破断して、インシュレータ15がフェンダパネル6内に脱落する。
【0051】
すなわち最近の自動車は、衝突時の衝撃を低減するため柔軟構造を採用しており、自動車が歩行者や障害物等に衝突した際、フード3やフェンダパネル6が変形することにより衝撃を吸収しているが、フェンダパネル6に過大な衝撃が加わると、まずインシュレータ15の取り付け手段18に設けられた破断部18dが破断して、インシュレータ15が車体パネル1aより脱落する。
【0052】
その後フェンダパネル6が衝撃により変形を開始するが、すでにインシュレータ15は脱落していてフェンダパネル6の変形を妨げることがないため、フェンダパネル6の変形により衝突時の衝撃を吸収することができるようになる。
【0053】
またフェンダパネル6が変形しても、インシュレータ15が外側へ突出することがないので、インシュレータによる2次的被害の可能性も少ない。
【0054】
なお前記実施の形態では、インシュレータ本体16の垂直辺16aに設けた取り付け手段18を、垂直方向に一直線状に配置したが、図8に示す取り付け手段の第1変形例のように、上側の取り付け手段18を下側の取り付け手段18に対し後方へ例えば25度オフセットさせて設けてもよい。この場合、車体パネル1aの側面に形成する取り付け孔も、上側の取り付け手段18に合わせて約25度後方へオフセットさせて設けることにより、車体パネル1aの側面にインシュレータ15をほぼ垂直に取り付けることができるため、前記実施の形態と同様に、空間部を流通する空気を確実に遮断することができる。
【0055】
また図8に示すように、上側の取り付け手段18を後方へオフセットして設けることにより、フェンダパネル6の斜め前方から矢印Xで示すように衝撃が作用した場合、下側の取り付け手段18を中心にインシュレータ15の上部に、矢印Y方向の回転モーメントが発生するため、フェンダパネル6に作用する衝撃に対し、インシュレータ15がより脱落しやすくなる。
【0056】
一方図9は取り付け手段18の第2変形例を示すもので、この変形例では、取り付け手段18のクリップ18aをインシュレータ本体16と別体に成形しており、クリップ18aの基端部に突設した軸部18fをインシュレータ本体16の垂直辺16aに形成した嵌合孔16fへ嵌合した後、軸部18fの先端を熱加締めしすることにより、インシュレータ本体16に対しクリップ18aを取り付けた構成となっている。
【0057】
この第2変形例によれば、軸部18fの径を予め小径に形成して、軸部18fを破断部18dとすることにより、フェンダパネル6に作用する過大な衝撃に対し、軸部18fが破断してインシュレータ15が脱落するため、前記実施の形態と同様な作用効果が得られるようになる。
【0058】
また前記実施の形態では、インシュレータ本体16に取り付け手段18を2個所設けたが、図10ないし図12に示す取り付け手段18の第3変形例のように、インシュレータ本体16の垂直辺16aのほぼ中央部分に1個所設けるようにしてもよい。
【0059】
この場合インシュレータ本体16が取り付け手段18を中心に回転することがあるため、クリップ18aを図11に示すようにほぼ角筒状に形成し、車体パネル1a側の取り付け孔1bも角孔として、取り付け孔1bにクリップ18aを圧入することにより、インシュレータ本体16が回転するのを防止しており、クリップ18の上下面に図12に示すように薄肉な破断部18dを形成することにより、前記実施の形態と同様な作用効果が得られるようになる。
【0060】
さらに図13及び図14は破断部18dの第1、第2変形例を示すもので、第1変形例は取り付け手段18のクリップ18aが突設されたインシュレータ本体16の垂直辺16aの内側を凹入させて、クリップ18aの近傍に薄肉な破断部18dを形成しており、第2変形例は垂直辺16aの外側を凹入させて、クリップ18aの近傍に薄肉な破断部18dを形成したもので、何れの変形例の場合もインシュレータ15に衝撃が作用すると破断部18dが破断して、インシュレータ15が脱落するため、前記実施の形態と同様な作用効果が得られるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の自動車のインシュレータの取り付け構造は、空間部を流通する空気をインシュレータが遮断するため、自動車の走行時エンジン室内の熱気や臭気が車室内へ流入するのを確実に防止することができると共に、自動車が障害物等に衝突した際、フェンダパネルに過大な衝撃力が加わると、インシュレータを車体パネルに取り付けている取り付け手段に設けられた破断部が破断して、車体パネルよりインシュレータが脱落するため、インシュレータの取り付け部位の剛性が他の部位に比して同等にすることができ、インシュレータがフェンダパネルの変形を妨げることがなく、これによってフェンダパネルの変形により衝突時の衝撃を効率よく吸収するため、衝突による衝撃を低減することができるため、空間部を流通する空気をインシュレータが遮断して、エンジン室内の熱気等が車室内へ流入するのを防止するインシュレータの取り付け構造に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造を採用した自動車の斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図4】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造に使用するインシュレータの斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造に使用するインシュレータの正面図である。
【図6】図5のC円内の拡大図である。
【図7】図5のD方向からの矢視図である。
【図8】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造おける取り付け手段の第1変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造における取り付け手段の第2変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造における取り付け手段の第3変形例を示す正面図である。
【図11】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造における取り付け手段の第3変形例を示す斜視図である。
【図12】図11のE−E線に沿う断面図である。
【図13】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造における破断部の第1変形例を示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態になるインシュレータの取り付け構造における破断部の第2変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1a 車体パネル
1b 取り付け孔
6 フェンダパネル
7 フェンダプロテクタ
15 インシュレータ
18 取り付け手段
18a クリップ
18d 破断部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルとフェンダパネル及びフェンダプロテクタとにより形成された空間部に流通する空気を遮断するインシュレータを前記空間部に取り付けるためのインシュレータ取り付け構造であって、
前記インシュレータを前記車体パネルに取り付ける取り付け手段に、前記フェンダパネルに加わる衝撃力により破断する破断部を設けたことを特徴とするインシュレータの取り付け構造。
【請求項2】
前記取り付け手段を、前記インシュレータと一体または別体に設けられたクリップと、車体フレーム側に設けられ、かつ前記クリップを嵌合する取り付け孔とから形成すると共に、前記クリップの基部を薄肉とすることにより前記破断部を形成してなる請求項1に記載のインシュレータの取り付け構造。
【請求項3】
前記クリップを、複数個有して構成し、一部のクリップを後方へオフセットさせて配置してなる請求項2に記載のインシュレータの取り付け構造。
【請求項4】
前記前記クリップをほぼ角筒状に形成し、かつ前記インシュレータに少なくとも1個配置してなる請求項2に記載のインシュレータの取り付け構造。
【請求項5】
前記破断部を、前記インシュレータにおける前記クリップ突設部近傍を薄肉とすることにより形成してなる請求項2ないし4の何れかに記載のインシュレータの取り付け構造。
【請求項1】
車体パネルとフェンダパネル及びフェンダプロテクタとにより形成された空間部に流通する空気を遮断するインシュレータを前記空間部に取り付けるためのインシュレータ取り付け構造であって、
前記インシュレータを前記車体パネルに取り付ける取り付け手段に、前記フェンダパネルに加わる衝撃力により破断する破断部を設けたことを特徴とするインシュレータの取り付け構造。
【請求項2】
前記取り付け手段を、前記インシュレータと一体または別体に設けられたクリップと、車体フレーム側に設けられ、かつ前記クリップを嵌合する取り付け孔とから形成すると共に、前記クリップの基部を薄肉とすることにより前記破断部を形成してなる請求項1に記載のインシュレータの取り付け構造。
【請求項3】
前記クリップを、複数個有して構成し、一部のクリップを後方へオフセットさせて配置してなる請求項2に記載のインシュレータの取り付け構造。
【請求項4】
前記前記クリップをほぼ角筒状に形成し、かつ前記インシュレータに少なくとも1個配置してなる請求項2に記載のインシュレータの取り付け構造。
【請求項5】
前記破断部を、前記インシュレータにおける前記クリップ突設部近傍を薄肉とすることにより形成してなる請求項2ないし4の何れかに記載のインシュレータの取り付け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−90999(P2007−90999A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282264(P2005−282264)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
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