ウエハ加工方法およびウエハ加工用包被フィルム
【課題】
ウエハを硬質板に確実に固定し、ウエハの上面に加工を施した後、ウエハを破損させることなく硬質板から確実に剥離することのできる、ウエハの加工方法およびそのような加工方法に好適に用いられる包被フィルムを提供すること。
【解決手段】
(1)硬質板の少なくとも上面に、該上面に対し非接着性の包被フィルムを、剪断方向に対して位置ずれせず、かつ取り外し可能に取り付ける工程と、
(2)前記包被フィルムの上面にウエハを接着固定する工程と、
(3)前記ウエハの上面に加工を施す工程と、
(4)前記包被フィルムを切開して、前記包被フィルムから前記硬質板を取り外す工程と、
を含むことを特徴とするウエハの加工方法。
ウエハを硬質板に確実に固定し、ウエハの上面に加工を施した後、ウエハを破損させることなく硬質板から確実に剥離することのできる、ウエハの加工方法およびそのような加工方法に好適に用いられる包被フィルムを提供すること。
【解決手段】
(1)硬質板の少なくとも上面に、該上面に対し非接着性の包被フィルムを、剪断方向に対して位置ずれせず、かつ取り外し可能に取り付ける工程と、
(2)前記包被フィルムの上面にウエハを接着固定する工程と、
(3)前記ウエハの上面に加工を施す工程と、
(4)前記包被フィルムを切開して、前記包被フィルムから前記硬質板を取り外す工程と、
を含むことを特徴とするウエハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質板上でウエハに対して行う加工方法および該加工方法に用いられる包被フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のICカードの普及にともない、その構成部材であるウエハの薄型化が進められている。従来350μm程度の厚さであったウエハを、50〜100μmあるいはそれ以下まで薄くすることが求められるようになった。
【0003】
脆質部材であるウエハは、薄くなるにつれて、加工や運搬の際、破損する危険性が高くなる。このため、ウエハを極薄まで研削したり、極薄のウエハを運搬したりする場合は、ウエハをガラス板やアクリル板のような硬質板上に両面粘着シートなどにより固定・保護して作業を進めるのが望ましい。
【0004】
しかしながら、従来の両面粘着シートでウエハと硬質板とを貼り合わせる方法では、一連の工程を終えた後、両者を剥離する際、ウエハが割れてしまうことがあった。ウエハを粘着シートごと硬質板からは剥がそうとすると、脆弱なウエハは、ひずみがかかって割れてしまう。
【0005】
このような問題を解決するための手段として、本出願人は、特許文献1において、ウエハを硬質板に確実に固定することができ、かつ、加工後には容易に剥離できる独自の両面粘着シートおよびその使用方法を開示した。この両面粘着シートは、従来のものと同様に、硬質板にウエハを確実に固定することができる。ウエハに所要の加工を施した後、両面粘着シートにエネルギー線照射と加熱を行うと、両面粘着シート自体の接着力の低下と変形が起こり、ウエハは粘着面から自発的に剥離していく。
【0006】
しかしながら、ウエハと粘着剤との密着性が特に高い場合、両面粘着シートの変形が不充分となり、ウエハを剥離できないことがあった。また、特に面積が大きく極薄のウエハでは、粘着シートの収縮応力が粘着面を介してウエハに伝達することによって、ウエハが破損してしまうことがあった。
【特許文献1】特開2000−136362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものである。すなわち本発明は、ウエハを硬質板に確実に固定し、ウエハの上面に加工を施した後、ウエハを破損させることなく硬質板から確実に剥離することのできる、ウエハの加工方法を提供することを目的としている。また、そのような加工方法に好適に用いられる包被フィルムを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
[1](1)硬質板の少なくとも上面に、該上面に対し非接着性の包被フィルムを、剪断方向に対して位置ずれせず、かつ取り外し可能に取り付ける工程と、
(2)前記包被フィルムの上面にウエハを接着固定する工程と、
(3)前記ウエハの上面に加工を施す工程と、
(4)前記包被フィルムから前記硬質板を取り外す工程と、
を含むことを特徴とするウエハの加工方法。
[2]袋状の包被フィルムに硬質板を収容し、袋の開口部から真空引きし、開口部を封止することで、前記工程(1)における包被フィルムの取り付けを行う[1]に記載のウエハの加工方法。
[3]包被フィルムと硬質板の側面部とを接着固定することによって、前記工程(1)における包被フィルムの取り付けを行う[1]に記載のウエハの加工方法。
[4]包被フィルムを収縮させると同時に該包被フィルムの外周部を硬質板の側端部に掛止することによって、前記工程(1)における包被フィルムの取り付けを行う[1]に記載のウエハの加工方法。
[5]ウエハ固定用の硬質板を覆うためのウエハ加工用の包被フィルムであって、前記包被フィルムは少なくとも硬質板の上面に対して非接着性であり、かつ硬質板に対し取り外しが可能な取付手段を有することを特徴とするウエハ加工用の包被フィルム。
[6]前記取付手段は、開口部から真空引きが可能で硬質板を収容可能な袋状の形状であって、該開口部が封止可能であることを特徴とする[5]に記載のウエハ加工用の包被フィルム。
[7]前記取付手段は、硬質板の側面部を接着固定する接着剤または粘着剤であることを特徴とする[5]に記載のウエハ加工用の包被フィルム。
[8]前記取付手段は、硬質板の側端部に対し収縮することにより掛止可能となる収縮フィルムであることを特徴とする[5]に記載のウエハ加工用の包被フィルム。
【0009】
なお、「包被フィルムの上面」とは、包被フィルムの硬質板とは接していない側の面、すなわちウエハが固定される(された)側の面を意味する。「ウエハの上面」とは、ウエハの包被フィルムと接していない側、すなわち加工が施される側の面を意味する。また、「下面」とは、これらの反対面のことを意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウエハを硬質板に確実に固定し、ウエハの上面に加工を施した後、ウエハを破損させることなく硬質板から確実に剥離することができるウエハ加工方法が提供される。また、そのような加工方法に好適に用いられる包被フィルムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るウエハ加工方法は、以下の4つの工程からなることを特徴としている。
(1)包被フィルムを硬質板に取り付ける工程
(2)包被フィルム上面にウエハを接着固定する工程
(3)ウエハの上面に加工を施す工程
(4)包被フィルムから硬質板を取り外す工程
また、本発明に係るウエハ加工用包被フィルムは、上記加工方法において好適に用いられるものであり、硬質板の少なくとも上面に、該上面と接着させずに、剪断方向に対して位置ずれせず、かつ取り外し可能に取り付けられることを特徴としている。
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明のウエハ加工方法および包被フィルムについて具体的に説明する。
<(1)包被フィルムを硬質板に取り付ける工程>
硬質板としては、たとえばガラス板、石英板や、アクリル板、ポリ塩化ビニル板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリプロピレン板、ポリカーボネート板等のプラスチック板が使用できる。硬質板のASTM D 883により定義される硬度は、好ましくは70MPa以上である。硬質板の厚さは、その材質にもよるが、通常は、0.1〜10mm程度であり、加工するウエハとほぼ同じ大きさの円形のものが用いられる。後の工程においてエネルギー線を用いる場合には、硬質板としては、エネルギー線に対する透過性を有するものが用いられる。また、包被フィルムとして熱収縮性フィルムを用いる場合、硬質板は
フィルムを収縮させる温度に対し耐熱性のあるものが用いられる。
【0013】
包被フィルムは、硬質板の少なくとも上面を完全に覆うように取り付けられる。硬質板の上面に対面する包被フィルム面は非接着性であり、後の工程で硬質板を包被フィルムから取り外し容易な取付手段を有している。硬質板の下面は包被フィルムに覆われていてもよく、また覆われていなくてもよい。硬質板の下面に対して包被フィルムは接着性であっても非接着性であってもよい。また、包被フィルムは、硬質板の少なくとも上面とは、剪断方向に対して位置ずれしないように取り付けられる。ここで、剪断方向とは、硬質板上面の水平方向であり、この方向に何らかの力が加えられた場合でも、包被フィルムは位置ずれを起こさないように取り付けられる。
【0014】
包被フィルムを硬質板に取り付ける方法としては、たとえば、
(a)袋状の包被フィルムに硬質板を封入する方法、
(b)包被フィルムと硬質板とを部分接着する方法、
(c)包被フィルムを収縮させて硬質板に掛止させる方法、
の3つが挙げられる。以下、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(a)袋状の包被フィルムに硬質板を封入する方法
図1のように、硬質板1を袋状の包被フィルム21に収容し、開口部を真空ポンプにつないで真空引きし、袋内の空気を排気する。これにより包被フィルムの内面は硬質板1の両面に密着する。次に、包被フィルム21の開口部を、融着あるいはクリップなどの封止手段3により空気洩れしないようにふさぐことで、硬質板1に包被フィルム21が取り付けられる(図2)。袋内の空気の排気は、高い真空度で行うのが好ましいが、開口部を封止する直前に袋内の空気を機械的に押し出して行ってもよい。
【0016】
この方法に係わる本発明の包被フィルム21は、図1に示すように開口部から真空引きが可能で硬質板を収容可能な袋状の形状であり、開口部が封止可能な構造よりなる取付手段を有する。このような包被フィルム21を作製する方法としては、1枚または2枚のフィルムを適宜加工する方法が挙げられる。1枚のフィルムを用いる場合は、フィルムを半分に折り返して重ね合わせ、開口部を残して側縁部を接着または融着すればよい。2枚のフィルムを用いる場合は、フィルム同士を重ね合わせ、開口部を残して外周を接着または融着すればよい。
【0017】
収容される硬質板に対して包被フィルム21の袋内の空間が広すぎると、包被フィルム21を硬質板に取り付ける際にフィルム上面にシワが発生したり、取り付け後に包被フィルム21がずれたりする危険性がある。したがって、前記フィルムの接着または融着は、収容する硬質板の外周に沿った形状になるように行うことが望ましい。なお、前記フィルムの接着または融着は、フィルム間に硬質板を挟んだ状態で行い、袋の形成と同時に硬質板の収容を行ってもよい。
【0018】
図2に示されるように、包被フィルム21は硬質板1を気密的に包みこんでいるため、硬質板1上面に対して水平方向に力が加えられた場合であっても、包被フィルム21の位置ずれは起こらない。また、包被フィルム21を切開したりクリップを開放すれば、気密状態は解消され、硬質板1を包被フィルム21から簡便に取り外すことができる。
【0019】
(a)の方法に用いられる包被フィルム21としては、種々の合成樹脂フィルムが用い
られ、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレ
ン酢ビフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のフィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。さらに、フィルムを袋状に融着するためにヒートシール性接着剤(接着フィルム)の積層フィルムであってもよい。また、ウエハの加工時に過大な剪断力が加えられても包被フィルム21の位置ずれが起こらないように、包被フィルム21の硬質板に接する側の面には防滑処理が施されていてもよい。
【0020】
上記のような包被フィルム21の厚さは、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは15〜150μmである。
(b)包被フィルムと硬質板とを部分接着する方法
本発明においては、部分接着により硬質板に包被フィルムを取り付ける方法を用いてもよい。この方法に用いる包被フィルムの取付手段は、硬質板の側面部を接着固定する位置に配置された接着剤または粘着剤である。この場合、(b-1)端部にのみ粘着層を有する
包被フィルムを用いる方法、(b-2)部分硬化されたエネルギー線硬化型粘着層を有する
包被フィルムを用いる方法、の2つが挙げられる。これらの方法を用いる場合、接着固定後の包被フィルムと硬質板との間に空気が入らないようにするために、接着固定の工程は真空中で行うことが望ましい。
【0021】
これらの方法に係わる本発明の包被フィルムは、以下詳述するように、端部に粘着部位が設けられており、該粘着部位と硬質板の側面部とを接着固定することで硬質板上面への取り付けが行われることを特徴としている。
【0022】
(b-1)端部にのみ粘着層を有する包被フィルムを用いる方法
図3および図5に本方法における包被フィルム22および23を示す。図3の包被フィルム22では、基材4上の端部に粘着層5が積層されている。図5の包被フィルム23では、基材10上に粘着層11および非粘着層12が積層されている。粘着層11の端部が露出し、粘着部位13を形成するように、非粘着層12は積層されている。
【0023】
図3において、非粘着部位6は、硬質板1の上面と同じ形状、大きさとする。粘着層5の幅は、硬質板1の厚さ以上、好ましくは同じとする。この包被フィルム22を硬質板1に、図4に示したように非粘着部位6が硬質板1の上面と重なるように乗せ、包被フィルム22の端部を折り曲げて、粘着層5を硬質板1の側面に貼り付け、包被フィルム22全体を固定する。
【0024】
図5においては、非粘着層12は、硬質板1の上面と同じ形状、大きさとする。端部の粘着部位13の幅は硬質板1の厚さ以上、好ましくは同じとする。この包被フィルム23を硬質板1に、図6に示したように非粘着層12が硬質板1の上面と重なるように乗せ、包被フィルム23の端部を折り曲げて、粘着部位13を硬質板1の側面に貼り付け、包被フィルム23全体を固定する。
【0025】
上記の包被フィルム22、23の基材4、10および非粘着層12としては、前述した(a)に用いられる包被フィルム21と同じ合成樹脂フィルムが使用できる。非粘着層1
2としては、合成樹脂フィルムの他印刷用インキや塗料からなる被膜であってもよい。
【0026】
上記のような基材4および10の厚さは、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは15〜150μmである。非粘着層12の厚さは、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは1〜20μmである。
【0027】
上記包被フィルム22、23における粘着層5、11は、いずれも硬質板の側面に貼着され、包被フィルム全体を硬質板に固定する役割を担う。狭い接触面積でシート全体を固定しなければならないため、高い粘着力が必要である。材料としては、いわゆる強粘着剤を用いる。このような強粘着力の粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、ポリビニルエーテル系等の粘着剤が用いられる。
【0028】
(b-2)部分硬化されたエネルギー線硬化型粘着層を有する包被フィルムを用いる方法
図7に示したように、本方法における包被フィルム24は、基材15とその片面に形成されたエネルギー線硬化型粘着層16とからなる。エネルギー線硬化型粘着層16はあらかじめ端部に露光マスクをのせてエネルギー線照射しておき、中央の非粘着部位17と端部の粘着部位18とを形成しておく。非粘着部位17は、硬質板1の上面と同じ形状、大きさとし、粘着部位18の幅は硬質板1の厚さ以上、好ましくは同じとする。この包被フィルム24を(b-1)と同様にしてフィルム端部の粘着部位18を介して硬質板1に貼着
固定する(図8)。
【0029】
上記の包被フィルム24の基材15としては、前述した(a)に用いられる包被フィル
ム21と同じ合成樹脂フィルムが使用できる。基材15の厚さは、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは15〜150μmである。
【0030】
エネルギー線硬化型粘着層16としては、たとえば特開昭60−196,956号公報、特開昭60−223,139号公報、特開平5−32946号公報、特開平8−27239号公報等に記載のエネルギー線硬化型粘着剤が特に制限されることなく用いられる。このようなエネルギー線硬化型粘着剤の未硬化時における好ましい粘着力は、5 N/2
5mm以上であり、さらに好ましくは10〜50 N/25mmである。これに対し、硬
化後の粘着力は実質的に0 N/25mmである。ただし、硬化後の粘着力は、硬質板1
に貼付される前にエネルギー線が照射され粘着層が硬化した状態で、硬質板1を被着体として測定して得た値である。
【0031】
図4、6、8に示されるように、包被フィルム22、23、24はいずれも硬質板1の側面部に接着固定されているため、硬質板1上面の水平方向に力が加えられた場合であっても、包被フィルムの位置ずれは起こらない。一方、包被フィルムと硬質板上面とは非接着の状態であるため、包被フィルムを粘着層(部位)と非粘着層(部位)の境界に沿って切開するだけで、包被フィルムから硬質板を簡便に取り外すことができる。
【0032】
(c)包被フィルムを収縮させて硬質板に掛止させる方法
本発明においては、収縮させることにより硬質板の側端部に掛止させて硬質板に包被フィルムを取り付ける方法を用いてもよい。この方法に用いる包被フィルムの取付手段は包被フィルム自身に使用される収縮性フィルムである。
【0033】
本方法によって固定が行われた状態を図10に示す。包被フィルム25は収縮性フィルムからなり、ウエハを固定するための上面と硬質板の側端部で掛止するための折り曲げ部位を有している。包被フィルム25には硬質板の外周部から中央部に向かう収縮による張力がかかっており、この力により包被フィルム25は硬質板の側端部に掛止されている。
【0034】
具体的な方法としては、硬質板の厚さ以上の幅が硬質板の周に沿ってはみ出るように包被フィルム25を硬質板の上面に載置する。包被フィルム25の硬質板の上面からはみ出た部位を硬質板の下面に回り込むように折り込むことで、図9に示すような折り曲げ部位を形成し、該折り曲げ部位を収縮させることで包被フィルムの外周部を硬質板1の側端部に密着させる。続いて、包被フィルム25の主面を収縮させることにより硬質板に掛止す
るための張力を発生させる。
【0035】
包被フィルム25として熱収縮性フィルムを使用すれば、加熱および冷却の制御により包被フィルム25を逐次収縮させることができる。包被フィルム25と硬質板1との間に空気が入らないようにするため、一連の処理は真空中で行うことが望ましい。
【0036】
包被フィルム25の形状としては、硬質板の上面と同じ大きさと形状の平面部分を有しており、さらにその平面部分の周りに折り曲げ部位を形成するための硬質板の厚さ以上の幅を有しているものが用いられる。
【0037】
このような形状の包被フィルム25を用いれば、収縮後、硬質板の上面に密着するフィルム面におけるしわを防ぐことができる。これにより硬質板の上面に平滑なフィルム面を形成することができる。このフィルム面の平滑性は、この後の工程であるウエハの固定および加工を行う上で不可欠である。
【0038】
包被フィルム25の端部の折れ曲がりの大きさとしては、収縮後に硬質板の厚さと同じになるようにすれば、図11に示したように、収縮後に硬質板の下面に包被フィルム25の端部がはみ出ず下面の平坦性が保たれるので、その後の工程における作業性がよくなる。また、包被フィルム25が硬質板の下面に回り込む形に合わせて、硬質板の下面の外縁部を薄くして段差が出ないようにしてもよい。
【0039】
包被フィルム25の収縮率は、好ましくは10〜90%であり、より好ましくは20〜80%である。なお、ここで包被フィルム25の収縮率は、収縮前の寸法と収縮後の寸法とから、下記の数式に基づき算出する。
【0040】
【数1】
【0041】
上記のような収縮性フィルムとしては種々の合成樹脂フィルムが用いられ、本発明においては特に限定されない。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの二軸フィルム等を例示することができる。熱収縮性フィルムとしては、特に熱収縮性のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムを用いることが好ましい。また、包被フィルム25は、上記した各種収縮性フィルムの単層品であってもよく積層品であってもよい。このような包被フィルム25の厚さは、好ましくは20〜1000μmであり、より好ましくは30〜500μmである。
【0042】
本方法において包被フィルム25は硬質板の側端部で掛止されているので、硬質板上面の水平方向に力が加えられた場合であっても、包被フィルム25の位置ずれは起こらない。また、包被フィルム25と硬質板上面とは非接着の状態であるため、たとえば硬質板の側端部において包被フィルム25を切開すれば、硬質板を包被フィルム25から簡便に取り外すことができる。
【0043】
(c)による硬質板に掛止させる方法は、前述した(a)、(b-1)、(b-2)のそれぞれの取付方法と組み合わせて行うことができる。それぞれの方法において包被フィルム((b-1)、(b-2)においては基材)を収縮性フィルムとすることにより、それぞれの方法による硬質板への固定力に、さらに収縮性フィルムの収縮による張力が加わる。その結果、
ウエハの加工時における包被フィルムの弛みが起きにくくなり、よりウエハをしっかりと固定できるようになる。
【0044】
<(2)包被フィルム上面にウエハを接着固定する工程>
以下、前記図2に示した態様を例にとって、以降の工程を、図面を参照しながら説明していく。
【0045】
被加工物として用いられるウエハとしては、シリコンウエハ、ガリウム・ヒ素ウエハ等の各種半導体ウエハが挙げられる。中でも、表面に回路が形成された半導体ウエハが好ましく適用される。
【0046】
ウエハを包被フィルム2の上面に固定する手段としては、接着剤あるいは両面粘着シートなどの汎用の手段が採用される。このような固定手段32により、図12に示したように包被フィルムの上面にウエハを接着固定する。
【0047】
最終的には、固定手段32は包被フィルムと共にウエハ31から剥離除去する必要がある。そのため、後述するように、固定手段32としては、ウエハ31に面する粘着層と包被フィルムに面する粘着層とで粘着力が異なる両面粘着シートが好ましい。図14に両面粘着シートでウエハを固定した状態を示した。固定手段として用いる両面粘着シートは、基材33の両面にウエハに面する粘着層34および包被フィルムに面する粘着層35をそれぞれ積層してなる。
【0048】
固定手段32として両面粘着シートを用いる場合、通常、粘着層34はウエハに対して低粘着力の粘着剤が使用され、粘着層35は包被フィルム側に対してより強い粘着力を持つ粘着剤が使用される。粘着層34としては、いわゆる再剥離型の弱粘着剤や、エネルギー線照射により粘着力を低減できるエネルギー線硬化型粘着剤からなることが好ましい。
【0049】
弱粘着剤としては、アクリル系、ポリエステル系、天然ゴム系、ウレタン系等従来公知の粘着剤が特に制限されることなく用いられる。これらの内でも、アクリル系粘着剤が好ましく、特にアクリル酸エステルを主たる構成単位とするアクリル系粘着剤が好ましい。このような弱粘着剤の粘着力は、100〜5000mN/25mm、好ましくは200〜200
0mN/25mm程度であり、ウエハの加工中にはウエハを十分に固定でき、また所要の工程終
了後には、容易にウエハからはずすことができる。
【0050】
エネルギー線硬化型粘着剤としては、前述したものが特に制限されることなく用いられる。エネルギー線硬化型粘着剤は、エネルギー線照射前にはウエハに対して充分な接着力を有し、エネルギー線照射後には接着力が著しく減少する。すなわち、エネルギー線照射前には、ウエハを充分な接着力で保持するが、エネルギー線照射後には、ウエハを容易に剥離することができる。このようなエネルギー線硬化型粘着剤の硬化後の好ましい粘着力は、10〜1000mN/25mmであり、さらに好ましくは50〜500mN/25mm程度である。
【0051】
粘着層35としては、強粘着剤を用いれば、包被フィルムと両面粘着シートを一体としてウエハから剥離除去でき、好ましい。用いる強粘着剤は包被フィルムの材質に合わせ、適宜市販の粘着剤から選択できる。包被フィルムと両面粘着シートを一体とせず、両者を剥離・分離する必要がある場合には、粘着層35としては強粘着剤を使用せず、粘着層35の粘着力が、粘着層34の粘着力に対して2〜3倍程度、または1/3〜1/2程度になるような粘着剤を用いる。このようにすれば、粘着層34および粘着層35の接着面における剥離を任意の順番で行うことができる。
【0052】
本発明の固定手段32は、上記のような両面粘着シートに限らず、他の手段であっても
よい。たとえば、基材33を有しない単層または2層の粘着層よりなる粘着フィルムでもよいし、液状の接着剤を包被フィルム上に塗布乾燥した固定手段であってもよい。
【0053】
<(3)ウエハの上面に加工を施す工程>
ウエハの加工方法としては、たとえばウエハの裏面研削や素子小片へのダイシングのような機械加工や、ウエットエッチングやドライエッチングなどのエッチング処理、蒸着、スパッタリングやCVDなどの薄膜形成加工等が挙げられる。これらの加工方法は単独で行ってもよいが、複数の工程を連続して行ってもよい。特に、極薄のウエハを破損することなく加工が可能なため、裏面研削加工を行った後さらに別の加工を行う場合に適している。このような加工の間、ウエハの固定手段に接した面では表面保護も同時に行われる。
【0054】
これらの工程、特に機械加工においてはグラインダーやダイシングブレードにより、ウエハの剪断方向(ウエハ上面の水平方向)に力が加えられる。この際、硬質板上面の包被フィルムが位置ずれすれば、その上に固定されているウエハも位置ずれし、ウエハの加工が不可能になる。
【0055】
しかし、本発明では、上記のような特殊な手段を採用することで、包被フィルムの位置ずれを防止しているため、このような不都合が発生することはない。
<(4)包被フィルムから硬質板を取り外す工程>
前記加工工程で裏面研削などの加工が施されたウエハは脆弱で、外部応力によって非常に壊れやすい状態にあるが、以下の方法によってウエハに損傷を与えることなく容易にかつ確実に硬質板を取り外せる。
【0056】
包被フィルムと硬質板とを部分接着する方法を用いた場合は、硬質板側面とウエハの間の部分、つまり、ウエハの周縁部で包被フィルムを切開する。袋状の包被フィルムにウエハを封入した場合、または包被フィルムを収縮させて硬質板に掛止させる方法を用いた場合は、ウエハの周縁部、硬質板の側面または裏面の任意の場所で包被フィルムを切開する。また、袋状の包被フィルムの開口部をクリップで封止した場合は、当該クリップを袋状包被フィルムよりはずすことにより硬質板が取り外される。これらの操作により、硬質板を拘束する包被フィルムの拘束力が解消されるため、包被フィルムから硬質板を容易かつ確実に取り外せる。図14に硬質板を取り外した後のウエハおよび包被フィルムの状態を示す。
【0057】
その後、包被フィルムを折り返し方向に180°剥離するなどの公知の手法で包被フィルムをウエハから除去する。この際、ウエハ固定手段32も包被フィルムとともに除去してもよく、包被フィルムを除去した後に、ウエハ固定手段32を除去してもよい。かくして加工処理を終えたウエハが得られる。なお、包被フィルムの除去に際して、ウエハの加工面側を吸着装置や粘着シートなどにより固定しておいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、ウエハを硬質板に確実に固定し、ウエハの上面に加工を施した後、ウエハを破損させることなく硬質板から確実に剥離することができるウエハ加工方法が提供される。また、そのような加工方法に好適に用いられる包被フィルムが提供される。
[実施例]
ウエハとして、シリコン製ダミーウエハ(200mm径、厚さ725μm)、硬質板として、ソーダライムガラス(直径200mm、厚さ0.7mm)を用意し、袋状の包被フィルムとして、厚さ30μmの熱収縮性で片面がヒートシール可能なポリエチレンフィルム製のラップ材(幅220mm、100℃での収縮率約50%)を用意した。
【0059】
ラップ材を二重に折り畳んで周辺部を融着させて開口部を有する袋状とした後、開口部
より硬質板を挿入し真空ポンプで脱気しながら硬質板とラップ材が密着するように加熱してラップ材を収縮させ、さらに開口部および周辺部をヒートシールして袋状の包被フィルムに硬質板が完全に封入された状態とした。
【0060】
ウエハ固定手段用の両面粘着シートとして、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に強粘着性のアクリル粘着剤(厚さ15μm)、その反対面に紫外線照射により硬化して粘着力の低下する紫外線硬化型粘着剤(厚さ15μm)が設けられた両面粘着シート(総厚55μm)を用いた。双方の粘着剤面には保護のため剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)を積層した。
【0061】
両面粘着シートの強粘着性のアクリル粘着剤面を硬質板を封入した包被フィルム側に貼付し、その反対面の紫外線硬化型粘着剤面に、用意したウエハの鏡面側を貼着した。
プラズマエッチング機能付きウエハ研削装置(ディスコ社製、DFG8540−PE)を使用して、硬質板に固定されたウエハを厚さ150μmまで研削する研削工程を行い、続いて、研削工程で生成した破砕層をプラズマエッチングにより除去した。
【0062】
ウエハを処理した後、硬質板に固定されたウエハのウエハ側(エッチング処理面)を吸着テーブルに吸着固定し、硬質板の側端部に接する位置の包被フィルムをカッターナイフを使用して切り開き、硬質板をウエハに接着している包被フィルムから取り除いた。次に、ウエハに残った包被フィルム側より紫外線を照射し、両面粘着シートの紫外線硬化型粘着剤層を硬化させた。続いて、ウエハからはみ出している包被フィルムの端部を把持して反対の端部に向かって引き剥がし、両面粘着シートごと包被フィルムを除去し裏面研削およびプラズマエッチング加工を施したウエハを得た。
【0063】
一連の工程においてウエハに特段のダメージは見られず、極めて簡単で確実にウエハを取り扱うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る袋状の包被フィルムに硬質板を収容した状態を示す。
【図2】本発明に係る袋状の包被フィルムを硬質板に取り付けた状態を示す。
【図3】本発明に係る包被フィルムの断面図を示す。
【図4】本発明に係る包被フィルムを硬質板に取り付けた状態を示す。
【図5】本発明に係る包被フィルムの断面図を示す。
【図6】本発明に係る包被フィルムを硬質板に取り付けた状態を示す。
【図7】本発明に係る包被フィルムの断面図を示す。
【図8】本発明に係る包被フィルムを硬質板に取り付けた状態を示す。
【図9】本発明に係る包被フィルムを硬質板にかぶせた状態を示す。
【図10】本発明に係る包被フィルムを硬質板に掛止した状態を示す。
【図11】本発明に係る包被フィルムを硬質板に掛止した状態を示す。
【図12】ウエハを硬質板に固定した状態を示す。
【図13】ウエハを硬質板に固定した状態を示す。
【図14】ウエハに裏面研削を行った後、包被フィルムとともに硬質板からはずした状態を示す。
【符号の説明】
【0065】
1・・・硬質板
3・・・封止手段
4・・・基材
5・・・粘着層
6・・・非粘着部位
10・・・基材
11・・・粘着層
12・・・非粘着層
13・・・粘着部位
15・・・基材
16・・・エネルギー線硬化型粘着層
17・・・非粘着部位
18・・・粘着部位
21・・・包被フィルム
22・・・包被フィルム
23・・・包被フィルム
24・・・包被フィルム
25・・・包被フィルム
31・・・ウエハ
32・・・ウエハ固定手段
33・・・基材
34・・・粘着層
35・・・粘着層
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質板上でウエハに対して行う加工方法および該加工方法に用いられる包被フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のICカードの普及にともない、その構成部材であるウエハの薄型化が進められている。従来350μm程度の厚さであったウエハを、50〜100μmあるいはそれ以下まで薄くすることが求められるようになった。
【0003】
脆質部材であるウエハは、薄くなるにつれて、加工や運搬の際、破損する危険性が高くなる。このため、ウエハを極薄まで研削したり、極薄のウエハを運搬したりする場合は、ウエハをガラス板やアクリル板のような硬質板上に両面粘着シートなどにより固定・保護して作業を進めるのが望ましい。
【0004】
しかしながら、従来の両面粘着シートでウエハと硬質板とを貼り合わせる方法では、一連の工程を終えた後、両者を剥離する際、ウエハが割れてしまうことがあった。ウエハを粘着シートごと硬質板からは剥がそうとすると、脆弱なウエハは、ひずみがかかって割れてしまう。
【0005】
このような問題を解決するための手段として、本出願人は、特許文献1において、ウエハを硬質板に確実に固定することができ、かつ、加工後には容易に剥離できる独自の両面粘着シートおよびその使用方法を開示した。この両面粘着シートは、従来のものと同様に、硬質板にウエハを確実に固定することができる。ウエハに所要の加工を施した後、両面粘着シートにエネルギー線照射と加熱を行うと、両面粘着シート自体の接着力の低下と変形が起こり、ウエハは粘着面から自発的に剥離していく。
【0006】
しかしながら、ウエハと粘着剤との密着性が特に高い場合、両面粘着シートの変形が不充分となり、ウエハを剥離できないことがあった。また、特に面積が大きく極薄のウエハでは、粘着シートの収縮応力が粘着面を介してウエハに伝達することによって、ウエハが破損してしまうことがあった。
【特許文献1】特開2000−136362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものである。すなわち本発明は、ウエハを硬質板に確実に固定し、ウエハの上面に加工を施した後、ウエハを破損させることなく硬質板から確実に剥離することのできる、ウエハの加工方法を提供することを目的としている。また、そのような加工方法に好適に用いられる包被フィルムを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
[1](1)硬質板の少なくとも上面に、該上面に対し非接着性の包被フィルムを、剪断方向に対して位置ずれせず、かつ取り外し可能に取り付ける工程と、
(2)前記包被フィルムの上面にウエハを接着固定する工程と、
(3)前記ウエハの上面に加工を施す工程と、
(4)前記包被フィルムから前記硬質板を取り外す工程と、
を含むことを特徴とするウエハの加工方法。
[2]袋状の包被フィルムに硬質板を収容し、袋の開口部から真空引きし、開口部を封止することで、前記工程(1)における包被フィルムの取り付けを行う[1]に記載のウエハの加工方法。
[3]包被フィルムと硬質板の側面部とを接着固定することによって、前記工程(1)における包被フィルムの取り付けを行う[1]に記載のウエハの加工方法。
[4]包被フィルムを収縮させると同時に該包被フィルムの外周部を硬質板の側端部に掛止することによって、前記工程(1)における包被フィルムの取り付けを行う[1]に記載のウエハの加工方法。
[5]ウエハ固定用の硬質板を覆うためのウエハ加工用の包被フィルムであって、前記包被フィルムは少なくとも硬質板の上面に対して非接着性であり、かつ硬質板に対し取り外しが可能な取付手段を有することを特徴とするウエハ加工用の包被フィルム。
[6]前記取付手段は、開口部から真空引きが可能で硬質板を収容可能な袋状の形状であって、該開口部が封止可能であることを特徴とする[5]に記載のウエハ加工用の包被フィルム。
[7]前記取付手段は、硬質板の側面部を接着固定する接着剤または粘着剤であることを特徴とする[5]に記載のウエハ加工用の包被フィルム。
[8]前記取付手段は、硬質板の側端部に対し収縮することにより掛止可能となる収縮フィルムであることを特徴とする[5]に記載のウエハ加工用の包被フィルム。
【0009】
なお、「包被フィルムの上面」とは、包被フィルムの硬質板とは接していない側の面、すなわちウエハが固定される(された)側の面を意味する。「ウエハの上面」とは、ウエハの包被フィルムと接していない側、すなわち加工が施される側の面を意味する。また、「下面」とは、これらの反対面のことを意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウエハを硬質板に確実に固定し、ウエハの上面に加工を施した後、ウエハを破損させることなく硬質板から確実に剥離することができるウエハ加工方法が提供される。また、そのような加工方法に好適に用いられる包被フィルムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るウエハ加工方法は、以下の4つの工程からなることを特徴としている。
(1)包被フィルムを硬質板に取り付ける工程
(2)包被フィルム上面にウエハを接着固定する工程
(3)ウエハの上面に加工を施す工程
(4)包被フィルムから硬質板を取り外す工程
また、本発明に係るウエハ加工用包被フィルムは、上記加工方法において好適に用いられるものであり、硬質板の少なくとも上面に、該上面と接着させずに、剪断方向に対して位置ずれせず、かつ取り外し可能に取り付けられることを特徴としている。
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明のウエハ加工方法および包被フィルムについて具体的に説明する。
<(1)包被フィルムを硬質板に取り付ける工程>
硬質板としては、たとえばガラス板、石英板や、アクリル板、ポリ塩化ビニル板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリプロピレン板、ポリカーボネート板等のプラスチック板が使用できる。硬質板のASTM D 883により定義される硬度は、好ましくは70MPa以上である。硬質板の厚さは、その材質にもよるが、通常は、0.1〜10mm程度であり、加工するウエハとほぼ同じ大きさの円形のものが用いられる。後の工程においてエネルギー線を用いる場合には、硬質板としては、エネルギー線に対する透過性を有するものが用いられる。また、包被フィルムとして熱収縮性フィルムを用いる場合、硬質板は
フィルムを収縮させる温度に対し耐熱性のあるものが用いられる。
【0013】
包被フィルムは、硬質板の少なくとも上面を完全に覆うように取り付けられる。硬質板の上面に対面する包被フィルム面は非接着性であり、後の工程で硬質板を包被フィルムから取り外し容易な取付手段を有している。硬質板の下面は包被フィルムに覆われていてもよく、また覆われていなくてもよい。硬質板の下面に対して包被フィルムは接着性であっても非接着性であってもよい。また、包被フィルムは、硬質板の少なくとも上面とは、剪断方向に対して位置ずれしないように取り付けられる。ここで、剪断方向とは、硬質板上面の水平方向であり、この方向に何らかの力が加えられた場合でも、包被フィルムは位置ずれを起こさないように取り付けられる。
【0014】
包被フィルムを硬質板に取り付ける方法としては、たとえば、
(a)袋状の包被フィルムに硬質板を封入する方法、
(b)包被フィルムと硬質板とを部分接着する方法、
(c)包被フィルムを収縮させて硬質板に掛止させる方法、
の3つが挙げられる。以下、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(a)袋状の包被フィルムに硬質板を封入する方法
図1のように、硬質板1を袋状の包被フィルム21に収容し、開口部を真空ポンプにつないで真空引きし、袋内の空気を排気する。これにより包被フィルムの内面は硬質板1の両面に密着する。次に、包被フィルム21の開口部を、融着あるいはクリップなどの封止手段3により空気洩れしないようにふさぐことで、硬質板1に包被フィルム21が取り付けられる(図2)。袋内の空気の排気は、高い真空度で行うのが好ましいが、開口部を封止する直前に袋内の空気を機械的に押し出して行ってもよい。
【0016】
この方法に係わる本発明の包被フィルム21は、図1に示すように開口部から真空引きが可能で硬質板を収容可能な袋状の形状であり、開口部が封止可能な構造よりなる取付手段を有する。このような包被フィルム21を作製する方法としては、1枚または2枚のフィルムを適宜加工する方法が挙げられる。1枚のフィルムを用いる場合は、フィルムを半分に折り返して重ね合わせ、開口部を残して側縁部を接着または融着すればよい。2枚のフィルムを用いる場合は、フィルム同士を重ね合わせ、開口部を残して外周を接着または融着すればよい。
【0017】
収容される硬質板に対して包被フィルム21の袋内の空間が広すぎると、包被フィルム21を硬質板に取り付ける際にフィルム上面にシワが発生したり、取り付け後に包被フィルム21がずれたりする危険性がある。したがって、前記フィルムの接着または融着は、収容する硬質板の外周に沿った形状になるように行うことが望ましい。なお、前記フィルムの接着または融着は、フィルム間に硬質板を挟んだ状態で行い、袋の形成と同時に硬質板の収容を行ってもよい。
【0018】
図2に示されるように、包被フィルム21は硬質板1を気密的に包みこんでいるため、硬質板1上面に対して水平方向に力が加えられた場合であっても、包被フィルム21の位置ずれは起こらない。また、包被フィルム21を切開したりクリップを開放すれば、気密状態は解消され、硬質板1を包被フィルム21から簡便に取り外すことができる。
【0019】
(a)の方法に用いられる包被フィルム21としては、種々の合成樹脂フィルムが用い
られ、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレ
ン酢ビフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のフィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。さらに、フィルムを袋状に融着するためにヒートシール性接着剤(接着フィルム)の積層フィルムであってもよい。また、ウエハの加工時に過大な剪断力が加えられても包被フィルム21の位置ずれが起こらないように、包被フィルム21の硬質板に接する側の面には防滑処理が施されていてもよい。
【0020】
上記のような包被フィルム21の厚さは、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは15〜150μmである。
(b)包被フィルムと硬質板とを部分接着する方法
本発明においては、部分接着により硬質板に包被フィルムを取り付ける方法を用いてもよい。この方法に用いる包被フィルムの取付手段は、硬質板の側面部を接着固定する位置に配置された接着剤または粘着剤である。この場合、(b-1)端部にのみ粘着層を有する
包被フィルムを用いる方法、(b-2)部分硬化されたエネルギー線硬化型粘着層を有する
包被フィルムを用いる方法、の2つが挙げられる。これらの方法を用いる場合、接着固定後の包被フィルムと硬質板との間に空気が入らないようにするために、接着固定の工程は真空中で行うことが望ましい。
【0021】
これらの方法に係わる本発明の包被フィルムは、以下詳述するように、端部に粘着部位が設けられており、該粘着部位と硬質板の側面部とを接着固定することで硬質板上面への取り付けが行われることを特徴としている。
【0022】
(b-1)端部にのみ粘着層を有する包被フィルムを用いる方法
図3および図5に本方法における包被フィルム22および23を示す。図3の包被フィルム22では、基材4上の端部に粘着層5が積層されている。図5の包被フィルム23では、基材10上に粘着層11および非粘着層12が積層されている。粘着層11の端部が露出し、粘着部位13を形成するように、非粘着層12は積層されている。
【0023】
図3において、非粘着部位6は、硬質板1の上面と同じ形状、大きさとする。粘着層5の幅は、硬質板1の厚さ以上、好ましくは同じとする。この包被フィルム22を硬質板1に、図4に示したように非粘着部位6が硬質板1の上面と重なるように乗せ、包被フィルム22の端部を折り曲げて、粘着層5を硬質板1の側面に貼り付け、包被フィルム22全体を固定する。
【0024】
図5においては、非粘着層12は、硬質板1の上面と同じ形状、大きさとする。端部の粘着部位13の幅は硬質板1の厚さ以上、好ましくは同じとする。この包被フィルム23を硬質板1に、図6に示したように非粘着層12が硬質板1の上面と重なるように乗せ、包被フィルム23の端部を折り曲げて、粘着部位13を硬質板1の側面に貼り付け、包被フィルム23全体を固定する。
【0025】
上記の包被フィルム22、23の基材4、10および非粘着層12としては、前述した(a)に用いられる包被フィルム21と同じ合成樹脂フィルムが使用できる。非粘着層1
2としては、合成樹脂フィルムの他印刷用インキや塗料からなる被膜であってもよい。
【0026】
上記のような基材4および10の厚さは、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは15〜150μmである。非粘着層12の厚さは、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは1〜20μmである。
【0027】
上記包被フィルム22、23における粘着層5、11は、いずれも硬質板の側面に貼着され、包被フィルム全体を硬質板に固定する役割を担う。狭い接触面積でシート全体を固定しなければならないため、高い粘着力が必要である。材料としては、いわゆる強粘着剤を用いる。このような強粘着力の粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、ポリビニルエーテル系等の粘着剤が用いられる。
【0028】
(b-2)部分硬化されたエネルギー線硬化型粘着層を有する包被フィルムを用いる方法
図7に示したように、本方法における包被フィルム24は、基材15とその片面に形成されたエネルギー線硬化型粘着層16とからなる。エネルギー線硬化型粘着層16はあらかじめ端部に露光マスクをのせてエネルギー線照射しておき、中央の非粘着部位17と端部の粘着部位18とを形成しておく。非粘着部位17は、硬質板1の上面と同じ形状、大きさとし、粘着部位18の幅は硬質板1の厚さ以上、好ましくは同じとする。この包被フィルム24を(b-1)と同様にしてフィルム端部の粘着部位18を介して硬質板1に貼着
固定する(図8)。
【0029】
上記の包被フィルム24の基材15としては、前述した(a)に用いられる包被フィル
ム21と同じ合成樹脂フィルムが使用できる。基材15の厚さは、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは15〜150μmである。
【0030】
エネルギー線硬化型粘着層16としては、たとえば特開昭60−196,956号公報、特開昭60−223,139号公報、特開平5−32946号公報、特開平8−27239号公報等に記載のエネルギー線硬化型粘着剤が特に制限されることなく用いられる。このようなエネルギー線硬化型粘着剤の未硬化時における好ましい粘着力は、5 N/2
5mm以上であり、さらに好ましくは10〜50 N/25mmである。これに対し、硬
化後の粘着力は実質的に0 N/25mmである。ただし、硬化後の粘着力は、硬質板1
に貼付される前にエネルギー線が照射され粘着層が硬化した状態で、硬質板1を被着体として測定して得た値である。
【0031】
図4、6、8に示されるように、包被フィルム22、23、24はいずれも硬質板1の側面部に接着固定されているため、硬質板1上面の水平方向に力が加えられた場合であっても、包被フィルムの位置ずれは起こらない。一方、包被フィルムと硬質板上面とは非接着の状態であるため、包被フィルムを粘着層(部位)と非粘着層(部位)の境界に沿って切開するだけで、包被フィルムから硬質板を簡便に取り外すことができる。
【0032】
(c)包被フィルムを収縮させて硬質板に掛止させる方法
本発明においては、収縮させることにより硬質板の側端部に掛止させて硬質板に包被フィルムを取り付ける方法を用いてもよい。この方法に用いる包被フィルムの取付手段は包被フィルム自身に使用される収縮性フィルムである。
【0033】
本方法によって固定が行われた状態を図10に示す。包被フィルム25は収縮性フィルムからなり、ウエハを固定するための上面と硬質板の側端部で掛止するための折り曲げ部位を有している。包被フィルム25には硬質板の外周部から中央部に向かう収縮による張力がかかっており、この力により包被フィルム25は硬質板の側端部に掛止されている。
【0034】
具体的な方法としては、硬質板の厚さ以上の幅が硬質板の周に沿ってはみ出るように包被フィルム25を硬質板の上面に載置する。包被フィルム25の硬質板の上面からはみ出た部位を硬質板の下面に回り込むように折り込むことで、図9に示すような折り曲げ部位を形成し、該折り曲げ部位を収縮させることで包被フィルムの外周部を硬質板1の側端部に密着させる。続いて、包被フィルム25の主面を収縮させることにより硬質板に掛止す
るための張力を発生させる。
【0035】
包被フィルム25として熱収縮性フィルムを使用すれば、加熱および冷却の制御により包被フィルム25を逐次収縮させることができる。包被フィルム25と硬質板1との間に空気が入らないようにするため、一連の処理は真空中で行うことが望ましい。
【0036】
包被フィルム25の形状としては、硬質板の上面と同じ大きさと形状の平面部分を有しており、さらにその平面部分の周りに折り曲げ部位を形成するための硬質板の厚さ以上の幅を有しているものが用いられる。
【0037】
このような形状の包被フィルム25を用いれば、収縮後、硬質板の上面に密着するフィルム面におけるしわを防ぐことができる。これにより硬質板の上面に平滑なフィルム面を形成することができる。このフィルム面の平滑性は、この後の工程であるウエハの固定および加工を行う上で不可欠である。
【0038】
包被フィルム25の端部の折れ曲がりの大きさとしては、収縮後に硬質板の厚さと同じになるようにすれば、図11に示したように、収縮後に硬質板の下面に包被フィルム25の端部がはみ出ず下面の平坦性が保たれるので、その後の工程における作業性がよくなる。また、包被フィルム25が硬質板の下面に回り込む形に合わせて、硬質板の下面の外縁部を薄くして段差が出ないようにしてもよい。
【0039】
包被フィルム25の収縮率は、好ましくは10〜90%であり、より好ましくは20〜80%である。なお、ここで包被フィルム25の収縮率は、収縮前の寸法と収縮後の寸法とから、下記の数式に基づき算出する。
【0040】
【数1】
【0041】
上記のような収縮性フィルムとしては種々の合成樹脂フィルムが用いられ、本発明においては特に限定されない。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの二軸フィルム等を例示することができる。熱収縮性フィルムとしては、特に熱収縮性のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムを用いることが好ましい。また、包被フィルム25は、上記した各種収縮性フィルムの単層品であってもよく積層品であってもよい。このような包被フィルム25の厚さは、好ましくは20〜1000μmであり、より好ましくは30〜500μmである。
【0042】
本方法において包被フィルム25は硬質板の側端部で掛止されているので、硬質板上面の水平方向に力が加えられた場合であっても、包被フィルム25の位置ずれは起こらない。また、包被フィルム25と硬質板上面とは非接着の状態であるため、たとえば硬質板の側端部において包被フィルム25を切開すれば、硬質板を包被フィルム25から簡便に取り外すことができる。
【0043】
(c)による硬質板に掛止させる方法は、前述した(a)、(b-1)、(b-2)のそれぞれの取付方法と組み合わせて行うことができる。それぞれの方法において包被フィルム((b-1)、(b-2)においては基材)を収縮性フィルムとすることにより、それぞれの方法による硬質板への固定力に、さらに収縮性フィルムの収縮による張力が加わる。その結果、
ウエハの加工時における包被フィルムの弛みが起きにくくなり、よりウエハをしっかりと固定できるようになる。
【0044】
<(2)包被フィルム上面にウエハを接着固定する工程>
以下、前記図2に示した態様を例にとって、以降の工程を、図面を参照しながら説明していく。
【0045】
被加工物として用いられるウエハとしては、シリコンウエハ、ガリウム・ヒ素ウエハ等の各種半導体ウエハが挙げられる。中でも、表面に回路が形成された半導体ウエハが好ましく適用される。
【0046】
ウエハを包被フィルム2の上面に固定する手段としては、接着剤あるいは両面粘着シートなどの汎用の手段が採用される。このような固定手段32により、図12に示したように包被フィルムの上面にウエハを接着固定する。
【0047】
最終的には、固定手段32は包被フィルムと共にウエハ31から剥離除去する必要がある。そのため、後述するように、固定手段32としては、ウエハ31に面する粘着層と包被フィルムに面する粘着層とで粘着力が異なる両面粘着シートが好ましい。図14に両面粘着シートでウエハを固定した状態を示した。固定手段として用いる両面粘着シートは、基材33の両面にウエハに面する粘着層34および包被フィルムに面する粘着層35をそれぞれ積層してなる。
【0048】
固定手段32として両面粘着シートを用いる場合、通常、粘着層34はウエハに対して低粘着力の粘着剤が使用され、粘着層35は包被フィルム側に対してより強い粘着力を持つ粘着剤が使用される。粘着層34としては、いわゆる再剥離型の弱粘着剤や、エネルギー線照射により粘着力を低減できるエネルギー線硬化型粘着剤からなることが好ましい。
【0049】
弱粘着剤としては、アクリル系、ポリエステル系、天然ゴム系、ウレタン系等従来公知の粘着剤が特に制限されることなく用いられる。これらの内でも、アクリル系粘着剤が好ましく、特にアクリル酸エステルを主たる構成単位とするアクリル系粘着剤が好ましい。このような弱粘着剤の粘着力は、100〜5000mN/25mm、好ましくは200〜200
0mN/25mm程度であり、ウエハの加工中にはウエハを十分に固定でき、また所要の工程終
了後には、容易にウエハからはずすことができる。
【0050】
エネルギー線硬化型粘着剤としては、前述したものが特に制限されることなく用いられる。エネルギー線硬化型粘着剤は、エネルギー線照射前にはウエハに対して充分な接着力を有し、エネルギー線照射後には接着力が著しく減少する。すなわち、エネルギー線照射前には、ウエハを充分な接着力で保持するが、エネルギー線照射後には、ウエハを容易に剥離することができる。このようなエネルギー線硬化型粘着剤の硬化後の好ましい粘着力は、10〜1000mN/25mmであり、さらに好ましくは50〜500mN/25mm程度である。
【0051】
粘着層35としては、強粘着剤を用いれば、包被フィルムと両面粘着シートを一体としてウエハから剥離除去でき、好ましい。用いる強粘着剤は包被フィルムの材質に合わせ、適宜市販の粘着剤から選択できる。包被フィルムと両面粘着シートを一体とせず、両者を剥離・分離する必要がある場合には、粘着層35としては強粘着剤を使用せず、粘着層35の粘着力が、粘着層34の粘着力に対して2〜3倍程度、または1/3〜1/2程度になるような粘着剤を用いる。このようにすれば、粘着層34および粘着層35の接着面における剥離を任意の順番で行うことができる。
【0052】
本発明の固定手段32は、上記のような両面粘着シートに限らず、他の手段であっても
よい。たとえば、基材33を有しない単層または2層の粘着層よりなる粘着フィルムでもよいし、液状の接着剤を包被フィルム上に塗布乾燥した固定手段であってもよい。
【0053】
<(3)ウエハの上面に加工を施す工程>
ウエハの加工方法としては、たとえばウエハの裏面研削や素子小片へのダイシングのような機械加工や、ウエットエッチングやドライエッチングなどのエッチング処理、蒸着、スパッタリングやCVDなどの薄膜形成加工等が挙げられる。これらの加工方法は単独で行ってもよいが、複数の工程を連続して行ってもよい。特に、極薄のウエハを破損することなく加工が可能なため、裏面研削加工を行った後さらに別の加工を行う場合に適している。このような加工の間、ウエハの固定手段に接した面では表面保護も同時に行われる。
【0054】
これらの工程、特に機械加工においてはグラインダーやダイシングブレードにより、ウエハの剪断方向(ウエハ上面の水平方向)に力が加えられる。この際、硬質板上面の包被フィルムが位置ずれすれば、その上に固定されているウエハも位置ずれし、ウエハの加工が不可能になる。
【0055】
しかし、本発明では、上記のような特殊な手段を採用することで、包被フィルムの位置ずれを防止しているため、このような不都合が発生することはない。
<(4)包被フィルムから硬質板を取り外す工程>
前記加工工程で裏面研削などの加工が施されたウエハは脆弱で、外部応力によって非常に壊れやすい状態にあるが、以下の方法によってウエハに損傷を与えることなく容易にかつ確実に硬質板を取り外せる。
【0056】
包被フィルムと硬質板とを部分接着する方法を用いた場合は、硬質板側面とウエハの間の部分、つまり、ウエハの周縁部で包被フィルムを切開する。袋状の包被フィルムにウエハを封入した場合、または包被フィルムを収縮させて硬質板に掛止させる方法を用いた場合は、ウエハの周縁部、硬質板の側面または裏面の任意の場所で包被フィルムを切開する。また、袋状の包被フィルムの開口部をクリップで封止した場合は、当該クリップを袋状包被フィルムよりはずすことにより硬質板が取り外される。これらの操作により、硬質板を拘束する包被フィルムの拘束力が解消されるため、包被フィルムから硬質板を容易かつ確実に取り外せる。図14に硬質板を取り外した後のウエハおよび包被フィルムの状態を示す。
【0057】
その後、包被フィルムを折り返し方向に180°剥離するなどの公知の手法で包被フィルムをウエハから除去する。この際、ウエハ固定手段32も包被フィルムとともに除去してもよく、包被フィルムを除去した後に、ウエハ固定手段32を除去してもよい。かくして加工処理を終えたウエハが得られる。なお、包被フィルムの除去に際して、ウエハの加工面側を吸着装置や粘着シートなどにより固定しておいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、ウエハを硬質板に確実に固定し、ウエハの上面に加工を施した後、ウエハを破損させることなく硬質板から確実に剥離することができるウエハ加工方法が提供される。また、そのような加工方法に好適に用いられる包被フィルムが提供される。
[実施例]
ウエハとして、シリコン製ダミーウエハ(200mm径、厚さ725μm)、硬質板として、ソーダライムガラス(直径200mm、厚さ0.7mm)を用意し、袋状の包被フィルムとして、厚さ30μmの熱収縮性で片面がヒートシール可能なポリエチレンフィルム製のラップ材(幅220mm、100℃での収縮率約50%)を用意した。
【0059】
ラップ材を二重に折り畳んで周辺部を融着させて開口部を有する袋状とした後、開口部
より硬質板を挿入し真空ポンプで脱気しながら硬質板とラップ材が密着するように加熱してラップ材を収縮させ、さらに開口部および周辺部をヒートシールして袋状の包被フィルムに硬質板が完全に封入された状態とした。
【0060】
ウエハ固定手段用の両面粘着シートとして、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に強粘着性のアクリル粘着剤(厚さ15μm)、その反対面に紫外線照射により硬化して粘着力の低下する紫外線硬化型粘着剤(厚さ15μm)が設けられた両面粘着シート(総厚55μm)を用いた。双方の粘着剤面には保護のため剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)を積層した。
【0061】
両面粘着シートの強粘着性のアクリル粘着剤面を硬質板を封入した包被フィルム側に貼付し、その反対面の紫外線硬化型粘着剤面に、用意したウエハの鏡面側を貼着した。
プラズマエッチング機能付きウエハ研削装置(ディスコ社製、DFG8540−PE)を使用して、硬質板に固定されたウエハを厚さ150μmまで研削する研削工程を行い、続いて、研削工程で生成した破砕層をプラズマエッチングにより除去した。
【0062】
ウエハを処理した後、硬質板に固定されたウエハのウエハ側(エッチング処理面)を吸着テーブルに吸着固定し、硬質板の側端部に接する位置の包被フィルムをカッターナイフを使用して切り開き、硬質板をウエハに接着している包被フィルムから取り除いた。次に、ウエハに残った包被フィルム側より紫外線を照射し、両面粘着シートの紫外線硬化型粘着剤層を硬化させた。続いて、ウエハからはみ出している包被フィルムの端部を把持して反対の端部に向かって引き剥がし、両面粘着シートごと包被フィルムを除去し裏面研削およびプラズマエッチング加工を施したウエハを得た。
【0063】
一連の工程においてウエハに特段のダメージは見られず、極めて簡単で確実にウエハを取り扱うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る袋状の包被フィルムに硬質板を収容した状態を示す。
【図2】本発明に係る袋状の包被フィルムを硬質板に取り付けた状態を示す。
【図3】本発明に係る包被フィルムの断面図を示す。
【図4】本発明に係る包被フィルムを硬質板に取り付けた状態を示す。
【図5】本発明に係る包被フィルムの断面図を示す。
【図6】本発明に係る包被フィルムを硬質板に取り付けた状態を示す。
【図7】本発明に係る包被フィルムの断面図を示す。
【図8】本発明に係る包被フィルムを硬質板に取り付けた状態を示す。
【図9】本発明に係る包被フィルムを硬質板にかぶせた状態を示す。
【図10】本発明に係る包被フィルムを硬質板に掛止した状態を示す。
【図11】本発明に係る包被フィルムを硬質板に掛止した状態を示す。
【図12】ウエハを硬質板に固定した状態を示す。
【図13】ウエハを硬質板に固定した状態を示す。
【図14】ウエハに裏面研削を行った後、包被フィルムとともに硬質板からはずした状態を示す。
【符号の説明】
【0065】
1・・・硬質板
3・・・封止手段
4・・・基材
5・・・粘着層
6・・・非粘着部位
10・・・基材
11・・・粘着層
12・・・非粘着層
13・・・粘着部位
15・・・基材
16・・・エネルギー線硬化型粘着層
17・・・非粘着部位
18・・・粘着部位
21・・・包被フィルム
22・・・包被フィルム
23・・・包被フィルム
24・・・包被フィルム
25・・・包被フィルム
31・・・ウエハ
32・・・ウエハ固定手段
33・・・基材
34・・・粘着層
35・・・粘着層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)硬質板の少なくとも上面に、該上面に対し非接着性の包被フィルムを、剪断方向に対して位置ずれせず、かつ取り外し可能に取り付ける工程と、
(2)前記包被フィルムの上面にウエハを接着固定する工程と、
(3)前記ウエハの上面に加工を施す工程と、
(4)前記包被フィルムから前記硬質板を取り外す工程と、
を含むことを特徴とするウエハの加工方法。
【請求項2】
袋状の包被フィルムに硬質板を収容し、袋の開口部から真空引きし、開口部を封止することで、前記工程(1)における包被フィルムの取り付けを行う請求項1に記載のウエハの加工方法。
【請求項3】
包被フィルムと硬質板の側面部とを接着固定することによって、前記工程(1)における包被フィルムの取り付けを行う請求項1に記載のウエハの加工方法。
【請求項4】
包被フィルムを収縮させると同時に該包被フィルムの外周部を硬質板の側端部に掛止することによって、前記工程(1)における包被フィルムの取り付けを行う請求項1に記載のウエハの加工方法。
【請求項5】
ウエハ固定用の硬質板を覆うためのウエハ加工用の包被フィルムであって、前記包被フィルムは少なくとも硬質板の上面に対して非接着性であり、かつ硬質板に対し取り外しが可能な取付手段を有することを特徴とするウエハ加工用の包被フィルム。
【請求項6】
前記取付手段は、開口部から真空引きが可能で硬質板を収容可能な袋状の形状であって、該開口部が封止可能であることを特徴とする請求項5に記載のウエハ加工用の包被フィルム。
【請求項7】
前記取付手段は、硬質板の側面部を接着固定する接着剤または粘着剤であることを特徴とする請求項5に記載のウエハ加工用の包被フィルム。
【請求項8】
前記取付手段は、硬質板の側端部に対し収縮することにより掛止可能となる収縮フィルムであることを特徴とする請求項5に記載のウエハ加工用の包被フィルム。
【請求項1】
(1)硬質板の少なくとも上面に、該上面に対し非接着性の包被フィルムを、剪断方向に対して位置ずれせず、かつ取り外し可能に取り付ける工程と、
(2)前記包被フィルムの上面にウエハを接着固定する工程と、
(3)前記ウエハの上面に加工を施す工程と、
(4)前記包被フィルムから前記硬質板を取り外す工程と、
を含むことを特徴とするウエハの加工方法。
【請求項2】
袋状の包被フィルムに硬質板を収容し、袋の開口部から真空引きし、開口部を封止することで、前記工程(1)における包被フィルムの取り付けを行う請求項1に記載のウエハの加工方法。
【請求項3】
包被フィルムと硬質板の側面部とを接着固定することによって、前記工程(1)における包被フィルムの取り付けを行う請求項1に記載のウエハの加工方法。
【請求項4】
包被フィルムを収縮させると同時に該包被フィルムの外周部を硬質板の側端部に掛止することによって、前記工程(1)における包被フィルムの取り付けを行う請求項1に記載のウエハの加工方法。
【請求項5】
ウエハ固定用の硬質板を覆うためのウエハ加工用の包被フィルムであって、前記包被フィルムは少なくとも硬質板の上面に対して非接着性であり、かつ硬質板に対し取り外しが可能な取付手段を有することを特徴とするウエハ加工用の包被フィルム。
【請求項6】
前記取付手段は、開口部から真空引きが可能で硬質板を収容可能な袋状の形状であって、該開口部が封止可能であることを特徴とする請求項5に記載のウエハ加工用の包被フィルム。
【請求項7】
前記取付手段は、硬質板の側面部を接着固定する接着剤または粘着剤であることを特徴とする請求項5に記載のウエハ加工用の包被フィルム。
【請求項8】
前記取付手段は、硬質板の側端部に対し収縮することにより掛止可能となる収縮フィルムであることを特徴とする請求項5に記載のウエハ加工用の包被フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−49430(P2006−49430A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225645(P2004−225645)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
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