説明

エッチング液組成物およびエッチング方法

【課題】
本発明の課題は、FPD(フラットパネルディスプレイ)の表示装置、太陽電池やタッチパネルの電極などに使用される透明導電膜のエッチング液組成物に関するものであって、銅および/または銅合金膜と酸化インジウム錫膜等の透明導電膜とを一括エッチングすることが可能なエッチング液組成物を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、銅および/または銅合金膜と透明導電膜とを一括でエッチング処理するのに用いられるエッチング液組成物であって、塩酸と、塩化第二鉄または塩化第二銅と、水とを含み、塩酸の濃度が、15.0〜36.0重量%であり、塩化第二鉄または塩化第二銅の濃度が、0.05〜2.00重量%である、前記エッチング液組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPD(フラットパネルディスプレイ)の表示装置や太陽電池、タッチパネルセンサの、電極などに使用される透明導電膜と配線などに用いられる銅および/または銅合金膜とを一括でエッチング処理するための、エッチング液組成物および該エッチング液組成物を用いたエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、LCD(液晶ディスプレイ)、ELD(エレクトロルミネッセンスディスプレイ)などのフラットパネルディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどに用いられる光透過性の導電材料である。これら透明導電膜には、酸化インジウム錫、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛などの材料で構成されるものが挙げられ、主に酸化インジウム錫(以下ITOともいう)が広く用いられている。
【0003】
透明導電膜をFPD表示電極や太陽電池、タッチパネルなどの電極として使用するためには、当該透明導電膜を、それぞれの電子デバイスに合わせた膜質で成膜し、所定のパターン形状に加工する必要がある。例えば、タッチパネルにおいて、ITO膜は膜の信頼性、電気特性等の観点から、結晶化させた膜が好ましい。パターン加工方法としてフォトリソグラフィーによるエッチングが行われ、例えば、ITO膜をスパッタリング法等でガラス基板やプラスチック基板等に成膜し、レジスト等をマスクとしITO膜をエッチングすることで目的のパターンが形成されたITO膜を得ることが出来る。
【0004】
また、透明導電膜を上記電極として用いる場合、必要に応じて透明導電膜上に、銀、銅、アルミニウムまたはこれらの合金等の金属材料からなる金属膜が、低抵抗配線材料として積層される。このような低抵抗配線材料は、一般に、機器中における透明導電膜と他の部品との間の良好な電気的接触を実現するために用いられる。近年の電子機器の小型化、表示装置の高精細化等の観点から、現在このような低抵抗配線材料が設けられた透明導電膜は、多くの電子機器に採用されている。上述した中でも、銅および/または銅合金は、電気抵抗が低いこと、および比較的安価であることから、とりわけ多く用いられている。そして、ITO膜上に形成される銅および/または銅合金膜についても、ITO膜のパターン形成と同様に、フォトリソグラフィーにより目的のパターン形成がなされる。
【0005】
そして、近年の電子機器の小型化、高精細化により、高密度の配線を有し、電極や配線の寸法精度が高い電子部品の製造に用いることのできる、すなわち、透明導電膜と銅および/または銅合金膜とに対し微細なパターンを精度よくかつ効率よく形成することのできる方法が求められている。
【0006】
タッチパネルにおいては、前述の通り、低抵抗配線材料としての銅および/または銅合金膜が電極材料としてのITO膜上に設けられた電極が、広く用いられている。従来のプロセスでは、銅および/または銅合金膜と結晶質ITO膜が、別々のプロセスで各膜質に適応したエッチング液によってエッチング加工されており、上述の電極を製造する際には多くの工程が必要となる。
【0007】
例えば、従来のプロセスにおいては、図1に示すように、ポリエチレンテレフタレート基材11上にITO膜12、銅膜13が順次積層された積層体1上に、感光層2およびポリエチレンテレフタレート層3を積層し(S−1)、その後、露光(S−2)、現像(S−3)およびリンス/乾燥(S−4)を行って、レジスト21を形成する。その後、銅膜13に対してエッチング(S−5)、リンス/乾燥(S−6)を行って、銅配線131を形成し、さらに、ITO膜12に対してエッチング(S−7)、リンス/乾燥(S−8)を行って、透明電極121を形成する。さらに、レジスト21の剥離(S−9)およびこれに伴うリンス/乾燥(S−10)を行なうことにより、目的とする電極積層体4を得る。
【0008】
従来、ITO膜のエッチング液には、しゅう酸水溶液、塩酸および高濃度の塩化第二鉄からなる混合溶液や塩酸および硝酸からなる混合溶液(王水系)などが用いられている。しかし、これらエッチング液には以下のような問題点があり、タッチパネル用の電極部品を製造するためのエッチング液としては実用上十分なものではない。
【0009】
特許文献1には、しゅう酸水溶液によるエッチング方法が提案されている。しゅう酸水溶液は、サイドエッチング量が少なく、かつ安価であり化学的安定性にも優れている。しかしながら、耐薬品性の強い結晶質ITO膜や銅および/または銅合金膜はしゅう酸水溶液に溶解しないため、しゅう酸水溶液は、このような膜に対して実用上使用できない。このため、しゅう酸水溶液は、非晶質ITO膜に限定されて使用される。
【0010】
特許文献2〜5には、結晶質ITO膜単層のエッチングを目的とした塩酸および高濃度の塩化第二鉄を含んだ混合溶液を用いるエッチング方法が提案されている。また、特許文献3には、上記混合溶液を銅または銅合金等のエッチングに使用できることも開示されている。しかしながら、特許文献2〜5には、銅または銅合金膜とITO膜とを積層した積層膜の一括エッチングについて、何ら検討されていない。
【0011】
塩酸と硝酸との混合溶液(王水系)は、銅および/または銅合金膜と結晶質ITO膜のエッチングは、それぞれの膜については可能である。しかしながら、このような混合溶液を用いた銅および/または銅合金膜と結晶質ITO膜との一括エッチングについては、検討されていない。さらに、上記混合溶液を用いた一括エッチングは、レジストへのダメージが大きいこと、銅および/または銅合金膜のエッチング速度が遅いことから、銅および/または銅合金膜と結晶質ITO膜を一括エッチングすることは困難であると考えられる。また、上記混合溶液は、化学的安定性に欠け経時変化が激しく、そのため、デリバリーすることが困難であるなどの問題もある。
【0012】
特許文献6には、弱酸による銅膜とITO膜の一括エッチング技術が開示されている。
このような一括エッチングは、例えば、図2に示すように、基本的なプロセスとして図1に示すS−1〜S−4、S−9、S−10と同様のステップS−1’〜 S−4’、S−7’〜 S−8’を有するが、S−5’およびS−6’において、銅膜13とITO膜12とに対し一括でパターンを形成することができる。このため、一括エッチング技術を採用した場合、図1に示すS−7およびS−8といった工程を省略でき、プロセスの大幅な改善を行なうことができる。
しかしながら、同文献では、ITO膜として非晶質のものを対象としており、結晶化したITO膜を用いるデバイスには適用出来ない。
以上、従来、透明導電膜と銅または銅合金膜とを一括エッチングすることについて、十分な検討がなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−62966号公報
【特許文献2】特開2009−231427号公報
【特許文献3】特開2009−235438号公報
【特許文献4】特開平7−130701号公報
【特許文献5】特開昭61−199080号公報
【特許文献6】特開2006−148040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、上記従来の問題に鑑み、銅および/また合金膜と透明導電膜とを一括エッチングすることが可能なエッチング液組成物および当該エッチング液組成物を用いたエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を行う中で、一括エッチングにおいては、銅および/または銅合金膜および透明導電膜に対するエッチング速度が一般に大幅に異なるため、例えば透明導電膜のエッチングの間に銅および/または銅合金膜へのサイドエッチング量が増大し銅および/または銅合金膜の線幅の制御が困難となるなどの問題に直面した。かかる問題を解決すべく、鋭意検討を重ねたところ、塩酸ならびに少量の塩化第二鉄または塩化第二銅を含むエッチング液組成物が、電極配線材料などに用いられている銅および/または銅合金膜と透明導電膜とを良好な形状で精度よく一括エッチングすることが可能であることを見出し、さらに研究を続けた結果、本発明を達成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1] 銅および/または銅合金膜と透明導電膜とを一括でエッチング処理するのに用いられるエッチング液組成物であって、
塩酸と、塩化第二鉄または塩化第二銅と、水とを含み、
塩酸の濃度が、15.0〜36.0重量%であり、
塩化第二鉄または塩化第二銅の濃度が、0.05〜2.00重量%である、前記エッチング液組成物。
[2] さらに、りん酸を含有する、[1]に記載のエッチング液組成物。
[3] 透明導電膜が、結晶質の材料を含んで構成される、[1]または[2]に記載のエッチング液組成物。
[4] 結晶質の材料が、結晶質酸化インジウム錫である、[3]に記載のエッチング液組成物。
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載のエッチング液組成物を用いて、銅および/または銅合金膜と透明導電膜とを含む基板を一括でエッチング処理する、エッチング方法。
[6] 基板が、タッチパネルセンサの構成部品用である、[5]に記載のエッチング方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、銅および/または銅合金膜と透明導電膜とを一括エッチングすることが可能なエッチング液組成物および当該エッチング液組成物を用いたエッチング方法を提供することができる。
【0018】
具体的には、従来のエッチング液組成物、例えば、特許文献2〜5に記載の塩酸および高濃度の塩化第二鉄を含んだ混合溶液を一括エッチングに用いた場合には、一般に、銅および/または銅合金膜に対するエッチング速度が速く、一方で透明導電膜に対するエッチング速度に対するエッチング速度が遅いため、図3に示すように、透明導電膜5のエッチングの間に銅および/または銅合金膜6へのサイドエッチング量が増大し銅および/または銅合金膜6の線幅の制御が困難となる。この結果、従来のエッチング液組成物では、銅および/または銅合金膜と結晶質ITO膜の一括エッチングは困難である。
これに対し、本願発明のエッチング液組成物を一括エッチングに用いた場合、銅および/または銅合金膜に対するエッチング速度と、透明導電膜に対するエッチング速度との差が比較的小さいため、銅および/または銅合金膜と透明導電膜とのエッチング速度が適切に制御され、図4に示すように、透明導電膜5のエッチングと、銅および/または銅合金膜6のエッチングとが同程度進行する。この結果、銅および/または銅合金膜6へのサイドエッチングが抑制されて、銅および/または銅合金膜6の線幅の制御が容易となり、良好なパターンを得ることができる。すなわち、本願発明のエッチング液組成物を一括エッチングに用いた場合、透明導電膜と銅および/または銅合金膜とに対し、高精細な配線パターンを、一括で、かつ精度よく形成することができる。
【0019】
特に、本発明のエッチング液組成物がさらにりん酸を含むことにより、銅および/または銅合金膜に対するエッチング速度と透明導電膜に対するエッチング速度との差をより小さいものとすることができ、上述した効果が顕著なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】銅膜およびITO膜の各膜への単独エッチングによる、パターンの形成方法を示す概要図である。
【図2】銅膜およびITO膜への一括エッチングによる、パターンの形成方法を示す概要図である。
【図3】従来の一般的なエッチング液を用いた一括エッチングによって形成される銅膜およびITO膜のパターンの典型例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明のエッチング液組成物を用いた一括エッチングによって形成される銅膜およびITO膜のパターンの典型例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、本発明の好適な実施態様に基づき、詳細に説明する。
本発明のエッチング液組成物は、銅および/または銅合金膜と透明導電膜とを一括でエッチング処理するのに用いられるエッチング液組成物である。
【0022】
本発明のエッチング液組成物は、塩酸と、塩化第二鉄または塩化第二銅と、水とを含む。
【0023】
本発明のエッチング液組成物中における塩酸の濃度は、15.0〜36.0重量%である。これにより、透明導電膜のエッチング速度が向上する。
エッチング液組成物中における塩酸の濃度が15.0重量%より低い場合、透明導電膜のエッチング速度が遅く実用的ではない。また、塩酸は工業的に36.0重量%が一般的に市販されている濃度であり、この濃度以上の塩酸は入手困難な上経済的ではない。
エッチング液組成物中における塩酸の濃度は、好ましくは、20.0重量%〜35.0重量%であり、これにより、更に透明導電膜のエッチング速度を向上させることが可能となり、上述した効果をより顕著に得ることができる。
【0024】
また、エッチング液組成物中における塩化第二鉄または塩化第二銅の濃度は、0.05重量%〜2.00重量%である。このような濃度範囲であることにより、銅および/または銅合金膜のエッチング速度を適切なものとすることができるとともに、さらに、塩化第二鉄および塩化第二銅を含まない場合と比較して透明導電膜のエッチング速度を向上させることができる。
塩化第二鉄または塩化第二銅の濃度が0.05重量%より低い場合、銅および/または銅合金膜のエッチング速度が遅く実用的ではない。塩化第二鉄または塩化第二銅の濃度が前記上限値を超える場合、具体的には、2.00重量%を超える場合、銅および/または銅合金膜のエッチング速度が速過ぎてしまい、サイドエッチング量が増大してしまう問題がある。
上記塩化第二鉄または塩化第二銅の濃度は、好ましくは0.10重量%〜1.50重量%であり、より好ましくは0.10重量%〜0.90重量%であり、さらに好ましくは0.10重量%〜0.50重量%であり、これにより、銅および/または銅合金膜のエッチング速度が最適に制御され、上述した効果をより顕著に得ることができる。
【0025】
また、エッチング液組成物は、好ましくは、りん酸を含む。エッチング液組成物がりん酸を含むことにより、銅および/または銅合金膜のエッチング速度を抑制し、かつ透明導電膜のエッチング速度を上げることができる。
【0026】
エッチング液組成物中におけるりん酸の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、濃度は5.0重量%〜50.0重量%、特に好ましくは10.0重量%〜40.0重量%である。
りん酸の濃度が5.0重量%より低い場合、添加剤として効果が十分ではなく、実用的ではない場合がある。また、りん酸の濃度が50.0重量%を超える場合、それに見合う効果が見られない場合があり、また、経済的ではない。
【0027】
また、本発明のエッチング液組成物は、水を含む。水は、エッチング液組成物中において、溶媒として用いられる。
エッチング液組成物中における水の含有率は、好ましくは、10.0〜80.0重量%であり、より好ましくは、20.0〜70.0重量%である。
また、エッチング液組成物を構成する媒体は、他の成分を含んでいてもよいが、水を主成分とすることが好ましい。このような場合、エッチング液組成物を構成する媒体中における水の含有率は、80重量%以上であり、さらに好ましくは、90重量%以上である。
【0028】
また、透明導電膜や銅および/または銅合金膜の厚さや膜質に対応して、本発明のエッチング液組成物の組成を適宜調整し、銅および/または銅合金膜と透明導電膜とのエッチング速度のバランスを取ることもできる。
このような場合、塩酸の濃度を増加させることにより、透明導電膜のエッチング速度を増加させることができ、一方、塩化第二鉄または塩化第二銅の濃度を増加させることにより、銅および/または銅合金膜のエッチング速度を増加させることができる。
【0029】
また、上述したように、本発明のエッチング液組成物は、銅および/または銅合金膜と透明導電膜とを一括でエッチング処理するのに用いられる。
すなわち、本発明のエッチング液組成物は、少なくとも1層の銅および/または銅合金膜と、少なくとも1層の透明導電膜と、を含む積層体を一括エッチングするのに用いることができる。好ましくは、少なくとも1層の銅および/または銅合金膜と、少なくとも1層の透明導電膜とは、接合している。
【0030】
銅合金膜は、銅および任意の金属を含んでなる金属膜であり、銅を主成分として含有する。例えば、CuMn膜、CuNi膜、CuMgAl膜、CuMgAlO膜、CuCaO膜などが挙げられる。銅合金膜は、典型的には、銅を90重量パーセント以上含み、好ましくは、銅を95重量パーセント以上含む。
【0031】
また、透明導電膜は、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛などの材料で構成されるものが挙げられ、これらのうち1種または2種以上の組み合わせに対して使用可能である。上述した中でも、透明導電膜は、高透明、低吸収、高導電率、耐環境性能の観点から、好ましくは、ITOを含んで構成され、より好ましくはITOからなる。
【0032】
また、透明導電膜は、非晶質の材料で構成されていてもよいが、結晶質の材料で構成されている場合には、本願発明の効果が顕著に発揮される。すなわち、結晶質の透明導電膜は、一般に、エッチング速度が低いため、一括エッチングを行った場合には、銅および/または銅合金膜のサイドエッチング量が大きくなる傾向にある。しかしながら、本発明のエッチング液組成物は、銅および/または銅合金膜と透明導電膜のエッチング速度が適切に制御されるため、このような問題を抑制できる。
好ましくは、透明導電膜は、結晶質ITOを含んで構成され、より好ましくは、透明導電膜は、結晶質ITOからなる。
【0033】
また、銅および/または銅合金膜と透明導電膜とは、基材上に形成されていてもよい。
このような基材の構成材料としては、ガラス、石英、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォンなどが挙げられる。特に、可撓性、透明性、強靭性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性が求められるタッチパネルにおいては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォンなどの有機ポリマーフィルムが基材として用いられ、本発明のエッチング液組成物はこのような有機ポリマーフィルムの基材上に形成された銅および/または銅合金膜と透明導電膜との一括エッチング処理に適している。
【0034】
また、本発明は、一態様において、上述したエッチング液組成物を用いて、銅および/または銅合金膜と透明導電膜とを含む基板を一括でエッチング処理する、エッチング方法に関する。
【0035】
上記基板としては、銅および/または銅合金膜と透明導電膜とを含むものであれば特に限定されないが、例えば、上述した基材上に、少なくとも1層の透明導電膜と、少なくとも1層の銅および/または銅合金膜とが積層されている。好ましくは、基材上に、透明導電膜と、銅および/または銅合金膜とがこの順序で積層されている。
【0036】
また、エッチングは、上記基板の透明導電膜ならびに銅および/または銅合金膜に対し、上述したエッチング液組成物を、例えば公知の方法により、接触させることにより行なうことができる。
【0037】
また、エッチングにおける、エッチング液組成物の温度は、特に限定されないが、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは20〜40℃の範囲、さらに好ましくは25〜35℃の範囲である。温度が40℃以上になるとエッチング液成分の揮発により液寿命が低下する場合がある。温度が20℃以下の場合、実用的なエッチング速度が得られない場合がある。
【0038】
エッチング処理された基板は、特に限定されないが、例えば、FPD表示電極や太陽電池、タッチパネル、特にタッチパネルセンサなどの構成部品用である。エッチング処理された基板中の透明電極および銅または銅合金で構成された配線は、それらのパターン、特に線幅が精度よく制御されているため、このような電子機器の構成部品として好適に用いることができる。特に、タッチパネルセンサの構成部品としては、線幅が細く、微細なパターンを有する電極部品が必要とされるため、上記エッチング処理された基板は、好ましくは、タッチパネルセンサの構成部品用である。
【0039】
以上、本発明について好適な実施態様に基づき詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
【実施例】
【0040】
本発明を以下の実施例と比較例と共に示し発明の内容をさらに詳細に示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
以下の方法で、本発明のエッチング液組成物と比較のためのエッチング液組成物を用いて実験を行なった。
PET(ポリエチレンテレフタレート)基板上に結晶質ITO膜を膜厚200Å成膜し、さらにその上層に銅膜を膜厚2000Å成膜した基板を準備し、各エッチング液を25℃に保持しエッチング試験を行った。
【0042】
エッチング速度、即ちジャストエッチング時間の算出方法は、銅膜については目視にて完全に銅膜が消失する時間を計測する事により得、結晶質ITO膜については、銅膜が消失してから結晶質ITO膜が消失するまでの時間を計測した。結晶質ITO膜が消失するまでの時間については、エッチングした基板を水洗、乾燥した後、表面抵抗がテスターで無限大となる時間とした。
【0043】
表1に、各実施例および比較例で用いたエッチング液の組成ならびに、銅膜および結晶質ITO膜のジャストエッチング時間計測結果を示す。なお、エッチング液を構成する表に記載の以外の成分は、水とした。また、表中、ジャストエッチング時間の評価における数値の右側にある上向きの矢印は、実際に計測、算出された数値がその数値より大きいものであることを表し、数値の右側にある下向きの矢印は、実際に計測、算出された数値がその数値より小さいものであることを表す。
【0044】
【表1】

【0045】
比較例1〜2のエッチング液組成物は、銅膜のエッチング速度が遅く実用的ではない。比較例3のエッチング液組成物は、銅膜のエッチング速度は速いが、結晶質ITO膜のエッチング速度が遅く、一括エッチング液としては実用的ではない。比較例4〜7のエッチング液組成物は、銅膜および結晶質ITO膜を一括エッチング可能であるが、結晶質ITO膜に対し銅膜のエッチング速度が異常に速く、結晶質ITO膜のエッチングの間に銅膜へのサイドエッチングが増大し著しく線幅が細くなってしまう、もしくは、銅膜が完全に消失してしまう等の問題があり実用的ではない。
【0046】
これら比較例に対し、実施例1〜4、実施例13〜19、および実施例22、23のエッチング液組成物は、銅膜および結晶質ITO膜のエッチング速度差も少なく実用的である。すなわち、銅膜へのサイドエッチングを抑制でき、パターンを精度よく形成できる。さらに、りん酸が添加された実施例5〜12および実施例20、21のエッチング液組成物を用いた場合、銅膜および結晶質ITO膜とのエッチング速度差が短縮され、より実用的である。
【0047】
また、銅膜のジャストエッチング時間Aに対する結晶質ITO膜のジャストエッチング時間Bの比(B/A)は、比較例2を除き、各比較例において、非常に高い値であり、また、比較例2においては、1を大幅に下回った。これに対し、各実施例においては、上記比は、1に近い数値となった。また、りん酸を含むエッチング液の実施例である5〜12および実施例20、21については、上記比がより1に近いものとなった。これらのことからも、本発明のエッチング液組成物は、銅膜エッチング速度と結晶質ITO膜のエッチング速度とのバランスが、良好であることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
1 積層体
11 ポリエチレンテレフタレート基材
12 ITO膜
121 透明電極
13 銅膜
131 銅配線
2 感光層
21 レジスト
3 ポリエチレンテレフタレート層
4 電極積層体
5 透明導電膜
6 銅および/または銅合金膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅および/または銅合金膜と透明導電膜とを一括でエッチング処理するのに用いられるエッチング液組成物であって、
塩酸と、塩化第二鉄または塩化第二銅と、水とを含み、
塩酸の濃度が、15.0〜36.0重量%であり、
塩化第二鉄または塩化第二銅の濃度が、0.05〜2.00重量%である、前記エッチング液組成物。
【請求項2】
さらに、りん酸を含有する、請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項3】
透明導電膜が、結晶質の材料を含んで構成される、請求項1または2に記載のエッチング液組成物。
【請求項4】
結晶質の材料が、結晶質酸化インジウム錫である、請求項3に記載のエッチング液組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のエッチング液組成物を用いて、銅および/または銅合金膜と透明導電膜とを含む基板を一括でエッチング処理する、エッチング方法。
【請求項6】
基板が、タッチパネルセンサの構成部品用である、請求項5に記載のエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89731(P2013−89731A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228237(P2011−228237)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(591045677)関東化学株式会社 (99)
【Fターム(参考)】