説明

エッジ検出方法及び画像処理装置

【課題】被撮像物の材質あるいは背景や周辺環境、さらには、光源の照明方向や明るさに左右されることなく被撮像物のエッジ位置を正確に検出する。
【解決手段】被撮像物IOのエッジを検出するために、制御部3は、被撮像物を実質的に半円形状で囲むように複数設けられた光源LEDを予め定められた順番で1つずつ点灯させることで、その点灯タイミングに同期して被撮像物を定点からカメラ2で撮像して当該被撮像物の濃淡画像を連続的に取得する。演算処理部4は、この点灯タイミングに同期して連続的に取得したすべての濃淡画像で、画素列毎に各画素の階調を比較して、階調の最大値となる画素と最小値となる画素との差分値を微分処理して画素列毎に微分値分布を算出し、この微分値分布から予め定められた閾値以上の画素位置をエッジ点として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエッジ検出方法及び画像処理装置に係り、特に、画像における各画素の濃淡によって被撮像物のエッジを検出するエッジ検出方法及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラで撮像した被撮像物の画像における各画素の濃淡から当該被撮像物のエッジを検出する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0003】
特許文献1に開示されたエッジ画像のエッジ連結方法は、輪郭抽出技術において、一般的なエッジ連結処理にて連結できなかった線分を適切に連結するものである。この方法では、まず、カメラでワークを撮像した画像を取得後、一定の計測領域を指定してエッジ検出処理を行う。このエッジ検出処理は、入力画像に対して微分処理を行うことで得た微分強度画像から、エッジ検出閾値に基づき閾値以上の強度を示す成分、即ち、濃淡変化の大きい微分値をエッジ画像として抽出する。この際、検出されたエッジが連続線とならず途切れた場合には、エッジの切断位置の対応関係を適切に判別するエッジ連結安定化処理を行うことで、エッジ点同士を適切に連結することができるようになる。
【0004】
また、特許文献2に開示されたエッジ検出方法は、エッジ部近傍の微分値分布が急峻である場合だけではなく、ピントが外れたりエッジ部近傍の微分値分布がなだらかだったりした場合にも、撮影された濃淡画像に含まれるエッジ位置を、切替処理のない1つの画像処理シーケンスにより、正確且つ安定して検出するものである。この方法では、カメラにより撮影した被測定物の濃淡画像に対して微分処理を施すことにより微分画像を作成する。この微分画像上を走査し、走査された画素の微分値の中から最も値の大きいものを抽出して、この最大の微分値を有する画素の位置をピーク値とする。そして、このピーク値の近傍の微分画像に対して非線形演算を行い、この非線形演算により得られた分布曲線に対して近似曲線とのマッチング処理を施すことで、被測定物のエッジ位置を算出することができるので、非線形演算により得られた分布曲線はその元になった微分画像の分布曲線に比して、分布曲線のピーク領域がより大きく、一方、分布曲線のすそ野領域はより小さくなるので、すそ野領域の変動の影響を相対的に小さくすることができる。
【0005】
なお、このようなエッジを検出する方法では、カメラによる被撮像物(ワーク、被測定物)の検出精度を高めるために、ハロゲンランプ等の光源によって被撮像物を照明することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−15735号公報
【特許文献2】特開2002−8047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、背景技術に記載した2つのエッジ検出方法では、被撮像物の材質あるいは背景や周辺環境によっては当該被撮像物のエッジ位置を正確に検出することができなくなる虞があった。また、光源の照明方向に対して面直状態に被撮像物が位置している場合や、光源の明るさが強すぎる場合には、フレアやゴーストが生じることがあるので、エッジ自体を検出することができなくなることがあった。この場合、特許文献1に開示されたエッジ画像のエッジ連結方法では、エッジ点同士を適切に連結することができなくなったり、また、エッジの一部として特徴的な部分が検出できなくなる場合があるので、間違った方向にエッジ点を連結したりする虞があった。
【0008】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、被撮像物の材質あるいは背景や周辺環境、さらには、光源の照明方向や明るさに左右されることなく被撮像物のエッジ位置を正確に検出することができるエッジ検出方法及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成する第1の態様であるエッジ検出方法は、被撮像物を実質的に半円形状で囲むように複数設けられた光源を当該被撮像物に対して照射させるにあたり、複数設けられた光源を予め定められた順番で1つずつ点灯させる点灯ステップと、点灯ステップで順次点灯させる複数の光源の点灯タイミングに同期して被撮像物を定点から撮像して当該被撮像物の濃淡画像を取得する撮像ステップと、撮像ステップで点灯タイミングに同期して取得したすべての濃淡画像で、予め定められた画素列毎に各画素の階調を比較して、画素毎に階調の最大値となる画素と、最小値となる画素との差分値を算出する差分処理ステップと、差分処理ステップで算出した画素の差分値を微分処理して画素列毎に微分値分布を算出する微分処理ステップと、微分処理ステップで算出した微分値分布から予め定められた閾値以上の画素位置をエッジ点として検出するエッジ点検出ステップとを有するものである。
【0010】
本発明の第2の態様は第1の態様であるエッジ検出方法において、エッジ点検出ステップで検出されたエッジ点となる画素の微分値を画素列毎に連結して被撮像物のエッジ部位を抽出するエッジ抽出ステップを含むものである。
【0011】
本発明の第3の態様は第1の態様又は第2の態様であるエッジ検出方法において、閾値は、被撮像物のエッジとして捉えることができる値である。
【0012】
また、本発明の第4の態様である画像処理装置は、被撮像物を実質的に半円形状で囲むように複数設けられた光源と、複数設けられた光源側に設けられ被撮像物を定点から撮像するカメラと、複数設けられた光源を予め定められた順番で1つずつ点灯させると共に、複数設けられた光源の点灯タイミングに同期してカメラのシャッターを駆動させる制御部と、カメラで点灯タイミングに同期して撮像された被撮像物の画像の濃淡から当該被撮像物のエッジを検出する演算処理部とを備え、演算処理部は、カメラで点灯タイミングに同期して撮像された被撮像物の濃淡画像を取得する濃淡画像取得機能と、濃淡画像取得機能で取得したすべての濃淡画像で、予め定められた画素列毎に各画素の階調を比較して、画素毎に階調の最大値となる画素と、最小値となる画素との差分値を算出する差分処理機能と、差分処理機能で算出した画素の差分値を微分処理して画素列毎に微分値分布を算出する微分処理機能と、微分処理機能で算出した微分値分布から予め定められた閾値以上の画素位置をエッジ点として検出するエッジ点検出機能とを有するものである。
【0013】
本発明の第5の態様は第4の態様である画像処理装置において、演算処理部は、エッジ点検出機能で検出されたエッジ点となる画素の微分値を画素列毎に連結して被撮像物のエッジ部位を抽出するエッジ抽出機能を有するものである。
【0014】
本発明の第6の態様は第4の態様又は第5の態様である画像処理装置において、複数設けられた光源は、等間隔で配置されているものである。
【0015】
本発明の第7の態様は第6の態様である画像処理装置において、複数設けられた光源は、カメラを中心にして同数で振り分けられているものである。
【0016】
さらに、本発明の第8の態様は第4の態様乃至第7の態様のうち何れか1つである画像処理装置において、光源は発光ダイオードである。
【0017】
このようなエッジ検出方法及び画像処理装置は、被撮像物のエッジを検出するために、被撮像物を実質的に半円形状で囲むように複数設けられた光源を予め定められた順番で1つずつ点灯させることで、その点灯タイミングに同期して被撮像物を定点から撮像して当該被撮像物の濃淡画像を連続的に取得する。この点灯タイミングに同期して連続的に取得したすべての濃淡画像で、画素列毎に各画素の階調を比較して、階調の最大値となる画素と最小値となる画素との差分値を微分処理して画素列毎に微分値分布を算出し、この微分値分布から予め定められた閾値以上の画素位置をエッジ点として検出することで、被撮像物の材質あるいは背景や周辺環境、さらには、光源の照明方向や明るさに左右されることなく被撮像物のエッジ点を正確且つ安定して検出することが可能になる。また、この差分値を使用することで、階調変化による情報量を減らすことができるので、微分処理における処理速度の低下を防ぐことができる。さらに、微分処理することで得られた画素列の微分値分布から予め定められた閾値以上の画素位置をエッジ点として検出し、そのエッジ点となる画素の微分値を画素列毎に連結して被撮像物のエッジ部位を描画するので、当該エッジ部位を正しく抽出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のエッジ検出方法及び画像処理装置によれば、被撮像物に対して複数の方向から光源を順次当てることで、それぞれの点灯タイミングで撮像された被撮像物の濃淡画像を連続的に得ることができることから、複数の方向から光源を順次当てたすべての濃淡画像からエッジ点を確実に検出できる輝度差分を得ることができるので、被撮像物の材質あるいは背景や周辺環境、さらには、光源の照明方向や明るさに左右されることなく被撮像物のエッジ位置を正確且つ安定して検出することができるようになる。したがって、生産ライン等の部品検査において部品欠陥を適切に検出することができるようになるので、組立製品の品質向上やライン稼働率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のエッジ検出方法に用いる画像処理装置の好ましい実施の形態例を示す装置構成のブロック図である。
【図2】本発明のエッジ検出方法の好ましい実施の形態例を示すフローチャート図である。
【図3】本発明のエッジ検出方法及び画像処理装置で撮像した被撮像物の濃淡画像の状態を示す説明図で、(A)、(B)はそれぞれ被撮像物を中心にして相対する位置から当該被撮像物に光源を当てた時の輝度の階調変化の状態を示す図である。
【図4】本発明のエッジ検出方法で取得した被撮像物の濃淡画像の検出範囲における各画素の階調を示す説明図で、(A)は図3(A)の状態における図、(B)は図3(B)の状態における図である。
【図5】本発明のエッジ検出方法を示す説明図で、(A)は図4(A)、(B)における差分処理の結果を示す図で、(B)は(A)で選択した画素列の微分値分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のエッジ検出方法及び画像処理装置を実施するための最良の形態例について、図面を参照して説明する。
【0021】
本発明の画像処理装置は図1に示すように、被撮像物を実質的に半円形状で囲むように複数設けられた照明としての光源LEDと、複数設けられた光源LED側に設けられ被撮像物IOを定点から撮像するカメラ2と、複数設けられた光源LEDを予め定められた順番で1つずつ点灯させると共に、複数設けられた光源LEDの点灯タイミングに同期してカメラ2のシャッターを駆動させる制御部3と、カメラ2で点灯タイミングに同期して撮像された被撮像物IOの画像の濃淡から当該被撮像物IOのエッジを検出する演算処理部4とを備えている。
【0022】
光源LEDは、発光ダイオードが好ましい。発光ダイオードは、入力電圧に対する応答が速く照明に用いた場合は点灯と同時に最大光量が得られるので、精度よく撮像することができるからである。この複数設けられた光源LEDは、等間隔で配置されていることが好ましい。複数の光源LEDを等間隔で配置することで、後述する演算処理部4で各位置の光源LEDによって照射された被撮像物の画像をカメラ2でそれぞれ取得することで、濃淡の差が明らかに異なる画像を精度良く得ることができる。さらに、複数設けられた光源LEDは、カメラ2を中心にして同数で振り分けられていることが好ましい。複数の光源LEDを、カメラ2を中心にして同数で振り分けることで、後述する演算処理部4でカメラ2から取得した複数の画像のうち一部の画像で発生する虞のあるフレアやゴーストを気にすることなく、濃淡の差が明らかに異なる画像を得ることができる。
【0023】
カメラ2は、後述する演算処理部4で被撮像物IOのエッジを検出するために、CCDやCMOSなどの撮像素子を用いてデジタル画像データを生成するデジタルカメラが好適で、所定の焦点距離のレンズを取り付けることで、被撮像物を所定の視野で撮像することができる。
【0024】
制御部3は、複数設けられた光源LEDを予め定められた順番で1つずつ点灯させことができるように、当該複数設けられた光源LEDに電気的に接続され、また、複数設けられた光源LEDの点灯タイミングに同期してカメラ2のシャッターを駆動させることができるように、当該カメラ2に電気的に接続されている。
【0025】
演算処理部4はコンピュータが好ましく、内部にCPU等の演算処理装置を備えると共に、ブラウン管モニタや液晶ディスプレイ等の表示画面を有する表示装置や、キーボード、マウス等の入力デバイス、さらに、ハードディスクドライブ等の記憶装置で構成され、カメラ2からのデジタル画像データを記憶装置に記憶できるように、当該カメラ2に電気的に接続さている。
【0026】
この演算処理部4は、カメラ2で点灯タイミングに同期して撮像された被撮像物IOの濃淡画像を取得する濃淡画像取得機能41と、濃淡画像取得機能41で取得したすべての濃淡画像で、予め定められた画素列毎に各画素の階調を比較して、画素毎に階調の最大値となる画素と、最小値となる画素との差分値を算出する差分処理機能42と、差分処理機能42で算出した画素の差分値を微分処理して画素列毎に微分値分布を算出する微分処理機能43と、微分処理機能43で算出した微分値分布から予め定められた閾値以上の画素位置をエッジ点として検出するエッジ点検出機能44とを有している。
【0027】
濃淡画像取得機能41は、カメラ2で撮像した濃淡画像が白黒の濃淡のグレースケール画像の場合にはそのデジタル画像データをそのまま差分処理機能に送出するが、カラー画像を取得する場合には当該カラー画像をグレースケール画像に変換する機能(図示せず。)を付加させる。また、エッジ点検出機能44の閾値は、初期設定の都度、即ち、異なる被撮像物毎に新たに設定され記録装置に記録される。
【0028】
また、演算処理部4は、エッジ点検出機能44で検出されたエッジ点となる画素の微分値を画素列毎に連結して被撮像物のエッジ部位を抽出するエッジ抽出機能45を有している。
【0029】
このように構成された画像処理装置1の各構成は、演算処理装置によって実行されるプログラムによって実現されるものである。このプログラムによるデータ処理手順について、図2のフローチャートに基づき説明する。なお、光源LEDは発光ダイオード、カメラ2はデジタルカメラを使用して、図1に示すように、発光ダイオードLEDはデジタルカメラ2を中心にして10個ずつ振り分けて等間隔に配置されているものとする。
【0030】
発光ダイオードは図1中において符号を単にLEDと1つだけ付してあるが、20個の発光ダイオードの符号は図1中、Y1方向からY2方向に向かって、LED1、LED2、LED3、LED4、LED5、LED6、LED7、LED8、LED9、LED10、LED11、LED12、LED13、LED14、LED15、LED16、LED17、LED18、LED19、LED20とする。したがって、Y1方向の端部に位置する発光ダイオードがLED1、Y2方向の端部に位置する発光ダイオードがLED20となるので、発光ダイオードLED1、及び発光ダイオードLED20は、被撮像物IOを中心にして相対する位置に配置されることになる。
【0031】
作業者が画像処理装置1でエッジ検出を開始すると(ステップ101)、制御部3は、20個の発光ダイオードLED1〜LED20を、発光ダイオードLED1からLED20に向かって1つずつ点灯して、それぞれの位置から被撮像物IOに対して光を順次照射させる(ステップ102)。また、制御部3は、点灯ステップであるステップ102で順次点灯させる20個の発光ダイオードLED1〜LED20の点灯タイミングに同期して被撮像物IOを、定点からデジタルカメラ2で撮像する(ステップ103)。この撮像ステップであるステップ103で撮像された20個の発光ダイオードLED1〜LED20それぞれの位置から被撮像物IOに対して光を順次照射させた状態のデジタル画像データである当該被撮像物IOの濃淡画像を、演算処理部4の濃淡画像取得機能41で記憶装置に記憶させる。
【0032】
この記憶装置に記憶された濃淡画像は、20個の発光ダイオードLED1〜LED20の被撮像物IOに対する照射方向がそれぞれ異なるので、例えば、発光ダイオードLED1から被撮像物IOに対して光を照射させた状態の被撮像物IOの濃淡画像(図3(A))と、発光ダイオードLED20から被撮像物IOに対して光を照射させた状態の被撮像物の濃淡画像(図3(B))とは、濃側が被撮像物IOに対して相反する位置に現れる。したがって、淡側も被撮像物IOに対して相反する位置に現れる。このことから、20枚の濃淡画像は、濃淡の現れる位置がそれぞれ異なることになる。
【0033】
ステップ102で20個の発光ダイオードLED1〜LED20がすべて点灯され、ステップ103でその点灯タイミングに同期してデジタルカメラ2で撮像された被撮像物IOのすべての濃淡画像が記憶装置に記憶されると、ステップ103で取得したすべての濃淡画像は演算処理部4の差分処理機能42によって処理される(ステップ104)。差分処理機能42は、記録装置に記録されたステップ103で取得したすべての濃淡画像で、予め定められた画素列毎に各画素の階調を比較して、画素列毎に階調の最大値となる画素と、最小値となる画素との差分値を算出する(ステップ105)。なお、この場合における階調値は、最小値が0、最大値が255とする。
【0034】
この差分処理ステップであるステップ105は具体的には図4に示すように、予め設定された被撮像物IOの検出範囲RD、例えば、画素列の領域をA、B、C、D、E、F、Gの7個に分割し、画素列に直交する画素行の領域を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11の11個に分割している。図4(A)は、発光ダイオードLED1から被撮像物IOに対して光を照射させた状態の被撮像物IOの濃淡画像の各画素の階調値を表し、また、図4(B)は、発光ダイオードLED20から被撮像物IOに対して光を照射させた状態の被撮像物IOの濃淡画像の各画素の階調値を表している。ここで、例えば画素列Dに注目すると、11個の画素行1〜11は何れも最初に撮像した1枚目の濃淡画像と、最後に撮像した20枚目の濃淡画像に、それぞれ最大の階調の画素と最小の階調の画素が含まれていることになるので、画素行1〜11それぞれにおいて階調の最大値となる画素と、最小値となる画素との差分値を算出する。なお、階調値がすべての濃淡画像20枚において同一の場合には、階調値は0(ゼロ)となる。
【0035】
ステップ105で差分処理した結果は図5(A)に示すように、画素列Dにおける画素行1の階調値は35、画素行2の階調値は169、画素行3の階調値は13、画素行4の階調値は3、画素行5の階調値は20、画素行6の階調値は0、画素行7の階調値は20、画素行8の階調値は40、画素行9の階調値は60、画素行10の階調値は208、画素行11の階調値は2となる。
【0036】
ステップ105で算出した画素の差分値を、演算処理部4の微分処理機能43で微分処理して画素列A〜G毎に微分値分布を算出する(ステップ106)。ここで、画素列Dに注目すると、微分値分布は図5(B)に示すような曲線を描くことになる。
【0037】
微分処理ステップであるステップ106で算出した微分値分布から、演算処理部4のエッジ点検出機能44で予め定められた閾値以上の画素位置をエッジ点として検出する(ステップ107)。この閾値は、被撮像物IOのエッジとして捉えることができる値で設定されている。なお、閾値の設定を低くすると、処理時間がかかるが、輝度差の少ないエッジでも認識することが可能になるが、この閾値を高く設定すると、処理時間は短くなるが、エッジを抽出しにくくなる。したがって、被撮像物IOのエッジ位置やエッジ形状によって適切に設定することになる。また、画素位置は、画素列の領域及び画素行の領域によって定まっている。即ち、図5(A)に示す差分画像では、例えば、画素列D及び画素行2の階調値169である領域がエッジ点の画素位置となる。
【0038】
このステップ107で検出するエッジ点は、被撮像物IOの形状が単純な円柱なので、画素列Dでは図5(B)に示すように、階調の微分値分布が急激に変化する箇所である画素行2と画素行10とが該当することになる。このことから、閾値は円柱の両側面のエッジを検出できる値で設定されることになる。
【0039】
エッジ点検出ステップであるステップ107で検出されたエッジ点となる画素の微分値を、演算処理部4のエッジ抽出機能45で画素列毎に連結して被撮像物IOのエッジ部位を抽出する(ステップ108)。これにより、エッジ検出を終了する(ステップ109)。
【0040】
このようなエッジ検出方法及び画像処理装置によれば、被撮像物IOのエッジを検出するために、発光ダイオードLED1〜LED20を予め定められた順番で1つずつ点灯させる点灯タイミングに同期して、デジタルカメラ2で被撮像物IOを定点から撮像して当該被撮像物IOの濃淡画像を連続的に取得する。この点灯タイミングに同期して連続的に取得したすべての濃淡画像で、画素列毎に各画素の階調を比較して、階調の最大値となる画素と最小値となる画素との差分値を微分処理して画素列毎に微分値分布を算出し、この微分値分布から予め定められた閾値以上の画素位置をエッジ点として検出することができるので、被撮像物IOの材質あるいは背景や周辺環境、さらには、光源の照明方向や明るさに左右されることなく被撮像物IOのエッジ点を正確且つ安定して検出することが可能になる。また、この差分値を使用することで、階調変化による情報量を減らすことができるので、微分処理における処理速度の低下を防ぐことができる。さらに、微分処理することで得られた画素列の微分値分布から予め定められた閾値以上の画素位置をエッジ点として検出し、そのエッジ点となる画素の微分値を画素列毎に連結して被撮像物IOのエッジ部位を描画するので、当該エッジ部位を正しく抽出することができる。
【0041】
したがって、複数の角度位置から被撮像物に光源を照らしてカメラで撮像することから、すべての濃淡画像がフレアやゴーストを起こすことはないので、エッジ点を正確に検出することができ、結果、エッジ点同士を適切に繋ぎ合わせることができるようになる。
【0042】
なお、上述した実施例のステップ105においては画素列Dの各画素では、最初に撮像した1枚目の濃淡画像と、最後に撮像した20枚目の濃淡画像に、それぞれ最大の階調と最小の階調のものが含まれていたが、被撮像物の形状によっては、これら2枚だけとは限らず、他の撮像回における濃淡画像に最大の階調の画素あるいは最小の階調の画素が含まれている場合がある。この場合は、その撮像回における濃淡画像の画素を、1枚目の濃淡画像及び20枚目の濃淡画像と共に使用して、階調の最大値となる画素と、最小値となる画素との差分値を算出することになる。
【0043】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0044】
1……画像処理装置
2……カメラ
3……制御部
4……演算処理部
41……濃淡画像取得機能
42……差分処理機能
43……微分処理機能
44……エッジ点検出機能
45……エッジ抽出機能
LED……光源
IO……被撮像物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被撮像物を実質的に半円形状で囲むように複数設けられた光源を当該被撮像物に対して照射させるにあたり、前記複数設けられた光源を予め定められた順番で1つずつ点灯させる点灯ステップと、
前記点灯ステップで順次点灯させる前記複数の光源の点灯タイミングに同期して前記被撮像物を定点から撮像して当該被撮像物の濃淡画像を取得する撮像ステップと、
前記撮像ステップで前記点灯タイミングに同期して取得したすべての前記濃淡画像で、予め定められた画素列毎に各画素の階調を比較して、前記画素毎に前記階調の最大値となる画素と、最小値となる画素との差分値を算出する差分処理ステップと、
前記差分処理ステップで算出した前記画素の前記差分値を微分処理して前記画素列毎に微分値分布を算出する微分処理ステップと、
前記微分処理ステップで算出した前記微分値分布から予め定められた閾値以上の画素位置をエッジ点として検出するエッジ点検出ステップとを有することを特徴とするエッジ検出方法。
【請求項2】
前記エッジ点検出ステップで検出された前記エッジ点となる前記画素の前記微分値を前記画素列毎に連結して前記被撮像物のエッジ部位を抽出するエッジ抽出ステップを含むことを特徴とする請求項1記載のエッジ検出方法。
【請求項3】
前記閾値は、前記被撮像物の前記エッジとして捉えることができる値であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエッジ検出方法。
【請求項4】
前記被撮像物を実質的に半円形状で囲むように複数設けられた光源と、
前記複数設けられた光源側に設けられ前記被撮像物を定点から撮像するカメラと、
前記複数設けられた光源を予め定められた順番で1つずつ点灯させると共に、前記複数設けられた光源の点灯タイミングに同期して前記カメラのシャッターを駆動させる制御部と、
前記カメラで前記点灯タイミングに同期して撮像された前記被撮像物の画像の濃淡から当該被撮像物のエッジを検出する演算処理部とを備え、
前記演算処理部は、
前記カメラで前記点灯タイミングに同期して撮像された前記被撮像物の濃淡画像を取得する濃淡画像取得機能と、
前記濃淡画像取得機能で取得したすべての前記濃淡画像で、予め定められた画素列毎に各画素の階調を比較して、前記画素毎に前記階調の最大値となる画素と、最小値となる画素との差分値を算出する差分処理機能と、
前記差分処理機能で算出した前記画素の前記差分値を微分処理して前記画素列毎に微分値分布を算出する微分処理機能と、
前記微分処理機能で算出した前記微分値分布から予め定められた閾値以上の画素位置をエッジ点として検出するエッジ点検出機能とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
前記演算処理部は、前記エッジ点検出機能で検出された前記エッジ点となる前記画素の前記微分値を前記画素列毎に連結して前記被撮像物のエッジ部位を抽出するエッジ抽出機能を有することを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記複数設けられた光源は、等間隔で配置されていることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記複数設けられた光源は、前記カメラを中心にして同数で振り分けられていることを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記光源は発光ダイオードであることを特徴とする請求項4乃至請求項7のうち何れか1項に記載の画像処理装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−100341(P2011−100341A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255163(P2009−255163)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】